用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)。
0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)
- この類に入る代表例(3〜6個):
- 腕時計・懐中時計・ストップウォッチ(ケース材質で
9101/9102を分けます)。 - 置時計(ウォッチムーブメント入りの置時計は
9103、それ以外の一般の時計は9105が中心)。 - 車両・航空機等の計器盤用時計(
9104)。 - タイムレコーダー等の時刻記録/時間間隔の測定・表示機器(条件付きで
9106)。 - タイムスイッチ(条件付きで
9107)。 - ムーブメント(完成品
9108/9109、未完成・セット等9110)や、ケース・バンド・部品(9111〜9114)。
- 腕時計・懐中時計・ストップウォッチ(ケース材質で
- この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
- スマートウォッチ(通信機能中心のウェアラブル):日本税関の分類例では
8517.62(第85類)に分類される例があります(腕時計に見えても第91類とは限りません)。 - 歩数計:
9029(第90類)として除外例が明記されています。 - 原子時計(一次基準源として同期信号生成用):
8543(第85類)として除外例が明記されています。 - 時計用ガラス・おもり:材質により他章(第91類注で除外)
- 携帯用時計の鎖:
7113または7117(第71類) - はん用性の部分品(例:多くのねじ等):第15部注2の「はん用性の部分品」側へ(ただし“時計用ばね”の扱いは注意)。
- スマートウォッチ(通信機能中心のウェアラブル):日本税関の分類例では
- 実務での最重要分岐(1〜3個):
- 完成品の種類:携帯用時計(
9101/9102)か、置時計等(9103/9104/9105)か、記録機・スイッチ(9106/9107)か、部品(9108〜9114)か。 - ケース材質:
9101は「ケース全体が貴金属/貴金属張り」等に限定(類注2)。 - “ウォッチムーブメント”該当性(類注3のサイズ定義):
9103(ウォッチムーブメント入りの時計)・9108(ウォッチムーブメント完成品)などで決定的。
- 完成品の種類:携帯用時計(
- (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
- “見た目が時計”でも、通信・計測が主機能のウェアラブルは第85類/第90類側になり得る(関税率だけでなく、電波法・PSE・CITES等の周辺コンプライアンスも連鎖します)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)
1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)
- この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)
- GIR1:見出し(項)文言と、関連する部注・類注でまず決めます。第91類は類注1〜4が強く効きます。
- GIR6:6桁(号)は、同一レベルの号の文言・関連注で決めます。
- GIR2(a):未完成・未組立で提示される「ムーブメントセット」等は、GIR2(a)が絡みやすく、結果として
9110を検討する場面が多いです。 - GIR3(b):複合機能品(典型:スマートウォッチ)は「本質的特性」で判断する枠組みが現実に使われています(日本税関分類例でもGIR1・3(b)・6の適用が示されています)。
- 「品名だけで決めない」ための観点
- 用途(時間表示なのか、通信・計測が主なのか)
- 構造(ムーブメントの種類・サイズ、同期電動機の有無)
- 材質(特に
9101のケース材質) - 状態(完成品/未完成・セット/部品単体)
- 提示形態(時計本体とバンドが“同梱だが未装着”など)
1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)
- Step1:「時間の測定・表示・記録・切替」に関係する品か?
