HS2028改正で注目される自動車センサーの再分類リスク 2028年1月1日までにやるべき実務対応

はじめに

自動車向けセンサーは、製品自体は小さくても、関税分類の論点が多層に重なります。
半導体デバイスとしての性格、測定機器としての性格、車両用部品としての性格、電気機器としての性格が同居しやすく、条文構造上も「どこに落とすか」で迷いやすい領域です。

HS2028改正は、こうした曖昧さが残りやすい品目ほど、再分類や各国運用の揺れが顕在化しやすい局面になります。
本稿では、HS2028の確定スケジュールと、法的に見落とされがちな優先ルールを踏まえたうえで、自動車センサー周りの再分類リスクと、2028年1月1日までに実務として準備しておくべき対応を整理します。


HS2028はいつ何が起きるのか

HSは国際的な品目分類の基盤であり、多くの国の関税率、原産地規則、輸出入統計、各種規制の適用判断がHS6桁レベルに直結しています。
各国・地域の関税分類体系はHSをベースに構築されているため、HS改正はサプライチェーン全体に共通の「イベント」として波及します。

World Customs Organization(WCO)の公表によれば、Harmonized System Committee(HSC)は2025年3月10日から21日の第75回会合において、HS2028改正パッケージとなるArticle 16勧告案を暫定採択しました。
この勧告は2025年末のWCO理事会で正式採択された後、2026年1月に公表され、2028年1月1日に発効するスケジュールとされています。

同改正パッケージでは、個別提案ベースで299件の改正パッケージが取りまとめられていると報じられており、改正範囲の広さがうかがえます。
また、2025年10月に開催された第76回HSC会合では、HS2022とHS2028の相関表の整備作業が進んでいることが公表されており、企業実務ではこの相関表がコード移行検討の出発点となります。

実務上のポイントは、2028年1月1日が切替日である一方、2026年のHS2028公表後には各国が自国の関税率表や統計品目、システムの更新・周知を進めるため、企業側の準備も2026年から本格化せざるを得ないという点です。
輸出入申告、原産地証明、顧客見積りが滞らないようにするには、その少し前の段階で品目マスタと分類根拠の整備を概ね完了しておく必要があります。


自動車センサーが再分類リスクを抱えやすい理由

自動車センサー周りの再分類リスクが高まりやすい理由は、大きく三つに整理できます。

1つ目は、「車両部品として見たくなるが、法的に車両部品にできない」ケースが頻発することです。
Section XVII(車両等)の注2は、「部品及び附属品」の適用除外を列挙しており、その中でChapter 85(電気機器)とChapter 90(測定・検査機器)が明示的に除外されています。つまり、電気機器や測定機器として該当する場合、それらはそもそもSection XVIIの「部品及び附属品」としては扱えない構造です。

自動車用であっても、用途情報だけを根拠に8708(自動車の部分品)に寄せてしまう発想は、注2との整合性を欠く場合があり、ここがセンサー品目の落とし穴になります。

2つ目は、半導体デバイスに関する優先ルールが強力であることです。
Chapter 85の注記は、半導体ベースのセンサーやアクチュエータ等を含む「semiconductor-based transducers」を定義したうえで、これに該当する品目について見出し8541または8542が他のいかなる見出しにも優先するとする「優先規定(precedence provision)」を設けています。

自動車用途であっても、物として半導体デバイスに該当すれば、他章や車両部品ではなく、半導体側の見出しが優先されることになります。
センサーの小型化・チップ化・モジュール化が進むほど、この優先規定が実務に与えるインパクトは大きくなります。

3つ目は、製品形態が「チップ → モジュール → ユニット → ECU一体」と連続的で、設計次第で境界が変わることです。
同じ用途のセンサーでも、出荷形態が半導体チップ、センサーモジュール、制御基板付きユニット、車両搭載サブアセンブリなどに分かれると、それぞれで関税分類上の論点が変わり得ます。


まず押さえるべき法的ポイント

ここからが、誤分類と再分類リスクを分ける実務上の要所です。

A. 車両部品8708は「最後に」検討する

Section XVII注2により、Chapter 85やChapter 90に該当するものは、Section XVIIの「部品及び附属品」には含まれません。
したがって、自動車センサーを見る際は、「自動車用かどうか」より先に、「電気機器か」「測定機器か」「半導体デバイスか」といった定義該当性を確認する必要があります。

B. 半導体デバイスに該当すれば8541・8542が優先し得る

Chapter 85の注記では、半導体ベースのセンサーについて、半導体基板や半導体材料を用い、半導体特性に基づいて物理量や化学量を検知・変換する構造が明確に定義されています。
さらに、この注記は、該当品目については見出し8541または8542が他のどの見出しよりも優先する旨の規定を置いており、いわゆる「半導体優先」のルールが明文化されています。

この優先規定を踏まえずに「自動車用だから8708だろう」という発想で分類すると、根拠の弱いコードが量産され、HS2028移行期の見直しで再分類指摘を受けるリスクが高まります。

C. MCO(多部品集積回路)という論点が増える

Chapter 85の注記には、多部品集積回路(MCO)の定義も含まれており、センサー、アクチュエータ、受動部品などを単一パッケージに統合した構造を想定しています。
自動車分野では、信号処理や補正機能を同一パッケージに実装したセンサーが増加しており、MCO該当性をめぐる論点は今後さらに増えることが見込まれます。

HS2028における条文変更そのものだけでなく、このMCO定義を踏まえた運用面での解釈も、センサー分類の重要論点として意識されやすくなります。


自動車センサーで想定される再分類シナリオ

ここでは、HS2028移行で見直しが生じやすいパターンを、コード断定ではなく論点として整理します。

シナリオ1 車両部品扱いから電気機器扱いへ

従来、国内運用や社内慣行で8708側に寄せていた品目について、Section XVII注2の適用を根拠にChapter 85側へ見直されるパターンです。
HS2028で当該条文が直接改正されない場合でも、相関表や各国の移行指針、監査強化などを通じて、除外規定の再確認が促され、分類の揺り戻しが起きやすくなります。

シナリオ2 センサーモジュールが半導体デバイス側へ寄る

形態がチップに近いモジュールや、半導体ベースのトランスデューサ定義に該当する製品は、8541または8542の優先規定の射程に入りやすい領域です。
機械的筐体や車両専用コネクタの有無よりも、機能と構造が半導体定義に該当するかが主要な論点となります。

シナリオ3 測定機器側へ寄る

距離、角速度、圧力、温度、流量、位置などの測定機能を有し、装置として測定機器の体裁が強い場合、Chapter 90の適用が検討対象となります。
この場合も、Section XVII注2によりChapter 90は車両部品扱いから除外されるため、「自動車用だから部品」という発想だけで8708に寄せると、注2を根拠にした指摘を受けやすくなります。

