HS2022 第76類:アルミニウム及びその製品(Aluminium and articles thereof)

(用語の統一)本資料では、**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注/号注)**として説明します。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 7601:アルミニウムの塊(インゴット、ビレット、スラブ等の未加工の塊)
    • 7607:アルミ箔(アルミ厚さが0.2mm以下。紙・樹脂等で裏打ちされたものも含む)
    • 7604:アルミ棒・形材(押出形材、丸棒、アングル等)
    • 7612:アルミ缶・ドラム等(容量300L以下、機械・加熱冷却装置なし)
    • 7614:アルミより線・ケーブル(電気絶縁していないもの)
    • 7616:その他のアルミ製品(ねじ・ボルト等、他に当てはまらないアルミ製品)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • ボーキサイト等のアルミ鉱石:第26類 2606(アルミ鉱石・精鉱)
    • 酸化アルミニウム/水酸化アルミニウム(アルミナ):第28類 2818
    • 金属粉・フレークを基材にした塗料・インキ等の調製品:第32類(部注で第15部から除外)
    • 機械・電気機器としての完成品:第84類/第85類など(部注で第15部から除外)
    • プレハブ建物94.06(7610「構造物」から明示除外)
    • サーメット(例:アルミとアルミナの焼結品)81.13(第76類から除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • (A) アルミ(合金を除く)か、アルミ合金か(多くの号がここで割れる)
    • (B) 板・シート・帯(7606)か、箔(7607)か:厚さ0.2mmが境目(裏打ち材の厚みは除外)
    • (C) 形材(7604)か、構造物用に準備されたもの(7610)か(加工度・用途で分かれやすい)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • スクラップ(7602):貨物性状次第で環境規制(バーゼル法等)や検査対応が重くなることがあるため、**「スクラップの定義に当てはまるか」**を資料で固める必要があります。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1:まずは見出し(項)文言と、第15部注(除外/定義)+第76類の**号注(定義)**で決めます。
    • GIR6:6桁(号)は、同じ階層で比較(例:7607.11 vs 7607.19)し、厚さ・裏打ち有無・加工度などの分岐条件で決めます。
    • GIR2(a):未完成・未組立でも完成品の性質を有する場合があります(例:構造物の未組立セット等)。
    • GIR3:複合材(アルミ+他金属、アルミ+樹脂等)は、見出しに別段がない限り「本質的特性」等で判断し、**第15部注7(複合品の取扱い)**も意識します。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(この類で特に重要)
    • 材質(純アルミか合金か):号注に定義があり、成分で分岐します。
    • 形状(棒/線/板/箔/管/継手/構造物/容器):第15部注9の定義が効きます。
    • 寸法(0.2mm、6mm、7mm、容量300L):見出し文言に直結します。
    • 加工度(“構造物用に準備”か、単なる形材か):7610の適用で重要です。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:それは「アルミ金属」か?それとも鉱石・化学品か?
    • 鉱石 → 第26類(例:2606)
    • 酸化物/水酸化物(アルミナ) → 第28類(2818)
    • 金属・金属製品 → Step2へ
  • Step2:第15部の除外に当たらないか?
    • 金属粉等を基材にした塗料・インキ等の調製品、機械・電気品、家具等は第15部から除外され得ます。
  • Step3:アルミ(またはアルミ合金)が主体で、第76類の範囲か?
    • 複数金属の複合品は、見出しに別段がない限り、重量優勢等で取扱う考え方が出ます(第15部注7)。
  • Step4:第76類のどの「形態」かを決める(7601〜7616)
    • 塊/スクラップ/粉 → 7601/7602/7603
    • 半製品(棒・線・板・箔・管・継手)→ 7604〜7609
    • 構造物/容器/ガス容器/より線/家庭用品/その他製品 → 7610〜7616
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 7606(板等) vs 7607(箔):0.2mmが境目(裏打ち材は厚さ計算から除外)。
    • 7604(形材) vs 7610(構造物用に準備されたもの):取付穴加工、切断、組立前提の加工などで争点になりやすい。
    • 7616(その他のアルミ製品) vs 82/83類:第15部注2(一般用の部分品)や「より特殊に限定した見出し」に引っ張られます。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
7601アルミニウムの塊(未加工)インゴット、ビレット、スラブ合金か否かで号分岐。スクラップを再溶解して鋳造した塊は7601側になり得る(7602と区別)。
7602アルミニウムくず(スクラップ)端材、使用済みアルミ部材の破砕片「くず」の定義(使用不能)に合うか。スラグ/ドロス等は除外され得る。
7603アルミ粉・フレークアルミ粉(非薄片/薄片)、フレーク粉の定義(ふるい)と、塗料等の調製品(第15部除外)に注意。
7604アルミ棒・形材押出形材、丸棒、アングル、チャンネル中空形材か否か(7604.21/29等)、合金/非合金。構造物用に準備されると7610側の争点。
7605アルミ線コイル状線材(ワイヤロッド、電線素線)コイルであることが「線(wire)」の基本定義。最大寸法7mm超/以下で号分岐。
7606アルミ板・シート・帯(厚さ0.2mm超)建材用アルミ板、加工用シート厚さ0.2mm超。矩形断面か否か、合金/非合金。
7607アルミ箔(厚さ0.2mm以下)家庭用アルミホイル、包装材厚さ0.2mm以下(裏打ち除外)。裏打ち有無、追加加工の有無。
7608アルミ管アルミパイプ合金/非合金。中空で壁厚等が均一な「管」の考え方に注意。
7609アルミ管継手エルボ、ソケット、カップリング管そのものではなく継手
7610アルミ構造物・構造物部品サッシ枠(構造用途加工済)、手すり、架構材プレハブ建物(94.06)除外。形材でも「構造物用に準備」されるとここ。
7611大型容器(容量300L超)大型タンク、リザーバー圧縮/液化ガス以外。300L超。機械/熱装置なし。
7612容器(容量300L以下)缶、ドラム、箱、チューブ容器圧縮/液化ガス以外。300L以下
7613圧縮/液化ガス用容器高圧ガスボンベ用途が決め手(ガス容器)。
7614より線・ケーブル等(非絶縁)アルミより線、撚りケーブル電気絶縁していないこと。鋼心有無で分岐。
7615家庭用品・台所用品・衛生用品鍋、弁当箱、洗面器等家庭用品系(7615.10)と衛生用品(7615.20)。
7616その他のアルミ製品ねじ・ボルト、金網、その他加工品7616.10(ねじ等)か、7616.91(金網等)か、7616.99(その他)。

出典:WCO HS2022 第76類本文および日本の関税率表解説(第76類)。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の代表(第76類で頻出)
    • 合金/非合金:7601/7604/7605/7606/7608 などで分岐(号注で定義)。
    • 板か箔か:0.2mm(7606/7607)。
    • 箔の裏打ち有無(7607.11/19/20)。
    • 線の太さ:最大横断寸法7mm(7605.11/19、7605.21/29)。
    • 金網等(7616.91)の“線”定義:最大寸法6mm以下(巻いてあるか否か不問)
    • 容器の容量:300L(7611/7612)。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 7606(板・シート等) vs 7607(箔)
      • どこで分かれるか:厚さ0.2mm(7606は超える、7607は以下)。裏打ち材の厚さは除外。
      • 判断に必要な情報:アルミ層の実測厚(ミクロン表記含む)、裏打ち材の仕様、製造工程(箔/板)。
      • 典型的な誤り:紙/樹脂の厚み込みで0.2mm超と誤判定し7606にしてしまう。
    2. 7605(線) vs 7604(棒・形材)
      • どこで分かれるか:「線(wire)」は基本的にコイル状(第15部注9(c))かどうか。
      • 判断に必要な情報:包装形態(コイル/直棒)、断面形状、寸法、引抜/押出の工程。
      • 典型的な誤り:直線状に切断されたものを“線材”と呼んで7605に寄せる。
    3. 7611(300L超) vs 7612(300L以下) vs 7613(ガス容器)
      • どこで分かれるか:内容物の性状(圧縮/液化ガスか否か)+容量300Lで分岐。
      • 判断に必要な情報:容量(L)、用途、機械/熱装置の有無。
      • 典型的な誤り:“容器”というだけで7612に寄せ、ガス容器7613や7611の容量条件を落とす。
    4. 7616.91(金網等) vs 7616.99(その他)
      • どこで分かれるか:金網等に使う「線」は最大寸法6mm以下(巻いてあるか否か不問)。
      • 判断に必要な情報:線径(最大横断寸法)、メッシュ形状、製品用途。
      • 典型的な誤り:太い棒材(>6mm)で作った格子を7616.91とする(定義不一致)。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第15部注1:第15部(卑金属)に入らないものを列挙(例:金属粉等を基材にした塗料・インキ等、機械類、家具、玩具など)。
    • 第15部注2:「一般用の部分品(parts of general use)」の定義(ねじ・ボルト等)と、各章の“parts”に含めない取扱い。
    • 第15部注7:複数の卑金属からなる製品は、原則として重量が最大の卑金属の製品として扱う。
    • 第15部注8:スクラップ(waste and scrap)と粉末(powders)の定義。
    • 第15部注9:棒・形材・線・板/箔・管などの形状定義(第74〜76類等で共通)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • アルミ粉(7603)でも、塗料・インキ等として調製されていると第15部から外れ、Chapter 32等の扱いになり得ます(「金属粉を基材にした調製品」を除外する規定)。
    • アルミ部品が機械の一部でも、**一般用の部分品(ねじ・ボルト等)**は、機械の部分品扱いではなく、部注により別章(例:83類)側で扱われることがあります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 第15部注1(f):機械・電気品 → 第84類/第85類
    • 第15部注1(k):家具・照明・プレハブ建物 → 第94類
    • 第15部注2:一般用の部分品 → 73類・83類等の該当見出し

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

※HS2022の第76類は、いわゆる「類注(Chapter Notes)」ではなく、冒頭に**号注(Subheading Notes)**として定義が置かれています(日本の関税率表解説でも「号注」として掲載)。

