用語は次のとおり統一します。**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**です。
0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)
- この類に入る代表例(3〜6個):
- 板ガラス(未加工):フロート板ガラス、引き板ガラス、ロール板ガラス(7003〜7005)
- 板ガラス(加工済):曲げ・面取り・穴あけ・印刷等をした板ガラス(ただし枠なし等の要件あり)(7006)
- 安全ガラス:強化(tempered)または合わせ(laminated)ガラス(7007)
- ガラス容器(梱包・運搬用):瓶、ジャー、アンプル、栓・蓋等(7010)
- 食器・台所用・室内装飾用ガラス製品(7013)
- ガラス繊維・グラスウールとその製品(7019)
- この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
- ガラスフリット、釉薬、ガラス粉等 → 3207(第32類)
- 模造宝飾(アクセサリー完成品) → 第71類(例:7117)
- 光ファイバーケーブル → 8544(第85類)
- 電気用碍子・絶縁物品 → 8546/8547(第85類)
- 車両等(第86〜88類)用の窓で、枠付き/加熱等の電気・電子装置を内蔵するもの → 車両等の部分品側へ(例:自動車は8708.22等)
- 光学的に加工されたガラスの光学要素(レンズ等) → 第90類(例:9001)
- 実務での最重要分岐(1〜3個):
- 板ガラスの状態:未加工(7003〜7005)か、加工(7006)か、安全ガラス(7007)か
- 容器の性格:運搬・梱包用(7010)か、食卓・台所等の用途(7013)か
- グラスウール判定:化学組成が「注」で定義され、7019か6806かが分かれる
- (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
- **自動車用の窓(枠付き/熱線・センサー等内蔵)**は、HS2022改正で境界が明確化されており、誤ると「第70類の安全ガラス」ではなく「第87類の部分品」になり得ます。
- ガラス繊維(7019)の細分はHS2022で大きく組み替えられており、統計・関税・PSR(原産地規則)に影響しやすいです。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)
1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)
- この類で特に効くGIR:
- GIR1(見出し+注で決める)が中心です。第70類は、注(Notes)に「この類に入らないもの(除外)」や、“worked(加工)”の扱い、“glass wool(グラスウール)”の定義、“lead crystal(鉛クリスタル)”の定義が明確に置かれており、まず注から当てにいくのが安全です。
- **GIR6(号=6桁の選択)**では、たとえば安全ガラスの「強化/合わせ」、板ガラスの「製法(ロール/引き/フロート)」「被膜(反射等)有無」、ガラス繊維の「結合方法(機械的/化学的)」「織物の開口・密閉」等の分岐が効きます。
- 「品名だけで決めない」ための観点:
- 状態(未加工/加工/安全ガラス)、形状(シート・棒・管・成形品)、組込み部材(枠付き、他材と一体)、用途(梱包用容器か、食卓用品か、車両部品か)、**技術特性(熱膨張係数、PbO含有、グラスウールの化学組成)**が分岐点です。
1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)
- Step1:材質が「ガラス」か確認
- 「ガラス」には溶融石英(fused quartz)やその他溶融シリカも含む扱いです。
- ガラス繊維/グラスウールの可能性があるなら、まず7019を疑います。
- Step2:“どの形・状態か”で項(4桁)を当てる
- スクラップ・カレット → 7001(ただしCRT由来等は別)
- 棒・管・球 → 7002
- 板ガラス(未加工)→ 7003〜7005(製法で分岐)
- 板ガラス(加工)→ 7006(枠なし等)
- 安全ガラス → 7007
- 複層ガラスユニット → 7008
- 鏡 → 7009
- びん・容器(梱包用)→ 7010
- ランプ用ガラスバルブ等 → 7011
- 食器・装飾等 → 7013
- 信号用ガラス/光学要素(非光学加工)→ 7014・7015
- 建材ガラスブロック等 → 7016
- 実験・衛生・薬用ガラス器具 → 7017
- ガラスビーズ等 → 7018
- ガラス繊維・グラスウール → 7019
