HSコードにおける「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」の意味と、部分品分類の実務

0. この文章で扱う範囲

HSコードの符番説明や部・類の注には、部分品の所属決定に関して「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」という表現が出てきます。実務では特に、第16部注2の注2(b)で問題になることが多いため、この文章では第16部注2を中心に、ビジネスマンが分類作業で迷いにくくなるように解説します。

1. この表現の意味を一言で言うと

「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」とは、部品の設計や仕様、一般的な流通実態から見て、使用先が特定の機器に強く結びついている状態を指します。

この表現が使われる場面の本質は次のとおりです。

  1. 部品が独立した品目として、別の見出しに明確に当たるなら、その見出しで分類する
  2. それ以外の部品で、特定の機器向けに専用または主要用途が偏っているなら、機器側の見出しや指定された部分品見出しへ寄せる
  3. それでも決まらない部品は、残余の部分品見出しに回す

この考え方は、第16部注2が定める判断順序そのものです。

2. 「もっぱら」と「主として」の違い

2.1 もっぱら

実務上は次のイメージです。

形状や接続方式、寸法、制御仕様などの客観的特徴から見て、ほぼその機器にしか使えない
他用途への転用が現実的に難しい
市場でもその機器用部品として取引されるのが通常

ポイントは、輸入者がどう使う予定かではなく、部品そのものの客観的性質で判断されることです。

2.2 主として

こちらは、他用途も理屈上はあり得るが、通常の用途や流通の中心が特定機器向けに偏っている、という状態です。

例えば次のような材料が根拠になりやすいです。

メーカーのカタログで対応機種が限定されている
互換性表で特定系列機器だけに適合する
販売実績や取引実態として特定用途が大半を占める
機器側の仕様に合わせた設計で、他用途だと過剰仕様または不適合になる

条文上、数値の閾値が固定で示されているわけではないため、証拠の質と量で説得力を作ることが重要になります。

3. 「特定の機器向け」を判断する時に見ているもの

分類実務で見られるのは、概ね次の3点です。

  1. 物としての特徴
    取付、嵌合、コネクタ、寸法公差、電気特性、通信プロトコル、耐環境仕様など
  2. 適合範囲
    どの機器に付くのか、同一見出しの複数機器に共通なのか、見出しを跨いで広く使えるのか
  3. 一般的用途と取引実態
    市場でどう呼ばれ、どう売られ、何向けが中心なのか

この3点が揃うほど、「もっぱら」または「主として」の判断が安定します。

4. 第16部注2を、実務の判断順に並べる

4.1 まず確認すること

第16部注2は、機械の部分品についての所属決定ルールですが、すべての部分品に無条件で当たるわけではありません。

注2の適用から除かれるものがあります。代表例として、次の見出しの物品の部分品は注2の対象外です。

第84.84項の物品の部分品
第85.44項から第85.47項までの物品の部分品

また、第16部注1で除外される「卑金属製のはん用性の部分品」などは、そもそも第16部の物品として扱わない整理になります。

4.2 注2(a) 部品が第84類または第85類の別見出しに当たるか

注2(a)は、先に独立の見出しがあるものを優先するルールです。

部品であっても、それ自体が第84類または第85類のいずれかの見出しに明確に該当するなら、原則その見出しに分類します。

ただし、注2(a)には例外として、次の見出しは除外されています。ここは実務上、非常に重要です。

第84.09項、第84.31項、第84.48項、第84.66項、第84.73項、第84.87項
第85.03項、第85.22項、第85.29項、第85.38項、第85.48項

この例外に入る見出しは、典型的に部分品を収容するための見出しなので、注2(a)で機械一般の独立見出しに吸収させず、注2(b)や注2(c)の枠組みに乗せる設計になっています。

実務メモ
専用品だからといって、必ず機械側の部分品見出しへ行くわけではありません。まず注2(a)で、部品そのものの独立見出しがあるかを確認することが基本動作です。

4.3 注2(b) 「もっぱら、または主として使用される」部品の帰属

注2(a)に当たらない部品について、次の判断をします。

特定の機械、または同一見出しの複数の機械に、もっぱらまたは主として使用されるか
ここでいう機械には、第84.79項または第85.43項の機械も含まれます

該当する場合、原則として次のいずれかに分類します。

その機械の見出し
または、次の部分品見出しのうち該当するもの
第84.09項、第84.31項、第84.48項、第84.66項、第84.73項
第85.03項、第85.22項、第85.29項、第85.38項

そして、注2(b)には重要なただし書きが2つあります。ここは誤記や脱落が起きやすいので、社内資料では必ず明記することをおすすめします。

第85.17項の物品と、第85.25項から第85.28項までの物品に共通して主として使用する部分品は、第85.17項へ
第85.24項の物品に、もっぱらまたは主として使用する部分品は、第85.29項へ

このただし書きは、注2(b)の一般ルールよりも優先して分類先を指定する性格のものです。

4.4 注2(c) それ以外の残余部分品

注2(c)は、注2(a)にも注2(b)にも当てはまらない部品の行き先を、見出し番号で明示しています。

原則として、次の見出しのうち該当するものへ分類します。

第84.09項、第84.31項、第84.48項、第84.66項、第84.73項
第85.03項、第85.22項、第85.29項、第85.38項

それでも該当がない場合は、次のいずれかに分類します。

第84.87項 または 第85.48項

実務上は、注2(c)を「残余の部分品項へ」とだけ書くと誤解が生まれやすいので、少なくとも見出し番号の並びまで記載しておくのが安全です。

5. 社内で迷いがちなポイントと、実務のコツ

5.1 予定用途だけで「主として」と言わない

輸入者の社内予定や販売計画は補助情報にはなりますが、それだけだと根拠として弱くなります。仕様と客観的適合性を中心に、説明を組み立てるほうが安定します。

5.2 同一見出しの複数機械に使う場合は整理しやすい

注2(b)は、特定の機械だけでなく、同一の見出しの複数機械に主として使う部品も想定しています。ここは材料を集めやすい領域です。

5.3 見出しを跨いで広く使える部品ほど、注2(b)に乗りにくい

汎用性が高く、複数の見出しの機器に幅広く使える場合、特定機器向けの結びつきが弱くなり、注2(b)で機械側へ寄せる論拠が薄くなります。その場合は注2(a)で独立見出しに当たらないか、注2(c)の行き先を丁寧に検討します。

6. 立証資料のそろえ方

分類担当として、最低限そろえたい資料は次のとおりです。

  1. 仕様書
    寸法、材質、電気特性、通信規格、耐熱など
  2. 図面や写真
    取付部、コネクタ、嵌合形状、機器側との関係が見えるもの
  3. カタログや取説
    対応機種、用途説明、交換部品の扱いが分かる記載
  4. 互換性表
    どの機種に適合するかを一覧で示せる資料
  5. 取引実態の補強
    販売実績の傾向、用途別の販売構成、主要顧客の業界など

7. 根拠となる規定

分類の大原則は、見出しの文言と部・類の注に基づいて決める、という考え方です。 (wcoomd.org)
第16部の部分品については、第16部注2が、判断順序と分類先の見出し番号まで含めてルール化しています。

免責事項

本文章は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別取引の品目分類、課税関係、申告の適否や結果を保証するものではありません。最終的な分類は、対象貨物の実物、仕様、提示態様、適用される通則および部・類の注等に基づき、必要に応じて税関の事前教示制度の利用や専門家への相談を行った上でご判断ください。

HS2022 第53類:その他の植物性紡織用繊維及びその織物並びに紙糸及びその織物★(Other vegetable textile fibres; paper yarn and woven fabrics of paper yarn)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 亜麻(フラックス)繊維(生・レッティング済・破砕/スカッチ/ハックル等の「精紡前」まで)と、そのトウ・くず(5301)
    • 大麻(True hemp / Cannabis sativa L.)繊維(精紡前)と、そのトウ・くず(5302)
    • ジュート等の靭皮繊維(亜麻・大麻・ラミー以外)と、そのトウ・くず(5303)
    • ココやし(コイヤ)、アバカ、ラミー、サイザル等の「その他の植物性紡織用繊維」(精紡前)と、そのトウ/ノイル/くず(5305)
    • 紙のストリップを撚って作る「紙糸」(5308、通常は5308.90側で扱われます)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 綿(コットン)・綿織物:第52類(第53類ではありません)
    • 「ひも・綱・ロープ」として扱うべき太い糸(線密度や構成で判定):第56類 5607(“twine, cordage, ropes and cables”)
    • 紙を単に折り重ねたストリップ(撚っていない):第48類(紙製品側)
    • 紙のストリップを交錯(組物・編組的)させた「組物状」のもの:46.01(第46類)
    • 織物が「裁断・縫製済み=製品(made up)」になっているもの:第63類など(部注の“made up”定義で移動)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 形状・段階:**繊維(精紡前)**か、か、織物か(5301〜5305/5306〜5308/5309〜5311)
    2. 糸の太さ・構成:**糸(Ch.53)**か、**ひも・綱(5607)**か(線密度/仕上げ/撚り本数等)
    3. 紙系:**紙糸(撚って糸)**か、単なる紙ストリップ/紙製品か、**紙ストリップの組物(46.01)**か
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 大麻(ヘンプ)関連:HS分類(5302/5308など)とは別に、日本の薬物規制・取扱規制の確認が必須で、誤認すると通関差止・行政対応につながり得ます。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1:見出し文言(例:Flax yarn / paper yarn / woven fabrics)と部注(第11部注)でまず決めます。第53類は「素材(植物繊維/紙)」と「形状(繊維・糸・織物)」が軸です。
    • GIR6:号(6桁)では、特に
      • 5301/5302/5303の「生・レッティング」vs「その他」、
      • 5306/5307の「単糸」vs「マルチプル/ケーブル」、
      • 5309の「亜麻85%」閾値、
      • 5310の「漂白してない」
        が実務分岐になります。
    • 混紡・混用が出たら、まず第11部注(混合繊維の取扱い=重量優先など)を当ててから該当章・項を決めます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 植物名(可能なら学名)と繊維の種類(亜麻/ジュート/ラミー/コイヤ/サイザル等)
    • 加工状態(生、レッティング、破砕・スカッチ・ハックル、精紡済み/未)
    • 糸なら:線密度(decitex)、仕上げ(polished/glazedの有無)、撚り本数(ply)・編組の有無(braidedかどうか)
    • 織物なら:繊維混率(重量%)、漂白/染色/プリントの状態

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:それは「繊維素材」か「糸」か「織物」か「出来上がり製品(袋など)」か?
    • 繊維(精紡前)→ Step2
    • 糸 → Step3
    • 織物 → Step4
    • 裁断・縫製済み(made up)→ 第63類等を優先検討
  • Step2(繊維):亜麻(5301)/大麻(5302)/ジュート等靭皮(5303)/その他植物繊維(5305)へ
    • サイザル等は5305側で扱うのが現行(HS2022に5304は欠番)。
  • Step3(糸):亜麻糸(5306)/ジュート糸(5307)/その他植物繊維の糸+紙糸(5308)
    • ただし、線密度等の条件で“twine/rope”に当たると56.07へ移動します(例:亜麻/大麻の太糸、3本撚り以上のコイヤ等)。
  • Step4(織物):亜麻織物(5309)/ジュート等の織物(5310)/その他植物繊維・紙糸の織物(5311)
    • 紙ストリップを交錯させた「組物状(plaiting)」は46.01へ(5311ではない)。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第53類(紙糸) vs 第48類(折り重ねただけの紙ストリップ)
    • 第53類(糸) vs 第56類(ひも・綱・ロープ:線密度/構成で判定)
    • 第53類(織物) vs 第63類(出来上がり品:made up)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5301亜麻(精紡前)+トウ/くず亜麻の生繊維、レッティング済亜麻、亜麻トウ「精紡前」まで。糸になれば5306。
5302大麻(True hemp, Cannabis sativa L.)繊維(精紡前)+トウ/くずヘンプ繊維(生/レッティング)規制(大麻関連)はHSと別軸で必確認。
5303ジュート等の靭皮繊維(亜麻/大麻/ラミー除く)ジュート、ケナフ等の繊維(精紡前)「麻」名称が紛らわしい(ケナフ等は5303側の例が多い)。
5304(欠番)HS2022では使用しない([53.04])(該当なし:旧版でサイザル等に使われた時期あり)古い資料で5304が出ることがありますが、HS2022では欠番。履歴は後述(§8)。
5305コイヤ/アバカ/ラミー等+その他植物繊維(精紡前)コイヤ繊維、アバカ、ラミー、サイザル、アロエ繊維など第14類に行く未加工葉(アルファ等)は除外(加工度が鍵)。
5306亜麻糸リネン糸(単糸/双糸/ケーブル)太さ等で56.07に飛ぶ場合あり(部注)。
5307ジュート等(5303)の糸ジュート糸、ケナフ糸同上(56.07判定に注意)。
5308その他植物繊維の糸/紙糸コイヤヤーン、ヘンプヤーン、紙糸紙糸は「紙ストリップを撚ったもの」。単に折っただけは48類。
5309亜麻織物リネン生地(衣料・寝具・テーブルリネン等)亜麻重量比85%が号分岐。漂白/染色区分あり。
5310ジュート等(5303)の織物麻袋用ジュート生地、基布漂白してない/その他。出来上がり袋は63類検討。
5311その他植物繊維の織物/紙糸織物ラミー織物、紙糸織物、包装用生地紙ストリップの組物(46.01)は除外。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 原料状態:生/レッティング(5301.10、5302.10、5303.10) vs その他加工済(5301.21/29、5302.90、5303.90)
    • トウ・くず:5301.30 など(用途が充填/製紙でも含む)
    • 糸の形態:単糸 vs マルチプル/ケーブル(5306.10/20、5307.10/20)
    • 織物の組成閾値:亜麻織物は「亜麻85%以上」かどうか(5309)
    • 漂白区分:5309や5310の「unbleached/bleached/other」は第11部の定義で判断(“unbleached/bleached woven fabric”等)
    • 糸 vs 綱(56.07):線密度・仕上げ・撚り本数等で“twine/rope”扱いになると章が変わる
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 5301.10(生/レッティング亜麻) vs 5301.21/29(破砕・スカッチ等) vs 5301.30(トウ/くず)
      • どこで分かれるか:加工工程(retted / broken / scutched / hackled)と、トウ/くずかどうか
      • 判断に必要な情報:工程フロー、写真(繊維束/トウ)、品名に「tow」「waste」表記の有無
      • 典型的な誤り:「トウ」を単に“未加工繊維”として5301.10側に寄せてしまう
    2. 5308(紙糸) vs 第48類(紙ストリップ)
      • どこで分かれるか:紙を“撚って糸にしているか”。単に折り重ねただけは紙製品扱い
      • 判断に必要な情報:製造方法(twist/rollingの有無)、サンプル写真、用途(織物用糸か)
      • 典型的な誤り:紙バンド(折り畳み)を「紙糸」と呼んで5308に入れる
    3. 5308(糸) vs 5607(ひも・綱)
      • どこで分かれるか:第11部注で“twine/rope”に該当する線密度等か(例:亜麻/大麻の閾値、3本撚り以上のコイヤ等)
      • 判断に必要な情報:線密度(decitex)、polished/glazedの有無、ply数、金属補強の有無
      • 典型的な誤り:太いヘンプ糸を5308のまま申告(実は5607)
    4. 5309(亜麻85%以上) vs 5309(85%未満)
      • どこで分かれるか:重量比85%
      • 判断に必要な情報:混率表(重量%)、試験成績書、仕様書(gsm/組成)
      • 典型的な誤り:「見た目リネン」で85%超と決め打ち
    5. 5311(紙糸織物) vs 46.01(紙ストリップの交錯品)
      • どこで分かれるか:素材が“紙糸(yarn)”として織られた織物か、紙ストリップを交錯させた組物か
      • 判断に必要な情報:原糸が「紙糸」か(撚り有無)、組織(織物/組物)、製法資料
      • 典型的な誤り:紙ストリップの組物マットを5311で申告

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 混用繊維(2種以上):第11部注2により、基本は「重量が最も多い繊維」で分類。優劣がつかない場合は、該当見出しのうち番号が後ろのもの。
    • 糸が“ひも・綱”になる基準(部注3):亜麻/大麻/コイヤ/その他植物繊維は、線密度・仕上げ・ply数等で“twine/rope”扱いになり、5607へ。例:
      • 亜麻または大麻:polished/glazedで1,429 decitex以上、または未仕上げで20,000 decitex超
      • コイヤ:3本撚り以上
      • その他植物繊維:20,000 decitex超
      • 金属糸で補強したもの 等
    • made up(部注7・8):裁断・縫製済み等は、Ch.50〜55(=繊維・糸・織物)から外れ、Ch.56〜63側で扱うのが原則。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:ヘンプ糸でも、線密度が大きく“綱”判定になると、5308ではなく5607(税率・規制・原産地規則の前提が変わる)
    • 例:ジュート生地(5310)を裁断して縫製した「袋」なら、織物ではなく出来上がり製品側(第63類)を検討
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 太糸・多本撚り → 5607(twine/rope)
    • 裁断・縫製済み → 56〜63(made up)
    • 紙ストリップ(撚りなし/折り重ね) → 第48類

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • HS2022の第53類は、類注(Chapter Notes)そのものは置かれておらず、実務上は見出し文言と第11部注で分岐する作りです(条文構造上)。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「unbleached/bleached/printed」等は第11部の定義を使用します(織物区分の根拠)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 紙糸の除外(折り重ね紙=48類、紙糸の組綱=56.07 等)は、第53類の解説上も明示されています。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。
※第53類は類注自体が薄いので、第11部注(Section Notes)起因の分岐を中心に整理します。

  • 影響ポイント1:混紡・混用(第11部注2)で“素材章”がズレる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):繊維混率(重量%)、複合素材の内訳(例:亜麻80%+綿20%)
    • 現場で集める証憑:仕様書、混率証明、試験成績書(繊維鑑別)、BOM
    • 誤分類の典型:外観だけで「リネン(5309の85%以上)」と判断し、実際は85%未満だった
  • 影響ポイント2:“糸”が“綱(5607)”に飛ぶ(第11部注3:線密度等)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):decitex(線密度)、polished/glazedの有無、ply数(特にコイヤ)、金属補強の有無
    • 現場で集める証憑:メーカー仕様(線密度/番手換算表)、試験データ、サンプル写真、加工工程
    • 誤分類の典型:「ヘンプヤーン」と呼ばれているため5308で申告したが、実測線密度で5607判定
  • 影響ポイント3:織物が“made up”扱いでCh.53から外れる(第11部注7・8)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):裁断形状(四角形以外)、縫製/ヘム処理、完成品としての使用可能性
    • 現場で集める証憑:製品写真、寸法図、縫製仕様、出荷形態(ロールか完成品か)
    • 誤分類の典型:ジュート布を「袋完成品」なのに5310で申告
  • 影響ポイント4:紙系(紙糸/紙ストリップ/紙の組物)で章が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):撚って糸にしているか、単なる折り重ねか、紙ストリップ交錯品か
    • 現場で集める証憑:製造方法説明、原材料(紙ストリップ幅・撚り工程)、サンプル
    • 誤分類の典型:紙ストリップ交錯品を「紙糸織物」と誤認し5311へ

