HS2022 第54類:人造繊維の長繊維並びに人造繊維の織物及びストリップその他これに類する人造繊維製品(Manmade filaments; strip and the like of manmade textile materials)

冒頭で用語を統一します。**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**です。

第54類は「合成繊維・再生繊維(レーヨン等)の“長繊維(フィラメント)”」と、その織物/モノフィラメント/ストリップを扱います。まずは**“長繊維か短繊維か”、次に“縫糸か否か”、さらに“小売用(小巻)か工業用(コーン等)か”、最後にモノフィラメントやコーティング有無**を詰めると迷いが激減します。 (世界税関機構)


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの

この類に入る代表例

  • 合成フィラメント縫糸(ポリエステル縫糸・ナイロン縫糸の小巻)→ 5401 (世界税関機構)
  • 工業用の合成フィラメント糸(コーン巻のポリエステル/ナイロン糸、POY含む)→ 5402 (世界税関機構)
  • 再生繊維フィラメント糸(レーヨン糸等、縫糸でない)→ 5403 (世界税関機構)
  • 合成モノフィラメント(67dtex以上、断面寸法≦1mm)や合成ストリップ(見掛け幅≦5mm) → 5404 (世界税関機構)
  • 合成長繊維の織物(コーティング等のない一般織物/産業資材織物の一部)→ 5407 (世界税関機構)
  • 再生繊維長繊維の織物(アセテート含む) → 5408 (世界税関機構)

この類から除外されやすい代表例

  • 人造繊維のトウ(tow):第55類へ(例:合成長繊維トウ 5501 等) (世界税関機構)
  • 太物の“ひも・ロープ”扱い:一定条件を満たす糸は「twine/cordage/ropes/cables」として第56類(5607等)になり得る (世界税関機構)
  • タイヤコード織物:第59類 5902(“tyre cord fabric”として別建て) (世界税関機構)
  • プラスチックで目視できるコーティング等のある織物:第59類 5903 等へ移り得る (世界税関機構)
  • 断面寸法が1mm超のプラスチックモノフィラメント幅5mm超のプラスチックストリップ:第11部(繊維)から外れ、第39類側になり得る (世界税関機構)
  • デンタルフロス:第11部から除外(3306) (世界税関機構)

実務での最重要分岐

  • 縫糸(5401)か、縫糸以外の糸か:定義(重量・仕上げ・撚り方向)で決まります (世界税関機構)
  • 小売用(5406)か、非小売用(5402/5403)か:小売用の定義は包装形態・重量・例外で決まります (世界税関機構)
  • モノフィラメント/ストリップ(5404/5405)か、フィラメント糸(5402/5403)か:67dtex、断面寸法1mm、見掛け幅5mmが効きます (世界税関機構)

この類で誤分類が高コストになりやすい場面

  • EPA/FTAでPSR(品目別規則)が変わる場面:HSの付番を誤ると原産性判断が崩れます (税関総合情報)
  • 工業用高強力糸・産業資材(ロープ扱い/59類扱いとの境界):関税率・規制・統計が変わりやすい領域です (世界税関機構)

1. 区分の考え方

1-1. 分類の基本ルール

この類はGIR1(見出しと注の文言)が最重要です。特に「部注(Section XI Notes)」の定義が、項(5401〜5408)をまたいで効きます。次に、6桁の切り分けはGIR6で「同じレベルの号の文言+該当する注」で詰めます。 (世界税関機構)

「品名だけで決めない」ための観点は次の通りです。

  • 繊維の種類:合成(polyester/nylon等)か、再生(viscose rayon/acetate等)か (世界税関機構)
  • 形状:マルチフィラメント糸か、モノフィラメントか、ストリップか (世界税関機構)
  • 状態:縫糸として仕上げ済みか、工業用巻き(コーン/コップ等)か、小巻(小売用)か (世界税関機構)
  • 性能:高強力(high tenacity)該当か(cN/texの閾値) (世界税関機構)
  • 織物の場合:高強力糸由来、ストリップ由来、Note 9の「平行糸層の布」該当、コーティング等の有無 (世界税関機構)

