■専門的■ USITCが公表したHS2028対応スケジュールを、いま企業がどう使うべきか

米国向けビジネスでは、HSコードと米国のHTSUS(米国関税率表)が、関税率だけでなく、追加関税、輸入規制、統計、社内マスタや契約条件にまで連鎖します。usitc+1

その前提で、USITC(米国国際貿易委員会)がHS2028対応に向けた手続とスケジュールを示したことは、実務の準備開始を促す重要な合図です。usitc

以下では、USITCが示した公式スケジュールの読み方と、企業が今から取るべき実務アクションを、専門家の視点で整理します。

まず押さえるべき前提:HS2028と米国のHTSUSは同じではない

HS(Harmonized System)はWCO(世界税関機構)が管理する国際的な品目分類の共通基盤で、200を超える国と地域の関税率表や統計品目表がHSを土台に組み立てられています。米国も例外ではなく、HTSUS(米国の関税率表)はHSの章・項・号(6桁)構造を核にしつつ、米国独自の細分(主に8桁や10桁の統計番号など)を上乗せして運用します。strtrade+2

このため、HS2028の改正は「世界共通の6桁の変更」を意味しますが、米国実務ではそれに連動してHTSUSの枝番や統計番号、米国独自の注記や運用も調整されます。企業側は「HS6の改正」と「HTSUSの改正」を分けて観察することが、混乱を防ぐ近道です。strtrade+1

USITCが公表したHS2028対応の公式スケジュール

USITCは、HS改正をHTSUSへ取り込むための調整プロセスを開始し、主要な節目を明示しています。USITCは法律により、WCOのHS改正に合わせてHTSUSの修正を大統領に勧告する責任を負っており、その修正はHS改正との整合性、健全な品目分類原則との整合性、実質的な税率中立性の確保という3つの要件を満たす必要があります。usitc+1

重要ポイントだけを、実務目線で表にします。

時点USITCの公表内容企業側の意味
2025年8月HS2028対応に向けた調査を開始(調査番号も付与)usitcここが「公式に準備が始まった」起点。社内でプロジェクト化しやすい
2026年1月WCOの改正勧告(Recommendation)をUSITCが掲載予定strtrade初めて「世界共通の改正パッケージ」を具体的に精査できる段階
2026年2月USITCがHTSUS改正の提案(予備ドラフト)を掲載予定usitc+1企業がコメント提出や、社内影響評価を本格化させる段階
2026年9月USITCが大統領に報告書を提出予定usitc+1以降は米国側で最終化プロセスが進み、実装に向けた確度が上がる

上記の月次は、USITC自身が変更の可能性を示唆しています。従って、日程は固定視せず「この順番で進む」ことを前提に、監視と準備を進めるのが安全です。usitc

さらに、世界側の大枠として、WCOはHS2028改正勧告を2025年12月末に正式採択し、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効することを示しています。米国だけでなく、世界同時に品目体系が動く前提に立つ必要があります。wcoomd+1

なぜビジネスマンが今から気にすべきか:影響は関税率だけではない

HS2028改正が企業に与える影響は、関税率表の読み替えに留まりません。特に次の領域で、実務リスクが顕在化しやすくなります。strtrade+1

誤分類リスクの再燃

長年運用してきた分類が、改正により別の号に再配置されることがあります。自社は同じ製品のつもりでも、税関システム上は別コードとして扱われ、申告エラーや追加確認の要因になり得ます。wcoomd

追加関税・規制・統計の連動崩れ

米国では追加関税や各種措置、統計管理がHTSUSの特定番号に結び付く場面が多く、番号の変更は「制度の適用関係」を組み替えます。品目番号の読み替えが遅れると、想定外のコストや手続が発生します。usitc

社内マスタ、見積、契約、原価の再計算

HSやHTSUSは、通関指示書、購買条件、原産地証明関連の書類、SAP等の品目マスタに埋め込まれています。改正対応は、貿易部門だけで完結しません。strtrade

