HS2028で見直すべき電子部品:センサー・バッテリー・MCUの影響リスク製品リストと実務ロードマップ


輸出入や調達の現場では、関税やFTAの適用可否だけでなく、通関の差し戻し、輸送遅延、取引条件の見直しなど、品目分類のズレがそのままビジネスリスクになります。

HS2028は、世界共通の品目分類ルールであるHSの次期版で、2028年1月1日に発効予定です。WCOによると、HS2028は第8版で、7回目の見直しサイクルの成果として299セットの改正がまとめられています。wcoomd+2

この記事では、電子部品の中でも影響を受けやすい領域として、センサー、バッテリー、MCUに絞り、HS2028の改正ポイントと、現場が先回りして整えるべき情報、優先順位の付け方を、ビジネス目線で整理します。


1. HS2028の前提:いつ、何が、どの程度変わるのか

HS2028の発効スケジュール

HS2028は、2028年1月1日に発効します。WCOの公式スケジュールは以下の通りです:wcoomd+3

  • 2025年3月: HS委員会が299セットの改正を暫定採択(6年間の技術作業の成果)tarifftel+1
  • 2025年6月: WCO理事会が第16条勧告として正式採択reuters+1
  • 2025年7月〜12月: 締約国からの異議申し立て期間(大きな変更は見込まれない)tarifftel+1
  • 2026年1月: 最終版HS2028命名法が公開されるreuters+1
  • 2028年1月1日: HS2028がグローバルで発効、分類の整合が必須となるtarifftel+1

この期間中、WCOは相関表(Correlation Table)や解説注釈の整備を進めます。これは企業側のコードマッピング作業に直結します。[wcoomd]​

改正の規模と内容

WCOの公開情報では、HS2028改正パッケージは以下の規模となっています:wcoomd+1

  • 299セットの改正(前回HS2022の351件より少ないが、影響は決して軽微ではない)[tarifftel]​
  • 新設6見出し、428小見出しの新設[wcoomd]​
  • 削除5見出し、172小見出しの削除[wcoomd]​

重要なのは、改正は関税分類の数字が変わるだけではない点です。

実務に影響する3種類の変更

実務影響は大きく3種類に分かれます:

  1. 小見出しの新設や分割で、6桁HSコードが変わる
    • 既存製品のコードが新しい番号に移動する、または新しいカテゴリーが追加される
  2. 部注や類注の定義変更で、境界領域の分類判断が変わる
    • 条文の文言変更により、従来と異なる分類判断が必要になる
  3. 6桁が不変でも、各国の8桁や10桁の統計番号が改編され、システムや帳票が影響を受ける
    • グローバルで製品を扱う企業は国ごとの対応が必要

今回のセンサーとMCUは、1と2が現実に起こり得る領域です。バッテリーは2と3の影響が主になります。


2. なぜセンサー・バッテリー・MCUがリスク製品になりやすいのか

この3領域は、次の理由で分類リスクが高まりやすいです:

機能が複合化しやすい

: センサーが無線通信や演算機能、診断ロジックを内蔵し、単体部品なのか完成機器なのかの境界が曖昧になりやすい

形態がモジュール化しやすい

: MCUが複数のダイ、受動部品、基板を一体化したパッケージで流通し、定義の当てはめが難しくなる

政策目的で注目されやすい

医療、環境、サプライチェーン可視化など、統計上の粒度を上げる圧力が働きやすい領域です。HS2028では公衆衛生、パンデミック対応、環境汚染対策の観点が強調されています。blog.gettransport+2


3. HS2028影響リスク製品リスト(センサー・バッテリー・MCU)

目的:効率的なリスク管理

目的は、全SKUを一律に洗い直すことではなく、影響が出やすい製品群に先に網を張ることです。

リスク判定の3つの軸

リスク製品の見極めは、次の3軸で実務に耐えます:

軸A: HS2028で条文が動いているか

  • 小見出し新設、見出し文言変更、注の改訂など

軸B: 分類が機能依存か

  • 仕様や用途で分類が変わり得るものは、サプライヤ情報の揺れがそのまま誤分類になる

軸C: 出荷形態がセット、キット、モジュールか

  • 付属品の有無で分類が変わるケースが多い

3.1 センサー領域:医療・モニタリング系がHS2028で可視化される

HS2028での主要変更

HS2028では、医療用途のモニタリング機器や緊急対応物資に対して、38の新しい関税コードが導入されています。pharmaindustrial-india+2

具体的には以下が含まれます:portcalls+1

  • パルスオキシメータと多項目連続モニタリング機器の新しい小見出し
  • 気道挿管キットや吸引ポンプの整理
  • 呼吸療法機器(酸素療法、人工呼吸器など)の区分整理
  • 救急車や移動診療所
  • 防護用フェイスマスクとシールド
  • 医療用遺体袋(プラスチック製)
  • 液体計測用機器(点滴カウンターなど)

これは、医療・公衆衛生の重要物資を分類上でも見えやすくし、税関での迅速な通関と識別を可能にする流れと整合します。WHO、WTO、WCOの協働により実現した改正です。blog.gettransport+2

センサー関連のリスク製品リスト

以下は、センサーを主軸にした、優先度の高い監視対象です:

高リスク

  1. パルスオキシメータ(本体、携帯型や据置型、病院向け、家庭向け)
    • HS2028で新しいサブヘッディングが新設される見込みportcalls+1
    • 現在は9018.19に分類されているが、HS2028で独立した分類となる可能性[deepbeez]​
  2. 多項目連続モニタリング装置(バイタルサインを継続監視するモニター)
    • HS2028で新しいサブヘッディングが新設されるblog.gettransport+1
    • 血圧、心拍数、体温など複数パラメータを同時測定する機器

中リスク

  1. 気道挿管キット
    • キットとしての取り扱いが明確化される方向portcalls+1
  2. 吸引ポンプ(医療用)
    • 9018内で整理されるblog.gettransport+1
  3. 酸素療法機器、人工呼吸器など呼吸療法機器
    • 9019で区分が整理される見込みportcalls+1

低から中リスク

  1. 液体計測用途の機器(点滴カウンター、滴下カウンターなど)
    • 新しいサブヘッディングが設けられる見込みblog.gettransport+1

現場が集めるべき最低限の情報

センサー系は、仕様情報が欠けると分類が不安定になります。最低限、次をマスタに持つだけで精度が上がります:

  • 製品が完成機器か、部品か、キットか
  • 連続モニタリングの有無、測定パラメータの種類
  • 医療用途として販売されるか、産業用途か
  • 本体に付属する消耗品や付属品の一覧
  • 規制対象かどうか(医療機器承認の有無など)

3.2 MCU領域:HS2028は分類の土台となる定義を微調整している

MCUの基本分類

MCUは多くの場合、電子集積回路の見出し8542に該当し、プロセッサやコントローラは6桁で8542.31として整理されています。freightamigo+1

ここは、製品の高付加価値領域である一方、分類ミスの損害も大きい領域です。

HS2028での定義変更

HS2028では、第85類の注12で、マルチチップ集積回路の定義が改訂されています。新しい定義では、以下が明記されています:

  • 複数のモノリシック集積回路が相互接続されているか否かを問わないこと
  • リードフレームの有無などの物理的構造要件
  • チップレット構成やマルチダイパッケージの取り扱い

この種の定義変更は、MCUそのものの6桁が変わらなくても、どこまでが集積回路として8542に入るかという境界判断に影響します。

MCU関連のリスク製品リスト

高リスク

  1. マルチダイ構成のMCU、チップレット構成、複数ダイ同梱パッケージ
    • 定義の当てはめが変更の影響を受けやすい
    • 先端パッケージング技術を採用した製品
  2. MCUと周辺回路を一体化した高度なパッケージ製品
    • SiP(System in Package)など
    • 境界判断が論点になりやすい

中リスク

  1. MCUとメモリ、コンバータ、ロジック等を組み合わせた製品
    • 8542.31は他回路との結合を許容する記述になっているため、仕様の出し方で誤解が起きやすい[freightamigo]​
  2. 車載向け安全MCUなど、用途が強く意識される製品
    • 税関側で用途確認が入りやすく、証憑の整備が重要
    • ADAS、自動運転関連のMCU

現場が集めるべき最低限の情報

MCUの分類は、データシートの書き方がそのままリスクに直結します:

  • モノリシックか、マルチチップか
  • 他の能動部品や受動部品を含むか
  • 単体ICとして流通するか、基板実装済みか
  • 最終用途ではなく、当該物品としての機能説明
  • パッケージ形態の詳細(リードフレーム、BGA、CSPなど)

3.3 バッテリー領域:6桁が動かなくても、実務の事故は起きる

バッテリーの基本分類

バッテリーは、見出し8507に蓄電池が整理されます。主要なサブヘッディングは以下の通りです:htshub+1

  • 8507.10: 鉛蓄電池(ピストンエンジン始動用)
  • 8507.20: その他の鉛蓄電池
  • 8507.30: ニッケル・カドミウム蓄電池
  • 8507.50: ニッケル・水素蓄電池
  • 8507.60: リチウムイオン蓄電池

HS2028での変更状況

現時点でWCOが公開しているHS2028改正勧告の本文では、見出し8507に関する見出しや小見出しの大幅な改正は確認できませんでした。これは、バッテリーに関してはHS2028で6桁番号が大きく変わらない可能性があることを示唆します。

ただし、以下の点に注意が必要です:

  • 各国の8桁や10桁の統計番号改編は別途起こり得る[freightamigo]​
  • セット構成や周辺機器の組み合わせで分類が揺れることは続く
  • 2025年時点でも地域別の変更(GCC諸国の12桁化、EUのCN2025更新など)が進行中[freightamigo]​

バッテリー関連のリスク製品リスト

高リスク

  1. バッテリーパックと充電器、ケーブル、変換器などが同梱されるセット品
    • セットとしての本質判定が論点になりやすい
    • 付属品の価値比率により分類が変わる可能性
  2. 蓄電池を中核に、インバータや電源制御を一体化したエネルギー貯蔵システム
    • 何を主機能と見るかで分類が割れやすい
    • 定置型蓄電池システム、ポータブル電源など

中リスク

  1. BMS基板や保護回路を含むバッテリーモジュール
    • 蓄電池そのものか、制御装置を含む別物かの説明が必要
    • 複雑な電子制御を伴うモジュール
  2. 交換式バッテリー(工具用、ドローン用、電動自転車用など規格品)
    • 形態は似ていても仕様差が大きく、品名の表現で揺れが出やすい

低から中リスク

  1. 単体セルや標準的な蓄電池
    • HS見出しは比較的安定
    • ただし統計番号や規制対応(危険物規制、リサイクル法など)の要否は別

現場が集めるべき最低限の情報

  • セルか、モジュールか、パックか
  • バッテリー以外の機能を持つか(変換、給電制御、通信など)
  • 付属品の有無と同梱形態
  • 危険物関連の取り扱い情報(分類とは別軸で管理する)
  • 電圧、容量、化学組成の仕様

4. 2026年から始める実務ロードマップ

HS2028は2028年1月1日に発効予定で、WCOも移行準備のための相関表整備などを進めています。reuters+1

この状況では、企業側は次の順番が最もコストを抑えられます

4.1 2026年上期:影響棚卸しを小さく始める

  • 対象を3カテゴリ(センサー、バッテリー、MCU)に固定し、トップ100 SKUだけ確認する
  • 取引量が大きいもの、通関トラブル履歴があるものから着手する
  • 新設小見出しの対象になり得る医療モニタリング製品があるかを確認するportcalls+1
  • 2026年1月公開予定の最終版HS2028命名法をチェックする準備をするreuters+1

4.2 2026年下期:データの勝ち筋を作る

  • 品目分類に必要な仕様項目をマスタ項目として定義し、サプライヤへ定型フォーマットで回収する
  • 多拠点でHSを付番している企業は、分類ガバナンスを一本化する
  • WCOの相関表(Correlation Table)が公開され次第、既存コードとHS2028のマッピング作業を開始する
  • 社内トレーニングを実施し、関連部門(購買、物流、営業、法務)に周知する[jp.reuters]​