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:日本語の「麻」表記だけで、5302(大麻)/5303(ジュート等)/5305(ラミー等)を取り違える
    • なぜ起きる:商習慣名(○○hemp、○○flax)が多く、植物学的な区別が曖昧
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):見出しは「True hemp(Cannabis sativa L.)」など植物を特定しています。
    • 予防策:
      • 確認資料:学名/原料植物、繊維採取部位(靭皮/葉など)、工程図
      • 社内質問例:「この“hemp”はCannabis sativa L.ですか?Kenaf/Agave系では?」
  2. 間違い:サイザル等を「5304」として扱う(古いコード参照)
    • なぜ起きる:旧版のHSや民間サイト情報が残っている
    • 正しい考え方:HS2022の条文では[53.04]が欠番で、サイザル等は5305の説明例として扱われます。
    • 予防策:HS版(HS2022)を明示した一次資料でコード表を引く/旧コードの履歴は相関表で確認
  3. 間違い:紙ストリップ(折り重ね)を紙糸(5308)に入れる
    • なぜ起きる:「紙糸」「紙紐」の呼称が製法を反映しないことがある
    • 正しい考え方:紙糸は紙ストリップを“撚る/ローリング”して糸化したもの。折り重ねは48類扱い。
    • 予防策:製造工程の有無(twist/rolling)をサプライヤーに確認し、写真/動画/工程図を保存
  4. 間違い:太いヘンプ/亜麻糸を5306/5308のまま申告(実は5607)
    • なぜ起きる:線密度(decitex)での“綱判定”を見落とす
    • 正しい考え方:第11部注3にある線密度・仕上げ・ply数で“twine/rope”扱いに変わります。
    • 予防策:仕様書にdecitex/番手/ply/仕上げ(polished/glazed)を必須項目として入れる
  5. 間違い:紙糸を編んだ綱(braided)を5308に入れる
    • なぜ起きる:「紙糸だから第53類」と決め打ち
    • 正しい考え方:紙糸自体は5308でも、**組んだ綱(braided cordage)**は除外され得ます(56.07等)。
    • 予防策:編組(braided)か単なる撚り合わせかを図面・現物で判定
  6. 間違い:亜麻織物(5309)で「85%閾値」を見ずに号を決める
    • なぜ起きる:混率が外観で分からない/BOMがない
    • 正しい考え方:5309は亜麻含有量85%で号が分かれます。
    • 予防策:混率証明/試験成績書をインボイス・仕様書と紐づけて保管
  7. 間違い:ジュート織物(5310)を「袋(完成品)」と同列に扱う
    • なぜ起きる:ロール生地と縫製済み袋の区別が曖昧
    • 正しい考え方:裁断・縫製済み等は“made up”でCh.53から外れる可能性。
    • 予防策:出荷形態(ロール/裁断/縫製)を品名・仕様書に明記
  8. 間違い:アルファ/エスパルト等の「未加工葉」を5305に入れる
    • なぜ起きる:「繊維っぽい」見た目で判断
    • 正しい考え方:紡織用途を示す加工(ロール、破砕、コーム等)をした場合のみ5305側に来る趣旨(未加工は第14類側)。
    • 予防策:加工状態の証憑(工程、写真)を入手し、用途(紡績/ブラシ/詰物等)を確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。第53類は「繊維→糸→織物」ステージが明確で、HSの取り違いがそのままPSRの条文適用違いになります。
  • よくある落とし穴:
    • 材料側のHS(例:植物繊維=5305)と、最終製品側(例:織物=5311、袋完成品=Ch.63)の取り違い
    • “糸”と“綱(5607)”の境界(線密度)でPSRの見出しが変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 例(代表例として):
    • **CPTPP(TPP11)**の繊維・衣類のPSR(Annex 4-A)は「HS2012分類」で提示されています。
    • RCEPのPSR(Annex 3A)は「HS2012版に基づく」旨が明記されています。
  • 日本税関のPSR検索画面でも、EPAごとに採用HS版(HS2002/2007/2012/2017…)が異なるため、協定が採用するHS版で検索するよう注意喚起されています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定本文のHS版と、輸入申告で使う最新HS(HS2022)がズレる場合、**協定側PSRをHS2022へ読み替え(transposed PSR)**して運用することがあります。例えばRCEPについて、日本の外務省は「原産地証明に記載するHSコード等はHS2022へ転置したPSRに基づく」旨を注記しています(適用開始日も明記)。
    • 転置の考え方(一般論)はWCOのガイダンスも参照すると安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須データ:
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • 「糸/綱」境界の根拠データ(decitex、ply、仕上げ)
    • 織物の混率(重量%)と仕上げ状態(漂白/染色等)
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 協定・運用により異なるため、税関・商工会議所等のガイドに沿って、根拠資料(仕様書・試験成績・工程)を保存

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(第53類のHS6桁レベル)5301〜5311([53.04]欠番含む構造も同様)見出し/号の体系は同一HS付番自体の見直し対応は基本不要(ただし国内コードや協定側HS版には注意)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料:
    • WCOのHS2022第53類(項・号一覧)と、WCOのHS2017第53類(項・号一覧)を突合し、5301〜5311の見出し・号構造が一致することを確認しました。
  • したがって、**HS2017→HS2022の第53類は「変更なし」**と整理します(HS6桁ベース)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第53類はHS2017→HS2022では安定していますが、**古い版(HS2002→HS2007)で大きな整理(5304の消滅)**があります。

版の流れ主な追加・削除・再編旧コード→新コード(または行き先)実務メモ
HS2002→HS20075304(サイザル等)を含む複数の細分が整理され、5305.00へ統合(低取引量を理由とする削除・統合の趣旨が相関資料で説明)(例)HS2002の5304.10/5304.90 等 → HS2007の5305.00 に統合旧資料で「5304」を見た場合は、HS版を確認して読み替えが必要
HS2007→HS2012大きな再編なし(5305.00のまま)HS2012でも[53.04]は欠番構造
HS2012→HS2017大きな再編なし
HS2017→HS2022大きな再編なし

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):紙糸と紙ストリップの取り違い
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):紙を折っただけのストリップを「紙糸」として5308申告(実際は48類側)
    • 起きやすい状況:品名が“paper yarn”“paper cord”で統一されていない
    • 典型的な影響:分類更正、必要書類追加、検査・遅延
    • 予防策:製法(撚り/折り)を仕様書に明記し、写真を添付
  • 事例名:太いヘンプ糸を“糸(5308)”で申告
    • 誤りの内容:第11部注3の“twine/rope”条件に該当するのに5607へ移していない
    • 起きやすい状況:線密度データが無い/番手換算の誤り
    • 典型的な影響:追加納税、原産地規則の再計算、分類照会対応
    • 予防策:decitex/ply/仕上げ情報を仕入先から取得し、申告資料に添付
  • 事例名:紙ストリップ交錯品(46.01)を紙糸織物(5311)で申告
    • 誤りの内容:53.11の除外(紙ストリップの交錯品は46.01)を見落とし
    • 起きやすい状況:マット/帽体/バッグ材料など「織物っぽい」製品
    • 典型的な影響:分類更正、取引先の関税コスト見直し
    • 予防策:原糸が紙糸(撚りあり)か、紙ストリップの組物かを製法で判定
  • 事例名:ジュート織物ロールと袋完成品の混同
    • 誤りの内容:縫製済み袋を5310(織物)として申告(made upでCh.63側の可能性)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が“jute bag cloth”など曖昧
    • 典型的な影響:修正申告、検査強化、納期遅延
    • 予防策:出荷形態(ロール/裁断/縫製)を品名欄に必ず入れる

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 植物検疫は、原則「病害虫が付着する可能性のある植物は検査対象」という考え方で運用され、高度加工品等は対象外となる整理があります(ただし個別判断)。
    • 例えば、中古の植物由来包装材などは別途「検疫指定物品」として扱われ得るため、ジュート袋などの用途・中古/新品・汚れ(土壌付着)には注意が必要です。
    • 確認先:植物防疫所(MAFF)/輸入港での検査手続(必要に応じて輸出国の植物検疫証明書)
    • 実務での準備物(一般論):成分/原料植物、加工工程、用途、梱包状態、汚れ・土壌付着の有無、必要なら輸出国側証明
  • その他の許認可・届出(大麻関連:該当する場合)
    • 第53類には「True hemp(Cannabis sativa L.)」の繊維・糸が含まれますが、HS分類と国内規制(薬物規制・栽培規制)は別物です。
    • 2024年12月12日に、いわゆる大麻取締法等の改正法が施行され、法体系・定義(例:大麻草=Cannabis sativa L.、大麻の定義等)が整理されています。
    • “種子や成熟した茎”およびその製品の扱い(除外規定等)も条文・通知で細かく整理されているため、ヘンプ繊維製品の輸入は、成分・部位・形状・含有成分等を含めて所管官庁の最新情報で確認してください。
    • 確認先:厚生労働省(医薬局等の通知・Q&A)、税関の他法令確認窓口(必要に応じて専門家・事前相談)
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 第53類の一般的な繊維・織物は該当しにくい一方、用途・特殊加工(軍用資材等)で別途規制対象となり得るため、用途と仕様を確認してください(一般論)。

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 原料植物(可能なら学名)/繊維種(亜麻・ジュート・ラミー・コイヤ・紙等)
    • 加工状態(精紡前/糸/織物/完成品)、工程図、写真
    • 糸の場合:decitex、ply、polished/glazed、金属補強の有無
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • “糸→綱(5607)”の判定(第11部注3)
    • “made up”でCh.53から外れないか(第11部注7・8)
    • 紙系は48類・46.01との境界を再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 「roll生地」か「縫製済み」かを品名に明記
    • 混率(重量%)・漂白/染色状態の記載
    • 必要に応じてサンプル写真・仕様書添付
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の採用HS版でPSR確認(税関の注意喚起に従う)
    • トランスポジション(HS2022読み替え)の要否(例:RCEP)
    • BOM、原価、工程、材料HS、証憑保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 植物検疫:加工度・中古/新品・土壌付着等で要否判断(植物防疫所へ)
    • ヘンプ関連:成分・部位・形状等の規制適合性を所管官庁情報で確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022:Chapter 53(参照日:2026-02-22)
    • WCO HS Nomenclature 2022:Section XI Notes(参照日:2026-02-22)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説」第53類(参照日:2026-02-22)
    • 税関「品目別原産地規則」検索画面(HS版注意喚起)(参照日:2026-02-22)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • CPTPP(TPP)Annex 4-A(Textiles and Apparel PSR:HS2012表記)(参照日:2026-02-22)
    • RCEP Annex 3A(PSR:HS2012に基づく旨の記載)(参照日:2026-02-22)
    • 外務省:PSRのHS2022転置に関する注記(参照日:2026-02-22)
    • WCO:Preferential ROOのTechnical Updateガイド(参照日:2026-02-22)
  • 規制・検疫(日本)
    • 農林水産省 植物防疫所:輸入植物検疫の考え方(対象外の考え方含む)(参照日:2026-02-22)
    • 税関通達(輸入植物等の通関取扱い・検疫指定物品の考え方等)(参照日:2026-02-22)
    • 厚生労働省:大麻関係法改正の施行通知(参照日:2026-02-22)
    • 警察庁:改正内容の説明資料(施行日・除外規定等)(参照日:2026-02-22)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第52類:綿及び綿織物(Cotton)

本文での用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 実綿・繰綿(カード/コーム前の原綿)(5201)
    • 綿のくず(糸くず・反毛(ガーネット)を含む)(5202)
    • カード綿・コーム綿(5203)
    • 綿の縫糸(5204)
    • 綿糸(縫糸以外)(5205〜5207:小売用か否か、綿比率で分岐)
    • 綿織物(平織・綾織など、デニム含む)(5208〜5212)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • コットンリンター(綿実の短繊維)第14類(例:1404)
    • 脱脂綿・ウォッディング:3005 または 5601 へ(用途・形態で)
    • 不織布・フェルト:第56類(例:5603 不織布)
    • メリヤス(ニット)生地:第60類
    • タオル地(テリー):5802 など(織物でも特掲が優先)
    • 樹脂・ゴムで含浸/被覆/積層したもの:第39類/40類または第59類へ飛ぶ可能性(状態次第)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 形態が「繊維」か「糸」か「織物」か(5201/5203/5204〜5207/5208〜5212で大きく分岐)
    2. (織物)綿の重量比率(85%閾値)と、混用繊維が主に人造繊維か(5208/5209 vs 5210/5211/5212)
    3. (糸)縫糸か/小売用にした糸か(5204 vs 5205-5207)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • FTA/EPAのPSR(品目別規則)適用:HSを誤ると原産性判断が崩れ、追徴・否認のリスク
    • デニム(“商業名デニム”)の思い込み:HS上の「デニム」定義に合わず、5209.42/5211.42を外すことがある

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し文言+注):まず「繊維・糸・織物」のどれか、そして**部注(第11部注)で除外・定義を確認します。特に混用繊維(綿+化繊など)では第11部注2(混用の考え方)**が強く効きます。
    • GIR6(6桁の決定):織物は「漂白してない/漂白/浸染/異色糸/なせん」など加工状態、さらに「平織・綾織」「重量g/㎡」等で6桁が分かれます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 材質(綿%、他繊維%)
    • 状態(原綿・カード綿・糸・織物)
    • 加工状態(漂白・染色・プリント等)
    • 規格(糸番手/デシテックス、織物重量g/㎡、織組織)
    • 包装形態(糸が“小売用”か)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:これは「綿」関連か?
    • 綿が主素材でも、コットンリンターは第14類(第11部注で除外)に飛びます。
  • Step2:形態で分岐
    • 繊維:カード/コーム前=5201、カード/コーム後=5203、くず=5202
    • :縫糸=5204、それ以外=5205〜5207(綿比率・小売用で分岐)
    • 織物:5208〜5212(綿比率85%、混用繊維、重量200g/㎡、加工状態で分岐)
  • Step3:6桁で最終分岐
    • 糸:単糸/双糸、コームの有無、太さ(デシテックス)
    • 織物:平織/綾織、重量、加工状態(漂白・染色・プリント等)、デニム定義
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第52類(綿織物) vs 第60類(ニット):編んでいるか、織っているか
    • 第52類 vs 第56類(不織布・わた等):織物構造か、繊維を結合したシートか
    • 第52類 vs 第59類/第39類(樹脂被覆等):被覆の有無・程度で飛ぶ

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5201実綿・繰綿(カード/コーム除く)原綿ベール、繰綿リンターは第14類。カード/コーム後は5203へ。
5202綿のくず(糸くず・反毛含む)紡績くず、糸くず、反毛製造工程で出る“くず”や反毛。
5203カード綿・コーム綿スライバー、コーム綿5201との違いは「カード/コーム工程の有無」。
5204綿の縫糸(小売用含む)ミシン糸、縫製用糸**縫糸の定義(仕上げ・Zより等)**を注で確認。
5205綿糸(縫糸以外)綿85%以上・小売用でない工業用綿糸、織布用糸綿比率≥85%&小売用でない。太さ(デシテックス)等で細分。
5206綿糸(縫糸以外)綿85%未満・小売用でない綿/ポリエステル混紡糸(業務用巻)綿<85%&小売用でない。
5207綿糸(縫糸以外)小売用にしたもの手芸用糸、毛糸玉(綿混)「小売用にしたもの」定義は第11部注4で判定。
5208綿織物(綿85%以上、≤200g/㎡)ブロード/ローン系、薄手綿平織重量200g/㎡が閾値。加工状態(漂白等)で細分。
5209綿織物(綿85%以上、>200g/㎡)厚手ツイル、デニム生地**5209.42「デニム」**は定義あり。
5210綿織物(綿<85%、主に化繊混、≤200g/㎡)綿/ポリ混の先染め平織など第11部注2で“綿織物扱い”になった上で条件充足が必要。
5211綿織物(綿<85%、主に化繊混、>200g/㎡)綿/ポリ混の厚地ツイル等5210の>200g/㎡版。デニム(5211.42)定義あり。
5212その他の綿織物綿混で5210/5211に当てはまらない織物他項に特掲されない混用織物の受け皿。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 綿重量比率:85%閾値(糸:5205/5206、織物:5208/5209/5210/5211)
    • 織物重量:200g/㎡閾値(5208 vs 5209、5210 vs 5211、5212も≤200/>200で分岐)
    • 織組織:平織 vs 3枚/4枚綾(ツイル)(織物の6桁で分岐)
    • 加工状態:漂白してない/漂白/浸染/異なる色糸/なせん(プリント)
      ※これらの用語定義は第11部の号注(糸の状態定義等)も参照すると安全です。
    • (糸)小売用にしたもの:コーン・ボール・かせ等の形態と重量閾値で判断
    • デニム定義:5209.42/5211.42は“商業名”でなく定義で判定
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 5204(縫糸) vs 5205〜5207(縫糸以外の糸)
      • どこで分かれるか:縫糸は「縫糸用の仕上げ」「最後のZより」「糸巻重量1kg以下」など注の定義で判定
      • 判断に必要な情報:用途表示だけでなく、撚り方向・仕上加工・糸の構成(双糸等)・包装重量
      • 典型的な誤り:「ミシン糸っぽい」だけで5204に寄せる
    2. 5205/5206(小売用でない糸) vs 5207(小売用)
      • どこで分かれるか:「小売用にした糸」の定義(巻き形態+重量閾値)
      • 判断に必要な情報:糸の形態(コーン/ボール/かせ等)、1個当たり重量(芯含む)
      • 典型的な誤り:EC向け小分けでも重量が基準を超えており“小売用”扱いにならないケース
    3. 5208(≤200g/㎡) vs 5209(>200g/㎡)(綿85%以上の織物)
      • どこで分かれるか:面積重量(g/㎡)
      • 判断に必要な情報:試験成績書(g/㎡)、規格表、サンプル計量
      • 典型的な誤り:ロットによりg/㎡が境界付近で変動しているのに、固定コードで申告
    4. 5209.42 / 5211.42(デニム) vs “その他のツイル”
      • どこで分かれるか:デニムは「異なる色の糸」「3枚/4枚綾」「たて糸は同一色」「よこ糸は未漂白/漂白/灰色浸染/淡色」等の要件
      • 判断に必要な情報:組織図、たて/よこ糸の色・染色条件、現物(表裏)
      • 典型的な誤り:「ジーンズ用=デニム」と決め打ち(黒デニム風、ストレッチ混などで外れることがある)
    5. (日本の国内コードの注意)“ポプリン/ギンガム”の扱い
      • 6桁は同じでも、国内コードで「ギンガム」「ポプリン」等に細分されることがあります。国内例規で定義・規格(糸番手、密度等)が示されています。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第11部注1(c):コットンリンター(第14類)は第11部(=第50〜63類の大枠)から除外
    • 第11部注2:混用繊維(第50〜55類の対象)を、原則「最大重量の繊維」基準で扱う(同率なら番号が後の項へ)
    • 第11部注4:「糸の“小売用にしたもの”」の判定基準(巻き形態・重量閾値)
    • 第11部注5:「縫糸」の定義(仕上加工・Zより等)
    • 第11部注7:「製品にしたもの(made up)」の定義(裁断形状・縁処理等)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例)**綿90%/ポリエステル10%の先染め格子柄平織(170g/㎡)**は、混用でも綿が優位なら第52類側に来ます(この“第52類側に来る”判断に第11部注2が効きます)。
    • 例)同じ綿糸でも、小分けのボール巻で重量が閾値以下なら「小売用」で5207に寄る、など。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • コットンリンター(第14類へ)
    • 樹脂/ゴムの含浸・被覆等(第39類/第40類の物品として扱われる場合がある)
    • 製品にしたもの(made up)(反物ではなく第63類等へ)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第52類は、実質的に**「号注(Subheading Note)」として“デニム”定義**が置かれているのが重要点です。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • デニム(5209.42 / 5211.42):3枚または4枚綾(破れ斜文含む)、たて糸=同一色、よこ糸=未漂白/漂白/灰色浸染/淡色等、などの要件で判定
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 類注としての明確な“除外条文”は多くありませんが、実務上は第11部注1・注7等で他章へ飛ぶケースが典型です(例:リンター→第14類、製品にしたもの→第63類等)。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:コットンリンターを第52類に入れない
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):原料が「原綿」か「リンター」か、繊維長の目安、製造工程(綿実由来の短繊維か)
    • 現場で集める証憑:原料仕様書、工程説明(綿繰り工程の有無)、分析・写真
    • 誤分類の典型:5201(原綿)に入れてしまう
    • 根拠:第11部注でリンター除外、解説でもリンターは14.04と整理
  • 影響ポイント2:混用繊維の“章またぎ”を第11部注2で決める
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):混用率(重量比)、他繊維が何か(人造繊維か等)
    • 現場で集める証憑:混用率表示(仕様書/BOM)、試験成績書、糸/織物の組成証明
    • 誤分類の典型:
      • 綿30%/ポリエステル70%なのに「綿製品だから第52類」としてしまう(実務上は第11部注2で“最大重量の繊維”側に寄る)
      • 逆に、綿優位(例:綿60%/ポリ40%)なのに化繊側へ寄せてしまう
    • 根拠:第11部注2(最大重量の繊維基準)+ 52.10/52.11の解説が「注2適用により綿織物に属し…」と明示
  • 影響ポイント3:糸の“小売用”判定で5207に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):巻き形態(コーン/ボール/かせ等)、1個重量(芯含む)、糸のデシテックス帯
    • 現場で集める証憑:包装仕様、重量(実測)、商品カタログ
    • 誤分類の典型:工業用巻(重い)なのに小売用5207にしてしまう/逆
    • 根拠:第11部注4
  • 影響ポイント4:“デニム”は定義で判定(商業名は参考)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):組織(3/4枚綾、warp-faced)、たて/よこの色条件
    • 現場で集める証憑:織物規格書、組織図、現物確認(表裏)
    • 誤分類の典型:「デニム風」をすべて5209.42/5211.42にする
    • 根拠:第52類号注(デニム定義)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:コットンリンターを5201(原綿)にしてしまう
    • なぜ起きる:取引書類の品名が「cotton」としか書かれていない
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):リンターは第11部から除外され第14類扱い。解説でもリンターは14.04と整理
    • 予防策:仕様書に「リンターか否か」「繊維長の目安」「原料工程」を追記する
  2. 間違い:縫糸(5204)と、一般の綿糸(5205〜5207)を混同
    • なぜ起きる:「糸=縫糸」と思い込み、用途表示だけで判断
    • 正しい考え方:縫糸は注で要件(仕上げ、Zより、糸巻重量等)が定義される
    • 予防策:撚り方向、仕上加工、糸構成(双糸等)、糸巻重量を確認する
  3. 間違い:5207(小売用糸)かどうかを“販売チャネル”で決める
    • なぜ起きる:「小売用=店で売るもの」という誤解
    • 正しい考え方:小売用は“巻き形態+重量”等の定義で判定
    • 予防策:包装仕様(巻き形態、個装重量)を通関資料に添付する
  4. 間違い:混用織物を“綿が入っている”だけで第52類にする
    • なぜ起きる:混用率(重量)を確認していない
    • 正しい考え方:第11部注2で最大重量の繊維により所属決定。52.10/52.11も注2を前提に条件整理される
    • 予防策:混用率(重量比)を必ず取得(試験成績書や規格書)
  5. 間違い:織物の200g/㎡境界(5208↔5209、5210↔5211)を軽視
    • なぜ起きる:重量がインボイス・仕様書にない/ロット差を考慮しない
    • 正しい考え方:見出し自体が重量で分岐しているため、実測・証明が重要
    • 予防策:g/㎡の試験成績書、または社内測定記録を保管(境界品は特に)
  6. 間違い:“デニム”の商業名で5209.42/5211.42に決め打ち
    • なぜ起きる:アパレル業界用語とHS定義のズレ
    • 正しい考え方:デニムは号注で織組織・色条件が定義される
    • 予防策:組織図、たて/よこ糸の色条件を確認(“デニム風”は要注意)
  7. 間違い:裁断済み生地(手芸用)を“製品にしたもの”として第63類にしてしまう(または逆)
    • なぜ起きる:裁断・縁処理の程度を確認していない
    • 正しい考え方:「製品にしたもの」は第11部注7の要件で判断
    • 予防策:裁断形状、縁処理(熱溶着・縁縫い等)の有無を写真で残す