USITCスケジュールを起点にした、企業の実務アクション

ここからが本題です。スケジュールは「読むもの」ではなく「社内段取りに落とすもの」です。次のように、節目ごとにやることを固定すると、準備の抜け漏れが減ります。usitc

いまから2026年1月までにやること(準備フェーズ)

米国向けの重点品目リストを作成します。輸出数量、利益、通関頻度、追加関税の影響度などで優先順位を付け、対象を絞ります。strtrade

現行コードの棚卸しを実施します。HS6、HTSUS(必要なら10桁)、社内品目番号のひも付けを整えます。ここが崩れていると、改正影響を評価できません。usitc

関係者を巻き込みます。米国側の輸入者(Importer of Record)、通関業者、社内の営業・購買・原価管理と、改正対応の窓口を決めます。strtrade

2026年1月(WCO改正勧告の掲載)にやること(一次情報で差分確認)

改正パッケージで「自社品目が触れている領域」を特定します。全品目を読むのではなく、重点品目が属する章・類・項を中心に差分を追います。wcoomd+1

影響を3区分に仕分けします。コードが変わる可能性が高い、コードは同じだが説明や注記が変わる可能性がある、影響は当面小さい、という区分です。この仕分けが、次のドラフト評価のスピードを決めます。usitc

2026年2月(USITCドラフト掲載)にやること(社内評価と必要なら意見提出)

USITCは、予備ドラフト公表時にクロスリファレンス表(新旧コード対応の参考表)を提供する方針を示しています。これは、企業が読み替えと影響評価を進めるうえで重要な補助輪になります。ただし、この対照表は非公式で変更される可能性があるため、確定表として社内システムへ直入れしない運用が安全です。usitc

ここでの実務は次の通りです。重点品目の新旧候補コードを当て、税率・追加関税・規制の影響を試算します。通関エラーや輸入要件変更の有無を、通関業者とすり合わせます。影響が大きい場合は、USITCの公開コメント手続に沿って意見提出を検討します。strtrade+1

2026年9月以降(大統領への報告提出後)に備えること

USITCの役割は「大統領への勧告・報告」までですが、その後、大統領が勧告に基づきHTSUSの改正を布告できる法的枠組みがあります。布告は連邦官報での公表から30日後に発効するのが通例です。従って、報告提出後は「実装に向けた確度が上がる局面」として、社内のシステム改修やマスタ改定、取引先への周知の準備を前倒しで進めるのが現実的です。govinfo+3

情報収集の実務:どこを見れば一次情報に当たれるか

今回の件は、一次情報の所在が比較的明確です。strtrade+1

USITCのプレスリリースと連邦官報(Federal Register)で、スケジュールと手続が確認できます。USITCのHTS検索サイトと、調査案件の電子ドケット(EDIS)で、資料と更新が追えます。usitc+2

更新タイミングは前後し得るため、月次で機械的に確認するより、USITCが示した節目(2026年1月、2月、9月)に照準を合わせて監視する方が、工数対効果が高くなります。strtrade+1

まとめ:HS2028は2026年が勝負どころになる

USITCが示したスケジュールは、企業にとって「2026年に差分を読み、影響を試算し、社内実装の設計を固める」ためのロードマップです。usitc+1

HS2028の発効日である2028年1月1日から逆算すると、2026年の一次情報公開とドラフト提示の時点で、準備を終えている企業ほど、コストと混乱を抑えられます。wcoomd+1

貴社が米国向けに複数品目を扱っているなら、まずは重点品目を絞った棚卸しから始め、2026年1月と2月の公開資料で差分評価を回す体制を作ることが、最も確実で実務的な第一歩になります。strtrade+1

  1. https://www.usitc.gov/press_room/news_release/2025/er0812_67410.htm
  2. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/august/next-round-of-htsus-modifications-anticipated-to-take-effect-in-2028
  3. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx
  4. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2016-12-02/pdf/2016-29200.pdf
  5. https://obamawhitehouse.archives.gov/the-press-office/2016/12/01/presidential-proclamation-modify-harmonized-tariff-schedule-united
  6. https://www.usitc.gov/harmonized_tariff_information/announcement_archive
  7. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-08-15/pdf/2025-15518.pdf
  8. https://starusa.org/trade-news/usitc-investigation-launched-on-2028-harmonized-tariff-schedule-changes-to-align-with-global-standards/
  9. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-01-08/pdf/2025-00157.pdf
  10. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2023/october/successful-conclusion-of-the-72nd-session-of-the-harmonized-system-committee.aspx