  • ポイント要約:
    • 「アルミニウム(合金を除く。)」の定義:Al 99%以上かつ他元素が上限以下。
    • 「アルミニウム合金」の定義:アルミが重量最大で、他元素条件(上限超過または合計>1%)に該当。
    • 7616.91の“線”の特則:第15部注9(c)にかかわらず、最大横断寸法6mm以下(巻いてあるか否か不問)。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「アルミニウム(合金を除く。)」= Al 99%以上+(Fe+Si合計1%以下、その他各元素0.1%以下等の条件)
    • 「アルミニウム合金」=上記の条件に当てはまらないが、アルミが重量最大の金属
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 第76類本文上、7610から**プレハブ建物(94.06)**は除外。
    • 日本の解説では、アルミとアルミナ焼結品は**サーメット(81.13)**として除外。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:合金/非合金の定義で、号が二分される
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 成分表(ミルシート、材質証明)、規格(JIS/ASTM等)、合金番号(例:6061等)
      • ※ただし「合金番号の呼称」だけでなく、最終的には含有率で判定するのが安全です。
    • 現場で集める証憑:
      • ミルシート、SDS(粉末の場合)、仕様書、材料規格書
    • 誤分類の典型:
      • “高純度アルミ”という営業表現だけで7601.10(非合金)にしてしまい、実際は合金条件を満たしていた。
  • 影響ポイント2:「線(wire)」は原則コイル、ただし7616.91は例外
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • コイル品か(第15部注9(c))
      • 金網等(7616.91)の場合は、最大寸法6mm以下か(巻いてあるか否か不問)
    • 現場で集める証憑:
      • 寸法測定記録、写真(梱包形態)、図面(線径/断面)
    • 誤分類の典型:
      • 直線状の線材を7605に入れる/太い格子材を7616.91に入れる。
  • 影響ポイント3:7606/7607の「0.2mm」と「裏打ち除外」
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • アルミ層の厚さ(μm→mm換算)、裏打ち材の有無と厚さ
    • 現場で集める証憑:
      • 製品仕様書、断面構成表、サンプル測定
    • 誤分類の典型:
      • 裏打ち材込みの総厚で判断し、7606に寄せる(本来7607.20など)。
  • 影響ポイント4:「一般用の部分品」扱いで83類等に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • ねじ・ボルト等に該当するか、用途が特定機械専用でも“parts of general use”の範囲か
    • 現場で集める証憑:
      • 図面、カタログ、用途説明(一般用か専用品か)
    • 誤分類の典型:
      • 機械の部品だからと機械類(84/85)の部分品にしてしまう(部注で除外され得る)。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:7606(板)と7607(箔)を総厚で判断
    • なぜ起きる:裏打ち材(紙・樹脂)込みで厚さを見てしまう。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):7607は「厚さ(裏打ち除外)0.2mm以下」と明記。
    • 予防策:断面構成の仕様書(アルミ層厚)を入手し、測定基準(裏打ち除外)を社内ルール化。
  2. 間違い:“アルミ線”という呼称で、直棒品を7605に分類
    • なぜ起きる:現場用語の“線材”とHS定義のwireがずれる。
    • 正しい考え方:wireは原則コイル(第15部注9(c))。
    • 予防策:梱包形態(コイル/直棒)写真を必須添付、工程(引抜→巻取)を確認。
  3. 間違い:金網を7616.91としつつ、線径条件を確認していない
    • なぜ起きる:見出し名(wire cloth等)だけで判断。
    • 正しい考え方:7616.91の“線”は最大横断寸法6mm以下(巻いてあるか否か不問)。
    • 予防策:線径(最大寸法)の測定記録を作り、図面に落とす。
  4. 間違い:押出形材をすべて7604に入れる(7610を見ない)
    • なぜ起きる:“形材=7604”の思い込み。
    • 正しい考え方:7610は「構造物」および「構造物用に準備された板・棒・形材・管等」を含む。
    • 予防策:穴あけ、切断、取付加工、セット出荷の有無を確認し、用途(建具/架構)をヒアリング。
  5. 間違い:容器を7612に寄せて、7611(>300L)/7613(ガス容器)を落とす
    • なぜ起きる:容器分類を“材質”だけで見てしまう。
    • 正しい考え方:7611/7612は容量300Lで分岐、7613はガス用途で別立て。
    • 予防策:容量・用途・機械装置の有無をインボイス品名に併記(例:“Aluminium tank 500L, no mechanical equipment”)。
  6. 間違い:スクラップ(7602)と未加工塊(7601)を混同
    • なぜ起きる:再溶解インゴット(見た目は“スクラップ由来”)を7602と誤認。
    • 正しい考え方:スクラップ再溶解で鋳造した塊は7601側になり得る(日本解説でも7602除外として言及)。
    • 予防策:製造工程(再溶解・鋳造の有無)を確認し、出荷形態(インゴット等)を記録。
  7. 間違い:アルミ粉(7603)を、塗料・インキ用途の「調製品」でも7603として申告
    • なぜ起きる:粉=7603の単純化。
    • 正しい考え方:金属粉等を基材にした塗料・インキ等の調製品は第15部から除外され得る。
    • 予防策:SDSと配合表で「単体粉」か「調製品」かを判別(樹脂・溶剤・分散剤等の有無)。
  8. 間違い:7616(その他)に“何でも”入れてしまう
    • なぜ起きる:最終項だから安心、という心理。
    • 正しい考え方:部注(除外)や一般用の部分品(83類等)を先に排除し、それでも残るものが7616。
    • 予防策:チェック順序を固定(除外→形態→最終項)し、社内レビューでダブルチェック。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。HS(6桁)を誤ると、適用すべきPSRが別物になり、原産性判断(CTC/RVC/工程要件)が崩れます。
  • よくある落とし穴
    • 最終製品(完成品)のHSは合っているが、材料HSの付番が粗い/誤りで、CTH/CTSH判定が崩れる。
    • 7606(板)と7607(箔)を誤ると、材料と産品の比較桁(CTH/CTSH)が変わるケースがある(協定PSR次第)。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに、PSRが参照するHS版(改正年)が異なることがあります。HS2022で分類した6桁と、協定側の品目表が参照する版にズレがある場合は、対応(トランスポジション)が必要になります。
  • 実務では、税関の「品目別原産地規則(PSR)検索」で、協定を選んで確認するのが近道です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 最低限そろえるもの(一般論):
    • BOM(材料表)、原価、工程フロー、原産国、非原産材料のHS(可能なら6桁まで)、RVC計算の前提
    • 証明書類・保存要件は税関資料で確認(社内保存ルールに落とす)。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022実質:注の再配置(参照変更)7616.91(注の参照)HS2017では7616.91の“wire”特則が「Chapter Note 1(c)」にかかる形だったが、HS2022では定義が**第15部注9(c)**へ移ったため参照先が変更。実務の結論(6mm特則)は同じ。ただし「どの注を根拠にするか」の説明が変わる。
HS2017→HS2022変更なし(HS6桁の構成)7601〜7616第76類の項/号の並び自体は維持(少なくとも本文対比上)。国内コード(9桁等)や運用は別途要確認。

出典:WCO HS2017/HS2022 第76類本文および第15部注。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • HS2017(第76類)では、棒・形材・線などの定義が第76類のChapter Note 1として置かれていました。
  • HS2022(第76類)では、その種の定義は第76類からは外れ、第15部注9として共通定義化され、7616.91の“wire”特則も「第15部注9(c)」への参照に変わっています。
  • したがって、HS2017→HS2022で、7616.91の“wire=最大寸法6mm以下(巻いてあるか否か不問)”という実体要件は維持されつつ、根拠条文の“所在”が変わった、と整理できます。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

※第76類は長期的に大枠が安定していますが、HS2007→HS2012で7615の号が統合されています(HS2007では7615.11/7615.19、HS2012以降は7615.10)。

版の推移変更タイプ(新設/削除/分割/統合)旧コード新コード(行き先)要旨
HS2007→HS2012統合7615.11 / 7615.197615.10家庭用品等の内訳(たわし等/その他)を統合し、7615.10に整理。
HS2012→HS2017変更なし(第76類のHS6桁)大きな改編は確認されません(本文対比上)。
HS2017→HS2022変更なし(コード)/注の再配置コードは維持。定義は第15部注へ移動。

出典:WCO HS2007/HS2012/HS2022 第76類本文。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):裏打ちアルミ箔の厚さ判定ミス
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):7607の厚さは「裏打ち除外」なのに、総厚で判定。
    • 起きやすい状況:ラミネート包装材(紙/樹脂+アルミ箔)で、仕様書に総厚しかない。
    • 典型的な影響:税番更正、再計算、審査長期化。
    • 予防策:アルミ層厚を示す仕様(断面構成)を入手、測定手順を標準化。
  • 事例名:直線状線材を7605で申告
    • 誤りの内容:wireの基本定義(コイル)を満たさないのに7605。
    • 起きやすい状況:切断済みの線材、棒状梱包。
    • 典型的な影響:税番更正、説明資料追加提出。
    • 予防策:梱包形態・工程を写真/工程表で確認。
  • 事例名:金網を7616.91にしたが線径>6mm
    • 誤りの内容:7616.91の“線”定義(最大寸法6mm以下)違反。
    • 起きやすい状況:フェンス/グリル状製品で、棒材を使用。
    • 典型的な影響:税番更正、輸入許可遅延。
    • 予防策:線径測定(最大横断寸法)記録を添付。
  • 事例名:形材(7604)と構造物(7610)の境界誤り
    • 誤りの内容:7610の「構造物用に準備された」要素を見落とし。
    • 起きやすい状況:穴あけ・切断済みのフレーム材を“形材”とだけ記載。
    • 典型的な影響:検査・照会増、納期遅延。
    • 予防策:用途・加工内容をインボイスに具体化、図面添付。

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • {日本}前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • アルミそのものは検疫対象でないことが多い一方、**食品接触用途(容器・箔等)**は相手国側規制(食品接触材規制等)で追加資料を求められることがあります(HSの範囲外のため一般論に留めます)。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 通常、アルミ製品自体は該当しません(木材・革等の複合品は別途注意)。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • アルミ粉末・特定用途材等は、用途/仕様/取引先によって外為法・輸出管理の確認が必要になる場合があります。該非判定は品目・仕様で決まるため、経産省の案内(マトリクス等)で確認します。
  • その他の許認可・届出
    • スクラップ(7602):性状により「廃棄物」の越境移動規制(バーゼル法)に関係する可能性があるため、事前相談の活用が推奨されます。
    • ガス容器(7613):高圧ガス関連法令の適用(検査・刻印等)を要するケースがあり、所管の案内で確認が必要です。
    • アルミ粉・フレーク(7603):取扱い・輸送でSDS確認が重要(危険性は製品性状による)。参考として安全情報データベース等で物質情報を確認します。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省(バーゼル法の相談、輸出管理、容器関連情報)
    • 環境省(バーゼル関連情報)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 製品仕様書、SDS(粉末/化学的性状が絡む場合)、写真、図面、工程図、成分証明(合金判定)、用途説明書

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 成分(Al%・他元素)、形状(棒/線/板/箔/管/継手/容器/構造物)、寸法(0.2mm・6mm・7mm・300L)
    • 梱包形態(コイルか否か)、加工度(穴あけ/切断/取付加工)
    • 写真、図面、仕様書、SDS(粉末等)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第15部注1(除外)・注2(一般用の部分品)・注8/9(定義)
    • 第76類号注(合金定義、7616.91線の特則)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名は「形状+用途+寸法」を入れる(例:“Aluminium foil, thickness 0.018mm, backed”)
    • 測定根拠(仕様書、試験成績書)を準備
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • PSR検索、BOM、材料HS、工程、RVC等、保存ルール確認
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • スクラップの越境移動(バーゼル)、高圧ガス容器、輸出管理該非などを所管情報で確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、HS2017/2012/2007条文)
    • HS2022 第76類(1576_2022e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022 第15部注(1500_2022e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2017 第76類(1576_2017e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2012 第76類(1576_2012e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2007 第76類(1576_2007e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022 第26類(アルミ鉱石2606を含む) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022 第28類(2818を含む) (参照日:2026-02-27)
  • {日本}税関・公的機関のガイド
    • 関税率表解説(第76類:76r) (参照日:2026-02-27)
    • 国内分類例規(第76類:76rd) (参照日:2026-02-27)
    • 関税率表の解釈に関する通則(GIR解説) (参照日:2026-02-27)
    • 事前教示(品目分類) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022改正(税関資料) (参照日:2026-02-27)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 税関:品目別原産地規則(PSR)検索 (参照日:2026-02-27)
    • 税関:EPA原産地規則資料(例:epa_roo.pdf) (参照日:2026-02-27)
    • 税関:原産地規則ポータル (参照日:2026-02-27)
  • その他(規制)
    • 経済産業省:バーゼル法(事前相談等) (参照日:2026-02-27)
    • 環境省:バーゼル関連情報(事前相談等) (参照日:2026-02-27)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理(マトリクス等) (参照日:2026-02-27)
    • 経済産業省:高圧ガス容器関連(案内) (参照日:2026-02-27)
    • 厚生労働省:職場のあんぜんサイト(物質情報例:アルミニウム粉末) (参照日:2026-02-27)