1-2. 判定フロー

  • Step1:繊維の部(第11部)に残るか(プラスチック形状物、デンタルフロス等の除外を先に確認) (世界税関機構)
  • Step2:短繊維(第55類)ではなく、長繊維(フィラメント)か(トウは第55類へ) (世界税関機構)
  • Step3:縫糸か(5401の定義:重量・仕上げ・Z撚り) (世界税関機構)
  • Step4:縫糸でなければ、小売用の糸か(5406)/非小売用か(5402/5403) (世界税関機構)
  • Step5:合成(synthetic)か再生(artificial)かで 5402 と 5403、織物なら 5407 と 5408 を分ける (世界税関機構)
  • Step6:糸ではなくモノフィラメント/ストリップなら 5404(合成)/5405(再生)へ(67dtex・断面寸法・幅を確認) (世界税関機構)
  • Step7:織物なら 5407/5408 の中で「高強力」「ストリップ由来」「Note 9布」等の号を確認 (世界税関機構)
  • Step8:**タイヤコード織物(5902)目視できるコーティング(5903等)**など、59類に飛ばないか最終チェック (世界税関機構)

よく迷う境界例

  • 第54類(織物)↔ 第59類(産業用・コーティング布):タイヤコード織物(5902)、プラスチック含浸・被覆(5903)等 (世界税関機構)
  • 第54類(糸)↔ 第56類(ひも・ロープ):太さ(dtex)条件で“twine/cordage”扱いになり得る (世界税関機構)
  • 第54類(長繊維)↔ 第55類(短繊維・トウ):トウは54.02/54.03に含まれません (世界税関機構)

2. 主な項とその内容

2-1. 4桁の主なもの一覧表

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5401合成フィラメント縫糸ポリエステル縫糸、ナイロン縫糸(小巻)縫糸の定義(重量・仕上げ・Z撚り)を満たすか
5402合成フィラメント糸(縫糸除く、非小売用)工業用ナイロン糸、ポリエステル糸、POY小売用なら5406。高強力/伸縮糸等で号が分かれる
5403再生フィラメント糸(縫糸除く、非小売用)レーヨン糸、キュプラ糸小売用なら5406。高強力の定義に注意
5404合成モノフィラメント(67dtex以上・断面≦1mm)/合成ストリップ(幅≦5mm)ブラシ用モノフィラ、人工ストロー材断面寸法>1mmや幅>5mmは繊維から外れる可能性
5405再生モノフィラメント(67dtex以上・断面≦1mm)/再生ストリップ(幅≦5mm)レーヨン系のストリップ等54.05材料の織物は5408側に含み得る(見出しに明記)
5406人造繊維フィラメント糸(縫糸除く、小売用)手芸糸(小巻・玉巻)小売用の定義(包装形態・重量・例外)で決まる
5407合成フィラメント織物(54.04材料の織物含む)裏地、産業資材織物の一部5902(タイヤコード)・5903(コーティング)との境界。Note 9布は別号
5408再生フィラメント織物(54.05材料の織物含む)レーヨン織物、アセテート織物日本側備考でアセテート等の扱いに注意

出典:WCO HS2022 第54章(見出し)および日本の第54類注記。 (世界税関機構)

2-2. 6桁で実務上重要な分岐

重要な「定義・閾値」早見表

論点実務で効く基準どこに書いてあるか
縫糸(5401)複糸/ケーブル糸で、支持体込み重量≦1,000g、縫糸用に仕上げ、最終Z撚り部注(Section XI Note 5)
小売用(5406)包装形態(リール/玉/かせ等)+重量基準(例:人造長繊維糸は85g基準が頻出)+例外(工業用ボビン等は除外)部注(Section XI Note 4)
高強力(high tenacity)ナイロン/ポリエステル:単糸>60 cN/tex、複糸/ケーブル>53 cN/tex。ビスコース:>27 cN/tex部注(Section XI Note 6)
“ひも・ロープ扱い”人造繊維糸で 10,000dtex超 などは“twine/cordage”扱い(ただし例外あり)部注(Section XI Note 3)
elastomeric yarn合成繊維フィラメント(テクスチャード除く)で、3倍伸長で切れず、2倍伸長後5分以内に1.5倍以下まで戻る部注(Section XI Note 13)
ポリアミドの範囲polyamides に aramids を含む部注(Section XI Note 12)

