HS2022 第28類:無機化学品及び貴金属、希土類金属、放射性元素又は同位元素の無機又は有機の化合物(Inorganic chemicals; organic or inorganic compounds of precious metals, of rare-earth metals, of radioactive elements or of isotopes)

  • 用語の統一:**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**とします。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 塩素、アルゴン等の化学的に単一の元素(例:塩素ガス 2801、アルゴン 2804)
    • 無機酸(例:塩酸 2806、硫酸 2807、硝酸 2808)
    • 無機塩基・酸化物・水酸化物(例:アンモニア 2814、苛性ソーダ 2815、アルミナ/水酸化アルミ 2818、酸化チタン 2823)
    • 各種の無機塩(硫酸塩・硝酸塩・リン酸塩 等)(例:硫酸塩 2833、硝酸塩 2834、リン酸塩 2835)
    • 過酸化水素(2847)
    • 貴金属化合物・放射性元素/同位体関連(2843、2844、2845、2846 など)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 混合物・調製品(例:用途に合わせて配合した洗浄剤・触媒配合品など)→第38類(特に 3824)へ行きやすい(「化学的に単一」かが鍵)
    • 水以外の溶媒に溶かした溶液で、輸送安全のための通常形態を超え「特定用途に適する」もの →第38類(3824)へ行きやすい(例:アンモニアのアルコール溶液等)
    • 肥料としての性格が強いもの(第31類の注に該当)→第31類(肥料)
    • ルミノホア用無機物(蛍光体用途など)→ 3206、ガラスフリット→3207
    • 貴金属そのもの・貴金属合金、貴石等 →第71類
    • **金属(純金属・合金等)**として扱うべきもの →第15部(Section XV)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「化学的に単一(separate chemically defined)」か/混合物・調製品か(SDS・CAS・製法で確認)
    2. 溶液の扱い:水溶液は原則OK、他溶媒は条件付き(安全/輸送上の通常形態か、特定用途化していないか)
    3. 放射性元素・同位体:2844/2845/2843/2846/2852は「該当すれば他に行かない」原則(部注)+HS2022で細分が増えた
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • **規制対象(毒劇物、化審法、輸出管理等)**の化学品:HS誤りが、許認可・届出・輸出許可要否の判断ミスに直結しやすい
    • 放射性同位体(2844/2845):HS2022で細分化され、旧コード運用のままだと誤付番が起きやすい

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し・注で決める):第28類は「化学的に単一の元素・化合物」を中心に、注で範囲(溶液、安定剤、除外)を決めています。まず**類注(Chapter Notes)**で「この類に入る形態か/除外か」を確定します。
    • GIR6(号=6桁の比較):同じ項でも「濃縮同位体」「特定の放射性元素」「純度(例:Si 99.99%)」など、号の条件で割れます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • CAS番号・化学式・組成(純度、濃度)
    • 状態(固体/液体/水溶液/他溶媒溶液/コロイド)
    • 添加剤の目的(保存/輸送のための安定剤なのか、用途特化の配合なのか)
    • 放射能(比放射能、同位体の種類)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象は「無機化学品」か?
    • 有機化合物主体なら第29類(ただし第28類には例外的に“有機物”が入る範囲もある:2843〜2846、2852等)
  • Step2:「化学的に単一の元素/化合物」か?
    • 製造工程由来の不純物は許容されますが、特定用途に適するよう意図的に残した/加えた場合は「不純物」扱いにならない可能性があります(=調製品寄り)
  • Step3:形態が類注1の範囲内か?
    • 水溶液は原則OK
    • 他溶媒溶液は「安全/輸送のための通常形態」等の条件付き(用途特化なら除外)
  • Step4:除外規定に当たらないか?
    • 第31類(肥料)・第32類(蛍光体/ガラスフリット)・第38類(調製品)・第71類(貴金属等)・第15部(金属等)などへ飛ぶパターンを点検
  • Step5:該当項(4桁)→該当号(6桁)へ
    • 放射性・同位体は部注の「他に行かない」原則が強いので先に確認
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第28類 vs 第38類:化学的に単一(+許容される溶液/添加)か、用途特化の調製品か
    • 第28類 vs 第31類:肥料の注に該当するか(例:カルシウムシアナミド等は第31類へ除外され得る)
    • 第28類 vs 第15部(金属・合金):金属材料としての性格か、化合物(例:りん銅の条件)か
    • 第28類 vs 第3818:電子工業用にドープ処理した元素でも、形状がウェハ等なら3818

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第28類は項数が多いため、実務重要(頻出・誤分類多・規制/原産地に効く)を中心に列挙し、残りは「その他」でまとめます。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
2801ハロゲン元素(塩素等)塩素ガス、ヨウ素危険物・規制物質になりやすい。単体元素としての形態確認。
2804水素・レアガス・他の非金属水素、アルゴン、窒素、酸素、シリコンシリコンは純度で号が分岐(例:99.99%)
2806塩化水素(塩酸)等塩酸、クロロスルホン酸水溶液/濃度、用途特化の調製かを確認。
2807硫酸・発煙硫酸硫酸、オレウム濃度・形態(発煙)で税率/危険物対応が変わることがある(国内コードでは細分し得る)。
2808硝酸等硝酸危険性・規制(毒劇等)確認が実務上重要。
2811その他の無機酸・非金属の酸化物フッ化水素酸、二酸化炭素等HS2017以降、シアン化水素が号として独立
2812非金属のハロゲン化物等ホスゲン(※溶媒形態注意)等2812.10が細分化(2812.11〜2812.19)
2814アンモニア無水アンモニア、アンモニア水無水/水溶液で号が分岐。他溶媒溶液は除外され得る例あり。
2815水酸化ナトリウム等苛性ソーダ固形、苛性ソーダ液固形/水溶液で号分岐
2818アルミナ・水酸化アルミ等アルミナ粉末、水酸化アルミコロイド溶液は第38類への例あり
2823酸化チタン顔料用TiO₂顔料用途(第32類)との境界に注意(ただし酸化チタン自体は28類側)。
2827塩化物(塩化アンモニウム等)塩化アンモニウム、塩化カルシウム金属塩としての整理が必要(塩/酸/酸化物の取り違えが多い)。
2833硫酸塩・ミョウバン等硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム第31類(肥料)用途・形態との関係に注意。
2834硝酸塩・亜硝酸塩硝酸カリウム、硝酸塩類危険性・規制確認が重要。
2835リン酸塩・ポリリン酸塩リン酸二ナトリウム、トリポリリン酸Na等洗剤用途等で調製品化(第38類)しやすい。
2840ホウ酸塩等ホウ砂、過ホウ酸塩2847(過酸化水素)など安定化の考え方とセットで理解。
2843貴金属のコロイド・化合物硝酸銀、金化合物部注で「該当すれば他に行かない」(Section VI Note 1(B))
2844放射性元素・放射性同位体等トリチウム等、放射性残留物HS2022で2844.41〜2844.44に細分
28452844以外の同位体等重水、B-10濃縮、Li-6濃縮、He-3等HS2022で2845.20〜2845.40が新設
2847過酸化水素過酸化水素水安定剤添加はOKの範囲あり(例:ホウ酸で安定化)
2852水銀の化合物塩化水銀等**2852.10(化学的に単一)**の定義あり
2853りん化物等・その他無機化合物りん化物、蒸留水/導電率水、液体空気等りん銅(P>15%)が含まれる(注)
その他上記以外の無機酸、酸化物、各種塩など多数例:クロム酸塩、シアン化物、ケイ酸塩…「金属塩/過酸塩のみ」等の類注(28.26〜28.42)を意識

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 純度基準(例:シリコンの重量比 99.99% 以上か)
    • 溶液区分(無水/水溶液、溶媒が水以外の場合の扱い)
    • 同位体の種類・濃縮の有無(HS2022で細分が増加)
    • 「化学的に単一」か否か(2852.10の定義など)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 2804.61(Si 99.99%以上) vs 2804.69(その他のSi)
      • どこで分かれるか:シリコンの重量百分率(分析値)
      • 判断に必要な情報:分析成績書(CoA)、純度規格、SDS
      • 典型的な誤り:電子材料用途=高純度と決めつけて 2804.61 にしてしまう(実測が必要)
    2. 2844(放射性元素/同位体等)内の細分(HS2022)
      • どこで分かれるか:2844.41(トリチウム)、2844.42(列挙元素群)、2844.43(その他)、2844.44(放射性残留物)
      • 判断に必要な情報:同位体名、核種情報、比放射能、輸送書類(クラス7等)、供給者証明
      • 典型的な誤り:旧HS(2017)の「2844.40」感覚で括ってしまう(HS2022では細分)
    3. 2845(2844以外の同位体)内の細分(HS2022)
      • どこで分かれるか:2845.10(重水)に加えて、2845.20(B-10濃縮)、2845.30(Li-6濃縮)、2845.40(He-3)が新設
      • 判断に必要な情報:同位体組成、濃縮率、用途(ただし用途ではなく「物」基準)
      • 典型的な誤り:重水以外を「2845.90その他」に入れてしまう(HS2022では分ける)
    4. 2852.10(化学的に単一の水銀化合物) vs 2852.90(その他)
      • どこで分かれるか:類注・章注の要件を満たす「化学的に単一」かどうか(号注で定義)
      • 判断に必要な情報:化学式、CAS、純度、混合/製剤の有無
      • 典型的な誤り:水銀を含む“混合物”を 2852.10 に入れてしまう(要件未満)
    5. 2853.10(シアノゲン塩化物) vs 2853.90(その他)
      • どこで分かれるか:特定品名か否か
      • 判断に必要な情報:化学名、CAS、SDS
      • 典型的な誤り:類似のシアン系化合物(2837/2838等)と混同

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • **部注(Section VI Note 1)**は、放射性・貴金属化合物など一部見出しに「排他性」を与えます。
      • 2844・2845に該当する物品は、他のどの見出しにも分類しない
      • 2843・2846・2852も同様に(2844/2845に従属)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例えば「放射性残留物」や「特定の放射性同位体」を含む混合物でも、2844の定義に合えば2844優先という発想になります(まず2844/2845を疑う)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 逆に、2844/2845に該当しない(または章注の閾値等を満たさない)場合、通常の無機化学品として28類内の別項、または調製品として38類へ行く検討に戻ります。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:この類は原則として「化学的に単一の元素・化合物」+(水溶液、一定条件の他溶媒溶液、必要な安定剤・固結防止剤、識別/安全のための着色・防じん剤)を含みます。
    • 注3:多くの除外(第31類、第32類、第38類、第71類、第15部等)が列挙されています。
    • 注5:2826〜2842は基本的に金属塩・アンモニウム塩・過酸塩のみ。二重塩・錯塩は原則 2842。
    • 注6:2844の対象と、放射能の閾値(比放射能 74 Bq/g 超)等を規定。
    • 注7:2853に「りん銅(P>15%)」を含める(合金側に行かせないための実務上のくぎ刺し)。
    • 注8:電子工業用ドープ処理した元素は、棒/円柱等なら28類、ウェハ等に切れば 3818。
    • 号注:2852.10「化学的に単一」の定義を置く。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「不純物」:製造工程(精製含む)に直接起因する未反応原料・原料由来不純物・試薬・副産物等。ただし用途特化のため意図的に残した/加えた場合は不純物とみなされないことがある、という整理が重要です。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 水以外の溶媒溶液で、用途特化に当たるもの → 3824 等(例示あり)
    • 肥料関係の注に当たるもの → 第31類
    • ルミノホア用無機物 → 3206、ガラスフリット → 3207

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:溶媒(特に水以外)・コロイドで 38類に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 溶媒の種類(水/アルコール/ベンゼン等)
      • その溶解が「輸送安全等の通常形態」か、用途特化か
      • コロイド/分散体かどうか(粒径・分散媒)
    • 現場で集める証憑:
      • SDS(溶媒・濃度・用途)
      • 技術資料(製品が“溶液として販売する必然性”の説明)
      • 取引形態(容器、濃度、危険物対応)
    • 誤分類の典型:
      • アンモニアのアルコール溶液や、塩化カルボニル(ホスゲン)のベンゼン溶液など、28類のつもりで申告してしまう(実務例として 3824 側に整理され得る)
  • 影響ポイント2:安定剤添加はOKでも、“用途を作る配合”はNG
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 添加剤の目的(保存/輸送のためか、反応性付与・触媒化など用途特化か)
    • 現場で集める証憑:
      • 配合表、製造工程図、SDS、品質規格書
    • 誤分類の典型:
      • ホウ酸で安定化した過酸化水素は28類(2847)に整理され得る一方、過酸化ナトリウムを触媒と混合する等、用途特化の混合物は 3824 側に寄る、という考え方を見落とす
  • 影響ポイント3:放射性・同位体は“先に疑う”+HS2022細分に注意
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 同位体の種類(トリチウム等)、濃縮の有無(B-10、Li-6、He-3等)
    • 現場で集める証憑:
      • 同位体証明、分析結果、輸送書類、法規制関連書類(該当する場合)
    • 誤分類の典型:
      • HS2017の「2844.40」運用のまま、HS2022でも雑に「その他」で申告してしまう

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:“純度が高い=化学的に単一”と決めつける
    • なぜ起きる:化学品は「高純度=単一」と思いがちだが、用途特化で意図的に添加/残留させている場合がある
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):第28類注1の枠は「単一」+限定された添加に限る。不純物の考え方も「工程由来」に限定される
    • 予防策:
      • SDSの「成分」「安定剤」「用途」を確認
      • 仕入先へ質問例:「添加剤は“保存/輸送”目的ですか?用途を作る配合ですか?」
  2. 間違い:水以外の溶媒に溶かした溶液を、そのまま28類に入れる
    • なぜ起きる:水溶液OKの感覚が他溶媒にも拡張されがち
    • 正しい考え方:他溶媒は条件付きで、用途特化なら除外され得る(例示あり)
    • 予防策:
      • 「なぜその溶媒か」を書面化(輸送安全上の通常形態か)
      • 取引仕様(濃度・容器・用途)を保存
  3. 間違い:コロイド溶液(分散体)を“溶液”として28類に入れる
    • なぜ起きる:「溶けている=溶液」と誤認
    • 正しい考え方:コロイド状ディスパージョンは 3824 側に整理され得る例が示されている
    • 予防策:
      • 粒径、分散状態(懸濁/コロイド)を技術資料で確認
      • SDSの形態欄(分散液/懸濁液/コロイド)を確認
  4. 間違い:肥料用途の塩類を、無条件で28類の塩に入れる
    • なぜ起きる:化学式だけで判断しがち
    • 正しい考え方:第31類の注に該当する場合は除外され得る
    • 予防策:
      • 用途・表示・包装形態(肥料としての流通か)を確認
      • 製品ラベル/規格書を保存
  5. 間違い:電子工業用ドープ元素を形状無視で28類に入れる
    • なぜ起きる:材料名(Si)だけで判断
    • 正しい考え方:棒/円柱等なら28類、ウェハ/ディスク状なら3818
    • 予防策:
      • 写真・図面で形状を証憑化
      • 「加工工程(切断/研磨)」有無を確認
  6. 間違い:放射性関連を“その他の化合物”として28類一般品に入れる
    • なぜ起きる:危険物/規制の観点とHSの排他性(部注)を分けて考えられていない
    • 正しい考え方:2844/2845は該当すれば他へ行かない(部注)+HS2022で細分が増えた
    • 予防策:
      • 同位体・比放射能の証明を必須資料化
      • HS版(2017/2022)を必ず明記して社内共有
  7. 間違い:りん銅を金属合金側(第74類等)で処理してしまう
    • なぜ起きる:取引現場では「合金材料」と呼ばれるため
    • 正しい考え方:注で 2853 に含める条件が明示されている(P>15%)
    • 予防策:
      • 成分証明(P%)を入手
      • 材料規格(JIS等)との整合を確認
  8. 間違い:6桁の純度・濃縮条件を確認せず“用途”で決める
    • なぜ起きる:「電子材料だから高純度/濃縮」と推定で処理
    • 正しい考え方:28類は用途よりも化学的性状・組成が中心(例:Si 99.99%等)
    • 予防策:
      • CoAの添付をルール化
      • 仕入先へ質問例:「保証純度は?測定方法は?同位体組成は?」

