HS2022 第58類:特殊織物、タフテッド織物類、レース、つづれ織物、トリミング及びししゆう布(Special woven fabrics; tufted textile fabrics; lace; tapestries; trimmings; embroidery)

用語の統一(本記事内)

  • 類=Chapter 項=Heading(4桁)号=Subheading(6桁)部=Section注=Notes(部注/類注)

本記事は日本の実務(輸入・輸出の双方を想定)で、HS2022の第58類を「誤解が起きにくい形」で整理したものです。HS6桁(国際共通)と、日本の国内コード(9桁等)は別物です。実務ではまずHS6桁の当たりを付け、その後に国内コードで細分を確認する流れが安全です。


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個)
    • ベルベット、コール天などのパイル織物、シェニール織物(5801)
    • タオル地のようなテリー織物、タフテッド織物(ただし床用のものを除く)(5802)
    • レース、チュール、ネット状の布(条件あり)(5804)
    • リボン、テープ、ゴム入り細幅織物、ボルデュック(5806)
    • ブランドラベル、サイズラベル等(刺しゅうでないもの)(5807)
    • 組ひも、装飾用トリミング、タッセル、ポンポン(5808)
    • 刺しゅうワッペン、刺しゅう生地、スパンコール等のアプリケ刺しゅう(5810)
    • 中綿入りのキルティング生地(反物状態)(5811)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記)
    • 第59類注1の対象となる「紡織用繊維の織物類」で、染み込ませ・塗布・被覆・積層したもの(第59類、または第39類・第40類へ)
    • 結び目で作った網地(結び網地)(5608)
    • タフテッドのうち「床用繊維製床用敷物」(5703)
    • メリヤス編みやクロセ編みのレース・ネット等(第60類)
    • すでに衣類・スカーフ等の形に製品化(made up)されたもの(多くは第61類〜第63類、例:刺しゅう入りスカーフは6214方向)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個)
    • 反物か、すでに製品化(made up)されているか(第11部注7が鍵)
    • 細幅織物か(幅30cm以下、両側に耳などの条件)(5806かどうか)
    • 刺しゅうか、刺しゅうでないラベルか(5807か5810か、または製品化されて別類か)
  • この類で特に誤分類が高コストになりやすい場面
    • リボンやテープが「細幅織物(5806)」なのか「装飾用トリミング(5808)」なのか、または「被覆等で第59類」なのかが曖昧なまま輸入してしまうケース
    • ラベルが刺しゅう入り(5810)なのに、刺しゅうなし(5807)で申告してしまうケース

