HSCF: 付番トライアル011:インターフォンの親機で実験

試したもの
インターフォンの親機の写真でHSコードの判定を試した

入力条件(日本語:ユーザー条件のみ)

  • 品名/用途:—
  • 材質:—
  • 構成・セット:—
  • 電気性・測定/通信:—
  • 寸法・仕様値:—
  • 型番・画像:画像1枚(壁面に取り付けられた機器の写真)
  • 通関国・前提:—

日本語版

1) 結論

  • 国別例示(任意):
    • JP:8517.62-000(有線・無線ネットワーク用の音声・画像等の受信・変換・送受装置)
    • US:8517.62.0090(Machines for reception, conversion and transmission or regeneration of voice, images or other data, other)
    • EU:8517 62 00(Machines for the reception, conversion and transmission or regeneration of voice, images or other data)
  • 要約:壁面設置のモニター・受話器・マイクを一体化した室内用インターホン(ドアホン)と判断。音声・画像を相互にやり取りする通信機器に該当し、警報器(85.31)や単体モニター(85.28)ではないため、85.17に分類。
  • 確度(%):75%

2) 根拠

  • 適用通則・注(例:GRI 1, 6、16部注、85類注):項の記載(85.17)に基づきGRI1で判断。必要に応じてGRI6で号を特定。
  • 判定ポイント(主用途、主要材質、機能、構成、セット該当性 等):
    • 主用途:来訪者との通話・映像確認・解錠操作を行う室内親機。
    • 機能:音声(マイク・スピーカー)と画像(カメラからの映像受信)を通信線でやり取りする装置。
    • 構成:受話器、スピーカー開口、表示パネル、解錠ボタン等が一体。
    • セット性:写真は室内親機単体だが、通常は屋外カメラ子機等と組み合わせて通信機能を発揮。
  • 仮定(入力不足を補う前提):
    • 本体は屋外子機と有線で接続され、音声・画像信号の送受を行う。
    • アラーム専用ではなく、通話・映像確認が主機能。
    • 一体の機能装置として提示(部分品ではない)。
  • 排他・除外の理由(他の類・項ではない理由):
    • 85.31(電気式の可視・可聴信号装置:ベル・警報等):本機の主眼は警報ではなく、双方向通話・映像通信であるため不適。
    • 85.28(モニター・プロジェクター):単なる映像表示装置ではなく、音声入出力を含む通信機器であるため不適。
    • 85.25(テレビカメラ等):屋内親機は送受の通信装置であり、撮像機器に限定されないため不適。
  • 型番・画像:ユーザー提供画像(1枚)
    • 画像A(全体):受話器・表示パネル・スピーカー開口・解錠ボタン様のUIを確認。
    • 画像B(操作部):通話・解錠などの機能ボタンがあり、通話機能が主機能であることを示唆。
    • 画像C(配線想定):壁面据付・背面配線前提の親機形状で、屋外子機との有線通信を想定。

候補比較(代替候補の比較表)

候補HS(6桁)見出しの趣旨該当する可能性棄却・採用理由確度(%)
8517.62音声・画像等データの受信・変換・送受装置高い双方向の通話・映像通信を行う室内親機に整合75
8531.80電気式可視・可聴信号装置(ベル、警報盤等)呼出音は付随機能。主たる性質は通信のため不採用15
8525.89テレビカメラ等のその他本体は撮像機ではなく通信親機。用途不一致5
8528.59その他のモニター表示のみではなく通話・制御を伴うため不採用5

※ 表の前後に空行を入れ、列数は全行で統一しています。

3) 争点・注意

  • セット提示か単体提示か:屋外カメラ子機とセットで提示される場合も、通信機能の本質から85.17の枠内で構成品を判断(必要に応じGRI3(b)又は16部の部分品規定を検討)。
  • 部分品に該当する場合:室内親機が「専ら又は主として」当該インターホンに使用されるなら85.17の部分品(8517.70相当;各国の細分に依存)となる可能性。
  • IP型(LAN接続)か否か:いずれも85.17の通信装置の範囲に含まれるが、無線/有線・プロトコルにより各国細分が異なる場合あり。
  • 解錠制御の有無:解錠は付随機能。主機能(通話・映像通信)による分類が優先。

4) 追加で必要な情報

  • 正式な品名・型番(例:銘板写真、取扱説明書)
  • 接続方式(2線式/4線式、IP(LAN)/RS-485 等)、無線対応の有無
  • 単体提示か、屋外子機・電源アダプタ等との「小売用のセット」提示か
  • 防犯警報機能の有無(アラーム専用ではないことの確認)
  • 市場国(通関国)と適用HS版(HS2022 など)

5) 参考資料・出所

WCO解説、各国実行関税表、裁定・裁決番号、メーカー仕様書 等


※ 本判定は画像のみを根拠とした暫定案です。型番・接続方式の確定により、**8517.70(部分品)**や各国細分への落とし込みが変わる可能性があります。

HS 2028改正の骨格が確定。WCOが示した世界共通6桁の全貌と企業が直面するシステム移行のマラソン

2026年1月31日、世界税関機構(WCO)から、全世界の貿易実務者にとって極めて重要なマイルストーンとなる情報が発信されました。それは、2028年1月1日に発効する第8次HS条約改正(HS 2028)における、世界共通の6桁コードの変更内容が最終確定し、現行のHS 2022との相関表(Correlation Tables)のドラフト配布が開始されたというニュースです。

これは単なる事務連絡ではありません。2年後に迫った新ルールへの移行に向け、企業のシステム改修やマスタデータ更新のカウントダウンが正式に始まったことを意味します。

本記事では、今回確定した変更内容のポイントと、このニュースを受けてビジネスマンが今すぐ着手すべき準備について解説します。

HSコードの6桁が確定したことの重大な意味

貿易実務においてHSコードは世界共通言語ですが、厳密に世界で統一されているのは上6桁までです。それ以降の桁数は国ごとに自由に設定されます。今回、WCOが確定させたのは、この世界共通部分である6桁の構造です。

これが確定したということは、もはや議論のフェーズは終わり、実装のフェーズに入ったことを示唆します。これから2028年にかけて、日本、米国、EUなどの各加盟国は、この6桁をベースに自国の関税率表(9桁や10桁)を作成する作業に入ります。

企業にとって重要なのは、相関表(Correlation Tables)が提示された点です。これは、今のコードが将来どのコードに変換されるかを示す対照表であり、システム移行のための設計図そのものです。これが入手可能になったことで、IT部門や通関部門は具体的な影響範囲の特定が可能になりました。

今回の改正を貫く2つの主要テーマ

HS 2028の改正内容は多岐にわたりますが、ビジネスに直結する大きな潮流は環境とテクノロジーの2点に集約されます。

環境物品の可視化と循環経済への対応

もっとも大きな変更点は、環境関連物品の細分化です。これまでのHSコードでは、廃棄物やリサイクル原料は大雑把な分類しかされていませんでした。しかし、HS 2028では、使用済みプラスチック、電子廃棄物(e-waste)、そしてバイオ燃料などの分類が劇的に細かくなります。

これは、国境を越えるリサイクル資源の移動を管理しやすくするためであり、同時に環境物品への関税撤廃や、逆に環境負荷の高い物品への課税強化を行うための布石でもあります。サステナビリティを掲げる企業にとって、自社のリサイクル材がどの新コードに落ちるかは、コンプライアンス上の最重要確認事項となります。

新技術製品の独立分類

もう一つの柱は、急速に普及した新技術への対応です。例えば、ドローン、3Dプリンター、特定のAIハードウェア、次世代半導体素材などが、従来のその他分類から独立し、固有の場所を与えられます。

これにより、ハイテク製品の貿易統計が正確になると同時に、特定の技術製品を狙い撃ちにした関税設定や輸出管理が容易になります。該当製品を扱うメーカーは、関税率が変動するリスクを織り込む必要があります。

最大のリスクはFTA原産地規則との乖離

コードが変わることで最も警戒すべき実務上の落とし穴は、自由貿易協定(FTA/EPA)の原産地証明です。

多くのFTAでは、原産地規則(関税分類変更基準など)が、協定発効時の古いHSコードに基づいて定義されています。HS 2028が導入されると、通関申告は2028年版で行う一方、原産地判定は2017年版や2022年版のコードに変換して行わなければならないという、二重管理の状態が発生します。

WCOによる相関表の公開は、この変換作業を正確に行うための公式な定規が配られたことを意味します。この定規を使わずに感覚で変換を行えば、原産地規則の適用ミスによる脱税や事後調査での否認につながります。

企業が今すぐ開始すべき3つのアクション

2028年はまだ先だと思われるかもしれませんが、基幹システムの改修には年単位の時間を要します。以下の3つのステップで準備を開始することを推奨します。

影響分析の予算化とチーム組成

まず、自社が取り扱っている製品のうち、どの程度がHS 2028の影響を受けるかを洗い出す必要があります。今回配布された相関表を用いれば、コードが変わる品目のリストアップが可能です。IT部門と通関部門によるタスクフォースを立ち上げ、システム改修に必要な予算を来期の計画に盛り込む必要があります。

マスタデータのクレンジング

移行作業をスムーズにするためには、現状のデータが綺麗であることが大前提です。現在使用しているHSコードに誤りがないか、製品情報(成分、材質、用途)が最新の状態に更新されているかを確認してください。ゴミデータのまま新コードへ移行しようとすると、自動変換の精度が落ち、手作業の修正コストが膨れ上がります。

サプライチェーン全体への周知

自社だけでなく、海外のサプライヤーや現地法人に対しても、2028年改正に向けた準備を促す必要があります。特に、部品表(BOM)のHSコード更新は、サプライヤーからの情報提供がなければ完了しません。早期にアナウンスを行うことで、直前の混乱を避けることができます。

まとめ

WCOによるHS 2028の最終確定は、グローバルビジネスにおけるルール変更の合図です。

新しいコード体系は、環境配慮や新技術といった時代の要請を反映したものであり、これに適応できない企業は、通関の遅延や関税コストの増加というペナルティを支払うことになります。

