※用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)。
0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)
- この類に入る代表例(3〜6個):
- 繰糸に適する繭(5001)
- 生糸(よってないもの)(5002)
- 絹のくず(繰糸に適しない繭、糸くず、反毛した繊維、ノイル等)(5003)
- 絹糸(フィラメント系:生糸をよった・合糸したもの等、ただし小売用を除く)(5004)
- 絹紡糸(絹くずを紡績した糸、ただし小売用を除く)(5005)
- 絹織物(反物状の織物。号は「ノイル織物」「85%以上」「その他」に分かれる)(5007)
- この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
- 「製品にしたもの」(スカーフ等の縫製済み・縁縫い済み、形状裁断済みなど)→第61〜63類等へ(部注の定義でChapter 50の対象外)
- 絹糸でも太さ(線密度)が一定以上で「ひも・綱等」扱いになるもの → 第56類 56.07(部注)
- 殺菌した天然てぐす → 30.06、釣針付き・釣糸として製品化 → 95.07、模造カットガット → 56.04(関税率表解説上の典型除外)
- 絹織物のぼろ(ウエス等) → 第63類(関税率表解説)
- 「シルク風」でも実態がポリエステル等の化学繊維 → 第54/55類など(材質で決まる:表示名に注意)
- 実務での最重要分岐(1〜3個):
- 何の段階か(繭→生糸→くず→糸→織物→“製品”)
- 糸は“小売用にしたもの”か(5004/5005 vs 5006)
- 織物は ノイルか/85%以上か/その他か(5007.10/20/90)
- (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
- FTA/EPAのPSR(品目別規則)適用で、最終品HSがズレて原産性判断が崩れる(特に糸・織物は材料HSも絡む)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)
1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)
- この類で特に効くGIR:
- GIR1(見出し+注で決める):第50類は見出し(繭・生糸・絹くず・糸・織物)と第11部注(混用、製品、糸の小売用等)の影響が大きいです。
- GIR6(6桁内の選択):特に5007は6桁号が3つ(5007.10/20/90)に分かれ、重量割合(85%)やノイルの有無で分岐します。
- 「品名だけで決めない」ための観点:
- 材質(本当に絹か):表示や商習慣名(“シルク調”)ではなく、繊維組成で判断します(混用は重量優先ルール)。
- 状態(繊維→糸→織物→製品):反物か、縫製・裁断済みかで章が変わります(“製品にしたもの”はChapter 50から外れる)。
- 包装・販売形態(糸):同じ糸でも“小売用”か否かで 5004/5005 と 5006 が分かれます。
1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)
- Step1:その貨物は「絹(silk)」由来の原料/糸/織物ですか?(組成・試験表・仕様書で確認)
- Step2:形態はどれですか?
- 繭 → Step3へ
- 生糸(よってない) → 5002へ
- 絹くず(未紡績) → 5003へ
- 糸(フィラメント/紡績糸) → Step4へ
- 織物(反物状) → Step5へ
- “製品”(縁縫い、形状裁断、縫製、セット等) → Chapter 50ではなく第61〜63類等をまず疑う
- Step3(繭):繰糸に適するか?
- 適する → 5001
- 適さない(穴あき・汚損・損傷等)→ 5003(絹のくず)
- Step4(糸):どちらの糸ですか?