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くのはGIR1とGIR6です。まず「見出しの文言」と「部注・類注」で範囲を確定し、その後に6桁(号)の条件で詰めます。特に第58類は、類注が定義と除外を強く決めています(細幅織物の定義、刺しゅうの含意、結び網地の除外など)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 形状:反物か、ストリップか、モチーフか、単体部品か
    • 製法:織物か、メリヤス編みか、結び網か、刺しゅうか、タフテッドか
    • 寸法:特に幅(細幅30cm以下の判定)
    • 加工:染み込ませ、塗布、被覆、積層の有無(第59類に飛ぶかどうか)
    • 用途:床用か(5703に飛ぶ)、衣類として製品化済みか(61〜63に飛ぶ)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:製品化(made up)されていないか確認
    • 例:単に裁断しただけか、縁縫い・縁かがり・房付け・縫製でつなぎ合わせ等があるか
    • made upの定義は第11部注7で確認します
  • Step2:染み込ませ、塗布、被覆、積層(コーティング等)の有無を確認
    • 第58類注1は「第59類注1の紡織用繊維の織物類で、染み込ませ等したもの」と「第59類のその他の物品」を除外します
    • 特に58.03(もじり織物)、58.06(細幅織物)、58.08(組ひも・装飾用トリミング)は、コーティング等があると第58類から外れる扱いが強調されています
  • Step3:第58類のどの「タイプ」かを判定
    • パイル織物・シェニール織物:5801(ただし5802と5806を除外)
    • テリー織物(タオル地)またはタフテッド織物:5802(床用は5703へ)
    • もじり織物(leno、ガーゼ状の織り):5803(細幅は5806へ)
    • レース、チュール、ネット:5804(結び網地は5608、メリヤス編み系は60類へ)
    • つづれ織物(手織り、手針のもの):5805
    • リボン・テープ等の細幅織物:5806(ただしラベルは5807へ)
    • ラベル・バッジ(刺しゅうでない):5807(刺しゅうなら5810へ)
    • 組ひも・装飾用トリミング・タッセル等:5808
    • 金属糸・金属を交えた糸の織物:5809(用途や性状で他類の可能性もあるので慎重に)
    • 刺しゅう:5810(基布が見える刺しゅう、アプリケ刺しゅう等を含む)
    • キルティング生地(反物):5811(第59.03の除外に5811が明記される点も実務上重要)
  • よく迷う境界(例)
    • 5806(細幅織物)と5808(装飾用トリミング):装飾目的の構成や房・装飾の付け方で分岐しやすい
    • 5807(ラベル)と5810(刺しゅうラベル):刺しゅうの有無が決定的
    • 5802.30(タフテッド織物)と5703(タフテッド床用敷物):床用かどうか、基材や剛性などで分岐
    • 5804(レース)と5810(レース風のアプリケ刺しゅう):レースの作り方(基布の上で作るか、網目と柄を同時に作るか)で分岐

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

次の表は第58類の項(4桁)を実務目線で要約したものです(見出し文言と注の趣旨に基づく整理)。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5801パイル織物・シェニール織物(ただし5802と5806を除外)ベルベット、コール天、シェニール織物テリーや細幅パイルは除外(5802/5806へ)
5802テリー織物、タフテッド織物(床用除外)タオル地、タフテッドの椅子張り生地タフテッド床用敷物は5703へ。細幅は5806へ
5803もじり織物(ガーゼ状の織り)もじり織ガーゼ、レノ織細幅は5806へ。医療用途の一定形態は3005方向もあり得る
5804チュール・ネット状の布、レース(反物・ストリップ・モチーフ)チュールレース、レースモチーフ結び網地は5608、メリヤス編み系は60類へ
5805つづれ織物(手織り、手針)タペストリー、手針つづれ風の壁掛け刺しゅう(5810)との混同に注意
5806細幅織物(ラベル除外)とボルデュックリボン、テープ、ゴム織物、バイアステープ幅30cm以下と耳の要件が鍵。房付きは5808へ。ラベルは5807へ
5807ラベル、バッジ等(刺しゅうでない)織ネーム、サイズラベル、ワッペン風の織ラベル刺しゅう入りは5810へ。切断以外に製品化すると61.17/62.17/63.07方向
5808組ひも、装飾用トリミング、タッセル等組ひも、フリンジ、タッセル、ポンポン60類(編物)の装飾トリミングは除外。ロゼット等で製品化すると62.17/63.07方向
5809金属糸・金属を交えた糸の織物(用途限定)ラメ織物、舞台衣装用メタリック生地用途や他見出し該当性の確認が必要
5810刺しゅう(反物・ストリップ・モチーフ)刺しゅう生地、刺しゅうワッペン、スパンコール刺しゅうレース風でも作り方次第で5810。製品化済み(スカーフ等)は他類へ
5811キルティング生地(反物)中綿入りキルト生地、縫い合わせ生地5811は59.03から除外される点が実務上重要。製品化すると61〜63へ

