0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)
- この類に入る代表例(3〜6個):
- 防水性があり、外底と甲がゴム又はプラスチックで、縫製などで底と甲を接合していないタイプの長靴やレインブーツ(64.01)
- 甲と外底がゴム又はプラスチックの一般的な履物(例:樹脂製サンダル、ゴム長靴のうち64.01に当たらないもの、ラバーサンダル等)(64.02)
- 甲が革の履物(例:革靴、革ブーツ。外底はゴム、プラスチック、革、コンポジションレザー等が対象)(64.03)
- 甲が繊維の履物(例:キャンバススニーカー、布製シューズ。外底はゴム、プラスチック、革、コンポジションレザー等が対象)(64.04)
- 上記に当てはまらない履物(例:素材構成が特殊な履物、室内履き等で64.01〜64.04に入らないもの)(64.05)
- 履物の部分品(アッパー、外底、かかと等)、取り外し可能な中底やかかとクッション、ゲートル等(64.06)
- この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
- 使い捨ての簡易な靴カバーで、底が取り付けられていないもの(材質により他類へ。例:プラスチックシートなら第39類など)
- 繊維製で、外底が接着・縫製等で取り付けられていない履物(第11部の繊維製品として扱われ得ます)
- 中古の履物(63.09)
- 石綿製品(68.12)
- 整形外科用の履物、その他の整形外科用機器やその部分品(90.21)
- 玩具の履物、スケートが取り付けられたスケート靴、すね当て等のスポーツ用保護具(第95類)
- 実務での最重要分岐(1〜3個):
- まず「完成した履物」か「部分品」か(64.01〜64.05か、64.06か)
- 甲の材質と外底の材質を、見た目の外表面積の優勢で判定できるか(付属品や補強材は除外して面積判定)
- 64.01か64.02かの境界(防水性に加え、底と甲の接合方法要件がある)
- (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
- 原産地証明でPSR(品目別規則)を使う取引で、6桁の取り違えが起きる場合(例:甲材質の誤認で64.03と64.04が入れ替わる)
- ワシントン条約(CITES)該当種の皮革を使用している可能性がある場合(許認可が絡むため、通関遅延や差止めリスクが上がります)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)
1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)
- この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)を、ビジネスマン向けに説明
- 基本はGIR1で、見出し(項)の文言と注(類注)に従って分類します。履物は、注により「甲の材質」「外底の材質」「部分品に含めないもの」「除外品」が明確に定義されているため、品名より注が優先的な根拠になります。
- 6桁(号)の決定はGIR6で、当該号の文言と号注(スポーツ用履物の定義など)に基づいて細分します。
- 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
- 材質:甲と外底の主要材質を、外表面積の優勢で判断します。バックル等は面積算定から除外され得ます。
- 状態:新品か中古かで63.09に飛ぶ可能性があります。
- 構造:64.01は防水性だけでなく、底と甲が縫製等で接合されていないという構造要件があります。
- 用途:整形外科用(90.21)や玩具(第95類)など、用途や機能が強い除外規定があります。
1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)
- Step1:
- 対象が「履物」か「履物の部分品」かを分けます。アッパー単体や外底単体、取り外し式インソールは64.06側に寄ります。
- Step2:
- 類注の除外に該当しないか確認します。使い捨てカバーで底が無いもの、中古靴、整形外科用、玩具などはここで除外されます。
- Step3:
- 完成した履物なら、甲と外底の材質を「外表面積が最大の構成材」で判定します。付属品や補強材は原則として面積判定から除外します。
- Step3補足:
- ゴム又はプラスチックには、外側にゴム又はプラスチック層が肉眼で見える織物等も含まれます(色の変化は無視)。このため、コーティング布が甲材質判定に影響することがあります。
- Step4:
- 64.01〜64.05のどれかを決めます。
- 防水性があり、外底と甲がゴム又はプラスチックで、かつ縫製等で接合されていないなら64.01が候補です。
- 甲と外底がゴム又はプラスチックなら64.02が候補です。
- 甲が革なら64.03、甲が繊維なら64.04が候補です。