- その他 → 7020
- Step3:除外(他類へ飛ぶ)チェック
- 車両用窓(枠付き/熱線等内蔵)や光学加工品などは、第70類注で除外されます。
- よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
- 第70類(安全ガラス7007) vs 第87類(自動車部分品8708.22等):枠付きか/加熱・電気電子装置内蔵かが大きい。
- 第70類(グラスウール7019) vs 第68類(鉱物性ウール6806):化学組成で決まる。
- 第70類(光学要素“非光学加工”7014/7015) vs 第90類(光学加工済9001等):研磨・研削等の光学加工の有無。
2. 主な項(4桁)とその内容
2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)
- 原則:
- 第70類は4桁見出しが比較的少ないため、原則として全列挙します(実務での入口表として)。
| 項番号(4桁) | 見出しの要旨(日本語) | 典型例(製品名) | 重要な分岐条件/除外/注意点 |
|---|---|---|---|
| 7001 | ガラスのくず・スクラップ、カレット、塊状ガラス | カレット、ガラス塊 | HS2022ではCRT由来等の「活性化ガラス」を除外(→85.49へ) |
| 7002 | 未加工のガラス球・棒・管 | 石英ガラス管、低膨張ガラス管 | 管は溶融石英/低膨張/その他で分岐(係数条件あり) |
| 7003 | 鋳造・圧延(ロール)ガラス(板・形材)、未加工 | ロール板ガラス、型板ガラス | 未加工が前提(加工すると7006等) |
| 7004 | 引き・吹きガラス(板)、未加工 | 引き板ガラス | 同上(加工すると7006等) |
| 7005 | フロート板ガラス・研磨板ガラス(板)、未加工 | フロートガラス、表面研磨ガラス | 反射/吸収等の薄膜コートは7005側で扱うことが多い(“worked”とは別概念) |
| 7006 | 7003〜7005のガラスを曲げ・面取り・穴あけ・印刷等「加工」したもの(枠なし等) | 面取りガラス、穴あけ済ガラス板 | 枠付き・他材と一体は別検討。注3で「物品の性格があっても7006に留まる」 |
| 7007 | 安全ガラス(強化または合わせ) | 強化ガラス、合わせガラス | 車両用窓でも「枠なし・電装なし」なら7007に残る場面あり |
| 7008 | 複層ガラスユニット | ペアガラス(複層ガラス) | ユニット化(複層・中空)で7008 |
| 7009 | ガラス鏡 | 鏡、バックミラー用鏡 | 車両用バックミラーは7009.10系 |
| 7010 | ガラス製の容器(運搬・梱包用)、保存瓶、栓等 | びん、ジャー、アンプル、栓 | 梱包・運搬用かが鍵。食器用途は7013に寄ることあり |
| 7011 | 電球等のガラス球・管(取付具なし) | 電球バルブ、蛍光管用ガラス | “電球用”など用途が見出しにある |
| 7012 | (空番) | — | HS上は[70.12]として表示(実務的には使用しない番号) |
| 7013 | 食卓・台所・化粧室・事務・室内装飾等のガラス製品 | グラス、皿、花瓶 | **鉛クリスタル(PbO 24%以上)**の定義あり |
| 7014 | 信号用ガラス製品、光学要素(非光学加工) | 反射板用ガラス部材等 | 光学加工済は第90類へ |
| 7015 | 時計用ガラス、眼鏡用ガラス等(非光学加工) | 腕時計風防、眼鏡レンズ素材 | 矯正用は7015.10(ただし光学加工の有無を確認) |
| 7016 | ガラスブロック等の建材、ステンドグラス等、発泡ガラス等 | ガラスブロック、ステンドグラス | 建築用途の成形ガラスが中心 |
| 7017 | 実験・衛生・薬用のガラス器具 | ビーカー、試験管 | 石英・低膨張・その他で分岐 |
| 7018 | ガラスビーズ、ガラスマイクロスフィア等 | ビーズ、ガラス玉 | 模造宝飾(完成アクセ)なら第71類へ |
| 7019 | ガラス繊維(グラスウール含む)と製品 | ガラスクロス、マット、断熱材 | HS2022で細分大幅変更(結合方法等で分岐) |
| 7020 | その他のガラス製品 | 工業用ガラス部品、ガラス製雑品 | まず「より具体的な項がないか」を再確認 |
2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)
- 分岐条件の整理(例):
- 7002(ガラス管):
- 溶融石英・溶融シリカか(7002.31)
- 低膨張ガラスか(線膨張係数が一定条件以下)(7002.32)
- その他(7002.39)
