HS2022 第61類:衣類及び衣類附属品(メリヤス編み又はクロセ編みのものに限る。)(Articles of apparel and clothing accessories, knitted or crocheted)

用語は次のとおり統一します。類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • ニットのコート、アノラック、ウインドブレーカーなど(例:フード付きニットジャケット)
    • ニットのスーツ、ジャケット、パンツ、スカート、ワンピース
    • Tシャツ、タンクトップ等(ニット)
    • セーター、プルオーバー、カーディガン
    • 靴下、タイツ等のホージアリ、手袋(ニット)
    • マフラー、ストール等の衣類附属品(ニット)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 織物製の衣類(メリヤス編み又はクロセ編み以外):第62類へ(例:織物のシャツ、織物のコート)
    • メリヤス編物やクロセ編物の生地(服になる前の生地):第60類へ
    • ブラジャー、ガードル等(見た目がニットでも):HS 6212(第62類の該当項)へ
    • 中古衣類・古着:HS 6309(第63類)へ
    • 医療用の装具・ヘルニアバンド等:HS 9021(第90類)へ
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • そもそもメリヤス編み又はクロセ編みか(第61類)/織物か(第62類)
    • 服として製品化されたものか(部注の「製品にしたもの」の考え方)
    • 6109(Tシャツ等)か6110(セーター等)か、6105/6106(シャツ/ブラウス)かの境界(類注4・5が効く)
  • この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • セット販売(上下セット、インナーとボトム)を「1つのHS」で申告してしまう。部注により、衣類は別見出しなら原則別々に分類されます。
    • 手袋(6116)のうち、プラスチック又はゴムで「塗布・被覆・積層」されたもの(6116.10)を見落とす。HS2022で6116.10の範囲が広がっています。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1:見出し文言と部注・類注でまず決めます。第61類は「製品化されたニット衣類」に限定されるため、類注1(この類は製品にしたメリヤス編み又はクロセ編みの物品のみ)から入るのが近道です。
    • GIR6:6桁(号)の選択では、同一項内の号注や類注の条件(例:ベビーの身長、シャツの定義、タイツのデシテックス閾値)を使って詰めます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 編み構造:ニットか織物か(61類か62類か)
    • 製品化の状態:裁断・縫製済みか、形状に編み上げ済みか(部注の「製品にしたもの」)
    • 用途と機能:医療用装具か、一般衣料か(除外規定)
    • 性別・年齢:メンズ/レディース、ベビー(身長86センチ以下)
    • 生地の特殊性:樹脂で塗布・被覆・積層した生地か、該当なら6113や6116.10の検討

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象物は「衣類」または「衣類附属品」か
    • いいえ:第61類以外(例:帽子は第65類、靴は第64類など)へ
  • Step2:メリヤス編み又はクロセ編みか
    • いいえ:原則として第62類(織物製衣類)へ
  • Step3:製品化されているか(裁断・縫製済み、または形状に編み上げ済み等)
    • いいえ:生地なら第60類、用途次第で別類へ
  • Step4:該当する項を選ぶ(6101〜6117)
    • 外衣(コート等)か、上下ものか、シャツか、Tシャツか、セーターか、スポーツウエアか、ホージアリか、手袋か、その他附属品か
  • Step5:6桁(号)を詰める
    • 素材区分(綿、合繊、羊毛等)、デシテックス閾値、コーティング有無、ベビー身長など
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第61類(ニット衣類)と第62類(織物衣類)の境界
    • 第61類(衣類)と第60類(編物生地)の境界(「製品にしたもの」「形状に編み上げ」)
    • 6105/6106(シャツ・ブラウス)と6109(Tシャツ)/6110(セーター等)の境界(類注4・5)
    • 6113(59類の塗布・被覆・積層生地で作った衣類)と一般衣類(6101〜6114)の境界(類注8、ただし生地の分類が先)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
6101男子用のコート類など(ニット)、ただし6103を除くニットのアノラック、ニットの防寒上衣上下もの(6103)と混同しない
6102女子用のコート類など(ニット)、ただし6104を除くレディースのニットコート、ニットジャケット6104(女子用上下もの)と区別
6103男子用のスーツ・ジャケット・ズボン等(ニット)ニットスーツ、ニットジャケット、ニットパンツ「スーツ」「アンサンブル」の定義は類注3
6104女子用のスーツ・ワンピース・スカート等(ニット)ニットワンピ、ニットスカート、ニットパンツ「スーツ」「アンサンブル」の定義は類注3
6105男子用シャツ(ニット)ニットシャツ、ポロシャツ(条件次第)類注4により、腰下ポケットや裾絞り等があると除外。袖なしも除外
6106女子用ブラウス等(ニット)ニットブラウス、ニットシャツ類注4の除外条件(腰下ポケット、裾絞り、編目密度など)に注意
6107男子用下着・寝衣等(ニット)ブリーフ、トランクス、パジャマ下着と外衣の判定、用途実態の確認
6108女子用下着・寝衣等(ニット)ショーツ、スリップ、ナイトウエア6212(ブラ、ガードル等)に落ちやすい
6109Tシャツ等(ニット)Tシャツ、タンクトップ、ランニング類注5:裾にひも、裾ゴム等があるものは除外
6110セーター等(ニット)セーター、プルオーバー、カーディガン、ベスト6109や6105/6106との境界が頻出
6111ベビー服(ニット)ベビーロンパース、ベビー帽子等身長86センチ以下が定義。ほかの項に見えても優先される場合
6112トラックスーツ、スキー服、水着(ニット)ジャージ上下、水着、スキーウエアスキー服の定義は類注7。アンサンブル定義から除外
611359類の塗布・被覆・積層生地で作った衣類(ニット)表面PUコートのニットレインウエア等類注8:他項にも該当し得る場合、原則6113(ただし6111除く)
6114その他の衣類(ニット)レギンスの一部、特定用途の上衣など6109/6110/6105/6106に当たらない衣類の受け皿
6115ホージアリ(ニット)靴下、タイツ、ストッキング、段階着圧ソックスデシテックス閾値67、段階着圧の別建てに注意
6116手袋(ニット)手袋、ミトン6116.10(プラ・ゴムで塗布等)に注意。HS2022で範囲が拡大
6117その他の衣類附属品、部品(ニット)マフラー、スカーフ、衣類のニット部品6117.10(スカーフ等)、6117.90(部品)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の典型
    • 素材別(綿、合繊、羊毛等):多くの項で素材別の号に分かれます。混紡は部注の繊維選択ルール(主に重量比)を踏まえて判断します。
    • 形状・仕様:シャツの定義、Tシャツの除外、スキー服の定義など、類注で条件が明確化されています。
    • 数値閾値:ホージアリの「単糸当たり67デシテックス未満/以上」など
    • コーティング等:手袋6116.10、衣類6113
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組)
  1. 6105/6106(シャツ・ブラウス)と6109(Tシャツ)/6110(セーター等)
  • どこで分かれるか:
    • 6105/6106は「シャツ等としての形状」に加え、腰下ポケット、裾のリブや締め付け、編目密度(10センチ四方で1センチ当たり平均10目未満)などで除外されます。
    • 6109は裾にひも、裾リブ等があると除外されます。
  • 判断に必要な情報:
    • 裾仕様(リブ、ゴム、ドローコードの有無)、ポケット位置、前開きの有無、編目密度の測定結果、製品写真
  • 典型的な誤り:
    • フーディーやスウェット類を「Tシャツ」扱いで6109にしてしまう(裾リブやポケットで除外され得ます)。
  1. 6111(ベビー)とその他の衣類(6109等)
  • どこで分かれるか:
    • ベビーの定義は身長86センチ以下。加えて、ほかの項にも当たりそうな場合でも6111を優先するルールがあります。
  • 判断に必要な情報:
    • サイズ表示、対象年齢、商品タグ、カタログ、梱包表示
  • 典型的な誤り:
    • ベビー用ロンパースを「Tシャツ/肌着」として6109や6108で申告してしまう。
  1. 6112(トラックスーツ)と6104/6103のアンサンブル、あるいはセット販売の上下
  • どこで分かれるか:
    • アンサンブル定義は類注3にありますが、トラックスーツとスキー服は6112側で扱う前提です。
    • さらに、部注により、異なる項に属する衣類は小売用セットでも別分類が原則です。
  • 判断に必要な情報:
    • 同一生地か、同時提示か、上衣と下衣の構成、販売形態
  • 典型的な誤り:
    • 上下セットを「1つのHS」でまとめてしまう(部注14違反になり得ます)。
  1. 6116.10(プラ・ゴムで塗布等の手袋)と6116.91〜6116.99(その他素材別)
  • どこで分かれるか:
    • 6116.10は、プラスチック又はゴムで塗布・被覆・積層したもの。HS2022では「積層したもの」まで範囲が広がったことが相関表で示されています。
  • 判断に必要な情報:
    • コーティングの有無、加工方法(塗布/被覆/積層)、材料仕様書、断面写真や試験報告
  • 典型的な誤り:
    • 表面にフィルムを貼ったタイプを「積層」と認識せず、6116.93等にしてしまう。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 「製品にしたもの」の定義(部注7)が非常に重要です。長方形以外に裁断したもの、縁縫いしたもの、縫製でつなぎ合わせたもの、または特定形状に編み上げたもの等が含まれます。
    • 異なる項に属する衣類は、小売用のセットにしても各項に分類します(部注14)。
    • 追加機能(化学的・機械的・電子的要素)を持つ繊維製品でも、繊維製品としての本質的特性を保つ限り、この部に分類され得ます(部注15)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:ニットの上衣とニットのズボンを同梱で小売販売する場合でも、上衣(例:6109)とズボン(例:6104)のように項が異なれば別々に分類するのが原則です。税関の分類例でもこの考え方が示されています。
    • 例:電熱線を組み込んだ防寒インナーのような製品は、繊維製品としての性格が強い場合、この部の中で検討します(ただし、最終判断は個別仕様で変わります)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 製品化されていない編物生地は第60類へ(部注8との関係)。
    • セットと誤認して一括分類し、部注14に抵触する。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第61類は製品化されたニット衣類等のみ(類注1)。
    • 除外:6212、古着6309、医療用装具9021(類注2)。
    • スーツ、アンサンブルの定義(類注3)。
    • シャツ・ブラウスの定義と、6105/6106の除外条件(類注4)。
    • 6109(Tシャツ等)の除外条件(類注5)。
    • ベビーの定義(身長86センチ以下)と優先分類(類注6)。
    • スキー服の定義(類注7)。
    • 6113の優先(類注8、ただし6111除く)。
    • 前合わせの左右で男女物を推定し、判別不能なら女性用に分類(類注9)。
    • 金属糸でも可(類注10)。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • ベビー:身長86センチ以下
    • スキー服:外観や生地感から主にスキー用と判別できるもの(構成の型も類注で整理)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 6212(ブラ、ガードル等)
    • 6309(古着)
    • 9021(医療用装具等)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:6105/6106(シャツ等)からの除外条件が強い
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 腰下ポケットの有無、裾の締め付け(リブ、ゴム等)、編目密度(10センチ四方での測定)、袖の有無
    • 現場で集める証憑:
      • 製品写真(前・後・裾・ポケット)、仕様書、サンプル、編目密度の測定記録
    • 誤分類の典型:
      • スウェットやフーディーを「シャツ」と誤認して6105/6106にしてしまう。
  • 影響ポイント2:6109(Tシャツ等)は裾仕様で外れる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 裾にドローコードや裾リブ等があるか
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書(裾仕様の記載)、写真、サンプル
    • 誤分類の典型:
      • 裾が絞れるスポーツトップを6109にしてしまう(類注5で除外)。
  • 影響ポイント3:ベビー(6111)は年齢表示ではなく身長定義が軸
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 身長86センチ以下向けか(サイズ表、タグ)
    • 現場で集める証憑:
      • 商品タグ、サイズ表、梱包表示、販売サイトの対象年齢記載
    • 誤分類の典型:
      • 「ベビー風デザイン」だけで6111にしてしまう、または逆にベビー用品を一般衣類にしてしまう。
  • 影響ポイント4:6116.10(手袋の塗布等)はHS2022で範囲が拡大
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 塗布・被覆に加え、積層があるか
    • 現場で集める証憑:
      • コーティング仕様、材料表、断面構造が分かる資料
    • 誤分類の典型:
      • 「積層」タイプを見落として素材別の6116.93等にしてしまう。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:ニット衣類を第62類(織物衣類)で申告
    • なぜ起きる:取引書類の品名が「シャツ」「ジャケット」だけで、編み構造が確認されない
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):第61類はニット、第62類はニット以外という章立て自体がヒントです。
    • 予防策:素材混用率だけでなく、生地種別(ニット/織物)を仕様書に必須項目として入れる
  2. 間違い:セット販売を「1つのHS」でまとめる
    • なぜ起きる:ECやアパレルでは上下セットを1商品として管理するため
    • 正しい考え方:部注14により、異なる項に属する衣類は小売用セットでも各項に分類します。分類例でも示されています。
    • 予防策:インボイス品名と品目明細を上下で分け、HSも分ける。セット構成表(上衣・下衣の品番)を添付できるようにする
  3. 間違い:フーディーやスウェットを6109(Tシャツ)に入れる
    • なぜ起きる:見た目が「上衣」で、社内でTシャツ扱いになる
    • 正しい考え方:6109は裾の絞り等があるものを除外します。該当すれば6110や6114側を検討します。
    • 予防策:裾仕様、ポケット位置、裏起毛の有無、前開きの有無をチェック項目化
  4. 間違い:ニットシャツを6105/6106にしたが、腰下ポケットや裾絞りがある
    • なぜ起きる:品名が「シャツ」なので短絡的に決める
    • 正しい考え方:類注4で6105/6106から除外される条件が明記されています。
    • 予防策:シャツ類は類注4の除外条件をチェックリスト化し、写真で証跡保存
  5. 間違い:ベビー服を一般衣類にしてしまう(または逆)
    • なぜ起きる:対象年齢の表現が曖昧、サイズ表がない
    • 正しい考え方:6111は身長86センチ以下が軸で、他項にも見える場合でも優先される場面があります。
    • 予防策:サイズ表、タグ画像、販売ページの対象情報を保管
  6. 間違い:ブラやガードルを第61類に入れる
    • なぜ起きる:製品がニットに見えるため
    • 正しい考え方:類注2で6212を除外。日本の解説でも、ブラやガードル等は別扱いと整理されています。
    • 予防策:下着は「補整機能の有無」「ブラ形状」など、6212該当性を先に確認
  7. 間違い:手袋のコーティング有無を見落とし、6116.10にできない
    • なぜ起きる:素材表示が「ポリエステル手袋」としか書かれない
    • 正しい考え方:6116.10は塗布・被覆・積層したもの。HS2022では積層も含む旨が相関表で示されています。
    • 予防策:手袋は表面加工の工程情報(ディップ、ラミネート等)をサプライヤーに質問し、回答を保存

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。衣類は材料(糸、生地)と最終品の関係がPSRで問われることが多く、HSがずれると非原産材料の扱いから崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 最終品は第61類でも、材料(生地)は第60類、糸は第50〜55類など。工程やBOMを材料段階まで分解して確認しないと、PSRの読み違いが起きます。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定が参照するHS版(HS2012参照、HS2017参照など)は協定ごとに異なります。HS2022で社内コードを付けていても、PSRは旧版ベースのまま、ということがあります。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • WCOが公開する相関表は実装のためのガイドとして提示されています(法的地位はなく、最終分類決定ではない点に注意)。
    • 実務では、協定の参照HS版のPSRを起点に、相関表で現行コードへ引き直し、最後に現物の分類根拠(注や解説)で整合させる順が安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 取引先からの材料証明、工程フロー、仕様書、原産地証明関連の記録を、協定要件に沿って保管できる体制を作るのが基本です。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022範囲変更6116.10手袋(ニット)の6116.10について、プラスチック又はゴムで「積層した」タイプも含むよう、範囲拡大の扱いが示されています。コーティング手袋の設計・調達仕様に「積層」工程があるとHSが変わり得るため、仕様書確認がより重要
HS2017→HS2022文言修正第61類注4(英語)表記修正(スペル修正)のような編集上の修正が行われています。分類実務の結論は通常変わりませんが、社内マニュアル引用箇所の更新が必要になる場合

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 6116.10については、HS2022の条文上、6116.10が「プラスチック又はゴムで塗布・被覆・積層したもの」を含む表現になっている一方、HS2017では同箇所が「塗布・被覆」中心の表現です。
  • また、WCOの相関表(Table I)で、6116.10の範囲を「積層」を含む形へ拡大する趣旨の説明が示されています。
  • 以上より、コード自体は同じ6116.10でも、HS2022では対象範囲が明確に広がった点が実務上の差分です。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第61類は、衣類の大枠(6101〜6117)が長期的に維持されている一方で、版によって素材別の切り方や文言が見直されることがあります。参考として、入手できた一次資料から確認できる範囲を整理します。

版の比較主な動き(確認できた範囲)旧コード→新コードの方向性根拠
HS2017→HS20226116.10の範囲拡大(積層の明確化)6116.10は維持(範囲のみ拡大)WCO相関表 Table I、HS2017/2022条文
HS2002→HS2017以降(参考)2002版では6101に羊毛区分が存在するなど、版間で素材別の枝番構成が異なる例が見られます実務では当該版の条文に基づき再確認が必要WCO旧版条文(参考)

注記:HS2007およびHS2012の第61類の詳細な追加・削除の全量把握は、本稿で示した一次資料以外(WCO相関表 2007-2012、2012-2017 等)での照合が必要です。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):上下セットを一括申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):部注14により、異なる項に属する衣類はセットでも別分類が原則
    • 起きやすい状況:EC向けセットアップ、ルームウエア上下
    • 典型的な影響:修正申告、通関遅延、説明資料の追加提出
    • 予防策:インボイス明細を上下で分け、写真と仕様書を添付
  • 事例名:ベビー服を一般衣類で申告
    • 誤りの内容:類注6(身長86センチ以下、優先分類)を見落とし
    • 起きやすい状況:サイズ表がなく、商品名だけで判断
    • 典型的な影響:修正申告、追加資料要求
    • 予防策:タグ画像、サイズ表、対象年齢情報を保存
  • 事例名:ブラジャーを第61類で申告
    • 誤りの内容:類注2で6212が除外である点を見落とし
    • 起きやすい状況:スポーツブラ、補整下着で素材がニット
    • 典型的な影響:再分類、課税のやり直し
    • 予防策:下着類は「6212該当性」を先に判定する社内ルールを作る
  • 事例名:コーティング手袋の6116.10を見落とし
    • 誤りの内容:6116.10(塗布・被覆・積層)を見落とし
    • 起きやすい状況:滑り止め加工、薄膜ラミネート
    • 典型的な影響:修正申告、説明要求
    • 予防策:手袋は加工方法をサプライヤーに必ず確認し、工程回答を保存

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

日本前提で、第61類に関連して実務上よく問題になりやすい「規制・表示」を整理します(該当があるものだけ)。

  • 検疫・衛生(SPS等):
    • 衣類そのものは食品等のSPS対象になりにくい一方、乳幼児向けや肌着等では化学物質(例:ホルムアルデヒド)の規制・運用通知が実務上重要になります。
  • その他の許認可・届出:
    • 家庭用品品質表示法に基づく繊維製品の品質表示(組成、取扱い表示など)は、流通・販売段階で必須事項になり得ます。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 消費者庁の繊維製品品質表示規程およびガイド
    • 厚生労働省の家庭用品中の有害物質規制に関する通知等
  • 実務での準備物(一般論):
    • 表示ラベル案(組成、取扱い、表示者情報)、試験報告書(必要な場合)、仕様書・材質証明

