HS2022 第55類:人造繊維の短繊維及びその織物(Man-made staple fibres)

用語の約束(本稿内):部=Section、類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、注=Notes(部注/類注)

第55類は、人造繊維の短繊維(ステープル)を中心に、一定条件を満たす長繊維のトウ(tow)、人造繊維のくず、紡績糸、織物までを扱う類です。実務では、品名の印象だけで決めると外しやすく、特に「トウの数値要件」「縫糸かどうか」「小売用かどうか」「混用比率と織物の目付」でコードが動きます。


1. まず結論:この類に入るもの/入らないもの

1-1. 第55類に入る代表例

  • 合成繊維の長繊維のトウ(一定要件を満たすもの):ポリエステルトウ、ナイロン系トウなど(55.01)
  • 再生繊維又は半合成繊維の長繊維のトウ:アセテートトウなど(55.02)
  • 合成短繊維(紡績準備の処理をしていない):ポリエステル短繊維(ベール梱包)など(55.03)
  • 再生繊維又は半合成繊維の短繊維(紡績準備の処理をしていない):ビスコース短繊維など(55.04)
  • 人造繊維のくず:ノイル、糸くず、反毛した繊維など(55.05)
  • 紡績準備後の短繊維:カード、コーム等を経た短繊維や処理済みくず(55.06、55.07)
  • 縫糸:人造繊維短繊維の縫糸(55.08)
  • 紡績糸(縫糸を除く):小売用でない糸(55.09、55.10)/小売用の糸(55.11)
  • 織物:合成短繊維の織物(55.12〜55.15)/再生・半合成短繊維の織物(55.16)

1-2. 第55類から除外されやすい代表例(除外先の目安)

  • 長繊維の糸や織物など、第54類(人造繊維の長繊維)で扱うもの(例:フィラメント糸、長繊維織物など)
  • 長さが5ミリメートル以下の紡織用繊維(フロック)、繊維ダスト、ミルネップ:56.01
  • 炭素繊維及びその製品:68.15
  • ガラス繊維及びその製品:70.19
  • 石綿および石綿製品(該当する場合):25.24、68.12、68.13

2. 最重要ポイント:トウ(tow)の数値要件で55.01/55.02に入るかが決まる

第55類の類注(注1)は、55.01と55.02に入る「トウ」を数値条件で限定しています。条件を満たさないと、55.03/55.04や、第54類など別の行先になり得ます。

2-1. 55.01/55.02に入るトウの要件(5条件)

判定項目基準実務メモ
長さ2メートルを超える2メートル以下なら55.03または55.04に回る可能性が高いです
より数1メートルにつき5未満仕様書で撚りの有無と撚り数を確認します
単糸繊度構成する1本の長繊維が67デシテックス未満67デシテックス以上の長繊維が混じると別分類リスクが上がります
延伸合成繊維のトウは延伸済みで、長さの2倍を超えて伸びない延伸の有無は分類トラブルの典型ポイントです
総繊度1束につき20,000デシテックス超20,000以下だと55.01から外れる可能性があります

上の要件は、第55類の類注(注1)として明示されています。

2-2. トウが55.01/55.02から外れる典型パターン

  • 長さが2メートル以下のトウは、55.03または55.04に属します(要件を満たしていても「長さ」で落ちます)。
  • 55.01の説明では、総繊度が20,000デシテックス以下のものや、延伸していない長繊維(状況により)は54.02側へ行く例が示されています。トウとフィラメント糸の境界では、総繊度と延伸が特に効きます。
  • 構成する1本の長繊維が67デシテックス以上など、単糸繊度が大きい場合は、54.04や39類になることがある旨が示されています(素材が「繊維」扱いか、プラスチックのストリップ等扱いかまで波及します)。

3. 第55類の地図:項(4桁)の全体像

まずは「何の形状か(短繊維/トウ/くず/糸/織物)」で項が決まります。次に、合成か再生・半合成か、紡績準備の有無、小売用かどうか、混用・目付などで号(6桁)へ落とします。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5501合成繊維の長繊維のトウポリエステルトウ、ナイロン系トウ類注1の5条件を満たすトウだけ
5502再生繊維又は半合成繊維の長繊維のトウアセテートトウ55.01の考え方を準用(合成の延伸条件を除く考え方)
5503合成短繊維(カード・コーム等の処理前)PSFベール(未カード)長さ2m以下のトウがここへ入る場合あり
5504再生・半合成短繊維(カード・コーム等の処理前)ビスコース短繊維(未カード)5503と同様の考え方
5505人造繊維のくず(ノイル、糸くず、反毛など)スピニングくず、反毛繊維フロック(56.01)と混同しやすい
5506合成短繊維(カード・コーム等の処理後)カード済みPSF、トップ等紡績準備の有無が分岐
5507再生・半合成短繊維(カード・コーム等の処理後)カード済みビスコース短繊維5506と同様
5508人造繊維短繊維の縫糸縫製用のミシン糸部注の「縫糸」定義で判定
5509合成短繊維の紡績糸(小売用でない、縫糸除く)工業用コーン糸小売用かどうかで5511に動く
5510再生・半合成短繊維の紡績糸(小売用でない、縫糸除く)ビスコース糸(工業用)5509と同様
5511人造繊維短繊維の紡績糸(小売用、縫糸除く)小巻の手芸糸小売用の定義は部注で数値条件あり
5512合成短繊維の織物(合成短繊維が85パーセント以上)ポリエステル短繊維主体の服地85パーセント判定が重要
5513合成短繊維の織物(85パーセント未満、綿が主、170g/㎡以下)T/C薄地(目付軽め)85パーセント未満、綿が主、目付170以下
5514合成短繊維の織物(85パーセント未満、綿が主、170g/㎡超)T/C厚地(目付重め)目付170超で5514へ
5515その他の合成短繊維の織物混用の多い合繊短繊維織物「綿が主」条件に当てはまらない等
5516再生・半合成短繊維の織物レーヨン短繊維織物再生・半合成側の織物

項の範囲はHSの見出し(WCO)と、日本税関の解説で確認できます。


4. 6桁(号)で実務上重要な分岐

4-1. 5508(縫糸)か、5509〜5511(縫糸以外の糸)か

縫糸は「複数(合糸)またはケーブル糸であること」「支持体に巻かれた状態で重量が1,000g以下」「縫糸としての仕上げ」「最終撚りがZ撚り」という部注の定義で判定します。単に品名がミシン糸でも、定義に当てはまらないと縫糸として扱えないことがあります。

4-2. 5511(小売用)か、5509/5510(小売用でない)か

「小売用にしたもの」は、支持体に巻いた糸の重量や、玉巻・かせの重量、また工業用形態(コップ、管、ピルン等)などの例外で定義されています。実務では、包装形態と重量、用途(手芸用か工業用か)の証拠が必要です。

4-3. 5512〜5514で頻出する「85パーセント」と「170g/㎡」

織物側の頻出分岐は次の2つです。

  • 合成短繊維が全重量の85パーセント以上なら、基本的に5512(合成短繊維の織物)側の枠になります。
  • 合成短繊維が85パーセント未満で、混用繊維の全部又は大部分が綿で、目付が170g/㎡以下なら5513、170g/㎡を超えるなら5514です。

ここでの「綿が主」「85パーセント判定」「目付」は、インボイスの品名だけでは確定できません。試験成績書、混用率表、織物仕様(g/㎡)が必要になります。

4-4. 55.05(くず)と56.01(フロック等)の境界

第55類の解説では、56.01の「長さ5ミリメートル以下の繊維(フロック)」や「フロック、ダスト、ミルネップ」は第55類に入らないと明示されています。くずの形状や粒度が細かいと、55.05ではなく56.01へ行く可能性があるため、繊維長の情報が重要です。

4-5. 混用繊維の基本ルール(第11部注2)

第50類〜第55類の混用繊維は、原則として「重量が最も大きい繊維」で分類します。どれも優勢でない場合は「後ろに出てくる見出し(最後に記載された繊維側)」で分類するルールです。混用率の算定根拠(製品全体の重量比)を確実に取るのが安全です。


5. 判定フロー(迷ったときの順番)

社内の一次判定は、次の順番にすると手戻りが減ります。

  1. 材質の確定
  • そもそも「人造繊維」に該当するかを確認します。定義は第54類の注で示され、合成繊維と再生・半合成繊維の区分もここで整理されます。
  1. 形状の確定(ここで項がほぼ決まります)
  • トウか(55.01/55.02の候補)
  • 短繊維か(55.03/55.04/55.06/55.07の候補)
  • くずか(55.05の候補)
  • 糸か(55.08〜55.11の候補)
  • 織物か(55.12〜55.16の候補)
  1. トウの場合は、類注1の数値条件をチェック
  • 5条件を満たせば55.01/55.02
  • 長さ2メートル以下など条件外なら55.03/55.04等に回り得る
  • 総繊度や延伸などで第54類へ動く可能性もあるため注意
  1. 短繊維の場合は「紡績準備の処理」の有無をチェック
  • カード、コーム等の処理前:55.03/55.04
  • 処理後:55.06/55.07
  1. 糸の場合は「縫糸」か「小売用」かを先に確定
  • 縫糸(55.08)は部注の定義で判定
  • それ以外は、小売用(5511)か小売用でない(5509/5510)かを部注の定義で判定
  1. 織物の場合は「85パーセント」「綿が主」「目付170g/㎡」をチェック
  • 5512〜5514の分岐が頻出です。混用の扱い(部注2)も同時に確認します。

6. よくある誤分類と、社内での防ぎ方

  1. 間違い:トウを55.01/55.02に入れたが、実は類注1の要件を満たしていない
  • なぜ起きる:品名がtowで、数値条件(長さ、総繊度、延伸など)を取らずに決めてしまうためです。
  • 正しい考え方:55.01/55.02は類注1の5条件を全て満たすトウに限定されます。
  • 予防策:供給者仕様書で「長さ」「撚り」「単糸繊度」「延伸」「総繊度」を必ず回収します。
  1. 間違い:長さ2メートル以下のトウを55.01にした
  • なぜ起きる:トウはトウ、という思い込みで長さ条件を見落とします。
  • 正しい考え方:2メートル以下は55.03または55.04へ回る旨が明記されています。
  • 予防策:梱包状態だけでなく、トウの実測値または製造仕様の長さ情報を取得します。
  1. 間違い:55.05(くず)と56.01(フロック等)を取り違えた
  • なぜ起きる:どちらも「繊維の細片」に見え、見た目で判断してしまうためです。
  • 正しい考え方:フロックは長さ5ミリメートル以下として56.01側で整理され、55類から除外されます。
  • 予防策:繊維長(分布)と製造由来(切断か、粉砕か、紡績くずか)を確認します。
  1. 間違い:縫糸(55.08)を、単に小巻だから5511にした
  • なぜ起きる:小巻=小売用糸、という見た目判断になりがちです。
  • 正しい考え方:縫糸は部注で定義され、Z撚り、仕上げ、支持体重量などの要件で判定します。
  • 予防策:糸の撚り方向、仕上げ(縫糸用の処理)、支持体込み重量を確認します。
  1. 間違い:5511(小売用)か5509/5510(小売用でない)かを包装形態だけで決めた
  • なぜ起きる:ラベルや箱の有無で判断してしまうためです。
  • 正しい考え方:「小売用」は重量条件や工業用形態の例外を含む定義で決まります。
  • 予防策:支持体込み重量、玉巻・かせ重量、工業用形態(コップ等)かどうかを仕様書と現物写真で確認します。
  1. 間違い:織物で「85パーセント」判定を、糸番手や混率表示だけで推定した
  • なぜ起きる:混率ラベルと実重量比が一致している前提で進めてしまうためです。
  • 正しい考え方:見出し条件は重量比です。部注2の混用ルールも含め、製品全体の重量比で判定します。
  • 予防策:混用率の試験成績書、BOM、製造ロットの混率管理記録を取得します。
  1. 間違い:5513と5514を取り違えた(目付170g/㎡の見落とし)
  • なぜ起きる:混用条件だけ見て、目付を確認しないためです。
  • 正しい考え方:5513は170g/㎡以下、5514は170g/㎡超で明確に分かれます。
  • 予防策:検査成績書または製品仕様でg/㎡を取得し、対象生地がどちらに該当するかを記録します。
  1. 間違い:第55類のつもりで進めたが、実は炭素繊維やガラス繊維だった
  • なぜ起きる:用途や外観が似ており、材料定義を飛ばしてしまうためです。
  • 正しい考え方:炭素繊維(68.15)やガラス繊維(70.19)は第55類から除外されます。
  • 予防策:材質証明(MSDS、材料証明書)で繊維種を確定してから分類に入ります。

7. HS2017からHS2022で変わった点(第55類で実務に効きやすいところ)

第55類では、少なくともHS2017からHS2022への変更として、55.01(合成繊維の長繊維のトウ)の一部で細分が入っています。

比較(HS2017→HS2022)変更タイプ該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017の5501.10(ナイロンその他のポリアミドのトウ)→ HS2022で分割分割5501.11(アラミド)/5501.19(その他)アラミドのトウを別掲して識別性を上げるマスタの旧コード踏襲に注意。アラミド関係の取引は統計・管理面で誤りが見つかりやすい

この分割の趣旨として、相関表の備考では「二重用途品目の監視・管理を容易にするため」と記載されています。


8. 参考資料(出典、参照日:2026-02-24)

  • 日本税関:第55類(人造繊維の短繊維及びその織物)類注
  • 日本税関:関税率表解説 第55類(総説、各項解説、除外例、数値条件)
  • WCO:HS2022 Chapter 55(Man-made staple fibres)
  • WCO:HS2022 Section XI Notes(混用ルール、小売用、縫糸の定義など)
  • WCO:HS2022 Chapter 54(人造繊維の定義、Chapter 55のトウとの関係)
  • 日本税関:第54類注(人造繊維の定義、日本語)
  • 日本税関:関税率表解説 第56類(56.01 フロック等の説明)
  • WCO:HS2022 Chapter 56(56.01でフロックを5mm以下とする見出し)
  • WCO相関表(HS2017–HS2022):5501.10の細分理由(dual use監視等)
  • WCO:HS2017 Chapter 55(旧コード体系の確認)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第54類:人造繊維の長繊維並びに人造繊維の織物及びストリップその他これに類する人造繊維製品(Manmade filaments; strip and the like of manmade textile materials)

冒頭で用語を統一します。**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**です。

第54類は「合成繊維・再生繊維(レーヨン等)の“長繊維(フィラメント)”」と、その織物/モノフィラメント/ストリップを扱います。まずは**“長繊維か短繊維か”、次に“縫糸か否か”、さらに“小売用(小巻)か工業用(コーン等)か”、最後にモノフィラメントやコーティング有無**を詰めると迷いが激減します。 (世界税関機構)


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの

この類に入る代表例

  • 合成フィラメント縫糸(ポリエステル縫糸・ナイロン縫糸の小巻)→ 5401 (世界税関機構)
  • 工業用の合成フィラメント糸(コーン巻のポリエステル/ナイロン糸、POY含む)→ 5402 (世界税関機構)
  • 再生繊維フィラメント糸(レーヨン糸等、縫糸でない)→ 5403 (世界税関機構)
  • 合成モノフィラメント(67dtex以上、断面寸法≦1mm)や合成ストリップ(見掛け幅≦5mm) → 5404 (世界税関機構)
  • 合成長繊維の織物(コーティング等のない一般織物/産業資材織物の一部)→ 5407 (世界税関機構)
  • 再生繊維長繊維の織物(アセテート含む) → 5408 (世界税関機構)

この類から除外されやすい代表例

  • 人造繊維のトウ(tow):第55類へ(例:合成長繊維トウ 5501 等) (世界税関機構)
  • 太物の“ひも・ロープ”扱い:一定条件を満たす糸は「twine/cordage/ropes/cables」として第56類(5607等)になり得る (世界税関機構)
  • タイヤコード織物:第59類 5902(“tyre cord fabric”として別建て) (世界税関機構)
  • プラスチックで目視できるコーティング等のある織物:第59類 5903 等へ移り得る (世界税関機構)
  • 断面寸法が1mm超のプラスチックモノフィラメント幅5mm超のプラスチックストリップ:第11部(繊維)から外れ、第39類側になり得る (世界税関機構)
  • デンタルフロス:第11部から除外(3306) (世界税関機構)

実務での最重要分岐

  • 縫糸(5401)か、縫糸以外の糸か:定義(重量・仕上げ・撚り方向)で決まります (世界税関機構)
  • 小売用(5406)か、非小売用(5402/5403)か:小売用の定義は包装形態・重量・例外で決まります (世界税関機構)
  • モノフィラメント/ストリップ(5404/5405)か、フィラメント糸(5402/5403)か:67dtex、断面寸法1mm、見掛け幅5mmが効きます (世界税関機構)

この類で誤分類が高コストになりやすい場面

  • EPA/FTAでPSR(品目別規則)が変わる場面:HSの付番を誤ると原産性判断が崩れます (税関総合情報)
  • 工業用高強力糸・産業資材(ロープ扱い/59類扱いとの境界):関税率・規制・統計が変わりやすい領域です (世界税関機構)

1. 区分の考え方

1-1. 分類の基本ルール

この類はGIR1(見出しと注の文言)が最重要です。特に「部注(Section XI Notes)」の定義が、項(5401〜5408)をまたいで効きます。次に、6桁の切り分けはGIR6で「同じレベルの号の文言+該当する注」で詰めます。 (世界税関機構)

「品名だけで決めない」ための観点は次の通りです。

  • 繊維の種類:合成(polyester/nylon等)か、再生(viscose rayon/acetate等)か (世界税関機構)
  • 形状:マルチフィラメント糸か、モノフィラメントか、ストリップか (世界税関機構)
  • 状態:縫糸として仕上げ済みか、工業用巻き(コーン/コップ等)か、小巻(小売用)か (世界税関機構)
  • 性能:高強力(high tenacity)該当か(cN/texの閾値) (世界税関機構)
  • 織物の場合:高強力糸由来、ストリップ由来、Note 9の「平行糸層の布」該当、コーティング等の有無 (世界税関機構)

1-2. 判定フロー

  • Step1:繊維の部(第11部)に残るか(プラスチック形状物、デンタルフロス等の除外を先に確認) (世界税関機構)
  • Step2:短繊維(第55類)ではなく、長繊維(フィラメント)か(トウは第55類へ) (世界税関機構)
  • Step3:縫糸か(5401の定義:重量・仕上げ・Z撚り) (世界税関機構)
  • Step4:縫糸でなければ、小売用の糸か(5406)/非小売用か(5402/5403) (世界税関機構)
  • Step5:合成(synthetic)か再生(artificial)かで 5402 と 5403、織物なら 5407 と 5408 を分ける (世界税関機構)
  • Step6:糸ではなくモノフィラメント/ストリップなら 5404(合成)/5405(再生)へ(67dtex・断面寸法・幅を確認) (世界税関機構)
  • Step7:織物なら 5407/5408 の中で「高強力」「ストリップ由来」「Note 9布」等の号を確認 (世界税関機構)
  • Step8:**タイヤコード織物(5902)目視できるコーティング(5903等)**など、59類に飛ばないか最終チェック (世界税関機構)

よく迷う境界例

  • 第54類(織物)↔ 第59類(産業用・コーティング布):タイヤコード織物(5902)、プラスチック含浸・被覆(5903)等 (世界税関機構)
  • 第54類(糸)↔ 第56類(ひも・ロープ):太さ(dtex)条件で“twine/cordage”扱いになり得る (世界税関機構)
  • 第54類(長繊維)↔ 第55類(短繊維・トウ):トウは54.02/54.03に含まれません (世界税関機構)

2. 主な項とその内容

2-1. 4桁の主なもの一覧表

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5401合成フィラメント縫糸ポリエステル縫糸、ナイロン縫糸(小巻)縫糸の定義(重量・仕上げ・Z撚り)を満たすか
5402合成フィラメント糸(縫糸除く、非小売用)工業用ナイロン糸、ポリエステル糸、POY小売用なら5406。高強力/伸縮糸等で号が分かれる
5403再生フィラメント糸(縫糸除く、非小売用)レーヨン糸、キュプラ糸小売用なら5406。高強力の定義に注意
5404合成モノフィラメント(67dtex以上・断面≦1mm)/合成ストリップ(幅≦5mm)ブラシ用モノフィラ、人工ストロー材断面寸法>1mmや幅>5mmは繊維から外れる可能性
5405再生モノフィラメント(67dtex以上・断面≦1mm)/再生ストリップ(幅≦5mm)レーヨン系のストリップ等54.05材料の織物は5408側に含み得る(見出しに明記)
5406人造繊維フィラメント糸(縫糸除く、小売用)手芸糸(小巻・玉巻)小売用の定義(包装形態・重量・例外)で決まる
5407合成フィラメント織物(54.04材料の織物含む)裏地、産業資材織物の一部5902(タイヤコード)・5903(コーティング)との境界。Note 9布は別号
5408再生フィラメント織物(54.05材料の織物含む)レーヨン織物、アセテート織物日本側備考でアセテート等の扱いに注意