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。化学品は特に、材料(原料)も化学品であることが多く、最終品HSを誤ると「CTH/CTSH」や「RVC」の判定設計が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 原料は28類だが、最終品が38類(調製品)に飛ぶのに気づかず、PSRを誤る
    • 同位体・放射性の細分を誤り、PSR表の該当行を取り違える(HS2022で細分増)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに、PSR表が参照するHS版(HS2012参照 等)が異なる場合があります。必ず協定付属書(PSR表の凡例)で確認してください。
  • HS2022とズレる場合の注意:
    • 旧版のサブヘディングが、HS2022で分割/統合されている可能性があります(例:2844、2845の細分化)
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定の参照HS版でPSRを読み、必要に応じて相関表でHS2022コードへマッピングして社内管理する
    • 申告用HS(通関)と、原産性判定用のHS版が違う場合は、両方を記録

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(化学品で特に重要):
    • 材料表(BOM):原料名、CAS、純度、濃度、形態(溶液/粉末)
    • 工程:混合・溶解・反応・精製の有無(「化学的に単一」/「調製品」判断にも直結)
    • 非原産材料のHS(原料側)
    • RVC計算の前提(必要な場合)
  • 証明書類・保存(一般論):
    • CoA、SDS、工程図、購買記録、原産地証明関連書類を保存(協定ごとの保存年限は要確認)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割(細分新設)2844.40 → 2844.41〜2844.442844.40(その他の放射性元素・同位体等)を細分し、特定同位体(例:トリチウム等)・残留物を分ける旧「2844.40」運用のままだと誤付番。輸出管理・統計・規制対応の突合がずれる
HS2017→HS2022分割(細分新設)2845.90 → 2845.20〜2845.40(+2845.90)2845.90(その他の同位体等)から、B-10濃縮、Li-6濃縮、He-3等を独立同位体製品の分類精度が要求される。証明書類(同位体組成)の重要性が増す

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料に基づく整理:
    • WCOの相関表(HS2022→HS2017)では、**2844.40の細分(2844.41〜2844.44)および2845.90の細分(2845.20〜2845.40)**が明示され、いずれも「特定同位体等のモニタリング/管理のため」といった趣旨で説明されています。
    • HS2022の第28類条文でも、2844に2844.41〜2844.44、2845に2845.20〜2845.40が実際に収載されています。
  • 上記以外の第28類の主要部分については、相関表上の変更列挙が限定的であり、実務上は「放射性・同位体」周辺が主な改正点になります(ただし、最終確認は必ず最新版条文で行ってください)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(第28類の実務影響が大きいもの中心)
版の変化主な追加・削除・再編(要旨)旧コード→新コード(代表)根拠の例
HS2007→HS2012水銀化合物(2852)を「化学的に単一」かで細分し、見出し範囲も拡張2852.00 → 2852.10 / 2852.90相関表(2012→2007)に記載
HS2012→HS2017シアン化水素を独立サブヘディング化(旧)2811.19の一部 → 2811.12相関表(2017→2012)に記載
HS2012→HS20172812.10(塩化物等)を複数サブヘディングへ細分(2812.11〜2812.19)2812.10 → 2812.11〜2812.19相関表(2017→2012)に記載
HS2012→HS20172848(りん化物)を削除し、2853へ取り込み。2853は 2853.10/2853.90へ細分2848.00 → 2853(範囲拡張)/ 2853.00 → 2853.10/2853.90相関表(2017→2012)に記載
HS2017→HS20222844.40を細分(2844.41〜2844.44)2844.40 → 2844.41〜2844.44相関表(2022→2017)
HS2017→HS20222845.90を細分(2845.20〜2845.40)2845.90 → 2845.20〜2845.40(+2845.90)相関表(2022→2017)

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“安定化”のつもりが“用途特化配合”扱い
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):注1の許容範囲(安定剤等)を超え、実質的に調製品(38類)とみなされ得る
    • 起きやすい状況:触媒・反応促進剤・界面活性剤等を加えて「使える形」にして販売
    • 典型的な影響:修正申告、品目分類の差し戻し、追加資料要求
    • 予防策:配合目的を「保存/輸送」か「用途」かで整理し、SDS・配合表を準備
  • 事例名:他溶媒溶液を“単一化学品”として申告
    • 誤りの内容:水以外の溶媒溶液で、注1(c)の条件を満たさないのに28類で申告
    • 起きやすい状況:危険物として溶媒希釈して輸送しているケース
    • 典型的な影響:分類変更(3824等)、危険物/規制の再判定、遅延
    • 予防策:「通常・必要な溶解」根拠(輸送要件、危険性評価)を用意
  • 事例名:ドープSiウェハを28類のSiで申告
    • 誤りの内容:注8に反し、ウェハ状を28類に入れる(本来は3818)
    • 起きやすい状況:材料部門が「Si原料」として処理
    • 典型的な影響:分類修正、関税・統計の修正、審査強化
    • 予防策:形状写真・加工工程・用途をセットで事前教示相談
  • 事例名:放射性同位体を旧HS感覚で“その他”処理
    • 誤りの内容:HS2022で細分された2844/2845を旧コード(2017)の括りで処理
    • 起きやすい状況:社内マスターがHS2017のまま、更新未実施
    • 典型的な影響:輸出管理チェックの漏れ/過剰、統計不整合、税関照会
    • 予防策:HS版を明記し、同位体証明と照合して更新

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、第28類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 本類は食品検疫よりも、化学物質規制・危険物・輸出管理が中心になりがちです(品目により例外あり)。
  • その他の許認可・届出(化学品で頻出)
    • 毒物及び劇物取締法(毒劇物):対象物質を製造・輸入・販売等する場合、業態に応じた規制があり得ます(登録等)。
    • 化審法(化学物質の審査及び製造等の規制):製造・輸入事業者の届出等の枠組みがあり、混合物の場合の取扱い(一定割合など)に言及するガイダンスもあります。
    • 安全保障貿易管理(輸出管理)
      • リスト規制品だけでなく、用途・需要者等により許可が必要となるキャッチオール規制の枠組みが示されています。
      • 放射性同位体や特定化学品は輸出管理上も要注意(該当の有無は別途スペック確認)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 毒劇物:厚生労働省(毒物及び劇物取締法関連)
    • 化審法:経済産業省(化審法ポータル/届出手続)
    • 輸出管理:経済産業省(安全保障貿易管理、キャッチオール)
  • 実務での準備物(一般論):
    • SDS、CoA、CAS、化学式、濃度、用途、写真(形状)、工程資料、(該当時)同位体証明・放射能情報
    • 税関照会に備えた説明資料(「単一化学品である根拠」「溶媒形態の必然性」など)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 化学名(IUPAC/慣用名)、CAS、化学式、純度/濃度、SDS(成分表)
    • 形態(固体/水溶液/他溶媒溶液/コロイド/ペースト)
    • 添加剤の有無と目的(保存/輸送か、用途付与か)
    • 放射性/同位体:核種・濃縮率・比放射能(該当時)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第28類注1(溶液・添加の許容範囲)を満たすか
    • 第31類/第38類へ飛ぶ要素(肥料性・調製品化・他溶媒/コロイド)を再点検
    • 放射性関連は部注の排他性を再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名は「一般名」だけでなく濃度・形態を付す(例:Sodium hydroxide solution 48%)
    • CoA・SDSの添付/即時提示準備
    • HS版(HS2022)での6桁確定(特に2844/2845)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 最終品HSと、協定参照HS版の整合
    • 原料HS・工程(混合/反応/精製)の説明可能性
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 毒劇物該当性、化審法の届出要否、輸出管理(リスト/キャッチオール)を並行で確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS2022 第28類(Chapter 28) (参照日:2026-02-19)
    • WCO HS2022 Section VI Notes (参照日:2026-02-19)
    • WCO Table I(HS2022→HS2017 相関表) (参照日:2026-02-19)
    • WCO HS2017 第28類(Chapter 28) (参照日:2026-02-19)
    • WCO HS2012 第28類(Chapter 28) (参照日:2026-02-19)
    • WCO HS2007 第28類(Chapter 28) (参照日:2026-02-19)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:関税率表の解説(第28類) (参照日:2026-02-19)
    • 厚生労働省:毒物及び劇物取締法(規制概要) (参照日:2026-02-19)
    • 厚生労働省(地方厚生局):毒物・劇物の輸入(販売/授与目的等) (参照日:2026-02-19)
    • 経済産業省:化審法ポータル (参照日:2026-02-19)
    • 経済産業省:化審法の輸入数量届出ガイダンス (参照日:2026-02-19)
    • 経済産業省:キャッチオール規制 (参照日:2026-02-19)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理の概要資料 (参照日:2026-02-19)

※Web参照は「参照日(YYYY-MM-DD)」も併記

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第27類:鉱物性燃料、鉱物油及びこれらの蒸留製品;瀝青質物質;鉱物性ろう(Mineral fuels, mineral oils and products of their distillation; bituminous substances; mineral waxes)

用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 石炭(一般炭・無煙炭など)・石炭ブリケット(2701)
    • 原油(2709)
    • ガソリン/灯油/軽油/重油/潤滑油などの石油由来の油(ただし「粗以外」)(2710)
    • **LPG・天然ガス(LNG含む)**などの石油ガス・その他のガス状炭化水素(2711)
    • **パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム(ワセリン)**等の鉱物性ろう(2712)
    • 天然アスファルト/ビチューメン、タールサンド等(2714、2715)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 分離した化学的に単一の有機化合物(例:ベンゼン単体等)→原則第29類(ただし純メタン・純プロパンは2711)
    • 医薬品第30類(3003/3004)
    • 混合不飽和炭化水素で、規定の品目に該当するもの → 33.01/33.02/38.05へ(注の除外)
    • 液状の合成ポリオレフィンで、規定の蒸留条件に該当するもの → 第39類(注2の除外)
    • 石油を“主成分”としない化学調製品(燃料添加剤・溶剤配合品など)→第38類(例:3811等になりやすい)※個別判定
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 原油(2709)か、精製・調製された油(2710)か(「粗」かどうか)
    2. 2710の中で、**“石油油が重量70%以上で主成分”**か/**廃油(waste oils)**か
    3. 石炭(2701)で、無煙炭/瀝青炭/その他を決めるための揮発分・発熱量(試験成績が要)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 燃料系(揮発油・軽油等):日本では備蓄法・品確法の手続や、税関での確認・書類提出が絡み、分類のズレが手続遅延に直結しやすいです(後述)。
    • 廃油(2710のwaste oils):商流上「再生油」や「使用済み油」など呼称が揺れやすく、**“廃棄物/廃油扱い”**の有無で提出資料・規制確認が増えます(後述)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し+注で決める)が中心です。第27類は、品名よりも注(Notes)の定義・除外が実務の分岐点になりやすいです(例:2710の「waste oils」定義、注2の“石油油”の範囲)。
    • **GIR6(6桁の分岐)**では、**試験値(蒸留曲線・揮発分・発熱量・含有割合)**がそのまま分岐条件になっています。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
    • 第27類は「燃料」「油」「ガス」など商業名が強いですが、HSはしばしば**“どう作られたか(石油/石炭タール/ビチューメン由来)”や、“成分・蒸留特性”**で分かれます。
    • 典型例:
      • 同じ「溶剤」でも、石炭タール蒸留由来で芳香族優勢なら2707寄り、石油油ベースで2710寄り、さらに化学調製なら第38類寄り…という具合に、由来と組成が重要です。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:それは「鉱物性燃料・鉱物油・蒸留製品・瀝青質物質・鉱物性ろう・電気エネルギー」か?
    • YES → Step2へ
    • NO → 他類(例:第29類・第38類・第39類など)を検討
  • Step2:形状・性状で大分類
    • 固体燃料(石炭・褐炭・泥炭・コークス等)→ 2701〜2704中心
    • ガス(石油ガス・天然ガス等)→ 2711中心
    • 液体油(原油/精製油/調製品/廃油)→ 2709 or 2710中心
    • タール・ピッチ・ビチューメン・混合物→ 2706〜2708、2713〜2715
  • Step3:注(Notes)で“落とし穴”を潰す
    • 分離した単一有機化合物(第29類)ではないか
    • 2710の「石油油」定義(注2)に入るか/合成ポリオレフィン除外に当たらないか
    • 2710の「waste oils」(注3)に当たるか
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第27類(2710) vs 第38類(調製品:添加剤/溶剤/ブレンド):石油油が重量70%以上かつ主成分かどうかが大きい分岐になりやすいです。
    • 第27類(2710) vs 第39類(合成ポリオレフィン):注2の除外条件(蒸留性状)に当たると第39類へ飛びます。
    • 2707(石炭タール蒸留油) vs 2710(石油油):芳香族/非芳香族の優勢、由来、蒸留特性が鍵です。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • この類(第27類)の4桁見出しは多すぎないため、全列挙します(HS2022条文ベース)。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
2701石炭・石炭から製造した固形燃料一般炭、無煙炭、石炭ブリケット無煙炭/瀝青炭の判定に揮発分・発熱量(6桁で厳密)
2702褐炭(ジェット除く)褐炭、成型褐炭ジェットは除外(他章)
2703泥炭泥炭、泥炭リター園芸用途でも“泥炭”自体はここ
2704コークス、半成コークス、レトルトカーボンコークス、半成コークス原料(石炭/褐炭/泥炭)問わず該当
2705石炭ガス等(石油ガス等を除く)発生炉ガス、水性ガス、石炭ガス**2711(石油ガス・その他ガス状炭化水素)**との境界
2706石炭/褐炭/泥炭由来のタール等石炭タール、再構成タール2707(高温タール蒸留油)との区別
2707高温石炭タールの蒸留油等(芳香族が優勢)ベンゼン/トルエン留分、クレオソート油芳香族優勢がポイント。特定物質は50wt%超条件(6桁注)
2708ピッチ、ピッチコークスコールタールピッチ、ピッチコークス2713(石油コークス等)と取り違え注意
2709原油(石油油・瀝青鉱物油の“粗”)原油、オイルサンド由来の粗油「粗」かどうか(精製・調製していないか)
2710石油油等(粗以外)、70wt%以上で主成分の調製品、廃油ガソリン、灯油、軽油、潤滑油、使用済み油70wt%主成分、およびwaste oils定義が最重要
2711石油ガス・その他のガス状炭化水素LNG/LPG、プロパン、ブタン、天然ガス液化か気体か、天然ガスかLPGか等で分岐
2712ペトロラタム、パラフィンワックス等の鉱物性ろうワセリン、パラフィンワックス第34類の「調製ワックス」等との境界に注意
2713石油コークス、石油ビチューメン、残留物石油コークス、アスファルト(石油ビチューメン)2708(ピッチ)/2714(天然)/2715(混合物)と区別
2714天然アスファルト/ビチューメン、タールサンド等天然アスファルト、タールサンド2713(石油由来ビチューメン)との“天然/石油由来”
2715ビチューメン混合物(舗装材等)アスファルト混合物(路盤材)「混合物・調製品」としての性格が強い
2716電気エネルギー電力(国際的にはここ)国・制度で取扱いが異なることがあるため実務要確認

