CBP裁定で読み解く「導線(8544)」と「自動車部品(8708)」の境界線

ワイヤーハーネスは、見た目も用途も明らかに自動車向けです。にもかかわらず、米国税関CBPの裁定では、しばしば自動車部品の8708ではなく、導線としての8544に分類されます。
ここを誤解すると、申告修正や追徴、追加関税の取りこぼし・過払い、サプライチェーン原価計算の崩れにつながりかねません。

本稿では、CBPの代表的な裁定(HQ・NY)を軸に、「導線としての8544」と「自動車部品としての8708」の境界がどこに引かれるのかを、ビジネスの意思決定に使えるレベルまで整理します。

※本稿は一般的な情報提供であり、個別案件の分類を確定するものではありません。最終判断には製品仕様、構成部品、輸入時の状態、提出資料が強く影響します。重要案件ではCBPのバインディングルーリング取得を推奨します。


1. まず結論:8708に行く前に、8544に「吸い込まれる」仕組みがある

誤解が生じやすい最大の理由は、「用途だけで考えてしまう」ことです。
確かにワイヤーハーネスは車両専用に設計され、車の中でしか使われませんが、HTSUSは用途だけでなく、章注・部注による「門番ルール」で分類の行き先を決めています。

その典型が、HTSUS Section XVII(車両等)の注2(f)です。
この注記では、車両の部品として識別できるものであっても、Chapter 84・85に該当する物は、Section XVIIの「parts and accessories(部品・付属品)」の範囲から除外すると定めています。
言い換えると、「Chapter 85にきちんと分類できるものは、原則として8708には入れない」という構造です。

この門番ルールがあるため、ワイヤーハーネスを8708に入れたい側の主張は、出発点から不利になります。
8708に至るための「勝ち筋」は単純で、輸入時の状態の製品が、Chapter 85のどの見出しにも当てはまらないことを示せるかどうかにかかっています。


2. CBPが8544を選ぶときのロジック

本質が「絶縁導体+コネクタ」なら8544

2-1. 事例A:HQ 955026(1993年)

CBPが8544を選んだ代表例として、HQ 955026があります。対象は、乗用車に搭載されるインストルメントパネル用ワイヤーハーネスアセンブリで、導体、配線トラフ、端子、絶縁体、グロメット、束線材、ヒューズ、リレー、ライトソケットなどから構成されていました。
このアセンブリは、ボディコンピュータ、計器クラスター、ラジオ、エアバッグモジュール、スイッチ類、車体配線、エンジンルーム配線など、インストルメントパネル周辺の各モジュールを相互接続する役割を持ちます。

CBPは、Explanatory Note 85.44に触れながら、「絶縁された電線・ケーブル等は、長さに切断されていても、端にコネクタ類が付いていても、依然として8544にとどまり得る」と整理しました。
そのうえで、対象品の本質は「絶縁された導体にコネクタ等を付した配線セット」であり、ヒューズやリレー、ライトソケット等は電気の導通を補助するにとどまるとして、8544.30.00(車両等に用いる配線セット)への分類を確定しています。

さらに重要なのは次の点です。
HQ 955026では、たとえ用途が自動車であっても、対象がChapter 85(8544)に分類される以上、Section XVII注2(f)により8708への分類は排除される、と明言されています。

当時の裁定では、検討対象となった8708.99.50の一般税率が3.1%、8544.30.00が5%と記載されており、分類による税率差がコストに直結することが示されていました(税率は改定され得るため、実務では必ず最新HTSを確認する必要があります)。

ビジネス上の示唆

  • 自動車専用設計であっても、それだけで8708にはならない。
  • コネクタ、端子、束線材、グロメット、ヒューズ、リレー程度の追加要素は、8544から外す決定打になりにくい。
  • 議論の中心は、「電気の導通・配線」という本質を超える独立機能が、輸入時点でどこまで実装されているかに移る。

3. では、いつ8708になり得るのか

8544に当てはまらないほど「機能モジュール化」しているとき

3-1. 事例B:HQ 088477(1991年)

8708側に振れた有名例がHQ 088477です。
ここで対象となったのは、インストルメントパネルに組み込まれる配線アセンブリですが、その内容は単なるハーネスを超えたものでした。