出典:WCO HS2022 第54章(見出し)および日本の第54類注記。 (世界税関機構)

2-2. 6桁で実務上重要な分岐

重要な「定義・閾値」早見表

論点実務で効く基準どこに書いてあるか
縫糸(5401)複糸/ケーブル糸で、支持体込み重量≦1,000g、縫糸用に仕上げ、最終Z撚り部注(Section XI Note 5)
小売用(5406)包装形態(リール/玉/かせ等)+重量基準(例:人造長繊維糸は85g基準が頻出)+例外(工業用ボビン等は除外)部注(Section XI Note 4)
高強力(high tenacity)ナイロン/ポリエステル:単糸>60 cN/tex、複糸/ケーブル>53 cN/tex。ビスコース:>27 cN/tex部注(Section XI Note 6)
“ひも・ロープ扱い”人造繊維糸で 10,000dtex超 などは“twine/cordage”扱い(ただし例外あり)部注(Section XI Note 3)
elastomeric yarn合成繊維フィラメント(テクスチャード除く)で、3倍伸長で切れず、2倍伸長後5分以内に1.5倍以下まで戻る部注(Section XI Note 13)
ポリアミドの範囲polyamides に aramids を含む部注(Section XI Note 12)

出典:WCO HS2022 Section XI Notes(第11部注)。 (世界税関機構)

間違えやすい6桁ペア/グループ

  1. 5401(縫糸) vs 5402/5403(糸)
  • どこで分かれるか:縫糸の定義(1,000g、仕上げ、Z撚り)を満たすか (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:撚り方向(S/Z)、仕上げ(ワックス/樹脂等)、巻き重量(支持体込み)
  • 典型的な誤り:「縫製に使う予定」だけで縫糸扱いにしてしまう(実物の“縫糸仕様”が必要)
  1. 5406(小売用) vs 5402/5403(非小売用)
  • どこで分かれるか:包装形態と重量が定義内か、かつ例外(工業用支持体)に当たらないか (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:支持体込み重量、包装形態(リール/玉/かせ/分割かせ)、工業用ボビン形状の有無
  • 典型的な誤り:85g/125gだけ見て即断(「工業用形態なら除外」など例外条件を落とす)
  1. 5402/5403(糸) vs 5404/5405(モノフィラメント/ストリップ)
  • どこで分かれるか:モノフィラメントが 67dtex以上か、断面寸法が 1mm以下か。ストリップは見掛け幅 5mm以下か (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:dtex、断面寸法、見掛け幅、材質(合成/再生)
  1. 5402(太糸) vs 5607(ひも・ロープ)
  • どこで分かれるか:人造繊維糸が 10,000dtex超等で“twine/cordage”扱いになるか(例外あり) (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:dtex、単糸/複糸/ケーブル、モノフィラの束か、撚り(特に例外の有無)
  1. 5407(織物) vs 5902/5903(第59類)
  • どこで分かれるか:**タイヤコード織物(5902)**か/**プラスチック含浸・被覆が目視できる(5903)**等か (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:用途(タイヤ補強)、織物仕様、コーティングの種類・目視可否、積層構造

3. 部注と類注の詳細解釈

3-1. 関連する部注

  • ポイント要約
    • 部注3:一定条件の太い糸は“twine/cordage/ropes/cables”扱いにし、56類側へ寄せるルール(ただし例外あり) (世界税関機構)
    • 部注4:小売用の定義(包装・重量)と例外(工業用形態など) (世界税関機構)
    • 部注5:縫糸の定義(1,000g、仕上げ、Z撚り) (世界税関機構)
    • 部注6:高強力(high tenacity)判定のcN/tex閾値 (世界税関機構)
    • 部注9:平行糸層を接着・熱で結合した“織物”も織物として扱う(5407.30等) (世界税関機構)
    • 部注12:ポリアミドにアラミドを含む(= 5402.11等に効く) (世界税関機構)
    • 部注13:elastomeric yarn(伸縮糸)定義 (世界税関機構)
    • 部注8:Note 7の「made up(製品化)」に該当すると、原則として54章の織物・糸ではなく56〜63章側へ行く、という大枠 (世界税関機構)
  • 実務での意味(具体例つき)
    • 小巻で販売されていても、工業用コップ/コーン等“工業用途を示す形態”なら「小売用」から外れる可能性があります(5406に寄せない) (世界税関機構)
    • 高強力は「商品名」ではなく**tenacity(cN/tex)**で確定します。仕様書に“high tenacity”と書かれていても、閾値未達なら該当しません (世界税関機構)
    • 平行糸層の接着布(Note 9)は、見た目が“織り”っぽくなくても、定義に当てはまれば織物として扱われます (世界税関機構)
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン

3-2. この類の類注

  • ポイント要約
    • 類注1:人造繊維(man-made fibres)の定義。合成(synthetic)と再生(artificial)の区別を明示し、**54.04/54.05のストリップ類は“人造繊維とみなさない”**旨も書かれています (世界税関機構)
    • 類注2:54.02/54.03にトウ(第55類)を含まない (世界税関機構)
  • 用語定義
    • 合成繊維=有機単量体の重合等で得るもの(例:ポリエステル、ポリアミド等)/再生繊維=セルロース等を溶解・化学処理して得るもの(例:ビスコース、キュプラ、アセテート等) (世界税関機構)
  • 除外規定

4. 類注が分類に与える影響

この章の目的は「類注・部注があるからこそ起きる分岐」を見える化することです。

  • 影響ポイント1:縫糸か否かで 5401 と 5402/5403 が割れる
    • 何を見れば判断できるか:支持体込み重量≦1,000g、縫糸用仕上げ、最終Z撚り (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:撚り方向写真、仕様書(仕上げ)、包装重量の実測、製品カタログ
    • 誤分類の典型:「縫製に使うから縫糸」→ 実物が工業糸(未仕上げ/撚り条件不一致)で5402が正しい
  • 影響ポイント2:小売用定義で 5406 と 5402/5403 が割れる
    • 何を見れば判断できるか:包装形態(リール/玉/かせ等)と重量、例外(工業用形態) (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:包装写真、支持体込み重量、巻き取り形状(コップ/コーン/ピルン等)、販売形態(一般消費者向けか工業向けか)
    • 誤分類の典型:重量だけで5406扱い→ 工業用途を示す支持体で例外に該当し、5402/5403に戻る
  • 影響ポイント3:高強力判定で 5402/5403 の号が変わる
    • 何を見れば判断できるか:cN/texの閾値(単糸・複糸で閾値が違う) (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:試験成績書、メーカー仕様(denier→tex換算根拠含む)、糸構成(単糸/複糸/ケーブル)
    • 誤分類の典型:「強い=高強力」→ 閾値未達/単糸・複糸の区別漏れ
  • 影響ポイント4:モノフィラ/ストリップの閾値で 5404/5405 へ飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか:67dtex、断面寸法≦1mm、見掛け幅≦5mm (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:図面、ノギス測定、dtexデータ、サンプル写真
    • 誤分類の典型:モノフィラを“糸”として5402へ → 67dtex以上なら5404側の可能性
  • 影響ポイント5:Note 9布の定義で 5407.30 等に割れる
    • 何を見れば判断できるか:平行糸層を接着/熱で結合しているか (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:製造工程図、断面観察、接着剤の有無(MSDS等)
    • 誤分類の典型:見た目が織物っぽくない→ Note 9該当を見落とす

5. 分類でよくある間違い

  1. 間違い:縫糸を5402/5403で申告
    • なぜ起きる:インボイス品名が “polyester filament yarn” 等で縫糸用途が書かれない
    • 正しい考え方:縫糸は定義(Note 5)で決まる (世界税関機構)
    • 予防策:撚り方向(Z)・仕上げ有無・支持体込み重量を仕様書に明記
  2. 間違い:小巻(小売用)を5402/5403で申告
    • なぜ起きる:小売用の定義を「小さい巻き=小売用」と誤解
    • 正しい考え方:包装形態と重量、例外まで含めてNote 4で判定 (世界税関機構)
    • 予防策:包装写真、支持体込み重量、巻き形状(コーン/コップ等)を提出資料化
  3. 間違い:工業用コーン巻きを5406(小売用)にしてしまう
    • なぜ起きる:重量基準だけ満たしているように見える
    • 正しい考え方:工業用途を示す支持体・形態は例外になり得る (世界税関機構)
    • 予防策:包装形態の説明(cops, cones等)をインボイスに追記、カタログ添付
  4. 間違い:太番手糸を5402のままにする(実は56類相当)
    • なぜ起きる:dtexを確認せず、糸=54章と決め打ち
    • 正しい考え方:一定条件でtwine/cordage扱い(Note 3)。ただし例外も必ず確認 (世界税関機構)
    • 予防策:dtex、撚り、構成(単糸/複糸/ケーブル)を社内で標準取得
  5. 間違い:モノフィラメントを5402で申告
    • なぜ起きる:“monofilament yarn”という呼び方に引きずられる
    • 正しい考え方:67dtex以上・断面寸法≦1mmなら5404/5405側が基本 (世界税関機構)
    • 予防策:断面寸法・dtexの数値を仕様書に必須項目化
  6. 間違い:コーティング織物を5407/5408で申告
    • なぜ起きる:基材が54章織物なので、そのまま申告しがち
    • 正しい考え方:5902(タイヤコード)や5903(プラスチック含浸・被覆等)など、59類が別建て (世界税関機構)
    • 予防策:コーティングの種類、目視可否、用途(タイヤ補強等)をヒアリング
  7. 間違い:レーヨンを合成繊維として扱い5402へ
    • なぜ起きる:“人工=合成”の誤解
    • 正しい考え方:合成(synthetic)と再生(artificial)の区分は類注で決まる (世界税関機構)
    • 予防策:原料ポリマー(セルロース系か)をMSDS/原料証明で確認
  8. 間違い:アラミドをポリアミド扱いから外してしまう
    • なぜ起きる:商品名(aramid)で別素材と誤認
    • 正しい考え方:部注12でpolyamidesにaramidsを含む (世界税関機構)
    • 予防策:材質表記に「aramid=polyamideの一種」注記、メーカー資料添付

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSRの関係

  • HSの付番(少なくとも6桁)が、PSR(品目別規則)の検索キーになります。誤分類すると、材料側HS・工程評価・RVC計算が全部ずれます。 (税関総合情報)
  • 典型的な落とし穴
    • 原料(ポリマー/チップ)と糸・織物のHSを混同
    • 小売用(5406)と非小売用(5402/5403)を取り違え、PSRが変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い

実務では「自社の申告HS(通常は最新運用)」と「協定附属書が参照するHS版」がズレることがあります。

  • 日EU・EPA:PSR表の列見出しに「Harmonized System classification (2017)」と明記されています
  • CPTPP(TPP11):PSRの見出しに「HS Classification (HS2012)」と明記されています (内閣官房)
  • RCEP:HS2022に置換されたPSRが2022年6月30日に採択され、2023年1月1日から実施と明記されています (税関総合情報)

ズレる場合の注意(一般論)

  • 協定が旧HS版参照の場合、**相関表(トランスポジション)**で旧→新の対応付けをしてからPSR適用を検討します。
  • HS2012→HS2017では54.02の一部に新設号(例:5402.53、5402.63)があり、旧版の“その他”から分岐したことが示されています。 (税関総合情報)

6-3. 実務チェック

  • そろえるデータ
    • BOM(材料表)、原価、工程フロー、原産国、非原産材料のHS、糸/織物の仕様(dtex、tenacity、包装形態)
  • 書類(一般論)
    • 原産地証明書類・自己申告の根拠資料、保存要件に沿った保管(協定・国で異なるため最新確認)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い

7-1. 変更点サマリー

比較変更タイプ該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし第54類(5401〜5408)見出し・注に実質的な改正は確認されませんHS6桁運用は原則同様。国内コードや協定参照HS版のズレには別途注意

根拠:WCO HS2017とHS2022の第54章本文(見出し・注)を突合すると同一であることを確認。 (世界税関機構)

7-2. 違うことになった根拠

  • 第54章について、WCOのHS2017版とHS2022版の章本文(NotesとHeadings)を比較し、見出し構造(5401〜5408)および章注が一致することから「HS2017→HS2022での変更なし」と整理しています。 (世界税関機構)
  • ただし、**国内コード(8桁/9桁等)**は国ごとに改正があり得るため、日本の統計番号・税率等は別途最新表で確認してください(HS6桁と混同しない)。 (税関総合情報)

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第54類は、HS2007→2012→2017→2022の流れで「章立ての大枠」は安定していますが、HS2012→HS2017で54.02の一部に新設号が確認できます。

期間主な追加・削除・再編旧コード→新コードの例
HS2007→HS2012第54類で大きな再編は確認されません― (世界税関機構)
HS2012→HS20175402.53(単糸・PP)と5402.63(複糸・PP)を新設旧:ex5402.59 → 新:5402.53(一定範囲)/旧:ex5402.69 → 新:5402.63(一定範囲) (税関総合情報)
HS2017→HS2022第54類で大きな再編は確認されません― (世界税関機構)

補足:ここでの“ex”は「旧号の一部が新号へ移る」ことを示す一般的な表現です(相関表の書き方)。 (税関総合情報)


9. 類注違反による通関トラブル

  • 事例名:縫糸要件未確認で5401申告
    • 誤りの内容:Note 5(縫糸定義)を満たさない糸を縫糸扱い (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が“sewing yarn”など曖昧
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延(一般論)
    • 予防策:撚り方向・仕上げ・重量の根拠資料を事前に揃える
  • 事例名:小売用の例外を落として5406申告
    • 誤りの内容:Note 4(小売用定義)の例外(工業用形態)を無視 (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:重量基準だけで判断、写真なし
    • 典型的な影響:差戻し・補正、到着後の用途確認要求(一般論)
    • 予防策:包装写真・支持体形状をインボイス/明細に明記
  • 事例名:太糸のロープ扱い(56類)を見落として54類申告
    • 誤りの内容:Note 3(twine/cordage定義)未確認 (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:dtexデータが社内にない、単糸/複糸不明
    • 典型的な影響:統計誤り、規制・原産地判断のやり直し(一般論)
    • 予防策:dtex・構成・撚りの標準取得
  • 事例名:コーティング織物を5407のまま申告
    • 誤りの内容:第59類 5903等の対象(含浸・被覆)を見落とし (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:基材が54類なので思考停止
    • 典型的な影響:差戻し、サンプル提出、通関遅延(一般論)
    • 予防策:コーティング仕様(目視可否)を仕様書で提示

10. 輸出入規制事項

日本前提で、第54類に関係しやすい「実務上の注意点」を挙げます(該当する場合のみ確認してください)。

  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第54類自体は食品・動植物ではないため、一般にSPSの中心領域ではありません(ただし最終製品用途によって別途あり得ます)。
  • その他の許認可・届出
    • 有害物質を含有する家庭用品の規制:家庭用繊維製品等について、アゾ化合物(特定芳香族アミン生成)などの基準が整理されています。対象品目・試験法・基準値はMHLW資料で確認が必要です。 (e-Gov 法令検索)
    • 家庭用品品質表示(繊維製品の表示):国内販売向けでは、繊維組成・取扱い方法等の表示ルールが規程・ガイドで示されています。 (e-Gov 法令検索)
    • 安全保障貿易管理(輸出):高性能繊維等は、HSではなく仕様(性能・用途等)で該当性を確認する必要があるため、METIの最新リスト・解釈資料で確認してください。 (e-Gov 法令検索)
  • 確認先
  • 実務での準備物(一般論)
    • 繊維:組成証明、染料/加工剤情報、試験成績書(必要時)
    • 糸/モノフィラ:dtex、tenacity、断面寸法、包装形態資料
    • 織物:コーティング仕様、用途説明、工程フロー

11. 実務チェックリスト

  • 分類前チェック
    • 材質(合成/再生)、糸構成(単糸/複糸/ケーブル)、dtex、tenacity、撚り方向、モノフィラ寸法、ストリップ幅
    • 包装形態(リール/玉/かせ/コーン/コップ)、支持体込み重量
  • 分類後チェック
    • 部注3/4/5/6/9/12/13の該当性(twine、小売用、縫糸、高強力、Note 9布、アラミド、伸縮糸) (世界税関機構)
    • 59類(5902/5903等)への飛びを再確認 (世界税関機構)
  • 申告前チェック
    • インボイス品名に「材質+形状+用途+規格(dtex/tenacity/寸法/包装)」を入れる
    • 補足資料(仕様書・写真・工程図)を同梱できる体制
  • FTA/EPAチェック
    • 協定が参照するHS版を確認し、必要なら相関表で照合
    • BOM、原価、工程、原産国、非原産材料HS、RVC計算根拠
  • 規制チェック

12. 参考資料

  • WCO(HS2022条文)
  • 日本税関・公的機関
  • FTA/EPA本文・付属書
    • 日EU・EPA:Annex 3-A/PSR表(HS classification (2017) 表記)
    • CPTPP:Annex 3-D(HS Classification (HS2012) 表記) (内閣官房)
    • RCEP:Transposed PSR in HS2022(採択日・実施日明記) (税関総合情報)
  • 規制(日本)
    • 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(e-Gov) (e-Gov 法令検索)
    • 規制基準概要(MHLW) (厚生労働省)
    • 家庭用品品質表示法(e-Gov)および繊維製品品質表示規程・ガイド(消費者庁) (e-Gov 法令検索)
    • 参照日:2026-02-23

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

関税データAPIの現状と即効改善策

信頼性を最短で業務成果に変える、実務者のための設計と運用

本稿は、2026年2月23日時点で公開されている公的機関の一次情報を中心に、記述の根拠を確認し直したうえで、誤解が生まれやすい点を修正し、実務上追加すべき観点を補って再構成したものです。日本税関の関税率表は参照用である旨が明記されているため、データを扱う側は、数値の正しさを主張するよりも、根拠と前提を機械的に提示できる設計を優先すべきです。 (税関総合情報)

1. なぜ関税データAPIが経営インフラになるのか

関税データAPIは、貿易部門の省力化ツールに留まりません。輸入原価の精度が上がれば、価格決定、粗利管理、調達先比較、見積もり回答、納期回答の精度が連鎖的に上がります。一方で、関税率の適用日違い、例外条件の見落とし、原産地や追加関税の取りこぼしは、追加納税や通関遅延として後から顕在化し、利益だけでなく信用も毀損します。

そのため、ビジネス向けの関税データAPIは、検索の速さよりも、説明可能性、更新追随性、監査耐性が価値の中心になります。

2. まず押さえるべき関税データの正体

2-1. 税率は単一のパーセントではない

関税率は、従価税だけでなく、従量税や混合税、条件付きの税率があり、必要な入力(重量、数量単位、価格帯など)が変わります。したがってAPIは、税率の数値だけでなく、税率の型と計算に必要な単位情報までをデータとして返す必要があります。

2-2. 適用日は必須パラメータである

関税は、いつ輸入申告するかで適用法令や税率が変わり得ます。日本の制度でも、外貨換算に用いる為替相場は「輸入申告の日」を基準に適用される旨が示され、かつ当該週の前々週平均を基に週次で公表されると説明されています。 (税関総合情報)
この構造上、APIが「今日の税率」を返す設計のままだと、見積もり日と申告日のズレで計算が崩れます。

さらに、法令適用の基準日を前提にする設計は、後述する版管理と監査ログの土台になります。

2-3. HSは共通6桁、国や地域で枝分かれする

HSは国際的に共通の分類基盤ですが、各国はその上に独自の細分を持ちます。EUでは、HSを基にした8桁のCombined Nomenclature(CN)を用い、関税と統計の目的に使うと説明されています。 (Taxation and Customs Union)
また、CNは毎年改正があると、EU加盟国の税関当局の案内でも説明されています。 (Tulli Tilastot)

このため、グローバル対応の関税データAPIは、HS6桁に集約して済ませるのではなく、国別の番号体系と改正サイクルを前提にした設計が必要です。

2-4. HS改正は原則5年ごと、ただし例外がある

世界税関機構は、HSは5年ごとに改正されると説明しています。 (wcoomd.org)
一方、HS2028については、通常5年サイクルだが、COVID-19の影響を受けた議論を収束させるために第7次レビューサイクルが例外的に6年(2019年7月から2025年6月)に延長されたこと、さらに改正内容の規模(見出し・小見出しの増減等)も公表されています。 (wcoomd.org)

