HS2022 第64類:履物、ゲートルその他これに類するもの及びこれらの部分品(Footwear, gaiters and the like parts of such articles)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
  • 防水性があり、外底と甲がゴム又はプラスチックで、縫製などで底と甲を接合していないタイプの長靴やレインブーツ(64.01)
  • 甲と外底がゴム又はプラスチックの一般的な履物(例:樹脂製サンダル、ゴム長靴のうち64.01に当たらないもの、ラバーサンダル等)(64.02)
  • 甲が革の履物(例:革靴、革ブーツ。外底はゴム、プラスチック、革、コンポジションレザー等が対象)(64.03)
  • 甲が繊維の履物(例:キャンバススニーカー、布製シューズ。外底はゴム、プラスチック、革、コンポジションレザー等が対象)(64.04)
  • 上記に当てはまらない履物(例:素材構成が特殊な履物、室内履き等で64.01〜64.04に入らないもの)(64.05)
  • 履物の部分品(アッパー、外底、かかと等)、取り外し可能な中底やかかとクッション、ゲートル等(64.06)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
  • 使い捨ての簡易な靴カバーで、底が取り付けられていないもの(材質により他類へ。例:プラスチックシートなら第39類など)
  • 繊維製で、外底が接着・縫製等で取り付けられていない履物(第11部の繊維製品として扱われ得ます)
  • 中古の履物(63.09)
  • 石綿製品(68.12)
  • 整形外科用の履物、その他の整形外科用機器やその部分品(90.21)
  • 玩具の履物、スケートが取り付けられたスケート靴、すね当て等のスポーツ用保護具(第95類)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
  • まず「完成した履物」か「部分品」か(64.01〜64.05か、64.06か)
  • 甲の材質と外底の材質を、見た目の外表面積の優勢で判定できるか(付属品や補強材は除外して面積判定)
  • 64.01か64.02かの境界(防水性に加え、底と甲の接合方法要件がある)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
  • 原産地証明でPSR(品目別規則)を使う取引で、6桁の取り違えが起きる場合(例:甲材質の誤認で64.03と64.04が入れ替わる)
  • ワシントン条約(CITES)該当種の皮革を使用している可能性がある場合(許認可が絡むため、通関遅延や差止めリスクが上がります)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)を、ビジネスマン向けに説明
  • 基本はGIR1で、見出し(項)の文言と注(類注)に従って分類します。履物は、注により「甲の材質」「外底の材質」「部分品に含めないもの」「除外品」が明確に定義されているため、品名より注が優先的な根拠になります。
  • 6桁(号)の決定はGIR6で、当該号の文言と号注(スポーツ用履物の定義など)に基づいて細分します。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
  • 材質:甲と外底の主要材質を、外表面積の優勢で判断します。バックル等は面積算定から除外され得ます。
  • 状態:新品か中古かで63.09に飛ぶ可能性があります。
  • 構造:64.01は防水性だけでなく、底と甲が縫製等で接合されていないという構造要件があります。
  • 用途:整形外科用(90.21)や玩具(第95類)など、用途や機能が強い除外規定があります。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:
  • 対象が「履物」か「履物の部分品」かを分けます。アッパー単体や外底単体、取り外し式インソールは64.06側に寄ります。
  • Step2:
  • 類注の除外に該当しないか確認します。使い捨てカバーで底が無いもの、中古靴、整形外科用、玩具などはここで除外されます。
  • Step3:
  • 完成した履物なら、甲と外底の材質を「外表面積が最大の構成材」で判定します。付属品や補強材は原則として面積判定から除外します。
  • Step3補足:
  • ゴム又はプラスチックには、外側にゴム又はプラスチック層が肉眼で見える織物等も含まれます(色の変化は無視)。このため、コーティング布が甲材質判定に影響することがあります。
  • Step4:
  • 64.01〜64.05のどれかを決めます。
  • 防水性があり、外底と甲がゴム又はプラスチックで、かつ縫製等で接合されていないなら64.01が候補です。
  • 甲と外底がゴム又はプラスチックなら64.02が候補です。
  • 甲が革なら64.03、甲が繊維なら64.04が候補です。
  • それ以外で履物なら64.05が候補です。
  • 部分品等なら64.06です。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
  • 第64類と第11部(繊維製品):繊維製で外底が付いていない場合は第64類から外れ得ます。
  • 64.06(部分品)と「付属品」:靴ひも、バックル等は64.06の部分品に含めないと明記されています。
  • 第64類と63.09:中古靴は63.09です。
  • 第64類と90.21:整形外科用は90.21です。
  • 第64類と第95類:玩具靴やスケート付きは第95類です。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

原則:第64類は4桁見出しが少ないため、全て列挙します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
6401防水性の履物。外底と甲がゴム又はプラスチックで、底と甲が縫製等で接合されていないもの成形一体型のレインブーツ、成形ゴム長靴防水性と接合方法が要件。縫製・リベット・釘・ねじ・差し込み等で接合していると6401から外れる可能性
6402その他の、外底と甲がゴム又はプラスチックの履物樹脂サンダル、ラバーサンダル、ゴム製スリッパスポーツ用履物の定義に該当するか、鼻緒等をプラグで留めた形か、足首を覆うかで6桁が分岐
6403外底がゴム、プラスチック、革、コンポジションレザーのいずれかで、甲が革の履物革靴、革ブーツ、安全靴(甲が革)外底が革か否か、足首を覆うか、保護用金属製先しん入りかで分岐
6404外底がゴム、プラスチック、革、コンポジションレザーのいずれかで、甲が繊維の履物キャンバススニーカー、布靴外底がゴム又はプラスチックか、スポーツ用履物に当たるかで分岐
6405その他の履物室内履きで上記に当たらないもの、特殊素材の履物6401〜6404に当たらないことが前提。甲材質が革なら6405.10、繊維なら6405.20
6406履物の部分品、取り外し可能な中底等、ゲートル等アッパー、外底、かかと、インソール、ゲートル「部分品」に含めない物(靴ひも等)が明記。アッパーの定義と範囲に注意

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
  • 第64類の6桁分岐は、主に次の軸で決まります。
  • 保護用金属製先しん(いわゆる先芯)入りか(6401.10、6403.40など)
  • 足首を覆うか(covering the ankle)
  • スポーツ用履物の定義に当たるか(スポーツ用途向けでスパイク等の装着がある、または特定のスポーツ靴類)
  • サンダル形状で、上部ストラップ又は鼻緒がプラグで底に留められているか(6402.20)
  • 外底が革か否か(6403.51/6403.59と6403.91/6403.99の切り分けに影響)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
  • 1組目:6401(防水・成形系)と6402(ゴム/プラ一般)
    • どこで分かれるか:
    • 6401は「防水性」だけでなく、底と甲が縫製等で接合されていないという構造要件があります。
    • 判断に必要な情報:
    • 防水性能(設計上の防水性の有無)
    • 底と甲の接合方法(縫製、リベット、釘、ねじ、差し込み等の有無)
    • 典型的な誤り:
    • ゴム長靴という品名だけで6401に決めてしまい、実際は縫製や接着を伴っていて6402側だった、など
  • 2組目:6402.20(プラグ止めサンダル)と6402.99(その他)
    • どこで分かれるか:
    • 甲のストラップ又は鼻緒が、底にプラグで留められている構造かどうかです。
    • 判断に必要な情報:
    • 側面・底面の写真、構造図、現物サンプル
    • 典型的な誤り:
    • ビーチサンダルを一律に「その他」としてしまい、6402.20を見落とす
  • 3組目:スポーツ用履物(6402.12/6402.19、6403.12/6403.19、6404.11)と非スポーツ
    • どこで分かれるか:
    • スポーツ用履物は、スポーツ活動用に設計され、スパイク等の装着がある又は装着できる構造、または列挙された特定のスポーツ靴(スケート靴、スキーブーツ、スノーボードブーツ、レスリング靴、ボクシング靴、サイクリングシューズ等)に限定されます。
    • 判断に必要な情報:
    • 商品仕様書、用途説明、スパイク等の装着部の有無、製品写真
    • 典型的な誤り:
    • スニーカー全般をスポーツ用と誤認し、スポーツ用履物の定義を満たさないのにスポーツ号へ入れてしまう
  • 4組目:6403.51/6403.59(外底が革)と6403.91/6403.99(外底が革以外)
    • どこで分かれるか:
    • 6403の「その他履物」は外底の材質で枝分かれしています。外底が革なら6403.51/6403.59側、革以外なら6403.91/6403.99側を検討します。
    • 判断に必要な情報:
    • 外底の材質証明、製品断面や材質試験、外底の構成(ラバー貼りの有無など)
    • 典型的な誤り:
    • 見た目が革靴でも、外底がラバーなら「外底革」と誤認してしまう
  • 5組目:6406(部分品)と他類(例:靴ひも等)
    • どこで分かれるか:
    • 64.06の「部分品」には含めない物が列挙されており、靴ひも、バックル、装飾、ボタン等は64.06に入れないとされています。
    • 判断に必要な情報:
    • 部品の用途(履物に不可欠な構成か、装飾・付属か)
    • 形状と素材(ひも、金具、飾り等)
    • 典型的な誤り:
    • 付属品をまとめて「靴部品」として64.06申告してしまう

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
  • HS2022の条文体系上、第12部(Section XII)は他の部と異なり、独立した部注(Section Notes)へのリンクが置かれていません(目次上、Section XIIの直下に第64類〜第67類が配置されています)。
  • 実務での意味(具体例つき):
  • 第64類の判断は、部注よりも第64類の類注(Chapter Notes)と各見出し文言が中心になります。
  • 例:繊維製で外底が付いていない靴カバーは、第64類の類注で除外され、第11部側に寄る可能性があります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
  • Section XIIの部注ではなく、第64類の類注により他章へ飛びます(次の3-2参照)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
  • 類注1:第64類に入らない物(使い捨てカバーで底無し、外底のない繊維製履物、中古靴、石綿製品、整形外科用、玩具靴やスケート付き等)を列挙しています。
  • 類注2:64.06の「部分品」に含めない物(靴ひも、バックル、装飾、ボタン等)を列挙しています。
  • 類注3:用語定義として、ゴム又はプラスチックの範囲(外層が肉眼で見える織物等も含む)と、革の定義(第41類の特定見出しに該当する革)を示しています。
  • 類注4:甲材質と外底材質の決め方を「外表面積が最大の構成材」で判定すること、付属品や補強材は除くことを定めています。
  • 用語定義(定義がある場合):
  • ゴム及びプラスチック:外側にゴム又はプラスチック層が肉眼で見える織物などの繊維製品も含み、色の変化は考慮しません。
  • 革:第41.07項および第41.12〜41.14項の物品を指す、とされています。
  • 甲材質の判定:外表面積が最大の構成材。ただし、足首パッチ、縁取り、装飾、バックル、タブ、鳩目当て等の付属品や補強材は面積判定から除外します。
  • 外底材質の判定:地面に接する表面積が最大の材質。ただし、スパイク、金具、保護具等の付属品や補強材は面積判定から除外します。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
  • 底がない使い捨てカバー:構成材質により他類へ
  • 外底が付いていない繊維製履物:第11部へ
  • 中古靴:63.09
  • 石綿製品:68.12
  • 整形外科用履物等:90.21
  • 玩具靴、スケート付き靴、すね当て等:第95類

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:甲材質と外底材質の決め方で、64.02/64.03/64.04/64.05が入れ替わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
    • 甲の外表面積が最大の材質は何か(付属品や補強材を除いて判定)
    • 外底の地面接地面積が最大の材質は何か(スパイク等を除いて判定)
    • 現場で集める証憑(仕様書、成分表、MSDS、カタログ、写真、工程図など):
    • 素材構成表、甲材の材質証明(コーティング有無が分かるもの)、外底材の材質証明
    • 全周写真(甲の見える面積比、外底の接地面の確認)
    • 誤分類の典型:
    • 装飾や補強材(パッチやバックル等)の見た目に引っ張られて甲材質を誤認し、64.03と64.04が逆転する
  • 影響ポイント2:ゴム又はプラスチックの範囲定義で、繊維か樹脂かの見え方が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
    • 織物等の表面にゴム又はプラスチック層が肉眼で見えるか(色の変化は無視)
    • 現場で集める証憑:
    • コーティング仕様(塗工層の有無、厚み)、メーカーの材料仕様
    • 誤分類の典型:
    • コーティング布を「繊維」とだけ扱い、実務上は「ゴム又はプラスチック」とみなされる可能性を見落とす
  • 影響ポイント3:64.06の「部分品」の範囲で、64.06か他類かが分かれる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
    • 当該品が履物の構成要素としての部分品か、単なる装飾・付属か
    • 64.06の部分品に含めない物の列挙に該当しないか
    • 現場で集める証憑:
    • 部品表、用途説明、取り付け位置が分かる資料
    • 誤分類の典型:
    • 靴ひもやバックルを64.06で申告してしまう(類注2で否定)
  • 影響ポイント4:スポーツ用履物の定義で、スポーツ号に入る範囲が限定される
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
    • スパイク等の装着がある又は装着できる設計か、または列挙された特定スポーツ靴か
    • 現場で集める証憑:
    • 用途説明、競技用仕様、装着部品の有無、写真
    • 誤分類の典型:
    • ランニングシューズ等を一律にスポーツ用履物と扱う(定義の要件を満たさない場合がある)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:
    • レインブーツは全て6401だと決め打ちする
    • なぜ起きる:
    • 商品名が「防水」「長靴」だと、構造要件の確認を省略しがちです
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):
    • 6401は、防水性に加えて「底と甲が縫製等で接合されていない」要件があります
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
    • 底と甲の接合方法(縫製、接着、リベット等)の有無を、写真と仕様書で確認する
  2. 間違い:
    • 甲の材質を装飾や補強材で判断してしまう
    • なぜ起きる:
    • 見た目で革に見えるパーツがあると、甲全体が革と誤認しやすいです
    • 正しい考え方:
    • 甲材質は外表面積が最大の構成材で判定し、付属品や補強材は除外します
    • 予防策:
    • 甲の主要部位の材質比率が分かる資料(パーツ表、写真)を用意する
  3. 間違い:
    • コーティング布を必ず「繊維の甲」として扱う
    • なぜ起きる:
    • ベースが布だと繊維だと思い込みやすいです
    • 正しい考え方:
    • 外層がゴム又はプラスチックで肉眼可視なら、ゴム又はプラスチックに含む扱いがあります
    • 予防策:
    • コーティング仕様(表面層の材質と可視性)をメーカーに確認する
  4. 間違い:
    • ビーチサンダルを全て6402.99に入れる
    • なぜ起きる:
    • サンダルは「その他」と思い込みやすいです
    • 正しい考え方:
    • ストラップ又は鼻緒がプラグで底に留められている履物という独立した号があります
    • 予防策:
    • 底面を撮影し、プラグ構造の有無を確認する
  5. 間違い:
    • スニーカーは全て「スポーツ用履物」とする
    • なぜ起きる:
    • 市場ではスポーツ用途が広く、分類上の定義とズレが出やすいです
    • 正しい考え方:
    • スポーツ用履物は定義が限定され、スパイク等の装着構造または列挙靴種に限られます
    • 予防策:
    • 競技用設計か、装着部があるか、列挙靴種かを仕様書で確認する
  6. 間違い:
    • 靴ひもやバックルを64.06の部分品として申告する
    • なぜ起きる:
    • 「靴に使うもの=靴部品」と誤解しやすいです
    • 正しい考え方:
    • 64.06の「部分品」に含めない物として、靴ひもやバックル等が明記されています
    • 予防策:
    • 64.06申告の前に、類注2の除外列挙をチェックする
  7. 間違い:
    • 中古靴を新品と同じ第64類で申告する
    • なぜ起きる:
    • 取引書類の品名だけでは中古か判断しにくい場合があります
    • 正しい考え方:
    • 中古の履物は63.09に分類される扱いが示されています
    • 予防策:
    • 仕入形態(中古・リユース)を社内で確認し、写真や仕入契約書で状態を裏付ける
  8. 間違い:
    • 整形外科用の機能を持つ履物を通常の靴として申告する
    • なぜ起きる:
    • 見た目が靴でも、医療機器相当の要件がある場合に見落としがちです
    • 正しい考え方:
    • 整形外科用履物や整形外科用機器等は90.21へ除外されます
    • 予防策:
    • 医療用途、矯正機能、処方対象か等をメーカー仕様で確認する

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること(誤ると原産性判断が崩れる)
  • PSRは通常、HSの項(4桁)や号(6桁)単位で定められます。第64類では甲材質の誤認で64.03と64.04が入れ替わると、適用すべきPSRが変わり得ます。
  • よくある落とし穴(材料のHS、最終製品HS、工程の評価軸)
  • 最終製品のHSを誤ると、材料側のHSやCTC(関税分類変更)判定も連鎖して誤ります。
  • 特に履物は材料が多く、上流材(革、繊維、樹脂等)と完成品のHSが別章にまたがるため、BOMと工程の見える化が重要です(日本税関の運用ガイドでも、BOMや工程図等の準備が推奨されています)。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 「当該協定が参照するHS版(例:HS2012参照 等)」を明記
  • RCEP:附属書3A(品目別規則)はHS2012に基づく旨が明記されています。
  • さらにRCEPは、HS2022への移行に合わせたトランスポーズPSR(HS2022への読み替え)を採用し、2023年1月1日から適用する旨が日本の外務省資料で案内されています。
  • CPTPP:少なくとも当局の案内では、品目別規則(Annex 3-D)がHS2012で示されている旨が説明されています。
  • 日EU EPA:品目別規則(Annex 3-B)の見出しとして、HS分類(2017)と明記されています。
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
  • 通関実務では輸出入国の申告コードは現行版(日本はHS2022ベースの時期)ですが、協定のPSRがHS2012やHS2017ベースだと、そのままでは条文上の参照が合わないことがあります。
  • 実務では、協定当局が公表するトランスポーズPSR、相関表、運用ガイドにより「協定のPSR上のコード」と「申告に使うコード」を整合させます(RCEPはHS2022へのトランスポーズPSRの採用が案内されています)。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
  • まず協定が参照するHS版(HS2012/2017など)を確定し、次に当局が提供する対応表やトランスポーズPSRで読み替えます。
  • 6桁が同一でも、文言や範囲が微修正される場合があるため、相関表だけでなく当局の注記も確認します。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • BOM(材料名、原産国、HS、使用量)、工程フロー、原価資料(RVC計算がある場合)が基本セットです。
  • 証明書類・保存要件(一般論)
  • 自己申告や第三者証明のいずれでも、後日の検証に備え、BOM、工程、原価、仕入書類等を体系立てて保存する運用が安全です(日本税関のガイドは、BOM、工程図、コストステートメント等の例を挙げています)。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(少なくともHS6桁レベル)第64類(6401〜6406)WCOの相関表(改正・新設対象の一覧)に第64類の6桁が掲げられていないため、HS6桁では改正対象なしと読み取れます6桁レベルのコード移行対応は原則不要。社内マスターの確認と、国内細分改正の有無を別途確認

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料
  • WCOが公表するHS2017とHS2022の相関表(Table I)は、HS2022のうちHS2017と比べて範囲が変更された、または新設された6桁を列挙する趣旨で作成されています。
  • この相関表の改正・新設対象に第64類の6桁が現れないことから、第64類は少なくともHS6桁レベルではHS2017→HS2022で変更がないと整理できます。
  • 補足
  • ここでいう「変更なし」はHS6桁の範囲です。日本の国内コード(9桁)や統計細分、運用上の取扱いは別途改正され得るため、申告前に最新の実行関税率表や税関の案内を確認してください。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第64類は近年のHS改正では相対的に安定していますが、過去改正で「削除」や「統合」が行われた例があります。以下は主要なものです(いずれもHS6桁レベル)。

改正の流れ主な追加・削除・再編旧コード→新コード(代表)根拠と補足
HS2002→HS2007低取引量等を理由に一部号が削除6401.91(膝を覆う)削除 → 6401.99等へ整理HS2002では6401.91が存在し、相関表で削除が示されています
HS2002→HS2007低取引量等を理由に一部号が削除6402.30(保護用金属製先しん入り)削除 → 6402.91/6402.99等へ整理HS2002では6402.30が存在し、相関表で削除が示されています
HS2002→HS2007低取引量等を理由に一部号が削除6403.30(木製台等の履物)削除 → 6403.91/6403.99等へ整理HS2002では6403.30が存在し、相関表で削除が示されています
HS2007→HS2012低取引量等を理由に号を統合6406.91(木製)と6406.99(その他)を統合 → 6406.90HS2007では6406.91/6406.99が存在し、HS2012以降は6406.90へ統合。相関表に統合理由も記載
HS2012→HS2017→HS2022大きな再編なし(少なくともHS6桁)主要コードは継続HS2017→HS2022は相関表上で改正対象なし

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):使い捨て靴カバーを第64類で申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):底のない使い捨てカバーは第64類から除外され、材質で分類すべきという除外規定に抵触
    • 起きやすい状況(品名の付け方、セット扱い、用途誤認、加工状態の誤解など):インボイス品名が「shoe cover」「overshoes」等で、構造確認をしない
    • 典型的な影響(一般論:修正申告、追加納税、検査強化、遅延など):修正申告、関税差・加算税、検査強化
    • 予防策(事前確認、税関相談、書類整備など):底の有無、固定方法の写真添付、材質の確認
  • 事例名:繊維製の外底なしスリッパを履物として申告
    • 誤りの内容:外底が接合されていない繊維製履物は第64類から除外され得る
    • 起きやすい状況:簡易室内履きで外底が実質的に存在しない
    • 影響:分類差替え、必要書類の追加要求
    • 予防策:外底の有無と取付方法を仕様書・写真で説明
  • 事例名:靴ひもを64.06で申告
    • 誤りの内容:64.06の部分品に靴ひも等は含めないという規定に抵触
    • 起きやすい状況:複数の靴関連部材を一括で「parts of footwear」としてしまう
    • 影響:分類更正、税率差、輸入許可の遅延
    • 予防策:部材ごとに用途を分解し、類注2の除外リストで照合
  • 事例名:整形外科用の矯正靴を通常の靴として申告
    • 誤りの内容:整形外科用履物等は90.21に除外される
    • 起きやすい状況:外観が一般の靴と似ている
    • 影響:分類差替えに伴う申告修正、規制確認が追加
    • 予防策:医療用途・矯正機能の有無、医療機器該当性を事前に確認
  • 事例名:CITES該当皮革の靴を許可なく輸入
    • 誤りの内容:CITES該当貨物は輸出許可・輸入承認等が必要で、税関申告時に提出・確認が必要
    • 起きやすい状況:高級皮革(例:爬虫類革)を含むが、素材由来を把握していない
    • 影響:通関保留、差止め、追加書類対応
    • 予防策:素材の学名・由来をサプライヤーに確認し、必要許可を準備

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
  • CITESの対象となる動植物種の標本や製品は、輸出国の輸出許可に加え、日本側の輸入承認等が必要となり、輸入申告時に税関へ書類提出して確認を受ける必要がある旨が案内されています。
  • CITESは野生動植物の国際取引が種の存続を脅かさないようにする国際的枠組みで、対象種は附属書で管理されます。
  • 履物での想定例:爬虫類革(ワニ、ヘビ、トカゲ等)の靴やブーツ、装飾部材に該当素材を使用している場合
  • 検疫・衛生(SPS等)
  • 通常の履物は食品・植物検疫の中心対象ではありませんが、動植物由来素材の取扱いは別制度で問題になり得るため、素材と原産を把握しておくと安全です。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
  • 一般的な履物は該当しにくいものの、軍用目的の特殊装備としての位置付けや、他の規制品とセットの場合は別途確認が必要です。
  • その他の許認可・届出
  • 上記CITESのほか、取引国・用途・表示制度等で要求が出る場合があります。最終的には税関・所管官庁の最新案内で確認してください。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
  • 税関(CITES該当品の輸入手続案内)
  • 経済産業省(CITESの概要)
  • 実務での準備物(一般論):
  • 素材の由来情報(学名、種、原産国、加工形態)
  • 必要に応じて輸出許可・輸入承認、インボイスと素材明細、製品写真

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
  • 完成品か部分品か
  • 甲材質、外底材質(外表面積での優勢判定に必要な情報)
  • 防水性、底と甲の接合方法(64.01候補の確認)
  • スポーツ用途設計、スパイク等装着構造(スポーツ用履物の定義確認)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
  • 類注の除外(中古、整形外科用、玩具等)に該当しないか
  • 64.06の場合、部分品に含めない物(靴ひも等)に当たらないか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
  • インボイス品名に材質と用途を反映(例:upper material、outer sole material、protective toe-cap有無)
  • 補足資料として写真、仕様書、材質証明を添付できる状態にする
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
  • 対象協定のPSRが参照するHS版(HS2012/2017等)を確認し、必要ならトランスポーズPSRや相関表で読み替える
  • BOM、工程、原価資料の整備(日本税関ガイドが例示する資料を参考)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
  • CITES該当素材の有無を確認し、該当する場合は輸出許可・輸入承認等を準備

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
  • WCO HS2022 第64類(Chapter 64)条文(見出し、類注、号注) 参照日 2026-02-25
  • WCO HS2022 目次(Section XIIの配置確認) 参照日 2026-02-25
  • WCO HS2017↔HS2022 相関表(Correlation Tables 2017-2022) 参照日 2026-02-25
  • WCO HS2012 第64類(2007→2012での6406再編確認) 参照日 2026-02-25
  • WCO HS2007 第64類(2002→2007での見出し再編確認) 参照日 2026-02-25
  • WCO HS2002 第64類(旧号の存在確認) 参照日 2026-02-25
  • 日本税関・公的機関のガイド
  • 日本税関 相関表(HS2012↔HS2007)6406の統合根拠 参照日 2026-02-25
  • 日本税関 相関表(HS2007↔HS2002)6401.91、6402.30、6403.30の削除根拠 参照日 2026-02-25
  • 日本税関 CITES(ワシントン条約)該当品の輸入制限案内 参照日 2026-02-25
  • 経済産業省 CITES概要 参照日 2026-02-25
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
  • 日本税関 RCEP 附属書3A(品目別規則)HS2012ベースの明記 参照日 2026-02-25
  • 外務省 RCEP(HS2022へのトランスポーズPSRの適用開始案内) 参照日 2026-02-25
  • 豪州当局 CPTPP 品目別規則がHS2012で示される旨の案内 参照日 2026-02-25
  • 外務省 日EU EPA 附属書3B(品目別規則)HS分類2017の明記 参照日 2026-02-25
  • 日本税関 自己申告等の実務ガイド(BOM、工程図、原価資料等の例示) 参照日 2026-02-25