※Web参照は「参照日(YYYY-MM-DD)」も併記

付録A. 国内コード({日本})での主な細分と注意点(任意)

  • HS6桁→国内細分で実務影響が大きいもの(例)
    • 7602.00(アルミスクラップ):日本の輸出統計品目表で「サッシのもの」の取扱いが示され、ねじ等が残っていても含み得る等、運用上の注意が記載されています(国内コードの解説)。
    • 7606.12(合金板):輸入統計品目表の統計細分として「3000系/5000系/6000系合金」等の例規が示され、成分条件や熱処理区分(JIS質別記号)に触れています(国内コードの解説)。
    • 7612.90(容器“その他”):国内分類例規として具体的な製品例(食品用ユニット式キャビネット)が掲載されています。
  • 注意点
    • これらは**国内コード(統計細分)**の扱いであり、国際共通のHS6桁とは別です。対外説明では「HS6桁」と「国内コード」を明確に分けて運用してください。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 仕様書(材質/成分/寸法/用途)、写真、図面、工程図、SDS(粉末等)、サンプルの有無
  • 探し方
    • 税関の「事前教示回答(品目分類)」で、公開可能な事前教示の検索ができます(税番・貨物概要等)。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第75類:ニッケル及びその製品 Nickel and articles thereof 実務向け整理

用語:**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**で統一します。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの 超要約

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • ニッケルマットニッケル酸化物焼結体などの製錬中間物(7501)
    • 未加工のニッケル(地金)(インゴット、カソード等)(7502)
    • ニッケルの廃品・くず(スクラップ)(7503)
    • ニッケル粉末・フレーク(7504)
    • 棒・ロッド・形材・線(7505)、板・シート・ストリップ・箔(7506)、管・パイプ・継手(7507)
    • その他のニッケル製品(例:ニッケル線の布・グリル・ネット=金網類)(7508)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • ニッケル鉱石・精鉱:第26類 2604(鉱石段階)
    • 塗料・インキ等の調製品(金属粉・フレークを基材として調製されたもの):第32類側(第XV部注で除外)
    • 機械・電気機器(またはそれとしての性格が支配的なもの):第XVI部(第XV部注で除外)
    • 貴金属関係(例:貴金属張りの基材等):第71類(第XV部注で除外)
    • 母材が鉄鋼で、ニッケルは表面処理(めっき等)にすぎない製品:通常は母材側(第72類/第73類等)で検討(※ただし複合品の支配的要素は個別判断)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 非合金ニッケル(not alloyed)か、ニッケル合金(alloys)か(第75類の号注で成分要件が数値定義)
    2. 廃品・くず(スクラップ)か、材料として使用可能な形状材か(第XV部注「waste and scrap」定義)
    3. 粉末か否か(第XV部注「powders」=1mmふるい90%以上通過)
  • この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 7503(スクラップ):品目分類だけでなく、貨物の状態・混入・汚染等によってはバーゼル法等の輸出入規制の検討が必要になり、遅延や手戻りが起きやすいです(一般論)。

1. 区分の考え方 どうやってこの類に到達するか

1-1. 分類の基本ルール GIRの使いどころ

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1:見出し文言+注(部注/類注)で決めます。第75類は、まず「ニッケル及びその製品」に該当し、かつ第XV部注の除外(機械・電気等)に当たらないことを確認します。
    • GIR6:6桁(号)の選択は、特に**7502/7505/7506/7507の“非合金/合金”**が核心で、号注の成分定義に当てはめます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 材質:ニッケル主体か(母材+めっき等の場合は母材側の検討が必要になりやすい)
    • 成分:Ni+Co、Co、Fe、O、その他元素の含有率(非合金/合金の定義に直結)
    • 状態:製錬中間物/未加工(地金)/廃品・くず/粉末/形状材(棒・線・板・管)/完成品(その他の製品)
    • 形状:線(原則コイル)か、棒(非コイル)か、管か、継手か(第XV部注の形状定義が効きます)
    • 使用可能性:スクラップは「確実に使用不能」であることが要件(第XV部注)

1-2. 判定フロー 疑似フローチャート

  • Step1:対象は「ニッケル金属」または「ニッケルが主となる合金」か
    • 例:ニッケルめっき鋼板 → 原則として母材(鉄鋼)側を起点に再確認
  • Step2:貨物の状態はどれか(4桁で大枠を決める)
    • 製錬中間物 → 7501
    • 未加工(地金) → 7502
    • 廃品・くず → 7503
    • 粉末・フレーク → 7504
    • 形状材(棒/線/板/管/継手) → 7505〜7507
    • 上記以外の製品 → 7508
  • Step3:6桁で分岐(非合金/合金、管か継手か、7508.10か等)
  • よく迷う境界:
    • 7502(地金) vs 7503(スクラップ):使用不能の裏付けの有無
    • 7504(粉末):粒度が定義を満たすか
    • 7505(線) vs 7505(棒):線は原則コイル(部注定義)
    • 7508.10(金網類):wireの特則(コイル不要+断面寸法6mm以下)が適用されるか

2. 主な項 4桁 とその内容

2-1. 4桁 項 の主なもの一覧表 必須

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
7501ニッケルマット、ニッケル酸化物焼結体、その他のニッケル製錬中間物ニッケルマット、酸化物焼結体「化学品」なのか「製錬中間物」なのかは工程・用途で裏付け(呼称だけで決めない)。
7502未加工のニッケル(地金)カソード、インゴット、ブリケット7502.10/7502.20は非合金/合金の成分定義で判定。
7503ニッケルの廃品・くず端材、切削くず、スクラップ「確実に使用不能」かが鍵(第XV部注)。混入物・汚染は規制検討にも影響(一般論)。
7504ニッケル粉末・フレーク粉末(焼結用等)、フレーク「粉末」定義(1mmふるい90%以上通過)で裏付け。
7505ニッケルの棒・ロッド・形材・線棒材、線材、形材線=原則コイル(第XV部注の定義)。形材は「棒/線/板/管」に当てはまらない断面一定材。
7506ニッケルの板・シート・ストリップ・箔ニッケル板、ニッケル箔「板・箔」は厚み/幅等の形状定義に照らす。加工で“別の製品の性格”になっていないか注意。
7507ニッケルの管・パイプ・継手ニッケル管、エルボ、カップリング管(中空・一定断面)か、継手(接続用)かを図面で確認。
7508その他のニッケル製品ニッケル金網、その他ニッケル製品7508.10は金網類。ここだけwireの特則(コイル不要+断面寸法6mm以下)。

2-2. 6桁 号 で実務上重要な分岐 必須

  • 分岐条件の整理(第75類で頻出):
    • **非合金ニッケル(Nickel, not alloyed)**の定義(号注)
      • Ni+Coが99%以上
      • Co≦1.5%
      • Fe≦0.5%、O≦0.4%、その他元素は各々0.3%以下

        → 実務では「Ni%が高い」だけでは足りず、Co/Fe/O/その他元素まで確認が必要です。
    • **ニッケル合金(Nickel alloys)**の定義(号注)
      • ニッケルが各元素より重量で優勢で、かつ
        • Co>1.5%、または
        • 上記のFe/O/その他元素の上限を超える元素がある、または
        • (Ni+Co以外の元素合計)>1%
    • 廃品・くず(waste and scrap)(第XV部注)
      • 「金属の廃品・くず」および「破損・切断・摩耗等で確実に使用不能な金属製品」
    • 粉末(powders)(第XV部注)
      • 1mmメッシュのふるいを重量で90%以上通過
    • 7508.10のwire特則(号注)
      • 本来のwire定義(原則コイル)ではなく、コイルか否かを問わず、かつ断面寸法が6mm以下に限定
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 7502.10(非合金) vs 7502.20(合金)
      • どこで分かれるか:上記の号注(Co、Fe、O、その他元素、合計1%)
      • 判断に必要な情報:ミルシート、成分分析表(Ni、Co、Fe、O、その他元素の重量%)
      • 典型的な誤り:「Ni 99%」だけで7502.10とする(Coや不純物条件未確認)
    2. 7503(スクラップ) vs 7502/7505〜(材料)
      • どこで分かれるか:「確実に使用不能」か(第XV部注)
      • 判断に必要な情報:写真、破断/摩耗状況、選別工程、取引条件(スクラップ売買か)
      • 典型的な誤り:端材を商流上“スクラップ”と呼ぶだけで7503にする
    3. 7504(粉末) vs 7502/7505(粒状・ショット等)
      • どこで分かれるか:粉末定義(1mmふるい90%)
      • 判断に必要な情報:粒度分布、ふるい試験成績、SDS
      • 典型的な誤り:「粉末」と呼称されるが、試験で定義を満たさない
    4. 7505.11/12(棒・形材) vs 7505.21/22(線)
      • どこで分かれるか:線は原則コイル(第XV部注)
      • 判断に必要な情報:梱包状態(コイル/リール/直材)、断面寸法・形状
      • 典型的な誤り:直材を「ワイヤー」と呼んで線扱いにしてしまう
    5. 7508.10(金網類) vs 7508.90(その他)
      • どこで分かれるか:製品が「布・グリル・ネット(金網類)」か/それ以外か
      • 判断に必要な情報:構造(織り/溶接/編み)、用いたwireの最大断面寸法(≤6mm)
      • 典型的な誤り:金網っぽい外観だけで7508.10、寸法要件を未確認

3. 部注と類注の詳細解釈 条文から実務的な意味

3-1. 関連する部注 Section Notes

  • ポイント要約:
    • 第XV部注には、除外(第XVI部等)合金・複合品の扱い廃品・くず/粉末の定義、**形状材の定義(棒・線・板・管等)**が規定されています。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 7503を使うなら、“確実に使用不能”の客観資料(写真、検収記録)を準備します。
    • 7504を使うなら、「粉末」の**ふるい定義(1mm90%)**を試験成績書で裏付けます。
    • 7505の線は原則コイルなので、直材なら棒/形材側を再検討します。
    • ニッケル製でも機械・電気製品の性格が支配的なら第XVI部等に移るため、用途・構造の説明資料が重要です。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 金属粉が塗料・インキ等に調製されている → 第32類へ
    • 機械・電気機器(またはそれらの部品としての性格が支配的) → 第XVI部へ