- 生糸由来の絹糸(フィラメント系)→ 5004
- 絹くず由来の紡績糸(絹紡糸・絹紡紬糸等)→ 5005
そのうえで 小売用にしたもの なら 5006(絹糸/絹紡糸)へ。
- Step5(織物):5007の中で分岐
- ノイル絹の織物 → 5007.10
- その他で、絹(または絹くず(ノイル除く))が重量85%以上 → 5007.20
- その他 → 5007.90
- よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
- 第50類(反物) vs 第61〜63類(製品):縁縫い済みスカーフ等は“製品”扱いになりやすい
- 第50類の糸 vs 第56類 56.07(ひも・綱):線密度(デシテックス)で飛ぶ
- 絹混用 vs 他繊維章:重量優先+同率なら“後順位”の章へ(部注)
2. 主な項(4桁)とその内容
2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)
| 項番号(4桁) | 見出しの要旨(日本語) | 典型例(製品名) | 重要な分岐条件/除外/注意点 |
|---|---|---|---|
| 5001 | 繭(繰糸に適するもの) | 繰糸用の蚕繭 | 「繰糸に適する」かが最大分岐。不可なら5003へ |
| 5002 | 生糸(よってない) | 生糸(かせ、ボビン等) | “わずかなより”が生じ得るが、ねん糸(5004)と混同注意 |
| 5003 | 絹のくず | 繰糸に不適な繭、フロス、ノイル、反毛繊維 | まだ「糸」になっていない段階。ぼろ(63類)、フロック等(56.01)などは除外 |
| 5004 | 絹糸(絹くず紡績糸・小売用を除く) | オーガンヂー糸、トラム糸、クレープツイスト等 | 小売用(5006)と、線密度が大きい“ひも・綱”(56.07)を除外 |
| 5005 | 絹紡糸・絹紡紬糸(小売用を除く) | 絹くず(ノイル等)を紡績した糸 | 小売用(5006)と“ひも・綱”(56.07)除外。短繊維紡績が前提 |
| 5006 | 小売用にした絹糸/絹紡糸+天然てぐす | 手芸用の絹糸(小巻)、天然てぐす | 「小売用」の定義(重量・形態・例外)に注意。殺菌てぐす(30.06)・釣糸製品(95.07)等は除外 |
| 5007 | 絹又は絹くずの織物 | 羽二重、シャンタン、ちりめん、透け織物等 | 反物状の織物が前提。6桁でノイル/85%以上/その他に分岐 |
2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)
- 分岐条件の整理(この類で出やすい軸)
- 品質/適性:繭が「繰糸に適する」か(5001 vs 5003)
- ねん糸か否か:生糸(よってない)か、ねん糸か(5002 vs 5004)
- 原料(フィラメント/短繊維):生糸由来の絹糸(5004)か、絹くず由来の紡績糸(5005)
- 小売用の形態:5004/5005 か 5006 か(部注の“小売用にしたもの”定義)
- 織物の内訳:ノイル織物/85%以上/その他(5007.10/20/90)
- 線密度(デシテックス):一定以上で“ひも・綱”扱い→第56類へ(特に絹は20,000デシテックス超が目安)
- 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
- ① 5001.00(繰糸用繭) vs 5003.00(絹のくず)
- どこで分かれるか:繰糸して生糸にできる品質かどうか
- 判断に必要な情報:仕入仕様(A品/B品)、欠点(穴・汚れ・損傷)、用途(繰糸/紡績原料)
- 典型的な誤り:「繭=5001」と決め打ちし、実態は繰糸不可で5003
- ② 5002.00(生糸・無ねん) vs 5004.00(絹糸・ねん糸等)
- どこで分かれるか:「よってない」か、ねん糸工程を経た糸か
- 判断に必要な情報:製造工程、より数、用途(織物のたて糸等)
- 典型的な誤り:生糸に“わずかなより”があることを根拠に5004へ寄せる(生糸の範囲を要確認)
- ③ 5004.00/5005.00(小売用でない糸) vs 5006.00(小売用糸)
- どこで分かれるか:包装形態・重量などが「小売用にしたもの」の条件に合うか
- 判断に必要な情報:1個当たり重量(支持体含む)、形態(ボール/かせ/カード/工業用コップ等)、ラベル表示(手芸用等)
- 典型的な誤り:工業用の大巻を5006にしてしまう/逆に手芸用小巻を5004にしてしまう
- ④ 5007.10(ノイル織物)/5007.20(85%以上)/5007.90(その他)
- どこで分かれるか:①ノイル糸由来か、②絹(または絹くず(ノイル除く))が重量85%以上か
- 判断に必要な情報:繊維組成(重量%)、糸種(ノイル糸か)、混用相手(綿/毛/化繊等)
- 典型的な誤り:「絹が主だから5007.20」としてしまい、実際は85%未満で5007.90
- ① 5001.00(繰糸用繭) vs 5003.00(絹のくず)