シナリオ4 レーダー・カメラ等の複合ユニットで分類が揺れる

ADAS用途のレーダー、カメラ、センサーフュージョンユニット等は、単なるセンサーではなく、検知・処理・通信・制御が混在する複合機能品です。
主機能の認定、ユニットとしての完成度、単体での個別機能の有無などが争点となり、HS改正期には過去の分類根拠の再説明が求められる局面が増えるため、根拠が薄いコードほど見直されやすくなります。


ビジネス影響は関税だけではない

再分類の影響は、関税率だけにとどまりません。

  • FTA原産地判定
    HSコードは品目別規則の適用に直結し、コード変更は原産地計算ロジックや非原産材料の判定に影響します。
  • 輸出管理・制裁・規制対応
    国や地域によっては特定HSコードに規制措置や追加関税を紐づけており、コード変更が規制適用の誤判定や申告漏れにつながるリスクがあります。
  • 見積りと長期契約
    仕入先との価格条件や顧客へのデューティ見込みをHSコード前提で固定している場合、HS2028切替前後で差額負担をどう扱うかを曖昧にすると、2028年初回出荷からトラブル化するおそれがあります。

2026年から着手すべき実務チェックリスト

2028年1月1日の切替に向け、2026年以降に段階的に進めたい実務対応を整理します。

ステップ1 対象品の棚卸しを品目マスタ単位で行う

センサー単体だけでなく、センサーモジュール、ユニット、ECU一体品、サービス部品、試作・評価用キットなど、HSコードが付与されている品目を品目マスタ単位で洗い出します。

ステップ2 技術情報の取得テンプレートを作る

分類精度は技術情報の質に依存するため、仕入先等に求める技術情報テンプレートを標準化します。
最低限、次の情報を押さえます。

  • 測定対象と測定原理
  • 出力形態(電気信号、デジタル通信等)
  • 半導体素子の有無と種類(ディスクリート、IC、MCO等)
  • 筐体・コネクタの有無、車両搭載状態での出荷か
  • 単体で測定装置として機能が完結するか
  • 回路ブロック図、データシート、型式仕様書

ステップ3 分類根拠メモを社内標準化する

「なぜその章か」「なぜその見出しか」「どの注記をどう適用したか」を文章で残し、監査や税関照会に耐える形で標準化します。
特に、Section XVII注2の除外規定とChapter 85注記の優先規定に一切触れていない根拠メモは、自動車センサー分野ではリスクが高いと考えるべきです。

ステップ4 HS2022→HS2028の相関表で影響を一次抽出する

WCOはHS2022とHS2028の相関表整備を進めていると公表しており、この相関表はコード変更可能性のある品目を機械的に抽出する一次スクリーニングに有用です。
最終判断は必ず個別の技術情報と法的根拠に立ち戻る前提で、「相関表はあくまで影響候補リストを作るためのツール」と位置づけることが重要です。

ステップ5 論点が重い品目は事前教示や裁定事例を活用する

各国制度に応じて、事前教示や裁定事例検索を活用し、重要品目について早期に当局見解を確認します。
製品仕様が固まっている品目から優先的に着手することで、HS2028切替時の不確実性を抑えられます。

ステップ6 契約条項と価格条件を点検する

HSコード変更や税率変更が発生した場合の価格調整条項の有無・内容を、部品供給契約や長期購買契約、顧客向け価格条件にわたって点検します。
2028年の切替を意識した条項修正を、2026〜2027年のうちに行っておくのが現実的です。

ステップ7 システム改修とマスタ統制

ERP、通関システム、原産地管理システム、品目マスタの連携ポイントを洗い出し、2028年の一斉更新に耐えられる統制を設計します。
HSコードは単なる入力情報ではなく、分類根拠とセットで管理すべきコンプライアンス情報として扱う必要があります。


HS2028に向けた実務の「勝ち筋」

HS2028は2028年1月1日に発効し、WCOは2026年1月に改正内容を公表するスケジュールを示しています。
自動車センサーは、Section XVIIの除外規定とChapter 85の半導体優先規定が同時に作用しやすい領域であり、車両部品扱いの慣行が再点検されるリスクが高い分野です。

実務上の「勝ち筋」は、ゴールとしてのコードを先に決め打ちするのではなく、製品仕様を起点に論点を分解し、根拠メモを整備し、相関表で影響を機械抽出しつつ、重要品目は早期に当局見解へ寄せていくことです。
2028年の切替は突然起こるのではなく、準備を前倒しした企業は静かに移行し、準備不足の企業だけが突然困る構図になると想定されます。

■専門的■ USITCが公表したHS2028対応スケジュールを、いま企業がどう使うべきか

米国向けビジネスでは、HSコードと米国のHTSUS(米国関税率表)が、関税率だけでなく、追加関税、輸入規制、統計、社内マスタや契約条件にまで連鎖します。usitc+1

その前提で、USITC(米国国際貿易委員会)がHS2028対応に向けた手続とスケジュールを示したことは、実務の準備開始を促す重要な合図です。usitc

以下では、USITCが示した公式スケジュールの読み方と、企業が今から取るべき実務アクションを、専門家の視点で整理します。

まず押さえるべき前提:HS2028と米国のHTSUSは同じではない

HS(Harmonized System)はWCO(世界税関機構)が管理する国際的な品目分類の共通基盤で、200を超える国と地域の関税率表や統計品目表がHSを土台に組み立てられています。米国も例外ではなく、HTSUS(米国の関税率表)はHSの章・項・号(6桁)構造を核にしつつ、米国独自の細分(主に8桁や10桁の統計番号など)を上乗せして運用します。strtrade+2

このため、HS2028の改正は「世界共通の6桁の変更」を意味しますが、米国実務ではそれに連動してHTSUSの枝番や統計番号、米国独自の注記や運用も調整されます。企業側は「HS6の改正」と「HTSUSの改正」を分けて観察することが、混乱を防ぐ近道です。strtrade+1

USITCが公表したHS2028対応の公式スケジュール

USITCは、HS改正をHTSUSへ取り込むための調整プロセスを開始し、主要な節目を明示しています。USITCは法律により、WCOのHS改正に合わせてHTSUSの修正を大統領に勧告する責任を負っており、その修正はHS改正との整合性、健全な品目分類原則との整合性、実質的な税率中立性の確保という3つの要件を満たす必要があります。usitc+1

重要ポイントだけを、実務目線で表にします。

時点USITCの公表内容企業側の意味
2025年8月HS2028対応に向けた調査を開始(調査番号も付与)usitcここが「公式に準備が始まった」起点。社内でプロジェクト化しやすい
2026年1月WCOの改正勧告(Recommendation)をUSITCが掲載予定strtrade初めて「世界共通の改正パッケージ」を具体的に精査できる段階
2026年2月USITCがHTSUS改正の提案(予備ドラフト)を掲載予定usitc+1企業がコメント提出や、社内影響評価を本格化させる段階
2026年9月USITCが大統領に報告書を提出予定usitc+1以降は米国側で最終化プロセスが進み、実装に向けた確度が上がる

