用語(本文中で統一して使います)
- 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)
0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)
- この類に入る代表例(3〜6個):
- トラクター(農業用・林業用、セミトレーラ用ロードトラクター等):8701
- 10人以上(運転者含む)の輸送用自動車(バス等):8702
- 乗用車(ステーションワゴン、レーシングカー、雪上走行車、ゴルフカー等を含む):8703
- 貨物自動車(ダンプカーを含む):8704
- 車両部品・付属品(バンパー、シートベルト、エアバッグ、ラジエーター等):8708
- 二輪車・自転車・車いす・乳母車・トレーラー等:8711〜8716
- この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
- 鉄道用・軌道用でレール走行のみを目的とする車両:第86類(類注で除外)
- 航空機:第88類、船舶:第89類(「車両」でも輸送モードが違う)
- 建設機械等の自走式作業機械(ブルドーザー、エキスカベータ等):第84類(例:8429 等。走行部が8701に似ても、作業機械としての性格が強いと84類になりやすい)
- 玩具・遊戯用の車両(子供用三輪車などの「その他の子供用車輪付き玩具」):9503(類注で明記)
- 「車両用」と言い張りたくなるが、部注で“車両部品扱いにならない”もの(例:汎用ボルト/ナット等、一般機械(84類)、電気機器(85類)など):部注で除外
- 実務での最重要分岐(1〜3個):
- 完成品(車両)か、部分品・附属品か(車両なら8701〜8705/8709〜8716、部品なら8706〜8708/8714/8716.90等)
- 「人の輸送」か「貨物の輸送」か「特殊用途」か(8702/8703/8704/8705の分岐)
- 動力(内燃のみ/ハイブリッド/外部充電可/電動)・重量・排気量が6桁の分岐を直撃(8701/8702/8703/8704で特に重要)
- (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
- 8703(乗用車)と8704(貨物車)の境界、またはハイブリッド/電動の6桁差(関税率・統計・EPAのPSRが変わりやすい)。
- 8708(車両部品)に入れたつもりが、部注で84類/85類/一般用部品に飛ぶ(追徴・修正申告になりやすい)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)
1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)
- この類で特に効くGIR
- GIR1:見出し(Heading)の文言と、部注・類注でまず決めます(車両は品名や用途説明で迷いがちなので、まず条文ベース)。
- GIR6:6桁(号)は、同じ見出し内で「動力」「排気量」「車両総重量(g.v.w.)」「外部充電可否」などの条件で細分されます。
- GIR2(a):CKD/SKDのように「未完成・未組立」で入ってくる車両は、条件を満たすと完成品として扱われ得ます(輸送形態だけで部品扱いにしない)。
- 「品名だけで決めない」ための観点(この類で特に重要)
- 主たる設計目的(人の輸送/貨物の輸送/特殊作業)
- 構造・仕様(座席数、荷室構造、けん引装置、作業装置が恒久的か等)
- 動力構成(内燃のみ/内燃+電動(ハイブリッド)/外部充電可(プラグイン)/電動のみ)
- 重量・排気量(g.v.w.区分、cc区分)
1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)
- Step1:レール走行のみの車両か?
- Yes → 第86類(第87類は類注で除外)
- No → Step2へ
- Step2:完成車両か?部分品・附属品か?