相関表という地図は手渡されました。あとは、2028年1月1日というゴールに向けて、着実にシステムと業務を適合させていく実行力が問われています。

CBP裁定で読み解く「導線(8544)」と「自動車部品(8708)」の境界線

ワイヤーハーネスは、見た目も用途も明らかに自動車向けです。にもかかわらず、米国税関CBPの裁定では、しばしば自動車部品の8708ではなく、導線としての8544に分類されます。
ここを誤解すると、申告修正や追徴、追加関税の取りこぼし・過払い、サプライチェーン原価計算の崩れにつながりかねません。

本稿では、CBPの代表的な裁定(HQ・NY)を軸に、「導線としての8544」と「自動車部品としての8708」の境界がどこに引かれるのかを、ビジネスの意思決定に使えるレベルまで整理します。

※本稿は一般的な情報提供であり、個別案件の分類を確定するものではありません。最終判断には製品仕様、構成部品、輸入時の状態、提出資料が強く影響します。重要案件ではCBPのバインディングルーリング取得を推奨します。


1. まず結論:8708に行く前に、8544に「吸い込まれる」仕組みがある

誤解が生じやすい最大の理由は、「用途だけで考えてしまう」ことです。
確かにワイヤーハーネスは車両専用に設計され、車の中でしか使われませんが、HTSUSは用途だけでなく、章注・部注による「門番ルール」で分類の行き先を決めています。

その典型が、HTSUS Section XVII(車両等)の注2(f)です。
この注記では、車両の部品として識別できるものであっても、Chapter 84・85に該当する物は、Section XVIIの「parts and accessories(部品・付属品)」の範囲から除外すると定めています。
言い換えると、「Chapter 85にきちんと分類できるものは、原則として8708には入れない」という構造です。

この門番ルールがあるため、ワイヤーハーネスを8708に入れたい側の主張は、出発点から不利になります。
8708に至るための「勝ち筋」は単純で、輸入時の状態の製品が、Chapter 85のどの見出しにも当てはまらないことを示せるかどうかにかかっています。


2. CBPが8544を選ぶときのロジック

本質が「絶縁導体+コネクタ」なら8544

2-1. 事例A:HQ 955026(1993年)

CBPが8544を選んだ代表例として、HQ 955026があります。対象は、乗用車に搭載されるインストルメントパネル用ワイヤーハーネスアセンブリで、導体、配線トラフ、端子、絶縁体、グロメット、束線材、ヒューズ、リレー、ライトソケットなどから構成されていました。
このアセンブリは、ボディコンピュータ、計器クラスター、ラジオ、エアバッグモジュール、スイッチ類、車体配線、エンジンルーム配線など、インストルメントパネル周辺の各モジュールを相互接続する役割を持ちます。

CBPは、Explanatory Note 85.44に触れながら、「絶縁された電線・ケーブル等は、長さに切断されていても、端にコネクタ類が付いていても、依然として8544にとどまり得る」と整理しました。
そのうえで、対象品の本質は「絶縁された導体にコネクタ等を付した配線セット」であり、ヒューズやリレー、ライトソケット等は電気の導通を補助するにとどまるとして、8544.30.00(車両等に用いる配線セット)への分類を確定しています。

さらに重要なのは次の点です。
HQ 955026では、たとえ用途が自動車であっても、対象がChapter 85(8544)に分類される以上、Section XVII注2(f)により8708への分類は排除される、と明言されています。

当時の裁定では、検討対象となった8708.99.50の一般税率が3.1%、8544.30.00が5%と記載されており、分類による税率差がコストに直結することが示されていました(税率は改定され得るため、実務では必ず最新HTSを確認する必要があります)。

ビジネス上の示唆

  • 自動車専用設計であっても、それだけで8708にはならない。
  • コネクタ、端子、束線材、グロメット、ヒューズ、リレー程度の追加要素は、8544から外す決定打になりにくい。
  • 議論の中心は、「電気の導通・配線」という本質を超える独立機能が、輸入時点でどこまで実装されているかに移る。

3. では、いつ8708になり得るのか

8544に当てはまらないほど「機能モジュール化」しているとき

3-1. 事例B:HQ 088477(1991年)

8708側に振れた有名例がHQ 088477です。
ここで対象となったのは、インストルメントパネルに組み込まれる配線アセンブリですが、その内容は単なるハーネスを超えたものでした。

裁定文によれば、このアセンブリには、19本のヒューズを収めたヒューズボックス、ランプとランプソケット、マイクロプロセッサを含むランプ監視モジュール、ドア開状態検知モジュール、ランプ付きグローブボックススイッチ、エンジン警告系ドライバモジュール、複数のリレーやサーキットブレーカーなどが含まれていました。

CBPは、Section XVII注2(f)(Chapter 85該当品は車両部品扱いしない)を前提としながらも、次のようにロジックを組み立てています。

  • 構成要素の一部(ヒューズ、スイッチ、電線など)はChapter 85で個別に説明できる。
  • しかし、輸入時の状態の「全体」としては、Chapter 85のどの見出しにも当たらない。
  • 特に8544については、単なるコネクタ付き導体の範囲を超えて、監視・制御・警告等の装置が相当量一体化しており、85.44の用語を満たさない。
  • 8543(個別機能を有する電気機器)についても、本件全体を説明するには適切でない。
  • 以上から、全体を最もよく表す見出しは8708.99.50である。

この結果、当該アセンブリは「自動車用のその他の部分品」として8708.99.50に分類されています。

ビジネス上の示唆

  • 同じ「ハーネス」と呼ばれていても、輸入時点で監視・制御・診断などのモジュール群を抱き込むと、8544の「安全地帯」から外れる。
  • 8708に行けるかどうかは、「車の部品だから」ではなく、「Chapter 85のどれにも当たらないほど一体化した機能モジュールになっているか」という消去法の勝負になる。
  • 設計変更や構成部品の追加が、既存の分類前提を壊しうる。

4. 現代の実務感

スイッチ・リレー・ヒューズ入りでも8544に残ることがある

4-1. 事例C:NY N326429(2022年)

近年の実務に直結する例として、NY N326429があります。
ここで扱われたのは、LED作業灯やオフロード用ライトバー向けの「プラグ・アンド・プレイ」配線ハーネスで、ロッカースイッチ、ヒューズ、リレー、複数のコネクタを備え、12V系で車両に使用される製品でした。

輸入者側は、回路の接続・保護・スイッチング等を行う電気機器を含むことから、8536と8544のどちらか、あるいは複合として別のサブヘディングを提案しました。
しかしCBPは、保護・接続・スイッチング・導通など複数の機能が並立しており、単一の機能を「本質」と特定しにくいとして、GRI 3(c)を適用しています。

GRI 3(c)では、2以上の見出しに同程度に該当し、本質を決定できない場合、番号順で最も後ろにある見出しに分類すると定められています。
このルールを踏まえ、CBPは最終的に8544.30.0000(Ignition wiring sets and other wiring sets of a kind used in vehicles, aircraft or ships)を選択しています。

さらに、この裁定では、中国原産で8544.30.0000に分類される場合、原則として追加25%関税(Chapter 99の9903.88.01)の対象となり得ること、申告時にChapter 99番号を併記する必要があることも明記されています。

ビジネス上の示唆

  • スイッチ、ヒューズ、リレーを内蔵していても、必ずしも8536や8708に移るわけではなく、8544.30にとどまるケースがある。
  • 分類は基本税率だけでなく、Section 301の追加関税の適用有無やコンプライアンスコストにも直結する。
  • 設計段階から、部品構成と輸入時の状態を前提に、分類シナリオと追加関税シナリオをセットで検討する価値が高い。

5. 境界線を実務に落とす

判断軸は3つに絞れる

CBP裁定の積み重ねから見える「8544と8708の境界線」は、次の3つの軸に整理できます。

5-1. 軸1:全体として8544の説明に収まるか

HQ 955026では、ヒューズやリレー、ライトソケットなどが含まれていても、「電気の導通を補助する範囲」にとどまるとして、全体を8544.30.00に分類しました。
一方、HQ 088477では、監視モジュールやマイクロプロセッサ等、導通補助の域を超えた装置が相当量一体化している点が決定的であり、85.44の範囲から外れると判断されています。

5-2. 軸2:Section XVII注2(f)の門番を越えられるか

「Chapter 85にきちんと分類できる限り、8708は閉ざされる」というルール自体が非常に強力です。
したがって、8708を主張するのであれば、輸入時の状態の「全体」がChapter 85のいずれの見出しにも当てはまらないことを示す必要があります。

HQ 088477は、まさにこの構造で8708に到達した事例です。
個々の構成品はChapter 85で説明できるものの、全体としては特定の見出しの文言に合致せず、結果として8708.99.50が最も適切とされた、というロジックになっています。

5-3. 軸3:輸入時点で「完成品機能」を持っているか

特に照明系などでは、輸入時にどこまで完成しているかが重要です。
CBPは過去裁定において、GRI 2(a)の考え方を用いて、未完成品であっても、主要な構成要素を備えた灯具アセンブリを8512(自動車用照明・信号装置)で扱う方向に整理し、従前の一部ハーネス系裁定を修正・撤回したことがあります(HQ 954945など)。

要するに、「配線だから8544」「自動車に付くから8708」といった短絡ではなく、「輸入時点でどの機能がどこまで完成しているか」が分類を動かすということです。


6. 実務で使えるチェックリスト

分類検討の初動で、最低限そろえておきたい情報を、通関実務の観点から整理します。

6-1. A:製品定義を固める

  • 導体は単線か、多芯ケーブルか、束線か。
  • コネクタ、端子、ソケットの有無と種類(車両専用か、汎用か)。
  • ヒューズ、リレー、スイッチ、モジュール類の有無。
  • それらが「導通・配線を補助する機能」にとどまるのか、「監視・制御・診断などの独立機能」を持つのか。
  • 輸入時点でランプや他の装置が同梱・取り付け済みか(分納の場合を含めて確認)。

6-2. B:資料の整備(監査・裁定取得に効く)

  • 回路図・配線図、BOM(部品番号と数量)。
  • 輸入時の状態が分かる写真、梱包形態。
  • 機能説明書(何を制御し、何を監視し、どの信号・電力を処理するか)。
  • 車両への搭載位置と接続先一覧(どのECU・モジュールと接続するか)。