- まず第91類の射程かを確認(ただし、スマートウォッチや歩数計のように他類に明確に飛ぶ例もあります)。
- Step2:完成品か/ムーブメントか/ケース・バンドか/その他部品か
- 完成品→
9101〜9107 - ムーブメント→
9108〜9110 - ケース→
9111/9112、バンド→9113、その他部品→9114
- 完成品→
- Step3:完成品の場合の枝分かれ
- 携帯用時計(腕時計・懐中時計等)→
9101/9102(ケース材質で分岐) - 置時計等でウォッチムーブメント入り→
9103(ただし車載等は9104) - 車両・航空機・宇宙機・船舶向けの計器盤用等→
9104 - その他の時計→
9105(原子時計は除外例あり) - 時刻記録/時間間隔の測定・表示(ムーブメント又は同期電動機が要件)→
9106/9107
- 携帯用時計(腕時計・懐中時計等)→
- Step4:類注1の除外に当たらないか最終チェック
- 時計用ガラス・おもり/携帯用時計の鎖/はん用性の部分品/軸受関連/第85類品の扱い等。
- よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
- 第91類 vs 第85類:スマートウォッチ等(通信主機能なら第85類の例)。
- 第91類 vs 第90類:歩数計のように第90類へ飛ぶ例が明記。
- 第91類内:
9103(ウォッチムーブメント入りの時計)と9105(その他の時計)の境界=類注3のサイズ定義。
2. 主な項(4桁)とその内容
2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)
※ご指定どおり、第91類の4桁見出しは全て掲載します。
| 項番号(4桁) | 見出しの要旨(日本語) | 典型例(製品名) | 重要な分岐条件/除外/注意点 |
|---|---|---|---|
| 9101 | 貴金属/貴金属張りケースの携帯用時計(ストップウォッチ含む) | 金無垢ケース腕時計、貴金属張りケースの高級腕時計 | 類注2で範囲が限定。「ケース全体」が要件。象眼は9102側へ。 |
| 9102 | 9101以外の携帯用時計(ストップウォッチ含む) | ステンレスケース腕時計、樹脂ケース腕時計、一般のストップウォッチ | 9101該当しない携帯用時計は基本こちら。歩数計は除外例。 |
| 9103 | ウォッチムーブメントを有する時計(携帯用時計・9104除く) | 小型ムーブメント入り目覚まし時計、小型置時計 | “ウォッチムーブメント”の定義(厚さ≤12mm・幅/長さ/直径≤50mm等)で判定。 |
| 9104 | 車両・航空機・宇宙機・船舶用等の計器盤用時計 | 自動車ダッシュボードクロック、航空機計器時計 | 用途・装着先が決定要素。 |
| 9105 | その他の時計(携帯用時計除く) | 掛時計、置時計、振り子時計、船舶用クロノメーター等 | 原子時計は除外例(8543)。 |
| 9106 | 時刻記録機・時間間隔測定/表示機(ムーブメント又は同期電動機付き) | タイムレコーダー、タイムスタンプ、ピジョンタイマー等 | “ムーブメント又は同期電動機”が要件。 |
| 9107 | タイムスイッチ(ムーブメント又は同期電動機付き) | タイマー付きスイッチ、時間でON/OFFするスイッチ | “ムーブメント又は同期電動機”の有無を仕様で確認。 |
| 9108 | ウォッチムーブメント(完成品) | クォーツ腕時計ムーブメント、機械式腕時計ムーブメント | 類注3のサイズ定義+“完成品”要件。デジタル表示部が不可分の場合の注意あり。 |
| 9109 | その他の時計用ムーブメント(完成品) | 壁掛時計のムーブメント、同期モーター時計用ムーブメント | ウォッチムーブメント定義に外れるもの。 |
| 9110 | ムーブメントセット等(未組立/一部組立/未完成/ラフ) | ムーブメントセット、未完成ムーブメント | GIR2(a)が絡みやすい領域。完成品 9108/9109 と混同注意。 |
| 9111 | 携帯用時計のケース及び部分品 | 腕時計ケース、裏ぶた、ガラス縁等 | ケース単体。バンドは9113。ケース用の“はん用性の部分品”(例:ケース用ばね等)は除外に注意。 |
| 9112 | 携帯用時計以外の時計のケース等及び部分品 | 掛時計ケース、タイムレコーダー筐体等 | “時計のケースに類するか”の判断が必要(計測器の筐体様式なら他類の可能性)。 |
| 9113 | 携帯用時計のバンド・ブレスレット等及び部分品 | レザーバンド、金属ブレス、シリコンバンド | バックル等は材質により除外(例:7115/8308)。時計と同梱でも未装着だと扱いが変わり得る点に注意。 |