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
  • 相談前に揃えると有効な情報
  • 製品写真(全体、底面、断面、素材アップ)
  • 仕様書(甲材質、外底材質、構造、用途、防水性、先芯の有無)
  • 部材表(各パーツの材質と面積比が分かるもの)
  • サンプルが用意できる場合は、現物提示も検討
  • 日本税関の公開情報の使い方
  • 品目分類の「事前教示回答(品目分類)」は、公開可能な回答を検索できる旨が案内されています。類似品の税番と判断ポイントの把握に有効です。
  • 事前教示制度は、輸入予定貨物の所属区分や関税率等について税関に照会し回答を得られる制度として案内されています。重要案件では活用価値が高いです。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HSコードで出てくる「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」とは何か

機械類の部分品分類で迷わないための実務解説(第16部注2を中心に)

はじめに

HSコード(関税分類)は、商品の性質を世界共通のルールで区分する仕組みです。分類は、見出しの文言と部・類の注に従って決めるのが原則で、これが通則1です。さらに、見出し(4桁)を決めた後は、号(6桁など)の選択を通則6で行います。(世界税関機構)

この中で「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」という表現は、とくに機械類・電気機器の部分品を分類するときに登場し、判断を大きく左右します。代表例が第16部注2(b)です。(税関官方网站)

この記事では、この表現の意味をビジネス実務(税番付与・社内分類メモ作成・税関照会資料作成)に落とし込み、迷いどころをつぶしながら全体像を整理します。

1. この表現の意味を最短で言い換える

「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」とは、部品の形状・仕様・機能・接続方式・互換性などの客観的特徴と、通常の流通実態から見て、使用先が特定の機器(または同一の項の複数機器)に強く結びついている状態を指します。

ここで重要なのは、英語原文の考え方では「実際に使ったか」ではなく「その用途に適するか(suitable for use)」に軸があることです。つまり、輸入者の予定用途だけで決める発想ではなく、物としての性格と一般的な用途を根拠にします。(世界税関機構)

2. まず押さえるべき前提

2.1 分類は見出しと注が優先

分類は、見出しの文言と部・類の注で決めるのが原則です。通則の中でも通則1が最優先の起点です。(世界税関機構)

「専用品だから機械の部分品の見出しへ」という直感はしばしば外れます。なぜなら、第16部注2は、部分品であっても先に独立の見出しに入れるべきものを明確に優先させる設計だからです。(税関官方网站)

2.2 第16部では、そもそも除外される物品がある

第16部注1には、第16部に含まれない物品が列挙されています。その中に、いわゆる汎用のねじ・ボルト等に相当する「汎用性の部分品(parts of general use)」が含まれており、これらは第16部の機械の部分品として扱わず、別の見出しに行くのが基本です。(世界税関機構)

実務ではここが最初の落とし穴です。部品に見えても、第16部注1で除外されるなら、注2の議論に入る前に別分類になります。(世界税関機構)

3. 第16部注2の結論を左右する「適用範囲」と「順番」

第16部注2は、機械の部分品の所属決定ルールを、順番つきで定めています。日本税関の解説(16b)でも、同じ順番で検討することが示されています。(税関官方网站)

3.1 注2が適用される範囲

第16部注2は、注1や第84類注1、第85類注1の除外等を前提にしたうえで、さらに注2の適用対象から外れる部分品を明記しています。

注2の枠組みで所属を決める「機械の部分品」には、次が除かれます。

  1. 第84.84項の物品の部分品
  2. 第85.44項から第85.47項までの物品の部分品(税関官方网站)

ここは、注2の議論を始める前に必ず確認が必要です。

3.2 実務用の判断フロー

第16部注2は、実務的には次の順で整理するとブレにくくなります。(税関官方网站)

手順0 第16部に入るか(注1の除外、汎用性の部分品など)
手順1 注2の適用対象か(84.84、85.44から85.47の部分品は除外)
手順2 注2(a)で決まるか
手順3 注2(b)の「もっぱら、または主として」で決まるか(ただし書きまで確認)
手順4 注2(c)で決める

次章から、この中身をそのまま使える形で説明します。

4. 注2(a)の意味

注2(a)は一言でいうと、部品であっても「それ自体が第84類または第85類の独立した見出しに当たるなら、原則その見出しに分類する」というルールです。(税関官方网站)

ただし、注2(a)には例外があり、次の見出しは除外されています(これらは典型的な部分品見出しや残余見出しです)。
第84.09項、第84.31項、第84.48項、第84.66項、第84.73項、第84.87項
第85.03項、第85.22項、第85.29項、第85.38項、第85.48項(税関官方网站)

実務の言い方に直すと、こうなります。
まず、部品が「バルブ」「ポンプ」「モーター」「蓄電池」など、そのものズバリの見出しに入るかを先に確認する。入るなら専用品でも基本はその見出し。入らない場合に、次の注2(b)の議論へ進む。(ジェトロ)

5. 注2(b)が意味すること

5.1 「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」部品はどこへ行くか

注2(a)に当たらない部品について、注2(b)は次を判断します。
特定の機械、または同一の項の複数の機械に、専ら又は主として使用される部品かどうか。(税関官方网站)

該当する場合、分類先は大きく2系統あります。(税関官方网站)

  1. その機械そのものの項
  2. 部分品見出し(第84.09、84.31、84.48、84.66、84.73、85.03、85.22、85.29、85.38)のうち該当する項

さらに、注2(b)は「第84.79項または第85.43項の機械を含む」と明記しています。つまり、84.79や85.43の機械向け部品も、同じ考え方で検討対象に入ります。(税関官方网站)

5.2 注2(b)のただし書きは2本ある

ここが実務上の重要ポイントです。注2(b)には、一般ルールより優先して分類先を指定するただし書きが2つあります。(税関官方网站)

  1. 第85.17項の物品と第85.25項から第85.28項までの物品に共通して主として使用する部分品は、第85.17項へ
  2. 第85.24項の物品に専ら又は主として使用する部分品は、第85.29項へ(税関官方网站)

この2つを落とすと、社内メモやブログ解説として不完全になります。

補足として、第85.24項はHS2022で新設された「フラットパネルディスプレイモジュール」に関する見出しであることが、日本税関のHS2022関連FAQでも説明されています。(税関官方网站)

6. 注2(c)の正しい理解

注2(c)は、注2(a)にも注2(b)にも当てはまらない「その他の部分品」の行き先を、見出し番号で明確に定めています。ここを曖昧に書くと誤解が出やすい部分です。(税関官方网站)

整理すると次のとおりです。(税関官方网站)

  1. まず、次の部分品見出しのうち、該当する項があればそこへ
    第84.09項、第84.31項、第84.48項、第84.66項、第84.73項
    第85.03項、第85.22項、第85.29項、第85.38項
  2. それでも該当する項がない場合
    第84.87項 または 第85.48項へ

実務感覚では、第84.87項と第85.48項は「この類の他の項に該当しない部分品」を受ける残余見出しの役割を持ちます。日本税関の実務資料でも、注2(c)の最終到達点としてこの2項が示されています。(ジェトロ)

7. 「専ら」と「主として」の実務的な判定ポイント

ここからが、分類担当者が一番知りたい部分です。条文は簡潔ですが、立証は現場作業になります。

7.1 専らと言いやすい典型

専らに近いと言いやすいのは、次のような場合です。

  1. 取り付け形状や嵌合形状が専用で、他機器には物理的に適合しにくい
  2. 専用コネクタや専用プロトコルなど、相手機器が限定される
  3. 部品単体では用途が成立しにくく、特定機器に組み込んで初めて機能する
  4. カタログ上も交換部品として特定機種向けに限定されている

ただし、専用設計に見えても、注2(a)で「それ自体の見出し」がある物品は、先にそちらへ行く可能性があることを常にセットで確認します。(世界税関機構)

7.2 主としては、資料で説得力を作る

主としての判断は、予定用途だけだと弱く、客観資料で固めるのが実務です。たとえば次が有効です。

  1. 仕様書、図面、写真(接続部や取付部が分かるもの)
  2. メーカーの対応機種リスト、互換性表
  3. カタログの記載(どの機器向け部品として販売されているか)
  4. 販売実績や出荷構成など、用途の偏りを示す資料

この「順番に検討する」考え方は、日本税関の実務向け資料でも強調されています。(ジェトロ)

7.3 「同一の項の複数の機械」とは

注2(b)は、機械が一機種に特定される場合だけでなく、同一の項(同じ4桁見出し)に属する複数機種に共通して主として使う部品も想定しています。(世界税関機構)

実務では、同一項内の複数モデル(例:同じ4桁見出しの製造装置の複数型式)に共通する交換ユニットなどがこのパターンに入りやすく、資料も集めやすい部類です。

8. よくある誤りと、回避のコツ

8.1 部品だからといって、最初から注2(b)に飛ばない

注2(a)が先です。部品が独立の見出しに該当するなら、専用設計でも基本はその見出しになります。(世界税関機構)

8.2 汎用性の部分品は第16部注1で外れる

ねじ、ボルト、ナット等に相当する「汎用性の部分品(parts of general use)」は、第16部から除外されます。機械に使うから第16部の部分品、とはなりません。(世界税関機構)

8.3 注2(b)のただし書きを忘れない

通信系(85.17)と映像・放送系(85.25から85.28)の双方に共通で主として使う部品は85.17へ、85.24向け部品は85.29へ、という指定は、結論を逆転させる力を持ちます。(世界税関機構)

8.4 注2(c)の行き先は番号で書く

「残余へ」では不十分です。注2(c)は、まず84.09等の部分品見出し群を当て、なければ84.87または85.48へ、という形で明示されています。(世界税関機構)

9. 分類担当者がそのまま使える「社内メモ」骨子

社内の分類メモやレビュー依頼文を、次の型で作ると議論が整理されます。

9.1 商品概要

  1. 物品名(一般名称と型番)
  2. 機能と用途
  3. 構成(材質、電気部品の有無、ソフトの有無)
  4. 取り付け先機器(機器名、型式、該当しうる項)

9.2 法令ロジック

  1. 通則1に基づき、見出し文言と部・類注で判断する(世界税関機構)
  2. 第16部注1で除外がないこと(汎用性の部分品など)(世界税関機構)
  3. 第16部注2の適用対象であること(84.84、85.44から85.47の部分品は除外)(税関官方网站)
  4. 注2(a)に該当するか
  5. 該当しない場合、注2(b)で「専ら又は主として」を立証し、ただし書きも確認
  6. それでも難しい場合、注2(c)の順で整理して結論を置く(税関官方网站)
  7. 見出し確定後、通則6で号以下を決める(世界税関機構)

10. 迷ったときの実務的な着地

日本では、輸入前に税関へ品目分類を照会し、回答を得る事前教示制度があります。判断が割れそうな案件ほど、仕様書・図面・写真・カタログ・互換性情報を添えて照会するほうが、後戻りコストを下げやすいです。(税関官方网站)

まとめ

  1. 「もっぱら、または主として使用される」は、部品の客観的性質と通常の用途実態から、特定機器との結びつきを評価する言い回し
  2. 第16部注2は、注2(a)→注2(b)→注2(c)の順で適用する
  3. 注2(b)のただし書き2本(85.17関係、85.24関係)と、注2の適用除外(84.84、85.44から85.47の部分品)は必ず明記
  4. 注2(c)は「残余」ではなく、まず84.09等を当て、なければ84.87または85.48へ、という番号指定がある

参考資料

  1. World Customs Organization, HS 2022 Section XVI Notes(注1、注2)(世界税関機構)
  2. 日本税関 関税率表解説 第16部(16b)注2(a)(b)(c)(税関官方网站)
  3. World Customs Organization, HS通則(通則1、通則6)(世界税関機構)
  4. 日本税関 品目分類の事前教示制度(案内ページ)(税関官方网站)
  5. JETRO セミナー資料「品目分類の考え方(機械類の部分品)」(ジェトロ)
  6. 日本税関 HS2022関連FAQ(第85.24項の位置付けの説明を含む)(税関官方网站)

免責事項

本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の貨物の品目分類、課税関係、申告の適否や結果を保証するものではありません。最終的な分類は、貨物の実物、仕様、提示態様、適用される通則および部・類の注等に基づき、必要に応じて税関の事前教示制度の利用や専門家への相談を行ったうえでご判断ください。

HS2022 第63類:紡織用繊維のその他の製品、セット、中古の衣類、紡織用繊維の中古の物品及びぼろ(Other made up textile articles; sets; worn clothing and worn textile articles; rags)

用語の統一:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 毛布、ひざ掛け、トラベリングラグ(6301)
    • ベッドリネン、テーブルリネン、タオル類などのリネン類(6302)
    • カーテン、室内用ブラインド、カーテンバランス(6303)
    • 室内用のカバー類、ベッドスプレッド、蚊帳(特定品は6304.20)(6304)
    • 包装用の袋(麻袋、FIBC、PPストリップ袋など)(6305)
    • ターポリン、日よけ、テント(仮設の日よけテントを含む)、セイル、キャンプ用品(6306)
    • 清掃用クロス、救命胴衣、顔マスクなどのその他の製品にした繊維製品(6307)
    • 中古衣類(6309)と、ぼろ・ウエス等(6310)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 反物や生地のままの織物や編物(第50類〜第60類など。製品にしたものではない場合)
    • 衣類そのもの(新品の衣類は原則として第61類または第62類)
    • じゅうたん、カーペット(第57類)や、つづれ織物(58.05)(63.09の範囲説明でも除外が明示)
    • 詰物をした寝袋、マットレス、枕、クッション(94.04。キャンプ用品の説明で除外が明示)
    • ナップサック、リュック等の容器(42.02。キャンプ用品の説明で除外が明示)
    • 衛生用品のうち、紙おむつや生理用ナプキン等(96.19。6307の除外として明示)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • そもそも製品にしたものかどうか(部注で定義あり。生地のままなら第50類〜第60類側へ)
    • 具体的な用途が「寝具リネン」「包装用袋」「テント類」「清掃用クロス」など、どの項の典型に当たるか(典型から外れると6307に寄りやすい)
    • 中古衣類(6309)にするには、使い古しの外観と、ばら積みやベール等での提示が両方必要(類注で条件が明示)
  • この類で特に誤分類が高コストになりやすい場面:
    • 6309(中古衣類)と6310(ぼろ)の取り違え。中古品と廃棄物の境界に近く、通関の説明責任と追加確認が増えやすいです。
    • 6306(テント)と、子供用遊戯テント(95.03)や、傘テント(66.01)などの境界。HS2022で仮設の日よけテント類が明確化され、解釈が動きやすい領域です。
    • 6304.20(特定の殺虫剤処理をした経編生地の製品)。該当するか否かで号が変わり、資料要求も増えます。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出しと注で決める):第63類は「製品にしたもの」という入口条件が強く、部注と類注で範囲がはっきりします。特に、部注の製品にしたものの定義と、第63類注の6309条件が実務の分岐点です。
    • GIR6(号の選択):材質別、用途別、印刷の有無、メリヤスか否か、FIBCか否か、区分済みか否かなど、6桁の分岐は仕様書と現物状態で決まります。
  • 品名だけで決めないための観点
    • 形状と仕上げ(縁縫い、熱溶着、裁断形状、組み立ての有無):これが製品にしたもの判定の中核です。
    • 用途と提示形態(例:包装用の袋なのか、持ち運び容器なのか。中古衣類がベールで来ているか等)
    • 異素材の付属の扱い:少量のトリミングや付属品の存在は通常は大きく影響しないが、異素材が主要構成になると別の見出しへ寄りやすい、という考え方が示されています。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:
    • その貨物は繊維製品で、部注でいう製品にしたものに当たりますか。
    • 当たらない場合は、生地や糸の章側(第50類〜第60類)や、不織布(例:5603)等を先に検討します。
  • Step2:
    • 製品にしたものなら、まず典型の項に当てはめます。
    • 毛布(6301)、リネン類(6302)、カーテン(6303)、室内用品(6304)、包装用袋(6305)、タープ・テント類(6306)、その他(6307)の順に当てはめると迷いが減ります。
  • Step3:
    • 「手芸用のセット」なら6308。
    • 「中古衣類」なら6309。ただし類注の要件を満たすかを必ず確認します。
    • 「ぼろ、ウエス、ロープくず」等なら6310(区分済みかどうかで6310.10と6310.90)。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第63類(製品にしたもの)と、第50類〜第60類(糸・生地・レース等の素材)の境界
    • 6306(テント類)と、66.01(傘テント)や95.03(遊戯用テント)の境界
    • 6307(その他)と、96.19(おむつ等)や42.02(容器類)などの境界
    • 6309(中古衣類)と、6310(ぼろ)または第61類・第62類(新品衣類として扱われ得る)との境界

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
6301毛布、ひざ掛け等電気毛布、毛布、トラベルラグ電気毛布か否か、材質(羊毛・綿・合繊など)で号が分かれます
6302ベッド、テーブル、トイレット、キッチンリネンシーツ、枕カバー、テーブルクロス、タオル清掃用クロスは6307.10へ寄るため用途要確認
6303カーテン、室内ブラインド等カーテン、ドレープ、室内ブラインド室内用。屋外のよしず等や日よけの一部は6306側も検討
6304室内用品(94.04除く)ベッドスプレッド、クッションカバー、蚊帳6304.20は類の号注で範囲が特定されています
6305包装用の袋麻袋、コメ袋、FIBC、PPストリップ袋4202の容器と区別。素材がプラ板状なら第39類側の可能性も
6306ターポリン、日よけ、テント、セイル、キャンプ用品タープ、イベント用テント、船の帆、エアマットHS2022でテントに仮設の日よけテント等が明確化。睡袋は94.04、遊戯テントは95.03へ
6307その他の製品にしたもの(ドレスパターン含む)清掃用クロス、救命胴衣、旗、顔マスク等「他のどこにも当たらない製品にした繊維製品」の受け皿。96.19等の除外あり
6308織物と糸から成るセット刺しゅうキット、ラグ製作用セット織物と糸がセットで小売包装。単なる材料の寄せ集めは要注意
6309中古の衣類その他の物品古着、使用済み毛布等使い古しの外観と、ばら積みやベール等で提示の両方が必要
6310ぼろ、ロープくず等ウエス、古布、ロープ端材区分済みか否かで6310.10と6310.90

表の根拠:第63類の項と号の構成はHS2022の条文に基づき整理しています。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • メリヤス編みか否か(例:6302のベッドリネン、6303のカーテン、6304のベッドスプレッド)
    • 印刷の有無(例:6302のベッドリネンで印刷ありとなしが分岐)
    • 材質(綿、合繊、その他)
    • 用途の限定(例:清掃用クロスは6307.10、救命胴衣は6307.20)
    • 提示形態と状態(中古衣類6309の条件、6310の区分済み)
    • 包装袋の種類(FIBCは6305.32として独立)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    • 6302(リネン類)と6307.10(清掃用クロス)
      • どこで分かれるか:製品の主用途がリネンとしての使用か、清掃用か。条文上、清掃用クロスは6307.10として独立しています。
      • 判断に必要な情報:商品仕様(用途説明)、素材と厚み、販売形態(台所用ふきんか、床掃除用か)、表示・カタログ写真
      • 典型的な誤り:台所周りで使うからキッチンリネン(6302)と決め打ちする
    • 6306(テント)と他類(66.01、95.03、94.04)
      • どこで分かれるか:テントとしての構造と用途、除外規定の有無。日本の解説では傘テント(66.01)や遊戯用テント(95.03)等を明確に除外しています。
      • 判断に必要な情報:フレーム構造、屋外での気象要素からの保護目的、対象年齢や用途表示、セット内容(ペグ、ロープ等)
    • 6309(中古衣類)と6310(ぼろ)
      • どこで分かれるか:6309は類注で要件が明示され、使い古しの外観に加えて、ばら積みやベール等で提示することが必要です。
      • 判断に必要な情報:現物状態(摩耗、汚れ、補修痕)、梱包形態(ベール、サック等)、用途(再使用か、原料やウエス用か)、仕分け状況
    • 6305.33(PP等のストリップ袋)と第39類(プラスチック製の袋)
      • どこで分かれるか:繊維とみなされるストリップか、プラスチック製品か。部注では、一定幅を超えるプラスチックストリップは繊維製品から外れる扱いが示されています。
      • 判断に必要な情報:ストリップの見掛け幅、素材仕様、織り方、用途(包装用か)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第63類に到達するための入口は、部注で定義される製品にしたものに当たるかどうかです。典型は、一定形状への裁断、縁縫い・房付け、熱溶着、縫製や接着による組立て、メリヤス編みの成形などです。
    • 第50類〜第60類は原則として製品にしたものを含まない、という整理があり、素材の章と製品の章を分けています。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 不織布の四角いシートでも、単に裁断しただけで縫製や縁処理がない場合、製品にしたものとして扱われない可能性があり、生地側(例:5603)に残ることがあります。日本の解説でも、単なる長方形裁断の不織布シーツ等を除外例として挙げています。
    • 逆に、同じ不織布でも、特定形状に裁断し、縁処理や接着などで用途が完成していれば第63類側に寄ることがあります(ただし他のより具体的な項が優先)。
  • この部注で他章に飛ぶ代表パターン:
    • ストリップ等の扱いで繊維かプラスチックかが変わり、第39類へ寄る
    • 製品にしたものの定義に当たらず、生地の章(第50類〜第60類)へ戻る

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:第1節(6301〜6307)は、繊維製品のうち製品にしたものに限る、という入口条件です。
    • 注2:第1節は第56類〜第62類の物品と、6309の中古衣類等を含まない、という整理です。
    • 注3:6309は、対象品目が限定されるうえ、使い古しの外観と、ばら積みやベール等での提示という二つの要件を両方満たす必要があります。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 6304.20の対象は、号注で特定の殺虫剤を含む処理をした経編生地から製造した物品、として整理されています。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 6306の説明では、傘テント(66.01)を含まないことや、バックパック等(42.02)、詰物をした寝袋等(94.04)、子供用遊戯テント(95.03)の除外が示されています。
    • 6307の説明では、96.19のおむつ等が除外として明示されています。

4. 類注が分類に与える影響(どこでコードが変わるか)

  • 影響ポイント1:製品にしたもの判定で、第63類に入るかが決まる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 裁断形状(長方形以外か)
      • 縁処理(縁縫い、房付け、熱溶着など)
      • 組立て(縫製、接着、その他の方法で完成品になっているか)
      • 単に裁断しただけかどうか
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書、工程図、製造方法の説明
      • 仕上げの写真(縁処理の有無が分かるもの)
      • サンプルまたは現物写真(全体形状が分かるもの)
    • 誤分類の典型:
      • 裁断しただけのシートを第63類の製品にしたものと扱ってしまう
  • 影響ポイント2:6309(中古衣類)の類注要件で、6309になるかが決まる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 使い古しの外観が明らかか
      • ばら積み、ベール、サック等で提示されているか
    • 現場で集める証憑:
      • 梱包仕様(ベール写真、梱包明細)
      • 仕分け工程の記録(再使用向けか、ウエス原料か)
      • 品質検査レポート(汚れ、破れの程度)
    • 誤分類の典型:
      • 個別包装で小売向けに整えた中古衣類を、条件確認なしに6309で申告してしまう
  • 影響ポイント3:6304.20(特定処理の蚊帳等)の該当性で号が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 経編生地かどうか
      • 特定の殺虫剤で浸漬または塗布しているか
    • 現場で集める証憑:
      • 成分表、SDS、処理証明書
      • 生地仕様(編み組織、製法)
    • 誤分類の典型:
      • 処理の有無を確認せず、6304.99などへ寄せてしまう
  • 影響ポイント4:6306(テント類)で、仮設の日よけテント等が明確化された
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • テントとしての構造(屋根と側面、フレーム等)
      • 屋外の気象要素から保護する用途
      • 除外品(66.01、95.03等)に当たらないか
    • 現場で集める証憑:
      • 商品カタログ、取扱説明書、組立説明
      • セット内容(ペグ、ロープ等)
    • 誤分類の典型:
      • イベント用の仮設日よけテントを、その他の布製品(6307)に入れてしまう