- 完成車両 → Step3へ
- 部分品・附属品 → Step4へ(8706〜8708/8714/8716.90等 + 部注の除外確認)
- Step3(完成車両):用途で4桁を決める
- トラクター → 8701(ただし8709型トラクターは除外)
- 10人以上の輸送 → 8702
- 乗用(8702以外) → 8703
- 貨物 → 8704
- 特殊用途(クレーン車・消防車等) → 8705
- 工場・倉庫等の近距離運搬用(リフター等“取扱装置なし”) → 8709
- 戦車等 → 8710
- 二輪車 → 8711、自転車 → 8712、車いす → 8713、乳母車 → 8715、トレーラー等 → 8716
- Step4(部分品・附属品):まず「どの車両用か」を確認
- 8701〜8705用のシャシ・車体・部品:8706〜8708(ただし部注の除外あり)
- 8711〜8713用の部品:8714
- トレーラー等の部品:8716.90
- よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
- 第84類(自走式作業機械) vs 第87類(トラクター/車両):作業装置の恒久性・取外し易さ等で分かれることがある(税関解説で例示)。
- 8709(取扱装置なしの構内運搬車) vs 84類の荷役機械:車両にリフト等の取扱装置が付くと87類に残れない可能性が高い(8709の見出し文言に注意)。
- 9503(玩具) vs 8712(自転車):子供用でも「自転車」は8712に含むが、それ以外の子供用車輪付き玩具は9503(類注で明記)。
2. 主な項(4桁)とその内容
2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)
| 項番号(4桁) | 見出しの要旨(日本語) | 典型例(製品名) | 重要な分岐条件/除外/注意点 |
|---|---|---|---|
| 8701 | トラクター(8709のトラクターを除く) | 農業用トラクター、セミトレーラ用ロードトラクター、履帯式トラクター | 「牽引/押す」が本旨。作業機械(84類)との境界に注意。 |
| 8702 | 10人以上輸送用自動車(運転者含む) | 路線バス、観光バス | 座席定員(運転者含む)で8703と分岐。 |
| 8703 | 乗用自動車(8702以外) | 乗用車、SUV、ワゴン、レーシングカー、雪上車、ゴルフカー等 | 「主として人の輸送」。貨物車(8704)との境界が高頻度。 |
| 8704 | 貨物自動車 | トラック、バン、(不整地用)ダンプカー | g.v.w.区分・動力区分で6桁が細かい。 |
| 8705 | 特殊用途自動車(人/貨物輸送が主でない) | レッカー車、クレーン車、消防車、コンクリートミキサー車、路面清掃車、移動作業車 | “輸送が主目的”だと8704へ。装備が恒久的か等を確認。 |
| 8706 | 8701〜8705用の原動機付きシャシ | キャブなしシャシ(エンジン搭載) | キャブ付きシャシは8702〜8704に入る(類注)。 |
| 8707 | 8701〜8705用の車体(キャブ含む) | 車体シェル、キャブ | 車体単体。部注で別章に飛ぶ部品(汎用品等)に注意。 |
| 8708 | 8701〜8705用の部分品・附属品 | バンパー、ブレーキ、変速機部品、車輪、ラジエータ、マフラー、ステアリング、エアバッグ等 | 部注で84類/85類/汎用品に除外される部品が多い。窓は8708.22の号注に注意。 |
| 8709 | 構内等の近距離運搬用自走車(取扱装置なし)・駅プラットホーム用トラクター・それらの部分品 | 工場内運搬車、空港用牽引車 | “取扱装置なし”がキーワード。 |
| 8710 | 戦車その他の装甲戦闘車両(自走式)と部分品 | 装甲車両 | 安全保障貿易管理(輸出)など別途規制面も要確認。 |
| 8711 | モーターサイクル等(モペット含む)・補助原動機付き自転車・サイドカー | オートバイ、原付、電動二輪、サイドカー | 排気量/電動で6桁分岐。 |
| 8712 | 自転車等(配達用三輪車含む、非電動) | 自転車、配達用三輪車 | 子供用でも「自転車」はここ(類注)。 |
| 8713 | 身体障害者用の車いす(動力付き含む) | 手動車いす、電動車いす | 非動力/その他で分岐。 |
| 8714 | 8711〜8713用の部分品・附属品 | 二輪部品(ブレーキ、サドル等)、車いす部品 | 車両用部品でも8708ではなく8714になるケースが多い。 |
| 8715 | 乳母車及び部分品 | ベビーカー | 乳母車はこの項。 |