CBPが2026年HTS更新を発表

年末のHSUを見落とすと、米国通関でつまずく

米国向けの輸出入実務では、年末年始に必ず確認したいのが HTSUS の更新です。分類番号や税率だけでなく、追加関税、PGA 要件フラグなども変わるため、見落とすと申告エラーや想定外の関税負担、通関遅延につながります。govdelivery+1

2025年末、米国税関国境警備局(CBP)は、2026年1月1日発効の HTS 更新を反映する Harmonized System Update(HSU)2543 を告知しました。 今回の発表を起点に、実務で何を確認すべきかを整理します。govdelivery


CBPが告知した内容は何か

HSU 2543で年末のHTS更新を反映

CBP の CSMS(Cargo Systems Messaging Service)によると、HSU 2543 は 2025年12月30日に作成され、872件の HTS レコードと 4,893件の ABI(Automated Broker Interface)レコードを含みます。govdelivery

また、この HSU 2543 が 2026年1月1日発効の年末 HTS 更新を反映していることが明記されています。 追加情報については USITC(米国国際貿易委員会)の HTS サイトを参照するよう案内され、HSU 関連の問い合わせ先として HTSAdmin のメールアドレスも示されています。govdelivery

ここで重要なのは、CBP の告知が単なるニュースではなく、ACE や ABI といった実務インフラ上のデータが切り替わる合図であることです。年明けの申告データが新しい HTS に整合していないと、エラーや保留の直接要因になり得ます。govdelivery


なぜCBPの告知が実務に直結するのか

USITCが作るHTSと、CBPが運用する通関の役割分担

HTSUS 自体は USITC が公表し、輸入品はこの HTS と、CBP が執行する各種法令に従って扱われます。 一般に、分類の一次責任は輸入者側にあり、その解釈と執行は CBP が担うという分担が USITC 側の案内でも説明されています。usitc+1

つまり、USITC 上で HTS が改訂されるだけでなく、その内容が HSU 経由で CBP の通関システム(ACE/ABI)に反映されて初めて、現場の申告ロジックが切り替わることになります。 今回の HSU 2543 は、その「反映タイミングが年始である」ことを示した実務上のシグナルと捉えられます。govdelivery


HSUとは何か

関税番号の更新がACEと申告データに入る入口

HSU は、HTS の改定や関連フラグ変更などを 通関システム側へ取り込むための更新単位であり、CBP が CSMS を通じて継続的に周知しているものです。 年末の包括的な改訂だけでなく、年途中の関税措置や特恵・制裁関連の変更でも HSU が発出されます。govdelivery+1

  • 例えば HSU 2540 は、特定の大統領令に基づく HTS 更新を含むと案内されています。govdelivery
  • HSU 2542 では、米韓の合意(US-Korea Strategic Trade and Investment Deal)に伴う改定、301条関税の除外延長、さらに PGA メッセージセット対応の HTS フラグ変更が行われたことが明示されています。govdelivery

このように HSU は、**番号や税率だけでなく、制度運用上のフラグや連携要件まで含む「仕組みの更新パッケージ」**と見なすのが安全です。govdelivery+1


2026年HTSデータはどこで入手できるか

USITCのHTS Archiveが実務向けに使いやすい

USITC の HTS Archive には、「2026 HTS Basic Edition(2025年12月31日付)」が掲載されており、HTS データを HTML、CSV、XLS、JSON などの形式でダウンロードできると案内されています。usitc

自社の品目マスター更新、分類番号の差分抽出、関税シミュレーション、BI 集計などを行う場合、PDF だけでは作業効率に限界があります。機械可読な CSV や XLS 形式で取り込めるかどうかが、実務対応のスピードを大きく左右します。usitc

