掲載記事に関するお詫びとご報告

平素は本ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。

この度、本ブログに掲載いたしました「https://global-scm.com/hscf/archives/838 」の記事内容(税関のAIシステムに関する記述)につきまして、税関当局より「公表している事実はない」とのご指摘をいただきました。

社内にて事実関係を精査いたしましたところ、当該記事は生成AI(人工知能)によって作成された仮想の情報に基づいたものであり、実在しないニュースが含まれていることが判明いたしました。情報の真偽を確認することなく、誤った情報をあたかも事実であるかのように発信してしまったことは、情報発信者として極めて不適切な行為であり、深く反省しております。

本件により、税関関係者の皆様、および読者の皆様に多大なるご迷惑とご不快な思いをさせたことを、心より深くお詫び申し上げます。

当該記事につきましては、速やかに削除いたしました。今後は外部情報の取り扱いにおいて厳格な事実確認プロセスを徹底し、二度とこのような事態を繰り返さないよう、情報精度の向上と再発防止に努めてまいる所存です。

重ねて、この度の不始末を深くお詫び申し上げます。

2024年2月4日
株式会社ロジスティック
代表取締役 嶋 正和

監査で困らないHSコード管理:監査対応に耐える3種のドシエ雛形

HSコードの見直しは、単に番号を合わせる作業ではありません。監査で問われるのは「その番号にした理由を、第三者が追跡できる形で説明できるか」です。
そのために必要なのが、結論ではなく根拠と証跡を束ねたドシエです。

本記事では、監査対応に耐えるためのドシエを3種類に分解し、雛形としてそのまま社内展開できる粒度まで深掘りします。なお、個別商品の最終判断は税関照会や専門家レビューを前提にしてください。


そもそもHSコードは何が「監査対象」になりやすいのか

HSは、世界税関機構が策定する国際的な品目分類で、6桁コードを世界標準として運用します。各国は6桁の後に自国用の細分を追加できます。(世界税関機関)
HS分類は、見出し語だけでなく、解釈ルールに従って行うことが前提です(一般解釈規則)。(世界税関機関)
さらに、分類の公式解釈の中核資料として解説書(Explanatory Notes)が位置づけられています。(世界税関機関)

日本実務で重要な注意点は「申告で使う桁数」です。日本では申告に9桁の統計品目番号を用い、上6桁は国際共通のHS、下3桁は国内細分です。輸出と輸入で国内細分が一致しない場合があります。(税関総合情報)
この「国際6桁と国内細分のズレ」や「製品仕様変更に伴う分類影響」が、監査で火種になりやすいポイントです。


監査でよく出る質問は、だいたいこの5つ

監査対応を強くするには、質問パターンを先に固定しておくのが近道です。

  1. その商品は何か(機能、材質、構造、用途、セットの有無)
  2. なぜその分類か(どの解釈ルールと注に基づくか)
  3. 競合する分類は何で、なぜ排除したか
  4. 過去から何が変わったか(仕様、用途、構成、梱包、販売形態、資料)
  5. 申告や帳簿書類にどう紐づくか(どの申告・許可番号が裏付けか)

この5つに機械的に答えられるように作るのが、次の3種ドシエです。


監査対応に耐える3種のドシエ雛形

ドシエ1:製品ファクトドシエ(事実を確定する箱)

目的は、分類の前提となる客観情報を、監査で通るレベルで固定することです。
分類の議論が揉める多くの原因は、法解釈より先に「製品の事実関係」が社内で曖昧な点にあります。

雛形:最低限の構成(そのまま章立てに使えます)

  1. 基本情報
    ・社内品番、型式、取引名、申告品名候補
    ・サプライヤー、製造者、製造国
    ・用途(業務用、一般消費者用など)
    ・販売形態(単品、セット、バンドル、同梱物)
  2. 製品の中身が分かる情報
    ・材質と配合、主要成分の割合
    ・部品構成(BOM)と各部品の役割
    ・寸法、重量、電気仕様などのスペック
    ・製造工程の要点(分類に影響する場合)
  3. 機能と動作原理
    ・何をする製品か
    ・どうやってそれを実現するか(センサー、駆動、加熱、化学反応など)
  4. 画像・図面・資料
    ・外観写真(複数アングル)
    ・断面図や構造図
    ・取扱説明書、仕様書、技術資料
    ・マーケ資料は補助扱いに留め、技術資料を主にする
  5. セット・容器・包装の情報
    ・小売用セットか、部品の寄せ集めか
    ・専用ケースや容器があるか(分類影響が出やすい領域)