3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)
3-1. 関連する部注(Section Notes)
- ポイント要約:
- 混用繊維の扱い:第50〜55類等の混用品は、原則「重量が最大の繊維」とみなして分類(同率なら“後順位”の見出しへ)。
- “小売用にしたもの”の定義(糸):支持体込み重量の上限(絹は85g等)、形態、例外が定義されています。5004/5005/5006の分岐に直結します。
- 線密度が大きい糸の扱い(ひも・綱等):絹や絹くずの糸でも、一定のデシテックスを超えると“twine/cordage/ropes/cables”扱いになり得ます。
- “製品にしたもの”の定義:裁断形状、縁縫い、縫製、完成品などは“製品”とされ、Chapter 50(反物・原料段階)から外れます。
- 実務での意味(具体例つき):
- 例:絹60%×綿40%の反物
→ 混用ルールで「絹が優勢」とみなして第50類(5007)へ。ただし85%未満なので 5007.90 が有力です(例外・詳細は要確認)。 - 例:手芸用の絹糸(小巻・小玉)
→ 条件を満たすなら5006(小売用)になり、工業用の大巻(コップ等)なら5004/5005側になりやすいです。 - 例:**スカーフ用の絹反物(未縫製)**は5007の範囲でも、縁縫い済みスカーフは“製品にしたもの”で別章へ飛びます。
- 例:絹60%×綿40%の反物
- “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
- 糸が太くて **56.07(ひも・綱等)**へ
- 反物が 縁縫い・裁断・縫製されて第61〜63類等へ
3-2. この類の類注(Chapter Notes)
- ポイント要約:
- HS2022の第50類は、条文上の独自の類注(Chapter Notes)が置かれていない構成で、実務上は「各項の見出し文言」と「第11部注」が主な根拠になります。
- 用語定義(定義がある場合):
- 法的定義は部注側が中心です。一方、日本税関の関税率表解説では、第50類の「絹」には家蚕由来に限らず野蚕等も含める旨の説明があります(実務の解釈補助)。
- 除外規定(除外先の類・項も明記):
- 類注ではなく、主に部注・見出し・解説で除外が整理されます(例:殺菌てぐす→30.06、釣糸製品→95.07 等)。
4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)
この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。
※第50類は独自類注がないため、実務上“同等に効く”第11部注(混用、小売用、製品、ひも・綱)を中心に整理します。
- 影響ポイント1:「小売用にしたもの」かどうかで、5004/5005⇄5006が変わる
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 1個当たり重量(支持体含む)
- 形態(カード/リール/ボール/かせ/工業用コップ等)
- 表示(手芸用、家庭用、工業用など)
- 現場で集める証憑:
- 製品写真(包装含む)、梱包仕様書、製品ラベル、単位重量表
- 誤分類の典型:
- “絹糸=5004”と一括して、手芸用小巻(本来5006)の可能性を落とす
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 影響ポイント2:線密度(デシテックス)が大きい糸は、56.07へ飛び得る
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 線密度(dtex)・太さの仕様、用途(ロープ用途か)
- 現場で集める証憑:
- 技術仕様書、試験成績(線密度)、用途説明、カタログ
- 誤分類の典型:
- ロープ用途の太い絹コードを5004/5005/5006で申告してしまう
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 影響ポイント3:“反物”と“製品”の差で、5007⇄61〜63類が変わる
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 裁断形状(長方形以外か)、縁処理(縁縫い・房付け等)、縫製有無、完成品としての使用可能性
- 現場で集める証憑:
- 物品写真(端部アップ)、寸法図、加工工程表、サンプル
- 誤分類の典型:
- 縁縫い済みスカーフを「絹織物(反物)」として5007申告
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
5. 分類でよくある間違い(原因→対策)
- 間違い:絹スカーフ(縁縫い済み)を5007(絹織物)にしてしまう
- なぜ起きる:素材が絹=第50類、という思い込み
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):縁縫い・完成状態は“製品にしたもの”に該当し、Chapter 50の対象外(部注)