出典:WCO HS2022 Section XI Notes(第11部注)。 (世界税関機構)

間違えやすい6桁ペア/グループ

  1. 5401(縫糸) vs 5402/5403(糸)
  • どこで分かれるか:縫糸の定義(1,000g、仕上げ、Z撚り)を満たすか (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:撚り方向(S/Z)、仕上げ(ワックス/樹脂等)、巻き重量(支持体込み)
  • 典型的な誤り:「縫製に使う予定」だけで縫糸扱いにしてしまう(実物の“縫糸仕様”が必要)
  1. 5406(小売用) vs 5402/5403(非小売用)
  • どこで分かれるか:包装形態と重量が定義内か、かつ例外(工業用支持体)に当たらないか (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:支持体込み重量、包装形態(リール/玉/かせ/分割かせ)、工業用ボビン形状の有無
  • 典型的な誤り:85g/125gだけ見て即断(「工業用形態なら除外」など例外条件を落とす)
  1. 5402/5403(糸) vs 5404/5405(モノフィラメント/ストリップ)
  • どこで分かれるか:モノフィラメントが 67dtex以上か、断面寸法が 1mm以下か。ストリップは見掛け幅 5mm以下か (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:dtex、断面寸法、見掛け幅、材質(合成/再生)
  1. 5402(太糸) vs 5607(ひも・ロープ)
  • どこで分かれるか:人造繊維糸が 10,000dtex超等で“twine/cordage”扱いになるか(例外あり) (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:dtex、単糸/複糸/ケーブル、モノフィラの束か、撚り(特に例外の有無)
  1. 5407(織物) vs 5902/5903(第59類)
  • どこで分かれるか:**タイヤコード織物(5902)**か/**プラスチック含浸・被覆が目視できる(5903)**等か (世界税関機構)
  • 判断に必要な情報:用途(タイヤ補強)、織物仕様、コーティングの種類・目視可否、積層構造

3. 部注と類注の詳細解釈

3-1. 関連する部注

  • ポイント要約
    • 部注3:一定条件の太い糸は“twine/cordage/ropes/cables”扱いにし、56類側へ寄せるルール(ただし例外あり) (世界税関機構)
    • 部注4:小売用の定義(包装・重量)と例外(工業用形態など) (世界税関機構)
    • 部注5:縫糸の定義(1,000g、仕上げ、Z撚り) (世界税関機構)
    • 部注6:高強力(high tenacity)判定のcN/tex閾値 (世界税関機構)
    • 部注9:平行糸層を接着・熱で結合した“織物”も織物として扱う(5407.30等) (世界税関機構)
    • 部注12:ポリアミドにアラミドを含む(= 5402.11等に効く) (世界税関機構)
    • 部注13:elastomeric yarn(伸縮糸)定義 (世界税関機構)
    • 部注8:Note 7の「made up(製品化)」に該当すると、原則として54章の織物・糸ではなく56〜63章側へ行く、という大枠 (世界税関機構)
  • 実務での意味(具体例つき)
    • 小巻で販売されていても、工業用コップ/コーン等“工業用途を示す形態”なら「小売用」から外れる可能性があります(5406に寄せない) (世界税関機構)
    • 高強力は「商品名」ではなく**tenacity(cN/tex)**で確定します。仕様書に“high tenacity”と書かれていても、閾値未達なら該当しません (世界税関機構)
    • 平行糸層の接着布(Note 9)は、見た目が“織り”っぽくなくても、定義に当てはまれば織物として扱われます (世界税関機構)
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン

3-2. この類の類注

  • ポイント要約
    • 類注1:人造繊維(man-made fibres)の定義。合成(synthetic)と再生(artificial)の区別を明示し、**54.04/54.05のストリップ類は“人造繊維とみなさない”**旨も書かれています (世界税関機構)
    • 類注2:54.02/54.03にトウ(第55類)を含まない (世界税関機構)
  • 用語定義
    • 合成繊維=有機単量体の重合等で得るもの(例:ポリエステル、ポリアミド等)/再生繊維=セルロース等を溶解・化学処理して得るもの(例:ビスコース、キュプラ、アセテート等) (世界税関機構)
  • 除外規定