| 8716 | トレーラー・セミトレーラー、その他の非自走車両、部分品 | キャンピングトレーラー、農業用自走積卸しトレーラー、荷物用トレーラー、手押し台車 | “非自走”がポイント。部品は8716.90。 |
※表の4桁見出しはHS2022第87類(WCO条文)に基づき全列挙しています。
2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)
- 分岐条件(この類で頻出)
- 動力の種類(内燃のみ/内燃+電動/外部充電可否/電動のみ)
- 例:8703.40(ハイブリッド:外部充電不可) vs 8703.60(プラグイン:外部充電可)
- 排気量(cc):8703、8711で頻出
- 車両総重量(g.v.w.):8704で頻出(メーカー公表の最大設計重量として扱う旨の解説あり)
- 用途要件:8709(取扱装置なし、工場等の近距離運搬)
- 号注(Subheading Note):8708.22(窓の範囲が号注で限定)
- 動力の種類(内燃のみ/内燃+電動/外部充電可否/電動のみ)
- 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
- 8703.40 / 8703.60(いずれも「内燃+電動」だが、外部充電可否で分岐)
- どこで分かれるか:外部電源に接続して充電できる(プラグイン)かどうか
- 判断に必要な情報:車両仕様書(充電ポート有無、充電方式)、型式情報、カタログ記載
- 典型的な誤り:「ハイブリッド」とだけ聞いて8703.40に固定(PHEVを見落とす)
- 8704.21〜8704.23(内燃のみ) vs 8704.41〜8704.43(ディーゼル+電動)
- どこで分かれるか:電動モーターが推進用モーターとして搭載されているか
- 判断に必要な情報:パワートレイン構成(シリーズ/パラレル等の方式は問わず、推進用電動モーターの有無が重要)、メーカー仕様書
- 典型的な誤り:GVWだけ見て8704.21等に入れてしまう(HS2022ではハイブリッド用の別号がある)
- 8708.22 / 8708.29(車体部品のうち「窓」)
- どこで分かれるか:8708.22に入る窓は、(a)枠付き、または **(b)加熱装置等の電気・電子装置を内蔵(枠の有無は問わない)**で、かつ8701〜8705用として専ら/主として使用に適するもの、という枠組み
- 判断に必要な情報:枠の有無、ヒーター線・センサー等の内蔵、適用車種(8701〜8705向け専用性)、部品番号の互換表
- 典型的な誤り:自動車用窓を一律に8708.22として申告(無枠・無電装の安全ガラス等は別章(例:第70類)に寄る可能性)
- 8709.11 / 8709.19(構内運搬車:電動か否か)
- どこで分かれるか:車両が電動(8709.11)か、その他(8709.19)か
- 判断に必要な情報:駆動方式、電源(バッテリー)仕様
- 典型的な誤り:「工場で使う車=8709」と短絡(実際には取扱装置付きや公道仕様などで別章/別項に寄る)
- 8711.60(電動二輪)/ 8711.10〜8711.50(内燃二輪)
- どこで分かれるか:推進が電動のみかどうか
- 判断に必要な情報:原動機の種類、排気量(内燃ならcc)、モーター仕様
- 典型的な誤り:補助原動機付き自転車との呼称だけで決める(実態が電動二輪か、内燃か)
- 8703.40 / 8703.60(いずれも「内燃+電動」だが、外部充電可否で分岐)
3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)
3-1. 関連する部注(Section Notes)
- ポイント要約:
- 部注1:この部(第XVII部)は、玩具・遊戯用品等(例:9503、9508)を含みません。
- 部注2:「部分品・附属品」という言葉が条文にあっても、汎用部品(例:ボルト等)、84類の機械類、85類の電気機器などは車両部品として扱わない建付けがあります。
- 部注3:部品・附属品は、原則として「専ら/主として」特定の車両に用いられるかで、該当章に分類します(複数に同程度に使えるものは一般の見出しへ)。
- 部注4・5:水陸両用車などの扱い、エアクッション車の分類の考え方が示されています。
- 実務での意味(具体例つき):
- 例1:車両用の「ねじ・ボルト」を8708で申告したくなる → 典型的に部注2の枠組みで“汎用部品”扱いになりやすい(材質章/汎用品へ)。
- 例2:車載用の電装品(例:電気機器そのもの) → 部注2により85類側に寄る可能性が高い(「車用」という用途名だけでは8708にできない)。