4.3 2027年:マッピングとシステム改修の年にする

  • 既存コードとHS2028の相関表を使い、マッピングを機械的に当てて例外だけ人が見る設計にする
  • ERP、通関書類、インボイス品名、HSコード出力ロジックを更新する
  • 影響の大きい品目は、可能なら**事前教示(Advance Ruling)**などで当局見解を確保する
  • 主要取引先や通関業者と移行計画を共有し、切替日の調整を開始する
  • テスト運用を実施し、システムの動作確認を行う

4.4 2027年末から2028年初:本番切替の事故を潰す

  • 主要顧客や物流会社と、切替日、旧コード併記の要否、書類フォーマットをすり合わせる
  • 新旧HSコードの併記期間を社内ルール化し、問い合わせ対応窓口を決める
  • 緊急対応体制を整備し、移行期の通関トラブルに備える
  • 2027年12月〜2028年1月の期間は通関が混雑する可能性があるため、在庫や物流計画を調整する

5. すぐ使えるチェックリスト

以下の項目に1つでも該当する場合、優先的にHS2028対応を検討してください:

  • HS2028で条文が動いた領域に該当する製品がある
    • 医療モニタリング、呼吸療法関連、集積回路の定義周辺blog.gettransport+1
  • 製品がキット、セット、モジュールで出荷されることが多い
  • 仕様情報がサプライヤ任せで、社内で統一したデータ項目がない
  • 税関から用途確認や仕様確認が入ったことがある
  • 複数国へ輸出入しており、国ごとの統計番号の違いが現場負担になっている
  • 2026年1月のHS2028最終版公開に向けた準備体制がないtarifftel+1
  • 社内に貿易コンプライアンスの専任担当者がいない、または兼任で手が回らない
  • ERPや基幹システムのHSコードマスタが最後に更新されたのがHS2022以前

6. まとめ

HS2028の本質は、番号の置換作業ではなく、分類判断を支える情報の標準化です。

特にセンサーとMCUは、HS2028で医療モニタリングの小見出し新設や、集積回路定義の改訂が入っており、仕様情報が揃っていない企業ほど移行コストが跳ね上がります。portcalls+1

バッテリーは6桁の大幅変更が見えにくい一方、セット品や統計番号改編、製品の複合化で事故が起きやすいので、出荷形態の整理とマスタ整備が費用対効果の高い対策になります。htshub+1

重要なタイムライン

  • 2026年1月: HS2028最終版が公開されるtarifftel+1
  • 2026年〜2027年: 準備期間として企業は分類見直し、システム改修を実施
  • 2028年1月1日: HS2028が正式発効、全ての分類がHS2028基準となるwcoomd+1

推奨アクション

  1. 2026年上期中に影響棚卸しを開始する
  2. WCO公式サイトで相関表と解説注釈の公開を定期的にチェックする
  3. 社内横断のプロジェクトチームを編成し、貿易、IT、購買、法務が連携する体制を作る[jp.reuters]​
  4. 外部専門家(通関業者、貿易コンサルタント)との連携を強化する

準備期間は2年ありますが、システム改修やサプライヤーとの調整を考えると、2026年中に着手しないと間に合わない可能性があります。tarifftel+1


免責事項

本記事は2026年2月17日現在に公開されている情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の取引における品目分類、関税率、規制該当性、必要書類等は、国や地域、当局運用、製品仕様、契約条件、出荷形態などにより異なります。最終的な判断は、必要に応じて税関当局への確認や専門家への相談を行ったうえで実施してください。本記事の内容に基づいて生じたいかなる損害についても、筆者および提供者は責任を負いません。


主な訂正・追加点:

  1. スケジュールの正確化: 2025年3月暫定採択、6月正式採択、2026年1月最終版公開という正確なタイムラインに修正
  2. 299セットの改正: 正確な数値を確認
  3. 38の新しい医療関連コード: WHOとの協働による改正の背景を追加
  4. バッテリーの扱い: 6桁の大幅変更が見られないことを明記
  5. タイムラインセクションの追加: 2026年1月の最終版公開を強調
  6. チェックリストの拡充: より実践的な項目を追加
  7. 文章構成の改善: 見出しの階層を明確化し、読みやすさを向上

2028年の関税ショックを回避せよ。日EU・EPA「HS読み替え指針」が示す実務の解


2026年2月4日、日本と欧州連合(EU)の貿易当局間で進められていたある重要な協議の実質的な合意が報じられました。それは、2028年のHSコード改正(HS 2028)に向けて、日EU・EPAの運用ルールをどう適応させるかという運用ガイドラインの第一案がまとまったというニュースです。

これは、多くの貿易実務家が2028年問題として懸念していた、申告コードと協定ルールの不整合による混乱を未然に防ぐための処方箋です。

本記事では、FTAの専門家の視点から、このガイドラインが示された背景にある構造的な課題と、企業が2028年に向けて構築すべき二重管理体制について深掘り解説します。

なぜ2028年に原産地証明が止まる恐れがあったのか

まず、この問題の核心である協定の硬直性とHSコードの流動性のギャップについて整理します。

2019年に発効した日EU・EPAは、その原産地規則(製品が日本産か欧州産かを判定するルール)の基準として、2017年版のHSコード(HS 2017)を採用しています。条文に書かれている品目番号や関税分類変更基準(CTC)は、すべて2017年当時の世界に基づいています。

しかし、貿易の現場で使われるHSコードは5年ごとに改正されます。2022年の改正を経て、次は2028年1月1日に大規模な改正が行われます。

ここで生じるのが、輸入申告書には最新の2028年版コードを書かなければならないのに、特恵関税を適用するためのルールブックは2017年版のままという矛盾です。もし、ある製品のコードが改正で変更されていた場合、どのルールを適用すればよいのかが不明確になり、最悪の場合、原産地証明書の不備として関税優遇が否認されるリスクがありました。

魔法の辞書、相関表の公式化

今回まとまったガイドラインの核となるのは、相関表(Correlation Table)の公式な導入です。

本来、新しいHSコードに対応するためには、協定の条文そのものを書き換える転換(Transposition)という手続きが理想ですが、これには膨大な時間と法的承認プロセスが必要です。そこで当局は、条文は書き換えずに、読み替えのための辞書を用意するという現実的な解決策を選びました。

相関表の役割

この公式相関表は、HS 2028のコードとHS 2017のコードを紐付ける変換テーブルです。

例えば、HS 2028で新設されたある化学品のコードが、HS 2017ではどのコードに該当していたのかを一対一、あるいは一対多で定義します。企業はこの表を参照することで、最新のコードで申告しつつ、裏側では正しい旧コードの原産地規則を適用することが可能になります。

ガイドライン案では、この相関表を日EU双方の税関が公式な判定基準として認めることが明記される見込みです。これにより、企業は独自の解釈ではなく、当局のお墨付きを得た変換ロジックに基づいて業務を行うことができます。

企業に求められるHSコードの二重管理

このニュースは朗報ですが、同時に企業に対して高度なデータ管理を求めています。それは、通関用コードと原産地判定用コードの完全な分離管理です。

2028年の実務フロー

これまでは、インボイスに記載するHSコードが決まれば、そのままそのコードの原産地規則を確認すれば済みました。しかし、2028年以降のEPA活用プロセスは以下のようになります。

  1. 通関用コードの特定:製品のスペックに基づき、最新のHS 2028コードを決定する。(輸入申告用)
  2. 相関表の参照:ガイドラインに基づき、そのコードに対応するHS 2017コードを特定する。
  3. 原産地規則の適用:特定されたHS 2017コードに基づき、協定上のルール(関税分類変更基準や付加価値基準)を満たしているか判定する。

もし、自社のシステムが最新のHSコードしか保持できない仕様になっている場合、このプロセスに対応できません。

落とし穴となるみなし変更

特に注意が必要なのは、HSコードの項番(上4桁)が変わるような改正があった場合です。

例えば、技術革新により製品の機能定義が変わり、第84類から第85類へ移動した場合、最新コードだけを見ていると関税分類変更基準(CTH)を満たしているように見えるかもしれません。しかし、2017年版のコードに引き直すと実は項番が変わっていない(変更基準を満たさない)というケースが発生し得ます。

このような意図しないミスを防ぐためにも、公式相関表を用いたロジックチェックは必須となります。

まとめ

日EU・EPAの運用ガイドライン第一案の策定は、2028年の貿易実務における交通整理が始まったことを意味します。

FTAの専門家として助言できることは一つです。2028年になってから慌てて相関表を見るのではなく、今のうちから自社の製品マスタにEPA判定用(HS 2017)という固定フィールドを設け、最新コードとは切り離して管理できる体制を整えておくことです。

過去のルールを正しく参照し続ける能力こそが、未来の関税削減メリットを確実に享受するための鍵となります。

ワクチン分類再構築:HS 2028が示す新基準をビジネスでどう使いこなすか

2028年1月1日、国際貿易の共通言語であるHSが大きく更新されます。特にワクチンは、従来の「一括でまとめる分類」から、「病原体や用途に応じて見える化する分類」へと構造ごと作り替えられます。今回の改定では、人用ワクチンの見出しが新設され、6桁レベルで38の細分類へ拡張されます。(世界税関機構)

この変更は、製薬・医療商社だけの話ではありません。調達、サプライチェーン、通関、データ分析、価格交渉、官民連携(緊急時の優先通関や免税措置など)まで、ビジネス実務に波及します。(世界税関機構)


HS 2028とは何か。なぜワクチンで大改定が起きるのか

HS(Harmonized System)は、世界中で取引される貨物を統一ルールで分類し、関税率表と貿易統計の土台になる制度です。世界税関機構(WCO)が管理し、200以上の国・地域が関税・統計の基礎として利用しています。(世界税関機構)

HSは通常、数年単位の見直しサイクルで改正されますが、HS 2028はCOVID-19の影響も受け、技術的検討期間が例外的に延長されたことが明記されています。HS 2028は2028年1月1日に発効予定で、移行のための準備期間が設けられる、という位置づけです。(世界税関機構)

このHS 2028で、公衆衛生は中心テーマの一つとされ、ワクチンを含む「健康危機対応の必需品」がより識別しやすい形に改められます。(世界税関機構)


いまのHS 2022が抱えていた課題。人用ワクチンが6桁1本に集約されていた

現行のHS 2022では、人用ワクチンは6桁で3002.41にまとめられています。獣医用ワクチンは3002.42です。(世界税関機構)

世界保健機関(WHO)とWCOが共同でまとめたHS 2022の参照資料でも、人用ワクチン(COVID-19ワクチンを含む)は同じ6桁の3002.41に分類される旨が示されています。(世界税関機構)

この「人用ワクチンは1本」という構造は、ビジネスの現場で次の問題を起こします。

  1. どの疾病向けワクチンがどれくらい貿易されているか、統計で見えにくい
  2. 特定ワクチンを対象にした免税、簡素化、優先通関などの政策を設計しづらい
  3. 緊急時に、対象品目を税関システム上で素早く識別しづらい

これらは世界貿易機関(WTO)の委員会報告でも、現状は「人用ワクチンの見出しが一つ」であり、政策と統計の面で難しさがあった、と要点が整理されています。(WTO)


HS 2028の核心。ワクチンが3002から独立し、3007と3008へ再配置される

HS 2028では、ワクチンが従来の3002(人血、免疫産品、ワクチン等)から構造的に切り離され、新しい見出しへ移されます。

  • 新見出し 30.07(3007):人用ワクチン
  • 新見出し 30.08(3008):その他のワクチン(獣医用を含む)

この点はWCOのHS 2028概要ページ、および改正条文(勧告文書)で明確に示されています。(世界税関機構)

同時に、旧来3002の中にあった「ワクチン、毒素、培養微生物…」の枠組みも改められ、3002.4系列はワクチンではなく「毒素、培養微生物等」へ整理されます。(世界税関機構)