裁定文によれば、このアセンブリには、19本のヒューズを収めたヒューズボックス、ランプとランプソケット、マイクロプロセッサを含むランプ監視モジュール、ドア開状態検知モジュール、ランプ付きグローブボックススイッチ、エンジン警告系ドライバモジュール、複数のリレーやサーキットブレーカーなどが含まれていました。

CBPは、Section XVII注2(f)(Chapter 85該当品は車両部品扱いしない)を前提としながらも、次のようにロジックを組み立てています。

  • 構成要素の一部(ヒューズ、スイッチ、電線など)はChapter 85で個別に説明できる。
  • しかし、輸入時の状態の「全体」としては、Chapter 85のどの見出しにも当たらない。
  • 特に8544については、単なるコネクタ付き導体の範囲を超えて、監視・制御・警告等の装置が相当量一体化しており、85.44の用語を満たさない。
  • 8543(個別機能を有する電気機器)についても、本件全体を説明するには適切でない。
  • 以上から、全体を最もよく表す見出しは8708.99.50である。

この結果、当該アセンブリは「自動車用のその他の部分品」として8708.99.50に分類されています。

ビジネス上の示唆

  • 同じ「ハーネス」と呼ばれていても、輸入時点で監視・制御・診断などのモジュール群を抱き込むと、8544の「安全地帯」から外れる。
  • 8708に行けるかどうかは、「車の部品だから」ではなく、「Chapter 85のどれにも当たらないほど一体化した機能モジュールになっているか」という消去法の勝負になる。
  • 設計変更や構成部品の追加が、既存の分類前提を壊しうる。

4. 現代の実務感

スイッチ・リレー・ヒューズ入りでも8544に残ることがある

4-1. 事例C:NY N326429(2022年)

近年の実務に直結する例として、NY N326429があります。
ここで扱われたのは、LED作業灯やオフロード用ライトバー向けの「プラグ・アンド・プレイ」配線ハーネスで、ロッカースイッチ、ヒューズ、リレー、複数のコネクタを備え、12V系で車両に使用される製品でした。

輸入者側は、回路の接続・保護・スイッチング等を行う電気機器を含むことから、8536と8544のどちらか、あるいは複合として別のサブヘディングを提案しました。
しかしCBPは、保護・接続・スイッチング・導通など複数の機能が並立しており、単一の機能を「本質」と特定しにくいとして、GRI 3(c)を適用しています。

GRI 3(c)では、2以上の見出しに同程度に該当し、本質を決定できない場合、番号順で最も後ろにある見出しに分類すると定められています。
このルールを踏まえ、CBPは最終的に8544.30.0000(Ignition wiring sets and other wiring sets of a kind used in vehicles, aircraft or ships)を選択しています。

さらに、この裁定では、中国原産で8544.30.0000に分類される場合、原則として追加25%関税(Chapter 99の9903.88.01)の対象となり得ること、申告時にChapter 99番号を併記する必要があることも明記されています。

ビジネス上の示唆

  • スイッチ、ヒューズ、リレーを内蔵していても、必ずしも8536や8708に移るわけではなく、8544.30にとどまるケースがある。
  • 分類は基本税率だけでなく、Section 301の追加関税の適用有無やコンプライアンスコストにも直結する。
  • 設計段階から、部品構成と輸入時の状態を前提に、分類シナリオと追加関税シナリオをセットで検討する価値が高い。

5. 境界線を実務に落とす

判断軸は3つに絞れる

CBP裁定の積み重ねから見える「8544と8708の境界線」は、次の3つの軸に整理できます。

5-1. 軸1:全体として8544の説明に収まるか

HQ 955026では、ヒューズやリレー、ライトソケットなどが含まれていても、「電気の導通を補助する範囲」にとどまるとして、全体を8544.30.00に分類しました。
一方、HQ 088477では、監視モジュールやマイクロプロセッサ等、導通補助の域を超えた装置が相当量一体化している点が決定的であり、85.44の範囲から外れると判断されています。

5-2. 軸2:Section XVII注2(f)の門番を越えられるか

「Chapter 85にきちんと分類できる限り、8708は閉ざされる」というルール自体が非常に強力です。
したがって、8708を主張するのであれば、輸入時の状態の「全体」がChapter 85のいずれの見出しにも当てはまらないことを示す必要があります。

HQ 088477は、まさにこの構造で8708に到達した事例です。
個々の構成品はChapter 85で説明できるものの、全体としては特定の見出しの文言に合致せず、結果として8708.99.50が最も適切とされた、というロジックになっています。