6-3. C:リスクの見積もり

  • 8544.30前提の設計でも、構成変更によりHQ 088477型(8708側)に「化ける」可能性がないか。
  • 原産国が中国の場合、Section 301追加関税の適用可能性と、Chapter 99番号の併記運用を含めた管理フローが設計されているか(NY N326429は、分類判断と同時に追加関税管理を求めている)。
  • 分類変更が価格・契約条項・原価計算・移転価格に与える影響を、あらかじめ試算しているか。

7. まとめ:境界線は「名称」ではなく「輸入時点の全体像」で決まる

ワイヤーハーネスを8708に入れる発想は自然ですが、HTSUSの構造上、Chapter 85に該当する限り、Section XVII注2(f)により8708は原則として閉ざされます。
CBPは、絶縁導体とコネクタを核とし、導通を補助する範囲の部品が付く程度であれば8544.30に分類し、8708を排除する判断をHQ 955026などで明確に示しています。

一方で、監視・制御モジュールやプロセッサ等を相当量抱え込み、Chapter 85のどれにも当てはまらないレベルの一体品となると、消去法により8708に到達する余地が生まれることも、HQ 088477が示す通りです。
そして近年でも、スイッチ・ヒューズ・リレーを備えた車両用配線ハーネスが8544.30に整理され、同時にSection 301追加関税の管理が求められる例(NY N326429)が存在します。

次のアクションとしては、社内で「導通補助の範囲」と「モジュール化している領域」を整理し、設計変更がその境界を越えるタイミングを検知できる体制を作ることが重要です。
そのうえで、金額インパクトの大きい品目については、CBPのバインディングルーリング(19 CFR Part 177)を活用し、分類と追加関税の両面で不確実性を減らすことが、費用対効果の高い打ち手になります。

バッテリーパック分類を深掘りする前に:CBP HQ H351314(2026年1月)を正確に読む

輸入実務で「バッテリーパック」とひとくちに言っても、実際には電池セルそのもの、セルを収納する筐体、据置型エネルギー貯蔵設備のコンテナ、車載機器として固定されるモジュールなど、対象は広く、分類の論点も分岐します。
ここで取り上げるCBP Headquarters Ruling Letter HQ H351314(2026年1月20日付)は、狭義のバッテリーパックそのものではなく、ピックアップトラック荷台に固定する鋼製トランスファータンク(ディーゼル燃料など非可燃性液体の移送用タンク)の関税分類を扱った裁定です。

ただし、この裁定は次の2点で、電池関連製品の分類検討にも強くつながります。

  • 車両用の部品(8708)として扱いたいという主張に対し、より具体的な品目(7309)が追加米国解釈規則に基づき優先されることを明確に示したこと。
  • 輸送用コンテナ(8609)の要件を、フィッティングや運用実態に踏み込んで判定しており、同裁定で参照されるバッテリーエネルギー貯蔵システム用コンテナ(HQ H329722)と合わせて、電池関連の筐体やコンテナ製品に直結する論点を含むこと。

以下、HQ H351314を軸に、ビジネス目線で整理していきます。


1. 結論:なぜ7309.00.00になったのか

HQ H351314は、先行裁定であるNY N333141(2023年6月7日付)を確認・維持し、対象となる鋼製トランスファータンクをHTSUS 7309.00.00(鉄鋼製で容量300リットル超、機械的または熱的装置を備えない貯蔵タンク等)に分類しました。
裁定文では、当該品目に適用される一般税率(Column 1 General rate)は0%(無税)であることも明示されています。

裁定上の主要な争点は、概ね次の3点に整理されます。

  • 7309か、輸送用コンテナの8609か。
  • 車両の部分品として8708に分類できるか。
  • 容量要件から見て7310に該当しないか(容量300リットル超か否か)。

結論だけを見て「車に載せる装置は車両部品」と短絡しがちですが、CBPはこの裁定で、品目の機能と設計、そして法体系上の優先順位を丁寧に整理しています。


2. 事実関係:CBPが見た「商品」の姿

裁定を読み解くうえで重要なのは、CBPがどの状態の製品を「輸入される物」として認定したかです。
HQ H351314が認定した事実関係は、次のようなポイントに集約されます。

  • 鋼製タンクで、表示容量は100ガロン(約378.5リットル)、14ゲージ鋼板を用いた直方体形状。
  • 上部に2インチの開口部が2か所あり、ディーゼル燃料などの非可燃性液体を移送する用途として販売される。
  • ピックアップトラックの荷台にボルトで固定して使用し、トレーラーに積み替える運用は想定されていない。
  • 輸入時に固定用キットが付属し、持ち上げ用のリフティングアイを備えるが、構造上、頻繁かつ容易な脱着を前提とする設計ではない。
  • 輸入時点ではポンプ等の機械的装置や加熱・冷却等の熱的装置を備えていない。
  • 推奨充填容量は96ガロンとされるものの、タンク自体の容量は100ガロンであり、300リットル超であることは変わらない。

ここで重要なのは、「リフティングアイがある」「トラックに載る」といった要素だけでは、直ちに「輸送用コンテナ」や「車両部品」には結びつかないという点です。
CBPは、固定構造と運用の想定(据置的に荷台に固定されるか、繰り返し輸送に用いるか)を重視して評価しています。


3. 争点その1:なぜ8609の「輸送用コンテナ」ではないのか

8609見出しは、道路・鉄道・船舶・航空など複数の輸送モードで、繰り返し使用されることを前提とした輸送用コンテナ類を対象としています。
HQ H351314は、解説書(Explanatory Notes)における「フィッティング(フック、リング、キャスター、支持部など)」の概念を軸に、8609への該当性を検討しています。

HQ H351314のロジックを実務向けに整理すると、ポイントは次の通りです。

  • 8609は単に「運べる箱」ではなく、積み替えや輸送中の固定のためのフィッティングを備え、車両や船舶への積載と荷下ろしを繰り返す構造・設計であることが前提。
  • 液体・ガス用コンテナについても、複数の輸送モードに取り付け可能な支持構造を持つ場合に8609となり、それ以外は材質等に応じて別見出しへ分類されることが解説書で示されている。
  • 対象タンクの固定構造は、ピックアップトラックへの恒久的な取り付けを想定しており、ドアツードア輸送を支えるフィッティング(キャスターや標準コーナーキャスティング等)を欠く。
  • 以上から、対象物品は8609が想定する「輸送用に特別に設計され装備されたコンテナ」には該当せず、8609から除外される。

HQ H351314は、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)用の鋼製コンテナを8609ではなく7309に分類したHQ H329722を引用し、同様の考え方を踏襲しています。
HQ H329722では、BESS用コンテナについて「貨物を輸送するためではなく、所定の場所で電池を収納・保管するための容器」であるとして、8609ではなく7309.00.00と結論づけています。

この判断枠組みは、電池関連設備の「コンテナ型」商品にもそのまま波及します。
外観がコンテナに似ていても、運用としてドアツードア輸送を前提とするか、輸送環境の動的荷重に耐える構造か、積み降ろし用の仕様がどこまで備わっているかといった要素が、分類を左右し得るということです。


4. 争点その2:なぜ8708の「車両部品」より7309が優先されるのか

依頼者側は、当該タンクを8708(自動車の部分品及び付属品)に分類することを主張しました。
これに対してCBPは、追加米国解釈規則1(c)(Additional U.S. Rule of Interpretation 1(c))を前面に出し、「部品・付属品」の見出しは、より具体的な品名で規定された見出しに優先されない、という原則を確認しています。

HQ H351314では、たとえ車両に取り付けて使用する専用品であっても、鉄鋼製で一定容量を超え、機械的または熱的装置を備えない「タンク」という具体的な品名見出し(7309)が存在する以上、8708よりも7309の方が具体的であり、優先されると整理しています。
また、Section XVIIの解説書においても、部品・付属品が同部の見出しに分類されるためには、「他の見出しでより具体的に規定されていないこと」が条件になると説明されており、この点からも8708への分類は否定されています。

この構図は、バッテリーパックの分類で頻出する論点と同型です。
例えばEVや産業機器向けの電池であっても、電池そのものとしての具体的見出し(一般には8507)が存在する場合、「車両部品」や「機械の部品」に寄せる主張は通りにくくなる局面があり得ます。


5. 争点その3:7310ではなく7309になる容量要件

HQ H351314で扱うタンクの容量は100ガロンであり、裁定文中でも約378.5リットルと明示されています。
7309と7310の分岐は「容量が300リットルを超えるかどうか」という明快な線引きであり、裁定では、当該タンクは300リットル超であるため7310から除外され、7309に該当すると結論付けています。

ビジネス実務では、容量が境界付近にある商品や、安全上の推奨充填量とタンク容積が異なる商品が少なくありません。
そのため、次の点を社内で明確にしておくことが重要です。

  • 「容量」の根拠となる資料は何か(設計図、試験成績書、カタログ表示、タンク刻印など)。
  • タンク容積と推奨充填量が異なる場合、分類上どちらを説明の軸に据えるか。
  • 輸入時点で仕様が固定されているか(容量変更の余地がある設計かどうか)。

HQ H351314では、推奨充填容量96ガロンという説明が追加されても、タンク容積が100ガロン=300リットル超であるという事実は変わらないとして、7309の要件を満たすと判断しています。


6. ビジネスへの落とし込み:設計・調達段階から分類を織り込む

HQ H351314は、分類が「用途の主張」ではなく、「設計仕様」と「輸入時点の状態」によって決まりやすいことをあらためて示しています。
この観点から、設計・調達の段階で押さえておきたいポイントを整理します。

6-1. 8609を狙うなら、設計要件を明文化する

8609での分類を狙う製品(コンテナ型筐体、ラック型輸送容器、設備用モジュールなど)では、次の問いに答えられないとリスクが高まります。

  • 複数の輸送モード(道路・鉄道・船舶・航空)をまたいで使用する設計か。
  • 積載と荷下ろしのためのフィッティング(フォークリフトポケット、タイダウンポイント、キャスター、標準コーナーキャスティング等)を備えているか。
  • ドアツードア輸送と繰り返し使用を前提としていることが、仕様書と販促資料の両方で整合的に示されているか。

