タイ向け輸出ビジネスにとって、HSコードとAHTN2022、そして健康関連製品の追加認証は、もはや無視できない経営リスクになりつつあります

タイはHS2022 / AHTN2022で動いている

タイは現在、世界税関機構のHS2022をベースにしたASEAN版のAHTN2022を採用しており、この分類に基づいて関税率と規制対象品目を管理しています。digima-japan+3
AHTN2017からAHTN2022への改正により、一部品目でコードが変わっており、過去にタイ向け実績のある企業も最新コードの再確認が推奨されています。jetro.go+1

実務上、同じ商品でも2017年時点のコードで社内登録されているケースが多く、社内マスタと現行AHTN2022の齟齬が、誤税額や通関遅延の火種になっています。nissin-asia+1
まずやるべきことは「自社タイ向け品目のHSコード棚卸し」です。[digima-japan]​

HSコードが「税率」と「規制」を同時に決める

タイでは、関税率はおおむね0~80%の幅で設定されており、その適用税率はHSコードとFTA適用の有無で決まります。jetro.go+1
同じ商品でも、HSコードを一桁・二桁違えるだけで、税率も適用FTAも変わるため、コード選定は価格競争力に直結します。nissin-asia+1

さらに重要なのは、HSコードが「どの規制機関の許可が必要か」を決めるトリガーにもなっていることです。belaws+2
たとえば健康食品、化粧品、医療機器、サプリメントなどは、該当するHSコードを切った瞬間に、タイFDAなど所管官庁の許可や登録が必須になります。trade+2

2025年以降、健康関連製品で追加認証が拡大

2025年以降、タイでは従来比較的スムーズに通関できていたカテゴリーの一部で、追加の認証・許可が必要になる動きが強まっています。nissin-asia+3
具体的には、健康製品、化学物質、化粧品、食品サプリメントなどが、別途ライセンスや事前登録の対象とされる代表例です。belaws+3

健康関連商品を輸入する場合、多くはタイFDA(食品医薬品局)での事前ライセンスや製品登録が求められ、ラベル表示や成分情報の提出なども厳格化されています。fda.moph+2
要件を満たさない場合は、輸入通関段階で保留や差し止めとなり、販売機会の喪失や追加コストが発生します。thailandcustomsclearance+2

電子通関・Thai NSWでの「事前準備」が必須に

タイ税関はe-CustomsやThai National Single Window(Thai NSW)といった電子通関システムを標準化し、各省庁の許可情報を連携させる方向に進んでいます。thailandcustomsclearance+3
2025年の新たな告示では、管理対象の健康関連製品について、Thai NSW経由での電子申請と許可取得が義務化されており、紙ベースや事後対応は通用しにくくなっています。belaws+1

電子通関では、輸入申告書、インボイス、パッキングリスト、原産地証明、許可証などの情報がデータとして照合されるため、HSコードと商品説明が少しでも不整合だと、自動的に審査対象となります。nissin-asia+1
「何となく近いコード」で申告すると、AIリスクスコアリングに引っかかり、追加資料の要求や貨物の検査が入りやすくなります。[thailandcustomsclearance]​

2026年、低額輸入免税枠の撤廃と「1バーツ目から課税」

2026年の大きな変化として、タイは低額輸入品の免税枠(いわゆるデミニミス)を撤廃し、「申告価格1バーツから関税とVATを課税する」方向に舵を切りました。couriersandfreight.com+1
これにより、これまでECなどで少額配送していたビジネスモデルも含めて、すべての貨物が課税対象となり、税額計算と通関の精度が求められます。couriersandfreight.com+1

タイのガイドでは、2026年ルールとして、平均10%前後の関税(HSコードにより変動)と7%のVATが、原則すべての輸入貨物に適用されると説明されています。[thailandcustomsclearance]​
健康関連製品のような規制品は、税負担だけでなく、許可取得の有無も同時にチェックされるため、コストとリードタイムの両面で影響が出やすい領域です。trade+2

健康製品・化粧品・サプリで起こりやすいトラブル

タイFDAが所管する製品(加工食品、医療機器、医薬品、ビタミン、化粧品など)は、輸入前にライセンスや製品登録を済ませておく必要があります。fda.moph+2
特にサプリメントや機能性表示をうたう健康食品では、ラベル文言や成分表示の不備が、登録拒否や通関保留の主因になっています。trade+1