5-3. 軸3:輸入時点で「完成品機能」を持っているか

特に照明系などでは、輸入時にどこまで完成しているかが重要です。
CBPは過去裁定において、GRI 2(a)の考え方を用いて、未完成品であっても、主要な構成要素を備えた灯具アセンブリを8512(自動車用照明・信号装置)で扱う方向に整理し、従前の一部ハーネス系裁定を修正・撤回したことがあります(HQ 954945など)。

要するに、「配線だから8544」「自動車に付くから8708」といった短絡ではなく、「輸入時点でどの機能がどこまで完成しているか」が分類を動かすということです。


6. 実務で使えるチェックリスト

分類検討の初動で、最低限そろえておきたい情報を、通関実務の観点から整理します。

6-1. A:製品定義を固める

  • 導体は単線か、多芯ケーブルか、束線か。
  • コネクタ、端子、ソケットの有無と種類(車両専用か、汎用か)。
  • ヒューズ、リレー、スイッチ、モジュール類の有無。
  • それらが「導通・配線を補助する機能」にとどまるのか、「監視・制御・診断などの独立機能」を持つのか。
  • 輸入時点でランプや他の装置が同梱・取り付け済みか(分納の場合を含めて確認)。

6-2. B:資料の整備(監査・裁定取得に効く)

  • 回路図・配線図、BOM(部品番号と数量)。
  • 輸入時の状態が分かる写真、梱包形態。
  • 機能説明書(何を制御し、何を監視し、どの信号・電力を処理するか)。
  • 車両への搭載位置と接続先一覧(どのECU・モジュールと接続するか)。

6-3. C:リスクの見積もり

  • 8544.30前提の設計でも、構成変更によりHQ 088477型(8708側)に「化ける」可能性がないか。
  • 原産国が中国の場合、Section 301追加関税の適用可能性と、Chapter 99番号の併記運用を含めた管理フローが設計されているか(NY N326429は、分類判断と同時に追加関税管理を求めている)。
  • 分類変更が価格・契約条項・原価計算・移転価格に与える影響を、あらかじめ試算しているか。

7. まとめ:境界線は「名称」ではなく「輸入時点の全体像」で決まる

ワイヤーハーネスを8708に入れる発想は自然ですが、HTSUSの構造上、Chapter 85に該当する限り、Section XVII注2(f)により8708は原則として閉ざされます。
CBPは、絶縁導体とコネクタを核とし、導通を補助する範囲の部品が付く程度であれば8544.30に分類し、8708を排除する判断をHQ 955026などで明確に示しています。

一方で、監視・制御モジュールやプロセッサ等を相当量抱え込み、Chapter 85のどれにも当てはまらないレベルの一体品となると、消去法により8708に到達する余地が生まれることも、HQ 088477が示す通りです。
そして近年でも、スイッチ・ヒューズ・リレーを備えた車両用配線ハーネスが8544.30に整理され、同時にSection 301追加関税の管理が求められる例(NY N326429)が存在します。

次のアクションとしては、社内で「導通補助の範囲」と「モジュール化している領域」を整理し、設計変更がその境界を越えるタイミングを検知できる体制を作ることが重要です。
そのうえで、金額インパクトの大きい品目については、CBPのバインディングルーリング(19 CFR Part 177)を活用し、分類と追加関税の両面で不確実性を減らすことが、費用対効果の高い打ち手になります。

主要国のHS2028条文と即応タスクまとめ

2026年1月時点の一次情報をもとに、経営判断に直結する論点を整理する

はじめに

HSコード改正は通関部門だけのテーマではありません。
関税コスト、輸出入規制、製品マスター、原産地判定、顧客向け書類、統計、BIの集計軸に至るまで、企業の意思決定を支える共通キーが一斉に更新されるイベントです。

2026年1月21日、世界税関機構(WCO)は、HS2028改正が受理され、2028年1月1日に発効することを公表しました。
HS2028改正は299セットの改正から構成され、全体として1,229見出し・5,852サブヘディングで構成される新たな品目表となります(HS2022比で新設6見出し・428サブヘディング、削除5見出し・172サブヘディング)。

ここからの約2年間は、単に「待つ期間」ではなく、各国が自国の関税率表や統計品目表に落とし込む準備期間です。
WCOは、この期間に相関表(HS2022とHS2028の対応関係)や関連ツールを整備し、各国による実装作業が進むと位置づけています。