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:裁断しただけの不織布シートを第63類に入れる
    • なぜ起きる:見た目がシーツやカバーに見え、用途名だけで判断してしまう
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):製品にしたものの定義に当たる仕上げがあるかを確認します。日本の解説でも、単なる長方形裁断の不織布シーツ等は除外例として示されています。
    • 予防策:
      • 縁処理の有無が分かる写真をサプライヤーから入手
      • 工程図で、縫製や熱溶着工程の有無を確認
  2. 間違い:清掃用クロスをキッチンリネン(6302)として申告する
    • なぜ起きる:台所で使う=キッチンリネン、と短絡しやすい
    • 正しい考え方:清掃用クロスは6307.10として独立しており、用途で切り分けます。
    • 予防策:
      • 用途説明(床掃除、皿洗い、ダスター等)をインボイス品名に反映
      • 販売チャネルと商品カテゴリ(清掃用品かリネンか)を確認
  3. 間違い:イベント用の仮設日よけテントを6307(その他)に入れる
    • なぜ起きる:金属フレームがあると「繊維製品ではない」と誤解しやすい、またはテントの定義が曖昧に感じる
    • 正しい考え方:HS2022の6306では、テントに仮設の日よけテント等が明示され、解説でも具体像が示されています。
    • 予防策:
      • 屋根と側面の構造、屋外保護用途を仕様書に明記
      • 66.01の傘テントや95.03の遊戯用テントに当たらないことを確認
  4. 間違い:詰物をした寝袋をキャンプ用品(6306)に入れる
    • なぜ起きる:「キャンプで使う」用途だけで判断してしまう
    • 正しい考え方:解説上、詰物をした寝袋等は94.04に除外されます。
    • 予防策:
      • 詰物の有無、寝具としての性格(保温構造)を確認
      • 商品仕様に中綿材、構造を記載
  5. 間違い:バックパック等をキャンプ用品(6306)として扱う
    • なぜ起きる:キャンプ用品の一部と誤認しやすい
    • 正しい考え方:解説上、ナップサック等は42.02に除外されます。
    • 予防策:
      • 「収納容器」か「キャンプ用具」かを用途・形状で切り分け
      • 42.02の該当性チェックリストを社内で整備
  6. 間違い:中古衣類を、条件確認なしに6309で申告する
    • なぜ起きる:中古衣類=6309、と覚えてしまいがち
    • 正しい考え方:6309は類注で要件が明示され、使い古しの外観と、ばら積みやベール等での提示が両方必要です。
    • 予防策:
      • 梱包形態の写真を必須資料にする
      • インボイス品名に「baled」「in bulk」等の提示形態を反映(実態に合わせる)
  7. 間違い:おむつ等の衛生用品を6307.90に入れる
    • なぜ起きる:繊維が使われているので6307の受け皿に入れてしまう
    • 正しい考え方:6307の除外として96.19が明示されており、衛生用品は96.19側の検討が必要です。
    • 予防策:
      • 製品の機能(吸収体、衛生用品)を明確化
      • 96.19の国内コード細分や規制も別途確認
  8. 間違い:PPストリップ織りの袋を、幅や素材の確認なしに6305.33へ入れる
    • なぜ起きる:見た目が同じでも、素材の扱いで繊維かプラスチックかが変わることが認識されにくい
    • 正しい考え方:部注では、一定幅を超えるプラスチックストリップ等は繊維製品の範囲から外れる整理があります。6305.33は繊維材料としてのストリップ等を前提にしているため、仕様確認が必要です。
    • 予防策:
      • サプライヤー仕様書でストリップの見掛け幅を必須項目化
      • 材料が繊維材料として扱われる前提を説明資料に残す

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。例えば、同じ「袋」でも6305と42.02ではPSRが変わり得ます。分類を誤ると、材料のHS、工程要件、RVC計算の前提が連鎖的に崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品は第63類でも、材料(生地、糸、部材)のHSが別章に分かれる
    • セット(6308)を、材料の寄せ集めとして扱ってしまい、PSRの起点がずれる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定によって参照しているHS年次が異なります。必ず協定本文、附属書(PSR表)または運用ガイダンスで参照HS版を確認してください。
  • 第63類はHS2017で6304.20が新設されており、HS2012ベースのPSR表を使う場合は対応関係を必ず確認する必要があります。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • まずHS6桁の対応を相関表で押さえた上で、協定のPSR表が要求する章変更や号変更の条件に照らして、材料側のHSも含めて再評価します。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ:
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国
    • 非原産材料のHS(材料が生地なのか付属品なのかを区分)
    • RVC計算の前提(控除対象の範囲)
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • サプライヤー証明、製造工程資料、インボイス、船積書類を協定の保存年限に合わせて保管

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022文言修正、範囲の明確化6306(項)テントの範囲として、仮設の日よけテント等(temporary canopies and similar articles)が明示されたイベント用の仮設テントや簡易シェルターの分類検討で、6306の根拠が示しやすくなる。従来6307等へ誤分類しやすかった案件の再点検が有効

7-2. 違うことになった根拠(必須)

  • 根拠資料として、WCOのHS2017条文とHS2022条文の第63類(63.06の見出し文言)を突合しました。HS2017ではテントが単にtentsと表現されている一方、HS2022ではtentsに仮設の日よけテント等が括弧書きで明示されています。
  • このため、HS2022では6306の解釈として、仮設の日よけテント等がより直接的に含まれることが明確になったと整理しました。
  • なお、HS6桁のコード体系(6306.12、6306.22など)はHS2017とHS2022で同一であり、コード新設や削除ではなく、見出し文言の明確化が中心です。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第63類は、HS改正ごとに大きな章立て変更は多くない一方で、特定用途の独立や、低取引量を理由とした統合が起きています。以下は確認できた主要点です。

版の流れ主要な追加・削除・再編旧コード→新コード(代表)根拠
HS2002→HS20076306(ターポリン・テント等)で複数の号が削除され、整理が実施例:6306.11等の削除、6306.19等への整理相関表の備考に低取引量による削除等が記載
HS2007→HS20126306.91と6306.99が統合され、6306.90が新設6306.91/6306.99→6306.90相関表の備考に統合理由が記載
HS2007→HS20126307.90の一部が96.19側へ移る整理が示される6307.90の一部→96.19(衛生用品)相関表で96.19に関する備考参照が付与
HS2012→HS20176304.20(特定の処理をした蚊帳等)が新設6304.91→6304.20等(ベッドネットを独立)相関表で6304.20新設の備考あり
HS2017→HS20226306の見出し文言が明確化コード変更なしHS条文比較

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:古着を6309で申告したが、提示形態が要件未充足
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):6309は使い古しの外観と、ばら積みやベール等での提示が必要。個別包装での提示などは要件に合わない可能性。
    • 起きやすい状況:ネット販売用に個別袋詰めした中古衣類をまとめて輸入する
    • 典型的な影響:コード更正、追加資料要求、検査強化、納期遅延
    • 予防策:梱包形態と現物状態の写真を事前に揃え、6309要件を満たす提示になっているかを確認
  • 事例名:仮設日よけテントを6307で申告して差戻し
    • 誤りの内容:HS2022の6306には仮設の日よけテント等が含まれる趣旨が明確化。6307は受け皿だが、より具体的な6306が優先。
    • 起きやすい状況:フレーム付きのため分類が揺れ、その他扱いにしてしまう
    • 典型的な影響:更正、追加納税の可能性、通関遅延
    • 予防策:用途説明、構造説明、セット内容の資料を整備し、6306で説明可能にする
  • 事例名:不織布シートを製品にしたものとして申告し、実は生地扱い
    • 誤りの内容:部注の製品にしたものの定義に当たらない可能性(単なる裁断)。日本の解説でも除外例がある。
    • 起きやすい状況:使い捨てシーツやカバーを、見た目で寝具リネンに寄せる
    • 典型的な影響:分類更正、原産地規則の再判定、納期遅延
    • 予防策:縁処理や仕上げ工程の有無を確認し、必要なら材料章側も同時に検討
  • 事例名:殺虫剤処理蚊帳の処理内容が不明で号が確定できない
    • 誤りの内容:6304.20は処理内容が特定されており、該当性資料がないと判断が止まる。
    • 起きやすい状況:支給品や寄付品でSDSや処理証明が付かない
    • 典型的な影響:保留、追加資料要求、検査
    • 予防策:成分表、処理証明、仕様書を船積前に回収し、物質名と処理方法を明確化

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • その他の許認可・届出
      • 中古衣類や中古繊維製品は、知的財産侵害品(偽ブランド等)のリスク管理が重要です(一般論)。また、国内販売では家庭用品品質表示法や家庭用品規制法への対応が必要になる旨が案内されています。
      • ぼろ・ウエス等(6310)や中古繊維物品は、状態や実態によって廃棄物と判断される可能性があり、その場合は廃棄物処理法やバーゼル法に基づく申請等が必要になる、という整理が環境省の案内に示されています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口)
    • 日本税関の輸入手続・分類関連情報(事前教示制度、分類事例など)
    • 廃棄物該当性が疑われる場合:環境省の廃棄物等の輸出入手続の案内、必要に応じ経済産業省・環境省への申請窓口
  • 実務での準備物(一般論)
    • 仕様書、写真、材質・構造説明、用途説明
    • 中古品の場合:梱包形態の写真、状態説明、再使用目的の説明資料
    • 廃棄物該当性が論点の場合:売買契約書、価値の説明、選別工程、再生利用計画など

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 製品にしたものの要素があるか(縁処理、組立て、成形など)
    • 用途は何か(リネン、清掃、包装、テント、中古衣類、ぼろ等)
    • 材質(綿、合繊、その他)、メリヤスか否か、印刷の有無
    • 中古品なら、外観と梱包形態が6309要件を満たすか
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 6306なら、66.01、94.04、95.03等の除外に当たらないか
    • 6307なら、96.19等の除外がないか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に用途と形状を入れる(例:cleaning cloth、tarpaulin、baled worn clothing等)
    • 仕様書、写真、カタログをセットで準備
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS年次を確認し、必要なら旧新対応を取る
    • 材料のHSと工程の整合を確認
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 中古衣類・ぼろは、廃棄物該当性の論点がないか確認
    • 国内販売時は品質表示等の法令対応を確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO
    • HS Nomenclature 2022, Chapter 63(参照日:2026-02-24)
    • HS Nomenclature 2017, Chapter 63(参照日:2026-02-24)
  • 日本(税関・公的機関)
    • 日本関税率表 解説 第63類(63r.pdf)(参照日:2026-02-24)
    • 日本関税率表 第11部注(F11b.pdf:製品にしたものの定義等)(参照日:2026-02-24)
    • 税関協定相関表(HS2017-HS2012、HS2012-HS2007、HS2007-HS2002)(参照日:2026-02-24)
    • 日本の関税率表掲載一覧(年度更新の確認用)(参照日:2026-02-24)
    • JETRO 貿易・投資相談Q&A(衣料品の輸入手続き:日本。国内販売時の法令対応に言及)(参照日:2026-02-24)
  • 環境省
    • 廃棄物等の輸出入の手続(廃棄物該当時の申請先等)(参照日:2026-02-24)
  • その他
    • 日本税関(英語)分類事例・事前教示制度等への導線(参照日:2026-02-24)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第62類:衣類及び衣類附属品(メリヤス編み又はクロセ編みのものを除く。)(Articles of apparel and clothing accessories, not knitted or crocheted)

類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 織物製の男子用コート、アノラック、ウインドジャケット等(6201)
    • 織物製の女子用コート、ケープ、アノラック等(6202)
    • 織物製のスーツ、ジャケット、ズボン、スカート、ワンピース等(6203、6204)
    • 織物製のシャツ、ブラウス(6205、6206。ただし類注の定義に注意)
    • 乳児用(身長86cm以下)の衣類・附属品(6209)
    • 不織布や被覆織物など特定生地で作られた衣類(6210。類注で優先分類)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • メリヤス編み又はクロセ編み(ニット)の衣類(原則として第61類へ。例外として6212は第62類)
    • 中古の衣類・中古品としての衣類(6309)
    • 整形外科用機器、外科用ベルト、脱腸帯等(9021)
    • 履物(第64類)や帽子(第65類)など、衣類に見えても章が別のもの(部注の除外に該当しやすい)
    • そもそも「衣類」ではなく、生地や材料の段階のもの(例:被覆織物は第59類、布帛は第50〜55類・第58類など。製品かどうかの判定が鍵)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • ニットか、織物か(第61類と第62類の分岐。6212は例外)
    • 6210に該当する生地で作られた衣類か(該当すると他の項より6210が優先されます)
    • 6205/6206(シャツ・ブラウス)に入るか、ポケット位置や裾仕様などで別項になるか(類注で明確に除外されます)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 6201/6202(コート類)はHS2022で6桁の構造が再編されています。HS2017コードのまま運用すると、原産地規則(PSR)や社内マスター、通関データが崩れる典型になります。
    • 小売用にセットで提示されても、衣類同士で項が異なるなら各項で別々に分類されるという部注(第11部注14)を見落とすと、全体を誤ったコードで申告しやすいです。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1:見出し(項)と注(部注・類注)でまず決めます。第62類は、類注が具体的な優先ルールや定義(乳児用、6210優先、ハンカチ寸法など)を持つため、品名より注が強い場面が多いです。
    • GIR6:6桁(号)まで落とすとき、繊維素材別(綿、毛、合成繊維など)の分岐が中心になります。
    • GIR3:異素材の複合(例:織物本体に樹脂被覆、部分的にニットメッシュ、パッド付き等)では、どの要素が本質的特性か、または特定の優先規定があるかを検討します。特に衣類の場合、6210のような優先ルールがあるとGIR3より先に効くことがあります(「同時に属するとみられる場合は6210」)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 編み方(ニットか織物か)、生地の分類(不織布、被覆織物など)、用途(下着か外衣か、スポーツ用か)、性別区分(前合わせ等)、サイズ(乳児用の身長基準)、寸法(ハンカチかスカーフか)を確認します。
    • 「製品にしたもの(made up)」かどうかの確認も重要です。反物や単なる裁断片は衣類ではなく、部注で定義される「製品にしたもの」に該当する加工状態である必要があります。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:それは衣類または衣類附属品ですか
    • いいえ:第62類以外(例:帽子は第65類、履物は第64類、バッグは第42類など)を検討します。
  • Step2:メリヤス編み又はクロセ編み(ニット)ですか、それとも織物等ですか
    • ニット:原則として第61類。ただし、コルセット類等(6212)は「ニットであっても」第62類に残る例外です。
    • 織物等:Step3へ
  • Step3:「製品にしたもの(made up)」ですか
    • いいえ:反物・生地・材料側の章(第50〜60類、第59類など)を検討します。
    • はい:Step4へ
  • Step4:中古衣類(6309)や整形外科用ベルト等(9021)に当たりませんか
    • 当たる:第62類から除外です。
    • 当たらない:Step5へ
  • Step5:乳児用(身長86cm以下)ですか
    • はい:6209(同時に他項に見えても6209が優先)
    • いいえ:Step6へ
  • Step6:生地が56.02、56.03、59.03、59.06、59.07のいずれか(またはそれに該当する加工生地)で作られた衣類ですか
    • はい:6210(6209を除き、同時に他項に見えても6210が優先)
    • いいえ:Step7へ
  • Step7:用途と形状で項(4桁)を決めます
    • 外衣のコート類(6201、6202)、スーツやズボン等(6203、6204)、シャツ・ブラウス(6205、6206)、下着・寝間着等(6207、6208)、スポーツ用等その他衣類(6211)、コルセット類(6212)、スカーフ・ハンカチ・ネクタイ・手袋等(6213〜6216)、その他附属品・部分品(6217)を検討します。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第61類と第62類:ニットか織物か。6212だけは例外で第62類です。
    • 6205/6206(シャツ・ブラウス)と、6201/6202/6203/6204(ジャケット等):ポケット位置や裾の絞り仕様で類注上、6205/6206から除外されます。
    • 6213(ハンカチ)と6214(スカーフ等):正方形またはほぼ正方形で、辺が60cm以下かどうかが分岐点です。
    • 6210とその他衣類:生地が該当するかが最優先の分岐です。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:
    • 第62類は項数が多すぎないため、全列挙します(6201〜6217)。内容はHS2022の項構造に基づき要約しています。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
6201男子用のコート類、アノラック等(6203除外)メンズコート、ウインドジャケット6203(スーツ等)との線引き。性別判定は類注9も参照
6202女子用のコート類、アノラック等(6204除外)レディースコート、ケープ6204(スーツ等)との線引き。性別判定は類注9も参照
6203男子用スーツ、ジャケット、ズボン等(水着除外)メンズスーツ、ジャケット、スラックス「スーツ」「アンサンブル」定義は類注3。セットでも部注14で別分類になる場合あり
6204女子用スーツ、ジャケット、ワンピース、スカート、ズボン等(水着除外)レディーススーツ、ワンピース定義は類注3。性別判定が難しい場合の扱いも重要
6205男子用シャツドレスシャツ、カジュアルシャツ類注4で、ポケット位置や裾の絞りがあると除外。袖なしも除外
6206女子用ブラウス、シャツ等ブラウス、シャツブラウス、チュニック系類注4で、ポケット位置や裾仕様により除外され得る
6207男子用の下着・寝間着・ガウン等トランクス、パジャマ、バスローブ「下着か外衣か」「用途表示」も実務では確認
6208女子用の下着・寝間着・ガウン等スリップ、ナイトウェア、ガウンサニタリー関連品はHS2012で別見出し(9619)へ移った経緯があり、旧コード運用に注意
6209乳児用衣類・附属品ベビー服、ベビー用付属品身長86cm以下。類注5で他項より優先
6210特定生地(56.02、56.03、59.03、59.06、59.07)で作った衣類不織布ガウン、被覆織物のレインウェア等類注6で6209以外より優先。生地側の分類確認が鍵
6211トラックスーツ、スキースーツ、水着、その他衣類水着、スキーウェア、スポーツ用パンツスキースーツ定義は類注7。水着は6211内で性別区分あり
6212ブラジャー、ガードル、コルセット等とその部分品(ニット可)ブラ、補整下着、ストラップ部品「ニットでも可」の例外。整形外科用途は9021除外の可能性
6213ハンカチ綿ハンカチ類注8で60cm以下がハンカチ
6214ショール、スカーフ、マフラー等スカーフ、ストール類注8で60cm超がこちらへ
6215ネクタイ、蝶ネクタイ等ネクタイ素材別の号に分岐
6216手袋、ミトン等布手袋、作業手袋6桁は6216.00のみ(HS)
6217その他の衣類附属品、衣類等の部分品(6212除外)パッド、腕章、衣類の部分品6212の部分品は6212側。何の「部分品」かが分岐

(注)表は実務向けの要約です。法的には各見出しと注を必ず確認してください。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(頻出)
    • 素材(綿、毛、合成繊維、人造繊維、その他)
      • 第62類は6桁で素材別に割れている箇所が多く、成分表示や混用率がそのまま分類に直結します。
    • 性別区分(男子用か女子用か)
      • 前合わせ(左前か右前)を基本ルールとしつつ、裁断で明確に判別できる場合は裁断を優先します。判別できない場合は女子用側に寄せるというルールがあります。
    • 乳児用(6209)
      • 身長86cm以下かどうかが基準です(年齢ではありません)。
    • 6210該当(生地要件)
      • 不織布(56.03)や被覆織物(59.03等)で作った衣類は、見た目がコートやジャケットでも6210が優先され得ます。
    • 寸法(6213と6214)
      • 60cmのラインが明確な分岐です。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    • 6201.20/6201.30/6201.40/6201.90(男子用コート類の素材別)
      • どこで分かれるか:表地の繊維素材(毛、綿、合成繊維、その他)
      • 判断に必要な情報:組成(混用率)、表地・裏地の材質、該当する「繊維素材の優先ルール」(部注2の混用ルール等)
      • 典型的な誤り:製品名が「コート」だからと素材確認を省略し、誤った号を選ぶ
    • 6205(男子用シャツ)と6201/6203(外衣・ジャケット等)の境界
      • どこで分かれるか:ポケットの位置(ウエストより下のポケットがあると6205/6206に入らない)、裾の絞り(ゴム編み等)があると6205/6206に入らない、袖なしは6205に入らない
      • 判断に必要な情報:実物写真(前後、ポケット位置、裾仕様)、仕様書、型紙イメージ
      • 典型的な誤り:「シャツ型に見える」だけで6205/6206に決める
    • 6210(特定生地の衣類)と、それ以外(6201〜6204、6211等)
      • どこで分かれるか:生地が56.02/56.03/59.03/59.06/59.07に該当するか。該当し、かつ6209以外と競合するなら6210が優先。
      • 判断に必要な情報:生地の分類根拠(不織布か、被覆・含浸・積層の有無と程度)、生地メーカー資料、試験結果や断面情報
      • 典型的な誤り:見た目が「レインコート」「ガウン」なので6201/6202/6211に入れてしまい、6210を落とす
    • 6213(ハンカチ)と6214(スカーフ等)
      • どこで分かれるか:正方形またはほぼ正方形で、各辺が60cm以下なら6213。いずれかの辺が60cmを超えるなら6214。
      • 判断に必要な情報:寸法(包装表示ではなく実測が安全)、形状(正方形か長方形か)
      • 典型的な誤り:「ハンカチとして販売」だけで6213に固定し、サイズを確認しない
    • 6203/6204(スーツ・アンサンブル)と「セット販売」の扱い
      • どこで分かれるか:スーツ・アンサンブルの定義を満たすか(類注3)。一方で、異なる項に属する衣類は小売用セットでも各項に分類(第11部注14)。
      • 判断に必要な情報:セット内容、各アイテムの個別仕様、同一生地か、サイズの適合、構成(上衣1点と下衣1点等)
      • 典型的な誤り:セット販売=アンサンブルと誤解し、全体を1コードにしてしまう

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第11部注7:繊維製品で「製品にしたもの(made up)」の定義があり、衣類やスカーフ等に到達する前提条件になります。
    • 第11部注14:第61.01〜61.14および第62.01〜62.11の衣類は、異なる項に属するなら小売用のセットでも各項に分類します。衣類セットの取り扱いで最も事故が起きやすい条文です。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:女性用の衣類セット(ズボン、チュニック、ショール)を同梱して小売用に提示しても、ズボンは6204、チュニックは6206、ショールは6214のように分離して分類されます(第11部注14の典型例)。
    • 例:刺しゅう布とスカーフを小売用にセット提示しても、布側が未製品なら生地側に残り、スカーフは6214というように分離されます(製品にしたものかどうかが鍵)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 第11部注1の除外により、履物(第64類)、帽子(第65類)、毛皮製品(第43類)などへ飛ぶケースがあります。衣類の周辺商品ほど注意が必要です。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第62類は「織物などの紡織用繊維の織物類を製品にしたもの」に限定され、ニットは原則除外(ただし6212は例外)です。
    • 6209(乳児用)は身長86cm以下が定義で、他項と競合しても6209が優先されます。
    • 6210は、他項(6209を除く)と競合しても6210が優先されます。
    • 6205/6206(シャツ・ブラウス)は、ポケット位置や裾仕様で明確に除外される衣類があります。
    • 6213/6214は60cm基準が明示されています。
    • 性別判定(前合わせ)と、判別不能時の扱い(女子用に寄せる)が定められています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「スーツ」「アンサンブル」:構成、同一生地、サイズ適合などの条件が定義されています。
    • 「シャツ」「シャツブラウス」「ブラウス」:袖の有無、開きの有無、フィット感などの説明があり、6205/6206の範囲判断に直接効きます。
    • 「スキースーツ」:外観・風合による識別と、構成パターンが定義されています。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 中古衣類:6309
    • 整形外科用等:9021

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:第61類か第62類か(ニットか織物か)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 生地の組織(編物か織物か)、商品仕様書、サンプル写真
    • 現場で集める証憑:
      • 生地規格書、素材ラベル、拡大写真、サンプル
    • 誤分類の典型:
      • 「ジャケット」など品名で決め、編物か織物かを確認しない
        根拠:第62類はニットを原則除外(6212を除く)
  • 影響ポイント2:6210の優先(不織布・被覆織物等で作られた衣類)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 生地が56.02/56.03/59.03/59.06/59.07に該当するか
    • 現場で集める証憑:
      • 生地メーカーの品番資料、被覆の有無(樹脂コート等)、不織布の仕様、場合により試験成績
    • 誤分類の典型:
      • 見た目がコートやガウンなので6201/6202/6211に入れ、6210優先を見落とす
        根拠:第62類注6および6210の見出し
  • 影響ポイント3:6205/6206(シャツ・ブラウス)からの除外条件
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • ウエストより下のポケット有無、裾の絞り(ゴム編み等)、袖の有無
    • 現場で集める証憑:
      • 前後写真、仕様書、ポケット位置図、裾仕様の写真
    • 誤分類の典型:
      • 「シャツ」表記だけで6205/6206に固定
        根拠:第62類注4
  • 影響ポイント4:乳児用(6209)優先と身長86cm基準
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 対象身長、サイズ表記、対象年齢ではなく身長
    • 現場で集める証憑:
      • 商品タグ、カタログのサイズ表、仕様書
    • 誤分類の典型:
      • 「ベビー用」表示だけで6209に入れ、86cmを超えるサイズを混ぜてしまう
        根拠:第62類注5
  • 影響ポイント5:6213と6214の60cm分岐
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 形状(正方形か)、各辺の実測(60cm以下か超えるか)
    • 現場で集める証憑:
      • 実測記録、図面、商品ラベル
    • 誤分類の典型:
      • 「ハンカチ」「スカーフ」という販促名で決め、寸法を見ない
        根拠:第62類注8

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:ニット衣類を第62類で申告する
    • なぜ起きる:見た目がシャツやジャケットでも、編物か織物かを確認していない
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):第62類は原則としてニットを除外(6212を除く)
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 生地組織は編物ですか織物ですか
      • 生地規格書、サンプル、拡大写真を回収
  2. 間違い:小売用の衣類セットを1コードで申告する
    • なぜ起きる:セット販売=一体分類という思い込み
    • 正しい考え方:衣類(61.01〜61.14、62.01〜62.11)は、異なる項に属するものはセットでも各項に分類(第11部注14)
    • 予防策:
      • セット内容を明細化(上衣、下衣、附属品を分解)
      • 各アイテムの用途・素材・形状の資料を揃える
  3. 間違い:不織布・被覆織物の衣類を6210でなく6201/6202/6211に入れる
    • なぜ起きる:衣類側だけ見て、生地側の分類(56類・59類)を確認していない
    • 正しい考え方:第62類注6により、6210と他項が競合する場合(6209除く)は6210が優先
    • 予防策:
      • 生地が56.02/56.03/59.03/59.06/59.07のどれかを必ず確認
      • 被覆や含浸の仕様書、試験データをメーカーから入手
  4. 間違い:6205/6206に入らない衣類を「シャツ扱い」で6205/6206にする
    • なぜ起きる:商品名や見た目だけで判断し、類注の除外条件を見落とす
    • 正しい考え方:ウエストより下のポケット、裾の絞りがある衣類は6205/6206に含まれない。6205は袖なしも含まれない
    • 予防策:
      • ポケット位置、裾仕様、袖有無を写真と図面で確認
      • 社内質問例:裾にゴム、ドローコード、リブはありますか
  5. 間違い:乳児用(6209)を年齢基準で判断する
    • なぜ起きる:商品説明が「0〜24か月」など年齢表記中心で、身長の確認をしていない
    • 正しい考え方:6209の定義は身長86cm以下
    • 予防策:
      • サイズ表を身長基準で回収し、86cm超のサイズ混在を排除
  6. 間違い:性別の判定を曖昧なまま6201と6202、または6203と6204を選ぶ
    • なぜ起きる:前合わせと裁断の優先関係を理解していない
    • 正しい考え方:前合わせで原則判定しつつ、裁断で明確に判別できる場合は裁断を優先。判別不能なら女子用側へ
    • 予防策:
      • 前合わせ仕様、型紙情報、商品写真(着用時)を確認
  7. 間違い:ハンカチ(6213)とスカーフ(6214)を販促名で判断する
    • なぜ起きる:「ハンカチとして販売」=6213と思い込む
    • 正しい考え方:60cm基準が注で明示
    • 予防策:
      • 実測(包装表示ではなく現物測定)をルール化
  8. 間違い:6212(コルセット類)と9021(医療用)を混同する
    • なぜ起きる:補整下着と医療用ベルトが外観上似ている
    • 正しい考え方:第62類は9021の整形外科用等を除外。用途・医療的機能の実態が重要
    • 予防策:
      • 医療機器としての位置付け、効能表示、販売チャネル(医療用か一般用か)を確認
      • 必要に応じて税関相談