- “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
- 8708(車両部品)だと思ったものが、84類(機械/原動機/伝動)や85類(電気機器)、または汎用品扱いで別章へ(部注2・3を常に確認)。
3-2. この類の類注(Chapter Notes)
- ポイント要約:
- 類注1:第87類は、レール走行のみを目的とする鉄道/軌道用車両を扱いません(第86類へ)。
- 類注2:本類の「トラクター」の定義(牽引・押すことが本質)。また、トラクターに装着する作業機械は、トラクターと一緒に提示されても原則として各見出しに残る、という整理があります。
- 類注3:キャブ付きのモーターシャシは8706ではなく8702〜8704に入ります。
- 類注4:8712には子供用自転車を含むが、それ以外の子供用車輪付き玩具は9503。
- 号注(Subheading Note):8708.22に入る窓の範囲を限定。
- 用語定義(定義がある場合):
- 「トラクター」=基本的に牽引/押す用途の車両(付随的に工具・種子等を運ぶ設備があってもよい)。
- 除外規定(除外先の類・項も明記):
- レール走行のみの鉄道用車両 → 第86類
- 子供用でも「自転車以外」の車輪付き玩具 → 9503
4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)
この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。
- 影響ポイント1:キャブ付きシャシ(8706か?8702〜8704か?)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):キャブ(運転室)の有無、当該シャシがバス/乗用/貨物のどれに該当する設計か
- 現場で集める証憑:シャシ仕様書、外観写真(キャブ含む)、製造者の構成図
- 誤分類の典型:エンジン付きシャシ=全部8706、と短絡(類注3で否定)。
- 影響ポイント2:トラクター+作業機械(セット提示時の扱い)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):作業機械が「トラクター用の交換式装置」か、トラクター本体と一体不可分か
- 現場で集める証憑:カタログ(交換式アタッチメントである旨)、取付構造、梱包明細(別梱か同梱か)
- 誤分類の典型:トラクターと一緒に入ってきた作業機械を、まとめて8701として申告(類注2の考え方に反することがある)。
- 影響ポイント3:子供用の“自転車”と“その他の子供用車輪付き玩具”
- 何を見れば判断できるか(必要情報):「自転車」と言える構造・機能か(ペダル駆動等)、玩具的な簡易品か
- 現場で集める証憑:製品写真、対象年齢表示、仕様書(駆動方式)
- 誤分類の典型:子供用=全部9503(類注4で「子供用自転車は8712」とされる)。
- 影響ポイント4:8708.22(窓)の号注
- 何を見れば判断できるか(必要情報):枠の有無、電気・電子装置(ヒーター等)の内蔵、8701〜8705向けの専用性
- 現場で集める証憑:部品図、部品番号(適用車種表)、電装仕様(ヒーター線、アンテナ等)
- 誤分類の典型:自動車用ガラスを一律に8708(または逆に一律に第70類)としてしまう(号注の要件で分岐)。
5. 分類でよくある間違い(原因→対策)
- 間違い:建設機械の走行ベースがトラクターに似ているので8701にしてしまう
- なぜ起きる:見た目(走行部)だけで判断しがち
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):自走式作業機械は84類に分類されることがあり、税関解説では「作業装置が容易に取り外せるか」等で走行部と作業部を分ける例が示されています。
- 予防策:
- 確認資料:作業装置の着脱構造図、工具なしでの着脱可否、カタログの用途説明
- 社内質問例:「作業装置(排土板・アーム等)は“容易に”外せますか?外した状態で別用途に使いますか?」
- 間違い:キャブ付きシャシを8706(シャシ)で申告
- なぜ起きる:「シャシ」という言葉に引っ張られる
- 正しい考え方:類注3により、キャブ付きモーターシャシは8702〜8704に入ります。
- 予防策:写真(キャブ有無)を必ず添付し、車両の用途(人/貨物)も同時に確認
- 間違い:ロードトラクター(セミトレーラ牽引用)を8704(貨物車)にしてしまう
- なぜ起きる:牽引車=トラック、という思い込み
