HS2022 第57類:じゅうたんその他の紡織用繊維の床用敷物(Carpets and other textile floor coverings)

用語の約束(本稿内):部=Section、類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、注=Notes(部注/類注)

第57類は、じゅうたんやラグ、マット、人工芝など、紡織用繊維が表面に見える床用敷物をまとめた章です。ポイントは「使うときに露出する面が紡織用繊維かどうか」と「製法が結びパイル、織物、タフト、フェルト、その他のどれか」です。ここを外すと、第59類(床材)や第39類(プラスチック床材)へ移りやすく、関税・原産地規則・社内商品マスタの整合性に波及します。

本稿は日本の実務(輸入・輸出の双方)を想定し、ビジネスマンが社内で初期判断できるよう、どこでコードが変わるか、どんな資料が必要かを整理します。


1. まず結論:第57類に入るものと入らないもの

1-1. 第57類に入りやすい代表例

  • 手結びのペルシャじゅうたん、手織りの段通など(結びパイル)
  • 手織りキリムなどの平織りラグ(織物で、タフトやフロックではないもの)
  • タフトカーペット、タフトのラグ、タフト人工芝
  • フェルト製の床用敷物、フェルトのカーペットタイル
  • 上記に該当しないその他の紡織用繊維の床用敷物(例:特殊構造の床用マット等)

これらはいずれも、使用時の露出面が紡織用繊維である床用敷物という第57類注の定義に沿います。

1-2. 第57類から除外されやすい代表例

  • 床用敷物の下敷き(カーペットパッド、アンダーレイなど)
    第57類注2で除外され、構成材料に応じて別分類になります。
  • 表面が塗布・被覆材で、紡織用繊維が基布に過ぎない床材
    日本税関の解説では、リノリウム等、紡織用繊維の基布に塗布・被覆した床用敷物は59.04で検討すると整理されています。
  • 表面がプラスチックの床材(例:ビニル床材)
    「露出面が紡織用繊維」という定義を満たさないため、第57類ではなく第39類や第59類側で検討が必要になります。

1-3. 実務での最重要分岐

  • 使用時の露出面は何か(紡織用繊維か、プラスチックか、別素材か)
  • 製法はどれか(結びパイル、織物、タフト、フェルト、その他)
  • 下敷き(アンダーレイ)ではないか

2. 第57類に到達するための考え方

2-1. 分類でまず効くルール

  • 通則1(GIR1):見出しの文言と、部注・類注で決めます。第57類は注が短い代わりに強いです。
  • 通則6(GIR6):6桁の細分は、同一階層の比較で決めます。第57類は製法と材料で6桁が動きます。

品名が「ラグ」「マット」「カーペット」でも、露出面と製法が違えばコードが変わるので、名称だけで決めないのが鉄則です。

2-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:使用時の露出面は紡織用繊維ですか
    いいえの場合、第57類ではなく第39類や第59類などで検討します。
  • Step2:床用敷物の下敷き(アンダーレイ)ですか
    はいの場合、第57類注2で除外され、構成材料により分類します。
  • Step3:製法はどれですか
    結びパイルなら5701、織物なら5702、タフトなら5703、フェルトなら5704、その他は5705の方向です。

3. 主な項(4桁)とその内容

3-1. 4桁(項)の一覧表

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件や注意点
5701結びパイルのじゅうたん等手結びじゅうたん、手結びラグ結び目でパイルを形成しているかが核
5702織物製のじゅうたん等(タフト、フロックを除く)ウィルトン、平織りキリム、こいやし繊維マットパイルの有無、製品にしたかどうかで6桁が動く
5703タフトしたじゅうたん等(人工芝を含む)タフトカーペット、タフト人工芝HS2022で人工芝の細分が新設
5704フェルト製のじゅうたん等(タフト、フロックを除く)フェルトカーペット、フェルトタイルタイルは面積区分がある
5705その他のじゅうたん等その他の床用マット類他の5701から5704に当たらない場合の受け皿

出所はWCOのHS2022第57章の見出し体系です。


4. 6桁(号)で実務上重要な分岐

4-1. 5703(タフト)で最重要:人工芝(turf)を別掲するか

HS2022の5703では、人工芝(turf)が明示され、さらにナイロン等とその他の人造繊維材料の区分の中で、人工芝が独立した6桁として設けられています。

  • ナイロン又はその他のポリアミド製
    5703.21(人工芝)と5703.29(その他)
  • その他の人造繊維材料製
    5703.31(人工芝)と5703.39(その他)

実務の注意点は、商品名が「人工芝マット」でも、タフトなのか、別の構造なのかを仕様書で確定することです。人工芝はスポーツ用途でも、床用敷物としての性格が強い場合に第57類で検討する筋になります。