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
    第27類は、6桁レベルで次のような**“試験・分析ドリブン”**な分岐が多いです。
    • 石炭(2701):揮発分(乾燥・無鉱物ベース)や発熱量(湿潤・無鉱物ベース)
    • 芳香族留分(2707):特定物質(ベンゼン等)50wt%超、蒸留条件(例:250℃までの留出割合)
    • 石油油(2710)
      • 「軽質油」扱いの定義(210℃で90vol%留出)
      • 「バイオディーゼル」含有の定義(脂肪酸モノアルキルエステル)
      • 「廃油」定義(使用済み、スラッジ、油水エマルジョン等)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 2707(石炭タール蒸留油) vs 2710(石油油・調製品/廃油)
      • どこで分かれるか:
        • 2707は芳香族成分が非芳香族より重い(“芳香族優勢”)タイプの蒸留油が中心です。
        • 2710は「石油油(注2で定義)を主成分として含む」油・調製品・廃油が中心です。
      • 判断に必要な情報:原料由来(石炭タール由来か)、成分分析(芳香族/非芳香族比)、SDS、蒸留性状。
      • 典型的な誤り:商品名だけで「溶剤=2710」としてしまう(実際は2707や第38類の調製溶剤の場合)。
    2. 2710.12(“軽質油”) vs 2710.19(その他)
      • どこで分かれるか:2710.12の「軽質油・調製品」は210℃で90vol%以上留出が基準です(ISO 3405)。
      • 判断に必要な情報:蒸留試験(ISO 3405相当)、留出曲線、試験成績書。
      • 典型的な誤り:「ガソリンっぽい」外観で2710.12に寄せる(試験値が不足)。
    3. 2710.20(バイオディーゼル含有・70wt%以上の石油油系) vs 2710.12/2710.19
      • どこで分かれるか:バイオディーゼルは注で定義された**脂肪酸のモノアルキルエステル(燃料用)**が対象です。
      • 判断に必要な情報:FAME含有の有無・割合、原料(動植物/微生物由来)、SDS/分析(GC等)。
      • 典型的な誤り:Bxx燃料(例:B5/B20)を、単に2710.19で申告してしまう。
    4. 2710(製品油) vs 2710(waste oils:廃油)
      • どこで分かれるか:「waste oils」は注で、主に石油油からなる廃棄物で、使用済み潤滑油やタンクスラッジ等が例示されています。
      • 判断に必要な情報:使用履歴、汚染・添加剤、タンク洗浄由来か、エマルジョンか、売買契約(再利用目的でも“廃”扱いになることがある)。
      • 典型的な誤り:再生目的だからといって“製品”扱いで2710.19等にしてしまう。
    5. 2701.11(無煙炭) vs 2701.12(瀝青炭) vs 2701.19(その他)
      • どこで分かれるか:
        • 無煙炭:揮発分が14%以下(乾燥・無鉱物ベース)
        • 瀝青炭:揮発分が14%超かつ発熱量が5,833kcal/kg以上(湿潤・無鉱物ベース)
      • 判断に必要な情報:工業分析(揮発分)、発熱量試験、分析条件(ベース換算)。
      • 典型的な誤り:産地や商習慣分類(steam coal等)だけでHSを決める。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    第27類が属する**第V部(鉱物性生産品)について、WCO公開のHS2022構成(目次)上、部注(Section Notes)の掲載は確認されません。実務上は、まず類注(Chapter Notes)**が支配的です。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 第27類は、部注よりも**類注(注1〜注3)と、号注(Subheading Notes 1〜5)**が直接分岐を作ります。
      • 例:使用済み潤滑油は、注3の定義に当たると「waste oils」として扱う、など。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • (部注による“飛び”はこの部では限定的なため)主に類注で他章へ飛びます(次節)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1(除外):分離した単一有機化合物(ただし純メタン・純プロパンは2711へ)、医薬品(30類)、特定の混合不飽和炭化水素(33.01/33.02/38.05)は第27類から除外。
    • 注2(2710の“石油油”の範囲):2710でいう「石油油等」は、石油由来に限らず、非芳香族成分の重量が芳香族成分を上回る“類似油”も含み得ます。一方で、一定条件の液状合成ポリオレフィンは除外(第39類)
    • 注3(waste oils定義):主に石油油等からなる廃棄物で、水混入の有無を問わず、使用済み油・タンクスラッジ・油水エマルジョン等が例示。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • waste oils(廃油):上記注3の範囲(例示を含む)。
    • (注2関連)“石油油等”の参照範囲:芳香族/非芳香族比、合成ポリオレフィン除外の蒸留条件。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 分離した単一有機化合物 → 第29類(例外:純メタン・純プロパンは2711)
    • 液状合成ポリオレフィン(所定の蒸留条件)→ 第39類

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:2710の対象になる“石油油等”か(注2)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 芳香族/非芳香族の重量比較、蒸留性状(合成ポリオレフィン除外の確認)
    • 現場で集める証憑:SDS、成分表(炭化水素組成)、蒸留試験成績、製造工程(由来が石油か合成か)。
    • 誤分類の典型:
      • PAO等の合成基油を「鉱物油っぽい」だけで2710に入れる(実は注2の除外に当たり得る)。
  • 影響ポイント2:“waste oils(廃油)”に当たるか(注3)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • その油が「一次製品として使用に適さない」状態か、タンクスラッジ/油水混合物か、使用済みか。
    • 現場で集める証憑:使用履歴(メンテ記録)、汚染・添加剤分析、回収工程図、写真、MSDS、取引契約(廃棄物/再資源化)。
    • 誤分類の典型:
      • 再生原料という名目で製品油扱い(2710.19等)にしてしまい、注3該当の指摘を受ける。
  • 影響ポイント3:石炭の“無煙炭/瀝青炭”判定(号注1・2)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):揮発分%(乾燥・無鉱物)、発熱量(湿潤・無鉱物)。
    • 現場で集める証憑:分析成績書(試験方法、ベース換算の明記)、サンプル採取条件。
    • 誤分類の典型:
      • 産地証明だけで無煙炭とする/一般炭とする(試験値が無い)。
  • 影響ポイント4:2710.12“軽質油”の判定(号注4)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):ISO 3405の蒸留で210℃までに90vol%留出。
    • 現場で集める証憑:蒸留試験表、品質規格書、ロット管理。
    • 誤分類の典型:
      • “灯油/軽油”の商業名だけで軽質/その他を決める。
  • 影響ポイント5:バイオディーゼルの定義(号注5)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):脂肪酸モノアルキルエステル(燃料用)か、由来(動物/植物/微生物)。
    • 現場で集める証憑:FAME分析、原料情報、SDS。
    • 誤分類の典型:
      • “バイオ燃料”という表現だけで2710.20相当と判断(実際は別章の化学品のことも)。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:「ガソリン」「灯油」等の品名だけで2710.12/2710.19を決める
    • なぜ起きる:商流名とHS分岐(蒸留条件)が一致すると思い込みやすいです。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):2710.12は**蒸留(210℃で90vol%)**という定義(号注4)で決まります。
    • 予防策:蒸留試験成績(ISO 3405)を必ず入手。社内質問例:「この品はD86/ISO3405の蒸留表がありますか?」
  2. 間違い:使用済み潤滑油を“製品油”として申告(waste oilsの見落とし)
    • なぜ起きる:「再生目的=製品」と誤認しやすいです。
    • 正しい考え方:注3は、使用済み潤滑油等をwaste oilsとして例示しています。
    • 予防策:使用履歴、汚染状況、回収工程を提出資料に反映。社内質問例:「この油は一度設備で使用しましたか?汚染物は何ですか?」
  3. 間違い:PAO等の合成基油を2710に入れる
    • なぜ起きる:「見た目が鉱物油」「用途が潤滑油ベース」という理由で寄せがちです。
    • 正しい考え方:注2は、一定条件の**液状合成ポリオレフィンを除外(第39類)**しています。
    • 予防策:蒸留性状(300℃での留出率)やポリオレフィン由来を確認。社内質問例:「基油は鉱油ですか、合成(PAO等)ですか?」
  4. 間違い:石炭タール蒸留油(2707)を2710にしてしまう
    • なぜ起きる:SDS上の“hydrocarbon solvent”表記だけで石油系と誤認。
    • 正しい考え方:2707は芳香族が非芳香族より優勢の蒸留油等が中心です。
    • 予防策:原料(高温石炭タール由来か)と芳香族/非芳香族比の確認。社内質問例:「原料は石炭タールですか?GCで芳香族比率は?」
  5. 間違い:ベンゼン/トルエン等の留分を“混合物だから”として2707.99に入れる
    • なぜ起きる:物質含有割合の閾値を見落としがちです。
    • 正しい考え方:号注3により、ベンゼン等は50wt%超なら該当サブヘディングで扱います。
    • 予防策:主要成分の重量%を分析で確定。社内質問例:「ベンゼン/トルエン/キシレンの含有率(wt%)は?」
  6. 間違い:“石油系添加剤(例:オクタン価向上剤)”を2710にする
    • なぜ起きる:「燃料に混ぜるもの=燃料HS」と短絡しがちです。
    • 正しい考え方:2710は石油油が主成分等の枠(70wt%・主成分)で捉える必要があり、添加剤は第38類(調製品)側に寄ることがあります。
    • 予防策:石油油の含有率(70wt%基準)と“主成分”かを確認。SDSと配合表を収集。
  7. 間違い:石炭(2701)で無煙炭/瀝青炭を“呼称”だけで決める
    • なぜ起きる:契約名(steam coal等)とHS定義がズレることがあります。
    • 正しい考え方:無煙炭・瀝青炭は号注1・2の試験値定義です。
    • 予防策:分析成績書(揮発分・発熱量)を必須化。
  8. 間違い:2712(鉱物性ろう)と、他章の“調製ワックス”を混同
    • なぜ起きる:「ワックス=2712」と思いがちです。
    • 正しい考え方:2712は鉱物性ろう等の範囲で、添加剤入り・調製品は他章の可能性があります(個別検討)。
    • 予防策:成分(添加剤の有無)・用途・製造工程を確認。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること(誤ると原産性判断が崩れる)
    • 第27類は、(1)**採掘・産出(WO:完全生産)**が取りやすい品目(石炭・原油等)と、(2)精製・混合が絡む品目(2710の調製品等)が混在します。
    • HSを誤ると、PSR(CTH/CTSH/RVC/特定工程など)の前提が崩れて、原産性判断が“やり直し”になります。
  • よくある落とし穴(材料のHS、最終製品HS、工程の評価軸)
    • 「原油→精製油」の場合、**工程(精製・混合)**がPSRで問われることがあります。
    • 2710の“調製品”側は、材料(添加剤等)のHS把握が必要になる場面があります。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 「当該協定が参照するHS版(例:HS2012参照 等)」を明記
    • 協定・国により参照するHS版が異なる場合があるため、協定本文・運用ガイダンス・税関が出すトランスポーズ版を必ず確認してください。
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
    • 実務では、税関が**HS2022表記でPSR一覧(対応表)**を出していることがあります(例:日本税関のRCEP PSR資料は「HS Code (HS 2022)」表記)。
    • “PSRの表がHS2022”でも、裏では旧版ベースの構造が残る場合があるため、疑義があれば税関資料の注記・対応関係を確認します。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • 旧HSでPSRが書かれている場合は、WCO相関表(Correlation Tables)で旧→新を機械的に置換せず、品目範囲(見出しの意味)が同一かを確認します。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • 2710の調製品は特に、配合表(石油油の重量%・添加剤)と工程(ブレンド/精製/再生)が重要です。
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 産地証明・採掘証明・製造工程図・試験成績(蒸留・成分)など、分類で集めた資料がそのまま原産性の裏付けにもなります。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022文言修正(号注5:2710関連)「バイオディーゼル」定義が、動物・植物由来に加え微生物由来を含む表現に更新微生物由来の燃料用FAMEを扱う場合、定義適合の説明がしやすくなる
HS2017→HS2022変更なし(6桁の改廃なし)第27類全般WCO相関表(HS2017↔HS2022)上、第27類の6桁改廃・移動の記載は確認されない通常は従前の6桁設計のまま運用。ただし国内コードや制度要件は別途確認

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料(相関表、WCO条文、各国税関の解説、協定付属書など)
    • WCO公開のHS2017 第27類条文HS2022 第27類条文を比較し、号注5(biodiesel定義)が「animal or vegetable」→「animal, vegetable or microbial」へ更新されている点を確認しました。
    • また、WCOの**HS2017↔HS2022相関表(Table I)**では、第27類の6桁コード改廃・移動の記載が確認されず、構造変更(新設/分割等)はないと整理しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(主要論点のみ)
版の変更主要な追加・削除・再編旧コード→新コード(または行き先)コメント
HS2007→HS2012**バイオディーゼル含有(石油油70wt%以上)**のサブヘディング新設(旧)ex2710.11/ ex2710.19 →(新)2710.20 等相関表に「2710.20新設」および定義(号注5)が明記
HS2012→HS2017第27類の6桁改廃の記載なしWCO相関表に第27類の変更記載が確認されない
HS2017→HS2022第27類の6桁改廃は原則なし(ただし定義文言更新あり)号注5に微生物由来が追加

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):使用済み作動油を“製品油”で申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):注3(waste oils定義)の見落とし
    • 起きやすい状況:再生業者向け輸入で「原料=商品」と誤認、SDSも新品用を流用
    • 典型的な影響:修正申告、追加資料要求、検査強化、納期遅延(一般論)
    • 予防策:使用履歴/汚染分析/回収工程を事前準備、必要に応じて事前教示
  • 事例名(短く):合成基油(PAO)を2710で申告
    • 誤りの内容:注2の除外(合成ポリオレフィンの蒸留条件)に抵触し得る
    • 起きやすい状況:「鉱物油代替」用途で、商流名が“base oil”
    • 典型的な影響:品目更正、提出資料(蒸留試験等)の追加、評価やり直し
    • 予防策:原料系統・蒸留性状の試験成績を準備、SDSで合成由来を明確化
  • 事例名(短く):“軽質油”判定の試験がなく2710.12で申告
    • 誤りの内容:号注4(210℃で90vol%留出)の根拠不足
    • 起きやすい状況:スポット輸入・ブレンド品で、品質証明が簡略
    • 典型的な影響:検査・サンプル採取、通関遅延
    • 予防策:ISO 3405の蒸留表をロットごとに確保、契約で提供を義務化
  • 事例名(短く):石炭の品位区分(無煙炭/瀝青炭)を呼称で決定
    • 誤りの内容:号注1・2(揮発分・発熱量)の不適合
    • 起きやすい状況:長期契約で“通称”が固定、試験ベース換算が不統一
    • 典型的な影響:税番差替え、統計訂正、追加資料要求
    • 予防策:分析方法・換算ベースを統一し、成績書フォーマットを標準化