- 正しい考え方:セミトレーラ用ロードトラクターは8701の系列(HS2022では動力別に細分)です。
- 予防策:第五輪カプラの有無、設計上の牽引目的、車両分類(メーカー資料)を確認
- 間違い:HV/PHEVの区別をせず、8703.40等に固定
- なぜ起きる:営業資料や品名が「ハイブリッド」だけで終わる
- 正しい考え方:外部電源にプラグ接続して充電できるかで、8703.40/8703.50と8703.60/8703.70が分かれます。
- 予防策:充電口・車載充電器仕様の有無を仕様書で確認(「外部充電可」を定義して社内共有)
- 間違い:ハイブリッド貨物車を8704.21等(内燃のみ)で申告してしまう(HS2022)
- なぜ起きる:HS2017の感覚で「ディーゼル車=8704.21」などと固定
- 正しい考え方:HS2022では内燃のみ(8704.21等)と、内燃+電動(8704.41等)が分かれています。
- 予防策:パワートレイン構成(推進用電動モーターの有無)を輸入前に確認
- 間違い:車両部品は何でも8708に入ると思い、電装品や汎用部品まで8708で申告
- なぜ起きる:「車両に付く=車両部品」という用途ベースの判断
- 正しい考え方:部注2で、汎用部品・84類・85類などは“部分品・附属品”の対象外となる整理があり、8708は万能箱ではありません。
- 予防策:部注2チェックを社内手順化(「84/85/汎用品に該当しないか」を必ず確認)
- 間違い:自動車用窓を一律に8708.22(または一律に8708.29)
- なぜ起きる:号注の要件(枠付き/電装内蔵/専用性)を見落とす
- 正しい考え方:8708.22に入るのは号注で限定された窓です(枠付き、または電装内蔵等、かつ8701〜8705用として専ら/主として適する)。
- 予防策:部品図・電装仕様・適用車種表をセットで取得
- 間違い:8705(特殊用途)に寄せすぎる/逆に8704(貨物車)に寄せすぎる
- なぜ起きる:見た目の装備(例:作業架装)だけで決める
- 正しい考え方:8705は「人/貨物輸送が主目的ではない」特殊用途車。輸送が主なら8704になり得ます。
- 予防策:装備が恒久的か、輸送機能が主かを仕様書と用途説明で整理(写真だけで決めない)
6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点
6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係
- HSの付番がPSR選択に直結します。誤分類すると、PSRの前提(CTCの判定階層やRVC計算対象)が崩れ、原産性判断全体が誤るリスクがあります(一般論)。
- よくある落とし穴(自動車で特に起きやすい一般形):
- 最終製品(例:8703/8704)と材料(例:8708/84類/85類)のHSを取り違える
- HS2022で新設された電動・ハイブリッドの号(例:8704.60等)に移ったのに、旧版PSRの見出しで見続けてしまう
6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)
- 参照協定が未指定のため一般論ですが、多くの協定は“特定のHS版”に基づくPSR表を持ちます。HS2022(現行HS)での社内コードと、協定PSRの参照HS版がズレる場合は、**トランスポジション(旧→新対応)**が必要です。
- トランスポジションの実務的な扱い方(一般論):
- ①協定PSR表の参照HS版を確認
- ②WCOの相関表(Correlation Tables)で旧コード→新コード対応を確認
- ③社内の品目マスターに「協定HS版」「現行HS」「対応根拠」を残す
- 例:HS2017の8701.20が、HS2022では8701.21〜8701.29に分割されているため、協定がHS2017参照の場合は“どの新号に当たるか”の整理が必要
6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)
- 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
- 証明書類・保存要件(一般論):協定ごとの保管期間・証憑(仕入書、製造記録、工程表、原産地資料)を整備
7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)
7-1. 変更点サマリー(必須:表)
| 比較(例:HS2017→HS2022) | 変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更) | 該当コード | 変更の要旨 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|---|
