3915の大改編と、回収インフラ機器まで含む実務インパクト
2028年1月1日発効予定のHS2028は、WCO(世界税関機構)が取りまとめた299セットの改正を含みます。改正テーマには、環境・取締り目的でのモニタリング強化が明確に掲げられており、その代表格がプラスチック廃棄物(見出し3915)と、単回使用(single-use)プラスチック、さらに回収・選別に関わる機器です。(世界税関機関)
この記事では、HS2028で何がどう変わり、企業実務にどんな影響が出るのかを、ビジネス目線で整理します。

1. なぜ今、プラスチック廃棄物のHSが大きく動くのか
背景にあるのは、バーゼル条約(Basel Convention)のプラスチック廃棄物改正です。2019年に採択され、2021年1月1日から新しい区分(A3210、Y48、B3011)が有効になりました。ポイントは、国境を越えるプラスチック廃棄物の移動について、PIC手続(事前の同意手続)の対象範囲を明確化したことにあります。(バーゼル条約)
特に、PIC対象外になり得るB3011は「単一の非ハロゲン系ポリマーのみ」や「PE・PP・PETの混合(条件付き)」などを対象としつつ、ほぼ汚染がなく、他の廃棄物混入がないこと、環境上適正なリサイクルに向けられること、といった条件を伴います。(バーゼル条約)
HS2028では、この考え方を税関実務で扱いやすいように、HSコード側(3915)を大幅に細分化し、危険性・ポリマー種・混合形態で分類しやすくする方向が明確になっています。(連邦関税局)
2. HS2028の核心:見出し3915が「危険性」と「材質」で再設計される
HS2028では、見出し39.15(プラスチックのくず、切れ端、スクラップ等)が実質的に作り替えられます。大枠は次の3層です。(連邦関税局)
2-1. 3915.40:有害性のあるプラスチック廃棄物を切り出す
3915.40は、新設の小見出し注で定義される「一定の有害物質を含み、かつ危険特性を示す」プラスチック廃棄物のみを対象にします。注には、重金属類や有機ハロゲン化合物などの例示と、爆発性・引火性・腐食性・急性毒性・生態毒性等の危険特性が列挙されています。(連邦関税局)
実務的には、廃棄物として輸出入する際に、SDSや分析、汚染・添加剤情報などの裏取りが強く求められる領域です。
2-2. 3915.51〜3915.59:非ハロゲン系で、単一ポリマーかつ汚染が少ない廃棄物をポリマー別に分類
HS2028では、非ハロゲン系ポリマーの単一材(ほぼ汚染がなく他廃棄物の混入がない)を、材質別に細分します。代表例は次の通りです。(連邦関税局)
・3915.51 ポリエチレン系
・3915.52 ポリプロピレン系
・3915.53 スチレン系
・3915.54 ABS
・3915.55 PET
・3915.56 ポリカーボネート
・3915.57 ポリエーテル
・3915.58 尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂
・3915.59 その他
ここは、バーゼル条約B3011の「単一ポリマーで、ほぼ汚染がない」という条件と整合する思想が見えます。(バーゼル条約)
2-3. 3915.61、3915.62、3915.69:ハロゲン系やフッ素系を明確に分ける
ハロゲン系ポリマーを含む廃棄物は別建てに整理されます。PVCのみのもの(3915.61)や、特定フッ素系ポリマーの製造くず(3915.62)などが明示され、その他は3915.69に整理されます。(連邦関税局)
2-4. 3915.91:PE・PP・PETの混合(条件付き)を独立コードに
PE・PP・PETのみからなる混合で、ほぼ汚染がなく他廃棄物の混入がない場合を3915.91に整理します。その他は3915.99です。(連邦関税局)
さらに重要なのが、小見出し注のルールです。
「物理的に分離可能な異種ポリマーの混合廃棄物」は、単一ポリマー扱いの区分に入れられず、3915.40、3915.69、3915.91、3915.99のいずれかにしか分類できない、と明記されます。(連邦関税局)
これは、現場で起きがちな「混合だけど、主材で押し込む」運用にブレーキがかかることを意味します。