- それ以外で履物なら64.05が候補です。
- 部分品等なら64.06です。
- よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
- 第64類と第11部(繊維製品):繊維製で外底が付いていない場合は第64類から外れ得ます。
- 64.06(部分品)と「付属品」:靴ひも、バックル等は64.06の部分品に含めないと明記されています。
- 第64類と63.09:中古靴は63.09です。
- 第64類と90.21:整形外科用は90.21です。
- 第64類と第95類:玩具靴やスケート付きは第95類です。
2. 主な項(4桁)とその内容
2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)
原則:第64類は4桁見出しが少ないため、全て列挙します。
| 項番号(4桁) | 見出しの要旨(日本語) | 典型例(製品名) | 重要な分岐条件/除外/注意点 |
|---|---|---|---|
| 6401 | 防水性の履物。外底と甲がゴム又はプラスチックで、底と甲が縫製等で接合されていないもの | 成形一体型のレインブーツ、成形ゴム長靴 | 防水性と接合方法が要件。縫製・リベット・釘・ねじ・差し込み等で接合していると6401から外れる可能性 |
| 6402 | その他の、外底と甲がゴム又はプラスチックの履物 | 樹脂サンダル、ラバーサンダル、ゴム製スリッパ | スポーツ用履物の定義に該当するか、鼻緒等をプラグで留めた形か、足首を覆うかで6桁が分岐 |
| 6403 | 外底がゴム、プラスチック、革、コンポジションレザーのいずれかで、甲が革の履物 | 革靴、革ブーツ、安全靴(甲が革) | 外底が革か否か、足首を覆うか、保護用金属製先しん入りかで分岐 |
| 6404 | 外底がゴム、プラスチック、革、コンポジションレザーのいずれかで、甲が繊維の履物 | キャンバススニーカー、布靴 | 外底がゴム又はプラスチックか、スポーツ用履物に当たるかで分岐 |
| 6405 | その他の履物 | 室内履きで上記に当たらないもの、特殊素材の履物 | 6401〜6404に当たらないことが前提。甲材質が革なら6405.10、繊維なら6405.20 |
| 6406 | 履物の部分品、取り外し可能な中底等、ゲートル等 | アッパー、外底、かかと、インソール、ゲートル | 「部分品」に含めない物(靴ひも等)が明記。アッパーの定義と範囲に注意 |
2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)
- 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
- 第64類の6桁分岐は、主に次の軸で決まります。
- 保護用金属製先しん(いわゆる先芯)入りか(6401.10、6403.40など)
- 足首を覆うか(covering the ankle)
- スポーツ用履物の定義に当たるか(スポーツ用途向けでスパイク等の装着がある、または特定のスポーツ靴類)
- サンダル形状で、上部ストラップ又は鼻緒がプラグで底に留められているか(6402.20)
- 外底が革か否か(6403.51/6403.59と6403.91/6403.99の切り分けに影響)
- 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
- 1組目:6401(防水・成形系)と6402(ゴム/プラ一般)
- どこで分かれるか:
- 6401は「防水性」だけでなく、底と甲が縫製等で接合されていないという構造要件があります。
- 判断に必要な情報:
- 防水性能(設計上の防水性の有無)
- 底と甲の接合方法(縫製、リベット、釘、ねじ、差し込み等の有無)
- 典型的な誤り:
- ゴム長靴という品名だけで6401に決めてしまい、実際は縫製や接着を伴っていて6402側だった、など
- 2組目:6402.20(プラグ止めサンダル)と6402.99(その他)
- どこで分かれるか:
- 甲のストラップ又は鼻緒が、底にプラグで留められている構造かどうかです。
- 判断に必要な情報:
- 側面・底面の写真、構造図、現物サンプル
- 典型的な誤り:
- ビーチサンダルを一律に「その他」としてしまい、6402.20を見落とす
- 3組目:スポーツ用履物(6402.12/6402.19、6403.12/6403.19、6404.11)と非スポーツ
- どこで分かれるか:
- スポーツ用履物は、スポーツ活動用に設計され、スパイク等の装着がある又は装着できる構造、または列挙された特定のスポーツ靴(スケート靴、スキーブーツ、スノーボードブーツ、レスリング靴、ボクシング靴、サイクリングシューズ等)に限定されます。
- 判断に必要な情報:
- 商品仕様書、用途説明、スパイク等の装着部の有無、製品写真
- 典型的な誤り:
- スニーカー全般をスポーツ用と誤認し、スポーツ用履物の定義を満たさないのにスポーツ号へ入れてしまう