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 生地種別(ニット/織物)、組成(重量比)、加工(塗布・被覆・積層の有無)、用途、対象性別、対象年齢・身長
    • 写真(前後、裾、ポケット、タグ)、仕様書、サンプル
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注2の除外(6212、6309、9021)を必ず確認
    • 6105/6106は類注4の除外条件チェック
    • 6109は類注5の除外条件チェック
    • 6111は類注6(身長86センチ以下)チェック
    • 6116は6116.10(塗布・被覆・積層)チェック
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • セット販売でも部注14で分ける必要がないか
    • インボイスに「knitted」「crocheted」を含めるなど、誤解されにくい品名にする
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 最終品HSだけでなく、糸・生地のHSも揃える
    • 相関表で参照HS版のズレを吸収
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 繊維製品の品質表示(組成、取扱い等)
    • 乳幼児向け等でホルムアルデヒド規制の対象になり得るか

12. 参考資料(出典)

  • WCO
    • HS2022 Chapter 61 条文(見出し・類注、6116.10等) 参照日:2026-02-24
    • HS2017 Chapter 61 条文(比較用) 参照日:2026-02-24
    • Correlation Tables HS 2017–2022(ガイドであり法的地位なし、という位置づけ) 参照日:2026-02-24
    • Table I(HS2022版とHS2017版の相関、6116.10範囲拡大の説明) 参照日:2026-02-24
    • HS旧版条文(参考:2002版Chapter 61) 参照日:2026-02-24
  • 日本税関・公的機関
    • 税関関税率表 第61類(解説、類注の日本語整理) 参照日:2026-02-24
    • 税関 分類例(61類) 参照日:2026-02-24
    • 税関 輸入統計品目表(61類) 参照日:2026-02-24
    • 税関 事前教示回答事例(品目分類関係) 参照日:2026-02-24
  • 規制・表示
    • 消費者庁 繊維製品品質表示規程 参照日:2026-02-24
    • 消費者庁 繊維製品の表示について(ガイド) 参照日:2026-02-24
    • 消費者庁 繊維製品品質表示規程の改正について(洗濯表示等) 参照日:2026-02-24
    • 厚生労働省 家庭用品中の有害物質等に関する通知・資料(ホルムアルデヒド等) 参照日:2026-02-24

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第60類:メリヤス編物及びクロセ編物(Knitted or crocheted fabrics)

用語の対応は次で統一します。
類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

【入力(ユーザーが与える情報)】

  • 対象:HS2022 第60類(Chapter 60)
  • 類名:メリヤス編物及びクロセ編物(英語:Knitted or crocheted fabrics)
  • 対象国・実務前提:日本/両方(輸入・輸出)
  • 主な想定品目・用途(任意):アパレル用編地(ジャージー、リブ等)、ストレッチ編地、たて編地(トリコット、ラッセル)、パイル編地(タオル調)、ネット地(蚊帳等)
  • 参照するFTA/EPA(任意):未指定(一般論として記載)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 反物(ロール)状の編地全般(メリヤス編物、クロセ編物)
    • パイル編物(ロングパイル、テリーなど)
    • ストレッチ性の高い編地(弾性糸やゴム糸を一定割合含むもの)
    • たてメリヤス編物(トリコット、ラッセル等のたて編に属するもの)
    • 幅30センチメートル以下の細幅編地(条件に応じて60.02または60.03)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • クロセ編みのレース:第58.04項へ
    • メリヤス編み又はクロセ編みのラベル、バッジ等:第58.07項へ
    • プラスチックやゴムなどで「染み込ませ、塗布、被覆、積層」した編地で第59類に該当するもの:第59類へ(ただしパイル編物は例外で第60.01項に残る場合あり)
    • 製品にしたもの(縫製済み、裁断形状が製品として完成している等):第61類〜第63類へ行きやすい
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 反物の編地か、製品にしたものか(部注7の「製品にしたもの」判定)
    • 被覆・積層等により第59類(場合により第39類)へ移るかどうか、ただしパイル編物の例外を見落とさない
    • 幅30センチメートルの境界と、弾性糸・ゴム糸の重量割合5%の境界
  • この類で特に誤分類が高コストになりやすい場面:
    • ストレッチ編地(60.04と60.06の分かれ目、弾性糸割合の裏付け不足)
    • コーティングやラミネートを伴う機能性編地(60類なのか59類なのか、または39類なのか)
    • 特定の蚊帳用ネット等(6005.35号注に該当するかどうか)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIRは、まずGIR1(項の文言と注で決める)と、最後にGIR6(6桁の決定)です。編地は、品名だけでなく、注(除外や定義)と、幅・構造・加工の客観条件で決まる場面が多いです。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(この類で特に重要):
    • 形状・状態:反物か、裁断済みで製品形状か
    • 編みの種類:たて編か、それ以外か(60.05と60.06の分岐)
    • 物理条件:幅(30センチメートル以下か超か)、弾性糸・ゴム糸の重量割合(5%以上か未満か)
    • 加工:被覆・積層等により第59類の「加工布」に該当するか

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象は「編地」か(メリヤス編物・クロセ編物)
    • いわゆるステッチボンディングで、チェーンステッチが繊維糸のものも、編みとして扱う点に注意します。
  • Step2:「製品にしたもの」か(反物ではなく、製品形状に整っているか)
    • 部注7の「製品にしたもの」に当たる場合、原則として第50類〜第60類(布地の章)から外れ、衣類やその他製品の章(第61類〜第63類)で検討します。
  • Step3:除外規定に当たらないか
    • クロセ編みのレースは第58.04項、編みのラベル等は第58.07項へ移ります。
  • Step4:被覆・積層などで第59類(または第39類等)の「加工布」になっていないか
    • 第60類は、第59類に該当する「染み込ませ、塗布、被覆、積層」した編地を除外します。
    • ただし、パイル編物は例外として第60.01項に残る場合があります。
  • Step5:第60.01項(パイル編物)に当たるか
    • パイル、ロングパイル、テリー等なら、まず60.01を疑います。
  • Step6:幅30センチメートル以下か
    • 幅30センチメートル以下で、弾性糸又はゴム糸が全重量の5%以上なら60.02、5%未満または含まないなら60.03(ただし60.01除く)。
  • Step7:幅30センチメートル超で、弾性糸又はゴム糸が全重量の5%以上か
    • 該当すれば60.04(ただし60.01除く)。
  • Step8:たてメリヤス編物か
    • たて編なら60.05、それ以外は60.06。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第58類(レース・ラベル等)と第60類(一般の編地)
    • 第59類(加工布)と第60類(編地)
    • 第61類〜第63類(製品)と第60類(反物)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
6001パイル編物(ロングパイル、テリー等を含む)タオル調のテリー編地、ボア調編地、ベロア調パイル編地被覆・積層していてもパイル編物は60.01に残る例外に注意。人造毛皮やパイル織物等は別章・別項の可能性。
6002幅30cm以下で弾性糸又はゴム糸が重量5%以上(60.01除く)細幅のストレッチテープ状編地、ゴム入り細幅ニット幅と5%が決め手。弾性糸の定義は部注13。
6003幅30cm以下(60.01、60.02除く)細幅ニットテープ、細幅リブ編地幅30cm以下で、弾性糸・ゴム糸が5%未満または無し。
6004幅30cm超で弾性糸又はゴム糸が重量5%以上(60.01除く)ストレッチジャージー、スパンデックス混の編地幅30cm超かつ5%以上。弾性糸かゴム糸かで6桁が分岐。
6005たてメリヤス編物(ガルーン機含む、60.01〜60.04除く)トリコット、ラッセル、たて編ネットたて編かどうかが核心。特定の蚊帳用ネットは6005.35で別扱い。
6006その他の編地ジャージー、リブ、インターロック等(一般のよこ編)、クロセ編地60.01〜60.05に当たらない編地。素材別、染色状態等で6桁以下が分かれる。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 6002.40 と 6002.90:弾性糸は5%以上だがゴム糸を含まないか、それ以外か
    • 6004.10 と 6004.90:弾性糸は5%以上だがゴム糸を含まないか、それ以外か
    • 6005.35:号注で定義された特定仕様のネット編地かどうか(材質、目合い、目付、処理)
    • 6006.2系、6006.3系、6006.4系など:綿か合繊か再生繊維か等の素材区分と、未晒・染色・なせん等の状態
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    • 6004.10 と 6004.90
      • どこで分かれるか:ゴム糸を含むかどうか
      • 判断に必要な情報:糸構成(弾性糸の種類、ゴム糸の有無)、各糸の重量割合
      • 典型的な誤り:スパンデックス混を「ゴム糸」と誤認し、逆の枝番へ寄せる
    • 6005.35 と 6005.36〜6005.39
      • どこで分かれるか:号注が定めるネット編地(特定材質、目付、目合い、かつ特定の処理)に一致するか
      • 判断に必要な情報:ポリエチレン単繊維か、ポリエステルマルチフィラメントか。目付(g/m2)、目合い(穴数/cm2)、含浸・塗布の有無と処理剤の種類
      • 典型的な誤り:ネット地というだけで6005.35と早合点し、目付・目合い・処理要件の確認が抜ける
    • 6005 と 6006(6桁以前の分岐だが実務上の誤りが多い)
      • どこで分かれるか:たてメリヤス編か、それ以外か
      • 判断に必要な情報:製法(機械種、組織説明)、生地の技術資料
      • 典型的な誤り:取引上の呼称だけで「トリコット」と書かれているため、実際はよこ編なのに60.05へ寄せる

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注7は「製品にしたもの」の定義を置き、裁断形状や縁処理、縫製などで布地から製品側へ移るトリガーになります。
    • 部注8は、第50類〜第60類が基本的に「製品にしたもの」を含まないことを明確にします。
    • 部注13は弾性糸の定義を置き、60.02と60.04の5%判定の前提になります。
    • 部注15は、機能付与のために化学・機械・電子部品を組み込んだ繊維製品でも、基本は繊維としての本質的特性を保つ限り第11部で分類する趣旨を示しています(ただし部注1の除外などに注意)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 反物のストレッチ生地は第60類で検討しますが、裁断して衣類部品の形状に整え、縁処理や縫製等が入ると「製品にしたもの」と評価され、第61類〜第63類へ移り得ます。
    • 5%判定は、見た目の伸び感ではなく、弾性糸・ゴム糸の重量割合という定量条件に寄るため、仕様書や試験データが重要です。
  • この部注で他章に飛ぶ代表パターン:
    • 「製品にしたもの」判定で第61類〜第63類へ(衣類、その他繊維製品)
    • 被覆・積層等の加工内容により第59類、場合により第39類へ

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1で、クロセ編みレース(58.04)と、ラベル等(58.07)と、第59類の加工編地を除外します。
    • 類注1には例外があり、パイル編物で被覆・積層等があっても60.01に残る扱いがあります。
    • 類注3で、ステッチボンディング方式の一定のものを「メリヤス編み」として扱うことを明示します。
    • 号注1で、6005.35の対象となるネット編地を仕様で定義します。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 弾性糸は部注13の定義に依拠します(一定の伸長と回復性を持つ合成フィラメント等)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 58.04(クロセ編みのレース)、58.07(ラベル等)、59類(加工編地)

4. 類注が分類に与える影響(どこでコードが変わるか)

  • 影響ポイント1:被覆・積層などで第59類へ移るか、60.01に残るか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 被覆・積層の材料(プラスチック、ゴム、樹脂等)と、その見え方、層構造
      • 基布がパイル編物かどうか(例外適用の可否)
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書(コーティング材、塗布量)、断面写真、工程図、サンプル
      • 取引先の技術データシート
    • 誤分類の典型:
      • コーティングがあるのに60類のまま申告
      • パイル編物の例外(60.01)を見落として59類へ寄せる
  • 影響ポイント2:製品にしたもの判定で第61類〜第63類へ移る
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 裁断形状(製品形状か)、縁処理の有無、縫製の有無、セットで販売される実態
    • 現場で集める証憑:
      • 製品写真(全体と端部)、パターン図、工程表、梱包形態、取扱説明書
    • 誤分類の典型:
      • 「まだ布だから」と考えて60類で申告したが、実態は裁断済み・縁処理済みで「製品にしたもの」と評価される
  • 影響ポイント3:幅30センチメートルと弾性糸・ゴム糸5%で60.02/60.03/60.04が分かれる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 反物幅(実測値)、弾性糸・ゴム糸の重量割合(BOM、試験結果)
    • 現場で集める証憑:
      • 成分表、糸構成表、試験成績(必要に応じて)、製品仕様書
    • 誤分類の典型:
      • 伸びるから60.04と決め打ちし、弾性糸割合5%未満で実は60.06相当だった

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:コーティング編地を第60類のまま申告する
    • なぜ起きる:外観が編地なので、加工の法的意味を見落とす
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):第60類は第59類に属する加工編地を除外。第59類側にはプラスチック被覆等の判断枠がある
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞く質問例):
      • 確認資料:コーティング材の種類、断面構造、加工後の外観(肉眼で判別できるか等)
      • 質問例:樹脂コーティングはあるか、両面か、厚みや塗布量はどれくらいか
  2. 間違い:パイル編物の被覆・積層品を第59類へ入れてしまう
    • なぜ起きる:「加工したら59類」という理解が先行する
    • 正しい考え方:第60類注で、パイル編物は被覆等があっても60.01に残る扱いがある
    • 予防策:
      • 確認資料:パイル構造の有無(表面形状、組織説明)、加工内容の技術資料
      • 質問例:基布はループパイルかカットパイルか、テリーか
  3. 間違い:クロセ編地をレース(58.04)と区別せず第60類へ入れる
    • なぜ起きる:取引名が「レース生地」で統一されていない
    • 正しい考え方:類注でクロセ編みのレースは58.04へ除外
    • 予防策:
      • 確認資料:サンプル写真(密な部分の編目がどうなっているか)、用途(装飾用レースか一般布か)
      • 質問例:製造方法としてレースか、一般のクロセ編地か
  4. 間違い:ラベル・バッジ等の編物を第60類の編地扱いにする
    • なぜ起きる:素材が編物であることだけを見てしまう
    • 正しい考え方:類注で58.07へ除外
    • 予防策:
      • 確認資料:用途(ラベルか、布地か)、製品形状(表示部が完成しているか)
      • 質問例:衣類付属の表示ラベルとして使う設計か
  5. 間違い:幅30センチメートルと弾性糸5%の条件を確認せず60.06にまとめる
    • なぜ起きる:ストレッチ性を感覚で判断し、定量条件を取りに行かない
    • 正しい考え方:60.02と60.04は幅と重量割合で定義される
    • 予防策:
      • 確認資料:反物幅の実測、BOM、糸構成と重量割合
      • 質問例:弾性糸(部注13に該当する糸)は何%か、ゴム糸は入っているか
  6. 間違い:たて編とよこ編の区別が曖昧で、60.05と60.06を取り違える
    • なぜ起きる:「トリコット」「ラッセル」などの呼称が混在し、実態確認が不足する
    • 正しい考え方:60.05はたてメリヤス編物、60.06はそれ以外
    • 予防策:
      • 確認資料:製法(機械種、組織説明)、供給者の技術資料
      • 質問例:使用機械はたて編機か、ガルーン機か
  7. 間違い:裁断済みのパネルや形状部品を「布地」として第60類で申告する
    • なぜ起きる:縫製前だから布地だと考える
    • 正しい考え方:部注7の「製品にしたもの」に当たると、布地章から外れる
    • 予防策:
      • 確認資料:裁断形状、端部処理、セット内容、取引上の品名と用途
      • 質問例:すでに製品形状に裁断しているか、縁かがりや縫製があるか

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。最終製品のHSを誤ると、適用すべきPSR自体が変わり、原産性判断が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料(糸、他の繊維材料)のHSと、最終の編地(第60類)のHSを混同する
    • 「加工布」になって第59類へ移っているのに、第60類のままPSRを見てしまう

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定は、HS2012やHS2017など特定のHS版を参照していることがあります。運用上は、協定本文・附属書の参照版と、自社が使っているHS版(ここではHS2022)を突き合わせる必要があります。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 旧版の号が新版で新設・分割・統合されている場合、相関表で対応関係を確認し、PSRの適用対象がズレないように管理します。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(一般論):
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国
    • 非原産材料のHS、RVC計算の前提、加工工程の裏付け資料
  • 証明書類・保存要件は協定・国により異なります。重要案件は社内で根拠資料を先に固め、必要に応じて税関等の公的窓口や専門家に確認する運用が安全です。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(本章の6桁範囲で大きな改廃の掲載なし)6001〜6006相関表上、60類の改廃・範囲変更の記載が確認できないHS6桁レベルの付番は基本継続。ただし国内コードの細分や税率、統計運用は別途最新確認が必要

7-2. 違うことになった根拠(必須)

  • 根拠資料として、WCOのHS2017↔HS2022相関表(Table I)を確認しました。Table Iは変更が生じたサブヘディングを中心に相関を示す資料であり、ここに第60類(6001〜6006)に関する改廃・範囲変更が掲示されていないことから、HS2017→HS2022では本章の6桁体系に大きな変更がないと整理しました。
  • 併せて、HS2017版とHS2022版のChapter 60本文(見出しと号)を見比べ、6005.35を含む構造が維持されていることを確認しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第60類は、HS2007およびHS2012では、60.05(合成繊維製)の枝番が6005.31〜6005.34でしたが、HS2017で「特定の蚊帳用ネット等」を識別するための6005.35が挿入され、従来の枝番が6005.36〜6005.39へ整理された経緯があります。

版間の流れ主要な追加・削除・再編旧コード→新コード(概略)実務ポイント
HS2007→HS2012大きな構造変更の確認なし(少なくとも章の主要見出しは同型)6001〜6006の枠組みは維持章レベルは安定。実務は注と見出し条件で決まる
HS2012→HS20176005.35の新設、6005.31〜6005.34の再整理6005.31〜6005.34(旧)→6005.36〜6005.39(新)へ並び替え、6005.35を新設蚊帳用ネット等の特定品が別管理。既存品のコード番号がずれるため、マスターの更新が必須
HS2017→HS2022本章で大きな改廃の掲載なし6001〜6006の枠組み維持HS6桁は継続。ただし国内細分や運用は国別に要確認

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:コーティング編地を60類で申告し差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第60類注の除外(第59類に該当する加工編地)を見落とし
    • 起きやすい状況:商品名が「防水ニット生地」で、加工内容がインボイスに書かれていない
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延
    • 予防策:加工の有無・種類を事前に仕様書で確認、断面写真を用意、必要に応じて事前教示を検討
  • 事例名:パイル編物の例外を見落として59類へ誤分類
    • 誤りの内容:パイル編物の被覆品が60.01に残る扱いを見落とし
    • 起きやすい状況:タオル調の編地に樹脂含浸があるだけで「加工布」と判断
    • 典型的な影響:税番差による税率差、分類根拠の再提出
    • 予防策:基布がパイルかどうかを先に確定し、例外適用の可否を確認
  • 事例名:クロセ編みのレースを60類で申告
    • 誤りの内容:第58.04項への除外に抵触
    • 起きやすい状況:「レース生地」という商流名称で一括され、構造確認がされない
    • 典型的な影響:差戻し、品目説明要求、再分類
    • 予防策:用途と構造(レースか一般編地か)を資料化し、サンプル写真を添付
  • 事例名:裁断済みパネルを反物として60類で申告
    • 誤りの内容:部注7の「製品にしたもの」判定を見落とし
    • 起きやすい状況:縫製前の衣類パーツを「布」と表記して輸入
    • 典型的な影響:分類変更、要追加資料、遅延
    • 予防策:裁断形状、端処理の有無、用途を事前に整理し、必要なら事前教示を活用

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、第60類の「編地」そのものが一律に許可制・検疫対象になるケースは多くありません。一方で、次のように個別事情で他法令や規制確認が必要になることがあります。
    • 検疫・衛生(SPS等):用途が医療・衛生材料に近い場合や、薬事的な表示を伴う場合は別途確認が必要
    • 化学物質・薬剤処理:防虫・抗菌などの薬剤処理を伴う場合、化学物質関連の法規や表示・管理の論点が出ることがある
    • その他:最終用途(安全具、保護具等)により別法令の適用があり得る
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 税関の「輸入関係他法令」情報、所管官庁の公式案内、必要に応じて事前教示窓口
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書、成分表、加工内容(コーティング・薬剤処理の有無)、用途説明、写真・サンプル