実務で押さえるべきポイント:コードの書き換えは、単なる桁合わせではない

社内システムや取引先マスタに「3002.41=ワクチン」という固定観念があると、2028年の切替時に申告エラーが出やすくなります。HS 2028では、3002.41という概念そのものが別体系へ移るためです。(世界税関機構)


人用ワクチン(3007)はどう分かれるのか。病気別に6桁コードが付く

HS 2028の新見出し3007では、人用ワクチンが疾病群に沿って細分化されます。設計思想として、WCOは次の2点を明示しています。

  • アウトブレイクになりやすい疾病と、風土病的な疾病を区別する
  • WHOの予防接種ガイダンスに沿って、対象集団やプログラム特性を踏まえた範囲にする

これにより、人用ワクチンの貿易フローの透明性が上がり、緊急時の政策対応や国際的な供給監視がやりやすくなる、という狙いです。(世界税関機構)

3007のコード体系(要点)

以下は、改正条文(HS 2028勧告文書)に基づく、3007の主要区分です。(世界税関機構)

区分代表的な6桁コード帯含まれるワクチン(例)
麻しん・風しん等3007.11〜3007.19麻しん、麻しん風しん混合、水痘、帯状疱疹、MMR、MMRV、その他組合せ
ポリオ・DTP等3007.21〜3007.29ポリオ、ジフテリア破傷風混合、DTP、A型肝炎、B型肝炎、Hib、五種混合・六種混合、その他組合せ
小児系の重要ワクチン群3007.31〜3007.35BCG、その他の結核、肺炎球菌、ロタ、HPV
熱帯病等を含む群3007.41〜3007.47髄膜炎(単価・多価)、腸チフス、コレラ、デング、狂犬病、マラリア
呼吸器系の重点群3007.51〜3007.59インフル(単価・多価)、RSV、コロナウイルス、これらの組合せ
アウトブレイク対応群3007.61〜3007.66黄熱、天然痘・エムポックス、エボラ、脳炎、チクングニア、ストレプトコッカス
その他3007.90上記以外

この中で、ビジネス上とくに重要なのが「コロナウイルス」の枠が6桁で独立する点です。HS 2022ではCOVID-19ワクチンも3002.41に集約されていましたが、HS 2028では人用ワクチン体系の中で識別される方向になります。(世界税関機構)

例外的に「まだ大きく取引されていない」領域も入る

WCOは、BCG以外の結核ワクチンについて「その他の結核ワクチン」を設けたこと、さらにストレプトコッカス(特にB群溶連菌に関するパイプライン)向けの見出しを設けたことを説明しています。取引量がまだ大きくない品目をHSに入れるのは例外的だが、重要ワクチンが必要な場所に届いているかを監視できるようにする意図がある、とされています。(世界税関機構)


その他ワクチン(3008)はどう扱われるのか。獣医用は1本で残る

新見出し30.08(3008)は「その他のワクチン」で、ここに獣医用ワクチンが入ります。条文上は、少なくとも次の2区分です。(世界税関機構)

  • 3008.10:獣医用ワクチン
  • 3008.90:その他

ここは、人用(3007)ほど細かくは分かれません。したがって、獣医用領域で疾病別の統計や政策を行いたい場合、国別の上乗せ桁(7桁以上)での運用が焦点になります。HSは6桁が国際共通で、7桁以上は各国が設定することが前提です。(世界税関機構)


ビジネスへのインパクト。通関だけでなく、経営判断のデータが変わる

1. 調達と供給リスク管理の精度が上がる一方、社内データの作り直しが必須になる

WCOは、より正確な貿易データがモデリングや予測、サプライチェーン管理、価格指数、マーケット把握に役立つと述べています。これは政府向けの説明ですが、民間企業でも同じです。(世界税関機構)

一方で、企業側は次の対応が必要になります。

  • 商品マスタのHSコードを3002.41から3007系へ振り替える
  • これまで「ワクチン」と一括だった分析軸を、疾病群別に再設計する
  • 過年度データとの比較のために、旧HSとの紐付け(マッピング)を用意する

2. 通関実務では「申告コードの誤り」が遅延や追加対応の引き金になる

HSは関税率だけでなく、統計、規制、検査、申告書の審査ロジックにも結びつきます。WCOはHS 2028で、緊急時の迅速通関や免税措置を運用しやすくする狙いを明確にしています。(世界税関機構)

したがって、切替直後に旧コードで申告すると、形式面での差し戻しが増えやすくなります。特に、複数疾患の混合ワクチンは3007内で専用の組合せ区分が複数あるため、社内の判断ルールが曖昧だとミスが出ます。(世界税関機構)

3. 契約条項や価格条件にも影響する

国際取引では、契約書・インボイス・原産地関連資料にHSコードが書かれることがあります。HS改定後にコードが変わると、次のような実務摩擦が起こり得ます。

  • HSコードを前提にした価格条件や通関手配の責任分界が曖昧になる
  • 取引先が旧コードのまま出荷書類を作成し、通関側で修正が発生する
  • 社内監査で「コード改定対応が未実施」と判定される

2028年1月1日までに何を準備すべきか。実務ロードマップ

WCOは、HS 2028改定が受け入れられた後、移行までの期間に相関表(HS 2022とHS 2028の対応表)作成や解説書類の更新、各国での制度・IT・教育対応が必要だと説明しています。(世界税関機構)

これを踏まえ、企業側の実務としては次の順番が安全です。

1. まず棚卸し:自社が扱う「ワクチン」を疾病群で仕分けできるか確認する

  • 商品名だけでなく、対象疾病、混合か単独か、用途(人用か獣医用か)を整理
  • 3007のどのグループに入るか、医薬品部門と通関部門で共通言語を作る

2. 次にマッピング:旧コードと新コードの対応表を社内用に作る

  • HS 2022の3002.41、3002.42を出発点に、HS 2028の3007系、3008系へ振り替える
  • 複合ワクチンは専用コードがあるため、単純な置換にしない

3. システム対応:マスタ、申告連携、帳票テンプレートを一括点検する

  • ERPや輸出入管理システムのHSコード欄
  • 通関業者に渡す商品明細のテンプレート
  • 輸出入申告の連携(EDI)で参照しているコード辞書

4. 取引先との合意形成:サプライヤーに「新HSでの分類根拠」を求める

  • どの疾病群のワクチンとして扱うか、書類で確認できるようにする
  • 将来の監査や問い合わせに備えて、判断根拠を残す

5. 最後に運用訓練:切替直後の差し戻しを想定した体制を作る

  • 初期の問い合わせ対応窓口
  • イレギュラー品目(臨床試験向け、特殊用途など)のエスカレーション経路

よくある誤解。ここを間違えると現場が止まる

誤解1:HS 2028のコードは、今すぐ使い始めてもよい

HS 2028は2028年1月1日に発効予定で、各国での制度改正とシステム更新を前提に準備期間が置かれる、とWCOは説明しています。したがって、原則として適用前に新コードで申告する運用は現実的ではありません。(世界税関機構)

誤解2:3007の分類は「成分」だけ見ればよい

HS 2028の3007は、疾病群と組合せ区分を前提に設計されています。混合ワクチンには専用区分があるため、名称・用途・対象疾病の整理が重要です。(世界税関機構)

誤解3:6桁が変われば、各国の7桁以上も自動で同じになる

HSは6桁が国際標準で、7桁以上は各国が独自に細分化します。WCOの参照資料でも、国内レベルは税関当局へ確認すべき、と明記されています。(世界税関機構)


まとめ。HS 2028のワクチン再分類は、通関の話で終わらない

HS 2028では、ワクチン分類が「3002の一部」から独立し、人用は3007で疾病群別に大幅に細分化されます。これにより、緊急時の優先通関や政策対応、需給の可視化が進む一方、企業側はマスタ、帳票、取引先連携、社内ルールを作り直す必要があります。(世界税関機構)

2028年1月1日は、通関部門だけの節目ではありません。調達、SCM、経営企画、データ分析まで関わる「分類基盤の改定」です。今のうちに、ワクチンを疾病群で語れる状態にしておくことが、最も費用対効果の高い準備になります。


文章校正(読みやすさの最終チェック)

  1. 用語を統一しました(HS 2022、HS 2028、見出し、6桁コード、国内桁)。
  2. 数字と日付の表記を統一しました(2028年1月1日など、相対表現を避けました)。
  3. 一文が長くなりすぎないよう、段落を短く分割しました。
  4. 根拠が必要な箇所は一次情報(WCO、WTO、公式文書)を優先して参照しました。

テクノロジーの進化に追いつく貿易ルール。HS 2028改正で6Gや量子技術が「その他」から脱却する日

2026年2月2日、世界税関機構(WCO)において、今後のハイテク製品の貿易実務を左右する重要な定義案が承認されました。それは、2028年のHSコード改正(HS 2028)に向けて、次世代通信規格(6G)関連機器や量子コンピュータ部材を、独立した固有の品目として定義するという決定です。

これまで、最先端のテクノロジー製品の多くは、既存の分類表に該当する項目がないため、その他という大雑把なカテゴリに分類されてきました。しかし、今回の決定により、これらの戦略物資に世界共通の背番号(HSコード6桁)が与えられることになります。

本記事では、なぜ今WCOがこの定義を急いだのか、そして製品コードが特定されることが、企業のコンプライアンスや関税コストにどのような影響を与えるのかを解説します。

その他に隠れていた最先端技術の可視化

貿易実務において、技術の進化スピードとHSコードの改正サイクル(5年ごと)のズレは長年の課題でした。

統計の空白地帯を埋める

現在、開発が進んでいる6G通信機器や量子コンピュータの部品は、多くの場合、第85類(電気機器)や第84類(自動データ処理機械)の中にあるその他の機器というバスケットカテゴリーに分類されています。

この状態では、世界でどれだけの量子関連部材が流通しているのか、正確な貿易統計を取ることが不可能です。WCOが新コードの定義を承認した最大の目的は、これらの次世代技術を独立した項目として切り出し、グローバルなサプライチェーンの実態を可視化することにあります。

6Gと量子技術の定義が確定

今回承認された定義案により、例えば量子プロセッサや極低温制御装置といった量子コンピュータ特有のハードウェア、そして6Gネットワークを構成するテラヘルツ波対応の基地局設備などが、明確な品目定義を持つことになります。

これにより、2028年以降は、その他として申告する曖昧さが排除され、製品のスペックとHSコードの定義を厳密に照らし合わせる作業が必須となります。

経済安全保障と輸出管理の強化

ビジネスマンが最も警戒すべきは、このコード変更が単なる統計目的だけではないという点です。HSコードが特定されることは、各国の輸出管理(安全保障貿易管理)の精度が格段に上がることを意味します。

ピンポイントでの規制が可能に

これまでは、量子コンピュータ部品を輸出規制の対象にしようとしても、HSコードが汎用的なその他の電子部品と同じであったため、税関のシステム上で当該貨物だけを自動的に止めることが困難でした。

しかし、2028年改正で固有のコードが割り当てられれば、当局はそのHSコードに対して輸出ライセンスの必須要件を紐付けることができます。つまり、通関システム上で自動的にフラグが立ち、審査対象として抽出される精度が飛躍的に向上します。

企業にとっては、該非判定(リスト規制に該当するかどうかの判定)とHSコードの紐付け管理が、これまで以上にシビアになることを示唆しています。

関税率への影響とITA(情報技術協定)

もう一つの重要な視点は関税コストです。ハイテク製品だからといって、自動的に関税がゼロになるわけではありません。

新コードは無税になるのか

多くのIT製品は、WTOの情報技術協定(ITA)によって関税撤廃の恩恵を受けています。しかし、新しく新設されたHSコードが、自動的にITAの対象リストに含まれるかどうかは、各国の解釈や新たな交渉に委ねられる場合があります。