この事実は、関税データAPIにとって重要です。改正は定期イベントであり、例外も起こるため、版管理と移行設計を持たないAPIは、改正のたびに業務停止リスクを抱えます。

2-5. 適用税率と拘束税率を混同すると、リスク評価が崩れる

WTOは、加盟国が実際に課している税率(適用税率)と、上限として約束している税率(拘束税率)の両方があること、適用税率は拘束税率より低い場合があることを説明しています。 (WTO)
関税データAPIがどちらを返しているか曖昧だと、原価計算だけでなく、将来の関税引上げ余地を織り込んだリスク評価も誤ります。

2-6. 追加関税は例外ではなく、現実に存在する

財務省は、貿易救済制度を、特定条件下で関税に加えて追加関税を課す制度として整理し、報復関税、相殺関税、アンチダンピング関税、セーフガードなどを含むと説明しています。 (財務省)
EUでも、TARICがEUの統合関税データベースとして、関税だけでなく商業・農業関連の措置も統合していると説明されています。 (Taxation and Customs Union)

つまり、通常関税だけを返すAPIは、価格と供給計画の意思決定に必要な情報が欠けやすい構造です。

3. 関税データAPIがつまずく典型パターン

3-1. 参照用データを確定値として扱う

日本税関の英語版関税率表には、参照用であり公式用途ではない旨が明記されています。 (税関総合情報)
日本語版の案内でも、掲載している実行関税率表は参考として利用する旨が記載されています。 (税関総合情報)

この注意書きがある以上、API側も利用側も、参照値と確定値を分離し、出典と根拠を追える形にしない限り、監査や稟議に耐えません。

3-2. 更新頻度を過小評価して鮮度負けする

日本税関の関税率表の入口ページには、複数の発効日版が並んでいます。 (税関総合情報)
この実態に対して、月次や年次一括更新の思想のままだと、現場はすぐに使わなくなります。

3-3. 例外条件を文字列として返し、判定不能になる

関税率表は、但し書き、適用条件、除外規定が価値の中心です。例外をテキスト注釈として返すだけでは、システムが判断できず、人手確認に戻ります。ここがAPI導入が定着しない最大要因の一つです。

3-4. 分類支援がなく、税率が正しくても結果が間違う

分類が揺れれば、税率が正しくても課税は誤ります。世界税関機構は、Explanatory Notesが見出しの範囲、含まれる品目、除外される品目、技術的説明、識別のための実務ガイダンスを提供すると説明しています。 (wcoomd.org)
さらに、Explanatory NotesはHSの公式解釈であり、HSを補完する不可欠な資料である旨も示されています。 (wcoomd.org)

関税データAPIは、税率検索だけでなく、分類の根拠へ到達できる導線を設計に含めないと、誤分類リスクを下げられません。

3-5. 原産地と協定税率を後回しにして、使い物にならない

関税率のうち実務で差が出るのは、MFNだけではありません。EPAなどの協定税率は、原産地要件と証明に依存します。日本税関は、輸入前に税番と税率について照会し回答を得る事前教示制度が、原価計算の正確化や販売計画、通関の円滑化に資する旨を説明しています。 (税関総合情報)

重要品目の確定を制度と結びつけないAPIは、結局「参考検索」で止まりやすいのが実態です。

3-6. 為替換算と輸入時課税を扱わず、着地原価が合わない

日本税関は、外貨から円への換算に用いる為替相場の考え方を示しており、輸入申告日を基準とした週次公表であることを説明しています。 (税関総合情報)
また、輸入時の関税や消費税等の計算方法も、税関のFAQで具体的に示されています。 (税関総合情報)

関税データAPIが原価計算に使われるなら、税率だけでは足りず、前提(申告日、課税価格、換算レート、端数処理、税率区分)をデータとして扱う必要があります。

4. 即効改善策

ここからは、全面刷新ではなく、短期間で効果が出やすい順番で整理します。狙いは、正しい値を断言することではなく、業務が安心して使える形に変えることです。

4-1. 最優先は、根拠と前提を返す設計に変える

APIレスポンスの必須項目として、次を固定してください。

・有効開始日と有効終了日(不明なら空欄)
・適用日の基準(輸入申告日など)
・版情報(発効日版、改正識別子)
・出典(参照した公的資料の識別情報)
・税率の型(従価、従量、混合、条件付き)
・数量単位や補助単位(必要な場合)
・参照用である旨の注意情報

日本税関の関税率表が参照用である旨を明記している以上、注意情報をデータとして返さない設計は、ガバナンス上の欠陥になります。 (税関総合情報)

4-2. 日付クエリを標準化する

関税率は「いつの時点の適用か」が核心です。APIは次のパラメータを標準にしてください。

・想定輸入申告日
・入港日や通関予定日(任意)
・契約インコタームズや費用要素(課税価格モデル側の入力)

為替換算が申告日を基準にするという説明がある以上、日付入力なしに原価を計算するAPIは、設計として成立しません。 (税関総合情報)

4-3. 差分配信と変更検知を標準機能にする

更新のたびに全件再取り込みをしている限り、検証コストは逓増します。差分配信は運用コストを最も下げる即効策です。

・変更された税番の一覧
・税率や条件の前後差分
・影響範囲(国、税番、制度区分)
・無効化、統合、分割などの分類変更タイプ

HS2028では見出しや小見出しの増減を含む大規模改正が示されており、改正対応は必ず発生します。 (wcoomd.org)

4-4. 例外条件を構造化し、判定可能にする

例外条件は、テキストではなくルールとして扱う必要があります。最低限、次の分解を推奨します。

・条件の種類(用途、材質、価格帯、季節、原産地、数量枠など)
・機械判定用の条件式
・人が読める説明文
・根拠参照(条文、注釈、告示番号など)
・優先順位と競合時ルール

この構造ができると、後から原産地判定や追加関税判定を統合するときの手戻りが激減します。

4-5. 分類支援を製品機能として提供する

税率検索だけでは誤分類を減らせません。分類支援として、次の導線を用意してください。

・見出しの範囲と含除の参照
・類似品目の比較ポイント
・社内の過去判断と根拠資料の紐付け
・不確実性がある場合のフラグ付けとエスカレーション

Explanatory Notesが、含除や技術的説明、識別ガイダンスを提供するという一次情報を踏まえると、分類支援の欠落は設計上の未完成を意味します。 (wcoomd.org)

4-6. 事前教示を社内の確定値として取り込む

日本税関の事前教示制度は、輸入前に税番と税率を照会し回答を得ることで、原価計算の正確化や販売計画、通関の円滑化につながると説明しています。 (税関総合情報)
また、制度の運用面では、書面での回答等が税関審査で尊重される旨も案内されています。 (税関総合情報)

実務で効く最短ループは次のとおりです。

・重要品目は事前教示で確定させる
・回答を社内マスタに登録し、APIの最優先ソースにする
・参照データは補助として扱う
・確定値には有効期間、根拠資料、適用条件を必ず紐付ける

これにより、分類ぶれと再発が大きく減ります。

4-7. 輸入時課税と為替換算を、前提付きで扱う

日本税関は、為替換算の基準(申告日基準、前々週平均、週次公表)を説明しています。 (税関総合情報)
また、関税と消費税等の計算方法を示しています。 (税関総合情報)

APIとしては、次の方針が安全です。

・計算結果だけ返さず、計算に用いた前提を必ず返す
・前提が不足している場合は、推測計算しない
・端数処理を含めて、計算過程を監査ログとして保持する

着地原価で責任を持つなら、この設計が最短で効きます。

4-8. 追加関税と統合関税の情報を同じ導線で見せる

財務省が説明するように、貿易救済は関税に加えて追加関税を課す制度です。 (財務省)
EUでも、TARICが関税と各種措置を統合し、輸出入時に必要な措置を一望できるようにする目的が説明されています。 (Taxation and Customs Union)

即効策は単純です。税番検索の結果画面に、通常関税だけでなく、追加関税や措置情報の有無を必ず表示し、見落としを構造的に防ぐことです。

4-9. 標準データモデルに寄せ、取り違え事故を減らす

世界税関機構は、WCO Data Modelを国境を越えるデータ交換の共通言語として位置付け、Single Window等の実装を支えると説明しています。 (wcoomd.org)
EUも、EU Customs Data ModelがWCOのデータマッピングツールを前提に設計されていると説明しています。 (Taxation and Customs Union)

関税データAPIの項目定義を、税率、単位、有効期間、措置区分、原産地などの意味がぶれない形に揃えるだけで、運用事故は目に見えて減ります。

5. 実務で回る最短ロードマップ

5-1. 2週間で効く改善

・有効期間、適用日基準、版情報、出典、税率型、単位をレスポンスに追加
・参照用である注意情報をデータとして返す
・最低限の妥当性チェック(桁数、単位、有効期間重複)を自動化
・不足情報は不足として返し、推測計算しない

5-2. 3か月で効く改善

・差分配信と変更検知
・例外条件の構造化
・事前教示の社内マスタ統合
・為替換算と輸入時課税の前提付き計算枠

5-3. 半年で効く改善

・原産地と協定税率のワークフロー統合
・追加関税や措置情報との統合表示
・WCO Data Model等を参照したデータ項目再設計 (wcoomd.org)

6. 経営に説明できるKPI

関税データAPIの投資対効果は、機能数より品質の説明責任で決まります。経営に通る指標は次です。

・鮮度:改正から反映までの時間
・正確性:重大誤り件数と再発率
・追跡可能性:出典と根拠まで辿れる割合
・網羅性:対象国、税番範囲、例外条件、措置情報の対応率
・業務効果:見積もり工数、通関差戻し、追加納税や遅延の削減

7. まとめ

関税データAPIの成功条件は、税率を速く返すことではなく、根拠と前提を機械的に提示できることです。日本税関の関税率表が参照用である旨を明記している以上、出典、版、有効期間、注意情報を返す設計が最優先になります。 (税関総合情報)
そのうえで、更新の実態に合わせた差分配信、例外条件の構造化、分類支援、原産地や追加関税の統合、為替換算と輸入時課税の前提管理まで踏み込むと、関税データAPIは現場の意思決定に耐える経営インフラになります。

免責事項

本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定の取引や品目に対する法務、税務、通関実務上の助言を構成するものではありません。実際の輸出入申告、分類、原産地判断、税率適用、課税計算、追加関税や各種措置の適用可否は、最新の法令および公的機関が公表する一次情報に基づき、必要に応じて通関士、弁護士、税理士等の専門家へ相談のうえでご判断ください。

センサー・計測機器のHSコード分類を国際裁定で読み解く



EU・米国・日本を横串で比較する実務ガイド

センサーや計測機器は、製造業の競争力を左右する中核部品である一方で、HSコードの解釈が揺れやすい分野でもあります。誤った分類は、関税コストの想定違いにとどまらず、FTAの原産地判定、輸入規制の該当性、顧客への価格提示、契約条件に連鎖して影響します。

本記事では、ビジネスマンが意思決定に使える形で、センサー・計測機器の分類を国際裁定比較の視点で深掘りします。EUのBTI(Binding Tariff Information)、米国CBPのルーリング、日本税関の事前教示を中心に、制度の差と読み解き方、社内判断への落とし込みまでを整理します。


1. 国際裁定比較とは何か

1-1. 裁定や事前教示は、どこまで頼れるのか

関税分類の裁定や事前教示は、税関当局が特定の貨物について輸入前に文書で取扱いを示す制度です。申請者が提出した事実関係を前提に、一定条件の下で当局側の取扱いを拘束または強く拘束的に運用する仕組みとして位置づけられています。

ただし、最も重要な前提はこれです。

裁定や事前教示は、他社品の結論を自社品へ機械的に当てはめるための道具ではありません。自社品の仕様、輸入形態、同梱物、機能範囲が一致して初めて参考になります。

加えて、米国CBPのルーリングは、申請した当事者との関係においてのみCBPを拘束します 。他の輸入者が類似製品を輸入する場合に自動的に適用されるわけではありませんが、公開先例として分類の根拠を支える有力な参照材料となります。[cbsa-asfc.gc]​

1-2. なぜ国際裁定比較がビジネスで効くのか

国際裁定比較が効く理由は、結論そのものよりも、結論に至る論点を抽出できるからです。

1つの国の判断だけを見ていると、分類が揺れる要因が見えにくいことがあります。複数国の判断を並べると、どの機能や構造が分岐点になるのか、どの説明が弱点になり得るのかが浮き彫りになります。結果として、事前教示を取るべき国、必要資料の優先順位、契約や価格に織り込むべき不確実性を整理しやすくなります。


2. センサー・計測機器で分類が揺れやすい理由

センサーと計測機器が難しいのは、「測る」「変換する」「記録する」「通信する」「制御する」機能が一体化しやすいからです。特に次の論点が、国や担当官によって判断が割れやすいポイントです。

  • 測定か、制御か
  • 何を測っているか(流体・気体の変量か、電気量か、物理・化学分析か)
  • 電気量の測定か、非電気量の測定か
  • 単体製品か、部品か
  • 複合機能品の主要機能は何か

現場でよく起きるのは、設計側の意図は測定であっても、製品としては制御ロジックを内蔵し、設定値と比較して自動で出力を変える領域に踏み込んでいるケースです。この瞬間に、分類の候補が大きく変わります。

2-1. センサー・計測機器に関連する主要HS見出し

分類判断を始める前に、候補見出しの全体像を押さえることが実務の基本です。以下は、センサー・計測機器の検討において頻出するHS見出しです 。tsukanshi+1

HS見出し品目内容(概要)
9025液体用温度計、気圧計、湿度計など
9026流量、液位、圧力その他の変量の測定用または検査用の機器(例:流量計、マノメーター、熱流量計)
9027物理分析用または化学分析用の機器(例:分光計、ガス分析器)、粘度・多孔度等の測定機器
9028ガスメーター、液体メーター、電力量計等(供給量・消費量の計量用メーター)
9030電気量(電圧・電流・周波数等)の測定または検査用の機器(例:電圧計、電流計、オシロスコープ)
9031他のいずれの見出しにも含まれない測定または検査用の機器(例:座標測定機、非接触センサーを使った長さ・角度測定機器)
9032自動調整用または自動制御用の機器(例:温度調節器、自動制御弁、PIDコントローラー)
8542電子集積回路(センサー機能内蔵ICを含む)
8543電気機器(他の見出しに含まれないもの。例:電気式変換器、トランスデューサー)

第90類の注3では、電気量を測定する機器は原則として第9030項に分類されると明記されています 。また、センサー機能を内蔵した集積回路(IC)については、WCO(世界関税機構)が2024年3月の第73回HS委員会において、測定機器(第90類)ではなく電子集積回路(第8542項)として分類する意見を採択しています 。設計上はセンサーでも、ICとして製造・輸入される場合は第85類が優先されます(後述 5-4 参照)。jaftas+1


3. 主要国の裁定制度を、拘束力と使いどころで整理する

制度を並べる前に、押さえるべき実務観点は2つです。

1つ目は、どこまで拘束力があるか。
2つ目は、公開情報としてどれだけ参照できるか。

以下は、代表的制度の比較です。

国・地域制度名ビジネス上の使いどころ有効期間公開性
EUBTI(Binding Tariff Information)EU域内のすべての税関で一貫した分類が可能。域内複数国に輸出入がある企業に効く。3年間(2016年5月のUCC施行以降。以前は6年間) taxation-customs.ec.europa+1EBTIデータベース(公開)で参照可能 [taxation-customs.ec.europa]​
米国CBPルーリング申請者との関係でCBPを拘束。第三者への直接拘束力はないが、CROSS(公開検索システム)で膨大な先例を参照できる [cbsa-asfc.gc]​。固定期限なし(改廃まで有効)CROSSで多数参照可能
日本事前教示(文書回答)通関審査において文書内容が尊重され、全国で扱いを揃えやすい [customs.go]​。発出日から原則3年間 [customs.go]​税関ウェブサイトで公開検索が可能
カナダAdvance Ruling(CBSA)条件を満たせば申請者に対して拘束的。北米サプライチェーンで有効。固定期限なし(重要事実・適用法令が変わらず、かつ改廃されない限り有効) cbsa-asfc+1公開の扱いあり
英国Advance Tariff Ruling(ATaR、HMRC)Brexit後、2021年1月1日から新設(EU BTIに代わる制度)[barbournebrook.co]​。コモディティコードを事前確定し、見積や契約に使いやすい。3年間(HMRCが30〜120日以内に回答) gov+1HMRC制度案内が明確
豪州Tariff Advice(ABF)特定品目の事前分類確定として活用しやすい。5年間(申請日から) abf.gov+1ABF制度案内が明確

EUのBTIは、UCC(Union Customs Code)の実体規定が2016年5月1日に施行されたことで有効期間が6年から3年に短縮されています 。カナダのAdvance Rulingは有効期限が設定されておらず、「重要事実・法令の変化がない限り継続有効」という仕組みです 。英国のATaRはEU離脱に伴い2021年1月1日から導入された独自制度です 。目的と市場に応じた使い分けが重要です。taxation-customs.ec.europa+3


4. 国際裁定比較を、再現性ある社内プロセスにする

国際裁定比較で一番ありがちな失敗は、似た案件を見つけた時点で結論に飛びつくことです。分類は、仕様差が1つあるだけで結論が変わります。比較を意思決定に耐える形へ落とすには、次の順で進めるのが安全です。

4-1. ステップ1 分類仕様書を作る

エンジニア資料をそのまま税関言語に翻訳すると抜け漏れが出ます。分類専用の仕様書で、最低限次を固定します。

  • 測定対象
  • 測定原理
  • 出力形式
  • 機能範囲(測定のみ、記録、表示、演算、判定、制御信号出力、アクチュエータ駆動)
  • 同梱物
  • 輸入形態(IC単体、センサーモジュール、制御ユニット組込品、セット、基板、ユニット)

4-2. ステップ2 候補見出しを争点別に並べる

候補を単に羅列するのではなく、争点に紐づけます。

  • 流体や気体の特定変数の測定が中心か(→第9026項候補)[tsukanshi]​
  • 電気量の測定・検査が中心か(→第9030項候補)[jaftas]​
  • 他に当てはまらない一般の測定・検査か(→第9031項候補)[jaftas]​
  • 自動で調整・制御する機能が主要か(→第9032項候補)
  • センサー機能を内蔵したICとして製造されているか(→第8542項候補)[global-scm]​

この整理は、製品説明資料の書き方にも直結します。説明が曖昧だと、分類だけでなく通関審査の照会や追加資料要求も増えます。

4-3. ステップ3 裁定の比較可能性をチェックする

国際裁定比較では、次のチェックに合格して初めて参考にできます。

  • 同一性:機能、構造、輸入形態が実質的に同じか
  • 時点:解釈変更や改正(HS改正・法令改正・WCO分類意見の採択)の前後ではないか
  • 拘束範囲:どこまで拘束される決定か(申請者限定か、第三者参照か)[cbsa-asfc.gc]​
  • 条件:前提条件や限定事項が付いていないか
  • 改廃:無効化、撤回、修正がないか[taxation-customs.ec.europa]​

4-4. ステップ4 結論は事前教示取得の要否に落とす

比較の目的は、机上で最適解を当てることではありません。目的は、追加課税、通関遅延、契約トラブルを避けるために、どの国で事前教示を取るべきかを決めることです。

取引規模が大きい、輸入者責任が重い、顧客契約が厳しい、FTA適用を確実にしたい。こうした条件がある場合、文書で固める価値が上がります。


5. 境界論点を、裁定比較の視点で深掘りする

5-1. 測定か制御か センサーが制御側へ寄る瞬間

測定値を出すだけのセンサーと、設定値と比較して自動で出力を変える機能を持つ製品では、分類の候補が変わります(第9026項等の測定機器から、第9032項の自動調整・制御機器へ)。特に次の要素があると、制御機能と評価される可能性が上がります。

  • 設定値を保持し、測定値と比較する機能
  • 制御信号を生成し、外部機器へ出力する機能
  • アクチュエータを直接駆動する構成
  • 制御の主要機能が本体で完結している

社内では、仕様書に制御の役割分担を明記し、製品の主要機能が測定なのか制御なのかを言語化することが重要です。

5-2. 電気量の測定か データ解析か

高度化した計測機器は、信号処理やデータ解析を伴います。ここで重要なのは、何を測っているのかを明確にすることです。

  • 電圧、電流、抵抗、周波数などの電気量を測る機器なのか(→第9030項)[jaftas]​
  • 電気信号を入力として、対象物の状態や品質を検査する機器なのか(→第9026項、第9027項、第9031項等)tsukanshi+1
  • ネットワークデータやログを分析して、運用状態を可視化する機器なのか(→第8471項等も視野)