| HS2017→HS2022 | 分割/新設 | 8701.20 → 8701.21〜8701.29 | セミトレーラ用ロードトラクターが、動力(内燃/ハイブリッド/電動等)別に細分化 | EV/HEVのロードトラクターで6桁が変わる。協定PSRや統計にも影響。 |
| HS2017→HS2022 | 範囲変更+新設 | 8704.21〜8704.32、8704.41〜8704.52、8704.60、8704.90 | 8704で「内燃のみ(with only)」の号が明確化され、ハイブリッド(内燃+電動)・電動(電動のみ)を新設号で整理 | HS2017感覚で8704.21等に入れていた車両が、HS2022では8704.41等/8704.60に移る可能性。 |
| HS2017→HS2022 | 分割/新設(号注追加) | 8708.29 → 8708.22/8708.29 | 車体部品のうち、一定の窓(枠付き、または電装内蔵等)が8708.22として分離。号注で範囲を定義 | 自動車窓の分類が変わり得る。部品番号・仕様で要件確認が必須。 |
| HS2017→HS2022 | 文言修正(用語簡素化) | 8702/8703/8711等の「reciprocating」の削除 | 一部のエンジン表現が簡素化(用語の整合) | 通常は範囲変更ではないことが多いが、旧文言を引用した社内資料は更新推奨。 |
7-2. 「違うことになった根拠」(必須)
- 根拠資料として、WCOのHS条文(HS2017/HS2022の第87類)およびWCO相関表(HS2017↔HS2022)を参照しました。
- **8701(ロードトラクター)**について、相関表(Table II)においてHS2017の8701.20がHS2022の8701.21〜8701.29へ対応付けられており、HS2022条文でも8701.21〜の細分が確認できます。
- **8704(貨物車)**について、HS2017条文ではハイブリッド/電動の専用号がなく、その他(8704.90)に収容される余地がありましたが、HS2022条文ではハイブリッド(8704.41〜8704.52)と電動(8704.60)が明示され、相関表でも8704.90から新号群へ対応が示されています。
- **8708(窓)**について、HS2017では8708.22がなく8708.29に集約されていたのに対し、HS2022で8708.22が新設され、さらに号注で範囲が定義されています。相関表(Table II)でも8708.29→8708.22/8708.29の対応が確認できます。
- 上記以外については、少なくとも第87類の見出し構成(4桁レベル)はHS2017とHS2022で大枠は維持されていることを、条文上で確認しました。
8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード
「可能な範囲」で、HS2007→2012→2017→2022の流れで“第87類内で目立つ再編”を整理します(網羅ではなく、実務上インパクトが大きいもの中心)。
| 変遷 | 主な追加・削除・再編(要旨) | 旧コード→新コード(例) | 備考(確認根拠) |
|---|---|---|---|
| HS2007→HS2012 | 8714(オートバイ用部分品等)の一部コード体系が整理(例:オートバイ用が8714.10に) | 8714.11/8714.19 → 8714.10(例) | HS2007条文に8714.11/19、HS2012条文に8714.10が確認できる |
| HS2012→HS2017 | 8702(バス等)にハイブリッド/電動の区分が追加 | 8702.10/8702.90 → 8702.10/20/30/40/90 | HS2012には8702.20等なし、HS2017で追加 |
| HS2012→HS2017 | 8703(乗用車)にハイブリッド/プラグイン/電動の区分が追加 | 8703.90中心 → 8703.40〜8703.80等を追加 | HS2012には8703.40等なし、HS2017で追加 |
| HS2012→HS2017 | 8711(二輪)に電動(8711.60)が追加 | 8711.90等 → 8711.60追加 | HS2012に8711.60なし、HS2017で追加 |
| HS2017→HS2022 | 8701(ロードトラクター)が動力別に分割 | 8701.20 → 8701.21〜8701.29 | 相関表で対応、HS2022条文で細分確認 |
