2033年の品目分類変更は、経営に効く「先回りテーマ」になる
HSコードの改正は、通関担当だけの話ではありません。unstats.un
関税コスト、原産地規則、輸出入管理、商品マスタ、貿易統計の読み方まで、企業活動の前提を静かに書き換える「基盤データの改訂」です。unstats.un
その次の大きな節目が、WCO第8次見直しサイクル(HS2033版、2033年1月1日発効を想定)です。unstats.un
すでに各国では、WCOに持ち込む改正提案の取りまとめが動き始めています。govinfo
象徴的なのが、米国の公式官報(Federal Register)に掲載された提案募集です。govinfo
米国国際貿易委員会(USITC)は、WCO第8次見直しサイクルに向けて、国際HS(条文そのもの)をどう改めるべきかについて、広く提案を募る告知を公表しました。govinfo
目的は、技術や貿易構造の変化に合わせて、HSを最新の姿に保つことです。govinfo
提案の推奨提出期限は2027年10月1日で、2033年実施の国際HS改正を見据えています。govinfo+1
この動きは、日本企業にとっても決して他人事ではありません。
国際HSの6桁が動けば、日本を含む各国の国内細分や税率、原産地規則、統計品目表、さらに社内マスタや判断ロジックまで、一気に連鎖して動くからです。unstats.un
何が始まったのか
今回の募集は「国際HSの条文」そのものを動かす話
今回、USITCが提案を求めている対象は、国際HSのうち次のような法的テキストです。govinfo
・部注、類注(Section notes, Chapter notes)
・4桁の見出し(headings)
・6桁の号(subheadings)
米国の告知では、これら国際HS条文の具体的な改正案(文言)を提示することが求められており、提案には説明コメントや、可能であれば関連する貿易データの添付が推奨されています。govinfo
一方で、米国内の細分(10桁等)や税率水準といった「各国独自の運用部分」は、今回の募集対象ではないことも明記されています。govinfo
ここが重要なポイントです。
世界共通の土台である国際HSが変われば、日本を含む各国の関税率表や統計品目表、通関システム、EPA/FTAの原産地規則、企業内の商品マスタや判定ロジックに至るまで、広範な修正が必要になります。wcoomd+1
なぜ2033年の話を「いま」扱うべきか
改正は長期戦だが、議題形成の締切は早い
HS改正は、構想から実装まで時間がかかる制度です。
国連統計部門の資料では、HS2033の見直しサイクルは「2025年6月のWCO Council後に始まり、2030年6月のHS2033勧告提示まで続く」というタイムラインが例示されています。unstats.un
つまり、HS2033の内容を決める作業は、2025年半ばから2030年までの約5年間に集中する想定です。unstats.un
WCOは、HS改正が時間を要する理由として、審議と合意形成に加え、実装に必要な制度上の準備期間を挙げています。wcoomd
Councilでの正式採択後は条約上の留保期間があり、その間に相関表の整備、注釈書の改訂、各国の関税率表改正やシステム改修、教育・周知などが必要になるため、実質的に約2年半の実装期間が見込まれています。wcoomd+1
そのため、2033年は遠く見えても、企業が提案や問題意識を外部に届けやすい「議題形成の窓」は意外と短いのが実情です。unstats.un
米国の公募に限っても、推奨提出期限は2027年10月1日と示されており、そのタイミングまでに各国政府がWCOに持ち込む案を固めていくことになります。govinfo+1
日本企業への実務インパクト
5つの領域で効いてくる
- 関税コストと採算
品目分類は関税の基礎です。
分類が変われば、適用税率の行き先、優遇税率の該当性、社内の原価・見積もりロジックまで影響を受けます。wcoomd
日本の税関も、品目分類が関税計算や統計、原産性判断などに用いられる基礎情報であることを説明しています。wcoomd - EPA・FTAの原産地規則
原産地規則は、多くがHSの見出しや号を前提に設計されています。
HSの改正や国内細分の更新が入ると、品目別規則(PSR)の読み替えや材料判定の前提が揺れ、証明実務やサプライチェーン設計に影響が及びます。unstats.un - 輸出入管理とコンプライアンス
社内の輸出入規制判定や出荷管理がHS参照で組まれている場合、分類変更は判定表や自動判定システムの改修案件になります。wcoomd
監査や調査の場面でも、改正前後の分類根拠の説明が求められるケースが増えます。wcoomd - 商品マスタと基幹システム
HSコードは、インボイス、パッキングリスト、商品マスタ、通関データなどに深く組み込まれています。
改正後に一括で対応すると、コード変換、マッピング、検証、社内教育が同時多発し、プロジェクト負荷が高まりがちです。wcoomd - 貿易統計と市場分析
HSの変更に伴い、統計コードも改訂され、時系列比較が難しくなります。unstats.un
国連やWCOの資料では、各国の相関表や変換情報の公開が遅れると、企業や分析者に不確実性が生じる点が課題として指摘されています。unstats.un