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 編地か製品か(反物、裁断品、縫製の有無)
    • 幅、目付、目合い(ネットの場合)、素材、糸構成、弾性糸・ゴム糸の割合
    • 被覆・積層・含浸などの加工有無と材料
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 58.04(レース)、58.07(ラベル)、59類(加工布)への除外に当たらないか
    • 6005.35号注に該当する特殊ネットか(該当するなら要件を証拠で固める)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名は「knitted fabric」だけでなく、幅、素材、加工(coated等)、用途が伝わる記載にする
    • 税関説明資料として、仕様書、写真、工程図、必要なら試験成績を添付できる状態にする
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 最終製品HS、材料HS、工程の整理、相関表によるHS版ズレの吸収
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 加工内容(薬剤処理等)と用途を軸に、輸入関係他法令・所管官庁情報を確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO
    • HS Nomenclature 2022 edition Chapter 60(見出し・号、注、6005.35号注) 参照日:2026-02-24
    • HS Nomenclature 2017 edition Chapter 60(6005.35新設後の構造確認) 参照日:2026-02-24
    • HS Nomenclature 2012 edition Chapter 60(6005.35新設前の構造確認) 参照日:2026-02-24
    • HS Nomenclature 2007 edition Chapter 60(長期の枠組み確認) 参照日:2026-02-24
    • Correlation Table HS2017↔HS2022 Table I(変更有無確認の根拠) 参照日:2026-02-24
    • Correlation tablesの説明(Table Iが変更点を扱う趣旨) 参照日:2026-02-24
  • 日本の税関・公的機関
    • 実行関税率表(2022年1月1日版) 第60類 類注(60r.pdf) 参照日:2026-02-24
    • 関税率表解説 第60類(実務解釈) 参照日:2026-02-24
    • 第11部 部注(F11b.pdf:製品にしたもの、弾性糸定義など) 参照日:2026-02-24
    • 実行関税率表 第59類 類注(加工布の判断枠、60.02〜60.06の位置づけ) 参照日:2026-02-24
    • 関税率表(輸入統計品目表)の解釈に関する通則(GIR) 参照日:2026-02-24
    • 品目分類とHS(分類の位置づけ、原産地規則等との関係) 参照日:2026-02-24
    • 関税率表解説・分類例規(情報の所在) 参照日:2026-02-24
    • 事前教示回答(品目分類)の検索(制度活用) 参照日:2026-02-24
    • HS2017↔HS2012相関(6005.35新設の説明を含む) 参照日:2026-02-24

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第59類:染み込ませ、塗布し、被覆し又は積層した紡織用繊維の織物類及び工業用の紡織用繊維製品(Impregnated, coated, covered or laminated textile fabrics; textile articles of a kind suitable for industrial use)

用語の統一(本文では次の呼び方で統一します)

  • 類 = Chapter
  • 項 = Heading(4桁)
  • 号 = Subheading(6桁)
  • 部 = Section
  • 注 = Notes(部注・類注)

対象国・実務前提:日本/輸入・輸出(両方)
主な想定品目:PVCやPUのコーティング生地、ゴム引き布、床材(繊維基材付き)、壁面被覆材、工業用フィルター材、搬送用ベルトなど

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • PVCコーティングのテント地・ターポリン用基布など(5903.10の典型)
    • PUコーティング生地(レインウェア用の表地などで、塗布が肉眼で分かれるタイプ)(5903.20の典型)
    • タイヤ補強用のタイヤコードファブリック(高強力糸の所定構造)(5902)
    • 繊維基材に被覆層を設けた床材(リノリウム、その他の床面被覆材)(5904)
    • ロール状で幅45cm以上の繊維表面の壁面被覆材(5905)
    • 産業用途が明確なフィルター材・ふるい用の布など(注8に列挙される技術用繊維製品)(5911)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 染み込み・塗布・被覆が肉眼で判別できない織物(色の変化だけは判定材料にしない):通常、基材の織物として第50類〜第55類、第58類、第60類へ
    • 紡織用繊維の織物がプラスチック中に完全に埋め込まれているもの、又は両面全てがプラスチックで被覆されているもの:第39類へ
    • 15度から30度で直径7mmの円筒に巻き付けるとき裂が生ずるような硬質のプラスチック系複合:通常、第39類へ
    • 多泡性プラスチックの板・シート等に織物を貼り合わせたが、織物は補強目的にとどまるもの:第39類へ
    • セルラーラバー(多泡性ゴム)の板・シート等に織物を貼り合わせ、織物が補強目的にとどまるもの:第40類へ
    • 研磨材の粒を織物に付着させた研磨布:第68.05項へ(注6の除外)
    • 伝動用・コンベヤ用ベルトでゴムを染み込ませた織物から製造したもの、又はゴム加工糸・コードから製造したもの:第40.10項へ(注7の除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 被覆材が何か(プラスチックか、ゴムか、それ以外か)と、肉眼で被覆が判別できるか
    • 繊維基材が主役か、単なる補強か(補強なら第39類・第40類に飛びやすい)
    • 5911は残余規定で、注8に列挙された技術用に限り、かつ部の他の項に属さないことが条件
  • この類で特に誤分類が高コストになりやすい場面:
    • 5903(繊維のプラコート生地)と第39類(プラスチックのシート等)の境界を誤るケース(素材の支配性の見誤り)
    • 5910(繊維製ベルト)と4010(ゴム製ベルト)を取り違えるケース(注7の見落とし)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • 第59類は、見出しの文言に加えて、類注(第59類注)で範囲が強く定義されています。実務ではGIR1(見出しと注の文言)でまず外枠を決め、最後にGIR6で号(6桁)を確定するのが王道です。
  • 品名だけで決めないための観点は次のとおりです。
    • 基材が何の織物か(第50類〜第55類、第58.03項、第58.06項、第58.08項、第60.02項〜第60.06項に限るという定義あり)
    • 被覆材の種類(プラスチック、ゴム、金属蒸着など)
    • 被覆の見え方(肉眼で判別できるか、色変化だけか)
    • 物性条件(7mm円筒に巻けるか、重量、繊維比率、厚さ)
    • 形状と用途(壁紙、床材、ベルト、工業用フィルターなど)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:まず基材が何かを確定
    • 第59類でいう「紡織用繊維の織物類」は限定定義です。基材が不織布(第56類)などの場合、5903や5906ではなく、別の類の見出しから検討するのが基本です。
  • Step2:用途と形状で先に決まる項がないか確認
    • タイヤコードファブリック(5902)
    • 床面被覆材(5904)
    • ロール状の壁面被覆材(5905)
    • 繊維製の心、ガスマントル(5908)
    • 繊維製ホース(5909)
    • 伝動用・コンベヤ用ベルト(5910。ただし注7の除外に注意)
    • 技術用繊維製品(5911。ただし注8の限定に注意)
  • Step3:コーティング・含浸の種類で5903・5906・5907を振り分け
    • プラスチック系なら5903を検討。ただし類注2の除外(肉眼判別不可、7mm円筒で亀裂、完全埋込や両面被覆、補強目的の貼合せ等)に該当すると第39類や基材の類に移ります。
    • ゴム系なら5906を検討。ただし類注5の重量・繊維比率条件、セルラーラバー貼合せ除外に注意します。
    • それ以外の処理(例:アルミ蒸着など)なら5907を検討。ただし類注6の除外(図案を描いた織物等)に注意します。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第59類5903と第39類(織物が埋め込まれている、又は補強目的にとどまる等)
    • 第59類5906と第40類(セルラーラバー貼合せ、重量と繊維比率)
    • 第5905(繊維表面の壁紙)と第48.14項(紙へのフロック付着)や第5907(繊維へのフロック付着など)
    • 第5910(繊維製ベルト)と第4010(ゴム系ベルト)、第5911(厚さ3mm未満のベルチング等)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第59類は項の数が多くないため、実務で重要な全項(5901〜5911)を列挙します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5901ゴム又はでん粉質で塗布した織物、トレーシングクロス、画用カンバス、バックラム等製本用クロス、トレーシングクロス、画用キャンバス、帽子芯地用バックラムプラスチックを塗布した類似品は5903へ寄りやすい
5902タイヤコードファブリック(高強力糸)タイヤ補強用基布たて糸がナイロン等、ポリエステル、ビスコースレーヨンの高強力糸。定義は第11部注6参照
5903プラスチックを染み込ませ等した織物(5902除く)PVCコート生地、PUコート生地、イミテーションレザー基材類注2の除外(肉眼判別不可、7mm円筒、完全埋込・両面被覆、補強目的貼合せ等)で第39類や基材へ
5904繊維基材付きの床材(リノリウム等)リノリウム、塩ビ床材(繊維基材付き)繊維の裏打ちがあることが要点。切り出し済みでも対象になり得る
5905紡織用繊維の壁面被覆材繊維表面の壁紙(ロール)ロール状、幅45cm以上、裏張り又は糊付け可能な裏面処理。紙へのフロックは4814、繊維へのフロックは主に5907
5906ゴム加工をした織物(5902除く)ゴム引き布、防水布、ゴム系粘着テープ基材1,500g/㎡と繊維比率50%超の条件あり。セルラーラバー貼合せで補強目的は第40類。粘着テープ(幅20cm以下)は5906.10
5907その他の含浸・塗布・被覆等の織物、劇場用背景幕等アルミ蒸着布、舞台用背景幕類注6の除外が多い(図案を描いた織物、通常仕上げ、研磨材付着、金属箔裏張り等)
5908繊維製の心、ガスマントル等ろうそくの芯、ガス灯マントル用品としての形状・用途で判断
5909繊維製ホース類消防ホース、産業用繊維ホース内張りや補強、金具付きでも対象になり得る
5910伝動用又はコンベヤ用ベルト等(繊維製)搬送用ベルト、伝動用ベルト注7で除外あり。厚さ3mm未満のベルチングは5910から外れる。ゴム系は4010へ
5911技術用繊維製品(注8で限定列挙)製紙用フェルト、工業用フィルターマット、ガスケット等残余規定。注8の列挙に該当し、かつ部の他の項に属さないことが前提

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(頻出)
    • 5902:たて糸の材質(ナイロン等、ポリエステル、その他)と高強力糸の該当性
    • 5903:プラスチックの種類(PVC、PU、その他)と、類注2の除外条件(肉眼判別、7mm円筒、完全埋込、補強目的貼合せ等)
    • 5904:リノリウムか、それ以外の繊維基材付き床材か
    • 5905:幅45cm以上のロール状か、裏張り又は糊付け可能な裏面処理か
    • 5906:粘着テープ(幅20cm以下)か否か、重量1,500g/㎡と繊維比率50%超の条件
    • 5911:注8に列挙された技術用途か、他の項に入らないか。製紙用等エンドレス品は重量650g/㎡未満か以上かで号が分かれる
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組)
    • 5903(繊維のプラコート)と第39類(プラスチックの板・シート等)
      • どこで分かれるか:完全埋込や両面全面被覆、補強目的の貼合せ、7mm円筒で亀裂などの除外条件
      • 判断に必要な情報:断面写真、被覆厚み、曲げ試験の可否、材料構成(樹脂と繊維の比率)
      • 典型的な誤り:商品名が「コーティング生地」なので一律5903にしてしまう
    • 5906(ゴム加工織物)と第40類(ゴムの板・シート等)
      • どこで分かれるか:セルラーラバー貼合せで補強目的のものは第40類へ。重量1,500g/㎡超で繊維が全重量の50%以下だと5906から外れやすい
      • 判断に必要な情報:重量、繊維重量比、ゴムがセルラーか、貼合せ構造
    • 5905(壁面被覆材)と4814(紙系壁紙)と5907(繊維へのフロック等)
      • どこで分かれるか:5905は繊維表面で幅45cm以上のロール、裏張り又は裏面処理が条件。紙へフロックは4814、繊維へフロックは主として5907
      • 判断に必要な情報:基材(紙か繊維か)、幅、ロール形態、裏面処理
    • 5910(繊維製ベルト)と4010(ゴム製ベルト)と5911(厚さ3mm未満のベルチング等)
      • どこで分かれるか:注7でゴム系ベルトは4010へ、厚さ3mm未満のベルチングは5910から除外
      • 判断に必要な情報:厚さ、ゴムの有無と加工状況、エンドレスか、ファスナー有無

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • タイヤコードファブリック(5902)で鍵になる「高強力糸」は、第11部注6の定義参照とされています。実務上は、糸の強力データ(例:cN/tex等)を仕様書で確認できる状態にしておくことが重要です。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • タイヤ用の基布でも、たて糸が高強力糸の定義に該当しない場合、5902以外(他の織物類や5903、5906等)に振れる可能性があるため、材料スペックの裏取りが必要です。
  • この部注で他章に飛ぶ代表パターン:
    • 高強力糸要件を満たさず5902から外れ、他章の織物や加工織物へ再検討になるケース

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(注1〜注8)
    • 注1:第59類における「紡織用繊維の織物類」は限定された基材だけを指します。ここを外すと、5903や5906などの前提が崩れます。
    • 注2・注3:5903の範囲と除外を詳細に定義。特に、肉眼判別、7mm円筒、完全埋込、補強目的貼合せなどで第39類へ飛びます。
    • 注4:5905(繊維壁紙)は幅45cm以上のロール等、条件付き。フロック壁紙の除外先が明記されています。
    • 注5:5906(ゴム加工織物)の重量・繊維比率条件、セルラーラバー貼合せの除外先が明記されています。
    • 注6:5907から外れるものを列挙(図案織物、研磨材付着、金属箔裏張り等)。
    • 注7:5910から外れるベルトを明確化(厚さ3mm未満、ゴム系は4010へ)。
    • 注8:5911は注8に列挙された技術用のみ、かつ部の他の項に属しないものに限定。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 5905の「紡織用繊維の壁面被覆材」:繊維表面、幅45cm以上のロールで、裏張り又は糊付け可能な裏面処理のあるもの
    • 5906の「ゴム加工をした紡織用繊維の織物類」:重量1,500g/㎡や繊維比率50%超などの条件が付く
    • 5903の除外条件に出てくる7mm円筒条件:15度から30度で手巻きして亀裂が生じるか
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 5903から第39類へ:完全埋込、両面全面被覆、補強目的の多泡性プラシートとの貼合せ、7mm円筒で亀裂等
    • 5906から第40類へ:セルラーラバーシート等との貼合せで織物が補強目的
    • 5910から第4010へ:ゴム加工織物から作る伝動用・コンベヤ用ベルト、ゴム加工糸・コードから作るベルト
    • 5905から第48.14項へ:紙にフロックやダストを直接付着させた壁面被覆材

4. 類注が分類に与える影響(どこでコードが変わるか)

  • 影響ポイント1:5903に見えて第39類へ飛ぶパターン
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 被覆が肉眼で判別できるか(色の変化だけは除外)
      • 断面で織物がプラスチックに埋まっていないか、両面が全面被覆されていないか
      • 15度から30度で直径7mm円筒に巻けるか(亀裂が出るなら通常第39類)
      • 多泡性プラの板・シートに貼合せで、織物が補強目的にとどまるか
    • 現場で集める証憑:
      • 断面写真、層構成図、仕様書(樹脂種別、塗布量)、曲げ試験結果、SDS(樹脂種別確認)
    • 誤分類の典型:
      • 「コーティング布」なので無条件に5903.10や5903.20に固定してしまう
  • 影響ポイント2:5906に見えて第40類へ飛ぶパターン
    • 何を見れば判断できるか:
      • 重量(g/㎡)と繊維重量比(50%超か)
      • セルラーラバーの板・シートとの貼合せで、織物が補強目的か
    • 現場で集める証憑:
      • 目付試験成績、配合表、ゴム種別、貼合せ工程図、断面写真
    • 誤分類の典型:
      • 「ゴム引き」だけで5906と判断し、重量・比率条件を確認しない
  • 影響ポイント3:5911は技術用途でも自動的に入らない
    • 何を見れば判断できるか:
      • 注8の列挙に当てはまる具体的用途と形状か
      • 第59.08項〜第59.10項の特性を有しないか、また第11部の他の項に先に入らないか
    • 現場で集める証憑:
      • 使用機械名、用途説明、取付方法、図面、ユーザーマニュアル、販売形態(反物か、エンドレスか)
    • 誤分類の典型:
      • 工業用途だからといって、注8の限定を確認せずに5911へ寄せる

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:塗布が肉眼で判別できないのに5903や5907にしてしまう
    • なぜ起きる:カタログに「コーティング」と書かれているだけで判断するため
    • 正しい考え方:5903や5907は、注2や注6により、肉眼で判別できないものは通常基材の類(第50類〜第55類、第58類、第60類など)に戻ります(色変化のみは考慮しない)。
    • 予防策:断面写真の提出依頼、塗布量や表面外観の確認、実物で肉眼判別の可否を記録
  2. 間違い:織物がプラスチック中に埋め込まれているのに5903で申告する
    • なぜ起きる:表面が織物っぽく見える、又は取引慣行で「生地」と呼ぶため
    • 正しい考え方:織物が完全に埋め込まれた物品や、両面全面プラスチック被覆の物品は第39類側で扱う整理です。
    • 予防策:断面写真、層構成図、樹脂層の連続性の確認、サンプルを切断して観察
  3. 間違い:補強目的の貼合せ(多泡性プラシートと織物)を5903にする
    • なぜ起きる:織物があると「繊維製品」と思い込むため
    • 正しい考え方:多泡性プラスチックの板・シート等に織物を結合しても、織物が単なる補強なら第39類です。
    • 予防策:補強の位置付け(機能)を仕様書に明記、引張強度の寄与説明を確認
  4. 間違い:ゴム加工布を重量・比率を見ずに一律5906にする
    • なぜ起きる:「ゴム引き布」という名称だけで判断するため
    • 正しい考え方:5906は重量1,500g/㎡や繊維重量比50%超の条件があり、該当しない場合は第40類側の検討が必要です。
    • 予防策:目付試験と材料構成比の取得を標準化、仕様書に重量と比率欄を作る
  5. 間違い:繊維表面の壁紙を5905と決め打ちする
    • なぜ起きる:「壁紙だから5905」という短絡
    • 正しい考え方:5905はロール状、幅45cm以上、裏張り又は糊付け可能な裏面処理が条件です。紙へのフロックは4814、繊維へのフロックは主に5907です。
    • 予防策:幅、ロール形態、裏面処理、フロックの付着先(紙か繊維か)をチェックリスト化
  6. 間違い:伝動用・コンベヤ用ベルトを5910にしてしまう(ゴム系除外の見落とし)
    • なぜ起きる:「繊維を使っているから5910」と誤認するため
    • 正しい考え方:注7により、ゴム加工織物から作るベルト等は4010へ整理されます。
    • 予防策:ゴム加工の有無、製造方法、材料(ゴム加工糸か)を仕入先に確認
  7. 間違い:厚さ3mm未満のベルチングを5910にする
    • なぜ起きる:厚さ要件を測っていない
    • 正しい考え方:注7で、厚さ3mm未満のベルチングは5910に含まれません。分類例規でも厚さ3mmで分岐が示されています。
    • 予防策:厚さ測定を必須化、測定点と測定条件を記録、サンプル保存
  8. 間違い:5907に入ると思い、図案を描いた織物を5907にしてしまう
    • なぜ起きる:「塗装した織物=5907」と理解するため
    • 正しい考え方:注6で、図案を描いた織物は原則5907から除外され、例外は劇場用又はスタジオ用の背景幕等です。
    • 予防策:用途(背景幕か一般衣料用プリントか)を用途宣誓書やカタログで確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • FTAやEPAでは、最終製品のHS(多くは6桁)によりPSRが決まるため、分類がずれると原産性判断の前提が崩れます。特に第59類は、第39類・第40類へ飛ぶ境界が多く、誤分類が原産地判定に直撃しやすい分野です。
  • よくある落とし穴
    • 最終製品を5903と見てPSRを選んだが、実際は第39類扱いだった
    • ベルトを5910と見たが、注7により4010に該当していた