本稿では、主要国ごとにどの文書が法令上の根拠となるのか(便宜上「条文」と呼びます)を整理し、企業が今すぐ着手すべき即応タスクを、経営目線で具体化します。


1. HS2028の「条文」とは何か

WCO改正と各国の国内実装

HS品目表は、HS条約(Harmonized System Convention)に基づく国際的な分類表であり、改正はWCOの手続きを経て各国に波及します。
WCO理事会が改正勧告(Article 16 Recommendation)を採択した後、締約国は6か月間、勧告された改正に対して留保(異議)を表明することができます。

この仕組みにより、企業側は「WCOの改正文書を起点に、各国の国内法令・関税率表への実装を追いかける」という発想が必要になります。

HS2028で何が変わるか

WCOと関連情報が示しているHS2028の主な特徴は、次の通りです。

  • 改正規模は299セットの改正。
  • ワクチンや医療関連品目の可視性向上(新しい見出し・サブヘディングの創設、疾病別・用途別の整理強化など)。
  • 医療・緊急対応機器(救急車、保護具、モニタリング機器など)の新サブヘディング追加。
  • 環境・廃棄物関連品目(特にプラスチック廃棄物など)の国際的な環境枠組みに沿った再編。

ここで重要なのは、分類表の更新が「見出しや小区分の新設・削除」だけでなく、「法的注・部注の改訂」や「構造再編」を含む点です。
単なるコード置換ではなく、分類根拠そのものの組み替えが起こり得るため、企業の分類ロジックやエビデンスの見直しが不可欠になります。


2. 主要国の「条文」はどこで確定するか

以下では、企業が一次情報として追いかけるべき公表物を、国・地域別に整理します。

国際(共通):WCO

  • HS2028改正文書(Article 16 Recommendation、HS2028 Nomenclature)。
  • HS2028改正概要やニュースリリース(発効日、改正件数、背景説明)。
  • HS改正手続きの説明(6か月の留保期間など)。

企業がまず押さえるべき一次情報は、WCOが公表するHS2028改正文書とその解説ページです。

EU:CN(Combined Nomenclature)への取り込み

EUは、WCOのHS改正を受け、Council Regulation (EEC) No 2658/87 に基づき、関税・統計の共通分類であるCN(Combined Nomenclature)に反映します。

  • CNは8桁で構成され、最初の6桁がHS、7桁・8桁がEU固有のCNサブヘディングです。
  • 第9・10桁はTARICコードとして、EU域内の追加的な貿易措置や細分に用いられます。
  • CNは、輸入・輸出申告、関税率の決定、統計、各種規制措置の適用の基礎となります。

WCO理事会での改正勧告を受けて、EUは理事会決定・委員会実施規則などを通じてHS改正をCNに取り込みます(2026年版CNの公表など)。

米国:HTSUS(Harmonized Tariff Schedule of the United States)

米国では、USITC(U.S. International Trade Commission)がHS改正に対応するHTSUS改正案を作成し、大統領への勧告プロセスを担います。

  • 2025年8月12日付のUSITCニュースリリースにおいて、2028年版HTSへの改正作業を開始する調査「Recommended Modifications in the Harmonized Tariff Schedule, 2028」の実施が公表されています。
  • USITCは、2026年2月にHTS改正の予備的ドラフトを公表しパブリックコメントを募集し、その後、2026年9月に大統領へ報告書を提出する予定としています。

また、USITCのFAQでは、HTSコードの構造について次のように説明しています。

  • 4桁が「heading」、6桁・8桁が「subheading」であり、法的テキストとしてのHTSは8桁レベルまでで完結する。
  • さらに、10桁目は統計用細分が付されることがあり、これらを合わせてHTSUSとして運用する。

従って、企業にとっての最終的な「条文」は、大統領による改正反映後のHTSUS(8桁)と、それに基づく10桁統計番号です。

日本:9桁統計品目番号とHS版の混在

日本では、HS条約改正に合わせて、関税定率法等および関連告示・解説資料を改正し、関税率表と輸出入統計品目表に反映します(HS2022改正時も同様の整理)。

  • 日本の「統計品目番号」は9桁であり、6桁のHSコードに3桁の国内細分コードを加えた構造です。
  • 9桁コードは、日本の通関申告・貿易統計の基礎となるコードとして運用されています。