国際HSは誰がどう変えるのか
民間の声が入る入口
WCOは、改正提案の典型的な流れとして、民間が税関や貿易当局など政府機関に要望を出し、政府内の関係省庁で調整された上で、WCOの場に公式提案として持ち込まれるケースが多いと説明しています。unstats.un
つまり、企業ができることは「決まるのを待つ」ことだけではありません。
自社の痛点や将来リスクを、政府や業界団体が扱える「提案の形」に整理しておくことで、国際HSの議論に間接的に参加することができます。govinfo
通りやすい提案の型
ビジネス語に翻訳するとこうなる
USITCの募集では、特に次のような提案が歓迎されると記載されています。govinfo
・貿易量が少ない見出しや号の整理・削除
・重要なのに適切な分類がなく、実務上問題となっている製品のための新設
・運用が難しい、分かりにくい規定の簡素化・明確化
・国際的な分類の統一や、管理の改善につながる提案
これを企業目線に置き換えると、次のような課題の解消に直結します。
・国によって分類が揺れ、通関が遅れる、コストが読みにくい
・新技術や複合製品が古い枠組みに押し込まれ、解釈が割れる
・曖昧な分類のせいで、関税、規制、原産地で二重三重のリスクが出る
・社内マスタの整合が取れず、現場の判断が属人化する
提案書で差が出るポイント
文言・根拠・データの三点セット
USITCの告知では、提案について「具体的なHS条文案」「説明コメント」「関連データ」の三点セットで提出することが推奨されています。govinfo
企業が準備するなら、次の素材が有効です。
・製品の仕様書、用途、構成、図面、写真などの技術情報
・現行の分類で困っている具体例(国ごとの分類差、事前教示・照会履歴、通関遅延や追加課税の事例など)
・想定される貿易量、取引国、サプライチェーン上の重要度
・分類の見直しが、貿易の円滑化や統計精度向上にどう貢献するかの説明
・代替案としての条文案(どの注記、どの見出し、どの号をどう変えるか)
直近の改正規模が示す現実
HS改正は点ではなく面で来る
HS改正は、一部のコードだけが単独で変わるのではなく、関連する周辺分類を含めて「パッケージ」で改正されるのが通常です。tarifftel
WCOは、HS2028に向けた検討の結果、HS委員会(HSC)が299セットの改正パッケージを暫定採択し、HS2028改正勧告の骨格としたことを公表しています。aeb+2
これは、HS2022改正(351セット)と比べればやや少ないものの、依然として広い範囲に影響する大規模改正であることを示しています。aeb+1
この規模感が意味するのは主に二点です。
・特定の品目だけでなく、その周辺の分類も含めた「面」で改正が入りやすい
・内容が確定してから動き始めると、社内対応が同時多発して詰まりやすい
今日からできる社内アクション
90日でやるべき棚卸し
経営層や部門長が音頭を取るなら、まずは次の順番だけでも十分な効果があります。
- 重点品目の特定
売上・利益・規制リスク・主要市場の観点から、重点管理すべき品目を絞り込みます。
HS改正で「動くと困る/動くと有利になる」品目群をリストアップするのが出発点です。unstats.un - コードの現状マッピング
HSは6桁が国際共通で、7桁以降は各国が追加できます。unstats.un
日本では、統計上の細分として7〜9桁、さらに10桁目がNACCS等の運用に使われている構造であり、自社が実務上どの桁まで管理しているかを棚卸しします。unstats.un - 困りごとの言語化
分類が割れている品目、照会や事前教示が多い品目、国別差が顕著な品目を洗い出し、「どの条文・注記がネックになっているのか」を整理します。unstats.un - 根拠資料の「箱」を作る
分類根拠、照会・裁決・事前教示の履歴、税率や原産地判定への影響を、一か所に集約して保管します。
後から提案書を作る際や、HS2028・2033対応プロジェクトを立ち上げる際のベースになります。wcoomd - 外部ルートの整備
業界団体、通関業者、商社、所管省庁への相談ルートを整理し、「どこからWCO提案ルートにつながるのか」をはっきりさせます。
WCOも、民間から政府への要望がHS改正の起点になりうることを明示しています。unstats.un
結論
HS2033は「通関の話」ではなく「経営の準備運動」
米国の官報告知は、2033年実施を見据えた国際HS改正が、実務的な提案募集フェーズに入ったことを示すシグナルです。govinfo
同時に、WCOはHS2028勧告を暫定採択し、2033版に向けた戦略的レビュー(HS2033モダナイゼーション)も動き始めています。wcoomd+1
HSの改正は、関税、原産地、規制、システム、統計に一斉に波及します。wcoomd+1
日本の実務でも、品目分類が関税や原産性判断、統計など幅広い用途の基礎となることは、各種公的資料で繰り返し説明されています。wcoomd
だからこそ、「HS2033が決まってから対応する」のではなく、早めに自社の重点品目と痛点を整理し、外部に届けられる形に整えることが重要です。unstats.un
2033年のHS改正を、単なるコスト増のリスクではなく、自社に有利なルール作りとマスタ整備のチャンスに変えるための準備運動として位置づけることが、これからの10年の競争力を左右します。govinfo+1
