機械類の部分品分類で迷わないための実務解説(第16部注2を中心に)
はじめに
HSコード(関税分類)は、商品の性質を世界共通のルールで区分する仕組みです。分類は、見出しの文言と部・類の注に従って決めるのが原則で、これが通則1です。さらに、見出し(4桁)を決めた後は、号(6桁など)の選択を通則6で行います。(世界税関機構)
この中で「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」という表現は、とくに機械類・電気機器の部分品を分類するときに登場し、判断を大きく左右します。代表例が第16部注2(b)です。(税関官方网站)
この記事では、この表現の意味をビジネス実務(税番付与・社内分類メモ作成・税関照会資料作成)に落とし込み、迷いどころをつぶしながら全体像を整理します。

1. この表現の意味を最短で言い換える
「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」とは、部品の形状・仕様・機能・接続方式・互換性などの客観的特徴と、通常の流通実態から見て、使用先が特定の機器(または同一の項の複数機器)に強く結びついている状態を指します。
ここで重要なのは、英語原文の考え方では「実際に使ったか」ではなく「その用途に適するか(suitable for use)」に軸があることです。つまり、輸入者の予定用途だけで決める発想ではなく、物としての性格と一般的な用途を根拠にします。(世界税関機構)
2. まず押さえるべき前提
2.1 分類は見出しと注が優先
分類は、見出しの文言と部・類の注で決めるのが原則です。通則の中でも通則1が最優先の起点です。(世界税関機構)
「専用品だから機械の部分品の見出しへ」という直感はしばしば外れます。なぜなら、第16部注2は、部分品であっても先に独立の見出しに入れるべきものを明確に優先させる設計だからです。(税関官方网站)
2.2 第16部では、そもそも除外される物品がある
第16部注1には、第16部に含まれない物品が列挙されています。その中に、いわゆる汎用のねじ・ボルト等に相当する「汎用性の部分品(parts of general use)」が含まれており、これらは第16部の機械の部分品として扱わず、別の見出しに行くのが基本です。(世界税関機構)
実務ではここが最初の落とし穴です。部品に見えても、第16部注1で除外されるなら、注2の議論に入る前に別分類になります。(世界税関機構)
3. 第16部注2の結論を左右する「適用範囲」と「順番」
第16部注2は、機械の部分品の所属決定ルールを、順番つきで定めています。日本税関の解説(16b)でも、同じ順番で検討することが示されています。(税関官方网站)
3.1 注2が適用される範囲
第16部注2は、注1や第84類注1、第85類注1の除外等を前提にしたうえで、さらに注2の適用対象から外れる部分品を明記しています。
注2の枠組みで所属を決める「機械の部分品」には、次が除かれます。
- 第84.84項の物品の部分品
- 第85.44項から第85.47項までの物品の部分品(税関官方网站)
ここは、注2の議論を始める前に必ず確認が必要です。
3.2 実務用の判断フロー
第16部注2は、実務的には次の順で整理するとブレにくくなります。(税関官方网站)
手順0 第16部に入るか(注1の除外、汎用性の部分品など)
手順1 注2の適用対象か(84.84、85.44から85.47の部分品は除外)
手順2 注2(a)で決まるか
手順3 注2(b)の「もっぱら、または主として」で決まるか(ただし書きまで確認)
手順4 注2(c)で決める
次章から、この中身をそのまま使える形で説明します。
4. 注2(a)の意味
注2(a)は一言でいうと、部品であっても「それ自体が第84類または第85類の独立した見出しに当たるなら、原則その見出しに分類する」というルールです。(税関官方网站)
ただし、注2(a)には例外があり、次の見出しは除外されています(これらは典型的な部分品見出しや残余見出しです)。
第84.09項、第84.31項、第84.48項、第84.66項、第84.73項、第84.87項
第85.03項、第85.22項、第85.29項、第85.38項、第85.48項(税関官方网站)