| HS2017→HS2022 | 8704(貨物車)にハイブリッド/電動を明示(範囲整理) | 8704.90等 → 8704.41〜8704.60等 | HS2022条文+相関表で確認 |
| HS2017→HS2022 | 8708(窓)を新設号+号注で範囲定義 | 8708.29 → 8708.22/8708.29 | HS2022条文+号注+相関表で確認 |
9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)
- 事例名(短く):キャブ付きシャシを8706で申告して差し戻し
- 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注3(キャブ付きシャシは8702〜8704)
- 起きやすい状況:インボイス品名が「chassis」だけ、写真なし
- 典型的な影響:修正申告、追加書類要求、検査・通関遅延
- 予防策:キャブ有無の写真と仕様書を必ず提出、税関相談(事前教示)を検討
- 事例名:トラクターと交換式作業機械を一括で8701申告
- 誤りの内容:類注2(作業機械は原則各見出しに残る)
- 起きやすい状況:セット輸入(同梱)、現場が「一式」で処理
- 典型的な影響:税番修正、関税/統計の是正、原産地規則の再評価
- 予防策:梱包明細で品目分け、作業機械の見出しを別途検討
- 事例名:建設機械(自走式作業機械)を8701扱い
- 誤りの内容:第84類と第87類の境界(税関解説で例示)
- 起きやすい状況:「走行部がトラクターと同じ」だけで判断
- 典型的な影響:税番修正、追加納税、輸入許可後の調査対応
- 予防策:作業装置の恒久性・着脱性、機能の主従を仕様書で整理
- 事例名:自動車用窓を8708.22で申告したが要件不足
- 誤りの内容:8708.22の号注要件(枠付き/電装内蔵等、専用性)
- 起きやすい状況:ガラス=「車体部品」だから8708、という短絡
- 典型的な影響:他章への振替、課税価格・税率の再計算、遅延
- 予防策:枠/電装/適用車種を示す資料を事前に揃える
10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)
- 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
- 記載の分類軸(該当がある項目のみ書く):
- 検疫・衛生(SPS等)
- 第87類自体は農水産物の検疫とは直接関係しにくい一方、**車両に付随する梱包材(木材)**など別論点が出ることがあります(案件別に確認)。
- ワシントン条約(CITES)等の種規制
- 第87類では一般に頻度は高くありません(革/装飾などが絡む場合は別途確認)。
- 安全保障貿易管理(該当する場合)
- 8710(戦車・装甲戦闘車両)や、軍事転用が問題となり得る貨物は、**外為法に基づく輸出管理(リスト規制/キャッチオール等)**の観点で事前確認が必要です。
- その他の許認可・届出
- 自動車の輸入通関:税関の案内(カスタムスアンサーPDF)では、通関手続の流れや必要書類、引越貨物としての免税要件などが整理されています。
- 自動車登録:輸入車を日本で走らせるには登録等が必要で、税関手続とは別に登録用の証明書(例:通関証明書)等が論点になります(税関の英語版案内で言及)。
- 中古自動車の輸出:輸出抹消仮登録等、国交省での手続を要する旨が税関案内で整理されています。
- 検疫・衛生(SPS等)
- 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
- 税関(カスタムスアンサー、事前教示、品目分類事例)
- 経済産業省(安全保障貿易管理)
- 国土交通省(輸入車の手続・制度:例としてPHP制度概要)
- 実務での準備物(一般論):
- 仕様書(動力、排気量、GVW、定員、用途)
- 写真(全体、車台番号、主要装備)
- 部品の場合:部品図・適用車種表・材質/機能説明
- 規制該当性:該非判定資料(必要な場合)
11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)
- 分類前チェック(製品情報の収集)
- 車両:用途(人/貨物/特殊)、定員、GVW、排気量、動力構成(HV/PHEV/EV)
- 部品:どの車両(8701〜8705 or 8711〜8713等)向けか、専用性、電装・機械要素の有無
- 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