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに採用HS版が異なることがあり、HS2022のコードをそのまま協定のPSR検索に入れると、該当条文にヒットしない場合があります。
  • ズレる場合は、WCO相関表(6桁)で旧版と新版の対応関係を確認し、協定が参照する版でPSRを確定させます。相関表は参考資料であって法的地位を有しない旨が公表されています。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 最低限そろえる情報(一般論)
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国
    • 非原産材料のHS(材料側の分類も必要)
    • どの工程が「加工」として評価されるかの説明資料
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 協定や運用で求める保存期間・保存対象は異なるため、社内ルールで統一し、監査対応できる形で保管

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(WCO相関表Table Iに第59類の掲載なし)第59類(5901〜5911)少なくとも6桁レベルでの新設・削除・分割・統合等は示されていないトランスポジション対応は通常不要。ただし国内コード改正や運用変更は別途確認

7-2. 違うことになった根拠(必須)

  • 根拠資料として、WCOが公表するHS2017→HS2022相関表(Table I)を確認しました。Table Iは、改正で相関が生じるサブヘディングを中心に整理されますが、第59類に該当する行が確認できませんでした。従って、少なくとも6桁レベルのコード移動を要する改正は示されていないと整理しました。
  • 併せて、HS2017→HS2012、HS2012→HS2007の相関表(Table I)でも、第59類のコードが登場しないことを確認しています(Table Iは改正点中心のため、ここに第59類が現れないことは、当該期間に第59類の6桁改正が示されていないことを意味します)。
  • ただし、相関表は参考資料であり、最終的な分類は税関判断である点には留意が必要です。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→HS2012、HS2012→HS2017、HS2017→HS2022のいずれの期間でも、WCO相関表(Table I)上、第59類に関する6桁の追加・削除・分割・統合等は示されていません。
  • 実務上は、HS6桁が不変でも、各国の国内コード(8桁、9桁等)の細分改正、関税率、統計品目番号、運用上の取り扱い変更が別途起こり得るため、申告先の最新表で確認してください。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:コーティング生地のつもりが第39類扱いで修正
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):5903の除外(完全埋込、両面全面被覆、補強目的貼合せ等)を未確認
    • 起きやすい状況:サプライヤーが「コーティング生地」とだけ記載し、層構造情報がない
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延
    • 予防策:断面写真と層構成表、塗布厚みの提出を契約条件にする
  • 事例名:壁紙を5905で申告したが幅不足で否認
    • 誤りの内容:5905の定義(幅45cm以上ロール等)を満たさない
    • 起きやすい状況:サンプル寸法だけで判断し、製品ロール幅を確認していない
    • 典型的な影響:分類修正と税率差の精算、追加資料要求で通関遅延
    • 予防策:ロール幅、裏面処理、基材(紙か繊維か)を事前に取得
  • 事例名:搬送ベルトを5910にしたが実は4010
    • 誤りの内容:注7によりゴム系ベルトは4010へ(5910から除外)
    • 起きやすい状況:ベルトの含浸材がゴムかプラスチックかを確認しない
    • 典型的な影響:追加納税、原産地判定のやり直し
    • 予防策:含浸材のSDSと工程(ゴム加工織物から製造か)を確認
  • 事例名:厚さ3mm未満のベルチングを5910で申告
    • 誤りの内容:注7で厚さ3mm未満は5910から除外
    • 起きやすい状況:厚さを測定していない、仕様書に厚さ記載がない
    • 典型的な影響:分類修正、追加資料要求、納期遅延
    • 予防策:厚さ測定を検収項目にし、測定方法を標準化

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、第59類は品目番号だけで一律に輸入許可が必要となるケースは多くありません。一方で、用途や素材(被覆材、添加剤)により別体系の規制や顧客要求がかかることがあります。
  • 典型的に社内でチェック対象になりやすい軸(該当がある場合のみ)
    • 建材用途(壁面被覆材、床材)としての各種基準や顧客要求
    • 工業用途(フィルター材、ベルト等)での安全要求や仕様適合
    • 被覆材に含まれる化学物質に関する規制や契約上の制限
  • 確認先(一般論)
    • 申告国税関、取引先が求める規格、用途国の規制当局情報
  • 実務での準備物(一般論)
    • 素材証明(SDS、成分表)、用途説明、仕様書、試験成績書、図面

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 基材の種類(織物、メリヤス、不織布、フェルト等)
    • 被覆材の種類(プラスチック、ゴム、その他)と肉眼判別可否
    • 層構成(断面写真、積層有無、埋込有無)
    • 目付(g/㎡)、厚さ(特にベルトは3mm境界)、幅(壁面被覆材は45cm境界)
    • 用途(壁紙、床材、ベルト、フィルター、タイヤ補強など)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 5903は注2の除外を全てチェック(7mm円筒、完全埋込、補強目的貼合せ等)
    • 5906は注5の重量・繊維比率、セルラーラバー貼合せ除外をチェック
    • 5910は注7の除外(厚さ3mm未満、ゴム系は4010)をチェック
    • 5911は注8の限定列挙と残余要件をチェック
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に、基材、被覆材、用途、目付、幅、厚さを入れる
    • 仕様書、SDS、断面写真を添付できる状態にする
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定採用HS版の確認、必要なら相関表で対応付け
    • BOM、原価、工程、非原産材料HSの整備
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 用途国の規制と顧客要求を軸に、材料証明と用途説明を整備

12. 参考資料(出典)

  • 日本税関:実行関税率表(HS2022) 第59類 注(59r.pdf) 参照日:2026-02-24
  • World Customs Organization:HS Nomenclature 2022 Edition Chapter 59 参照日:2026-02-24
  • 日本税関:関税率表解説 第59類(kaisetu/data/59r.pdf) 参照日:2026-02-24
  • 日本税関:関税率表解説 分類例規 第59類(kaisetu/data2/59r.pdf) 参照日:2026-02-24
  • 日本税関:関税分類の概要(品目分類とGIRの考え方) 参照日:2026-02-24
  • WCO:HS2017→HS2022 Correlation Tables(Table I) 参照日:2026-02-24
  • 日本税関:HS2017→HS2012 相関表(Table I) 参照日:2026-02-24
  • 日本税関:HS2012→HS2007 相関表(Table I) 参照日:2026-02-24
  • 日本税関:HS2012改正に伴う相関表は参考資料で法的地位を有しない旨の案内(oshirase.pdf) 参照日:2026-02-24

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第58類:特殊織物、タフテッド織物類、レース、つづれ織物、トリミング及びししゆう布(Special woven fabrics; tufted textile fabrics; lace; tapestries; trimmings; embroidery)

用語の統一(本記事内)

  • 類=Chapter 項=Heading(4桁)号=Subheading(6桁)部=Section注=Notes(部注/類注)

本記事は日本の実務(輸入・輸出の双方を想定)で、HS2022の第58類を「誤解が起きにくい形」で整理したものです。HS6桁(国際共通)と、日本の国内コード(9桁等)は別物です。実務ではまずHS6桁の当たりを付け、その後に国内コードで細分を確認する流れが安全です。


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個)
    • ベルベット、コール天などのパイル織物、シェニール織物(5801)
    • タオル地のようなテリー織物、タフテッド織物(ただし床用のものを除く)(5802)
    • レース、チュール、ネット状の布(条件あり)(5804)
    • リボン、テープ、ゴム入り細幅織物、ボルデュック(5806)
    • ブランドラベル、サイズラベル等(刺しゅうでないもの)(5807)
    • 組ひも、装飾用トリミング、タッセル、ポンポン(5808)
    • 刺しゅうワッペン、刺しゅう生地、スパンコール等のアプリケ刺しゅう(5810)
    • 中綿入りのキルティング生地(反物状態)(5811)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記)
    • 第59類注1の対象となる「紡織用繊維の織物類」で、染み込ませ・塗布・被覆・積層したもの(第59類、または第39類・第40類へ)
    • 結び目で作った網地(結び網地)(5608)
    • タフテッドのうち「床用繊維製床用敷物」(5703)
    • メリヤス編みやクロセ編みのレース・ネット等(第60類)
    • すでに衣類・スカーフ等の形に製品化(made up)されたもの(多くは第61類〜第63類、例:刺しゅう入りスカーフは6214方向)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個)
    • 反物か、すでに製品化(made up)されているか(第11部注7が鍵)
    • 細幅織物か(幅30cm以下、両側に耳などの条件)(5806かどうか)
    • 刺しゅうか、刺しゅうでないラベルか(5807か5810か、または製品化されて別類か)
  • この類で特に誤分類が高コストになりやすい場面
    • リボンやテープが「細幅織物(5806)」なのか「装飾用トリミング(5808)」なのか、または「被覆等で第59類」なのかが曖昧なまま輸入してしまうケース
    • ラベルが刺しゅう入り(5810)なのに、刺しゅうなし(5807)で申告してしまうケース

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くのはGIR1とGIR6です。まず「見出しの文言」と「部注・類注」で範囲を確定し、その後に6桁(号)の条件で詰めます。特に第58類は、類注が定義と除外を強く決めています(細幅織物の定義、刺しゅうの含意、結び網地の除外など)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 形状:反物か、ストリップか、モチーフか、単体部品か
    • 製法:織物か、メリヤス編みか、結び網か、刺しゅうか、タフテッドか
    • 寸法:特に幅(細幅30cm以下の判定)
    • 加工:染み込ませ、塗布、被覆、積層の有無(第59類に飛ぶかどうか)
    • 用途:床用か(5703に飛ぶ)、衣類として製品化済みか(61〜63に飛ぶ)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:製品化(made up)されていないか確認
    • 例:単に裁断しただけか、縁縫い・縁かがり・房付け・縫製でつなぎ合わせ等があるか
    • made upの定義は第11部注7で確認します
  • Step2:染み込ませ、塗布、被覆、積層(コーティング等)の有無を確認
    • 第58類注1は「第59類注1の紡織用繊維の織物類で、染み込ませ等したもの」と「第59類のその他の物品」を除外します
    • 特に58.03(もじり織物)、58.06(細幅織物)、58.08(組ひも・装飾用トリミング)は、コーティング等があると第58類から外れる扱いが強調されています
  • Step3:第58類のどの「タイプ」かを判定
    • パイル織物・シェニール織物:5801(ただし5802と5806を除外)
    • テリー織物(タオル地)またはタフテッド織物:5802(床用は5703へ)
    • もじり織物(leno、ガーゼ状の織り):5803(細幅は5806へ)
    • レース、チュール、ネット:5804(結び網地は5608、メリヤス編み系は60類へ)
    • つづれ織物(手織り、手針のもの):5805
    • リボン・テープ等の細幅織物:5806(ただしラベルは5807へ)
    • ラベル・バッジ(刺しゅうでない):5807(刺しゅうなら5810へ)
    • 組ひも・装飾用トリミング・タッセル等:5808
    • 金属糸・金属を交えた糸の織物:5809(用途や性状で他類の可能性もあるので慎重に)
    • 刺しゅう:5810(基布が見える刺しゅう、アプリケ刺しゅう等を含む)
    • キルティング生地(反物):5811(第59.03の除外に5811が明記される点も実務上重要)
  • よく迷う境界(例)
    • 5806(細幅織物)と5808(装飾用トリミング):装飾目的の構成や房・装飾の付け方で分岐しやすい
    • 5807(ラベル)と5810(刺しゅうラベル):刺しゅうの有無が決定的
    • 5802.30(タフテッド織物)と5703(タフテッド床用敷物):床用かどうか、基材や剛性などで分岐
    • 5804(レース)と5810(レース風のアプリケ刺しゅう):レースの作り方(基布の上で作るか、網目と柄を同時に作るか)で分岐

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

次の表は第58類の項(4桁)を実務目線で要約したものです(見出し文言と注の趣旨に基づく整理)。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5801パイル織物・シェニール織物(ただし5802と5806を除外)ベルベット、コール天、シェニール織物テリーや細幅パイルは除外(5802/5806へ)
5802テリー織物、タフテッド織物(床用除外)タオル地、タフテッドの椅子張り生地タフテッド床用敷物は5703へ。細幅は5806へ
5803もじり織物(ガーゼ状の織り)もじり織ガーゼ、レノ織細幅は5806へ。医療用途の一定形態は3005方向もあり得る
5804チュール・ネット状の布、レース(反物・ストリップ・モチーフ)チュールレース、レースモチーフ結び網地は5608、メリヤス編み系は60類へ
5805つづれ織物(手織り、手針)タペストリー、手針つづれ風の壁掛け刺しゅう(5810)との混同に注意
5806細幅織物(ラベル除外)とボルデュックリボン、テープ、ゴム織物、バイアステープ幅30cm以下と耳の要件が鍵。房付きは5808へ。ラベルは5807へ
5807ラベル、バッジ等(刺しゅうでない)織ネーム、サイズラベル、ワッペン風の織ラベル刺しゅう入りは5810へ。切断以外に製品化すると61.17/62.17/63.07方向
5808組ひも、装飾用トリミング、タッセル等組ひも、フリンジ、タッセル、ポンポン60類(編物)の装飾トリミングは除外。ロゼット等で製品化すると62.17/63.07方向
5809金属糸・金属を交えた糸の織物(用途限定)ラメ織物、舞台衣装用メタリック生地用途や他見出し該当性の確認が必要
5810刺しゅう(反物・ストリップ・モチーフ)刺しゅう生地、刺しゅうワッペン、スパンコール刺しゅうレース風でも作り方次第で5810。製品化済み(スカーフ等)は他類へ
5811キルティング生地(反物)中綿入りキルト生地、縫い合わせ生地5811は59.03から除外される点が実務上重要。製品化すると61〜63へ

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(よく効くもの)
    • 5806(細幅織物):幅30cm以下か、両側に耳があるか、袋織で平らにした幅か、バイアステープを広げた幅か
    • 5806(弾性):ゴム糸又は弾性糸(エラストマー糸等)が重量で5%以上含まれるか
    • 5807(ラベル):刺しゅうでないこと、反物・ストリップ・切断ユニットの範囲に留まること
    • 5802(タフテッド):床用敷物(5703)に該当しないか
    • 5810(刺しゅう):基布が見える刺しゅう、アプリケ刺しゅう等を含むという定義
    • 5811(キルティング):反物であること、詰物を挟んで縫い合わせ等で一体化していること
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組)
    1. 5806(細幅織物)と5808(装飾用トリミング)
      • どこで分かれるか:単なる細幅の織物か、装飾用として構成・加工されたトリミングか。細幅織物でも「織物自体の糸で房を付けたもの」は5808に寄ります
      • 判断に必要な情報:幅、耳、房の作り方(別付けか、織物自身の糸か)、装飾のための縫製や組み合わせの有無
      • 典型的な誤り:見た目がリボンだから5806と決め打ち
    2. 5807(ラベル)と5810(刺しゅうラベル)
      • どこで分かれるか:刺しゅうの有無
      • 判断に必要な情報:製法(織り出し、印刷、刺しゅう、アプリケ)、製品見本写真
      • 典型的な誤り:ブランドロゴが糸で表現されているだけで「刺しゅう」と誤認、または逆に刺しゅうを見落とす
    3. 5802.30(タフテッド織物)と5703(タフテッド床用敷物)
      • どこで分かれるか:床用敷物かどうか(用途と物性)
      • 判断に必要な情報:用途、裏面構造(バッキング)、厚み・剛性、製品仕様書
      • 典型的な誤り:タフテッドという言葉だけで5703に寄せる、または逆
    4. 5810(刺しゅう反物等)と「製品化された衣類付属品等」
      • どこで分かれるか:反物・ストリップ・モチーフの範囲か、スカーフ等として使用可能な完成品(made up)か
      • 判断に必要な情報:寸法、縁処理、完成品としてそのまま使えるか

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約
    • 第11部注7は「製品にしたもの(made up)」の定義を置いており、第58類の「反物・ストリップ・モチーフ」との境界、58.07の除外(切断以外に製品化したもの)などに直結します
    • 第11部注8は「第50類〜第55類や第60類等には、注7で定義する製品にしたものを含まない」など、部内の相互排他を整理します(最終製品か素材かの整理に効く)
  • 実務での意味(具体例つき)
    • 例1:刺しゅう入りの布が、単なる反物なら5810寄りですが、縁縫い済みでスカーフとして使用できる形態なら、衣類付属品側(例:6214方向)になる可能性があります
    • 例2:ラベルが「切断しただけ」のユニットなら5807の射程に入りますが、縫い付け済み・裏当て済み等で製品化されると別項に飛ぶ可能性が高くなります
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン
    • made up判定で第61類〜第63類に移る(衣類、衣類付属品、その他の繊維製品)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(第58類注1〜7)
    • 注1:第59類注1の対象となる紡織用繊維の織物類で、染み込ませ等したもの、及び第59類のその他の物品は第58類に含めない
    • 注2:5801には、よこパイル織物で浮糸を切っていないものも含む(加工途中でも5801に残ることがある)
    • 注3:5803の「もじり織物」の定義(もじりたて糸が絡み目を作る織物)
    • 注4:5804には、5608の結び網地を含めない
    • 注5:5806の「細幅織物」の定義(幅30cm以下、耳、袋織、バイアス等の具体的定義)。加えて「織物自体の糸で房を付けた細幅織物」は5808へ
    • 注6:5810の「刺しゅう布」には、金属糸やガラス繊維の糸による刺しゅう(基布が見えるもの)や、薄片・ビーズ等を縫い付けたアプリケを含み、手針つづれ風(5805)は含まない
    • 注7:5809以外にも、衣類等に使用する種類の金属糸製の製品をこの類に含む
  • 用語定義(定義がある場合)
    • 細幅織物(5806):幅と耳の要件で定義
    • もじり織物(5803):注3で定義
    • 製品にしたもの(made up):第11部注7で定義
  • 除外規定(除外先の類・項も明記)
    • コーティング等で第59類へ(または性状により第39類・第40類へ)
    • 結び網地(5608)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:細幅織物(5806)の定義で、幅30cmが一気に効く
    • 何を見れば判断できるか(必要情報)
      • 幅(袋織は平らにした幅、バイアスは広げた幅)
      • 両側に耳があるか(織込み、のり付け等による耳を含む)
    • 現場で集める証憑
      • 図面(幅の定義が分かるもの)、製品仕様書、写真、サンプル
    • 誤分類の典型
      • 幅の測り方を誤り、5806と通常幅織物(50〜55類や58類他項)を取り違える
      • 房付きでも5806にしてしまう(注5で5808へ)
  • 影響ポイント2:コーティング等で第58類から第59類へ飛ぶ(ただし飛び方に癖がある)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報)
      • コーティング等があるか
      • その対象が「第59類注1の紡織用繊維の織物類」に該当するか(第50〜55類、58.03、58.06、58.08、60.02〜60.06等)
      • 肉眼で判別できるか、両面完全被覆か等(第59.03の除外条件)
    • 現場で集める証憑
      • 断面写真、コーティング仕様、MSDS、工程図、試験結果
    • 誤分類の典型
      • 58.06のリボンを、PVCコーティングの有無を見ずに5806のまま申告
      • 一方で、5811(キルティング生地)は第59.03から除外されるため、コーティングの有無だけで5903へ飛ばすのも危険
  • 影響ポイント3:ラベル(5807)か刺しゅう(5810)かは「刺しゅうの定義」で決まる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報)
      • ロゴ等が織り出し・印刷か、刺しゅうか
      • スパンコール、ビーズ等を縫い付けたアプリケがあるか(注6で刺しゅうに含める)
    • 現場で集める証憑
      • 拡大写真、加工仕様(刺しゅう機工程)、サンプル
    • 誤分類の典型
      • 刺しゅう入りなのに5807
      • 反対に、織り出しを刺しゅうと誤認して5810