判断に必要な情報

  • 製造方法(タフティングかどうか)
  • 表面パイル糸の材質(ナイロン系か、その他の合成繊維か)
  • 露出面の材質が紡織用繊維かどうか

4-2. 5702(織物)でよく動くポイント:パイル有無と製品化

5702は、織物で、タフトやフロックではない床用敷物が対象で、パイル構造か否か、製品にしたか否かで下位区分が分かれます。

  • 例:手織りキリム等は5702.10に含まれます。
  • 例:こいやし繊維(コイヤ)製の床用敷物は5702.20として別掲です。

日本税関の分類例規では、たて糸が紡織用繊維で、よこ糸にプラスチックのストリップを使う織りマットを、5702.50から5702.99の範囲で判断する事例が示されています。露出面と見かけ幅など、構造の説明が必要になります。

判断に必要な情報

  • 織物かどうか、タフトかどうか
  • パイルの有無
  • 製品にしたか(縁かがり、裏打ち、房付け、所定寸法での仕上げなど)

4-3. 5704(フェルト)はタイル面積で号が変わる

5704はフェルト製の床用敷物ですが、タイルについては最大面積で区分されています。

  • 5704.10:タイルで最大面積が0.3m2以下
  • 5704.20:タイルで最大面積が0.3m2超1m2以下
  • 5704.90:その他

日本税関の分類例規では、ポリエステルのニードルルームフェルトを用いた電気カーペットが5704.90とされた例があります。電気機能があっても、露出面が紡織用繊維の床用敷物という性格が強い場合、57類の中で検討され得ます。

判断に必要な情報

  • 表面がフェルトか、タフトか、別構造か
  • タイルなら最大面積
  • 電気部品などがある場合でも、使用実態と物品の本質

5. 第57類の注を実務的に読み替える

5-1. 注1:露出面基準が第57類の入口

第57類注1は、床用敷物として使用するときに露出する面が紡織用繊維であることを求め、さらに床用敷物としての特性を持つ物品で他用途に供するものも含むとしています。

実務的な意味

  • 裏面がゴムやプラスチックで裏打ちされていても、表面が紡織用繊維なら第57類に残り得ます。日本税関の解説でも、ラテックスの含浸や裏打ちの例が触れられています。
  • 一方で、表面が塗布材で紡織用繊維が露出しない床材は第57類ではありません。

5-2. 注2:下敷き(アンダーレイ)は除外

床用敷物の下敷きは第57類に含まれません。日本税関の解説では、床とじゅうたんの間に敷く粗い織物やフェルトを例に挙げ、構成材料により分類すると説明しています。


6. よくある誤分類8選(原因と対策)

  1. 間違い:表面がビニルの床材を「裏が布だから」と第57類に入れる
  • なぜ起きる:基布に繊維があると紡織品に見えるためです。
  • 正しい考え方:露出面が紡織用繊維であることが第57類の定義です。
  • 予防策:断面写真と、使用時に露出する表面材を仕様書で固定します。
  1. 間違い:カーペット下敷きを57類で申告する
  • なぜ起きる:用途が床関連で、見た目もフェルトや不織布に似ているためです。
  • 正しい考え方:下敷きは第57類注2で除外です。
  • 予防策:用途が「下敷き」か「床用敷物」かを分け、構成材料(フェルト、不織布、ゴム等)で別分類する前提で資料を揃えます。
  1. 間違い:人工芝を5703の中で「その他」として処理し、HS2022の人工芝細分を見落とす
  • なぜ起きる:人工芝をカーペットではなく屋外資材と認識しがちなためです。
  • 正しい考え方:5703は人工芝を含み、HS2022では人工芝が6桁で別掲されています。
  • 予防策:タフト構造かどうかと、パイル糸の材質(ナイロン系か否か)を必ず確認します。
  1. 間違い:織りカーペットとタフトカーペットを品名だけで判定する
  • なぜ起きる:市場名が混在し、見た目だけでは判断しづらいためです。
  • 正しい考え方:5702は織物、5703はタフトと製法で分かれます。
  • 予防策:製造工程説明(織機か、タフティング機か)と断面写真を入手します。
  1. 間違い:フェルト床材を5704ではなく5705にしてしまう
  • なぜ起きる:フェルトでも構造が複合的で、その他に見えるためです。
  • 正しい考え方:フェルト製の床用敷物は5704が優先で、タイルは面積区分があります。
  • 予防策:表面材がフェルトである根拠(仕様書、写真)とタイル面積を確認します。
  1. 間違い:電気カーペットを電気機器として一律に第85類で検討する
  • なぜ起きる:機能で分類が決まると思い込みやすいためです。
  • 正しい考え方:日本税関の分類例規では、構造により57類内で整理される例があります。
  • 予防策:露出面、床上で使用する設計、構造(フェルトか、その他床用敷物か)を整理し、必要なら事前教示を検討します。
  1. 間違い:織りマットでプラスチックストリップを使うものを第39類のプラスチック製品と決め打ちする
  • なぜ起きる:見た目がプラスチック主体に見えるためです。
  • 正しい考え方:日本税関の分類例規では、織物構造の床用敷物として5702の範囲で判断する例があります。
  • 予防策:たて糸、よこ糸の材質、ストリップの見かけ幅など、構造を数値で説明できるようにします。
  1. 間違い:裏打ちがあるから第59類59.04と早合点する
  • なぜ起きる:裏打ちの存在だけで「塗布品」と誤認するためです。
  • 正しい考え方:第57類は裏打ちやラテックス含浸があっても、露出面が繊維なら対象になり得ます。一方で、塗布面が露出する床材は59.04で検討という整理もあります。
  • 予防策:使用時の露出面がどちらか、表面が塗布材で覆われているかを断面で確認します。