上記の月次は、USITC自身が変更の可能性を示唆しています。従って、日程は固定視せず「この順番で進む」ことを前提に、監視と準備を進めるのが安全です。usitc

さらに、世界側の大枠として、WCOはHS2028改正勧告を2025年12月末に正式採択し、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効することを示しています。米国だけでなく、世界同時に品目体系が動く前提に立つ必要があります。wcoomd+1

なぜビジネスマンが今から気にすべきか:影響は関税率だけではない

HS2028改正が企業に与える影響は、関税率表の読み替えに留まりません。特に次の領域で、実務リスクが顕在化しやすくなります。strtrade+1

誤分類リスクの再燃

長年運用してきた分類が、改正により別の号に再配置されることがあります。自社は同じ製品のつもりでも、税関システム上は別コードとして扱われ、申告エラーや追加確認の要因になり得ます。wcoomd

追加関税・規制・統計の連動崩れ

米国では追加関税や各種措置、統計管理がHTSUSの特定番号に結び付く場面が多く、番号の変更は「制度の適用関係」を組み替えます。品目番号の読み替えが遅れると、想定外のコストや手続が発生します。usitc

社内マスタ、見積、契約、原価の再計算

HSやHTSUSは、通関指示書、購買条件、原産地証明関連の書類、SAP等の品目マスタに埋め込まれています。改正対応は、貿易部門だけで完結しません。strtrade

USITCスケジュールを起点にした、企業の実務アクション

ここからが本題です。スケジュールは「読むもの」ではなく「社内段取りに落とすもの」です。次のように、節目ごとにやることを固定すると、準備の抜け漏れが減ります。usitc

いまから2026年1月までにやること(準備フェーズ)

米国向けの重点品目リストを作成します。輸出数量、利益、通関頻度、追加関税の影響度などで優先順位を付け、対象を絞ります。strtrade

現行コードの棚卸しを実施します。HS6、HTSUS(必要なら10桁)、社内品目番号のひも付けを整えます。ここが崩れていると、改正影響を評価できません。usitc

関係者を巻き込みます。米国側の輸入者(Importer of Record)、通関業者、社内の営業・購買・原価管理と、改正対応の窓口を決めます。strtrade

2026年1月(WCO改正勧告の掲載)にやること(一次情報で差分確認)

改正パッケージで「自社品目が触れている領域」を特定します。全品目を読むのではなく、重点品目が属する章・類・項を中心に差分を追います。wcoomd+1

影響を3区分に仕分けします。コードが変わる可能性が高い、コードは同じだが説明や注記が変わる可能性がある、影響は当面小さい、という区分です。この仕分けが、次のドラフト評価のスピードを決めます。usitc

2026年2月(USITCドラフト掲載)にやること(社内評価と必要なら意見提出)

USITCは、予備ドラフト公表時にクロスリファレンス表(新旧コード対応の参考表)を提供する方針を示しています。これは、企業が読み替えと影響評価を進めるうえで重要な補助輪になります。ただし、この対照表は非公式で変更される可能性があるため、確定表として社内システムへ直入れしない運用が安全です。usitc

ここでの実務は次の通りです。重点品目の新旧候補コードを当て、税率・追加関税・規制の影響を試算します。通関エラーや輸入要件変更の有無を、通関業者とすり合わせます。影響が大きい場合は、USITCの公開コメント手続に沿って意見提出を検討します。strtrade+1

2026年9月以降(大統領への報告提出後)に備えること

USITCの役割は「大統領への勧告・報告」までですが、その後、大統領が勧告に基づきHTSUSの改正を布告できる法的枠組みがあります。布告は連邦官報での公表から30日後に発効するのが通例です。従って、報告提出後は「実装に向けた確度が上がる局面」として、社内のシステム改修やマスタ改定、取引先への周知の準備を前倒しで進めるのが現実的です。govinfo+3

情報収集の実務:どこを見れば一次情報に当たれるか

今回の件は、一次情報の所在が比較的明確です。strtrade+1

USITCのプレスリリースと連邦官報(Federal Register)で、スケジュールと手続が確認できます。USITCのHTS検索サイトと、調査案件の電子ドケット(EDIS)で、資料と更新が追えます。usitc+2

更新タイミングは前後し得るため、月次で機械的に確認するより、USITCが示した節目(2026年1月、2月、9月)に照準を合わせて監視する方が、工数対効果が高くなります。strtrade+1

まとめ:HS2028は2026年が勝負どころになる

USITCが示したスケジュールは、企業にとって「2026年に差分を読み、影響を試算し、社内実装の設計を固める」ためのロードマップです。usitc+1

HS2028の発効日である2028年1月1日から逆算すると、2026年の一次情報公開とドラフト提示の時点で、準備を終えている企業ほど、コストと混乱を抑えられます。wcoomd+1

貴社が米国向けに複数品目を扱っているなら、まずは重点品目を絞った棚卸しから始め、2026年1月と2月の公開資料で差分評価を回す体制を作ることが、最も確実で実務的な第一歩になります。strtrade+1

  1. https://www.usitc.gov/press_room/news_release/2025/er0812_67410.htm
  2. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/august/next-round-of-htsus-modifications-anticipated-to-take-effect-in-2028
  3. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx
  4. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2016-12-02/pdf/2016-29200.pdf
  5. https://obamawhitehouse.archives.gov/the-press-office/2016/12/01/presidential-proclamation-modify-harmonized-tariff-schedule-united
  6. https://www.usitc.gov/harmonized_tariff_information/announcement_archive
  7. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-08-15/pdf/2025-15518.pdf
  8. https://starusa.org/trade-news/usitc-investigation-launched-on-2028-harmonized-tariff-schedule-changes-to-align-with-global-standards/
  9. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-01-08/pdf/2025-00157.pdf
  10. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2023/october/successful-conclusion-of-the-72nd-session-of-the-harmonized-system-committee.aspx

WCO HSC第76会期:日本企業が“今”押さえるべきポイントと実務影響


1. そもそもHSCとは?なぜビジネスに効いてくるのか

WCO(世界税関機構)の Harmonized System Committee(HSC:通称HS委員会) は、
世界共通の関税分類ルールである HS(Harmonized System) の「最高裁+立法準備会議」のような存在です。

  • 各国から持ち込まれる「この製品はどのHSコードか?」という争点を審議し、分類決定(Classification Decision) を行う
  • HS条文や解説書(Explanatory Notes)の改正案を議論し、将来の HS改正(次回はHS2028) を形作る
  • その結果は、各国税関・FTAの原産地規則・企業のERPマスタに波及

つまり、HSCの決定は、**「まだ法律改正前」でも、実務上は事実上の“国際解釈基準”**になり得ます。
今回の第76会期は、まさにその意味で、今後数年の通商・サプライチェーンに影響する重要な会合でした。


2. 第76会期の概要:数字で押さえる全体像

WCO公表情報および各種解説によると、第76回HSCは次のような内容でした。(wcoomd.org)