逆に、現場への据置使用が前提で、輸送は一回限り、輸送環境の動的荷重も想定していない設計であれば、8609以外の見出しを前提に検討した方が整合的な場合があります。
これは、BESSコンテナについて7309.00.00としたHQ H329722や、同様に鋼製バッテリー筐体を7309.00.0090としたNY N317967の方向性とも一致します。

6-2. 「車両部品」主張は、具体的規定に勝てない

車両に固定するから車両部品、という直感は、追加米国解釈規則1(c)の前では崩れやすいことが、HQ H351314で明確に示されました。
開発部門やサプライヤーが「車両向け専用品」と説明していても、分類はより具体的な品名見出しに引き寄せられる可能性があります。

通関・税務の観点からは、早い段階で次の点を確認することが重要です。

  • 製品が名称で特定される見出し(タンク、電池、変圧器、冷却装置など)に入りうるか。
  • 輸入時点で機械的装置や熱的装置を備えるのか、ポンプや制御装置を含むセットとして輸入されるのか。

HQ H351314は、ポンプが同時に輸入されない以上、タンク自体は7309の「装置を備えない容器」に該当すると判断しています。


7. バッテリーパックに直結する教訓

分類は原産地と優遇税率にも連鎖する

ここからは、HQ H351314の考え方を、バッテリーパック周辺の裁定に接続して整理します。
バッテリーパックは、分類だけでなく、原産地認定、貿易救済関税、FTA優遇の可否に直結します。

7-1. 「バッテリーパック」の分類は、まず8506か8507か

電池が一次電池か二次電池(蓄電池)かで見出しが分かれることは、NY N286124が典型例として示しています。
この裁定では、さまざまな電池セルから構成される2種類のバッテリーパックについて、非充電式モジュールは8506、充電式モジュールは8507に分類される組合せが示されており、同一の「バッテリーパック」であっても、構成と機能に応じて8506・8507の両方が適用され得ることが読み取れます。

実務では、商品名に「バッテリーパック」と付いているからといって8507と決め打ちするのは危険です。
例えば、内蔵された一次電池を充電せずに交換前提で使用する緊急用バッテリーパックが8506に分類された例など、一次・二次の切り分けが結果を大きく左右する裁定が複数存在します(個別裁定の詳細は品目ごとに確認が必要です)。

7-2. 原産地は「組立国」ではなく「セルの国」になりやすい

多くのバッテリーパックは、セルの製造国とパック組立国が異なります。
NY N329305では、セルをメキシコでパック化した製品について、分類・マーキング等の観点から、バッテリーパックの本質的特徴を与えるのはセルであるとして、原産地がセル製造国(中国またはシンガポール)と認定され得ることが示されています。

HQ H316545では、USMCA上の原産地認定では要件を満たして優遇対象となる一方、Section 301の追加関税適用を判断する原産地(実質的変更の分析)ではセルの原産国が重視され、中国原産とされる可能性があるという二層構造が示されています。
このように、セル原産国の変更が、同じ組立工程でも追加関税の対象可否を変えてしまうケースがあり得ます。

7-3. USMCAは「関税分類の変化」要件により落ちるパターンがある

NY N356710は、USMCA適用可否の観点で非常に示唆的です。
この裁定では、完成品のバッテリーパックが8507.60に分類され、使用されている中国製セル(18650)も同じく8507.60に分類されるため、USMCAで求められる関税分類変更要件を満たさず、原産品と認められないと結論づけています。

他方、HQ H316545のように、同じ見出し内での分類であっても、RVC(付加価値)ベースのルールを適用することでUSMCAの要件を満たせる場合もあります。
このように、分類は単なる通関費用の話にとどまらず、サプライチェーン設計と価格戦略そのものに直結する要素であることが分かります。


8. 実務チェックリスト:HQ H351314型の論点を社内で潰す

最後に、HQ H351314の学びを、電池関連も含めた横断チェックリストとして整理します。

  • 輸入時点の構成はどうか(ポンプや冷却装置、制御盤が輸入時に一体か、別送・後付けか)。
  • 設計思想は「固定設置」か「反復輸送」か(仕様書・マーケ資料との整合を含めて確認)。
  • フィッティングや支持構造は「輸送用」なのか「設置用」なのか(8609判定の核心)。
  • 部品分類(8708等)を主張する前に、より具体的な品名見出しが存在しないか(追加米国解釈規則1(c)の観点)。
  • 電池は充電式か一次電池か、化学系は何か(8506と8507の分岐を左右)。
  • FTA・USMCAの原産判定で、関税分類変更要件やRVC要件を満たせる構成か(NY N356710等で示される「同一分類で詰む」パターンへの注意)。
  • 裁定は特定の事実関係に基づくため、仕様やサプライチェーンが変わる場合は再評価が必要であり、Part 177に基づく裁定は原則として当該事実関係に拘束される点を理解しているか。

まとめ:HQ H351314が教える「分類は機能と設計で決まり、部品論は最後に来る」

HQ H351314は、車両に搭載される鋼製タンクであっても、輸送用コンテナ(8609)や車両部品(8708)ではなく、より具体的に規定された鋼製タンク(7309)に分類され得ることを示しました。
この裁定が示す「具体的な品名見出しが優先される」「輸送用コンテナの要件はフィッティングと運用実態にある」という考え方は、バッテリーパックやBESSコンテナの分類にもそのまま当てはまります。

さらに電池分野では、分類が原産地認定やUSMCAなどの優遇税率の可否、Section 301の追加関税の有無にも連鎖するため、開発・調達の段階から分類を前提に仕様を設計することが、コスト・リスクの両面で大きな差を生みます。
本稿は一般的な情報提供であり、個別案件に対する法的助言ではありません。具体的な案件では、製品仕様や取引条件にもとづき、通関士や通商法専門弁護士と連携しつつ、必要に応じて19 CFR Part 177に基づく事前裁定取得を検討することをおすすめします。

2026年1月21日、WCOが公表したHS2028改正


企業にとって何が「確定」したのか

2026年1月21日、世界税関機構(WCO)は、国際貿易における品目分類の共通言語であるHS(Harmonized System)の次期改正となる「HS2028」について、改正が受諾され、2028年1月1日に発効することを公表しました。wcoomd+1
この改正は299セットの変更から成り、結果として見出しは1,229、号(6桁サブヘディング)は5,852となり、HS2022と比較して見出しが6追加・5削除、号が428追加・172削除という大規模な見直しです。wcoomd+3

HSは各国の関税率表と貿易統計の基盤であり、輸出入申告、関税コスト、各種規制の適用、社内品目マスタ、販売・収益分析など幅広い領域に影響します。wcoomd+2
今回のHS2028改正は、健康危機への備え、疫病対策、環境汚染・プラスチック廃棄物、サステナビリティ関連など、政策課題との接続を一段と強める内容となっており、企業にとっては「基盤データの大型アップデート」と位置づけるべきタイミングに入ったと言えます。linkedin+3

以下では、2026年1月21日の「受諾公表」が手続き上何を意味するのかを整理したうえで、HS2028の重要な改正領域と、企業が今すぐ始めるべき実務対応を解説します。


1. 2026年1月21日に何が起きたか

なぜ今が重要なのか

WCOは2026年1月21日のニュースリリースで、HS2028改正が正式に受諾されたこと、改正パッケージが確定したこと、および2028年1月1日に発効することを公表しました。wcoomd+2
この改正パッケージは、前述のとおり299セットの変更で構成され、見出し1,229、号5,852という新たな体系を形成します。linkedin+3

WCOは別途、HSが200以上の国・地域の関税率表および貿易統計の基礎として用いられていること、そして当該改正が全世界で2028年1月1日に発効する旨を繰り返し説明しています。omnitrans+1
したがって、影響は特定国や特定業界に限定されるものではなく、多数の国・地域に生産・販売拠点を持つ多国籍企業ほど、品目マスタの変更が連鎖的に波及することになります。wcoomd+2


2. 「勧告の採択」と「改正の受諾」

HS改正が確定するまでの手続き

HS改正は、HS条約(「商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約」)にもとづき進められます。[wcoomd]​
実務上ポイントとなるのは、次の3段階です。

2-1. WCO理事会による勧告(Council Recommendation)

HS条約第16条は、WCO理事会が締約国に対して改正を勧告できる旨を定めています。[wcoomd]​
HS2028改正については、WCO文書NG0304Baの表紙に、2025年6月26日の理事会勧告に基づき受諾された改正であり、2028年1月1日に発効することが明記されています。linkedin+3
制度上の起点としては、この2025年6月26日の理事会勧告が「改正パッケージ」が形成された時点と位置付けられます。wcoomd+1

2-2. 異議申立て期間を経た「受諾」の成立

HS条約第16条第3項は、事務総長による改正の通報から6か月の間に締約国からの異議申立てが残っていなければ、その改正は受諾されたものとみなされる、と規定しています。wcoomd+1
この仕組みにより、理事会勧告後、通報から6か月間は締約国が異議を申し立てることができ、その期間経過時点で異議が残っていなければ「受諾成立」となります。ddcustomslaw+1

企業実務の観点では、改正が受諾され、条約上「確定した」時点で初めて、差分を前提とした詳細な影響分析や社内外の合意形成に進みやすくなります。wcoomd+1
2026年1月21日のWCO発表は、まさにこの「受諾が成立し、発効日に向けた実装段階に入った」ことを示す節目と言えます。freightnews+2

2-3. 発効日までの準備期間

HS条約第16条第4項は、事務総長による通報の時期に応じて、改正の発効日を、原則として通報の2年後または3年後の1月1日とする仕組みを定めています。[wcoomd]​
WCOは、HS改正には実質2年半程度の実装期間が組み込まれており、うち約半年を締約国の異議申立て期間、残り約2年を新旧対応表(コリレーションテーブル)の整備、解説書の更新、翻訳、各国法令・ITシステムの改修、通関当局と取引当事者の教育訓練などに充てるという整理を示しています。[wcoomd]​