USITC の HTS サイト自体も、検索・印刷・改正履歴の参照に加え、エクスポート機能を備えたオンラインシステムとして運用されています。ustr+1


実務に落とすときのチェックポイント

年末年始に起きやすい事故を先に潰す

ここからは、ビジネス側がすぐ回せる確認観点を、ミスが起きやすい順に並べます。

1. 主力品目のHTS番号を再検証する

  • 現行の 10 桁コードが 2026 年版でも有効か。
  • 分割・統合・注釈変更で読み替えが必要になっていないか。
  • 統計細分や注記変更が、社内マスターや原産地管理に影響しないか。

2. 税率だけでなく、追加関税の対象判定も再点検する

  • 一般税率の変化だけでなく、第 98 類・第 99 類の適用や、特恵・付加関税の対象条件を再確認する。
  • 大統領令や通商法上の措置は HSU 経由で運用反映されることがあり、年末の HSU 2542・2543 を一体で監視する必要があります。govdelivery+1

3. PGA要件やフラグ変更を軽視しない

  • 食品・医薬品・動植物検疫など、PGA メッセージセット周りの HTS フラグ変更が申告エラーの直接原因になることがあります。tradecustomslogistics+1
  • 通関は「税率計算」だけで止まらず、規制要件の入口(PGA フラグ)が変わると、エントリー自体が通らないケースがあるため、影響のある HTS を把握しておく必要があります。tradecustomslogistics+1

4. 年跨ぎ出荷のエントリータイミングを管理する

  • 出荷が年内でも、米国側の到着やエントリーが年明けになると、新 HTS が前提になります。
  • フォワーダーやブローカーと「エントリー日基準」で適用版を認識合わせし、旧版前提の見積や指示が残らないようにすることが重要です。govdelivery

5. システムと外部委託先の更新状況を握る

  • ブローカーや通関ソフトベンダーが、HSU 2543 をシステムに反映済みかどうかを確認する。govdelivery
  • 自社 ERP や品目マスターが、USITC の 2026 HTS Basic Edition に追随しているか、データ更新プロセスをチェックする。usitc

まとめ

HTS更新を「制度改正」ではなく「業務インフラ更新」として捉える

CBP の CSMS 告知は短文ですが、HSU 2543 が年末に作成され、2026年1月1日に発効する HTS 更新を含むという事実は、年明けからの申告データ前提が切り替わることを意味します。govdelivery

一方 USITC 側では、2026 HTS Basic Edition がアーカイブとして整理され、複数のデータ形式で利用可能になっています。 年末年始のタイミングで、分類番号の妥当性、追加関税・PGA 要件の再点検、システム反映の確認までを一気通貫で回すことが、通関事故を未然に防ぐうえで最も費用対効果の高い対応になります。usitc+2


このトーンを「もう少し砕けたブログ調」や「社内通達寄り」に振りたい場合は、ニュアンスだけ調整することもできます。

  1. https://content.govdelivery.com/bulletins/gd/USDHSCBP-4024611
  2. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3fed627
  3. https://www.usitc.gov/harmonized_tariff_information/hts/archive/list
  4. https://www.usitc.gov/tata/hts/announcement_archive
  5. https://ustr.gov/callout/us-harmonized-tariff-schedule-hts
  6. https://tradecustomslogistics.net/import/pga/
  7. https://www.linkedin.com/posts/deborah-elms_csms-67257873-harmonized-system-update-activity-7412210888625008640-hyNm
  8. https://www.fpds.gov/downloads/DoD_Acquisition_Codes.xls
  9. https://www.chieftek.com/FINANCIAL/202404_1597_AIA_20251111_152143.pdf
  10. https://www.bakermckenzie.com/-/media/files/insight/publications/2015/05/international-trade-compliance-update/files/read-publication/fileattachment/nl_tc_internationaltradecomplianceupdate_may15.pdf
  11. https://www.theglobalstatistics.com/harmonized-tariff-schedule-of-the-united-states-hts/
  12. https://dl.acm.org/doi/10.1145/3721145.3734532
  13. https://ezenciel.com/resources/ace-pga-flag-logic-matrix
  14. https://www.savquickprinting.com/product/harmonized-tariff-schedule-basic-edition-2023-cfr-19-complete-set
  15. https://openknowledge.worldbank.org/bitstreams/965713bd-9546-4c22-8fe8-172de641c126/download
  16. https://www.reddit.com/r/CustomsBroker/comments/1huxxcb/2025_hts_in_excel/
  17. https://www.kimia-pharma.co/UserFile/Download/ADA%202025.pdf
  18. http://sokocalo.engr.ucdavis.edu/~jeremic/Jeremic_et_al_bibliography_mechanics.pdf
  19. https://erasmus-plus.ec.europa.eu/sites/default/files/2025-08/List_of_Accredited_HEIs_within_the_Erasmus+_Programme_2021-2027-13082025.xlsx
  20. https://tradecustomslogistics.net/cbp-csms-messages/