- 部注2で除外される“汎用品/84類/85類”に該当しないか
- 類注3(キャブ付きシャシ)や号注(8708.22)などの“地雷”を踏んでいないか
- 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
- 品名:用途が誤解されない英語/日本語表現(例:road tractor for semi-trailer 等)
- 補足:型式、スペック表、写真
- 車両通関:税関案内に沿って必要書類を揃える(輸入車通関、通関証明書申請など)
- FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
- 協定の参照HS版を確認し、HS2022との対応を相関表で整理
- BOM(材料HS)・工程・原価の整合性を点検
- 規制チェック(許可/届出/検査)
- 8710等は輸出管理(METI)を確認
- 中古車輸出は輸出抹消等の事前手続を確認
12. 参考資料(出典)
- WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
- WCO HS Nomenclature 2022, Chapter 87(1787_2022e.pdf)[参照日:2026-03-01]
- WCO HS Nomenclature 2017, Chapter 87(1787_2017e.pdf)[参照日:2026-03-01]
- WCO HS Nomenclature 2012, Chapter 87(1787_2012e.pdf)[参照日:2026-03-01]
- WCO HS Nomenclature 2007, Chapter 87(1787_2007e.pdf)[参照日:2026-03-01]
- WCO Section XVII Notes(1700_2022e.pdf)[参照日:2026-03-01]
- WCO General Rules for the Interpretation(GIR)(0001_2012e_gir.pdf)[参照日:2026-03-01]
- WCO HS2017/HS2022 Correlation Tables(Table I, Table II)[参照日:2026-03-01]
- 日本税関・公的機関のガイド
- 税関「関税率表解説 第87類(87r.pdf)」[参照日:2026-03-01]
- 税関「84類・87類 自走式作業機械の取扱いについて(84rd.pdf)」[参照日:2026-03-01]
- 税関(カスタムスアンサーPDF)「1109 自動車の輸入通関手続(FAX1109.pdf)」[参照日:2026-03-01]
- 税関(英語版案内)「Import Clearance Procedures for Vehicles(FAX1109e.pdf)」[参照日:2026-03-01]
- 税関(カスタムスアンサーPDF)「5502 中古自動車の輸出通関手続(FAX5502.pdf)」[参照日:2026-03-01]
- 税関「輸入貨物の品目分類事例」[参照日:2026-03-01]
- FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
- (本回答では協定未指定のため一般論。実務では該当協定のPSR表の参照HS版を確認してください)
- その他
- 経済産業省「安全保障貿易管理(リスト規制)」[参照日:2026-03-01]
- 国土交通省(参考)「輸入自動車特別取扱制度(PHP)の概要」[参照日:2026-03-01]
※Web参照は「参照日(YYYY-MM-DD)」も併記
付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)
- どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
- 製品仕様書(用途、構造、材質、動力、排気量、GVW、定員)
- 写真(全体・銘板・主要装備)
- 部品は「適用車種(どの8701〜8705/8711〜8713に専用か)」が分かる資料(部品番号と互換表が強い)
- 既存の分類実績(他国税関のBTI等があれば添付。ただし最終判断は日本税関)
- 探し方の導線(日本)
- 税関サイトには「輸入貨物の品目分類事例」が類別に掲載されています(まず既存事例を検索)。
- 事前教示制度(品目分類)もカスタムスアンサー等で案内されています(手続や必要資料の目安を確認)。
免責事項
本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。