一方、EPA(経済連携協定)では、協定ごとに採用しているHSの版(例:HS2012、HS2017、HS2022など)が異なり、原産地規則の品目別規則(PSR)は協定で定めるHS版に紐づきます。
このため、日本の通関実務がHS2022や将来のHS2028に移行していても、原産地証明書等に記載するHSコードは、当該EPAで採用しているHS版に合わせる必要があると説明されています。

英国:UK Integrated Tariff(UK Global Tariff)

英国は、EU離脱後、UK Global Tariff(UKGT)に基づくUK Integrated Tariffを運用しており、HS改正に合わせて国内の統合関税表を改正します。

  • 2022年の分類改正時には、HS改正に対応したUK Integrated Tariffの変更内容や相関情報が、政府サイトの「tariff stop press」等で告知されています。
  • また、輸入関税率の案内としてUK Global Tariffに関するガイダンスが提供されています。

実務上、企業が確認すべき「条文」は、最新のUK Integrated Tariff(UK Tariff)およびその改正告知です。

カナダ:Customs Tariff

カナダでは、Customs TariffがHSに基づく国内関税率表として機能し、必要に応じて改正・公表されます。

  • カナダ国境サービス庁(CBSA)は、Customs Tariffの最新版をウェブサイト上で提供し、改正がある場合は通知・更新を行う方針を示しています。
  • HS2028改正についても、HSが多くの国の関税率表の基礎であり、カナダにも影響する旨が業界向け情報で紹介されています。

中国:HSベースの8桁体系

中国は、HSベースの分類体系(CCCCS)を用いており、8桁を標準とする国内細分を採用しています。

  • 2024年版のCCCCSでは8,966の8桁品目が存在し、最初の6桁がHSコード、7桁・8桁が中国独自の細分と説明されています。
  • 一般的な解説でも、中国のHSコードは通常8〜10桁で、最初の6桁が共通のHS、その後ろが国内サブヘディングであるとされています。

従って、中国における最終的な「条文」は、中国税関が公表する最新のCustoms Commodity Codes(CCCCS)およびその改正告示です。

韓国:10桁コード

韓国は、6桁HSを基礎に、国内で拡張した10桁のHSKコード(tariff number)を用いています。

  • 韓国税関は、HSコードの概要説明の中で、6桁は国際共通であり、各国は自国のニーズに応じて6桁以降を拡張すると説明しています。
  • 公開データセットでも、「韓国税関のHSKコードに基づく2桁・4桁・6桁・10桁の関税番号」として10桁コードを明示しています。

したがって、韓国では10桁HSKコードが実務上の最終的な「条文」として機能します。


3. 主要国別に、実務で起こりやすいこと

米国:ドラフト公開とパブリックコメント

USITCは、HS改正に整合したHTS改正のため、2028年版HTSの改正案作成プロセスを開始したと公表しています。

  • 2026年2月に予備的なドラフト改正案を公表し、パブリックコメントを募集する予定です。
  • コメント期間後、必要な修正を行い、2026年9月に最終報告書を大統領へ提出するとしています。

また、USITC FAQ等によれば、国際共通の6桁HSに対し、8桁までがHTSの法的テキストであり、その後ろの10桁までが統計用途を含む米国固有の細分となります。

企業の即応ポイント(米国)

  • 米国向けでは、6桁HSだけでなく、最終的にHTSUSの8桁・10桁レベルまで確定しないと関税・統計上の影響が判断できない。
  • 2026年2月のドラフト時点から、自社品目の候補コードを当て、論点のある品目は根拠資料(技術仕様、カタログ、判定ロジック)を前倒しで整備しておく。
  • 2027年末〜2028年初にかけて、年跨ぎ貨物や長いリードタイム案件では旧・新HTSの境界で書類不一致が起こりやすいため、切替条件を事前に整理する。

EU:WCO改正→CN→TARIC

EUは、WCOの改正勧告を受けたうえで、CN(8桁)に取り込み、さらにTARIC(9桁・10桁)で各種措置を追加する形で運用します。

  • CNは、EUの共通関税と統計のための分類であり、輸入・輸出申告、関税率決定、統計、各種規制措置の参照コードとして用いられます。
  • CNの構造上、最初の6桁がHS、7桁・8桁がEUのCNサブヘディングであることが制度文書に明記されています。

企業の即応ポイント(EU)