| 9114 | その他の時計部品 | 文字板、地板・受け、針、ぜんまい等 | 類注1の除外(ガラス・おもり・はん用性部分品等)を落としやすい。ぜんまい等はここ(HS2022は9114.90側で処理)。 |
2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)
- 分岐条件の整理(この類で頻出)
- ケース材質(9101 vs 9102):
9101は「貴金属/貴金属張りケース」に限定(類注2)。- “貴金属張り(metal clad)”は、第71類注7で「はんだ付け・ろう付け・溶接・熱間圧延等の機械的方法で貴金属被覆を付したもの」と定義されています。
- ただし、第91類類注2が「象眼ケースは9102」と明示しており、ここは“文脈により別”の典型です。
- “ウォッチムーブメント”該当性(9103/9108/9109等):
- 厚さ ≤12mm、幅/長さ/直径 ≤50mm 等の寸法要件。
- 日本税関解説では、寸法の測り方(突起部の扱い等)の実務注意が示されています。
- 表示方式(機械式表示のみ/光電式表示のみ 等):
9102.12(光電式表示のみ)等、デジタル表示の時計で効きやすい枝。
- 完成品か未完成・セットか(9108/9109 vs 9110):
- “完成品”の要件を満たさない場合は
9110側へ寄ります。
- “完成品”の要件を満たさない場合は
9114の中の重要枝:9114.30(文字板)、9114.40(地板・受け)、9114.90(その他)。- HS2017にあった「ぜんまい等(
9114.10)」はHS2022では廃止され、ぜんまい等は9114.90で扱うのが実務上の要点です。
- ケース材質(9101 vs 9102):
- 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
9101vs9102- どこで分かれるか:ケース材質が類注2の条件を満たすか。
- 判断に必要な情報:ケースの材質構成、張り(clad)か、象眼か、裏ぶた等を含め“ケース全体”の材質。
- 典型的な誤り:「金色=9101」と早合点(めっき・装飾は別概念になり得ます)。
9103vs9105- どこで分かれるか:置時計等がウォッチムーブメント(類注3の寸法)かどうか。
- 判断に必要な情報:ムーブメント寸法、構造(調速機構等)、仕様書/図面。
- 典型的な誤り:「小さい置時計=9103」と決めつけ(寸法と機構の確認不足)。
9108/9109vs9110- どこで分かれるか:完成品(complete and assembled)か、未組立/一部組立/未完成/ラフか。
- 判断に必要な情報:部品構成、組立状態、表示部の有無(デジタル表示が不可分の場合の注意)。
- 典型的な誤り:部材一式を「完成ムーブメント」と扱い
9108/9109に寄せてしまう。
9113vs9114- どこで分かれるか:それがバンド/ブレスレットか(
9113)、それ以外の部品か(9114)。 - 判断に必要な情報:装着用途、形状(バンドとしての特性)、バックル等付属の材質。
- 典型的な誤り:金属ブレスを「部品」として
9114にしてしまう。
- どこで分かれるか:それがバンド/ブレスレットか(
3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)
3-1. 関連する部注(Section Notes)
- ポイント要約:
- 第91類注1(c)が参照するのが、**第15部注2(はん用性の部分品)**です。多くのねじ・ばね等は「時計っぽい用途」でも第91類に入らない可能性があります。
- 第15部注2(b)では、ばね類のうち**“clock or watch springs”は例外的に第91.14項**とされる一方、ケース用のばね等は別扱いになり得るため、用途・部位の確認が重要です。
- 実務での意味(具体例つき):
- 例:腕時計のムーブメント用ぜんまい/ひげぜんまい →
9114(HS2022では通常9114.90)。 - 例:時計ケース周りで使う“はん用性”のばね(ケース用ばね等)→ 第15部注2の対象として除外され得る(日本税関解説に注意書きあり)。
- 例:腕時計のムーブメント用ぜんまい/ひげぜんまい →
- “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
- ねじ・ピン・バックル等が、はん用性の部分品(第15部)や他章の構成品として整理される。
3-2. この類の類注(Chapter Notes)
- ポイント要約:
- 類注1:時計用ガラス・おもり、時計鎖、はん用性の部分品、軸受、未組立の第85類品などを除外。