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します
    • 第62類は素材別の分岐が多いため、最終製品HSを誤ると、PSRが参照する「当該類・項・号」がずれて原産性判断が崩れます。
  • よくある落とし穴
    • 最終製品だけでなく、主要材料(糸、生地、部材)のHSを誤っている
    • 6210の見落としにより、衣類側のPSRを見てしまう
    • セットを1コードで処理してしまい、各構成品のPSR適用ができない(第11部注14の影響)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 前提(一般論)
    • EPA等が採用するHSコードのバージョンは協定ごとに異なり得ます。税関もその点を明示しており、旧版から新版への移行関係(相関表)を提供しています。
  • 例(ビジネスマンが遭遇しやすい具体例)
    • CPTPP(TPP11)の日本の譲許表はHS2012表記で提供されています。HS2022で運用している社内マスターと突合する際は、相関表で読み替えが必要になります。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • 協定のPSRは協定が参照するHS版でまず確認し、必要に応じてWCO相関表や税関提供の相関表でHS2022へ対応付けします。特に第62類はHS2022で6201/6202の6桁構造が変わっているため、読み替えのミスが起こりやすいです。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 最低限そろえるべき情報(一般論)
    • 材料表(BOM)、各材料の原産国、非原産材料のHS、原価、工程フロー、外注工程の所在国
    • 生地の工程(織布、染色、被覆、縫製など)がPSR評価軸になることが多いため、工程の場所と内容を証憑化します。
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 税関・協定運用上の保存期間や記載事項は協定・制度(第三者証明か自己申告か)で異なるため、税関や公式ガイドの最新情報に合わせて運用します。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022範囲変更・再編(構造変更)620161.01の構造に合わせ、衣類のタイプ別区分をやめ、素材別区分に整理HS2017コード(6201.11等)を使い続けるとコード不一致が発生。マスター更新と相関が必須
HS2017→HS2022範囲変更・再編(構造変更)620261.02の構造に合わせ、タイプ別区分をやめ、素材別区分に整理6202も同様にコード体系が変化。過去データとの比較に相関が必要
HS2017→HS2022範囲変更(拡大)6210.20、6210.306201/6202の再編に伴い、6210.20/6210.30の対象がそれぞれ6201/6202の全体をカバーする形に拡大6210の該当範囲判断で旧来の理解のまま運用すると、誤分類やPSR誤適用のリスク

根拠資料(概要)は次節で示します。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料
    • WCOのHS2022(Chapter 62)の見出し構造(6201/6202が素材別のサブヘディングで構成されていること)
    • WCO相関表(HS2022-HS2017)Table Iにおける6201・6202の再編説明、および6210.20/6210.30の範囲拡大説明
  • どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか
    • WCO相関表(HS2022-HS2017)Table Iで、6201は「61.01に整合させるための再編」であり、衣類のタイプ別区分がなくなり素材別区分になる旨が説明されています。同様に6202も61.02に整合させる再編と記載されています。これにより、HS2017のように「コート類」と「アノラック類」等で分かれていた6桁群が、HS2022では素材別へ整理されたと判断できます。
    • 同じ相関表で、6210.20および6210.30の範囲が、それぞれ6201・6202の再編後の全体を反映するよう拡大した旨が説明されています。したがって、HS2022では6210.20/6210.30がカバーする衣類タイプの理解を更新すべき、と判断できます。
  • 変更がない場合の扱い
    • 上記以外の第62類の主要項(6203〜6217)について、今回参照したHS2022-HS2017のTable I(範囲変更等をまとめた表)の中では、上記以外の第62類コードに関する変更点は確認されませんでした。実務上は、国内コード細分や各国運用で追加変更があり得るため、輸出入国の最新タリフも併せて確認してください。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理します(主としてWCO相関表Table Iの記載に基づく要約です)。
期間主な追加・削除・再編旧コード→新コード(概要)実務メモ
HS2007→HS20129619.00(衛生用品・おむつ等)の新設に伴い、一部が繊維章から移動。第62類側では、6208.91/92/99、6209.20/30/90、6210.50等の一部が移動対象として示される例:ex6209.20等 → 9619.00(対象部分)過去データで6209等に「おむつ類」が残っている場合、HS2012以降は要注意
HS2007→HS20126211.41の削除(低取引量)により、6211.49側へ整理された扱いが示される6211.41 → 6211.49(相関表上の整理)古いデータや協定参照HSで6211.41が出てくる場合は読み替えが必要
HS2012→HS2017今回参照した相関表(Table I)上、第62類に関する大きな範囲変更としては掲出されていない変更点としての掲出なし(Table Iベース)変更なしに見えても国内細分は変わることがあるため、国内コードは別途確認
HS2017→HS20226201/6202の6桁構造再編、6210.20/6210.30範囲拡大例:6201.11と6201.91等 → 6201.20(素材別に統合)社内マスター、PSR、過去データ比較、通関システムのコード更新が重要

(補足)「ex」は部分移動を意味します。全量移動ではないため、個別品目の実態確認が必要です。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):不織布ガウンをコート類で申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第62類注6(6210優先)を見落とし、6210ではなく別項で申告
    • 起きやすい状況:品名が「ガウン」「防護服」で、外観だけで6201/6202/6211を選んでしまう
    • 典型的な影響:修正申告、関税差、審査強化、納期遅延
    • 予防策:生地が56.03等に該当するかをメーカー資料で確認し、6210該当性を先に判断
  • 事例名:衣類セットを一括申告してしまう
    • 誤りの内容:第11部注14に反し、異なる項の衣類をセットとして一つの項で申告
    • 起きやすい状況:民族衣装や上下セット、付属ショール等を「一式」でインボイス記載
    • 典型的な影響:品目番号更正、明細分解の再提出、課税価格・統計の修正
    • 予防策:インボイス品名を構成品ごとに分解し、各アイテムの素材・用途・数量を明示
  • 事例名:ハンカチとスカーフの寸法見落とし
    • 誤りの内容:第62類注8(60cm基準)を無視し、6213と6214を取り違える
    • 起きやすい状況:販売名が「ハンカチ」だが実際は大判、または包装表示が不正確
    • 典型的な影響:更正、検査、再分類
    • 予防策:現物実測をルール化し、仕様書に寸法を固定で記載
  • 事例名:性別判定の誤りで6201と6202を取り違える
    • 誤りの内容:第62類注9(前合わせと裁断の優先)を誤適用
    • 起きやすい状況:ユニセックス風デザイン、サンプル写真不足
    • 典型的な影響:税率差がある場合は追徴、統計修正
    • 予防策:前合わせ仕様と裁断差(ウエストライン等)を写真・仕様書で保存

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理します(該当があるものだけ)。
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 衣類そのものに検疫が常にかかるわけではありませんが、繊維製品には化学物質規制(ホルムアルデヒド等)を含む家庭用品規制が関係することがあります。対象や基準は公的資料で確認が必要です。
  • その他の許認可・届出
    • 家庭用品品質表示法(繊維製品の品質表示):繊維組成、取扱い表示などのルールがあり、輸入後の国内販売を想定する場合に実務影響が大きい分野です。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口)
    • 消費者庁(家庭用品品質表示法、繊維製品の品質表示)
    • 厚生労働省(有害物質を含有する家庭用品規制など)
  • 実務での準備物(一般論)
    • 表示内容の設計(組成表示、取扱い表示等)、材料情報(染料・仕上げ剤を含む)、サプライヤーの適合証明、試験成績書(必要な場合)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 生地の組織:織物かニットか
    • 生地の種類:不織布、被覆織物、含浸、積層の有無
    • 仕様:ポケット位置、裾仕様(ゴム・ドローコード等)、袖有無、前合わせ、用途(下着、外衣、スポーツ)
    • 寸法:スカーフ類は実測(60cm境界)
    • サイズ:乳児用は身長86cm以下か
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第62類注4、5、6、8、9が関係しないかを必ず確認
    • セット販売の場合、第11部注14で分離分類が必要か確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名を「衣類一式」ではなく、構成品別に記載(セットは特に)
    • 素材(混用率)をインボイスまたは添付資料で説明
    • 写真、仕様書、カタログを通関資料として整理
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定参照HS版を確認し、必要に応じて相関表でHS2022へ読み替え
    • 材料の原産国、工程の所在、BOM、証憑保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 品質表示(繊維製品)対応の有無
    • 家庭用品規制(化学物質等)該当性

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022 Section XI Chapter 62(見出し・注)参照日:2026-02-24
    • WCO Correlation Table HS2022-HS2017(Table I)参照日:2026-02-24
    • WCO Correlation Table HS2012-HS2007(Table I)参照日:2026-02-24
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 実行関税率表(2022-01-01)第62類 類注(62r)参照日:2026-02-24
    • 分類例(第62類)参照日:2026-02-24
    • 税関 原産地規則 品目別規則のためのHS検索・相関表案内 参照日:2026-02-24
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • CPTPP 日本譲許表(HS2012表記)参照日:2026-02-24
    • EPA原産地規則マニュアル(税関)参照日:2026-02-24
  • その他
    • 消費者庁 家庭用品品質表示法(繊維製品品質表示等)参照日:2026-02-24
    • 厚生労働省 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する情報 参照日:2026-02-24

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第61類:衣類及び衣類附属品(メリヤス編み又はクロセ編みのものに限る。)(Articles of apparel and clothing accessories, knitted or crocheted)

用語は次のとおり統一します。類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • ニットのコート、アノラック、ウインドブレーカーなど(例:フード付きニットジャケット)
    • ニットのスーツ、ジャケット、パンツ、スカート、ワンピース
    • Tシャツ、タンクトップ等(ニット)
    • セーター、プルオーバー、カーディガン
    • 靴下、タイツ等のホージアリ、手袋(ニット)
    • マフラー、ストール等の衣類附属品(ニット)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 織物製の衣類(メリヤス編み又はクロセ編み以外):第62類へ(例:織物のシャツ、織物のコート)
    • メリヤス編物やクロセ編物の生地(服になる前の生地):第60類へ
    • ブラジャー、ガードル等(見た目がニットでも):HS 6212(第62類の該当項)へ
    • 中古衣類・古着:HS 6309(第63類)へ
    • 医療用の装具・ヘルニアバンド等:HS 9021(第90類)へ
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • そもそもメリヤス編み又はクロセ編みか(第61類)/織物か(第62類)
    • 服として製品化されたものか(部注の「製品にしたもの」の考え方)
    • 6109(Tシャツ等)か6110(セーター等)か、6105/6106(シャツ/ブラウス)かの境界(類注4・5が効く)
  • この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • セット販売(上下セット、インナーとボトム)を「1つのHS」で申告してしまう。部注により、衣類は別見出しなら原則別々に分類されます。
    • 手袋(6116)のうち、プラスチック又はゴムで「塗布・被覆・積層」されたもの(6116.10)を見落とす。HS2022で6116.10の範囲が広がっています。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1:見出し文言と部注・類注でまず決めます。第61類は「製品化されたニット衣類」に限定されるため、類注1(この類は製品にしたメリヤス編み又はクロセ編みの物品のみ)から入るのが近道です。
    • GIR6:6桁(号)の選択では、同一項内の号注や類注の条件(例:ベビーの身長、シャツの定義、タイツのデシテックス閾値)を使って詰めます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 編み構造:ニットか織物か(61類か62類か)
    • 製品化の状態:裁断・縫製済みか、形状に編み上げ済みか(部注の「製品にしたもの」)
    • 用途と機能:医療用装具か、一般衣料か(除外規定)
    • 性別・年齢:メンズ/レディース、ベビー(身長86センチ以下)
    • 生地の特殊性:樹脂で塗布・被覆・積層した生地か、該当なら6113や6116.10の検討

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象物は「衣類」または「衣類附属品」か
    • いいえ:第61類以外(例:帽子は第65類、靴は第64類など)へ
  • Step2:メリヤス編み又はクロセ編みか
    • いいえ:原則として第62類(織物製衣類)へ
  • Step3:製品化されているか(裁断・縫製済み、または形状に編み上げ済み等)
    • いいえ:生地なら第60類、用途次第で別類へ
  • Step4:該当する項を選ぶ(6101〜6117)
    • 外衣(コート等)か、上下ものか、シャツか、Tシャツか、セーターか、スポーツウエアか、ホージアリか、手袋か、その他附属品か
  • Step5:6桁(号)を詰める
    • 素材区分(綿、合繊、羊毛等)、デシテックス閾値、コーティング有無、ベビー身長など
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第61類(ニット衣類)と第62類(織物衣類)の境界
    • 第61類(衣類)と第60類(編物生地)の境界(「製品にしたもの」「形状に編み上げ」)
    • 6105/6106(シャツ・ブラウス)と6109(Tシャツ)/6110(セーター等)の境界(類注4・5)
    • 6113(59類の塗布・被覆・積層生地で作った衣類)と一般衣類(6101〜6114)の境界(類注8、ただし生地の分類が先)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
6101男子用のコート類など(ニット)、ただし6103を除くニットのアノラック、ニットの防寒上衣上下もの(6103)と混同しない
6102女子用のコート類など(ニット)、ただし6104を除くレディースのニットコート、ニットジャケット6104(女子用上下もの)と区別
6103男子用のスーツ・ジャケット・ズボン等(ニット)ニットスーツ、ニットジャケット、ニットパンツ「スーツ」「アンサンブル」の定義は類注3
6104女子用のスーツ・ワンピース・スカート等(ニット)ニットワンピ、ニットスカート、ニットパンツ「スーツ」「アンサンブル」の定義は類注3
6105男子用シャツ(ニット)ニットシャツ、ポロシャツ(条件次第)類注4により、腰下ポケットや裾絞り等があると除外。袖なしも除外
6106女子用ブラウス等(ニット)ニットブラウス、ニットシャツ類注4の除外条件(腰下ポケット、裾絞り、編目密度など)に注意
6107男子用下着・寝衣等(ニット)ブリーフ、トランクス、パジャマ下着と外衣の判定、用途実態の確認
6108女子用下着・寝衣等(ニット)ショーツ、スリップ、ナイトウエア6212(ブラ、ガードル等)に落ちやすい
6109Tシャツ等(ニット)Tシャツ、タンクトップ、ランニング類注5:裾にひも、裾ゴム等があるものは除外
6110セーター等(ニット)セーター、プルオーバー、カーディガン、ベスト6109や6105/6106との境界が頻出
6111ベビー服(ニット)ベビーロンパース、ベビー帽子等身長86センチ以下が定義。ほかの項に見えても優先される場合
6112トラックスーツ、スキー服、水着(ニット)ジャージ上下、水着、スキーウエアスキー服の定義は類注7。アンサンブル定義から除外
611359類の塗布・被覆・積層生地で作った衣類(ニット)表面PUコートのニットレインウエア等類注8:他項にも該当し得る場合、原則6113(ただし6111除く)
6114その他の衣類(ニット)レギンスの一部、特定用途の上衣など6109/6110/6105/6106に当たらない衣類の受け皿
6115ホージアリ(ニット)靴下、タイツ、ストッキング、段階着圧ソックスデシテックス閾値67、段階着圧の別建てに注意
6116手袋(ニット)手袋、ミトン6116.10(プラ・ゴムで塗布等)に注意。HS2022で範囲が拡大
6117その他の衣類附属品、部品(ニット)マフラー、スカーフ、衣類のニット部品6117.10(スカーフ等)、6117.90(部品)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の典型
    • 素材別(綿、合繊、羊毛等):多くの項で素材別の号に分かれます。混紡は部注の繊維選択ルール(主に重量比)を踏まえて判断します。
    • 形状・仕様:シャツの定義、Tシャツの除外、スキー服の定義など、類注で条件が明確化されています。
    • 数値閾値:ホージアリの「単糸当たり67デシテックス未満/以上」など
    • コーティング等:手袋6116.10、衣類6113
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組)
  1. 6105/6106(シャツ・ブラウス)と6109(Tシャツ)/6110(セーター等)
  • どこで分かれるか:
    • 6105/6106は「シャツ等としての形状」に加え、腰下ポケット、裾のリブや締め付け、編目密度(10センチ四方で1センチ当たり平均10目未満)などで除外されます。
    • 6109は裾にひも、裾リブ等があると除外されます。
  • 判断に必要な情報:
    • 裾仕様(リブ、ゴム、ドローコードの有無)、ポケット位置、前開きの有無、編目密度の測定結果、製品写真
  • 典型的な誤り:
    • フーディーやスウェット類を「Tシャツ」扱いで6109にしてしまう(裾リブやポケットで除外され得ます)。
  1. 6111(ベビー)とその他の衣類(6109等)
  • どこで分かれるか:
    • ベビーの定義は身長86センチ以下。加えて、ほかの項にも当たりそうな場合でも6111を優先するルールがあります。
  • 判断に必要な情報:
    • サイズ表示、対象年齢、商品タグ、カタログ、梱包表示
  • 典型的な誤り:
    • ベビー用ロンパースを「Tシャツ/肌着」として6109や6108で申告してしまう。
  1. 6112(トラックスーツ)と6104/6103のアンサンブル、あるいはセット販売の上下
  • どこで分かれるか:
    • アンサンブル定義は類注3にありますが、トラックスーツとスキー服は6112側で扱う前提です。
    • さらに、部注により、異なる項に属する衣類は小売用セットでも別分類が原則です。
  • 判断に必要な情報:
    • 同一生地か、同時提示か、上衣と下衣の構成、販売形態
  • 典型的な誤り:
    • 上下セットを「1つのHS」でまとめてしまう(部注14違反になり得ます)。
  1. 6116.10(プラ・ゴムで塗布等の手袋)と6116.91〜6116.99(その他素材別)
  • どこで分かれるか:
    • 6116.10は、プラスチック又はゴムで塗布・被覆・積層したもの。HS2022では「積層したもの」まで範囲が広がったことが相関表で示されています。
  • 判断に必要な情報:
    • コーティングの有無、加工方法(塗布/被覆/積層)、材料仕様書、断面写真や試験報告
  • 典型的な誤り:
    • 表面にフィルムを貼ったタイプを「積層」と認識せず、6116.93等にしてしまう。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 「製品にしたもの」の定義(部注7)が非常に重要です。長方形以外に裁断したもの、縁縫いしたもの、縫製でつなぎ合わせたもの、または特定形状に編み上げたもの等が含まれます。
    • 異なる項に属する衣類は、小売用のセットにしても各項に分類します(部注14)。
    • 追加機能(化学的・機械的・電子的要素)を持つ繊維製品でも、繊維製品としての本質的特性を保つ限り、この部に分類され得ます(部注15)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:ニットの上衣とニットのズボンを同梱で小売販売する場合でも、上衣(例:6109)とズボン(例:6104)のように項が異なれば別々に分類するのが原則です。税関の分類例でもこの考え方が示されています。
    • 例:電熱線を組み込んだ防寒インナーのような製品は、繊維製品としての性格が強い場合、この部の中で検討します(ただし、最終判断は個別仕様で変わります)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 製品化されていない編物生地は第60類へ(部注8との関係)。
    • セットと誤認して一括分類し、部注14に抵触する。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第61類は製品化されたニット衣類等のみ(類注1)。
    • 除外:6212、古着6309、医療用装具9021(類注2)。
    • スーツ、アンサンブルの定義(類注3)。
    • シャツ・ブラウスの定義と、6105/6106の除外条件(類注4)。
    • 6109(Tシャツ等)の除外条件(類注5)。
    • ベビーの定義(身長86センチ以下)と優先分類(類注6)。
    • スキー服の定義(類注7)。
    • 6113の優先(類注8、ただし6111除く)。
    • 前合わせの左右で男女物を推定し、判別不能なら女性用に分類(類注9)。
    • 金属糸でも可(類注10)。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • ベビー:身長86センチ以下
    • スキー服:外観や生地感から主にスキー用と判別できるもの(構成の型も類注で整理)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 6212(ブラ、ガードル等)
    • 6309(古着)
    • 9021(医療用装具等)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:6105/6106(シャツ等)からの除外条件が強い
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 腰下ポケットの有無、裾の締め付け(リブ、ゴム等)、編目密度(10センチ四方での測定)、袖の有無
    • 現場で集める証憑:
      • 製品写真(前・後・裾・ポケット)、仕様書、サンプル、編目密度の測定記録
    • 誤分類の典型:
      • スウェットやフーディーを「シャツ」と誤認して6105/6106にしてしまう。
  • 影響ポイント2:6109(Tシャツ等)は裾仕様で外れる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 裾にドローコードや裾リブ等があるか
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書(裾仕様の記載)、写真、サンプル
    • 誤分類の典型:
      • 裾が絞れるスポーツトップを6109にしてしまう(類注5で除外)。
  • 影響ポイント3:ベビー(6111)は年齢表示ではなく身長定義が軸
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 身長86センチ以下向けか(サイズ表、タグ)
    • 現場で集める証憑:
      • 商品タグ、サイズ表、梱包表示、販売サイトの対象年齢記載
    • 誤分類の典型:
      • 「ベビー風デザイン」だけで6111にしてしまう、または逆にベビー用品を一般衣類にしてしまう。
  • 影響ポイント4:6116.10(手袋の塗布等)はHS2022で範囲が拡大
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 塗布・被覆に加え、積層があるか
    • 現場で集める証憑:
      • コーティング仕様、材料表、断面構造が分かる資料
    • 誤分類の典型:
      • 「積層」タイプを見落として素材別の6116.93等にしてしまう。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:ニット衣類を第62類(織物衣類)で申告
    • なぜ起きる:取引書類の品名が「シャツ」「ジャケット」だけで、編み構造が確認されない
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):第61類はニット、第62類はニット以外という章立て自体がヒントです。
    • 予防策:素材混用率だけでなく、生地種別(ニット/織物)を仕様書に必須項目として入れる
  2. 間違い:セット販売を「1つのHS」でまとめる
    • なぜ起きる:ECやアパレルでは上下セットを1商品として管理するため
    • 正しい考え方:部注14により、異なる項に属する衣類は小売用セットでも各項に分類します。分類例でも示されています。
    • 予防策:インボイス品名と品目明細を上下で分け、HSも分ける。セット構成表(上衣・下衣の品番)を添付できるようにする
  3. 間違い:フーディーやスウェットを6109(Tシャツ)に入れる
    • なぜ起きる:見た目が「上衣」で、社内でTシャツ扱いになる
    • 正しい考え方:6109は裾の絞り等があるものを除外します。該当すれば6110や6114側を検討します。
    • 予防策:裾仕様、ポケット位置、裏起毛の有無、前開きの有無をチェック項目化
  4. 間違い:ニットシャツを6105/6106にしたが、腰下ポケットや裾絞りがある
    • なぜ起きる:品名が「シャツ」なので短絡的に決める
    • 正しい考え方:類注4で6105/6106から除外される条件が明記されています。
    • 予防策:シャツ類は類注4の除外条件をチェックリスト化し、写真で証跡保存
  5. 間違い:ベビー服を一般衣類にしてしまう(または逆)
    • なぜ起きる:対象年齢の表現が曖昧、サイズ表がない
    • 正しい考え方:6111は身長86センチ以下が軸で、他項にも見える場合でも優先される場面があります。
    • 予防策:サイズ表、タグ画像、販売ページの対象情報を保管
  6. 間違い:ブラやガードルを第61類に入れる
    • なぜ起きる:製品がニットに見えるため
    • 正しい考え方:類注2で6212を除外。日本の解説でも、ブラやガードル等は別扱いと整理されています。
    • 予防策:下着は「補整機能の有無」「ブラ形状」など、6212該当性を先に確認
  7. 間違い:手袋のコーティング有無を見落とし、6116.10にできない
    • なぜ起きる:素材表示が「ポリエステル手袋」としか書かれない
    • 正しい考え方:6116.10は塗布・被覆・積層したもの。HS2022では積層も含む旨が相関表で示されています。
    • 予防策:手袋は表面加工の工程情報(ディップ、ラミネート等)をサプライヤーに質問し、回答を保存

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。衣類は材料(糸、生地)と最終品の関係がPSRで問われることが多く、HSがずれると非原産材料の扱いから崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 最終品は第61類でも、材料(生地)は第60類、糸は第50〜55類など。工程やBOMを材料段階まで分解して確認しないと、PSRの読み違いが起きます。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定が参照するHS版(HS2012参照、HS2017参照など)は協定ごとに異なります。HS2022で社内コードを付けていても、PSRは旧版ベースのまま、ということがあります。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • WCOが公開する相関表は実装のためのガイドとして提示されています(法的地位はなく、最終分類決定ではない点に注意)。
    • 実務では、協定の参照HS版のPSRを起点に、相関表で現行コードへ引き直し、最後に現物の分類根拠(注や解説)で整合させる順が安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 取引先からの材料証明、工程フロー、仕様書、原産地証明関連の記録を、協定要件に沿って保管できる体制を作るのが基本です。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022範囲変更6116.10手袋(ニット)の6116.10について、プラスチック又はゴムで「積層した」タイプも含むよう、範囲拡大の扱いが示されています。コーティング手袋の設計・調達仕様に「積層」工程があるとHSが変わり得るため、仕様書確認がより重要
HS2017→HS2022文言修正第61類注4(英語)表記修正(スペル修正)のような編集上の修正が行われています。分類実務の結論は通常変わりませんが、社内マニュアル引用箇所の更新が必要になる場合