つまり、企業側の準備に一定の時間を要することは制度設計上あらかじめ織り込まれており、「2年半のうち残り約2年」が実務上の準備期間として位置付けられていることになります。[wcoomd]​


3. HS2028の重点改正

ビジネスに直撃しやすい3領域

HS2028の特徴は、従来以上に公衆衛生や環境保護などの政策課題に直結する粒度・定義が強化されている点にあります。linkedin+3
WCOは、健康危機への備え、疫病対策、環境汚染・プラスチック廃棄物、サステナビリティなどを反映した改正であると説明しています。wcoomd+2

ここでは、企業への影響が特に大きい3領域に絞って見ていきます。

3-1. 公衆衛生と緊急対応

ワクチンと医療物資の「見える化」

HS2028では、ワクチン分類が大きく再編されます。
WCOは、従来の見出し30.02に含まれていたワクチンを再構成し、人用ワクチンを扱う見出し30.07と、それ以外(獣医用など)を含む見出し30.08に分けることを示しています。linkedin+2

また、人用ワクチンを扱う30.07の下では、疾病ごと・組合せごとに細分化された多数の6桁号が導入されることが各種解説で紹介されており、全体としてワクチン貿易の可視性を高める構造になっています。linkedin+1
これは、緊急時の優先通関や関税軽減などの措置を制度化しやすくするとともに、COVID-19で顕在化したデータ不足の課題を踏まえ、ワクチンや医療機器の供給網をより精度高く設計できるようにする意図と説明されています。wcoomd+1

医療緊急対応物資についても、救急車や移動診療所、防護用フェイスシールドやマスク、パルスオキシメータや患者モニタ、吸引ポンプ、人工呼吸器などを対象とする新たな号が追加されることが紹介されています。linkedin+2
これにより、従来は他の号に吸収され統計上把握しにくかった緊急対応関連品目が、より明確にコードとして立ち上がる方向にあります。wcoomd+1

医療機器やヘルスケア製品を扱う企業にとっては、輸出入申告だけでなく、地域別の需給見通し、緊急時の供給計画、調達契約の条件設計など、サプライチェーン全体に影響が及ぶことになります。linkedin+2

3-2. サプリメントの新設見出し

食品と医薬の境界整理

HS2028では、サプリメント(dietary supplements)向けに新見出し21.07が設けられ、その適用範囲を定める新たな法的注(Notes)が導入されます。wcoomd+3
WCOは、この改正により、食品と医薬品の境界で長年続いてきた分類上の難しさを緩和し、法的確実性と統計の質を高める狙いがあると説明しています。wcoomd+1

サプリメント市場は、健康食品としての販売に加え、原材料供給、OEM製造、越境ECなど、多様なビジネスモデルが並行しています。
分類が揺れやすい領域ほど国ごとの解釈差や通関上の不確実性が大きくなり、輸出入停止や追加資料要求などのリスクが高まりがちです。wcoomd+1
見出し21.07の新設と法的注の整備は、こうしたグレーゾーンを制度面から整理し、各国で一貫した分類を促す試みと評価できます。wcoomd+1

3-3. プラスチック汚染と廃棄物管理

バーゼル条約との整合

環境分野では、プラスチック廃棄物の分類がバーゼル条約の枠組みに合わせて再編されることが、HS2028改正の大きな柱となっています。freightnews+2
WCOは、見出し39.15を再構成し、有害なプラスチック廃棄物、事前同意手続(PIC)の対象となるプラスチック廃棄物、その他のプラスチック廃棄物を区別する新たな6桁号を導入することを明らかにしています。freightnews+1

各種解説では、新設されるサブヘディングの一例として3915.40が示され、バーゼル条約のプラスチック廃棄物区分(Y48、A3210、B3011)との対応を明確化することで、当局による越境移動のモニタリングを容易にする狙いが説明されています。basel+2
規制対象の区分(バーゼル区分)とHSコードが近づくほど、企業にはコンプライアンス対応の精緻化が求められる一方、適正な品目管理を行う企業にとっては手続きや要件が明確になり、取引コストを抑えられる余地もあります。basel+2

さらに、プラスチック製品についても、汚染と関係が深い物品の可視性向上が図られます。
WCOは、ストロー、包装材、台所用品、手袋、綿棒(プラスチック棒付き)、風船、漁網・ネット関連など、環境汚染に関連しやすい品目群について新たな号や明確化を行うと説明しています。wcoomd+2
また、プラスチック関連章では「シングルユース」の概念が法的注として導入され、単回使用のプラスチック製品について、より一貫した分類とデータ収集が可能になるとされています。wcoomd+2


4. 経営に効く論点

HS改正は関税だけの話ではない

HS条約上、締約国はHSの見出し・号とその数値コードを用いて自国の関税率表および貿易統計表を整合させる義務を負い、6桁より下の細分(国別8桁、10桁など)は各国が任意に設定できます。[wcoomd]​
したがって、国際6桁が変われば、各国の下位桁も原則として連動して見直されることになります。omnitrans+1

一方で、HSは品目分類の枠組みを定める条約であり、税率水準そのものを拘束するものではありません。
HS条約は、締約国が「関税率に関して義務を負うものではない」と明記しており、改正によって税率が自動的に変わるわけではありません。[wcoomd]​
しかし、適用税率が紐づく「号」が変更されれば、結果として実効税率が上がる・下がる可能性があるため、企業は分類変更と税率影響を切り分けて検証する必要があります。omnitrans+1

さらにHSコードは、関税だけでなく、輸出入規制、許認可、検疫・安全規制、環境規制、統計・市場分析、社内の品目マスタ・収益管理などに直接関わっています。wcoomd+2
WCO自身も、HSを貿易規制の実装と国際貿易統計の基盤と位置付けており、企業としては「税金の話」に矮小化せず、広い意味でのコンプライアンス基盤として捉えることが重要です。wcoomd+2


5. 企業が今すぐ着手すべき実務

2026年からのロードマップ

改正発効まで約2年あるとはいえ、品目数が多い企業にとっては決して長いとは言えません。
WCOは、残りの実装期間においてコリレーションテーブルの作成や解説書更新、関連ツール整備などを行うと説明しており、企業はこれらの公表タイミングと整合させて社内移行計画を設計するのが現実的です。wcoomd+2

以下では、企業が2026年時点から着手しやすい実務ステップを整理します。

5-1. 影響範囲の特定

どの部門を巻き込むかを先に決める

最初のステップとして、関税・通関部門だけでなく、調達、物流、販売、経理、法務、品質保証、サステナビリティ、IT・マスタ管理などを関係部門として明確に定義します。
HS改正は品目マスタ変更と規制対応が同時並行で進むため、部門間で情報が分断されていると、誤分類や対応漏れが重大なリスクとなります。

5-2. 品目ポートフォリオの優先順位付け

全SKUを一度に精査するのは現実的ではないため、次の観点で重要度をスコアリングし、上位群から対応を始めると効率的です。

  • 売上高・利益への寄与
  • 輸入金額・関税コスト
  • 通関件数・仕向け国数
  • 規制該当品目(医療・化学・環境関連など)
  • 過去のトラブル・問い合わせ履歴

5-3. コリレーションテーブルを前提にしたマスタ移行設計

WCOはHS2022とHS2028のコリレーションテーブルを整備する方針を示しており、HS改正ごとに同様のツールが提供されてきました。wcoomd+2
ただし、コリレーションテーブルは「自動変換ツール」ではなく、1対1で移行できるケースもあれば、統合や分割により企業側の判断が必要となるケースも含みます。[wcoomd]​

したがって、コリレーションテーブルはあくまで出発点と位置付け、最終的なコード決定は、品名・用途・材質・規格など実際の仕様情報に基づく分類レビューで行う必要があります。
この前提で、ERPや通関システム、WMS、BIなどのマスタ構造をどう移行するかを、2026年の早い段階から検討しておくことが望まれます。

5-4. 国別実装タイムラインのモニタリング

HSは国際6桁が共通基盤ですが、実際の申告は各国の関税率表・統計品目表(8桁・10桁など)で行われます。omnitrans+1
各国は、WCO改正に合わせて国内法令およびシステムを改定するプロセスを進めます。

例として米国では、USITC(米国国際貿易委員会)がHS2028改正への整合を目的としたHTS改定プロセスを開始し、2025年8月11日のニュースリリースで、2026年2月に暫定案(preliminary draft modifications)を公表して意見募集を行い、同年9月に大統領向け報告書を提出する想定を明らかにしています。usitc+1
これは、主要国で既に国別実装作業が走り始めている具体例として、海外展開企業がタイムライン設計の参考にしうる情報です。usitc+1

5-5. 重要品目では先行して当局判断を取得する

分類は一定の解釈余地を伴う領域であり、特に税率差や規制有無が大きい品目については、移行後のコードをめぐる不確実性がリスクになります。
各国の事前教示制度(Binding Tariff Information等)や相談制度を活用し、主要品目については2028年の発効前に当局判断を得ておくことで、発効直後の混乱を最小化しやすくなります。


6. 社内で今日から使えるチェックリスト

以下は、経営層と実務担当が共通で使えるチェック項目です。

A. ガバナンス

  • HS2028移行の全社責任者(オーナー)を決めたか
  • 通関・財務・IT・サステナビリティ・事業部を含む横断プロジェクト体制を整えたか
  • 分類変更・税率影響・価格改定などの意思決定フローを文書化したか

B. データとシステム

  • 品目マスタの管理主体と変更手順が明確になっているか
  • 取引先から必要な技術情報(材質・用途・規格・組成など)を収集できる仕組みがあるか
  • ERP、WMS、通関システム、BIなどでHSコード情報が一貫しているか
  • 過去統計との比較(旧HSと新HSのブリッジ)をどう設計するか方針を持っているか

C. コストとリスク

  • 主要品目について、関税率表の変更に伴うコスト影響を試算する準備ができているか
  • 輸出入規制・許認可・環境規制など、HSコード連動の法令を洗い出しているか
  • 誤分類に伴う遅延・追徴・罰則・取引停止などの影響を定量的に把握しているか