また、一部の薬事品や生物学的製剤では、ロットごとの証明書(Lot Release)やGMP証明など、通常よりも重い証拠書類が求められます。[belaws]​
これらは取得に時間がかかるため、商談成立後に準備を始めると、初回出荷が半年以上遅れるケースも珍しくありません。[belaws]​

ビジネスへの実務影響:リスクと機会

健康系商材をタイに輸出している企業にとって、HSコードと追加認証の強化は、次のようなリスクにつながります。nissin-asia+3

  • 通関時の許可不足による貨物ストップ、保管費や返送費用の発生
  • HSコード誤りによる追徴課税や過少申告ペナルティのリスク
  • 新ルール対応の遅れによる発売時期の遅延や競合への遅れ

一方で、適切に対応できれば、次のような機会も生まれます。jetro.go+2

  • 正しいHSコード・FTA活用による関税負担の最適化
  • Thai FDA登録済みの安全・高品質ブランドとしての差別化
  • 電子通関への対応力を強みにした、現地パートナーからの信頼獲得

「面倒だからタイは後回し」にすると、市場が成熟してから参入しようとしても、既に認証とブランドを固めた競合に後れを取るリスクが高まります。jetro.go+1

企業が今すぐ取るべき実務ステップ

タイ向けに健康関連商材を扱う企業にとって、最低限押さえておきたいアクションは次の通りです。digima-japan+5

  1. 自社品目のタイ向けHSコードの棚卸し
    過去の輸出実績や社内マスタを洗い出し、AHTN2022ベースで最新コードを確認する。必要に応じて現地通関業者や専門家にも照会する。digima-japan+1
  2. 規制対象かどうかのマッピング
    各HSコードについて、タイFDAなどどの機関の許可が必要かを整理し、「FDA登録済み」「登録準備中」「登録不要」などのステータスを一覧化する。nissin-asia+2
  3. タイFDAなどへの事前登録計画
    新規商材や売れ筋商品のうち、タイでのポテンシャルが高いものは、優先順位をつけて登録スケジュールを組む。ラベル要件や成分確認も同時に進める。fda.moph+2
  4. 通関書類・電子申請の標準化
    e-CustomsやThai NSWに対応したフォーマットで、インボイス記載事項、HSコード、商品説明を標準化し、「どの表現で申告するか」を社内でルール化する。nissin-asia+2
  5. 低額貨物も含めた税コスト試算
    サンプルや少額販売も1バーツ目から課税される前提で、税負担と物流コストを織り込んだ価格設計に見直す。couriersandfreight.com+1

こうした対応を「貿易実務部門だけの話」とせず、営業、マーケティング、開発、経営層を巻き込んで進めることが、タイ市場で持続的にビジネスを拡大する前提条件になりつつあります。nissin-asia+2

まとめ:HSコードと認証を「コスト」ではなく「戦略」として扱う

タイ通関におけるHSコードと健康製品の追加認証強化は、単なる事務作業の増加ではなく、「市場参入の許可証」をどう設計するかという戦略課題です。trade+3
HSコードの精度を高め、必要な認証を先回りして取得できる企業ほど、新ルールの中でも安定したサプライチェーンと価格競争力を維持できます。thailandcustomsclearance+3

タイを重要市場と位置づけるのであれば、いまのうちにHSコードと規制対応を見直し、「通関リスクを織り込んだ事業設計」にアップデートすることをおすすめします。digima-japan+4

最後に、御社のタイ向け主要商材は「健康関連製品(食品・サプリ・化粧品など)」が中心でしょうか、それとも工業製品や部材が中心でしょうか。

【免責事項】
本記事は、公開情報を基にタイの通関・規制動向を一般的に解説したものであり、特定企業・特定案件に対する法的助言、税務アドバイス、通関判断を提供するものではありません。trade+5
実際の輸出入手続きやHSコード分類、各種許認可取得については、必ずタイ税関、所管官庁、ならびに専門の通関業者や専門家に個別に確認のうえで意思決定してください。nissin-asia+2