4. 類注が分類に与える影響

この章の目的は「類注・部注があるからこそ起きる分岐」を見える化することです。

  • 影響ポイント1:縫糸か否かで 5401 と 5402/5403 が割れる
    • 何を見れば判断できるか:支持体込み重量≦1,000g、縫糸用仕上げ、最終Z撚り (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:撚り方向写真、仕様書(仕上げ)、包装重量の実測、製品カタログ
    • 誤分類の典型:「縫製に使うから縫糸」→ 実物が工業糸(未仕上げ/撚り条件不一致)で5402が正しい
  • 影響ポイント2:小売用定義で 5406 と 5402/5403 が割れる
    • 何を見れば判断できるか:包装形態(リール/玉/かせ等)と重量、例外(工業用形態) (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:包装写真、支持体込み重量、巻き取り形状(コップ/コーン/ピルン等)、販売形態(一般消費者向けか工業向けか)
    • 誤分類の典型:重量だけで5406扱い→ 工業用途を示す支持体で例外に該当し、5402/5403に戻る
  • 影響ポイント3:高強力判定で 5402/5403 の号が変わる
    • 何を見れば判断できるか:cN/texの閾値(単糸・複糸で閾値が違う) (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:試験成績書、メーカー仕様(denier→tex換算根拠含む)、糸構成(単糸/複糸/ケーブル)
    • 誤分類の典型:「強い=高強力」→ 閾値未達/単糸・複糸の区別漏れ
  • 影響ポイント4:モノフィラ/ストリップの閾値で 5404/5405 へ飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか:67dtex、断面寸法≦1mm、見掛け幅≦5mm (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:図面、ノギス測定、dtexデータ、サンプル写真
    • 誤分類の典型:モノフィラを“糸”として5402へ → 67dtex以上なら5404側の可能性
  • 影響ポイント5:Note 9布の定義で 5407.30 等に割れる
    • 何を見れば判断できるか:平行糸層を接着/熱で結合しているか (世界税関機構)
    • 現場で集める証憑:製造工程図、断面観察、接着剤の有無(MSDS等)
    • 誤分類の典型:見た目が織物っぽくない→ Note 9該当を見落とす

5. 分類でよくある間違い

  1. 間違い:縫糸を5402/5403で申告
    • なぜ起きる:インボイス品名が “polyester filament yarn” 等で縫糸用途が書かれない
    • 正しい考え方:縫糸は定義(Note 5)で決まる (世界税関機構)
    • 予防策:撚り方向(Z)・仕上げ有無・支持体込み重量を仕様書に明記
  2. 間違い:小巻(小売用)を5402/5403で申告
    • なぜ起きる:小売用の定義を「小さい巻き=小売用」と誤解
    • 正しい考え方:包装形態と重量、例外まで含めてNote 4で判定 (世界税関機構)
    • 予防策:包装写真、支持体込み重量、巻き形状(コーン/コップ等)を提出資料化
  3. 間違い:工業用コーン巻きを5406(小売用)にしてしまう
    • なぜ起きる:重量基準だけ満たしているように見える
    • 正しい考え方:工業用途を示す支持体・形態は例外になり得る (世界税関機構)
    • 予防策:包装形態の説明(cops, cones等)をインボイスに追記、カタログ添付
  4. 間違い:太番手糸を5402のままにする(実は56類相当)
    • なぜ起きる:dtexを確認せず、糸=54章と決め打ち
    • 正しい考え方:一定条件でtwine/cordage扱い(Note 3)。ただし例外も必ず確認 (世界税関機構)
    • 予防策:dtex、撚り、構成(単糸/複糸/ケーブル)を社内で標準取得
  5. 間違い:モノフィラメントを5402で申告
    • なぜ起きる:“monofilament yarn”という呼び方に引きずられる
    • 正しい考え方:67dtex以上・断面寸法≦1mmなら5404/5405側が基本 (世界税関機構)
    • 予防策:断面寸法・dtexの数値を仕様書に必須項目化
  6. 間違い:コーティング織物を5407/5408で申告
    • なぜ起きる:基材が54章織物なので、そのまま申告しがち
    • 正しい考え方:5902(タイヤコード)や5903(プラスチック含浸・被覆等)など、59類が別建て (世界税関機構)
    • 予防策:コーティングの種類、目視可否、用途(タイヤ補強等)をヒアリング
  7. 間違い:レーヨンを合成繊維として扱い5402へ
    • なぜ起きる:“人工=合成”の誤解
    • 正しい考え方:合成(synthetic)と再生(artificial)の区分は類注で決まる (世界税関機構)
    • 予防策:原料ポリマー(セルロース系か)をMSDS/原料証明で確認
  8. 間違い:アラミドをポリアミド扱いから外してしまう
    • なぜ起きる:商品名(aramid)で別素材と誤認
    • 正しい考え方:部注12でpolyamidesにaramidsを含む (世界税関機構)
    • 予防策:材質表記に「aramid=polyamideの一種」注記、メーカー資料添付