同じように見える機器でも、説明の焦点が変わると候補見出しの順番が変わります。裁定比較では、結論の番号以上に、当局が何を測定対象と捉えたのかを読み取ることが肝になります。

5-3. 部品か機器か 単体センサーと組込み品の扱い

センサー単体、センサーモジュール、制御ユニットに組み込まれた状態では、同じ技術でも分類が変わり得ます。裁定を引用する場合は、輸入形態が一致しているかを必ず確認します。

特に部品扱いでは、専用性が鍵になります。汎用品として他用途にも広く使えるのか、特定機器に専用に使うことが前提なのかで、説明と根拠資料の作り方が変わります。

5-4. センサー機能内蔵ICの新たな分類基準

WCOは2024年3月の第73回HS委員会において、「Dual-die Hall sensor integrated circuit(IC)」をHS 8542.39(電子集積回路:その他)に分類する分類意見を採択しました 。第85類注12(b)(iii)とGIR1・GIR6を根拠として、以下の構造条件を満たすものが8542.39に分類されると示されています 。[global-scm]​

  • 1パッケージ内に2つのセンサーを内蔵した冗長構成であること
  • 各センサーが電気的に非接続であること
  • 追加の能動素子・受動素子等が組み付けられていないこと

この判断が実務に与えるインパクトは、製品の「階層」によって変わります 。[global-scm]​

  • ICとして完結している段階:第8542項(電子集積回路)が優先
  • 基板実装・他素子と一体化したモジュール段階:第8543項(トランスデューサー等)や第90類が候補
  • 機器・ユニットとして組み込まれた段階:機器全体の主機能・章注・部分品規定が判断軸になる

なお、WCO分類意見は各国の実装状況によってタイムラグや例外が生じる場合があります 。主要仕向地ごとに当局の公表資料や事前教示で運用を確認することが、リスクを閉じる最終手段です。[global-scm]​


6. 経営判断に落とすための実務ポイント

6-1. 価格と契約に効く分類の不確実性の扱い

分類が揺れている段階で価格を固定すると、利益が後から削れます。裁定比較で論点が見えたら、次のどれで扱うかを決めます。

  • 主要市場で事前教示を取得し、分類を固定してから長期価格を出す
  • 分類が確定するまで、契約条項に関税差分の扱いを織り込む
  • DDPなど関税負担者が自社側になる取引は、分類確定を先行条件にする

6-2. 変更管理を製品ライフサイクルに組み込む

通信方式の変更、ファームウェア更新、同梱物の追加で、主要機能の説明は変わり得ます。分類は、設計変更管理と同じテーブルで回すべき領域です。

  • どの変更が分類へ影響するかの判定基準
  • 変更時に更新すべき資料(仕様書、BOM、レイアウト図)
  • 事前教示を取得している国での再検討条件

これらを運用ルールとして定めると、現場の手戻りが大きく減ります。


7. まとめ

センサー・計測機器のHS分類は、技術の複合化で難易度が上がり続けています。国際裁定比較は、結論を真似るためではなく、論点を可視化し、必要資料と事前教示取得の優先順位を決め、社内の分類決定を再現性ある形にするための武器になります。

おすすめの進め方は次の通りです。分類仕様書で事実を固定し、争点別に候補HS見出しを整理し、裁定の比較可能性をチェックした上で、重要市場では事前教示で固める。これが、コスト、リードタイム、コンプライアンスの三方を同時に守る近道です。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定取引に対する法的助言、税務助言、通関判断を代替するものではありません。HSコードの最終判断は、貨物の仕様、輸入形態、適用法令、最新の通達や裁定の有無により変わり得ます。個別案件については、必ず当該国の税関当局への事前教示申請や、通関士・貿易実務の専門家への相談を通じて確認してください。



センサー・計測機器のHSコード分類を国際裁定で読み解く:EU・米国・日本を横串で比較する実務ガイド

センサーや計測機器は、製造業の競争力を左右する中核部品である一方、HSコードの解釈が揺れやすい分野でもあります。誤った分類は、関税コストの想定違いだけでなく、FTAの原産地判定、輸入規制の該当性、顧客への価格提示、契約条件に連鎖して影響します。

本記事では、ビジネスマンが意思決定に使える形で、センサー・計測機器の分類を「国際裁定比較」で深掘りします。EUのBTI、米国CBPのルーリング、日本税関の事前教示を中心に、カナダ、英国、豪州の制度も併記し、実務でどう読み解き、どう社内判断に落とすかを解説します。

1. 国際裁定比較とは何か

1-1. そもそも「裁定」「事前教示」は、どこまで信頼できるのか

関税分類の「裁定」や「事前教示」は、税関当局が特定の貨物について、輸入前に文書で分類の取扱いを示す制度です。WTO貿易円滑化協定(TFA)でも、加盟国が合理的な期間内に事前教示を出すこと、事前教示が発給国に対して申請者に関して拘束力を持ち得ること、必要事項の公表などが規定されています。つまり、事前教示は単なる慣行ではなく、国際的にも予見可能性と透明性を高める仕組みとして位置付けられています。 :contentReference[oaicite:0]{index=0}

1-2. なぜ「国際裁定比較」がビジネスで効くのか

HSは国際共通の品目分類体系であり、原則として6桁レベルまでは各国共通です。そのため、複数国の裁定を比較すると、分類理由のどこが争点になりやすいか、どの機能や構造が分類を決める決定打になるかが見えてきます。さらに、輸出先が複数ある場合は、輸入国ごとに分類の揺れ幅を先に把握し、コストとスケジュールの手当てができます。

ただし、重要な前提があります。国際裁定比較は「自社の分類を自動的に正当化する道具」ではなく、「論点を特定し、追加資料や事前教示の要否を判断するための診断装置」です。ここを取り違えると、参考情報のつもりが過信になり、リスクが増えます。

2. センサー・計測機器で分類が揺れやすい理由

センサーと計測機器の分類が難しい理由は、技術進化により、測る・変換する・記録する・通信する・制御する、が一体化しやすいからです。特に次の論点が、国や担当官によって判断が割れやすいポイントです。

  1. 測定か、制御か(自動制御まで行うか)
  2. 何を測っているか(流量・圧力など特定変数か、その他一般か)
  3. 電気量の測定か、非電気量の測定か(信号解析をどう捉えるか)
  4. 単体製品か、部品か(部品の扱い、専用性の評価)
  5. 複合機能品の主要機能は何か(通信や演算が主になる瞬間がある)

たとえば、代表的な見出しとして、見出し9026は「液体・気体の流量、液面、圧力などの変数を測定・検査する機器(ただし9032などを除く)」、見出し9031は「90類の他の見出しに該当しない測定・検査機器」、見出し9032は「自動式の調整・制御機器」です。センサーや計測機器は、これらの境界線上に立つことが多いのが実情です。 :contentReference[oaicite:1]{index=1}

3. 主要国・地域の「分類裁定」を比較する

まずは、ビジネスで使いやすい主要制度を、拘束力と運用の観点から整理します。

国・地域制度名(通称)特徴(ビジネス上の使いどころ)代表的な有効期間公開性
EUBTI(Binding Tariff Information)EU全域で通用する「法的決定」。EU税関と保有者を拘束し、EU内で分類の一貫性を作りやすい。原則3年有効・無効を含め公開DBに収載
米国CBPのルーリング(ruling letter)特定取引・事実関係に基づく公式見解。事実一致が条件で、改廃もあり得る。明確な年限よりも改廃管理が重要検索DBで多数公開
日本関税分類の事前教示(文書回答)輸入通関審査で原則尊重。全国税関で扱いを揃えやすい。公開検索も可能。原則3年公開検索システムあり
カナダAdvance Ruling(tariff classification)条件を満たせば当局を拘束。効力発生日以降の輸入に適用。条件維持が前提(改廃あり)公開の扱いあり
英国Advance Tariff Ruling合法的に拘束力のある決定として、事前に関税等を見積もる用途に向く。概ね3年制度案内が明確
豪州Tariff Advice(Advance Ruling)特定品目・特定メーカーの分類に対する拘束力ある判断。ビジネス判断に直結させやすい。5年制度案内が明確

EUのBTIは、加盟国税関が発給する関税分類の法的決定で、原則3年間有効であり、EUの全税関当局と決定保有者を拘束します。また、有効・無効を含むBTIが公開データベース(EBTI)で参照できることが明記されています。 :contentReference[oaicite:2]{index=2}

米国のルーリングは、規則上、当該取引や論点に関する税関の公式見解であり、原則として改廃されるまで税関職員を拘束します。一方で、提出情報が正確であること、実際の取引がルーリング記載の事実と同一であることなどが適用条件で、現場は事実確認のうえで適用します。公開ルーリングは検索システム(CROSS)で検索できます。 :contentReference[oaicite:3]{index=3}

日本の関税分類の事前教示は、文書による回答であれば、輸入通関審査で原則3年間尊重され、全国どこの税関でも有効であることが周知されています。加えて、日本税関には事前教示回答事例を検索できる公開システムが用意されています。 :contentReference[oaicite:4]{index=4}

カナダでは、関税分類のアドバンスルーリングが、効力発生日以降に輸入される当該貨物に適用され、一定の条件下で当局(Minister)を拘束する旨が法令上規定されています。CBSAも、アドバンスルーリングが当局と受領者の間で拘束力を持つ決定になる点を説明しています。 :contentReference[oaicite:5]{index=5}

英国は、コモディティコードの合法的拘束力ある決定として、一般に3年間有効であることを制度案内で明示しています。豪州は、Tariff Adviceが特定品目に対する拘束力ある私的ルーリングであり、分類の事前確定として活用でき、原則5年適用されることを説明しています。 :contentReference[oaicite:6]{index=6}

4. 国際裁定比較を「再現性ある社内プロセス」にする

裁定比較で一番ありがちな失敗は、検索して似た案件を見つけた時点で結論に飛びつくことです。分類は、仕様差が1つあるだけで結論が変わります。比較を意思決定に耐える形へ落とすには、次の順で進めるのが安全です。

4-1. ステップ1 分類仕様書を作る

エンジニア資料をそのまま税関言語に翻訳すると抜け漏れが出ます。分類専用の「分類仕様書」を作り、最低限次を固定します。

  • 測定対象(温度、圧力、流量、位置、加速度、ガス成分など)
  • 測定原理(抵抗式、容量式、MEMS、光学式など)
  • 出力(アナログ、デジタル、無線、有線プロトコル)
  • 機能範囲(測定のみ、記録、表示、演算、判定、制御信号出力、アクチュエータ駆動)
  • 同梱物(表示器、ゲートウェイ、電源、ソフトウェア媒体、ケーブル)
  • 輸入形態(単体、セット、ユニット、基板、モジュール、組込済み)

4-2. ステップ2 候補見出しを「争点別」に並べる

候補を機械的に羅列するのではなく、争点に紐づけます。例として、流体・気体の圧力や流量の測定なら9026、汎用の測定・検査で他に当てはまらないなら9031、自動式の調整・制御まで担うなら9032が中心線になります。ここで重要なのは、9026の見出し自体が9032を除外している点です。つまり、制御機能の有無は分類の分岐点になり得ます。 :contentReference[oaicite:7]{index=7}

4-3. ステップ3 裁定の「比較可能性」をチェックする

国際裁定比較では、次のチェックが合格して初めて「参考にできる裁定」になります。

  • 同一性:機能、構造、輸入形態が実質的に同じか
  • 時点:HS改正や解釈変更の前後ではないか
  • 拘束範囲:当局がどこまで拘束される決定か
  • 条件:前提条件や限定事項が付いていないか
  • 改廃:無効化、撤回、修正がないか

EUではBTIが原則3年有効である一方、申請情報の不備による取消し、CN改正、欧州委員会の分類措置などにより失効し得ます。また、HS注釈の改正、EU司法判断、WCOの分類決定や分類意見が原因でBTIが撤回され得ることも制度上明示されています。過去のBTIを引用する場合は、発給日と現在の有効性を必ず確認してください。 :contentReference[oaicite:8]{index=8}

4-4. ステップ4 結論は「事前教示取得の要否」に落とす

比較の目的は、机上で最適解を当てることではありません。目的は、追加課税・通関遅延・契約トラブルを避けるために、どの国で事前教示を取るべきかを決めることです。

日本でも、口頭やメールでの照会は参考情報に留まり、文書による事前教示は通関審査で尊重されると整理されています。大きな商流ほど、文書で固める方が期待損失を下げやすい構造です。 :contentReference[oaicite:9]{index=9}

5. よくある境界論点を「裁定比較の視点」で深掘りする

5-1. 測定か、制御か センサーが9032へ寄る瞬間

制御要素を持つ製品は、分類が急に難しくなります。現場で多いのは、センサーが「測定値を出すだけ」のつもりでも、製品としては制御ロジックを実装し、設定値との比較、制御信号の生成、アクチュエータの駆動まで内蔵しているケースです。

見出し9032は自動式の調整・制御機器であり、サブヘディングにはサーモスタット、マノスタットなどの例も含まれます。測ること自体が目的なのか、目標値に合わせて自動で制御することが目的なのかを、仕様書で明確に言語化する必要があります。 :contentReference[oaicite:10]{index=10}

5-2. 9030と9031の境界 信号解析を「電気量測定」と見るか

高度化した計測機器は、電気信号やデジタルデータの解析を伴います。ここで、見出し9030(電気量の測定・検査)と見出し9031(他に該当しない測定・検査)の境界が争点になり得ます。

WCOのHS委員会関連文書では、ネットワークアナライザの分類をめぐり、EU側が9031、米国側が9030を主張した経緯が示されています。議論の核心は、ネットワークトラフィック解析が「電気量の測定」なのか、それとも「データを用いた運用分析」なのか、という解釈の違いです。つまり、同じ機器でも、何を測っていると捉えるかで見出しが変わるということです。 :contentReference[oaicite:11]{index=11}

5-3. 部品か、機器か センサー単体と組込み品の扱い

センサー単体と、機械に組み込まれた状態(モジュールやユニット)では、同一技術でも分類が変わり得ます。国際裁定比較では、裁定が前提とする輸入形態が「単体」「セット」「部品」「完成品」のどれなのかを必ず見抜く必要があります。

例えば9026や9031には部品・付属品のサブヘディングがありますが、当局は「その部品が本当にその見出しの部品として適切か」も見ます。比較のときは、見出しだけでなく、部品扱いの論理と、専用性の評価軸を読み取ることが重要です。 :contentReference[oaicite:12]{index=12}

5-4. 公開DBの使い分け 情報の粒度が違う

公開DBの価値は、国によって性格が異なります。

  • EUのEBTIは、EU全域に効く法的決定が公開され、分類理由の整理に向く
  • 米国のCROSSは、案件数が多く、類似製品の言語表現を学ぶのに向く
  • 日本税関は、事前教示回答事例の検索機能があり、日本語で社内展開しやすい

ただし、公開されているからといって自社品にそのまま当てはまるとは限りません。特に米国は、規則上も「記載事実と実取引が同一であること」が適用の条件として強調されています。検索は入口であり、最終判断は同一性の検証と、必要に応じた事前教示取得で固めるべきです。 :contentReference[oaicite:13]{index=13}

6. 経営判断に落とすための実務ポイント

6-1. 価格と契約に効く「分類の不確実性」を見積もる

分類が揺れている段階で価格提示を固定すると、利益が後から削れます。国際裁定比較で論点が見えたら、次のどれで扱うかを決めるのが実務的です。

  • 主要市場で事前教示を取得し、分類を固定してから長期価格を出す
  • 分類が確定するまで、価格条項に関税差分の扱いを織り込む
  • インコタームズや関税負担者が複雑な取引は、分類確定を先行条件にする

6-2. 変更管理を製品ライフサイクルに組み込む

センサー製品は、通信方式の変更、ファームウェア更新、同梱物の追加で、主要機能の説明が変わり得ます。分類は、設計変更管理と同じテーブルで回すべき領域です。EUのBTIも、解釈変更やWCOの分類意見などで撤回され得ることが明記されている以上、社内でも「分類は固定資産ではなく、条件付きの決定」と扱う方が安全です。 :contentReference[oaicite:14]{index=14}

7. まとめ

センサー・計測機器のHS分類は、技術の複合化で難易度が上がり続けています。その中で、国際裁定比較は、単なる調査ではなく、論点を可視化し、事前教示取得の投資対効果を判断し、社内の分類決定を再現性ある形にするための武器になります。

おすすめの進め方は、公開DBで類似裁定を拾って結論を急ぐのではなく、分類仕様書で事実を固定し、候補見出しの争点を整理し、比較可能性のチェックを通した上で、必要な国で事前教示を取りに行くことです。これが、コストとリードタイム、そしてコンプライアンスの三方を同時に守る最短ルートになります。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定取引に対する法的助言、税務助言、通関判断を代替するものではありません。HSコードの最終判断は、貨物の仕様、輸入形態、適用法令、最新の通達や裁定の有無により変わり得ます。個別案件については、必ず当該国の税関当局への事前教示申請や、通関士・貿易実務の専門家への相談を通じて確認してください。

::contentReference[oaicite:15]{index=15}

WCOが公表したHS2028改正と解説改訂・分類決定を、ビジネスの視点で読み解く

更新日:2026年2月22日

本稿の要点

  1. HS2028は、WCO(世界税関機構)により改正が受理され、2028年1月1日に発効します。企業の関税、規制対応、需給計画、データ分析に直結する改正です。(世界関税機関)
  2. WCOはHS委員会の最新の分類決定を公表し、あわせてHS解説(Explanatory Notes)改訂も示しています。これらは現行版運用の精度を上げると同時に、将来のHS改正を読むための重要な手掛かりになります。(世界関税機関)
  3. 実務のポイントは、単にコードを置き換えることではありません。品目分類ガバナンス、マスタデータ、契約、社内統制、事前教示などを一体で整備し、移行リスクを管理することが成果を左右します。(世界関税機関)

いまWCOが公表している「3つのレイヤー」を整理する

レイヤー1:HS2028改正(法的な品目表の更新)

WCOは、HS2028改正が受理されたことを公表しており、改正は299セットの変更からなります。HS2022と比べ、新設の見出し(Heading)や細分(Subheading)が増える一方、削除も行われています。改正は2028年1月1日に発効し、各国が国内関税率表へ落とし込むための実装期間が設けられています。(世界関税機関)

ここで重要なのは、HSは関税率表だけでなく、統計、輸出入規制、各種ライセンスや証明手続にも広く使われる「共通言語」だという点です。WCO自身も、HSが多くの国・地域で税関関税と国際貿易統計の基礎になっていることを説明しています。(世界関税機関)

レイヤー2:HS解説(Explanatory Notes)の改訂(公式解釈のアップデート)

HS解説は、WCOが公表する公式解釈であり、条文(見出しや注)だけでは読み切れない範囲や判断基準を補います。WCOは、HS解説が公式解釈であること、2022年版は複数巻で構成されること、そして改訂が順次反映されることを明示しています。(世界関税機関)

今回WCOが「HS委員会第76回会合の決定」として公表している解説改訂は、2026年1月1日から適用される改訂として位置付けられています。つまり、HS2028の話とは別に、現行版運用の精度を引き上げるための改訂が並走している、という理解が必要です。(世界関税機関)

レイヤー3:分類決定(Classification Decisions)(具体的商品の「判例集」に近い役割)

WCOが公表する分類決定は、HS委員会が個別商品について下した分類判断の一覧です。今回公表されている文書では、特定の商品ごとの分類番号に加え、場合により分類根拠(適用した一般解釈規則など)が示されています。(世界関税機関)

注意点として、WCOは分類決定や改訂に関して、輸入国・輸出国での実装状況を確認するよう明確に注意喚起しています。実務的には「国際的に強い説得力を持つが、そのまま自動的に各国で拘束力を持つとは限らない」資料です。(世界関税機関)

HS2028改正は、どこが「ビジネスに効く」のか

公衆衛生と緊急対応が、統計と通関を変える

HS2028は、公衆衛生と健康危機対応を重要テーマとして掲げ、緊急時に必要となる物資の可視性向上を狙っています。WCOは、救急車、個人用防護具、人工呼吸器、診断機器などに関する細分化を示しています。(世界関税機関)

この方向性は、単なる統計用途ではありません。緊急時の簡素化手続や迅速通関、政策的な優遇措置を設計するために、コードの粒度が重要になるという発想です。これは、医療機器メーカーや商社だけでなく、グローバルに医療関連品を扱う物流・調達部門にも影響します。(世界関税機関)

ワクチン分類の再設計は、規制と需給計画の前提を変える

WCOは、HS2028でワクチン分類を大きく組み替え、ヒト用ワクチンを中心に新たな見出し・細分を設ける方針を示しています。ヒト用ワクチンは見出し30.07に整理され、細分は38の6桁コードに分かれる、と説明されています。(世界関税機関)