- 4組目:6403.51/6403.59(外底が革)と6403.91/6403.99(外底が革以外)
- どこで分かれるか:
- 6403の「その他履物」は外底の材質で枝分かれしています。外底が革なら6403.51/6403.59側、革以外なら6403.91/6403.99側を検討します。
- 判断に必要な情報:
- 外底の材質証明、製品断面や材質試験、外底の構成(ラバー貼りの有無など)
- 典型的な誤り:
- 見た目が革靴でも、外底がラバーなら「外底革」と誤認してしまう
- 5組目:6406(部分品)と他類(例:靴ひも等)
- どこで分かれるか:
- 64.06の「部分品」には含めない物が列挙されており、靴ひも、バックル、装飾、ボタン等は64.06に入れないとされています。
- 判断に必要な情報:
- 部品の用途(履物に不可欠な構成か、装飾・付属か)
- 形状と素材(ひも、金具、飾り等)
- 典型的な誤り:
- 付属品をまとめて「靴部品」として64.06申告してしまう
3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)
3-1. 関連する部注(Section Notes)
- ポイント要約:
- HS2022の条文体系上、第12部(Section XII)は他の部と異なり、独立した部注(Section Notes)へのリンクが置かれていません(目次上、Section XIIの直下に第64類〜第67類が配置されています)。
- 実務での意味(具体例つき):
- 第64類の判断は、部注よりも第64類の類注(Chapter Notes)と各見出し文言が中心になります。
- 例:繊維製で外底が付いていない靴カバーは、第64類の類注で除外され、第11部側に寄る可能性があります。
- “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
- Section XIIの部注ではなく、第64類の類注により他章へ飛びます(次の3-2参照)。
3-2. この類の類注(Chapter Notes)
- ポイント要約:
- 類注1:第64類に入らない物(使い捨てカバーで底無し、外底のない繊維製履物、中古靴、石綿製品、整形外科用、玩具靴やスケート付き等)を列挙しています。
- 類注2:64.06の「部分品」に含めない物(靴ひも、バックル、装飾、ボタン等)を列挙しています。
- 類注3:用語定義として、ゴム又はプラスチックの範囲(外層が肉眼で見える織物等も含む)と、革の定義(第41類の特定見出しに該当する革)を示しています。
- 類注4:甲材質と外底材質の決め方を「外表面積が最大の構成材」で判定すること、付属品や補強材は除くことを定めています。
- 用語定義(定義がある場合):
- ゴム及びプラスチック:外側にゴム又はプラスチック層が肉眼で見える織物などの繊維製品も含み、色の変化は考慮しません。
- 革:第41.07項および第41.12〜41.14項の物品を指す、とされています。
- 甲材質の判定:外表面積が最大の構成材。ただし、足首パッチ、縁取り、装飾、バックル、タブ、鳩目当て等の付属品や補強材は面積判定から除外します。
- 外底材質の判定:地面に接する表面積が最大の材質。ただし、スパイク、金具、保護具等の付属品や補強材は面積判定から除外します。
- 除外規定(除外先の類・項も明記):
- 底がない使い捨てカバー:構成材質により他類へ
- 外底が付いていない繊維製履物:第11部へ
- 中古靴:63.09
- 石綿製品:68.12
- 整形外科用履物等:90.21
- 玩具靴、スケート付き靴、すね当て等:第95類
4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)
この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。
- 影響ポイント1:甲材質と外底材質の決め方で、64.02/64.03/64.04/64.05が入れ替わる
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 甲の外表面積が最大の材質は何か(付属品や補強材を除いて判定)
- 外底の地面接地面積が最大の材質は何か(スパイク等を除いて判定)
- 現場で集める証憑(仕様書、成分表、MSDS、カタログ、写真、工程図など):
- 素材構成表、甲材の材質証明(コーティング有無が分かるもの)、外底材の材質証明
- 全周写真(甲の見える面積比、外底の接地面の確認)
- 誤分類の典型:
- 装飾や補強材(パッチやバックル等)の見た目に引っ張られて甲材質を誤認し、64.03と64.04が逆転する
- 影響ポイント2:ゴム又はプラスチックの範囲定義で、繊維か樹脂かの見え方が変わる
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 織物等の表面にゴム又はプラスチック層が肉眼で見えるか(色の変化は無視)