7. FTAやEPAで原産地証明をする際の注意点

7-1. HSコードとPSRは連動する

床用敷物は材料が多様で、同じ見た目でも製法でHSが変わります。HSが変わると、品目別規則(PSR)の選択や、原産材料・非原産材料の扱いが変わり、原産性判断が崩れることがあります。

7-2. 協定が参照するHS版の違いに注意する

日本税関のPSR検索では、協定ごとに採用するHS版が異なり、別の版のHSコードで検索すると結果が不正確になり得る旨が案内されています。
HS2022のコードで通関しつつ、協定はHS2012やHS2017でPSRを規定する場合があるため、相関表で突合する運用が必要です。


8. HS2017からHS2022での主な違い

8-1. 変更点サマリー(表)

比較(HS2017→HS2022)変更タイプ該当コード変更の要旨実務への影響
5703(タフトじゅうたん等)分割・新設5703.21、5703.31(新設) 5703.29、5703.39(再整理)人工芝(turf)を別掲するため、従来の5703.20、5703.30の一部が人工芝向け6桁へ分かれた人工芝を扱う企業はHS2017とHS2022で6桁が変わる可能性がある。通関コードとPSR参照コードのズレに注意

この改正はWCOの相関表(Table I)に明示されています。

8-2. 変更の根拠の説明

根拠資料として、WCOが公表する相関表(HS2022版とHS2017版の対応表)では、5703について人工芝(turf)を別掲する目的で、5703.21と5703.31を新設する旨が記載されています。
また、HS2022第57章の条文上も、5703の内訳として人工芝が6桁で区別されていることが確認できます。


9. 日本での表示・安全面の論点

分類そのものとは別ですが、床用敷物は日本での販売時に表示や安全面の要求が絡みやすい分野です。

9-1. 繊維製品の品質表示(床敷物)

消費者庁のガイドでは、床敷物について、組成繊維(繊維の名称と混用率)と、表示者名等(名称や連絡先)を表示する考え方が示されています。

実務の準備物

  • 表面パイル、基布、裏材を含めた材料構成表
  • 混用率の根拠資料(試験成績書、メーカー仕様書)

9-2. 有害物質規制(家庭用品)

厚生労働省の資料では、アゾ染料に関する規制対象として繊維製品の床敷物が含まれ、特定芳香族アミンの検出量の上限が示されています。床敷物は一部の難燃剤等の規制対象としても挙げられています。

実務の準備物

  • 染料や仕上げ剤の情報(サプライヤー証明、試験結果)
  • 必要に応じた第三者試験の計画

9-3. 防炎規制への目配り

消防法令に基づく防炎制度では、じゅうたん等が対象になり得ます。東京消防庁の案内では、じゅうたんの例として織りカーペット、フェルトカーペット、タフテッドカーペット、ニードルパンチカーペット、ござ、人工芝などが挙げられています。

実務の準備物

  • 防炎性能の要否が分かる用途情報(施設向けか、一般家庭向けか)
  • 必要に応じた試験成績やラベル運用体制

10. 実務チェックリスト(社内でこの順に確認すると早い)

  • 露出面は紡織用繊維か(写真と断面で確認)
  • 下敷き(アンダーレイ)ではないか
  • 製法はどれか(結びパイル、織物、タフト、フェルト、その他)
  • 5703の場合、人工芝か否か、パイル糸材質はナイロン系か否か
  • 5704のタイルなら最大面積(0.3m2、1m2の境界)
  • 57類ではない疑いがあれば、59.04や39類などの候補も同時に立てる
  • 仕入先に必ず依頼する資料
    • 仕様書(材質、混用率、製法、寸法、タイル面積、用途)
    • 表裏と断面の写真
    • 可能なら工程概要(織り、タフティング等)

参考資料(出典、参照日:2026-02-24)

  • WCO:HS2022 Chapter 57(見出し、注、6桁体系)
  • 日本税関:実行関税率表 第57類 類注(第57類注1、注2)
  • 日本税関:関税率表解説 第57類(総説、除外、各項の解説)
  • 日本税関:分類例規 第57類(織りマット、電気カーペット等の事例)
  • WCO:Correlation Tables HS2017–HS2022 Table I(5703の人工芝細分新設)
  • 消費者庁:繊維製品の表示ガイド(床敷物)
  • 厚生労働省:有害物質を含有する家庭用品の規制基準概要(床敷物に関係する規制の一覧)
  • 東京消防庁:防炎対象物品の案内(じゅうたん等の例示)
  • 日本税関:品目別原産地規則(PSR)検索の注意(協定ごとのHS版)

免責事項

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