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:リボン・テープを全部5806(細幅織物)にしてしまう
    • なぜ起きる:品名が「リボン」「テープ」だと幅や耳、装飾性を確認しない
    • 正しい考え方:5806は注5で細かく定義。さらに、織物自身の糸で房を付けた細幅織物は5808に属する
    • 予防策:幅の測り方(袋織、バイアス)と耳の有無、房の作り方を仕様書で確認
  2. 間違い:装飾フリンジを5806にしてしまう
    • なぜ起きる:幅30cm以下だからといって即5806に寄せる
    • 正しい考え方:装飾用トリミングやタッセル等は5808。5806のうち装飾性が強いものは区分を再確認する
    • 予防策:装飾目的の加工(縁取り、ループ、タッセル等)の有無を写真で確認
  3. 間違い:刺しゅうラベルを5807で申告
    • なぜ起きる:ラベルだから5807、という思い込み
    • 正しい考え方:5807は「刺しゅうでない」ことが条件。刺しゅうなら5810へ
    • 予防策:製法(刺しゅう機工程の有無)をサプライヤーに確認し、拡大写真を保管
  4. 間違い:切断済みのラベルユニットを「製品化済み」と誤認し、61.17等へ飛ばしてしまう
    • なぜ起きる:切り離されているだけで「完成品」と判断してしまう
    • 正しい考え方:5807は切断ユニットでも、切断以外の方法で製品にしていない範囲なら含み得る。逆に、切断以外に製品化しているなら除外
    • 予防策:縫い付け、裏当て、接着、台紙固定など追加加工の有無を確認
  5. 間違い:タフテッド素材を全部5703(床用)にする、または全部5802.30にする
    • なぜ起きる:タフテッドの言葉だけで決める
    • 正しい考え方:5802は床用敷物(5703)を除外。床用かどうか、物性や裏面構造、取引実態で確認が必要
    • 予防策:用途、製品仕様(床材用のバッキングの有無)、サンプル評価をセットで収集
  6. 間違い:レース風のものを全部5804(レース)とする
    • なぜ起きる:見た目がレースなら5804と判断
    • 正しい考え方:レースは網目と柄を同時に作るタイプが中心。基布に縫い付けるアプリケ等は刺しゅう(5810)側の発想が必要
    • 予防策:製法(レース機、刺しゅう機、アプリケ工程)を工程図で確認
  7. 間違い:コーティングした細幅織物を5806のまま
    • なぜ起きる:素材名のまま分類し、加工(被覆等)を見落とす
    • 正しい考え方:第58類注1と第59類注1の関係で、58.06等のコーティング品は第58類から外れる方向がある。さらに第59.03の判定条件(肉眼判別など)も絡む
    • 予防策:MSDS、断面写真、目視判別の可否、屈曲試験条件などの情報を事前入手
  8. 間違い:刺しゅう反物(5810)と、刺しゅう入りスカーフ等(made up)を混同
    • なぜ起きる:刺しゅうがあると全部5810と思い込む
    • 正しい考え方:第11部注7のmade up判定が効く。分類例でも、刺しゅう入りの布片とスカーフ形態は分かれて示される
    • 予防策:寸法、縁処理、完成品として使用可能かをチェックリスト化

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。58類は「素材(反物)」と「副資材(ラベル、トリミング)」が混在し、材料側のHSと最終製品側のHSがずれやすい分野です。
  • よくある落とし穴
    • ラベルや刺しゅうワッペンを材料として使う場合、材料HSを誤るとCTC判定の前提が崩れます
    • コーティング等で第59類に飛ぶ材料を58類として扱ってしまい、工程評価がずれる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定により採用しているHS年版が異なるため、協定年版でのコード確認が必要です(協定のPSR検索において、HS年版の注意喚起がされています)。
  • 実務では、通関申告は最新HS(HS2022)で、原産地証明は協定が採用するHS年版で、という二重管理が発生し得ます。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件は協定ごとに確認(一般論)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

第58類に関して、税関が公表するHS2022対HS2017の改正点一覧(WCO相関表に基づく)では、5802の6桁の整理が示されています。

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022新設と削除(号の整理)新:5802.10、旧:5802.11・5802.195802.11及び5802.19の削除に伴い、5802.10を新設(取引量が少ないこと等を理由とする整理)マスタ更新、過去コード参照(契約書、PSR、社内品番、原産地判定)でトランスポジションが必要になる可能性

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料として、HS2022対HS2017の改正点一覧(WCO相関表に基づく資料)において、5802.11と5802.19の削除、5802.10の新設が明示されています。これに基づき「HS2017の5802.11/5802.19はHS2022では5802.10に整理された」と判断しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • 可能な範囲で整理します。現時点で一次資料として確認できたのは、HS2017→HS2022における5802の号整理です(前章参照)。
  • HS2012→HS2017、HS2007→HS2012の詳細なトランスポジションは、WCO相関表(税関サイト経由で公開)で個別確認してください。
改正区分主要な動き(確認できた範囲)旧コード→新コードの方向性
HS2017→HS20225802の号整理(5802.11/5802.19削除、5802.10新設)5802.11/5802.19 → 5802.10
HS2012→HS2017今回は第58類に関する個別の改正点を一次資料で精査していません(相関表で要確認)相関表で要確認
HS2007→HS2012同上(相関表で要確認)相関表で要確認

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:コーティング済みリボンを5806で申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第58類注1と第59類注1の関係を見落とし、被覆等の加工品を第58類で申告
    • 起きやすい状況:購買が「リボン」としか把握していない、MSDSや断面写真がない
    • 典型的な影響:修正申告、追加資料提出、検査強化、納期遅延
    • 予防策:加工有無の申告前チェック(仕様書、MSDS、写真)、必要なら事前教示
  • 事例名:刺しゅう入りブランドラベルを5807で申告
    • 誤りの内容:5807の条件(刺しゅうでない)を満たさない
    • 起きやすい状況:織り出しと刺しゅうの区別が曖昧
    • 影響:品目更正、関税率差、原産地規則への波及
    • 予防策:製法確認(刺しゅう工程の有無)、拡大写真の保存
  • 事例名:タフテッド素材を床用(5703)として扱うべきかの判断不足
    • 誤りの内容:5802が5703を除外する点を見落とし
    • 起きやすい状況:用途が未確定のまま輸入、商流で用途が変わる
    • 影響:分類差で税率差、統計差、検査
    • 予防策:用途証明(仕様、販促資料、取付方法)、サンプル確認
  • 事例名:刺しゅう反物と刺しゅう入りスカーフ(made up)の混同
    • 誤りの内容:第11部注7のmade up判定をしないまま5810で一括申告
    • 起きやすい状況:サイズと縁処理の情報がない
    • 影響:他類更正、追加資料、遅延
    • 予防策:寸法、縁処理、完成品性を事前確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

日本前提で、第58類に関連しやすい論点を「該当がある場合のみ」整理します。関税分類そのものの規制というより、最終製品として国内販売する段階の表示・安全規制が中心になりやすい分野です。

  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 原反や副資材そのものに一律の検疫が付くというより、用途(乳幼児用、肌着用等)や含有化学物質で別法令が絡む場合があります(販売時規制の整理例としてJETROが解説)。
  • その他の許認可・届出
    • 家庭用品品質表示法に基づく繊維製品品質表示(最終製品として販売する場合):繊維組成や取扱い表示などを定める規程があり、直近でも改正情報が公開されています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口)
    • 消費者庁(家庭用品品質表示法・繊維製品品質表示)
    • JETRO(輸入・販売時規制の整理)
  • 実務での準備物(一般論)
    • 組成証明(混用率)、取扱い表示情報、対象年齢や用途の情報、必要に応じて化学物質試験結果

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 反物か、製品化済みか(縁処理、縫製、房付け等)
    • 製法(織物、刺しゅう、タフテッド、レース、結び網)
    • 寸法(特に幅30cm、袋織は平ら幅、バイアスは広げ幅)
    • 加工(コーティング等)と、目視判別性
    • 素材(繊維種、金属糸の有無等)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 5806と5808、5807と5810、5802と5703など境界再確認
    • 58.03/58.06/58.08のコーティング品が第58類に残るか(第59類注1との関係)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名に「lace」「embroidered」「coated」「narrow woven」「tufted」など誤解を生む語がある場合、補足資料で裏取り
    • 写真、仕様書、工程図、MSDSをセットで準備
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS年版を確認し、必要ならトランスポジションで整合を取る
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 国内販売する場合は、品質表示や安全規制の対象を確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO
    • HS Nomenclature 2022 edition(章立てとChapter 58の英語タイトル確認)参照日:2026-02-24
    • Correlation Tables HS 2017–2022(相関表の位置付け)参照日:2026-02-24
  • 日本税関・公的機関
    • 第58類 注(税関 実行関税率表 2022年1月1日版 データ)参照日:2026-02-24
    • 第58類 関税率表解説(総説、各項解説)参照日:2026-02-24
    • 国内分類例規(第58類、例示)参照日:2026-02-24
    • 第59類 注(第59類注1など、コーティング品の範囲判断)参照日:2026-02-24
    • 第11部 注(made upの定義など)参照日:2026-02-24
  • 規制・表示(日本)
    • 消費者庁 家庭用品品質表示法(繊維製品品質表示規程)参照日:2026-02-24
    • JETRO 貿易・投資相談Q&A(衣料品の輸入手続き、日本の販売時規制の整理)参照日:2026-02-24

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第57類:じゅうたんその他の紡織用繊維の床用敷物(Carpets and other textile floor coverings)

用語の約束(本稿内):部=Section、類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、注=Notes(部注/類注)

第57類は、じゅうたんやラグ、マット、人工芝など、紡織用繊維が表面に見える床用敷物をまとめた章です。ポイントは「使うときに露出する面が紡織用繊維かどうか」と「製法が結びパイル、織物、タフト、フェルト、その他のどれか」です。ここを外すと、第59類(床材)や第39類(プラスチック床材)へ移りやすく、関税・原産地規則・社内商品マスタの整合性に波及します。

本稿は日本の実務(輸入・輸出の双方)を想定し、ビジネスマンが社内で初期判断できるよう、どこでコードが変わるか、どんな資料が必要かを整理します。


1. まず結論:第57類に入るものと入らないもの

1-1. 第57類に入りやすい代表例

  • 手結びのペルシャじゅうたん、手織りの段通など(結びパイル)
  • 手織りキリムなどの平織りラグ(織物で、タフトやフロックではないもの)
  • タフトカーペット、タフトのラグ、タフト人工芝
  • フェルト製の床用敷物、フェルトのカーペットタイル
  • 上記に該当しないその他の紡織用繊維の床用敷物(例:特殊構造の床用マット等)

これらはいずれも、使用時の露出面が紡織用繊維である床用敷物という第57類注の定義に沿います。

1-2. 第57類から除外されやすい代表例

  • 床用敷物の下敷き(カーペットパッド、アンダーレイなど)
    第57類注2で除外され、構成材料に応じて別分類になります。
  • 表面が塗布・被覆材で、紡織用繊維が基布に過ぎない床材
    日本税関の解説では、リノリウム等、紡織用繊維の基布に塗布・被覆した床用敷物は59.04で検討すると整理されています。
  • 表面がプラスチックの床材(例:ビニル床材)
    「露出面が紡織用繊維」という定義を満たさないため、第57類ではなく第39類や第59類側で検討が必要になります。

1-3. 実務での最重要分岐

  • 使用時の露出面は何か(紡織用繊維か、プラスチックか、別素材か)
  • 製法はどれか(結びパイル、織物、タフト、フェルト、その他)
  • 下敷き(アンダーレイ)ではないか

2. 第57類に到達するための考え方

2-1. 分類でまず効くルール

  • 通則1(GIR1):見出しの文言と、部注・類注で決めます。第57類は注が短い代わりに強いです。
  • 通則6(GIR6):6桁の細分は、同一階層の比較で決めます。第57類は製法と材料で6桁が動きます。

品名が「ラグ」「マット」「カーペット」でも、露出面と製法が違えばコードが変わるので、名称だけで決めないのが鉄則です。

2-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:使用時の露出面は紡織用繊維ですか
    いいえの場合、第57類ではなく第39類や第59類などで検討します。
  • Step2:床用敷物の下敷き(アンダーレイ)ですか
    はいの場合、第57類注2で除外され、構成材料により分類します。
  • Step3:製法はどれですか
    結びパイルなら5701、織物なら5702、タフトなら5703、フェルトなら5704、その他は5705の方向です。

3. 主な項(4桁)とその内容

3-1. 4桁(項)の一覧表

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件や注意点
5701結びパイルのじゅうたん等手結びじゅうたん、手結びラグ結び目でパイルを形成しているかが核
5702織物製のじゅうたん等(タフト、フロックを除く)ウィルトン、平織りキリム、こいやし繊維マットパイルの有無、製品にしたかどうかで6桁が動く
5703タフトしたじゅうたん等(人工芝を含む)タフトカーペット、タフト人工芝HS2022で人工芝の細分が新設
5704フェルト製のじゅうたん等(タフト、フロックを除く)フェルトカーペット、フェルトタイルタイルは面積区分がある
5705その他のじゅうたん等その他の床用マット類他の5701から5704に当たらない場合の受け皿

出所はWCOのHS2022第57章の見出し体系です。


4. 6桁(号)で実務上重要な分岐

4-1. 5703(タフト)で最重要:人工芝(turf)を別掲するか

HS2022の5703では、人工芝(turf)が明示され、さらにナイロン等とその他の人造繊維材料の区分の中で、人工芝が独立した6桁として設けられています。

  • ナイロン又はその他のポリアミド製
    5703.21(人工芝)と5703.29(その他)
  • その他の人造繊維材料製
    5703.31(人工芝)と5703.39(その他)

実務の注意点は、商品名が「人工芝マット」でも、タフトなのか、別の構造なのかを仕様書で確定することです。人工芝はスポーツ用途でも、床用敷物としての性格が強い場合に第57類で検討する筋になります。

判断に必要な情報

  • 製造方法(タフティングかどうか)
  • 表面パイル糸の材質(ナイロン系か、その他の合成繊維か)
  • 露出面の材質が紡織用繊維かどうか

4-2. 5702(織物)でよく動くポイント:パイル有無と製品化

5702は、織物で、タフトやフロックではない床用敷物が対象で、パイル構造か否か、製品にしたか否かで下位区分が分かれます。

  • 例:手織りキリム等は5702.10に含まれます。
  • 例:こいやし繊維(コイヤ)製の床用敷物は5702.20として別掲です。

日本税関の分類例規では、たて糸が紡織用繊維で、よこ糸にプラスチックのストリップを使う織りマットを、5702.50から5702.99の範囲で判断する事例が示されています。露出面と見かけ幅など、構造の説明が必要になります。

判断に必要な情報

  • 織物かどうか、タフトかどうか
  • パイルの有無
  • 製品にしたか(縁かがり、裏打ち、房付け、所定寸法での仕上げなど)

4-3. 5704(フェルト)はタイル面積で号が変わる

5704はフェルト製の床用敷物ですが、タイルについては最大面積で区分されています。

  • 5704.10:タイルで最大面積が0.3m2以下
  • 5704.20:タイルで最大面積が0.3m2超1m2以下
  • 5704.90:その他

日本税関の分類例規では、ポリエステルのニードルルームフェルトを用いた電気カーペットが5704.90とされた例があります。電気機能があっても、露出面が紡織用繊維の床用敷物という性格が強い場合、57類の中で検討され得ます。

判断に必要な情報

  • 表面がフェルトか、タフトか、別構造か
  • タイルなら最大面積
  • 電気部品などがある場合でも、使用実態と物品の本質

5. 第57類の注を実務的に読み替える

5-1. 注1:露出面基準が第57類の入口

第57類注1は、床用敷物として使用するときに露出する面が紡織用繊維であることを求め、さらに床用敷物としての特性を持つ物品で他用途に供するものも含むとしています。

実務的な意味

  • 裏面がゴムやプラスチックで裏打ちされていても、表面が紡織用繊維なら第57類に残り得ます。日本税関の解説でも、ラテックスの含浸や裏打ちの例が触れられています。
  • 一方で、表面が塗布材で紡織用繊維が露出しない床材は第57類ではありません。

5-2. 注2:下敷き(アンダーレイ)は除外

床用敷物の下敷きは第57類に含まれません。日本税関の解説では、床とじゅうたんの間に敷く粗い織物やフェルトを例に挙げ、構成材料により分類すると説明しています。


6. よくある誤分類8選(原因と対策)

  1. 間違い:表面がビニルの床材を「裏が布だから」と第57類に入れる
  • なぜ起きる:基布に繊維があると紡織品に見えるためです。
  • 正しい考え方:露出面が紡織用繊維であることが第57類の定義です。
  • 予防策:断面写真と、使用時に露出する表面材を仕様書で固定します。
  1. 間違い:カーペット下敷きを57類で申告する
  • なぜ起きる:用途が床関連で、見た目もフェルトや不織布に似ているためです。
  • 正しい考え方:下敷きは第57類注2で除外です。
  • 予防策:用途が「下敷き」か「床用敷物」かを分け、構成材料(フェルト、不織布、ゴム等)で別分類する前提で資料を揃えます。
  1. 間違い:人工芝を5703の中で「その他」として処理し、HS2022の人工芝細分を見落とす
  • なぜ起きる:人工芝をカーペットではなく屋外資材と認識しがちなためです。
  • 正しい考え方:5703は人工芝を含み、HS2022では人工芝が6桁で別掲されています。
  • 予防策:タフト構造かどうかと、パイル糸の材質(ナイロン系か否か)を必ず確認します。
  1. 間違い:織りカーペットとタフトカーペットを品名だけで判定する
  • なぜ起きる:市場名が混在し、見た目だけでは判断しづらいためです。
  • 正しい考え方:5702は織物、5703はタフトと製法で分かれます。
  • 予防策:製造工程説明(織機か、タフティング機か)と断面写真を入手します。
  1. 間違い:フェルト床材を5704ではなく5705にしてしまう
  • なぜ起きる:フェルトでも構造が複合的で、その他に見えるためです。
  • 正しい考え方:フェルト製の床用敷物は5704が優先で、タイルは面積区分があります。
  • 予防策:表面材がフェルトである根拠(仕様書、写真)とタイル面積を確認します。
  1. 間違い:電気カーペットを電気機器として一律に第85類で検討する
  • なぜ起きる:機能で分類が決まると思い込みやすいためです。
  • 正しい考え方:日本税関の分類例規では、構造により57類内で整理される例があります。
  • 予防策:露出面、床上で使用する設計、構造(フェルトか、その他床用敷物か)を整理し、必要なら事前教示を検討します。
  1. 間違い:織りマットでプラスチックストリップを使うものを第39類のプラスチック製品と決め打ちする
  • なぜ起きる:見た目がプラスチック主体に見えるためです。
  • 正しい考え方:日本税関の分類例規では、織物構造の床用敷物として5702の範囲で判断する例があります。
  • 予防策:たて糸、よこ糸の材質、ストリップの見かけ幅など、構造を数値で説明できるようにします。
  1. 間違い:裏打ちがあるから第59類59.04と早合点する
  • なぜ起きる:裏打ちの存在だけで「塗布品」と誤認するためです。
  • 正しい考え方:第57類は裏打ちやラテックス含浸があっても、露出面が繊維なら対象になり得ます。一方で、塗布面が露出する床材は59.04で検討という整理もあります。
  • 予防策:使用時の露出面がどちらか、表面が塗布材で覆われているかを断面で確認します。

7. FTAやEPAで原産地証明をする際の注意点

7-1. HSコードとPSRは連動する

床用敷物は材料が多様で、同じ見た目でも製法でHSが変わります。HSが変わると、品目別規則(PSR)の選択や、原産材料・非原産材料の扱いが変わり、原産性判断が崩れることがあります。

7-2. 協定が参照するHS版の違いに注意する

日本税関のPSR検索では、協定ごとに採用するHS版が異なり、別の版のHSコードで検索すると結果が不正確になり得る旨が案内されています。
HS2022のコードで通関しつつ、協定はHS2012やHS2017でPSRを規定する場合があるため、相関表で突合する運用が必要です。


8. HS2017からHS2022での主な違い

8-1. 変更点サマリー(表)