※係数条件は見出しに明示されています。
- 7003/7004/7005(板ガラス):
- 製法(ロール/引き・吹き/フロート)で項が変わる
- 「吸収・反射・無反射層(薄膜)」の有無で号が変わり得る
- 切断して形を整えただけでは“加工(worked)扱いにならない”(注2)
- 7007(安全ガラス):強化か合わせか、さらに車両等への組込み適性で分岐
- 7013(食器等):鉛クリスタルか否か(PbO 24%以上)、飲用グラスの類型など
- 7018(ガラス小物):マイクロスフィア(直径1mm以下)か否か
- 7019(ガラス繊維):HS2022では「機械的に結合」「化学的に結合」「織物の開口/密閉」「グラスウール」等で細分
- 7002(ガラス管):
- 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
- 7005(未加工のフロート等) vs 7006(加工済の板ガラス)
- どこで分かれるか:面取り、穴あけ、曲げ、印刷、エナメル等の“加工”があるか。ただし「焼鈍前の工程」や「切断して形状にしただけ」は原則“未加工”側に残り得ます(注2)。
- 判断に必要な情報:加工工程表、外観写真(端面処理)、図面(穴位置)、表面処理(印刷・エッチング)有無
- 典型的な誤り:単に「カット済み」=加工品として7006に寄せてしまう
- 7006(加工板) vs 7007(安全ガラス)
- どこで分かれるか:**強化(tempered)または合わせ(laminated)**の有無。安全ガラスは7007です。
- 判断に必要な情報:強化(化学強化/熱強化)仕様、合わせ構造(中間膜)仕様
- 典型的な誤り:スマホ用カバーガラス等を「加工板」として7006にしてしまう(実務上は7007に寄りやすい)。日本税関の分類事例でも、化学強化したカバーガラスは7007側で整理されています。
- 7010(梱包用容器) vs 7013(食器・装飾品)
- どこで分かれるか:「運搬・梱包に使う種類の容器」か、「食卓・台所等の用に供するガラス製品」か。
- 判断に必要な情報:取引実態(中身入りで輸入か、空瓶か)、流通形態(包装資材として供給か)、製品カタログの用途説明
- 典型的な誤り:ジャム瓶・化粧品瓶を「食器っぽい」見た目だけで7013へ
- 7019(グラスウール) vs 6806(その他鉱物性ウール)
- どこで分かれるか:注で「グラスウール」の**化学組成(SiO2、アルカリ酸化物、B2O3)**が定義され、満たさない場合は6806へ、というルールです。
- 判断に必要な情報:成分表、SDS、試験成績(SiO2%、Na2O/K2O%、B2O3%)
- 典型的な誤り:断熱材=全部「グラスウール」扱いにして7019へ
- 7007(安全ガラス) vs 車両等の部分品(例:8708.22)
- どこで分かれるか:枠付きか、または加熱装置その他の電気的・電子的装置を内蔵しているか(対象:第86〜88類用の窓)。HS2022で境界明確化。
- 判断に必要な情報:枠の有無(同梱か一体か)、熱線・アンテナ・センサー等の内蔵有無、専用設計(車種/型式)
- 典型的な誤り:車載用窓を一律に7007へ(枠付きや電装内蔵は除外され得る)
- 7005(未加工のフロート等) vs 7006(加工済の板ガラス)
3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)
3-1. 関連する部注(Section Notes)
- ポイント要約:
- 第13部(石・陶磁・ガラス等)には、少なくとも第70類の実務で必須となる“強い部注”は一般に多くありません(分類の主戦場は第70類注です)。
- 実務での意味(具体例つき):
- ガラス繊維は「繊維」でも、一般の紡織用繊維(第11部)ではなく、第70類7019で扱うのが大枠です。
- “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
- 典型は第70類注1の除外(次項)です。
3-2. この類の類注(Chapter Notes)
- ポイント要約:
- 注1:除外規定(3207、71類、8544/8546/8547、車両等窓、90類、9405、95類、96類など)
- 注2:7003〜7005の“加工(worked)”の考え方
- 焼鈍前工程は“加工”とみなさない
- 切断して形状にしても分類は変わらない
- 反射等の層は「微細な薄膜コーティング」の概念
- 注3:7006の位置づけ(“物品の性格”があっても7006に留まる)
- 注4:7019の“グラスウール”定義(SiO2等の数値基準。満たさない鉱物性ウールは6806)
- 注5:「ガラス」には溶融石英等も含む
- 号注:鉛クリスタル(PbO 24%以上)