監査で強い書き方のコツ

・形容詞を減らす(高性能、最新、便利ではなく、数値と構造で書く)
・用途は「実際の販売・使用実態」を優先(想定用途だけだと弱い)
・仕様変更履歴を必ず残す(いつ、何が、なぜ変わったか)


ドシエ2:分類ロジックドシエ(結論に至る道筋を固定する箱)

目的は、第三者が追試できる分類判断の再現性を作ることです。
HS分類は一般解釈規則に従い、見出し語、部注・類注などを踏まえて決定します。(世界税関機関)
また、公式解釈資料として解説書が重要視されます。(世界税関機関)

雛形:分類ロジックの章立て

  1. 対象範囲の宣言
    ・この判断がカバーするSKUの範囲(色違い、容量違い、付属品違いの扱い)
    ・判断の対象外(仕様が異なる派生品)
  2. 適用するコード体系の明示
    ・国際6桁HS
    ・日本の申告用9桁(統計品目番号)
    日本では申告に9桁を用い、6桁HSと国内3桁で構成されます。(税関総合情報)
  3. 分類の結論
    ・章、項、号、国内細分までの結論
    ・品名表現(申告品名の推奨表現)
  4. 判断プロセス(一般解釈規則に沿って書く)
    ・ルール1:見出し語と注で決まるか (世界税関機関)
    ・ルール2:未完成品、混合品、組立前等の論点があるか (世界税関機関)
    ・ルール3:競合する見出しがある場合、最も具体的、主要な特性、最後の順等で整理 (世界税関機関)
    ・ルール4:類似品での整理が必要か (世界税関機関)
    ・ルール5:ケースや包装の扱いが影響するか (世界税関機関)
    ・ルール6:号以下の決定の論理 (世界税関機関)
  5. 競合見出しの排除理由
    ・候補Aを排除する理由(注により除外、機能が異なる、材質が違う等)
    ・候補Bを排除する理由
  6. 根拠資料リスト
    ・参照した解説書、分類意見、税関公表情報、社内過去判断
    解説書は国際的な公式解釈として位置づけられています。(世界税関機関)
    日本でも分類支援資料や事前教示の公表を行っています。
  7. 変更に弱い点(監査で一番効くパート)
    ・材質が変わると分類が変わる閾値
    ・付属品や同梱でセット扱いになる条件
    ・用途の変更で見出しが変わり得る条件
    ここを先に書いておくと、仕様変更時に自動でアラートを出せます。

ドシエ3:ガバナンス・証跡ドシエ(監査での説明責任を支える箱)

目的は、個々の分類の正しさだけでなく、会社としての管理体制と証跡の連鎖を示すことです。
監査対応の勝負どころは「資料があるか」だけではなく、「会社として再発防止できる統制があるか」です。

雛形:ガバナンスの章立て

  1. 役割分担
    ・分類の一次作成(貿易管理、通関部門など)
    ・技術情報の提供責任(開発、品質、購買)
    ・最終承認(責任者)
    ・通関業者が関与する場合の境界(最終責任は誰か)
  2. 品目マスター運用ルール
    ・新規採用品の分類フロー(いつ分類し、いつマスターに登録するか)
    ・既存品の見直しトリガー(仕様変更、用途変更、セット構成変更、HS改正など)
    日本税関の統計コード運用上、輸出入で国内細分が異なることがあるため、用途別にマスターを分ける判断も現実的です。(税関総合情報)
  3. 証跡と申告の紐づけルール
    日本の制度では、輸入者等に帳簿書類の保存義務があります。輸入では帳簿7年、書類5年、電子取引情報5年が基本です。
    さらに、帳簿の記載事項と書類の関係が明らかになるよう整理して保存することが求められます(許可書番号などで紐づける考え方)。
    ドシエ3には、次の紐づけ仕様を明文化して入れます。
    ・社内品番 と 申告統計品目番号 の対応
    ・社内品番 と 輸入許可情報 の対応
    ・許可書番号 と インボイス、契約書、BOM、ドシエ一式 の対応
  4. 監査対応手順(当日の動きまで決める)
    ・事前通知が来たら誰が窓口か
    ・何日分の申告を、どの粒度で出せるか
    ・質問への回答テンプレート(事実、判断、証拠、影響範囲、是正案)