米国HTS 2026 Basic Edition 公開:年初に必ず押さえる実務ポイント

米国向けビジネスでは、関税率そのもの以上に、どの品目番号で申告するかが収益とリスクを左右します。そんな中で、USITC(米国国際貿易委員会)が管理するHTS(米国の関税表)について、2026 Basic Edition が公開されました。USITCの公式ページでは、2026 HTS Basic Edition が2025年12月31日付で掲載され、HTMLに加えてCSV、XLS、JSONのダウンロード導線も示されています。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)
またUSITCの案内ページでも、2026 HTS Basic Edition が2025年12月31日に公表された旨が掲出されています。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)

この記事では、Basic Editionとは何か、なぜ年初に確認すべきか、そして企業が現場でやるべき具体策を整理します。


1. そもそもHTSとBasic Editionは何か

HTSは、米国輸入時に使う公式の品目分類と税率表です。HSの国際ルールに基づく階層(章から号まで)で構成され、税率や統計分類の枠組みを提供します。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)

Basic Editionは年次の基準版です。実務的には、社内の品目マスタや通関指示書、価格見積の前提を最新版へ揃えるための起点になります。

重要なのは、年次版で終わりではない点です。HTSはその後も法令や大統領布告、官報告示などに基づき改訂が起こり、USITCは改訂版(Revision)を公開していきます。改訂の追随が遅れると、社内と通関業者の参照版のズレが発生し、誤申告や追加コストの引き金になります。


2. 法的に重要な部分と統計上の部分を分けて理解する

HTSには、法的に効力がある部分と、統計目的で付される部分が混在します。現場の落とし穴は、税率だけを見て番号の更新や注記条件の変化を見落とすことです。

特に、国際的に共通になりやすいのは6桁までで、8桁以降は米国の国内細分や統計上の要請が絡みます。社内マスタで10桁番号を管理している企業ほど、年初の整備が効きます。


3. 2026 Basic Edition 公開が意味すること

今回のポイントは、2026 Basic Edition がUSITCの公式アーカイブで参照でき、しかも機械処理に向いた形式でも入手可能だという点です。USITCのHTS Archiveでは、2026 Basic Edition(2025年12月31日付)にHTML、CSV、XLS、JSONの導線が表示されています。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)

さらにUSITCのOpen Data案内では、HTSはAPI、CSV、Excel、JSONで提供される旨が明記されています。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)
加えてHTSサイト側には、現在のHTSをCSV、Excel、JSONのいずれかでエクスポートできる機能が案内されています。 (Harmonized Tariff Schedule)

つまり、読むための資料としてだけでなく、社内マスタ更新や差分検知の自動化にそのまま繋げられる状態が整っています。


4. 実務で影響が出る5つのチェックポイント

4-1. 税率カラムの読み分け

一般税率だけでなく、特別税率やプログラム適用の有無が絡む品目は、年初の確認が最優先です。税率が同じでも、注記や条件の位置が変わるだけで実務は動きます。

4-2. 10桁番号や国内細分の更新

税率が変わっていなくても、国内細分や統計上の分類が更新されると、申告番号の整合が崩れます。品目マスタ、インボイス記載、通関指示書、連携データの更新負荷が一気に増えるため、Basic Edition公開直後の棚卸しが効率的です。