- 用語定義(定義がある場合):
- **glass wool(グラスウール)**の定義(SiO2/アルカリ酸化物/B2O3)
- **lead crystal(鉛クリスタル)**の定義(PbO 24%以上)
- 除外規定(除外先の類・項も明記):
- 3207(ガラスフリット等)、第71類(模造宝飾等)、8544/8546/8547(電気関係)、車両等用窓は車両等の部分品、90類(光学加工・医療等)、9405(照明器具)、95類(玩具等)、96類(ボタン等)。
4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)
- 影響ポイント1:車両等の窓(枠付き/電装内蔵)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 枠(フレーム)の有無、熱線・アンテナ・センサー等の有無、用途(第86〜88類用か)
- 現場で集める証憑:
- 図面(断面)、構成部材表、車種適合表、配線仕様書、写真
- 誤分類の典型:
- 「安全ガラスだから7007」と短絡し、枠付き・電装内蔵の除外を見落とす
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 影響ポイント2:板ガラスの“加工(worked)”判定(7003〜7006)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 焼鈍前工程か、切断のみか、端面加工・穴あけ・印刷等があるか
- 現場で集める証憑:
- 工程表、加工図、端面写真、検査基準書
- 誤分類の典型:
- 「カット品=加工品」と誤解して7006へ。注2で“切断は分類に影響しない”とされている点が落とし穴です。
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 影響ポイント3:グラスウール(7019)か、鉱物性ウール(6806)か
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- SiO2%、Na2O/K2O%、B2O3%(注4の閾値)
- 現場で集める証憑:
- SDS、分析成績書、原料配合表
- 誤分類の典型:
- 断熱材の商流名(グラスウール/ロックウール等)だけで決める
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- 影響ポイント4:鉛クリスタル(7013)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
- PbO(酸化鉛)含有率が24%以上か
- 現場で集める証憑:
- メーカー成分証明、材料仕様書
- 誤分類の典型:
- 高級グラス=鉛クリスタルと決めつける(実際は鉛を含まないクリスタルガラスもある)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):
5. 分類でよくある間違い(原因→対策)
- 間違い:フロート板ガラスに反射膜があるだけで7006(加工)にしてしまう
- なぜ起きる:コーティング=加工、という言葉感覚で判断してしまう
- 正しい考え方:注2では「吸収・反射・無反射層」を微細薄膜として定義しており、“未加工の板ガラス”の見出し側(例:7005.10等)で扱う設計がある
- 予防策:コートの種類(薄膜か厚膜か)、他の加工(穴あけ等)の有無を工程表で確認
- 間違い:切断して形状を出した板ガラスを7006にする
- なぜ起きる:「形がある=加工品」と捉えがち
- 正しい考え方:注2で切断は分類に影響しない旨が示される
- 予防策:端面加工・穴あけ・曲げ等の“加工”が本当にあるか、加工図で確認
- 間違い:化学強化ガラス(例:スマホ用カバーガラス)を7006にする
- なぜ起きる:「ガラス板の加工品」視点で止まる
- 正しい考え方:強化等により安全ガラスに該当し得るため7007を優先検討。税関の分類事例でもカバーガラスが7007整理になっています
- 予防策:強化方法(化学/熱)と目的(破損時安全性等)を仕様書で確認
- 間違い:車両用の窓(枠付き、または熱線内蔵)を7007のまま申告
- なぜ起きる:「安全ガラス=7007」の固定観念
- 正しい考え方:HS2022で、車両等用の窓は条件により第70類から除外され、車両の部分品(例:8708.22)に寄せる設計が明確化
- 予防策:枠の有無・電装内蔵の有無を輸入前に必ず確認(図面・配線)
- 間違い:瓶・ジャーを7013(食器類)にする
- なぜ起きる:形状が「容器」なので食器と混同
- 正しい考え方:7010は「運搬・梱包用の種類の容器」。取引実態(中身入りの包装材か)で7010が優先されやすい