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第27類は一般にSPSより、危険物・エネルギー関連の手続が中心です。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 通常は該当しません。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 対象国・用途・制裁等で変動します。個別取引で最新の法令・告示を確認してください(一般論)。
  • その他の許認可・届出
    1. 石油の輸入に関する登録・届出(備蓄法・品確法)
      • 石油の輸入を行う場合、備蓄法に基づく登録や、輸入後の品確法に基づく届出・規格適合確認が必要となる旨が公的に案内されています(対象油種の例示あり)。
      • 税関手続面でも、原油・揮発油・灯油・軽油・重油の輸入通関に関し、当局間文書として取扱いが示されています。
      • さらに、(国内制度上の区分として)原油は2709.00等、揮発油等は2710各号等を参照して整理されている例があります(国内コードの参照であり、HS6桁と混同しない)。
    2. 危険物規制(消防法:第4類引火性液体など)
      • ガソリン・灯油・軽油・重油等は、消防法令上の「引火性液体」区分・引火点基準等があり、保管・取扱い・施設要件に影響します(例:第1石油類/第2石油類…)。
    3. 高圧ガス(LPG/LNG等):輸入検査等
      • 高圧ガスを輸入した者は、輸入検査を受け、適合が認められるまで移動できない等の手続が示されています(法令条文引用は避け要約)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省(資源エネルギー庁・各経産局):備蓄法/品確法関連の手続案内
    • 財務省・税関:石油輸入通関の取扱いに関する通達等
    • 消防庁・消防本部:危険物(消防法)関係
    • 都道府県(高圧ガス)・指定機関:輸入検査等
  • 実務での準備物(一般論):
    • 製品SDS、成分表、蒸留試験/引火点試験等の成績書、用途説明
    • 備蓄法登録関連の書面(必要な場合)、品確法届出関連の書面(対象油種の場合)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 由来(石油/石炭タール/天然ビチューメン/合成)
    • 形状(固体/液体/ガス)、用途(燃料/原料/舗装/潤滑)
    • SDS、成分表、蒸留曲線、揮発分/発熱量(石炭)、引火点(危険物該当性確認用)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 2710:注2(石油油範囲)/注3(waste oils)/70wt%・主成分の当てはめ
    • 2701:号注の数値要件(揮発分・発熱量)
    • 2707:芳香族優勢、50wt%超条件
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名は商流名だけでなく「例:petroleum oils (other than crude), containing biodiesel…」等、HSの観点が伝わる表現を検討
    • 日本の統計単位は、**KG、MT、KL、L、CM(立方メートル)**等が使われます(単位略号は税関の一覧で確認可能)。
    • 廃油該当の可能性がある場合:使用履歴・回収工程・分析結果を添付
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS版と、税関が公表するPSR表(HS2022表記か)を確認
    • 原油→精製油の場合、工程証憑(製油所工程、ブレンド記録)を整備
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 備蓄法登録・品確法届出の要否(対象油種、用途)
    • 危険物(消防法)区分の確認(引火点等)
    • LPG/LNG等:高圧ガス輸入検査等の確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Chapter 27(条文・注・号注) (参照日:2026-02-19)
    • HS2017 Chapter 27(条文・注・号注) (参照日:2026-02-19)
    • Correlation Tables HS 2017–2022(Table I 等) (参照日:2026-02-19)
    • Correlating HS2012 to HS2007(Table I:2710.20新設の記載) (参照日:2026-02-19)
    • Correlating HS2017 to HS2012(Table I:第27類の改廃記載確認用) (参照日:2026-02-19)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 日本税関:統計単位の略号一覧(KG, KL, L, MT, CM 等) (参照日:2026-02-19)
    • 経済産業省関東経済産業局:揮発油等の輸入に関する各種届出(備蓄法・品確法の手続案内) (参照日:2026-02-19)
    • 財務省関税局・税関:備蓄法に基づく原油等の輸入通関取扱い(通達) (参照日:2026-02-19)
    • 消防庁:消防法令抜粋(危険物の定義・引火点区分等) (参照日:2026-02-19)
    • 高圧ガス保安協会(KHK):高圧ガス輸入の申請手続き(輸入検査等の概要) (参照日:2026-02-19)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 日本税関:RCEP Product-Specific Rule(HS Code (HS 2022) 表記のPSR一覧) (参照日:2026-02-19)
  • その他(業界団体、公的統計等)
    • (必要に応じて)石油/LPガス業界団体の品質規格・試験方法資料、船積・保管の危険物取扱ガイド等

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第26類:鉱石、スラグ及び灰 Ores, slag and ash

用語は次で統一します。類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの

この章は「超要約」です。

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 鉄鉱石・鉄精鉱(ペレットでない粉鉱も、ペレット等の凝結品も:2601)
    • 銅鉱(銅精鉱):2603
    • ウラン鉱・トリウム鉱(精鉱含む):2612
    • 製鉄・製鋼由来の粒状スラグ(スラグサンド):2618
    • 金属や砒素を含むスラグ・灰・残留物(ただし条件あり:2620)
    • 都市廃棄物の焼却灰:2621.10
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先も併記):
    • 道路用路盤材として加工したスラグ等(マカダム状) → 25.17
    • 石油タンクのスラッジ(主として石油) → 27.10
    • 塩基性スラグ(肥料用途のもの等) → 第31類
    • スラグウール/ロックウール等の鉱物繊維 → 68.06
    • 貴金属の回収目的のスクラップ → 71.12 または(HS2022では)85.49
    • 銅・ニッケル・コバルトのマット(溶錬で得たもの) → 第XV部(卑金属)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「鉱石(ore)」の定義に当てはまるか(類注2の範囲)
    2. スラグ/灰/残留物は“発生源”が製鉄・製鋼か、それ以外か、都市ごみ焼却か(2618/2619/2620/2621の分岐)
    3. 2620の中では**「主成分の金属」砒素・水銀・タリウム等**の有無で号が割れる
  • この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 2620/2621(灰・残留物)が“廃棄物”扱いになり得るとき(バーゼル法等の手続)
    • **2612(ウラン・トリウム鉱)**で、核原料物質としての手続が絡むとき

1. 区分の考え方

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • 第26類は、ほぼ**GIR1(品目表の文言+注)**で決まります。特に効くのは次です。
    • 類注1(除外):ここに該当すると、最初から第26類ではありません
    • 類注2(“ores”の定義):2601〜2617に入るかどうかの「入口」
    • 類注3(2620の適用条件):2620に入れるための条件が明示されています
  • 号(6桁)の決定はGIR6で、同じ階層(6桁同士)の文言と注で判断します(例:2601.11 vs 2601.12、2620.11/19/…)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 材質・化学形態:鉱物(鉱石)か、化学品(酸化物・塩等)か
    • 加工度:選鉱レベルか、化学処理・焼成などで“鉱石”の範囲を超えたか(類注2の考え方)
    • 発生源:製鉄・製鋼由来か/それ以外の工業由来か/都市ごみ焼却か(2618/2619/2620/2621)
    • 用途:2620は「金属抽出」や「金属化合物製造の原料」等、用途(種類)が条件になる

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:まず「除外」に当たらないか確認
    • 道路用に加工したスラグ(25.17)、石油スラッジ(27.10)、肥料の塩基性スラグ(31類)、鉱物繊維(68.06)、貴金属回収用スクラップ(71.12/85.49)、銅・ニッケル・コバルトのマット(第XV部)などは第26類ではありません。
  • Step2:2601〜2617の「鉱石・精鉱」か?
    • 類注2の“ore”に当てはまる(冶金用の鉱物種で、過度な加工をしていない)なら、金属別に2601〜2617へ。
    • 当てはまらない場合はStep3へ。
  • Step3:製鉄・製鋼由来のスラグ/くずか?
    • 粒状スラグ(スラグサンド) → 2618
    • 粒状以外のスラグ・ドロス・スケール等(製鉄・製鋼由来) → 2619
    • それ以外ならStep4へ。
  • Step4:製鉄・製鋼以外由来のスラグ/灰/残留物か?
    • 金属・砒素等を含み、かつ類注3の用途条件に合う → 2620(主成分等で号決定)
    • 都市廃棄物の焼却灰 → 2621.10(2620から除外される)
    • その他のスラグ・灰 → 2621.90
  • よく迷う境界(例):
    • 25.17(路盤材) vs 2618/2619(製鉄由来スラグ)
    • 2620(工業用金属回収等の残留物) vs 2621(都市ごみ焼却灰を含む“その他”)
    • 2616(貴金属鉱) vs 71.12/85.49(貴金属回収用スクラップ)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
2601鉄鉱石・鉄精鉱(焼いた硫化鉄鉱を含む)鉄鉱石(粉鉱/ペレット)、焼いた硫化鉄鉱2601.11 非凝結 / 2601.12 凝結 / 2601.20 焼いた硫化鉄鉱
2602マンガン鉱・マンガン精鉱(乾燥重量でMn20%以上の含鉄マンガン鉱含む)マンガン鉱**Mn20%以上(乾燥重量)**の文言が鍵
2603銅鉱・銅精鉱銅精鉱「マット(溶錬品)」は類注1で第XV部へ
2604ニッケル鉱・ニッケル精鉱ニッケル精鉱ニッケルマットは除外(第XV部)
2605コバルト鉱・コバルト精鉱コバルト精鉱コバルトマットは除外(第XV部)
2606アルミニウム鉱・精鉱ボーキサイト等化学処理で酸化アルミ等になっていれば28類側の検討が必要(一般論)
2607鉛鉱・精鉱鉛精鉱2620(鉛を主成分とする残留物)と混同しない
2608亜鉛鉱・精鉱亜鉛精鉱2620(亜鉛主成分の残留物)と混同しない
2609すず鉱・精鉱すず精鉱
2610クロム鉱・精鉱クロム鉄鉱等
2611タングステン鉱・精鉱灰重石等の精鉱
2612ウラン鉱/トリウム鉱・精鉱ウラン鉱、トリウム鉱核原料物質として他法令の手続が絡む可能性
2613モリブデン鉱・精鉱焼いたモリブデン精鉱/その他2613.10(焼いたもの)vs 2613.90(その他)
2614チタン鉱・精鉱イルメナイト等の精鉱類注2の“ore”か、酸化チタン等の化学品かの見極め(一般論)
2615ニオブ/タンタル/バナジウム/ジルコニウム鉱・精鉱ジルコンサンド等2615.10(ジルコニウム)vs 2615.90(その他)
2616貴金属鉱・精鉱銀鉱/銀精鉱、金銀含有鉱等2616.10(銀)vs 2616.90(その他)。回収目的のスクラップは除外
2617その他の鉱・精鉱アンチモン鉱、その他未列挙の金属鉱2617.10(アンチモン)vs 2617.90(その他)
2618製鉄・製鋼の粒状スラグ(スラグサンド)高炉スラグの粒状品粒状であることがポイント
2619製鉄・製鋼のスラグ/ドロス/スケール等(粒状以外)スケール、ドロス等2618(粒状)と混同しない
2620(鉄鋼由来以外の)金属・砒素等含有のスラグ/灰/残留物亜鉛灰、鉛含有残留物、砒素含有残留物等類注3の「用途条件」と、主成分金属等で号を選ぶ
2621その他のスラグ・灰(都市ごみ焼却灰含む)都市ごみ焼却灰、海草灰(ケルプ)2621.10(都市ごみ焼却灰)と2621.90(その他)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐

第26類は、号の分岐が「少ない項」と「2620のように細かい項」で差が大きいです。実務で効きやすい分岐だけに絞ります。

  • 分岐条件の整理(代表)
    • 形状(凝結の有無):2601.11(非凝結)/ 2601.12(凝結)
    • 焙焼の有無:2613.10(焼いたモリブデン)/ 2613.90(その他)
    • 鉱種(ウラン/トリウム、銀/その他貴金属、アンチモン/その他):2612、2616、2617の分岐
    • 発生源・用途・含有主成分:2620/2621の分岐
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(例:2〜5組)
    1. 2601.11 vs 2601.12(鉄鉱の非凝結/凝結)
      • どこで分かれるか:ペレット化・焼結等で凝結しているか
      • 判断に必要な情報:製品形状(粉鉱/ペレット)、粒度、製造工程(焼結/ペレタイジングの有無)
      • 典型的な誤り:「粉状だが微量バインダー使用→凝結扱い」と早合点(実態の形状で整理)
    2. 2612.10 vs 2612.20(ウラン鉱/トリウム鉱)
      • どこで分かれるか:主対象がウラン系かトリウム系か
      • 判断に必要な情報:分析表(U/Th含有)、鉱物名、用途(核原料物質該当性の確認は別途)
      • 典型的な誤り:レアアース原料等の中にU/Thが混在しているのに、別鉱種として扱い見落とす
    3. 2616.10 vs 2616.90(銀鉱/その他貴金属鉱)
      • どこで分かれるか:銀鉱(銀精鉱)として扱うか、その他の貴金属鉱か
      • 判断に必要な情報:主要回収対象(Agか、Au/Pt等か)、品位(分析)
      • 典型的な誤り:回収目的の「スクラップ」を“鉱”と呼んで2616に寄せる(類注1(f)で除外の可能性)
    4. 2620(各号) vs 2621.10(都市ごみ焼却灰)
      • どこで分かれるか:都市廃棄物の焼却由来かどうか
      • 判断に必要な情報:発生源(自治体施設の焼却灰か、工場工程の灰か)、産廃/一廃区分資料、工程説明
      • 典型的な誤り:重金属を含むので「2620だろう」と決め打ち(類注3で“都市ごみ焼却灰”は2621)
    5. 2620の中の号選択(“主として○○を含む”)
      • どこで分かれるか:
        • 亜鉛主成分:2620.11(ハードジンクスペルター)/ 2620.19(その他)
        • 鉛主成分:2620.21(加鉛ガソリン等由来スラッジ)/ 2620.29(その他)
        • 銅主成分:2620.30
        • アルミ主成分:2620.40
        • 砒素・水銀・タリウム等(抽出/化合物製造用):2620.60
        • その他(特定金属含有):2620.91 / 2620.99
      • 判断に必要な情報:元素分析(主成分の判定)、発生源・用途(特に2620.60)、SDS/試験成績
      • 典型的な誤り:主成分判定を「含有している」レベルで判断する/2620.60を“有害だから”で選ぶ(用途条件がある)

3. 部注と類注の詳細解釈

この章は「条文をそのまま引用せず、実務的に何を意味するか」を整理します。

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第26類は**第05部(鉱物性生産品)**に属しますが、WCOの目次上、第05部には“部注(Section Notes)”が設けられていない構成です(部注があるのは第06部など)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • したがって、第26類の判断は基本的に類注(Chapter Notes)と各見出し文言が中心になります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 第05部の部注で飛ぶのではなく、**第26類の類注1(除外)**で他類・他項へ飛ぶのが典型です。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1:第26類に入らないもの(除外)
      • 路盤材(25.17)、マグネサイト(25.19)、石油スラッジ(27.10)、塩基性スラグ(31類)、鉱物繊維(68.06)、貴金属回収用スクラップ(71.12/85.49)、銅・ニッケル・コバルトのマット(第XV部)など。
    • 類注2:2601〜2617における“鉱石(ores)”の考え方
      • 冶金目的で金属抽出に使われる鉱物種(Hg、28.44の金属、または第XIV・XV部の金属)を指し、非冶金用途でも対象になり得る一方、冶金業で通常といえない加工をしたものは除外、という構造です。
    • 類注3:2620の適用条件
      • 2620は「鉄鋼由来以外」のスラグ/灰/残留物で、一定の産業用途(抽出・金属化合物原料等)に使われる種類のものに限る、かつ都市ごみ焼却灰は2621へ、という整理です。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 2620.21の定義(加鉛ガソリン等のスラッジ):加鉛ガソリンや加鉛アンチノック剤の貯蔵タンクから出るスラッジで、主として鉛やその化合物等からなる旨が注で示されています(要約)。
    • 砒素・水銀・タリウム等を含む残留物の扱い:抽出や化合物製造に用いる種類のものは2620.60に分類する旨が注で示されています(要約)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 上記類注1の各除外先が、そのまま除外先です。特に、貴金属スクラップはHS2022では71.12に加え85.49も明示される点に注意が必要です。