輸入事後調査では、帳簿書類等の提示・提出を求められることがあり、正当な理由なく拒否等をすると罰則が科され得る旨が説明されています。
このため、ドシエ3は「出せる状態」を維持するのが核心です。

  1. 文書管理
    ・版管理(作成日、改定日、改定理由、承認者)
    ・保管場所(電子保管の場合のルール)
    ・保存期間(社内規程を関税法上の期間に合わせる)

3種ドシエを最短で立ち上げる手順

一気に全品目を完璧にしようとすると止まります。ビジネス向けには、リスクベースで回すのが現実解です。

  1. 対象選定
    ・関税額が大きい品目
    ・分類が揺れやすい品目(複合材、セット品、用途が幅広いもの)
    ・過去に修正申告や指摘があった領域
  2. ドシエ1を先に作る
    分類会議の前に、開発や購買からファクトを回収して確定させる。ここが最重要です。
  3. ドシエ2で判断を固定
    一般解釈規則の順に、競合見出しの排除理由まで書き切る。(世界税関機関)
  4. ドシエ3で運用に落とす
    マスター登録、変更管理、保存、監査対応の導線を決める。保存義務と紐づけ要件は外せません。
  5. 年次の見直しをスケジュール化
    HSは定期的に改正されます。運用としては、年次で棚卸しの枠を確保しておくと事故が減ります。(世界税関機関)

監査対応の最終兵器:事前教示をどう組み込むか

分類が難しい品目や金額影響が大きい品目では、税関への事前教示(書面回答)を戦略的に使うべきです。
事前教示は、輸入前に関税分類と税率等について照会し、回答を得られる制度で、回答書の添付により審査で尊重される旨が示されています。有効期間は3年です。
また、日本税関は文書による事前教示回答を原則公開し、品名や番号等で検索できる形にしています(非公開期間は最長180日)。

ドシエへの組み込み方はシンプルです。
・ドシエ2の根拠資料として回答書を格納
・ドシエ3に、回答書の有効期限管理と再照会トリガーを登録
・品目マスターに、回答書の参照番号と版を持たせる

これで、監査での説明は格段に短くなります。


文章校正後のまとめ

監査対応に強いHSコード管理は、個人の経験や通関会社任せでは成立しません。
製品の事実を固める箱、分類ロジックを再現できる箱、統制と証跡の連鎖を示す箱。この3つに分けてドシエ化すると、監査対応は仕組みに変わります。

まずは、関税影響が大きい上位品目から、ドシエ1と2を作り、最後にドシエ3で運用を固定してください。保存期間と紐づけの要件を最初から満たしておくことが、監査での最大の防御になります。

2028年の関税ショックを回避せよ。日EU・EPA「HS読み替え指針」が示す実務の解


2026年2月4日、日本と欧州連合(EU)の貿易当局間で進められていたある重要な協議の実質的な合意が報じられました。それは、2028年のHSコード改正(HS 2028)に向けて、日EU・EPAの運用ルールをどう適応させるかという運用ガイドラインの第一案がまとまったというニュースです。

これは、多くの貿易実務家が2028年問題として懸念していた、申告コードと協定ルールの不整合による混乱を未然に防ぐための処方箋です。

本記事では、FTAの専門家の視点から、このガイドラインが示された背景にある構造的な課題と、企業が2028年に向けて構築すべき二重管理体制について深掘り解説します。

なぜ2028年に原産地証明が止まる恐れがあったのか

まず、この問題の核心である協定の硬直性とHSコードの流動性のギャップについて整理します。

2019年に発効した日EU・EPAは、その原産地規則(製品が日本産か欧州産かを判定するルール)の基準として、2017年版のHSコード(HS 2017)を採用しています。条文に書かれている品目番号や関税分類変更基準(CTC)は、すべて2017年当時の世界に基づいています。