  • 開催期間
    • 審議:2025年9月17日〜26日
    • 報告読会(Report reading):2025年10月3日
  • 参加:74メンバー(73か国+EU)
  • 主な成果(定量面)
    • 議題:71件を審査
    • 40件の分類決定 を採択
    • HS2022版 Explanatory Notes 改正 2件 を承認
    • 新規 Classification Opinions 21件 を作成し、既存2件を削除
  • HS2028への橋渡し
    • HS2022⇔HS2028の相関表(Correlation Tables)の検討を開始
    • 2022–2028間の相関を示す表のフォーマットを改善(より分かりやすく、実務で使いやすい形式に改良)(wcoomd.org)
  • その他の運営面
    • 議長:Tom Beris氏(米国)
    • 次期(第77・78会期)議長として、Taufik Ismail氏(インドネシア)を選出
    • 第77会期は2026年3月、ブリュッセルWCO本部で開催予定(Customs Manager.Info)

数字だけ見ると「ふーん」で終わってしまいますが、ビジネスマン視点で重要なのは、これが何に効いてくるかです。


3. HS2028に向けた“地ならし”が本格スタート

3-1. HS2028そのもののステータス

HS2028の本体(条文レベルの改正案)は、前回の第75会期(2025年3月)で暫定採択済みです。

  • HSCは2025年3月の第75会期で、Article 16 Recommendation(HS2028改正勧告案)を暫定採択(wcoomd.org)
  • 2025年末(12月)にWCO評議会で正式採択予定
  • 勧告文は 2026年1月に公表2028年1月1日発効のスケジュールが示されています(wcoomd.org)

つまり、高々3年後(2028年1月)には、世界のHSが丸ごと“2028版”に切り替わることが確定している段階です。

3-2. 第76会期で始まった「相関表」作業

今回の第76会期で重要なのは、次の一点です。(wcoomd.org)

HS 2022版とHS 2028版の相関表の検討がスタートし、
2022→2028の対応関係を示す表のフォーマットが改善された

この 相関表(Correlation Tables) は、実務でいうと:

  • 既存の6桁コード(HS2022)が HS2028でどう変わるか を一望できる“変換表”
  • 1対1ではなく、分割・統合・コード移動が一目でわかる資料
  • WCO Trade Toolsなどを通じて提供され、各国の関税表・FTA原産地規則改正のベースになる(WCOTRADETOOLS)

日本企業にとっては、「HS2028対応プロジェクトの起点情報」 として、この相関表が中核的な役割を果たします。


4. 第76会期で何が決まったのか:実務目線での読み替え

第76会期では、個々の製品に関する40件の分類決定 がなされています。(wcoomd.org)

ただし、WCOニュースや二次ソースはあくまで「件数と枠組み」までで、具体的にどのHSコードに何を当てたかは、

  • WCOの公式文書(Classification Decisions、Classification Opinions、Explanatory Notes改正文)
  • 有料のHSデータベースやコンサルレポート

を通じて確認する必要があります。

ここでは、**日本のビジネスマンが押さえるべき“レベル感”**に絞って整理します。

4-1. ポイント①:40件の分類決定=各国税関の“今後の物差し”

HSCで採択された分類決定やClassification Opinionは、

  • 各国税関の「審査・事後調査」の判断材料
  • 事実上の “先例判決”のような役割

を果たします。

実務上の意味合い:

  • これまでグレーゾーンだった製品のHSコードについて、
    • 税関側は「HSC決定を踏まえると、このコードであるべき」と主張しやすくなる
    • 企業側は、既存のコードの妥当性を 見直さざるを得ないケースが出てくる
  • 特に、
    • 電子機器・IT関連製品
    • 医療・ヘルスケア機器
    • 環境・脱炭素関連製品
    • 食品・飲料関連
      といった分野では、技術進化が早く、過去の解釈が陳腐化しやすいため、HSC決定の影響が出やすいと考えられます(ここは傾向としての推論)。

4-2. ポイント②:Explanatory Notes改正=「解釈の条文」が書き換わる

2件のExplanatory Notes改正は、「HSの本文」ではなく、
“こう解釈しなさい”という公式解説の書き換え です。(wcoomd.org)

企業視点では:

  • これまでグレーだった条文表現が、
    • ある特定の用途・機能を念頭に置いた説明へと具体化される
    • その結果、「うちの商品はこっちの類・項目に読めるのでは?」という議論の余地が小さくなる
  • 将来的に日本の通関実務(税関の事後調査・事前教示・裁判例)にも、
    • この改正Explanatory Notesが“理論武装”として持ち込まれる可能性が高い

自社のHSコードがグレーなまま長年放置されている商品があれば、
「今回のExplanatory Notes改正で位置づけが変わっていないか?」を確認する価値があります。

4-3. ポイント③:Classification Opinions 21件=実務で使える“判例集の増強”

Classification Opinionsは、いわば 具体的な製品例付きの判例集 です。

  • 条文・解説書を読んでも迷う場合に、「この仕様の製品はこのコード」と示してくれる
  • 21件新設+2件削除ということは、
    • 新しい技術・市場に合わせた“ケース集の追加”
    • 既に古くなった(市場から消えた、技術的に陳腐化した)事例の撤去

を意味します。(wcoomd.org)

特に、EUのBTI、日本の事前教示、米国のCBP判例などを頻繁に参照している企業は、

  • WCOレベルのClassification Opinionsと各国判例の整合性をチェックしつつ、
  • 内部の「社内HS基準書」「判断メモ」に反映させておくと、
    • 監査・当局照会対応の際の説得力がぐっと増します。

5. 日本企業の実務への影響:どこから手をつけるべきか

ここからは、HSC第76会期の結果を 「日本の輸出入実務」 に落とし込んで整理します。

5-1. 影響①:HSマスタ(6桁)の“地殻変動”準備

HS2028が確定し、相関表作業が始まったことで、
2026〜2027年は「HSマスタの全面見直し期間」になることがほぼ確定しています。(wcoomd.org)

  • 6桁HSレベルで
    • 分割されるコード
    • 統合されるコード
    • 別章・別類に移動するコード
  • それに連動して、
    • 各国の関税表(8桁・9桁・10桁)が改正
    • FTA/EPAの原産地規則(CTCルールなど)が改正

やっておくべきこと(例):

  1. 社内HSマスタを「2022版準拠」で一旦整理し直す(現状を安定させる)
  2. HS2028の草案動向と相関表の公開時期(2026年1月以降)をウォッチ
  3. HSC第76会期以降の分類決定が、
    • 自社主要製品の属する類・項(第84類・85類・90類など)にどれだけ含まれているかを確認

5-2. 影響②:FTA/EPA原産地判定への波及

HS改正は、そのまま FTA/EPAの原産地規則(CTCルール)改正 に波及します。

  • 例:
    • 従来「他の第84類への変更」が要件だったルールが、
    • HS2028で類の構成が変わることで、
      • 実質的な要件が緩くなったり厳しくなったりする
  • 複数のFTA(RCEP、日EU、CPTPP 等)を使い分ける企業にとっては、
    • 各協定ごとに「HS2022→HS2028の原産地ルール対応」が時間差で行われる