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。誤分類すると、適用すべきPSRが変わり、原産性判断(CTC/RVC等)が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料(糸)のHS最終製品(織物)のHSが混在したまま検討してしまう
    • 繊維分野は「紡績→織布→縫製」など工程要件が出やすく、工程実態の説明資料が不足しがち(協定ごとのガイド確認が必要)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 日本の輸出入申告(国内法上)はHS2022で運用される一方、協定ごとにPSRが参照するHS版が異なる点が重要です。
  • 例(代表的なもの):
    • CPTPP:HS2012参照
    • 日EU・EPA:HS2017参照
    • RCEP:HS2022参照(HS2012から置換されたPSRが採択され、2023/1/1から実施)
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定PSRが旧版HS参照の場合、PSR側のHSに合わせて最終品・材料のコードを対比(相関表・税関の案内等を利用)してから判定する

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 生産工程フロー(紡績・織布・染色/プリント等)、加工委託先情報
    • 混用率・g/㎡・糸番手など“分類にも原産性にも効く”仕様項目をセットで保存

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(本章に関する4桁/6桁体系・デニム号注に実質変更が見当たらない)5201〜5212コード体系・主要文言が同一版ズレ起因の“コード変更”対応は原則不要(ただし協定HS版は別問題)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料:
    • WCOのHS2017 Chapter 52(Cotton)と、HS2022 Chapter 52(Cotton)を突合すると、見出し構成(5201〜5212)および“デニム”号注を含め、内容が同一に見えます。
  • したがって、本資料では 「HS2017→HS2022で第52類の大きな改正はなし」 と整理します。
    ※ただし、実務では“国内コード(8桁/9桁)”や、FTA/EPAが参照するHS版の違いが別途影響します(第6章参照)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第52類は、少なくともHS2007→HS2012→HS2017→HS2022の各版で、主要な見出し体系(5201〜5212)に大きな再編が見当たりません(WCO各版の章条文比較ベース)。

版の流れ主な追加・削除・再編旧コード→新コード(概要)実務メモ
HS2007→HS2012目立った再編なし該当なし6桁の枠組みは概ね維持
HS2012→HS2017目立った再編なし該当なし同上
HS2017→HS2022目立った再編なし該当なし同上

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):リンターを原綿として申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第11部注1(c)で除外されるリンターを第52類に入れてしまう
    • 起きやすい状況:インボイス品名が“cotton”のみ、原料工程説明なし
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、説明資料の追加要求
    • 予防策:原料の定義(リンター/原綿)と工程を事前に確認
  • 事例名:混用織物の章決定ミス(綿が少ないのに第52類)
    • 誤りの内容:第11部注2の最大重量ルールを無視
    • 起きやすい状況:混用率の根拠資料がなく、営業資料だけで申告
    • 典型的な影響:税番変更、統計訂正、FTAでの否認
    • 予防策:混用率試験成績書、BOM、材料証明の確保
  • 事例名:“小売用糸”判定誤りで5207と5205/5206を取り違え
    • 誤りの内容:第11部注4の判定(重量・形態)未確認
    • 起きやすい状況:小分け出荷・リパックが複数国で行われ、形態が混在
    • 典型的な影響:通関時の照会、申告差戻し
    • 予防策:包装仕様(重量・形態)を固定化し、梱包仕様書を添付
  • 事例名:“デニム”の定義未確認で5209.42/5211.42を誤用
    • 誤りの内容:第52類号注(デニム定義)を満たさない
    • 起きやすい状況:黒デニム風、ストレッチ混、特殊染色
    • 典型的な影響:税番更正、追加説明要求
    • 予防策:組織図とたて/よこ色条件を事前確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 植物検疫(輸入):一般論として植物は検疫対象になり得ますが、植物防疫所の案内では、**麻袋・綿・綿布等の繊維製品や粗繊維(原綿含む)で「植物の包装材料として使用されたことのないもの」**は、輸入植物検疫の対象とならない旨が示されています。
    • 注意:同じ「綿」でも、汚染状況や用途(包装材として使われた等)で扱いが変わり得るため、貨物実態と書類を揃えて確認が安全です。
  • その他の許認可・届出(国内流通も含めた実務観点)
    • 繊維製品の表示(家庭用品品質表示法関連):国内販売では繊維製品の品質表示規程に基づく表示が論点になり得ます(混用率など)。
    • 有害物質規制(家庭用品規制法関連):ホルムアルデヒド等の規制・通知があり、対象品目(乳幼児用など)で注意が必要です。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 植物防疫所(輸入植物検疫の要否)
    • 消費者庁(繊維製品の品質表示)
    • 厚生労働省(家庭用品の有害物質規制)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 原料・混用率の根拠(試験成績書、仕様書)
    • 染色/プリント工程情報(規制・表示・原産性に波及)
    • 製品用途(乳幼児用など)と販売形態(国内表示義務の有無)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 形態:繊維/糸/織物/裁断品(製品にしたものか)
    • 組成:綿%、他繊維%(重量比)
    • 規格:糸番手(またはデシテックス)、織組織、g/㎡
    • 加工:漂白・染色・先染め・プリント、コーティング有無
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • リンター除外(第11部注1)確認
    • 混用は第11部注2で章決定
    • “小売用糸”“縫糸”“製品にしたもの”定義を注で再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイスに「cotton fabric」だけでなく、composition / weight / weave / finish を明記
    • g/㎡や混用率の根拠資料を添付(境界品は特に)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版(HS2012/2017/2022)を確認してPSRを見る
    • 材料HS(糸・繊維)と最終品HS(織物)を分けて管理
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 植物検疫:対象外条件(包装材使用歴等)を確認
    • 国内販売:表示・有害物質(対象品目)確認

12. 参考資料(出典)

※参照日:2026-02-22

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 Chapter 52 “Cotton”(見出し・6桁・デニム定義)
    • HS2017 Chapter 52 “Cotton”(新旧比較用)
    • HS2012 Chapter 52 “Cotton”(新旧比較用)
    • HS2007 Chapter 52 “Cotton”(新旧比較用)
  • 日本の税関・公的機関ガイド
    • 税関:関税率表解説(第52類:綿及び綿織物、デニム定義・各項解説)
    • 税関:第11部注(混用繊維、縫糸/小売用糸/製品にしたものの定義 等)
    • 税関:国内分類例規(ポプリン/ギンガム定義・規格)
    • 税関:分類事例(ギンガムの国内細分例)
  • FTA/EPA本文・運用ガイダンス(HS版の違い)
    • 経済産業省:原産地証明書におけるHS版の注意(協定ごとのHS版一覧)
    • 税関:RCEP HS2022版PSRの採択・実施(2023/1/1〜)
    • 外務省:RCEPのHS2022置換PSR採択(案内)
  • 規制(国内)
    • 植物防疫所:輸入植物検疫の対象外となる植物(綿・綿布等の扱い)
    • 消費者庁:繊維製品品質表示規程
    • 厚生労働省:家庭用品(有害物質を含有する家庭用品の規制関連)

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点(任意)

  • HS6桁(例:5208.42)でも、国内コードでは「ギンガム」「ポプリン」等に細分されることがあります。
    • 国内例規では、ギンガムやポプリンの定義・規格(糸番手、密度など)が示されています。
  • 具体例(国内分類事例):
    • 綿90%/ポリエステル10%、先染め格子柄平織、170g/㎡が **5208.42(異色糸の平織)**となり、国内細分でギンガム扱いになった例が示されています(国内コードの例示あり)。
  • 実務メモ:
    • 社内のマスタは「HS6桁」と「国内コード」を分けて管理し、統計・関税率・規制・EPAの申告欄で取り違えない運用にするのが安全です。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • 事前教示を早くするために揃えるとよい情報(一般論):
    • ①現物写真(表裏、耳、組織が見える拡大)
    • ②組成(重量比)と根拠(試験成績書)
    • ③g/㎡、糸番手/デシテックス、組織図
    • ④加工工程(漂白・染色・プリント・コーティング)
    • ⑤用途・販売形態(糸なら小売用か等)
  • “国内分類例規・分類事例”も併用すると、国内細分(ギンガム等)の整理が速くなります。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第51類:羊毛、繊獣毛、粗獣毛及び馬毛の糸並びにこれらの織物(Wool, fine or coarse animal hair; horsehair yarn and woven fabric)

※用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • **羊毛(sheep/lamb)**の原毛(未カード・未コーム)…例:剪毛したグリースウール(5101)
    • カシミヤ、アルパカ、モヘヤ等の獣毛(未カード・未コーム)…例:カシミヤ原毛(5102.11)
    • 羊毛・獣毛のくず(ノイル等)…例:コーミング工程のノイル(5103.10)
    • 羊毛・獣毛の反毛(ガーネットしたもの)…例:反毛原料(5104)
    • 羊毛・獣毛のトップ/カード・コームしたもの…例:羊毛トップ(5105)
    • 毛糸(糸)や毛織物(織物)…例:小売用毛糸(5109)、梳(そ)毛織物(5112)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 羊毛付きの原皮(毛皮付き皮):原毛ではなく原皮扱いになりやすい(41.02 または 43.01)
    • ブラシ製造用の獣毛・剛毛:粗獣毛の定義から除外(05.02)
    • 馬毛(単毛)や馬毛のくず:第51類の「馬毛の糸・織物」とは別で、馬毛そのものは 05.11(※第5類注で定義)
    • フェルト・不織布・特殊糸・ロープ等:加工形態により第56類(例:フェルト 56.02)に移りやすい
    • コーティング/工業用(技術的用途)の織物:条件次第で第59類(例:59.11)に移りやすい
    • 衣類・出来上がり品(made up):第61〜63類へ(「裁断・縫製・裾処理」等があると外れやすい)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 素材の定義:羊毛(sheep/lamb)か、繊獣毛(カシミヤ等)か、粗獣毛か、馬毛か(類注の定義)
    • 加工段階:原毛(未カード/未コーム)→トップ(カード/コーム)→糸→織物、どこまで加工されているか
    • 糸の「小売用」判定:5106/5107/5108(小売用でない)か、5109(小売用)か
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • **希少種由来(例:ビクーニャ)**はCITES/種の保存法の規制が絡み、通関だけでなく譲渡規制・表示要件まで影響します(分類ミス+規制見落としが高コスト)。
    • 未洗浄の毛・毛類は動物検疫(指定検疫物)対象になり得て、書類不備で止まりやすいです。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)を、ビジネスマン向けに説明
    • GIR1(見出し+注で決める)が中心です。第51類は「素材(羊毛/繊獣毛/粗獣毛/馬毛)」と「加工段階(原毛→トップ→糸→織物)」で見出しがほぼ決まるため、まず類注(素材定義)と項の文言に当てはめます。
    • **GIR6(6桁は6桁同士の比較)**で、たとえば「5101.11(剪毛)」か「5101.19(その他)」のように、同一項内で条件(状態・種類)を詰めます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
    • “wool”表記=羊毛(5101)とは限りません。HS上の「羊毛」は羊・子羊に限定され、カシミヤ等は「繊獣毛」(5102など)です。
    • カード(carded)/コーム(combed)済みか糸が小売用の形態かなど、加工度・包装形態が決定打になります。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:繊維原料・糸・織物か/出来上がり品かを確認
    • 裁断・縫製・裾処理などのmade upなら第61〜63類側を疑います。
  • Step2:素材の定義を確定(類注)
    • 羊毛(sheep/lamb)/繊獣毛(カシミヤ等)/粗獣毛/馬毛(単毛は05.11)を切り分けます。
  • Step3:加工段階を確定
    • 原毛(未カード/未コーム:5101/5102)→くず(5103)→反毛(5104)→トップ(5105)→糸(5106〜5110)→織物(5111〜5113)。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第51類 vs 第05類:馬毛(単毛)・ブラシ毛は第05類へ(05.11/05.02)。
    • 第51類 vs 第59類:工業用(技術的用途)やコーティング等で59章へ(例:59.11)。
    • 第51類(糸)内の分岐:小売用(5109)か、工業用(5106〜5108)か。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第51類は4桁見出しが多くないため全列挙します。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5101羊毛(未カード・未コーム)グリースウール、洗い上げ羊毛「羊毛」は羊・子羊に限定。原皮(毛付き皮)は除外。
5102繊獣毛・粗獣毛(未カード・未コーム)カシミヤ原毛、アルパカ原毛、やぎ毛カシミヤ(5102.11)か否か、繊獣毛か粗獣毛か(類注定義)。
5103羊毛・獣毛のくず(反毛除く)ノイル、落ち綿状のくず、糸くず反毛(5104)と混同注意。フロック等は56.01へ行く場合あり。
5104反毛(ガーネットしたもの)反毛原料(shoddy原料)くず(5103)と区別:ガーネット工程の有無が鍵。
5105羊毛・獣毛(カード/コーム済み、トップ等)羊毛トップ、カシミヤトップ「小塊状のコーム羊毛」等、見出しで明示。
5106カード羊毛糸(小売用でない)工業用コーン巻き毛糸5109(小売用)との境界は包装形態・重量基準。
5107コーム羊毛糸(小売用でない)梳毛糸(工業用)5106(カード)との区別=紡績工程(梳毛/紡毛)。
5108繊獣毛糸(小売用でない)カシミヤ糸(工業用)、モヘヤ糸カード/コーム(5108.10/5108.20)で分岐。
5109羊毛または繊獣毛の小売用糸手編み用毛糸玉「小売用にした糸」定義(部注)で判定。
5110粗獣毛糸または馬毛糸馬毛糸、粗獣毛糸「馬毛そのもの(単毛)」は05.11、糸はここ。
5111カード羊毛/カード繊獣毛の織物紡毛織物(厚地)85%基準、重量300g/m²基準、混用(化繊)で分岐。
5112コーム羊毛/コーム繊獣毛の織物梳毛スーツ地85%基準、重量200g/m²基準、混用(化繊)で分岐。
5113粗獣毛または馬毛の織物芯地、内装材、馬毛の織物工業用織物(59.11)に該当すると除外。

(根拠:HS2022 第51類の見出し・号体系、および日本税関解説の類注・総説)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • 状態(原毛):グリース(脂付き)/洗い上げ(脱脂)/化炭処理の有無(5101)
    • 種類(獣毛):カシミヤか、その他の繊獣毛か、粗獣毛か(5102、5105)
    • 工程(糸):カード糸(5106)かコーム糸(5107)、繊獣毛糸(5108)か
    • 包装(糸):「小売用にした糸」か(5109)
    • 組成と重量(織物):85%以上ルール、g/m²(5111は300、5112は200)
    • 混用相手(織物):主に/専ら「人造繊維フィラメント」か「ステープル」か(5111.20/5111.30、5112.20/5112.30)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    • (1) 5101(羊毛・未カード/未コーム) vs 5105(カード/コーム羊毛・トップ)
      • どこで分かれるか:カード/コーム工程を経ているか、トップ等の形態か。
      • 判断に必要な情報:製造工程(カード・コーム有無)、形状(トップ、スライバー等)、写真。
      • 典型的な誤り:「洗い上げ=加工品」と誤解して5105へ寄せる(洗浄だけなら5101のままのことが多い)。
    • (2) 5103(くず) vs 5104(反毛)
      • どこで分かれるか:ガーネット(反毛)工程を経た“再生繊維状”か、単なるくず(ノイル、落ち綿状)か。
      • 判断に必要な情報:発生工程(ガーネット工程の有無)、繊維の状態(長さ・絡み・混入物)、仕様書。
      • 典型的な誤り:「再生原料=全部5104」としてしまい、ノイル等(5103)を誤る。
    • (3) 5106/5107/5108(小売用でない糸) vs 5109(小売用糸)
      • どこで分かれるか:部注の「小売用にした糸」定義(巻き方・重量・支持体など)に該当するか。
      • 判断に必要な情報:1個当たり重量、巻き形態(玉・かせ・コーン等)、ラベル、デシテックス(dtex)、単糸/双糸。
      • 典型的な誤り:工業用コーン巻きを「毛糸=5109」としてしまう。
    • (4) 5111(カード系織物) vs 5112(コーム系織物)
      • どこで分かれるか:使用糸がカード(紡毛)かコーム(梳毛)か。重量基準(300/200)や85%基準は“項内”の分岐。
      • 判断に必要な情報:糸種(梳毛/紡毛)、織物規格(目付g/m²)、混用率(重量%)。
      • 典型的な誤り:「スーツ地=5112」と決め打ち(実際はカード系もあり得る)。
    • (5) 5113(粗獣毛/馬毛織物) vs 5911(技術的用途の織物)
      • どこで分かれるか:工業用・技術的用途に該当する性状/用途か(59.11側の要件確認)。
      • 判断に必要な情報:用途(フィルター/ふるい等)、仕様(目開き、耐熱等)、販売形態(産業資材用途の明確性)。
      • 典型的な誤り:「馬毛の織物=必ず5113」として工業用織物の除外を見落とす。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 混用(異なる繊維が混ざる)時の原則:第50〜55類の多くは、原則として“重量で優勢な繊維”で分類し、同程度なら番号が後の見出しへ寄せる考え方です(部注で整理)。
    • **「小売用にした糸」**の定義:糸の分類(5106〜5109)で決定打になります。
    • 太さ(dtex)でロープ扱いに飛ぶルールはありますが、羊毛・獣毛糸は原則としてその例外に入る点が実務的に重要です(=太い毛糸だから即56.07とはしない)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:ウール50%+ポリエステル50%の織物は、「名称」ではなく混用率(重量%)で判断します。優勢がなければ、該当する見出しのうち番号が後の方へ寄るルールを使います。
    • 例:手編み用の毛糸玉でも、重量・巻き方・支持体が定義を満たさなければ小売用にならず、5106〜5108側に残ることがあります(例外規定も含め確認)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • **「made up」**の扱い:裁断・縫製などが入ると、第50〜55類(原料〜織物の章)ではなく、56〜63類(出来上がり品側)へ。
    • 工業用(技術的用途):織物でも条件により59.11へ。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第51類の類注は、まず**「羊毛」「繊獣毛」「粗獣毛」を定義し、粗獣毛からブラシ毛(05.02)馬毛(05.11)**を除外しています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 羊毛:羊・子羊の天然繊維。
    • 繊獣毛:カシミヤやぎ、アルパカ、ラマ、ビクナ、らくだ、やく、うさぎ等の毛(類注列挙の範囲)。
    • 粗獣毛:上記以外の獣毛(ただしブラシ毛・馬毛は除外)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • ブラシ製造用の獣毛・剛毛 → 05.02
    • 馬毛(単毛)・馬毛のくず → 05.11(馬毛の糸・織物は第51類側)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:“wool”表記の誤解(羊毛≠獣毛全般)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):動物種(sheep/lambか、goat/camelid等か)、原産証明や検査書、商品説明書。
    • 現場で集める証憑:仕様書(素材名+学名/動物名)、混用率証明、写真、サプライヤー宣誓書。
    • 誤分類の典型:「カシミヤ=高級ウール」として5101(羊毛)へ入れてしまう(正しくは5102/5105/5108/5109等)。
  • 影響ポイント2:粗獣毛の定義からの除外(ブラシ毛・馬毛)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):用途(ブラシ用か)、部位(たてがみ/尾毛か)、原料形態(単毛か糸か)。
    • 現場で集める証憑:用途資料(ブラシ用途/繊維用途)、工程表(紡績の有無)、サンプル写真。
    • 誤分類の典型:馬毛(単毛)を5110(糸)扱いにしてしまう/ブラシ毛を粗獣毛として5102へ入れてしまう。
  • 影響ポイント3:混用(ウール×化繊等)の“重量ルール”
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):繊維ごとの重量%(試験成績書がベスト)。
    • 現場で集める証憑:組成分析(JIS等の試験)、BOM、糸番手・目付(織物)。
    • 誤分類の典型:名称や用途で「ウール製」と決め打ちし、重量優勢の化繊側を見落とす。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:カシミヤ原毛を「羊毛(5101)」で申告
    • なぜ起きる:商流で“cashmere wool”などと呼ばれ、HS上の「羊毛」定義(sheep/lamb限定)を見落とすため。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):類注で羊毛と繊獣毛が別定義。カシミヤは繊獣毛側(5102.11等)へ。
    • 予防策:サプライヤーに「動物種」「学名」「混用率」を必ず確認。品名は「cashmere hair」等に寄せて記載。
  2. 間違い:カード/コーム済み(トップ等)を未カード扱い(5101/5102)で申告
    • なぜ起きる:洗浄とカード/コームを混同しやすい。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):カード/コーム済みは5105(トップ等)。未カード/未コームは5101/5102。
    • 予防策:工程フロー(カード・コーム有無)と形状(トップ/スライバー)写真を入手。
  3. 間違い:工業用コーン巻き糸を「小売用毛糸(5109)」にしてしまう
    • なぜ起きる:毛糸=小売用という先入観。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):「小売用にした糸」は部注定義で判定。工業用形態なら5106〜5108へ。
    • 予防策:1個当たり重量、巻き形態(コーン/チーズ/玉)、ラベル有無、dtexを確認。
  4. 間違い:ノイル等の「くず(5103)」を「反毛(5104)」にしてしまう(または逆)
    • なぜ起きる:どちらも“再生・端材”に見えるため。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):5103はくず(ノイル等)、5104はガーネット工程で得た反毛。
    • 予防策:発生工程(紡績くず/反毛工程)を仕入先に確認し、製造記録を保管。
  5. 間違い:馬毛(単毛)を「馬毛糸(5110)」で申告
    • なぜ起きる:馬毛という単語が同じで混乱。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):馬毛そのものは05.11、馬毛“糸”や“織物”が第51類。
    • 予防策:形態(単毛/糸/織物)を写真で証明。用途も併記。
  6. 間違い:毛織物(5111/5112)を、コーティング・ラミネートの有無を確認せず申告
    • なぜ起きる:表面処理が軽微に見える、または情報が伝わらない。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):コーティング・技術的用途等は第59類に移る可能性。
    • 予防策:断面写真、樹脂種別、コート量、用途(工業資材か衣料か)を確認。
  7. 間違い:カード織物(5111)とコーム織物(5112)を用途だけで決める
    • なぜ起きる:「スーツ=梳毛」などの経験則。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):見出しは糸の種類(カード/コーム)で分かれる。
    • 予防策:糸種(梳毛/紡毛)を製造側に確認し、規格書を添付。
  8. 間違い:獣毛を通常の繊維原料として扱い、動物検疫・CITESを見落とす
    • なぜ起きる:繊維=“非食品だから規制なし”と誤解。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):毛類は指定検疫物になり得る。ビクーニャ等はCITES/種の保存法が絡む。
    • 予防策:仕入先から「動物種」「処理状態(洗浄・消毒)」「CITES許可の要否」を事前に確認し、手続担当(通関+法規)を巻き込む。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること(誤ると原産性判断が崩れる)
    • 例:同じ「毛糸」でも、5106/5107/5108/5109でPSRが変わり得ます。まず**最終製品のHS(国内コード含む)**が確定しないと、材料側のHSや工程の評価がズレます。
  • よくある落とし穴(材料のHS、最終製品HS、工程の評価軸)
    • 原料(トップ5105)→糸(5106〜)→織物(5111〜)と工程段階でHSが動くため、材料HSを“完成品と同じ”にしてしまうのが典型的な落とし穴です。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 「当該協定が参照するHS版(例:HS2012参照 等)」を明記
    • たとえばRCEPは当初HS2012ベースでしたが、HS2022に置換したPSRが採択され、2023-01-01から実施されています。
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
    • 協定や税関のPSR検索で指定すべきHS版を誤ると、PSR適用自体を間違えます。税関の原産地規則ポータル等で確認してください。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • HS改正時はWCO相関表等で旧→新を確認し、製品側HSだけでなく材料側HSも同様に見直すのが安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • 繊維は混用が多いので、重量%(ウール/化繊等)をBOMに落としておくとPSR検討が速いです。
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 仕入証明、工程表、加工記録、試験成績(混用率・目付)、原産地資料を取引単位で保存(協定ごとの年限は協定・運用で確認)。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(少なくともHS6桁の構造)5101〜5113見出し・号の体系が同一付番ロジックは継続。国内コードの改定有無は国別に要確認。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 変更なし
    • HS2017版とHS2022版の第51類の見出し・号(5101〜5113)を比較すると、構造が同一です。
    • さらに、WCOのHS2017↔HS2022相関表は“変更・新設がある号”を中心に掲載する趣旨で公表されていますが、第51類の号(5101等)は変更対象として現れません(=少なくともHS6桁の改廃は見当たりません)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理
    (※第51類は、少なくともここで参照した各版のHS6桁体系では大きな改廃が確認できません。)
期間主な追加・削除・再編(HS6桁)旧コード→新コードの対応
HS2007→HS2012変更なし(5101〜5113の体系維持)該当なし
HS2012→HS2017変更なし(5101〜5113の体系維持)該当なし
HS2017→HS2022変更なし(5101〜5113の体系維持)該当なし