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 6116.10については、HS2022の条文上、6116.10が「プラスチック又はゴムで塗布・被覆・積層したもの」を含む表現になっている一方、HS2017では同箇所が「塗布・被覆」中心の表現です。
  • また、WCOの相関表(Table I)で、6116.10の範囲を「積層」を含む形へ拡大する趣旨の説明が示されています。
  • 以上より、コード自体は同じ6116.10でも、HS2022では対象範囲が明確に広がった点が実務上の差分です。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第61類は、衣類の大枠(6101〜6117)が長期的に維持されている一方で、版によって素材別の切り方や文言が見直されることがあります。参考として、入手できた一次資料から確認できる範囲を整理します。

版の比較主な動き(確認できた範囲)旧コード→新コードの方向性根拠
HS2017→HS20226116.10の範囲拡大(積層の明確化)6116.10は維持(範囲のみ拡大)WCO相関表 Table I、HS2017/2022条文
HS2002→HS2017以降(参考)2002版では6101に羊毛区分が存在するなど、版間で素材別の枝番構成が異なる例が見られます実務では当該版の条文に基づき再確認が必要WCO旧版条文(参考)

注記:HS2007およびHS2012の第61類の詳細な追加・削除の全量把握は、本稿で示した一次資料以外(WCO相関表 2007-2012、2012-2017 等)での照合が必要です。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):上下セットを一括申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):部注14により、異なる項に属する衣類はセットでも別分類が原則
    • 起きやすい状況:EC向けセットアップ、ルームウエア上下
    • 典型的な影響:修正申告、通関遅延、説明資料の追加提出
    • 予防策:インボイス明細を上下で分け、写真と仕様書を添付
  • 事例名:ベビー服を一般衣類で申告
    • 誤りの内容:類注6(身長86センチ以下、優先分類)を見落とし
    • 起きやすい状況:サイズ表がなく、商品名だけで判断
    • 典型的な影響:修正申告、追加資料要求
    • 予防策:タグ画像、サイズ表、対象年齢情報を保存
  • 事例名:ブラジャーを第61類で申告
    • 誤りの内容:類注2で6212が除外である点を見落とし
    • 起きやすい状況:スポーツブラ、補整下着で素材がニット
    • 典型的な影響:再分類、課税のやり直し
    • 予防策:下着類は「6212該当性」を先に判定する社内ルールを作る
  • 事例名:コーティング手袋の6116.10を見落とし
    • 誤りの内容:6116.10(塗布・被覆・積層)を見落とし
    • 起きやすい状況:滑り止め加工、薄膜ラミネート
    • 典型的な影響:修正申告、説明要求
    • 予防策:手袋は加工方法をサプライヤーに必ず確認し、工程回答を保存

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

日本前提で、第61類に関連して実務上よく問題になりやすい「規制・表示」を整理します(該当があるものだけ)。

  • 検疫・衛生(SPS等):
    • 衣類そのものは食品等のSPS対象になりにくい一方、乳幼児向けや肌着等では化学物質(例:ホルムアルデヒド)の規制・運用通知が実務上重要になります。
  • その他の許認可・届出:
    • 家庭用品品質表示法に基づく繊維製品の品質表示(組成、取扱い表示など)は、流通・販売段階で必須事項になり得ます。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 消費者庁の繊維製品品質表示規程およびガイド
    • 厚生労働省の家庭用品中の有害物質規制に関する通知等
  • 実務での準備物(一般論):
    • 表示ラベル案(組成、取扱い、表示者情報)、試験報告書(必要な場合)、仕様書・材質証明

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 生地種別(ニット/織物)、組成(重量比)、加工(塗布・被覆・積層の有無)、用途、対象性別、対象年齢・身長
    • 写真(前後、裾、ポケット、タグ)、仕様書、サンプル
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注2の除外(6212、6309、9021)を必ず確認
    • 6105/6106は類注4の除外条件チェック
    • 6109は類注5の除外条件チェック
    • 6111は類注6(身長86センチ以下)チェック
    • 6116は6116.10(塗布・被覆・積層)チェック
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • セット販売でも部注14で分ける必要がないか
    • インボイスに「knitted」「crocheted」を含めるなど、誤解されにくい品名にする
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 最終品HSだけでなく、糸・生地のHSも揃える
    • 相関表で参照HS版のズレを吸収
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 繊維製品の品質表示(組成、取扱い等)
    • 乳幼児向け等でホルムアルデヒド規制の対象になり得るか

12. 参考資料(出典)

  • WCO
    • HS2022 Chapter 61 条文(見出し・類注、6116.10等) 参照日:2026-02-24
    • HS2017 Chapter 61 条文(比較用) 参照日:2026-02-24
    • Correlation Tables HS 2017–2022(ガイドであり法的地位なし、という位置づけ) 参照日:2026-02-24
    • Table I(HS2022版とHS2017版の相関、6116.10範囲拡大の説明) 参照日:2026-02-24
    • HS旧版条文(参考:2002版Chapter 61) 参照日:2026-02-24
  • 日本税関・公的機関
    • 税関関税率表 第61類(解説、類注の日本語整理) 参照日:2026-02-24
    • 税関 分類例(61類) 参照日:2026-02-24
    • 税関 輸入統計品目表(61類) 参照日:2026-02-24
    • 税関 事前教示回答事例(品目分類関係) 参照日:2026-02-24
  • 規制・表示
    • 消費者庁 繊維製品品質表示規程 参照日:2026-02-24
    • 消費者庁 繊維製品の表示について(ガイド) 参照日:2026-02-24
    • 消費者庁 繊維製品品質表示規程の改正について(洗濯表示等) 参照日:2026-02-24
    • 厚生労働省 家庭用品中の有害物質等に関する通知・資料(ホルムアルデヒド等) 参照日:2026-02-24

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第60類:メリヤス編物及びクロセ編物(Knitted or crocheted fabrics)

用語の対応は次で統一します。
類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

【入力(ユーザーが与える情報)】

  • 対象:HS2022 第60類(Chapter 60)
  • 類名:メリヤス編物及びクロセ編物(英語:Knitted or crocheted fabrics)
  • 対象国・実務前提:日本/両方(輸入・輸出)
  • 主な想定品目・用途(任意):アパレル用編地(ジャージー、リブ等)、ストレッチ編地、たて編地(トリコット、ラッセル)、パイル編地(タオル調)、ネット地(蚊帳等)
  • 参照するFTA/EPA(任意):未指定(一般論として記載)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 反物(ロール)状の編地全般(メリヤス編物、クロセ編物)
    • パイル編物(ロングパイル、テリーなど)
    • ストレッチ性の高い編地(弾性糸やゴム糸を一定割合含むもの)
    • たてメリヤス編物(トリコット、ラッセル等のたて編に属するもの)
    • 幅30センチメートル以下の細幅編地(条件に応じて60.02または60.03)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • クロセ編みのレース:第58.04項へ
    • メリヤス編み又はクロセ編みのラベル、バッジ等:第58.07項へ
    • プラスチックやゴムなどで「染み込ませ、塗布、被覆、積層」した編地で第59類に該当するもの:第59類へ(ただしパイル編物は例外で第60.01項に残る場合あり)
    • 製品にしたもの(縫製済み、裁断形状が製品として完成している等):第61類〜第63類へ行きやすい
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 反物の編地か、製品にしたものか(部注7の「製品にしたもの」判定)
    • 被覆・積層等により第59類(場合により第39類)へ移るかどうか、ただしパイル編物の例外を見落とさない
    • 幅30センチメートルの境界と、弾性糸・ゴム糸の重量割合5%の境界
  • この類で特に誤分類が高コストになりやすい場面:
    • ストレッチ編地(60.04と60.06の分かれ目、弾性糸割合の裏付け不足)
    • コーティングやラミネートを伴う機能性編地(60類なのか59類なのか、または39類なのか)
    • 特定の蚊帳用ネット等(6005.35号注に該当するかどうか)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIRは、まずGIR1(項の文言と注で決める)と、最後にGIR6(6桁の決定)です。編地は、品名だけでなく、注(除外や定義)と、幅・構造・加工の客観条件で決まる場面が多いです。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(この類で特に重要):
    • 形状・状態:反物か、裁断済みで製品形状か
    • 編みの種類:たて編か、それ以外か(60.05と60.06の分岐)
    • 物理条件:幅(30センチメートル以下か超か)、弾性糸・ゴム糸の重量割合(5%以上か未満か)
    • 加工:被覆・積層等により第59類の「加工布」に該当するか

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象は「編地」か(メリヤス編物・クロセ編物)
    • いわゆるステッチボンディングで、チェーンステッチが繊維糸のものも、編みとして扱う点に注意します。
  • Step2:「製品にしたもの」か(反物ではなく、製品形状に整っているか)
    • 部注7の「製品にしたもの」に当たる場合、原則として第50類〜第60類(布地の章)から外れ、衣類やその他製品の章(第61類〜第63類)で検討します。
  • Step3:除外規定に当たらないか
    • クロセ編みのレースは第58.04項、編みのラベル等は第58.07項へ移ります。
  • Step4:被覆・積層などで第59類(または第39類等)の「加工布」になっていないか
    • 第60類は、第59類に該当する「染み込ませ、塗布、被覆、積層」した編地を除外します。
    • ただし、パイル編物は例外として第60.01項に残る場合があります。
  • Step5:第60.01項(パイル編物)に当たるか
    • パイル、ロングパイル、テリー等なら、まず60.01を疑います。
  • Step6:幅30センチメートル以下か
    • 幅30センチメートル以下で、弾性糸又はゴム糸が全重量の5%以上なら60.02、5%未満または含まないなら60.03(ただし60.01除く)。
  • Step7:幅30センチメートル超で、弾性糸又はゴム糸が全重量の5%以上か
    • 該当すれば60.04(ただし60.01除く)。
  • Step8:たてメリヤス編物か
    • たて編なら60.05、それ以外は60.06。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第58類(レース・ラベル等)と第60類(一般の編地)
    • 第59類(加工布)と第60類(編地)
    • 第61類〜第63類(製品)と第60類(反物)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
6001パイル編物(ロングパイル、テリー等を含む)タオル調のテリー編地、ボア調編地、ベロア調パイル編地被覆・積層していてもパイル編物は60.01に残る例外に注意。人造毛皮やパイル織物等は別章・別項の可能性。
6002幅30cm以下で弾性糸又はゴム糸が重量5%以上(60.01除く)細幅のストレッチテープ状編地、ゴム入り細幅ニット幅と5%が決め手。弾性糸の定義は部注13。
6003幅30cm以下(60.01、60.02除く)細幅ニットテープ、細幅リブ編地幅30cm以下で、弾性糸・ゴム糸が5%未満または無し。
6004幅30cm超で弾性糸又はゴム糸が重量5%以上(60.01除く)ストレッチジャージー、スパンデックス混の編地幅30cm超かつ5%以上。弾性糸かゴム糸かで6桁が分岐。
6005たてメリヤス編物(ガルーン機含む、60.01〜60.04除く)トリコット、ラッセル、たて編ネットたて編かどうかが核心。特定の蚊帳用ネットは6005.35で別扱い。
6006その他の編地ジャージー、リブ、インターロック等(一般のよこ編)、クロセ編地60.01〜60.05に当たらない編地。素材別、染色状態等で6桁以下が分かれる。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 6002.40 と 6002.90:弾性糸は5%以上だがゴム糸を含まないか、それ以外か
    • 6004.10 と 6004.90:弾性糸は5%以上だがゴム糸を含まないか、それ以外か
    • 6005.35:号注で定義された特定仕様のネット編地かどうか(材質、目合い、目付、処理)
    • 6006.2系、6006.3系、6006.4系など:綿か合繊か再生繊維か等の素材区分と、未晒・染色・なせん等の状態
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    • 6004.10 と 6004.90
      • どこで分かれるか:ゴム糸を含むかどうか
      • 判断に必要な情報:糸構成(弾性糸の種類、ゴム糸の有無)、各糸の重量割合
      • 典型的な誤り:スパンデックス混を「ゴム糸」と誤認し、逆の枝番へ寄せる
    • 6005.35 と 6005.36〜6005.39
      • どこで分かれるか:号注が定めるネット編地(特定材質、目付、目合い、かつ特定の処理)に一致するか
      • 判断に必要な情報:ポリエチレン単繊維か、ポリエステルマルチフィラメントか。目付(g/m2)、目合い(穴数/cm2)、含浸・塗布の有無と処理剤の種類
      • 典型的な誤り:ネット地というだけで6005.35と早合点し、目付・目合い・処理要件の確認が抜ける
    • 6005 と 6006(6桁以前の分岐だが実務上の誤りが多い)
      • どこで分かれるか:たてメリヤス編か、それ以外か
      • 判断に必要な情報:製法(機械種、組織説明)、生地の技術資料
      • 典型的な誤り:取引上の呼称だけで「トリコット」と書かれているため、実際はよこ編なのに60.05へ寄せる

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注7は「製品にしたもの」の定義を置き、裁断形状や縁処理、縫製などで布地から製品側へ移るトリガーになります。
    • 部注8は、第50類〜第60類が基本的に「製品にしたもの」を含まないことを明確にします。
    • 部注13は弾性糸の定義を置き、60.02と60.04の5%判定の前提になります。
    • 部注15は、機能付与のために化学・機械・電子部品を組み込んだ繊維製品でも、基本は繊維としての本質的特性を保つ限り第11部で分類する趣旨を示しています(ただし部注1の除外などに注意)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 反物のストレッチ生地は第60類で検討しますが、裁断して衣類部品の形状に整え、縁処理や縫製等が入ると「製品にしたもの」と評価され、第61類〜第63類へ移り得ます。
    • 5%判定は、見た目の伸び感ではなく、弾性糸・ゴム糸の重量割合という定量条件に寄るため、仕様書や試験データが重要です。
  • この部注で他章に飛ぶ代表パターン:
    • 「製品にしたもの」判定で第61類〜第63類へ(衣類、その他繊維製品)
    • 被覆・積層等の加工内容により第59類、場合により第39類へ

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1で、クロセ編みレース(58.04)と、ラベル等(58.07)と、第59類の加工編地を除外します。
    • 類注1には例外があり、パイル編物で被覆・積層等があっても60.01に残る扱いがあります。
    • 類注3で、ステッチボンディング方式の一定のものを「メリヤス編み」として扱うことを明示します。
    • 号注1で、6005.35の対象となるネット編地を仕様で定義します。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 弾性糸は部注13の定義に依拠します(一定の伸長と回復性を持つ合成フィラメント等)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 58.04(クロセ編みのレース)、58.07(ラベル等)、59類(加工編地)

4. 類注が分類に与える影響(どこでコードが変わるか)

  • 影響ポイント1:被覆・積層などで第59類へ移るか、60.01に残るか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 被覆・積層の材料(プラスチック、ゴム、樹脂等)と、その見え方、層構造
      • 基布がパイル編物かどうか(例外適用の可否)
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書(コーティング材、塗布量)、断面写真、工程図、サンプル
      • 取引先の技術データシート
    • 誤分類の典型:
      • コーティングがあるのに60類のまま申告
      • パイル編物の例外(60.01)を見落として59類へ寄せる
  • 影響ポイント2:製品にしたもの判定で第61類〜第63類へ移る
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 裁断形状(製品形状か)、縁処理の有無、縫製の有無、セットで販売される実態
    • 現場で集める証憑:
      • 製品写真(全体と端部)、パターン図、工程表、梱包形態、取扱説明書
    • 誤分類の典型:
      • 「まだ布だから」と考えて60類で申告したが、実態は裁断済み・縁処理済みで「製品にしたもの」と評価される
  • 影響ポイント3:幅30センチメートルと弾性糸・ゴム糸5%で60.02/60.03/60.04が分かれる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 反物幅(実測値)、弾性糸・ゴム糸の重量割合(BOM、試験結果)
    • 現場で集める証憑:
      • 成分表、糸構成表、試験成績(必要に応じて)、製品仕様書
    • 誤分類の典型:
      • 伸びるから60.04と決め打ちし、弾性糸割合5%未満で実は60.06相当だった

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:コーティング編地を第60類のまま申告する
    • なぜ起きる:外観が編地なので、加工の法的意味を見落とす
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):第60類は第59類に属する加工編地を除外。第59類側にはプラスチック被覆等の判断枠がある
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞く質問例):
      • 確認資料:コーティング材の種類、断面構造、加工後の外観(肉眼で判別できるか等)
      • 質問例:樹脂コーティングはあるか、両面か、厚みや塗布量はどれくらいか
  2. 間違い:パイル編物の被覆・積層品を第59類へ入れてしまう
    • なぜ起きる:「加工したら59類」という理解が先行する
    • 正しい考え方:第60類注で、パイル編物は被覆等があっても60.01に残る扱いがある
    • 予防策:
      • 確認資料:パイル構造の有無(表面形状、組織説明)、加工内容の技術資料
      • 質問例:基布はループパイルかカットパイルか、テリーか
  3. 間違い:クロセ編地をレース(58.04)と区別せず第60類へ入れる
    • なぜ起きる:取引名が「レース生地」で統一されていない
    • 正しい考え方:類注でクロセ編みのレースは58.04へ除外
    • 予防策:
      • 確認資料:サンプル写真(密な部分の編目がどうなっているか)、用途(装飾用レースか一般布か)
      • 質問例:製造方法としてレースか、一般のクロセ編地か
  4. 間違い:ラベル・バッジ等の編物を第60類の編地扱いにする
    • なぜ起きる:素材が編物であることだけを見てしまう
    • 正しい考え方:類注で58.07へ除外
    • 予防策:
      • 確認資料:用途(ラベルか、布地か)、製品形状(表示部が完成しているか)
      • 質問例:衣類付属の表示ラベルとして使う設計か
  5. 間違い:幅30センチメートルと弾性糸5%の条件を確認せず60.06にまとめる
    • なぜ起きる:ストレッチ性を感覚で判断し、定量条件を取りに行かない
    • 正しい考え方:60.02と60.04は幅と重量割合で定義される
    • 予防策:
      • 確認資料:反物幅の実測、BOM、糸構成と重量割合
      • 質問例:弾性糸(部注13に該当する糸)は何%か、ゴム糸は入っているか
  6. 間違い:たて編とよこ編の区別が曖昧で、60.05と60.06を取り違える
    • なぜ起きる:「トリコット」「ラッセル」などの呼称が混在し、実態確認が不足する
    • 正しい考え方:60.05はたてメリヤス編物、60.06はそれ以外
    • 予防策:
      • 確認資料:製法(機械種、組織説明)、供給者の技術資料
      • 質問例:使用機械はたて編機か、ガルーン機か
  7. 間違い:裁断済みのパネルや形状部品を「布地」として第60類で申告する
    • なぜ起きる:縫製前だから布地だと考える
    • 正しい考え方:部注7の「製品にしたもの」に当たると、布地章から外れる
    • 予防策:
      • 確認資料:裁断形状、端部処理、セット内容、取引上の品名と用途
      • 質問例:すでに製品形状に裁断しているか、縁かがりや縫製があるか

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。最終製品のHSを誤ると、適用すべきPSR自体が変わり、原産性判断が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料(糸、他の繊維材料)のHSと、最終の編地(第60類)のHSを混同する
    • 「加工布」になって第59類へ移っているのに、第60類のままPSRを見てしまう

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定は、HS2012やHS2017など特定のHS版を参照していることがあります。運用上は、協定本文・附属書の参照版と、自社が使っているHS版(ここではHS2022)を突き合わせる必要があります。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 旧版の号が新版で新設・分割・統合されている場合、相関表で対応関係を確認し、PSRの適用対象がズレないように管理します。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(一般論):
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国
    • 非原産材料のHS、RVC計算の前提、加工工程の裏付け資料
  • 証明書類・保存要件は協定・国により異なります。重要案件は社内で根拠資料を先に固め、必要に応じて税関等の公的窓口や専門家に確認する運用が安全です。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(本章の6桁範囲で大きな改廃の掲載なし)6001〜6006相関表上、60類の改廃・範囲変更の記載が確認できないHS6桁レベルの付番は基本継続。ただし国内コードの細分や税率、統計運用は別途最新確認が必要

7-2. 違うことになった根拠(必須)

  • 根拠資料として、WCOのHS2017↔HS2022相関表(Table I)を確認しました。Table Iは変更が生じたサブヘディングを中心に相関を示す資料であり、ここに第60類(6001〜6006)に関する改廃・範囲変更が掲示されていないことから、HS2017→HS2022では本章の6桁体系に大きな変更がないと整理しました。
  • 併せて、HS2017版とHS2022版のChapter 60本文(見出しと号)を見比べ、6005.35を含む構造が維持されていることを確認しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第60類は、HS2007およびHS2012では、60.05(合成繊維製)の枝番が6005.31〜6005.34でしたが、HS2017で「特定の蚊帳用ネット等」を識別するための6005.35が挿入され、従来の枝番が6005.36〜6005.39へ整理された経緯があります。

版間の流れ主要な追加・削除・再編旧コード→新コード(概略)実務ポイント
HS2007→HS2012大きな構造変更の確認なし(少なくとも章の主要見出しは同型)6001〜6006の枠組みは維持章レベルは安定。実務は注と見出し条件で決まる
HS2012→HS20176005.35の新設、6005.31〜6005.34の再整理6005.31〜6005.34(旧)→6005.36〜6005.39(新)へ並び替え、6005.35を新設蚊帳用ネット等の特定品が別管理。既存品のコード番号がずれるため、マスターの更新が必須
HS2017→HS2022本章で大きな改廃の掲載なし6001〜6006の枠組み維持HS6桁は継続。ただし国内細分や運用は国別に要確認

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:コーティング編地を60類で申告し差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第60類注の除外(第59類に該当する加工編地)を見落とし
    • 起きやすい状況:商品名が「防水ニット生地」で、加工内容がインボイスに書かれていない
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延
    • 予防策:加工の有無・種類を事前に仕様書で確認、断面写真を用意、必要に応じて事前教示を検討
  • 事例名:パイル編物の例外を見落として59類へ誤分類
    • 誤りの内容:パイル編物の被覆品が60.01に残る扱いを見落とし
    • 起きやすい状況:タオル調の編地に樹脂含浸があるだけで「加工布」と判断
    • 典型的な影響:税番差による税率差、分類根拠の再提出
    • 予防策:基布がパイルかどうかを先に確定し、例外適用の可否を確認
  • 事例名:クロセ編みのレースを60類で申告
    • 誤りの内容:第58.04項への除外に抵触
    • 起きやすい状況:「レース生地」という商流名称で一括され、構造確認がされない
    • 典型的な影響:差戻し、品目説明要求、再分類
    • 予防策:用途と構造(レースか一般編地か)を資料化し、サンプル写真を添付
  • 事例名:裁断済みパネルを反物として60類で申告
    • 誤りの内容:部注7の「製品にしたもの」判定を見落とし
    • 起きやすい状況:縫製前の衣類パーツを「布」と表記して輸入
    • 典型的な影響:分類変更、要追加資料、遅延
    • 予防策:裁断形状、端処理の有無、用途を事前に整理し、必要なら事前教示を活用

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、第60類の「編地」そのものが一律に許可制・検疫対象になるケースは多くありません。一方で、次のように個別事情で他法令や規制確認が必要になることがあります。
    • 検疫・衛生(SPS等):用途が医療・衛生材料に近い場合や、薬事的な表示を伴う場合は別途確認が必要
    • 化学物質・薬剤処理:防虫・抗菌などの薬剤処理を伴う場合、化学物質関連の法規や表示・管理の論点が出ることがある
    • その他:最終用途(安全具、保護具等)により別法令の適用があり得る
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 税関の「輸入関係他法令」情報、所管官庁の公式案内、必要に応じて事前教示窓口
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書、成分表、加工内容(コーティング・薬剤処理の有無)、用途説明、写真・サンプル

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 編地か製品か(反物、裁断品、縫製の有無)
    • 幅、目付、目合い(ネットの場合)、素材、糸構成、弾性糸・ゴム糸の割合
    • 被覆・積層・含浸などの加工有無と材料
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 58.04(レース)、58.07(ラベル)、59類(加工布)への除外に当たらないか
    • 6005.35号注に該当する特殊ネットか(該当するなら要件を証拠で固める)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名は「knitted fabric」だけでなく、幅、素材、加工(coated等)、用途が伝わる記載にする
    • 税関説明資料として、仕様書、写真、工程図、必要なら試験成績を添付できる状態にする
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 最終製品HS、材料HS、工程の整理、相関表によるHS版ズレの吸収
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 加工内容(薬剤処理等)と用途を軸に、輸入関係他法令・所管官庁情報を確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO
    • HS Nomenclature 2022 edition Chapter 60(見出し・号、注、6005.35号注) 参照日:2026-02-24
    • HS Nomenclature 2017 edition Chapter 60(6005.35新設後の構造確認) 参照日:2026-02-24
    • HS Nomenclature 2012 edition Chapter 60(6005.35新設前の構造確認) 参照日:2026-02-24
    • HS Nomenclature 2007 edition Chapter 60(長期の枠組み確認) 参照日:2026-02-24
    • Correlation Table HS2017↔HS2022 Table I(変更有無確認の根拠) 参照日:2026-02-24
    • Correlation tablesの説明(Table Iが変更点を扱う趣旨) 参照日:2026-02-24
  • 日本の税関・公的機関
    • 実行関税率表(2022年1月1日版) 第60類 類注(60r.pdf) 参照日:2026-02-24
    • 関税率表解説 第60類(実務解釈) 参照日:2026-02-24
    • 第11部 部注(F11b.pdf:製品にしたもの、弾性糸定義など) 参照日:2026-02-24
    • 実行関税率表 第59類 類注(加工布の判断枠、60.02〜60.06の位置づけ) 参照日:2026-02-24
    • 関税率表(輸入統計品目表)の解釈に関する通則(GIR) 参照日:2026-02-24
    • 品目分類とHS(分類の位置づけ、原産地規則等との関係) 参照日:2026-02-24
    • 関税率表解説・分類例規(情報の所在) 参照日:2026-02-24
    • 事前教示回答(品目分類)の検索(制度活用) 参照日:2026-02-24
    • HS2017↔HS2012相関(6005.35新設の説明を含む) 参照日:2026-02-24

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第59類:染み込ませ、塗布し、被覆し又は積層した紡織用繊維の織物類及び工業用の紡織用繊維製品(Impregnated, coated, covered or laminated textile fabrics; textile articles of a kind suitable for industrial use)