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(よく効くもの)
    • 5806(細幅織物):幅30cm以下か、両側に耳があるか、袋織で平らにした幅か、バイアステープを広げた幅か
    • 5806(弾性):ゴム糸又は弾性糸(エラストマー糸等)が重量で5%以上含まれるか
    • 5807(ラベル):刺しゅうでないこと、反物・ストリップ・切断ユニットの範囲に留まること
    • 5802(タフテッド):床用敷物(5703)に該当しないか
    • 5810(刺しゅう):基布が見える刺しゅう、アプリケ刺しゅう等を含むという定義
    • 5811(キルティング):反物であること、詰物を挟んで縫い合わせ等で一体化していること
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組)
    1. 5806(細幅織物)と5808(装飾用トリミング)
      • どこで分かれるか:単なる細幅の織物か、装飾用として構成・加工されたトリミングか。細幅織物でも「織物自体の糸で房を付けたもの」は5808に寄ります
      • 判断に必要な情報:幅、耳、房の作り方(別付けか、織物自身の糸か)、装飾のための縫製や組み合わせの有無
      • 典型的な誤り:見た目がリボンだから5806と決め打ち
    2. 5807(ラベル)と5810(刺しゅうラベル)
      • どこで分かれるか:刺しゅうの有無
      • 判断に必要な情報:製法(織り出し、印刷、刺しゅう、アプリケ)、製品見本写真
      • 典型的な誤り:ブランドロゴが糸で表現されているだけで「刺しゅう」と誤認、または逆に刺しゅうを見落とす
    3. 5802.30(タフテッド織物)と5703(タフテッド床用敷物)
      • どこで分かれるか:床用敷物かどうか(用途と物性)
      • 判断に必要な情報:用途、裏面構造(バッキング)、厚み・剛性、製品仕様書
      • 典型的な誤り:タフテッドという言葉だけで5703に寄せる、または逆
    4. 5810(刺しゅう反物等)と「製品化された衣類付属品等」
      • どこで分かれるか:反物・ストリップ・モチーフの範囲か、スカーフ等として使用可能な完成品(made up)か
      • 判断に必要な情報:寸法、縁処理、完成品としてそのまま使えるか