- 予防策:
- 確認資料:端部の加工写真、縫製有無、販売形態(完成品か反物か)
- 社内質問例:「これは反物として加工工程に回る?そのまま消費者が使う?」
- 間違い:手芸用の絹糸を5004/5005(小売用でない糸)で申告
- なぜ起きる:糸の分類=原料(フィラメント/紡績)だけで決めてしまう
- 正しい考え方:部注の“小売用にしたもの”定義で5006に移る可能性がある
- 予防策:
- 確認資料:1個重量、支持体形状、ラベル表示
- 社内質問例:「この糸は工場で使う?それとも店頭で1個単位で売る?」
- 間違い:繰糸に不適な繭を5001(繰糸用繭)にしてしまう
- なぜ起きる:「繭=5001」と短絡し、品質区分を確認していない
- 正しい考え方:繰糸に適しない繭は絹くず(5003)側に整理される(解説で明確)
- 予防策:
- 確認資料:検品基準、用途(繰糸/紡績原料)、不良率・汚損情報
- 間違い:生糸(5002)と、ねん糸(5004)を混同
- なぜ起きる:生糸にも工程上“わずかなより”が生じ得る点を誤解
- 正しい考え方:5002は「よってない」が前提。ねん糸工程の有無で5004を検討(解説参照)
- 予防策:
- 確認資料:より数、工程図、製造方法の説明
- 間違い:ノイル絹の織物を5007.20(85%以上)に入れてしまう
- なぜ起きる:“ノイル”という糸種を把握していない
- 正しい考え方:5007.10が「ノイル織物」として独立している
- 予防策:
- 確認資料:使用糸の種類(ノイル糸か)、糸メーカー仕様
- 間違い:絹混用織物を、商習慣名(例:ウール混)だけで第51類へ
- なぜ起きる:マーケ名称とHS分類を混同
- 正しい考え方:第11部注の混用ルールは“重量優先”(同率なら後順位)
- 予防策:
- 確認資料:混率(重量%)の試験表、原糸仕様
- 社内質問例:「重量%は?証明書はある?同率ではない?」
- 間違い:太い絹コードを5004等にしてしまい、56.07を見落とす
- なぜ起きる:線密度(dtex)を確認していない
- 正しい考え方:部注で、絹/絹くず糸が一定のdtex超で“ひも・綱等”扱いになり得る
- 予防策:
- 確認資料:dtexデータ、用途(ロープ用途か)、引張強度など
- 間違い:コーティング/ラミネートした絹織物を5007のまま申告
- なぜ起きる:表地が絹なので“絹織物”と判断してしまう
- 正しい考え方:含浸・被覆等により第59類やプラスチックの章へ移る可能性がある(部注の除外構造を踏まえ要検討)
- 予防策:
- 確認資料:断面写真、コーティング材質・厚み、機能説明(防水等)
- 間違い:殺菌済み天然てぐす(医療用)を5006にしてしまう
- なぜ起きる:素材だけで判断し、“用途・状態(殺菌)”を見落とす
- 正しい考え方:関税率表解説上、殺菌した天然てぐすは30.06へ除外される
- 予防策:
- 確認資料:医療用途表示、殺菌証明、包装(滅菌パック等)
6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点
6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係
- HSの付番がPSR選択に直結します。糸・織物は「原料のHS」と「最終品のHS」の両方が原産性判断に絡みやすいです。
- よくある落とし穴:
- 最終品(例:絹織物5007)を誤って“製品”(第61〜63類)側にしてしまい、PSRが別物になる
- 混用の重量%を誤認し、章自体がズレる(PSR以前にHSが崩れる)
6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)
- 日本税関のPSR検索画面でも、協定ごとに採用HSバージョンが異なり、違う版で検索すると誤りが出得る旨が明示されています。
- 例(代表):
- RCEPは、品目別規則(PSR)がHS2022に置換され、2023-01-01から実施と案内されています。
- トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
- ① 通関申告:原則「最新のHS(輸入国税関の現行)」
- ② 原産地規則:協定が参照するHS版に合わせてPSRを当てる
- ③ 版ズレがある場合:相関表(新旧対応)を使ってコード対応を確認し、**“最終的に適用するPSRはどれか”**を固定する
6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)
- 収集すべき基礎データ(例):
- 材料表(BOM)、各材料の原産国、非原産材料のHS(可能なら6桁)、工程(紡績・製織・染色等)、原価情報(RVCがある場合)
- 証明書類・保存要件(一般論):
- 工程証憑(工程表、外注加工証明)、仕入書類、試験成績(混率)、製造記録を整備しておくと、事後検証に強くなります。