4. 類注が分類に与える影響

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を見える化します。

  • 影響ポイント1:“鉱石(2601〜2617)”に入るかどうか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 鉱物名(鉱物種)/主要金属/用途(冶金用か)
      • 加工の程度(選鉱の範囲か、化学処理・焼成等で別物になっていないか)
      • 類注2の範囲に当てはまるか
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書、鉱物分析(XRF等)、品位表、SDS、工程図(破砕・選鉱・焙焼など)、写真(形状)
    • 誤分類の典型:
      • 鉱石を「化学品(28類)」として申告/逆に化学処理済み品を「鉱石」として申告(いずれも審査で突かれやすい)
  • 影響ポイント2:スラグ・灰・残留物(2618/2619/2620/2621)の“発生源”と“用途条件”
    • 何を見れば判断できるか:
      • 製鉄・製鋼由来か(2618/2619)
      • それ以外の産業由来で、金属抽出等に用いる種類か(2620の条件)
      • 都市ごみ焼却由来か(2621.10)
    • 現場で集める証憑:
      • 発生元の工程説明書、排出事業者証明、分析、用途説明、廃棄物該当性の社内判断資料
    • 誤分類の典型:
      • 2620の「用途条件」を確認せず、単に重金属含有で2620に寄せる
  • 影響ポイント3:除外(類注1)を見落とす
    • 何を見れば判断できるか:
      • 「道路用に加工」→ 25.17
      • 「貴金属回収用スクラップ」→ 71.12/85.49
      • 「マット(溶錬品)」→ 第XV部
    • 現場で集める証憑:
      • 用途資料、加工内容、溶錬工程の有無、回収目的の契約・仕様(リサイクル契約書等)
    • 誤分類の典型:
      • 「鉱石っぽい黒い粉」=鉱石、と短絡して2603等へ。実は回収用スクラップで除外、というパターン。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:道路用の路盤材として加工したスラグを2618/2619で申告
    • なぜ起きる:見た目が「スラグ」なので製鉄スラグ扱いに寄せてしまう
    • 正しい考え方:類注1で、マカダム状にしたスラグ等は25.17へ除外
    • 予防策:用途(道路材)と加工状態(粒度調整・混合・締固め前提)を確認。カタログ・用途仕様を入手。
  2. 間違い:都市ごみ焼却灰を2620(金属含有残留物)で申告
    • なぜ起きる:重金属含有=2620と決め打ち
    • 正しい考え方:類注3で、都市廃棄物焼却灰は2620から外れ2621へ
    • 予防策:発生源(自治体焼却施設か)を証憑で固める。排出元証明・工程説明・分析報告をセットで保管。
  3. 間違い:銅マットを「銅鉱(2603)」として扱う
    • なぜ起きる:取引名が“concentrate/matte”で混乱しやすい
    • 正しい考え方:類注1で、銅・ニッケル・コバルトのマット(溶錬品)は第26類から除外され第XV部
    • 予防策:工程(溶錬=smelting)の有無を確認。製造フロー・SDSで“matte”の定義を確認。
  4. 間違い:貴金属回収目的のスクラップを2616(貴金属鉱)で申告
    • なぜ起きる:貴金属含有=「貴金属鉱」に寄せてしまう
    • 正しい考え方:類注1(f)で回収目的のスクラップは除外。HS2022では71.12に加え85.49も参照される
    • 予防策:原材料の出自(鉱山由来か、製造・廃棄物由来か)と「回収目的」を契約・仕様で確認。
  5. 間違い:**非凝結の鉄鉱石(粉鉱)**を2601.12(凝結)で申告
    • なぜ起きる:輸送形態(バルク)だけで判断
    • 正しい考え方:2601.11(非凝結)と2601.12(凝結)の区別は形状・工程に基づく
    • 予防策:粉鉱/ペレット等の形状、製造工程、粒度分布を入手。
  6. 間違い:2620.60を「有害金属が入っているから」と安易に選ぶ
    • なぜ起きる:砒素・水銀・タリウム等があると条件反射で2620.60
    • 正しい考え方:2620.60は注で“抽出・化合物製造に用いる種類”という用途条件が示される(要約)
    • 予防策:用途(回収工程で使うのか)と取引実態(回収業者向けか)を確認。用途説明書を添付。
  7. 間違い:石油タンク由来スラッジを2620/2621で申告
    • なぜ起きる:スラッジ=灰・残留物という連想
    • 正しい考え方:類注1で、石油タンクのスラッジ(主として石油)は27.10へ除外
    • 予防策:成分(主として鉱物か油分か)をSDS/分析で確認。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。第26類は特に、
    • 「鉱石(2601〜2617)」なのか
    • 「残留物(2620/2621)」なのか
    • 「スクラップ(71.12/85.49等)」なのか
      で、PSRの考え方(WO/CTH/RVC等)が大きく変わり得ます。
  • よくある落とし穴(一般論)
    • 原産性判定は「最終製品HS」だけでなく、非原産材料のHS、工程(選鉱・焙焼・回収等)も絡みます。
    • “廃棄物・スクラップ”は協定上「締約国内で得られたもの(WO)」に当たり得る場合もありますが、定義・条件は協定ごとに確認が必要です(一般論)。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定本文・付属書(PSR)が参照するHS版は、協定により異なります。
  • 例としてRCEPは、PSRをHS2022にトランスポーズした版が採択され、当事国が2023年1月1日から実施する旨が日本税関資料に示されています。
  • HS版がズレる場合の注意(一般論)
    • HS改正でコード体系が変わった場合、旧HSでのPSRを新HSに読み替える必要があります。
    • その際は、WCOの相関表(Correlation tables)等を使って“旧→新”を機械的に当て、さらに範囲(スコープ)の変更がないかを確認します。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程(採掘→選鉱→焙焼→回収等)、原産国
  • 非原産材料のHS(少なくとも6桁)、RVC計算に使う前提資料
  • 証明書類・保存要件(一般論):協定別の保存年限、検認対応のための証憑(分析表、工程図、契約書)をセットで。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い

7-1. 変更点サマリー(表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022(6桁の)変更なし26.01〜26.21(HS6桁)WCOのHS2017–2022相関表(Table I/II)に第26類のサブヘディングが掲載されていない=少なくともHS6桁の新設・分割・統合等は示されていないHS6桁レベルの付番は原則そのまま。ただし国内細分は別途確認
HS2017→HS2022文言修正(注の参照先追加)類注1(f)貴金属回収目的のスクラップの除外先に、71.12に加えて85.49が追記された“回収目的スクラップ”の分類先が71.12だけとは限らない点に注意(HS2022の取扱い)

7-2. 「違うことになった根拠」

  • 6桁変更なしの根拠(読み取り):
    • WCOはHS2017→HS2022の相関表(Correlation tables)を公開しており、Table I/IIは改正で影響を受けるサブヘディング等の整理に用いられます。
    • そのTable I/IIに第26類(26.01〜26.21)のサブヘディングが見当たらないため、少なくともHS6桁体系の新設・分割・統合等は示されていない、と整理できます(※“相関表に載らない変更がゼロ”という意味ではなく、HS6桁の構造変更が表に現れていない、という趣旨)。
  • 類注1(f)の参照追加の根拠:
    • HS2017の類注1(f)は除外先として71.12のみを挙げています。
    • HS2022の類注1(f)は除外先として71.12に加え85.49も挙げています。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第26類は、少なくともHS2007以降、26.01〜26.21(2601〜2621)の骨格が大きく変わっていない部類です(条文比較ベース)。

期間主な追加・削除・再編対象コード備考(旧→新対応)
HS2007→HS2012大きな変更の示唆なし(見出し・号構造は同様)2601〜2621対応:実質変更なし(本類内)
HS2012→HS2017大きな変更の示唆なし(見出し・号構造は同様)2601〜2621対応:実質変更なし(本類内)
HS2017→HS2022類注1(f)の参照先に85.49が追加類注1(f)(除外)旧:71.12 → 新:71.12/85.49(除外先追加)

※上表は「HS6桁(国際6桁)」の話です。各国の国内コード(8桁/9桁等)は別途変わり得ます。


9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:都市ごみ焼却灰を2620で申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注に抵触):類注3の「都市ごみ焼却灰は2621」趣旨を無視
    • 起きやすい状況:分析表だけ提出し、発生源資料がない
    • 典型的な影響:修正申告、追加資料要求、検査強化、通関遅延
    • 予防策:発生源証明(自治体施設証明等)+工程説明+分析をセットで準備。廃棄物規制の事前確認も。
  • 事例名:銅マットを“銅精鉱”として2603申告
    • 誤りの内容:類注1(g)の除外(マットは第XV部)に抵触
    • 起きやすい状況:売買名がconcentrate/matteで混在
    • 典型的な影響:分類差戻し、関税率・規制判定や原産地判断のやり直し
    • 予防策:溶錬工程の有無、製品性状(硫化物マット等)を仕様書で確認。
  • 事例名:道路用スラグ路盤材を2618/2619で申告
    • 誤りの内容:類注1(a)の除外(25.17)に抵触
    • 起きやすい状況:スラグという名称だけで判断
    • 典型的な影響:用途確認で差戻し
    • 予防策:用途・加工(マカダム状)をカタログで明確化。
  • 事例名:ウラン/トリウム含有鉱石の規制手続漏れ
    • 誤りの内容:分類は2612でも、核原料物質として手続が必要な場合に未対応
    • 起きやすい状況:レアメタル原料の副成分としてU/Thが混在
    • 典型的な影響:保留、追加手続、遅延
    • 予防策:輸入前に含有確認(分析)→ NRA/関係省庁の手続要否を確認。

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

以下は日本前提の一般的な論点です(全品目に一律でかかるわけではありません)。

  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第26類は通常、動植物検疫の主戦場ではありません(ただし付着物等で例外はあり得ます)。
  • 安全保障貿易管理・核関連
    • **ウラン鉱・トリウム鉱(2612)**は、核原料物質として、数量等に応じて許可・届出等が必要になり得ます(原子炉等規制法関係)。原子力規制委員会(NRA)は、ウランやトリウムの鉱石を扱う場合に手続が必要となり得る旨を案内しています。
    • また、経済産業省は「原子力関連貨物の輸入」ページで、関連法令に基づく管理・報告等に触れています。
  • 廃棄物・バーゼル条約(Basel)関連
    • スラグ・灰・残留物(2620/2621)は、貨物の性状・取引実態によっては「廃棄物」や「特定有害廃棄物等」として越境移動の管理対象になり得ます。経産省はバーゼル条約・バーゼル法の枠組みとして、外為法に基づく承認や環境大臣確認等が必要となる旨を説明しています。
    • 環境省資料やJETROのQ&Aでも、輸入承認等の手続の概要が整理されています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口)
    • 核関連:原子力規制委員会(NRA)、経済産業省(貿易管理)
    • 廃棄物・バーゼル:経済産業省(バーゼル法)、環境省、税関
  • 実務での準備物(一般論)
    • 分析表(元素組成)、SDS、工程説明、発生源証明(残留物・焼却灰など)、用途説明(回収目的等)
    • 規制該当性の社内判定メモ(誰が・何を根拠に・いつ判断したか)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 製品名(取引名)だけでなく、鉱物名・主成分・含有率・形状(粉/ペレット/粒状等)
    • 加工工程(選鉱、焙焼、溶錬、焼却、回収工程など)
    • 発生源(鉱山由来/製鉄由来/その他工業由来/自治体焼却由来)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1の除外(25.17、27.10、31類、68.06、71.12/85.49、第XV部)に当たらないか
    • 2620なら類注3の条件(用途・都市ごみ焼却灰除外)を満たすか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名:鉱種・形状・工程(例:“Iron ore fines, non-agglomerated”相当)を誤解なく
    • 数量単位:第26類は統計単位が**MT(トン)**になりやすい(日本の統計品目表でもMTが示される例が多い)
    • 添付:分析表、工程図、写真、用途説明
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版、PSRの確認(必要なら相関表で読み替え)
    • 証憑の保存設計(検認対応)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 2612(ウラン/トリウム)→ NRA/関係法令の手続要否確認
    • 2620/2621(灰・残留物)→ 廃棄物・バーゼル該当性の事前相談

12. 参考資料(出典)

※参照日:2026-02-19

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 第26類(Chapter 26)条文(Notes/Heading list)
    • HS2017 第26類(Chapter 26)条文
    • HS2012 第26類(Chapter 26)条文
    • HS2007 第26類(Chapter 26)条文
    • HS2017–2022 Correlation tables(Table I/II および案内ページ)
  • 日本:税関・公的機関
    • RCEP:HS2022にトランスポーズされたPSR(日本税関資料)
    • 原子力規制委員会(NRA):核原料物質(ウラン・トリウム鉱石等)の取引・取扱い案内
    • 経済産業省:原子力関連貨物の輸入案内
    • 経済産業省:バーゼル条約・バーゼル法の概要
    • 環境省:特定有害廃棄物等の輸出入管理制度(概要資料)
    • JETRO:バーゼル条約規定廃棄物の輸出入手続きQ&A
  • 国内コード(参考:民間提供データ)
    • 日本関税協会 web輸出統計品目表(第26類の統計コード例・単位)

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点

  • **HS6桁(国際)に対して、日本では統計・NACCS用に「-000」等を付した国内コード(統計品目番号)**が使われます。例:
    • 2601.11 → 2601.11-000(鉄鉱:非凝結)
    • 2612.10 → 2612.10-000(ウラン鉱)
    • 2620.11 → 2620.11-000(ハードジンクスペルター)
    • 2621.10 → 2621.10-000(都市ごみ焼却灰)
  • 単位は、同表の例では第26類は**MT(トン)**が多いです(統計第II単位がMT)。
  • 注意点:国内コードの細分は改正で変わることがあるため、実務では必ず最新の統計品目表(実行関税率表)で確認してください。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方

  • 事前教示(一般論)で早くするコツ:次の情報が揃うと相談が進みやすいです。
    • ①品名(取引名+一般名)
    • ②用途(冶金用/回収用/道路材等)
    • ③成分(分析表)
    • ④製造工程(工程図)
    • ⑤写真(形状:粉/粒/ペレット等)
    • ⑥SDS(残留物・灰は特に有効)
  • 第26類は「鉱石か/残留物か/スクラップか」で結論が変わりやすいので、除外(類注1)に当たらない根拠もセットにすると実務的です。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

2月前半のBMS・センサー分類スナップショットを深掘りする

2026年の税番見直しで、コストとリスクを同時に下げる実務ガイド


はじめに

BMSと各種センサーは、EVや蓄電システム、産業機械、IoT機器の中核部品です。一方で、見た目が似ていても「電池として提示されるのか」「制御盤として提示されるのか」「半導体センサーとして提示されるのか」によって、税番の方向性が大きく変わります。

HSは世界共通の6桁が出発点ですが、実務では各国で統計細分や運用差が生じます。日本でも、輸出入統計品目番号は6桁HSコードに国内3桁を付した9桁で運用されます。ここを理解していないと、社内マスターの整合が崩れ、仕入先や海外拠点との会話が噛み合いません。

本記事では、2026年2月前半に見直しておきたい観点として、BMSとセンサーの分類論点を「判断の軸」と「実務の落とし穴」に分けて整理します。最終的に、経営・調達・物流の意思決定に使える形まで落とし込みます。


2月前半のスナップショット

この時期に優先度が上がりやすい論点は次の5つです。

  1. BMSが電池パックの一部として提示されるのか、制御ユニットとして提示されるのか
  2. センサーがHS2022で新設された「半導体ベースの変換器」の範囲に入るのか
  3. センサーが「測定機器」として第90類に寄るのか、それとも「半導体デバイス」に寄るのか
  4. 基板やユニットが、単なる印刷回路なのか、制御盤なのか、特定機器の部分品なのか
  5. 社内の品名、仕様書、BOM、梱包形態が「提示態様」を曖昧にしていないか

これらは関税率だけの話ではありません。原産地判定、輸出管理、顧客への価格提示、輸送書類の整合など、ビジネスの下流工程に連鎖します。


BMS分類を深掘りする

まず押さえる前提

HS分類の基本は、品目表の文言と部注・類注に基づいて判断することです。複合品やセットなど複数の要素がある場合は、「重要な特性」を与える要素で判断するという考え方が軸になります(WCO解釈通則3(b))。

この原則を前提に、BMSは実務上、次の2タイプに分けて考えると誤分類が減ります。


タイプ1:セルやモジュールを含む、電池パック内蔵型BMS

セルを含む構成で外観上も電源として提示される場合、論点は「電池として提示されているか」に収束します。日本の関税率表では、リチウムイオン蓄電池は第85類の8507.60に位置づけられます。

米国の事例では、BMSがリチウムイオンセルを含み電源として機能する提示態様において、セルが不可欠である点などを踏まえ、電気蓄電池の範囲で扱う判断が示されています(HQ H155376、第三者アーカイブに掲載)。

実務上のポイントは次の3点です。

①見積・契約段階で「セル入りか」を明確化する 同じBMSという品名でも、セル入りとセル無しで分類候補が分かれます。品名だけで処理すると誤分類が起きやすくなります。

②梱包と提示資料が「電池らしさ」を強めるかを点検する 仕様書や梱包ラベルに「power source」「battery pack」という表現が中心になっていると、電池としての提示性が強まります。