WHOも、WTOおよびWCOとの連携の下で、ヒト用ワクチン等について新たなコード体系が2028年1月1日に導入されることを発信しています。国際機関が同じ方向を示している点は、企業にとって「この改正が各国実装へ進む確度が高い」ことを読み取る材料になります。(世界保健機関)

サプリメント新設見出しは、係争リスクと統制コストを下げ得る

HS2028では、サプリメントのための新見出し21.07が創設され、区分や定義を法的注で整える方針が示されています。WCOは、HS2022ではサプリメントの包括的定義がなく、国ごとに裁判例などを通じて分類が分かれ、係争や統計上の把握困難につながっていた、と背景を説明しています。(世界関税機関)

ビジネス上の本質はここです。サプリメントの分類が安定すれば、関税コストのブレだけでなく、許認可や表示規制など周辺規制との整合が取りやすくなり、結果としてサプライチェーン全体の統制コストが下がる余地があります。(世界関税機関)

プラスチック廃棄物と単回使用製品は、コンプライアンスの地雷原になりやすい

WCOは、バーゼル条約に整合する形でプラスチック廃棄物の区分を再構築し、有害な廃プラ、PIC手続対象、その他といった区分の可視化を進める方針を示しています。これは、廃棄物輸出入、リサイクル原料取引、包装材ビジネスにとって、コードの変更が許認可要件や通関手続に波及し得る領域です。(世界関税機関)

「分類決定」と「解説改訂」を、企業がどう使うべきか

1つ目の使い方:自社の品目分類の根拠を、説明可能にする

WCOの分類決定文書は、個別商品についてどのHSコードが妥当とされたか、場合によりどの一般解釈規則が使われたかを示します。たとえば、第76回会合の分類決定リストでは、食品、プラスチックフィルム、通信機器部品、電気用接続品など多分野の具体例が並びます。(世界関税機関)

これを自社に当てはめる際は、同一商品かどうかよりも、争点が似ているかを見ます。構造、機能、用途、形状、成分、提示形態などの判断軸が似ていれば、税関説明資料としての説得力が増します。(世界関税機関)

2つ目の使い方:各国実装の差を前提に、リスク管理をする

WCOは、HS委員会決定について、各国が適用できない場合に通知する仕組みを整え、通知一覧を更新する運用も示しています。2001年6月30日の勧告は、適用できない場合の通知や理由提示などを求め、透明性を高める狙いがあるとされています。(世界関税機関)

実際にWCOは、特定のHS委員会決定を適用できない国・地域があることを一覧で公表しており、2025年12月5日付の一覧も公開されています。企業側は「WCO資料で整理できたから終わり」ではなく、自社の主要仕向地で同様に運用されるかを確認する設計が不可欠です。(世界関税機関)

3つ目の使い方:HS2028移行の「先行指標」として読む

HS2028そのものは2028年に発効しますが、移行準備は既に始まっています。WCOは、発効までの期間に、HS2022とHS2028の相関表(Correlation Tables)作成、HS解説などツールの更新、加盟国支援を行う方針を示しています。(世界関税機関)

分類決定や解説改訂は、現行版の解釈統一に資するだけでなく、どの分野に分類の摩擦や抜けがあるかを示すシグナルにもなります。HS改正は多くの場合、こうした摩擦を制度側で解消する方向に動きます。ここを読むのが、ビジネスマンの「深掘り」です。(世界関税機関)

企業が今から着手すべきHS2028対応ロードマップ

2026年:棚卸しと、ガバナンスの再設計

  1. 重点SKUを絞る
    売上上位、関税率が高い、規制が絡む、過去に税関照会や修正申告があった、これらに該当するSKUを優先対象にします。
  2. 品目分類の根拠管理を標準化する
    品番ごとに、製品仕様書、用途、構造、成分、写真、カタログ、設計図などの証拠をそろえ、分類根拠の説明資料をテンプレート化します。分類決定や解説改訂は、根拠の「外部参照」として組み込みます。(世界関税機関)
  3. 国別差分を可視化する
    主要仕向地について、同一品番でもコードが異なる運用があり得る前提を置き、どこに差分があるかを一覧化します。WCO自身が「適用可否の通知制度」を設けていることは、差分が現実に起きることを示しています。(世界関税機関)

2027年:マッピングと、外部確度の獲得

  1. 相関表と国内実装案に合わせてマッピングを更新する
    WCOは相関表整備を進める方針を示しています。相関表が出た段階で、旧コードから新コードへ「機械的に置換できない品目」を抽出し、分類判断が必要な品目を前倒しで潰します。(世界関税機関)
  2. 事前教示(Advance Ruling)で、拘束力のある確度を取りに行く
    WCOは、事前教示制度が、輸出入前に分類等の判断を得て予見可能性を高める目的である、と説明しています。日本税関も、輸入前の照会で関税率適用の確実性が高まり、取引の予見可能性が上がる旨を案内しています。重要品目ほど、制度を使って確度を確保するのが合理的です。(世界関税機関)

2028年:切替えと、監査対応

  1. システム切替えと取引先連携
    ERP、PIM、通関システム、原産地管理、輸出管理、受発注システムなど、HSコードを持つ箇所は多岐にわたります。切替え日は通関実務に直結するため、取引先や通関業者との連携計画を前提に進めます。(世界関税機関)
  2. 税関監査と統制設計
    切替え直後は誤分類が増えやすい局面です。分類根拠の説明可能性、事前教示の取得状況、国別差分管理の整備が、監査対応力になります。(世界関税機関)

見落としがちな論点:医薬品成分(INN)と分類の実務

医薬品・原薬領域では、INN(国際一般名)に関する分類参照情報が実務で重要になります。WCOは、HS委員会で決定されたINNの分類を整理した参照用の表(Excel)を提供していますが、同時に「法的・公式な地位はない」こと、改正により過去の決定が影響を受け得ることも明示しています。扱う商品領域によっては、便利な参照である一方、依存し過ぎない運用設計が必要です。(世界関税機関)

まとめ:HS2028は「通関の話」ではなく「経営の話」になっている

HS2028は、単に分類表が新しくなるイベントではありません。公衆衛生、サプリメント、プラスチック廃棄物など、政策と規制の要請が品目分類の構造に入り込む度合いが強まっています。(世界関税機関)

一方で、日々の実務を動かすのは、分類決定と解説改訂という「運用のエンジン」です。ここを読み解き、社内の分類ガバナンスとデータ基盤を先に整えた企業ほど、2028年の切替えをコストではなく競争力に変えられます。(世界関税機関)

参考資料

  1. WCOニュースリリース:HS 2028 Amendments(2026年1月21日)(世界関税機関)
  2. WCO解説:Amendments effective from 1 January 2028(HS2028発効・レビューサイクル等)(世界関税機関)
  3. WCOニュースリリース:ワクチン等の分類更新(2026年1月21日)(世界関税機関)
  4. WHOニュース:ワクチン等の新コード導入(2026年2月2日)(世界保健機関)
  5. WCOニュースリリース:サプリメント分類の改正背景(2026年1月23日)(世界関税機関)
  6. WCOページ:Latest Classification Decisions(第76回会合の関連資料ダウンロード)(世界関税機関)
  7. WCO資料:Classification Decisions – HS Committee 76th Session(分類決定一覧)(世界関税機関)
  8. WCO資料:Amendments to the HS Explanatory Notes – HS Committee 76th Session(HS解説改訂)(世界関税機関)
  9. WCO資料:Amendments to the Compendium of Classification Opinions – HS Committee 76th Session(分類意見集の改訂)(世界関税機関)
  10. WCOページ:Application of HS Committee decisions(適用できない場合の通知制度)(世界関税機関)
  11. WCO資料:List of HS Committee decisions which cannot be applied(2025年12月5日版)(世界関税機関)
  12. WCOページ:INN Table(参照用、法的地位なしの明示)(世界関税機関)
  13. WCOページ:Advance rulings for Classification(事前教示の目的)(世界関税機関)
  14. 日本税関:Advance ruling on tariff classification(事前照会の説明)(税関総合情報)

免責事項

本記事は、公開情報に基づき一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引、品目、国・地域に対する法的助言、税務助言、通関判断を提供するものではありません。品目分類は個別商品の仕様・用途・提示形態、各国の法令・運用、行政解釈等により結論が変わり得ます。実務適用にあたっては、最新の一次資料および関係当局の公表情報を確認し、必要に応じて通関専門家や当局への事前照会等を行ってください。

HSコードにおける「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」の意味と、部分品分類の実務

0. この文章で扱う範囲

HSコードの符番説明や部・類の注には、部分品の所属決定に関して「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」という表現が出てきます。実務では特に、第16部注2の注2(b)で問題になることが多いため、この文章では第16部注2を中心に、ビジネスマンが分類作業で迷いにくくなるように解説します。

1. この表現の意味を一言で言うと

「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」とは、部品の設計や仕様、一般的な流通実態から見て、使用先が特定の機器に強く結びついている状態を指します。

この表現が使われる場面の本質は次のとおりです。

  1. 部品が独立した品目として、別の見出しに明確に当たるなら、その見出しで分類する
  2. それ以外の部品で、特定の機器向けに専用または主要用途が偏っているなら、機器側の見出しや指定された部分品見出しへ寄せる
  3. それでも決まらない部品は、残余の部分品見出しに回す

この考え方は、第16部注2が定める判断順序そのものです。

2. 「もっぱら」と「主として」の違い

2.1 もっぱら

実務上は次のイメージです。

形状や接続方式、寸法、制御仕様などの客観的特徴から見て、ほぼその機器にしか使えない
他用途への転用が現実的に難しい
市場でもその機器用部品として取引されるのが通常

ポイントは、輸入者がどう使う予定かではなく、部品そのものの客観的性質で判断されることです。

2.2 主として

こちらは、他用途も理屈上はあり得るが、通常の用途や流通の中心が特定機器向けに偏っている、という状態です。

例えば次のような材料が根拠になりやすいです。

メーカーのカタログで対応機種が限定されている
互換性表で特定系列機器だけに適合する
販売実績や取引実態として特定用途が大半を占める
機器側の仕様に合わせた設計で、他用途だと過剰仕様または不適合になる

条文上、数値の閾値が固定で示されているわけではないため、証拠の質と量で説得力を作ることが重要になります。

3. 「特定の機器向け」を判断する時に見ているもの

分類実務で見られるのは、概ね次の3点です。

  1. 物としての特徴
    取付、嵌合、コネクタ、寸法公差、電気特性、通信プロトコル、耐環境仕様など
  2. 適合範囲
    どの機器に付くのか、同一見出しの複数機器に共通なのか、見出しを跨いで広く使えるのか
  3. 一般的用途と取引実態
    市場でどう呼ばれ、どう売られ、何向けが中心なのか

この3点が揃うほど、「もっぱら」または「主として」の判断が安定します。

4. 第16部注2を、実務の判断順に並べる

4.1 まず確認すること

第16部注2は、機械の部分品についての所属決定ルールですが、すべての部分品に無条件で当たるわけではありません。

注2の適用から除かれるものがあります。代表例として、次の見出しの物品の部分品は注2の対象外です。

第84.84項の物品の部分品
第85.44項から第85.47項までの物品の部分品

また、第16部注1で除外される「卑金属製のはん用性の部分品」などは、そもそも第16部の物品として扱わない整理になります。

4.2 注2(a) 部品が第84類または第85類の別見出しに当たるか

注2(a)は、先に独立の見出しがあるものを優先するルールです。

部品であっても、それ自体が第84類または第85類のいずれかの見出しに明確に該当するなら、原則その見出しに分類します。

ただし、注2(a)には例外として、次の見出しは除外されています。ここは実務上、非常に重要です。

第84.09項、第84.31項、第84.48項、第84.66項、第84.73項、第84.87項
第85.03項、第85.22項、第85.29項、第85.38項、第85.48項

この例外に入る見出しは、典型的に部分品を収容するための見出しなので、注2(a)で機械一般の独立見出しに吸収させず、注2(b)や注2(c)の枠組みに乗せる設計になっています。

実務メモ
専用品だからといって、必ず機械側の部分品見出しへ行くわけではありません。まず注2(a)で、部品そのものの独立見出しがあるかを確認することが基本動作です。

4.3 注2(b) 「もっぱら、または主として使用される」部品の帰属

注2(a)に当たらない部品について、次の判断をします。

特定の機械、または同一見出しの複数の機械に、もっぱらまたは主として使用されるか
ここでいう機械には、第84.79項または第85.43項の機械も含まれます

該当する場合、原則として次のいずれかに分類します。

その機械の見出し
または、次の部分品見出しのうち該当するもの
第84.09項、第84.31項、第84.48項、第84.66項、第84.73項
第85.03項、第85.22項、第85.29項、第85.38項

そして、注2(b)には重要なただし書きが2つあります。ここは誤記や脱落が起きやすいので、社内資料では必ず明記することをおすすめします。

第85.17項の物品と、第85.25項から第85.28項までの物品に共通して主として使用する部分品は、第85.17項へ
第85.24項の物品に、もっぱらまたは主として使用する部分品は、第85.29項へ

このただし書きは、注2(b)の一般ルールよりも優先して分類先を指定する性格のものです。

4.4 注2(c) それ以外の残余部分品

注2(c)は、注2(a)にも注2(b)にも当てはまらない部品の行き先を、見出し番号で明示しています。

原則として、次の見出しのうち該当するものへ分類します。

第84.09項、第84.31項、第84.48項、第84.66項、第84.73項
第85.03項、第85.22項、第85.29項、第85.38項

それでも該当がない場合は、次のいずれかに分類します。

第84.87項 または 第85.48項

実務上は、注2(c)を「残余の部分品項へ」とだけ書くと誤解が生まれやすいので、少なくとも見出し番号の並びまで記載しておくのが安全です。

5. 社内で迷いがちなポイントと、実務のコツ

5.1 予定用途だけで「主として」と言わない

輸入者の社内予定や販売計画は補助情報にはなりますが、それだけだと根拠として弱くなります。仕様と客観的適合性を中心に、説明を組み立てるほうが安定します。

5.2 同一見出しの複数機械に使う場合は整理しやすい

注2(b)は、特定の機械だけでなく、同一の見出しの複数機械に主として使う部品も想定しています。ここは材料を集めやすい領域です。

5.3 見出しを跨いで広く使える部品ほど、注2(b)に乗りにくい

汎用性が高く、複数の見出しの機器に幅広く使える場合、特定機器向けの結びつきが弱くなり、注2(b)で機械側へ寄せる論拠が薄くなります。その場合は注2(a)で独立見出しに当たらないか、注2(c)の行き先を丁寧に検討します。

6. 立証資料のそろえ方

分類担当として、最低限そろえたい資料は次のとおりです。

  1. 仕様書
    寸法、材質、電気特性、通信規格、耐熱など
  2. 図面や写真
    取付部、コネクタ、嵌合形状、機器側との関係が見えるもの
  3. カタログや取説
    対応機種、用途説明、交換部品の扱いが分かる記載
  4. 互換性表
    どの機種に適合するかを一覧で示せる資料
  5. 取引実態の補強
    販売実績の傾向、用途別の販売構成、主要顧客の業界など

7. 根拠となる規定

分類の大原則は、見出しの文言と部・類の注に基づいて決める、という考え方です。 (wcoomd.org)
第16部の部分品については、第16部注2が、判断順序と分類先の見出し番号まで含めてルール化しています。

免責事項

本文章は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別取引の品目分類、課税関係、申告の適否や結果を保証するものではありません。最終的な分類は、対象貨物の実物、仕様、提示態様、適用される通則および部・類の注等に基づき、必要に応じて税関の事前教示制度の利用や専門家への相談を行った上でご判断ください。

HS2022 第53類:その他の植物性紡織用繊維及びその織物並びに紙糸及びその織物★(Other vegetable textile fibres; paper yarn and woven fabrics of paper yarn)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 亜麻(フラックス)繊維(生・レッティング済・破砕/スカッチ/ハックル等の「精紡前」まで)と、そのトウ・くず(5301)
    • 大麻(True hemp / Cannabis sativa L.)繊維(精紡前)と、そのトウ・くず(5302)
    • ジュート等の靭皮繊維(亜麻・大麻・ラミー以外)と、そのトウ・くず(5303)
    • ココやし(コイヤ)、アバカ、ラミー、サイザル等の「その他の植物性紡織用繊維」(精紡前)と、そのトウ/ノイル/くず(5305)
    • 紙のストリップを撚って作る「紙糸」(5308、通常は5308.90側で扱われます)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 綿(コットン)・綿織物:第52類(第53類ではありません)
    • 「ひも・綱・ロープ」として扱うべき太い糸(線密度や構成で判定):第56類 5607(“twine, cordage, ropes and cables”)
    • 紙を単に折り重ねたストリップ(撚っていない):第48類(紙製品側)
    • 紙のストリップを交錯(組物・編組的)させた「組物状」のもの:46.01(第46類)
    • 織物が「裁断・縫製済み=製品(made up)」になっているもの:第63類など(部注の“made up”定義で移動)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 形状・段階:**繊維(精紡前)**か、か、織物か(5301〜5305/5306〜5308/5309〜5311)
    2. 糸の太さ・構成:**糸(Ch.53)**か、**ひも・綱(5607)**か(線密度/仕上げ/撚り本数等)
    3. 紙系:**紙糸(撚って糸)**か、単なる紙ストリップ/紙製品か、**紙ストリップの組物(46.01)**か
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 大麻(ヘンプ)関連:HS分類(5302/5308など)とは別に、日本の薬物規制・取扱規制の確認が必須で、誤認すると通関差止・行政対応につながり得ます。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1:見出し文言(例:Flax yarn / paper yarn / woven fabrics)と部注(第11部注)でまず決めます。第53類は「素材(植物繊維/紙)」と「形状(繊維・糸・織物)」が軸です。
    • GIR6:号(6桁)では、特に
      • 5301/5302/5303の「生・レッティング」vs「その他」、
      • 5306/5307の「単糸」vs「マルチプル/ケーブル」、
      • 5309の「亜麻85%」閾値、
      • 5310の「漂白してない」
        が実務分岐になります。
    • 混紡・混用が出たら、まず第11部注(混合繊維の取扱い=重量優先など)を当ててから該当章・項を決めます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 植物名(可能なら学名)と繊維の種類(亜麻/ジュート/ラミー/コイヤ/サイザル等)
    • 加工状態(生、レッティング、破砕・スカッチ・ハックル、精紡済み/未)
    • 糸なら:線密度(decitex)、仕上げ(polished/glazedの有無)、撚り本数(ply)・編組の有無(braidedかどうか)
    • 織物なら:繊維混率(重量%)、漂白/染色/プリントの状態