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSRの関係

  • HSの付番(少なくとも6桁)が、PSR(品目別規則)の検索キーになります。誤分類すると、材料側HS・工程評価・RVC計算が全部ずれます。 (税関総合情報)
  • 典型的な落とし穴
    • 原料(ポリマー/チップ)と糸・織物のHSを混同
    • 小売用(5406)と非小売用(5402/5403)を取り違え、PSRが変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い

実務では「自社の申告HS(通常は最新運用)」と「協定附属書が参照するHS版」がズレることがあります。

  • 日EU・EPA:PSR表の列見出しに「Harmonized System classification (2017)」と明記されています
  • CPTPP(TPP11):PSRの見出しに「HS Classification (HS2012)」と明記されています (内閣官房)
  • RCEP:HS2022に置換されたPSRが2022年6月30日に採択され、2023年1月1日から実施と明記されています (税関総合情報)

ズレる場合の注意(一般論)

  • 協定が旧HS版参照の場合、**相関表(トランスポジション)**で旧→新の対応付けをしてからPSR適用を検討します。
  • HS2012→HS2017では54.02の一部に新設号(例:5402.53、5402.63)があり、旧版の“その他”から分岐したことが示されています。 (税関総合情報)

6-3. 実務チェック

  • そろえるデータ
    • BOM(材料表)、原価、工程フロー、原産国、非原産材料のHS、糸/織物の仕様(dtex、tenacity、包装形態)
  • 書類(一般論)
    • 原産地証明書類・自己申告の根拠資料、保存要件に沿った保管(協定・国で異なるため最新確認)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い

7-1. 変更点サマリー

比較変更タイプ該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし第54類(5401〜5408)見出し・注に実質的な改正は確認されませんHS6桁運用は原則同様。国内コードや協定参照HS版のズレには別途注意

根拠:WCO HS2017とHS2022の第54章本文(見出し・注)を突合すると同一であることを確認。 (世界税関機構)

7-2. 違うことになった根拠

  • 第54章について、WCOのHS2017版とHS2022版の章本文(NotesとHeadings)を比較し、見出し構造(5401〜5408)および章注が一致することから「HS2017→HS2022での変更なし」と整理しています。 (世界税関機構)
  • ただし、**国内コード(8桁/9桁等)**は国ごとに改正があり得るため、日本の統計番号・税率等は別途最新表で確認してください(HS6桁と混同しない)。 (税関総合情報)

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第54類は、HS2007→2012→2017→2022の流れで「章立ての大枠」は安定していますが、HS2012→HS2017で54.02の一部に新設号が確認できます。

期間主な追加・削除・再編旧コード→新コードの例
HS2007→HS2012第54類で大きな再編は確認されません― (世界税関機構)
HS2012→HS20175402.53(単糸・PP)と5402.63(複糸・PP)を新設旧:ex5402.59 → 新:5402.53(一定範囲)/旧:ex5402.69 → 新:5402.63(一定範囲) (税関総合情報)
HS2017→HS2022第54類で大きな再編は確認されません― (世界税関機構)

補足:ここでの“ex”は「旧号の一部が新号へ移る」ことを示す一般的な表現です(相関表の書き方)。 (税関総合情報)