③部分品輸入の可能性も並走して検討する 電池そのものではなく「蓄電池の部分品」として提示されるケースもあり、8507.90が候補になる局面があります。


タイプ2:セルを含まない、制御ユニット型BMS

セルを含まない場合、BMSは「電池」より「制御」「監視」「保護」「配電」に軸足が移ります。候補になりやすいのが次の領域です。

① 第85類 8537.10(制御・配電用の盤) 8537は、電気の制御または配電用の盤・パネル等で、機器を二以上備えるものなどを含みます。BMSがヒューズ、スイッチング、遮断、配電・制御を担い、盤としての提示態様が強い場合に論点になります。8537.10は電圧1,000V以下のものが対象です。

② 第90類 9032.89(自動調整機器) 9032は自動調整・自動制御の機器で、電気式のものを含む区分があります。BMSが測定値に基づいて充放電を自動制御し、制御装置として提示される場合に候補として浮上しやすい領域です。

③ 部分品としての8538.90、または印刷回路としての8534.00 BMSが特定の制御盤や機器に専ら又は主として使用される部品として提示される場合、8538.90が論点になります。単に印刷回路として提示される場合は8534.00が候補になる局面があります。

ここで重要なのは、BMSを「基板」「ユニット」「制御盤」「部分品」のどれとして提示しているかを、書類と現物の両方で整合させることです。技術的に同じ回路でも、通関上の提示態様が違えば、分類ロジックが変わります。

BMS分類で必ず確認すべき質問

社内でレビューするときは、次の問いに答えられるようにしておくと判断がブレにくくなります。

  1. セルを含むか。含むなら、どこまでが一体か
  2. 電池としての機能(蓄電と出力)が主か、制御が主か
  3. 遮断、保護、配電などの電気的機能がどの部品で実現されるか
  4. 単体で機能するか、特定の機器に専用か
  5. 提示資料における主たる用途の説明は何か

センサー分類を深掘りする

HS2022で重要度が上がった「半導体ベースの変換器」

センサー分類で見落としが増えやすいのが、HS2022改正で新設された「半導体ベースの変換器」です。税関関税協会の解説FAQでも、従来は多数のHSコード(例:第84.31項、第84.66項、第84.73項等)に分類されていたものが、今次改正により特定のコード(8541.51)に分類されることとなった旨が明確に説明されています。

日本の関税率表でも、8541.51として「半導体ベースの変換器」が明確に掲げられています。

ビジネス上の意味はシンプルです。センサーを「測定機器」として第90類に入れていた慣行が、製品によっては見直し対象になり得るということです。特に、半導体素子としての提示性が強い場合や、モジュール構成が軽い場合に論点になりやすくなります。

センサーを3層で整理する

実務では、センサーを次の3層で整理すると、社内マスターの混乱を防げます。

① 半導体デバイス寄り 半導体ベースの変換器(8541.51)など。

② 測定機器寄り(第90類) 温度計などの9025(電気式を含む区分あり)、圧力測定などの9026.20(電気式を含む区分あり)、その他の測定・検査機器としての9031.80など。

③ 組込み・部分品寄り 特定の装置の部品として提示されるケース。基板単体の提示なら8534.00、制御系の部品なら8538.90などの論点が出ます。

ありがちな落とし穴

落とし穴①:センサーという品名だけで第90類に寄せてしまう HS2022以降、半導体ベースの変換器に該当する可能性があるため、まず「半導体デバイスとしての提示態様か」を確認する必要があります。

落とし穴②:基板付きセンサーを無条件で印刷回路扱いにしてしまう 基板があるだけで8534.00に固定すると、センサー機能が重要な特性を与えるケースでズレが出ます。複合品のときは重要な特性の見極めが必要です。

落とし穴③:電気式の測定機器区分の取りこぼし 例えば圧力測定の9026.20には電気式の区分が存在します。電気式であること自体が分類の枝分かれになることがあります。

落とし穴④:通信機能付きセンサーモジュール 無線やネットワーク機能を持つモジュールは、通信機器との境界が論点になり得ます。製品構成が千差万別なため、仕様書と提示態様の精査が欠かせません。


1枚で整理する:BMSとセンサーの候補マップ

以下は、社内で議論を始めるための「候補の地図」です。確定税番ではなく、製品の提示態様ごとに論点が出やすい方向性として使ってください。

対象提示態様の典型論点になりやすい区分例(日本の6桁起点)
BMS(セル入り)電池パックとして機能・提示8507.60(リチウムイオン蓄電池)
BMS(セル無し)制御盤・制御ユニットとして提示8537.10(制御・配電用の盤等)、9032.89(自動調整機器)
BMS関連の部品盤・開閉器等に専用の部品として提示8538.90(部分品)
基板単体印刷回路として提示8534.00(印刷回路)
半導体センサー半導体デバイスとして提示8541.51(半導体ベースの変換器)
温度・圧力などの測定機器測定機器として提示9025(温度計等)、9026(圧力等)、9031(その他の測定・検査)

この表の各行が根拠を持つのは、日本の関税率表上の各品目説明とHSの解釈通則の考え方に基づきます。


2月後半に向けたアクションプラン

社内マスターを6桁と9桁で二層化する

日本の輸出入統計品目番号は、6桁HSに国内3桁が付いた9桁です。海外拠点や仕入先との会話は6桁で合わせ、申告や統計管理は9桁で運用する二層構造が有効です。

事前教示とBTIで、分類の不確実性を取り除く

分類で迷う製品は、早めに当局の判断を取りに行くほうが、監査・遅延・追加課税のリスクを下げられます。

日本の事前教示制度では、サンプル、写真、原材料、加工工程などの資料を添えて照会でき、文書による回答は原則3年間にわたって全国の税関で尊重されます。口頭照会は「参考」扱いにとどまり、文書回答とは効力が異なる点に注意が必要です。

EUのBTI(拘束的関税情報) は、一般に3年間EU全域で有効な法的決定として位置づけられており、すべてのEU加盟国の税関を拘束します。

分類ファイルを標準化する

監査対応まで見据えるなら、最低限、次のセットを製品ごとに揃えることを推奨します。

  1. 製品仕様書と機能説明(何を測り、何を制御し、何を保護するか)
  2. 構成部品表(主要部品、ヒューズや開閉器の有無、半導体センサーの有無)
  3. 写真、図面、外形、端子・コネクタ情報
  4. 梱包形態と同梱物(単体かセットか)
  5. 社内判断メモ(解釈通則の当てはめ、重要な特性の根拠)

このファイルがあるだけで、担当者が変わっても判断が再現でき、国別運用差に直面したときも修正が効きます。


まとめ

BMSとセンサーの分類は、単なるコード当てはめではなく、製品の提示態様と重要な特性を言語化する作業です。2月前半の見直しでは、次の順で整理すると迷いが減ります。

  1. セルを含むか、電池として提示されるか
  2. 制御盤か、自動調整機器か、部分品か
  3. センサーは半導体ベースの変換器か、測定機器か
  4. 基板は印刷回路か、制御系の部品か
  5. 6桁と9桁のマスター整合、当局照会の準備

ここまでを固めれば、分類ブレによる原価の揺れ、通関の差戻し、顧客への価格再提示といったビジネス上の手戻りを現実的に減らせます。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の製品や取引に対する法令上の助言、関税分類の確定判断、申告指示を行うものではありません。関税分類は、各国税関の規定、部注・類注、解釈通則、貨物の仕様、提示態様、契約条件、同梱物等により結論が変わる場合があります。実務適用にあたっては、最新の関係法令・公表資料を確認のうえ、必要に応じて税関の事前教示制度や専門家へ照会してください。

BMS・センサー分類 実務アクションパック

製品仕様の揺れに負けない、HSコード区分を社内で回し切るための実務設計


電動化とIoTが進むほど、BMS(Battery Management System)と各種センサーは、輸出入の現場で「分類が割れやすい」代表格です。理由は単純で、どちらも電池・制御・計測の境界に立つ部品やモジュールになりやすく、輸入形態(単体か、ユニットか、完成品の一部か)によって客観的性格が変わるからです。

しかもHSコードは、6桁までは国際的に共通でも、各国はその先を拡張して運用します。たとえば日本は9桁の統計品目番号を使い、6桁HSと国内コードの組み合わせで申告します。輸出と輸入で国内コードが一致しないこともあります。つまり、同じ製品でも「国」「輸出入」「申告実務」の条件によって結論が揺れやすいのが現実です。

そこで本記事では、BMSとセンサーの区分を短期間で安定させるための「BMS・センサー分類:実務アクションパック」を、ビジネス実務の観点から深掘りします。目指すのは、単発の正解探しではなく、社内で再現できる判断の仕組みを作ることです。


1. まず押さえるべき前提

HSコードは情報ではなく、運用のインフラである

1-1. HSは6桁までが世界共通——ただし最新版の読み替えが必要

HSは世界の貿易品目を体系化した分類で、WCO(世界税関機構)が管理しています。定期的な改正を重ねており、2022年1月1日に発効したHS 2022(2022年版)は、WCO公表資料によれば最新の改正版に位置付けられています。WCOはさらに、加速改正手続き(accelerated amendment process)の枠組みの下で、一定の品目について継続的な更新を進めています。

一方、各国の関税率表は6桁HSを基礎にしつつ、8桁や10桁などに拡張して詳細管理します。EUではCN(Combined Nomenclature)が8桁、TARIC(統合関税品目番号)が10桁という体系で運用されます。

1-2. 事業インパクトは「関税」だけではない

BMSやセンサーの分類が崩れると、次の領域に連鎖します。

  • 関税・通関の遅延、追加資料要請
  • 原産地(EPA/FTA)の判定、原価計算への波及
  • 輸出管理や規制品目スクリーニングの誤判定
  • 取引先への見積価格や納期コミットの崩れ

つまり分類は、貿易実務にとどまらず、営業・調達・設計変更管理・マスタ管理までを含む業務基盤です。


2. BMSの分類をブレさせない「3つの分岐」

同じBMSでも、輸入形態で見える性格が変わる

BMSは大きく次の3パターンに分けると、実務が回しやすくなります。


分岐A:電池セルと一体で入ってくるか

一体なら「電池として扱う」根拠が取りやすい

HSの第85類では、見出し8507(電気蓄電池)について、「蓄電池には、蓄電・給電機能に寄与する、または損傷から保護する付属部品を伴って提示されるものを含む」とされており、例として電気コネクタ、温度制御装置(サーミスタ等)、回路保護装置が挙げられています。電池が組み込まれる機器の保護筐体の一部を含む場合もある、という趣旨です。

この注記が実務上有力なのは、BMSが「電池を成立させる付属要素」として説明しやすいからです。セルと制御基板、温度保護、筐体などを含む構成は、製品の客観的性格が電池に寄りやすくなります。

米国の公開裁定(HQ H155376)でも、セルや基板などから成るBMSを、電池機能を支える構成として見出し8507に分類した例が示されています。EUの品目実務でも、BMSを含む一体型の電池システムをCNコード8507 60 00(リチウムイオン蓄電池)に紐づけて扱う記載が、EUR-Lex掲載の関税規則文書に見られます。

実務アクション セル同梱や電池ユニット形態であれば、BMS単体の機能説明より先に「8507注記に当てはまる付属部品か」を起点に整理すると、社内合意が速まります。


分岐B:配電・制御の盤やユニットとして成立しているか

成立しているなら「制御・配電機器」側の検討が必要

見出し8537は、8535や8536の機器を2つ以上備えた、電気の制御または配電用の盤・パネル・コンソール等を対象にします。

BMSが「電池の付属」ではなく、設備側の制御盤として独立している場合、8537が候補になり得ます。たとえば、充放電設備やラックの電力系統を制御する盤で、遮断・切替・保護を担う構成(リレー、遮断器、端子台など)が明確に備わり、盤としての客観的特性が強いケースです。

実務アクション 仕様書や図面から、8536に該当し得る構成要素(スイッチング・保護・接続の機器)を洗い出し、盤としての成立性を確認します。


分岐C:計測・監視・制御の「機能装置」寄りか

機能装置なら「計測・自動制御」側も同時に検討する

BMSは電池の保護・監視・均等化・通信まで含むことが多く、制御ロジックが強い場合があります。このとき、次の観点で計測・自動制御側の候補が浮上します。

  • 9031:その他の測定・検査機器(第90類で他に特掲されないもの)
  • 9032:自動調整または制御用の機器

実務アクション BMSの要件定義を、保護(過電流遮断等)・調整(セルバランス等)・計測(電圧・温度等)・通信(CAN等)に分解し、どの機能が「客観的性格の中心」かを社内で文章化します。ここを曖昧にしたままHS番号だけ決めると、設計変更のたびに崩れます。


3. センサー分類は「完成した計測機器」か「素子・IC」かで世界が変わる

実務で迷うポイントを先に固定する

センサーは、同じ測定対象でも製品の完成度によって分類が変わりやすい領域です。実務では、まず形態を次の2つに分けます。


3-1. 完成した計測機器・計測装置として販売されるセンサー

第90類の見出しから当てにいく

代表的な見出しは以下のとおりです。

  • 9025:温度計、湿度計、気圧計など
  • 9026:流量、液位、圧力など(液体・気体の変数)
  • 9031:第90類の他の見出しに特掲されない測定・検査機器
  • 9032:自動調整または制御用機器

実務アクション 型番単位で「測るだけ」か「制御まで自動でやる」かを分けます。センサーが単独で測定値を出すだけなら9025や9026側の検討が中心です。設定値に基づき弁やモータ等を制御する仕組みが本体に組み込まれ、客観的に自動制御装置といえる場合は9032が視野に入ります。


3-2. センサー素子・トランスデューサー・ICとして販売されるセンサー

第85類の注記を起点に整理する

第85類の注記では、半導体デバイスの定義に「半導体ベースのトランスデューサー」が含まれており、物理・化学現象を電気信号へ変換するデバイスとして定義されています。また8541および8542が他の見出しに優先する趣旨も示されています。

つまり、センサーが「計測機器」ではなく「半導体素子やICとしての性格」が強い場合、8541(半導体デバイス)や8542(電子集積回路)の検討が実務上不可欠になります。

実務アクション センサーを次の3層に分けて仕様を集めます。

  • 素子層:半導体ベースのセンサー素子、MEMS、ダイ
  • 回路層:信号処理IC、アンプ、A/D、制御IC
  • 製品層:筐体、表示、通信、校正、電源、取り付け機構

この分解をすると、同じ「圧力センサー」でも、素子販売か計測装置販売かで論点が別物になることが、社内で共有しやすくなります。


4. 実務アクションパックの中身

現場が止まらないための成果物を「テンプレ化」する

実務アクションパックは、結論のHS番号よりも、結論に至るプロセスと証跡を先に整えることを重視します。推奨の成果物は次の6点です。


成果物1:製品インテークシート

設計部門から最短で情報を取るための共通フォーマット

以下の項目が揃えば一次判断が可能になります。

  • 製品名、型番、用途、販売形態(単体・キット・ユニット組み込み)
  • 機能分解(計測・制御・保護・通信・電力変換など)
  • 構成部品(セル有無、半導体素子、保護回路、スイッチング機器等)
  • 入出力(電圧範囲、通信規格、アナログ・デジタル)
  • 写真、外観図、ブロック図、主要仕様書

成果物2:BMS分岐チャート

セル同梱・盤成立・計測機能寄りの三分岐で迷いを減らす

チャートは難しくするほど運用されません。実務では次の問いを順番に当てます。

  1. セルと一体で提示されるか
  2. 8535/8536の機器を複数備えた盤として成立しているか
  3. 自動制御の装置として客観的性格が立つか
  4. それでも残る場合は、他の見出しの該当性と除外規定を確認する