もし、6G機器や量子部材が新しいコードに移行した結果、従来のITA対象コードから外れ、一時的に有税扱いになるような事態になれば、サプライチェーンのコスト構造は大きく変わります。2028年に向けて、業界団体を通じた各国政府への働きかけや、関税譲許表の確認が重要になります。

企業が今から準備すべきこと

2028年はまだ先の話ではありません。特に製品開発サイクルが長いハイテク産業においては、今の設計段階から将来のHSコードを意識する必要があります。

R&D部門と通関部門の連携

開発中の次世代製品が、2028年の新定義のどこに該当する可能性があるのか、R&D部門と通関部門が情報を共有する必要があります。特に、製品の機能説明書(スペックシート)において、WCOの新定義に合致する用語を使用しているかどうかが、将来のスムーズな通関を左右します。

システム改修のロードマップ

基幹システム(ERP)の商品マスタにおいて、2028年版のHSコードを登録するフィールドの準備や、輸出管理システムとの連携ロジックの更新計画を立てる必要があります。

まとめ

WCOによるIT・デジタル技術品目の定義案承認は、次世代技術が実験室からグローバル貿易の表舞台へと正式に移動したことを象徴しています。

透明性が高まることは、ビジネスの予見可能性を高める一方で、規制当局による監視の目も厳しくなることを意味します。その他で逃げることができなくなる2028年に備え、自社のハイテク製品の戸籍(HSコード)を正しく管理する体制づくりが求められています。

HS2022からHS2028へ 品目別原産地規則PSRをクロスウォークする実務手順

経営と実務を止めないための更新設計

1. PSRクロスウォークが急に難しくなる理由

PSRは品目別原産地規則のことで、協定ごとに、品目分類にひもづけて原産地判定の条件が定められています。多くは関税分類変更基準CTCや付加価値基準RVC、または特定工程基準などです。

一方、HSは定期改正され、HS2028は2028年1月1日に発効予定です。改正時には新設、削除、範囲変更が大量に起きるため、PSRが参照している品目番号の体系も影響を受けます。結果として、関税分類は最新HSで行うのに、原産地判定は協定が採用する旧HSで行う、という二重運用が現場に発生しやすくなります。WCOも、分類と原産地で異なるHS版を使うと、判定が複雑化し時間がかかり、誤適用リスクが上がると整理しています。

この状況を止めるために必要なのが、HS2022とHS2028の間でPSRを技術的に読み替えるクロスウォークです。

2. まず押さえる前提

2-1. HSは1つではない

協定ごとに採用しているHS版が異なることがあります。日本税関のPSR検索でも、協定が採用するHS版と入力したHSコードの版が違うと検索結果が誤りになり得る、と明示されています。さらに、輸入申告では最新のHSコードを使う必要がある、とも書かれています。(税関ポータル)

つまり、企業側は次の二系統を同時に管理する必要が出ます。

  1. 申告と統計のための最新HS
  2. 協定の法文に紐づくPSR用HS

2-2. HS2028の確定と相関表の位置づけ

WCOによれば、HS2028は2028年1月1日に発効し、その準備期間にHS2022とHS2028の相関表の整備などが進む、とされています。(世界関税機関)
また、2026年1月時点でHS2028改正が受諾され、相関表整備などの実施期間に入ったこともWCOニュースで整理されています。(世界関税機関)

重要なのは、相関表は実務のための道具であり、法的効力そのものではない点です。WCOのガイドでも、相関表は実装を助ける目的で作成され、法的地位を持たない、と説明されています。

3. PSRクロスウォークとは何を作る作業か

目的は単純です。
HS2022で書かれているPSRを、HS2028の品目体系に読み替えても、同じ商品範囲に同じ原産地条件を適用できる状態にすることです。

ここで言うクロスウォークは、次の2つを分けて考えると整理しやすいです。

  1. 社内用クロスウォーク:自社の品目とサプライチェーンに照らして、影響と対応を判断するための表
  2. 協定改正としての技術更新:相手国との手続を経て協定附属書のPSR表を更新する行為

EUのPEM関係では、HS更新に伴うPSRの理解を助けるため、HS2022への技術的読み替え資料が提供されています。発想としては、品目分類の変更でルールの趣旨が変わるわけではないが、PSR表は新HSに合わせて書き直す必要がある、という整理です。(Taxation and Customs Union)

4. 手順全体像

ここからが実務手順です。現場が迷いやすい順に並べます。

手順1 対象協定と対象品目を棚卸しする

最初にやるべきは、協定と品目の棚卸しです。

  1. 自社が実際に使っている協定を列挙する
  2. 各協定のPSRが採用しているHS版を確認する
  3. 自社の輸出入品目をHS2022で確定させ、品目別に該当PSR条項を紐づける

この時点で、協定によってはPSRが古いHS版で書かれていることが普通にあります。英国の対日CEPAのガイダンスでも、PSRはHS2017で規定されており、HS改正でコードが変わる場合は相関表を参照する、という趣旨の案内があります。(GOV.UK)

手順2 HS2022→HS2028のマッピングを準備する

基本はWCO相関表を使います。HS2028の相関表は、WCOが準備期間に整備すると明記しています。(世界関税機関)
ただし、相関表は法文ではなく、更新途中の版や注釈の読み違いが起きやすい領域です。社内のクロスウォークでは、必ず次の情報を同時に持ちます。

  1. 相関表上の対応関係
  2. 変更タイプ 新設、削除、範囲変更、分割、統合
  3. 自社製品の実際の仕様と用途

手順3 PSRを構造分解してから移し替える

PSRを文章のまま移すのではなく、構造に分解します。最低限、次のタグを付けます。

  1. ルール型 CTC、RVC、工程、複合型、例外
  2. レベル CC、CTH、CTSHなど
  3. 例外条件 例 外部材の除外や許容条件
  4. 追加要件 最小工程否認、累積、許容誤差など

この分解ができると、HSの分割や統合が起きても、ルールの意図を保ったまま再組立てできます。

手順4 変更タイプ別に読み替え規則を適用する

WCOガイドでは、HS改正は大きく、新設、削除、範囲変更の3類型に整理でき、単純ケースの更新方法も例示されています。
HS2022→HS2028でも、この考え方で十分に回せます。

ケースA 1対1で対応する

最も簡単です。PSR文章は基本的にそのまま移せます。
注意点は、号の説明や範囲注記が変わる場合があることです。品目名だけで判断しないでください。

ケースB 1つの号が複数に分割される

現場で事故が起きる典型です。
対応は、分割後の各号が、元のどの範囲を受け継いだのかを仕様と照合し、PSRの例外条件を再設計します。WCOガイドでも、分割後の各号に対して、元ルールを維持しつつ、相互に例外を置く形で記述できることが示されています。

実務上のコツは、分割後の号ごとに、主要な非原産材料のHS分類がどこへ落ちるかを同時に確認することです。CTC型のPSRは材料側の分類にも依存するため、ここを飛ばすと誤判定が起きます。

ケースC 複数の号が統合される

統合されると、PSRの適用範囲が広がって見えるため、ルールを強めてしまう誤りが起きます。
基本は、統合前に別々だったルールを、統合後の号の中で品目群ごとに分岐する形で管理することです。協定文の改正が完了するまでは、社内クロスウォークでは分岐注記で運用します。

ケースD 範囲が変わる

最も危険です。番号は同じでも、含まれる製品範囲が変わると、見かけ上の読み替えは成立しません。
この場合は、協定の法的更新を前提に、社内では暫定措置として次を行います。

  1. 旧HSでのPSR対象範囲を文章で定義する
  2. 新HSでその範囲に該当する品目集合をリスト化する
  3. その集合に同一PSRを当てる

EUがHS更新に合わせてPSR表の書き直しを支援する資料を出しているのは、まさにこのケースでの混乱を抑える狙いです。(Taxation and Customs Union)

手順5 検証は机上ではなく取引データで行う

クロスウォークが正しいかは、実際のBOMと工程で検証しないとわかりません。
おすすめの検証は二段階です。

  1. 過去の代表案件を抽出し、HS2022版PSRで原産判定結果を再現する
  2. 同じ案件をHS2028クロスウォーク版で判定し、結果の差分を説明できる状態にする

差分が出た場合、原因はだいたい次のどれかです。

  1. 材料側のHS分類が分割で変わった
  2. 例外条件の読み替えが不十分
  3. 範囲変更を見落とした

手順6 成果物は1枚の表に落とす

経営レビューと監査対応を両立させるには、成果物の形が重要です。最低限、次の列を持つクロスウォーク表があると回ります。

内容
協定名利用協定、相手国
PSR採用HS版協定附属書が採用するHS版
自社品目 HS2022現行管理コード
対応 HS2028相関表に基づく候補コード群
変更タイプ1対1、分割、統合、範囲変更
元PSR要件CTC、RVC、工程、例外条件
読み替え方針そのまま、分岐、集合適用など
検証結果代表案件での判定差分
リスク判定高 中 低 と理由
根拠リンク相関表、協定条文、社内仕様書

日本税関の案内が示すとおり、HS版の取り違えは検索結果や判定結果の誤りに直結し得ます。表で版管理を明示し、誰が見ても間違えない状態にするのが最短です。(税関ポータル)

手順7 運用設計としての版管理を入れる

HS2028発効後も、すべての協定が同時にHS2028へ更新されるとは限りません。WCOガイドが述べるように、協定にはPSR更新の手続があり、簡易改正条項を持つものもありますが、タイミングは協定ごとに異なります。

したがって経営としては、次の二重管理を前提にします。

  1. 申告HSはHS2028へ移行
  2. 原産判定は協定ごとのHS版に合わせて継続

この二重管理を前提に、社内システム、マスタ、教育、監査資料の更新計画を組むべきです。

5. 2026年から2028年までの進め方の目安

WCOはHS2028発効までの準備期間で相関表整備などを進める、としています。(世界関税機関)
企業側はそれに合わせて、次の順で進めると失速しにくいです。

  1. 2026年 棚卸しとクロスウォーク表の骨格を作る
  2. 2027年 代表案件で検証し、例外ケースを潰す
  3. 2027年末 協定別の更新状況を確認し、運用を確定する
  4. 2028年初頭 申告HSの移行と、原産判定の版管理を同時に稼働させる

6. まとめ

HS2022からHS2028へのPSRクロスウォークは、関税分類の変更に追従する作業ではなく、原産判定の誤適用を防ぎ、協定利用を止めないための版管理プロジェクトです。
相関表を使いつつ、変更タイプ別の読み替え規則、取引データでの検証、協定別のHS版管理をセットで回すことで、2028年の移行は管理可能になります。

免責
本稿は一般的な実務整理であり、個別案件の原産地認定や協定解釈は、当該協定の正文と当局運用、必要に応じて専門家助言に基づいて判断してください。

WCO相関表が出た瞬間、HS2028対応は現実になる


企業が今やるべき準備と、相関表の読み方

2026年1月、WCOはHS2028改正(HS2028 Amendments)が受諾されたことを公表しました。発効日は2028年1月1日です。残り約2年は、企業にとって「まだ先」ではなく、分類とデータ、システム、契約をつなぐ移行計画を具体化する猶予期間です。(wcoomd.org)

その中で、実務上のスタートラインになり得るのが「WCO相関表(Correlation Tables)」です。相関表は、HS2022とHS2028の間で、どの品目コードがどう移るのかを体系的に示す地図です。HS2028の条文(改正パッケージ)が公表されても、企業の現場がすぐに全社影響を把握できるとは限りません。相関表が出ることで、初めて「自社の品目マスタをどこからどこへ動かすか」を俯瞰できるようになります。

ここでは、WCO相関表がなぜ「出発点」なのか、そして公開後に慌てないために、公開前から企業がやるべきことを深掘りします。


1. HS2028は何が変わるのか

相関表が必要になる背景

HS2028は、299セットの改正で構成され、結果として1,229の見出し(headings)と5,852の小見出し(subheadings)になります。HS2022と比較すると、新設は見出し6、HS6桁小見出し428。削除は見出し5、HS6桁小見出し172です。(wcoomd.org)