- 類注2:
9101はケース材質により範囲限定。象眼等は9102。 - 類注3:ウォッチムーブメントの定義(調速機構+寸法条件)。
- 類注4:時計用にも他用途にも使えるムーブメント・部品でも、除外(類注1)に当たらなければ第91類に分類。
- 用語定義(定義がある場合):
- 「ウォッチムーブメント」=類注3の定義(厚さ・外形寸法が鍵)。
- 除外規定(除外先の類・項も明記):
- 時計用ガラス・おもり(材質別)、携帯用時計の鎖(
7113/7117)、軸受関連(7326/8482)、原子時計(8543例)等。
- 時計用ガラス・おもり(材質別)、携帯用時計の鎖(
4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)
- 影響ポイント1:類注2(9101の限定)で
9101↔9102が変わる- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- ケースの材質構成(裏ぶた等を含む)
- “貴金属張り(clad)”か、単なる装飾・象眼か
- 現場で集める証憑:
- 材料証明(ミルシート/材質証明)、図面、断面構造(張り構造かどうか)、カタログ
- 誤分類の典型:
- ケースが一部卑金属(例:裏ぶたが鋼)なのに
9101としてしまう(税関解説で9102と示例)。
- ケースが一部卑金属(例:裏ぶたが鋼)なのに
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 影響ポイント2:類注3(ウォッチムーブメント定義)で
9103/9108と9105/9109側が変わる- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 厚さ・幅/長さ/直径の寸法、調速機構(てん輪・水晶等)
- 現場で集める証憑:
- ムーブメント仕様書、寸法図、部品表、写真
- (日本税関解説で示される)測り方の注意に沿った測定結果
- 誤分類の典型:
- 小型時計のつもりで
9103に入れたが、寸法が>50mmで9105/9109側だった。
- 小型時計のつもりで
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 影響ポイント3:類注1(c)×第15部注2(はん用性の部分品)で、部品が第91類から外れる
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- その部品が「はん用性の部分品」に該当するか(ねじ・ピン等)、素材(卑金属/プラ/貴金属)
- “時計用ばね”か(ぜんまい等)/ケース用のばね等か
- 現場で集める証憑:
- 部品図、用途(ムーブメント内か/ケース・バンド周辺か)、材質表
- 誤分類の典型:
- ねじ・バックル等を「時計部品」として
9114に寄せる(除外明記)。
- ねじ・バックル等を「時計部品」として
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
5. 分類でよくある間違い(原因→対策)
- 間違い:スマートウォッチを
9102(腕時計)で申告してしまう- なぜ起きる:外観が腕時計で、時刻表示機能もあるため。
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):通信機能中心のウェアラブルが **
8517.62(第85類)**となる分類例が示されており、機能・構造により第91類から外れ得ます。 - 予防策:仕様書で「無線トランシーバーの有無」「接続形態」「主要機能(通知・通話・データ送受信等)」「搭載センサー」を確認し、必要に応じて分類例や事前教示を参照。
- 間違い:歩数計を
9102や9105に入れてしまう- なぜ起きる:時間表示機能が付いている/腕に装着する等、時計に近い形状のため。
- 正しい考え方:日本税関解説で「歩数計は
9029」として除外例が明記。 - 予防策:「時間表示=時計」と短絡しない。主目的(歩数の計測)と該当章の除外例を確認。
- 間違い:時計用ガラス(風防)を
9114にしてしまう- なぜ起きる:「時計部品」だから第91類と思い込み。
- 正しい考え方:類注1(a)で時計用ガラスは第91類から除外され、材質で分類。
- 予防策:部品でも、類注の除外(ガラス・おもり・鎖等)を必ずチェック。
- 間違い:バンド・ブレスレットを
9114にしてしまう- なぜ起きる:時計部品の一種と考える。
- 正しい考え方:バンド・ブレスは
9113。バックル等は材質により7115/8308等へ外れることも明記。 - 予防策:バンド単体か、時計本体とセットか(同梱・未装着の扱い)まで確認。