この順番にするだけで、会議が「候補の羅列」から「論点の絞り込み」に変わります。


成果物3:センサー分岐チャート

完成計測機器か素子・ICかを最初に固定する

  1. 表示・校正・出力が揃っていて、計測機器として販売されるか
  2. 目的変数が温度・圧力・流量などで、特定の見出しに当てられるか
  3. 自動調整または制御まで行う装置か
  4. 半導体素子・ICとしての性格が強いか

成果物4:分類メモ

関係者が同じ文章を読めるようにする1枚資料

分類メモの核となる6項目です。

  1. 申告対象の客観的特性(何が、何をするものか)
  2. 候補見出しと採否理由
  3. 採用した見出しの根拠(注記、定義、類似事例など)
  4. 除外した見出しの理由
  5. 適用範囲(どのSKU、どの仕様まで同一扱いか)
  6. 変更管理のトリガー(セル仕様・IC変更・筐体変更など)

成果物5:エビデンスパック

税関照会や社内監査に耐える証拠一式

米国では関税分類の裁定申請(19 CFR 177.2)において、物品の完全な記述・用途・写真やサンプルなどの提出が求められます。日本の事前教示でも書面回答が税関検査で尊重されること、EUでもBTI(拘束的関税情報)が法的確実性の手段として位置づけられていることは共通しており、いずれも判断のための資料の質が問われます。


成果物6:マスタ連携の運用設計

分類を「知識」から「データ」へ落とす

分類は担当者の頭の中に置いた瞬間に崩れます。SKUマスタに次を持たせます。

  • HSコード(国別の桁まで)
  • 適用開始日と根拠資料リンク
  • 仕様の前提条件
  • 設計変更時の再判定フラグ

5. 30日で立ち上げる運用ロードマップ

分類プロジェクトを短期で「仕組み化」する

1週目:対象範囲と型番棚卸し

  • 対象SKUの一覧化
  • 輸入形態別にグルーピング(セル同梱・単体基板・計測装置など)
  • 不明点を設計に返すための質問票を確定

2週目:一次分類と論点リスト化

  • 候補見出しの一次当て
  • 分岐チャートで論点を残す
  • 関係者レビュー会を30分単位で回す

3週目:証跡整備とリスク分類

  • 分類メモをSKU単位で固定
  • 高リスク品は事前教示・裁定の検討対象に上げる
  • 監査に耐えるフォルダ構造を作る

4週目:マスタ実装と変更管理の接続

  • ERPや貿易システムへ反映
  • 設計変更プロセスに分類再判定を組み込む
  • 月次で差分レビューを回す

6. 実務で起きがちな失敗と先回りの打ち手

仕様の説明が「機能」だけで終わっている

税関や監査で問われるのは客観的特性です。ブロック図、構成部品、形態、提示のされ方を揃えます。

国別の桁の違いを放置している

HS6桁は共通でも、国別の拡張桁は運用が分かれます。日本は9桁で申告し、国内コードの扱いもあります。EUはCN8桁を基礎にし、TARICで10桁まで管理します。

口頭の回答を「正式」と誤解している

日本の事前教示制度では、書面回答が尊重される一方、口頭回答は原則として税関検査で尊重されません。実務は必ず書面と証跡に寄せます。


参考資料

  1. WCO HS Nomenclature 2022(2022年1月1日発効、加速改正手続きの枠組みも参照)
  2. 米国商務省 ITA:HSは6桁共通、構造の概説
  3. 日本の統計品目番号(9桁は6桁HSと国内コードの組み合わせ)
  4. 第85類 注記(8507の付属部品、半導体ベースのトランスデューサー定義など)—Census.gov(米国Schedule B / HTS)
  5. 国連統計部(UNSD)HS見出しの定義:9025、9026、9031、9032、8536、8537、8541、8542
  6. EU:BTIプロセスのガイダンス(CN8桁、TARIC10桁、BTIの位置付け等)—Taxation and Customs Union
  7. 日本税関:事前教示(品目分類)制度の概要(書面回答の尊重、有効期間など)
  8. 米国:関税分類の裁定申請に求められる記載事項(19 CFR 177.2)—Cornell LII
  9. 米国公開裁定 HQ H155376(BMSを8507として扱う論旨の例)—Customs Mobile


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、関税分類、法令解釈、通関手続等に関する助言または保証を行うものではありません。実際のHSコードや統計品目番号の決定は、商品の客観的特性、提示形態、取引条件、各国の関税率表および税関の運用等により異なり得ます。必ず最新の法令・通達・関係当局の公表情報を確認し、必要に応じて税関への事前教示申請や通関士、弁護士等の専門家へご相談ください。本記事の内容は正確性に配慮して作成していますが、完全性、最新性、特定目的への適合性を保証するものではなく、本記事の情報に基づいて生じた損害について一切の責任を負いません。

HS2022 第25類:塩、硫黄、土石類、プラスター、石灰及びセメント(Salt; sulphur; earths and stone; plastering materials, lime and cement)

用語は以下で統一します。

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 昇華硫黄/沈降硫黄/コロイド硫黄 → 第28類 2802 (世界関税機関)
    • アースカラー(酸化鉄として70%以上) → 第28類 2821 (世界関税機関)
    • ドロマイトラミングミックス → 第38類 3816(HS2022で明確化) (世界関税機関)
    • 舗装用の石・縁石・敷石/モザイクキューブ等/屋根用スレート → 第68類 6801〜6803 (世界関税機関)
    • 筆記・図画用チョーク/テーラースチョーク → 第96類 9609(天然チョーク2509と混同注意) (世界関税機関)
    • ビリヤードチョーク → 第95類 9504 (世界関税機関)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 加工度:粗品/洗浄/粉砕等の“物理処理まで”か、焼成・混合・化学的処理までしているか(注1が強い) (世界関税機関)
    2. 鉱石(第26類)との境界:砂でも“金属含有砂(metal-bearing sands)”は第26類へ(2505の但書) (世界関税機関)
    3. 第68類(石・セメント等の製品)との境界:石材が“製品化(タイル・舗装石など)”されると第68類へ飛びやすい(注2(f)) (世界関税機関)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 石綿(アスベスト):2524自体だけでなく「石綿を含有するおそれのある製品」も輸入手続が絡みやすい(後述) (厚生労働省)
    • HS改正影響:HS2017の2518.30(ドロマイトラミングミックス)がHS2022で3816へ移行(過年度データ・契約で旧コードが残ると事故りやすい) (税関ポータル)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し文言+注)が最優先です。第25類は注(Notes)が加工度と除外を強く縛るため、品名の印象より「注に合うか」を先に見ます。 (世界関税機関)
    • GIR6(号=6桁):6桁の分岐は、典型的に「粉状/塊」「焼成の有無」「用途を示す文言(道路用骨材など)」「成分割合(例:CaF2 97%)」で割れます。 (世界関税機関)
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
    • 材質(鉱物名):石英なのか珪砂なのか、カオリンなのか他の粘土なのか、など。
    • 状態(形状・粒度):粉末・フレーク・ブロック、砕石、粒状など。
    • 加工度(重要):洗浄・粉砕・ふるい分け=“OK寄り”、焼成・混合・特定用途向けの調製=“NG寄り”。(ただし見出し自体が「whether or not calcined」を許すものもあります) (世界関税機関)
    • 用途が見出しで条件になっていないか:例)2521は「石灰・セメント製造用の石灰石」寄りの見出し、2517は道路・鉄道バラスト等に使う砕石等が中心。 (世界関税機関)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:鉱物性生産品か?(第5部:第25〜27類)
    • 鉱物・土石・塩・硫黄・石灰・セメント系 → 次へ
    • 化学品として“反応・精製”をしている → 第28類〜(要検討)
  • Step2:加工度チェック(第25類注1)
    • 粗品/洗浄/粉砕/粉状化/ふるい分け/浮遊選鉱・磁選等(結晶法除く)まで → 第25類候補 (世界関税機関)
    • 焼成・混合・見出しで許される処理を超える加工 → 原則として第25類から外れやすい(見出しで明示的に許す例外は別途) (世界関税機関)
  • Step3:除外規定(注2)に当たらないか
    • 昇華硫黄(2802)/鉄分70%以上のアースカラー(2821)/ドロマイトラミングミックス(3816)/舗装石(6801等)/筆記用チョーク(9609)…など (世界関税機関)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第25類 ↔ 第26類:砂でも「金属含有砂」は第26類(2505の但書)。 (世界関税機関)
    • 第25類 ↔ 第28類:硫黄・石灰など“同じ元素/化合物名”でも、形態(昇華・沈降)や処理で第28類へ。 (世界関税機関)
    • 第25類 ↔ 第68類:石材が“建材製品”まで加工されると第68類へ(注2(f))。 (世界関税機関)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
2501塩(食塩・変性塩含む)、純塩化ナトリウム、海水工業用塩、食用塩、海水添加(固結防止等)を含み得るが、調製の程度に注意 (世界関税機関)
2502焼いていない黄鉄鉱黄鉄鉱(未焙焼)焙焼したものは別検討 (世界関税機関)
2503硫黄(昇華・沈降・コロイドを除く)粉状硫黄、塊状硫黄昇華硫黄等は2802へ(注2(a)) (世界関税機関)
2504天然黒鉛粉状黒鉛、フレーク黒鉛天然/人工(別類)で分かれやすい (世界関税機関)
2505天然砂(全種)※第26類の金属含有砂を除く珪砂、鋳物砂、砂「金属含有砂」は第26類(但書) (世界関税機関)
2506石英(砂を除く)、珪岩(石英岩)石英塊、珪岩ブロック砂(2505)との区別に注意 (世界関税機関)
2507カオリン等のカオリン質粘土(焼成の有無を問わない)カオリン、焼成カオリン“焼成OK”が明記されている点が重要 (世界関税機関)
2508その他の粘土等(膨張粘土=6806除外)、耐火鉱物等(焼成の有無を問わないもの含む)ベントナイト、耐火粘土、ムライト等「膨張粘土」は6806へ(見出し内で除外) (世界関税機関)
2509チョーク(天然)天然チョーク(原料)“筆記用チョーク”は9609へ(注2(k)) (世界関税機関)
2510天然リン酸塩等リン鉱石系(天然リン酸塩)粉砕の有無で号分岐 (世界関税機関)
2511重晶石、炭酸バリウム(焼成の有無問わず)※酸化バリウム除外バライト、ウィザライト酸化バリウム(2816)除外が明記 (世界関税機関)
2512珪質の化石粉等(焼成可)※見掛比重1以下珪藻土、キースルグール数値条件「見掛比重1以下」 (世界関税機関)
2513軽石・エメリ等の天然研磨材(加熱処理可)軽石、ガーネット砂研磨材用途でも“天然”か等確認 (世界関税機関)
2514スレート(粗/単純切断まで)スレート原石、スレートブロック屋根用等の製品は6803(注2(f)) (世界関税機関)
2515大理石等の建築石材(見掛比重2.5以上)/アラバスター大理石ブロック2.5以上要件、加工度(“単純切断まで”) (世界関税機関)
2516花崗岩等の建築石材(粗/単純切断まで)花崗岩ブロック、砂岩ブロックタイル等は第68類へ行きやすい (世界関税機関)
2517砂利・砕石等(道路/鉄道バラスト等)/タールマカダム等砕石、道床バラスト、タールマカダム注3により“2517優先”の特則あり (世界関税機関)
2518ドロマイト(焼成・焼結の有無を問わない)ドロマイト、焼成ドロマイトドロマイトラミングミックスは3816へ (世界関税機関)
2519菱苦土石、溶融マグネシア、焼結マグネシア、酸化マグネシウム等マグネサイト、マグネシア“耐火原料”でも混合・調製は注意 (世界関税機関)
2520石膏・無水石膏、プラスター(焼石膏等)天然石膏、焼石膏(プラスター)石膏/プラスターで号分岐 (世界関税機関)
2521石灰石フラックス等(石灰/セメント製造に用いる種類)石灰石(製造用)建築石材(2515/2516)との峻別 (世界関税機関)
2522生石灰・消石灰・水硬性石灰(ただし2825の酸化/水酸化Ca除外)生石灰、消石灰2825除外の注意(化学品との境界) (世界関税機関)
2523各種セメント(ポルトランド、アルミナ等)/クリンカーセメントクリンカー、白色セメント“クリンカー”と“セメント”で分岐 (世界関税機関)
2524石綿(アスベスト)クリソタイル等規制・禁止が絡む(後述) (世界関税機関)
2525雲母(スプリッティング含む)/雲母くず雲母、雲母粉粉・くずで号分岐 (世界関税機関)
2526ステアタイト(滑石岩)、タルクタルク、滑石“粉砕の有無”で号分岐 (世界関税機関)
2527(欠番)現行HSでは見出しなしHS版違いの古い資料で出てきたら要注意 (世界関税機関)
2528天然ホウ酸塩等(焼成可)ホウ砂鉱、天然ホウ酸(85%以下)“天然か/分離品か”など確認 (世界関税機関)
2529長石、白榴石等、蛍石(フルオルスパー)長石、蛍石蛍石はCaF2含有率で号分岐(97%) (世界関税機関)
2530他に該当しない鉱物バーミキュライト(未膨張)、天然硫酸Mg等注4で例示あり(“未膨張”など) (世界関税機関)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • 粉砕・粉末化の有無(例:2526.10/2526.20) (世界関税機関)
    • 焼成(calcined)・焼結(sintered)の有無(例:2518、2512 等で明示) (世界関税機関)
    • 用途・性質を示す文言(例:2517 “road metalling / ballast”等) (世界関税機関)
    • 成分割合の閾値(例:蛍石CaF2 97%) (世界関税機関)
    • 物性値の閾値(例:2512 見掛比重1以下、2515 見掛比重2.5以上) (世界関税機関)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 2505.10(珪砂・石英砂) vs 2505.90(その他の天然砂) (世界関税機関)
      • どこで分かれるか:砂の鉱物学的性状(シリカ/石英砂か、それ以外か)
      • 判断に必要な情報:鉱物成分(SiO₂比率、粒度)、用途(鋳物・ガラス原料等)、試験成績
      • 典型的な誤り:「鋳物砂」を用途だけで決めてしまい、実体がシリカ砂なのに“その他”へ入れる
    2. 2507.00(カオリン・カオリン質粘土) vs 2508.xx(その他の粘土等) (世界関税機関)
      • どこで分かれるか:粘土の鉱物種(カオリン系か、ベントナイト等か)
      • 判断に必要な情報:鉱物分析(XRD等)、製造工程(焼成の有無は両方で許容され得る点に注意) (世界関税機関)
      • 典型的な誤り:「白い粘土=カオリン」と決め打ち(実際は他粘土・混合の可能性)
    3. 2515/2516(建築石材ブロック等) vs 2517.41/2517.49(石材の粒・粉) (世界関税機関)
      • どこで分かれるか:**ブロック/スラブ(粗・単純切断)**なのか、粒・チップ・粉なのか
      • 判断に必要な情報:形状(ブロック・スラブ・粒)、加工(研磨・表面加工の有無)、用途(骨材等)
      • 典型的な誤り:大理石チップを「大理石(2515)」とだけ見て分類(実際は2517.41/49)
    4. 2517の“優先ルール”(類注3):2517に該当し得るなら他の項より2517へ (世界関税機関)
      • どこで分かれるか:同じ“石”でも、道路用砕石・バラスト等の性格を持つか
      • 判断に必要な情報:用途(契約書・仕様)、粒度規格、写真、試験成績
      • 典型的な誤り:「素材は花崗岩だから2516」とし、砕石用途(2517)を見落とす
    5. 2518(ドロマイト) vs 3816(ドロマイトラミングミックス) (税関ポータル)
      • どこで分かれるか:ドロマイトそのもの(焼成/焼結含む)か、**耐火物の“ミックス(ラミングミックス)”**として調製されたものか
      • 判断に必要な情報:配合(混合の有無、結合材・添加物)、用途(耐火物施工用)、SDS/仕様書
      • 典型的な誤り:HS2017の感覚で2518.30相当として申告(HS2022では注2(e)で除外され3816へ) (世界関税機関)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第5部(鉱物性生産品:第25〜27類)は、部注が設定されていない扱いで運用される例があり、実務上は各類(Chapter)注の影響が大きいです。 (カナダ国境サービス機関)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 「第25類に入るか」は**第25類の注(加工度・除外)**が実質の基準になります。
      例:同じ硫黄でも「昇華硫黄」は注2(a)で第28類へ、一般硫黄は2503へ。 (世界関税機関)
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • (部注がない前提なので)“部注で飛ぶ”というより、各類注・見出しの除外で飛ぶのが典型です(第25類注2 → 第28類/第38類/第68類 等)。 (世界関税機関)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1(加工度の上限):粗品、洗浄、粉砕、粉状化、ふるい分け、浮遊選鉱・磁選等の物理処理(結晶法除く)まで。焼成・混合・過度の加工は原則含まない。またアンチダスティング剤の添加は、用途特化にならない範囲で許容。 (世界関税機関)
    • 注2(除外):昇華硫黄(2802)、鉄分70%以上のアースカラー(2821)、ドロマイトラミングミックス(3816)、舗装石・モザイク等(6801〜6803)、筆記用チョーク(9609)等。 (世界関税機関)
    • 注3(2517優先):2517と他項の両方に該当し得る場合は、2517へ。 (世界関税機関)
    • 注4(2530の例示):未膨張のバーミキュライト等、アースカラー、琥珀、海泡石(加工の程度に制限あり)等が例示。 (世界関税機関)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 明確な“定義語”より、加工度を縛る規定(注1)が実務上の“定義”として機能します。 (世界関税機関)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 注2(a) 昇華硫黄等 → 2802
    • 注2(b) Fe₂O₃として70%以上のアースカラー → 2821
    • 注2(e) ドロマイトラミングミックス → 3816
    • 注2(f) 舗装用石・モザイク等・屋根用スレート → 6801〜6803
    • 注2(ij)/(k) ビリヤードチョーク → 9504、筆記用/テーラースチョーク → 9609 (世界関税機関)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:加工度(注1)で第25類に残る/外れる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 工程(洗浄・粉砕・ふるい・選鉱・焼成・混合の有無)
      • 添加剤の有無と目的(アンチダスティングか、用途特化か)
    • 現場で集める証憑:
      • 製造工程フロー、SDS/MSDS、成分表、粒度分布、写真、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • “原料鉱物っぽい”という印象で第25類に入れるが、実際は焼成・混合で別章に該当(注1/注2の見落とし) (世界関税機関)
  • 影響ポイント2:除外(注2)の“飛び先”が明確に決まる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 該当品が注2(a)〜(k)のどれに当たるか(硫黄の形態、鉄分割合、用途/製品形態など)
    • 現場で集める証憑:
      • 分析表(Fe₂O₃%、CaF₂%等)、形態説明(昇華・沈降等)、用途資料
    • 誤分類の典型:
      • 天然チョーク(2509)と筆記用チョーク(9609)を混同する (世界関税機関)
  • 影響ポイント3:2517優先(注3)で“素材”より“区分ルール”が勝つ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 道路用骨材/バラスト等の性格(用途・粒度)
    • 現場で集める証憑:
      • 用途契約、規格書、粒度試験、荷姿写真
    • 誤分類の典型:
      • 花崗岩砕石を、素材(2516)で分類してしまう(注3の特則見落とし) (世界関税機関)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:“硫黄=2503”と決め打ちし、昇華硫黄等を含めてしまう
    • なぜ起きる:品名が同じ「硫黄」だから
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):注2(a)で昇華硫黄等は第28類(2802)へ (世界関税機関)
    • 予防策:
      • 硫黄の製法・形態(昇華/沈降/コロイド/通常)をSDSで確認
      • 取引品名に“sublimed / precipitated”が入っていないか確認
  2. 間違い:アースカラーを2530や2508で申告したが、Fe₂O₃として70%以上だった
    • なぜ起きる:顔料用途=土石類という思い込み
    • 正しい考え方:注2(b)で70%以上は2821へ (世界関税機関)
    • 予防策:
      • 分析表でFe₂O₃換算を必ず取得(社内:品質保証/分析部門に依頼)
      • 仕様書に「iron oxide content」を記載させる
  3. 間違い:砂を2505にしたが、実は金属含有砂だった
    • なぜ起きる:「砂=2505」と思い込む
    • 正しい考え方:2505は「第26類の金属含有砂を除く」と明記 (世界関税機関)
    • 予防策:
      • 鉱物名(例:イルメナイト砂、ジルコン砂等)・金属含有の有無を確認
      • “metal-bearing sands / mineral sands”の表記がないかチェック
  4. 間違い:石材タイル・舗装石を2515/2516で申告
    • なぜ起きる:素材が大理石・花崗岩だから
    • 正しい考え方:注2(f)で舗装用石・モザイク等は第68類へ(6801〜6803等) (世界関税機関)
    • 予防策:
      • 加工度(切断・研磨・面取り・規格形状)を写真と図面で確認
      • “tile / setts / curbstone / flagstone / mosaic”の文言をインボイスで拾う
  5. 間違い:砕石を素材の項(2515/2516)で分類し、2517(砕石等)を外す
    • なぜ起きる:素材名に引っ張られる
    • 正しい考え方:注3により、2517に該当し得る場合は2517へ (世界関税機関)
    • 予防策:
      • 用途(道路/鉄道/コンクリ骨材)の確認、粒度規格の入手
      • 砕石かブロックか(荷姿写真)を必須資料にする
  6. 間違い:ドロマイトラミングミックスを2518のまま運用(過年度踏襲)
    • なぜ起きる:HS2017時代のコード・マスタが残る
    • 正しい考え方:HS2022で注2(e)により第25類から除外、3816へ (世界関税機関)
    • 予防策:
      • “ramming mix”の有無(配合品か)を仕様書で確認
      • HS改正時に「対象品目の再棚卸し」を実施(購買・生産・通関の合同)
  7. 間違い:天然チョーク(2509)と筆記用チョーク(9609)を混同
    • なぜ起きる:日本語でどちらも「チョーク」
    • 正しい考え方:注2(k)で筆記用/テーラー用は9609へ (世界関税機関)
    • 予防策:
      • 形態(スティック状、包装、ブランド)と用途(筆記/図画)を確認
      • “chalk sticks / writing chalk”表記があれば要注意
  8. 間違い:蛍石(フルオルスパー)の号を分析なしで決める
    • なぜ起きる:外観で判断できない
    • 正しい考え方:2529.21/2529.22はCaF₂含有率97%で分岐 (世界関税機関)
    • 予防策:
      • CaF₂%の試験成績書を必須化(購買条件に入れる)
      • サプライヤーが出せない場合は第三者分析