しかし、貿易の現場で使われるHSコードは5年ごとに改正されます。2022年の改正を経て、次は2028年1月1日に大規模な改正が行われます。

ここで生じるのが、輸入申告書には最新の2028年版コードを書かなければならないのに、特恵関税を適用するためのルールブックは2017年版のままという矛盾です。もし、ある製品のコードが改正で変更されていた場合、どのルールを適用すればよいのかが不明確になり、最悪の場合、原産地証明書の不備として関税優遇が否認されるリスクがありました。

魔法の辞書、相関表の公式化

今回まとまったガイドラインの核となるのは、相関表(Correlation Table)の公式な導入です。

本来、新しいHSコードに対応するためには、協定の条文そのものを書き換える転換(Transposition)という手続きが理想ですが、これには膨大な時間と法的承認プロセスが必要です。そこで当局は、条文は書き換えずに、読み替えのための辞書を用意するという現実的な解決策を選びました。

相関表の役割

この公式相関表は、HS 2028のコードとHS 2017のコードを紐付ける変換テーブルです。

例えば、HS 2028で新設されたある化学品のコードが、HS 2017ではどのコードに該当していたのかを一対一、あるいは一対多で定義します。企業はこの表を参照することで、最新のコードで申告しつつ、裏側では正しい旧コードの原産地規則を適用することが可能になります。

ガイドライン案では、この相関表を日EU双方の税関が公式な判定基準として認めることが明記される見込みです。これにより、企業は独自の解釈ではなく、当局のお墨付きを得た変換ロジックに基づいて業務を行うことができます。

企業に求められるHSコードの二重管理

このニュースは朗報ですが、同時に企業に対して高度なデータ管理を求めています。それは、通関用コードと原産地判定用コードの完全な分離管理です。

2028年の実務フロー

これまでは、インボイスに記載するHSコードが決まれば、そのままそのコードの原産地規則を確認すれば済みました。しかし、2028年以降のEPA活用プロセスは以下のようになります。

  1. 通関用コードの特定:製品のスペックに基づき、最新のHS 2028コードを決定する。(輸入申告用)
  2. 相関表の参照:ガイドラインに基づき、そのコードに対応するHS 2017コードを特定する。
  3. 原産地規則の適用:特定されたHS 2017コードに基づき、協定上のルール(関税分類変更基準や付加価値基準)を満たしているか判定する。

もし、自社のシステムが最新のHSコードしか保持できない仕様になっている場合、このプロセスに対応できません。

落とし穴となるみなし変更

特に注意が必要なのは、HSコードの項番(上4桁)が変わるような改正があった場合です。

例えば、技術革新により製品の機能定義が変わり、第84類から第85類へ移動した場合、最新コードだけを見ていると関税分類変更基準(CTH)を満たしているように見えるかもしれません。しかし、2017年版のコードに引き直すと実は項番が変わっていない(変更基準を満たさない)というケースが発生し得ます。

このような意図しないミスを防ぐためにも、公式相関表を用いたロジックチェックは必須となります。

まとめ

日EU・EPAの運用ガイドライン第一案の策定は、2028年の貿易実務における交通整理が始まったことを意味します。

FTAの専門家として助言できることは一つです。2028年になってから慌てて相関表を見るのではなく、今のうちから自社の製品マスタにEPA判定用(HS 2017)という固定フィールドを設け、最新コードとは切り離して管理できる体制を整えておくことです。

過去のルールを正しく参照し続ける能力こそが、未来の関税削減メリットを確実に享受するための鍵となります。

培養肉は「肉」か「食品」か。米国CBPが下した分類決着とフードテックへの衝撃


2026年2月4日、米国の税関・国境警備局(CBP)は、急速に商業化が進むラボ肉(培養肉)の輸入実務におけるHSコード分類基準について、暫定的な決定を下しました。

これは、食品業界における長年の哲学的かつ実務的な問いである「細胞培養で作られた肉は、関税法上の肉(Meat)なのか」という論争に対し、世界で初めて貿易大国が明確な解釈指針を示した歴史的なニュースです。