比較(HS2017→HS2022)変更タイプ該当コード変更の要旨実務への影響
5703(タフトじゅうたん等)分割・新設5703.21、5703.31(新設) 5703.29、5703.39(再整理)人工芝(turf)を別掲するため、従来の5703.20、5703.30の一部が人工芝向け6桁へ分かれた人工芝を扱う企業はHS2017とHS2022で6桁が変わる可能性がある。通関コードとPSR参照コードのズレに注意

この改正はWCOの相関表(Table I)に明示されています。

8-2. 変更の根拠の説明

根拠資料として、WCOが公表する相関表(HS2022版とHS2017版の対応表)では、5703について人工芝(turf)を別掲する目的で、5703.21と5703.31を新設する旨が記載されています。
また、HS2022第57章の条文上も、5703の内訳として人工芝が6桁で区別されていることが確認できます。


9. 日本での表示・安全面の論点

分類そのものとは別ですが、床用敷物は日本での販売時に表示や安全面の要求が絡みやすい分野です。

9-1. 繊維製品の品質表示(床敷物)

消費者庁のガイドでは、床敷物について、組成繊維(繊維の名称と混用率)と、表示者名等(名称や連絡先)を表示する考え方が示されています。

実務の準備物

  • 表面パイル、基布、裏材を含めた材料構成表
  • 混用率の根拠資料(試験成績書、メーカー仕様書)

9-2. 有害物質規制(家庭用品)

厚生労働省の資料では、アゾ染料に関する規制対象として繊維製品の床敷物が含まれ、特定芳香族アミンの検出量の上限が示されています。床敷物は一部の難燃剤等の規制対象としても挙げられています。

実務の準備物

  • 染料や仕上げ剤の情報(サプライヤー証明、試験結果)
  • 必要に応じた第三者試験の計画

9-3. 防炎規制への目配り

消防法令に基づく防炎制度では、じゅうたん等が対象になり得ます。東京消防庁の案内では、じゅうたんの例として織りカーペット、フェルトカーペット、タフテッドカーペット、ニードルパンチカーペット、ござ、人工芝などが挙げられています。

実務の準備物

  • 防炎性能の要否が分かる用途情報(施設向けか、一般家庭向けか)
  • 必要に応じた試験成績やラベル運用体制

10. 実務チェックリスト(社内でこの順に確認すると早い)

  • 露出面は紡織用繊維か(写真と断面で確認)
  • 下敷き(アンダーレイ)ではないか
  • 製法はどれか(結びパイル、織物、タフト、フェルト、その他)
  • 5703の場合、人工芝か否か、パイル糸材質はナイロン系か否か
  • 5704のタイルなら最大面積(0.3m2、1m2の境界)
  • 57類ではない疑いがあれば、59.04や39類などの候補も同時に立てる
  • 仕入先に必ず依頼する資料
    • 仕様書(材質、混用率、製法、寸法、タイル面積、用途)
    • 表裏と断面の写真
    • 可能なら工程概要(織り、タフティング等)

参考資料(出典、参照日:2026-02-24)

  • WCO:HS2022 Chapter 57(見出し、注、6桁体系)
  • 日本税関:実行関税率表 第57類 類注(第57類注1、注2)
  • 日本税関:関税率表解説 第57類(総説、除外、各項の解説)
  • 日本税関:分類例規 第57類(織りマット、電気カーペット等の事例)
  • WCO:Correlation Tables HS2017–HS2022 Table I(5703の人工芝細分新設)
  • 消費者庁:繊維製品の表示ガイド(床敷物)
  • 厚生労働省:有害物質を含有する家庭用品の規制基準概要(床敷物に関係する規制の一覧)
  • 東京消防庁:防炎対象物品の案内(じゅうたん等の例示)
  • 日本税関:品目別原産地規則(PSR)検索の注意(協定ごとのHS版)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第56類:ウォッディング、フェルト、不織布及び特殊糸並びにひも、綱及びケーブル並びにこれらの製品(Wadding, felt and nonwovens; special yarns; twine, cordage, ropes and cables and articles thereof)

用語の約束(本稿内):部=Section、類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、注=Notes(部注/類注)

第56類は、ウォッディング(詰物材)、フェルト、不織布といったシート状素材に加えて、特殊糸、ひも・綱・ロープ・ケーブル、網、そしてそれらの製品までを扱います。材料・構造・加工(塗布、被覆、積層)によって第39類(プラスチック)や第40類(ゴム)、さらに第96類(衛生用品)に飛ぶため、見た目や品名だけで決めると誤分類が起きやすい類です。

この記事は、ビジネスマンが社内で分類の初期判断をするために、どこでコードが変わるか、何の資料が必要かを実務目線で整理したものです。最終判断は税関に委ねられるため、重要案件は事前教示や専門家相談も前提にしてください。


1. まず全体像:第56類の9つの項(4桁)で地図を作る

第56類は、5601から5609までの9項で構成されています。まずは製品がどのグループに属するか(詰物材か、フェルトか、不織布か、糸か、ロープか、網か、製品か)を決めると、分類が一気に安定します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(現場での呼び名)最初に確認する分岐ポイント
5601ウォッディング及びその製品、フロック、繊維ダスト等詰綿、キルト用綿、フィルター用ロッド、フロック繊維長(フロックは5mm以下)、製品が衛生用品か
5602フェルトニードルフェルト、工業用フェルトフェルト定義(ニードル、ステッチボンディング含む)、プラやゴムでの処理状態
5603不織布スパンボンド、メルトブローン、湿式不織布、フィルター材目付(25/70/150g/㎡境界)、片面か両面かのプラ・ゴム被覆
5604ゴム糸等、ゴムやプラを被覆した糸・ストリップ等ゴム糸の被覆糸、被覆糸、被覆ストリップ被覆が肉眼で判別できるか(見えない場合は他章)
5605金属を交えた糸メタリックヤーン金属の形態(糸・ストリップ・粉)、装飾用か補強用か
5606ジンプヤーン、シェニールヤーン、ループウェールヤーンファンシーヤーン、シェニール糸糸の構造(毛羽立ち、房状、ループ構造)
5607ひも、綱、ロープ、ケーブル農業用ひも、PPロープ、係船ロープ部注の定義(デシテックス閾値)、組物かどうか
5608結び網地、漁網等の網漁網、安全ネット、虫よけネット結び網地か、製品化された網か、編み網か
5609糸・ひも・綱等の製品(他に該当しない)靴ひも、衣類用ひも、なわばしご等他の見出しに特掲がないか、除外例(42.01、59.11等)

上表の根拠は、WCOのHS2022第56章条文と、日本税関の第56類注・解説です。


2. 最重要:第56類の注(Notes)で必ず飛び先をチェックする

第56類は「注」を外すと別の類に移る代表例が多いです。実務では、見出しの前に注を読む方が早いケースが多々あります。

2-1. 注1:第56類に入らない代表例

次のようなものは第56類から除外されます。品名が不織布やフェルトに見えても、分類先が変わります。

  • 香料・化粧品、石けん・洗浄剤、磨き料、織物柔軟剤などを含浸・塗布等したウォッディング、フェルト、不織布で、繊維が単なる媒体になっているもの
    例:洗浄成分を含んだシート等は、第33類、第34.01項、第34.05項、第38.09項など側で検討が必要です。
  • 第58.11項の紡織用繊維の物品(いわゆるキルティング品など)
  • 研磨材の粉や粒をフェルトや不織布に付着させたもの(68.05)
  • 雲母をフェルトや不織布で裏張りしたもの(68.14)
  • 金属はくをフェルトや不織布で裏張りしたもの(主に第14部・第15部)
  • 生理用ナプキン、タンポン、おむつ、おむつ中敷き等(96.19)
    不織布や吸収体が主材料でも、衛生用品としての完成品は第96類に移るのが典型です。

2-2. 注3:フェルトと不織布は、プラやゴムでの処理があっても第56類に残る場合がある

56.02(フェルト)と56.03(不織布)は、プラスチック又はゴムで含浸・塗布・被覆・積層したものも含みます。さらに、56.03はプラやゴムが結合剤になっている不織布も含みます。

ただし、次の条件に当たると第39類や第40類へ移ります。ここが誤分類の最大ポイントです。

  • フェルトで、繊維重量が全重量の50%以下、またはプラ・ゴムの中に完全に埋め込まれている
  • 不織布で、プラ・ゴムの中に完全に埋め込まれている、または両面が完全にプラ・ゴムで塗布・被覆され、肉眼で判別できる
  • 多泡性プラやセルラーラバーの板・シート等にフェルトや不織布を結合し、繊維が補強目的だけで使われている

このルールは第56類注で明示されています。

2-3. 注4:56.04は、被覆が肉眼で見えないなら対象外

56.04はゴムやプラスチックで被覆した糸等を扱いますが、被覆が肉眼で判別できないものは56.04に入らず、通常は第50類から第55類や第54.04・54.05へ戻ります。色の変化だけでは被覆の有無を判断しません。


3. 5601から5603の勝負どころ:詰物材、フェルト、不織布の境界を整理する

3-1. 5601(ウォッディング、フロック等)でよくある実務用途

ウォッディングは詰物として肩当て、衣類の内張り、家具、包装材、衛生用途などに幅広く使われます。反物状や一定寸法に切ったもの、ほかに特掲のないウォッディング製品も含まれます。

5601はウォッディングだけでなく、次も含みます。

  • 長さ5mm以下の繊維(フロック)
  • 紡織用繊維のダスト、ミルネップ

実務で確認すべき資料は、繊維長(最大値を含む分布)と、製造工程(切断、粉砕、回収くずなど)です。

3-2. ウォッディングと不織布が混同される理由と見分け方

日本税関の解説では、ウォッディングの内部層は不織布より分離しやすい傾向がある一方、粘着材処理が内部層まで浸透している場合は、内部層が分離できても56.03の不織布に属し得る点が注意事項として示されています。

社内での質問例

  • 接合は何で行っていますか(熱、針、接着剤、ラテックス等)
  • 接着剤は表面だけですか、内部層まで浸透していますか
  • 目付(g/㎡)と厚みはどれくらいですか
  • 層構造(片面被覆、両面被覆、積層順序)はどうなっていますか

3-3. 5602(フェルト)と5603(不織布)の境界でつまずきやすい点

第56類注では、フェルトの定義にニードルルームフェルトと、ウェブ自体の繊維を使うステッチボンディングによる織物類を含むとされています。

日本税関の解説では、ニードルルームの製法や用途(断熱、防音など)に触れつつ、ニードリングが補助的である場合や、短繊維ウェブと長繊維ウェブをニードルした物品は不織布とみなす旨が示されています。フェルトと不織布は製法と構造の説明が必要になる典型です。

3-4. 5603(不織布)は目付で号が動く

HS6桁では、不織布は大きく次のように分かれます。

  • 人造繊維の長繊維製のもの:5603.11から5603.14(目付が25、70、150g/㎡境界)
  • その他:5603.91から5603.94(同じく目付境界)

このため、仕入先仕様書に必ず「目付(g/㎡)」を入れることが重要です。

3-5. 実務に役立つ分類例(日本税関の分類例規から)

分類の考え方が具体的に分かる例として、次が公開されています。

  • 5601.22:シガレットフィルター用のロッド(アセチルセルロース繊維を処理し紙で包んだもの)
  • 5601.30:ナイロン糸の破片(約2から6mmに切断しタイヤ補強材に使用)
  • 5603.12又は5603.13:湿式集積で製造、セルロース繊維を混合し結合剤を含浸した不織布(60から80g/㎡)
  • 5603.14:PVCシートにPP不織布の裏張りを結合したテーブルクロス(第56類注3を踏まえた整理)

分類例の読み方としては、品名よりも「構造」「工程」「数値(長さ、目付、含浸)」に着目すると、社内判断で再現しやすくなります。


4. 5604から5606:特殊糸の実務ポイント

4-1. 5604(ゴム糸等)で最初に見るべきこと

56.04は、ゴム糸やゴムコード(繊維で被覆したもの)、さらに繊維糸や54.04・54.05のストリップ等でゴム・プラスチックを含浸・塗布・被覆・シースしたものを扱います。

ただし、被覆が肉眼で判別できない場合は56.04ではなく、通常は糸として第50類から第55類、または54.04・54.05へ戻ります。ここは第56類注4で明示されています。

社内での質問例

  • 被覆は目視で分かりますか(断面写真も含む)
  • 被覆材はゴムですか、プラスチックですか
  • 被覆の範囲は全面ですか、部分ですか
  • ベースは糸ですか、ストリップですか

4-2. 5605(金属を交えた糸)は、装飾用のメタリックヤーンが典型

56.05は、繊維糸または54.04・54.05のストリップ等に、金属を糸・ストリップ・粉の形で組み合わせたものや、金属で被覆したものを扱います。

誤りが起きやすいポイント

  • 補強目的の金属線入りロープは、部注の定義により56.07扱いになる場合があります(下の5607参照)。

4-3. 5606(ジンプ、シェニール、ループウェール)は構造説明が必要

56.06は、ジンプヤーン、シェニールヤーン、ループウェールヤーンなど、構造が特殊な糸を扱います。

日本税関の解説では、シェニールヤーンの構造や、フロックを付着して得るタイプなども説明されています。外観の毛羽立ちだけでなく、製造方法や糸構造の説明があると分類が安定します。

分類例規には、手芸用の毛羽立った糸が5606.00に分類された事例があります。


5. 5607(ひも、綱、ロープ、ケーブル)の最大の落とし穴は部注の定義

5-1. 糸なのか、ひも・綱なのかはデシテックスで決まる場合がある

第11部注3では、一定の条件を満たす糸を「ひも、綱、ロープ、ケーブル」とみなす定義が置かれています。特に人造繊維は10,000デシテックスを超えると対象になります。

主な閾値(要約)

  • 絹または絹くず:20,000デシテックス超
  • 人造繊維:10,000デシテックス超(第54章の複数モノフィラメント糸なども含む)
  • 麻や亜麻:研磨や光沢加工の有無で閾値が異なる
  • コイヤ:3プライ以上
  • その他植物繊維:20,000デシテックス超
  • 金属糸で補強されたもの

ただし例外も多く、毛糸や紙糸は原則としてこの定義から外れる、56.05や56.06は除外される、などの整理が同じ部注にあります。

社内での質問例

  • 総繊度(デシテックス、テックス)はいくつですか
  • 単糸か、双糸か、ケーブルか
  • ねん糸数(m当たりのより数)はいくつですか
  • 金属補強はありますか(装飾か補強か)

5-2. 5607の対象は、よったものだけでなく組んだものも含む

56.07は、よることや組むことによって製造されるひも、綱、ケーブルを扱い、組んだものは単位長さ当たりの重量にかかわらず対象になり得ます。58.08の組ひもとの違いは、用途に適するようにち密で硬く組まれている点などで説明されています。

5-3. 5607.21と5607.41(結束用・包装用ひも)は強度要件が実務で効く

HS6桁では、サイザル等の結束用・包装用ひも(5607.21)と、ポリエチレン又はポリプロピレンの結束用・包装用ひも(5607.41)が別掲されています。

日本税関の解説では、これらが一定の切断力の最少値を満たすことを前提に説明され、サイザル等では長さ当たりの仕様から切断力を求める式、ポリエチレン・ポリプロピレンでは切断力と結び目強度の考え方が示されています。実務では、強度試験成績書や仕様(kg当たり長さなど)を確実に取るのが安全です。

5-4. 実務に役立つ分類例

分類例規では、パラフィンワックスを薄く含浸させたポリエステル糸を密に編組し、機械用のコードとして使うものが5607.50に整理された事例があります。


6. 5608(網)と5609(その他の製品)は、似たもの排除が重要

6-1. 5608は「結び網地」と「製品にした網」

56.08は、ひも・綱から作った結び網地と、製品にした漁網その他の網を扱います。結び網地は56.07のひも等から作られ、58.04のチュール等とは区別されます。

製品にした網は、漁網、安全ネット、運搬用ネット、ハンモック、虫よけ網などが例示され、リングやおもり、浮き等の付属品があっても分類に影響しない旨が説明されています。

除外として、反物状の編み網(第60類)、ヘアネット(65.05)、運動用ネット(第95類)などが挙げられています。

6-2. 5609は「糸やひも等の製品」だが、他項や他類へ逃げるものが多い

56.09は、糸、54.04・54.05のストリップ等、56.07のひも・綱・ケーブルなどの製品で、他の項に該当しないものを扱います。靴ひも、衣類用ひも、引き綱、船のフェンダー、なわばしご、皿ふき等の例が挙げられています。

一方で、手綱など(42.01)、特定機械用の一定寸法コード(59.11)、組みひもから製造された靴ひもが63.07になる例、ロープソール(64.06)など、除外も具体的に示されています。56.09は最後の受け皿なので、除外を先に潰す方が安全です。


7. よくある誤分類8選(原因と対策)

  1. 間違い:おむつや生理用品を不織布(5603)で申告する
  • なぜ起きる:材料が不織布で、見た目がシートだからです。
  • 正しい考え方:衛生用品の完成品は第96.19項として第56類から除外されます。
  • 予防策:用途と完成品かどうかを確認し、製品仕様で「衛生用品用途」「吸収体の有無」「形状」を固定します。
  1. 間違い:薬剤や洗浄成分を含浸したシートを5601や5603にしてしまう
  • なぜ起きる:基材が不織布であるためです。
  • 正しい考え方:繊維が単なる媒体となる場合は、第33類、第34類、第38類などへ移る可能性があります。
  • 予防策:含浸物の成分と機能、製品の本質(基材か薬剤か)を仕様書で確認します。
  1. 間違い:片面PVCラミネート不織布を第39類のプラスチックシートとして処理する
  • なぜ起きる:表面がプラスチックに見えるためです。
  • 正しい考え方:不織布がプラで被覆・積層されても、条件次第で56.03に残ります。両面被覆で肉眼判別できる等の条件で第39類へ移ります。
  • 予防策:両面被覆か、埋め込みか、繊維重量割合、補強目的かを確認し、断面写真と構成比を回収します。
  1. 間違い:ウォッディング(5601)と不織布(5603)を外観だけで決める
  • なぜ起きる:どちらもふわっとしたシートに見えるためです。
  • 正しい考え方:接着剤が内部層まで浸透するなど、工程や構造で5603扱いになり得ると解説されています。
  • 予防策:製造工程(熱、針、接着剤)と層構造を聞き、試験成績書や工程図を取得します。
  1. 間違い:フェルト(5602)と不織布(5603)の境界で、ニードルパンチ品を全部フェルト扱いにする
  • なぜ起きる:ニードル=フェルトという思い込みです。
  • 正しい考え方:フェルト定義と、不織布とみなすケースが説明されています。
  • 予防策:基材の有無、接合方法、最終物性、用途説明をセットで集めます。
  1. 間違い:被覆糸を56.04に入れたが、被覆が肉眼で判別できない
  • なぜ起きる:色が変わっているだけで被覆と誤認するためです。
  • 正しい考え方:肉眼で判別できない被覆は56.04の対象外です。
  • 予防策:断面観察、被覆厚、写真、被覆材のMSDSを確認します。
  1. 間違い:太い人造繊維糸を第54類や第55類の糸として扱い続ける
  • なぜ起きる:糸の延長として理解してしまうためです。
  • 正しい考え方:第11部注3で、人造繊維が10,000デシテックス超などの条件でひも・綱扱いになります(例外もあり)。
  • 予防策:デシテックス、より数、構造、例外該当の有無を確認します。
  1. 間違い:網を5608に入れたが、実は編み網やスポーツ用ネットだった
  • なぜ起きる:網という言葉で一括りにするためです。
  • 正しい考え方:反物状の編み網は第60類、スポーツ用ネットは第95類など、除外が明記されています。
  • 予防策:製造方法(結び網か編みか)、用途(スポーツ用か)を明確にします。

8. 現場で揃えると分類が強くなる資料

第56類は構造と数値が命です。インボイス品名より、次の資料が最重要です。

  • 構成表(層構造、材料名、重量割合、繊維重量割合)
  • 仕様書(目付g/㎡、厚み、繊維種、繊維長、デシテックス、より数)
  • 加工情報(含浸・塗布・被覆・積層の有無、両面か片面か、結合剤の種類)
  • 物性資料(切断力、結び目強度、耐候性など。特に5607.21、5607.41を狙う場合)
  • 写真(表裏、断面、巻姿、梱包、用途が分かる状態)
  • 用途説明(衛生用品か、工業用フィルターか、包装用か、漁網か等)