- 間違い:“金色のケース”を理由に
9101にしてしまう- なぜ起きる:「金っぽい=貴金属」と誤認。
- 正しい考え方:
9101は類注2で限定。さらに“貴金属張り(clad)”の定義(第71類注7)と、象眼は9102とする類注2の特則がある。 - 予防策:材質証明・断面構造で「貴金属張り」か、めっき・象眼かを確認。裏ぶた材質も含め“ケース全体”で判断。
- 間違い:置時計を
9105と決め打ちし、9103を見ない- なぜ起きる:置時計=
9105の思い込み。 - 正しい考え方:ウォッチムーブメント入りの時計は
9103。定義(類注3)で判定。 - 予防策:ムーブメント寸法(≤12mm・≤50mm)と構造を確認し、
9103を必ず検討。
- なぜ起きる:置時計=
- 間違い:原子時計を
9105としてしまう- なぜ起きる:名称に「時計」が入っているため。
- 正しい考え方:日本税関解説で、一次基準源としての原子時計は
8543として除外例が明記。 - 予防策:用途(一次標準か、一般の時計か)と仕様(同期信号生成等)を確認。
- 間違い:ムーブメントセットを完成ムーブメント(
9108/9109)として申告- なぜ起きる:部材が揃っている=完成品と誤認。
- 正しい考え方:未組立・一部組立・未完成・ラフは
9110。GIR2(a)の考え方も絡む。 - 予防策:組立状態、表示部の有無(不可分の表示部が欠けると完成とみなされない等)を確認。
6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点
6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係
- HSの付番がPSR選択に直結します(最終製品のHSが違うと、適用PSR自体が変わります)。
- よくある落とし穴:
- “見た目時計”で第91類と思い込み→実は第85類(スマートウォッチ例)で、PSRが全く別になる。
- 部品のHS(例:バンド・ケース・ムーブメント)と完成品HSを取り違える。
6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)
- 日本税関のPSR検索画面でも、協定ごとに採用HS版が異なり、別版で検索すると誤りがあり得る旨が明示されています。また輸入申告では最新HSを使う旨も注意書きがあります。
- 例:CPTPPの手引きでは、掲載の関税分類番号がHS2012に従う旨の記載があります(協定運用上のHS版確認が必須)。
- トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
- 協定の採用HS版と、通関申告の最新HS(HS2022)がズレる場合、相関表・税関ガイダンスで対応関係を確認してからPSRを当てに行くのが安全です。
6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)
- 必須データ(一般論):
- BOM(材料表)、材料ごとの原産国、非原産材料のHS、工程フロー、原価(RVC計算の場合)
- 書類・保存(一般論):
- 仕入書類、仕様書、製造記録、原産品申告や証明に用いた根拠資料一式(保存年限は協定・制度で異なるため要確認)
7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)
7-1. 変更点サマリー(必須:表)
| 比較(例:HS2017→HS2022) | 変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更) | 該当コード | 変更の要旨 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|---|
| HS2017→HS2022 | 削除(統合) | 9114.10 | HS2017で独立していた「ぜんまい等(Springs, including hair-springs)」がHS2022では独立号としては存在しない | ぜんまい等はHS2022では 9114.90 側で扱う運用になり、旧コード参照の社内マスタ・PSR検討でズレが出る |
7-2. 「違うことになった根拠」(必須)
- 根拠資料:
- WCOのHS2017版 第91類の号一覧に
9114.10(Springs, including hair-springs)が存在。 - WCOのHS2022版 第91類の号一覧では
9114の内訳が9114.30 / 9114.40 / 9114.90で、9114.10が存在しない。
- WCOのHS2017版 第91類の号一覧に
- 以上より、HS2017→HS2022で