3-2. この類の類注 Chapter Notes

  • ポイント要約:
    • 第75類は、**号注(Subheading Notes)**で「非合金ニッケル」「ニッケル合金」の数値定義が置かれています。
    • さらに7508.10のwire特則(6mm以下、コイル不要)が規定されています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 非合金ニッケル:Ni+Co≥99%、Co≤1.5%、Fe/O/その他元素の上限あり
    • ニッケル合金:Ni優勢+(Co>1.5%、または上限超過元素あり、または(Ni+Co以外)合計>1%)
    • 7508.10のwire:コイル不要+断面寸法6mm以下
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 第75類は第XV部の一部なので、除外は主に第XV部注で整理します(機械・電気等)。

4. 類注が分類に与える影響 どこでコードが変わるか

この章は「注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:非合金か合金か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):Ni、Co、Fe、O、その他元素(重量%)
    • 現場で集める証憑:ミルシート、成分分析表、規格書、SDS
    • 誤分類の典型:Ni%だけで判断し、Co/不純物上限/(Ni+Co以外)合計1%を確認していない
  • 影響ポイント2:スクラップか否か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):「確実に使用不能」か(破損、切断、摩耗等)
    • 現場で集める証憑:写真、検収記録、選別工程、売買契約(スクラップ取引条件)
    • 誤分類の典型:再利用可能な端材を7503としてしまう
  • 影響ポイント3:粉末か否か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):1mmふるい90%以上通過
    • 現場で集める証憑:粒度分布表、試験成績書、SDS
    • 誤分類の典型:粒状・ショットを「粉末」と呼称だけで7504にする
  • 影響ポイント4:7508.10のwire特則
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):wireの最大断面寸法が6mm以下
    • 現場で集める証憑:図面、実測記録、カタログ
    • 誤分類の典型:金網類なら無条件に7508.10として寸法裏付けを省略

5. 分類でよくある間違い 原因→対策

  1. 間違い:ニッケルめっき鋼板・めっき部材を第75類にしてしまう
    • なぜ起きる:品名・外観(ニッケル色)で母材を見ない
    • 正しい考え方:第75類は「ニッケル及びその製品」。表面処理だけで材質が変わるわけではないため、母材・複合の支配的要素を確認する(一般論)
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:母材材質証明、めっき仕様書(厚み、工程)
      • 社内で聞く質問例:「母材は何ですか?」「ニッケルは全体材質ですか、表面処理ですか?」
  2. 間違い:7502.10(非合金)をNi%が高いだけで選ぶ
    • なぜ起きる:定義を「Ni 99%」と誤解
    • 正しい考え方:非合金はNi+Co≥99%に加え、Co≤1.5%、Fe/O/その他元素上限が条件
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:成分分析(Ni、Co、Fe、O、その他元素)
      • 質問例:「Coは何%ですか?」「Fe/O/その他元素は上限内ですか?」
  3. 間違い:スクラップ取引という理由だけで7503にする
    • なぜ起きる:商流用語(scrap)をそのままHSに当てはめる
    • 正しい考え方:スクラップは「確実に使用不能」要件(第XV部注)
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:現物写真、検収記録、再利用可否の判断根拠
      • 質問例:「このまま材料として使えますか?」「破損・摩耗で使用不能ですか?」
  4. 間違い:粒状品・ショットを7504(粉末)にする
    • なぜ起きる:「粉末」の定義を数値で見ない
    • 正しい考え方:粉末=1mmふるい90%以上通過(第XV部注)
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:粒度分布、ふるい試験成績
      • 質問例:「1mmふるいで90%以上通りますか?」
  5. 間違い:直材を「ワイヤー」と呼び7505の線へ寄せる
    • なぜ起きる:現場の呼称が混在
    • 正しい考え方:wireは原則コイル(第XV部注)
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:梱包写真(コイル/リール/直材)、長さ・断面
      • 質問例:「コイル巻きですか?直材ですか?」
  6. 間違い:7508.10(金網類)でwireの6mm要件を見落とす
    • なぜ起きる:「金網=7508.10」と短絡
    • 正しい考え方:7508.10のwireは特則で“断面寸法6mm以下”
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:図面・カタログ・実測記録
      • 質問例:「wireの最大断面寸法は何mmですか?」
  7. 間違い:ニッケル製の機械部品を材質だけで7508にする
    • なぜ起きる:材質起点で分類しがち
    • 正しい考え方:第XV部注で機械・電気等は除外。用途・構造で第XVI部等を検討
    • 予防策:
      • 確認すべき資料:用途説明、取付構造、図面
      • 質問例:「特定機械の専用品ですか?汎用ですか?」

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR 品目別規則 の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。第75類は非合金/合金で号が変わるため、分類の裏付け(成分表)がないと原産性判断も崩れやすいです(一般論)。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品HSは合っているが、非原産材料のHSがずれてCTC判定が崩れる
    • 7503(スクラップ)を材料として使う場合の整理(材料のHS・工程・原価の整合)

6-2. 協定が参照するHS版の違い HS2012/2017/2022のズレ

  • 実務では「協定が参照するHS版」が協定ごとに異なります。日本税関の原産地規則マニュアルは、RCEPが2023-01-01以降HS2022を使用する等、協定ごとの参照HS版を整理しています。
  • 例:RCEPは、合同委員会でHS2022へ置換したPSRが採択され、各締約国で2023-01-01から実施とされています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • ①協定本文・運用資料で参照HS版を特定
    • ②WCO相関表(改正対象一覧)で、当該コードが改正対象に入っているか点検
    • ③必要に応じて、協定側の置換PSR(RCEPのような公式置換資料)で読み替え

6-3. 実務チェック 原産性判断に必要なデータ

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):協定・国内運用により差があるため、税関・協定ガイドの最新を確認

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い 違うことになった根拠

7-1. 変更点サマリー 必須 表

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022コード体系としての再編なし(HS6桁)7501〜7508HS2017/HS2022ともに7501〜7508の構成で、WCO相関表(改正対象一覧)にも第75類コードが列挙されていないHS6桁の社内マスタは大きく変わりにくい(ただし国内コードは別途要確認)
HS2017→HS2022定義・参照先の整理(条文構造)wire定義の参照先7508.10のwire特則が、HS2017では「Chapter Note 1(c)」を前提に上書き、HS2022では「Section XV Note 9(c)」を前提に上書きに変更根拠条文の参照先が変わるため、社内手順書・教育資料の引用先を更新

7-2. 違うことになった根拠 必須

  • HS6桁の大きな再編がないと判断した根拠:
    • HS2017とHS2022の第75類条文を比較すると、見出し(7501〜7508)構成が同じです。
    • WCO相関表(改正対象一覧:scope変更/新設の列挙)にも第75類の該当コードが現れません。
  • 条文構造(参照先)が変わった根拠:
    • HS2017では第75類のChapter Note 1に形状定義(wire等)が置かれていました。
    • HS2022では形状定義が第XV部注9に置かれ、第75類の7508.10はそのwire定義(9(c))を前提に特則で上書きする書きぶりになっています。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第75類は、少なくとも相関表(改正対象一覧に相当)で追える範囲では、HS2002→2007→2012→2017→2022の各改正で「750」系列の大きな再編(新設/削除/分割/統合)が表に現れていません(=改正対象として列挙されていない、という意味での整理)。

版の変更第75類(7501〜7508)に関する主な追加・削除・再編旧コード→新コードの例備考
HS2002→HS2007相関表(改正対象一覧)上、750の列挙を確認できず(該当なし)大きなコード再編が改正対象一覧に現れない整理
HS2007→HS2012相関表上、750の列挙を確認できず(該当なし)同上
HS2012→HS2017相関表上、750の列挙を確認できず(該当なし)同上
HS2017→HS2022相関表上、750の列挙を確認できず(該当なし)HS6桁の大きな再編は表に現れない整理

9. 類注違反による通関トラブル 想定事例

  • 事例名:スクラップ申告だが「使用不能」根拠が弱い
    • 誤りの内容:第XV部注のwaste and scrap定義に合わないのに7503で申告
    • 起きやすい状況:端材・短尺材をスクラップ扱いで売買
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、遅延(一般論)
    • 予防策:写真・検収記録で「使用不能」を立証、再利用可否を事前整理
  • 事例名:粉末の定義を満たさず7504が否認
    • 誤りの内容:粉末定義(1mmふるい90%)未確認
    • 起きやすい状況:粒状・ショットを粉末と称して販売
    • 影響:照会、サンプル提出、分類変更
    • 予防策:粒度分布・ふるい試験の提出
  • 事例名:非合金/合金の取り違えで税番が変わる
    • 誤りの内容:号注の数値条件(Co、Fe/O、合計1%)未確認
    • 起きやすい状況:ミルシート未入手、Ni%だけで判断
    • 影響:税率・原産地規則(PSR)への波及(一般論)
    • 予防策:成分表入手を前提に分類(入手できない場合は保守的に対応、税関相談)
  • 事例名:金網類で7508.10の寸法要件未確認
    • 誤りの内容:wire特則(断面寸法6mm以下)を満たさないのに7508.10
    • 起きやすい状況:図面・カタログ不備
    • 影響:照会・保留、分類変更
    • 予防策:実測記録、図面、カタログを添付

10. 輸出入規制事項 コンプライアンス観点

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ):
    • 安全保障貿易管理(該当する場合)
      • 規制該当性はHSだけで決まらず、仕様・用途・需要者等に基づく該非判定(リスト規制)やキャッチオールの検討が必要です(一般論)。該非判定の情報収集(仕様書等)をMETIも案内しています。
    • その他の許認可・届出(バーゼル等、該当する場合)
      • 金属スクラップは、性状・混入物等によりバーゼル法等の規制対象になり得ます。METI/環境省の事前相談制度もあり、税関判断と異なる可能性がある点まで明記されています(一般論)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 安全保障貿易管理:METI(該非判定、マトリクス表等)
    • バーゼル関連:METI/環境省(事前相談、制度案内)
    • 品目分類の不明点:税関の事前教示制度(一般論)
  • 実務での準備物(一般論):
    • HS分類:仕様書、成分表(ミルシート)、図面、写真、SDS、工程説明
    • 規制:用途説明、需要者情報、該非判定書、スクラップは混入物・汚染状況資料

11. 実務チェックリスト 分類→通関→原産地→規制

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 材質:ニッケル主体か、母材+表面処理か
    • 成分:Ni/Co/Fe/O/その他元素(重量%)
    • 状態:中間物/地金/スクラップ/粉末/形状材/完成品
    • 形状:コイルの有無、断面寸法、管か継手か(図面で確認)
    • スクラップ:使用不能根拠(写真・検収)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第XV部注の除外(機械・電気等)に当たらないか
    • 7508.10はwire寸法6mm以下の特則を確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名が曖昧(nickel alloy / scrap等)になっていないか
    • 成分表・写真・図面を提出できるか(照会対応の短縮)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版を確認(協定ごとに違う)
    • 製品HSと材料HS、工程、原価(RVC)整合
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 輸出:該非判定・用途需要者確認(METI案内に沿って資料収集)
    • スクラップ:バーゼル法等の対象性(事前相談活用)