9. まとめ:第56類の最短チェックリスト

  • Step1:製品の形は何か(ウォッディング、フェルト、不織布、糸、ひも、網、製品)
  • Step2:第56類注1の除外に当たらないか(特に96.19、58.11、研磨材付きなど)
  • Step3:フェルト・不織布のプラ・ゴム被覆は、注3で第39類・第40類へ飛ばないか(両面被覆、埋め込み、50%以下など)
  • Step4:56.04は被覆が肉眼で見えるか(見えないなら他章)
  • Step5:5603は目付(25/70/150g/㎡)を確定したか
  • Step6:5607は第11部注3のデシテックス閾値と例外を確認したか
  • Step7:5608と5609は除外先(第60類、第95類、59.11等)を最後に確認したか

参考資料(出典、参照日:2026-02-24)

  • WCO:HS2022 Chapter 56(見出し、章注、号体系)
  • 日本税関:第56類 注(類注)
  • 日本税関:関税率表解説 第56類(総説、各項解説、境界・除外の実務説明)
  • WCO:HS2022 Section XI Notes(第11部注3など、ひも・綱の定義、made upの考え方)
  • 日本税関:分類例規(第56類の具体事例)
  • 日本税関:関税率表解説 新旧対照表(HS2022改正時の記載変更の確認用)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第55類:人造繊維の短繊維及びその織物(Man-made staple fibres)

用語の約束(本稿内):部=Section、類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、注=Notes(部注/類注)

第55類は、人造繊維の短繊維(ステープル)を中心に、一定条件を満たす長繊維のトウ(tow)、人造繊維のくず、紡績糸、織物までを扱う類です。実務では、品名の印象だけで決めると外しやすく、特に「トウの数値要件」「縫糸かどうか」「小売用かどうか」「混用比率と織物の目付」でコードが動きます。


1. まず結論:この類に入るもの/入らないもの

1-1. 第55類に入る代表例

  • 合成繊維の長繊維のトウ(一定要件を満たすもの):ポリエステルトウ、ナイロン系トウなど(55.01)
  • 再生繊維又は半合成繊維の長繊維のトウ:アセテートトウなど(55.02)
  • 合成短繊維(紡績準備の処理をしていない):ポリエステル短繊維(ベール梱包)など(55.03)
  • 再生繊維又は半合成繊維の短繊維(紡績準備の処理をしていない):ビスコース短繊維など(55.04)
  • 人造繊維のくず:ノイル、糸くず、反毛した繊維など(55.05)
  • 紡績準備後の短繊維:カード、コーム等を経た短繊維や処理済みくず(55.06、55.07)
  • 縫糸:人造繊維短繊維の縫糸(55.08)
  • 紡績糸(縫糸を除く):小売用でない糸(55.09、55.10)/小売用の糸(55.11)
  • 織物:合成短繊維の織物(55.12〜55.15)/再生・半合成短繊維の織物(55.16)

1-2. 第55類から除外されやすい代表例(除外先の目安)

  • 長繊維の糸や織物など、第54類(人造繊維の長繊維)で扱うもの(例:フィラメント糸、長繊維織物など)
  • 長さが5ミリメートル以下の紡織用繊維(フロック)、繊維ダスト、ミルネップ:56.01
  • 炭素繊維及びその製品:68.15
  • ガラス繊維及びその製品:70.19
  • 石綿および石綿製品(該当する場合):25.24、68.12、68.13

2. 最重要ポイント:トウ(tow)の数値要件で55.01/55.02に入るかが決まる

第55類の類注(注1)は、55.01と55.02に入る「トウ」を数値条件で限定しています。条件を満たさないと、55.03/55.04や、第54類など別の行先になり得ます。

2-1. 55.01/55.02に入るトウの要件(5条件)

判定項目基準実務メモ
長さ2メートルを超える2メートル以下なら55.03または55.04に回る可能性が高いです
より数1メートルにつき5未満仕様書で撚りの有無と撚り数を確認します
単糸繊度構成する1本の長繊維が67デシテックス未満67デシテックス以上の長繊維が混じると別分類リスクが上がります
延伸合成繊維のトウは延伸済みで、長さの2倍を超えて伸びない延伸の有無は分類トラブルの典型ポイントです
総繊度1束につき20,000デシテックス超20,000以下だと55.01から外れる可能性があります

上の要件は、第55類の類注(注1)として明示されています。

2-2. トウが55.01/55.02から外れる典型パターン

  • 長さが2メートル以下のトウは、55.03または55.04に属します(要件を満たしていても「長さ」で落ちます)。
  • 55.01の説明では、総繊度が20,000デシテックス以下のものや、延伸していない長繊維(状況により)は54.02側へ行く例が示されています。トウとフィラメント糸の境界では、総繊度と延伸が特に効きます。
  • 構成する1本の長繊維が67デシテックス以上など、単糸繊度が大きい場合は、54.04や39類になることがある旨が示されています(素材が「繊維」扱いか、プラスチックのストリップ等扱いかまで波及します)。

3. 第55類の地図:項(4桁)の全体像

まずは「何の形状か(短繊維/トウ/くず/糸/織物)」で項が決まります。次に、合成か再生・半合成か、紡績準備の有無、小売用かどうか、混用・目付などで号(6桁)へ落とします。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5501合成繊維の長繊維のトウポリエステルトウ、ナイロン系トウ類注1の5条件を満たすトウだけ
5502再生繊維又は半合成繊維の長繊維のトウアセテートトウ55.01の考え方を準用(合成の延伸条件を除く考え方)
5503合成短繊維(カード・コーム等の処理前)PSFベール(未カード)長さ2m以下のトウがここへ入る場合あり
5504再生・半合成短繊維(カード・コーム等の処理前)ビスコース短繊維(未カード)5503と同様の考え方
5505人造繊維のくず(ノイル、糸くず、反毛など)スピニングくず、反毛繊維フロック(56.01)と混同しやすい
5506合成短繊維(カード・コーム等の処理後)カード済みPSF、トップ等紡績準備の有無が分岐
5507再生・半合成短繊維(カード・コーム等の処理後)カード済みビスコース短繊維5506と同様
5508人造繊維短繊維の縫糸縫製用のミシン糸部注の「縫糸」定義で判定
5509合成短繊維の紡績糸(小売用でない、縫糸除く)工業用コーン糸小売用かどうかで5511に動く
5510再生・半合成短繊維の紡績糸(小売用でない、縫糸除く)ビスコース糸(工業用)5509と同様
5511人造繊維短繊維の紡績糸(小売用、縫糸除く)小巻の手芸糸小売用の定義は部注で数値条件あり
5512合成短繊維の織物(合成短繊維が85パーセント以上)ポリエステル短繊維主体の服地85パーセント判定が重要
5513合成短繊維の織物(85パーセント未満、綿が主、170g/㎡以下)T/C薄地(目付軽め)85パーセント未満、綿が主、目付170以下
5514合成短繊維の織物(85パーセント未満、綿が主、170g/㎡超)T/C厚地(目付重め)目付170超で5514へ
5515その他の合成短繊維の織物混用の多い合繊短繊維織物「綿が主」条件に当てはまらない等
5516再生・半合成短繊維の織物レーヨン短繊維織物再生・半合成側の織物

項の範囲はHSの見出し(WCO)と、日本税関の解説で確認できます。


4. 6桁(号)で実務上重要な分岐

4-1. 5508(縫糸)か、5509〜5511(縫糸以外の糸)か

縫糸は「複数(合糸)またはケーブル糸であること」「支持体に巻かれた状態で重量が1,000g以下」「縫糸としての仕上げ」「最終撚りがZ撚り」という部注の定義で判定します。単に品名がミシン糸でも、定義に当てはまらないと縫糸として扱えないことがあります。

4-2. 5511(小売用)か、5509/5510(小売用でない)か

「小売用にしたもの」は、支持体に巻いた糸の重量や、玉巻・かせの重量、また工業用形態(コップ、管、ピルン等)などの例外で定義されています。実務では、包装形態と重量、用途(手芸用か工業用か)の証拠が必要です。

4-3. 5512〜5514で頻出する「85パーセント」と「170g/㎡」

織物側の頻出分岐は次の2つです。

  • 合成短繊維が全重量の85パーセント以上なら、基本的に5512(合成短繊維の織物)側の枠になります。
  • 合成短繊維が85パーセント未満で、混用繊維の全部又は大部分が綿で、目付が170g/㎡以下なら5513、170g/㎡を超えるなら5514です。

ここでの「綿が主」「85パーセント判定」「目付」は、インボイスの品名だけでは確定できません。試験成績書、混用率表、織物仕様(g/㎡)が必要になります。

4-4. 55.05(くず)と56.01(フロック等)の境界

第55類の解説では、56.01の「長さ5ミリメートル以下の繊維(フロック)」や「フロック、ダスト、ミルネップ」は第55類に入らないと明示されています。くずの形状や粒度が細かいと、55.05ではなく56.01へ行く可能性があるため、繊維長の情報が重要です。

4-5. 混用繊維の基本ルール(第11部注2)

第50類〜第55類の混用繊維は、原則として「重量が最も大きい繊維」で分類します。どれも優勢でない場合は「後ろに出てくる見出し(最後に記載された繊維側)」で分類するルールです。混用率の算定根拠(製品全体の重量比)を確実に取るのが安全です。


5. 判定フロー(迷ったときの順番)

社内の一次判定は、次の順番にすると手戻りが減ります。

  1. 材質の確定
  • そもそも「人造繊維」に該当するかを確認します。定義は第54類の注で示され、合成繊維と再生・半合成繊維の区分もここで整理されます。
  1. 形状の確定(ここで項がほぼ決まります)
  • トウか(55.01/55.02の候補)
  • 短繊維か(55.03/55.04/55.06/55.07の候補)
  • くずか(55.05の候補)
  • 糸か(55.08〜55.11の候補)
  • 織物か(55.12〜55.16の候補)
  1. トウの場合は、類注1の数値条件をチェック
  • 5条件を満たせば55.01/55.02
  • 長さ2メートル以下など条件外なら55.03/55.04等に回り得る
  • 総繊度や延伸などで第54類へ動く可能性もあるため注意
  1. 短繊維の場合は「紡績準備の処理」の有無をチェック
  • カード、コーム等の処理前:55.03/55.04
  • 処理後:55.06/55.07
  1. 糸の場合は「縫糸」か「小売用」かを先に確定
  • 縫糸(55.08)は部注の定義で判定
  • それ以外は、小売用(5511)か小売用でない(5509/5510)かを部注の定義で判定
  1. 織物の場合は「85パーセント」「綿が主」「目付170g/㎡」をチェック
  • 5512〜5514の分岐が頻出です。混用の扱い(部注2)も同時に確認します。

6. よくある誤分類と、社内での防ぎ方

  1. 間違い:トウを55.01/55.02に入れたが、実は類注1の要件を満たしていない
  • なぜ起きる:品名がtowで、数値条件(長さ、総繊度、延伸など)を取らずに決めてしまうためです。
  • 正しい考え方:55.01/55.02は類注1の5条件を全て満たすトウに限定されます。
  • 予防策:供給者仕様書で「長さ」「撚り」「単糸繊度」「延伸」「総繊度」を必ず回収します。
  1. 間違い:長さ2メートル以下のトウを55.01にした
  • なぜ起きる:トウはトウ、という思い込みで長さ条件を見落とします。
  • 正しい考え方:2メートル以下は55.03または55.04へ回る旨が明記されています。
  • 予防策:梱包状態だけでなく、トウの実測値または製造仕様の長さ情報を取得します。
  1. 間違い:55.05(くず)と56.01(フロック等)を取り違えた
  • なぜ起きる:どちらも「繊維の細片」に見え、見た目で判断してしまうためです。
  • 正しい考え方:フロックは長さ5ミリメートル以下として56.01側で整理され、55類から除外されます。
  • 予防策:繊維長(分布)と製造由来(切断か、粉砕か、紡績くずか)を確認します。
  1. 間違い:縫糸(55.08)を、単に小巻だから5511にした
  • なぜ起きる:小巻=小売用糸、という見た目判断になりがちです。
  • 正しい考え方:縫糸は部注で定義され、Z撚り、仕上げ、支持体重量などの要件で判定します。
  • 予防策:糸の撚り方向、仕上げ(縫糸用の処理)、支持体込み重量を確認します。
  1. 間違い:5511(小売用)か5509/5510(小売用でない)かを包装形態だけで決めた
  • なぜ起きる:ラベルや箱の有無で判断してしまうためです。
  • 正しい考え方:「小売用」は重量条件や工業用形態の例外を含む定義で決まります。
  • 予防策:支持体込み重量、玉巻・かせ重量、工業用形態(コップ等)かどうかを仕様書と現物写真で確認します。
  1. 間違い:織物で「85パーセント」判定を、糸番手や混率表示だけで推定した
  • なぜ起きる:混率ラベルと実重量比が一致している前提で進めてしまうためです。
  • 正しい考え方:見出し条件は重量比です。部注2の混用ルールも含め、製品全体の重量比で判定します。
  • 予防策:混用率の試験成績書、BOM、製造ロットの混率管理記録を取得します。
  1. 間違い:5513と5514を取り違えた(目付170g/㎡の見落とし)
  • なぜ起きる:混用条件だけ見て、目付を確認しないためです。
  • 正しい考え方:5513は170g/㎡以下、5514は170g/㎡超で明確に分かれます。
  • 予防策:検査成績書または製品仕様でg/㎡を取得し、対象生地がどちらに該当するかを記録します。
  1. 間違い:第55類のつもりで進めたが、実は炭素繊維やガラス繊維だった
  • なぜ起きる:用途や外観が似ており、材料定義を飛ばしてしまうためです。
  • 正しい考え方:炭素繊維(68.15)やガラス繊維(70.19)は第55類から除外されます。
  • 予防策:材質証明(MSDS、材料証明書)で繊維種を確定してから分類に入ります。

7. HS2017からHS2022で変わった点(第55類で実務に効きやすいところ)

第55類では、少なくともHS2017からHS2022への変更として、55.01(合成繊維の長繊維のトウ)の一部で細分が入っています。

比較(HS2017→HS2022)変更タイプ該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017の5501.10(ナイロンその他のポリアミドのトウ)→ HS2022で分割分割5501.11(アラミド)/5501.19(その他)アラミドのトウを別掲して識別性を上げるマスタの旧コード踏襲に注意。アラミド関係の取引は統計・管理面で誤りが見つかりやすい

この分割の趣旨として、相関表の備考では「二重用途品目の監視・管理を容易にするため」と記載されています。


8. 参考資料(出典、参照日:2026-02-24)

  • 日本税関:第55類(人造繊維の短繊維及びその織物)類注
  • 日本税関:関税率表解説 第55類(総説、各項解説、除外例、数値条件)
  • WCO:HS2022 Chapter 55(Man-made staple fibres)
  • WCO:HS2022 Section XI Notes(混用ルール、小売用、縫糸の定義など)
  • WCO:HS2022 Chapter 54(人造繊維の定義、Chapter 55のトウとの関係)
  • 日本税関:第54類注(人造繊維の定義、日本語)
  • 日本税関:関税率表解説 第56類(56.01 フロック等の説明)
  • WCO:HS2022 Chapter 56(56.01でフロックを5mm以下とする見出し)
  • WCO相関表(HS2017–HS2022):5501.10の細分理由(dual use監視等)
  • WCO:HS2017 Chapter 55(旧コード体系の確認)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第54類:人造繊維の長繊維並びに人造繊維の織物及びストリップその他これに類する人造繊維製品(Manmade filaments; strip and the like of manmade textile materials)

冒頭で用語を統一します。**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**です。

第54類は「合成繊維・再生繊維(レーヨン等)の“長繊維(フィラメント)”」と、その織物/モノフィラメント/ストリップを扱います。まずは**“長繊維か短繊維か”、次に“縫糸か否か”、さらに“小売用(小巻)か工業用(コーン等)か”、最後にモノフィラメントやコーティング有無**を詰めると迷いが激減します。 (世界税関機構)


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの

この類に入る代表例

  • 合成フィラメント縫糸(ポリエステル縫糸・ナイロン縫糸の小巻)→ 5401 (世界税関機構)
  • 工業用の合成フィラメント糸(コーン巻のポリエステル/ナイロン糸、POY含む)→ 5402 (世界税関機構)
  • 再生繊維フィラメント糸(レーヨン糸等、縫糸でない)→ 5403 (世界税関機構)
  • 合成モノフィラメント(67dtex以上、断面寸法≦1mm)や合成ストリップ(見掛け幅≦5mm) → 5404 (世界税関機構)
  • 合成長繊維の織物(コーティング等のない一般織物/産業資材織物の一部)→ 5407 (世界税関機構)
  • 再生繊維長繊維の織物(アセテート含む) → 5408 (世界税関機構)

この類から除外されやすい代表例

  • 人造繊維のトウ(tow):第55類へ(例:合成長繊維トウ 5501 等) (世界税関機構)
  • 太物の“ひも・ロープ”扱い:一定条件を満たす糸は「twine/cordage/ropes/cables」として第56類(5607等)になり得る (世界税関機構)
  • タイヤコード織物:第59類 5902(“tyre cord fabric”として別建て) (世界税関機構)
  • プラスチックで目視できるコーティング等のある織物:第59類 5903 等へ移り得る (世界税関機構)
  • 断面寸法が1mm超のプラスチックモノフィラメント幅5mm超のプラスチックストリップ:第11部(繊維)から外れ、第39類側になり得る (世界税関機構)
  • デンタルフロス:第11部から除外(3306) (世界税関機構)

実務での最重要分岐

  • 縫糸(5401)か、縫糸以外の糸か:定義(重量・仕上げ・撚り方向)で決まります (世界税関機構)
  • 小売用(5406)か、非小売用(5402/5403)か:小売用の定義は包装形態・重量・例外で決まります (世界税関機構)
  • モノフィラメント/ストリップ(5404/5405)か、フィラメント糸(5402/5403)か:67dtex、断面寸法1mm、見掛け幅5mmが効きます (世界税関機構)

この類で誤分類が高コストになりやすい場面

  • EPA/FTAでPSR(品目別規則)が変わる場面:HSの付番を誤ると原産性判断が崩れます (税関総合情報)
  • 工業用高強力糸・産業資材(ロープ扱い/59類扱いとの境界):関税率・規制・統計が変わりやすい領域です (世界税関機構)

1. 区分の考え方

1-1. 分類の基本ルール

この類はGIR1(見出しと注の文言)が最重要です。特に「部注(Section XI Notes)」の定義が、項(5401〜5408)をまたいで効きます。次に、6桁の切り分けはGIR6で「同じレベルの号の文言+該当する注」で詰めます。 (世界税関機構)

「品名だけで決めない」ための観点は次の通りです。

  • 繊維の種類:合成(polyester/nylon等)か、再生(viscose rayon/acetate等)か (世界税関機構)
  • 形状:マルチフィラメント糸か、モノフィラメントか、ストリップか (世界税関機構)
  • 状態:縫糸として仕上げ済みか、工業用巻き(コーン/コップ等)か、小巻(小売用)か (世界税関機構)
  • 性能:高強力(high tenacity)該当か(cN/texの閾値) (世界税関機構)
  • 織物の場合:高強力糸由来、ストリップ由来、Note 9の「平行糸層の布」該当、コーティング等の有無 (世界税関機構)