用語の統一(本文では次の呼び方で統一します)

  • 類 = Chapter
  • 項 = Heading(4桁)
  • 号 = Subheading(6桁)
  • 部 = Section
  • 注 = Notes(部注・類注)

対象国・実務前提:日本/輸入・輸出(両方)
主な想定品目:PVCやPUのコーティング生地、ゴム引き布、床材(繊維基材付き)、壁面被覆材、工業用フィルター材、搬送用ベルトなど

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • PVCコーティングのテント地・ターポリン用基布など(5903.10の典型)
    • PUコーティング生地(レインウェア用の表地などで、塗布が肉眼で分かれるタイプ)(5903.20の典型)
    • タイヤ補強用のタイヤコードファブリック(高強力糸の所定構造)(5902)
    • 繊維基材に被覆層を設けた床材(リノリウム、その他の床面被覆材)(5904)
    • ロール状で幅45cm以上の繊維表面の壁面被覆材(5905)
    • 産業用途が明確なフィルター材・ふるい用の布など(注8に列挙される技術用繊維製品)(5911)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 染み込み・塗布・被覆が肉眼で判別できない織物(色の変化だけは判定材料にしない):通常、基材の織物として第50類〜第55類、第58類、第60類へ
    • 紡織用繊維の織物がプラスチック中に完全に埋め込まれているもの、又は両面全てがプラスチックで被覆されているもの:第39類へ
    • 15度から30度で直径7mmの円筒に巻き付けるとき裂が生ずるような硬質のプラスチック系複合:通常、第39類へ
    • 多泡性プラスチックの板・シート等に織物を貼り合わせたが、織物は補強目的にとどまるもの:第39類へ
    • セルラーラバー(多泡性ゴム)の板・シート等に織物を貼り合わせ、織物が補強目的にとどまるもの:第40類へ
    • 研磨材の粒を織物に付着させた研磨布:第68.05項へ(注6の除外)
    • 伝動用・コンベヤ用ベルトでゴムを染み込ませた織物から製造したもの、又はゴム加工糸・コードから製造したもの:第40.10項へ(注7の除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 被覆材が何か(プラスチックか、ゴムか、それ以外か)と、肉眼で被覆が判別できるか
    • 繊維基材が主役か、単なる補強か(補強なら第39類・第40類に飛びやすい)
    • 5911は残余規定で、注8に列挙された技術用に限り、かつ部の他の項に属さないことが条件
  • この類で特に誤分類が高コストになりやすい場面:
    • 5903(繊維のプラコート生地)と第39類(プラスチックのシート等)の境界を誤るケース(素材の支配性の見誤り)
    • 5910(繊維製ベルト)と4010(ゴム製ベルト)を取り違えるケース(注7の見落とし)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • 第59類は、見出しの文言に加えて、類注(第59類注)で範囲が強く定義されています。実務ではGIR1(見出しと注の文言)でまず外枠を決め、最後にGIR6で号(6桁)を確定するのが王道です。
  • 品名だけで決めないための観点は次のとおりです。
    • 基材が何の織物か(第50類〜第55類、第58.03項、第58.06項、第58.08項、第60.02項〜第60.06項に限るという定義あり)
    • 被覆材の種類(プラスチック、ゴム、金属蒸着など)
    • 被覆の見え方(肉眼で判別できるか、色変化だけか)
    • 物性条件(7mm円筒に巻けるか、重量、繊維比率、厚さ)
    • 形状と用途(壁紙、床材、ベルト、工業用フィルターなど)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:まず基材が何かを確定
    • 第59類でいう「紡織用繊維の織物類」は限定定義です。基材が不織布(第56類)などの場合、5903や5906ではなく、別の類の見出しから検討するのが基本です。
  • Step2:用途と形状で先に決まる項がないか確認
    • タイヤコードファブリック(5902)
    • 床面被覆材(5904)
    • ロール状の壁面被覆材(5905)
    • 繊維製の心、ガスマントル(5908)
    • 繊維製ホース(5909)
    • 伝動用・コンベヤ用ベルト(5910。ただし注7の除外に注意)
    • 技術用繊維製品(5911。ただし注8の限定に注意)
  • Step3:コーティング・含浸の種類で5903・5906・5907を振り分け
    • プラスチック系なら5903を検討。ただし類注2の除外(肉眼判別不可、7mm円筒で亀裂、完全埋込や両面被覆、補強目的の貼合せ等)に該当すると第39類や基材の類に移ります。
    • ゴム系なら5906を検討。ただし類注5の重量・繊維比率条件、セルラーラバー貼合せ除外に注意します。
    • それ以外の処理(例:アルミ蒸着など)なら5907を検討。ただし類注6の除外(図案を描いた織物等)に注意します。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第59類5903と第39類(織物が埋め込まれている、又は補強目的にとどまる等)
    • 第59類5906と第40類(セルラーラバー貼合せ、重量と繊維比率)
    • 第5905(繊維表面の壁紙)と第48.14項(紙へのフロック付着)や第5907(繊維へのフロック付着など)
    • 第5910(繊維製ベルト)と第4010(ゴム系ベルト)、第5911(厚さ3mm未満のベルチング等)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第59類は項の数が多くないため、実務で重要な全項(5901〜5911)を列挙します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5901ゴム又はでん粉質で塗布した織物、トレーシングクロス、画用カンバス、バックラム等製本用クロス、トレーシングクロス、画用キャンバス、帽子芯地用バックラムプラスチックを塗布した類似品は5903へ寄りやすい
5902タイヤコードファブリック(高強力糸)タイヤ補強用基布たて糸がナイロン等、ポリエステル、ビスコースレーヨンの高強力糸。定義は第11部注6参照
5903プラスチックを染み込ませ等した織物(5902除く)PVCコート生地、PUコート生地、イミテーションレザー基材類注2の除外(肉眼判別不可、7mm円筒、完全埋込・両面被覆、補強目的貼合せ等)で第39類や基材へ
5904繊維基材付きの床材(リノリウム等)リノリウム、塩ビ床材(繊維基材付き)繊維の裏打ちがあることが要点。切り出し済みでも対象になり得る
5905紡織用繊維の壁面被覆材繊維表面の壁紙(ロール)ロール状、幅45cm以上、裏張り又は糊付け可能な裏面処理。紙へのフロックは4814、繊維へのフロックは主に5907
5906ゴム加工をした織物(5902除く)ゴム引き布、防水布、ゴム系粘着テープ基材1,500g/㎡と繊維比率50%超の条件あり。セルラーラバー貼合せで補強目的は第40類。粘着テープ(幅20cm以下)は5906.10
5907その他の含浸・塗布・被覆等の織物、劇場用背景幕等アルミ蒸着布、舞台用背景幕類注6の除外が多い(図案を描いた織物、通常仕上げ、研磨材付着、金属箔裏張り等)
5908繊維製の心、ガスマントル等ろうそくの芯、ガス灯マントル用品としての形状・用途で判断
5909繊維製ホース類消防ホース、産業用繊維ホース内張りや補強、金具付きでも対象になり得る
5910伝動用又はコンベヤ用ベルト等(繊維製)搬送用ベルト、伝動用ベルト注7で除外あり。厚さ3mm未満のベルチングは5910から外れる。ゴム系は4010へ
5911技術用繊維製品(注8で限定列挙)製紙用フェルト、工業用フィルターマット、ガスケット等残余規定。注8の列挙に該当し、かつ部の他の項に属さないことが前提

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(頻出)
    • 5902:たて糸の材質(ナイロン等、ポリエステル、その他)と高強力糸の該当性
    • 5903:プラスチックの種類(PVC、PU、その他)と、類注2の除外条件(肉眼判別、7mm円筒、完全埋込、補強目的貼合せ等)
    • 5904:リノリウムか、それ以外の繊維基材付き床材か
    • 5905:幅45cm以上のロール状か、裏張り又は糊付け可能な裏面処理か
    • 5906:粘着テープ(幅20cm以下)か否か、重量1,500g/㎡と繊維比率50%超の条件
    • 5911:注8に列挙された技術用途か、他の項に入らないか。製紙用等エンドレス品は重量650g/㎡未満か以上かで号が分かれる
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組)
    • 5903(繊維のプラコート)と第39類(プラスチックの板・シート等)
      • どこで分かれるか:完全埋込や両面全面被覆、補強目的の貼合せ、7mm円筒で亀裂などの除外条件
      • 判断に必要な情報:断面写真、被覆厚み、曲げ試験の可否、材料構成(樹脂と繊維の比率)
      • 典型的な誤り:商品名が「コーティング生地」なので一律5903にしてしまう
    • 5906(ゴム加工織物)と第40類(ゴムの板・シート等)
      • どこで分かれるか:セルラーラバー貼合せで補強目的のものは第40類へ。重量1,500g/㎡超で繊維が全重量の50%以下だと5906から外れやすい
      • 判断に必要な情報:重量、繊維重量比、ゴムがセルラーか、貼合せ構造
    • 5905(壁面被覆材)と4814(紙系壁紙)と5907(繊維へのフロック等)
      • どこで分かれるか:5905は繊維表面で幅45cm以上のロール、裏張り又は裏面処理が条件。紙へフロックは4814、繊維へフロックは主として5907
      • 判断に必要な情報:基材(紙か繊維か)、幅、ロール形態、裏面処理
    • 5910(繊維製ベルト)と4010(ゴム製ベルト)と5911(厚さ3mm未満のベルチング等)
      • どこで分かれるか:注7でゴム系ベルトは4010へ、厚さ3mm未満のベルチングは5910から除外
      • 判断に必要な情報:厚さ、ゴムの有無と加工状況、エンドレスか、ファスナー有無

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • タイヤコードファブリック(5902)で鍵になる「高強力糸」は、第11部注6の定義参照とされています。実務上は、糸の強力データ(例:cN/tex等)を仕様書で確認できる状態にしておくことが重要です。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • タイヤ用の基布でも、たて糸が高強力糸の定義に該当しない場合、5902以外(他の織物類や5903、5906等)に振れる可能性があるため、材料スペックの裏取りが必要です。
  • この部注で他章に飛ぶ代表パターン:
    • 高強力糸要件を満たさず5902から外れ、他章の織物や加工織物へ再検討になるケース

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(注1〜注8)
    • 注1:第59類における「紡織用繊維の織物類」は限定された基材だけを指します。ここを外すと、5903や5906などの前提が崩れます。
    • 注2・注3:5903の範囲と除外を詳細に定義。特に、肉眼判別、7mm円筒、完全埋込、補強目的貼合せなどで第39類へ飛びます。
    • 注4:5905(繊維壁紙)は幅45cm以上のロール等、条件付き。フロック壁紙の除外先が明記されています。
    • 注5:5906(ゴム加工織物)の重量・繊維比率条件、セルラーラバー貼合せの除外先が明記されています。
    • 注6:5907から外れるものを列挙(図案織物、研磨材付着、金属箔裏張り等)。
    • 注7:5910から外れるベルトを明確化(厚さ3mm未満、ゴム系は4010へ)。
    • 注8:5911は注8に列挙された技術用のみ、かつ部の他の項に属しないものに限定。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 5905の「紡織用繊維の壁面被覆材」:繊維表面、幅45cm以上のロールで、裏張り又は糊付け可能な裏面処理のあるもの
    • 5906の「ゴム加工をした紡織用繊維の織物類」:重量1,500g/㎡や繊維比率50%超などの条件が付く
    • 5903の除外条件に出てくる7mm円筒条件:15度から30度で手巻きして亀裂が生じるか
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 5903から第39類へ:完全埋込、両面全面被覆、補強目的の多泡性プラシートとの貼合せ、7mm円筒で亀裂等
    • 5906から第40類へ:セルラーラバーシート等との貼合せで織物が補強目的
    • 5910から第4010へ:ゴム加工織物から作る伝動用・コンベヤ用ベルト、ゴム加工糸・コードから作るベルト
    • 5905から第48.14項へ:紙にフロックやダストを直接付着させた壁面被覆材

4. 類注が分類に与える影響(どこでコードが変わるか)

  • 影響ポイント1:5903に見えて第39類へ飛ぶパターン
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 被覆が肉眼で判別できるか(色の変化だけは除外)
      • 断面で織物がプラスチックに埋まっていないか、両面が全面被覆されていないか
      • 15度から30度で直径7mm円筒に巻けるか(亀裂が出るなら通常第39類)
      • 多泡性プラの板・シートに貼合せで、織物が補強目的にとどまるか
    • 現場で集める証憑:
      • 断面写真、層構成図、仕様書(樹脂種別、塗布量)、曲げ試験結果、SDS(樹脂種別確認)
    • 誤分類の典型:
      • 「コーティング布」なので無条件に5903.10や5903.20に固定してしまう
  • 影響ポイント2:5906に見えて第40類へ飛ぶパターン
    • 何を見れば判断できるか:
      • 重量(g/㎡)と繊維重量比(50%超か)
      • セルラーラバーの板・シートとの貼合せで、織物が補強目的か
    • 現場で集める証憑:
      • 目付試験成績、配合表、ゴム種別、貼合せ工程図、断面写真
    • 誤分類の典型:
      • 「ゴム引き」だけで5906と判断し、重量・比率条件を確認しない
  • 影響ポイント3:5911は技術用途でも自動的に入らない
    • 何を見れば判断できるか:
      • 注8の列挙に当てはまる具体的用途と形状か
      • 第59.08項〜第59.10項の特性を有しないか、また第11部の他の項に先に入らないか
    • 現場で集める証憑:
      • 使用機械名、用途説明、取付方法、図面、ユーザーマニュアル、販売形態(反物か、エンドレスか)
    • 誤分類の典型:
      • 工業用途だからといって、注8の限定を確認せずに5911へ寄せる

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:塗布が肉眼で判別できないのに5903や5907にしてしまう
    • なぜ起きる:カタログに「コーティング」と書かれているだけで判断するため
    • 正しい考え方:5903や5907は、注2や注6により、肉眼で判別できないものは通常基材の類(第50類〜第55類、第58類、第60類など)に戻ります(色変化のみは考慮しない)。
    • 予防策:断面写真の提出依頼、塗布量や表面外観の確認、実物で肉眼判別の可否を記録
  2. 間違い:織物がプラスチック中に埋め込まれているのに5903で申告する
    • なぜ起きる:表面が織物っぽく見える、又は取引慣行で「生地」と呼ぶため
    • 正しい考え方:織物が完全に埋め込まれた物品や、両面全面プラスチック被覆の物品は第39類側で扱う整理です。
    • 予防策:断面写真、層構成図、樹脂層の連続性の確認、サンプルを切断して観察
  3. 間違い:補強目的の貼合せ(多泡性プラシートと織物)を5903にする
    • なぜ起きる:織物があると「繊維製品」と思い込むため
    • 正しい考え方:多泡性プラスチックの板・シート等に織物を結合しても、織物が単なる補強なら第39類です。
    • 予防策:補強の位置付け(機能)を仕様書に明記、引張強度の寄与説明を確認
  4. 間違い:ゴム加工布を重量・比率を見ずに一律5906にする
    • なぜ起きる:「ゴム引き布」という名称だけで判断するため
    • 正しい考え方:5906は重量1,500g/㎡や繊維重量比50%超の条件があり、該当しない場合は第40類側の検討が必要です。
    • 予防策:目付試験と材料構成比の取得を標準化、仕様書に重量と比率欄を作る
  5. 間違い:繊維表面の壁紙を5905と決め打ちする
    • なぜ起きる:「壁紙だから5905」という短絡
    • 正しい考え方:5905はロール状、幅45cm以上、裏張り又は糊付け可能な裏面処理が条件です。紙へのフロックは4814、繊維へのフロックは主に5907です。
    • 予防策:幅、ロール形態、裏面処理、フロックの付着先(紙か繊維か)をチェックリスト化
  6. 間違い:伝動用・コンベヤ用ベルトを5910にしてしまう(ゴム系除外の見落とし)
    • なぜ起きる:「繊維を使っているから5910」と誤認するため
    • 正しい考え方:注7により、ゴム加工織物から作るベルト等は4010へ整理されます。
    • 予防策:ゴム加工の有無、製造方法、材料(ゴム加工糸か)を仕入先に確認
  7. 間違い:厚さ3mm未満のベルチングを5910にする
    • なぜ起きる:厚さ要件を測っていない
    • 正しい考え方:注7で、厚さ3mm未満のベルチングは5910に含まれません。分類例規でも厚さ3mmで分岐が示されています。
    • 予防策:厚さ測定を必須化、測定点と測定条件を記録、サンプル保存
  8. 間違い:5907に入ると思い、図案を描いた織物を5907にしてしまう
    • なぜ起きる:「塗装した織物=5907」と理解するため
    • 正しい考え方:注6で、図案を描いた織物は原則5907から除外され、例外は劇場用又はスタジオ用の背景幕等です。
    • 予防策:用途(背景幕か一般衣料用プリントか)を用途宣誓書やカタログで確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • FTAやEPAでは、最終製品のHS(多くは6桁)によりPSRが決まるため、分類がずれると原産性判断の前提が崩れます。特に第59類は、第39類・第40類へ飛ぶ境界が多く、誤分類が原産地判定に直撃しやすい分野です。
  • よくある落とし穴
    • 最終製品を5903と見てPSRを選んだが、実際は第39類扱いだった
    • ベルトを5910と見たが、注7により4010に該当していた

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに採用HS版が異なることがあり、HS2022のコードをそのまま協定のPSR検索に入れると、該当条文にヒットしない場合があります。
  • ズレる場合は、WCO相関表(6桁)で旧版と新版の対応関係を確認し、協定が参照する版でPSRを確定させます。相関表は参考資料であって法的地位を有しない旨が公表されています。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 最低限そろえる情報(一般論)
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国
    • 非原産材料のHS(材料側の分類も必要)
    • どの工程が「加工」として評価されるかの説明資料
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 協定や運用で求める保存期間・保存対象は異なるため、社内ルールで統一し、監査対応できる形で保管

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(WCO相関表Table Iに第59類の掲載なし)第59類(5901〜5911)少なくとも6桁レベルでの新設・削除・分割・統合等は示されていないトランスポジション対応は通常不要。ただし国内コード改正や運用変更は別途確認

7-2. 違うことになった根拠(必須)

  • 根拠資料として、WCOが公表するHS2017→HS2022相関表(Table I)を確認しました。Table Iは、改正で相関が生じるサブヘディングを中心に整理されますが、第59類に該当する行が確認できませんでした。従って、少なくとも6桁レベルのコード移動を要する改正は示されていないと整理しました。
  • 併せて、HS2017→HS2012、HS2012→HS2007の相関表(Table I)でも、第59類のコードが登場しないことを確認しています(Table Iは改正点中心のため、ここに第59類が現れないことは、当該期間に第59類の6桁改正が示されていないことを意味します)。
  • ただし、相関表は参考資料であり、最終的な分類は税関判断である点には留意が必要です。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→HS2012、HS2012→HS2017、HS2017→HS2022のいずれの期間でも、WCO相関表(Table I)上、第59類に関する6桁の追加・削除・分割・統合等は示されていません。
  • 実務上は、HS6桁が不変でも、各国の国内コード(8桁、9桁等)の細分改正、関税率、統計品目番号、運用上の取り扱い変更が別途起こり得るため、申告先の最新表で確認してください。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:コーティング生地のつもりが第39類扱いで修正
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):5903の除外(完全埋込、両面全面被覆、補強目的貼合せ等)を未確認
    • 起きやすい状況:サプライヤーが「コーティング生地」とだけ記載し、層構造情報がない
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延
    • 予防策:断面写真と層構成表、塗布厚みの提出を契約条件にする
  • 事例名:壁紙を5905で申告したが幅不足で否認
    • 誤りの内容:5905の定義(幅45cm以上ロール等)を満たさない
    • 起きやすい状況:サンプル寸法だけで判断し、製品ロール幅を確認していない
    • 典型的な影響:分類修正と税率差の精算、追加資料要求で通関遅延
    • 予防策:ロール幅、裏面処理、基材(紙か繊維か)を事前に取得
  • 事例名:搬送ベルトを5910にしたが実は4010
    • 誤りの内容:注7によりゴム系ベルトは4010へ(5910から除外)
    • 起きやすい状況:ベルトの含浸材がゴムかプラスチックかを確認しない
    • 典型的な影響:追加納税、原産地判定のやり直し
    • 予防策:含浸材のSDSと工程(ゴム加工織物から製造か)を確認
  • 事例名:厚さ3mm未満のベルチングを5910で申告
    • 誤りの内容:注7で厚さ3mm未満は5910から除外
    • 起きやすい状況:厚さを測定していない、仕様書に厚さ記載がない
    • 典型的な影響:分類修正、追加資料要求、納期遅延
    • 予防策:厚さ測定を検収項目にし、測定方法を標準化

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、第59類は品目番号だけで一律に輸入許可が必要となるケースは多くありません。一方で、用途や素材(被覆材、添加剤)により別体系の規制や顧客要求がかかることがあります。
  • 典型的に社内でチェック対象になりやすい軸(該当がある場合のみ)
    • 建材用途(壁面被覆材、床材)としての各種基準や顧客要求
    • 工業用途(フィルター材、ベルト等)での安全要求や仕様適合
    • 被覆材に含まれる化学物質に関する規制や契約上の制限
  • 確認先(一般論)
    • 申告国税関、取引先が求める規格、用途国の規制当局情報
  • 実務での準備物(一般論)
    • 素材証明(SDS、成分表)、用途説明、仕様書、試験成績書、図面

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 基材の種類(織物、メリヤス、不織布、フェルト等)
    • 被覆材の種類(プラスチック、ゴム、その他)と肉眼判別可否
    • 層構成(断面写真、積層有無、埋込有無)
    • 目付(g/㎡)、厚さ(特にベルトは3mm境界)、幅(壁面被覆材は45cm境界)
    • 用途(壁紙、床材、ベルト、フィルター、タイヤ補強など)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 5903は注2の除外を全てチェック(7mm円筒、完全埋込、補強目的貼合せ等)
    • 5906は注5の重量・繊維比率、セルラーラバー貼合せ除外をチェック
    • 5910は注7の除外(厚さ3mm未満、ゴム系は4010)をチェック
    • 5911は注8の限定列挙と残余要件をチェック
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に、基材、被覆材、用途、目付、幅、厚さを入れる
    • 仕様書、SDS、断面写真を添付できる状態にする
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定採用HS版の確認、必要なら相関表で対応付け
    • BOM、原価、工程、非原産材料HSの整備
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 用途国の規制と顧客要求を軸に、材料証明と用途説明を整備

12. 参考資料(出典)

  • 日本税関:実行関税率表(HS2022) 第59類 注(59r.pdf) 参照日:2026-02-24
  • World Customs Organization:HS Nomenclature 2022 Edition Chapter 59 参照日:2026-02-24
  • 日本税関:関税率表解説 第59類(kaisetu/data/59r.pdf) 参照日:2026-02-24
  • 日本税関:関税率表解説 分類例規 第59類(kaisetu/data2/59r.pdf) 参照日:2026-02-24
  • 日本税関:関税分類の概要(品目分類とGIRの考え方) 参照日:2026-02-24
  • WCO:HS2017→HS2022 Correlation Tables(Table I) 参照日:2026-02-24
  • 日本税関:HS2017→HS2012 相関表(Table I) 参照日:2026-02-24
  • 日本税関:HS2012→HS2007 相関表(Table I) 参照日:2026-02-24
  • 日本税関:HS2012改正に伴う相関表は参考資料で法的地位を有しない旨の案内(oshirase.pdf) 参照日:2026-02-24

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第58類:特殊織物、タフテッド織物類、レース、つづれ織物、トリミング及びししゆう布(Special woven fabrics; tufted textile fabrics; lace; tapestries; trimmings; embroidery)

用語の統一(本記事内)

  • 類=Chapter 項=Heading(4桁)号=Subheading(6桁)部=Section注=Notes(部注/類注)

本記事は日本の実務(輸入・輸出の双方を想定)で、HS2022の第58類を「誤解が起きにくい形」で整理したものです。HS6桁(国際共通)と、日本の国内コード(9桁等)は別物です。実務ではまずHS6桁の当たりを付け、その後に国内コードで細分を確認する流れが安全です。


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個)
    • ベルベット、コール天などのパイル織物、シェニール織物(5801)
    • タオル地のようなテリー織物、タフテッド織物(ただし床用のものを除く)(5802)
    • レース、チュール、ネット状の布(条件あり)(5804)
    • リボン、テープ、ゴム入り細幅織物、ボルデュック(5806)
    • ブランドラベル、サイズラベル等(刺しゅうでないもの)(5807)
    • 組ひも、装飾用トリミング、タッセル、ポンポン(5808)
    • 刺しゅうワッペン、刺しゅう生地、スパンコール等のアプリケ刺しゅう(5810)
    • 中綿入りのキルティング生地(反物状態)(5811)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記)
    • 第59類注1の対象となる「紡織用繊維の織物類」で、染み込ませ・塗布・被覆・積層したもの(第59類、または第39類・第40類へ)
    • 結び目で作った網地(結び網地)(5608)
    • タフテッドのうち「床用繊維製床用敷物」(5703)
    • メリヤス編みやクロセ編みのレース・ネット等(第60類)
    • すでに衣類・スカーフ等の形に製品化(made up)されたもの(多くは第61類〜第63類、例:刺しゅう入りスカーフは6214方向)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個)
    • 反物か、すでに製品化(made up)されているか(第11部注7が鍵)
    • 細幅織物か(幅30cm以下、両側に耳などの条件)(5806かどうか)
    • 刺しゅうか、刺しゅうでないラベルか(5807か5810か、または製品化されて別類か)
  • この類で特に誤分類が高コストになりやすい場面
    • リボンやテープが「細幅織物(5806)」なのか「装飾用トリミング(5808)」なのか、または「被覆等で第59類」なのかが曖昧なまま輸入してしまうケース
    • ラベルが刺しゅう入り(5810)なのに、刺しゅうなし(5807)で申告してしまうケース