12. 参考資料 出典

  • WCO HS2022 第75類 条文(Nickel and articles thereof) (参照日:2026-02-27)
  • WCO HS2022 第XV部 注(Base metals and articles of base metal:除外、廃品・くず、粉末、形状定義等) (参照日:2026-02-27)
  • WCO HS2017 第75類 条文(旧版:Chapter Note 1の形状定義等) (参照日:2026-02-27)
  • WCO 相関表(HS2017–HS2022:改正対象の考え方) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関:HS2022改正について(制度概要) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関:HS2022↔HS2017 相関表(PDF) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関:HS2017↔HS2012、HS2012↔HS2007、HS2007↔HS2002 相関表(PDF) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関:事前教示制度(品目分類) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関:EPA原産地規則マニュアル(協定ごとの参照HS版) (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関:RCEP HS2022置換PSR(PDF) (参照日:2026-02-27)
  • 外務省:RCEPのHS2022置換PSR採択(運用開始日等) (参照日:2026-02-27)
  • METI:安全保障貿易管理(該非判定マトリクス表の案内) (参照日:2026-02-27)
  • METI:安全保障貿易管理の概要(英語ガイダンス:リスト規制/キャッチオール等) (参照日:2026-02-27)
  • METI:バーゼル法 輸出入規制 事前相談(委託) (参照日:2026-02-27)
  • 環境省:バーゼル条約関係の国内枠組み(輸出入手続の概説) (参照日:2026-02-27)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第74類:銅及びその製品(Copper and articles thereof)

※用語を次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 銅の粗銅・アノード、電解精製用の銅(7402)
    • 精製銅・銅合金の「地金(インゴット、ワイヤバー、ビレット等)」(7403)
    • 銅くず・スクラップ(7404)
    • 銅粉・銅フレーク(7406)
    • 銅の板・帯(厚さ0.15mm超:7409)/銅箔(厚さ0.15mm以下:7410)
    • 銅管・継手(7411/7412)、銅製のねじ・ボルト等(7415)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 銅鉱石・精鉱:第26類(例:2603)
    • 銅の化合物(酸化物・塩・リン化物等):第28類(※類注で「リン含有が高いリン銅」は第28類側へ行く旨が明示)
    • 絶縁電線・ケーブル:第85類(例:8544)※第74類の7413は「非絶縁」
    • 機械・電気機器の完成品:第16部/第85類(部注で除外)
    • 硬貨:第71類(7118 など)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 地金(7403)なのか/スクラップ(7404)なのか(=「使用に耐えない」状態かどうか)
    • 板(7409:0.15mm超)なのか/箔(7410:0.15mm以下)なのか
    • 非絶縁の銅線(7408/7413)なのか/絶縁電線(8544)なのか
  • この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • **銅スクラップ(7404)**は、HS分類だけでなく、**バーゼル法(有害廃棄物等の越境移動規制)**の該当性判断が絡みやすく、通関遅延・差止めリスクが相対的に高いです(後述)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し文言+注):第74類は「形状(地金/粉/線/板/箔/管/継手/ねじ等)」と「注の定義(精製銅・合金・スクラップ等)」でほぼ勝負が決まります。
    • GIR6(号=6桁の比較):0.15mm、6mm、合金区分(黄銅/青銅/白銅等)といった“定量条件”で6桁が割れます。
    • GIR3(複合品):銅+他金属の複合記事(例:銅合金部材+鋼材部材)では、部注(複合品は重量優先など)を踏まえて整理します。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 材質・成分(Cu%と不純物、Zn/Sn/Ni等)
    • 状態(地金/スクラップ/粉/半製品/完成品)
    • 形状・寸法(厚さ、最大断面、コイル状か等)
    • 絶縁の有無(電線の典型)
    • 加工度(“鋳造・鍛造のみ”か、切削など追加加工ありか:7419で重要)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象物が「銅(Cuが主体)」か?
    • 成分証明(ミルシート、分析表、SDS)で確認。
  • Step2:第15部(卑金属)に残るか?(完成機械・電気機器ではないか)
    • 例:銅バーでも、機械・電気機器の完成品/専用品の形態なら第16部・第85類へ寄ることがあります。
  • Step3:状態の大分類:地金(7401-7403)/スクラップ(7404)/粉(7406)/半製品(7407-7413)/記事(7415-7419)
  • Step4:半製品なら**形状定義(棒・線・板・箔・管など)**に当てはめる
    • ここで部注(定義)に立ち戻ります。
  • Step5:6桁の分岐(例:0.15mm、6mm、合金グループ、裏打ちの有無など)を確定
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第74類(銅の未完成材・一般記事) vs 第85類(絶縁電線・電気機器)
    • 第74類(銅スクラップ) vs 第26類(鉱石)/第28類(化学品)
    • 第74類(銅の一般記事7419) vs 第83類(汎用金具・金物類)※品目実態次第で第83類側へ寄るケースがあります(部注の“部分品/汎用品”の考え方に注意)。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
7401銅マット、沈殿銅(セメント銅)製錬中間物鉱石(第26類)と混同しない
7402粗銅、電解精製用銅アノードアノード7403(精製銅地金)と区別
7403精製銅・銅合金の地金カソード、ワイヤバー、ビレット、インゴット「地金(unwrought)」概念が中核。端部加工だけなら地金扱いの留意あり
7404銅くず・スクラップ被覆除去した銅線くず、加工端材**“使用に耐えない”**状態か(部注の定義)+バーゼル法等の規制面
7405銅の母合金脱酸用母合金合金地金(7403)との区別(「母合金」定義)
7406銅粉・銅フレークアトマイズ粉、フレーク粉「粉」の定義(ふるい)+ラメラ/非ラメラで分岐
7407銅の棒・ロッド・形材丸棒、角棒、押出形材形状定義(部注)と「コイル状でない」等の要件
7408銅線裸銅線絶縁が無いこと。精製銅の一部は最大断面寸法6mmで分岐
7409銅の板・シート・帯(厚さ0.15mm超)銅板、銅帯0.15mm超。合金種類・コイル状で細分
7410銅箔(厚さ0.15mm以下)電子用銅箔、裏打ち銅箔0.15mm以下、裏打ちの有無(厚さは裏打ち除外)
7411銅管銅パイプ継手(7412)と混同しやすい
7412銅管継手エルボ、ソケット材質(精製銅/合金)で細分
7413より線・ケーブル等(非絶縁)銅より線、ブレード非絶縁。絶縁品は8544へ
7414(HS上 未設定/予約)HS条文でブラケット表示(現行運用では使わない)
7415銅製のくぎ・ねじ・ボルト・ナット等銅ボルト、銅ワッシャー83.05(ステープル等)除外あり/ねじ山の有無で分岐
7416(HS上 未設定/予約)同上
7417(HS上 未設定/予約)同上
7418銅製家庭用品・衛生用品等台所用品、たわし、衛生設備品7418.10/7418.20
7419銅製その他の製品銅製部品、銅製記事一般HS2022で6桁構造が変更(7419.20/7419.80)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(頻出):
    • 厚さ:7409(>0.15mm) vs 7410(≤0.15mm)
    • 最大断面寸法:7408(精製銅)で >6mm(7408.11) とその他(7408.19)
    • 合金の種類:黄銅・青銅・白銅(キュプロニッケル)・洋白(ニッケルシルバー)等(類注の定義で判定)
    • 加工度:7419.20(鋳造・鍛造等のみで追加加工なし) vs 7419.80(切削等でさらに加工)
    • 裏打ち(backed)の有無:7410で分岐(厚さは裏打ちを除く)
    • 粉体の構造:7406.10(非ラメラ) vs 7406.20(ラメラ/フレーク)+「粉」の定義(ふるい)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
  1. 7409(板・帯) vs 7410(箔)
    • どこで分かれるか:厚さ0.15mm(裏打ちがある場合は裏打ち除外の厚さ)
    • 判断に必要な情報:製品図面、厚さ測定結果(複数点)、裏打ち材の有無と構成
    • 典型的な誤り:名目「銅箔」でも0.2mmで実態は7409、または裏打ち厚込みで誤判定
  2. 7408(銅線) vs 7413(より線等) vs 8544(絶縁電線)
    • どこで分かれるか:単線か撚りか/絶縁の有無(絶縁があると第85類へ)
    • 判断に必要な情報:断面写真、構造図(導体+絶縁+シース)、用途説明
    • 典型的な誤り:絶縁被覆付きなのに7408/7413で申告
  3. 7411(銅管) vs 7412(銅管継手)
    • どこで分かれるか:「管そのもの」か「接続用継手」か
    • 判断に必要な情報:形状(エルボ/ソケット等)、接続機能の有無、カタログ
    • 典型的な誤り:短い管片を“継手”と誤認、または継手を“管”と誤認
  4. 7419.20 vs 7419.80(その他銅製品の中の加工度)
    • どこで分かれるか:鋳造・鍛造等の後、機械加工や穴あけ等で「さらに加工」しているか
    • 判断に必要な情報:工程表、加工指示書、図面(公差/ねじ/穴)
    • 典型的な誤り:「鍛造品」名目で実は切削済み(7419.80寄り)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第15部は、完成機械・電気機器など多くを除外(部注1)。
    • “parts of general use(一般用の部分品)”は、ねじ・ボルト等の汎用品を指し、機械の「部品」扱いではなく各章の当該見出しに分類させる趣旨(部注2)。ただしインプラント(9021)専用設計のものは除外され得ます。
    • 合金・複合品の基本は「重量優先」(部注5〜7)。
    • **スクラップ(waste and scrap)粉(powders)**の定義(部注8)は、第74類の7404/7406の境界で重要。
    • 第74類などに共通の「棒・線・板・管」等の形状定義が部注9に集約(HS2022の特徴)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:銅製ボルトを「機械の専用部品」として機械側の部品番号に入れる発想は危険です。汎用の締結具は通常、銅なら7415等に落ちます(ただし医療用インプラント専用設計など例外があり得る)。
    • 例:銅粉でも、**塗料・インキ等の“調製品”**としての性格が強い場合は第32類側(部注1(a))に飛ぶ可能性があります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 絶縁電線(第85類)
    • 機械・電気機器の完成品(第16部)
    • 調製された塗料・インキ等(金属粉ベースの調製品)(第32類)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 精製銅(refined copper):Cu 99.85%以上、またはCu 97.5%以上で不純物が一定限度以下。
    • 銅合金(copper alloys):Cuが他元素より重量で優位で、他元素が一定限度超または総量が2.5%超。
    • 母合金(master alloys):他元素と合計してCu>10%、有用な展延性がなく、添加剤等として用いるもの(ただし高リンのリン銅は第28類側へ)。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 黄銅(brass):Cu-Zn合金。Znが他の各元素より重量で優位、Ni<5%、Sn<3%等の条件。
    • 青銅(bronze):Cu-Sn合金。Snが他元素より優位(一定条件でZnがSnを超え得るが上限あり)。
    • 洋白(nickel silver):Cu-Ni-ZnでNi≧5%。
    • 白銅(cupro-nickel)等:Cu-Ni系(Znは1%以下等)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • リン銅(銅リン化物)でリン含有が高いものは第28類(HS2022では28.53)側へ(類注で明示)。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:「精製銅」か「銅合金」かで6桁が変わる(7407/7408/7409/7410/7411/7412など)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • Cu%と不純物(Ag/As/Cd/Cr等)の分析値、Zn/Sn/Ni等の含有率
    • 現場で集める証憑:
      • ミルシート、成分分析表(第三者分析)、SDS、材料規格(JIS/ASTM等)
    • 誤分類の典型:
      • 商品名「純銅」だが実際は添加元素が多く合金扱いになり、精製銅のサブヘディングで申告してしまう
  • 影響ポイント2:スクラップ(7404)認定の可否(=部注8の“使用に耐えない”)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 破損・切断・摩耗などで「そのまま使用できない」こと、取引実態(スクラップとして購入/売却)
    • 現場で集める証憑:
      • 写真(全体+クローズアップ)、スクラップ証明、梱包状態、契約書(scrapとしての売買)、選別工程の資料
    • 誤分類の典型:
      • 中古部品・再利用可能品を“スクラップ”として7404申告(税関で否認されやすい)
  • 影響ポイント3:形状定義(部注9)に合わないと、そもそも見出しがズレる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 断面形状、寸法(厚さ/幅/外径/内径)、コイル状か、加工内容
    • 現場で集める証憑:
      • 図面、検査成績表、工程図(圧延/押出/伸線/切削)、サンプル写真
    • 誤分類の典型:
      • 0.15mm境界の測定が曖昧で7409/7410を誤る