実務の言い方に直すと、こうなります。
まず、部品が「バルブ」「ポンプ」「モーター」「蓄電池」など、そのものズバリの見出しに入るかを先に確認する。入るなら専用品でも基本はその見出し。入らない場合に、次の注2(b)の議論へ進む。(ジェトロ)
5. 注2(b)が意味すること
5.1 「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」部品はどこへ行くか
注2(a)に当たらない部品について、注2(b)は次を判断します。
特定の機械、または同一の項の複数の機械に、専ら又は主として使用される部品かどうか。(税関官方网站)
該当する場合、分類先は大きく2系統あります。(税関官方网站)
- その機械そのものの項
- 部分品見出し(第84.09、84.31、84.48、84.66、84.73、85.03、85.22、85.29、85.38)のうち該当する項
さらに、注2(b)は「第84.79項または第85.43項の機械を含む」と明記しています。つまり、84.79や85.43の機械向け部品も、同じ考え方で検討対象に入ります。(税関官方网站)
5.2 注2(b)のただし書きは2本ある
ここが実務上の重要ポイントです。注2(b)には、一般ルールより優先して分類先を指定するただし書きが2つあります。(税関官方网站)
- 第85.17項の物品と第85.25項から第85.28項までの物品に共通して主として使用する部分品は、第85.17項へ
- 第85.24項の物品に専ら又は主として使用する部分品は、第85.29項へ(税関官方网站)
この2つを落とすと、社内メモやブログ解説として不完全になります。
補足として、第85.24項はHS2022で新設された「フラットパネルディスプレイモジュール」に関する見出しであることが、日本税関のHS2022関連FAQでも説明されています。(税関官方网站)
6. 注2(c)の正しい理解
注2(c)は、注2(a)にも注2(b)にも当てはまらない「その他の部分品」の行き先を、見出し番号で明確に定めています。ここを曖昧に書くと誤解が出やすい部分です。(税関官方网站)
整理すると次のとおりです。(税関官方网站)
- まず、次の部分品見出しのうち、該当する項があればそこへ
第84.09項、第84.31項、第84.48項、第84.66項、第84.73項
第85.03項、第85.22項、第85.29項、第85.38項 - それでも該当する項がない場合
第84.87項 または 第85.48項へ
実務感覚では、第84.87項と第85.48項は「この類の他の項に該当しない部分品」を受ける残余見出しの役割を持ちます。日本税関の実務資料でも、注2(c)の最終到達点としてこの2項が示されています。(ジェトロ)
7. 「専ら」と「主として」の実務的な判定ポイント
ここからが、分類担当者が一番知りたい部分です。条文は簡潔ですが、立証は現場作業になります。
7.1 専らと言いやすい典型
専らに近いと言いやすいのは、次のような場合です。
- 取り付け形状や嵌合形状が専用で、他機器には物理的に適合しにくい
- 専用コネクタや専用プロトコルなど、相手機器が限定される
- 部品単体では用途が成立しにくく、特定機器に組み込んで初めて機能する
- カタログ上も交換部品として特定機種向けに限定されている
ただし、専用設計に見えても、注2(a)で「それ自体の見出し」がある物品は、先にそちらへ行く可能性があることを常にセットで確認します。(世界税関機構)
7.2 主としては、資料で説得力を作る
主としての判断は、予定用途だけだと弱く、客観資料で固めるのが実務です。たとえば次が有効です。
- 仕様書、図面、写真(接続部や取付部が分かるもの)
- メーカーの対応機種リスト、互換性表
- カタログの記載(どの機器向け部品として販売されているか)
- 販売実績や出荷構成など、用途の偏りを示す資料
この「順番に検討する」考え方は、日本税関の実務向け資料でも強調されています。(ジェトロ)
7.3 「同一の項の複数の機械」とは
注2(b)は、機械が一機種に特定される場合だけでなく、同一の項(同じ4桁見出し)に属する複数機種に共通して主として使う部品も想定しています。(世界税関機構)