- 現場で集める証憑:
- コーティング仕様(塗工層の有無、厚み)、メーカーの材料仕様
- 誤分類の典型:
- コーティング布を「繊維」とだけ扱い、実務上は「ゴム又はプラスチック」とみなされる可能性を見落とす
- 影響ポイント3:64.06の「部分品」の範囲で、64.06か他類かが分かれる
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 当該品が履物の構成要素としての部分品か、単なる装飾・付属か
- 64.06の部分品に含めない物の列挙に該当しないか
- 現場で集める証憑:
- 部品表、用途説明、取り付け位置が分かる資料
- 誤分類の典型:
- 靴ひもやバックルを64.06で申告してしまう(類注2で否定)
- 影響ポイント4:スポーツ用履物の定義で、スポーツ号に入る範囲が限定される
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- スパイク等の装着がある又は装着できる設計か、または列挙された特定スポーツ靴か
- 現場で集める証憑:
- 用途説明、競技用仕様、装着部品の有無、写真
- 誤分類の典型:
- ランニングシューズ等を一律にスポーツ用履物と扱う(定義の要件を満たさない場合がある)
5. 分類でよくある間違い(原因→対策)
- 間違い:
- レインブーツは全て6401だと決め打ちする
- なぜ起きる:
- 商品名が「防水」「長靴」だと、構造要件の確認を省略しがちです
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):
- 6401は、防水性に加えて「底と甲が縫製等で接合されていない」要件があります
- 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
- 底と甲の接合方法(縫製、接着、リベット等)の有無を、写真と仕様書で確認する
- 間違い:
- 甲の材質を装飾や補強材で判断してしまう
- なぜ起きる:
- 見た目で革に見えるパーツがあると、甲全体が革と誤認しやすいです
- 正しい考え方:
- 甲材質は外表面積が最大の構成材で判定し、付属品や補強材は除外します
- 予防策:
- 甲の主要部位の材質比率が分かる資料(パーツ表、写真)を用意する
- 間違い:
- コーティング布を必ず「繊維の甲」として扱う
- なぜ起きる:
- ベースが布だと繊維だと思い込みやすいです
- 正しい考え方:
- 外層がゴム又はプラスチックで肉眼可視なら、ゴム又はプラスチックに含む扱いがあります
- 予防策:
- コーティング仕様(表面層の材質と可視性)をメーカーに確認する
- 間違い:
- ビーチサンダルを全て6402.99に入れる
- なぜ起きる:
- サンダルは「その他」と思い込みやすいです
- 正しい考え方:
- ストラップ又は鼻緒がプラグで底に留められている履物という独立した号があります
- 予防策:
- 底面を撮影し、プラグ構造の有無を確認する
- 間違い:
- スニーカーは全て「スポーツ用履物」とする
- なぜ起きる:
- 市場ではスポーツ用途が広く、分類上の定義とズレが出やすいです
- 正しい考え方:
- スポーツ用履物は定義が限定され、スパイク等の装着構造または列挙靴種に限られます
- 予防策:
- 競技用設計か、装着部があるか、列挙靴種かを仕様書で確認する
- 間違い:
- 靴ひもやバックルを64.06の部分品として申告する
- なぜ起きる:
- 「靴に使うもの=靴部品」と誤解しやすいです
- 正しい考え方:
- 64.06の「部分品」に含めない物として、靴ひもやバックル等が明記されています
- 予防策:
- 64.06申告の前に、類注2の除外列挙をチェックする
- 間違い:
- 中古靴を新品と同じ第64類で申告する
- なぜ起きる:
- 取引書類の品名だけでは中古か判断しにくい場合があります
- 正しい考え方:
- 中古の履物は63.09に分類される扱いが示されています
- 予防策:
- 仕入形態(中古・リユース)を社内で確認し、写真や仕入契約書で状態を裏付ける
- 間違い:
- 整形外科用の機能を持つ履物を通常の靴として申告する
- なぜ起きる:
- 見た目が靴でも、医療機器相当の要件がある場合に見落としがちです
- 正しい考え方:
- 整形外科用履物や整形外科用機器等は90.21へ除外されます
- 予防策:
- 医療用途、矯正機能、処方対象か等をメーカー仕様で確認する
6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点
6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係
- HSの付番がPSR選択に直結すること(誤ると原産性判断が崩れる)
- PSRは通常、HSの項(4桁)や号(6桁)単位で定められます。第64類では甲材質の誤認で64.03と64.04が入れ替わると、適用すべきPSRが変わり得ます。