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:銅箔(7410)を銅板(7409)で申告(または逆)
    • なぜ起きる:厚さの測り方(裏打ち込み/除外)や公差、呼称に引っ張られる
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):0.15mmの基準は見出し文言で固定
    • 予防策:図面で「銅単体の厚さ」を確認、複数点測定、裏打ち材の構成資料を添付
  2. 間違い:絶縁電線を7408/7413で申告
    • なぜ起きる:導体が銅なので“銅線”と理解してしまう
    • 正しい考え方:7413は「非絶縁」、絶縁品は第85類へ(部注1で第16部/第85類が除外の文脈も)
    • 予防策:断面写真・仕様書で絶縁層の有無を必ず確認
  3. 間違い:スクラップ(7404)と地金(7403)を取り違える
    • なぜ起きる:「リサイクル原料=スクラップ」と短絡
    • 正しい考え方:スクラップは“使用に耐えない”状態の定義に当てる
    • 予防策:取引書類(scrap表記)、写真、用途(溶解原料専用か)を揃える
  4. 間違い:“黄銅”と聞いて何でも brass(黄銅)サブヘディングに入れる
    • なぜ起きる:商慣習名とHS定義がズレる(Ni/Sn含有で黄銅の定義外になること)
    • 正しい考え方:黄銅/青銅/洋白等は類注の定義で判定
    • 予防策:Zn/Sn/Niの含有率を確認(合金証明)
  5. 間違い:7412(継手)を7411(管)で申告
    • なぜ起きる:短い配管部材を“管”と誤認/逆も同様
    • 正しい考え方:接続機能を持つ形状(エルボ等)は継手側
    • 予防策:カタログ・図面で形状と用途を確認(配管部材の呼称だけに依存しない)
  6. 間違い:銅製ねじ等を“機械の部品”として機械側見出しに入れる
    • なぜ起きる:部品=完成品側、という思い込み
    • 正しい考え方:汎用締結具は“parts of general use”として独立分類が原則(例外:インプラント専用設計等)
    • 予防策:汎用品か専用品か、用途限定性(医療用等)を仕様で確認
  7. 間違い:7419.20(追加加工なし)と7419.80(その他)を混同
    • なぜ起きる:「鍛造品」という言い方が工程実態(切削済み)を隠す
    • 正しい考え方:見出しの“but not further worked”を工程で判定
    • 予防策:工程表・加工内容(穴、ねじ、切削、研磨)を提出資料として揃える

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。特に第74類は「板/箔」「管/継手」「地金/スクラップ」でPSRのロジック(CTH/RVC/WO等)が変わりやすいです。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品のHSを誤る→適用すべきPSR自体が変わる
    • 材料(非原産材料)のHSを適当に置く→CTC判定が崩れる
    • 工程で“さらに加工”しているのに、加工度が低い見出しで考えてしまう(7419など)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 実務では「協定本文(当初版)」と「運用上参照すべきHS(置換PSR等)」がズレることがあります。
  • 例(日本の実務で重要):
    • RCEP:HS2012のPSRが、合同委員会でHS2022に置き換えられ、2023-01-01から運用(原産地証明のHSも置換PSRに基づく)。
    • CPTPP:HS2012ベースで運用される枠組みが一般的(日本税関の原産地規則マニュアルの整理に従い確認)。
    • 日EU EPA・日英EPA:HS2017ベース(同マニュアルの整理に従い確認)。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • まず「協定が要求するHS版」を確認→次に税関/公的機関が出す「置換PSR」「読み替え表」の有無を確認
    • HS2022で通関していても、PSRは別版参照の場合があるので、協定・制度ごとに切り分けます。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(最低限):
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 原産地証明関連(CO/申告)、裏付資料(仕入証憑、製造記録、成分証明)を、社内規程で一括管理

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割/統合(再構成)7419旧:7419.10(チェーン)+7419.91/7419.99 → 新:7419.20/7419.80(加工度で区分)旧コード前提のマスタ/PSR/統計の見直しが必要
HS2017→HS2022注の新設/移動Section XV 注9棒・線・板・管などの定義を、各章注から部注へ集約形状判定の根拠条文が「章注→部注」へ移り、説明資料の参照先が変わる
HS2017→HS2022定義の見直しSection XV 注8(スクラップ)スクラップ定義が整理(“金属くず全般”“使用不能品”)7404該当性説明の書き方(証憑)を見直す
HS2017→HS2022定義の変更Section XV 注2(parts of general use)インプラント専用設計品の扱いが明確化医療用ねじ等で分類が変わり得る(汎用品か専用品かの証明が重要)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 7419の変更根拠:
    • HS2017では7419.10(チェーン)と7419.91/7419.99(その他)が存在。
    • HS2022では7419.20/7419.80へ再編され、チェーンの独立号が無い。
    • WCO相関表(HS2017→HS2022)でも、7419.10等が7419.80等へ対応付けされている。
  • 形状定義の移動(章注→部注)の根拠:
    • HS2017の第74類注に棒・線・板・管等の定義が記載。
    • HS2022ではそれらがSection XV注9に集約。
  • 変更がない部分:
    • 7401〜7413、7415、7418など多くの4桁はHS2017とHS2022で大枠は維持されています(ただし“根拠注”の参照先が変わり得る点は注意)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要な追加・削除・再編(HS2007→2012→2017→2022):

変遷旧コード → 新コード(主な対応)変更の要点補足(実務)
HS2007→HS20127418.11/7418.19 → 7418.10家庭用品系サブヘディングの統合マスタ変換が必要(過去データ参照時)
HS2012→HS2017(章注の参照先)銅リン化物の除外先:28.48 → 28.53第28類側の見出し再編に伴う参照変更“高リンのリン銅”を扱う場合、版違いに注意
HS2017→HS20227419.10/7419.91/7419.99 → 7419.20/7419.807419の6桁構造変更旧7419.10(チェーン)はHS2022で別建てなし(7419.80側へ整理され得る)

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「スクラップ申告だが再利用可能」問題
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):部注8(スクラップ定義)に当てはまらない可能性
    • 起きやすい状況:中古モーターの銅部品・電線束など、再利用/修理可能な状態
    • 典型的な影響:修正申告、検査強化、通関遅延
    • 予防策:状態写真、売買契約(scrap条件)、選別工程の説明を事前に用意
  • 事例名:「銅箔の厚さ境界(0.15mm)で揉める」
    • 誤りの内容:7409/7410の見出し要件違反(厚さ)
    • 起きやすい状況:公差が大きいロット、裏打ち材付き
    • 影響:HS差替えによる税率・統計・原産地判定の連鎖変更
    • 予防策:厚さ測定記録、裏打ち除外厚さの根拠資料
  • 事例名:「絶縁電線を非絶縁として申告」
    • 誤りの内容:部注(第16部/第85類除外)の見落とし+7413の要件誤認
    • 起きやすい状況:導体銅比率が高く見た目が似ている
    • 影響:品目誤り、規制/安全基準/表示の追加確認
    • 予防策:断面・仕様書で絶縁層確認
  • 事例名:「鍛造品(7419.20)だと思ったら切削済み」
    • 誤りの内容:7419.20の“追加加工なし”要件の見落とし
    • 起きやすい状況:外注加工が工程表に出ていない
    • 影響:コード差替え、原産地ルール再判定
    • 予防策:工程表・加工指示書の入手、サンプル確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ):
    • 検疫・衛生(SPS等):通常、第74類の銅材そのものはSPSの中心ではありません(用途・付着物・汚れ等がある場合は別途確認)。
    • バーゼル法(有害廃棄物等の越境移動)/廃棄物性の確認
      • 特に**銅くず・スクラップ(7404)**は、貨物が「廃棄物」に当たるかどうかで手続が大きく変わる可能性があります。
      • 税関はバーゼル法に関する「水際」情報を公表しており、輸出入時の注意点・相談導線が示されています。
      • 経済産業省はバーゼル法に関する事前相談の案内を公表しています。
      • 環境省も制度・手続の情報を公表しています。
    • 安全保障貿易管理(該当する場合)
      • 金属材料は一般品でも、仕様・用途・需要者・仕向地により、リスト規制/キャッチオール規制の確認が必要になることがあります(経産省の制度概要・ガイダンス参照)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • バーゼル法:税関(案内ページ)、経産省(事前相談)、環境省(制度説明)
    • 安全保障貿易管理:経産省(制度概要・キャッチオール等)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 貨物の状態写真、成分表、用途説明、取引契約(スクラップ売買であること等)、工程・選別フロー、(必要に応じ)事前相談記録

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 成分(Cu/Zn/Sn/Ni等)、形状(棒/線/板/箔/管/継手)、寸法(厚さ0.15mm、最大断面6mmなどの境界)、絶縁の有無
    • スクラップの場合:使用不能性の根拠(写真・契約・選別工程)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 部注8(スクラップ/粉)、部注9(形状定義)、類注(精製銅/合金/母合金)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名は「銅板」「銅箔」「銅線(非絶縁)」「銅スクラップ」等、誤解が起きない粒度で
    • 裏付資料(図面・成分表・写真)をセットで管理
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版(RCEPは2023-01-01以降HS2022置換PSR等)を確認
    • BOM、非原産材料HS、工程、原価資料を保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 銅スクラップはバーゼル法の観点で事前確認(必要なら事前相談)
    • 安全保障貿易管理(該当性・用途確認)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS条文・注・相関表等)
    • HS2022 Chapter 74 “Copper and articles thereof”(参照日:2026-02-27)
    • HS2017 Chapter 74(参照日:2026-02-27)
    • HS2012 Chapter 74(参照日:2026-02-27)
    • HS2007 Chapter 74(参照日:2026-02-27)
    • HS2022 Section XV Notes(参照日:2026-02-27)
    • HS2017 Section XV Notes(参照日:2026-02-27)
    • WCO Correlation Tables 2017↔2022(Table II)(参照日:2026-02-27)
  • 日本:税関・公的機関
    • 税関:RCEP(HS2022版PSR・運用案内)(参照日:2026-02-27)
    • 税関:EPA原産地規則マニュアル(協定別HS版の整理を含む)(参照日:2026-02-27)
    • 税関:バーゼル法関係(水際情報)(参照日:2026-02-27)
    • 経済産業省:バーゼル法(事前相談)(参照日:2026-02-27)
    • 環境省:バーゼル法関連情報(参照日:2026-02-27)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理(制度概要・キャッチオール等)(参照日:2026-02-27)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不