実務では、同一項内の複数モデル(例:同じ4桁見出しの製造装置の複数型式)に共通する交換ユニットなどがこのパターンに入りやすく、資料も集めやすい部類です。
8. よくある誤りと、回避のコツ
8.1 部品だからといって、最初から注2(b)に飛ばない
注2(a)が先です。部品が独立の見出しに該当するなら、専用設計でも基本はその見出しになります。(世界税関機構)
8.2 汎用性の部分品は第16部注1で外れる
ねじ、ボルト、ナット等に相当する「汎用性の部分品(parts of general use)」は、第16部から除外されます。機械に使うから第16部の部分品、とはなりません。(世界税関機構)
8.3 注2(b)のただし書きを忘れない
通信系(85.17)と映像・放送系(85.25から85.28)の双方に共通で主として使う部品は85.17へ、85.24向け部品は85.29へ、という指定は、結論を逆転させる力を持ちます。(世界税関機構)
8.4 注2(c)の行き先は番号で書く
「残余へ」では不十分です。注2(c)は、まず84.09等の部分品見出し群を当て、なければ84.87または85.48へ、という形で明示されています。(世界税関機構)
9. 分類担当者がそのまま使える「社内メモ」骨子
社内の分類メモやレビュー依頼文を、次の型で作ると議論が整理されます。
9.1 商品概要
- 物品名(一般名称と型番)
- 機能と用途
- 構成(材質、電気部品の有無、ソフトの有無)
- 取り付け先機器(機器名、型式、該当しうる項)
9.2 法令ロジック
- 通則1に基づき、見出し文言と部・類注で判断する(世界税関機構)
- 第16部注1で除外がないこと(汎用性の部分品など)(世界税関機構)
- 第16部注2の適用対象であること(84.84、85.44から85.47の部分品は除外)(税関官方网站)
- 注2(a)に該当するか
- 該当しない場合、注2(b)で「専ら又は主として」を立証し、ただし書きも確認
- それでも難しい場合、注2(c)の順で整理して結論を置く(税関官方网站)
- 見出し確定後、通則6で号以下を決める(世界税関機構)
10. 迷ったときの実務的な着地
日本では、輸入前に税関へ品目分類を照会し、回答を得る事前教示制度があります。判断が割れそうな案件ほど、仕様書・図面・写真・カタログ・互換性情報を添えて照会するほうが、後戻りコストを下げやすいです。(税関官方网站)
まとめ
- 「もっぱら、または主として使用される」は、部品の客観的性質と通常の用途実態から、特定機器との結びつきを評価する言い回し
- 第16部注2は、注2(a)→注2(b)→注2(c)の順で適用する
- 注2(b)のただし書き2本(85.17関係、85.24関係)と、注2の適用除外(84.84、85.44から85.47の部分品)は必ず明記
- 注2(c)は「残余」ではなく、まず84.09等を当て、なければ84.87または85.48へ、という番号指定がある
参考資料
- World Customs Organization, HS 2022 Section XVI Notes(注1、注2)(世界税関機構)
- 日本税関 関税率表解説 第16部(16b)注2(a)(b)(c)(税関官方网站)
- World Customs Organization, HS通則(通則1、通則6)(世界税関機構)
- 日本税関 品目分類の事前教示制度(案内ページ)(税関官方网站)
- JETRO セミナー資料「品目分類の考え方(機械類の部分品)」(ジェトロ)
- 日本税関 HS2022関連FAQ(第85.24項の位置付けの説明を含む)(税関官方网站)
免責事項
本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の貨物の品目分類、課税関係、申告の適否や結果を保証するものではありません。最終的な分類は、貨物の実物、仕様、提示態様、適用される通則および部・類の注等に基づき、必要に応じて税関の事前教示制度の利用や専門家への相談を行ったうえでご判断ください。
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