本記事では、HSコードの専門家として、この決定が意味する「関税の境界線」と、フードテック企業が直面する新たなビジネスルールについて深掘り解説します。

第2類の壁。なぜ「肉」として扱われないのか

まず、この問題の核心にある関税率表(HSコード)の構造的な定義について解説します。

我々が普段スーパーマーケットで買う牛肉や豚肉は、HSコードの「第2類(肉及び食用のくず肉)」に分類されます。しかし、この第2類の解説には、伝統的に「と畜(Slaughter)」というプロセスを経ていることが前提とされてきました。つまり、生きている動物を屠殺して得られたものが「肉」であるという定義です。

一方で、培養肉はバイオリアクターの中で細胞を増殖させて作られます。動物を殺すプロセスが存在しません。

今回、CBPが示した基準の骨子は、この製造工程の違いを厳格に適用するというものです。つまり、生物学的には肉と同じ組成であっても、関税法上は伝統的な第2類の「肉」とは区別し、第21類(その他の調製食料品)、あるいはその成分構成によっては**第16類(肉の調製品)**の特殊な項へと分類する方向性を示しました。

これは、「見た目や味が肉であれば肉とする」という機能重視の考え方ではなく、「どのように作られたか」というプロセス重視の基準をCBPが採用したことを意味します。

関税率と輸入枠に生じる巨大なギャップ

この分類の違いは、単なるコード番号の違いではありません。企業の利益率を左右する関税率と輸入割当(クオータ)に直結します。

牛肉セーフガードの対象外になる可能性

もし培養肉が第2類の「牛肉」として分類されれば、既存の牛肉輸入枠(低関税枠)を巡って、伝統的な畜産農家や食肉商社との激しい枠取り合戦に巻き込まれることになります。また、輸入急増時に発動されるセーフガード(緊急輸入制限)の対象にもなります。

しかし、今回のように第21類(調製食料品)などの別枠として扱われることになれば、これらの伝統的な牛肉規制の対象外となる可能性があります。これは、輸出企業にとっては、厳しい輸入数量制限を回避し、自由な数量を米国市場に投入できるという巨大なメリットになり得ます。

関税率の予見可能性

一方で、第21類は「その他」の食品が入るカテゴリであり、品目によっては高い関税率が設定されている場合もあります。今回のCBPの暫定決定により、培養肉に対する具体的な税率が固定されることになります。これまで「いくらの関税がかかるか分からないから輸出できない」と足踏みしていたフードテック企業にとって、事業計画(PL)が引けるようになったことは大きな前進です。

ラベル表示規制との複雑なねじれ

ビジネスマンが注意すべきは、この税関の決定が、国内販売時の表示ルール(FDA/USDA管轄)とは必ずしも一致しないという点です。

米国内の食品表示規制では、消費者の誤認を防ぐために「Cultivated Chicken(培養鶏肉)」といった表示が義務付けられていますが、あくまで「肉」の一種として扱われる傾向にあります。

しかし、貿易の入り口(税関)では「肉ではない(第2類ではない)」として処理され、国内に入った瞬間に「肉」として流通する。このような「ねじれ現象」が発生することになります。

輸入担当者は、インボイス上の品名記述(Description)において、税関用のHSコード分類根拠となる「細胞培養由来であること」を明確にしつつ、販売用のパッケージには食品表示法に適合した記載を行うという、高度な整合性管理が求められます。

まとめ

米国CBPによる培養肉の分類基準決定は、フードテックという新しい産業を、既存の貿易ルールの中に無理やり押し込むのではなく、新しい枠組みで管理しようとする現実的なアプローチです。

この決定は、培養肉が「農産物」ではなく「工業製品」に近い扱いを受ける時代の幕開けとも言えます。関連企業は、自社製品の成分と製造プロセスをHSコードの視点から再定義し、最も有利かつコンプライアンスに則った輸入戦略を構築する時期に来ています。

汎用部品という隠れ蓑の消滅。HS 2028改正が半導体サプライチェーンに迫る「スペック管理」の徹底

2026年2月4日、世界税関機構(WCO)から半導体業界および関連する機械メーカーにとって、極めて重い意味を持つ提案がなされました。それは、2028年のHSコード改正(HS 2028)において、半導体製造装置の部分品(パーツ)を分類するコードを劇的に細分化するという案です。