D. 外部情報のウォッチ

  • WCOが整備するコリレーションテーブルや解説書等のアップデートを定期的に確認する体制があるか。wcoomd+3
  • 主要国(例:米国のUSITC)の関税率表改定プロセスと公表スケジュールを継続的にフォローしているか。usitc+1

7. 2026年1月21日は「準備開始の合図」

2026年1月21日のWCO発表は、HS2028改正が正式に受諾され、2028年1月1日の発効に向けて各国当局および企業が本格的な移行作業に入るべき段階に到達したことを示すものです。freightnews+3
改正は299セットという大規模なものであり、ワクチンや医療緊急対応物資、サプリメント、プラスチック汚染と廃棄物管理など、政策課題に直結する領域で粒度と定義が強化されています。linkedin+5

HS改正は、通関コストの最適化とコンプライアンス強化を同時に進めるチャンスである一方、準備が遅れれば2028年初頭に申告エラーや物流停滞、統計の断絶、規制違反リスクが一気に顕在化しうるイベントです。wcoomd+2
今の段階で求められるのは、全品目の結論を出し切ることではなく、影響範囲を「見える化」し、優先順位を付け、社内外の情報収集と意思決定プロセスを先に整えることです。wcoomd+1

WCOが想定する実装期間には限りがあります。
準備を早く始めるほど、損失を抑えつつ、改正を競争優位につなげる余地を広げることができます。wcoomd+2


HS2028相関表の第1ドラフトは、企業のHS移行を「単なるコード置換の作業」から「経営管理とリスクマネジメント」に格上げする起点になります

HS2028相関表と実装期間の位置づけ

2026年1月21日、世界税関機構(WCO)はHS2028改正が受け入れられたことを公表し、2028年1月1日の発効までの2年間を実装期間と位置づけています。wcoomd+2
この発表では、公衆衛生や環境、プラスチック廃棄物や新興製品など、政策課題を反映した改正である点とともに、加盟国および関係者が影響評価と準備を進めるための時間が確保されたことが強調されています。freightnews+1

WCOは、HS改正の実装作業として、相関表の作成、HS解説書や出版物の改訂、ITシステム更新、加盟国による国内法化、教育訓練などを挙げています。wcoomd+1
この流れはHS2022のときと同様であり、HS2028についても、相関表が実務へのブリッジとして中心的な役割を果たすことが想定されます。customsmanager+2

2025年9月に開催されたHS委員会(HSC)第76回会合では、HS2022とHS2028の相関表作成作業を開始し、分かりやすさと使いやすさを高めるためのフォーマット改善が採択されたと報告されています。strtrade+1
この会合の成果として、HS2028の効果的な実装を支える「参考ツール」としての相関表開発が、HSCの重要なタスクの一つに位置づけられています。strtrade+1

企業側の視点で見ると、相関表が公開されるタイミングから、製品マスタ、関税コスト、EPA・FTAの原産地判定、輸出入管理、見積条件、BIの集計軸といった社内データやプロセスが連鎖的に更新され始めます。
相関表は、こうした連鎖の出発点になり得るため、「第1ドラフト」が持つ意味は非常に大きいと言えます。

相関表とは何か:性質と限界

WCOが公表しているHS2017からHS2022への相関表は、HS改正時にどのコードがどのコードに移るのかを示す「移行の地図」として作成されています。wcoomd+1
ただし、WCO自身が強調している通り、相関表はいくつかの重要な前提を伴います。wcoomd+1

  1. 法的拘束力はない
    HS2017–HS2022相関表の説明では、相関表は加盟国や企業が新しい版への移行を準備するためのガイドであり、法的な解釈や分類決定そのものではないと明記されています。wcoomd+1
    したがって、最終的な分類や課税・監査の判断は、各国法令や税関当局の運用に基づいて行われます。
  2. 1対1の単純な置換表ではない
    相関表では、旧サブヘディングから新サブヘディングへの移行が、分岐(旧1コードから新複数コード)や統合(旧複数コードから新1コード)として示される場合があります。[wcoomd]​
    また、旧サブヘディングの一部のみが新サブヘディングに移る場合、接頭辞「ex」が付され、そのコードのうち一部の品目だけが対象であることが示されます。[wcoomd]​
  3. 複数の対応が併記される場合がある
    HS2017–HS2022相関表の解説では、改正や相関の検討過程で、特定品目の現行分類について加盟国間で見解が分かれたケースがあったことが説明されています。[wcoomd]​
    こうした場合、相関表には複数の相関候補が併記され、各国・地域のナショナルまたはリージョナル相関表が、実務上の最終的な対応関係を示す役割を果たすとされています。[wcoomd]​
  4. 相関表は将来修正されうる
    相関表は後から変更や修正が行われる可能性があり、最新版は常にWCOのウェブサイト上にあると明記されています。wcoomd+1
    したがって、ドラフト段階はもちろん、正式版についても版管理と更新確認が企業側の必須作業になります。

これらの性質は、HS2028の相関表でも基本的に踏襲されると考えるべきであり、「相関表に書いてあるから安全」という前提で動くことは危険です。customsmanager+2

なぜ第1ドラフトが企業にとって重要なのか

HS改正では、発効日までの実装期間の間に、WCOと各国が相関表や解説書、ITシステムなどを順次整備していくことが制度的に組み込まれています。ddcustomslaw+2
HS2028についても、改正の受入れが公表されてから発効日までの2年間で、相関表作成と関連ツールの更新が進められることが示されています。linkedin+2

この文脈で、第1ドラフトは企業にとって「検証と準備を始める合図」となります。
経営視点で整理すると、次の三つの意味があります。

  1. 影響範囲を数量的に把握できる
    自社が現在使用しているHS2022の6桁コードを相関表に当てることで、どのコードがそのまま維持され、どこが分岐し、どこが統合されるかが見える化されます。wcoomd+1
    これに売上高、利益率、数量、主要仕向地などを掛け合わせることで、どの品目群から優先的に見直すべきか、作業量とリスクを定量的に把握できます。
  2. 経営レベルの意思決定が必要な論点が露出する
    旧1コードが新複数コードに分岐する場合や、exが付されて一部のみが新コードに移る場合、自社製品がどの定義に当てはまるかを判断する必要があります。[wcoomd]​
    分岐の選択は、監査や訴訟時の説明責任にも直結するため、現場担当だけでなく、法務・コンプライアンスを含む会社としての方針決定が求められます。
  3. システム要件の具体化が進む
    新旧コードの併存、適用開始日の管理、過去データの再集計など、ITシステム側で必要となる要件が、相関表ドラフトを前提に具体的に設計できるようになります。ddcustomslaw+1
    単なる「コード検索機能」ではなく、「年版と適用日の版管理」を前提とした設計が求められます。

相関表ドラフトの実務的な読み方

相関表は、眺めて満足する資料ではなく、自社データに当てて初めて意味を持ちます。
ドラフト段階で企業が取るべき実務ステップは、次のように整理できます。

ステップ1 影響度のスクリーニング

  • 自社のHS2022の6桁コード一覧を作り、相関表上で変化のあるコードを抽出する。wcoomd+1
  • そのコードに紐づく売上・利益・数量・主要仕向地を付け、影響度の高い順に優先順位を付ける。
  • まずは「分岐」「統合」「ex」が関係するコードを上位から検討し、リスクの大きい箇所を先に潰す。

相関表は後から修正されうるため、初期段階で全品番を完全にやり切ることを目指すよりも、高リスク領域から段階的に精度を上げていく方が現実的です。wcoomd+1

ステップ2 分岐・統合の意思決定基準を作る

分岐やexが伴う移行では、最終的に「商品の定義」を読み解く作業が必要になります。[wcoomd]​
HS2028の改正は、公衆衛生、環境、廃棄物管理、新興製品など政策目的との紐づけが強いことが特徴とされており、定義の読み込みとそれを裏付ける証拠がより重要になります。freightnews+1

ドラフト段階でやるべきことは、最終コードを急いで決めることではなく、社内の判断基準を言語化することです。具体的には、次の切り口で基準を整理します。

  • 用途で区分されるのか(民生用、産業用、医療用など)
  • 材質で区分されるのか(プラスチック廃棄物の種類など)
  • 機能で区分されるのか(医療機器、測定機器、通信機器など)
  • 規制目的で区分されるのか(特定条約や環境規制の対象か否かなど)

この基準を各事業部門と共有できる形にしておくことで、正式版相関表や各国税関の運用が明らかになった段階で、スムーズに最終判断につなげることができます。linkedin+2

ステップ3 ドシエ型で分類根拠を残す

WCOは相関表について「法的文書ではないが、新版HS導入準備に不可欠なツール」と位置づけています。[wcoomd]​
逆に言えば、企業は「なぜその新コードに移行したのか」を自ら説明できるようにしておく必要があります。

実務上は、次の要素をセットでドシエ化する形が有効です。

  • 製品説明(材質、構造、主要機能、用途、写真・図面など)
  • 現行HSコードの根拠(関税分類表の条文、部・類注、品目注、関連する解説書の要点)
  • HS2028側で変化する定義の要点(新設・改正される見出しやサブヘディングの趣旨)freightnews+1
  • 相関表上での位置づけ(分岐か統合か、exが付されているかどうか)wcoomd+1
  • 社内判断の結論と、その判断に用いた製品仕様・用途情報

このような形で分類ドシエを整備しておけば、後に税関から照会を受けた場合や、内部監査・グローバル税務調査の場面でも、一貫した説明が可能になります。

ステップ4 ITは「版管理」前提で設計する

WCOは、相関表や解説書、出版物、ITシステムなどがHS改正の実装期間に更新されると説明しており、各国税関システムもこれに合わせて改修されます。customsmanager+2
企業側も同様に、HS改正を見据えたシステム設計を前倒しで進める必要があります。

推奨される設計の考え方は次の通りです。

  • HS年版(例:HS2022、HS2028)をマスタ項目として保持する
  • 適用開始日をキーにして、新旧コードを自動で切り替えられるようにする
  • 移行期間中は、新旧コードの併記や両方での検索を許容する
  • 過去の取引データが、どの年版のHSコードに基づいているか追跡できるようにする