4-3. 追加条件の見落とし

年次版に合わせて参照すべき注記や特別規定が動くことがあります。特定の追加適用や例外の入り口が変わると、同じ品目番号でも実効税率が変わることがあります。

4-4. 参照版の統一

社内、海外拠点、通関業者、フォワーダーで参照している版が違うと、原因究明に時間がかかります。年初に版と日付を明示して揃えるだけで、トラブル対応が短縮します。

4-5. データ更新の仕組み化

改訂が年中に発生する前提で、差分を検知してマスタへ反映する運用設計が必要です。HTSが機械可読形式で提供されている点を活かせば、属人的な確認作業を減らせます。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)


5. 企業が今すぐやるべき対応チェックリスト

  1. 重点品目の版合わせ
    売上上位品目と高税率品目だけでも、2026 Basic Editionで番号と注記の整合を確認する
  2. 通関業者との前提共有
    参照しているHTSの版、公開日、データソースURLを共有して突合コストを削減する
  3. 品目マスタの更新手順を確立
    CSVやExcelで更新する担当運用と、JSONやAPIで差分検知する仕組みを切り分ける (アメリカ合衆国国際貿易委員会)
  4. 次の改訂に備える
    年初に整えた後、改訂追随が遅れないように月次など定期の点検サイクルを置く

6. 情報収集を効率化するコツ

手作業でHTSを読み替えるだけでは、改訂が多い年ほど現場が回りません。USITCはHTSを複数形式で提供しており、次のように目的別に使い分けができます。

・社内マスタ更新向け
CSVやExcelで一括取得し、品目番号や税率カラムを更新する (アメリカ合衆国国際貿易委員会)

・差分検知やシステム連携向け
JSONやAPIで取得し、改訂の有無を自動判定して更新対象だけを抽出する (アメリカ合衆国国際貿易委員会)

この二段構えにするだけで、年初の一括更新と年中の追随を両立しやすくなります。


おわりに

2026 HTS Basic Edition の公開は、米国ビジネスの土台を最新版に揃える合図です。税率の見直しだけでなく、番号体系や注記条件、そして改訂追随の運用まで含めて整えることで、通関トラブルとコストを同時に抑えられます。

最後に、本文で触れたUSITCのデータ取得先を、リンク先が分かる形でまとめます。


参考リンク(リンク先明示)

USITC HTS Export(現在のHTSをCSV、Excel、JSONでエクスポート)
https://hts.usitc.gov/export

USITC HTS Archive(年次版や改訂版をHTML、CSV、XLS、JSONで参照、ダウンロード)
https://www.usitc.gov/harmonized_tariff_information/hts/archive/list

USITC Open Data(HTSがAPI、CSV、Excel、JSONで提供される旨の案内)
https://www.usitc.gov/data/index.htm

HTSUS 2026版と相互関税大統領令の監視ポイント

2026年は、米国の関税実務に関わる担当者にとって「年次改訂のHTSUS」と「相互関税(Reciprocal Tariff)の大統領令」が同時に効いてくる年です。前者は品目番号や統計コード、関税率表示の更新を通じて、後者は追加関税の上乗せや例外の変更を通じて、見積り、契約、通関、原産地管理の全領域に波及します。

本稿では、HTSUS 2026版をどう扱うべきか、相互関税の大統領令がどこで実務に影響するかを整理し、ビジネス担当者が週次・月次で監視すべきポイントを実務目線でまとめます。

1. まず押さえるべきHTSUS 2026版の性格

HTSUSは、単なる「関税率表」ではありません。品目分類(4桁、6桁、8桁)に加えて、10桁目として統計用の2桁(Statistical Suffix)が紐づき、通関・統計・規制の運用基盤になっています。USITCの資料でも、Statistical Suffixは見出し番号と組み合わさって10桁のHTS番号となり、CBPの分類裁定(CROSS)とも連携する要素として整理されています。