- 予防策:用途(充填・輸送)と流通(包装資材)をインボイス品名・仕様書で明確化
- 間違い:ガラス繊維の織物を“旧コード感覚(7019.40等)”で書類・BOMに残したまま運用
- なぜ起きる:社内マスターがHS2017のまま、HS2022への更新が遅れる
- 正しい考え方:HS2022で7019の号体系が変更され、織物やマット等が結合方法等で細分化された
- 予防策:HS版(2017/2022)を明記したマスター管理、相関表で移行
- 間違い:ガラスビーズを通したネックレス等を7018にする
- なぜ起きる:素材がガラスなので“ガラス小物”へ寄せる
- 正しい考え方:完成した模造宝飾は第71類(例:7117)に寄るのが基本
- 予防策:完成品(装着用)か、素材(ビーズ単体)かを区別
- 間違い:光学レンズ(研磨済)を7014/7015へ
- なぜ起きる:「光学要素」という語に引っ張られる
- 正しい考え方:第70類注1で、光学的に加工された光学要素等は第90類へ除外される
- 予防策:研磨・研削・コーティング(光学用途)など“光学加工”の有無を確認
6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点
6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係
- HSの付番がPSR選択に直結します。誤ったHSコードでPSRを当てると、原産性判断(CTC/RVC/加工要件)の前提が崩れ、検認時に説明が通りにくくなります。
- よくある落とし穴:
- 最終製品(例:7007)と材料(例:7005、7019等)のHSを取り違える
- 車両窓が7007か8708.22かでPSRが変わるのに、機能(枠・電装)を見落とす
6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)
- 品目別規則が採用するHS版は協定ごとに異なります。日本の実務でも、公式に「協定ごとにHS版が異なる」旨が案内されています。
- 例(日本側の案内に基づく一般整理):
- CPTPP:HS2012
- 日EU・EPA/日英EPA:HS2017
- RCEP:HS2022(※PSRのHS2022化が進んでいる前提)
- トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
- まず「協定のHS版」でPSRを確認し、自社の実務HS(例:HS2022)との対応を相関表・税関ポータルのPSR検索で確認します。
6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)
- 必要になりやすいデータ(一般論):
- 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算根拠
- ガラス繊維(7019)や車両窓(7007/8708)などは、材料側のHSも変動しやすいので注意
- 証明書類・保存要件(一般論):
- 輸出者/生産者自己申告型の協定では、検認に備え、根拠資料を体系的に保存します(税関ガイダンス参照)。
7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)
7-1. 変更点サマリー(必須:表)
| 比較(例:HS2017→HS2022) | 変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更) | 該当コード | 変更の要旨 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|---|
| HS2017→HS2022 | 範囲変更(見出し文言改正+移転) | 7001.00(+85.49側) | 7001(ガラスくず等)からCRT由来等の活性化ガラスを除外し、85.49側へ移転する設計 | スクラップ取引でHSが変わり、廃棄物規制・統計・税率確認が必須に |
| HS2017→HS2022 | 注の追加(境界明確化) | 第70類注1(車両等窓の除外) | 第86〜88類用の窓について、枠付きや加熱等の電気・電子装置内蔵の除外が明確化 | 自動車用窓が7007から8708.22等へ移り得るため、品目判定の必要情報が増える |
| HS2017→HS2022 | 号の構造変更(分割・再編) | 7019 | ガラス繊維の号体系を、結合方法(機械的/化学的)・織物の形態(密閉/開口)等で再編。旧7019.40等の整理を変更 | HS移行(2017→2022)でコード対応が必要。PSR/社内マスター/統計が影響 |