HS2028とFTA別PSRの基準差を読み解く

2028年に向けた原産地管理の実務ポイント

はじめに

HS2028への移行は、単なる品目番号の更新ではありません。多くのFTAやEPAの品目別原産地規則(PSR)は、協定本文や附属書で参照するHSの版が固定されているため、通関実務で使う最新HSと、PSR評価で参照すべきHSの版がズレることがあります。ズレを放置すると、原産性判定の誤り、優遇税率の取りこぼし、事後検証での説明負荷に直結します。 (税関総合情報)


1. HS2028は何が変わるのか

HS2028は2028年1月1日に発効する

WCO(世界税関機構)は、HS2028がHS(品目分類)の第8版として2028年1月1日に発効するとしています。 (世界 Customs Organization)

改正規模は大きく、分類の再設計が含まれる

WCOによれば、HS2028の改正は299セットの改正から成り、体系としては1,229の項(heading)と5,852の号(subheading)になると説明されています。HS2022と比べて、新設・削除も含む構造的な変更が行われるため、品目番号の読み替え(転記)が実務上不可避になります。 (世界 Customs Organization)

企業実務に効く、HS2028の注目ポイント

HS2028は、特定分野で分類の切り直しが示されています。例としてWCOは、ワクチンの分類を見直し、従来30.02に含まれていたものを、人用ワクチンとそれ以外で別の項に再分類する構造変更を挙げています。また、栄養補助食品については新しい項(21.07)を設け、プラスチック廃棄物の分類(39.15)もバーゼル条約の区分に整合させる方向で再構成するとしています。 (世界 Customs Organization)

2028年までに相関表が整備される見込みだが、協定の転記とは別問題

WCOは、HS2022とHS2028の相関表(correlation tables)の作成や解説書類の更新を進める方針を示しています。これは分類移行の強い助けになりますが、FTAやEPAのPSRが自動的にHS2028に切り替わることを意味しません。協定側でPSRの転記や運用変更が決まらない限り、原産性判定は従来版HSを参照するケースが残ります。 (世界 Customs Organization)


2. PSR基準差はなぜ起きるのか

基準差の正体は3層ある

現場で起きる「基準差」は、だいたい次の3層で発生します。

1層目:協定が参照するHSの版の違い
同じ品目でも、協定ごとにHS2012、HS2017、HS2022など参照版が異なることがあります。 (税関総合情報)

2層目:PSR設計の違い
PSRは、関税分類変更(CC、CTH、CTSH等)、付加価値基準(RVCや非原産材料割合の上限)、特定加工工程など、複数タイプが組み合わさって規定されます。協定によって、同じ産品でも採用する条件が異なり得ます。

3層目:転記(transposition)の時期差
HS改正に合わせてPSR表を新HSへ転記する作業は、協定ごとに進捗と適用時期が異なります。よって「ある協定はすでにHS2022」「別の協定はHS2017のまま」といった状態が同時に起きます。

日本の実務で特にややこしい点:申告HSと協定HSは一致しないことがある

日本の税関サイトは、EPA等のPSR検索に関して「入力したHSコードと協定が採用しているHS版が異なると、検索結果に誤りがある場合がある」旨を明示しています。さらに「輸入通関申告の際には最新のHSコードを使用する」旨も記載されています。
つまり、申告は最新HS、PSR判定は協定HS、という二重運用が起き得る前提で設計しないと事故になります。 (税関総合情報)


3. 協定別に見る「PSRが参照するHS版」の現在地

ここでは、HS2028を見据えて影響を受けやすい「協定の参照HS版」と「転記の実績・状況」を、根拠資料ベースで整理します。

RCEP:PSRはHS2022に転記済み、ただし例外的にHS2012が残る領域がある

RCEPのPSR(品目別規則)は、HS2022に転記されたPSRが2022年6月30日に採択され、各締約国が2023年1月1日から実施すると明記されています。
一方、日本の経済産業省は、2023年1月1日以降の日本の原産地証明ではPSRはHS2022版を使うが、協定第2.6条第3項に基づきRCEP原産国を決定するための附属書I付録については、HS2022に変換された付録の最終版が通知されるまでHS2012版を継続適用すると説明しています。
RCEPは「すでにHS2022へ完全移行」と思い込みやすいですが、用途や条項により参照HSが混在し得る、という点が重要です。 (経済産業省)

AJCEP:附属書2(PSR)をHS2017へ更新し、2023年3月1日発効

日本の外務省は、AJCEP協定の附属書2(品目別規則)をHS2002ベースからHS2017ベースへ更新する改正であり、改正附属書2が2023年3月1日に発効する旨を公表しています。 (外務省)