- よくある落とし穴(材料のHS、最終製品HS、工程の評価軸)
- 最終製品のHSを誤ると、材料側のHSやCTC(関税分類変更)判定も連鎖して誤ります。
- 特に履物は材料が多く、上流材(革、繊維、樹脂等)と完成品のHSが別章にまたがるため、BOMと工程の見える化が重要です(日本税関の運用ガイドでも、BOMや工程図等の準備が推奨されています)。
6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)
- 「当該協定が参照するHS版(例:HS2012参照 等)」を明記
- RCEP:附属書3A(品目別規則)はHS2012に基づく旨が明記されています。
- さらにRCEPは、HS2022への移行に合わせたトランスポーズPSR(HS2022への読み替え)を採用し、2023年1月1日から適用する旨が日本の外務省資料で案内されています。
- CPTPP:少なくとも当局の案内では、品目別規則(Annex 3-D)がHS2012で示されている旨が説明されています。
- 日EU EPA:品目別規則(Annex 3-B)の見出しとして、HS分類(2017)と明記されています。
- 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
- 通関実務では輸出入国の申告コードは現行版(日本はHS2022ベースの時期)ですが、協定のPSRがHS2012やHS2017ベースだと、そのままでは条文上の参照が合わないことがあります。
- 実務では、協定当局が公表するトランスポーズPSR、相関表、運用ガイドにより「協定のPSR上のコード」と「申告に使うコード」を整合させます(RCEPはHS2022へのトランスポーズPSRの採用が案内されています)。
- トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
- まず協定が参照するHS版(HS2012/2017など)を確定し、次に当局が提供する対応表やトランスポーズPSRで読み替えます。
- 6桁が同一でも、文言や範囲が微修正される場合があるため、相関表だけでなく当局の注記も確認します。
6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)
- 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
- BOM(材料名、原産国、HS、使用量)、工程フロー、原価資料(RVC計算がある場合)が基本セットです。
- 証明書類・保存要件(一般論)
- 自己申告や第三者証明のいずれでも、後日の検証に備え、BOM、工程、原価、仕入書類等を体系立てて保存する運用が安全です(日本税関のガイドは、BOM、工程図、コストステートメント等の例を挙げています)。
7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)
7-1. 変更点サマリー(必須:表)
| 比較(例:HS2017→HS2022) | 変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更) | 該当コード | 変更の要旨 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|---|
| HS2017→HS2022 | 変更なし(少なくともHS6桁レベル) | 第64類(6401〜6406) | WCOの相関表(改正・新設対象の一覧)に第64類の6桁が掲げられていないため、HS6桁では改正対象なしと読み取れます | 6桁レベルのコード移行対応は原則不要。社内マスターの確認と、国内細分改正の有無を別途確認 |
7-2. 「違うことになった根拠」(必須)
- 参照した根拠資料
- WCOが公表するHS2017とHS2022の相関表(Table I)は、HS2022のうちHS2017と比べて範囲が変更された、または新設された6桁を列挙する趣旨で作成されています。
- この相関表の改正・新設対象に第64類の6桁が現れないことから、第64類は少なくともHS6桁レベルではHS2017→HS2022で変更がないと整理できます。
- 補足
- ここでいう「変更なし」はHS6桁の範囲です。日本の国内コード(9桁)や統計細分、運用上の取扱いは別途改正され得るため、申告前に最新の実行関税率表や税関の案内を確認してください。
8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード
第64類は近年のHS改正では相対的に安定していますが、過去改正で「削除」や「統合」が行われた例があります。以下は主要なものです(いずれもHS6桁レベル)。
| 改正の流れ | 主な追加・削除・再編 | 旧コード→新コード(代表) | 根拠と補足 |
|---|---|---|---|