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くのはGIR1とGIR6です。まず「見出しの文言」と「部注・類注」で範囲を確定し、その後に6桁(号)の条件で詰めます。特に第58類は、類注が定義と除外を強く決めています(細幅織物の定義、刺しゅうの含意、結び網地の除外など)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 形状:反物か、ストリップか、モチーフか、単体部品か
    • 製法:織物か、メリヤス編みか、結び網か、刺しゅうか、タフテッドか
    • 寸法:特に幅(細幅30cm以下の判定)
    • 加工:染み込ませ、塗布、被覆、積層の有無(第59類に飛ぶかどうか)
    • 用途:床用か(5703に飛ぶ)、衣類として製品化済みか(61〜63に飛ぶ)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:製品化(made up)されていないか確認
    • 例:単に裁断しただけか、縁縫い・縁かがり・房付け・縫製でつなぎ合わせ等があるか
    • made upの定義は第11部注7で確認します
  • Step2:染み込ませ、塗布、被覆、積層(コーティング等)の有無を確認
    • 第58類注1は「第59類注1の紡織用繊維の織物類で、染み込ませ等したもの」と「第59類のその他の物品」を除外します
    • 特に58.03(もじり織物)、58.06(細幅織物)、58.08(組ひも・装飾用トリミング)は、コーティング等があると第58類から外れる扱いが強調されています
  • Step3:第58類のどの「タイプ」かを判定
    • パイル織物・シェニール織物:5801(ただし5802と5806を除外)
    • テリー織物(タオル地)またはタフテッド織物:5802(床用は5703へ)
    • もじり織物(leno、ガーゼ状の織り):5803(細幅は5806へ)
    • レース、チュール、ネット:5804(結び網地は5608、メリヤス編み系は60類へ)
    • つづれ織物(手織り、手針のもの):5805
    • リボン・テープ等の細幅織物:5806(ただしラベルは5807へ)
    • ラベル・バッジ(刺しゅうでない):5807(刺しゅうなら5810へ)
    • 組ひも・装飾用トリミング・タッセル等:5808
    • 金属糸・金属を交えた糸の織物:5809(用途や性状で他類の可能性もあるので慎重に)
    • 刺しゅう:5810(基布が見える刺しゅう、アプリケ刺しゅう等を含む)
    • キルティング生地(反物):5811(第59.03の除外に5811が明記される点も実務上重要)
  • よく迷う境界(例)
    • 5806(細幅織物)と5808(装飾用トリミング):装飾目的の構成や房・装飾の付け方で分岐しやすい
    • 5807(ラベル)と5810(刺しゅうラベル):刺しゅうの有無が決定的
    • 5802.30(タフテッド織物)と5703(タフテッド床用敷物):床用かどうか、基材や剛性などで分岐
    • 5804(レース)と5810(レース風のアプリケ刺しゅう):レースの作り方(基布の上で作るか、網目と柄を同時に作るか)で分岐

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

次の表は第58類の項(4桁)を実務目線で要約したものです(見出し文言と注の趣旨に基づく整理)。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5801パイル織物・シェニール織物(ただし5802と5806を除外)ベルベット、コール天、シェニール織物テリーや細幅パイルは除外(5802/5806へ)
5802テリー織物、タフテッド織物(床用除外)タオル地、タフテッドの椅子張り生地タフテッド床用敷物は5703へ。細幅は5806へ
5803もじり織物(ガーゼ状の織り)もじり織ガーゼ、レノ織細幅は5806へ。医療用途の一定形態は3005方向もあり得る
5804チュール・ネット状の布、レース(反物・ストリップ・モチーフ)チュールレース、レースモチーフ結び網地は5608、メリヤス編み系は60類へ
5805つづれ織物(手織り、手針)タペストリー、手針つづれ風の壁掛け刺しゅう(5810)との混同に注意
5806細幅織物(ラベル除外)とボルデュックリボン、テープ、ゴム織物、バイアステープ幅30cm以下と耳の要件が鍵。房付きは5808へ。ラベルは5807へ
5807ラベル、バッジ等(刺しゅうでない)織ネーム、サイズラベル、ワッペン風の織ラベル刺しゅう入りは5810へ。切断以外に製品化すると61.17/62.17/63.07方向
5808組ひも、装飾用トリミング、タッセル等組ひも、フリンジ、タッセル、ポンポン60類(編物)の装飾トリミングは除外。ロゼット等で製品化すると62.17/63.07方向
5809金属糸・金属を交えた糸の織物(用途限定)ラメ織物、舞台衣装用メタリック生地用途や他見出し該当性の確認が必要
5810刺しゅう(反物・ストリップ・モチーフ)刺しゅう生地、刺しゅうワッペン、スパンコール刺しゅうレース風でも作り方次第で5810。製品化済み(スカーフ等)は他類へ
5811キルティング生地(反物)中綿入りキルト生地、縫い合わせ生地5811は59.03から除外される点が実務上重要。製品化すると61〜63へ

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(よく効くもの)
    • 5806(細幅織物):幅30cm以下か、両側に耳があるか、袋織で平らにした幅か、バイアステープを広げた幅か
    • 5806(弾性):ゴム糸又は弾性糸(エラストマー糸等)が重量で5%以上含まれるか
    • 5807(ラベル):刺しゅうでないこと、反物・ストリップ・切断ユニットの範囲に留まること
    • 5802(タフテッド):床用敷物(5703)に該当しないか
    • 5810(刺しゅう):基布が見える刺しゅう、アプリケ刺しゅう等を含むという定義
    • 5811(キルティング):反物であること、詰物を挟んで縫い合わせ等で一体化していること
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組)
    1. 5806(細幅織物)と5808(装飾用トリミング)
      • どこで分かれるか:単なる細幅の織物か、装飾用として構成・加工されたトリミングか。細幅織物でも「織物自体の糸で房を付けたもの」は5808に寄ります
      • 判断に必要な情報:幅、耳、房の作り方(別付けか、織物自身の糸か)、装飾のための縫製や組み合わせの有無
      • 典型的な誤り:見た目がリボンだから5806と決め打ち
    2. 5807(ラベル)と5810(刺しゅうラベル)
      • どこで分かれるか:刺しゅうの有無
      • 判断に必要な情報:製法(織り出し、印刷、刺しゅう、アプリケ)、製品見本写真
      • 典型的な誤り:ブランドロゴが糸で表現されているだけで「刺しゅう」と誤認、または逆に刺しゅうを見落とす
    3. 5802.30(タフテッド織物)と5703(タフテッド床用敷物)
      • どこで分かれるか:床用敷物かどうか(用途と物性)
      • 判断に必要な情報:用途、裏面構造(バッキング)、厚み・剛性、製品仕様書
      • 典型的な誤り:タフテッドという言葉だけで5703に寄せる、または逆
    4. 5810(刺しゅう反物等)と「製品化された衣類付属品等」
      • どこで分かれるか:反物・ストリップ・モチーフの範囲か、スカーフ等として使用可能な完成品(made up)か
      • 判断に必要な情報:寸法、縁処理、完成品としてそのまま使えるか

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約
    • 第11部注7は「製品にしたもの(made up)」の定義を置いており、第58類の「反物・ストリップ・モチーフ」との境界、58.07の除外(切断以外に製品化したもの)などに直結します
    • 第11部注8は「第50類〜第55類や第60類等には、注7で定義する製品にしたものを含まない」など、部内の相互排他を整理します(最終製品か素材かの整理に効く)
  • 実務での意味(具体例つき)
    • 例1:刺しゅう入りの布が、単なる反物なら5810寄りですが、縁縫い済みでスカーフとして使用できる形態なら、衣類付属品側(例:6214方向)になる可能性があります
    • 例2:ラベルが「切断しただけ」のユニットなら5807の射程に入りますが、縫い付け済み・裏当て済み等で製品化されると別項に飛ぶ可能性が高くなります
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン
    • made up判定で第61類〜第63類に移る(衣類、衣類付属品、その他の繊維製品)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(第58類注1〜7)
    • 注1:第59類注1の対象となる紡織用繊維の織物類で、染み込ませ等したもの、及び第59類のその他の物品は第58類に含めない
    • 注2:5801には、よこパイル織物で浮糸を切っていないものも含む(加工途中でも5801に残ることがある)
    • 注3:5803の「もじり織物」の定義(もじりたて糸が絡み目を作る織物)
    • 注4:5804には、5608の結び網地を含めない
    • 注5:5806の「細幅織物」の定義(幅30cm以下、耳、袋織、バイアス等の具体的定義)。加えて「織物自体の糸で房を付けた細幅織物」は5808へ
    • 注6:5810の「刺しゅう布」には、金属糸やガラス繊維の糸による刺しゅう(基布が見えるもの)や、薄片・ビーズ等を縫い付けたアプリケを含み、手針つづれ風(5805)は含まない
    • 注7:5809以外にも、衣類等に使用する種類の金属糸製の製品をこの類に含む
  • 用語定義(定義がある場合)
    • 細幅織物(5806):幅と耳の要件で定義
    • もじり織物(5803):注3で定義
    • 製品にしたもの(made up):第11部注7で定義
  • 除外規定(除外先の類・項も明記)
    • コーティング等で第59類へ(または性状により第39類・第40類へ)
    • 結び網地(5608)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:細幅織物(5806)の定義で、幅30cmが一気に効く
    • 何を見れば判断できるか(必要情報)
      • 幅(袋織は平らにした幅、バイアスは広げた幅)
      • 両側に耳があるか(織込み、のり付け等による耳を含む)
    • 現場で集める証憑
      • 図面(幅の定義が分かるもの)、製品仕様書、写真、サンプル
    • 誤分類の典型
      • 幅の測り方を誤り、5806と通常幅織物(50〜55類や58類他項)を取り違える
      • 房付きでも5806にしてしまう(注5で5808へ)
  • 影響ポイント2:コーティング等で第58類から第59類へ飛ぶ(ただし飛び方に癖がある)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報)
      • コーティング等があるか
      • その対象が「第59類注1の紡織用繊維の織物類」に該当するか(第50〜55類、58.03、58.06、58.08、60.02〜60.06等)
      • 肉眼で判別できるか、両面完全被覆か等(第59.03の除外条件)
    • 現場で集める証憑
      • 断面写真、コーティング仕様、MSDS、工程図、試験結果
    • 誤分類の典型
      • 58.06のリボンを、PVCコーティングの有無を見ずに5806のまま申告
      • 一方で、5811(キルティング生地)は第59.03から除外されるため、コーティングの有無だけで5903へ飛ばすのも危険
  • 影響ポイント3:ラベル(5807)か刺しゅう(5810)かは「刺しゅうの定義」で決まる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報)
      • ロゴ等が織り出し・印刷か、刺しゅうか
      • スパンコール、ビーズ等を縫い付けたアプリケがあるか(注6で刺しゅうに含める)
    • 現場で集める証憑
      • 拡大写真、加工仕様(刺しゅう機工程)、サンプル
    • 誤分類の典型
      • 刺しゅう入りなのに5807
      • 反対に、織り出しを刺しゅうと誤認して5810

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:リボン・テープを全部5806(細幅織物)にしてしまう
    • なぜ起きる:品名が「リボン」「テープ」だと幅や耳、装飾性を確認しない
    • 正しい考え方:5806は注5で細かく定義。さらに、織物自身の糸で房を付けた細幅織物は5808に属する
    • 予防策:幅の測り方(袋織、バイアス)と耳の有無、房の作り方を仕様書で確認
  2. 間違い:装飾フリンジを5806にしてしまう
    • なぜ起きる:幅30cm以下だからといって即5806に寄せる
    • 正しい考え方:装飾用トリミングやタッセル等は5808。5806のうち装飾性が強いものは区分を再確認する
    • 予防策:装飾目的の加工(縁取り、ループ、タッセル等)の有無を写真で確認
  3. 間違い:刺しゅうラベルを5807で申告
    • なぜ起きる:ラベルだから5807、という思い込み
    • 正しい考え方:5807は「刺しゅうでない」ことが条件。刺しゅうなら5810へ
    • 予防策:製法(刺しゅう機工程の有無)をサプライヤーに確認し、拡大写真を保管
  4. 間違い:切断済みのラベルユニットを「製品化済み」と誤認し、61.17等へ飛ばしてしまう
    • なぜ起きる:切り離されているだけで「完成品」と判断してしまう
    • 正しい考え方:5807は切断ユニットでも、切断以外の方法で製品にしていない範囲なら含み得る。逆に、切断以外に製品化しているなら除外
    • 予防策:縫い付け、裏当て、接着、台紙固定など追加加工の有無を確認
  5. 間違い:タフテッド素材を全部5703(床用)にする、または全部5802.30にする
    • なぜ起きる:タフテッドの言葉だけで決める
    • 正しい考え方:5802は床用敷物(5703)を除外。床用かどうか、物性や裏面構造、取引実態で確認が必要
    • 予防策:用途、製品仕様(床材用のバッキングの有無)、サンプル評価をセットで収集
  6. 間違い:レース風のものを全部5804(レース)とする
    • なぜ起きる:見た目がレースなら5804と判断
    • 正しい考え方:レースは網目と柄を同時に作るタイプが中心。基布に縫い付けるアプリケ等は刺しゅう(5810)側の発想が必要
    • 予防策:製法(レース機、刺しゅう機、アプリケ工程)を工程図で確認
  7. 間違い:コーティングした細幅織物を5806のまま
    • なぜ起きる:素材名のまま分類し、加工(被覆等)を見落とす
    • 正しい考え方:第58類注1と第59類注1の関係で、58.06等のコーティング品は第58類から外れる方向がある。さらに第59.03の判定条件(肉眼判別など)も絡む
    • 予防策:MSDS、断面写真、目視判別の可否、屈曲試験条件などの情報を事前入手
  8. 間違い:刺しゅう反物(5810)と、刺しゅう入りスカーフ等(made up)を混同
    • なぜ起きる:刺しゅうがあると全部5810と思い込む
    • 正しい考え方:第11部注7のmade up判定が効く。分類例でも、刺しゅう入りの布片とスカーフ形態は分かれて示される
    • 予防策:寸法、縁処理、完成品として使用可能かをチェックリスト化

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。58類は「素材(反物)」と「副資材(ラベル、トリミング)」が混在し、材料側のHSと最終製品側のHSがずれやすい分野です。
  • よくある落とし穴
    • ラベルや刺しゅうワッペンを材料として使う場合、材料HSを誤るとCTC判定の前提が崩れます
    • コーティング等で第59類に飛ぶ材料を58類として扱ってしまい、工程評価がずれる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定により採用しているHS年版が異なるため、協定年版でのコード確認が必要です(協定のPSR検索において、HS年版の注意喚起がされています)。
  • 実務では、通関申告は最新HS(HS2022)で、原産地証明は協定が採用するHS年版で、という二重管理が発生し得ます。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件は協定ごとに確認(一般論)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

第58類に関して、税関が公表するHS2022対HS2017の改正点一覧(WCO相関表に基づく)では、5802の6桁の整理が示されています。

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022新設と削除(号の整理)新:5802.10、旧:5802.11・5802.195802.11及び5802.19の削除に伴い、5802.10を新設(取引量が少ないこと等を理由とする整理)マスタ更新、過去コード参照(契約書、PSR、社内品番、原産地判定)でトランスポジションが必要になる可能性

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料として、HS2022対HS2017の改正点一覧(WCO相関表に基づく資料)において、5802.11と5802.19の削除、5802.10の新設が明示されています。これに基づき「HS2017の5802.11/5802.19はHS2022では5802.10に整理された」と判断しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • 可能な範囲で整理します。現時点で一次資料として確認できたのは、HS2017→HS2022における5802の号整理です(前章参照)。
  • HS2012→HS2017、HS2007→HS2012の詳細なトランスポジションは、WCO相関表(税関サイト経由で公開)で個別確認してください。
改正区分主要な動き(確認できた範囲)旧コード→新コードの方向性
HS2017→HS20225802の号整理(5802.11/5802.19削除、5802.10新設)5802.11/5802.19 → 5802.10
HS2012→HS2017今回は第58類に関する個別の改正点を一次資料で精査していません(相関表で要確認)相関表で要確認
HS2007→HS2012同上(相関表で要確認)相関表で要確認

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:コーティング済みリボンを5806で申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第58類注1と第59類注1の関係を見落とし、被覆等の加工品を第58類で申告
    • 起きやすい状況:購買が「リボン」としか把握していない、MSDSや断面写真がない
    • 典型的な影響:修正申告、追加資料提出、検査強化、納期遅延
    • 予防策:加工有無の申告前チェック(仕様書、MSDS、写真)、必要なら事前教示
  • 事例名:刺しゅう入りブランドラベルを5807で申告
    • 誤りの内容:5807の条件(刺しゅうでない)を満たさない
    • 起きやすい状況:織り出しと刺しゅうの区別が曖昧
    • 影響:品目更正、関税率差、原産地規則への波及
    • 予防策:製法確認(刺しゅう工程の有無)、拡大写真の保存
  • 事例名:タフテッド素材を床用(5703)として扱うべきかの判断不足
    • 誤りの内容:5802が5703を除外する点を見落とし
    • 起きやすい状況:用途が未確定のまま輸入、商流で用途が変わる
    • 影響:分類差で税率差、統計差、検査
    • 予防策:用途証明(仕様、販促資料、取付方法)、サンプル確認
  • 事例名:刺しゅう反物と刺しゅう入りスカーフ(made up)の混同
    • 誤りの内容:第11部注7のmade up判定をしないまま5810で一括申告
    • 起きやすい状況:サイズと縁処理の情報がない
    • 影響:他類更正、追加資料、遅延
    • 予防策:寸法、縁処理、完成品性を事前確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

日本前提で、第58類に関連しやすい論点を「該当がある場合のみ」整理します。関税分類そのものの規制というより、最終製品として国内販売する段階の表示・安全規制が中心になりやすい分野です。

  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 原反や副資材そのものに一律の検疫が付くというより、用途(乳幼児用、肌着用等)や含有化学物質で別法令が絡む場合があります(販売時規制の整理例としてJETROが解説)。
  • その他の許認可・届出
    • 家庭用品品質表示法に基づく繊維製品品質表示(最終製品として販売する場合):繊維組成や取扱い表示などを定める規程があり、直近でも改正情報が公開されています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口)
    • 消費者庁(家庭用品品質表示法・繊維製品品質表示)
    • JETRO(輸入・販売時規制の整理)
  • 実務での準備物(一般論)
    • 組成証明(混用率)、取扱い表示情報、対象年齢や用途の情報、必要に応じて化学物質試験結果

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 反物か、製品化済みか(縁処理、縫製、房付け等)
    • 製法(織物、刺しゅう、タフテッド、レース、結び網)
    • 寸法(特に幅30cm、袋織は平ら幅、バイアスは広げ幅)
    • 加工(コーティング等)と、目視判別性
    • 素材(繊維種、金属糸の有無等)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 5806と5808、5807と5810、5802と5703など境界再確認
    • 58.03/58.06/58.08のコーティング品が第58類に残るか(第59類注1との関係)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名に「lace」「embroidered」「coated」「narrow woven」「tufted」など誤解を生む語がある場合、補足資料で裏取り
    • 写真、仕様書、工程図、MSDSをセットで準備
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS年版を確認し、必要ならトランスポジションで整合を取る
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 国内販売する場合は、品質表示や安全規制の対象を確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO
    • HS Nomenclature 2022 edition(章立てとChapter 58の英語タイトル確認)参照日:2026-02-24
    • Correlation Tables HS 2017–2022(相関表の位置付け)参照日:2026-02-24
  • 日本税関・公的機関
    • 第58類 注(税関 実行関税率表 2022年1月1日版 データ)参照日:2026-02-24
    • 第58類 関税率表解説(総説、各項解説)参照日:2026-02-24
    • 国内分類例規(第58類、例示)参照日:2026-02-24
    • 第59類 注(第59類注1など、コーティング品の範囲判断)参照日:2026-02-24
    • 第11部 注(made upの定義など)参照日:2026-02-24
  • 規制・表示(日本)
    • 消費者庁 家庭用品品質表示法(繊維製品品質表示規程)参照日:2026-02-24
    • JETRO 貿易・投資相談Q&A(衣料品の輸入手続き、日本の販売時規制の整理)参照日:2026-02-24

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第57類:じゅうたんその他の紡織用繊維の床用敷物(Carpets and other textile floor coverings)

用語の約束(本稿内):部=Section、類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、注=Notes(部注/類注)

第57類は、じゅうたんやラグ、マット、人工芝など、紡織用繊維が表面に見える床用敷物をまとめた章です。ポイントは「使うときに露出する面が紡織用繊維かどうか」と「製法が結びパイル、織物、タフト、フェルト、その他のどれか」です。ここを外すと、第59類(床材)や第39類(プラスチック床材)へ移りやすく、関税・原産地規則・社内商品マスタの整合性に波及します。

本稿は日本の実務(輸入・輸出の双方)を想定し、ビジネスマンが社内で初期判断できるよう、どこでコードが変わるか、どんな資料が必要かを整理します。


1. まず結論:第57類に入るものと入らないもの

1-1. 第57類に入りやすい代表例

  • 手結びのペルシャじゅうたん、手織りの段通など(結びパイル)
  • 手織りキリムなどの平織りラグ(織物で、タフトやフロックではないもの)
  • タフトカーペット、タフトのラグ、タフト人工芝
  • フェルト製の床用敷物、フェルトのカーペットタイル
  • 上記に該当しないその他の紡織用繊維の床用敷物(例:特殊構造の床用マット等)

これらはいずれも、使用時の露出面が紡織用繊維である床用敷物という第57類注の定義に沿います。

1-2. 第57類から除外されやすい代表例

  • 床用敷物の下敷き(カーペットパッド、アンダーレイなど)
    第57類注2で除外され、構成材料に応じて別分類になります。
  • 表面が塗布・被覆材で、紡織用繊維が基布に過ぎない床材
    日本税関の解説では、リノリウム等、紡織用繊維の基布に塗布・被覆した床用敷物は59.04で検討すると整理されています。
  • 表面がプラスチックの床材(例:ビニル床材)
    「露出面が紡織用繊維」という定義を満たさないため、第57類ではなく第39類や第59類側で検討が必要になります。

1-3. 実務での最重要分岐

  • 使用時の露出面は何か(紡織用繊維か、プラスチックか、別素材か)
  • 製法はどれか(結びパイル、織物、タフト、フェルト、その他)
  • 下敷き(アンダーレイ)ではないか

2. 第57類に到達するための考え方

2-1. 分類でまず効くルール

  • 通則1(GIR1):見出しの文言と、部注・類注で決めます。第57類は注が短い代わりに強いです。
  • 通則6(GIR6):6桁の細分は、同一階層の比較で決めます。第57類は製法と材料で6桁が動きます。

品名が「ラグ」「マット」「カーペット」でも、露出面と製法が違えばコードが変わるので、名称だけで決めないのが鉄則です。

2-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:使用時の露出面は紡織用繊維ですか
    いいえの場合、第57類ではなく第39類や第59類などで検討します。
  • Step2:床用敷物の下敷き(アンダーレイ)ですか
    はいの場合、第57類注2で除外され、構成材料により分類します。
  • Step3:製法はどれですか
    結びパイルなら5701、織物なら5702、タフトなら5703、フェルトなら5704、その他は5705の方向です。

3. 主な項(4桁)とその内容

3-1. 4桁(項)の一覧表

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件や注意点
5701結びパイルのじゅうたん等手結びじゅうたん、手結びラグ結び目でパイルを形成しているかが核
5702織物製のじゅうたん等(タフト、フロックを除く)ウィルトン、平織りキリム、こいやし繊維マットパイルの有無、製品にしたかどうかで6桁が動く
5703タフトしたじゅうたん等(人工芝を含む)タフトカーペット、タフト人工芝HS2022で人工芝の細分が新設
5704フェルト製のじゅうたん等(タフト、フロックを除く)フェルトカーペット、フェルトタイルタイルは面積区分がある
5705その他のじゅうたん等その他の床用マット類他の5701から5704に当たらない場合の受け皿

出所はWCOのHS2022第57章の見出し体系です。


4. 6桁(号)で実務上重要な分岐

4-1. 5703(タフト)で最重要:人工芝(turf)を別掲するか

HS2022の5703では、人工芝(turf)が明示され、さらにナイロン等とその他の人造繊維材料の区分の中で、人工芝が独立した6桁として設けられています。

  • ナイロン又はその他のポリアミド製
    5703.21(人工芝)と5703.29(その他)
  • その他の人造繊維材料製
    5703.31(人工芝)と5703.39(その他)

実務の注意点は、商品名が「人工芝マット」でも、タフトなのか、別の構造なのかを仕様書で確定することです。人工芝はスポーツ用途でも、床用敷物としての性格が強い場合に第57類で検討する筋になります。

判断に必要な情報

  • 製造方法(タフティングかどうか)
  • 表面パイル糸の材質(ナイロン系か、その他の合成繊維か)
  • 露出面の材質が紡織用繊維かどうか

4-2. 5702(織物)でよく動くポイント:パイル有無と製品化

5702は、織物で、タフトやフロックではない床用敷物が対象で、パイル構造か否か、製品にしたか否かで下位区分が分かれます。

  • 例:手織りキリム等は5702.10に含まれます。
  • 例:こいやし繊維(コイヤ)製の床用敷物は5702.20として別掲です。

日本税関の分類例規では、たて糸が紡織用繊維で、よこ糸にプラスチックのストリップを使う織りマットを、5702.50から5702.99の範囲で判断する事例が示されています。露出面と見かけ幅など、構造の説明が必要になります。

判断に必要な情報

  • 織物かどうか、タフトかどうか
  • パイルの有無
  • 製品にしたか(縁かがり、裏打ち、房付け、所定寸法での仕上げなど)

4-3. 5704(フェルト)はタイル面積で号が変わる

5704はフェルト製の床用敷物ですが、タイルについては最大面積で区分されています。

  • 5704.10:タイルで最大面積が0.3m2以下
  • 5704.20:タイルで最大面積が0.3m2超1m2以下
  • 5704.90:その他

日本税関の分類例規では、ポリエステルのニードルルームフェルトを用いた電気カーペットが5704.90とされた例があります。電気機能があっても、露出面が紡織用繊維の床用敷物という性格が強い場合、57類の中で検討され得ます。