根拠:各版の第51類条文(コード表)の比較。


9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“カシミヤ=羊毛”でHS誤り
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注の定義(羊毛と繊獣毛の区別)を無視。
    • 起きやすい状況:インボイス品名が“cashmere wool”のみ、素材証明なし。
    • 典型的な影響:修正申告、関税差額、原産地規則(PSR)再判定。
    • 予防策:動物種・混用率の証明を添付し、品名に“cashmere hair”など識別を入れる。
  • 事例名:馬毛(単毛)を5110/5113で申告
    • 誤りの内容:馬毛(単毛)は05.11であり、第51類の対象は馬毛「糸」または「織物」。
    • 起きやすい状況:原料名だけで分類、形態(糸化の有無)を確認しない。
    • 典型的な影響:分類差替え、書類差戻し、検査対応。
    • 予防策:形態写真(単毛/糸/織物)と用途資料を準備。
  • 事例名:工業用の馬毛織物を5113で申告
    • 誤りの内容:59.11の技術的用途の織物に該当する可能性を未確認。
    • 起きやすい状況:用途が「ふるい・フィルター」なのに衣料用途として申告。
    • 典型的な影響:用途確認・資料追加要求、修正申告。
    • 予防策:用途仕様書(工業資材か否か)・性能表・販売形態を事前提出。
  • 事例名:未洗浄毛類の動物検疫手続の見落とし
    • 誤りの内容:指定検疫物(毛等)に該当するのに、検査証明書や申請手続が未整備。
    • 起きやすい状況:繊維担当のみで進め、法規(動物検疫)を見ない。
    • 典型的な影響:搬入停止、保留、追加書類、納期遅延。
    • 予防策:出荷前に動物検疫所の手続・必要書類を確認し、通関計画に組み込む。

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • 検疫・衛生(SPS等)
      • 動物検疫(家畜伝染病予防法):指定検疫物には、対象動物およびその「皮・毛」等が含まれます。輸入時は検査申請・証明書添付等が必要になる場合があります。
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制
      • **ビクーニャ(Vicugna vicugna)**は国内法(種の保存法)で国際希少野生動植物種に指定され、毛や毛皮製品等の譲渡が原則禁止(登録等の例外あり)。
      • CITES上も、特定個体群の毛を用いた製品は要件(原産国表示ロゴ等)やCITES許可書提出が求められる旨の案内があります。
    • その他の許認可・届出
      • 繊維製品の品質表示:最終製品として日本国内で販売する場合、混用率表示等のルール(繊維製品品質表示規程)が実務上重要です(輸入通関そのものとは別軸ですが、商流で要求されやすい)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 動物検疫所(MAFF):指定検疫物・輸入畜産物の検査手続
    • 経産省:CITES(ビクーニャ表示等)
    • 環境省:種の保存法(ビクーニャ製品の譲渡規制)
    • 消費者庁:繊維製品の表示
  • 実務での準備物(一般論):
    • 動物検疫:品名・数量・原産国、処理状態(洗浄/消毒)、輸出国政府機関の証明書、輸入検査申請書類。
    • CITES/種の保存法:動物種特定資料、CITES許可書/証明書、必要表示(ロゴ等)、国内登録の要否確認。

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 動物種(羊/やぎ/ラクダ科など)、混用率(重量%)、形態(原毛/トップ/糸/織物)、カード/コームの有無
    • 原毛なら:グリース/洗い上げ/化炭処理の有無
    • 糸なら:単糸/双糸、dtex、1個重量、巻き形態(玉/かせ/コーン)、ラベル表示
    • 織物なら:目付(g/m²)、組織、混用相手(化繊フィラメント/ステープル)、用途(衣料/芯地/工業資材)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注の定義(羊毛/繊獣毛/粗獣毛/馬毛)に矛盾がないか
    • 小売用糸判定(5109)を部注定義で再確認
    • 工業用織物(59.11)やコーティング(59章)への飛びを用途・性状で再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「wool(羊毛)」を使う場合、羊由来である根拠資料を添付
    • 混用率証明、工程表、写真、目付・糸番手などの規格書を準備
    • 日本の**国内コード(9桁等)**はHS6桁と別物なので、国内表で再確認(通関業者とすり合わせ)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 税関ポータル等で対象協定・HS版を確認し、PSRを特定
    • BOM(材料HS・原産国・重量/原価)、工程情報、RVC計算の前提を揃える
    • 証憑保存(協定ごとに要件確認)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 動物検疫:指定検疫物(毛等)に該当するか、検査証明書が必要か
    • CITES/種の保存法:ビクーニャ等の希少種由来か、表示・許可・登録が必要か

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Chapter 51(見出し・号、定義) (参照日:2026-02-22)
    • HS2017 Chapter 51(比較用) (参照日:2026-02-22)
    • Section XI Notes(混用・小売用糸等) (参照日:2026-02-22)
    • Correlation Tables HS2017–2022(Table I/II、位置づけ) (参照日:2026-02-22)
    • Chapter 5 Notes(馬毛の定義・05.11での扱い) (参照日:2026-02-22)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:関税率表解説 第51類(類注・総説・除外例) (参照日:2026-02-22)
    • 税関:事前教示(制度概要/注意点、Eメール事前教示) (参照日:2026-02-22)
    • 税関:RCEPのHS2022版PSR採択(2023-01-01実施) (参照日:2026-02-22)
    • 外務省:RCEPのHS2022置換PSR(運用開始等) (参照日:2026-02-22)
  • 検疫・規制
    • 動物検疫所:検査が必要な物(指定検疫物等)/輸入畜産物の検査手続 (参照日:2026-02-22)
    • 経産省:ビクーニャ毛製品の表示(ロゴ等)とCITES許可書提出 (参照日:2026-02-22)
    • 環境省:ビクーナ製品の譲渡規制(種の保存法) (参照日:2026-02-22)
    • 消費者庁:繊維製品品質表示規程/表示ガイド (参照日:2026-02-22)

※Web参照は「参照日(2026-02-22)」を付記しました。


免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第50類:絹及び絹織物(Silk)

※用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 繰糸に適する繭(5001)
    • 生糸(よってないもの)(5002)
    • 絹のくず(繰糸に適しない繭、糸くず、反毛した繊維、ノイル等)(5003)
    • 絹糸(フィラメント系:生糸をよった・合糸したもの等、ただし小売用を除く)(5004)
    • 絹紡糸(絹くずを紡績した糸、ただし小売用を除く)(5005)
    • 絹織物(反物状の織物。号は「ノイル織物」「85%以上」「その他」に分かれる)(5007)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 「製品にしたもの」(スカーフ等の縫製済み・縁縫い済み、形状裁断済みなど)→第61〜63類等へ(部注の定義でChapter 50の対象外)
    • 絹糸でも太さ(線密度)が一定以上で「ひも・綱等」扱いになるもの → 第56類 56.07(部注)
    • 殺菌した天然てぐす → 30.06、釣針付き・釣糸として製品化 → 95.07、模造カットガット → 56.04(関税率表解説上の典型除外)
    • 絹織物のぼろ(ウエス等) → 第63類(関税率表解説)
    • 「シルク風」でも実態がポリエステル等の化学繊維 → 第54/55類など(材質で決まる:表示名に注意)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 何の段階か(繭→生糸→くず→糸→織物→“製品”)
    2. 糸は“小売用にしたもの”か(5004/5005 vs 5006)
    3. 織物は ノイルか/85%以上か/その他か(5007.10/20/90)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • FTA/EPAのPSR(品目別規則)適用で、最終品HSがズレて原産性判断が崩れる(特に糸・織物は材料HSも絡む)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し+注で決める):第50類は見出し(繭・生糸・絹くず・糸・織物)と第11部注(混用、製品、糸の小売用等)の影響が大きいです。
    • GIR6(6桁内の選択):特に5007は6桁号が3つ(5007.10/20/90)に分かれ、重量割合(85%)やノイルの有無で分岐します。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 材質(本当に絹か):表示や商習慣名(“シルク調”)ではなく、繊維組成で判断します(混用は重量優先ルール)。
    • 状態(繊維→糸→織物→製品):反物か、縫製・裁断済みかで章が変わります(“製品にしたもの”はChapter 50から外れる)。
    • 包装・販売形態(糸):同じ糸でも“小売用”か否かで 5004/5005 と 5006 が分かれます。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:その貨物は「絹(silk)」由来の原料/糸/織物ですか?(組成・試験表・仕様書で確認)
  • Step2:形態はどれですか?
    • 繭 → Step3へ
    • 生糸(よってない) → 5002へ
    • 絹くず(未紡績) → 5003へ
    • 糸(フィラメント/紡績糸) → Step4へ
    • 織物(反物状) → Step5へ
    • “製品”(縁縫い、形状裁断、縫製、セット等) → Chapter 50ではなく第61〜63類等をまず疑う
  • Step3(繭):繰糸に適するか?
    • 適する → 5001
    • 適さない(穴あき・汚損・損傷等)→ 5003(絹のくず)
  • Step4(糸):どちらの糸ですか?
    • 生糸由来の絹糸(フィラメント系)→ 5004
    • 絹くず由来の紡績糸(絹紡糸・絹紡紬糸等)→ 5005
      そのうえで 小売用にしたもの なら 5006(絹糸/絹紡糸)へ。
  • Step5(織物):5007の中で分岐
    • ノイル絹の織物 → 5007.10
    • その他で、絹(または絹くず(ノイル除く))が重量85%以上 → 5007.20
    • その他 → 5007.90
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第50類(反物) vs 第61〜63類(製品):縁縫い済みスカーフ等は“製品”扱いになりやすい
    • 第50類の糸 vs 第56類 56.07(ひも・綱):線密度(デシテックス)で飛ぶ
    • 絹混用 vs 他繊維章:重量優先+同率なら“後順位”の章へ(部注)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5001繭(繰糸に適するもの)繰糸用の蚕繭「繰糸に適する」かが最大分岐。不可なら5003へ
5002生糸(よってない)生糸(かせ、ボビン等)“わずかなより”が生じ得るが、ねん糸(5004)と混同注意
5003絹のくず繰糸に不適な繭、フロス、ノイル、反毛繊維まだ「糸」になっていない段階。ぼろ(63類)、フロック等(56.01)などは除外
5004絹糸(絹くず紡績糸・小売用を除く)オーガンヂー糸、トラム糸、クレープツイスト等小売用(5006)と、線密度が大きい“ひも・綱”(56.07)を除外
5005絹紡糸・絹紡紬糸(小売用を除く)絹くず(ノイル等)を紡績した糸小売用(5006)と“ひも・綱”(56.07)除外。短繊維紡績が前提
5006小売用にした絹糸/絹紡糸+天然てぐす手芸用の絹糸(小巻)、天然てぐす「小売用」の定義(重量・形態・例外)に注意。殺菌てぐす(30.06)・釣糸製品(95.07)等は除外
5007絹又は絹くずの織物羽二重、シャンタン、ちりめん、透け織物等反物状の織物が前提。6桁でノイル/85%以上/その他に分岐

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で出やすい軸)
    • 品質/適性:繭が「繰糸に適する」か(5001 vs 5003)
    • ねん糸か否か:生糸(よってない)か、ねん糸か(5002 vs 5004)
    • 原料(フィラメント/短繊維):生糸由来の絹糸(5004)か、絹くず由来の紡績糸(5005)
    • 小売用の形態:5004/5005 か 5006 か(部注の“小売用にしたもの”定義)
    • 織物の内訳:ノイル織物/85%以上/その他(5007.10/20/90)
    • 線密度(デシテックス):一定以上で“ひも・綱”扱い→第56類へ(特に絹は20,000デシテックス超が目安)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    • 5001.00(繰糸用繭) vs 5003.00(絹のくず)
      • どこで分かれるか:繰糸して生糸にできる品質かどうか
      • 判断に必要な情報:仕入仕様(A品/B品)、欠点(穴・汚れ・損傷)、用途(繰糸/紡績原料)
      • 典型的な誤り:「繭=5001」と決め打ちし、実態は繰糸不可で5003
    • 5002.00(生糸・無ねん) vs 5004.00(絹糸・ねん糸等)
      • どこで分かれるか:「よってない」か、ねん糸工程を経た糸か
      • 判断に必要な情報:製造工程、より数、用途(織物のたて糸等)
      • 典型的な誤り:生糸に“わずかなより”があることを根拠に5004へ寄せる(生糸の範囲を要確認)
    • 5004.00/5005.00(小売用でない糸) vs 5006.00(小売用糸)
      • どこで分かれるか:包装形態・重量などが「小売用にしたもの」の条件に合うか
      • 判断に必要な情報:1個当たり重量(支持体含む)、形態(ボール/かせ/カード/工業用コップ等)、ラベル表示(手芸用等)
      • 典型的な誤り:工業用の大巻を5006にしてしまう/逆に手芸用小巻を5004にしてしまう
    • 5007.10(ノイル織物)/5007.20(85%以上)/5007.90(その他)
      • どこで分かれるか:①ノイル糸由来か、②絹(または絹くず(ノイル除く))が重量85%以上か
      • 判断に必要な情報:繊維組成(重量%)、糸種(ノイル糸か)、混用相手(綿/毛/化繊等)
      • 典型的な誤り:「絹が主だから5007.20」としてしまい、実際は85%未満で5007.90

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 混用繊維の扱い:第50〜55類等の混用品は、原則「重量が最大の繊維」とみなして分類(同率なら“後順位”の見出しへ)。
    • “小売用にしたもの”の定義(糸):支持体込み重量の上限(絹は85g等)、形態、例外が定義されています。5004/5005/5006の分岐に直結します。
    • 線密度が大きい糸の扱い(ひも・綱等):絹や絹くずの糸でも、一定のデシテックスを超えると“twine/cordage/ropes/cables”扱いになり得ます。
    • “製品にしたもの”の定義:裁断形状、縁縫い、縫製、完成品などは“製品”とされ、Chapter 50(反物・原料段階)から外れます。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:絹60%×綿40%の反物
      → 混用ルールで「絹が優勢」とみなして第50類(5007)へ。ただし85%未満なので 5007.90 が有力です(例外・詳細は要確認)。
    • 例:手芸用の絹糸(小巻・小玉)
      → 条件を満たすなら5006(小売用)になり、工業用の大巻(コップ等)なら5004/5005側になりやすいです。
    • 例:**スカーフ用の絹反物(未縫製)**は5007の範囲でも、縁縫い済みスカーフは“製品にしたもの”で別章へ飛びます。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 糸が太くて **56.07(ひも・綱等)**へ
    • 反物が 縁縫い・裁断・縫製されて第61〜63類等へ

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • HS2022の第50類は、条文上の独自の類注(Chapter Notes)が置かれていない構成で、実務上は「各項の見出し文言」と「第11部注」が主な根拠になります。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 法的定義は部注側が中心です。一方、日本税関の関税率表解説では、第50類の「絹」には家蚕由来に限らず野蚕等も含める旨の説明があります(実務の解釈補助)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 類注ではなく、主に部注・見出し・解説で除外が整理されます(例:殺菌てぐす→30.06、釣糸製品→95.07 等)。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。
※第50類は独自類注がないため、実務上“同等に効く”第11部注(混用、小売用、製品、ひも・綱)を中心に整理します。

  • 影響ポイント1:「小売用にしたもの」かどうかで、5004/5005⇄5006が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 1個当たり重量(支持体含む)
      • 形態(カード/リール/ボール/かせ/工業用コップ等)
      • 表示(手芸用、家庭用、工業用など)
    • 現場で集める証憑:
      • 製品写真(包装含む)、梱包仕様書、製品ラベル、単位重量表
    • 誤分類の典型:
      • “絹糸=5004”と一括して、手芸用小巻(本来5006)の可能性を落とす
  • 影響ポイント2:線密度(デシテックス)が大きい糸は、56.07へ飛び得る
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 線密度(dtex)・太さの仕様、用途(ロープ用途か)
    • 現場で集める証憑:
      • 技術仕様書、試験成績(線密度)、用途説明、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • ロープ用途の太い絹コードを5004/5005/5006で申告してしまう
  • 影響ポイント3:“反物”と“製品”の差で、5007⇄61〜63類が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 裁断形状(長方形以外か)、縁処理(縁縫い・房付け等)、縫製有無、完成品としての使用可能性
    • 現場で集める証憑:
      • 物品写真(端部アップ)、寸法図、加工工程表、サンプル
    • 誤分類の典型:
      • 縁縫い済みスカーフを「絹織物(反物)」として5007申告