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約
    • 第11部注7は「製品にしたもの(made up)」の定義を置いており、第58類の「反物・ストリップ・モチーフ」との境界、58.07の除外(切断以外に製品化したもの)などに直結します
    • 第11部注8は「第50類〜第55類や第60類等には、注7で定義する製品にしたものを含まない」など、部内の相互排他を整理します(最終製品か素材かの整理に効く)
  • 実務での意味(具体例つき)
    • 例1:刺しゅう入りの布が、単なる反物なら5810寄りですが、縁縫い済みでスカーフとして使用できる形態なら、衣類付属品側(例:6214方向)になる可能性があります
    • 例2:ラベルが「切断しただけ」のユニットなら5807の射程に入りますが、縫い付け済み・裏当て済み等で製品化されると別項に飛ぶ可能性が高くなります
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン
    • made up判定で第61類〜第63類に移る(衣類、衣類付属品、その他の繊維製品)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(第58類注1〜7)
    • 注1:第59類注1の対象となる紡織用繊維の織物類で、染み込ませ等したもの、及び第59類のその他の物品は第58類に含めない
    • 注2:5801には、よこパイル織物で浮糸を切っていないものも含む(加工途中でも5801に残ることがある)
    • 注3:5803の「もじり織物」の定義(もじりたて糸が絡み目を作る織物)
    • 注4:5804には、5608の結び網地を含めない
    • 注5:5806の「細幅織物」の定義(幅30cm以下、耳、袋織、バイアス等の具体的定義)。加えて「織物自体の糸で房を付けた細幅織物」は5808へ
    • 注6:5810の「刺しゅう布」には、金属糸やガラス繊維の糸による刺しゅう(基布が見えるもの)や、薄片・ビーズ等を縫い付けたアプリケを含み、手針つづれ風(5805)は含まない
    • 注7:5809以外にも、衣類等に使用する種類の金属糸製の製品をこの類に含む
  • 用語定義(定義がある場合)
    • 細幅織物(5806):幅と耳の要件で定義
    • もじり織物(5803):注3で定義
    • 製品にしたもの(made up):第11部注7で定義
  • 除外規定(除外先の類・項も明記)
    • コーティング等で第59類へ(または性状により第39類・第40類へ)
    • 結び網地(5608)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:細幅織物(5806)の定義で、幅30cmが一気に効く
    • 何を見れば判断できるか(必要情報)
      • 幅(袋織は平らにした幅、バイアスは広げた幅)
      • 両側に耳があるか(織込み、のり付け等による耳を含む)
    • 現場で集める証憑
      • 図面(幅の定義が分かるもの)、製品仕様書、写真、サンプル
    • 誤分類の典型
      • 幅の測り方を誤り、5806と通常幅織物(50〜55類や58類他項)を取り違える
      • 房付きでも5806にしてしまう(注5で5808へ)
  • 影響ポイント2:コーティング等で第58類から第59類へ飛ぶ(ただし飛び方に癖がある)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報)
      • コーティング等があるか
      • その対象が「第59類注1の紡織用繊維の織物類」に該当するか(第50〜55類、58.03、58.06、58.08、60.02〜60.06等)
      • 肉眼で判別できるか、両面完全被覆か等(第59.03の除外条件)
    • 現場で集める証憑
      • 断面写真、コーティング仕様、MSDS、工程図、試験結果
    • 誤分類の典型
      • 58.06のリボンを、PVCコーティングの有無を見ずに5806のまま申告
      • 一方で、5811(キルティング生地)は第59.03から除外されるため、コーティングの有無だけで5903へ飛ばすのも危険
  • 影響ポイント3:ラベル(5807)か刺しゅう(5810)かは「刺しゅうの定義」で決まる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報)
      • ロゴ等が織り出し・印刷か、刺しゅうか
      • スパンコール、ビーズ等を縫い付けたアプリケがあるか(注6で刺しゅうに含める)
    • 現場で集める証憑
      • 拡大写真、加工仕様(刺しゅう機工程)、サンプル
    • 誤分類の典型
      • 刺しゅう入りなのに5807
      • 反対に、織り出しを刺しゅうと誤認して5810

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:リボン・テープを全部5806(細幅織物)にしてしまう
    • なぜ起きる:品名が「リボン」「テープ」だと幅や耳、装飾性を確認しない
    • 正しい考え方:5806は注5で細かく定義。さらに、織物自身の糸で房を付けた細幅織物は5808に属する
    • 予防策:幅の測り方(袋織、バイアス)と耳の有無、房の作り方を仕様書で確認
  2. 間違い:装飾フリンジを5806にしてしまう
    • なぜ起きる:幅30cm以下だからといって即5806に寄せる
    • 正しい考え方:装飾用トリミングやタッセル等は5808。5806のうち装飾性が強いものは区分を再確認する
    • 予防策:装飾目的の加工(縁取り、ループ、タッセル等)の有無を写真で確認
  3. 間違い:刺しゅうラベルを5807で申告
    • なぜ起きる:ラベルだから5807、という思い込み
    • 正しい考え方:5807は「刺しゅうでない」ことが条件。刺しゅうなら5810へ
    • 予防策:製法(刺しゅう機工程の有無)をサプライヤーに確認し、拡大写真を保管
  4. 間違い:切断済みのラベルユニットを「製品化済み」と誤認し、61.17等へ飛ばしてしまう
    • なぜ起きる:切り離されているだけで「完成品」と判断してしまう
    • 正しい考え方:5807は切断ユニットでも、切断以外の方法で製品にしていない範囲なら含み得る。逆に、切断以外に製品化しているなら除外
    • 予防策:縫い付け、裏当て、接着、台紙固定など追加加工の有無を確認
  5. 間違い:タフテッド素材を全部5703(床用)にする、または全部5802.30にする
    • なぜ起きる:タフテッドの言葉だけで決める
    • 正しい考え方:5802は床用敷物(5703)を除外。床用かどうか、物性や裏面構造、取引実態で確認が必要
    • 予防策:用途、製品仕様(床材用のバッキングの有無)、サンプル評価をセットで収集
  6. 間違い:レース風のものを全部5804(レース)とする
    • なぜ起きる:見た目がレースなら5804と判断
    • 正しい考え方:レースは網目と柄を同時に作るタイプが中心。基布に縫い付けるアプリケ等は刺しゅう(5810)側の発想が必要
    • 予防策:製法(レース機、刺しゅう機、アプリケ工程)を工程図で確認
  7. 間違い:コーティングした細幅織物を5806のまま
    • なぜ起きる:素材名のまま分類し、加工(被覆等)を見落とす
    • 正しい考え方:第58類注1と第59類注1の関係で、58.06等のコーティング品は第58類から外れる方向がある。さらに第59.03の判定条件(肉眼判別など)も絡む
    • 予防策:MSDS、断面写真、目視判別の可否、屈曲試験条件などの情報を事前入手
  8. 間違い:刺しゅう反物(5810)と、刺しゅう入りスカーフ等(made up)を混同
    • なぜ起きる:刺しゅうがあると全部5810と思い込む
    • 正しい考え方:第11部注7のmade up判定が効く。分類例でも、刺しゅう入りの布片とスカーフ形態は分かれて示される
    • 予防策:寸法、縁処理、完成品として使用可能かをチェックリスト化