ここで重要なのは、年次のBasic Editionだけ見て安心しないことです。USITCは年次版に加えて、法律改正、大統領令、連邦官報告示などに応じて改訂版を継続的に公表します。過去のガイドでも、Basic Editionが公表された後、改訂はオンラインで随時反映され、変更履歴(Change Record)は改訂ごとに作成される(累積一覧ではない)点が明記されています。つまり、2026年版のスタート地点を押さえたうえで、継続的な改訂の追跡が不可欠です。

加えて、更新頻度は想像以上に高くなっています。USITCの予算資料では、年次のBasic Edition(1月)に加えて複数回の改訂が公表されており、HTSがCBPの取締りや米国統計の基盤である点も強調されています。

監視の結論
2026年版HTSUSは「年次の版替え」ではなく、「頻繁な改訂を前提にした運用基盤の最新版」です。年初に更新して終わりにすると、途中で追加関税の章99が動いた際に、見積りと実際の納税額がズレるリスクがあります。

2. 相互関税の大統領令は、章99で実務に落ちる

相互関税は、通関現場では「章99の追加番号を付けるかどうか」で具現化します。制度の核心は、IEEPA(国際緊急経済権限法)を根拠にした追加従価税の上乗せです。

2025年4月2日の大統領令14257は、「大規模かつ持続的な対米貿易赤字」が国家安全保障と経済に対する異常かつ重大な脅威であると認定し、IEEPAに基づき世界の貿易相手国に対して相互関税を課す枠組みを設定しました。基本設計は「すべての国に対してまず10%の追加関税、その後別表(Annex I)に列挙された国は国別税率へ引き上げ」というものです。

その後、2025年7月30日付の大統領令は、HTSUSを別表(Annex II)で改訂し、発効タイミングを「2025年8月7日午前0時01分(米東部時間)」としつつ、一定条件を満たす輸送中貨物には旧税率を適用できる例外(in-transit exception)を設けています。また、別表に記載のない国は10%の追加従価税が適用されることが明記されています。

さらに重要なのが、関税回避のための迂回輸出(トランシップ)とCBPが判断した場合、追加で40%を課す枠組みです。この「40%上乗せ」は対象施設や経路に対する強い抑止措置であり、関税還付や減免の余地が原則認められない点も特徴です。

ここまで来ると、監視対象は「税率」だけではなくなります。いつから変わるのか、輸送中例外に該当するのか、原産地と物流経路の証跡は揃っているのか、という運用面が中心になります。

3. 実務で見るべき一次情報の置き場

相互関税の改訂は、大統領令だけ追っても現場実装が読み切れません。最低限、次の三点セットを監視する前提で社内運用を構築するのが安全です。

(1)USTRの「Presidential Tariff Actions」一覧
相互関税に関係する大統領令と別表への導線がまとまっており、改訂の連鎖を追跡しやすい構成になっています。

(2)Federal Register(連邦官報)の実装告示
相互関税や二国間合意の実施に際し、HTSUS改訂(章99追加など)が官報で告示され、発効日が告示日とズレることがあります。例えばスイス・リヒテンシュタイン案件では、告示自体は2025年12月18日でも、HTSUS改訂の一部が2025年11月14日以降の輸入に遡って適用され得る形になっています。

(3)CBPのCSMS(Cargo Systems Messaging Service)ガイダンス
現場の申告ルールが最も具体的に示されます。2025年7月30日のCSMSでは、特定国(Annex I)対象品がHTSUSの9903.02.02から9903.02.71の範囲で申告される旨、EUは「列1税率が15%未満なら合算で15%、15%以上なら追加ゼロ」という扱いになる旨など、実務に直結する情報が記載されています。

4. 日本企業が特に注意すべき論点

日本向けの扱いは、「税率表の国別税率を探す」だけでは不十分です。二国間合意の実施や例外設計で細かく動くからです。

Federal Registerの「米日合意の関税要素実施」に関する告示では、日本品についても、列1税率が15%以上なら追加関税がゼロ、15%未満なら合算で15%になる、という設計が示されています。さらに、対象範囲や民間航空機協定など、相互関税や他の布告関税が重なる領域での除外調整にも言及があります。