| HS2002→HS2007 | 低取引量等を理由に一部号が削除 | 6401.91(膝を覆う)削除 → 6401.99等へ整理 | HS2002では6401.91が存在し、相関表で削除が示されています |
| HS2002→HS2007 | 低取引量等を理由に一部号が削除 | 6402.30(保護用金属製先しん入り)削除 → 6402.91/6402.99等へ整理 | HS2002では6402.30が存在し、相関表で削除が示されています |
| HS2002→HS2007 | 低取引量等を理由に一部号が削除 | 6403.30(木製台等の履物)削除 → 6403.91/6403.99等へ整理 | HS2002では6403.30が存在し、相関表で削除が示されています |
| HS2007→HS2012 | 低取引量等を理由に号を統合 | 6406.91(木製)と6406.99(その他)を統合 → 6406.90 | HS2007では6406.91/6406.99が存在し、HS2012以降は6406.90へ統合。相関表に統合理由も記載 |
| HS2012→HS2017→HS2022 | 大きな再編なし(少なくともHS6桁) | 主要コードは継続 | HS2017→HS2022は相関表上で改正対象なし |
9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)
- 事例名(短く):使い捨て靴カバーを第64類で申告
- 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):底のない使い捨てカバーは第64類から除外され、材質で分類すべきという除外規定に抵触
- 起きやすい状況(品名の付け方、セット扱い、用途誤認、加工状態の誤解など):インボイス品名が「shoe cover」「overshoes」等で、構造確認をしない
- 典型的な影響(一般論:修正申告、追加納税、検査強化、遅延など):修正申告、関税差・加算税、検査強化
- 予防策(事前確認、税関相談、書類整備など):底の有無、固定方法の写真添付、材質の確認
- 事例名:繊維製の外底なしスリッパを履物として申告
- 誤りの内容:外底が接合されていない繊維製履物は第64類から除外され得る
- 起きやすい状況:簡易室内履きで外底が実質的に存在しない
- 影響:分類差替え、必要書類の追加要求
- 予防策:外底の有無と取付方法を仕様書・写真で説明
- 事例名:靴ひもを64.06で申告
- 誤りの内容:64.06の部分品に靴ひも等は含めないという規定に抵触
- 起きやすい状況:複数の靴関連部材を一括で「parts of footwear」としてしまう
- 影響:分類更正、税率差、輸入許可の遅延
- 予防策:部材ごとに用途を分解し、類注2の除外リストで照合
- 事例名:整形外科用の矯正靴を通常の靴として申告
- 誤りの内容:整形外科用履物等は90.21に除外される
- 起きやすい状況:外観が一般の靴と似ている
- 影響:分類差替えに伴う申告修正、規制確認が追加
- 予防策:医療用途・矯正機能の有無、医療機器該当性を事前に確認
- 事例名:CITES該当皮革の靴を許可なく輸入
- 誤りの内容:CITES該当貨物は輸出許可・輸入承認等が必要で、税関申告時に提出・確認が必要
- 起きやすい状況:高級皮革(例:爬虫類革)を含むが、素材由来を把握していない
- 影響:通関保留、差止め、追加書類対応
- 予防策:素材の学名・由来をサプライヤーに確認し、必要許可を準備
10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)
- 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
- ワシントン条約(CITES)等の種規制
- CITESの対象となる動植物種の標本や製品は、輸出国の輸出許可に加え、日本側の輸入承認等が必要となり、輸入申告時に税関へ書類提出して確認を受ける必要がある旨が案内されています。
- CITESは野生動植物の国際取引が種の存続を脅かさないようにする国際的枠組みで、対象種は附属書で管理されます。
- 履物での想定例:爬虫類革(ワニ、ヘビ、トカゲ等)の靴やブーツ、装飾部材に該当素材を使用している場合
- 検疫・衛生(SPS等)
- 通常の履物は食品・植物検疫の中心対象ではありませんが、動植物由来素材の取扱いは別制度で問題になり得るため、素材と原産を把握しておくと安全です。
- 安全保障貿易管理(該当する場合)
- 一般的な履物は該当しにくいものの、軍用目的の特殊装備としての位置付けや、他の規制品とセットの場合は別途確認が必要です。
- その他の許認可・届出
- 上記CITESのほか、取引国・用途・表示制度等で要求が出る場合があります。最終的には税関・所管官庁の最新案内で確認してください。
- 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
- 税関(CITES該当品の輸入手続案内)