日インドネシアEPA:附属書2(PSR)をHS2017へ更新し、2024年2月5日発効

外務省は、日インドネシアEPAの附属書2(PSR)改正について、HS2002ベースからHS2017ベースへ更新することが主目的であり、改正附属書2は2024年2月5日に発効するとしています。 (外務省)

日EU・EPA:PSR表はHS2017ベースで整理されている

日本税関が公開している日EU・EPAのPSR(Annex 3-B)資料では、PSR表の見出しとして「Harmonized System classification (2017)」が示されています。HS版が明示されているため、HS2028時代には「申告HS2028」と「PSR評価用のHS2017」の橋渡しが必要になります。

日英EPA:Annex 3-A/3-B等がHS2017(2017年1月1日改正のHS)ベース

日英EPAの附属書(Annex 3-A)では、Annex 3-A、Annex 3-B、Annex 3-Cが「2017年1月1日に改正されたHSに基づく」と明記されています。日英も、HS2028への移行局面では協定側転記の有無を確認しながら運用する必要があります。

CPTPP:PSR(Annex 3-D)はHS2012ベース、転記は段階的に議論・合意が進む

CPTPP(TPP11)のPSR(Annex 3-D)は、表の見出しとしてHS Classification (HS2012)が明記されています。 (ニュージーランド外務貿易省)
そのうえで、CPTPPの委員会文書では、PSRをHS2012からHS2017へ転記する作業について、メンバーが転記に同意したことが示されています。ただし、改訂されたHS版をどう採用するかのプロセスは未解決で、次回以降も議論する旨が記載されています。 (国際問題カナダ)
さらに、別の委員会文書では、HS2017からHS2022への転記案が検討され、提案された変更の多くが暫定確認された一方で、一部は追加議論が必要とされています。
また、2022年時点の文書では、HS2012からHS2017の転記作業の残課題の整理や、将来的なHS2022実装時期の見通し(理想として2024年1月開始)などが議論されていたことが分かります。

ここから言えるのは、CPTPPは転記の方向性が進んでいるものの、企業側は「いつ、どの版を、どの手続で」使うのかを公的情報で都度確認しながら運用設計する必要がある、ということです。


4. HS2028で現場が詰まりやすいパターン

パターン1:HS改正でコードが分割され、PSR条文が見当たらない

HS2028では、ワクチンや栄養補助食品、プラスチック関連などで構造的な再分類が示されています。こうした分割・新設が起きると、申告用の新HSコードでPSR表を引いても、協定側のPSR(旧HSベース)に該当行が存在しない、という検索上の違和感が発生しやすくなります。 (世界 Customs Organization)

パターン2:同じ製品でも協定ごとに満たすべきPSRが違う

たとえば、ある協定ではCTH(4桁変更)で足りるのに、別の協定ではRVC条件もセット、あるいは特定工程条件が必要、ということが起こり得ます。PSRは協定附属書で規定され、要件の種類(関税分類変更、加工工程、非原産割合、域内価値割合など)が明示されています。

パターン3:社内外の証憑が「HS版違い」で混在し、監査対応が難しくなる

取引先から受け取る原材料明細やサプライヤー申告書がHS2017表記、社内ERPの品目がHS2022表記、輸入申告が最新HS表記、という具合に、証憑が版違いで並ぶことがあります。税関側も「協定が採用しているHS版で検索すべき」と明示しているため、版違いを説明可能な形で証憑体系を整えることが重要です。 (税関総合情報)


5. 2026年からの実務ロードマップ

(本稿執筆時点は2026年3月)

ステップ1:協定ごとに「PSRの参照HS版」を棚卸しする

まず、対象協定ごとにPSRがどのHS版に基づいているかを棚卸しします。税関の注意書きのとおり、協定のHS版を外すと検索や判定の誤りが起き得ます。 (税関総合情報)
最低限、次の管理項目を持つだけで事故率が下がります。

・協定名
・PSRの参照HS版(HS2012、HS2017、HS2022など)
・参照版の根拠資料(条文・附属書・政府公表)
・自社運用の適用開始日(自社の判定基準日)