テーマも、単なる貿易統計の更新ではなく、規制・政策目的との連動が前提になっています。WCOが強調している主なポイントは次の通りです。(wcoomd.org)

・公衆衛生
救急車、個人防護具、人工呼吸器、診断・モニタリング機器など、健康危機で必要となる物資の可視性を高める新しい区分が入ります。

・ワクチンの構造変更
従来30.02に含まれていたワクチン関連を、人体用の30.07、その他(獣医用など)の30.08へ再編し、疾病別などの詳細な下位区分を設ける、とされています。

・サプリメントの新見出し
食品と医薬品の境界で揉めやすい領域に、新見出し21.07(dietary supplements)と新しい法的注記を設け、統一的な枠組みを目指す、とされています。

・環境分野
プラスチック廃棄物39.15を、バーゼル条約の区分との整合を意識して再編し、有害・PIC対象・その他を識別する新小見出しを導入する、とされています。さらに、単回使用の概念を第39類の新しい法的注記で明示し、ストロー等の幅広い品目で透明性を高める、と説明されています。

この手の改正は、品目コードが「番号だけ変わる」話ではありません。品目の定義が揺れるので、関税率、輸入規制、統計、原産地規則、社内マスタの整合性まで連鎖します。だからこそ、移行の地図として相関表が必要になります。


2. WCO相関表とは何か

誤解されやすい法的地位と限界

まず大前提として、WCO相関表は「法令」ではありません。WCOは、相関表について次の位置づけを明確にしています。

・相関表は、HS委員会の分類決定そのものとみなすものではない
・実装を容易にするためのガイドであり、法的地位はない(wcoomd.org)

この注意書きは、ビジネス側が一番見落としやすいポイントです。現場では「相関表が出たら、旧コードを新コードに置換して終わり」と考えがちですが、相関表は置換表ではなく、移行の参考情報です。

またWCOは、HS2022の相関表公表時に、相関表は法的文書ではない一方で、導入準備に不可欠なツールになっているとも述べています。つまり、法的拘束力はないが、実務上の標準的参照資料として扱われる、という現実があります。(wcoomd.org)


3. 相関表はどういう形で出てくるのか

HS2022の前例から読み解く

HS2022の前例では、WCOは相関表を2つの表として公表しました。(wcoomd.org)

・Table I:新しい版から旧版へ(新コード側を起点)
加えて、多くの相関に「備考」が付き、移動する品目の性格や関連条文の参照が示されるケースがある。

・Table II:旧版から新版へ(旧コード側を起点)
基本的にTable Iを機械的に反転した表で、備考は付かない。

さらに、WCOの相関表解説では、exという接頭表示が重要な意味を持ちます。exは「その旧コードの範囲の一部だけが移る」ことを示し、1対1の単純移行ではない、というサインです。(wcoomd.org)


4. なぜWCO相関表の公開がHS2028改訂の出発点なのか

出発点と言い切れる理由は3つあります。

4-1. 全社影響を一気に棚卸しできる

条文だけで影響を追うと、読み落としが発生します。相関表があれば、HS6桁ベースで「動くコード」を一覧化でき、影響範囲を見積もれます。

4-2. 曖昧さが可視化され、判断ポイントが特定できる

exや分岐・統合は、判断を要する場所です。相関表は、曖昧さを表面化させることで、社内ルール化を促します。(wcoomd.org)

4-3. 国別実装の監視が始めやすくなる

WCOの相関表は共通骨格であり、各国が自国のタリフラインに落とす過程で追加の分割や法令反映が入ります。(wcoomd.org)


5. HS2028の相関表はいつ出るのか

今わかっていることだけで整理する

現時点でWCOが公式に言っていることは、次の2点に集約されます。

・2025年9月のHS委員会で、HS2022とHS2028の相関表の開発に関する議論を開始し、形式を改善した(明確さと使いやすさの向上が目的)(wcoomd.org)

・2026年1月時点で改正は受諾されており、残る2年間で相関表の作成、解説書などWCOツールの更新、加盟国支援を進める(wcoomd.org)


6. 公開前から企業がやるべき準備

相関表が出ても詰まらないための実務設計

相関表が出てから着手すると、必ず間に合わない作業を先に片付けます。

6-1. 品目マスタの現状の正しさを固める

HS移行で一番危険なのは、現行コードが曖昧なまま新コードへ移してしまうことです。

6-2. 相関表を置換ではなく分岐ルールに落とす設計にする

分岐と統合、そしてexは、業務ルールと判断ログが必要です。

6-3. 国別実装を前提に、監視ポイントを先に置く

実務は国別枝番と税率、規制コードで動きます。相関表は国別実装の入口です。(wcoomd.org)

6-4. 参照情報の取り方を決めておく

相関表や関連資料は複数チャネルに出る可能性があり、社内で一次情報の定義が必要です。(wcoomd.org)


7. 相関表公開後に、企業がやってはいけない3つのこと

7-1. 相関表の自動変換を、そのまま申告に使う

相関表は法的文書でも分類決定でもありません。(wcoomd.org)

7-2. exや分岐を放置して、とりあえずどれかに割り付ける

判断が必要な場所は、判断に必要な製品属性を揃えるところからです。(wcoomd.org)

7-3. HS6桁だけ更新して満足する

国別枝番と税率、規制コードまで落とし込む必要があります。(wcoomd.org)


まとめ

相関表公開は開始合図。しかし準備は公開前に終わらせる

WCOは、HS2028が2028年1月1日に発効すること、そして残る2年で相関表の整備を含む実装準備を進めることを明確にしています。(wcoomd.org)

相関表が公開された瞬間に走り出せるよう、品目マスタの整備、分類根拠の棚卸し、分岐判断の設計、国別実装の監視体制を、公開前に作っておく。

HS2028対応は、貿易実務だけの問題ではありません。サプライチェーンとデータ、コンプライアンスをつなぐ経営課題です。相関表公開を出発点にするために、今日から準備を始めてください。


HS2028に備える 主要国ポータルの対応状況を確実に押さえる実務ガイド

2028年1月1日、HSコードが更新されます。HS2028は、世界税関機構が定めるHS品目表の第8版で、国際取引で使われる分類コードの基盤そのものです。2026年1月21日にHS2028改正が受理され、発効までの準備期間が公式にカウントダウンに入りました。(世界関税機関)

このタイミングで、最初に手を付けたいのが「主要国ポータルのHS2028対応状況を確認する」ことです。理由はシンプルで、通関申告や関税計算、規制対応の現場は、最終的に各国の公式ポータルに載っているコード体系と税率に従うからです。

この記事では、単にポータルを眺めるだけで終わらせず、ビジネスの意思決定に直結する見方と、国別にどこをチェックすべきかまで掘り下げます。

HS2028で何が変わるのか

まず、確実に押さえるべき事実は次の3点です。

1つ目。HS2028は2028年1月1日に発効します。(世界関税機関)
2つ目。改正は299セットに及び、見出しは1,229、子目は5,852という規模です。HS2022比で新設や削除もあり、単なる文言調整ではありません。(世界関税機関)
3つ目。WCOは残り2年間で、HS2022とHS2028の相関表の整備、解説書やツールの更新、加盟国支援を進めると明記しています。加盟国側も、国内法令、IT、手続、研修を更新するとされています。(世界関税機関)

テーマ面では、公衆衛生や環境が中心です。医療機器や防護具の識別強化、ワクチンの再編、栄養補助食品の新見出し、プラスチック廃棄物の再構成など、実務上インパクトの大きい領域が含まれます。(世界関税機関)

ここまでを踏まえると、HS2028は「ある日突然、コードが変わる」イベントではなく、2年間かけて各国が段階的に制度とシステムを移行するプロジェクトだと捉えるのが現実的です。

なぜ主要国ポータル確認が最優先になるのか

HS改正に関して、現場がつまずく典型パターンは、社内のマスタや取引書類の更新タイミングが各国の実装タイミングとズレることです。ズレると何が起きるか。

・輸入申告でコードが通らず、差し戻しや保留が増える
・税率や追加措置の適用判断が揺れ、コスト見積りが不安定になる
・統計品目や国内追加桁の変更に引きずられて、取引先やフォワーダーとの照合に時間が溶ける

このズレを最小化するうえで、各国の公式ポータルは一次情報の集合体です。更新日、適用日、改正履歴、データ形式、関連法令への導線など、移行の手がかりがまとまって出てきます。

つまり「主要国ポータルのHS2028対応状況を確認する」とは、単なる閲覧ではなく、次の問いに答えを出すための情報収集です。

・その国では、いつから新コードが申告に使えるのか
・旧コードはいつまで受け付けられるのか
・相関表や変換資料はどこで入手できるのか
・国内追加桁まで含めた変更はどの粒度で提供されるのか
・自社のITや業務が追随できる形式でデータを取れるのか

対応状況を見抜く 6つのチェックポイント

ポータルの見方は国によって違いますが、見るべきサインは共通化できます。

  1. 表示されている版と適用日
    年次版、基本版、改正号などの表示があるか。適用日が明記されているか。
  2. 改正履歴と更新頻度
    いつ、何が、どの根拠で変わったかが追えるか。更新が日次なのか、年次なのか、随時なのか。
  3. 日付指定で検索できるか
    HS改正は発効日で切り替わるため、取引予定日を入れて結果が変わる設計になっているかは重要です。
  4. 相関表や変換資料への導線
    WCO相関表に加え、国内追加桁を含む国別クロスウォークが出るか。その掲載場所が分かりやすいか。
  5. ダウンロードやAPIの有無
    画面で確認するだけでは、社内マスタ更新が回りません。CSVやJSON、Excelなどで取得できるか。
  6. 法令や公的通知へのリンク
    ポータルの表示は便利ですが、最終的な根拠は法令や告示です。リンクが整理されているかで信頼性が変わります。

この6点で見れば、HS2028対応状況は、専用ページの有無だけでなく、更新の兆候と実装の成熟度として評価できます。

主要国ポータル別に見るべき場所

以下は、主要国で実務上よく参照される公式情報源と、その読み解き方です。ここでは、今ある機能を使ってHS2028の到来をどう検知するかに焦点を当てます。

日本 税関の品目分類検索で確実に追う

日本税関の品目分類検索は、検索対象を輸入と輸出で切り替えられ、実行関税率表や輸出統計品目表など複数コンテンツを対象にできます。さらに、税番は上位2桁、4桁、6桁、全9桁の指定が可能で、検索対象日時も指定できます。(税関総合情報)

HS2028対応状況を確認するうえでの実務ポイントは、検索対象日時です。発効日をまたぐ案件では、同一品目でも結果が変わり得ます。ポータル側がHS2028に切り替われば、2028年1月1日以降の日付指定で新しいコード体系の検索結果が出るはずです。社内側では、案件の通関予定日に合わせたコード参照という運用を、今のうちに定着させると移行が楽になります。

アメリカ合衆国 米国国際貿易委員会 の改正履歴で変化点を捕まえる

USITCのHTSアーカイブは、版が体系的に保存されており、年次の基本版に加えて複数の改正を時系列で追えます。改正ごとに日付があり、HTMLに加えてCSVやXLS、JSONでのダウンロードが用意され、改正根拠として公的な文書への参照も付いています。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)

HS2028対応の観点では、ここが最大の観測地点になります。大きなコード再編が起きると、年次基本版だけでなく、複数の改正に分割されて反映される可能性があります。社内データ連携を見据えるなら、画面で眺めるよりも、ダウンロード形式で取得し、マスタ差分を機械的に検知できる体制に寄せるのが現実的です。

欧州連合 欧州委員会 TARICで日次更新の中から大改正を見分ける

TARICはEUの統合関税データベースで、関税措置だけでなく商業・農業関連の措置も統合して扱う多言語データベースです。加盟国に対して日次でデータが送信され、加盟国システムの通関処理にも使われることが明記されています。Excel形式のraw dataも提供されています。(Taxation and Customs Union)