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:それは「繊維素材」か「糸」か「織物」か「出来上がり製品(袋など)」か?
    • 繊維(精紡前)→ Step2
    • 糸 → Step3
    • 織物 → Step4
    • 裁断・縫製済み(made up)→ 第63類等を優先検討
  • Step2(繊維):亜麻(5301)/大麻(5302)/ジュート等靭皮(5303)/その他植物繊維(5305)へ
    • サイザル等は5305側で扱うのが現行(HS2022に5304は欠番)。
  • Step3(糸):亜麻糸(5306)/ジュート糸(5307)/その他植物繊維の糸+紙糸(5308)
    • ただし、線密度等の条件で“twine/rope”に当たると56.07へ移動します(例:亜麻/大麻の太糸、3本撚り以上のコイヤ等)。
  • Step4(織物):亜麻織物(5309)/ジュート等の織物(5310)/その他植物繊維・紙糸の織物(5311)
    • 紙ストリップを交錯させた「組物状(plaiting)」は46.01へ(5311ではない)。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第53類(紙糸) vs 第48類(折り重ねただけの紙ストリップ)
    • 第53類(糸) vs 第56類(ひも・綱・ロープ:線密度/構成で判定)
    • 第53類(織物) vs 第63類(出来上がり品:made up)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5301亜麻(精紡前)+トウ/くず亜麻の生繊維、レッティング済亜麻、亜麻トウ「精紡前」まで。糸になれば5306。
5302大麻(True hemp, Cannabis sativa L.)繊維(精紡前)+トウ/くずヘンプ繊維(生/レッティング)規制(大麻関連)はHSと別軸で必確認。
5303ジュート等の靭皮繊維(亜麻/大麻/ラミー除く)ジュート、ケナフ等の繊維(精紡前)「麻」名称が紛らわしい(ケナフ等は5303側の例が多い)。
5304(欠番)HS2022では使用しない([53.04])(該当なし:旧版でサイザル等に使われた時期あり)古い資料で5304が出ることがありますが、HS2022では欠番。履歴は後述(§8)。
5305コイヤ/アバカ/ラミー等+その他植物繊維(精紡前)コイヤ繊維、アバカ、ラミー、サイザル、アロエ繊維など第14類に行く未加工葉(アルファ等)は除外(加工度が鍵)。
5306亜麻糸リネン糸(単糸/双糸/ケーブル)太さ等で56.07に飛ぶ場合あり(部注)。
5307ジュート等(5303)の糸ジュート糸、ケナフ糸同上(56.07判定に注意)。
5308その他植物繊維の糸/紙糸コイヤヤーン、ヘンプヤーン、紙糸紙糸は「紙ストリップを撚ったもの」。単に折っただけは48類。
5309亜麻織物リネン生地(衣料・寝具・テーブルリネン等)亜麻重量比85%が号分岐。漂白/染色区分あり。
5310ジュート等(5303)の織物麻袋用ジュート生地、基布漂白してない/その他。出来上がり袋は63類検討。
5311その他植物繊維の織物/紙糸織物ラミー織物、紙糸織物、包装用生地紙ストリップの組物(46.01)は除外。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 原料状態:生/レッティング(5301.10、5302.10、5303.10) vs その他加工済(5301.21/29、5302.90、5303.90)
    • トウ・くず:5301.30 など(用途が充填/製紙でも含む)
    • 糸の形態:単糸 vs マルチプル/ケーブル(5306.10/20、5307.10/20)
    • 織物の組成閾値:亜麻織物は「亜麻85%以上」かどうか(5309)
    • 漂白区分:5309や5310の「unbleached/bleached/other」は第11部の定義で判断(“unbleached/bleached woven fabric”等)
    • 糸 vs 綱(56.07):線密度・仕上げ・撚り本数等で“twine/rope”扱いになると章が変わる
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 5301.10(生/レッティング亜麻) vs 5301.21/29(破砕・スカッチ等) vs 5301.30(トウ/くず)
      • どこで分かれるか:加工工程(retted / broken / scutched / hackled)と、トウ/くずかどうか
      • 判断に必要な情報:工程フロー、写真(繊維束/トウ)、品名に「tow」「waste」表記の有無
      • 典型的な誤り:「トウ」を単に“未加工繊維”として5301.10側に寄せてしまう
    2. 5308(紙糸) vs 第48類(紙ストリップ)
      • どこで分かれるか:紙を“撚って糸にしているか”。単に折り重ねただけは紙製品扱い
      • 判断に必要な情報:製造方法(twist/rollingの有無)、サンプル写真、用途(織物用糸か)
      • 典型的な誤り:紙バンド(折り畳み)を「紙糸」と呼んで5308に入れる
    3. 5308(糸) vs 5607(ひも・綱)
      • どこで分かれるか:第11部注で“twine/rope”に該当する線密度等か(例:亜麻/大麻の閾値、3本撚り以上のコイヤ等)
      • 判断に必要な情報:線密度(decitex)、polished/glazedの有無、ply数、金属補強の有無
      • 典型的な誤り:太いヘンプ糸を5308のまま申告(実は5607)
    4. 5309(亜麻85%以上) vs 5309(85%未満)
      • どこで分かれるか:重量比85%
      • 判断に必要な情報:混率表(重量%)、試験成績書、仕様書(gsm/組成)
      • 典型的な誤り:「見た目リネン」で85%超と決め打ち
    5. 5311(紙糸織物) vs 46.01(紙ストリップの交錯品)
      • どこで分かれるか:素材が“紙糸(yarn)”として織られた織物か、紙ストリップを交錯させた組物か
      • 判断に必要な情報:原糸が「紙糸」か(撚り有無)、組織(織物/組物)、製法資料
      • 典型的な誤り:紙ストリップの組物マットを5311で申告

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 混用繊維(2種以上):第11部注2により、基本は「重量が最も多い繊維」で分類。優劣がつかない場合は、該当見出しのうち番号が後ろのもの。
    • 糸が“ひも・綱”になる基準(部注3):亜麻/大麻/コイヤ/その他植物繊維は、線密度・仕上げ・ply数等で“twine/rope”扱いになり、5607へ。例:
      • 亜麻または大麻:polished/glazedで1,429 decitex以上、または未仕上げで20,000 decitex超
      • コイヤ:3本撚り以上
      • その他植物繊維:20,000 decitex超
      • 金属糸で補強したもの 等
    • made up(部注7・8):裁断・縫製済み等は、Ch.50〜55(=繊維・糸・織物)から外れ、Ch.56〜63側で扱うのが原則。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:ヘンプ糸でも、線密度が大きく“綱”判定になると、5308ではなく5607(税率・規制・原産地規則の前提が変わる)
    • 例:ジュート生地(5310)を裁断して縫製した「袋」なら、織物ではなく出来上がり製品側(第63類)を検討
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 太糸・多本撚り → 5607(twine/rope)
    • 裁断・縫製済み → 56〜63(made up)
    • 紙ストリップ(撚りなし/折り重ね) → 第48類

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • HS2022の第53類は、類注(Chapter Notes)そのものは置かれておらず、実務上は見出し文言と第11部注で分岐する作りです(条文構造上)。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「unbleached/bleached/printed」等は第11部の定義を使用します(織物区分の根拠)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 紙糸の除外(折り重ね紙=48類、紙糸の組綱=56.07 等)は、第53類の解説上も明示されています。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。
※第53類は類注自体が薄いので、第11部注(Section Notes)起因の分岐を中心に整理します。

  • 影響ポイント1:混紡・混用(第11部注2)で“素材章”がズレる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):繊維混率(重量%)、複合素材の内訳(例:亜麻80%+綿20%)
    • 現場で集める証憑:仕様書、混率証明、試験成績書(繊維鑑別)、BOM
    • 誤分類の典型:外観だけで「リネン(5309の85%以上)」と判断し、実際は85%未満だった
  • 影響ポイント2:“糸”が“綱(5607)”に飛ぶ(第11部注3:線密度等)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):decitex(線密度)、polished/glazedの有無、ply数(特にコイヤ)、金属補強の有無
    • 現場で集める証憑:メーカー仕様(線密度/番手換算表)、試験データ、サンプル写真、加工工程
    • 誤分類の典型:「ヘンプヤーン」と呼ばれているため5308で申告したが、実測線密度で5607判定
  • 影響ポイント3:織物が“made up”扱いでCh.53から外れる(第11部注7・8)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):裁断形状(四角形以外)、縫製/ヘム処理、完成品としての使用可能性
    • 現場で集める証憑:製品写真、寸法図、縫製仕様、出荷形態(ロールか完成品か)
    • 誤分類の典型:ジュート布を「袋完成品」なのに5310で申告
  • 影響ポイント4:紙系(紙糸/紙ストリップ/紙の組物)で章が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):撚って糸にしているか、単なる折り重ねか、紙ストリップ交錯品か
    • 現場で集める証憑:製造方法説明、原材料(紙ストリップ幅・撚り工程)、サンプル
    • 誤分類の典型:紙ストリップ交錯品を「紙糸織物」と誤認し5311へ

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:日本語の「麻」表記だけで、5302(大麻)/5303(ジュート等)/5305(ラミー等)を取り違える
    • なぜ起きる:商習慣名(○○hemp、○○flax)が多く、植物学的な区別が曖昧
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):見出しは「True hemp(Cannabis sativa L.)」など植物を特定しています。
    • 予防策:
      • 確認資料:学名/原料植物、繊維採取部位(靭皮/葉など)、工程図
      • 社内質問例:「この“hemp”はCannabis sativa L.ですか?Kenaf/Agave系では?」
  2. 間違い:サイザル等を「5304」として扱う(古いコード参照)
    • なぜ起きる:旧版のHSや民間サイト情報が残っている
    • 正しい考え方:HS2022の条文では[53.04]が欠番で、サイザル等は5305の説明例として扱われます。
    • 予防策:HS版(HS2022)を明示した一次資料でコード表を引く/旧コードの履歴は相関表で確認
  3. 間違い:紙ストリップ(折り重ね)を紙糸(5308)に入れる
    • なぜ起きる:「紙糸」「紙紐」の呼称が製法を反映しないことがある
    • 正しい考え方:紙糸は紙ストリップを“撚る/ローリング”して糸化したもの。折り重ねは48類扱い。
    • 予防策:製造工程の有無(twist/rolling)をサプライヤーに確認し、写真/動画/工程図を保存
  4. 間違い:太いヘンプ/亜麻糸を5306/5308のまま申告(実は5607)
    • なぜ起きる:線密度(decitex)での“綱判定”を見落とす
    • 正しい考え方:第11部注3にある線密度・仕上げ・ply数で“twine/rope”扱いに変わります。
    • 予防策:仕様書にdecitex/番手/ply/仕上げ(polished/glazed)を必須項目として入れる
  5. 間違い:紙糸を編んだ綱(braided)を5308に入れる
    • なぜ起きる:「紙糸だから第53類」と決め打ち
    • 正しい考え方:紙糸自体は5308でも、**組んだ綱(braided cordage)**は除外され得ます(56.07等)。
    • 予防策:編組(braided)か単なる撚り合わせかを図面・現物で判定
  6. 間違い:亜麻織物(5309)で「85%閾値」を見ずに号を決める
    • なぜ起きる:混率が外観で分からない/BOMがない
    • 正しい考え方:5309は亜麻含有量85%で号が分かれます。
    • 予防策:混率証明/試験成績書をインボイス・仕様書と紐づけて保管
  7. 間違い:ジュート織物(5310)を「袋(完成品)」と同列に扱う
    • なぜ起きる:ロール生地と縫製済み袋の区別が曖昧
    • 正しい考え方:裁断・縫製済み等は“made up”でCh.53から外れる可能性。
    • 予防策:出荷形態(ロール/裁断/縫製)を品名・仕様書に明記
  8. 間違い:アルファ/エスパルト等の「未加工葉」を5305に入れる
    • なぜ起きる:「繊維っぽい」見た目で判断
    • 正しい考え方:紡織用途を示す加工(ロール、破砕、コーム等)をした場合のみ5305側に来る趣旨(未加工は第14類側)。
    • 予防策:加工状態の証憑(工程、写真)を入手し、用途(紡績/ブラシ/詰物等)を確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。第53類は「繊維→糸→織物」ステージが明確で、HSの取り違いがそのままPSRの条文適用違いになります。
  • よくある落とし穴:
    • 材料側のHS(例:植物繊維=5305)と、最終製品側(例:織物=5311、袋完成品=Ch.63)の取り違い
    • “糸”と“綱(5607)”の境界(線密度)でPSRの見出しが変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 例(代表例として):
    • **CPTPP(TPP11)**の繊維・衣類のPSR(Annex 4-A)は「HS2012分類」で提示されています。
    • RCEPのPSR(Annex 3A)は「HS2012版に基づく」旨が明記されています。
  • 日本税関のPSR検索画面でも、EPAごとに採用HS版(HS2002/2007/2012/2017…)が異なるため、協定が採用するHS版で検索するよう注意喚起されています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定本文のHS版と、輸入申告で使う最新HS(HS2022)がズレる場合、**協定側PSRをHS2022へ読み替え(transposed PSR)**して運用することがあります。例えばRCEPについて、日本の外務省は「原産地証明に記載するHSコード等はHS2022へ転置したPSRに基づく」旨を注記しています(適用開始日も明記)。
    • 転置の考え方(一般論)はWCOのガイダンスも参照すると安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須データ:
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • 「糸/綱」境界の根拠データ(decitex、ply、仕上げ)
    • 織物の混率(重量%)と仕上げ状態(漂白/染色等)
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 協定・運用により異なるため、税関・商工会議所等のガイドに沿って、根拠資料(仕様書・試験成績・工程)を保存

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(第53類のHS6桁レベル)5301〜5311([53.04]欠番含む構造も同様)見出し/号の体系は同一HS付番自体の見直し対応は基本不要(ただし国内コードや協定側HS版には注意)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料:
    • WCOのHS2022第53類(項・号一覧)と、WCOのHS2017第53類(項・号一覧)を突合し、5301〜5311の見出し・号構造が一致することを確認しました。
  • したがって、**HS2017→HS2022の第53類は「変更なし」**と整理します(HS6桁ベース)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第53類はHS2017→HS2022では安定していますが、**古い版(HS2002→HS2007)で大きな整理(5304の消滅)**があります。

版の流れ主な追加・削除・再編旧コード→新コード(または行き先)実務メモ
HS2002→HS20075304(サイザル等)を含む複数の細分が整理され、5305.00へ統合(低取引量を理由とする削除・統合の趣旨が相関資料で説明)(例)HS2002の5304.10/5304.90 等 → HS2007の5305.00 に統合旧資料で「5304」を見た場合は、HS版を確認して読み替えが必要
HS2007→HS2012大きな再編なし(5305.00のまま)HS2012でも[53.04]は欠番構造
HS2012→HS2017大きな再編なし
HS2017→HS2022大きな再編なし

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):紙糸と紙ストリップの取り違い
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):紙を折っただけのストリップを「紙糸」として5308申告(実際は48類側)
    • 起きやすい状況:品名が“paper yarn”“paper cord”で統一されていない
    • 典型的な影響:分類更正、必要書類追加、検査・遅延
    • 予防策:製法(撚り/折り)を仕様書に明記し、写真を添付
  • 事例名:太いヘンプ糸を“糸(5308)”で申告
    • 誤りの内容:第11部注3の“twine/rope”条件に該当するのに5607へ移していない
    • 起きやすい状況:線密度データが無い/番手換算の誤り
    • 典型的な影響:追加納税、原産地規則の再計算、分類照会対応
    • 予防策:decitex/ply/仕上げ情報を仕入先から取得し、申告資料に添付
  • 事例名:紙ストリップ交錯品(46.01)を紙糸織物(5311)で申告
    • 誤りの内容:53.11の除外(紙ストリップの交錯品は46.01)を見落とし
    • 起きやすい状況:マット/帽体/バッグ材料など「織物っぽい」製品
    • 典型的な影響:分類更正、取引先の関税コスト見直し
    • 予防策:原糸が紙糸(撚りあり)か、紙ストリップの組物かを製法で判定
  • 事例名:ジュート織物ロールと袋完成品の混同
    • 誤りの内容:縫製済み袋を5310(織物)として申告(made upでCh.63側の可能性)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が“jute bag cloth”など曖昧
    • 典型的な影響:修正申告、検査強化、納期遅延
    • 予防策:出荷形態(ロール/裁断/縫製)を品名欄に必ず入れる

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 植物検疫は、原則「病害虫が付着する可能性のある植物は検査対象」という考え方で運用され、高度加工品等は対象外となる整理があります(ただし個別判断)。
    • 例えば、中古の植物由来包装材などは別途「検疫指定物品」として扱われ得るため、ジュート袋などの用途・中古/新品・汚れ(土壌付着)には注意が必要です。
    • 確認先:植物防疫所(MAFF)/輸入港での検査手続(必要に応じて輸出国の植物検疫証明書)
    • 実務での準備物(一般論):成分/原料植物、加工工程、用途、梱包状態、汚れ・土壌付着の有無、必要なら輸出国側証明
  • その他の許認可・届出(大麻関連:該当する場合)
    • 第53類には「True hemp(Cannabis sativa L.)」の繊維・糸が含まれますが、HS分類と国内規制(薬物規制・栽培規制)は別物です。
    • 2024年12月12日に、いわゆる大麻取締法等の改正法が施行され、法体系・定義(例:大麻草=Cannabis sativa L.、大麻の定義等)が整理されています。
    • “種子や成熟した茎”およびその製品の扱い(除外規定等)も条文・通知で細かく整理されているため、ヘンプ繊維製品の輸入は、成分・部位・形状・含有成分等を含めて所管官庁の最新情報で確認してください。
    • 確認先:厚生労働省(医薬局等の通知・Q&A)、税関の他法令確認窓口(必要に応じて専門家・事前相談)
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 第53類の一般的な繊維・織物は該当しにくい一方、用途・特殊加工(軍用資材等)で別途規制対象となり得るため、用途と仕様を確認してください(一般論)。

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 原料植物(可能なら学名)/繊維種(亜麻・ジュート・ラミー・コイヤ・紙等)
    • 加工状態(精紡前/糸/織物/完成品)、工程図、写真
    • 糸の場合:decitex、ply、polished/glazed、金属補強の有無
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • “糸→綱(5607)”の判定(第11部注3)
    • “made up”でCh.53から外れないか(第11部注7・8)
    • 紙系は48類・46.01との境界を再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 「roll生地」か「縫製済み」かを品名に明記
    • 混率(重量%)・漂白/染色状態の記載
    • 必要に応じてサンプル写真・仕様書添付
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の採用HS版でPSR確認(税関の注意喚起に従う)
    • トランスポジション(HS2022読み替え)の要否(例:RCEP)
    • BOM、原価、工程、材料HS、証憑保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 植物検疫:加工度・中古/新品・土壌付着等で要否判断(植物防疫所へ)
    • ヘンプ関連:成分・部位・形状等の規制適合性を所管官庁情報で確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022:Chapter 53(参照日:2026-02-22)
    • WCO HS Nomenclature 2022:Section XI Notes(参照日:2026-02-22)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説」第53類(参照日:2026-02-22)
    • 税関「品目別原産地規則」検索画面(HS版注意喚起)(参照日:2026-02-22)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • CPTPP(TPP)Annex 4-A(Textiles and Apparel PSR:HS2012表記)(参照日:2026-02-22)
    • RCEP Annex 3A(PSR:HS2012に基づく旨の記載)(参照日:2026-02-22)
    • 外務省:PSRのHS2022転置に関する注記(参照日:2026-02-22)
    • WCO:Preferential ROOのTechnical Updateガイド(参照日:2026-02-22)
  • 規制・検疫(日本)
    • 農林水産省 植物防疫所:輸入植物検疫の考え方(対象外の考え方含む)(参照日:2026-02-22)
    • 税関通達(輸入植物等の通関取扱い・検疫指定物品の考え方等)(参照日:2026-02-22)
    • 厚生労働省:大麻関係法改正の施行通知(参照日:2026-02-22)
    • 警察庁:改正内容の説明資料(施行日・除外規定等)(参照日:2026-02-22)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第52類:綿及び綿織物(Cotton)

本文での用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 実綿・繰綿(カード/コーム前の原綿)(5201)
    • 綿のくず(糸くず・反毛(ガーネット)を含む)(5202)
    • カード綿・コーム綿(5203)
    • 綿の縫糸(5204)
    • 綿糸(縫糸以外)(5205〜5207:小売用か否か、綿比率で分岐)
    • 綿織物(平織・綾織など、デニム含む)(5208〜5212)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • コットンリンター(綿実の短繊維)第14類(例:1404)
    • 脱脂綿・ウォッディング:3005 または 5601 へ(用途・形態で)
    • 不織布・フェルト:第56類(例:5603 不織布)
    • メリヤス(ニット)生地:第60類
    • タオル地(テリー):5802 など(織物でも特掲が優先)
    • 樹脂・ゴムで含浸/被覆/積層したもの:第39類/40類または第59類へ飛ぶ可能性(状態次第)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 形態が「繊維」か「糸」か「織物」か(5201/5203/5204〜5207/5208〜5212で大きく分岐)
    2. (織物)綿の重量比率(85%閾値)と、混用繊維が主に人造繊維か(5208/5209 vs 5210/5211/5212)
    3. (糸)縫糸か/小売用にした糸か(5204 vs 5205-5207)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • FTA/EPAのPSR(品目別規則)適用:HSを誤ると原産性判断が崩れ、追徴・否認のリスク
    • デニム(“商業名デニム”)の思い込み:HS上の「デニム」定義に合わず、5209.42/5211.42を外すことがある

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し文言+注):まず「繊維・糸・織物」のどれか、そして**部注(第11部注)で除外・定義を確認します。特に混用繊維(綿+化繊など)では第11部注2(混用の考え方)**が強く効きます。
    • GIR6(6桁の決定):織物は「漂白してない/漂白/浸染/異色糸/なせん」など加工状態、さらに「平織・綾織」「重量g/㎡」等で6桁が分かれます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 材質(綿%、他繊維%)
    • 状態(原綿・カード綿・糸・織物)
    • 加工状態(漂白・染色・プリント等)
    • 規格(糸番手/デシテックス、織物重量g/㎡、織組織)
    • 包装形態(糸が“小売用”か)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:これは「綿」関連か?
    • 綿が主素材でも、コットンリンターは第14類(第11部注で除外)に飛びます。
  • Step2:形態で分岐
    • 繊維:カード/コーム前=5201、カード/コーム後=5203、くず=5202
    • :縫糸=5204、それ以外=5205〜5207(綿比率・小売用で分岐)
    • 織物:5208〜5212(綿比率85%、混用繊維、重量200g/㎡、加工状態で分岐)
  • Step3:6桁で最終分岐
    • 糸:単糸/双糸、コームの有無、太さ(デシテックス)
    • 織物:平織/綾織、重量、加工状態(漂白・染色・プリント等)、デニム定義
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第52類(綿織物) vs 第60類(ニット):編んでいるか、織っているか
    • 第52類 vs 第56類(不織布・わた等):織物構造か、繊維を結合したシートか
    • 第52類 vs 第59類/第39類(樹脂被覆等):被覆の有無・程度で飛ぶ