9. 類注違反による通関トラブル

  • 事例名:縫糸要件未確認で5401申告
    • 誤りの内容:Note 5(縫糸定義)を満たさない糸を縫糸扱い (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が“sewing yarn”など曖昧
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延(一般論)
    • 予防策:撚り方向・仕上げ・重量の根拠資料を事前に揃える
  • 事例名:小売用の例外を落として5406申告
    • 誤りの内容:Note 4(小売用定義)の例外(工業用形態)を無視 (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:重量基準だけで判断、写真なし
    • 典型的な影響:差戻し・補正、到着後の用途確認要求(一般論)
    • 予防策:包装写真・支持体形状をインボイス/明細に明記
  • 事例名:太糸のロープ扱い(56類)を見落として54類申告
    • 誤りの内容:Note 3(twine/cordage定義)未確認 (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:dtexデータが社内にない、単糸/複糸不明
    • 典型的な影響:統計誤り、規制・原産地判断のやり直し(一般論)
    • 予防策:dtex・構成・撚りの標準取得
  • 事例名:コーティング織物を5407のまま申告
    • 誤りの内容:第59類 5903等の対象(含浸・被覆)を見落とし (世界税関機構)
    • 起きやすい状況:基材が54類なので思考停止
    • 典型的な影響:差戻し、サンプル提出、通関遅延(一般論)
    • 予防策:コーティング仕様(目視可否)を仕様書で提示

10. 輸出入規制事項

日本前提で、第54類に関係しやすい「実務上の注意点」を挙げます(該当する場合のみ確認してください)。

  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第54類自体は食品・動植物ではないため、一般にSPSの中心領域ではありません(ただし最終製品用途によって別途あり得ます)。
  • その他の許認可・届出
    • 有害物質を含有する家庭用品の規制:家庭用繊維製品等について、アゾ化合物(特定芳香族アミン生成)などの基準が整理されています。対象品目・試験法・基準値はMHLW資料で確認が必要です。 (e-Gov 法令検索)
    • 家庭用品品質表示(繊維製品の表示):国内販売向けでは、繊維組成・取扱い方法等の表示ルールが規程・ガイドで示されています。 (e-Gov 法令検索)
    • 安全保障貿易管理(輸出):高性能繊維等は、HSではなく仕様(性能・用途等)で該当性を確認する必要があるため、METIの最新リスト・解釈資料で確認してください。 (e-Gov 法令検索)
  • 確認先
  • 実務での準備物(一般論)
    • 繊維:組成証明、染料/加工剤情報、試験成績書(必要時)
    • 糸/モノフィラ:dtex、tenacity、断面寸法、包装形態資料
    • 織物:コーティング仕様、用途説明、工程フロー

11. 実務チェックリスト

  • 分類前チェック
    • 材質(合成/再生)、糸構成(単糸/複糸/ケーブル)、dtex、tenacity、撚り方向、モノフィラ寸法、ストリップ幅
    • 包装形態(リール/玉/かせ/コーン/コップ)、支持体込み重量
  • 分類後チェック
    • 部注3/4/5/6/9/12/13の該当性(twine、小売用、縫糸、高強力、Note 9布、アラミド、伸縮糸) (世界税関機構)
    • 59類(5902/5903等)への飛びを再確認 (世界税関機構)
  • 申告前チェック
    • インボイス品名に「材質+形状+用途+規格(dtex/tenacity/寸法/包装)」を入れる
    • 補足資料(仕様書・写真・工程図)を同梱できる体制
  • FTA/EPAチェック
    • 協定が参照するHS版を確認し、必要なら相関表で照合
    • BOM、原価、工程、原産国、非原産材料HS、RVC計算根拠
  • 規制チェック

12. 参考資料

  • WCO(HS2022条文)
  • 日本税関・公的機関
  • FTA/EPA本文・付属書
    • 日EU・EPA:Annex 3-A/PSR表(HS classification (2017) 表記)
    • CPTPP:Annex 3-D(HS Classification (HS2012) 表記) (内閣官房)
    • RCEP:Transposed PSR in HS2022(採択日・実施日明記) (税関総合情報)
  • 規制(日本)
    • 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(e-Gov) (e-Gov 法令検索)
    • 規制基準概要(MHLW) (厚生労働省)
    • 家庭用品品質表示法(e-Gov)および繊維製品品質表示規程・ガイド(消費者庁) (e-Gov 法令検索)
    • 参照日:2026-02-23

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。