こうした「版管理」が最初から組み込まれていないと、後から改修する際にコストと工期が膨らみがちです。
HS2028相関表のドラフトが出た段階で、要件定義と影響度見積りを始めておくことが、IT投資を最適化するうえでも重要です。ddcustomslaw+1

経営者が押さえるべきリスクと機会

相関表ドラフトは、リスクと機会の両面で経営に直結します。

リスク面では、次の点が挙げられます。

  • 誤申告や監査指摘のリスク
    相関表はガイドであっても、分岐やexの判断を誤れば、その選択の説明責任は企業に残ります。wcoomd+1
  • 関税・追加関税コストの読み違い
    新コード側で税率や追加関税の対象が変わると、見積条件や価格戦略の前提が崩れる可能性があります。
  • EPA・FTAの原産地判定の混乱
    多くの原産地規則(PSR)はHSコードベースで構成されており、品目の移行が遅れれば、原産地証明の運用やサプライチェーン設計に支障が出ます。

一方、機会としては次のような効果が期待できます。

  • 製品マスタと技術情報の品質向上
    分岐判断には詳細な仕様情報が不可欠であり、その整備は分類だけでなく、購買分類、規制管理、品番統合、製品戦略の精度向上にも寄与します。
  • 通関・分類実務の属人化の軽減
    ドシエ化と判断基準の明文化によって、担当者の異動や委託先の変更があっても、組織として一貫した判断を維持しやすくなります。
  • HSを軸にした経営データの再設計
    HS改正に合わせてBIや収益管理の集計軸を見直すことで、国・製品・顧客別の収益性分析やリスク分析の精度を高めることができます。

この2年間で企業が取り組むべきこと

HS2028は2028年1月1日に発効し、その前の2年間でWCOと加盟国は相関表や解説書の更新、ITシステムの改修を進めていきます。linkedin+2
HS委員会では既にHS2022とHS2028の相関表作成作業が開始され、フォーマット改善も含めた実務ツール整備が動き出しています。strtrade+1

企業側がこの期間に重視すべきポイントは、次の三つに整理できます。

  • 影響度の高い品番から、分岐・統合・exを優先的に検討する
  • 判断基準を先に作り、分類ドシエで根拠とプロセスを記録する
  • コード置換ではなく、HS年版と適用日を軸にした版管理としてITを設計する

HS2028相関表の第1ドラフトは、単なる参考資料ではありません。
自社の分類体系とデータ構造を、次の8年間を見据えて再設計するためのスタートラインとして位置づけることが、グローバルサプライチェーンを持つ企業の経営課題になっていくでしょう。customsmanager+2

写真だけの“無茶ぶりデモ”で、HSCFが本気を出した日

先日、自動車部品関連の会社へ伺い、HSCFのデモを実施してきました。
会場の空気は終始なごやか。雑談もはさみながら、肩の力を抜いてスタート……のはずが、いきなり飛んできたのは、HSCFにとってかなり手強いお題でした。

今回の条件はシンプル、しかし苛烈。
文字情報はゼロ。写真だけ。

お題その1:断面写真、ぱっと見は「お菓子」

一つ目は断面を写した写真。
一瞥すると、正直「これ、お菓子じゃない?」と思っても不思議じゃない見た目。
材料も用途も書かれていない。ここからHSコードの方向性を掴むのは、人間でも悩むやつです。

お題その2:粉末の小山、何にでも見える

二つ目は粉末が小山になった写真。
砂?顔料?金属粉?樹脂?鉱物?
見る人の想像力に合わせて姿を変える、まさに“正体不明”。

「これは厳しい」からの、トライアル開始

思わず口から出たのは、
「これは厳しいですね……」
という率直なひと言。

でも、だからこそやってみる価値がある。
そのままトライアルを開始しました。

結果は、100%の正解ではありませんでした。
ただ、出てきた答えは驚くほど近い。

その瞬間、お客さまの表情が変わりました。
「え、そこまで行くんですか」
という驚きが、空気にスッと混ざる感じ。あれは忘れられません。

追加情報で確度90%へ。到達が早いのは正義

さらに、追加の情報を入力して条件を補強。
すると、確度90%まで一気に到達しました。

この「答えにたどり着くまでの時間が短い」ことが、実務では本当に効きます。
迷いの時間が減る。社内確認の回転が速くなる。次の作業にすぐ移れる。
このスピード感は、デモの場でもはっきり体感できました。

観察眼が鋭い。写真から“消去法”で絞り込む力

特に印象的だったのが、観察にもとづく絞り込みです。例えば、

「金属粉末特有の強い光沢や、片状黒鉛の反射は見られない。」

こうした見立てが入ると、候補が一気に狭まります。
写真だけという不利な条件でも、見える特徴から外せる選択肢を外していく。
この“静かな推理”が効いてくるのは、なかなか痛快でした。

まとめ:難題でこそ見える、HSCFの実力

今回のデモは、いわば写真だけの無茶ぶりテスト。
それでもHSCFは、かなり近い答えを返し、追加情報で確度90%まで短時間で到達しました。

現場で感じたのは、これです。
難しいからこそ、価値が浮かび上がる。
そして、答えに近づくスピードは、実務を前に進める力になる。

次は、もう一段“意地悪”な課題でも試してみたくなりました。

HS2028改正後のEU動向と原産地証明の実務指針:2028年に備える「二重管理」のススメ


2026年1月現在、HS条約の第8次改正となる「HS2028」はすでにWCO(世界税関機構)理事会で採択・受諾され、2028年1月1日の発効に向けてカウントダウンが始まっています。

EU向けにビジネスを行う企業にとって、今回の改正は単なるコードの書き換えでは済みません。特に注意が必要なのが、「通関用コード」と「EPA/FTA用コード」のズレから生じる原産地証明の事故リスクです。

本記事では、HS2028導入に向けたEUの動向と、企業がいま準備すべき実務指針について、信頼できる一次情報をもとに解説します。


1. 確定したタイムライン:HS2028は2028年1月1日発効

WCOの公式発表によれば、HS2028改正は2028年1月1日に発効することが確定しています。今回の改正は299セットの変更を含み、環境物品や新技術製品の分類を明確化するための大規模な見直しとなります。

WCOは現在、新旧コードの対応関係を示す**相関表(Correlation Tables)**の作成など、円滑な移行に向けた準備を進めています。企業の実務担当者にとって、この相関表は自社製品が新旧どのコードに該当するかを確認する上で最も重要な羅針盤となります。


2. EUの動き:CNコードとTARICの自動更新

EUでは、HSコードをベースに独自の細分を加えた**CN(Combined Nomenclature)を統計および関税分類の基礎としています。EU委員会(Taxation and Customs Union)によると、CNは毎年更新され、通常は前年の10月末までに翌年版が官報(Official Journal)**に掲載されます。

実装のメカニズム

  • CNの更新: HS2028の発効に合わせ、EUは2027年秋ごろに公布される「CN 2028」にて、HS2028の内容を全面的に取り込むことになります。
  • TARICとの連携: 加盟国の税関システムと日次で連携する統合データベースTARICも、このCN更新に基づいて自動的に整備されます。

つまり、EUへの輸出においては、2028年1月1日時点で現地の輸入通関システムがHS2028ベースに切り替わっているため、輸出者側も最新コードでのインボイス作成が必須となります。


3. 最大のリスク:原産地規則における「版のズレ」

HSコードが変わる際、最も事故が起きやすいのが原産地証明のプロセスです。

なぜ事故が起きるのか

多くのEPA(経済連携協定)やFTAでは、原産地規則(PSR)が特定のHSバージョンの分類に基づいています。

例えば、日EU・EPAの品目別規則は、HS2017版の分類体系を参照しています。

  • 通関現場: 2028年1月1日以降、最新のHS2028で申告する必要がある。
  • 原産地判定: 協定が改正されない限り、引き続きHS2017の基準で判定しなければならない。

この「通関用コード」と「判定用コード」の乖離を見落とすと、本来満たしているはずの関税分類変更基準(CTHなど)が満たせないと誤認したり、逆に満たしていないのに証明書を発行してしまうコンプライアンス違反につながります。


4. 日EU・EPA実務の再確認:自己申告制度の鉄則

日EU・EPAでは、輸出者自身が原産性を証明する「自己申告制度」が採用されています。実務上の要件を改めて整理しておきましょう。

  • 原産地申告文(Statement on Origin): 商業書類(インボイス等)に所定の文言を記載して作成します。
  • 有効期間: 作成日から12か月間有効です。
  • 長期申告: 同一産品の複数回出荷に対し、最大12か月間有効な包括的な申告を行うことも可能です。
  • 保存義務: 輸出者は、申告の写しおよび原産性の根拠資料を少なくとも4年間保存する義務があります。
  • 言語: 商業書類と同じ言語(英語など)で記載することが推奨されています。

特に重要なのは、輸出者参照番号として**法人番号(13桁)**を使用することです。記載がない場合でも直ちに無効とはなりませんが、EU税関からの照会リスクを避けるため、必ず記載する運用を徹底すべきです。


5. 企業が今やるべき3つのアクションプラン

2028年に向けた混乱を防ぐため、今のうちから以下の「HSの版の違いに耐える設計」を導入することを推奨します。

① 品目番号の「二重管理」体制を作る

社内の製品マスタに、以下の2つのフィールドを設け、それぞれ独立して管理できるように改修します。

  1. 通関申告用コード: 最新版(将来のHS2028/CN2028)
  2. 原産地判定用コード: 協定参照版(日EU・EPAならHS2017)

② 根拠資料(ドシエ)の固定化

原産地検認(事後調査)に備え、以下のセットを案件ごとに、あるいは製品ごとに保管(ドシエ化)します。

  • HS2017ベースでの分類根拠
  • 適用したPSR(関税分類変更基準や付加価値基準の計算根拠)
  • 部品表(BOM)とサプライヤーからの証明書

③ 影響品目の早期抽出

HS2028では、環境物品や新技術製品を中心にコードが細分化されます。自社の取扱品目が改正対象に含まれているか、WCOの相関表が出次第すぐに確認し、影響度を洗い出しましょう。