| HS2017→HS2022 | 号新設(細分) | 7019.80 | 7019内でグラスウールとその製品を独立させる細分が明確化 | 断熱材等の品目が、織物系と別管理になりやすい |
7-2. 「違うことになった根拠」(必須)
- 参照した根拠資料と、そこから何を判断したか:
- WCO HS2022 第70類条文で、7001の文言に「CRT由来等を除外」する趣旨が入っていること、および第70類注1に車両等窓の除外(枠付き、電装内蔵)が入っていること、7019の号体系が刷新されていることを確認しました。
- **WCO 相関表(HS2017→HS2022)**で、7001の範囲変更に伴い該当品が85.49へ移転する旨、7019の構造が再編され旧号が新号へ整理される旨(例:旧7019.40の扱い等)が説明されていることを根拠に、変更タイプ(範囲変更・再編)を確定しました。
- 日本税関のHS2022改正説明資料で、自動車用窓の境界明確化(70類安全ガラスと87類部分品の境界)および87.08側の整備と70類注の新設が示されていることを根拠に、実務影響(車両窓の分類移動)を補強しました。
8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード
第70類については、少なくともHS2007→HS2012→HS2017の範囲では、主要見出し(7001〜7020)の大枠は大きくは変わっていないことを、WCO条文(各版)で確認できます。
| HS版の流れ | 主要な追加・削除・再編(第70類の観点) | 旧コード→新コード(例) |
|---|---|---|
| HS2007→HS2012 | 主要な大枠変更は限定的(少なくとも条文上の見出し構造は同趣旨) | (該当する大きな移転なし) |
| HS2012→HS2017 | 第70類の主要見出し・注の大枠は同趣旨(少なくともここで大再編は見えにくい) | (該当する大きな移転なし) |
| HS2017→HS2022 | 7001の範囲変更、車両窓の除外注追加、7019号体系再編 | 例:7001(CRT由来等)→85.49側、7019旧号(例:7019.40等)→新号体系へ |
9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)
- 事例名(短く):熱線入りフロントガラスを7007で申告
- 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第70類注1(車両用窓の除外)の見落とし
- 起きやすい状況:インボイス品名が「tempered glass」程度で、電装内蔵が伝わらない
- 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、通関遅延(一般論)
- 予防策:仕様書に「加熱装置・センサー・配線」明記、断面図添付、車種専用性の説明
- 事例名:端面加工済み板ガラスを7005で申告
- 誤りの内容:7003〜7005の“未加工”前提を満たさず、7006側の可能性
- 起きやすい状況:「加工」は外注で、貿易担当が把握していない
- 典型的な影響:分類更正、差額関税・加算税リスク(一般論)
- 予防策:工程管理表の回収、写真(端面)を社内標準で保管
- 事例名:断熱材を“グラスウール”と決め打ちして7019
- 誤りの内容:注4の化学組成要件未確認(満たさない場合は6806)
- 起きやすい状況:商流名だけで分類、SDS未入手
- 典型的な影響:分類変更、統計・規制の再チェック、検査(一般論)
- 予防策:SDS・分析値(SiO2等)を輸入前に入手
- 事例名:ガラス瓶を7013(食器)で輸入
- 誤りの内容:7010(梱包・運搬用容器)と7013(食器等)の境界誤認
- 起きやすい状況:空瓶輸入で、用途説明が曖昧
- 典型的な影響:分類更正、税率見直し、表示・規制側の再確認(一般論)
- 予防策:「充填用途」「包装資材」としての使用実態を契約・仕様書に明記
10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)
- {日本}前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
- 検疫・衛生(SPS等)
- 食器・調理器具・食品接触用途のガラス製品は、食品衛生法に基づく「器具・容器包装」等として、輸入時に検疫所での手続(届出・検査)対象になり得ます。ガラス製・陶磁器製等について、鉛・カドミウム溶出等の材質別規格が整理されています。
- 実務では、製品の**深さ・容量・用途(加熱調理用か否か)**で試験条件や基準値の区分が変わる運用があるため、検疫所の案内(材質別規格)と照合が必要です。
- その他の許認可・届出