9114.10が削除され、該当物品(ぜんまい等)は9114.90の範囲で扱う必要があると判断しました(第91類注1(c)の“時計用ばねは第91.14項”という枠自体は維持)。
8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード
主要な追加・削除・再編(HS2007→2012→2017→2022の流れ)を、第91類の条文(号一覧)比較にもとづき整理します。
| 期間 | 主要な変更 | 旧コード → 新コード(代表) | コメント |
|---|---|---|---|
| HS2007→HS2012 | 9109 の細分見直し | 9109.11/9109.19 → 9109.10 | HS2007はアラーム等の区分があり、HS2012以降は「電気式 9109.10」に整理。 |
| HS2007→HS2012 | 9114 の細分見直し | 9114.20(Jewels)→(後続では 9114.90 等に包含され得る) | HS2012以降の 9114 には 9114.20 が存在しない(専用号が消滅)。 |
| HS2017→HS2022 | 9114.10 の削除 | 9114.10 →(HS2022では 9114.90) | HS2022は 9114.10 がなく、9114.90 側で扱う実務。 |
注:上表の「旧→新」の“行き先”は、HS6桁体系で見た一般的な包含関係の整理です。個別品目は仕様により別の号・他章となり得るため、相関表や税関の運用資料で個別確認してください。
9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)
- 事例名(短く):スマートウォッチを時計(第91類)で申告して差し戻し
- 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注以前に、実態が第85類(通信機器)として整理され得るのに第91類として申告。
- 起きやすい状況:インボイス品名が “watch” だけ、仕様書未添付。
- 典型的な影響:HS更正、税額差、追加資料提出、検査・保留による遅延。
- 予防策:無線機能・主要機能・接続形態を明記した仕様書を準備し、必要なら事前教示で確定。
- 事例名:金色ケースを
9101と誤認(実際は9102)- 誤りの内容:類注2の「ケース全体が貴金属/貴金属張り」要件の見落とし(象眼や一部卑金属ケース等)。
- 起きやすい状況:表面処理(めっき)と“貴金属張り”の混同。
- 影響:税番更正、原産地規則(PSR)の取り違い、社内マスタ修正。
- 予防策:材質証明・断面構造・裏ぶた材質まで取得。
- 事例名:ねじ等の“はん用性部分品”を
9114で申告- 誤りの内容:類注1(c)および第15部注2により除外され得る物を、時計部品として申告。
- 起きやすい状況:部品名が「時計用」とだけ書かれ、規格(一般規格品か専用品か)が不明。
- 影響:差し戻し、分類再検討、追加資料要求。
- 予防策:図面・用途(ムーブメント内か外か)・一般規格の有無を整理して提出。
- 事例名:ムーブメントセットを完成ムーブメントで申告
- 誤りの内容:
9110(ムーブメントセット等)に該当する可能性があるのに9108/9109とした。 - 起きやすい状況:輸送形態が「分解・未組立」、部品表が不十分。
- 影響:税番更正、輸入許可の遅れ。
- 予防策:組立状態の説明書、完成状態の写真、欠けている部材の有無を整理。
- 誤りの内容:
10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)
- 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
- 検疫・衛生(SPS等)
- 時計そのものは通常SPSの中心ではありませんが、**動植物由来素材(皮革・木材等)**を使う場合は別途、輸入規制・表示・検疫の有無を確認してください(本稿では一般論に留めます)。
- ワシントン条約(CITES)等の種規制
- 腕時計バンド(革・皮)や装飾に、ワニ・トカゲ等の規制対象種が含まれる場合があります。
- METIは「規制対象か調べるには、まず学術名(ラテン語)を特定し、附属書I〜IIIの掲載状況を確認する」旨を案内しています。
- 税関でも、絶滅のおそれのある野生動植物の輸出入規制を水際で扱う旨が案内されています。
- 安全保障貿易管理(該当する場合)
- 一般の時計は典型的には該当しにくいですが、衛星通信・暗号・高精度計測など別分野機能を持つ場合は個別確認が必要です(ここでは一般論)。
- その他の許認可・届出