ステップ2:マスターデータに「申告HS」と「協定HS」を分けて持たせる

実務上は、次の2つを分離して管理する設計が現実的です。

・通関申告用の最新HSコード(日本の申告要件に合わせる) (税関総合情報)
・協定別のPSR判定用HSコード(協定が採用する版に合わせる) (税関総合情報)

HS2028移行期は、申告HSが更新されても協定のPSRが直ちに転記されない可能性があるため、この分離が効きます。 (世界 Customs Organization)

ステップ3:相関表と転記情報が公表されたら、影響分析を自動化する

WCOはHS2022とHS2028の相関表整備を進める方針を示しています。相関表が出てから慌てないために、以下を先に決めておきます。 (世界 Customs Organization)

・自社品目ごとに、HS改正で分割・統合されそうな領域を抽出する
・分割が起きた場合に、どの根拠資料で新コードへ割り当てるかのルールを決める
・協定別に、PSRが転記された場合の差分検知(ルール変更か、単なる番号読み替えか)を分けて扱う

ステップ4:原産地証明の根拠書類を「HS版込み」で保全する

PSRの根拠は、材料表、工程表、原価資料、仕入書類など複数にまたがります。CPTPPに関する日本税関のガイドラインでも、PSRを満たすための証憑例(材料表、工程表、原価資料など)が示されています。 (税関総合情報)
HS2028移行期は、同じ品目でもHS版が違うと説明が通りにくくなるため、保全時に次の一言を必ず付ける運用が現場で効きます。

・この資料のHSコードは、どの版に基づく表記か
・PSR判定に用いた協定と、参照したPSR表のHS版は何か
・相関表を使ったなら、どの相関表で、どう読み替えたか


6. まとめ

HS2028は2028年1月1日に発効予定で、改正規模も大きく、分類の切り直しが含まれます。 (世界 Customs Organization)
一方で、PSRは協定ごとに参照するHS版が異なり、転記や適用開始の時期も揃いません。さらに日本の実務では、申告は最新HS、PSR判定は協定HSという二重運用が起き得ることが明示されています。 (税関総合情報)

だからこそ、HS2028対応は「分類担当だけの仕事」にせず、原産地管理の仕組みとして、協定別に参照HS版を持つ、相関表で読み替えた痕跡を残す、という運用設計に落とし込むことが最短ルートになります。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の取引、品目分類、原産性判定、申告手続についての法務・税務・通関上の助言を構成するものではありません。実際の適用にあたっては、最新の協定本文・附属書、税関・関係当局の公表資料、並びに必要に応じて専門家の助言をご確認ください。

HS2022 第96類:雑品(Miscellaneous manufactured articles)