HS2022 第73類:鉄鋼製品(Articles of iron or steel)

  • 用語:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)
  • 注意:ここで扱うのは原則**HS(6桁)です。日本の国内コード(9桁等)**は別物なので、触れる場合は「国内コード」と明記します。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 鉄鋼製の管・パイプ・中空形材(鋳鉄/継目無/溶接などで区分)
    • 鉄鋼製の管継手(エルボ、フランジ等)
    • 鉄鋼製の構造物・構造物の部分(橋、鉄骨、足場材等)
    • 鉄鋼製のタンク・ドラム・ガス容器(ボンベ)
    • 鉄鋼製のボルト・ナット等の締結具
    • 鉄鋼製の厨房用品・衛生器具(鍋類、流し台等)
      ※第73類の見出し構成はHS条文に基づきます。
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 鉄鋼の一次製品(板、棒、形鋼、線材など) → 第72類(鉄鋼)に行きやすい(「製品」ではなく「素材形状」)
    • 機械・電気機器の部分品(ただし“一般用の部分品”は別)→ 多くは第84類・85類(部注で第15部から除外の考え方)
    • 鍵・蝶番・取っ手等の金物 → 第83類(卑金属製の雑品)に行きやすい
    • プレハブ建物 → 94.06(第94類)に除外される(第73類の構造物とは別扱いになり得る)
    • 医療用インプラント向けに専用設計されたボルト等 → 90.21(HS 9021)になり得る(HS2022の「一般用の部分品」定義で例外が明確化)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 第72類(素材形状)か、第73類(“製品”)か
    2. 「機械の部品」か「一般用の部分品(parts of general use)」か(ボルト/管継手/チェーン等は“部品”扱いでも機械の類に行かないのが原則)
    3. 鋼管・容器は製造方法/寸法/容量で号が変わりやすい(例:外径406.4mm、容量300L、50Lなど)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 鋼管(7304〜7306):号違いで税率・統計・規制・原産地判定(PSR)が連鎖して崩れる
    • ガス容器(7311):通関前後で高圧ガス関係の検査・手続が絡む場合がある(日本)
    • 締結具(7318):機械部品に見えるため誤って第84/85類に入れがち(ただし原則“一般用の部分品”)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIRを、ビジネスマン向けに説明します:
    • GIR1(見出し・注で決める):第73類は、部注・類注が強く効きます。まず「第15部注」→「第73類注」→「見出し」の順で当てはめます。
    • GIR6(号まで落とす):鋼管・容器・金網などは、号で寸法/容量/製造方法が分かれるので、最後はGIR6で精緻化します。
    • (ケースにより)GIR2(a):未完成品でも完成品の性格を持てば同様に扱われることがあります(例:穴あけ済みの鉄骨部材など)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 材質:鋳鉄か、ステンレス鋼か、非合金鋼か、合金鋼か(鋳鉄の定義は類注で重要)
    • 製造方法:継目無か、溶接か、鋳造か(鋼管で決定的)
    • 状態・加工度:構造物用に“準備された”部材か(7308)/単なる形鋼か(第72類寄り)
    • 用途:家庭用非電気調理器具(7321)/暖房用ラジエータ(7322)/衛生器具(7324)など

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:鉄または鋼の「製品」か?
    • 板・棒・線材など“素材形状”なら第72類を優先検討
    • “用途が立っている形状”なら第73類へ
  • Step2:部注で第15部から除外されないか?
    • 機械・電気機器(第16部)などに該当すると第15部から除外され得ます。
    • ただし 73.07/73.12/73.15/73.17/73.18 は「一般用の部分品」に該当しやすく、機械の“部分”と見えても第73類に残るのが原則です。
  • Step3:第73類のどの項(4桁)か?
    • 形状・機能でまず項を決め、次に号で寸法・材質・製造方法を詰めます。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第72類(鉄鋼) vs 第73類(鉄鋼製品):素材形状か、用途が立つ“製品”か
    • 第73類 vs 第83類(卑金属製雑品):鍵/蝶番/建具金物等は83類寄り
    • 第73類 vs 第84/85類(機械・電気の部品):ただし“一般用の部分品”は73類に残りやすい

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:
    • 第73類は4桁見出しが 7301〜7326 と体系的なので、全列挙します(実務上も全体像が重要)。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
7301矢板・溶接形鋼等矢板、溶接アングル形鋼でも「溶接形鋼」等の範囲に注意
7302鉄道/軌道用の線路用材レール、まくら木(クロスタイ)、継目板“線路の固定・接合に特化”が鍵
7303鋳鉄製の管ダクタイル鋳鉄管など「鋳鉄」の定義は類注で確認
7304継目無(シームレス)管シームレス鋼管、油井管(継目無)用途・鋼種・加工(冷間等)で号が分岐
7305外径406.4mm超の円形断面管大口径鋼管(溶接等)外径406.4mmがキー
7306その他の管(溶接等)溶接鋼管、角パイプ溶接/断面形状/鋼種で号が分岐
7307管継手フランジ、エルボ、ソケット「一般用の部分品」該当が多い
7308構造物・その部分等鉄骨、橋梁部材、足場材プレハブ建物(94.06)除外に注意
7309容量300L超のタンク等大型貯槽、タンク300L超・機械/加熱装置なし
7310容量300L以下のドラム等ドラム缶、一斗缶、ペール缶50L境界など号で分岐
7311圧縮/液化ガス容器ガスボンベ、シリンダー“ガス用”は7311、規制実務に注意
7312撚り線・ワイヤロープ等ワイヤロープ、スリング電気絶縁の有無(“not electrically insulated”)
7313有刺鉄線等有刺鉄線、フェンス用線材フェンス用途の典型
7314金網・金網フェンス・エキスパンドメタル溶接金網、メッシュ、エキスパンド線径・目合い等で号分岐あり
7315チェーンローラチェーン等「一般用の部分品」該当が多い
7316いかり等アンカー、グラップネル船舶用品でも本項に残ることがある
7317釘・ステープル等釘、タッカー針(83.05除外)83.05(文具用等)との切分け
7318ねじ・ボルト・ナット等ボルト、ナット、リベット「一般用の部分品」該当が多い
7319縫針・安全ピン等手縫針、安全ピン、まち針現行HSは7319.40等の区分
7320ばねコイルばね、板ばねばねの形状で号が分岐
7321非電気の家庭用調理器等ガスコンロ、薪ストーブ“non-electric”が鍵
7322非電気の暖房用ラジエータ等セントラルヒーティング用ラジエータ“not electrically heated”が鍵
7323家庭用品・金たわし等鍋、フライパン、金たわし鋳鉄・ステンレス等で号分岐
7324衛生器具流し台、洗面器、浴槽7323(厨房用品)と混同しがち
7325その他の鋳鉄製品等鋳物のマンホール蓋等鋳物(cast)の扱いに注意
7326その他の鉄鋼製品ブラケット、金具、雑多な鉄製品“他に該当しない”の最後の受け皿

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(頻出)
    • 鋼管(7304/7305/7306):継目無/その他、外径406.4mm、断面形状、鋼種(ステンレス等)、用途(ラインパイプ等)
    • 容器(7309/7310/7311):ガス用か否か、容量300L、さらに7310は50Lなど
    • 金網(7314):溶接交点の有無、線径、目合い、めっき/樹脂被覆等(例:線径3mm以上・目合い100cm²以上で特定号)
    • 締結具(7317/7318/7319):ねじ山の有無、用途(手縫針等は7319)、一般用の部分品該当
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 7304(継目無) vs 7306(溶接等)
      • どこで分かれるか:製造方法(seamless か、welded/open seam か)
      • 判断に必要な情報:製造工程(ミルシート/工程図)、製造方法の記載、規格(JIS/ASTM等)、断面形状
      • 典型的な誤り:「溶接なのに“鋼管”という品名だけで7304扱い」
    2. 7305(外径406.4mm超) vs 7306(その他)
      • どこで分かれるか:外径406.4mm超かどうか
      • 判断に必要な情報:外径(mm)、円形断面か、仕様書
      • 典型的な誤り:「大口径だが外径を確認せず7306で申告」
    3. 7309(>300L) vs 7310(≤300L)
      • どこで分かれるか:容量300L超/以下、機械/加熱装置の有無
      • 判断に必要な情報:容量(L)、構造図、付属機器(攪拌機・ヒーター等)の有無
      • 典型的な誤り:「300L境界を見落とす」「付属装置付きなのに7309/7310で処理」
    4. 7310(一般容器) vs 7311(圧縮/液化ガス用容器)
      • どこで分かれるか:ガス(圧縮/液化)用途かどうか
      • 判断に必要な情報:充填内容物、圧力設計、用途説明、ラベル、UN番号等
      • 典型的な誤り:「空のガスボンベを“容器”として7310にしてしまう」
      • 付随論点:日本では高圧ガス関係の輸入検査が絡むことがあるため、事前確認が重要です。
    5. 7318(一般のねじ等) vs 9021(医療用インプラント用に専用設計)
      • どこで分かれるか:「一般用の部分品」定義の中で、インプラント専用設計品は除外され得る点(HS2022)
      • 判断に必要な情報:医療用途、インプラント専用設計(形状・材質・規格)、医療機器カタログ、承認情報
      • 典型的な誤り:「手術用の骨ねじ等を“ねじ”として7318で固定」

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第15部注は「第15部に含まれないもの(除外)」と「部内共通の定義(一般用の部分品、複合品等)」が分類を強く左右します。
    • 特に重要なのが 注2(parts of general use)注7(複合製品の扱い) です。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • **ボルト(7318)**は、機械に使われても「機械の部分」ではなく、原則として7318に残りやすい(=“一般用の部分品”)。
    • **管継手(7307)**も同様に“一般用の部分品”に該当しやすく、設備の一部に組み込まれても7307を基点に検討します。
    • 複合品(例:鉄+ステンレス+銅の組合せ)の場合、原則は重量で優勢な卑金属で分類し、さらに「鉄と鋼は同一金属扱い」とされます。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 第16部(機械・電気)該当:機械としての本体・部品に吸収されるケース
    • 第94類(家具・照明・プレハブ等)該当:構造物(7308)と見えても、94類へ飛ぶケース(品目の性格次第)
    • 医療用インプラント(90.21):HS2022で「一般用の部分品」から除外され得る旨が明確化