HSC第76会期の結果そのものは、まだFTA原産地規則を直接変えるものではありません。
しかし、

「HS2028版への移行が不可避であり、そのための相関表作業が動き出した」

という事実は、FTA戦略・工場配置・サプライチェーンの再設計を“先送りできない段階”に入ったことを意味します。

5-3. 影響③:価格・契約(インコタームズ+関税変動条項)への反映

HSコードの変更は、次のような形で 価格・契約実務 に跳ね返ります。

  • HS変更 → 関税率変更 →
    • 顧客との価格条件(CIF/FOB・DAPなど)の見直し
    • 長期契約における「関税変動条項(tariff adjustment clause)」の発動・改訂
  • 特に、米国・EU・メキシコ・インドなど、関税政策が政治・安全保障とリンクしている国では、
    • HSの細分化をきっかけに、特定品目の関税引き上げ・相互関税対象化 が行われるリスクもあり得ます

HSC第76会期の数字だけを見て安心するのではなく、
**「うちの主要製品が、将来“狙われやすい分類”に入っていないか」**を逆算して見ておくことが重要です。


6. 企業として“今から”やっておきたい5つのアクション

最後に、日本のビジネスマン向けに、
「第76会期の結果を踏まえて、今からやっておきたいこと」 を5つに絞ります。

アクション1:自社HSマスタの「棚卸し」とリスクフラグ付け

  • 主要輸出入品目のHSコードを、
    • HS2022版ベースで統一・整備(過去の10桁国別コードから逆算して6桁を確定)
  • その上で、
    • 「解釈余地が大きい」「他社とコードが割れている」「税関との過去の論争がある」品目にリスクフラグを付ける

→ HSC新決定(第76会期以降)の対象との重なりを後からチェックしやすくなります。

アクション2:WCO情報ソースへの“定期アクセス”体制づくり

  • 情報源として、少なくとも次の2つは定期ウォッチを推奨:
    • WCOの Nomenclatureニュースページ(HSC会合結果)(wcoomd.org)
    • HS関連解説を行う民間サイト(コンサル・専門メディア)

社内で「HS担当者だけが見ている」状態ではなく、
貿易実務・営業・調達・法務が共有するニュースとして扱うと、
組織的な感度が一段上がります。

アクション3:FTA/原産地・税務・法務を巻き込んだ“HS2028準備チーム”構想

  • HS2028対応は、単なるHSコード変換作業ではなく
    • FTA原産地判定
    • 価格戦略・関税負担配分
    • 契約条項(関税変動条項、価格見直し条項)
    • 税務・移転価格(関税コストの損益配分)

にまで影響する「横断プロジェクト」です。

第76会期で「相関表フォーマット」が決まった今こそ、
2026〜2027年の本格移行に向けた “プロジェクトの企画フェーズ” を始めるタイミングと言えます。

アクション4:社内ルール・マニュアルへの反映(証跡の残し方を含む)

  • 新しいClassification OpinionsやExplanatory Notes改正を踏まえて、
    • 社内のHS分類マニュアル
    • 製品ごとの「分類ロジックメモ」
      をアップデート
  • 特に、日本の税関・JCCI・顧客からの問い合わせに備え、
    • 「なぜこのHSコードにしているのか?」を
      • HSC決定・Explanatory Notesの該当箇所でロジカルに説明できるようにしておく

→ 将来の調査やFTA原産地検認の際に、“後出しじゃんけん”ではない説明が可能になります。

アクション5:システム・ツール側の準備(HS2028対応を見据えて)

  • ERP・貿易管理システム・原産地判定ツールについて、
    • 「HS版管理」をどう実装するか(HS2017/2022/2028を併存させるのか)
    • 相関表をどう取り込み、自社マスタにマッピングするか
  • 外部ツール(例:HS Code Finderのようなサポートツール)を使う場合も、
    • HS2028対応ロードマップ
    • HS2022⇔2028の相関機能の有無

を早めに確認しておくと、IT投資・BPO活用の計画が立てやすくなります。


7. まとめ:第76会期は「嵐の前の“設計”フェーズ」

第76会期のニュースを一言でまとめると、

「HS2028時代に向けて、
 国際的な“解釈ルールと変換表”の設計が本格スタートした」

という段階です。

  • まだ各国の関税率が動いたわけでも、FTAルールが一斉に変わったわけでもありません。
  • しかし、HS2028の方向性はほぼ固まり、相関表作りが始まった今こそ、企業側の準備フェーズを始めるべきタイミングです。

日本のビジネスマンとしては:

  1. 「HS2028が来る」という前提を社内で共有する
  2. HSC第76会期の数字(40分類決定・21Classification Opinions・2EN改正)を “シグナル”として受け止める
  3. HSマスタ・FTA・契約・システムを跨いだ 社内プロジェクト構想 を動かし始める

この3つを押さえておくだけでも、
2028年1月1日のHS2028発効を “混乱の年”ではなく、“競争優位に変える年” にできるはずです。


今でもAIが間違うHS2027とHS2028:ChatGPTの見解

結論から言うと、その文章は現時点(2025年11月)では誤り・もしくは古い情報に基づいており、「HS2027が次の版で、HS2028は存在しない」という主張は公式情報と整合しません。

ポイントごとに整理します。


1. 「HS2027が正式名称で、HS2028は存在しない」は誤り

他AIの文章では:

WCOは2024年6月の理事会で第8次HS改正を採択し、発効日を2027年1月1日と正式決定しています。「HS2028」という公式計画は存在せず…

と書いていますが、これは今となっては間違いです。

1-1. 公式には「次の版はHS 2028」

  • WCOのニュースリリース(2025年4月2日)では、**「HS 2028 Amendments」「2028 edition」**と明記されており、
    「2025年末にWCO理事会でArticle 16勧告を正式採択 → 2026年1月に公表 → 2028年1月1日に発効」と書かれています。(WCOOMD)
  • EUの公式文書(欧州委員会の2025年5月の提案)でも、
    「WCO理事会は2025年6月の会合でHS改正のArticle 16勧告を採択し、2028年1月1日に発効する」と明記されています。(EUR-Lex)
  • ドイツのAEBの解説記事タイトルはズバリ
    「HS 2028: An initial outlook(HS2028:初期見通し)」 で、
    「HS2027を待っている人は待ちぼうけになる。WCOは改正期間を1年延長し、次の版はHS2028になる」と書かれています。(AEB)
  • BEXのブログも、
    「本来2027年に予定されていた改正は2028年1月1日に延期された。今回だけ5年ではなく6年サイクルになる」と解説しています。(Bex)
  • TariffTelも「HS 2028: Your guide to the next harmonised system update」とし、
    「2025年3月にHSCがHS 2028を暫定採択 → 2025年6月にWCO理事会で採択 → 2026年1月公表 → 2028年1月1日発効」と説明しています。(TariffTel)