本稿は公開情報に基づく一般的な情報提供であり、個別案件の判断(HS分類や原産地規則の該当性、申告・システム対応など)は、社内の専門部署や関係当局・専門家と相談のうえで行うことをおすすめします。govinfo+1
- https://unstats.un.org/unsd/classifications/Meetings/UNCEISC2024/Session2-4-Exploratory-Study-on-the-Possible-Strategic-Review-of-HS.pdf
- https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-12-15/html/2025-22764.htm
- https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-12-15/pdf/2025-22764.pdf
- https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx
- https://www.tarifftel.com/blog/hs-2028-your-guide-to-the-next-harmonised-system-update/
- https://www.aeb.com/en/magazine/articles/hs-code-2028.php
- https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/april/amendments-to-2028-harmonized-schedule-advanced
- https://www.federalregister.gov/documents/2025/12/15/2025-22764/wco-eighth-review-cycle-request-for-proposals-to-amend-the-international-harmonized-system-for
- https://www.federalregister.gov/public-inspection/2025-22764/world-customs-organization-eighth-review-cycle-request-for-proposals-to-amend-the-international
- https://www.govinfo.gov/app/details/FR-2025-12-15/2025-22764
- https://www.federalregister.gov/documents/2025/08/15/2025-15511/recommended-modifications-in-the-harmonized-tariff-schedule
- https://services.swale.gov.uk/meetings/documents/s30985/Appendix%20I%20Planning%20and%20Transportation%20Policy%20Working%20Group%20Report%2015%2007%202025.pdf
- https://www.usitc.gov/commission_notices?month%5Bvalue%5D=&year%5Bvalue%5D=&field_notice_status_value=All&alpha=&search=&order=title_2&sort=asc&facets_query=&page=2
- https://unstats.un.org/capacity-development/calendar/online-events/
- https://www.usitc.gov/secretary/fed_reg_notices/tata/1205_14_notice08122025sgl.pdf
- https://unstats.un.org/unsd/envstats/Newsletter/Issue55.pdf
- https://www.federalregister.gov/index/2025/international-trade-commission
- https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000372853
- https://www.linkedin.com/posts/heitor-martins-%F0%9F%87%B5%F0%9F%87%B9-59b32756_hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-activity-7313842459153727488-2Ljf
- https://www.federalregister.gov/fr_index/pdf/2025/05/international-trade-administration-May-2025.pdf