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1:鋳鉄(cast iron)の定義(鋳造で、鉄が他元素より重量優勢、かつ第72類注で定義される鋼の組成に該当しないもの)
    • 類注2:この類でいう**wire(線)**は、断面形状を問わず、断面寸法が16mmを超えない熱間/冷間成形品
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 上記の「鋳鉄」「wire」は、鋼管・金網等で“言葉の感覚”とズレることがあるため、必ず注の定義に寄せて判断します。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 類注自体は定義中心ですが、部注側の除外(第16部・第94類等)が実務上の除外として効きます。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:「鋳鉄」該当かどうかで、鋳鉄管(7303)や鋳物製品(7325)に寄る
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 材質(鋳鉄/鋼)、化学成分(主要元素の重量比)
      • 製造方法(鋳造か否か)
    • 現場で集める証憑:
      • ミルシート、材質証明、成分分析表、製造工程表
    • 誤分類の典型:
      • 「見た目が黒い=鋳鉄」と決めつける(実際は鋼)
  • 影響ポイント2:wireの定義(16mm)で、線材・金網の解釈がズレる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 断面最大寸法(mm)、断面形状、加工履歴(熱間/冷間)
    • 現場で集める証憑:
      • 図面、寸法表、製造仕様書
    • 誤分類の典型:
      • “wire”を日常語の「細い線」だと思い込み、寸法確認を省略する

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:溶接鋼管を7304(継目無)で申告
    • なぜ起きる:品名が「鋼管」で、製造方法が書類に出ない
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):見出しが製造方法で分かれているため、工程情報が必要(7304/7306の構造)
    • 予防策:
      • 仕様書に「seamless/welded」の明記
      • ミルシートや規格票を入手
  2. 間違い:外径406.4mm超の管を7306に入れる
    • なぜ起きる:外径を“呼び径”で見てしまう
    • 正しい考え方:7305は外径406.4mm超を明示している
    • 予防策:
      • 外径(mm)の実測/図面値を確認
      • 呼び径→外径換算表を社内標準化
  3. 間違い:容量300L境界(7309/7310)を見落とす
    • なぜ起きる:容器の用途だけ見て容量を見ない
    • 正しい考え方:7309は300L超、7310は300L以下の構造
    • 予防策:
      • 容量(L)と「機械/加熱装置の有無」をチェック項目化
  4. 間違い:ガスボンベ(7311)を一般容器(7310)扱い
    • なぜ起きる:「空容器=一般容器」と誤解
    • 正しい考え方:7311は圧縮/液化ガス用容器、7310は“ガス以外”の一般容器
    • 予防策:
      • 内容物・用途(ガス充填)・圧力設計の確認
      • 日本向けは高圧ガス関係の輸入検査要否も事前確認
  5. 間違い:ボルト/ナットを機械(第84/85類)の部品として申告
    • なぜ起きる:実際に機械の部品として使うため
    • 正しい考え方:73.07/73.12/73.15/73.17/73.18は“一般用の部分品”として扱われ、機械の「部分」扱いにならない方向に働く
    • 予防策:
      • 「一般用の部分品」該当性チェック(ボルト、管継手、チェーン等)
  6. 間違い:医療用インプラント専用設計のねじ等を7318に固定
    • なぜ起きる:形状がボルト/ねじに見える
    • 正しい考え方:HS2022の部注で、インプラント専用設計品は“一般用の部分品”から除外され得る(90.21へ)
    • 予防策:
      • 医療用途・専用設計の有無を確認(医療機器カタログ、用途説明、規格)
  7. 間違い:金網(7314)の号を線径/目合い確認なしで決める
    • なぜ起きる:品名が「メッシュ」「フェンス」だけ
    • 正しい考え方:溶接交点・線径・目合いで号分岐(例:線径3mm以上・目合い100cm²以上など)
    • 予防策:
      • 寸法表(線径、目合い)、表面処理(亜鉛めっき/樹脂被覆)を取得
  8. 間違い:構造物用に“準備された”部材を第72類の形鋼で処理
    • なぜ起きる:材料形状がH形鋼等に見える
    • 正しい考え方:7308は、構造物や「構造物用に準備された板・棒・形材等」を含む構造で、加工状態が重要
    • 予防策:
      • 穴あけ、切断、溶接、取付け用加工の有無(図面・工程)を確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。最終製品HSを誤ると、PSR適用も誤り、原産性判断が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料のHS最終製品のHSを取り違える
    • 鋼管(7304/7306)などで製造方法を誤り、PSRの「CTH/CTSH」判定がズレる
    • “一般用の部分品”(7318等)を機械部品として扱い、材料HSが崩れる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに、PSR(品目別規則)が参照するHS版が異なります。代表例:
    • RCEP:日本外務省は、原産地証明に記載するHSコードと原産品判定基準は、2023/1/1以降 HS2022へ転置(transposed)されたPSRを基礎にする旨を案内しています。
    • CPTPP:PSR検索は**HS2012での分類(6桁)**が必要、という説明があります(輸入国の関税率表・申告コードは別版を使うケースあり)。
    • 日EU EPA:PSR附属書(Annex 3-B)はHarmonized System classification (2017) を明記しています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
      1. 協定本文/公式ガイダンスで「参照HS版」を確定
      1. 旧版→新版の対応表(転置PSR、相関表)で、旧コード側でPSRを読み、必要なら新版に写像
      1. 取引で使う書類(原産地証明、申告)ごとに「どのHS版で書くか」を統一

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(最低限)
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS(協定が参照するHS版)
    • RVC計算の前提(控除法/積上げ法等、協定ごとのルール)
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 仕様書・工程表・計算根拠・仕入書・製造記録を、協定・国内法の保存要件に沿って保管

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022範囲変更(部注)第15部 注2(“一般用の部分品”)/90.21「一般用の部分品」に含まれる73.07等について、医療用インプラント専用設計品(90.21)は除外され得る旨が明確化医療用途の締結具等で、7318固定の誤りを防ぐ。医療カタログ等の証憑が重要
HS2017→HS2022(確認範囲では)変更記載なし第73類(6桁)HS2022改正の相関表(改正項目の表)では、730/731/732で始まる記載が見当たらない(=第73類の号レベル改正は少なくとも当該表には現れていない)HS6桁の大改正は相対的に少ない可能性。ただし国内細分は国別に改正され得るため注意

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料と判断プロセス:
    • **根拠1:第15部 注2(HS2022)**には、73.07等を「一般用の部分品」とする規定の中で、医療用インプラント専用設計品(90.21)を除く旨が書かれています。
    • **根拠2:第15部 注2(HS2017)**には、同じ「一般用の部分品」定義はあるものの、インプラント除外の文言が確認できません
    • 以上より、「HS2017→HS2022で、一般用の部分品定義にインプラント例外が追加された」と整理しました(部注改正)。
  • 第73類自体(見出し・号)については、改正相関表(改正点の表)上で第73類に関する記載が確認できないため、「少なくとも当該表が対象とする改正点としては大きく現れていない」と控えめに記載しています。
  • なお、HS2022には**補完改正(complementary amendments)**が設定されることがあります。運用時点の版(発効日)も確認してください。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • 第73類の中でも、旧版→新版で号(6桁)の再編が起きた例があります(代表例):
    • 例:73.19(縫針・安全ピン等)
      • HS2007では 7319.20(安全ピン)、7319.30(その他のピン)に分かれていた一方、HS2022では 7319.40(安全ピンその他のピン)というまとまりで示されています。
  • ただし、「いつの改正(HS2012/2017)で統合されたか」まで厳密に追うには、各版の条文(該当版)または公式相関表での確認が必要です(ここでは“少なくともHS2007→HS2022で差がある”ことを示しています)。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「機械部品」名目でボルトを84類申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第15部 注2(一般用の部分品)の考え方を無視
    • 起きやすい状況:インボイス品名が “parts for machine” だけ、部品表の提出が薄い
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、通関遅延(一般論)
    • 予防策:ボルト/ナット等は「7318の可能性」を最初に立て、寸法・規格・用途証明を添付
  • 事例名:鋼管の製造方法違いで号が変更
    • 誤りの内容:継目無(7304)と溶接(7306)を取り違え
    • 起きやすい状況:調達先が複数で、ミルシート形式がバラバラ
    • 典型的な影響:税率差・統計・原産地判定のズレ(一般論)
    • 予防策:ミルシート(製造方法)を必須添付、社内で規格の標準化
  • 事例名:ガスボンベの誤分類+高圧ガス手続の見落とし
    • 誤りの内容:7311相当を7310扱い等で申告、関連手続の確認漏れ
    • 起きやすい状況:空容器・付属バルブの扱いが曖昧
    • 典型的な影響:通関保留、追加書類要求、搬出遅延(一般論)
    • 予防策:用途(ガス用)・規格・輸入検査要否を事前確認
  • 事例名:医療用インプラントねじの分類差
    • 誤りの内容:7318固定(一般用の部分品)としてしまう
    • 起きやすい状況:医療用途情報が貿易書類に出てこない
    • 典型的な影響:規制・税率・統計・原産地の連鎖ズレ(一般論)
    • 予防策:医療用途・専用設計の証憑(カタログ/承認情報)を準備し、必要なら事前教示を活用

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第73類は食品そのものではないためSPSの中心ではありませんが、用途(食品接触)や製品規格により別途要件が付くケースはあり得ます(個別確認)。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 第73類自体は通常対象外。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 第73類そのものが一律規制対象ではありません。用途・仕様・最終需要者により確認が必要になる場合があるため、社内の輸出管理フローに組み込みます(一般論)。
  • その他の許認可・届出(日本で実務に出やすい例)
    • 高圧ガス(7311など):日本では、高圧ガスとその容器について、輸入後の移動等に輸入検査が関係する旨が制度上示されています(詳細は陸揚地の都道府県・関係機関へ確認)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 税番の事前確認:日本税関の事前教示(品目分類)
    • 高圧ガス:経済産業省(高圧ガス保安法関係)や関連機関(KHK等)、陸揚地都道府県窓口
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(材質・寸法・製造方法)、図面、写真、用途説明、カタログ
    • 規制対象が疑われる場合:適用法令に基づく証明書・検査書類

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 材質(鋳鉄/鋼/ステンレス等)、製造方法(鋳造/継目無/溶接)、寸法(外径・肉厚・線径・目合い)、容量(L)、用途
    • 図面、ミルシート、工程表、カタログ、写真
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第15部注(一般用の部分品、複合品、除外)を確認
    • 第73類注(鋳鉄/ワイヤ定義)を確認
    • 迷う境界(72類/83類/84-85類/94類)を再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「seamless/welded」「OD」「capacity」など判定要素を入れる
    • 必要に応じて仕様書・図面を添付
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版を確認(RCEP/CPTPP/日EU EPA等)
    • BOM、非原産材料HS、工程、原価計算根拠を揃える
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 7311等の可能性がある場合、高圧ガス関連の輸入検査要否を事前確認
    • 不明点は税関の事前教示も活用

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 第15部 注(Base metals and articles of base metal)
    • HS2017 第15部 注(比較用)
    • HS2022 第73類(Articles of iron or steel)
    • HS2007 第73類(旧版比較用)
    • HS2022関連(補完改正の案内等)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 事前教示(品目分類)制度(Advance Classification Ruling System)
    • HS2022改正相関表(改正点の表として参照)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • RCEP:外務省ページ(HS2022転置PSRの案内)
    • RCEP:HS2022転置PSR(採択/実施時期の説明を含む資料例)
    • CPTPP:PSRはHS2012で分類して参照(輸入者向けガイド例)
    • 日EU EPA:PSR附属書(HS2017明記)
  • その他(業界団体、公的統計等)
    • 高圧ガス保安(輸入検査の概説)
    • 経済産業省(高圧ガス保安法の輸入検査に関する案内例)
    • 参照日:2026-02-27

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。