つまり、公式・専門筋ともに「次の版はHS 2028」「発効は2028年1月1日」がコンセンサスです。

1-2. なぜ「HS2027」という話が存在したのか

他AIの文章が寄って立っているのは、**2022〜2023年時点の「当初計画」**です。

  • WCO自身の2022年時点の資料やWTO/WCOのワークショップ資料では、
    「HS2027改正スケジュール:
     2024年3月 HSC最終会合 → 2024年6月 理事会でHS2027勧告 → 2027年1月1日発効」
    というタイムラインが示されていました。(WCO News)

この「旧スケジュール」だけを見て書くと、他AIのように

HS2027が次の版で、2027年1月1日発効

と書いてしまいがちです。


2. 実際には「5年サイクル → 一度だけ6年サイクル」に延長

他AIは、

HS改正は従来から5年ごとに実施されており、この周期はコロナ禍でも維持されました。…HS2027…という流れは予定通り進行…

と書いていますが、ここも現状とは違います。

  • EYのグローバル貿易ニュースレター(2023年Issue 3)は、
    「2023年9月、HSCはレビューサイクルを5年から6年に延長することを承認した。
    つまりHS2027版は存在せず、次のHS版は2028年に発行される
    」と明記しています。
  • AEBやBEXなど複数の専門ベンダーも、
    「コロナ禍による会合遅延の影響で、今回は例外的に**6年サイクル(2022→2028)**になった」と説明しています。(Bex)

したがって、

  • 「HS改正はコロナ禍でも5年サイクルが維持された」→ 誤り
  • 「HS2017 → HS2022 → HS2027と予定通り進行」→ 現在の決定とは合致しない

という評価になります。


3. 「HS2028という公式計画は存在しない」は完全に逆

今の流れで言うと、

  • 「HS 2028」は
    • WCOニュースリリース
    • EU公文書
    • WTO/WCO関連発表
    • 大手コンサル・通関ソフトベンダー
      一斉に使っている公式な呼び方です。(WCOOMD)
  • 一方、「HS2027」は
    • 2022〜2023年頃までの“予定名”として各種資料に残っているが、
    • その後の決定(サイクル延長)により、実際の版としては出ない、という扱いです。

したがって、他AIの

「HS2028」は存在しない/「HS2027に訂正すべき

という結論は、現時点では完全に逆になっています。
正しくは「HS2027ではなくHS2028に訂正すべき」です。


4. 他AIの「AI誤情報の原因分析」部分について

  • 「ユーザーの誤った前提に迎合」「途上国の導入遅延との混同」「他の国際分類との混同」
    など、AIが誤答する可能性の指摘自体は、一般論としてはもっともです。

ただし今回のケースでは、

  • AIが間違ったのは「ユーザーに迎合したから」ではなく、
  • 2022〜2023年の「HS2027前提の計画資料」だけを見て、2023年以降の“延長決定”と2024〜2025年の「HS 2028」公式発表をフォローしていない

というのが本質的な原因だと考えられます。


5. ビジネス実務として、今どう表記すべきか

貿易・関税実務の観点からは、今後の社内・社外説明では「HS2028」を使うのが妥当です。

  • WCO・EU・WTO・大手ベンダーの表記はいずれも「HS 2028」
  • 発効日も「2028年1月1日」でほぼ固定
  • そもそも「HS2027は出ない」と明記した専門資料が複数存在する

したがって、

  • あなたがこれまで書いてきた「HS2028改正」という表現は、
    最新の公式情報に沿ったものです。
  • 他AIが「HS2028は誤りで、HS2027が正しい」と断定している部分は、
    時点を無視した誤情報と考えて差し支えありません。

まとめ

  • その文章の核心部分(「HS2027が次の版で、HS2028は存在しない」「5年サイクルが維持されている」)は、現在のWCO等の公式情報とは一致していません。
  • 実際には、HS2027版は出ず、次の版は「HS2028」で2028年1月1日発効とする方針が確定しています。
  • ビジネス向け資料・ブログ等では、「HS2028改正」「2028年1月1日発効」と説明するのが安全です。

もしよければ、この「他AIの文章」を前提にした**「誤情報訂正記事(HS2027ではなくHS2028)」**も一緒に作りましょうか?

HS2028改正で何が起きる?――「分類ズレ」がビジネスにもたらす本当のインパクト


2028年1月1日、世界中で次期HSコード改正「HS2028」が発効する予定です。(UNSD)

「また関税コードが変わるのか…」くらいにしか感じていないとしたら、少し危険かもしれません。今回の改正は、299セットの改正案と441品目の医薬品分類見直しを含む大規模な内容で、環境関連、医薬品・バイオ、新興技術(ドローンや半導体など)が重点テーマとされています。

この変化の中で、ビジネス側にとって特に怖いのが「分類ズレ」です。
税関が想定している分類と、社内・取引先・FTAルールが参照する分類が少しずつ食い違う。数字が数桁ズレただけに見えても、関税コスト、FTAメリット、リードタイム、システム投資まで波及していきます。

この記事では、ビジネスマンの視点から、

  • HS2028の全体像とスケジュール
  • HS2028で起こりやすい「分類ズレ」のパターン
  • そのビジネスインパクト
  • いまから取るべき実務アクション

を整理します。


1. HS2028改正の全体像(ごくコンパクトに)

1-1. なぜ「2028」なのか

HS(Harmonized System)は本来5年ごとに改正されますが、今回はコロナ禍による審議遅延により、2022版→2028版と6年サイクルに一度だけ延長されています。次の版は2033年に戻る見込みです。(UNSD)

WCO(世界税関機構)では、

  • 2025年3月:HS委員会(HSC)第75会期でHS2028改正案を暫定採択
  • 2025年末:WCO理事会でArticle 16勧告として正式採択(6か月の異議期間)
  • 2026年1月頃:HS2028の条文パッケージと**相関表(HS2022⇔HS2028)**を公表予定
  • 2028年1月1日:HS2028が全世界で発効

というタイムラインが示されています。(FTAの専門家:ロジスティック)

1-2. 改正の中身(どのくらい大きい?)