  • EU向けでは、WCO段階ではなく、CNの改正情報が実務上の確定点となる(関税・統計・規制すべての基礎)。
  • HS2028で6桁が動く品目は、後続でCNサブヘディング(7・8桁)の再編が起こる可能性が高く、規制・統計要件も連動して変更されうる。
  • 関税率だけでなく、輸入規制、アンチダンピング等の措置、統計報告もCNに紐づくため、部門横断で影響評価する必要がある。

日本:9桁運用とEPAのHS版

日本では、通関・統計は9桁統計品目番号で運用され、そのうち先頭6桁がHS、後ろ3桁が国内細分です。

  • 9桁統計コードは、輸出入申告と貿易統計の基礎であり、輸出用・輸入用で3桁の細分が異なる場合があります。
  • HS改正は、関税定率法等の改正を通じて、関税率表・統計品目表に反映されます。

一方、EPAでは協定ごとに採用するHS版が異なるため、原産地規則の品目別規則は協定で定めるHS版に紐づきます。
そのため、原産地証明書などEPA関連書類に記載するHSコードは、国内通関用の最新版ではなく、協定の採用HS版に合わせる運用が必要とされています。

企業の即応ポイント(日本)

  • 社内マスターは、「国内申告用の最新版HS+9桁統計コード」と「EPA別に採用しているHS版」を並行管理できる設計が必要。
  • HS2028対応は、通関だけでなく、原産地判定・証明業務の作業量を増やしやすい(複数HS版の併存)。
  • 営業や顧客向け書類(インボイス等)に記載するコードの「版」と「桁数」を、国と用途(通関・原産地・統計)ごとに定義し直す必要がある。

英国:UK Tariffでの告知

英国は、UK Integrated Tariff(UK Global Tariffを含む)として自国の関税率表を運用し、HS改正に対応した変更や相関情報を政府サイトで告知します。

企業の即応ポイント(英国)

  • 英国向けでは、UK Tariff(UK Integrated Tariff)の最新版を確認し、要求される桁数までコードを揃えて書類の整合を取る。
  • EUと見た目は似ていても、7桁以降の国内細分の設計が異なることがあるため、CNコードの単純流用は危険。

カナダ・中国・韓国:それぞれの国内公表物が最終確定点

  • カナダ:CBSAが公表するCustoms Tariffが、HSに基づく関税率表として運用され、改正時は通知・更新が行われます。
  • 中国:中国税関が公表するCCCCSは、最初の6桁がHS、7桁・8桁が中国独自の細分で構成される8桁体系であり、必要に応じて10桁まで拡張される場合もあります。
  • 韓国:韓国税関は、6桁HSを基礎に10桁HSKコードを運用しており、輸入者は韓国の10桁体系で分類する必要があります。

企業の即応ポイント(カナダ・中国・韓国)

  • 同じ6桁HSでも、7桁以降の国内細分は国ごとに別物と割り切る。
  • 取引先向けの資料は、可能な限り相手国側の桁数(カナダのCustoms Tariff、中国の8桁、韓国の10桁等)で提示できるように準備する。
  • 制度の最終確定点は、それぞれの税関・関税率表等の公表物に置き、二次情報だけで判断しない。

4. 経営として今すぐやるべき即応タスク

ここからは国別ではなく、企業側の実務タスクに落とし込みます。鍵となるのは、「二層管理」と「切替境界の事故防止」です。

即応タスクA:棚卸しと影響評価

  • 取扱品目の現行コードを、「どの国向け」「どのHS版」「何桁か(6桁・8桁・9桁・10桁など)」の観点で棚卸しする。
  • 売上上位、利益上位、関税額上位、規制該当品目など、影響の大きい品目から優先順位を付ける。
  • HS2028で6桁が動きやすい品目群(医療・ワクチン・環境関連など)を早期に特定し、技術仕様や使用用途など分類根拠情報を集約する。
  • 税率だけでなく、規制、許認可、統計単位、原産地判定(EPA)の影響も同時に洗い出す。

即応タスクB:マスターデータの二層化

  • 国際共通の6桁HSと、国別の実務桁(EUのCN8桁、日本の9桁、中国の8桁、韓国の10桁など)を分離して管理する設計に見直す。
  • マスターデータに「HS版」フィールドを持たせる(HS2022、HS2028、EPA別に採用するHS版など)。
  • 取引先に提示するコード(インボイス・仕様書・見積書など)のルールを、国別・用途別に社内標準化する。
  • 変更履歴と根拠を残し、監査対応や後日の説明に耐えられるようにしておく(特に高関税・規制品目)。