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5201実綿・繰綿(カード/コーム除く)原綿ベール、繰綿リンターは第14類。カード/コーム後は5203へ。
5202綿のくず(糸くず・反毛含む)紡績くず、糸くず、反毛製造工程で出る“くず”や反毛。
5203カード綿・コーム綿スライバー、コーム綿5201との違いは「カード/コーム工程の有無」。
5204綿の縫糸(小売用含む)ミシン糸、縫製用糸**縫糸の定義(仕上げ・Zより等)**を注で確認。
5205綿糸(縫糸以外)綿85%以上・小売用でない工業用綿糸、織布用糸綿比率≥85%&小売用でない。太さ(デシテックス)等で細分。
5206綿糸(縫糸以外)綿85%未満・小売用でない綿/ポリエステル混紡糸(業務用巻)綿<85%&小売用でない。
5207綿糸(縫糸以外)小売用にしたもの手芸用糸、毛糸玉(綿混)「小売用にしたもの」定義は第11部注4で判定。
5208綿織物(綿85%以上、≤200g/㎡)ブロード/ローン系、薄手綿平織重量200g/㎡が閾値。加工状態(漂白等)で細分。
5209綿織物(綿85%以上、>200g/㎡)厚手ツイル、デニム生地**5209.42「デニム」**は定義あり。
5210綿織物(綿<85%、主に化繊混、≤200g/㎡)綿/ポリ混の先染め平織など第11部注2で“綿織物扱い”になった上で条件充足が必要。
5211綿織物(綿<85%、主に化繊混、>200g/㎡)綿/ポリ混の厚地ツイル等5210の>200g/㎡版。デニム(5211.42)定義あり。
5212その他の綿織物綿混で5210/5211に当てはまらない織物他項に特掲されない混用織物の受け皿。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 綿重量比率:85%閾値(糸:5205/5206、織物:5208/5209/5210/5211)
    • 織物重量:200g/㎡閾値(5208 vs 5209、5210 vs 5211、5212も≤200/>200で分岐)
    • 織組織:平織 vs 3枚/4枚綾(ツイル)(織物の6桁で分岐)
    • 加工状態:漂白してない/漂白/浸染/異なる色糸/なせん(プリント)
      ※これらの用語定義は第11部の号注(糸の状態定義等)も参照すると安全です。
    • (糸)小売用にしたもの:コーン・ボール・かせ等の形態と重量閾値で判断
    • デニム定義:5209.42/5211.42は“商業名”でなく定義で判定
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 5204(縫糸) vs 5205〜5207(縫糸以外の糸)
      • どこで分かれるか:縫糸は「縫糸用の仕上げ」「最後のZより」「糸巻重量1kg以下」など注の定義で判定
      • 判断に必要な情報:用途表示だけでなく、撚り方向・仕上加工・糸の構成(双糸等)・包装重量
      • 典型的な誤り:「ミシン糸っぽい」だけで5204に寄せる
    2. 5205/5206(小売用でない糸) vs 5207(小売用)
      • どこで分かれるか:「小売用にした糸」の定義(巻き形態+重量閾値)
      • 判断に必要な情報:糸の形態(コーン/ボール/かせ等)、1個当たり重量(芯含む)
      • 典型的な誤り:EC向け小分けでも重量が基準を超えており“小売用”扱いにならないケース
    3. 5208(≤200g/㎡) vs 5209(>200g/㎡)(綿85%以上の織物)
      • どこで分かれるか:面積重量(g/㎡)
      • 判断に必要な情報:試験成績書(g/㎡)、規格表、サンプル計量
      • 典型的な誤り:ロットによりg/㎡が境界付近で変動しているのに、固定コードで申告
    4. 5209.42 / 5211.42(デニム) vs “その他のツイル”
      • どこで分かれるか:デニムは「異なる色の糸」「3枚/4枚綾」「たて糸は同一色」「よこ糸は未漂白/漂白/灰色浸染/淡色」等の要件
      • 判断に必要な情報:組織図、たて/よこ糸の色・染色条件、現物(表裏)
      • 典型的な誤り:「ジーンズ用=デニム」と決め打ち(黒デニム風、ストレッチ混などで外れることがある)
    5. (日本の国内コードの注意)“ポプリン/ギンガム”の扱い
      • 6桁は同じでも、国内コードで「ギンガム」「ポプリン」等に細分されることがあります。国内例規で定義・規格(糸番手、密度等)が示されています。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第11部注1(c):コットンリンター(第14類)は第11部(=第50〜63類の大枠)から除外
    • 第11部注2:混用繊維(第50〜55類の対象)を、原則「最大重量の繊維」基準で扱う(同率なら番号が後の項へ)
    • 第11部注4:「糸の“小売用にしたもの”」の判定基準(巻き形態・重量閾値)
    • 第11部注5:「縫糸」の定義(仕上加工・Zより等)
    • 第11部注7:「製品にしたもの(made up)」の定義(裁断形状・縁処理等)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例)**綿90%/ポリエステル10%の先染め格子柄平織(170g/㎡)**は、混用でも綿が優位なら第52類側に来ます(この“第52類側に来る”判断に第11部注2が効きます)。
    • 例)同じ綿糸でも、小分けのボール巻で重量が閾値以下なら「小売用」で5207に寄る、など。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • コットンリンター(第14類へ)
    • 樹脂/ゴムの含浸・被覆等(第39類/第40類の物品として扱われる場合がある)
    • 製品にしたもの(made up)(反物ではなく第63類等へ)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第52類は、実質的に**「号注(Subheading Note)」として“デニム”定義**が置かれているのが重要点です。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • デニム(5209.42 / 5211.42):3枚または4枚綾(破れ斜文含む)、たて糸=同一色、よこ糸=未漂白/漂白/灰色浸染/淡色等、などの要件で判定
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 類注としての明確な“除外条文”は多くありませんが、実務上は第11部注1・注7等で他章へ飛ぶケースが典型です(例:リンター→第14類、製品にしたもの→第63類等)。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:コットンリンターを第52類に入れない
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):原料が「原綿」か「リンター」か、繊維長の目安、製造工程(綿実由来の短繊維か)
    • 現場で集める証憑:原料仕様書、工程説明(綿繰り工程の有無)、分析・写真
    • 誤分類の典型:5201(原綿)に入れてしまう
    • 根拠:第11部注でリンター除外、解説でもリンターは14.04と整理
  • 影響ポイント2:混用繊維の“章またぎ”を第11部注2で決める
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):混用率(重量比)、他繊維が何か(人造繊維か等)
    • 現場で集める証憑:混用率表示(仕様書/BOM)、試験成績書、糸/織物の組成証明
    • 誤分類の典型:
      • 綿30%/ポリエステル70%なのに「綿製品だから第52類」としてしまう(実務上は第11部注2で“最大重量の繊維”側に寄る)
      • 逆に、綿優位(例:綿60%/ポリ40%)なのに化繊側へ寄せてしまう
    • 根拠:第11部注2(最大重量の繊維基準)+ 52.10/52.11の解説が「注2適用により綿織物に属し…」と明示
  • 影響ポイント3:糸の“小売用”判定で5207に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):巻き形態(コーン/ボール/かせ等)、1個重量(芯含む)、糸のデシテックス帯
    • 現場で集める証憑:包装仕様、重量(実測)、商品カタログ
    • 誤分類の典型:工業用巻(重い)なのに小売用5207にしてしまう/逆
    • 根拠:第11部注4
  • 影響ポイント4:“デニム”は定義で判定(商業名は参考)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):組織(3/4枚綾、warp-faced)、たて/よこの色条件
    • 現場で集める証憑:織物規格書、組織図、現物確認(表裏)
    • 誤分類の典型:「デニム風」をすべて5209.42/5211.42にする
    • 根拠:第52類号注(デニム定義)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:コットンリンターを5201(原綿)にしてしまう
    • なぜ起きる:取引書類の品名が「cotton」としか書かれていない
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):リンターは第11部から除外され第14類扱い。解説でもリンターは14.04と整理
    • 予防策:仕様書に「リンターか否か」「繊維長の目安」「原料工程」を追記する
  2. 間違い:縫糸(5204)と、一般の綿糸(5205〜5207)を混同
    • なぜ起きる:「糸=縫糸」と思い込み、用途表示だけで判断
    • 正しい考え方:縫糸は注で要件(仕上げ、Zより、糸巻重量等)が定義される
    • 予防策:撚り方向、仕上加工、糸構成(双糸等)、糸巻重量を確認する
  3. 間違い:5207(小売用糸)かどうかを“販売チャネル”で決める
    • なぜ起きる:「小売用=店で売るもの」という誤解
    • 正しい考え方:小売用は“巻き形態+重量”等の定義で判定
    • 予防策:包装仕様(巻き形態、個装重量)を通関資料に添付する
  4. 間違い:混用織物を“綿が入っている”だけで第52類にする
    • なぜ起きる:混用率(重量)を確認していない
    • 正しい考え方:第11部注2で最大重量の繊維により所属決定。52.10/52.11も注2を前提に条件整理される
    • 予防策:混用率(重量比)を必ず取得(試験成績書や規格書)
  5. 間違い:織物の200g/㎡境界(5208↔5209、5210↔5211)を軽視
    • なぜ起きる:重量がインボイス・仕様書にない/ロット差を考慮しない
    • 正しい考え方:見出し自体が重量で分岐しているため、実測・証明が重要
    • 予防策:g/㎡の試験成績書、または社内測定記録を保管(境界品は特に)
  6. 間違い:“デニム”の商業名で5209.42/5211.42に決め打ち
    • なぜ起きる:アパレル業界用語とHS定義のズレ
    • 正しい考え方:デニムは号注で織組織・色条件が定義される
    • 予防策:組織図、たて/よこ糸の色条件を確認(“デニム風”は要注意)
  7. 間違い:裁断済み生地(手芸用)を“製品にしたもの”として第63類にしてしまう(または逆)
    • なぜ起きる:裁断・縁処理の程度を確認していない
    • 正しい考え方:「製品にしたもの」は第11部注7の要件で判断
    • 予防策:裁断形状、縁処理(熱溶着・縁縫い等)の有無を写真で残す

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。誤分類すると、適用すべきPSRが変わり、原産性判断(CTC/RVC等)が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料(糸)のHS最終製品(織物)のHSが混在したまま検討してしまう
    • 繊維分野は「紡績→織布→縫製」など工程要件が出やすく、工程実態の説明資料が不足しがち(協定ごとのガイド確認が必要)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 日本の輸出入申告(国内法上)はHS2022で運用される一方、協定ごとにPSRが参照するHS版が異なる点が重要です。
  • 例(代表的なもの):
    • CPTPP:HS2012参照
    • 日EU・EPA:HS2017参照
    • RCEP:HS2022参照(HS2012から置換されたPSRが採択され、2023/1/1から実施)
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定PSRが旧版HS参照の場合、PSR側のHSに合わせて最終品・材料のコードを対比(相関表・税関の案内等を利用)してから判定する

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 生産工程フロー(紡績・織布・染色/プリント等)、加工委託先情報
    • 混用率・g/㎡・糸番手など“分類にも原産性にも効く”仕様項目をセットで保存

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(本章に関する4桁/6桁体系・デニム号注に実質変更が見当たらない)5201〜5212コード体系・主要文言が同一版ズレ起因の“コード変更”対応は原則不要(ただし協定HS版は別問題)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料:
    • WCOのHS2017 Chapter 52(Cotton)と、HS2022 Chapter 52(Cotton)を突合すると、見出し構成(5201〜5212)および“デニム”号注を含め、内容が同一に見えます。
  • したがって、本資料では 「HS2017→HS2022で第52類の大きな改正はなし」 と整理します。
    ※ただし、実務では“国内コード(8桁/9桁)”や、FTA/EPAが参照するHS版の違いが別途影響します(第6章参照)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第52類は、少なくともHS2007→HS2012→HS2017→HS2022の各版で、主要な見出し体系(5201〜5212)に大きな再編が見当たりません(WCO各版の章条文比較ベース)。

版の流れ主な追加・削除・再編旧コード→新コード(概要)実務メモ
HS2007→HS2012目立った再編なし該当なし6桁の枠組みは概ね維持
HS2012→HS2017目立った再編なし該当なし同上
HS2017→HS2022目立った再編なし該当なし同上

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):リンターを原綿として申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第11部注1(c)で除外されるリンターを第52類に入れてしまう
    • 起きやすい状況:インボイス品名が“cotton”のみ、原料工程説明なし
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、説明資料の追加要求
    • 予防策:原料の定義(リンター/原綿)と工程を事前に確認
  • 事例名:混用織物の章決定ミス(綿が少ないのに第52類)
    • 誤りの内容:第11部注2の最大重量ルールを無視
    • 起きやすい状況:混用率の根拠資料がなく、営業資料だけで申告
    • 典型的な影響:税番変更、統計訂正、FTAでの否認
    • 予防策:混用率試験成績書、BOM、材料証明の確保
  • 事例名:“小売用糸”判定誤りで5207と5205/5206を取り違え
    • 誤りの内容:第11部注4の判定(重量・形態)未確認
    • 起きやすい状況:小分け出荷・リパックが複数国で行われ、形態が混在
    • 典型的な影響:通関時の照会、申告差戻し
    • 予防策:包装仕様(重量・形態)を固定化し、梱包仕様書を添付
  • 事例名:“デニム”の定義未確認で5209.42/5211.42を誤用
    • 誤りの内容:第52類号注(デニム定義)を満たさない
    • 起きやすい状況:黒デニム風、ストレッチ混、特殊染色
    • 典型的な影響:税番更正、追加説明要求
    • 予防策:組織図とたて/よこ色条件を事前確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 植物検疫(輸入):一般論として植物は検疫対象になり得ますが、植物防疫所の案内では、**麻袋・綿・綿布等の繊維製品や粗繊維(原綿含む)で「植物の包装材料として使用されたことのないもの」**は、輸入植物検疫の対象とならない旨が示されています。
    • 注意:同じ「綿」でも、汚染状況や用途(包装材として使われた等)で扱いが変わり得るため、貨物実態と書類を揃えて確認が安全です。
  • その他の許認可・届出(国内流通も含めた実務観点)
    • 繊維製品の表示(家庭用品品質表示法関連):国内販売では繊維製品の品質表示規程に基づく表示が論点になり得ます(混用率など)。
    • 有害物質規制(家庭用品規制法関連):ホルムアルデヒド等の規制・通知があり、対象品目(乳幼児用など)で注意が必要です。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 植物防疫所(輸入植物検疫の要否)
    • 消費者庁(繊維製品の品質表示)
    • 厚生労働省(家庭用品の有害物質規制)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 原料・混用率の根拠(試験成績書、仕様書)
    • 染色/プリント工程情報(規制・表示・原産性に波及)
    • 製品用途(乳幼児用など)と販売形態(国内表示義務の有無)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 形態:繊維/糸/織物/裁断品(製品にしたものか)
    • 組成:綿%、他繊維%(重量比)
    • 規格:糸番手(またはデシテックス)、織組織、g/㎡
    • 加工:漂白・染色・先染め・プリント、コーティング有無
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • リンター除外(第11部注1)確認
    • 混用は第11部注2で章決定
    • “小売用糸”“縫糸”“製品にしたもの”定義を注で再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイスに「cotton fabric」だけでなく、composition / weight / weave / finish を明記
    • g/㎡や混用率の根拠資料を添付(境界品は特に)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版(HS2012/2017/2022)を確認してPSRを見る
    • 材料HS(糸・繊維)と最終品HS(織物)を分けて管理
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 植物検疫:対象外条件(包装材使用歴等)を確認
    • 国内販売:表示・有害物質(対象品目)確認

12. 参考資料(出典)

※参照日:2026-02-22

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 Chapter 52 “Cotton”(見出し・6桁・デニム定義)
    • HS2017 Chapter 52 “Cotton”(新旧比較用)
    • HS2012 Chapter 52 “Cotton”(新旧比較用)
    • HS2007 Chapter 52 “Cotton”(新旧比較用)
  • 日本の税関・公的機関ガイド
    • 税関:関税率表解説(第52類:綿及び綿織物、デニム定義・各項解説)
    • 税関:第11部注(混用繊維、縫糸/小売用糸/製品にしたものの定義 等)
    • 税関:国内分類例規(ポプリン/ギンガム定義・規格)
    • 税関:分類事例(ギンガムの国内細分例)
  • FTA/EPA本文・運用ガイダンス(HS版の違い)
    • 経済産業省:原産地証明書におけるHS版の注意(協定ごとのHS版一覧)
    • 税関:RCEP HS2022版PSRの採択・実施(2023/1/1〜)
    • 外務省:RCEPのHS2022置換PSR採択(案内)
  • 規制(国内)
    • 植物防疫所:輸入植物検疫の対象外となる植物(綿・綿布等の扱い)
    • 消費者庁:繊維製品品質表示規程
    • 厚生労働省:家庭用品(有害物質を含有する家庭用品の規制関連)

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点(任意)

  • HS6桁(例:5208.42)でも、国内コードでは「ギンガム」「ポプリン」等に細分されることがあります。
    • 国内例規では、ギンガムやポプリンの定義・規格(糸番手、密度など)が示されています。
  • 具体例(国内分類事例):
    • 綿90%/ポリエステル10%、先染め格子柄平織、170g/㎡が **5208.42(異色糸の平織)**となり、国内細分でギンガム扱いになった例が示されています(国内コードの例示あり)。
  • 実務メモ:
    • 社内のマスタは「HS6桁」と「国内コード」を分けて管理し、統計・関税率・規制・EPAの申告欄で取り違えない運用にするのが安全です。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • 事前教示を早くするために揃えるとよい情報(一般論):
    • ①現物写真(表裏、耳、組織が見える拡大)
    • ②組成(重量比)と根拠(試験成績書)
    • ③g/㎡、糸番手/デシテックス、組織図
    • ④加工工程(漂白・染色・プリント・コーティング)
    • ⑤用途・販売形態(糸なら小売用か等)
  • “国内分類例規・分類事例”も併用すると、国内細分(ギンガム等)の整理が速くなります。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第51類:羊毛、繊獣毛、粗獣毛及び馬毛の糸並びにこれらの織物(Wool, fine or coarse animal hair; horsehair yarn and woven fabric)