判断に必要な情報

  • 表面がフェルトか、タフトか、別構造か
  • タイルなら最大面積
  • 電気部品などがある場合でも、使用実態と物品の本質

5. 第57類の注を実務的に読み替える

5-1. 注1:露出面基準が第57類の入口

第57類注1は、床用敷物として使用するときに露出する面が紡織用繊維であることを求め、さらに床用敷物としての特性を持つ物品で他用途に供するものも含むとしています。

実務的な意味

  • 裏面がゴムやプラスチックで裏打ちされていても、表面が紡織用繊維なら第57類に残り得ます。日本税関の解説でも、ラテックスの含浸や裏打ちの例が触れられています。
  • 一方で、表面が塗布材で紡織用繊維が露出しない床材は第57類ではありません。

5-2. 注2:下敷き(アンダーレイ)は除外

床用敷物の下敷きは第57類に含まれません。日本税関の解説では、床とじゅうたんの間に敷く粗い織物やフェルトを例に挙げ、構成材料により分類すると説明しています。


6. よくある誤分類8選(原因と対策)

  1. 間違い:表面がビニルの床材を「裏が布だから」と第57類に入れる
  • なぜ起きる:基布に繊維があると紡織品に見えるためです。
  • 正しい考え方:露出面が紡織用繊維であることが第57類の定義です。
  • 予防策:断面写真と、使用時に露出する表面材を仕様書で固定します。
  1. 間違い:カーペット下敷きを57類で申告する
  • なぜ起きる:用途が床関連で、見た目もフェルトや不織布に似ているためです。
  • 正しい考え方:下敷きは第57類注2で除外です。
  • 予防策:用途が「下敷き」か「床用敷物」かを分け、構成材料(フェルト、不織布、ゴム等)で別分類する前提で資料を揃えます。
  1. 間違い:人工芝を5703の中で「その他」として処理し、HS2022の人工芝細分を見落とす
  • なぜ起きる:人工芝をカーペットではなく屋外資材と認識しがちなためです。
  • 正しい考え方:5703は人工芝を含み、HS2022では人工芝が6桁で別掲されています。
  • 予防策:タフト構造かどうかと、パイル糸の材質(ナイロン系か否か)を必ず確認します。
  1. 間違い:織りカーペットとタフトカーペットを品名だけで判定する
  • なぜ起きる:市場名が混在し、見た目だけでは判断しづらいためです。
  • 正しい考え方:5702は織物、5703はタフトと製法で分かれます。
  • 予防策:製造工程説明(織機か、タフティング機か)と断面写真を入手します。
  1. 間違い:フェルト床材を5704ではなく5705にしてしまう
  • なぜ起きる:フェルトでも構造が複合的で、その他に見えるためです。
  • 正しい考え方:フェルト製の床用敷物は5704が優先で、タイルは面積区分があります。
  • 予防策:表面材がフェルトである根拠(仕様書、写真)とタイル面積を確認します。
  1. 間違い:電気カーペットを電気機器として一律に第85類で検討する
  • なぜ起きる:機能で分類が決まると思い込みやすいためです。
  • 正しい考え方:日本税関の分類例規では、構造により57類内で整理される例があります。
  • 予防策:露出面、床上で使用する設計、構造(フェルトか、その他床用敷物か)を整理し、必要なら事前教示を検討します。
  1. 間違い:織りマットでプラスチックストリップを使うものを第39類のプラスチック製品と決め打ちする
  • なぜ起きる:見た目がプラスチック主体に見えるためです。
  • 正しい考え方:日本税関の分類例規では、織物構造の床用敷物として5702の範囲で判断する例があります。
  • 予防策:たて糸、よこ糸の材質、ストリップの見かけ幅など、構造を数値で説明できるようにします。
  1. 間違い:裏打ちがあるから第59類59.04と早合点する
  • なぜ起きる:裏打ちの存在だけで「塗布品」と誤認するためです。
  • 正しい考え方:第57類は裏打ちやラテックス含浸があっても、露出面が繊維なら対象になり得ます。一方で、塗布面が露出する床材は59.04で検討という整理もあります。
  • 予防策:使用時の露出面がどちらか、表面が塗布材で覆われているかを断面で確認します。

7. FTAやEPAで原産地証明をする際の注意点

7-1. HSコードとPSRは連動する

床用敷物は材料が多様で、同じ見た目でも製法でHSが変わります。HSが変わると、品目別規則(PSR)の選択や、原産材料・非原産材料の扱いが変わり、原産性判断が崩れることがあります。

7-2. 協定が参照するHS版の違いに注意する

日本税関のPSR検索では、協定ごとに採用するHS版が異なり、別の版のHSコードで検索すると結果が不正確になり得る旨が案内されています。
HS2022のコードで通関しつつ、協定はHS2012やHS2017でPSRを規定する場合があるため、相関表で突合する運用が必要です。


8. HS2017からHS2022での主な違い

8-1. 変更点サマリー(表)

比較(HS2017→HS2022)変更タイプ該当コード変更の要旨実務への影響
5703(タフトじゅうたん等)分割・新設5703.21、5703.31(新設) 5703.29、5703.39(再整理)人工芝(turf)を別掲するため、従来の5703.20、5703.30の一部が人工芝向け6桁へ分かれた人工芝を扱う企業はHS2017とHS2022で6桁が変わる可能性がある。通関コードとPSR参照コードのズレに注意

この改正はWCOの相関表(Table I)に明示されています。

8-2. 変更の根拠の説明

根拠資料として、WCOが公表する相関表(HS2022版とHS2017版の対応表)では、5703について人工芝(turf)を別掲する目的で、5703.21と5703.31を新設する旨が記載されています。
また、HS2022第57章の条文上も、5703の内訳として人工芝が6桁で区別されていることが確認できます。


9. 日本での表示・安全面の論点

分類そのものとは別ですが、床用敷物は日本での販売時に表示や安全面の要求が絡みやすい分野です。

9-1. 繊維製品の品質表示(床敷物)

消費者庁のガイドでは、床敷物について、組成繊維(繊維の名称と混用率)と、表示者名等(名称や連絡先)を表示する考え方が示されています。

実務の準備物

  • 表面パイル、基布、裏材を含めた材料構成表
  • 混用率の根拠資料(試験成績書、メーカー仕様書)

9-2. 有害物質規制(家庭用品)

厚生労働省の資料では、アゾ染料に関する規制対象として繊維製品の床敷物が含まれ、特定芳香族アミンの検出量の上限が示されています。床敷物は一部の難燃剤等の規制対象としても挙げられています。

実務の準備物

  • 染料や仕上げ剤の情報(サプライヤー証明、試験結果)
  • 必要に応じた第三者試験の計画

9-3. 防炎規制への目配り

消防法令に基づく防炎制度では、じゅうたん等が対象になり得ます。東京消防庁の案内では、じゅうたんの例として織りカーペット、フェルトカーペット、タフテッドカーペット、ニードルパンチカーペット、ござ、人工芝などが挙げられています。

実務の準備物

  • 防炎性能の要否が分かる用途情報(施設向けか、一般家庭向けか)
  • 必要に応じた試験成績やラベル運用体制

10. 実務チェックリスト(社内でこの順に確認すると早い)

  • 露出面は紡織用繊維か(写真と断面で確認)
  • 下敷き(アンダーレイ)ではないか
  • 製法はどれか(結びパイル、織物、タフト、フェルト、その他)
  • 5703の場合、人工芝か否か、パイル糸材質はナイロン系か否か
  • 5704のタイルなら最大面積(0.3m2、1m2の境界)
  • 57類ではない疑いがあれば、59.04や39類などの候補も同時に立てる
  • 仕入先に必ず依頼する資料
    • 仕様書(材質、混用率、製法、寸法、タイル面積、用途)
    • 表裏と断面の写真
    • 可能なら工程概要(織り、タフティング等)

参考資料(出典、参照日:2026-02-24)

  • WCO:HS2022 Chapter 57(見出し、注、6桁体系)
  • 日本税関:実行関税率表 第57類 類注(第57類注1、注2)
  • 日本税関:関税率表解説 第57類(総説、除外、各項の解説)
  • 日本税関:分類例規 第57類(織りマット、電気カーペット等の事例)
  • WCO:Correlation Tables HS2017–HS2022 Table I(5703の人工芝細分新設)
  • 消費者庁:繊維製品の表示ガイド(床敷物)
  • 厚生労働省:有害物質を含有する家庭用品の規制基準概要(床敷物に関係する規制の一覧)
  • 東京消防庁:防炎対象物品の案内(じゅうたん等の例示)
  • 日本税関:品目別原産地規則(PSR)検索の注意(協定ごとのHS版)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第56類:ウォッディング、フェルト、不織布及び特殊糸並びにひも、綱及びケーブル並びにこれらの製品(Wadding, felt and nonwovens; special yarns; twine, cordage, ropes and cables and articles thereof)

用語の約束(本稿内):部=Section、類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、注=Notes(部注/類注)

第56類は、ウォッディング(詰物材)、フェルト、不織布といったシート状素材に加えて、特殊糸、ひも・綱・ロープ・ケーブル、網、そしてそれらの製品までを扱います。材料・構造・加工(塗布、被覆、積層)によって第39類(プラスチック)や第40類(ゴム)、さらに第96類(衛生用品)に飛ぶため、見た目や品名だけで決めると誤分類が起きやすい類です。

この記事は、ビジネスマンが社内で分類の初期判断をするために、どこでコードが変わるか、何の資料が必要かを実務目線で整理したものです。最終判断は税関に委ねられるため、重要案件は事前教示や専門家相談も前提にしてください。


1. まず全体像:第56類の9つの項(4桁)で地図を作る

第56類は、5601から5609までの9項で構成されています。まずは製品がどのグループに属するか(詰物材か、フェルトか、不織布か、糸か、ロープか、網か、製品か)を決めると、分類が一気に安定します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(現場での呼び名)最初に確認する分岐ポイント
5601ウォッディング及びその製品、フロック、繊維ダスト等詰綿、キルト用綿、フィルター用ロッド、フロック繊維長(フロックは5mm以下)、製品が衛生用品か
5602フェルトニードルフェルト、工業用フェルトフェルト定義(ニードル、ステッチボンディング含む)、プラやゴムでの処理状態
5603不織布スパンボンド、メルトブローン、湿式不織布、フィルター材目付(25/70/150g/㎡境界)、片面か両面かのプラ・ゴム被覆
5604ゴム糸等、ゴムやプラを被覆した糸・ストリップ等ゴム糸の被覆糸、被覆糸、被覆ストリップ被覆が肉眼で判別できるか(見えない場合は他章)
5605金属を交えた糸メタリックヤーン金属の形態(糸・ストリップ・粉)、装飾用か補強用か
5606ジンプヤーン、シェニールヤーン、ループウェールヤーンファンシーヤーン、シェニール糸糸の構造(毛羽立ち、房状、ループ構造)
5607ひも、綱、ロープ、ケーブル農業用ひも、PPロープ、係船ロープ部注の定義(デシテックス閾値)、組物かどうか
5608結び網地、漁網等の網漁網、安全ネット、虫よけネット結び網地か、製品化された網か、編み網か
5609糸・ひも・綱等の製品(他に該当しない)靴ひも、衣類用ひも、なわばしご等他の見出しに特掲がないか、除外例(42.01、59.11等)

上表の根拠は、WCOのHS2022第56章条文と、日本税関の第56類注・解説です。


2. 最重要:第56類の注(Notes)で必ず飛び先をチェックする

第56類は「注」を外すと別の類に移る代表例が多いです。実務では、見出しの前に注を読む方が早いケースが多々あります。

2-1. 注1:第56類に入らない代表例

次のようなものは第56類から除外されます。品名が不織布やフェルトに見えても、分類先が変わります。

  • 香料・化粧品、石けん・洗浄剤、磨き料、織物柔軟剤などを含浸・塗布等したウォッディング、フェルト、不織布で、繊維が単なる媒体になっているもの
    例:洗浄成分を含んだシート等は、第33類、第34.01項、第34.05項、第38.09項など側で検討が必要です。
  • 第58.11項の紡織用繊維の物品(いわゆるキルティング品など)
  • 研磨材の粉や粒をフェルトや不織布に付着させたもの(68.05)
  • 雲母をフェルトや不織布で裏張りしたもの(68.14)
  • 金属はくをフェルトや不織布で裏張りしたもの(主に第14部・第15部)
  • 生理用ナプキン、タンポン、おむつ、おむつ中敷き等(96.19)
    不織布や吸収体が主材料でも、衛生用品としての完成品は第96類に移るのが典型です。

2-2. 注3:フェルトと不織布は、プラやゴムでの処理があっても第56類に残る場合がある

56.02(フェルト)と56.03(不織布)は、プラスチック又はゴムで含浸・塗布・被覆・積層したものも含みます。さらに、56.03はプラやゴムが結合剤になっている不織布も含みます。

ただし、次の条件に当たると第39類や第40類へ移ります。ここが誤分類の最大ポイントです。

  • フェルトで、繊維重量が全重量の50%以下、またはプラ・ゴムの中に完全に埋め込まれている
  • 不織布で、プラ・ゴムの中に完全に埋め込まれている、または両面が完全にプラ・ゴムで塗布・被覆され、肉眼で判別できる
  • 多泡性プラやセルラーラバーの板・シート等にフェルトや不織布を結合し、繊維が補強目的だけで使われている

このルールは第56類注で明示されています。

2-3. 注4:56.04は、被覆が肉眼で見えないなら対象外

56.04はゴムやプラスチックで被覆した糸等を扱いますが、被覆が肉眼で判別できないものは56.04に入らず、通常は第50類から第55類や第54.04・54.05へ戻ります。色の変化だけでは被覆の有無を判断しません。


3. 5601から5603の勝負どころ:詰物材、フェルト、不織布の境界を整理する

3-1. 5601(ウォッディング、フロック等)でよくある実務用途

ウォッディングは詰物として肩当て、衣類の内張り、家具、包装材、衛生用途などに幅広く使われます。反物状や一定寸法に切ったもの、ほかに特掲のないウォッディング製品も含まれます。

5601はウォッディングだけでなく、次も含みます。

  • 長さ5mm以下の繊維(フロック)
  • 紡織用繊維のダスト、ミルネップ

実務で確認すべき資料は、繊維長(最大値を含む分布)と、製造工程(切断、粉砕、回収くずなど)です。

3-2. ウォッディングと不織布が混同される理由と見分け方

日本税関の解説では、ウォッディングの内部層は不織布より分離しやすい傾向がある一方、粘着材処理が内部層まで浸透している場合は、内部層が分離できても56.03の不織布に属し得る点が注意事項として示されています。

社内での質問例

  • 接合は何で行っていますか(熱、針、接着剤、ラテックス等)
  • 接着剤は表面だけですか、内部層まで浸透していますか
  • 目付(g/㎡)と厚みはどれくらいですか
  • 層構造(片面被覆、両面被覆、積層順序)はどうなっていますか

3-3. 5602(フェルト)と5603(不織布)の境界でつまずきやすい点

第56類注では、フェルトの定義にニードルルームフェルトと、ウェブ自体の繊維を使うステッチボンディングによる織物類を含むとされています。

日本税関の解説では、ニードルルームの製法や用途(断熱、防音など)に触れつつ、ニードリングが補助的である場合や、短繊維ウェブと長繊維ウェブをニードルした物品は不織布とみなす旨が示されています。フェルトと不織布は製法と構造の説明が必要になる典型です。

3-4. 5603(不織布)は目付で号が動く

HS6桁では、不織布は大きく次のように分かれます。

  • 人造繊維の長繊維製のもの:5603.11から5603.14(目付が25、70、150g/㎡境界)
  • その他:5603.91から5603.94(同じく目付境界)

このため、仕入先仕様書に必ず「目付(g/㎡)」を入れることが重要です。

3-5. 実務に役立つ分類例(日本税関の分類例規から)

分類の考え方が具体的に分かる例として、次が公開されています。

  • 5601.22:シガレットフィルター用のロッド(アセチルセルロース繊維を処理し紙で包んだもの)
  • 5601.30:ナイロン糸の破片(約2から6mmに切断しタイヤ補強材に使用)
  • 5603.12又は5603.13:湿式集積で製造、セルロース繊維を混合し結合剤を含浸した不織布(60から80g/㎡)
  • 5603.14:PVCシートにPP不織布の裏張りを結合したテーブルクロス(第56類注3を踏まえた整理)

分類例の読み方としては、品名よりも「構造」「工程」「数値(長さ、目付、含浸)」に着目すると、社内判断で再現しやすくなります。


4. 5604から5606:特殊糸の実務ポイント

4-1. 5604(ゴム糸等)で最初に見るべきこと

56.04は、ゴム糸やゴムコード(繊維で被覆したもの)、さらに繊維糸や54.04・54.05のストリップ等でゴム・プラスチックを含浸・塗布・被覆・シースしたものを扱います。

ただし、被覆が肉眼で判別できない場合は56.04ではなく、通常は糸として第50類から第55類、または54.04・54.05へ戻ります。ここは第56類注4で明示されています。

社内での質問例

  • 被覆は目視で分かりますか(断面写真も含む)
  • 被覆材はゴムですか、プラスチックですか
  • 被覆の範囲は全面ですか、部分ですか
  • ベースは糸ですか、ストリップですか

4-2. 5605(金属を交えた糸)は、装飾用のメタリックヤーンが典型

56.05は、繊維糸または54.04・54.05のストリップ等に、金属を糸・ストリップ・粉の形で組み合わせたものや、金属で被覆したものを扱います。

誤りが起きやすいポイント

  • 補強目的の金属線入りロープは、部注の定義により56.07扱いになる場合があります(下の5607参照)。

4-3. 5606(ジンプ、シェニール、ループウェール)は構造説明が必要

56.06は、ジンプヤーン、シェニールヤーン、ループウェールヤーンなど、構造が特殊な糸を扱います。

日本税関の解説では、シェニールヤーンの構造や、フロックを付着して得るタイプなども説明されています。外観の毛羽立ちだけでなく、製造方法や糸構造の説明があると分類が安定します。

分類例規には、手芸用の毛羽立った糸が5606.00に分類された事例があります。


5. 5607(ひも、綱、ロープ、ケーブル)の最大の落とし穴は部注の定義

5-1. 糸なのか、ひも・綱なのかはデシテックスで決まる場合がある

第11部注3では、一定の条件を満たす糸を「ひも、綱、ロープ、ケーブル」とみなす定義が置かれています。特に人造繊維は10,000デシテックスを超えると対象になります。

主な閾値(要約)

  • 絹または絹くず:20,000デシテックス超
  • 人造繊維:10,000デシテックス超(第54章の複数モノフィラメント糸なども含む)
  • 麻や亜麻:研磨や光沢加工の有無で閾値が異なる
  • コイヤ:3プライ以上
  • その他植物繊維:20,000デシテックス超
  • 金属糸で補強されたもの

ただし例外も多く、毛糸や紙糸は原則としてこの定義から外れる、56.05や56.06は除外される、などの整理が同じ部注にあります。

社内での質問例

  • 総繊度(デシテックス、テックス)はいくつですか
  • 単糸か、双糸か、ケーブルか
  • ねん糸数(m当たりのより数)はいくつですか
  • 金属補強はありますか(装飾か補強か)

5-2. 5607の対象は、よったものだけでなく組んだものも含む

56.07は、よることや組むことによって製造されるひも、綱、ケーブルを扱い、組んだものは単位長さ当たりの重量にかかわらず対象になり得ます。58.08の組ひもとの違いは、用途に適するようにち密で硬く組まれている点などで説明されています。

5-3. 5607.21と5607.41(結束用・包装用ひも)は強度要件が実務で効く

HS6桁では、サイザル等の結束用・包装用ひも(5607.21)と、ポリエチレン又はポリプロピレンの結束用・包装用ひも(5607.41)が別掲されています。

日本税関の解説では、これらが一定の切断力の最少値を満たすことを前提に説明され、サイザル等では長さ当たりの仕様から切断力を求める式、ポリエチレン・ポリプロピレンでは切断力と結び目強度の考え方が示されています。実務では、強度試験成績書や仕様(kg当たり長さなど)を確実に取るのが安全です。

5-4. 実務に役立つ分類例

分類例規では、パラフィンワックスを薄く含浸させたポリエステル糸を密に編組し、機械用のコードとして使うものが5607.50に整理された事例があります。


6. 5608(網)と5609(その他の製品)は、似たもの排除が重要

6-1. 5608は「結び網地」と「製品にした網」

56.08は、ひも・綱から作った結び網地と、製品にした漁網その他の網を扱います。結び網地は56.07のひも等から作られ、58.04のチュール等とは区別されます。

製品にした網は、漁網、安全ネット、運搬用ネット、ハンモック、虫よけ網などが例示され、リングやおもり、浮き等の付属品があっても分類に影響しない旨が説明されています。

除外として、反物状の編み網(第60類)、ヘアネット(65.05)、運動用ネット(第95類)などが挙げられています。

6-2. 5609は「糸やひも等の製品」だが、他項や他類へ逃げるものが多い

56.09は、糸、54.04・54.05のストリップ等、56.07のひも・綱・ケーブルなどの製品で、他の項に該当しないものを扱います。靴ひも、衣類用ひも、引き綱、船のフェンダー、なわばしご、皿ふき等の例が挙げられています。

一方で、手綱など(42.01)、特定機械用の一定寸法コード(59.11)、組みひもから製造された靴ひもが63.07になる例、ロープソール(64.06)など、除外も具体的に示されています。56.09は最後の受け皿なので、除外を先に潰す方が安全です。


7. よくある誤分類8選(原因と対策)

  1. 間違い:おむつや生理用品を不織布(5603)で申告する
  • なぜ起きる:材料が不織布で、見た目がシートだからです。
  • 正しい考え方:衛生用品の完成品は第96.19項として第56類から除外されます。
  • 予防策:用途と完成品かどうかを確認し、製品仕様で「衛生用品用途」「吸収体の有無」「形状」を固定します。
  1. 間違い:薬剤や洗浄成分を含浸したシートを5601や5603にしてしまう
  • なぜ起きる:基材が不織布であるためです。
  • 正しい考え方:繊維が単なる媒体となる場合は、第33類、第34類、第38類などへ移る可能性があります。
  • 予防策:含浸物の成分と機能、製品の本質(基材か薬剤か)を仕様書で確認します。
  1. 間違い:片面PVCラミネート不織布を第39類のプラスチックシートとして処理する
  • なぜ起きる:表面がプラスチックに見えるためです。
  • 正しい考え方:不織布がプラで被覆・積層されても、条件次第で56.03に残ります。両面被覆で肉眼判別できる等の条件で第39類へ移ります。
  • 予防策:両面被覆か、埋め込みか、繊維重量割合、補強目的かを確認し、断面写真と構成比を回収します。
  1. 間違い:ウォッディング(5601)と不織布(5603)を外観だけで決める
  • なぜ起きる:どちらもふわっとしたシートに見えるためです。
  • 正しい考え方:接着剤が内部層まで浸透するなど、工程や構造で5603扱いになり得ると解説されています。
  • 予防策:製造工程(熱、針、接着剤)と層構造を聞き、試験成績書や工程図を取得します。
  1. 間違い:フェルト(5602)と不織布(5603)の境界で、ニードルパンチ品を全部フェルト扱いにする
  • なぜ起きる:ニードル=フェルトという思い込みです。
  • 正しい考え方:フェルト定義と、不織布とみなすケースが説明されています。
  • 予防策:基材の有無、接合方法、最終物性、用途説明をセットで集めます。
  1. 間違い:被覆糸を56.04に入れたが、被覆が肉眼で判別できない
  • なぜ起きる:色が変わっているだけで被覆と誤認するためです。
  • 正しい考え方:肉眼で判別できない被覆は56.04の対象外です。
  • 予防策:断面観察、被覆厚、写真、被覆材のMSDSを確認します。
  1. 間違い:太い人造繊維糸を第54類や第55類の糸として扱い続ける
  • なぜ起きる:糸の延長として理解してしまうためです。
  • 正しい考え方:第11部注3で、人造繊維が10,000デシテックス超などの条件でひも・綱扱いになります(例外もあり)。
  • 予防策:デシテックス、より数、構造、例外該当の有無を確認します。
  1. 間違い:網を5608に入れたが、実は編み網やスポーツ用ネットだった
  • なぜ起きる:網という言葉で一括りにするためです。
  • 正しい考え方:反物状の編み網は第60類、スポーツ用ネットは第95類など、除外が明記されています。
  • 予防策:製造方法(結び網か編みか)、用途(スポーツ用か)を明確にします。

8. 現場で揃えると分類が強くなる資料

第56類は構造と数値が命です。インボイス品名より、次の資料が最重要です。

  • 構成表(層構造、材料名、重量割合、繊維重量割合)
  • 仕様書(目付g/㎡、厚み、繊維種、繊維長、デシテックス、より数)
  • 加工情報(含浸・塗布・被覆・積層の有無、両面か片面か、結合剤の種類)
  • 物性資料(切断力、結び目強度、耐候性など。特に5607.21、5607.41を狙う場合)
  • 写真(表裏、断面、巻姿、梱包、用途が分かる状態)
  • 用途説明(衛生用品か、工業用フィルターか、包装用か、漁網か等)

9. まとめ:第56類の最短チェックリスト

  • Step1:製品の形は何か(ウォッディング、フェルト、不織布、糸、ひも、網、製品)
  • Step2:第56類注1の除外に当たらないか(特に96.19、58.11、研磨材付きなど)
  • Step3:フェルト・不織布のプラ・ゴム被覆は、注3で第39類・第40類へ飛ばないか(両面被覆、埋め込み、50%以下など)
  • Step4:56.04は被覆が肉眼で見えるか(見えないなら他章)
  • Step5:5603は目付(25/70/150g/㎡)を確定したか
  • Step6:5607は第11部注3のデシテックス閾値と例外を確認したか
  • Step7:5608と5609は除外先(第60類、第95類、59.11等)を最後に確認したか

参考資料(出典、参照日:2026-02-24)

  • WCO:HS2022 Chapter 56(見出し、章注、号体系)
  • 日本税関:第56類 注(類注)
  • 日本税関:関税率表解説 第56類(総説、各項解説、境界・除外の実務説明)
  • WCO:HS2022 Section XI Notes(第11部注3など、ひも・綱の定義、made upの考え方)
  • 日本税関:分類例規(第56類の具体事例)
  • 日本税関:関税率表解説 新旧対照表(HS2022改正時の記載変更の確認用)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。