- PSE(電気用品安全法):タイムスイッチ等が日本国内でPSE対象となる可能性があります(製品区分の一覧に「タイムスイッチ」が含まれる)。
- 電波法(技適等):無線機能を備える機器(典型:スマートウォッチ等)は、電波法令の技術基準適合の枠組みが関係し得ます(登録証明機関による制度である旨の説明)。
- 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
- CITES:経済産業省(ワシントン条約)
- PSE:経済産業省(電気用品安全法)
- 技適等:総務省/登録証明機関(例:TELECの案内)
- HS分類:日本税関(関税率表解説・分類例・事前教示)
- 実務での準備物(一般論):
- 仕様書(機能・通信の有無・電源・構造)、材質証明、写真、カタログ、BOM、必要に応じCITESの種情報(学術名)
11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)
- 分類前チェック(製品情報の収集)
- 完成品か部品か(ムーブメント/ケース/バンド/その他部品)
- 主要機能(時間表示が主か、通信・計測が主か)
- 材質(特にケース:貴金属/貴金属張り/卑金属/象眼/めっき)
- ムーブメント寸法(類注3)と測り方
- 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
- 類注1の除外(ガラス・おもり、鎖、はん用性部分品、軸受、第85類品など)
9103/9105など境界は類注3で再確認9114は“部品なら何でも”ではない(除外多い)
- 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
- インボイスに「watch」「parts」だけでなく、表示方式・材質・機能・用途を追記
- 必要に応じ仕様書・写真・材質証明を添付
- FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
- 協定の採用HS版(HS2012等)と、申告HS(最新HS)のズレを確認
- BOM、原産国、工程、原価の裏付け資料を保存
- 規制チェック(許可/届出/検査)
- CITES(バンド等の素材)
- PSE(タイムスイッチ等)
- 技適(無線機能品)
12. 参考資料(出典)
- WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
- WCO HS Nomenclature 2022 – Chapter 91(条文PDF)〔参照日:2026-03-01〕
- WCO HS Nomenclature 2017 – Chapter 91(条文PDF)〔参照日:2026-03-01〕
- WCO HS Nomenclature 2012 – Chapter 91(条文PDF)〔参照日:2026-03-01〕
- WCO HS Nomenclature 2007 – Chapter 91(条文PDF)〔参照日:2026-03-01〕
- WCO「HS通則(GIR)」〔参照日:2026-03-01〕
- WCO HS2022 – Section XV Notes(第15部注2:はん用性の部分品)〔参照日:2026-03-01〕
- WCO HS2022 – Chapter 71 Notes(注7:metal clad with precious metal の定義)〔参照日:2026-03-01〕
- 日本税関・公的機関のガイド
- 税関「関税率表解説 第91類(91r)」〔参照日:2026-03-01〕
- 税関「関税率表解説・分類例(85類)」(スマートウォッチの分類例を含む)〔参照日:2026-03-01〕
- 税関「品目別原産地規則(PSR)検索画面」(協定ごとのHS版注意)〔参照日:2026-03-01〕
- 税関「事前教示回答(品目分類)」検索・制度案内〔参照日:2026-03-01〕
- FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
- 税関「自己申告制度」利用の手引き ~CPTPP~(HS2012参照の注意)〔参照日:2026-03-01〕
- その他(規制)
- 経済産業省:ワシントン条約 規制対象種の調べ方(学術名→附属書確認)〔参照日:2026-03-01〕
- 経済産業省:電気用品安全法(特定電気用品一覧:タイムスイッチ)〔参照日:2026-03-01〕
- TELEC:技術基準適合証明・工事設計認証(電波法令適合の証明)〔参照日:2026-03-01〕
免責事項
本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。