7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)
7-1. 変更点サマリー(必須:表)
| 比較(例:HS2017→HS2022) | 変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更) | 該当コード | 変更の要旨 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|---|
| HS2017→HS2022 | 変更なし(少なくとも第50類の見出し/号は同一) | 5001〜5007(含む5007.10/20/90) | 第50類の構成(繭・生糸・絹くず・糸・織物、及び5007の3分岐)は同一 | コード移行対応は原則不要(ただし国内コードは別途確認) |
7-2. 「違うことになった根拠」(必須)
- 根拠資料に基づく確認結果:
- WCOのHS2017版とHS2022版のChapter 50一覧を比較すると、5001.00〜5006.00と、5007.10/5007.20/5007.90の構成・文言が一致しており、HS6桁レベルでの新設/分割/統合等は確認できません。
- 補助的に、WCOが公表するHS2017–2022相関表(Table I)は「変更のあった相関」を列挙する性格の資料であり、そこに第50類コードが現れないことからも、第50類に改正影響が小さいことが示唆されます(※相関表の性格上、“未掲載=不変”の確認補助として位置づけ)。
8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード
- HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(主要なもの)
| 版の移行 | 主な追加/削除/再編 | 旧コード → 新コード(例) | コメント |
|—|—|—|—|
| HS2007→HS2012 | 主要な改正なし(第50類は同一構成) | 5001〜5007(同一) | WCOの各版一覧で一致 |
| HS2012→HS2017 | 主要な改正なし | 5001〜5007(同一) | WCOの一覧で確認 |
| HS2017→HS2022 | 主要な改正なし | 5001〜5007(同一) | WCOの一覧で確認 |
※補足:上表はHS6桁(国際統一)ベースです。日本の**国内コード(統計品目番号)**は改正や運用で細分・変更され得るため、実務では最新版の輸入統計品目表・輸出統計品目表で別途確認してください。
9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)
- 事例名(短く):「手芸用絹糸」を工業用として申告
- 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):小売用定義(部注)を見ずに5004/5005で申告
- 起きやすい状況:品名が “silk yarn” だけ、重量・形態の情報が通関書類に無い
- 典型的な影響:税番更正、追加資料要求、審査長期化
- 予防策:包装写真、1個重量、ラベル(手芸用)を事前に添付
- 事例名(短く):太い絹コードを5004で申告→56.07へ更正
- 誤りの内容:線密度(デシテックス)による“ひも・綱等”判定の見落とし(部注)
- 起きやすい状況:「糸」として輸入するが用途はロープ・結束
- 典型的な影響:分類差し戻し、追加納税(税率差がある場合)、検査強化
- 予防策:dtexの仕様書、用途説明(織物用かロープ用か)を準備
- 事例名(短く):絹の反物と“製品”の取り違え(5007⇄61〜63類)
- 誤りの内容:縁縫い・裁断等で“製品にしたもの”に該当するのに5007申告(部注)
- 起きやすい状況:スカーフ/ストールを「生地」と称して輸入
- 典型的な影響:更正、関税率・原産地規則の再確認、納期遅延
- 予防策:端部加工の有無を明確化(写真)、製造工程表を添付
- 事例名(短く):天然てぐすの用途違い(5006⇄30.06/95.07)
- 誤りの内容:殺菌済み(医療用)や釣針付き等の状態を見落とす(解説上の除外)
- 起きやすい状況:同じ“gut”でも用途・状態が混在
- 典型的な影響:分類更正、他法令確認(医療機器等)に波及
- 予防策:用途証明、殺菌証明、セット内容の明細を用意
10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)
- 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
- 検疫・衛生(SPS等)
- 絹織物などの繊維製品は、食品等の検疫とは別系統ですが、国内販売段階で有害物質規制(後述)や表示義務が問題になりやすいです。
- その他の許認可・届出(国内流通で頻出)
- 家庭用品品質表示法(繊維製品品質表示規程):繊維製品の組成表示、取扱い表示、表示者名等のルールが定められています(輸入者は販売時の表示責任に注意)。