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:絹スカーフ(縁縫い済み)を5007(絹織物)にしてしまう
    • なぜ起きる:素材が絹=第50類、という思い込み
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):縁縫い・完成状態は“製品にしたもの”に該当し、Chapter 50の対象外(部注)
    • 予防策:
      • 確認資料:端部の加工写真、縫製有無、販売形態(完成品か反物か)
      • 社内質問例:「これは反物として加工工程に回る?そのまま消費者が使う?」
  2. 間違い:手芸用の絹糸を5004/5005(小売用でない糸)で申告
    • なぜ起きる:糸の分類=原料(フィラメント/紡績)だけで決めてしまう
    • 正しい考え方:部注の“小売用にしたもの”定義で5006に移る可能性がある
    • 予防策:
      • 確認資料:1個重量、支持体形状、ラベル表示
      • 社内質問例:「この糸は工場で使う?それとも店頭で1個単位で売る?」
  3. 間違い:繰糸に不適な繭を5001(繰糸用繭)にしてしまう
    • なぜ起きる:「繭=5001」と短絡し、品質区分を確認していない
    • 正しい考え方:繰糸に適しない繭は絹くず(5003)側に整理される(解説で明確)
    • 予防策:
      • 確認資料:検品基準、用途(繰糸/紡績原料)、不良率・汚損情報
  4. 間違い:生糸(5002)と、ねん糸(5004)を混同
    • なぜ起きる:生糸にも工程上“わずかなより”が生じ得る点を誤解
    • 正しい考え方:5002は「よってない」が前提。ねん糸工程の有無で5004を検討(解説参照)
    • 予防策:
      • 確認資料:より数、工程図、製造方法の説明
  5. 間違い:ノイル絹の織物を5007.20(85%以上)に入れてしまう
    • なぜ起きる:“ノイル”という糸種を把握していない
    • 正しい考え方:5007.10が「ノイル織物」として独立している
    • 予防策:
      • 確認資料:使用糸の種類(ノイル糸か)、糸メーカー仕様
  6. 間違い:絹混用織物を、商習慣名(例:ウール混)だけで第51類へ
    • なぜ起きる:マーケ名称とHS分類を混同
    • 正しい考え方:第11部注の混用ルールは“重量優先”(同率なら後順位)
    • 予防策:
      • 確認資料:混率(重量%)の試験表、原糸仕様
      • 社内質問例:「重量%は?証明書はある?同率ではない?」
  7. 間違い:太い絹コードを5004等にしてしまい、56.07を見落とす
    • なぜ起きる:線密度(dtex)を確認していない
    • 正しい考え方:部注で、絹/絹くず糸が一定のdtex超で“ひも・綱等”扱いになり得る
    • 予防策:
      • 確認資料:dtexデータ、用途(ロープ用途か)、引張強度など
  8. 間違い:コーティング/ラミネートした絹織物を5007のまま申告
    • なぜ起きる:表地が絹なので“絹織物”と判断してしまう
    • 正しい考え方:含浸・被覆等により第59類やプラスチックの章へ移る可能性がある(部注の除外構造を踏まえ要検討)
    • 予防策:
      • 確認資料:断面写真、コーティング材質・厚み、機能説明(防水等)
  9. 間違い:殺菌済み天然てぐす(医療用)を5006にしてしまう
    • なぜ起きる:素材だけで判断し、“用途・状態(殺菌)”を見落とす
    • 正しい考え方:関税率表解説上、殺菌した天然てぐすは30.06へ除外される
    • 予防策:
      • 確認資料:医療用途表示、殺菌証明、包装(滅菌パック等)

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。糸・織物は「原料のHS」と「最終品のHS」の両方が原産性判断に絡みやすいです。
  • よくある落とし穴:
    • 最終品(例:絹織物5007)を誤って“製品”(第61〜63類)側にしてしまい、PSRが別物になる
    • 混用の重量%を誤認し、章自体がズレる(PSR以前にHSが崩れる)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 日本税関のPSR検索画面でも、協定ごとに採用HSバージョンが異なり、違う版で検索すると誤りが出得る旨が明示されています。
  • 例(代表):
    • RCEPは、品目別規則(PSR)がHS2022に置換され、2023-01-01から実施と案内されています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • ① 通関申告:原則「最新のHS(輸入国税関の現行)」
    • ② 原産地規則:協定が参照するHS版に合わせてPSRを当てる
    • ③ 版ズレがある場合:相関表(新旧対応)を使ってコード対応を確認し、**“最終的に適用するPSRはどれか”**を固定する

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 収集すべき基礎データ(例):
    • 材料表(BOM)、各材料の原産国、非原産材料のHS(可能なら6桁)、工程(紡績・製織・染色等)、原価情報(RVCがある場合)
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 工程証憑(工程表、外注加工証明)、仕入書類、試験成績(混率)、製造記録を整備しておくと、事後検証に強くなります。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(少なくとも第50類の見出し/号は同一)5001〜5007(含む5007.10/20/90)第50類の構成(繭・生糸・絹くず・糸・織物、及び5007の3分岐)は同一コード移行対応は原則不要(ただし国内コードは別途確認)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料に基づく確認結果:
    • WCOのHS2017版とHS2022版のChapter 50一覧を比較すると、5001.00〜5006.00と、5007.10/5007.20/5007.90の構成・文言が一致しており、HS6桁レベルでの新設/分割/統合等は確認できません。
    • 補助的に、WCOが公表するHS2017–2022相関表(Table I)は「変更のあった相関」を列挙する性格の資料であり、そこに第50類コードが現れないことからも、第50類に改正影響が小さいことが示唆されます(※相関表の性格上、“未掲載=不変”の確認補助として位置づけ)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(主要なもの)
    | 版の移行 | 主な追加/削除/再編 | 旧コード → 新コード(例) | コメント |
    |—|—|—|—|
    | HS2007→HS2012 | 主要な改正なし(第50類は同一構成) | 5001〜5007(同一) | WCOの各版一覧で一致 |
    | HS2012→HS2017 | 主要な改正なし | 5001〜5007(同一) | WCOの一覧で確認 |
    | HS2017→HS2022 | 主要な改正なし | 5001〜5007(同一) | WCOの一覧で確認 |

※補足:上表はHS6桁(国際統一)ベースです。日本の**国内コード(統計品目番号)**は改正や運用で細分・変更され得るため、実務では最新版の輸入統計品目表・輸出統計品目表で別途確認してください。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「手芸用絹糸」を工業用として申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):小売用定義(部注)を見ずに5004/5005で申告
    • 起きやすい状況:品名が “silk yarn” だけ、重量・形態の情報が通関書類に無い
    • 典型的な影響:税番更正、追加資料要求、審査長期化
    • 予防策:包装写真、1個重量、ラベル(手芸用)を事前に添付
  • 事例名(短く):太い絹コードを5004で申告→56.07へ更正
    • 誤りの内容:線密度(デシテックス)による“ひも・綱等”判定の見落とし(部注)
    • 起きやすい状況:「糸」として輸入するが用途はロープ・結束
    • 典型的な影響:分類差し戻し、追加納税(税率差がある場合)、検査強化
    • 予防策:dtexの仕様書、用途説明(織物用かロープ用か)を準備
  • 事例名(短く):絹の反物と“製品”の取り違え(5007⇄61〜63類)
    • 誤りの内容:縁縫い・裁断等で“製品にしたもの”に該当するのに5007申告(部注)
    • 起きやすい状況:スカーフ/ストールを「生地」と称して輸入
    • 典型的な影響:更正、関税率・原産地規則の再確認、納期遅延
    • 予防策:端部加工の有無を明確化(写真)、製造工程表を添付
  • 事例名(短く):天然てぐすの用途違い(5006⇄30.06/95.07)
    • 誤りの内容:殺菌済み(医療用)や釣針付き等の状態を見落とす(解説上の除外)
    • 起きやすい状況:同じ“gut”でも用途・状態が混在
    • 典型的な影響:分類更正、他法令確認(医療機器等)に波及
    • 予防策:用途証明、殺菌証明、セット内容の明細を用意

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 絹織物などの繊維製品は、食品等の検疫とは別系統ですが、国内販売段階で有害物質規制(後述)や表示義務が問題になりやすいです。
  • その他の許認可・届出(国内流通で頻出)
    • 家庭用品品質表示法(繊維製品品質表示規程):繊維製品の組成表示、取扱い表示、表示者名等のルールが定められています(輸入者は販売時の表示責任に注意)。
    • 有害物質を含有する家庭用品の規制:ホルムアルデヒド等の基準や、アゾ染料に関する規定など、繊維製品に関わる規制が整理されています(特に乳幼児用等は厳しめ)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 表示:消費者庁(家庭用品品質表示法/繊維製品)
    • 有害物質:厚生労働省(関連法令・通知等)
    • 分類:税関(品目分類、事前教示)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 繊維混率試験(重量%)、染料・加工情報(樹脂加工、形態安定等)、製品表示案(ラベル)、用途説明(乳幼児用か等)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 原料段階の確認(繭/生糸/くず/糸/織物/製品)
    • 組成(重量%)と証明書(試験成績、メーカー仕様)
    • 糸の場合:線密度(dtex)、より数、包装形態(小売用か)
    • 織物の場合:反物か、裁断・縁処理の有無
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 小売用の判定(5006)を部注で再確認
    • “製品にしたもの”該当性(第61〜63類への飛び)確認
    • ノイル/85%/その他(5007.10/20/90)確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイスに「silk fabric / silk yarn」だけでなく、混率、用途、状態(retail/industrial)を追記
    • 写真、仕様書、試験表を添付できる体制
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • PSR検索時に協定のHS版を確認(版ズレ注意)
    • BOM、工程、非原産材料HS、原価資料の保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 表示(繊維製品品質表示)
    • 有害物質(ホルムアルデヒド等、アゾ染料等)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022 Section XI Notes(1100_2022e.pdf)(参照日:2026-02-22)
    • WCO HS Nomenclature 2022 Chapter 50 “Silk”(1150_2022e.pdf)(参照日:2026-02-22)
    • WCO HS Nomenclature 2017 Chapter 50 “Silk”(1150_2017e.pdf)(参照日:2026-02-22)
    • WCO HS Nomenclature 2007 Chapter 50 “Silk”(1150_2007e.pdf)(参照日:2026-02-22)
    • WCO Correlation Tables HS2017–HS2022(Table I, en)/相関表ページ(参照日:2026-02-22)
  • 日本 税関・公的機関のガイド
    • 税関:関税率表解説 第50類(50r.pdf)/第11部 総説(11b.pdf)(参照日:2026-02-22)
    • 税関:EPA・原産地規則ポータル/品目別原産地規則検索(参照日:2026-02-22)
    • 税関:RCEP(HS2022版PSRの実施案内等)(参照日:2026-02-22)
    • 税関:品目分類の事前教示制度(参照日:2026-02-22)
  • その他(表示・化学物質等)
    • 消費者庁:家庭用品品質表示法/繊維製品品質表示規程・表示ガイド(参照日:2026-02-22)
    • 厚生労働省:有害物質を含有する家庭用品の規制(法令・通知等)/施行規則(参照日:2026-02-22)

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 絹製品は「形態差(反物か製品か)」「小売用か」「混率(重量%)」「糸の線密度・より数」などが結論を左右しやすいです。
    • 事前教示(品目分類)に出す/照会する際に有効なセット:
      • ① 現物写真(全体・端部・包装)
      • ② 仕様書(混率・dtex・より数・幅/重量/目付)
      • ③ 工程図(繰糸→撚糸→製織→染色など)
      • ④ 用途(手芸用/工業用、反物販売/完成品販売)
  • 探し方(日本税関の公開情報)
    • 税関は、公開可能な**事前教示回答(品目分類)**を検索できる仕組みを用意しています。キーワード(例:「絹糸」「スカーフ」「織物」)や税番で横断検索し、近い事例の論点(決め手が何か)を把握すると効率的です。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第49類:印刷した書籍、新聞、絵画その他の印刷物並びに手書き文書、タイプ文書、設計図及び図案(Printed books, newspapers, pictures and other products of the printing industry; manuscripts, typescripts and plans)