ここから読み取れる監視ポイントは明確です。日本向けの影響は「一律の国別追加税率」ではなく、「列1税率との合算ロジック」や「品目別の除外調整」で動く可能性がある、ということです。

5. 監視ポイントを業務に落とすチェックリスト

以下は、実務担当が週次・月次で確認すべき監視項目です。社内で担当を割り当て、変更が出たら誰が何を更新するかまで決めておくと、トラブルが減ります。

5-1. HTSUS側の監視

10桁コードの変化(Statistical Suffixの変更)
コードが変わると、原価計算、禁制品判定、通関データ連携が崩れます。Statistical Suffixが10桁番号の一部である点は、USITCの仕様として押さえておく必要があります。

Change Recordと章98・章99の確認
影響が出やすいのは「本表」よりも、例外や追加関税が集まる章99です。改訂ごとのChange Recordは累積ではない前提なので、最新版だけでなく改訂履歴も合わせて確認します。

データ取得の自動化
USITCはCSV、Excel、JSONでのエクスポートやREST APIを提供しています。人手での転記は遅延とミスの温床なので、少なくともマスタ更新は半自動化するのが現実的です。

5-2. 相互関税側の監視

発効日の定義と輸送中例外
大統領令は「entered for consumption」などの発効条件と時刻を厳密に定義します。輸送中例外の条件も合わせて確認し、船積み日と入港後の申告時点で適用が変わるリスクを管理します。

章99の申告番号と適用順序
追加関税や貿易救済措置が重なると、申告行で複数の章99番号を記載することになります。CBPは報告順序(301関税、IEEPAフェンタニル関連、IEEPA相互関税、232関税など)を明示しているため、ブローカーへの指示書にこの順序を固定で記載しておくと、申告エラーが減ります。

除外リスト(Annex II)の変動
除外は固定ではなく、更新され得ます。Annex IIは8桁サブヘディングの列挙で構成され、説明文は参考情報であり、正式な適用は別表の正式文言が優先されます。疑義がある場合はCBPへの確認が必要です。社内では「8桁でヒットしたら即影響あり」ではなく、「正式文言と章99実装を確認して確定」という手順を標準化します。

迂回輸出・トランシップのリスク
大統領令は、回避目的のトランシップと判断された場合に追加40%を課す設計を含んでいます。サプライヤー証明、製造工程、原材料原産地、物流経路の証跡を、価格調整や関税還付より優先して整備する必要があります。

官報告示による遡及リスク
官報告示でHTSUS改訂が公表される際、告示日より前の輸入に適用される形があり得ます。輸入案件の締め処理では、通関日と発効日を照合し、必要なら追徴や修正申告の可能性まで視野に入れておくべきです。

6. 監視体制の構築方法

現実的な運用の型として、以下を提案します。

情報源を三つに固定する
USTR一覧、Federal Register、CBP CSMS。まずこれらを「毎週確認する」ルールにします。

変更が出たら、影響判定は10桁コードと章99で行う
8桁の品目分類だけで止めず、10桁の統計コードと章99の追加番号まで落として初めて影響判定を確定します。

ブローカー向け指示書をテンプレ化する
「適用法令」「章99番号」「申告順序」「輸送中例外の判断材料」をセットにして、案件ごとに差し替える形式にします。

7. まとめ

HTSUS 2026版は、年次の版替えというより「頻繁に更新される基盤の最新版」です。相互関税の大統領令は、章99と発効日管理、除外リスト、そして原産地と物流証跡の強化を通じて、実務を直接揺さぶります。

2026年は、関税率の確認だけでなく、どの情報源をいつ確認し、どのタイミングで社内マスタとブローカー指示を更新するか、という運用設計が成否を分けます。

本稿は一般的な情報提供を目的としたものです。個別案件の判断は、通関業者や専門家、関係当局の最新ガイダンスに基づいて行ってください。