HS2028対応状況の確認は、日次更新に埋もれがちです。ポイントは、日々の更新そのものではなく、品目体系の土台が変わるタイミングです。TARICは法令根拠も示しているので、HS2028に絡む大きな改正は、関連する法令の動きとセットで追うのが安全です。

イギリス 英国歳入関税庁 Trade Tariffは日付入力と更新情報が鍵

UKの関税検索サービスは、取引予定日を入力でき、品目、税率、割当などが時間とともに変わることを前提に設計されています。ページ上には最新ニュースと最終更新日、改正の参照導線もあります。(GOV.UK)

さらに、Trade TariffデータをAPIで取得できることも明記されています。(API Catalogue)
HS2028対応状況の確認では、日付入力欄がそのまま検証装置になります。将来日付が受け付けられる仕様であれば、2028年1月1日を入れて結果がどう変わるかを定点で観測できます。APIがある場合は、手作業確認から抜けて、定期ジョブで差分検知する運用に移しやすいのも利点です。

カナダ カナダ国境サービス庁 関税ファイルと告知をセットで見る

CBSAは、カナダの関税分類を知りたい事業者向けに、関税ファイルへのアクセス、ガイド、過去版アーカイブ、分類や原産地などの裁定、カスタムズノーティスの一覧などをまとめています。カナダの税則はWCOのHSに基づくことも明記されています。(カナダ国境サービス局)

章別に見られる関税スケジュールは、適用日と形式が整理されています。(カナダ国境サービス局)
HS2028の対応状況確認では、次の2点を並行で追うのがコツです。関税ファイルの版更新と、告知や通知の情報。版だけ見ていると背景が取りこぼれますし、告知だけ読んでいると現場適用に落ちません。

オーストラリア オーストラリア国境警備隊 Working Tariffの説明文が先行指標になる

ABFのWorking Tariffは、現行の関税分類のオンライン版であること、WCOの改正で始まった変更や、2022年1月1日開始の統計コード変更、その後の法令や統計コード変更を含むことが明記されています。分類はSchedule 3で参照する、といった構造も説明されています。(Australian Border Force Website)

ここは、HS2028対応状況の早期検知ポイントになり得ます。なぜなら、説明文がどの改正サイクルを取り込んでいるかを示しているからです。HS2028に向けて準備が進めば、説明文や対象範囲の表現が更新される可能性があります。画面の検索結果より先に、こうした概要説明が更新されることもあります。

韓国 韓国関税庁 10桁DBと6桁共通ルールを押さえる

KCSはHSコードの基本として、先頭6桁は世界共通で、7桁目以降は国ごとに異なるという構造を説明しています。韓国は10桁コードを使うことも明記されています。(韓国関税庁)
また、関税DB検索では10桁のHSコードまたは品名で検索できることが示されています。(韓国関税庁)

HS2028は6桁部分の変更を含むため、まず影響が出るのは6桁です。ただし実務で使うのは10桁です。ここがミソで、6桁の相関表だけでは社内マスタ更新が終わらない可能性があります。KCS側が国内追加桁をどう組み替えるかまで含めて、DBで早期に確認できる体制が重要になります。

中国 国務院関税税則委員会 中華人民共和国財政部 の公告を一次情報として組み込む

中国では、進出口税則が公告として公表され、例えば2026年版は2026年1月1日から実施される旨とPDFの掲載が確認できます。(関税司)

中国市場を扱う場合、現場ではポータル検索に加えて公告PDFが一次情報になります。HS2028移行でも、制度変更の根拠と施行日、変更点がどこで示されるかを見誤らないことが重要です。社内の観測リストに公告の発表ページを入れておくと、更新を取りこぼしにくくなります。

ポータル確認を社内の成果に変える運用設計

ポータルを確認して終わりではなく、社内の移行プロジェクトに落とすときの型を最後に整理します。

  1. 重要市場から優先順位を付ける
    全世界を同時に追うと疲弊します。売上、仕入れ、制裁や規制、リードタイムなどの観点で上位市場を決め、そこから始めます。
  2. 版と日付の観点でマスタを持つ
    国別に、現行版、切替予定日、確認日、参照元ポータル、担当者を持ちます。日付指定検索ができる国は、取引予定日ベースの照会に統一します。
  3. 相関表が出たら、6桁と国内追加桁を分けて管理する
    WCO相関表は6桁の基盤です。そこから先の国内追加桁は国ごとに別プロジェクトになります。両者を混ぜると、関係者が混乱します。
  4. 社内システムと外部委託先を同じタイムラインに乗せる
    ERP、PIM、貿易管理システム、フォワーダー、通関業者が別々に更新すると事故が起きます。ポータルの更新兆候をトリガーに、関係者に同報する設計にします。

まとめ

HS2028は、2028年1月1日発効の大規模改正です。2年間の準備期間で、WCO側は相関表や解説などを整備し、各国は国内法令とITを更新していきます。(世界関税機関)

だからこそ、主要国ポータルのHS2028対応状況を定点観測し、変化の兆候を早期に拾うことが、最も費用対効果の高い一手になります。画面の見た目より、版、適用日、改正履歴、日付指定検索、データ取得手段、法令根拠。この6点で見れば、HS2028移行は予測可能なプロジェクトに変わります。

情報確認日: 2026年1月31日

主要国のHS2028条文と即応タスクまとめ

2026年1月時点の一次情報をもとに、経営判断に直結する論点を整理する

はじめに

HSコード改正は通関部門だけのテーマではありません。
関税コスト、輸出入規制、製品マスター、原産地判定、顧客向け書類、統計、BIの集計軸に至るまで、企業の意思決定を支える共通キーが一斉に更新されるイベントです。

2026年1月21日、世界税関機構(WCO)は、HS2028改正が受理され、2028年1月1日に発効することを公表しました。
HS2028改正は299セットの改正から構成され、全体として1,229見出し・5,852サブヘディングで構成される新たな品目表となります(HS2022比で新設6見出し・428サブヘディング、削除5見出し・172サブヘディング)。

ここからの約2年間は、単に「待つ期間」ではなく、各国が自国の関税率表や統計品目表に落とし込む準備期間です。
WCOは、この期間に相関表(HS2022とHS2028の対応関係)や関連ツールを整備し、各国による実装作業が進むと位置づけています。

本稿では、主要国ごとにどの文書が法令上の根拠となるのか(便宜上「条文」と呼びます)を整理し、企業が今すぐ着手すべき即応タスクを、経営目線で具体化します。


1. HS2028の「条文」とは何か

WCO改正と各国の国内実装

HS品目表は、HS条約(Harmonized System Convention)に基づく国際的な分類表であり、改正はWCOの手続きを経て各国に波及します。
WCO理事会が改正勧告(Article 16 Recommendation)を採択した後、締約国は6か月間、勧告された改正に対して留保(異議)を表明することができます。

この仕組みにより、企業側は「WCOの改正文書を起点に、各国の国内法令・関税率表への実装を追いかける」という発想が必要になります。

HS2028で何が変わるか

WCOと関連情報が示しているHS2028の主な特徴は、次の通りです。

  • 改正規模は299セットの改正。
  • ワクチンや医療関連品目の可視性向上(新しい見出し・サブヘディングの創設、疾病別・用途別の整理強化など)。
  • 医療・緊急対応機器(救急車、保護具、モニタリング機器など)の新サブヘディング追加。
  • 環境・廃棄物関連品目(特にプラスチック廃棄物など)の国際的な環境枠組みに沿った再編。

ここで重要なのは、分類表の更新が「見出しや小区分の新設・削除」だけでなく、「法的注・部注の改訂」や「構造再編」を含む点です。
単なるコード置換ではなく、分類根拠そのものの組み替えが起こり得るため、企業の分類ロジックやエビデンスの見直しが不可欠になります。


2. 主要国の「条文」はどこで確定するか

以下では、企業が一次情報として追いかけるべき公表物を、国・地域別に整理します。

国際(共通):WCO

  • HS2028改正文書(Article 16 Recommendation、HS2028 Nomenclature)。
  • HS2028改正概要やニュースリリース(発効日、改正件数、背景説明)。
  • HS改正手続きの説明(6か月の留保期間など)。

企業がまず押さえるべき一次情報は、WCOが公表するHS2028改正文書とその解説ページです。

EU:CN(Combined Nomenclature)への取り込み

EUは、WCOのHS改正を受け、Council Regulation (EEC) No 2658/87 に基づき、関税・統計の共通分類であるCN(Combined Nomenclature)に反映します。

  • CNは8桁で構成され、最初の6桁がHS、7桁・8桁がEU固有のCNサブヘディングです。
  • 第9・10桁はTARICコードとして、EU域内の追加的な貿易措置や細分に用いられます。
  • CNは、輸入・輸出申告、関税率の決定、統計、各種規制措置の適用の基礎となります。

WCO理事会での改正勧告を受けて、EUは理事会決定・委員会実施規則などを通じてHS改正をCNに取り込みます(2026年版CNの公表など)。

米国:HTSUS(Harmonized Tariff Schedule of the United States)

米国では、USITC(U.S. International Trade Commission)がHS改正に対応するHTSUS改正案を作成し、大統領への勧告プロセスを担います。

  • 2025年8月12日付のUSITCニュースリリースにおいて、2028年版HTSへの改正作業を開始する調査「Recommended Modifications in the Harmonized Tariff Schedule, 2028」の実施が公表されています。
  • USITCは、2026年2月にHTS改正の予備的ドラフトを公表しパブリックコメントを募集し、その後、2026年9月に大統領へ報告書を提出する予定としています。

また、USITCのFAQでは、HTSコードの構造について次のように説明しています。

  • 4桁が「heading」、6桁・8桁が「subheading」であり、法的テキストとしてのHTSは8桁レベルまでで完結する。
  • さらに、10桁目は統計用細分が付されることがあり、これらを合わせてHTSUSとして運用する。

従って、企業にとっての最終的な「条文」は、大統領による改正反映後のHTSUS(8桁)と、それに基づく10桁統計番号です。

日本:9桁統計品目番号とHS版の混在

日本では、HS条約改正に合わせて、関税定率法等および関連告示・解説資料を改正し、関税率表と輸出入統計品目表に反映します(HS2022改正時も同様の整理)。

  • 日本の「統計品目番号」は9桁であり、6桁のHSコードに3桁の国内細分コードを加えた構造です。
  • 9桁コードは、日本の通関申告・貿易統計の基礎となるコードとして運用されています。

一方、EPA(経済連携協定)では、協定ごとに採用しているHSの版(例:HS2012、HS2017、HS2022など)が異なり、原産地規則の品目別規則(PSR)は協定で定めるHS版に紐づきます。
このため、日本の通関実務がHS2022や将来のHS2028に移行していても、原産地証明書等に記載するHSコードは、当該EPAで採用しているHS版に合わせる必要があると説明されています。

英国:UK Integrated Tariff(UK Global Tariff)

英国は、EU離脱後、UK Global Tariff(UKGT)に基づくUK Integrated Tariffを運用しており、HS改正に合わせて国内の統合関税表を改正します。

  • 2022年の分類改正時には、HS改正に対応したUK Integrated Tariffの変更内容や相関情報が、政府サイトの「tariff stop press」等で告知されています。
  • また、輸入関税率の案内としてUK Global Tariffに関するガイダンスが提供されています。

実務上、企業が確認すべき「条文」は、最新のUK Integrated Tariff(UK Tariff)およびその改正告知です。

カナダ:Customs Tariff

カナダでは、Customs TariffがHSに基づく国内関税率表として機能し、必要に応じて改正・公表されます。

  • カナダ国境サービス庁(CBSA)は、Customs Tariffの最新版をウェブサイト上で提供し、改正がある場合は通知・更新を行う方針を示しています。
  • HS2028改正についても、HSが多くの国の関税率表の基礎であり、カナダにも影響する旨が業界向け情報で紹介されています。