  • 用語:**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**です。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 書籍・冊子・リーフレット(単票でも可)や、百科事典・辞書(49.01)
    • 新聞・雑誌などの定期刊行物(49.02。ただし例外あり)
    • 地図・海図・アトラス・壁地図・印刷した地球儀(49.05)
    • 未使用の切手・収入印紙、銀行券、株券などの証券類(49.07)
    • ポスター、写真、広告印刷物、カタログ等の「その他の印刷物」(49.11)
    • (重要)「印刷」は、複写機コピー、ADP(コンピュータ)出力、型押し、写真、感光/感熱複写、タイプも含みます(=“プリントアウト”も含み得る)。
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 透明ベース上の写真のネガ・ポジ(フィルム等):第37類
    • 浮出し(立体)地図・浮出し地球儀:90.23
    • トランプ等の遊戯用カード:第95類
    • オリジナルの版画(銅版画・木版画等):97.02/切手のコレクターズ品・初日カバー等:97.04/製作後100年超の骨董等:第97類
    • 壁紙(48.14)や紙製ラベル(48.21)は、たとえ印刷が重要でも第48類側に残る扱いがある点に注意(例外扱い)。
    • プラスチック/ゴム製品でも、印刷(文字・絵等)が用途に対して「副次的でない」場合、第49類に来ることがあります(ただし 39.18/39.19 は除外)。
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 印刷の位置づけ:その物品の本質・用途が「印刷されていること」で決まるか、単なる装飾/副次的か。
    2. 49.01(本) vs 49.11(広告・ポスター等):広告が本質目的の出版物は49.01に入らず49.11へ。
    3. 49.05(地図等) vs 90.23(浮出し/立体):立体は90.23で、印刷有無は関係なし。
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 旧コード(HS2017)で「4905.10(地球儀)」を使ってしまう(HS2022で再編)。協定PSRや社内マスタとのズレが起きやすいです。
    • 広告カタログを49.01(書籍)扱いにしてしまい、49.11(広告印刷物)との不整合で税関照会が増える。
    • 49.07(未使用切手/銀行券等)と、97.04(切手コレクター品等)を取り違える(内容によっては規制・審査も絡みやすい)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し+注で決める):第49類は「類注(注1〜6)」が境界線そのものです。たとえば、広告目的出版物は49.01から外れて49.11へ(注5)など、注が結論を決めます。
    • GIR6(6桁の号まで落とす):49.05はHS2022で号が再編され、49.11も号区分(広告/写真等/その他)が実務上効きます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 物理形態:単票か、製本されているか、ページ番号があるか、セット物か。
    • 内容/主目的:広告が主か、教育・情報・芸術鑑賞が主か。
    • 印刷の意味合い:コピー/プリンタ出力も「印刷」になり得ますが、単なる装飾模様や色彩印刷だけでは第49類の「印刷物」扱いにならない点に注意。
    • 素材(紙以外もあり得る):プラスチック/ゴム製でも、印刷が用途に対して副次的でなければ第49類へ(例外あり)。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:まず「そもそも第49類か?」(注1の除外をチェック)
    • 透明ベースの写真ネガ/ポジ → 第37類
    • 浮出し地図・浮出し地球儀 → 90.23
    • トランプ等 → 第95類
    • 版画(オリジナル)/切手コレクター品/骨董(100年超) → 第97類
  • Step2:「印刷物/文書」と言えるか(注2)
    • コピー、プリンタ出力、型押し、写真、感光/感熱複写、タイプも含めて“印刷”扱いになり得ます。
  • Step3:項(4桁)を選ぶ
    • 書籍・冊子系 → 49.01(ただし広告目的は49.11へ)
    • 新聞・雑誌等の定期刊行物 → 49.02(ただし例外で49.01へ行くケースあり)
    • 地図・海図・地球儀(印刷) → 49.05
    • 未使用切手・銀行券等 → 49.07
    • それ以外の印刷物(広告、ポスター、写真等) → 49.11
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第48類(紙製品) vs 第49類(印刷物):印刷が包装等の本来用途に対して副次的なら48類、印刷が本質なら49類、という整理が基本(ただし48.14/48.21等の例外に注意)。
    • 第39類(プラスチック製品)/第40類(ゴム製品) vs 第49類:印刷が副次的でない場合は49類へ(ただし39.18/39.19は除外)。
    • 90.23(浮出し) vs 49.05(印刷地図等):立体かどうかが決定打。
    • 第97類(美術品・収集品・骨董) vs 第49類:オリジナル版画や収集切手、骨董(100年超)は第97類。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第49類は項が少ないため全列挙します。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
4901印刷した書籍、冊子、リーフレット等(単票含む)書籍、教科書、取説、マニュアル、百科事典・辞書定期刊行物でも「紙以外で製本」「複数号を単一カバーでセット」は4901へ(類注3)。広告目的出版物は4901×で4911(類注5)。
4902新聞、雑誌等の定期刊行物新聞、週刊誌、学会誌4902は通常の定期刊行物。例外で4901へ飛ぶケースあり(類注3)。
4903幼児用の絵本、ぬり絵等絵本、ぬり絵帳「絵が主体・文章が副次的」が条件(類注6)。
4904楽譜(印刷/手稿)楽譜集、スコア記録媒体(CD等)は別類。
4905地図・海図等(印刷)アトラス、壁地図、海図、印刷地球儀浮出し(立体)は90.23で除外(類注1(b))。HS2022で号が再編(4905.20/4905.90)。
4906建築・工業等の設計図等(手書き原図等)手書きの設計図、青焼き・感光複写、カーボンコピー見出しの文言が限定的(手書き原図/特定の複写等)。CADプリント等は判断要(後述)。
4907未使用切手・印紙・銀行券等未使用切手、収入印紙、銀行券、株券・債券、小切手用紙収集品(初日カバー等)は97.04側(類注1(d))。
4908転写紙(デカール)デカール、転写シール、転写タトゥー焼付け用(vitrifiable)かどうかで号分岐。
4909絵葉書・グリーティングカード等ポストカード、メッセージカード4909はカード類に特化。
4910カレンダー壁掛けカレンダー、卓上カレンダーHS6桁は4910.00(国内コードで細分がある場合あり)。
4911その他の印刷物(写真含む)広告物、カタログ、ポスター、パンフ、写真「広告が本質目的の出版物」はここ(類注5)。49.01との境界が頻出。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で効きやすいもの)
    • 形態(単票/製本/セット):4901.10(単票)など
    • 発行頻度:4902.10(週4回以上)
    • 書籍形式か否か:4905.20(書籍形態) vs 4905.90(その他)
    • 用途(広告):4911.10(広告印刷物)
    • 内容(写真・デザイン):4911.91(写真・図案等)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 4901(書籍) vs 4911.10(広告物)
      • どこで分かれるか:出版物が「本質的に広告目的」か(類注5)。
      • 判断に必要な情報:表紙/奥付、目次、広告比率というより「目的」(販促配布か、一般向け出版か)、配布形態(展示会配布/DM等)、価格設定(無料配布か)。
      • 典型的な誤り:「冊子=本」で4901に寄せる(広告カタログを4901扱い)。
    2. 4902(定期刊行物) vs 4901(例外で4901へ)
      • どこで分かれるか:定期刊行物でも「紙以外で製本」「複数号を単一カバーでセット」なら4901(類注3)。
      • 判断に必要な情報:製本材料(紙/非紙)、セットの形態、同梱される号数。
    3. 4905(印刷地図等) vs 9023(浮出し/立体)
      • どこで分かれるか:立体(浮出し)かどうか(類注1(b))。
      • 判断に必要な情報:断面構造、凹凸の有無、素材・成形方法、写真。
    4. 4907(未使用切手等) vs 9704(収集品)
      • どこで分かれるか:収集・コレクターズ性(初日カバー等)や、類注1(d)で第97類へ除外されるか。
      • 判断に必要な情報:未使用か(消印の有無)、コレクター向けセット/台紙、発行国・額面、流通実態。
    5. 4905の“旧→新”コード誤用(HS2017→HS2022)
      • どこで分かれるか:HS2022では4905.10(地球儀)が削除され、4905.20/4905.90に再編。
      • 判断に必要な情報:取引で参照しているHS版(社内マスタ、相手国タリフ、協定PSRのHS版)。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第49類が属する第10部(Section X)には部注がありません(=この部は部注なしで章が並ぶ構成)。
    • ただし、他部の部注が「第49類へ飛ばす」ことがあり、特に第7部(プラスチック・ゴム)注2が実務上重要です。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • プラスチック製のサインプレートや装飾パネルでも、印刷(文字・絵)が用途に対して副次的でない場合は第49類に分類され得ます(ただし39.18/39.19は除外)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 「プラスチック製品だから第39類」と決め打ち → 実際は印刷が本質で第49類(第7部注2)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(注1〜6):
    • 注1:写真フィルム、浮出し地図、トランプ、オリジナル版画、切手収集品、骨董等を除外(第37類、90.23、95類、97類へ)。
    • 注2:「印刷」にはコピー、ADP出力、型押し、写真、感光/感熱複写、タイプも含む。
    • 注3:定期刊行物でも、紙以外で製本・複数号セットは49.01へ。
    • 注4:49.01に含まれる“コレクション/付属絵画/製本用の部分”の扱い。文章を伴わない絵・挿絵は49.11へ。
    • 注5:広告が本質目的の出版物は49.01ではなく49.11。
    • 注6:49.03の「幼児用の絵本」定義(絵が主、文章が従)。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「印刷したもの」:上記注2の範囲(コピー/ADP出力等)+実務解説では、印刷キャラクターの形態は問わない一方、単なる装飾印刷・繰り返し模様は含めない、という整理が示されています。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 注1の除外(第37類、90.23、第95類、第97類)に加え、実務解説では48.14/48.21、39.18/39.19等は印刷の重要性にかかわらず第49類に入らない旨が整理されています。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:「広告目的」かどうかで 49.01 ⇄ 49.11 が入れ替わる(注5)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 目的(販促配布/カタログ/観光案内か、一般出版か)
      • 内容構成(製品紹介の比重、価格表、注文方法、問い合わせ先の強調)
      • 配布形態(展示会配布、DM、店頭無料配布 など)
    • 現場で集める証憑:
      • 現物/見本、PDFデータ、目次、奥付、配布案内(「販促物」表記)、社内の用途説明
    • 誤分類の典型:
      • 「ページがある=本」→4901に入れてしまい、税関から「本質的に広告」と見られて4911へ修正。
  • 影響ポイント2:定期刊行物でも 49.02 ⇄ 49.01 に飛ぶ(注3)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 製本材料(紙か否か)、複数号を単一カバーでセットしているか
    • 現場で集める証憑:
      • 製本仕様(材質)、商品写真、セット構成(何号分か)
    • 誤分類の典型:
      • 「雑誌=4902」で固定 → 実は非紙で製本されていて4901。
  • 影響ポイント3:“印刷”の定義が広い(注2)=プリンタ出力やコピーも第49類候補
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 製造方法(コピー、プリンタ、写真、感光複写、型押し等)
      • 単なる装飾模様か、情報伝達(文字・図)か
    • 現場で集める証憑:
      • 製造工程説明、印刷方式、サンプル画像
    • 誤分類の典型:
      • 「印刷物はオフセット等だけ」と誤解して除外、または逆に装飾印刷を49類へ寄せる。
  • 影響ポイント4:素材起点で決め打ちしない(第48類・第39類等との境界)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 素材(紙/プラ/繊維等)+印刷が用途に対して副次的か否か
      • 例外(39.18/39.19、48.14/48.21)の有無
    • 現場で集める証憑:
      • 材料構成、用途説明、製品カタログ、使用シーン写真
    • 誤分類の典型:
      • 「紙=48類」「プラ=39類」で固定し、印刷の位置づけを見ない。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:製品カタログ(販促冊子)を4901(書籍)にしてしまう
    • なぜ起きる:冊子形態=本と短絡しがち。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):広告が本質目的なら49.01ではなく49.11(類注5)。
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 「配布目的は?(販促/販売付属/一般販売)」
      • 目次・奥付・配布方法の資料、現物PDFを保管
  2. 間違い:雑誌を4902に固定し、非紙で製本されたもの/複数号セットを見落とす
    • なぜ起きる:一般常識(雑誌=4902)に引っ張られる。
    • 正しい考え方:注3で49.01へ移るケースが明示。
    • 予防策:
      • 「表紙/製本は紙?プラ?布?」
      • 「複数号が1つのカバーで売られている?」を現物で確認
  3. 間違い:文章のないポスター/絵だけの印刷物を4901(書籍)側に寄せる
    • なぜ起きる:「美術品の複製集」等の誤解。
    • 正しい考え方:49.01の“製本用部分”等の説明がある一方、文章を伴わない絵・挿絵は49.11へ(注4)。
    • 予防策:
      • 文章(テキスト)があるか、ページ番号があるか、製本前提かを確認
  4. 間違い:立体(浮出し)地図・地球儀を4905にする
    • なぜ起きる:地図/地球儀=4905と短絡。
    • 正しい考え方:浮出し(立体)は90.23へ除外(注1(b))。
    • 予防策:
      • 製品写真(側面)、凹凸加工の有無、素材・成形方法の確認
  5. 間違い:未使用切手/印紙(4907)と、切手収集品(9704)を混同
    • なぜ起きる:「切手」だけで判断しがち。
    • 正しい考え方:類注1(d)で97.04の収集品等が除外されている。
    • 予防策:
      • 「消印の有無」「初日カバーか」「コレクター向け台紙/セットか」を確認
  6. 間違い:紙製品の印刷物をすべて第49類にしてしまう
    • なぜ起きる:「印刷されている=49類」の誤解。
    • 正しい考え方:紙・板紙製品で印刷が本来用途に対し副次的なら48類、例外(48.14/48.21等)もある。
    • 予防策:
      • 用途(包装/文具/掲示/広告)を用途説明書で確認
      • 48.14(壁紙)、48.21(ラベル)該当の有無をチェック
  7. 間違い:プラスチック製サイン等を39類に固定してしまう
    • なぜ起きる:素材起点で判断してしまう。
    • 正しい考え方:第7部注2で、印刷が副次的でない場合は第49類(ただし39.18/39.19は除外)。
    • 予防策:
      • 「印刷(文字・絵)がないと用途が成立するか?」を社内に確認
      • 39.18/39.19該当(床材/壁材など)も合わせてチェック
  8. 間違い:HS2017の4905.10(地球儀)をそのまま使い続ける
    • なぜ起きる:社内マスタや取引先資料が更新されていない。
    • 正しい考え方:HS2022で49.05が再編され、4905.10は削除、4905.20/4905.90へ。
    • 予防策:
      • 参照HS版を明示(HS2017/2022)
      • 相関表(旧→新)を社内で固定資料化
  9. 間違い:設計図・図面を何でも4906にしてしまう
    • なぜ起きる:品名(図面)だけで判断。
    • 正しい考え方:4906は見出し上「手書き原図」等に限定されるため、CADプリント等は内容・作成方法・形態を踏まえて4911等の可能性も含め検討が必要。
    • 予防策:
      • 作成方法(手書き/青焼き/プリンタ出力)と、取引実態(技術資料一式か、単なる図面配布物か)を確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。最終製品のHS(6桁)を誤ると、適用すべきPSR(CTH/CTSH/RVC等)の前提が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 「販促カタログ(4911.10)」を「書籍(4901)」としてPSRを見てしまう
    • 49.05の旧コード(4905.10等)で協定のPSRを引いてしまう(HS版ズレ)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに採用しているHS版が異なるため、税関のPSR検索画面でも「協定が採用するHS版で検索する」注意が明記されています(申告は最新HS)。
  • RCEPは、当初HS2012ベースでしたが、HS2022に置き換えた品目別規則が採択され、2023/1/1から実施とされています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定本文/PSRが旧HSの場合、相関表で旧6桁→新6桁に対応付けしてからPSRを読みに行きます(特に49.05は2022で号が動いたため注意)。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 製造工程フロー、購買証憑、印刷工程(国内/国外)、委託加工契約書
    • 税関向け説明資料(製品見本、カタログ、仕様書)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022削除+再編(号の名称変更/範囲調整)4905.10 / 4905.91 / 4905.99 → 4905.20 / 4905.904905.10(地球儀)削除。4905.91→4905.20、4905.99→4905.90へ名称変更。削除分(地球儀)は4905.90へ移管し、範囲も調整。社内マスタ・過去データ・協定PSRのHS版がズレると、誤コード使用・PSR誤適用が起きやすい。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料として、HS2017版とHS2022版の第49類のコード表(49.05の号構成が異なる)を確認しました。
  • さらに、相関表(HS2022-HS2017)では、「49.05は取引量が少ない4905.10を削除して再編」「4905.91/4905.99をそれぞれ4905.20/4905.90に改称」、**「4905.10の物品は4905.90へ移管し範囲を調整」**と説明されています。
  • 上記より、第49類でHS2017→HS2022における主要な構造変更は、少なくとも49.05の号再編であると判断しました(他の49.01〜49.11は同一の号構造に見えます)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理します(第49類は大きな再編が少なく、確認できる主要差分は49.05です)。
期間追加/削除/再編(概要)旧コード → 新コード(または行き先不明)メモ
HS2007→HS2012大きな変更なし(少なくとも49.01〜49.11の主要構造は同様)HS2012の日本税関表でも49.05は4905.10/4905.91/4905.99構成。
HS2012→HS2017大きな変更なし(49.05も従来構成)HS2017でも4905.10/4905.91/4905.99。
HS2017→HS202249.05を再編(4905.10削除、改称・範囲調整)4905.10(地球儀)→ 4905.90 へ移管、4905.91→4905.20、4905.99→4905.90相関表に理由(低取引量)と移管先が明記。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「展示会カタログ」を書籍(4901)で申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):広告目的出版物は4901に含まれず4911(類注5)。
    • 起きやすい状況:インボイス品名が “catalogue/booklet” 程度で、内容確認せずに本扱い。
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税(税率差がある場合)、分類根拠資料の追加提出要求。
    • 予防策:現物PDF・目次・配布目的の説明書を準備し、広告目的かどうかを事前に整理。
  • 事例名:雑誌セット(2号を1パック)を4902で申告
    • 誤りの内容:複数号を単一カバーでセットした定期刊行物は4901(類注3)。
    • 起きやすい状況:量販店向けの「合本・特装版」や販促セット。
    • 典型的な影響:分類訂正、通関遅延(現物確認が増える)。
    • 予防策:販売形態(セット構成)と包装状態の写真を提出資料に入れる。
  • 事例名:立体地球儀を4905で申告
    • 誤りの内容:浮出し(立体)地球儀は90.23(類注1(b))。
    • 起きやすい状況:「地球儀=4905」と思い込み、立体加工の有無を見ない。
    • 典型的な影響:税関で現物検査、分類差し戻し。
    • 予防策:断面写真・仕様(凹凸/成形)を事前に準備。
  • 事例名:未使用切手セットを4907で申告したが、初日カバー等が混在
    • 誤りの内容:97.04(初日カバー等の収集品)が混在すると第97類側へ(類注1(d))。
    • 起きやすい状況:コレクター向け商品を「未使用切手」と一括で扱う。
    • 典型的な影響:分類のやり直し、内容物ごとの分割申告を求められる。
    • 予防策:商品構成リスト(消印/初日カバーの有無)を作り、品目分割の要否を事前に検討。

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 通常の印刷物(紙製品)自体は、動植物検疫の中心品目ではありません(ただし梱包材が木材の場合は別途留意)。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 印刷物そのものは通常対象外ですが、装丁・表紙に規制素材(象牙等)が使われる特殊ケースでは別途確認が必要です(章97や章42等に飛ぶ可能性もあり)。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 第49類には「設計図・図案・仕様書的な文書」が登場しますが、外為法上の“技術データ”は文書や設計図、仕様書、マニュアル等を含むとされ、冊子の送付・持ち出しも「技術の提供」になり得ます(内容が規制対象技術に該当する場合)。
    • 実務上は、HS分類(49類)とは別軸で、**該非判定(貨物/技術)**と取引審査が必要になることがあります。
  • その他の許認可・届出
    • 輸入禁止(日本):税関は、わいせつ物等(公序良俗を害するもの)、児童ポルノ、知的財産権侵害物品、偽造・変造紙幣や有価証券等の輸入を禁止事項として掲げています(印刷物・出版物はここに該当し得ます)。
    • 文化財の輸出:国宝・重要文化財等は原則輸出禁止/許可制で、輸出には文化庁の許可等が必要になる旨が公表されています(古文書・古地図・古書などが該当する場合あり)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 税関:輸出入禁止・規制品目(禁止物品・知財侵害物品等)
    • 経産省:安全保障貿易管理(技術提供Q&A/ガイダンス)
    • 文化庁:文化財の国際関連・輸出関連情報
  • 実務での準備物(一般論):
    • 印刷物の現物見本/データ(PDF)、用途説明、販売形態(有償/無償、販促配布等)
    • 4907/97.04絡みは、消印有無・セット構成表
    • 技術資料(図面等)絡みは、該非判定資料、最終需要者・用途、社内承認記録

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 現物/写真(表紙・裏表紙・中面)、サイズ、ページ数、製本材料(紙/非紙)
    • 内容の主目的(広告/教育/情報/芸術鑑賞)
    • 印刷方式(コピー/プリンタ/写真/感光複写等)
    • 立体(浮出し)加工の有無(地図・地球儀)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1の除外(37類、90.23、95類、97類)を再確認
    • 49.01/49.11の広告判定(類注5)
    • 49.05のHS版(2017/2022)を確認(4905.10の誤用防止)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名は「catalogue」「poster」等の曖昧語だけにしない(広告用/販売用、定期刊行物セット等の補足)
    • 税関提出用に、現物PDF・写真・仕様書を添付できる状態にする
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定のHS版でPSRを確認(税関も注意喚起)。
    • RCEPなどHS2022置換の有無も確認。
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 禁止物品(わいせつ物、児童ポルノ、知財侵害等)に該当しないかチェック
    • 技術資料(図面等)の海外提供に該当する場合、METIガイダンスで該非・許可要否を確認
    • 古書・古文書等で文化財該当の可能性がある場合、文化庁・税関の確認手続へ

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS2022 Chapter 49(見出し・類注) (参照日:2026-02-22)
    • WCO HS2017 Chapter 49(見出し・類注) (参照日:2026-02-22)
    • HS2017→HS2022 相関表(49.05の再編理由・移管先) (参照日:2026-02-22)
    • WCO HS2022 Table of Contents(Section Xに部注がない構成確認) (参照日:2026-02-22)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 実行関税率表(第49類 類注)49r.pdf (参照日:2026-02-22)
    • 関税率表解説(第49類)49r.pdf(印刷の実務的整理、48/39等との境界) (参照日:2026-02-22)
    • 第7部注(プラスチック/ゴムの印刷物→49類)E7b.pdf (参照日:2026-02-22)
    • 輸出入禁止・規制(禁止物品:わいせつ物、児童ポルノ、知財侵害等) (参照日:2026-02-22)
    • RCEP:HS2022版品目別規則の採択・実施(2023/1/1〜) (参照日:2026-02-22)
    • 品目別原産地規則(HS版違い注意)検索画面 (参照日:2026-02-22)
  • 安全保障貿易管理(日本)
    • 経産省:安全保障貿易管理Q&A(技術=文書・設計図・仕様書等を含む) (参照日:2026-02-22)
    • 経産省:安全保障貿易管理ガイダンス(技術データ例、冊子送付等) (参照日:2026-02-22)
  • 文化財(輸出)
    • 文化庁:文化財の海外持ち出し(原則禁止/制限の説明) (参照日:2026-02-22)
    • 経産省:国宝・重要文化財等の輸出に関する案内 (参照日:2026-02-22)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第48類:紙及び板紙並びに製紙用パルプ、紙又は板紙の製品(Paper and paperboard; articles of paper pulp, of paper or of paperboard)

用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)
また、HSコードは原則6桁、日本の国内コード(輸入統計品目等)は8桁/9桁等の細分がある点を混同しないでください。


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 新聞用紙(ニュースプリント)4801(定義あり)
    • コピー用紙・印刷用の非塗工紙(A4等を含む)4802
    • 段ボール原紙(クラフトライナー、フルーティング等)4804/4805
    • 塗工紙(無機物塗工:コート紙等)4810、その他の塗工・含浸・ラミネート紙 4811
    • 段ボール箱・紙袋などの包装容器 4819
    • トイレットペーパー、ティッシュ等(ロール幅36cm以下等)4818
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 木材パルプ・古紙(回収紙)そのもの → 第47類(例:古紙 4707)
    • プラスチック層が全厚の過半を占める紙/板紙のラミネート材(壁紙4814を除く)→ 第39類
    • 写真感光紙(3701〜3704)・試薬含浸紙(3822)など → 第37類/第38類
    • 研磨紙(サンドペーパー)→ 6805
    • (重要)紙っぽく見える紙おむつ・生理用ナプキン等第96類 9619(第48類注で除外)
    • 印刷内容が主用途に対して「付随的でない」印刷物 → 第49類(例外:4814/4821)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「紙の素材(ロール/シート)」か「紙の製品(成形品・容器・事務用品)」か(概ね 4801〜4811 vs 4812〜4823)
    2. サイズ(ロール幅/シート寸法):4803〜4809は一定サイズ以上に限定(小ロール等は別項へ行きがち)
    3. 印刷・意匠の意味合い:印刷が「単なる付随」かどうかで48類↔49類が分かれる(例外あり)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 紙×プラスチックの複合材(ラミネート):39類に飛ぶ条件(厚み比)を見落としやすい
    • 包装(4819)×印刷(49類):販促物扱いになると章が変わり得る
    • 衛生用品:過去(HS2007)では48類にいた品目がHS2012で9619へ移動した経緯があり、社内品名が古いと事故りやすい

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出しと注で決める):第48類は、類注(特にサイズ制限・除外・定義)が強く効きます。まず類注で“そもそも48類に残るか”を確認します。
    • GIR6(6桁の決定):4802・4804・4805等は、重量・繊維組成・強度指標(Mullen、CMT等)で6桁が変わります(サブヘディング注に定義あり)。
    • GIR3(複合品・組合せ品):例:紙+樹脂の多層材は「どの層が本質か」以前に、類注で39類へ飛ぶ条件があるため、まず注を優先して確認します。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 材質:繊維(機械パルプ比率、漂白/未漂白)、塗工材(無機 vs 樹脂)、含浸の有無
    • 状態:ロール/シート、幅・寸法、加工度(塗工・ラミネート・型抜き・成形)
    • 用途:新聞印刷用、包装用、衛生用、壁装用、ラベル用等(注で定義される用途概念あり)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:パルプ/古紙の段階か?
    • はい → 第47類(例:木材パルプ、古紙)へ
    • いいえ → Step2へ
  • Step2:形がロール/シート中心の「紙そのもの」か?
    • はい → 4801〜4811を中心に検討(新聞用紙/印刷用紙/クラフト/塗工紙など)
    • いいえ(箱・袋・帳簿・ラベル・成形品等) → Step3へ
  • Step3:「紙製品」なら機能で分岐
    • 壁紙 → 4814(定義:幅45〜160cmなど)
    • トイレット/ティッシュ等(幅36cm以下ロール等) → 4818
    • 包装容器(箱・袋) → 4819
    • 事務・文具(ノート、バインダー等) → 4820
    • ラベル → 4821(印刷されても原則ここ)
    • その他(紙コップ、モールドパルプ品等) → 4823
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 48類 ↔ 39類:プラスチック層が厚いラミネートは39類(壁紙は例外)
    • 48類 ↔ 49類:印刷が主用途に対して付随的でないと49類(例外:4814/4821)
    • 4818 ↔ 9619:おむつ等の衛生用品は9619(48類から除外)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

※見出しの要旨はHS条文(HS2022)を実務向けに要約しています。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
4801新聞用紙(ニュースプリント)新聞輪転用紙類注でニュースプリント定義あり(繊維比率・粗さ・坪量・寸法)
4802筆記・印刷等の非塗工紙/板紙(手すき含む)コピー用紙、印刷用紙、手すき和紙類注で4802の定義あり(灰分・白色度・破裂指数等)。フィルター紙等は除外
4803衛生用原紙・同種紙、セルロース繊維の綿状物等(ロール/シート)ティッシュ原紙、タオル原紙4803〜4809は一定サイズ以上のみ(類注8)
4804非塗工クラフト紙/板紙クラフトライナー、重袋用紙「クラフト」の定義(類注6)+サブヘディング注で強度要件あり
4805その他の非塗工紙/板紙(注3程度の加工まで)フルーティング、中芯原紙、テストライナー等サブヘディング注にCMT・Mullen等の定義あり
4806パーチメント紙・耐脂紙・グラシン紙・トレーシング等グラシン紙、トレーシングペーパー特殊紙系。用途よりも紙の種類/性状で判断
4807複合紙/複合板紙(貼り合わせ)合紙、積層紙(非塗工)表面塗工/含浸があると他項へ行く場合
4808段ボール状・しわ加工等の紙/板紙片面段ボール、エンボス紙形状加工の有無(コルゲート等)
4809カーボン紙・ノーカーボン紙等(ロール/シート)カーボン紙(大判)、複写紙(大判)サイズ条件(類注8)。小判・箱入り等は4816へ行きやすい
4810無機物(カオリン等)塗工紙/板紙(他塗工なし)コート紙(無機塗工)「無機塗工+他塗工なし」が核(他コートがあると4811寄り)
4811それ以外の塗工/含浸/被覆/ラミネート紙等(ロール/シート)粘着紙、PEラミ紙、タール紙プラ層が過半厚だと39類(壁紙除く)
4812紙パルプ製フィルターブロック等紙パルプのフィルターブロック形状が「ブロック/板」タイプ
4813巻紙(シガレットペーパー)巻紙、巻紙チューブ幅5cm以下ロール等の区分あり
4814壁紙・類似壁装材、紙製窓透明材壁紙、ボーダー、壁面パネル幅45〜160cm等の定義。床にも使えるものは4823へ
4815(欠番:HSで未使用)HS条文上「[48.15]」として欠番扱い
48164809以外の複写紙等、謄写版原紙、オフセット用原紙箱入りカーボン紙、ノーカーボン紙、小巻見出しで4809除外が明示。小判・セット品で出やすい
4817封筒・レターカード等、文具セット封筒、ポストカード、レターセット内容物が「紙製文具の詰合せ」か確認
4818トイレット紙等(幅36cm以下ロール等)、家庭/衛生/病院用紙製品、紙製衣類等トイレットペーパー、ティッシュ、紙タオルおむつ等は9619。4818は紙・セルロース綿状物の家庭/衛生用途
4819紙製の箱・袋など包装容器、事務用の箱類等段ボール箱、紙袋、ファイル箱印刷が販促主用途だと49類の検討余地(類注12)
4820帳簿・ノート等、バインダー、事務用フォーム等ノート、手帳、バインダールーズシートは除外(類注10)
4821紙/板紙のラベル(印刷の有無を問わず)シールラベル、下げ札類注12の例外で印刷されても48類に残る
4822紙製ボビン等(糸巻き芯など)糸巻き芯、紙管繊維用かその他かで区分あり
4823その他(型抜き紙、紙食器、モールドパルプ品等)紙コップ、紙皿、卵トレー、フィルター紙壁紙でも床にも使えるものはここ(類注9)。ジャカード用穿孔カード等も例示