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します(誤ると原産性判断が崩れます)。
    • 例:同じ“耐火材料系”でも、HS2022でドロマイトラミングミックスが3816へ移ると、適用PSRそのものが変わり得ます。 (税関ポータル)
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品のHSは合っているが、非原産材料のHSがズレていてCTC判定が崩れる
    • “混合・調製”で章が変わるのに、原料の感覚で第25類のまま扱う

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • RCEPのPSR(付属書3A)は、原文としてはHS2012に基づく旨が明記されています。 (Australian Border Force Website)
  • 一方で、RCEPはHS2022へトランスポーズ(移し替え)したPSRが採択され、2023-01-01から各締約国で実施とされています(日本の公表資料でも同趣旨)。 (外務省)
  • CPTPPは、PSRや関税約束が(少なくとも当初は)HS2012ベースで確定している旨の説明があります。 (Australian Border Force Website)
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定本文/運用文書でどのHS版を参照するかを確認
    • 会社のHSマスタ(HS2022)と協定PSR(HS2012等)の間は、税関・関係当局が出すトランスポーズ版/対応表を使って突合(独自変換は事故の元)

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 原産性判断に必要になりやすい情報
    • 材料表(BOM)、原価(RVCの場合)、工程フロー、原産国
    • 非原産材料のHS(少なくとも6桁)
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 原産地申告(自己申告を含む)では、最低限のデータ要件としてHSの分類(6桁)が含まれる旨のガイダンスがあります。 (税関ポータル)
  • 実務Tip(第25類らしい論点)
    • 「採掘しただけ」なのか、「焼成・混合」したのかで、WO(完全生産品)相当の整理になるか、CTC/RVCが要るかが変わりやすい

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022範囲変更(移行)/削除2518.30 → 3816.00ドロマイトラミングミックスを第25類から第38類へ移行(第25類注2(e)で除外、3816に含める)旧マスタ踏襲で誤申告・PSR誤適用リスク。耐火物原料の扱い見直しが必要 (税関ポータル)
HS2017→HS2022文言修正/範囲明確化第25類 注2(e)第25類の除外に「ドロマイトラミングミックス(3816)」を追加第25類に残れないことが明確化。仕様書で“ramming mix”確認が必須 (税関ポータル)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料(相関表、各国税関の解説等):
    • 日本税関公表の HS2022–HS2017 相関表で、3816.00に「dolomite ramming mix」が含まれ、HS2017の2518.30から移る扱いが示されています。 (税関ポータル)
    • 日本税関のHS2022解説資料で、「第25類のドロマイトラミングミックスを第38類へ移行」する趣旨(耐火セラミック分野の発展等)を説明しています。 (税関ポータル)
    • HS条文(HS2022 第25類注2(e))として、ドロマイトラミングミックスが第25類から除外されることが明記されています。 (世界関税機関)
  • どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか:
    • 相関表で「旧:2518.30 → 新:3816.00」の移転が示されていること、かつ HS2022の注2(e) で第25類から除外されることから、「第25類ではなく第38類(3816)で扱うのがHS2022の整理」と判断できます。 (税関ポータル)
  • 補足(相関表の位置づけ):
    • WCOの相関表は“実施を助けるガイド”であり法的地位はない旨も説明されています。最終判断は各国税関に依ります。 (世界関税機関)

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れでの整理(主要なもの)
    • 本回答で一次資料として根拠を示せている範囲では、**第25類で明確に大きな動きとして確認できるのはHS2017→HS2022の「ドロマイトラミングミックス移行」**です。 (税関ポータル)
    • それ以前(HS2007→2012→2017)の第25類内の改正については、取引対象品目が多い場合、WCO/税関の相関表で個別確認する運用を推奨します(協定PSRのHS版差も絡むため)。
  • 参考としての“欠番”注意:
    • 第25類には [25.27] のように見出しが設定されていない番号が存在します(古い資料・社内コードで「2527」を見た場合はHS版と対応関係の点検が必要です)。 (世界関税機関)

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“ramming mix”を原料ドロマイトとして申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):注2(e)(ドロマイトラミングミックスは第25類除外) (世界関税機関)
    • 起きやすい状況:インボイスが “Dolomite” とだけ書き、混合・施工用の実態が伝わらない
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、原産地判断や契約価格条件の見直し(一般論)
    • 予防策:仕様書に「ramming mix」「binder有無」「用途(耐火物施工)」を明記
  • 事例名:石材を“ブロック”扱いで申告したが実は舗装石
    • 誤りの内容:注2(f)(舗装用石等は第68類へ) (世界関税機関)
    • 起きやすい状況:“setts/curbstone/flagstone”を訳さず「石材」としてしまう
    • 典型的な影響:検査強化、分類補正(一般論)
    • 予防策:写真・寸法図、加工内容(面取り、規格形状)を事前提出
  • 事例名:天然チョーク原料と筆記用チョークの混同
    • 誤りの内容:注2(k)(筆記用/テーラー用は9609) (世界関税機関)
    • 起きやすい状況:品名が “chalk” のみ
    • 典型的な影響:税率差・統計誤り、補正(一般論)
    • 予防策:用途(筆記か原料か)、形状(スティック包装か粉体か)を明確化
  • 事例名:昇華硫黄を2503で申告
    • 誤りの内容:注2(a)に抵触(2802へ) (世界関税機関)
    • 起きやすい状況:化学品サプライヤーのSDS情報を通関へ共有していない
    • 典型的な影響:差し戻し、検査、補正(一般論)
    • 予防策:SDSと製法(sublimed等)の共有を必須に

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • 検疫・衛生(SPS等)
      • **食用の塩(食品)**は、食品衛生法に基づき輸入届出が必要で、検疫所で審査・検査要否判断が行われます(届出済証が通関で必要になるケース)。 (厚生労働省)
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制
      • 第25類そのものは“動植物”ではないため通常は中心論点になりません(ただし混載品・副材料は別途)。
    • 安全保障貿易管理(該当する場合)
      • 第25類は一般に原料鉱物が多く、個別該非は品目・用途次第です(特定用途向けの調製品や関連装置等は別章の可能性)。
    • その他の許認可・届出
      • 石綿(アスベスト):労働安全衛生法の枠組みで、石綿や一定濃度超で含有する製品等の製造・輸入等が禁止とされる旨が示されています。 (厚生労働省)
      • 「石綿を含有するおそれのある製品」の輸入通関では、許可証や確認資料の取り扱い等、税関通知で通関実務が示されている例があります。 (税関ポータル)
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 食品:厚生労働省(食品等輸入手続) (厚生労働省)
    • 石綿:厚生労働省(石綿関係情報・通関手続情報) (厚生労働省)
    • 税関実務:税関通知・税関相談(必要に応じて)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 食品:成分・製造工程資料、必要に応じ衛生証明・試験成績書、届出済証 (ジェトロ)
    • 石綿:SDS、非含有証明/試験、(例外輸入なら)許可証写し等 (税関ポータル)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 鉱物名(英名・学名)、用途、形状(粉/粒/ブロック)
    • 工程(洗浄・粉砕・焼成・混合・添加剤)
    • 分析表(Fe₂O₃%、CaF₂%、粒度、比重など)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第25類注1(加工度)、注2(除外)、注3(2517優先)
    • 第26類(鉱石)・第28類(化学品)・第68類(石材製品)への飛び先を再点検 (世界関税機関)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に “calcined / sintered / ramming mix / chalk / setts” 等の要注意語がないか
    • 代表写真、仕様書、SDSを添付できる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 食品(食用塩等):食品衛生法の輸入届出 (厚生労働省)
    • 石綿:禁止・確認・通関手続(該当可能性があれば最優先で確認) (厚生労働省)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022 Edition(HS2022の位置づけ、補完改正、相関表案内)[参照日:2026-02-18] (世界関税機関)
    • WCO HS2022 Chapter 25(条文:見出し・注・6桁構造)[参照日:2026-02-18] (世界関税機関)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 日本税関:第25類 類注(注1〜4、除外含む)[参照日:2026-02-18] (税関ポータル)
    • 日本税関:HS2022改正資料(ドロマイトラミングミックスの移行説明)[参照日:2026-02-18] (税関ポータル)
    • 日本税関:HS2022–HS2017 相関表(3816.00/2518.30 等)[参照日:2026-02-18] (税関ポータル)
    • 日本税関:原産地(PSR)検索ポータル[参照日:2026-02-18] (税関ポータル)
    • 日本税関:原産地申告(自己申告)ガイド(最低限データ要件にHS6桁等)[参照日:2026-02-18] (税関ポータル)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
  • その他(規制・手続)
    • 厚生労働省:石綿含有製品等の製造・輸入等の禁止に関する情報(法令抜粋含む)[参照日:2026-02-18] (厚生労働省)
    • 日本税関:労働安全衛生法に係る有害物等の輸入通関手続(石綿関連の通関実務含む)[参照日:2026-02-18] (税関ポータル)
    • 厚生労働省:食品等輸入手続(食品衛生法の輸入届出)[参照日:2026-02-18] (厚生労働省)
    • JETRO:塩の輸入手続(日本)[参照日:2026-02-18] (ジェトロ)
    • (参考)第5部(鉱物性生産品)の部注がない扱いの例(カナダ税関:Section Notesの案内)[参照日:2026-02-18] (カナダ国境サービス機関)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。