まとめ

HS2028は2028年1月1日に確実にやってきます。

EU側はCNとTARICを通じてシステム的に対応を進めますが、企業側で最も警戒すべきは**「通関は最新コード、原産地判定は旧コード」**という二重基準の運用です。

今のうちからマスタデータの二重管理体制を整え、協定ごとの参照バージョンを意識した業務フローを確立しておくことが、2028年以降もスムーズなEUビジネスを継続する鍵となります。

産業用ロボットの定義が激変。WCOによるスマート製造ロボット定義確定がもたらす未来


2026年1月28日、世界税関機構(WCO)の技術委員会から、世界の製造業と貿易実務に大きな影響を与える重要な合意事項が発表されました。それは、2028年のHSコード改正に向けた、スマート製造ロボットの定義の確定です。

これまで、単調な繰り返し作業を行うアームロボットも、AIを搭載して自律的に判断する高度なロボットも、貿易上は同じ産業用ロボットとして一括りにされてきました。しかし、今回の決定により、その歴史が終わろうとしています。

本記事では、この新しい定義が何を意味するのか、そしてメーカーや商社が2028年に向けてどのような準備をすべきかについて解説します。


産業用ロボットの分類における長年の課題

現在、多くの産業用ロボットはHSコード第8479.50項に分類されています。このコードは他掲のものを除く産業用ロボットという非常に広い定義であり、自動車工場で溶接を行う従来型のアームも、物流倉庫で障害物を避けながら荷物を運ぶ自律走行搬送ロボット(AMR)も、すべて同じ番号で申告されてきました。

しかし、技術の進化により、この大雑把な分類は限界を迎えていました。AIによる学習機能や判断能力を持つロボットと、単なるプログラム通りに動く機械を区別できないことは、適切な関税政策や安全保障貿易管理を行う上で大きな障害となっていたのです。


今回確定したスマート製造ロボットの定義

WCOが今回合意した技術指針によると、従来のロボットとスマートロボットを分ける決定的な要素は、自律的適応能力の有無です。

具体的には、以下の要件を満たすものが、2028年改正で新設される独立項(コード)の対象となります。

  • 外部環境の認識能力センサーやカメラを通じて周囲の状況をリアルタイムで把握できること。
  • 作業プロセスの自己修正能力あらかじめプログラムされた動作を繰り返すのではなく、認識した状況に基づいて、ロボット自身が動作の軌道や力加減、手順を最適化できること。
  • AIとの統合機械学習やディープラーニングのアルゴリズムを内蔵、またはクラウド経由で利用し、経験に基づいてパフォーマンスを向上させる機能を有していること。

つまり、人間が細かく指示しなくても、自分で考えて動くロボットだけが、新しい分類の対象となります。


ビジネス実務への具体的な影響

この定義変更は、単なる名称の変更ではありません。実務には以下のような影響が出ると予想されます。

1. 関税率と協定税率の変化

新しいコードが設定されることで、従来適用されていた関税率が変わる可能性があります。特に注目すべきは、情報技術協定(ITA)の適用範囲です。スマートロボットがIT製品としての性格を強く認められれば、より多くの国で無税扱いとなる可能性があります。一方で、保護主義的な政策をとる国では、ハイテク製品として新たな関税が設定されるリスクもあります。

2. 安全保障貿易管理の厳格化

AIを搭載したロボットは、軍事転用可能なデュアルユース技術とみなされやすくなります。HSコードが独立することで、輸出管理の対象として特定されやすくなり、該非判定や輸出許可の審査がこれまで以上に厳格化されることが予想されます。

3. 設備投資計画への影響

減価償却期間や補助金の対象認定において、政府がこの新しいHSコードを参照する可能性があります。スマートロボットと認定されることで、税制優遇を受けやすくなる国も出てくるでしょう。


企業が今から準備すべきこと

2028年の発効まではまだ時間があるように思えますが、製品開発のサイクルを考えれば、対応は今すぐ始めるべきです。

まず、自社の製品ラインナップや導入予定の設備が、今回のWCO定義に当てはまるかどうかを技術的な観点から検証してください。特に、適応能力の有無は、カタログスペックだけでは判断が難しいグレーゾーンになりがちです。

次に、輸出入管理システムのマスタデータ更新計画です。2028年には大規模なコードの書き換えが発生します。どの製品が新コードに移行し、どの製品が旧コードに残るのか、分類ロジックの再構築が必要です。


まとめ

WCOによるスマート製造ロボットの定義確定は、貿易ルールがようやくテクノロジーの進化に追いつこうとしている証拠です。

この変化をリスクと捉えるか、それともサプライチェーンを最適化するチャンスと捉えるか。その分かれ目は、この新しい定義を正しく理解し、自社の戦略に組み込めるかどうかにかかっています。2028年を見据えた準備は、今日から始まっています。

センサーのHSコードで迷う「9026」と「9031」

国別分岐を間違えないための実務ガイド

センサーは見た目が似ていても、「何を測るのか」「どこまでの機能を持つのか」でHSコードが変わります。特に迷いやすいのが9026と9031です。
6桁までは国際的に共通性がありますが、8桁以降は国・地域で異なる枝分かれになります。輸出入の現場では、この国別分岐の違いが関税、原産地判定、通関リードタイム、監査対応に直結します。
(参考:Data.gov

この記事では、センサー分類で頻出する9026と9031の境界を実務的な判断軸で整理し、日本・米国・英国・EUにおける国別分岐までを明確に解説します。


前提:HSコードは輸入国税関の判断が基準

HSコードは、社内で決めた番号を一方的に通すことはできません。実際に基準となるのは輸入国税関の判断です。輸出者側の想定と輸入国側の認定が異なるケースも珍しくありません。
またEPA・FTAの適用にはHSコードが前提となるため、分類を誤ると適用税率や品目別規則の解釈がズレるリスクがあります。
(出典:JETRO

このため、社内で「おすすめ分類」を設計する際は、輸入国側でも通用する論拠と証拠を整えることが前提となります。


9026と9031の違い

判断の焦点は「測定対象」と「他の見出しに当てはまるか」

9026の範囲

液体または気体の流量・液位・圧力などの変量を測定・検査する機器。流量計、液位計、マノメーター、熱流量計などが該当します。
(出典:関税庁

測定対象が液体または気体であり、その変量を明確に測る場合は9026が第一候補です。

9031の範囲

この章で他の見出しに特定されない測定または検査用の機器・装置・機械が対象です。つまり、9031は章内で分類できない機器の「受け皿」となります。
(出典:関税庁

ただし受け皿である分、**「なぜ他の見出しではないか」**という説明が求められます。


実務で起きやすい誤分類

  1. 液体も固体も測定できるレベル計
     液位の測定は通常9026に分類されますが、米国では液体と固体の両方を測定可能なレーダー式レベル計が9031に分類された例があります。
     (例:CustomsMobile)
     → カタログに「粉体にも対応」と記載があるだけで9026主張が難しくなる場合があります。
  2. 圧力を使用しているが、測っているのは圧力そのものではない
     測定原理として圧力を用いていても、測定対象が「圧力」でなければ9026は適用困難です。測定対象が寸法や特性の場合、9031が優勢になります。
  3. 単体機能か部分品か
     製品が単独で測定を完結できるか否かで分類が変わります。米国では、コリオリ式質量流量計のコンバーターが「部分品」として9026.90.2000に分類されています。
     (出典:CustomsMobile

再現性を高める判断フロー

  • 測定対象を一文で言い切る(例:液体の流量、タンク内液位、圧力、振動など)。
  • 対象が液体または気体なら9026を優先検討。
  • 固体にも対応する場合は9031側を検討。
  • 単体機能がなければ部分品コード(9026.90、9031.90など)も確認。
  • 国別8桁以降では電子式・非電子式・航空機用などの枝を精査。

国別分岐の考え方

まず6桁で分類を固め、その後、各国の枝分かれを確認するのが安全です。

日本

  • 9026.10:液体の流量・液位測定機器
  • 9026.20:圧力測定機器
  • 9026.80:その他液体・気体変量測定機器
  • 9031.80:他の見出しに属さない測定機器
    (出典:関税庁

事前教示制度を活用し、グレーなケースは税関回答を取得しておくと監査耐性を高められます。
(参照:税関総合ポータル

米国

  • ノックセンサー:9031.80.8070
  • レーダー式レベル計:9031.80.8085
  • 流量計コンバーター(部分品):9026.90.2000
    (参照:CBP Rulings

米国ではカタログや技術文書の一語一句が分類根拠になります。確証を得たい場合はPart 177のルーリングレターを申請するのが有効です。

英国・EU

英国では電子式か非電子式か、用途限定かで9026内に枝分かれがあります。
(例:UK Trade Info

EUでは結合品目分類(CN)を基に年度ごとに改訂されます。2026年版CNは2026年1月1日から適用。BTI(Binding Tariff Information)制度を使えば法的確実性を担保できます。
(出典:EU Taxation and Customs Union)


失敗しない社内実装:分類カルテの導入

9026/9031の判定は経験に依存しやすいため、「分類カルテ」を標準化して運用すると再現性が上がります。推奨項目は以下の通り。

  • 測定対象と変量(流量、圧力、液位など)
  • 測定媒体(液体のみ・固体含む)
  • 測定原理と出力仕様
  • 単体機能の有無(部分品か否か)
  • カタログと技術資料の整合性
  • 輸入国での根拠(BTI・裁決・教示等)

「分類番号は輸入国側の判断を基準とする。したがって、輸入国側で説明できる根拠と文言に揃える」
(出典:JETRO


まとめ

  • 9026:液体または気体の流量・液位・圧力を測定する機器
  • 9031:章内他見出しで定義できない測定・検査用機器
  • 境界製品に注意:固体も測定できる・部分品・単体不可など
  • 手順:6桁で分類確定 → 各国8桁分岐を精査
  • 制度活用:日本の事前教示/米国のPart 177/EUのBTIで根拠を確保
    (参照:税関総合ポータル

このガイドは、9026と9031の議論を社内で共通言語化することを目的にしています。センサーごとの仕様や用途を当てはめることで、どこが争点になり得るかを可視化できます。