即応タスクC:書類と原産地の事故防止

  • インボイス、パッキングリスト、原産地証明書、輸出管理資料などで、どの桁のコードを載せるかを国別に定義する。
  • EPA関連書類では、協定で採用しているHS版に合わせてHSコードを記載する運用を業務手順に明記する。
  • 2027年末から2028年初にかけて、年跨ぎ貨物や長納期案件について、旧HS2022・新HS2028のどちらで申告・証明するかの境界条件を洗い出し、切替手順を事前に設計する。

即応タスクD:外部との合意形成

  • 通関業者に対し、HS2028改正時の検証プロセスや必要情報(仕様書、図面、用途など)をあらかじめ確認する。
  • サプライヤーには、製品仕様情報の提供範囲・更新頻度・フォーマット(HS版・桁数の指定等)を明確化し、契約やSLAに反映する。
  • 顧客に対しては、コード変更が輸入側の関税や規制に与える影響を説明できる体制(FAQ、ガイド文書、営業への教育)を整える。

5. 2028年までの実務ロードマップ

WCOは、HS2028の受理後から発効までの期間を、相関表整備や各国による実装準備期間と位置付けています。
USITCは、2026年2月ドラフト、2026年9月大統領報告というタイムラインを明示しており、企業側の準備スケジュール策定の基礎情報となります。

この情報を踏まえると、企業としては次のようなロードマップが現実的です。

  • 2026年:
    • 棚卸しと影響評価(即応タスクA)を実施し、優先品目を特定。
    • HS2028案の内容・WCOの相関情報を踏まえ、6桁レベルの候補付けと分類根拠資料の整備を開始。
    • 米国向けについては、2026年2月のUSITCドラフトを確認し、必要に応じてパブリックコメント提出を検討。
  • 2027年:
    • 各国の国内実装状況(HTSUS改正、CN改正、日本の9桁統計コード改正、中国・韓国の細分改正など)を確認し、国別の実務桁を確定。
    • 社内システム改修、マスターデータ二層化、UAT(ユーザー受入テスト)、取引先・通関業者との番号整合を完了させる。
  • 2028年:
    • 切替運用を開始し、誤分類や書類不一致のエラー監視を強化。
    • 税関からの差戻し・照会に即応できるよう、根拠資料と履歴管理のプロセスを稼働させる。

おわりに

HS2028は、分類表の単なるマイナーチェンジではなく、企業にとっては基盤データの大規模アップデートです。
WCOの一次情報を起点に、米国はUSITCとHTSUSプロセス、EUはCNとTARIC、日本は9桁統計コード運用とEPA版混在、そして中国・韓国・カナダなどは各国の関税率表・分類体系という現実に合わせて、二層管理と切替事故防止に投資することが、費用対効果の高い対応となります。

個別品目の最終コードを今すぐ決め切ることよりも、
「結論をブレなく・説明可能な形で出せる仕組み(根拠管理、履歴管理、HS版管理、相手国桁への変換ロジック)」を先に整えることが、2028年前後の現場混乱を最小化する近道です。

CBPが燃料ポンプと燃料レベルセンサー一体品の再分類を提案

NY 809868撤回案が示す、北米向け自動車部品の実務インパクト

公開日:2026年1月12日

何が起きたのか

米国税関・国境警備局(CBP)は、燃料タンク内に組み込むタイプの「燃料ポンプ+燃料レベルセンサー」一体品(いわゆる fuel sender)について、従来の分類を見直し、ポンプ(HTSUS 8413.30.90)として再分類する案を示しました。これに伴い、1995年の既存判断であるNY 809868を撤回する方向です。コメント期限は2026年1月31日とされています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

ポイントは、測定機器(9026)として無税だった想定が、ポンプ(8413)として課税(2.5%)になり得る、という点です。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

対象製品はどんなものか

今回の対象は、車両の燃料タンクへ直接挿入されるアセンブリで、主に次の要素を一体化したものです。

  • 燃料ポンプ側:ポンプ本体、吸込みフィルター、吐出部、リターンチューブ等
  • 燃料レベルセンサー側:フロート(浮き)とアーム機構により燃料残量を検知し、電気信号を車載メーターへ送る仕組み

この構造説明は、撤回対象となっているNY 809868でも明記されています。 (カスタムズモバイル)