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類でよく出る軸)
    • 寸法:ロール幅(36cm/28cm/45〜160cmなど)、シート寸法(例:A4相当の上限)
    • 塗工の種類:無機塗工(4810)か、樹脂/粘着等(4811)か
    • 繊維の由来/比率:機械パルプ比率(ニュースプリントや軽量塗工紙の定義で登場)
    • 物性試験値:Mullen破裂強さ、破裂指数、CMT、引裂/引張(段ボール原紙で重要)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 4801(ニュースプリント) vs 4802(筆記・印刷用の非塗工紙)
      • どこで分かれるか:ニュースプリントは**定義(繊維比率・粗さ・坪量・寸法)**を満たす必要
      • 判断に必要な情報:
        • 機械/ケミ機械パルプ由来繊維比率(≥50%か)
        • 坪量(40〜65 g/m²か)
        • 表面粗さ(Parker Print Surf)
        • ロール幅/シート寸法(>28cm等)
      • 典型的な誤り:単に「新聞に使う紙」だから4801、と用途だけで決めてしまう
    2. 4803(衛生用原紙:大判ロール/シート) vs 4818(トイレット/ティッシュ等:小幅ロール等)
      • どこで分かれるか:4803等(4803〜4809)は幅36cm超等のサイズ条件がある一方、4818は幅36cm以下ロール等が明示
      • 判断に必要な情報:ロール幅、シート寸法、最終用途(家庭/衛生用途としての形態)
      • 典型的な誤り:「ティッシュ原紙(大判)」を、完成品(4818)と混同
    3. 4804(クラフト紙/板紙)内部の区分(例:クラフトライナー/重袋用紙)
      • どこで分かれるか:サブヘディング注で、重量と強度(Mullen等)、または破裂指数・伸び等の要件が設定
      • 判断に必要な情報:紙の抄造方式(machine-finished等)、坪量、Mullen破裂強さ、引裂/引張、伸び(試験成績書)
      • 典型的な誤り:仕入先の呼称「kraftliner」「sack kraft」をそのまま信じ、試験条件・規格根拠を確認しない
    4. 4810(無機塗工) vs 4811(その他の塗工・含浸・ラミネート等)
      • どこで分かれるか:
        • 4810:カオリン等無機物塗工で、かつ「他の塗工がない」タイプ
        • 4811:粘着、樹脂含浸/被覆、タール/アスファルト、プラ被覆(接着剤を除く)等
      • 判断に必要な情報:塗工層の材質(無機/有機)、多層構成、接着剤の有無、仕様書(層構成図)
      • 典型的な誤り:見た目が「コート紙」だから4810、と塗工の種類を確認しない
    5. 4809(複写紙:大判ロール/シート) vs 4816(4809以外の複写紙・ステンシル等)
      • どこで分かれるか:4816は「4809以外」が明記され、実務上は小判・箱入り・セット形態で4816に寄りやすい
      • 判断に必要な情報:ロール幅/シート寸法(類注8の条件に該当するか)、梱包形態、用途(謄写/オフセット用の原紙か)
      • 典型的な誤り:ノーカーボン紙を一律4809としてしまう(サイズ・形態の確認不足)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第48類が属する第X部(Section X)は、部注(Section Notes)の規定が置かれていない構成です(他部では“Section Notes”が明示されるのに対し、Section Xは章立てのみ)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 部注で一括定義されないため、第48類注(定義・除外・サイズ条件)を最優先で確認します(例:ニュースプリント定義、壁紙定義、印刷の扱い等)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • (本部は部注がないため)類注による他章移動が主です(例:39類、49類、96類への移動)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(重要なもの)
    • 注2(除外):石けん含浸紙(3401)、感光紙(37類)、試薬含浸紙(3822)、プラ層が厚い複合材(39類)等を除外
    • 注4(ニュースプリント定義):機械/ケミ機械繊維≥50%、坪量40〜65g/m²、粗さ>2.5µm等
    • 注5(4802定義):灰分・白色度・破裂指数・厚さ等の条件。フィルター紙等は4802に入らない
    • 注7(4801〜4811のタイブレーク):複数見出しに該当する場合は番号が後の見出し
    • 注8(サイズ条件):4803〜4809は幅36cm超等に限定
    • 注9(壁紙定義):幅45〜160cm等、床にも使えるものは4823へ
    • 注12(印刷の扱い):印刷が主用途に対して付随的でなければ49類(例外:4814/4821)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「ニュースプリント」定義:上記注4
    • 「クラフト紙・クラフト板紙」定義:総繊維の80%以上が化学サルフェート/ソーダ法繊維
    • 4802の「筆記・印刷等用紙」定義:上記注5(灰分等)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • プラ層が過半厚の紙/板紙ラミネート(壁紙4814除く)→ 第39類
    • 研磨紙 → 6805、金属箔貼り紙 → 第14/15部が多い
    • 衛生用品(ナプキン・おむつ等)→ 第96類 9619
    • 印刷が付随的でない紙製品 → 第49類(例外あり)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:紙×プラスチック複合材の扱い(48類↔39類)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 断面構成(紙層とプラ層の厚み比)
      • プラ層が「全厚の過半」か
      • 壁装材(4814)に該当するか
    • 現場で集める証憑:
      • 層構成図、仕様書、材料証明、断面写真、厚み測定結果
    • 誤分類の典型:
      • 「紙にフィルムを貼っただけだから4811」と判断→実は39類要件に該当
  • 影響ポイント2:サイズ条件(4803〜4809の適用範囲)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • ロール幅(36cm超か)
      • シート寸法(片辺>36cmかつ他辺>15cmか)
      • 小判・最終消費形態(例:トイレット紙)か
    • 現場で集める証憑:
      • 図面、梱包仕様、製品ラベルの寸法表示、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • 小巻の複写紙を4809(大判用)にしてしまう
  • 影響ポイント3:壁紙(4814)定義と「床にも使える」製品(4823)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • ロール幅が45〜160cmか
      • 壁/天井装飾向けの表面加工か
      • 床材としても適する設計か(→4823)
    • 現場で集める証憑:
      • 施工用途の資料(カタログ)、幅、表面材の説明、施工方法
    • 誤分類の典型:
      • 「壁にも貼れる」床材を4814にしてしまう(注9で4823)
  • 影響ポイント4:印刷の意味合い(48類↔49類、例外あり)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 印刷が主用途に対して“付随(incidental/subsidiary)”かどうか
      • 4814(壁紙)・4821(ラベル)に該当するか
    • 現場で集める証憑:
      • 製品写真、デザイン面積/内容、用途説明、販売形態(販促物か)
    • 誤分類の典型:
      • 商品パッケージ(4819)と販促印刷物(49類)の線引きを品名だけで判断
  • 影響ポイント5:4801〜4811の“最後の見出し優先”ルール(注7)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • どの見出し説明に該当してしまうか(複数該当の有無)
    • 現場で集める証憑:
      • 加工内容一覧(塗工/含浸/印刷/表面サイズ等)
    • 誤分類の典型:
      • 複数見出しに該当し得るのに、先に見つけた見出しで固定してしまう

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:紙おむつ・生理用ナプキン等を4818にしてしまう
    • なぜ起きる:見た目が「紙っぽい」「衛生用品」なので48類に寄せがち
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):第48類注で第96類(例:9619)を除外
    • 予防策:
      • 確認資料:製品構成(吸収体・不織布等)、用途(おむつ/ナプキン/ライナー)
      • 社内質問例:「これは紙製品ですか?それとも吸収性衛生用品(9619相当)ですか?」
  2. 間違い:紙+プラのラミネートを一律4811にしてしまう
    • なぜ起きる:表面が紙なので“紙製品”だと思い込む
    • 正しい考え方:プラ層が過半厚だと39類(壁紙4814を除く)
    • 予防策:
      • 確認資料:断面図、厚み測定、材質証明
      • 社内質問例:「プラ層は何µm?全体厚みは?過半ですか?」
  3. 間違い:4803(原紙)と4818(完成品)を混同
    • なぜ起きる:「ティッシュ」「トイレット」という商品名で判断してしまう
    • 正しい考え方:4803〜4809はサイズ条件があり、4818は幅36cm以下ロール等が明示
    • 予防策:
      • 確認資料:ロール幅・シート寸法、出荷形態(原紙か最終消費形態か)
      • 社内質問例:「これは加工前の原紙ロールですか?最終消費者向けの小巻ですか?」
  4. 間違い:4809(複写紙)と4816(4809以外の複写紙等)を取り違える
    • なぜ起きる:「ノーカーボン紙=4809」と固定観念
    • 正しい考え方:4816は見出しで4809を除外し、形態(小判・箱入り等)で4816に寄ることが多い
    • 予防策:
      • 確認資料:寸法(類注8該当か)、梱包、用途(ステンシル/オフセット原紙か)
      • 社内質問例:「ロール幅は36cm超?シートは大判?箱入りセット?」
  5. 間違い:コート紙を全部4810(無機塗工)にしてしまう
    • なぜ起きる:「コート紙」という業界用語が広い
    • 正しい考え方:4810は無機塗工で“他の塗工がない”前提。樹脂・粘着等が絡むと4811側
    • 予防策:
      • 確認資料:塗工材の成分(無機/有機)、層構成
      • 社内質問例:「塗工はカオリン系?樹脂系?粘着剤は?」
  6. 間違い:段ボール原紙の4804/4805で、強度要件を確認せずに分類
    • なぜ起きる:仕入先の品名(kraftliner/testliner等)を鵜呑みにする
    • 正しい考え方:サブヘディング注にMullen、CMT、破裂指数等の定義がある
    • 予防策:
      • 確認資料:試験成績書(Mullen、CMT30等)、坪量、原料(回収パルプ比率)
      • 社内質問例:「テストライナー(回収パルプ主体)ですか?CMT値/Mullenは?」
  7. 間違い:壁紙(4814)の定義(幅・用途)を見落とす
    • なぜ起きる:見た目が“壁紙っぽい”で判断
    • 正しい考え方:幅45〜160cm等の定義。床にも使えるものは4823
    • 予防策:
      • 確認資料:ロール幅、用途(壁/天井専用か床兼用か)
      • 社内質問例:「床にも施工可能な仕様(耐摩耗等)ですか?」
  8. 間違い:印刷が多い紙製品を48類のままにする/逆に49類に飛ばしすぎる
    • なぜ起きる:印刷の“主従関係”が曖昧
    • 正しい考え方:印刷が主用途に対して付随的でないと49類(ただし4814/4821は例外)
    • 予防策:
      • 確認資料:印刷内容(文章・絵柄の役割)、販売形態(販促物か容器か)
      • 社内質問例:「印刷は識別・装飾程度?それとも内容物(情報)が商品価値ですか?」

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。
    例:段ボール箱(4819)なのに、紙原紙(4804/4805)でPSRを見てしまうと、工程・材料評価軸がズレて原産性判断が崩れます
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品HSと材料HS(原紙・接着剤・フィルム等)を混同
    • 「紙製」としてまとめ、39類相当のラミ材を材料側で見落とす

(実務ツール例)日本税関のPSR検索・相関表案内は、協定別に参照しやすい入口になります。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定によってPSRが参照するHS版が異なることがあります(HS2022の6桁とズレる場合あり)。
    • 例:RCEPのPSR付属書はHS2012ベースで構成されている旨が示されています。
    • 例:協定付属書が2017年改正HS(HS2017)ベースである旨が明記されている例があります。
  • ズレる場合の注意(一般論):
    • 協定が参照するHS版に合わせてPSRを確認
    • HS2022で社内管理している場合は、**相関表(旧→新)**で突合

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 最低限そろえるもの(一般論)
    • 材料表(BOM)、材料ごとの原産国、非原産材料のHS、原価
    • 工程表(どこで抄紙/塗工/ラミネート/製袋/製箱を行うか)
    • 製品仕様(坪量、層構成、塗工材、用途)
  • 証明書類・保存要件:協定・運用で異なるため、最新ガイドを確認(一般論)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022文言修正第48類注2(q)例示の「napkin liners for babies」→「napkin liners」に変更“おむつライナー”類の除外(96類扱い)をより一般化して誤解を減らす可能性
HS2017→HS2022文言修正第48類注12「not merely incidental」→「not merely subsidiary」に変更48類↔49類の境界(印刷の主従)説明の表現が変化。実務上は「印刷が主用途か」をより明確に確認したい
HS2017→HS2022(実務上)変更なしHS6桁(第48類)HS2017↔HS2022の相関表上、第48類の6桁改編対象が見当たらない(=新設/分割/統合なしの扱い)6桁番号の大規模な組替え対応は原則不要(ただし国内コードは別途改正あり得る)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料
    • WCOのHS条文(HS2017 第48類、HS2022 第48類)を比較し、類注2(q)と類注12の文言差を確認しました。
    • WCOのHS2017↔HS2022相関表(Table I/II)を参照し、第48類の6桁改編(新設/分割/統合)に該当する掲載が見当たらないことを根拠に、「6桁レベルの構造変更は原則なし」と整理しました。
  • 何が変わったと判断したか
    • コード体系(6桁)の大枠は維持されつつ、類注(解釈ルール)の文言が一部更新された、と判断しています。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

※ここは「可能な範囲で」の整理です。第48類は大規模な見出し再編が相対的に少ない一方、**衛生用品の移動(HS2012)**のように周辺章の新設が第48類の実務に大きく影響した例があります。

版の流れ主要な追加・削除・再編旧コード → 新コード(または行き先)実務メモ
HS2007→HS2012新設(章外の新見出し)4818.40(衛生用品) → 9619.00(新設)以前の社内マスタ/品名が「4818.40」起点のままだと誤分類リスクが高い
HS2012→HS2017(注の整理)ニュースプリント定義に寸法適用条件が付いた等(類注の精緻化)定義・サイズ条件を“用途”だけで代替しない運用が重要
HS2017→HS2022文言修正類注2(q)、類注12の表現変更印刷の主従、衛生用品除外の確認をより丁寧に

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):紙ラミネート材を4811で申告→39類該当
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第48類注2(g)(プラ層が過半厚なら39類、壁紙除く)
    • 起きやすい状況:商品名が「ラミネート紙」「紙パック材」等で、層厚比を確認していない
    • 典型的な影響:分類更正、追加納税、検査強化、納期遅延(一般論)
    • 予防策:断面図・厚み測定を添付して事前相談(教示)も検討
  • 事例名:おむつライナーを4818で申告→9619
    • 誤りの内容:第48類注2(q)(96類の衛生用品を除外)
    • 起きやすい状況:社内の旧HS(2007時代)情報や通称で運用している
    • 典型的な影響:分類更正、税率差の追徴、規制(表示/安全)確認のやり直し(一般論)
    • 予防策:用途(衛生用品)・構造(吸収体)を明確化、HS改正履歴をマスタに反映
  • 事例名:販促用の印刷物付き紙製品を48類で申告→49類
    • 誤りの内容:第48類注12(印刷が主用途に対し付随的でない場合は49類。例外4814/4821)
    • 起きやすい状況:パッケージとチラシ/カタログの混載、インボイス品名が曖昧
    • 典型的な影響:部分的に分類差替え、仕分け検査、通関遅延(一般論)
    • 予防策:品目ごとに用途説明・写真を用意し、混載でも品名を分離記載
  • 事例名:壁紙の要件未確認で4814申告→4823
    • 誤りの内容:第48類注9(幅・用途要件、床兼用は4823)
    • 起きやすい状況:建材カタログで「壁/床どちらもOK」なのに壁紙扱いしてしまう
    • 典型的な影響:分類更正、追加納税、サンプル提出要求(一般論)
    • 予防策:用途(床施工の可否)を明記、ロール幅・表面材仕様を提出

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • **食品用の器具・容器包装(紙コップ、紙皿、食品包装紙など)として輸入し、販売/営業使用する場合、食品衛生法に基づく輸入届出(検疫所)**が必要となる枠組みがあります。
    • 「器具・容器包装」には規格・基準があり、適合確認が求められます(一般論)。
    • 準備物(一般論):材質情報、カラー写真、パーツリスト、試験成績書など(検疫所案内に例示)。
  • その他の許認可・届出
    • 国内販売時の表示:ティシュ/トイレットペーパー等は、消費者向け表示のガイド(寸法・枚数等)があります(輸入通関そのものとは別論点ですが、販売まで見据える場合に要確認)。
  • 安全保障貿易管理
    • 第48類一般は典型的なリスト規制品ではないことが多いですが、最終用途・仕様で別管理が乗る可能性はゼロではないため、社内の輸出管理フローで確認してください(一般論)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 厚生労働省(食品等輸入手続、器具・容器包装)
    • 検疫所(輸入届出・必要資料)
    • 消費者庁(家庭用品表示のガイド)
    • 日本税関(関税率表・解説、PSR検索等)
  • 実務での準備物(一般論):
    • HS分類根拠:仕様書、組成表、層構成図、寸法、用途説明、写真、試験成績書(必要なら)
    • 規制対応:食品接触用途なら材質情報・試験成績書・届出用情報

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 形状:ロール/シート/成形品、ロール幅・シート寸法
    • 材質:繊維(機械パルプ比率、漂白/未漂白)、塗工材(無機/樹脂)、層構成
    • 加工:塗工、含浸、ラミネート、粘着、印刷(内容と役割)
    • 用途:新聞、包装、衛生、壁装、事務用品、食品接触の有無
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 39類へ飛ぶ条件(プラ層過半)を確認
    • 印刷が付随的か(48↔49)を確認
    • 衛生用品(9619)除外を確認
    • サイズ条件(4803〜4809)を確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名は「紙」「箱」だけでなく、用途+材質+形状+加工まで書く
    • 必要に応じて写真・仕様書を添付(税関照会対策)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 最終製品HSでPSRを確認(材料HSも整理)
    • HS版ズレがないか(相関表で突合)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 食品用の器具・容器包装なら輸入届出と基準適合確認
    • 国内販売時表示(ティシュ/トイレット等)も並行確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS Nomenclature 2022:Chapter 48 (参照日:2026-02-22)
    • HS Nomenclature 2017:Chapter 48 (参照日:2026-02-22)
    • HS Correlation Tables(HS2017↔HS2022:Table I/II) (参照日:2026-02-22)
    • HS Nomenclature 2007:Chapter 48(旧版) (参照日:2026-02-22)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 日本税関:第48類(HS2022)類注(和文PDF) (参照日:2026-02-22)
    • 相関表(HS2007↔HS2012)PDF(日本税関掲載) (参照日:2026-02-22)
    • PSR検索等(日本税関) (参照日:2026-02-22)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • RCEP:PSR付属書がHS2012ベースである旨の資料例 (参照日:2026-02-22)
    • HS2017ベースの付属書である旨が明記された資料例(外務省) (参照日:2026-02-22)
  • 規制(日本)
    • 厚生労働省:食品等輸入手続(器具・容器包装を含む) (参照日:2026-02-22)
    • 厚生労働省:Utensils, Containers, and Packaging(規格・基準) (参照日:2026-02-22)
    • 検疫所(例:輸入届出の準備資料案内) (参照日:2026-02-22)
    • 消費者庁:ティシュ/トイレットペーパー表示ガイド (参照日:2026-02-22)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第47類:木材パルプ、繊維性セルロース材料のパルプ及び古紙(Pulp of wood or of other fibrous cellulosic material; recovered (waste and scrap) paper or paperboard)実務向け整理