中国:HSベースの8桁体系

中国は、HSベースの分類体系(CCCCS)を用いており、8桁を標準とする国内細分を採用しています。

  • 2024年版のCCCCSでは8,966の8桁品目が存在し、最初の6桁がHSコード、7桁・8桁が中国独自の細分と説明されています。
  • 一般的な解説でも、中国のHSコードは通常8〜10桁で、最初の6桁が共通のHS、その後ろが国内サブヘディングであるとされています。

従って、中国における最終的な「条文」は、中国税関が公表する最新のCustoms Commodity Codes(CCCCS)およびその改正告示です。

韓国:10桁コード

韓国は、6桁HSを基礎に、国内で拡張した10桁のHSKコード(tariff number)を用いています。

  • 韓国税関は、HSコードの概要説明の中で、6桁は国際共通であり、各国は自国のニーズに応じて6桁以降を拡張すると説明しています。
  • 公開データセットでも、「韓国税関のHSKコードに基づく2桁・4桁・6桁・10桁の関税番号」として10桁コードを明示しています。

したがって、韓国では10桁HSKコードが実務上の最終的な「条文」として機能します。


3. 主要国別に、実務で起こりやすいこと

米国:ドラフト公開とパブリックコメント

USITCは、HS改正に整合したHTS改正のため、2028年版HTSの改正案作成プロセスを開始したと公表しています。

  • 2026年2月に予備的なドラフト改正案を公表し、パブリックコメントを募集する予定です。
  • コメント期間後、必要な修正を行い、2026年9月に最終報告書を大統領へ提出するとしています。

また、USITC FAQ等によれば、国際共通の6桁HSに対し、8桁までがHTSの法的テキストであり、その後ろの10桁までが統計用途を含む米国固有の細分となります。

企業の即応ポイント(米国)

  • 米国向けでは、6桁HSだけでなく、最終的にHTSUSの8桁・10桁レベルまで確定しないと関税・統計上の影響が判断できない。
  • 2026年2月のドラフト時点から、自社品目の候補コードを当て、論点のある品目は根拠資料(技術仕様、カタログ、判定ロジック)を前倒しで整備しておく。
  • 2027年末〜2028年初にかけて、年跨ぎ貨物や長いリードタイム案件では旧・新HTSの境界で書類不一致が起こりやすいため、切替条件を事前に整理する。

EU:WCO改正→CN→TARIC

EUは、WCOの改正勧告を受けたうえで、CN(8桁)に取り込み、さらにTARIC(9桁・10桁)で各種措置を追加する形で運用します。

  • CNは、EUの共通関税と統計のための分類であり、輸入・輸出申告、関税率決定、統計、各種規制措置の参照コードとして用いられます。
  • CNの構造上、最初の6桁がHS、7桁・8桁がEUのCNサブヘディングであることが制度文書に明記されています。

企業の即応ポイント(EU)

  • EU向けでは、WCO段階ではなく、CNの改正情報が実務上の確定点となる(関税・統計・規制すべての基礎)。
  • HS2028で6桁が動く品目は、後続でCNサブヘディング(7・8桁)の再編が起こる可能性が高く、規制・統計要件も連動して変更されうる。
  • 関税率だけでなく、輸入規制、アンチダンピング等の措置、統計報告もCNに紐づくため、部門横断で影響評価する必要がある。

日本:9桁運用とEPAのHS版

日本では、通関・統計は9桁統計品目番号で運用され、そのうち先頭6桁がHS、後ろ3桁が国内細分です。

  • 9桁統計コードは、輸出入申告と貿易統計の基礎であり、輸出用・輸入用で3桁の細分が異なる場合があります。
  • HS改正は、関税定率法等の改正を通じて、関税率表・統計品目表に反映されます。

一方、EPAでは協定ごとに採用するHS版が異なるため、原産地規則の品目別規則は協定で定めるHS版に紐づきます。
そのため、原産地証明書などEPA関連書類に記載するHSコードは、国内通関用の最新版ではなく、協定の採用HS版に合わせる運用が必要とされています。

企業の即応ポイント(日本)

  • 社内マスターは、「国内申告用の最新版HS+9桁統計コード」と「EPA別に採用しているHS版」を並行管理できる設計が必要。
  • HS2028対応は、通関だけでなく、原産地判定・証明業務の作業量を増やしやすい(複数HS版の併存)。
  • 営業や顧客向け書類(インボイス等)に記載するコードの「版」と「桁数」を、国と用途(通関・原産地・統計)ごとに定義し直す必要がある。

英国:UK Tariffでの告知

英国は、UK Integrated Tariff(UK Global Tariffを含む)として自国の関税率表を運用し、HS改正に対応した変更や相関情報を政府サイトで告知します。

企業の即応ポイント(英国)

  • 英国向けでは、UK Tariff(UK Integrated Tariff)の最新版を確認し、要求される桁数までコードを揃えて書類の整合を取る。
  • EUと見た目は似ていても、7桁以降の国内細分の設計が異なることがあるため、CNコードの単純流用は危険。

カナダ・中国・韓国:それぞれの国内公表物が最終確定点

  • カナダ:CBSAが公表するCustoms Tariffが、HSに基づく関税率表として運用され、改正時は通知・更新が行われます。
  • 中国:中国税関が公表するCCCCSは、最初の6桁がHS、7桁・8桁が中国独自の細分で構成される8桁体系であり、必要に応じて10桁まで拡張される場合もあります。
  • 韓国:韓国税関は、6桁HSを基礎に10桁HSKコードを運用しており、輸入者は韓国の10桁体系で分類する必要があります。

企業の即応ポイント(カナダ・中国・韓国)

  • 同じ6桁HSでも、7桁以降の国内細分は国ごとに別物と割り切る。
  • 取引先向けの資料は、可能な限り相手国側の桁数(カナダのCustoms Tariff、中国の8桁、韓国の10桁等)で提示できるように準備する。
  • 制度の最終確定点は、それぞれの税関・関税率表等の公表物に置き、二次情報だけで判断しない。

4. 経営として今すぐやるべき即応タスク

ここからは国別ではなく、企業側の実務タスクに落とし込みます。鍵となるのは、「二層管理」と「切替境界の事故防止」です。

即応タスクA:棚卸しと影響評価

  • 取扱品目の現行コードを、「どの国向け」「どのHS版」「何桁か(6桁・8桁・9桁・10桁など)」の観点で棚卸しする。
  • 売上上位、利益上位、関税額上位、規制該当品目など、影響の大きい品目から優先順位を付ける。
  • HS2028で6桁が動きやすい品目群(医療・ワクチン・環境関連など)を早期に特定し、技術仕様や使用用途など分類根拠情報を集約する。
  • 税率だけでなく、規制、許認可、統計単位、原産地判定(EPA)の影響も同時に洗い出す。

即応タスクB:マスターデータの二層化

  • 国際共通の6桁HSと、国別の実務桁(EUのCN8桁、日本の9桁、中国の8桁、韓国の10桁など)を分離して管理する設計に見直す。
  • マスターデータに「HS版」フィールドを持たせる(HS2022、HS2028、EPA別に採用するHS版など)。
  • 取引先に提示するコード(インボイス・仕様書・見積書など)のルールを、国別・用途別に社内標準化する。
  • 変更履歴と根拠を残し、監査対応や後日の説明に耐えられるようにしておく(特に高関税・規制品目)。

即応タスクC:書類と原産地の事故防止

  • インボイス、パッキングリスト、原産地証明書、輸出管理資料などで、どの桁のコードを載せるかを国別に定義する。
  • EPA関連書類では、協定で採用しているHS版に合わせてHSコードを記載する運用を業務手順に明記する。
  • 2027年末から2028年初にかけて、年跨ぎ貨物や長納期案件について、旧HS2022・新HS2028のどちらで申告・証明するかの境界条件を洗い出し、切替手順を事前に設計する。

即応タスクD:外部との合意形成

  • 通関業者に対し、HS2028改正時の検証プロセスや必要情報(仕様書、図面、用途など)をあらかじめ確認する。
  • サプライヤーには、製品仕様情報の提供範囲・更新頻度・フォーマット(HS版・桁数の指定等)を明確化し、契約やSLAに反映する。
  • 顧客に対しては、コード変更が輸入側の関税や規制に与える影響を説明できる体制(FAQ、ガイド文書、営業への教育)を整える。

5. 2028年までの実務ロードマップ

WCOは、HS2028の受理後から発効までの期間を、相関表整備や各国による実装準備期間と位置付けています。
USITCは、2026年2月ドラフト、2026年9月大統領報告というタイムラインを明示しており、企業側の準備スケジュール策定の基礎情報となります。

この情報を踏まえると、企業としては次のようなロードマップが現実的です。

  • 2026年:
    • 棚卸しと影響評価(即応タスクA)を実施し、優先品目を特定。
    • HS2028案の内容・WCOの相関情報を踏まえ、6桁レベルの候補付けと分類根拠資料の整備を開始。
    • 米国向けについては、2026年2月のUSITCドラフトを確認し、必要に応じてパブリックコメント提出を検討。
  • 2027年:
    • 各国の国内実装状況(HTSUS改正、CN改正、日本の9桁統計コード改正、中国・韓国の細分改正など)を確認し、国別の実務桁を確定。
    • 社内システム改修、マスターデータ二層化、UAT(ユーザー受入テスト)、取引先・通関業者との番号整合を完了させる。
  • 2028年:
    • 切替運用を開始し、誤分類や書類不一致のエラー監視を強化。
    • 税関からの差戻し・照会に即応できるよう、根拠資料と履歴管理のプロセスを稼働させる。

おわりに

HS2028は、分類表の単なるマイナーチェンジではなく、企業にとっては基盤データの大規模アップデートです。
WCOの一次情報を起点に、米国はUSITCとHTSUSプロセス、EUはCNとTARIC、日本は9桁統計コード運用とEPA版混在、そして中国・韓国・カナダなどは各国の関税率表・分類体系という現実に合わせて、二層管理と切替事故防止に投資することが、費用対効果の高い対応となります。

個別品目の最終コードを今すぐ決め切ることよりも、
「結論をブレなく・説明可能な形で出せる仕組み(根拠管理、履歴管理、HS版管理、相手国桁への変換ロジック)」を先に整えることが、2028年前後の現場混乱を最小化する近道です。

【WCO改正解説】センサー・半導体の「境界」が変わる

──「用途」から「構造」判定への実務的転換と、企業が取るべき対応

センサーと半導体は、いまや自動車から産業機械、家電、医療機器に至るまで、あらゆる製品の中核部品です。しかし、貿易実務の現場では、その技術的進化ゆえに分類の境界線が曖昧になっています。

「機能はセンサー(測定)だから第90類ではないか?」「いや、構造は集積回路(IC)そのものだから第85類ではないか?」──こうした解釈の揺れは、国や担当官によって判断が分かれる大きなリスク要因となっていました。

この問題に対し、WCO(世界税関機構)のHS委員会は、分類意見(Classification Opinions)を通じて明確な判断基準を打ち出しています。特に第73回HS委員会(2024年3月)で採択された決定は、センサーと半導体の境界線に新たな「構造重視」のルールを確定させる重要な転換点となりました。

本稿では、この決定が実務に与える影響と、企業がいま講じるべき対策について解説します。


1. 何が決まったのか? センサー内蔵ICは「85.42」へ

今回、実務への影響が特に大きいのは、以下の製品群が第90類(計測機器等)ではなく、明確に**「電子集積回路(HS 85.42)」**として分類整理された点です。

WCO分類意見の要点(代表例)

対象製品のイメージWCO分類 (HS)実務上のポイント
複数のスイッチ機能(複数ダイ)を1パッケージに内蔵するIC
(例:モータドライバ等)
8542.39用途がモータ駆動であっても、構造が「マルチチップIC」の定義に合致すれば85.42を優先。
2つのセンサーダイを同一パッケージに封止したホールセンサーIC
(角度・位置検出用)
8542.39「角度・位置の検出(測定)」という用途があっても、ICとしての一体性・構造要件を重視し、第90類を排除。