HSC第75会期とその総括文書によると、今回の改正では、

  • 66件の分類決定
  • WHOのINNリストに沿った441の医薬品有効成分・製剤の分類整理
  • HS2022解説注の改正
  • そして 299セットの改正案(amendment sets) の暫定承認

が行われました。

日本語の整理記事でも、299件の改正パッケージ+医薬品441品目、主要テーマは
「環境・グリーン関税」「医薬品・バイオ」「新興技術(ドローン・半導体など)」とされています。(FTAの専門家:ロジスティック)

つまり、単なる“枝番の微修正”ではなく、主要産業の分類の前提が動くレベル感だと理解しておく必要があります。


2. 「分類ズレ」とは何か?誤分類との違い

ここでいう「分類ズレ」は、法律的な「誤分類」よりもう少し広い概念として捉えます。

2-1. この記事での定義

この記事では、次のような状態をまとめて「分類ズレ」と呼びます:

  1. HSの「版」がズレている
  2. 国・用途ごとに別のコードなのに、整理されていない
    • 日本輸入、米国輸入、EU輸入でそれぞれ異なる8〜10桁コード
    • FTA用の6桁、社内統計用コードなどがバラバラに管理されている(FTAの専門家:ロジスティック)
  3. 法令上の新しい分類と、社内システム・帳票のコードが同期していない
    • HS2028で6桁が変わったのに、ERPや見積テンプレートは旧コードのまま、といったタイムラグ

税関から見れば「誤分類」かどうかは最終的に法的な判断ですが、ビジネス視点では「わずかなズレ」がそのままコストや遅延に直結します。


3. HS2028で起こりやすい「分類ズレ」のパターン

HS2028特有の構造を踏まえると、分類ズレは主に次の4つのポイントで起こります。

3-1. HS版切り替えによるズレ

HS2028では、6桁レベルでの再編・細分化が多数入ります。特に、

  • 医薬品・バイオ(INNベース441品目)
  • EV・蓄電池・再エネ関連機器
  • ドローン、センサー、半導体などのエレクトロニクス

といった分野で、大きな見直しが想定されています。(FTAの専門家:ロジスティック)

このとき起こる典型的なズレは、

  • 「同じ製品なのに6桁のHSが変わる」
  • それに連動して、国別の8〜10桁コードや関税率・規制対象リストが変わる

にもかかわらず、現場では「昔からこれで通しているから」という理由で旧コードのまま申告してしまう、というタイプです。

3-2. 国によってHSの年版が違う時期のズレ

HS2028は「2028年1月1日発効」とされていますが、実際の各国の落とし込みはバラつきます。(FTAの専門家:ロジスティック)

  • 多くの先進国・地域(EU、米国、日本など)は2028年1月1日に合わせて改正
  • 一部の途上国などは、過去のHS2017/2022と同様、数年遅れて実施する可能性

その結果、しばらくの間は、

国A:HS2022ベース
国B:HS2028ベース

という「複数のHS年版が並走する時期」が発生します。(FTAの専門家:ロジスティック)

輸出側はHS2028ベースでコードを提示しているのに、輸入国の関税表はまだHS2022のまま…というケースでは、どちらの版を基準にすべきかのすり合わせが不可欠です。

3-3. FTA原産地規則・規制リストとのリンク切れ

FTAの品目別原産地規則(PSR)は、多くが特定のHS年版(例:HS2012/2017)を前提に書かれています。(FTAの専門家:ロジスティック)

HS2028への移行に合わせて、各国・各協定でもPSRを新しいHSにトランスポーズする作業が行われますが、その過程で:

  • HSコードが別の章・類に移る
  • それに伴い、「関税分類変更基準(CTCルール)」の判定結果が変わる

といったことが起こり得ます。

分類ズレの典型例:

  • 本来はHS2017ベースでCTC判定すべき協定を、誤ってHS2022やHS2028で判定してしまう
  • その結果、
    • 使えるはずの特恵を見逃す
    • 逆に、使ってはいけないのに特恵を使ってしまい、後の検認で否認される

いずれも、ビジネス側から見れば**「分類とHS年版のズレがFTAメリットを食い潰す」**パターンです。(FTAの専門家:ロジスティック)

また、輸出管理や危険物規制など、多くの規制リストもHSコードを参照しているため、ここでもズレが起きると「本当は許可が必要なのに抜けていた」「逆に不要な許可を取り続けていた」といったリスクになります。(FTAの専門家:ロジスティック)

3-4. 社内マスタ・システム間の多重管理によるズレ

現実のビジネスでは、1つの品目に対して、

  • Global HS6(国際共通・統計用)
  • 国別輸入コード(日本9〜10桁、EU CN/TARIC、US HTSなど)
  • 国別輸出コード
  • 協定別HS6(協定ごとにHS2012/2017/2022など)

といった**「多層構造のHSコード」が紐づいているのが普通**です。(FTAの専門家:ロジスティック)

この多重構造を整理せずに、単純に「HS2022→HS2028」に上書きしてしまうと、

  • ERPとGTMで違うコードが残り続ける
  • 拠点ごとに「自作のHS管理表」が乱立する
  • HS2022とHS2028の対応関係が分からなくなる

という、典型的な分類ズレ地獄に陥ります。


4. 分類ズレがビジネスにもたらす5つの影響

ここからは、経営・事業側の視点で分類ズレの影響を整理します。

4-1. 関税コスト・追徴リスク

もっとも分かりやすいのは、関税負担そのものの変動です。

  • 高関税品目やセーフガード対象品では、分類によって関税率が大きく変わるケースが珍しくありません。(FTAの専門家:ロジスティック)
  • 輸出・輸入側で認識がズレたまま申告すると、税関事後調査での更正・追徴、さらにはペナルティのリスクも高まります。

TariffTelなどの実務解説でも、誤分類は**「遅延と追加コストの主要因」**として繰り返し指摘されています。(TariffTel)

4-2. 納期遅延とサプライチェーンの乱れ

分類ズレがあると、税関での審査時間が伸びたり、書類差し替えのために貨物が止まったりします。

  • 納期遅延 → 顧客クレーム、契約ペナルティ
  • 在庫水準の乱高下 → 倉庫コスト増、販売機会ロス

特にHS2028直後の数年は、税関側も新旧コードの整合に敏感になり、**「怪しいものは止めて確認する」**傾向が強まる可能性があります。

4-3. FTAメリットの取りこぼし・否認

分類ズレとHS年版の取り違いは、FTA活用にも直撃します。(FTAの専門家:ロジスティック)

  • 使えるはずの協定で特恵を使っていなかった(メリットを取りこぼし)
  • 間違ったHS年版で原産性判定しており、後の検認で否認される(想定外の追徴+信用失墜)

HS2028では多くのFTAがPSRの改正・トランスポジションを行う見込みのため、「HS改正+FTA改正」が同時進行するタイミングでは特に注意が必要です。(FTAの専門家:ロジスティック)

4-4. 管理コスト・IT投資の増大

TariffTelの解説では、「数千〜数万品目の再分類を手作業で行うのは、非常に負担が大きい」と指摘されています。(TariffTel)

分類ズレを放置したままHS2028に突入すると、

  • 旧来のマスタ整理
  • HS2028へのマッピング
  • 国別8〜10桁までの展開
  • FTA・規制・インボイス・パッキングリストへの波及改修

が一気に重なり、IT部門・通関担当に過大な負荷がかかります。

逆に言えば、今のうちにHS2022ベースのマスタを整え、版管理の設計をしておけば、HS2028対応の追加コストを大きく抑えられるということでもあります。(FTAの専門家:ロジスティック)