- **廃ガラス(特に電気電子機器由来のもの)**は、バーゼル関連規制(特定有害廃棄物等)に該当し得ます。輸出入では事前手続・承認が必要となる場合があるため、取り扱い形態(廃棄物か製品か)を含めて慎重な確認が必要です。
- 安全保障貿易管理(該当する場合)
- ガラス繊維やそれを用いたプリプレグ等は、仕様によっては輸出管理(リスト規制)の対象になり得ます(※HSではなく、性能・用途要件で判定)。輸出貿易管理令別表等の該当性を確認してください。
- 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
- 食品接触用途:厚生労働省・検疫所(FORTH等)
- 廃棄物移動:環境省・経済産業省(バーゼル関連)
- 輸出管理:経済産業省(安全保障貿易管理)・e-Gov法令
- 実務での準備物(一般論):
- 仕様書(材質・成分)、工程表、写真、SDS、用途説明、図面(車両窓は断面・配線)、食品接触用途は溶出試験等の資料
11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)
- 分類前チェック(製品情報の収集)
- 材質(ガラス種、溶融石英等)、形状(板/棒/管/繊維)、加工状態(面取り・穴・強化・合わせ)、用途(梱包/食器/車両用)
- ガラス繊維/グラスウールは成分(SiO2等)を必ず入手
- 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
- 注1除外(車両窓、光学加工品、電気用碍子等)をチェック
- 7003〜7006の“加工”判定は注2・注3で再確認
- 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
- 「tempered/laminated」「framed」「heated」「with antenna」等、分類に効くワードを品名・明細に反映
- 板ガラスは面積単位や枚数など、国内コードの統計単位にも影響し得るため通関業者とすり合わせ
- FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
- 協定のHS版を確認(CPTPP=HS2012等)、必要なら相関表で読み替え
- BOM上の材料HSも固定せず、HS改正でのズレを管理
- 規制チェック(許可/届出/検査)
- 食品接触用途:検疫所手続・材質別規格(鉛/カドミウム溶出等)
- 廃棄物:バーゼル関連手続の要否
- 輸出:輸出管理該当性(性能要件)
12. 参考資料(出典)
- WCO(HS条文・相関表)
- WCO “Chapter 70 – Glass and glassware (HS2022)”(参照日:2026-02-25)
- WCO “Table I – Correlating the 2017 to the 2022 version of the HS”(参照日:2026-02-25)
- WCO “Chapter 70 – Glass and glassware (HS2017)”(参照日:2026-02-25)
- WCO “Chapter 70 – Glass and glassware (HS2012)”(参照日:2026-02-25)
- WCO “Chapter 70 – Glass and glassware (HS2007)”(参照日:2026-02-25)
- 日本税関・公的機関
- 税関「関税率表解説 第70類(PDF)」(参照日:2026-02-25)
- 税関「分類例(第70類関連、PDF)」※スマホ用カバーガラス等の事例(参照日:2026-02-25)
- 税関「HS2022改正資料(自動車用の窓の境界明確化等)」(参照日:2026-02-25)
- FTA/EPA(原産地)
- 税関「EPAとは/HS版が協定ごとに異なる旨の案内」およびPSR検索(参照日:2026-02-25)
- 経済産業省「EPA/FTA:品目別規則で採用されているHSコードのバージョン一覧」(参照日:2026-02-25)
- JETRO資料「RCEPのPSR(HS2022へのトランスポジション等)」※説明資料(参照日:2026-02-25)
- 規制(日本)
- 検疫所(FORTH)材質別規格:ガラス製・陶磁器製・ホウロウ引き(参照日:2026-02-25)
- 環境省/経産省:バーゼル関連(廃棄物等の輸出入管理の概要等)(参照日:2026-02-25)
- e-Gov法令:輸出貿易管理令別表(素材関連:炭素繊維・ガラス繊維等の記載を含む)およびMETI解説(参照日:2026-02-25)
免責事項
本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。