これらの決定において、WCOは一般解釈規則(GIR)1および6に加え、**第85類注12(b)(iii)(マルチチップ集積回路の定義)を根拠としています。 特にホールセンサーICの事例は、「測定機能を持つものは第90類」という従来の直感的な判断を覆し、「構造がICであれば第85類」**という原則を強く印象づけるものとなりました。

2. WCOが示した判断軸:機能ではなく「構造と一体性」

今回の分類意見が企業に示唆しているのは、「争点になりやすい『用途』よりも、まず『構造』を見よ」というメッセージです。

分類意見で重視された構造要件

  • 複数ダイ(または機能ブロック)の集積: 複数のダイが1つのパッケージに収められていること。
  • 受動・能動素子の不在: マルチチップICの場合、ダイ以外の追加回路要素(個別のコンデンサや抵抗等)が含まれていないこと。
  • 不可分な一体性: ダイ製造およびパッケージングの時点で、物理的に一体化されていること。

【重要な注意点:相互接続の解釈】

実務上、「ダイ同士が直接ワイヤで繋がっていない(電気的に相互接続されていない)なら、マルチチップICの定義(注12(b)(iii))に当たらないのでは?」と判断し、第90類へ分類してしまうケースが見受けられます。

しかし、WCOの判断はこれとは異なります。ダイ同士が直接接続されていなくても、リードフレームやパッケージ配線を介して機能的に結合(相互接続)していれば、マルチチップICの要件を満たすと解釈されます。

つまり、見た目の配線にとらわれず、「パッケージ全体として一つのICとして機能しているか」という構造的一体性が、分類の決定打となるのです。

3. 法的根拠:第85類注12が持つ「強制力」

この線引きを支えているのが、関税定率法(HS条約)における第85類注12の規定です。

注12は、半導体デバイス(85.41)と電子集積回路(85.42)を定義すると同時に、以下の強力な優先ルールを定めています。

「この注に規定する物品については、第85.41項及び第85.42項は、この表の他のいずれの項(第85.23項を除く。)よりも優先する。」

つまり、ある製品が「センサー」としての機能を持ち(第90類)、同時に「集積回路」の構造定義(第85類注12)も満たす場合、HS条約は「第85類(半導体/IC)に分類せよ」と強制しているのです。

今回のWCOの決定は、この原則をセンサーIC等の「境界領域」の製品に厳格に適用した結果と言えます。

4. 企業への影響:分類ブレ=経営リスク

この解釈更新を単なる「コード変更」と捉えるのは危険です。不正確な分類が引き起こす「不確実性コスト」は、関税率の差以上にビジネスを圧迫します。

  • 通関遅延・追加照会: 構造説明が不十分で「センサー(90類)では?」と疑義を持たれ、貨物が止まる。
  • 事後調査での否認: 過去に遡って過少申告を指摘され、加算税・延滞税が発生する。
  • FTA/EPA適用の崩壊: HSコードが変わることで、原産地規則(CTC要件など)を満たさなくなり、関税ゼロの特典を失う。
  • システム修正の負担: 品目マスタ、ERP、輸出入システムの改修コスト。

WCOの判断が出たからといって、世界中の税関が即座に運用を統一するわけではありません。だからこそ、企業側が論理的な説明(Defense File)を用意しておく必要があります。

5. 実務チェックリスト:いま着手すべき5つのアクション

  1. 対象品目の棚卸し(Inventory)センサーIC、MEMS、モータドライバ、パワーモジュールなど、境界領域にあるSKUを抽出。現行のHS採番理由が「用途」寄りになっていないか再点検します。
  2. 「構造」を証明する技術資料の整備単なるスペックシート(機能説明)では不十分です。パッケージ内部構造、ダイの枚数・構成、リードフレームとの接続、追加部品の有無を図解できる資料(Cross-section図など)を準備します。今回のWCO判断において、勝負を決めるのはこの情報です。
  3. 製品記述(Description)の標準化インボイスやマスタ品名において、「Sensor」という単語を強調しすぎると誤解を招きます。「Integrated Circuit (Dual die Hall sensor type)」のように、構造(IC)を主語にした記述へ統一することを推奨します。
  4. 重点国での事前教示(Advance Ruling)主要な輸出入国において、今回のWCO判断が浸透しているかを確認し、リスクが高い場合は事前教示制度を利用して分類を確定させます。
  5. 変更管理(Change Management)の制度化設計変更やサプライヤ変更により、1ダイから2ダイへ、あるいは受動部品の内蔵有無が変わると、HSコードも変わる可能性があります。設計変更通知(PCN)とHS分類部門が連動する仕組み作りが不可欠です。

まとめと今後の見通し

WCOのHS委員会は、継続的にこの領域の整備を進めています。直近の第76回会合(2025年9月)に続き、次回第77回会合(2026年3月予定)でも新たな分類議論が行われる見込みです。この領域は「一度決めたら終わり」ではなく、「技術進化に合わせて更新され続ける」テーマです。

今回のWCOのメッセージは明確です。「迷ったら構造を見よ」。

特にセンサー機能を内包するデバイスについては、用途ではなく**構造(ICの定義合致性)**で85.42に整理する流れが確定しました。

経営層および実務責任者は、これを機に対象品目の棚卸しを行い、税関に対して「構造」を正しく説明できる体制(技術資料とロジックの整備)への投資を急ぐべきです。それが、無用なサプライチェーンの混乱を防ぐ最善策となります。

韓国:「品目分類変更告示」(2026年1月22日)の実務ポイント

2026年1月22日、韓国関税庁(Korea Customs Service)は、2025年12月16日に開催された「第8回 品目分類委員会」の審議結果(9件)を反映した「輸出入物品等に対する品目分類変更告示」の改正内容を官報に掲載したと公表しました。
この種の告示は、韓国向け輸出入に関わる企業にとって、関税率だけでなく、FTA適用や申告実務(品目マスタ、通関指示、事後修正の要否)に直接影響します。


1. 今回の改正で何が起きたか

今回のポイントは、韓国での品目分類の取り扱いについて、品目分類委員会の決定を通じて解釈が明確化され、その内容が告示改正という形で公式ルールに組み込まれた、という位置付けです。
同じ製品であっても、分類の変更や整理が行われると、次のような要素が連鎖的に変わり得ます。

  • 適用関税率(基本税率、WTO譲許税率、協定税率など)
  • FTAの原産地規則における判定起点(HSベースのCTC基準など)
  • 輸入側での審査観点(補足資料要求、差し止め、事後調査リスクなど)

公表された9件のうち、実務的に象徴性が高い事例として、冷凍水産品と情報機器関連品の分類が説明されています(以下では代表的な論点として整理)。


2. 注目すべき分類事例

事例A:冷凍「チュクミ(주꾸미)」の扱い

争点は、「国際的な学名(属名)の変更が、HS上の分類変更を当然に意味するのか」という点です。
HS2017・HS2022体系では、タコ類は一般に「0307.52 Octopus (Octopus spp.), frozen」に分類されており、コードの構造自体は属の学名変更に直接連動しない形で設計されています。

韓国税関は、学名の変更は生物分類学上の名称変更にとどまり、HS体系の構造やコードの範囲が自動的に変わるものではない、という考え方に立ち、タコ類としての取扱いを維持する判断を示しています(具体の10桁分類「0307.52-3000」自体は韓国の細分コードであり、国際HSでは6桁までである点に注意が必要です)。
実務的には、韓国・ASEANはじめ各FTAで、同じHSコードに属するか否かにより関税率(0%か、そうでないか)が分かれる場合があり、この判断は輸入者・輸出者双方にとって影響が大きいテーマです。

また、韓国関税庁はこのような学名変更とHS分類の関係について、世界税関機構(WCO)の場で整理を進める姿勢を示しており、将来的な国際的ガイダンス整備につながる可能性があります。

事例B:CPUクーラー(液冷+ファン等の複合品)の扱い

CPU冷却用の装置(ラジエーター、ポンプ、チューブ、冷却ヘッド、ファン等で構成された液冷クーラーなど)について、「単なるファン(HS第84.14項)」や「一般的な冷却機器(HS第84.19項)」としてではなく、「自動データ処理機器用の部品(HS第84.73項)」として整理した点が重要です。

理由としては、次のような事情が総合的に評価されたと説明されています。

  • 複数の構成要素が一体となってCPU冷却という単一の機能を果たしている点(複合品としての一体性)
  • コンピュータ(自動データ処理機器)に専用、または主として使用される点(用途の専用性)

このような判断は、WCO解釈通則の「機能の一体性」や「特定用途向け部品」の考え方とも整合的であり、韓国としてコンピュータ関連部品の分類を整理していく流れの一端と位置付けられます。


2事例をビジネス視点で整理

実務上の示唆を、争点・結論・企業側の着眼点という切り口で整理すると、次のようになります(以下の表のコメント部分は筆者による実務的解釈です)。

対象争点韓国側の結論・方向性(要約)企業への示唆(実務的な解釈)
冷凍チュクミ(タコ類)学名(属名)の変更がHS分類を動かすか学名の変更それ自体ではHSの分類範囲は自動的には変わらない。タコ類としての分類を維持する方向。商品説明を生物分類上の名称だけに頼り過ぎず、実際の形態・用途・通関上の既存取扱いとの整合を確認する。FTA税率差の有無も含め、韓国側の分類と社内マスタを合わせる必要。
CPUクーラー(液冷+ファン等の複合品)ファン(8414)か、冷却機器(8419)か、それともコンピュータ部品(8473)か複数部材が一体となってCPU冷却という単一機能を果たし、かつコンピュータに専用または主として使用されることから、コンピュータ部品側(8473)に整理。構成部材の「寄せ集め説明」ではなく、用途の専用性と機能の統合性を文書で示す。写真・構成図・取付先機器等を整理し、「一般用ファン」や「汎用冷却装置」とは異なることを根拠立てる。

3. 日本企業が取るべき実務アクション

ここからは、日本企業が自社の業務フローにどう落とし込むかという視点で整理します。

アクション1:該当可能性のある品目の棚卸し

  • 韓国向け出荷品のうち、食品(水産物)、PC部材、冷却・電装周辺品など、今回の事例に類似性が高い分野を優先的に抽出する。
  • インボイス記載HS(6桁)と、韓国側申告コード(10桁)の間でズレが生じやすい品目(生物名ベースの品目、複合機能品など)を重点的に確認する。

アクション2:品目マスタと通関指示書の更新

  • 社内の輸出用HSマスタ(6桁・必要に応じて9桁)と、韓国輸入者側で使用される10桁コード体系を、定期的に照合しながら管理する。
  • 過去に韓国向け輸出実績がある品目については、分類根拠を1枚の説明資料(根拠シート)に整理しておくと有効です(例:
    製品概要、構成要素、主要用途、写真・図面、カタログ抜粋、取付先機器、比較候補コード(なぜ他の号ではないか)など)。

アクション3:不確実な品目は事前照会ルートを活用

韓国税関は、品目分類の不確実性を減らすための事前審査制度を運用しており、UNIPASS(韓国の通関電子申告システム)上で申請が可能と案内しています。
また、2026年1月2日施行の制度改正では、一定条件下で不足税額に対する加算税(不誠実申告加算税)の減免が認められるケースにも言及されており、輸入後に修正が生じ得る業種ほど、社内での修正手順と期限管理のルールをあらかじめ設計しておく価値があります。


4. 実務上の意味合いと今後の活用

今回の「品目分類変更告示(2026年1月22日)」は、単なる個別事例の紹介にとどまらず、韓国が品目分類の予測可能性を高めつつ、WCOとの整合も意識して運用をアップデートしているシグナルといえます。
日本企業としては、影響が出やすい品目から優先度を付け、韓国側の分類ロジックに沿った形で根拠書類の整備と品目マスタ更新を進めることが、最も効率的な対応策となります。