4-5. 経営指標・データ分析の断絶

もう1つ見落とされがちな影響が、「データの連続性が切れる」ことです。

  • HS改正前後でコード体系が変わると、

相関表を使ってマッピングしておかないと、

「売上は伸びているのに、品目別統計上は減少して見える」
「どの改正がどの事業の関税コストに効いたのか分からない」

といった状態に陥り、経営の意思決定に使えるデータが弱くなる点も軽視できません。


5. 分類ズレを最小化するための実務アクション

では、ビジネス側は具体的に何をすればよいのでしょうか。
ここでは「マスタ」「プロセス」「人と組織」の3レイヤーで整理します。

5-1. まずは「現行HS2022の姿」を整える

HS2028の詳細が出る前にできる、最もリターンの大きい投資がこれです。(FTAの専門家:ロジスティック)

  • 売上上位・関税影響の大きい品目から優先して、
    • 拠点ごとのHSコード
    • 国別輸出入コード
    • 利用中のFTAとそのHS年版
      を棚卸しする
  • 「同じ製品なのに拠点ごとにHSがバラバラ」といったケースを洗い出し、
    現行版(HS2022)時点での“正しい姿”を揃える

この作業をサボると、HS2028への移行時に「そもそも出発点が揃っていない」という二重苦になります。

5-2. 相関表+シミュレーションで先に“当たり”をつける

WCOはHS2022とHS2028の**相関表(Correlation Tables)**を作成中であり、2026年以降に公表される予定です。これらはHS2028実施の「必須ツール」となることがWCO自身からも示されています。(WCOOMD)

公表後に行うべきは、

  1. 相関表を取り込み、自社SKUと一括照合する
  2. どの品目がどのHSに移る可能性があるかを一覧化
  3. その移動に伴う
    • 関税率
    • 特恵税率(FTA)
    • 規制・許認可
      への影響をシミュレーションする

ここまでやっておくと、「どの事業・どの顧客にどれだけインパクトがあるか」を経営に説明しやすくなります。

5-3. 「並行管理」を前提にしたマスタ設計

HS2028への移行で重要なのは、**「切り替え」ではなく「並行管理」**だと考えるべき点です。(FTAの専門家:ロジスティック)

1品目あたり、マスタ上に少なくとも次のスロットを用意するイメージです:

  • Global HS6(HS2022版)
  • Global HS6(HS2028版)
  • 国別輸入コード(日本/EU/米国など)
  • 国別輸出コード
  • 協定別HS6(RCEP用、日EU用…)+それぞれのHS年版

そして、それぞれに

  • 有効期間
  • 参照したHS年版・条文・注
  • 事前教示番号などの根拠情報

を持たせておきます。(FTAの専門家:ロジスティック)

こうしておけば、

マスタ上は「多重HS」だが、申告時にはシステムが国・用途に応じて適切な1つを自動選択する

という設計が可能になり、分類ズレを構造的に減らすことができます。

5-4. FTA・規制リストの「版管理」を明確にする

HS2028は、FTAと規制リストにとっても「大きな節目」になります。(FTAの専門家:ロジスティック)

実務的には、

  • 主要FTA(RCEP、日EU、CPTPPなど)ごとに、
    • 参照HS年版(2012/2017/2022 etc.)
    • HS2028への改正・適用時期
      を一覧化
  • 利用額の大きい品目については、
    • HS2028移行後も原産性を満たせるか
    • むしろ関税メリットが増えるのか/減るのか
      を事前に試算する

規制リスト(危険物・環境条約・デュアルユースなど)についても、HS参照が変わるタイミングで「漏れ」と「やり過ぎ」の両方が出ないよう総点検する必要があります。(FTAの専門家:ロジスティック)

5-5. 経営レポーティングに「HS2028対応KPI」を組み込む

HS2028対応は、担当部署だけのプロジェクトにしない方がうまく回ります。

例えば、経営レポートには次のようなKPIを入れておくと、経営層と同じ言語で議論しやすくなります。

  • HS2028でコード変更が発生するSKU数・売上比率
  • 関税コスト増減の見込み(主要国・主要事業別)
  • FTA利用額のうち、「HS2028でPSR改正対象」となる比率
  • HS2022⇔HS2028のマスタ整備進捗(〇%完了)

これにより、HS2028対応が「単なる通関の話」ではなく、関税コスト・FTA戦略・IT投資を含む経営テーマであることを共有できます。


6. ざっくりタイムライン:2025〜2028年に何をするか

最後に、ビジネス側のロードマップを簡単に整理しておきます。(FTAの専門家:ロジスティック)

〜2025年末:準備フェーズ

  • HS2028の基本情報・対象分野の把握
  • 社内プロジェクト体制の立ち上げ(貿易・調達・営業・IT・経理を巻き込む)
  • HS2022ベースでの品目マスタ棚卸し・ズレ解消

2026年:差分分析フェーズ

  • WCOが公表するHS2028条文・相関表の入手
  • SKUごとの新旧HS6桁マッピング
  • 関税率・FTA原産地・規制への影響分析
  • マスタ・システム改修の詳細設計開始

2027年:システム・実務検証フェーズ

  • ERP/GTM/原産地管理システムなどの改修・テスト
  • 国別8〜10桁コード(日本9桁、EU CN、US HTSなど)の追随状況確認
  • 主要仕向地でのテスト申告(通関業者とのドライラン)
  • 営業・物流・調達部門向けの社内教育

2028年以降:本番運用+継続的なHS改正マネジメント

  • HS2028での本番申告開始
  • 各国の運用差・FTA PSR改正への継続フォロー
  • すでに動き始めているHS2033モダナイゼーションを念頭に、
    「HS改正への対応力」を社内の標準機能にしていく。(AEB)

7. まとめ:分類ズレは「見えにくいが大きな経営リスク」

HS2028改正は、数字だけ見れば「6桁コードが少し動くだけ」に見えます。
しかし実際には、

  • 関税コスト
  • FTAメリット
  • 規制コンプライアンス
  • サプライチェーンの安定性
  • IT投資と運用コスト
  • そして経営指標としてのデータの連続性

といった領域に、じわじわと影響を及ぼします。

その起点にあるのが、今回取り上げた**「分類ズレ」**です。

  • 「1製品=1HSコード」の発想を捨て、
  • 国別・版別・用途別の**“多重HS”を前提としたマスタ設計**を行い、
  • 相関表とシミュレーションを活用して、影響を“見える化”する

これができれば、HS2028改正は「ただ耐えるイベント」ではなく、

・関税コスト最適化
・FTA活用の高度化
・マスタデータ整備と業務標準化

のチャンスにもなり得ます。


最後に

本記事の内容は、2025年11月時点で公表されているWCO資料や各国当局・専門ベンダーの情報をもとに整理しています。(UNSD)

ただし、最終的なHS2028条文・国別の実施スケジュール・各FTAのPSR改正内容は、必ず最新の公式情報で確認したうえで、自社の判断・対応方針を固めてください。

あなたの会社としては、

「HS2028対応=分類ズレをいかにコントロールするかの勝負」

だと捉えると、どこから手を付けるべきかが見えてくるはずです。