  • 用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)
  • 本資料でいう「HSコード」は原則6桁(号)までを指します。**8桁/9桁等は国内コード(日本の統計品目番号等)**として区別します。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 木材パルプ(機械パルプ:例 GWP/TMP等)→ 4701
    • 化学木材パルプ(溶解パルプ)→ 4702
    • クラフトパルプ等(ソーダ/硫酸塩、溶解用以外)→ 4703
    • サルファイトパルプ等(亜硫酸、溶解用以外)→ 4704
    • 古紙由来の繊維パルプ(古紙を解繊して“パルプ”になったもの)→ 4706.20
    • 回収した古紙(段ボール古紙・新聞古紙・混合古紙など)→ 4707
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 紙・板紙そのもの(製品としての紙、ロール紙等)→ 第48類(4801〜)へ行きやすい
    • 紙製品(袋、箱、ティッシュ等)→ 第48類
    • 紙以外の繊維くず(ウエス等)第63類 6310(繊維製のぼろ)
    • セルロース誘導体(セルロースアセテート等)第39類(例:3912) へ行きやすい(※“パルプ”ではなく化学加工品)
    • 木材チップ/木くず第44類(例:4401) へ行きやすい(※パルプ化前)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「パルプ」か「古紙(紙くず)」か(4706 vs 4707)
    2. 化学木材パルプが“溶解用(4702)”に該当するか(類注の定義条件を満たすか)
    3. 木材由来か/木材以外(竹・綿リンター等)由来か(4701-4705 vs 4706)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • **4702(溶解パルプ)**は類注に“数値基準”があるため、裏付け(試験成績等)が弱いと税関照会・再分類になりやすいです。
    • **4707(古紙)**は、環境法令上の「廃棄物」該当性が絡むと、通関以前に手続・許可が問題化し得ます(後述)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1:見出し(品目名)と、関連する注(類注)でまず決めます。第47類は「製造工程(機械/化学/複合)」「原料(木材/その他繊維性セルロース/古紙)」「漂白の有無」「樹種(針葉樹/非針葉樹)」が見出し構造に直結します。
    • GIR6:6桁(号)レベルの分岐(例:4703.11/19/21/29)を、同じ論理で当てはめます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(この類で特に重要):
    • 状態:紙(シート/ロール)なのか、解繊されたパルプなのか、単なる**古紙(くず)**なのか
    • 製造方法:機械パルプ/化学パルプ(クラフト・サルファイト)/機械+化学の複合
    • 品質情報:漂白の有無、樹種、(溶解パルプなら)不溶解分・灰分などの分析値

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:これは「紙・板紙(製品)」ですか?それとも「パルプ」または「古紙(くず)」ですか?
    • 紙・板紙(製品)→ 原則 第48類へ(第47類ではない)
    • パルプ/古紙(くず)→ Step2へ
  • Step2:古紙(くず)そのものですか?(回収した紙/板紙が、裁断・選別程度で“紙の形”を保っている)
    • Yes → 4707(古紙)へ
    • No(解繊してスラリー/シート化前の繊維状態=パルプ)→ Step3へ
  • Step3:パルプの原料は木材ですか?
    • 木材 → Step4へ
    • 木材以外(綿リンター、竹、古紙由来など)→ 4706へ(細分は2-2参照)
  • Step4:木材パルプの製法は?
    • 機械 → 4701
    • 化学 → Step5へ
    • 機械+化学の複合 → 4705
  • Step5:化学木材パルプは「溶解用(4702)」の定義を満たしますか?(類注の数値条件)
    • Yes → 4702
    • No → プロセスで分岐:クラフト等(4703)/サルファイト(4704)
  • よく迷う境界:
    • 4706.20(古紙由来“パルプ”) vs 4707(古紙そのもの)
    • 4702(溶解パルプ) vs 4703/4704(溶解用以外の化学木材パルプ)
    • 第47類(パルプ/古紙) vs 第48類(紙・板紙・紙製品)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第47類は4桁(項)が少ないため、全列挙します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
4701機械木材パルプ砕木パルプ(GWP)、TMP等木材由来・機械処理主体。化学パルプは4702-4704。
4702化学木材パルプ(溶解用)溶解パルプ(レーヨン/セルロース誘導体原料)類注に数値定義(NaOH不溶解分・灰分)。満たさなければ4703/4704へ。
4703化学木材パルプ(ソーダ/硫酸塩=クラフト)、溶解用以外クラフトパルプ(未晒/晒)未漂白/漂白、針葉樹/非針葉樹で6桁分岐。
4704化学木材パルプ(亜硫酸=サルファイト)、溶解用以外サルファイトパルプ(未晒/晒)未漂白/漂白、針葉樹/非針葉樹で6桁分岐。
4705機械的工程+化学的工程の組合せで得た木材パルプCMP/CTMP等(木材由来の複合パルプ)木材由来に限る。木材以外(竹等)の複合は4706.93側。
4706古紙由来繊維パルプ又はその他繊維性セルロース材料のパルプ古紙パルプ、綿リンターパルプ、竹パルプ「紙くず」状態は4707。木材由来は4701-4705。
4707古紙(回収した紙・板紙のくず)段ボール古紙、新聞古紙、混合古紙“紙の形”を保つ回収くず。汚染・混合は規制や別分類論点。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 製法:機械(4701)/化学(4702-4704)/複合(4705、4706.93)
    • 用途・品質(定義):溶解用(4702)は類注で数値定義(試験条件つき)
    • 漂白:未漂白 vs 半漂白/漂白(4703、4704の下位分岐)
    • 樹種:針葉樹 vs 非針葉樹(4703、4704)
    • 古紙の“状態”:パルプ化済み(4706.20)か、古紙のまま(4707)
    • 古紙の種類:クラフト/段ボール系(4707.10)、漂白化学パルプ主体の紙(4707.20)、機械パルプ主体(4707.30)、その他混合(4707.90)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 4702(溶解用) vs 4703/4704(溶解用以外の化学木材パルプ)
      • どこで分かれるか:類注の数値条件を満たすか
        • 試験:18% NaOH溶液(20℃)に1時間浸漬後の不溶解分
        • 基準:ソーダ/硫酸塩(クラフト)系は不溶解分 92%以上、亜硫酸(サルファイト)系は88%以上、さらにサルファイト系は灰分 0.15%以下
      • 判断に必要な情報:製法(クラフト/サルファイト)、分析成績(不溶解分・灰分)、製品仕様書(溶解用途のグレード)
      • 典型的な誤り:「用途が“レーヨン用”と聞いた」だけで4702にしてしまい、分析値がなく否認される
    2. 4703(クラフト等) vs 4704(サルファイト)
      • どこで分かれるか:化学パルプの製造プロセス(硫酸塩/ソーダか、亜硫酸か)
      • 判断に必要な情報:メーカーの工程情報(Kraft / Sulphite)、SDS、仕様書(製法の記載)
      • 典型的な誤り:「硫黄を使う=サルファイト」と短絡し、クラフト(硫酸塩)を4704にしてしまう
    3. 4706.20(古紙由来パルプ) vs 4707(古紙)
      • どこで分かれるか:“紙くず”のままか、解繊してパルプになっているか
      • 判断に必要な情報:写真(ベール状の古紙か、パルプシート/フレークか)、工程(離解・脱墨の有無)、形状(繊維化)
      • 典型的な誤り:「原料は古紙」なので4707と申告したが、実物は既にパルプ化された4706.20だった
    4. 4705(木材の複合パルプ) vs 4706.93(木材以外の複合パルプ)
      • どこで分かれるか:原料が木材か、その他繊維性セルロース材料か
      • 判断に必要な情報:原料(木材/竹/バガス等)、製法(機械+化学)
      • 典型的な誤り:竹パルプ(4706.30)や非木材パルプを「木材パルプの一種」と誤認して4705にしてしまう

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第10部(Section X:第47〜49類)には、部注(Section Notes)が置かれていません(WCOのHS構成上、Section Xでは“Section Notes”の記載がなく、Chapter 47〜49が列挙されています)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 「部注で一括定義される」タイプではないため、第47類は“類注(Chapter Notes)”と各見出し(Heading)の語が判断の軸です。
    • ただし、境界(第48類の紙・板紙、他部の化学品・繊維くず等)は多いので、他類側の注・定義で除外されるパターンは現場で起きます。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • Section Xに部注がないため、ここは「該当なし」とし、実務上は「類注」や「第48類側の定義・除外」で飛ぶと整理するのが安全です。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第47類の類注(注)は実務上ほぼ1点で、4702(化学木材パルプ:溶解用)の定義を数値で定めています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「化学木材パルプ(溶解用)」=
      • 18%水酸化ナトリウム溶液(20℃)に1時間浸漬後の不溶解分が
        • ソーダ/硫酸塩(クラフト)系:92%以上
        • 亜硫酸(サルファイト)系:88%以上
      • かつサルファイト系は灰分が0.15%以下
        という要件を満たすもの。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 上記条件を満たさない化学木材パルプは、4702ではなく、製法に応じて **4703(クラフト等)または4704(サルファイト)**に分類されます(“溶解用以外”側)。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です(第47類は主に1点)。

  • 影響ポイント1:4702(溶解パルプ)に入れるための“分析条件”
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 製法(クラフト/サルファイト)
      • 不溶解分(NaOH試験条件つき)
      • (サルファイトの場合)灰分
    • 現場で集める証憑(仕様書、成分表、MSDS、カタログ、写真、工程図など):
      • メーカー仕様書(Dissolving pulpである旨と、試験値)
      • 試験成績書(NaOH不溶解分%、灰分%)
      • 製造工程概要(Kraft/Sulphite)
    • 誤分類の典型:
      • 「用途が化学繊維だから」「名称がdissolving pulpだから」で4702とし、数値基準の裏付け不足で4703/4704に更正される

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:“古紙”と聞いたので全部4707にしてしまう(実際は古紙由来パルプ)
    • なぜ起きる:原料(古紙)に引っ張られ、製品状態(パルプ化済み)を見落とす
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):古紙そのものは4707、古紙から得た繊維パルプは4706.20
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 写真:ベール古紙か?パルプシート/フレークか?
      • 工程:離解・脱墨済みか?
      • 社内質問例:「出荷形態は“紙のまま”ですか、“繊維化(パルプ化)”されていますか?」
  2. 間違い:4702(溶解用)を“用途”だけで決めてしまう
    • なぜ起きる:営業資料や通称(dissolving)に依存し、類注の数値要件を確認しない
    • 正しい考え方:4702は**類注の定義(NaOH不溶解分・灰分)**を満たす必要
    • 予防策:
      • 試験成績書の入手(不溶解分%、灰分%)
      • 社内質問例:「4702の類注試験値(92/88、灰分0.15)は取れていますか?」
  3. 間違い:クラフト(硫酸塩)とサルファイト(亜硫酸)を混同(4703と4704の取り違え)
    • なぜ起きる:「硫黄を使う」など曖昧な理解で工程を特定できない
    • 正しい考え方:見出しは製法で分かれる(4703=ソーダ/硫酸塩、4704=亜硫酸)
    • 予防策:
      • 仕様書に「Kraft / Sulphite」を明記させる
      • 社内質問例:「蒸解薬品は何ですか?工程名(Kraft/Sulphite)は?」
  4. 間違い:漂白・未漂白を“白さの見た目”で判断
    • なぜ起きる:色味は保管・混入で変わり得る/半漂白もある
    • 正しい考え方:4703・4704は未漂白半漂白/漂白で号が分かれる
    • 予防策:
      • 仕様書で「Unbleached / Semi-bleached / Bleached」を確認
      • 社内質問例:「漂白工程(漂白剤の使用)の有無は?」
  5. 間違い:針葉樹/非針葉樹の確認不足(4703.11/19などの誤り)
    • なぜ起きる:混合材・購入材で樹種情報が伝わらない
    • 正しい考え方:4703・4704は針葉樹/非針葉樹で号が分かれる
    • 予防策:
      • 樹種(softwood/hardwood)の証明(仕様書、供給契約、製造ロット情報)
  6. 間違い:木材パルプ(4705)と非木材パルプ(4706)を混同
    • なぜ起きる:「パルプ=木材」という思い込み
    • 正しい考え方:4706は「古紙由来 or その他の繊維性セルロース材料」のパルプ
    • 予防策:
      • 原料の特定(竹、バガス、綿リンター等)
      • 社内質問例:「原料は木材100%ですか?非木材繊維は入っていますか?」
  7. 間違い:HS6桁と国内コード(8/9桁)を混同して書類が不一致
    • なぜ起きる:通関書類・原産地資料・販売管理で桁数がバラバラ
    • 正しい考え方:HSは6桁までが国際共通。8/9桁は国内コード。PSRも原則HS版(6桁)基準で読む
    • 予防策:
      • 社内マスターに「HS6桁」「国内コード」を別欄管理
      • インボイスはHS6桁を併記し、国内コードは必要時のみ別記
  8. 間違い:“紙のロール”を47類(パルプ/古紙)と誤認
    • なぜ起きる:「原料工程の途中」という説明で、実物の状態確認が不足
    • 正しい考え方:紙・板紙としての形状であれば原則48類側(紙・板紙)
    • 予防策:
      • 写真・サンプル確認(シート/ロールか、パルプシート/フレークか)

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します(誤ると原産性判断が崩れる):
    • 例:4707(古紙)を4706(古紙由来パルプ)と誤ると、PSR(CTH/WO等)の前提が変わり、原産性の結論が変わり得ます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料のHS(古紙・薬品・木材チップ等)と最終製品のHS(パルプ/古紙)を取り違える
    • “工程基準(製造行為)”がPSRにある場合、工程記録が必要なのに、BOMだけで判断してしまう

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定本文・付属書のPSRは、協定ごとに参照HS版が異なります(一般論として、必ず協定側の版を確認します)。
  • 例(本資料で参照した範囲の一次資料ベース):
    • RCEP:PSR(Annex 3A)は HS2012版ベースである旨が明記されています。
      • さらに、RCEPではPSRのHS2022へのトランスポーズ(移し替え)が採択され、各国で実施されている旨の解説資料もあります(運用は当事国ごとに最新確認が必要)。
    • CPTPP(TPP11):PSRや関税コミットメントは、**2017年直前のHS(HS2012)**で確定した旨のガイドがあります。
    • 日EU・EPA:PSRの付属書(Annex 3-B)に「Harmonized System classification (2017)」と明記されています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 通関は最新の国内コードで申告しつつ、PSRは協定が参照するHS版で読む必要があるため、相関表(correlation table)で“協定HS → 現行HS”を対応づけます。日本税関のPSR検索画面でも相関表参照が案内されています。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 基本データ(一般論):
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 第47類で“集め方が重要”になりやすい証憑:
    • 4701-4705(木材パルプ):木材原料の原産、蒸解・漂白工程、購入パルプなら製造国証明
    • 4707(古紙):どこで回収(収集)されたかの証憑(回収地/集荷記録等)※協定ルールにより扱いが異なるため要確認
  • 証明書類・保存要件:
    • 協定別の保管年限・様式があるため、社内手順書に落とし込み(一般論)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(少なくとも6桁体系・見出し構造)4701〜4707WCO公開のHS2017・HS2022のChapter 47の見出し/号が同一協定や社内マスターの移行負荷は小さい(※国内細分は別途)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料:
    • WCO公開のHS 2017版 Chapter 47 と、HS 2022版 Chapter 47 を比較すると、見出し(4701〜4707)および6桁(号)の列挙が同一であることを確認しました。
  • したがって:
    • HS2017→HS2022において、第47類は6桁レベルの新設・削除・分割・統合といった再編は確認できません(本資料で参照した一次資料ベース)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

ここでは、HS2007→2012→2017→2022の流れで、第47類(4701〜4707)の主要な動きを整理します。

版間追加・削除・再編の有無該当コード内容(要旨)旧コード→新コード
HS2007→HS2012実質「文言の明確化」(コード体系は維持)4706.932007では“semi-chemical”表現、2012では“機械+化学の組合せで得た”表現に明確化(同一概念の説明整理)4706.93 → 4706.93
HS2012→HS2017変更なし(6桁体系)4701〜4707見出し・号の列挙が同一変更なし
HS2017→HS2022変更なし(6桁体系)4701〜4707見出し・号の列挙が同一変更なし

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):溶解パルプ(4702)と申告したが、試験値が揃わない
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):4702の類注定義(不溶解分・灰分)を満たす裏付け不十分
    • 起きやすい状況:品名が“dissolving pulp”、用途がレーヨン向け、という情報だけで申告
    • 典型的な影響:更正(4703/4704への変更)、審査・照会で通関遅延
    • 予防策:メーカー試験成績書(NaOH不溶解分%、灰分%)を事前入手・保存
  • 事例名(短く):古紙(4707)輸入で“廃棄物該当”を指摘され手続停止
    • 誤りの内容:HS分類以前に、環境法令上の手続(バーゼル法/廃棄物処理法)確認不足
    • 起きやすい状況:混合・汚損・異物混入の古紙、用途説明が曖昧(単なる処分目的と見られる等)
    • 典型的な影響:貨物留置、追加書類要求、関係省庁確認で遅延
    • 予防策:品質基準(異物/汚染)と用途(再生利用)を明確化、必要なら事前相談
  • 事例名(短く):古紙由来パルプ(4706.20)を古紙(4707)で申告
    • 誤りの内容:製品状態(パルプ化済み)の取り違え
    • 起きやすい状況:取引名が「DIP(脱墨パルプ)」等でも、現物確認が弱い
    • 典型的な影響:分類更正、統計・原産地・契約条件(価格/歩留まり)への影響
    • 予防策:写真・サンプル・工程(離解/脱墨)を申告資料に残す
  • 事例名(短く):紙ロールをパルプとして申告(47類 vs 48類)
    • 誤りの内容:紙・板紙(第48類)を第47類として申告(状態の誤認)
    • 起きやすい状況:「原紙」「半製品」という社内呼称に引っ張られる
    • 典型的な影響:分類更正、税番差による規制・統計・PSR判断のやり直し
    • 予防策:形状(シート/ロール)と物性(紙かパルプか)を最優先で確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ):
    • その他の許認可・届出(廃棄物の越境移動関連)
      • 古紙(4707)や、汚損・混合物を含む貨物は、状況によってバーゼル法(特定有害廃棄物等)や廃棄物処理法の枠組みで手続が必要になる可能性があります。
        • 経産省(METI)はバーゼル法の概要・手引きを公表しています。
        • 環境省(MOE)は廃棄物等の輸出入手続・申請先を整理しています。
      • 実務ポイント:HSコードが4707でも、環境法上の「廃棄物該当性」は別途判断になり得るため、品質(汚染・混合)と用途(再生利用)を明確化し、必要なら事前相談が安全です。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省:バーゼル法(越境移動規制)関連ページ
    • 環境省:廃棄物・特定有害廃棄物等の輸出入/手続
  • 実務での準備物(一般論):
    • 貨物の性状説明(写真、成分/異物、含水率、梱包)
    • 用途(再生利用工程、受入先の処理能力・工程)
    • 取引契約書(再生利用目的、品質条件、受入拒否時の返送条項)
    • 必要に応じて、関係省庁の事前相談記録

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • パルプか?古紙か?紙製品か?(写真・サンプル)
    • 原料(木材/非木材/古紙)、製法(機械/化学/複合)
    • 漂白の有無、樹種(針葉樹/非針葉樹)
    • 溶解パルプ主張なら:不溶解分・灰分の試験値
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 4702の類注条件を満たす証憑があるか
    • 4706.20と4707の境界(パルプ化の有無)を再確認
    • 国内コード(8/9桁)を使う場面では、HS6桁との整合を確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名に「pulp / recovered paper」等、状態が分かる記載
    • 必要に応じて工程概要・仕様書を添付
    • 数量単位(重量ベースが一般的)とドライベースの扱い確認(契約条件)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版(HS2012/2017等)を確認
    • 相関表で協定HSと現行HSの対応付け(必要な場合)
    • 木材原料や古紙回収地など、原産性の根拠資料を保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 4707などで廃棄物該当性が疑われる場合:バーゼル法/廃棄物処理法の手続要否確認
    • 汚損・混合・異物混入リスクの事前評価(検査・滞留対策)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS条文)
    • WCO HS2022 Chapter 47(見出し・号、類注)〔参照日: 2026-02-22〕
    • WCO HS2017 Chapter 47(比較用)〔参照日: 2026-02-22〕
    • WCO HS2012/2007 Chapter 47(改正履歴確認)〔参照日: 2026-02-22〕
    • WCO HS2022 Table of Contents(Section Xに部注がないことの確認)〔参照日: 2026-02-22〕
  • 日本 税関・公的機関
    • 日本税関:第47類の類注(4702定義の和文)〔参照日: 2026-02-22〕
    • 日本税関:品目別原産地規則(PSR)検索画面(相関表案内含む)〔参照日: 2026-02-22〕
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • RCEP:Product-Specific Rules(Annex 3A)がHS2012版に基づく旨(日本税関公表資料)〔参照日: 2026-02-22〕
    • CPTPP:PSR等がHS2012で確定した旨のガイド(豪州当局資料)〔参照日: 2026-02-22〕
    • 日EU・EPA:Annex 3-B(PSR)がHS2017分類に基づく旨(MOFA公表資料)〔参照日: 2026-02-22〕
    • (参考)RCEP PSRのHS2022トランスポーズに関する解説(JETRO資料)〔参照日: 2026-02-22〕
  • 規制(廃棄物越境移動)
    • 経済産業省:バーゼル条約・バーゼル法(概要・手引き等)〔参照日: 2026-02-22〕
    • 環境省:廃棄物・特定有害廃棄物等の輸出入/手続(申請先等)〔参照日: 2026-02-22〕

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。