※用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • **羊毛(sheep/lamb)**の原毛(未カード・未コーム)…例:剪毛したグリースウール(5101)
    • カシミヤ、アルパカ、モヘヤ等の獣毛(未カード・未コーム)…例:カシミヤ原毛(5102.11)
    • 羊毛・獣毛のくず(ノイル等)…例:コーミング工程のノイル(5103.10)
    • 羊毛・獣毛の反毛(ガーネットしたもの)…例:反毛原料(5104)
    • 羊毛・獣毛のトップ/カード・コームしたもの…例:羊毛トップ(5105)
    • 毛糸(糸)や毛織物(織物)…例:小売用毛糸(5109)、梳(そ)毛織物(5112)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 羊毛付きの原皮(毛皮付き皮):原毛ではなく原皮扱いになりやすい(41.02 または 43.01)
    • ブラシ製造用の獣毛・剛毛:粗獣毛の定義から除外(05.02)
    • 馬毛(単毛)や馬毛のくず:第51類の「馬毛の糸・織物」とは別で、馬毛そのものは 05.11(※第5類注で定義)
    • フェルト・不織布・特殊糸・ロープ等:加工形態により第56類(例:フェルト 56.02)に移りやすい
    • コーティング/工業用(技術的用途)の織物:条件次第で第59類(例:59.11)に移りやすい
    • 衣類・出来上がり品(made up):第61〜63類へ(「裁断・縫製・裾処理」等があると外れやすい)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 素材の定義:羊毛(sheep/lamb)か、繊獣毛(カシミヤ等)か、粗獣毛か、馬毛か(類注の定義)
    • 加工段階:原毛(未カード/未コーム)→トップ(カード/コーム)→糸→織物、どこまで加工されているか
    • 糸の「小売用」判定:5106/5107/5108(小売用でない)か、5109(小売用)か
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • **希少種由来(例:ビクーニャ)**はCITES/種の保存法の規制が絡み、通関だけでなく譲渡規制・表示要件まで影響します(分類ミス+規制見落としが高コスト)。
    • 未洗浄の毛・毛類は動物検疫(指定検疫物)対象になり得て、書類不備で止まりやすいです。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)を、ビジネスマン向けに説明
    • GIR1(見出し+注で決める)が中心です。第51類は「素材(羊毛/繊獣毛/粗獣毛/馬毛)」と「加工段階(原毛→トップ→糸→織物)」で見出しがほぼ決まるため、まず類注(素材定義)と項の文言に当てはめます。
    • **GIR6(6桁は6桁同士の比較)**で、たとえば「5101.11(剪毛)」か「5101.19(その他)」のように、同一項内で条件(状態・種類)を詰めます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
    • “wool”表記=羊毛(5101)とは限りません。HS上の「羊毛」は羊・子羊に限定され、カシミヤ等は「繊獣毛」(5102など)です。
    • カード(carded)/コーム(combed)済みか糸が小売用の形態かなど、加工度・包装形態が決定打になります。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:繊維原料・糸・織物か/出来上がり品かを確認
    • 裁断・縫製・裾処理などのmade upなら第61〜63類側を疑います。
  • Step2:素材の定義を確定(類注)
    • 羊毛(sheep/lamb)/繊獣毛(カシミヤ等)/粗獣毛/馬毛(単毛は05.11)を切り分けます。
  • Step3:加工段階を確定
    • 原毛(未カード/未コーム:5101/5102)→くず(5103)→反毛(5104)→トップ(5105)→糸(5106〜5110)→織物(5111〜5113)。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第51類 vs 第05類:馬毛(単毛)・ブラシ毛は第05類へ(05.11/05.02)。
    • 第51類 vs 第59類:工業用(技術的用途)やコーティング等で59章へ(例:59.11)。
    • 第51類(糸)内の分岐:小売用(5109)か、工業用(5106〜5108)か。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第51類は4桁見出しが多くないため全列挙します。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5101羊毛(未カード・未コーム)グリースウール、洗い上げ羊毛「羊毛」は羊・子羊に限定。原皮(毛付き皮)は除外。
5102繊獣毛・粗獣毛(未カード・未コーム)カシミヤ原毛、アルパカ原毛、やぎ毛カシミヤ(5102.11)か否か、繊獣毛か粗獣毛か(類注定義)。
5103羊毛・獣毛のくず(反毛除く)ノイル、落ち綿状のくず、糸くず反毛(5104)と混同注意。フロック等は56.01へ行く場合あり。
5104反毛(ガーネットしたもの)反毛原料(shoddy原料)くず(5103)と区別:ガーネット工程の有無が鍵。
5105羊毛・獣毛(カード/コーム済み、トップ等)羊毛トップ、カシミヤトップ「小塊状のコーム羊毛」等、見出しで明示。
5106カード羊毛糸(小売用でない)工業用コーン巻き毛糸5109(小売用)との境界は包装形態・重量基準。
5107コーム羊毛糸(小売用でない)梳毛糸(工業用)5106(カード)との区別=紡績工程(梳毛/紡毛)。
5108繊獣毛糸(小売用でない)カシミヤ糸(工業用)、モヘヤ糸カード/コーム(5108.10/5108.20)で分岐。
5109羊毛または繊獣毛の小売用糸手編み用毛糸玉「小売用にした糸」定義(部注)で判定。
5110粗獣毛糸または馬毛糸馬毛糸、粗獣毛糸「馬毛そのもの(単毛)」は05.11、糸はここ。
5111カード羊毛/カード繊獣毛の織物紡毛織物(厚地)85%基準、重量300g/m²基準、混用(化繊)で分岐。
5112コーム羊毛/コーム繊獣毛の織物梳毛スーツ地85%基準、重量200g/m²基準、混用(化繊)で分岐。
5113粗獣毛または馬毛の織物芯地、内装材、馬毛の織物工業用織物(59.11)に該当すると除外。

(根拠:HS2022 第51類の見出し・号体系、および日本税関解説の類注・総説)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • 状態(原毛):グリース(脂付き)/洗い上げ(脱脂)/化炭処理の有無(5101)
    • 種類(獣毛):カシミヤか、その他の繊獣毛か、粗獣毛か(5102、5105)
    • 工程(糸):カード糸(5106)かコーム糸(5107)、繊獣毛糸(5108)か
    • 包装(糸):「小売用にした糸」か(5109)
    • 組成と重量(織物):85%以上ルール、g/m²(5111は300、5112は200)
    • 混用相手(織物):主に/専ら「人造繊維フィラメント」か「ステープル」か(5111.20/5111.30、5112.20/5112.30)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    • (1) 5101(羊毛・未カード/未コーム) vs 5105(カード/コーム羊毛・トップ)
      • どこで分かれるか:カード/コーム工程を経ているか、トップ等の形態か。
      • 判断に必要な情報:製造工程(カード・コーム有無)、形状(トップ、スライバー等)、写真。
      • 典型的な誤り:「洗い上げ=加工品」と誤解して5105へ寄せる(洗浄だけなら5101のままのことが多い)。
    • (2) 5103(くず) vs 5104(反毛)
      • どこで分かれるか:ガーネット(反毛)工程を経た“再生繊維状”か、単なるくず(ノイル、落ち綿状)か。
      • 判断に必要な情報:発生工程(ガーネット工程の有無)、繊維の状態(長さ・絡み・混入物)、仕様書。
      • 典型的な誤り:「再生原料=全部5104」としてしまい、ノイル等(5103)を誤る。
    • (3) 5106/5107/5108(小売用でない糸) vs 5109(小売用糸)
      • どこで分かれるか:部注の「小売用にした糸」定義(巻き方・重量・支持体など)に該当するか。
      • 判断に必要な情報:1個当たり重量、巻き形態(玉・かせ・コーン等)、ラベル、デシテックス(dtex)、単糸/双糸。
      • 典型的な誤り:工業用コーン巻きを「毛糸=5109」としてしまう。
    • (4) 5111(カード系織物) vs 5112(コーム系織物)
      • どこで分かれるか:使用糸がカード(紡毛)かコーム(梳毛)か。重量基準(300/200)や85%基準は“項内”の分岐。
      • 判断に必要な情報:糸種(梳毛/紡毛)、織物規格(目付g/m²)、混用率(重量%)。
      • 典型的な誤り:「スーツ地=5112」と決め打ち(実際はカード系もあり得る)。
    • (5) 5113(粗獣毛/馬毛織物) vs 5911(技術的用途の織物)
      • どこで分かれるか:工業用・技術的用途に該当する性状/用途か(59.11側の要件確認)。
      • 判断に必要な情報:用途(フィルター/ふるい等)、仕様(目開き、耐熱等)、販売形態(産業資材用途の明確性)。
      • 典型的な誤り:「馬毛の織物=必ず5113」として工業用織物の除外を見落とす。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 混用(異なる繊維が混ざる)時の原則:第50〜55類の多くは、原則として“重量で優勢な繊維”で分類し、同程度なら番号が後の見出しへ寄せる考え方です(部注で整理)。
    • **「小売用にした糸」**の定義:糸の分類(5106〜5109)で決定打になります。
    • 太さ(dtex)でロープ扱いに飛ぶルールはありますが、羊毛・獣毛糸は原則としてその例外に入る点が実務的に重要です(=太い毛糸だから即56.07とはしない)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:ウール50%+ポリエステル50%の織物は、「名称」ではなく混用率(重量%)で判断します。優勢がなければ、該当する見出しのうち番号が後の方へ寄るルールを使います。
    • 例:手編み用の毛糸玉でも、重量・巻き方・支持体が定義を満たさなければ小売用にならず、5106〜5108側に残ることがあります(例外規定も含め確認)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • **「made up」**の扱い:裁断・縫製などが入ると、第50〜55類(原料〜織物の章)ではなく、56〜63類(出来上がり品側)へ。
    • 工業用(技術的用途):織物でも条件により59.11へ。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第51類の類注は、まず**「羊毛」「繊獣毛」「粗獣毛」を定義し、粗獣毛からブラシ毛(05.02)馬毛(05.11)**を除外しています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 羊毛:羊・子羊の天然繊維。
    • 繊獣毛:カシミヤやぎ、アルパカ、ラマ、ビクナ、らくだ、やく、うさぎ等の毛(類注列挙の範囲)。
    • 粗獣毛:上記以外の獣毛(ただしブラシ毛・馬毛は除外)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • ブラシ製造用の獣毛・剛毛 → 05.02
    • 馬毛(単毛)・馬毛のくず → 05.11(馬毛の糸・織物は第51類側)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:“wool”表記の誤解(羊毛≠獣毛全般)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):動物種(sheep/lambか、goat/camelid等か)、原産証明や検査書、商品説明書。
    • 現場で集める証憑:仕様書(素材名+学名/動物名)、混用率証明、写真、サプライヤー宣誓書。
    • 誤分類の典型:「カシミヤ=高級ウール」として5101(羊毛)へ入れてしまう(正しくは5102/5105/5108/5109等)。
  • 影響ポイント2:粗獣毛の定義からの除外(ブラシ毛・馬毛)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):用途(ブラシ用か)、部位(たてがみ/尾毛か)、原料形態(単毛か糸か)。
    • 現場で集める証憑:用途資料(ブラシ用途/繊維用途)、工程表(紡績の有無)、サンプル写真。
    • 誤分類の典型:馬毛(単毛)を5110(糸)扱いにしてしまう/ブラシ毛を粗獣毛として5102へ入れてしまう。
  • 影響ポイント3:混用(ウール×化繊等)の“重量ルール”
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):繊維ごとの重量%(試験成績書がベスト)。
    • 現場で集める証憑:組成分析(JIS等の試験)、BOM、糸番手・目付(織物)。
    • 誤分類の典型:名称や用途で「ウール製」と決め打ちし、重量優勢の化繊側を見落とす。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:カシミヤ原毛を「羊毛(5101)」で申告
    • なぜ起きる:商流で“cashmere wool”などと呼ばれ、HS上の「羊毛」定義(sheep/lamb限定)を見落とすため。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):類注で羊毛と繊獣毛が別定義。カシミヤは繊獣毛側(5102.11等)へ。
    • 予防策:サプライヤーに「動物種」「学名」「混用率」を必ず確認。品名は「cashmere hair」等に寄せて記載。
  2. 間違い:カード/コーム済み(トップ等)を未カード扱い(5101/5102)で申告
    • なぜ起きる:洗浄とカード/コームを混同しやすい。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):カード/コーム済みは5105(トップ等)。未カード/未コームは5101/5102。
    • 予防策:工程フロー(カード・コーム有無)と形状(トップ/スライバー)写真を入手。
  3. 間違い:工業用コーン巻き糸を「小売用毛糸(5109)」にしてしまう
    • なぜ起きる:毛糸=小売用という先入観。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):「小売用にした糸」は部注定義で判定。工業用形態なら5106〜5108へ。
    • 予防策:1個当たり重量、巻き形態(コーン/チーズ/玉)、ラベル有無、dtexを確認。
  4. 間違い:ノイル等の「くず(5103)」を「反毛(5104)」にしてしまう(または逆)
    • なぜ起きる:どちらも“再生・端材”に見えるため。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):5103はくず(ノイル等)、5104はガーネット工程で得た反毛。
    • 予防策:発生工程(紡績くず/反毛工程)を仕入先に確認し、製造記録を保管。
  5. 間違い:馬毛(単毛)を「馬毛糸(5110)」で申告
    • なぜ起きる:馬毛という単語が同じで混乱。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):馬毛そのものは05.11、馬毛“糸”や“織物”が第51類。
    • 予防策:形態(単毛/糸/織物)を写真で証明。用途も併記。
  6. 間違い:毛織物(5111/5112)を、コーティング・ラミネートの有無を確認せず申告
    • なぜ起きる:表面処理が軽微に見える、または情報が伝わらない。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):コーティング・技術的用途等は第59類に移る可能性。
    • 予防策:断面写真、樹脂種別、コート量、用途(工業資材か衣料か)を確認。
  7. 間違い:カード織物(5111)とコーム織物(5112)を用途だけで決める
    • なぜ起きる:「スーツ=梳毛」などの経験則。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):見出しは糸の種類(カード/コーム)で分かれる。
    • 予防策:糸種(梳毛/紡毛)を製造側に確認し、規格書を添付。
  8. 間違い:獣毛を通常の繊維原料として扱い、動物検疫・CITESを見落とす
    • なぜ起きる:繊維=“非食品だから規制なし”と誤解。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):毛類は指定検疫物になり得る。ビクーニャ等はCITES/種の保存法が絡む。
    • 予防策:仕入先から「動物種」「処理状態(洗浄・消毒)」「CITES許可の要否」を事前に確認し、手続担当(通関+法規)を巻き込む。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること(誤ると原産性判断が崩れる)
    • 例:同じ「毛糸」でも、5106/5107/5108/5109でPSRが変わり得ます。まず**最終製品のHS(国内コード含む)**が確定しないと、材料側のHSや工程の評価がズレます。
  • よくある落とし穴(材料のHS、最終製品HS、工程の評価軸)
    • 原料(トップ5105)→糸(5106〜)→織物(5111〜)と工程段階でHSが動くため、材料HSを“完成品と同じ”にしてしまうのが典型的な落とし穴です。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 「当該協定が参照するHS版(例:HS2012参照 等)」を明記
    • たとえばRCEPは当初HS2012ベースでしたが、HS2022に置換したPSRが採択され、2023-01-01から実施されています。
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
    • 協定や税関のPSR検索で指定すべきHS版を誤ると、PSR適用自体を間違えます。税関の原産地規則ポータル等で確認してください。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • HS改正時はWCO相関表等で旧→新を確認し、製品側HSだけでなく材料側HSも同様に見直すのが安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • 繊維は混用が多いので、重量%(ウール/化繊等)をBOMに落としておくとPSR検討が速いです。
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 仕入証明、工程表、加工記録、試験成績(混用率・目付)、原産地資料を取引単位で保存(協定ごとの年限は協定・運用で確認)。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(少なくともHS6桁の構造)5101〜5113見出し・号の体系が同一付番ロジックは継続。国内コードの改定有無は国別に要確認。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 変更なし
    • HS2017版とHS2022版の第51類の見出し・号(5101〜5113)を比較すると、構造が同一です。
    • さらに、WCOのHS2017↔HS2022相関表は“変更・新設がある号”を中心に掲載する趣旨で公表されていますが、第51類の号(5101等)は変更対象として現れません(=少なくともHS6桁の改廃は見当たりません)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理
    (※第51類は、少なくともここで参照した各版のHS6桁体系では大きな改廃が確認できません。)
期間主な追加・削除・再編(HS6桁)旧コード→新コードの対応
HS2007→HS2012変更なし(5101〜5113の体系維持)該当なし
HS2012→HS2017変更なし(5101〜5113の体系維持)該当なし
HS2017→HS2022変更なし(5101〜5113の体系維持)該当なし

根拠:各版の第51類条文(コード表)の比較。


9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“カシミヤ=羊毛”でHS誤り
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注の定義(羊毛と繊獣毛の区別)を無視。
    • 起きやすい状況:インボイス品名が“cashmere wool”のみ、素材証明なし。
    • 典型的な影響:修正申告、関税差額、原産地規則(PSR)再判定。
    • 予防策:動物種・混用率の証明を添付し、品名に“cashmere hair”など識別を入れる。
  • 事例名:馬毛(単毛)を5110/5113で申告
    • 誤りの内容:馬毛(単毛)は05.11であり、第51類の対象は馬毛「糸」または「織物」。
    • 起きやすい状況:原料名だけで分類、形態(糸化の有無)を確認しない。
    • 典型的な影響:分類差替え、書類差戻し、検査対応。
    • 予防策:形態写真(単毛/糸/織物)と用途資料を準備。
  • 事例名:工業用の馬毛織物を5113で申告
    • 誤りの内容:59.11の技術的用途の織物に該当する可能性を未確認。
    • 起きやすい状況:用途が「ふるい・フィルター」なのに衣料用途として申告。
    • 典型的な影響:用途確認・資料追加要求、修正申告。
    • 予防策:用途仕様書(工業資材か否か)・性能表・販売形態を事前提出。
  • 事例名:未洗浄毛類の動物検疫手続の見落とし
    • 誤りの内容:指定検疫物(毛等)に該当するのに、検査証明書や申請手続が未整備。
    • 起きやすい状況:繊維担当のみで進め、法規(動物検疫)を見ない。
    • 典型的な影響:搬入停止、保留、追加書類、納期遅延。
    • 予防策:出荷前に動物検疫所の手続・必要書類を確認し、通関計画に組み込む。

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • 検疫・衛生(SPS等)
      • 動物検疫(家畜伝染病予防法):指定検疫物には、対象動物およびその「皮・毛」等が含まれます。輸入時は検査申請・証明書添付等が必要になる場合があります。
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制
      • **ビクーニャ(Vicugna vicugna)**は国内法(種の保存法)で国際希少野生動植物種に指定され、毛や毛皮製品等の譲渡が原則禁止(登録等の例外あり)。
      • CITES上も、特定個体群の毛を用いた製品は要件(原産国表示ロゴ等)やCITES許可書提出が求められる旨の案内があります。
    • その他の許認可・届出
      • 繊維製品の品質表示:最終製品として日本国内で販売する場合、混用率表示等のルール(繊維製品品質表示規程)が実務上重要です(輸入通関そのものとは別軸ですが、商流で要求されやすい)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 動物検疫所(MAFF):指定検疫物・輸入畜産物の検査手続
    • 経産省:CITES(ビクーニャ表示等)
    • 環境省:種の保存法(ビクーニャ製品の譲渡規制)
    • 消費者庁:繊維製品の表示
  • 実務での準備物(一般論):
    • 動物検疫:品名・数量・原産国、処理状態(洗浄/消毒)、輸出国政府機関の証明書、輸入検査申請書類。
    • CITES/種の保存法:動物種特定資料、CITES許可書/証明書、必要表示(ロゴ等)、国内登録の要否確認。

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 動物種(羊/やぎ/ラクダ科など)、混用率(重量%)、形態(原毛/トップ/糸/織物)、カード/コームの有無
    • 原毛なら:グリース/洗い上げ/化炭処理の有無
    • 糸なら:単糸/双糸、dtex、1個重量、巻き形態(玉/かせ/コーン)、ラベル表示
    • 織物なら:目付(g/m²)、組織、混用相手(化繊フィラメント/ステープル)、用途(衣料/芯地/工業資材)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注の定義(羊毛/繊獣毛/粗獣毛/馬毛)に矛盾がないか
    • 小売用糸判定(5109)を部注定義で再確認
    • 工業用織物(59.11)やコーティング(59章)への飛びを用途・性状で再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「wool(羊毛)」を使う場合、羊由来である根拠資料を添付
    • 混用率証明、工程表、写真、目付・糸番手などの規格書を準備
    • 日本の**国内コード(9桁等)**はHS6桁と別物なので、国内表で再確認(通関業者とすり合わせ)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 税関ポータル等で対象協定・HS版を確認し、PSRを特定
    • BOM(材料HS・原産国・重量/原価)、工程情報、RVC計算の前提を揃える
    • 証憑保存(協定ごとに要件確認)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 動物検疫:指定検疫物(毛等)に該当するか、検査証明書が必要か
    • CITES/種の保存法:ビクーニャ等の希少種由来か、表示・許可・登録が必要か

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Chapter 51(見出し・号、定義) (参照日:2026-02-22)
    • HS2017 Chapter 51(比較用) (参照日:2026-02-22)
    • Section XI Notes(混用・小売用糸等) (参照日:2026-02-22)
    • Correlation Tables HS2017–2022(Table I/II、位置づけ) (参照日:2026-02-22)
    • Chapter 5 Notes(馬毛の定義・05.11での扱い) (参照日:2026-02-22)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:関税率表解説 第51類(類注・総説・除外例) (参照日:2026-02-22)
    • 税関:事前教示(制度概要/注意点、Eメール事前教示) (参照日:2026-02-22)
    • 税関:RCEPのHS2022版PSR採択(2023-01-01実施) (参照日:2026-02-22)
    • 外務省:RCEPのHS2022置換PSR(運用開始等) (参照日:2026-02-22)
  • 検疫・規制
    • 動物検疫所:検査が必要な物(指定検疫物等)/輸入畜産物の検査手続 (参照日:2026-02-22)
    • 経産省:ビクーニャ毛製品の表示(ロゴ等)とCITES許可書提出 (参照日:2026-02-22)
    • 環境省:ビクーナ製品の譲渡規制(種の保存法) (参照日:2026-02-22)
    • 消費者庁:繊維製品品質表示規程/表示ガイド (参照日:2026-02-22)

※Web参照は「参照日(2026-02-22)」を付記しました。


免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。