- 有害物質を含有する家庭用品の規制:ホルムアルデヒド等の基準や、アゾ染料に関する規定など、繊維製品に関わる規制が整理されています(特に乳幼児用等は厳しめ)。
- 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
- 表示:消費者庁(家庭用品品質表示法/繊維製品)
- 有害物質:厚生労働省(関連法令・通知等)
- 分類:税関(品目分類、事前教示)
- 実務での準備物(一般論):
- 繊維混率試験(重量%)、染料・加工情報(樹脂加工、形態安定等)、製品表示案(ラベル)、用途説明(乳幼児用か等)
11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)
- 分類前チェック(製品情報の収集)
- 原料段階の確認(繭/生糸/くず/糸/織物/製品)
- 組成(重量%)と証明書(試験成績、メーカー仕様)
- 糸の場合:線密度(dtex)、より数、包装形態(小売用か)
- 織物の場合:反物か、裁断・縁処理の有無
- 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
- 小売用の判定(5006)を部注で再確認
- “製品にしたもの”該当性(第61〜63類への飛び)確認
- ノイル/85%/その他(5007.10/20/90)確認
- 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
- インボイスに「silk fabric / silk yarn」だけでなく、混率、用途、状態(retail/industrial)を追記
- 写真、仕様書、試験表を添付できる体制
- FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
- PSR検索時に協定のHS版を確認(版ズレ注意)
- BOM、工程、非原産材料HS、原価資料の保存
- 規制チェック(許可/届出/検査)
- 表示(繊維製品品質表示)
- 有害物質(ホルムアルデヒド等、アゾ染料等)
12. 参考資料(出典)
- WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
- WCO HS Nomenclature 2022 Section XI Notes(1100_2022e.pdf)(参照日:2026-02-22)
- WCO HS Nomenclature 2022 Chapter 50 “Silk”(1150_2022e.pdf)(参照日:2026-02-22)
- WCO HS Nomenclature 2017 Chapter 50 “Silk”(1150_2017e.pdf)(参照日:2026-02-22)
- WCO HS Nomenclature 2007 Chapter 50 “Silk”(1150_2007e.pdf)(参照日:2026-02-22)
- WCO Correlation Tables HS2017–HS2022(Table I, en)/相関表ページ(参照日:2026-02-22)
- 日本 税関・公的機関のガイド
- 税関:関税率表解説 第50類(50r.pdf)/第11部 総説(11b.pdf)(参照日:2026-02-22)
- 税関:EPA・原産地規則ポータル/品目別原産地規則検索(参照日:2026-02-22)
- 税関:RCEP(HS2022版PSRの実施案内等)(参照日:2026-02-22)
- 税関:品目分類の事前教示制度(参照日:2026-02-22)
- その他(表示・化学物質等)
- 消費者庁:家庭用品品質表示法/繊維製品品質表示規程・表示ガイド(参照日:2026-02-22)
- 厚生労働省:有害物質を含有する家庭用品の規制(法令・通知等)/施行規則(参照日:2026-02-22)
付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)
- どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
- 絹製品は「形態差(反物か製品か)」「小売用か」「混率(重量%)」「糸の線密度・より数」などが結論を左右しやすいです。
- 事前教示(品目分類)に出す/照会する際に有効なセット:
- ① 現物写真(全体・端部・包装)
- ② 仕様書(混率・dtex・より数・幅/重量/目付)
- ③ 工程図(繰糸→撚糸→製織→染色など)
- ④ 用途(手芸用/工業用、反物販売/完成品販売)
- 探し方(日本税関の公開情報)
- 税関は、公開可能な**事前教示回答(品目分類)**を検索できる仕組みを用意しています。キーワード(例:「絹糸」「スカーフ」「織物」)や税番で横断検索し、近い事例の論点(決め手が何か)を把握すると効率的です。
免責事項
本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。