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。58類は「素材(反物)」と「副資材(ラベル、トリミング)」が混在し、材料側のHSと最終製品側のHSがずれやすい分野です。
  • よくある落とし穴
    • ラベルや刺しゅうワッペンを材料として使う場合、材料HSを誤るとCTC判定の前提が崩れます
    • コーティング等で第59類に飛ぶ材料を58類として扱ってしまい、工程評価がずれる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定により採用しているHS年版が異なるため、協定年版でのコード確認が必要です(協定のPSR検索において、HS年版の注意喚起がされています)。
  • 実務では、通関申告は最新HS(HS2022)で、原産地証明は協定が採用するHS年版で、という二重管理が発生し得ます。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件は協定ごとに確認(一般論)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

第58類に関して、税関が公表するHS2022対HS2017の改正点一覧(WCO相関表に基づく)では、5802の6桁の整理が示されています。

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022新設と削除(号の整理)新:5802.10、旧:5802.11・5802.195802.11及び5802.19の削除に伴い、5802.10を新設(取引量が少ないこと等を理由とする整理)マスタ更新、過去コード参照(契約書、PSR、社内品番、原産地判定)でトランスポジションが必要になる可能性

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料として、HS2022対HS2017の改正点一覧(WCO相関表に基づく資料)において、5802.11と5802.19の削除、5802.10の新設が明示されています。これに基づき「HS2017の5802.11/5802.19はHS2022では5802.10に整理された」と判断しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • 可能な範囲で整理します。現時点で一次資料として確認できたのは、HS2017→HS2022における5802の号整理です(前章参照)。
  • HS2012→HS2017、HS2007→HS2012の詳細なトランスポジションは、WCO相関表(税関サイト経由で公開)で個別確認してください。
改正区分主要な動き(確認できた範囲)旧コード→新コードの方向性
HS2017→HS20225802の号整理(5802.11/5802.19削除、5802.10新設)5802.11/5802.19 → 5802.10
HS2012→HS2017今回は第58類に関する個別の改正点を一次資料で精査していません(相関表で要確認)相関表で要確認
HS2007→HS2012同上(相関表で要確認)相関表で要確認