1-2. 判定フロー

  • Step1:繊維の部(第11部)に残るか(プラスチック形状物、デンタルフロス等の除外を先に確認) (世界税関機構)
  • Step2:短繊維(第55類)ではなく、長繊維(フィラメント)か(トウは第55類へ) (世界税関機構)
  • Step3:縫糸か(5401の定義:重量・仕上げ・Z撚り) (世界税関機構)
  • Step4:縫糸でなければ、小売用の糸か(5406)/非小売用か(5402/5403) (世界税関機構)
  • Step5:合成(synthetic)か再生(artificial)かで 5402 と 5403、織物なら 5407 と 5408 を分ける (世界税関機構)
  • Step6:糸ではなくモノフィラメント/ストリップなら 5404(合成)/5405(再生)へ(67dtex・断面寸法・幅を確認) (世界税関機構)
  • Step7:織物なら 5407/5408 の中で「高強力」「ストリップ由来」「Note 9布」等の号を確認 (世界税関機構)
  • Step8:**タイヤコード織物(5902)目視できるコーティング(5903等)**など、59類に飛ばないか最終チェック (世界税関機構)

よく迷う境界例

  • 第54類(織物)↔ 第59類(産業用・コーティング布):タイヤコード織物(5902)、プラスチック含浸・被覆(5903)等 (世界税関機構)
  • 第54類(糸)↔ 第56類(ひも・ロープ):太さ(dtex)条件で“twine/cordage”扱いになり得る (世界税関機構)
  • 第54類(長繊維)↔ 第55類(短繊維・トウ):トウは54.02/54.03に含まれません (世界税関機構)

2. 主な項とその内容

2-1. 4桁の主なもの一覧表

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5401合成フィラメント縫糸ポリエステル縫糸、ナイロン縫糸(小巻)縫糸の定義(重量・仕上げ・Z撚り)を満たすか
5402合成フィラメント糸(縫糸除く、非小売用)工業用ナイロン糸、ポリエステル糸、POY小売用なら5406。高強力/伸縮糸等で号が分かれる
5403再生フィラメント糸(縫糸除く、非小売用)レーヨン糸、キュプラ糸小売用なら5406。高強力の定義に注意
5404合成モノフィラメント(67dtex以上・断面≦1mm)/合成ストリップ(幅≦5mm)ブラシ用モノフィラ、人工ストロー材断面寸法>1mmや幅>5mmは繊維から外れる可能性
5405再生モノフィラメント(67dtex以上・断面≦1mm)/再生ストリップ(幅≦5mm)レーヨン系のストリップ等54.05材料の織物は5408側に含み得る(見出しに明記)
5406人造繊維フィラメント糸(縫糸除く、小売用)手芸糸(小巻・玉巻)小売用の定義(包装形態・重量・例外)で決まる
5407合成フィラメント織物(54.04材料の織物含む)裏地、産業資材織物の一部5902(タイヤコード)・5903(コーティング)との境界。Note 9布は別号
5408再生フィラメント織物(54.05材料の織物含む)レーヨン織物、アセテート織物日本側備考でアセテート等の扱いに注意

出典:WCO HS2022 第54章(見出し)および日本の第54類注記。 (世界税関機構)

2-2. 6桁で実務上重要な分岐

重要な「定義・閾値」早見表

論点実務で効く基準どこに書いてあるか
縫糸(5401)複糸/ケーブル糸で、支持体込み重量≦1,000g、縫糸用に仕上げ、最終Z撚り部注(Section XI Note 5)
小売用(5406)包装形態(リール/玉/かせ等)+重量基準(例:人造長繊維糸は85g基準が頻出)+例外(工業用ボビン等は除外)部注(Section XI Note 4)
高強力(high tenacity)ナイロン/ポリエステル:単糸>60 cN/tex、複糸/ケーブル>53 cN/tex。ビスコース:>27 cN/tex部注(Section XI Note 6)
“ひも・ロープ扱い”人造繊維糸で 10,000dtex超 などは“twine/cordage”扱い(ただし例外あり)部注(Section XI Note 3)
elastomeric yarn合成繊維フィラメント(テクスチャード除く)で、3倍伸長で切れず、2倍伸長後5分以内に1.5倍以下まで戻る部注(Section XI Note 13)
ポリアミドの範囲polyamides に aramids を含む部注(Section XI Note 12)

出典:WCO HS2022 Section XI Notes(第11部注)。 (世界税関機構)

間違えやすい6桁ペア/グループ

  1. 5401(縫糸) vs 5402/5403(糸)
  • どこで分かれるか:縫糸の定義(1,000g、仕上げ、Z撚り)を満たすか (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:撚り方向(S/Z)、仕上げ(ワックス/樹脂等)、巻き重量(支持体込み)
  • 典型的な誤り:「縫製に使う予定」だけで縫糸扱いにしてしまう(実物の“縫糸仕様”が必要)
  1. 5406(小売用) vs 5402/5403(非小売用)
  • どこで分かれるか:包装形態と重量が定義内か、かつ例外(工業用支持体)に当たらないか (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:支持体込み重量、包装形態(リール/玉/かせ/分割かせ)、工業用ボビン形状の有無
  • 典型的な誤り:85g/125gだけ見て即断(「工業用形態なら除外」など例外条件を落とす)
  1. 5402/5403(糸) vs 5404/5405(モノフィラメント/ストリップ)
  • どこで分かれるか:モノフィラメントが 67dtex以上か、断面寸法が 1mm以下か。ストリップは見掛け幅 5mm以下か (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:dtex、断面寸法、見掛け幅、材質(合成/再生)
  1. 5402(太糸) vs 5607(ひも・ロープ)
  • どこで分かれるか:人造繊維糸が 10,000dtex超等で“twine/cordage”扱いになるか(例外あり) (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:dtex、単糸/複糸/ケーブル、モノフィラの束か、撚り(特に例外の有無)
  1. 5407(織物) vs 5902/5903(第59類)
  • どこで分かれるか:**タイヤコード織物(5902)**か/**プラスチック含浸・被覆が目視できる(5903)**等か (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:用途(タイヤ補強)、織物仕様、コーティングの種類・目視可否、積層構造

3. 部注と類注の詳細解釈

3-1. 関連する部注

  • ポイント要約
    • 部注3:一定条件の太い糸は“twine/cordage/ropes/cables”扱いにし、56類側へ寄せるルール(ただし例外あり) (世界税関機構)
    • 部注4:小売用の定義(包装・重量)と例外(工業用形態など) (世界税関機構)
    • 部注5:縫糸の定義(1,000g、仕上げ、Z撚り) (世界税関機構)
    • 部注6:高強力(high tenacity)判定のcN/tex閾値 (世界税関機構)
    • 部注9:平行糸層を接着・熱で結合した“織物”も織物として扱う(5407.30等) (世界税関機構)
    • 部注12:ポリアミドにアラミドを含む(= 5402.11等に効く) (世界税関機構)
    • 部注13:elastomeric yarn(伸縮糸)定義 (世界税関機構)
    • 部注8:Note 7の「made up(製品化)」に該当すると、原則として54章の織物・糸ではなく56〜63章側へ行く、という大枠 (世界税関機構)
  • 実務での意味(具体例つき)
    • 小巻で販売されていても、工業用コップ/コーン等“工業用途を示す形態”なら「小売用」から外れる可能性があります(5406に寄せない) (世界税関機構)
    • 高強力は「商品名」ではなく**tenacity(cN/tex)**で確定します。仕様書に“high tenacity”と書かれていても、閾値未達なら該当しません (世界税関機構)
    • 平行糸層の接着布(Note 9)は、見た目が“織り”っぽくなくても、定義に当てはまれば織物として扱われます (世界税関機構)
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン

3-2. この類の類注

  • ポイント要約
    • 類注1:人造繊維(man-made fibres)の定義。合成(synthetic)と再生(artificial)の区別を明示し、**54.04/54.05のストリップ類は“人造繊維とみなさない”**旨も書かれています (世界税関機構)
    • 類注2:54.02/54.03にトウ(第55類)を含まない (世界税関機構)
  • 用語定義
    • 合成繊維=有機単量体の重合等で得るもの(例:ポリエステル、ポリアミド等)/再生繊維=セルロース等を溶解・化学処理して得るもの(例:ビスコース、キュプラ、アセテート等) (世界税関機構)
  • 除外規定

4. 類注が分類に与える影響

この章の目的は「類注・部注があるからこそ起きる分岐」を見える化することです。

  • 影響ポイント1:縫糸か否かで 5401 と 5402/5403 が割れる
    • 何を見れば判断できるか:支持体込み重量≦1,000g、縫糸用仕上げ、最終Z撚り (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:撚り方向写真、仕様書(仕上げ)、包装重量の実測、製品カタログ
    • 誤分類の典型:「縫製に使うから縫糸」→ 実物が工業糸(未仕上げ/撚り条件不一致)で5402が正しい
  • 影響ポイント2:小売用定義で 5406 と 5402/5403 が割れる
    • 何を見れば判断できるか:包装形態(リール/玉/かせ等)と重量、例外(工業用形態) (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:包装写真、支持体込み重量、巻き取り形状(コップ/コーン/ピルン等)、販売形態(一般消費者向けか工業向けか)
    • 誤分類の典型:重量だけで5406扱い→ 工業用途を示す支持体で例外に該当し、5402/5403に戻る
  • 影響ポイント3:高強力判定で 5402/5403 の号が変わる
    • 何を見れば判断できるか:cN/texの閾値(単糸・複糸で閾値が違う) (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:試験成績書、メーカー仕様(denier→tex換算根拠含む)、糸構成(単糸/複糸/ケーブル)
    • 誤分類の典型:「強い=高強力」→ 閾値未達/単糸・複糸の区別漏れ
  • 影響ポイント4:モノフィラ/ストリップの閾値で 5404/5405 へ飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか:67dtex、断面寸法≦1mm、見掛け幅≦5mm (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:図面、ノギス測定、dtexデータ、サンプル写真
    • 誤分類の典型:モノフィラを“糸”として5402へ → 67dtex以上なら5404側の可能性
  • 影響ポイント5:Note 9布の定義で 5407.30 等に割れる
    • 何を見れば判断できるか:平行糸層を接着/熱で結合しているか (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:製造工程図、断面観察、接着剤の有無(MSDS等)
    • 誤分類の典型:見た目が織物っぽくない→ Note 9該当を見落とす

5. 分類でよくある間違い

  1. 間違い:縫糸を5402/5403で申告
    • なぜ起きる:インボイス品名が “polyester filament yarn” 等で縫糸用途が書かれない
    • 正しい考え方:縫糸は定義(Note 5)で決まる (世界税関機構)
    • 予防策:撚り方向(Z)・仕上げ有無・支持体込み重量を仕様書に明記
  2. 間違い:小巻(小売用)を5402/5403で申告
    • なぜ起きる:小売用の定義を「小さい巻き=小売用」と誤解
    • 正しい考え方:包装形態と重量、例外まで含めてNote 4で判定 (世界税関機構)
    • 予防策:包装写真、支持体込み重量、巻き形状(コーン/コップ等)を提出資料化
  3. 間違い:工業用コーン巻きを5406(小売用)にしてしまう
    • なぜ起きる:重量基準だけ満たしているように見える
    • 正しい考え方:工業用途を示す支持体・形態は例外になり得る (世界税関機構)
    • 予防策:包装形態の説明(cops, cones等)をインボイスに追記、カタログ添付
  4. 間違い:太番手糸を5402のままにする(実は56類相当)
    • なぜ起きる:dtexを確認せず、糸=54章と決め打ち
    • 正しい考え方:一定条件でtwine/cordage扱い(Note 3)。ただし例外も必ず確認 (世界税関機構)
    • 予防策:dtex、撚り、構成(単糸/複糸/ケーブル)を社内で標準取得
  5. 間違い:モノフィラメントを5402で申告
    • なぜ起きる:“monofilament yarn”という呼び方に引きずられる
    • 正しい考え方:67dtex以上・断面寸法≦1mmなら5404/5405側が基本 (世界税関機構)
    • 予防策:断面寸法・dtexの数値を仕様書に必須項目化
  6. 間違い:コーティング織物を5407/5408で申告
    • なぜ起きる:基材が54章織物なので、そのまま申告しがち
    • 正しい考え方:5902(タイヤコード)や5903(プラスチック含浸・被覆等)など、59類が別建て (世界税関機構)
    • 予防策:コーティングの種類、目視可否、用途(タイヤ補強等)をヒアリング
  7. 間違い:レーヨンを合成繊維として扱い5402へ
    • なぜ起きる:“人工=合成”の誤解
    • 正しい考え方:合成(synthetic)と再生(artificial)の区分は類注で決まる (世界税関機構)
    • 予防策:原料ポリマー(セルロース系か)をMSDS/原料証明で確認
  8. 間違い:アラミドをポリアミド扱いから外してしまう
    • なぜ起きる:商品名(aramid)で別素材と誤認
    • 正しい考え方:部注12でpolyamidesにaramidsを含む (世界税関機構)
    • 予防策:材質表記に「aramid=polyamideの一種」注記、メーカー資料添付

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSRの関係

  • HSの付番(少なくとも6桁)が、PSR(品目別規則)の検索キーになります。誤分類すると、材料側HS・工程評価・RVC計算が全部ずれます。 (税関総合情報)
  • 典型的な落とし穴
    • 原料(ポリマー/チップ)と糸・織物のHSを混同
    • 小売用(5406)と非小売用(5402/5403)を取り違え、PSRが変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い

実務では「自社の申告HS(通常は最新運用)」と「協定附属書が参照するHS版」がズレることがあります。

  • 日EU・EPA:PSR表の列見出しに「Harmonized System classification (2017)」と明記されています
  • CPTPP(TPP11):PSRの見出しに「HS Classification (HS2012)」と明記されています (内閣官房)
  • RCEP:HS2022に置換されたPSRが2022年6月30日に採択され、2023年1月1日から実施と明記されています (税関総合情報)

ズレる場合の注意(一般論)

  • 協定が旧HS版参照の場合、**相関表(トランスポジション)**で旧→新の対応付けをしてからPSR適用を検討します。
  • HS2012→HS2017では54.02の一部に新設号(例:5402.53、5402.63)があり、旧版の“その他”から分岐したことが示されています。 (税関総合情報)

6-3. 実務チェック

  • そろえるデータ
    • BOM(材料表)、原価、工程フロー、原産国、非原産材料のHS、糸/織物の仕様(dtex、tenacity、包装形態)
  • 書類(一般論)
    • 原産地証明書類・自己申告の根拠資料、保存要件に沿った保管(協定・国で異なるため最新確認)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い

7-1. 変更点サマリー

比較変更タイプ該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし第54類(5401〜5408)見出し・注に実質的な改正は確認されませんHS6桁運用は原則同様。国内コードや協定参照HS版のズレには別途注意

根拠:WCO HS2017とHS2022の第54章本文(見出し・注)を突合すると同一であることを確認。 (世界税関機構)

7-2. 違うことになった根拠

  • 第54章について、WCOのHS2017版とHS2022版の章本文(NotesとHeadings)を比較し、見出し構造(5401〜5408)および章注が一致することから「HS2017→HS2022での変更なし」と整理しています。 (世界税関機構)
  • ただし、**国内コード(8桁/9桁等)**は国ごとに改正があり得るため、日本の統計番号・税率等は別途最新表で確認してください(HS6桁と混同しない)。 (税関総合情報)

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第54類は、HS2007→2012→2017→2022の流れで「章立ての大枠」は安定していますが、HS2012→HS2017で54.02の一部に新設号が確認できます。

期間主な追加・削除・再編旧コード→新コードの例
HS2007→HS2012第54類で大きな再編は確認されません― (世界税関機構)
HS2012→HS20175402.53(単糸・PP)と5402.63(複糸・PP)を新設旧:ex5402.59 → 新:5402.53(一定範囲)/旧:ex5402.69 → 新:5402.63(一定範囲) (税関総合情報)
HS2017→HS2022第54類で大きな再編は確認されません― (世界税関機構)

補足:ここでの“ex”は「旧号の一部が新号へ移る」ことを示す一般的な表現です(相関表の書き方)。 (税関総合情報)


9. 類注違反による通関トラブル

  • 事例名:縫糸要件未確認で5401申告
    • 誤りの内容:Note 5(縫糸定義)を満たさない糸を縫糸扱い (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が“sewing yarn”など曖昧
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延(一般論)
    • 予防策:撚り方向・仕上げ・重量の根拠資料を事前に揃える
  • 事例名:小売用の例外を落として5406申告
    • 誤りの内容:Note 4(小売用定義)の例外(工業用形態)を無視 (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:重量基準だけで判断、写真なし
    • 典型的な影響:差戻し・補正、到着後の用途確認要求(一般論)
    • 予防策:包装写真・支持体形状をインボイス/明細に明記
  • 事例名:太糸のロープ扱い(56類)を見落として54類申告
    • 誤りの内容:Note 3(twine/cordage定義)未確認 (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:dtexデータが社内にない、単糸/複糸不明
    • 典型的な影響:統計誤り、規制・原産地判断のやり直し(一般論)
    • 予防策:dtex・構成・撚りの標準取得
  • 事例名:コーティング織物を5407のまま申告
    • 誤りの内容:第59類 5903等の対象(含浸・被覆)を見落とし (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:基材が54類なので思考停止
    • 典型的な影響:差戻し、サンプル提出、通関遅延(一般論)
    • 予防策:コーティング仕様(目視可否)を仕様書で提示

10. 輸出入規制事項

日本前提で、第54類に関係しやすい「実務上の注意点」を挙げます(該当する場合のみ確認してください)。

  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第54類自体は食品・動植物ではないため、一般にSPSの中心領域ではありません(ただし最終製品用途によって別途あり得ます)。
  • その他の許認可・届出
    • 有害物質を含有する家庭用品の規制:家庭用繊維製品等について、アゾ化合物(特定芳香族アミン生成)などの基準が整理されています。対象品目・試験法・基準値はMHLW資料で確認が必要です。 (e-Gov 法令検索)
    • 家庭用品品質表示(繊維製品の表示):国内販売向けでは、繊維組成・取扱い方法等の表示ルールが規程・ガイドで示されています。 (e-Gov 法令検索)
    • 安全保障貿易管理(輸出):高性能繊維等は、HSではなく仕様(性能・用途等)で該当性を確認する必要があるため、METIの最新リスト・解釈資料で確認してください。 (e-Gov 法令検索)
  • 確認先
  • 実務での準備物(一般論)
    • 繊維:組成証明、染料/加工剤情報、試験成績書(必要時)
    • 糸/モノフィラ:dtex、tenacity、断面寸法、包装形態資料
    • 織物:コーティング仕様、用途説明、工程フロー

11. 実務チェックリスト

  • 分類前チェック
    • 材質(合成/再生)、糸構成(単糸/複糸/ケーブル)、dtex、tenacity、撚り方向、モノフィラ寸法、ストリップ幅
    • 包装形態(リール/玉/かせ/コーン/コップ)、支持体込み重量
  • 分類後チェック
    • 部注3/4/5/6/9/12/13の該当性(twine、小売用、縫糸、高強力、Note 9布、アラミド、伸縮糸) (世界税関機構)
    • 59類(5902/5903等)への飛びを再確認 (世界税関機構)
  • 申告前チェック
    • インボイス品名に「材質+形状+用途+規格(dtex/tenacity/寸法/包装)」を入れる
    • 補足資料(仕様書・写真・工程図)を同梱できる体制
  • FTA/EPAチェック
    • 協定が参照するHS版を確認し、必要なら相関表で照合
    • BOM、原価、工程、原産国、非原産材料HS、RVC計算根拠
  • 規制チェック

12. 参考資料

  • WCO(HS2022条文)
  • 日本税関・公的機関
  • FTA/EPA本文・付属書
    • 日EU・EPA:Annex 3-A/PSR表(HS classification (2017) 表記)
    • CPTPP:Annex 3-D(HS Classification (HS2012) 表記) (内閣官房)
    • RCEP:Transposed PSR in HS2022(採択日・実施日明記) (税関総合情報)
  • 規制(日本)
    • 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(e-Gov) (e-Gov 法令検索)
    • 規制基準概要(MHLW) (厚生労働省)
    • 家庭用品品質表示法(e-Gov)および繊維製品品質表示規程・ガイド(消費者庁) (e-Gov 法令検索)
    • 参照日:2026-02-23

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。