- 経済産業省(CITESの概要)
- 実務での準備物(一般論):
- 素材の由来情報(学名、種、原産国、加工形態)
- 必要に応じて輸出許可・輸入承認、インボイスと素材明細、製品写真
11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)
- 分類前チェック(製品情報の収集)
- 完成品か部分品か
- 甲材質、外底材質(外表面積での優勢判定に必要な情報)
- 防水性、底と甲の接合方法(64.01候補の確認)
- スポーツ用途設計、スパイク等装着構造(スポーツ用履物の定義確認)
- 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
- 類注の除外(中古、整形外科用、玩具等)に該当しないか
- 64.06の場合、部分品に含めない物(靴ひも等)に当たらないか
- 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
- インボイス品名に材質と用途を反映(例:upper material、outer sole material、protective toe-cap有無)
- 補足資料として写真、仕様書、材質証明を添付できる状態にする
- FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
- 対象協定のPSRが参照するHS版(HS2012/2017等)を確認し、必要ならトランスポーズPSRや相関表で読み替える
- BOM、工程、原価資料の整備(日本税関ガイドが例示する資料を参考)
- 規制チェック(許可/届出/検査)
- CITES該当素材の有無を確認し、該当する場合は輸出許可・輸入承認等を準備
12. 参考資料(出典)
- WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
- WCO HS2022 第64類(Chapter 64)条文(見出し、類注、号注) 参照日 2026-02-25
- WCO HS2022 目次(Section XIIの配置確認) 参照日 2026-02-25
- WCO HS2017↔HS2022 相関表(Correlation Tables 2017-2022) 参照日 2026-02-25
- WCO HS2012 第64類(2007→2012での6406再編確認) 参照日 2026-02-25
- WCO HS2007 第64類(2002→2007での見出し再編確認) 参照日 2026-02-25
- WCO HS2002 第64類(旧号の存在確認) 参照日 2026-02-25
- 日本税関・公的機関のガイド
- 日本税関 相関表(HS2012↔HS2007)6406の統合根拠 参照日 2026-02-25
- 日本税関 相関表(HS2007↔HS2002)6401.91、6402.30、6403.30の削除根拠 参照日 2026-02-25
- 日本税関 CITES(ワシントン条約)該当品の輸入制限案内 参照日 2026-02-25
- 経済産業省 CITES概要 参照日 2026-02-25
- FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
- 日本税関 RCEP 附属書3A(品目別規則)HS2012ベースの明記 参照日 2026-02-25
- 外務省 RCEP(HS2022へのトランスポーズPSRの適用開始案内) 参照日 2026-02-25
- 豪州当局 CPTPP 品目別規則がHS2012で示される旨の案内 参照日 2026-02-25
- 外務省 日EU EPA 附属書3B(品目別規則)HS分類2017の明記 参照日 2026-02-25
- 日本税関 自己申告等の実務ガイド(BOM、工程図、原価資料等の例示) 参照日 2026-02-25
付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)
- どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
- 相談前に揃えると有効な情報
- 製品写真(全体、底面、断面、素材アップ)
- 仕様書(甲材質、外底材質、構造、用途、防水性、先芯の有無)
- 部材表(各パーツの材質と面積比が分かるもの)
- サンプルが用意できる場合は、現物提示も検討
- 日本税関の公開情報の使い方
- 品目分類の「事前教示回答(品目分類)」は、公開可能な回答を検索できる旨が案内されています。類似品の税番と判断ポイントの把握に有効です。
- 事前教示制度は、輸入予定貨物の所属区分や関税率等について税関に照会し回答を得られる制度として案内されています。重要案件では活用価値が高いです。
免責事項
本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。