これまで、多くの半導体関連パーツは、第8486項の「部分品および附属品」という大きなバスケットの中に一括りで分類されてきました。しかし、今回の提案はその「ドンブリ勘定」の時代を終わらせるものです。

本記事では、HSコードの専門家の視点から、この細分化の真の狙いである経済安全保障との連動と、企業が直面する実務上の課題について深掘り解説します。

「その他」に隠れていた戦略物資の可視化

まず、現状のHSコードの問題点をおさらいします。

現在のHS 2022では、半導体製造装置(露光装置やエッチング装置など)の部品は、主に「8486.90」というコードに分類されます。ここには、高度な光学レンズや制御基板といった戦略的な重要部品から、単なる金属製のカバーやネジのような汎用的な部品までが、すべて同じ番号の下に混在しています。

この状態では、各国の規制当局は、どの国にどれだけの「重要技術」が流れているのかを統計データから正確に把握することができません。

今回WCOが提示した細分化案は、この不透明さを解消するためのものです。具体的には、従来の「部分品」というコードを分解し、例えば「プラズマ制御用部品」や「搬送用ロボットアーム」、「特殊光学系ユニット」といった機能や用途に基づいた固有のコード(サブヘディング)を新設しようとしています。

これにより、税関は輸入申告された貨物が、単なる修理用パーツなのか、それとも製造能力を左右するコアコンポーネントなのかを、HSコードを見るだけで判別できるようになります。

輸出管理との完全な紐付け

ビジネスマンが最も警戒すべきは、この改正が単なる統計の精緻化ではないという点です。これは明らかに、各国の輸出管理(安全保障貿易管理)の実効性を高めるための布石です。

HSコードが細分化され、特定の高性能部品に固有の番号が振られるということは、その番号に対して輸出規制のフラグを立てやすくなることを意味します。

これまでは、8486.90というコードで申告されただけでは、それが規制対象かどうかは税関のシステム上では判別できず、審査官の知識や企業の自己申告に依存していました。しかし、2028年以降は、特定のコードが入力された瞬間に、自動的に該非判定書の提出を求めたり、検査対象としてロックしたりするシステム運用が可能になります。

つまり、HSコードの選定ミスが、即座に「無許可輸出」の疑いという重大なコンプライアンス違反に直結するリスクが高まるのです。

エンジニアと通関士の連携が必須になる未来

この改正案がそのまま採用された場合、企業の実務にはどのような変化が求められるのでしょうか。最大の変化は、通関部門だけではHSコードを決められなくなるという点です。

図面と仕様書が分類の決定打

これまでの「8486.90(部分品)」であれば、それが半導体装置に使われることさえ分かれば分類が可能でした。しかし、細分化された新コードでは、「それがどのような機能を持つか」「どの工程(前工程か後工程か)に使われるか」「汎用品か専用品か」といった技術的な詳細情報が必要になります。

通関担当者が、製品の外見や名称だけでこれらを判断することは不可能です。設計図面や仕様書を読み解けるエンジニアが、分類プロセスに関与しなければなりません。

「専用品」の証明責任

また、新コード体系では「専ら半導体製造装置に使用されるもの」と「汎用性があるもの」の境界線が厳格化される見込みです。

企業側は、自社の部品が他の用途(例えば医療機器や一般産業機械)には転用できない「専用設計」であることを、客観的な資料で税関に証明する準備が求められます。

まとめ

WCOによる半導体製造装置用パーツの細分化案は、ハイテク貿易における透明性を極限まで高めようとする国際社会の意思表示です。

2028年はまだ先の話ではありません。数万点に及ぶ補修部品マスタを持つメーカーや商社にとって、すべての部品のスペックを洗い出し、新コードへ移行する作業は年単位のプロジェクトになります。

「たかがパーツのコード変更」と侮らず、今のうちから技術部門と連携し、製品情報のデータベース化を進めること。それが、2028年以降も世界のサプライチェーンから締め出されないための唯一の防衛策です。