なぜ分類が割れるのか:1995年判断と今回提案のロジック差

ここが実務上いちばん重要です。結論だけでなく、考え方が変わった点に注意が必要です。

1995年のNY 809868は「どちらが主か決めにくい」→最後に出てくる番号へ

NY 809868では、燃料ポンプ機能(8413)と燃料レベル測定機能(9026)の両方があるため、明確な単独品目としての規定がなく、当時は一般解釈規則(GRI)3(c)の考え方で、関税表上「後に出てくる」9026に分類した、と説明されています。 (カスタムズモバイル)

今回の提案は「複合機械だが主機能はポンプ」→8413へ

一方、今回の提案ではCBPは、当該アセンブリを複合機械と整理したうえで、主たる機能は燃料をエンジンへ送ること(ポンプ機能)であり、センサーは有用だが付随的、という立て付けで8413へ寄せています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

この差は、今後ほかの「機能一体型部品」にも波及し得ます。特に自動車部品は、センサー統合が進むほど分類論点が増えます。

ビジネス上の影響:コストだけでなく、契約と運用に波及

1) 関税コストの再計算が必要

提案どおりに確定した場合、無税想定から2.5%課税へ変わる可能性があります。量産部品では、わずかな税率差が年間で大きな金額になります。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

2) 追加関税・原産地・特恵の判定にも連鎖する

米国の追加関税、特恵、原産地規則の多くはHTS番号を前提に動きます。番号が動くと、追加関税の対象判定や、USMCA等の原産地規則の当てはめ(タリフシフト要件など)まで再点検が必要になり得ます。
1995年のNY 809868自体も、当時のNAFTAを前提に原産地要件へ言及しており、分類が原産地判定とセットで運用されやすい現実を示しています。 (カスタムズモバイル)

3) 「昔からこの番号」は通用しない

CBPは、一定の手続を踏めば過去の解釈(ルーリング)や実務上の取扱い(treatment)を変更できます。法律上、撤回・変更の案はCustoms Bulletinで公表し、利害関係者に意見提出の機会を与え、最終決定は公表後60日で発効する、と定められています。 (法律情報研究所)
つまり、長年の運用実績があっても、固定資産ではありません。

企業が今すぐやるべきこと:30日で間に合わせる実務チェックリスト

コメント期限(2026年1月31日)まで時間が限られる前提で、優先順位の高い順に並べます。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)

  1. 該当SKUの棚卸し
    Fuel sender、fuel pump module、fuel level sensor一体品など、設計的に同等のものを抽出。完成品だけでなく、アセンブリ形態で輸入しているものも対象に含める。
  2. 現在の申告HTSと根拠の確認
    過去のルーリング依拠か、社内判断か、ブローカー判断かを切り分ける。NY 809868を根拠にしている場合は特に要注意。 (カスタムズモバイル)
  3. 製品機能の説明資料を作り直す
    争点は「主機能がポンプか、測定か」です。仕様書、配線図、取説、車両側での役割、故障時の安全設計などを、主機能論が伝わる形に整理する。
  4. 影響試算と価格・契約条項の点検
    インコタームズ、関税負担条項、価格改定条項、遡及・精算条項を再確認。関税負担が買い手側か売り手側かで、打ち手が変わります。
  5. コメント提出または個別ルーリング相談の準備
    影響が大きい場合、コメント提出(技術的・実態的反証、または適用範囲の明確化要望)を検討。あわせて、自社品の仕様が少しでも異なるなら、個別の拘束力ある判断(ルーリング)で論点を閉じる戦略も現実的です。

まとめ

  • CBPは、燃料ポンプと燃料レベルセンサー一体品を、測定機器(9026)ではなくポンプ(8413)として扱う方向で見直しを提案し、NY 809868の撤回を示しています。 (Sandler, Travis & Rosenberg, P.A.)
  • 1995年は「主機能が決めにくい」整理でしたが、今回は「主機能はポンプ」で結論が変わっています。 (カスタムズモバイル)
  • ルーリングや取扱いは、法律に基づく手続で変更され得ます。コメント期間、最終公表、発効60日という時間軸を前提に、社内の棚卸しと影響評価を急ぐ局面です。 (法律情報研究所)

免責:本稿は一般情報であり、個別案件の法的助言ではありません。実際の申告・コメント提出・契約対応は、貴社の通関担当、通関業者、米国通商実務の専門家と連携して判断してください。