3. 「廃棄物」だけではない:単回使用プラスチックの定義とコード整備
HS2028では、Chapter 39に「single-use」の定義が入り、単回使用プラスチックのモニタリングを意識した小見出し整備が進みます。定義は、通常1回の使用後に廃棄またはリサイクルされ、反復・長期使用を意図しないもの、という考え方です。(連邦関税局)
具体例として、単回使用の飲用ストローが3917.24や3917.34に明示されたり、包装容器(3923)や食卓用品(3924)などでも単回使用区分が追加されています。(連邦関税局)
ここは、製品メーカー側にも「単回使用か否か」を税番で切り分ける実務が入り込む可能性があり、廃棄物(3915)に加えて、製品側のコード管理も見直し対象になります。
4. リサイクル関連設備も影響:回収機(reverse vending machines)がHS上で明確化
デポジット回収などで使われる自動回収機(reverse vending machines)も、HS2028で扱いが明確になります。見出し84.76の見出し文に「自動回収機」が明記され、さらに「自動回収機」専用の小見出し8476.30が新設されます。選別・圧縮・保管コンポーネントを付けた状態でも対象になることが書かれています。(連邦関税局)
回収機を製造・輸出入している企業や、設備を海外展開するリテール・飲料関連企業にとって、税番の固定化は契約・通関の安定材料になります。一方で、従来別分類で運用していた場合は、切替時にマスター改修が必要です。
5. 企業実務で起きる影響を、現場の言葉に直す
5-1. HSコードが細かくなるほど、要求される証拠も細かくなる
3915は「材質の自己申告」だけでは通りにくくなります。単一ポリマーか、混合か、ハロゲン含有か、有害性を示す添加剤や汚染があるか、といった判断に、仕様書・分析・工程情報が必要になります。(連邦関税局)
5-2. バーゼル対応の輸出入実務と、税番がより直結する
バーゼル条約では、PIC対象外になり得るB3011でも「環境上適正なリサイクル」や「ほぼ汚染がない」等の条件が明記されています。税番の細分化は、これら条件を税関実務に落とすための道具になりやすい構造です。(バーゼル条約)
輸出入規制は国ごとに運用が異なるため一律ではありませんが、少なくとも「税番が変わることで、許可要否や審査ポイントが変わり得る」点は、法務・環境部門と通関部門の連携テーマになります。(バーゼル条約)
5-3. 契約とコストに波及する
税番が変わると、通関で止まるリスク、追加の分析費、再仕分けコスト、差戻し時の輸送費負担などが顕在化します。廃棄物・スクラップ取引は単価が低いケースも多く、少額の追加コストでも損益が崩れやすい領域です。
6. いますぐ着手できる準備メニュー
以下は、プラスチック廃棄物とリサイクル関連で、実務的に効果が出やすい順の対応です。
6-1. 品目棚卸しの切り口を変える
・3915に入れている取引を、単一ポリマー、混合、ハロゲン含有、有害性疑い、の4類型で再分類
・輸出入国別に、許可や届出の関係部門を明確化(通関、環境、法務、営業)(連邦関税局)
6-2. 証跡セットを最小構成で整える
・ポリマー種の根拠(工程、材料証明、分析)
・汚染・混入の管理ルール(受入検査、サンプリング、保管方法)
・リサイクル先の実在と処理内容(契約、処理フロー、受領記録)(バーゼル条約)
6-3. マスターとEDIの設計を、2028年切替前提に変える
・HS2022とHS2028の両方を保持できる項目設計(適用開始日で切替)
・3915は、材質、ハロゲン有無、混合可否、有害性フラグを持たせる
・回収機など設備系(8476.30など)も、該当品番の棚卸しを実施(連邦関税局)
まとめ
HS2028では、プラスチック廃棄物(3915)が「危険性」と「ポリマー種」「混合形態」で再設計され、単回使用プラスチックの定義導入や、回収機(reverse vending machines)の明確化まで進みます。(連邦関税局)
これは、単にコードが増える話ではなく、取引の通し方が「証拠を伴う分類」に寄っていくことを意味します。
廃棄物・リサイクルは、通関だけで完結しません。環境・法務・購買・現場運用まで巻き込んで、2028年を待たずに、いま棚卸しと証跡設計に着手するのが安全です。