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:コーティング済みリボンを5806で申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第58類注1と第59類注1の関係を見落とし、被覆等の加工品を第58類で申告
    • 起きやすい状況:購買が「リボン」としか把握していない、MSDSや断面写真がない
    • 典型的な影響:修正申告、追加資料提出、検査強化、納期遅延
    • 予防策:加工有無の申告前チェック(仕様書、MSDS、写真)、必要なら事前教示
  • 事例名:刺しゅう入りブランドラベルを5807で申告
    • 誤りの内容:5807の条件(刺しゅうでない)を満たさない
    • 起きやすい状況:織り出しと刺しゅうの区別が曖昧
    • 影響:品目更正、関税率差、原産地規則への波及
    • 予防策:製法確認(刺しゅう工程の有無)、拡大写真の保存
  • 事例名:タフテッド素材を床用(5703)として扱うべきかの判断不足
    • 誤りの内容:5802が5703を除外する点を見落とし
    • 起きやすい状況:用途が未確定のまま輸入、商流で用途が変わる
    • 影響:分類差で税率差、統計差、検査
    • 予防策:用途証明(仕様、販促資料、取付方法)、サンプル確認
  • 事例名:刺しゅう反物と刺しゅう入りスカーフ(made up)の混同
    • 誤りの内容:第11部注7のmade up判定をしないまま5810で一括申告
    • 起きやすい状況:サイズと縁処理の情報がない
    • 影響:他類更正、追加資料、遅延
    • 予防策:寸法、縁処理、完成品性を事前確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

日本前提で、第58類に関連しやすい論点を「該当がある場合のみ」整理します。関税分類そのものの規制というより、最終製品として国内販売する段階の表示・安全規制が中心になりやすい分野です。

  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 原反や副資材そのものに一律の検疫が付くというより、用途(乳幼児用、肌着用等)や含有化学物質で別法令が絡む場合があります(販売時規制の整理例としてJETROが解説)。
  • その他の許認可・届出
    • 家庭用品品質表示法に基づく繊維製品品質表示(最終製品として販売する場合):繊維組成や取扱い表示などを定める規程があり、直近でも改正情報が公開されています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口)
    • 消費者庁(家庭用品品質表示法・繊維製品品質表示)
    • JETRO(輸入・販売時規制の整理)
  • 実務での準備物(一般論)
    • 組成証明(混用率)、取扱い表示情報、対象年齢や用途の情報、必要に応じて化学物質試験結果

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 反物か、製品化済みか(縁処理、縫製、房付け等)
    • 製法(織物、刺しゅう、タフテッド、レース、結び網)
    • 寸法(特に幅30cm、袋織は平ら幅、バイアスは広げ幅)
    • 加工(コーティング等)と、目視判別性
    • 素材(繊維種、金属糸の有無等)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 5806と5808、5807と5810、5802と5703など境界再確認
    • 58.03/58.06/58.08のコーティング品が第58類に残るか(第59類注1との関係)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名に「lace」「embroidered」「coated」「narrow woven」「tufted」など誤解を生む語がある場合、補足資料で裏取り
    • 写真、仕様書、工程図、MSDSをセットで準備
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS年版を確認し、必要ならトランスポジションで整合を取る
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 国内販売する場合は、品質表示や安全規制の対象を確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO
    • HS Nomenclature 2022 edition(章立てとChapter 58の英語タイトル確認)参照日:2026-02-24
    • Correlation Tables HS 2017–2022(相関表の位置付け)参照日:2026-02-24
  • 日本税関・公的機関
    • 第58類 注(税関 実行関税率表 2022年1月1日版 データ)参照日:2026-02-24
    • 第58類 関税率表解説(総説、各項解説)参照日:2026-02-24
    • 国内分類例規(第58類、例示)参照日:2026-02-24
    • 第59類 注(第59類注1など、コーティング品の範囲判断)参照日:2026-02-24
    • 第11部 注(made upの定義など)参照日:2026-02-24
  • 規制・表示(日本)
    • 消費者庁 家庭用品品質表示法(繊維製品品質表示規程)参照日:2026-02-24
    • JETRO 貿易・投資相談Q&A(衣料品の輸入手続き、日本の販売時規制の整理)参照日:2026-02-24

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。