用語は次で統一します。

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • ほうき・ブラシ・モップ等(9603)
    • ボタン、スナップ、プレススタッド等(9606)
    • スライドファスナー(ジッパー)及び部品(9607)
    • ペン・シャープペン・替芯等(9608)/鉛筆・クレヨン等(9609)
    • 生理用品・おむつ等(材料を問わない)(9619)
    • 三脚・一脚・自撮り棒(セルフィースティック)等(9620)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 化粧用鉛筆(例:アイブロウペンシル)→ 第33類(章注で明示)
    • 模造身辺細貨類(イミテーションジュエリー) → 7117
    • 第82類の刃物等(完成品):彫刻用材料の柄が付いていても本体は第82類(ただし柄を単独提示なら9601/9602の余地)
    • 医療・獣医の特殊ブラシ → 9018(章注で例示)
    • 家具・照明器具 → 第94類(章注で除外)
    • がん具・遊戯用具・運動用具 → 第95類(章注で除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 「章注の除外」(第33類/66類/71類/82類/90類/94類/95類/97類など)に当たらないかを最初に確認
    • 9619は材質で迷わない(紙・不織布・プラスチックでも「衛生用品」なら9619に寄せて検討)
    • 9620は“スタンド一般”ではない(マイクスタンド等は除外、武器用に特化した三脚も除外)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 9601(象牙等)を含む製品:ワシントン条約(CITES)・国内規制の影響が大きい(差止・手続き遅延リスク)
    • 9613(ライター):**PSCマーク(消費生活用製品安全法)**の対象になり得る(輸入後販売の可否に直結)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(品目表の文言+注):第96類は「注(Notes)」が強く、除外規定も多いので、まず章注を読み、外れるものを落とします。
    • GIR6(6桁の号までの選定):同じ項でも、非詰替式/詰替式(ライター)歯ブラシ/その他ブラシ(9603)、**ボタンの材質(9606)**などで号が分かれます。
    • (セット品のとき)GIR3(b):たとえば9605(旅行用セット)は、構成品の寄与(本質)・小売用セット性が論点になります(※要件充足の確認が前提)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 用途(例:化粧用途か、筆記用途か)
    • 状態(完成品か、部分品か、半製品か)
    • 材質が決め手になるか(9606等)/材質を問わないか(9619等)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:章注1の除外に当たらないか?
    • 化粧用鉛筆(33類)、模造身辺細貨類(7117)、家具(94類)、がん具(95類)など。
  • Step2:除外でなければ、機能で項を特定
    • 例:ブラシなら9603、ボタンなら9606、ファスナーなら9607、筆記具なら9608/9609、衛生用品なら9619、三脚等なら9620。
  • Step3:完成品/部分品の切り分け
    • 例:真空容器(完成品)=9617、ガラス内瓶は除外(70.20)
  • Step4:6桁(号)へ(材質・構造・詰替可否・用途等で分岐)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 9609(鉛筆等) vs 33類(化粧用鉛筆)
    • 9608(一般の筆記具) vs 9017(製図用からす口等)
    • 9603(一般のブラシ) vs 9018(医療用・歯科用などの特殊ブラシ)
    • 9620(三脚等) vs 8518(マイクスタンド)/93類(武器用に特化した三脚等)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第96類は実務上も見出しが整理されているため、全列挙します。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
9601動物性の彫刻用/細工用材料(加工品)とその製品象牙・骨・貝殻・角の加工品、装飾パーツ「加工したもの」が前提。種規制(CITES等)に要注意。
9602植物性/鉱物性の彫刻用材料(加工品)等、ろう等の成形品、未硬化ゼラチン製品コロゾ等の彫刻品、琥珀・海泡石加工品、ろう模型、未硬化ゼラチン製品「植物性又は鉱物性の彫刻用材料」の定義に注意。35.03のゼラチンは除外。
9603ほうき・ブラシ類、モップ、ダスター、刷毛、結束毛束等歯ブラシ、塗装用刷毛、掃除用ブラシ、モップ医療・獣医の特殊ブラシは90.18へ。結束毛束は章注3の定義が前提。
9604手用ふるい・手用ふるい分け料理用ふるい「手用」が前提。
9605旅行用セット(化粧/裁縫/靴・衣類清掃)旅行用裁縫セット、靴磨きセットセットの構成・提示形態が重要(GIR3論点)。
9606ボタン、スナップ、プレススタッド等と部品・ブランクシャツボタン、ホック、スナップ服飾金具でもバックル等は他章の可能性。材質で号が分岐。
9607スライドファスナー(ジッパー)と部品ジッパー、スライダー、チェーン部品は9607.20。
9608ボールペン等、万年筆等、シャープペン、ホルダー、部品ボールペン、サインペン、万年筆、替芯、ペン先インキカートリッジ(32.15)や製図用からす口(90.17)等は除外。
9609鉛筆、クレヨン、鉛筆芯、パステル、チョーク等木軸鉛筆、クレヨン、鉛筆芯、パステル化粧用鉛筆は33類へ(章注1(a))。
9610筆記/図画面付きのスレート・ボード携帯用黒板・ボード「筆記/図画用の表面」がポイント。
9611日付印・封印・番号印等(手押し)日付スタンプ、ナンバリングスタンプ手で操作する設計が前提。
9612タイプリボン等、インクパッドタイプリボン、インクリボン、スタンプ台リボン(9612.10)かパッド(9612.20)か。
9613ライター及び部品(火打石・芯を除く)使い捨てガスライター、詰替式ライター、電子ライター安全規制(PSC等)に注意。火打石・芯は本項から除外。
9614喫煙用パイプ、シガー/シガレットホルダー等パイプ、パイプボウル、ホルダー部品も含む。
9615くし、ヘアスライド、ヘアピン、カーラー等櫛、ヘアクリップ、ヘアピン模造身辺細貨類(7117)相当の装身性が強い場合は注意(章注1(c))。
9616香水噴霧器等(マウント・ヘッド含む)、化粧用パフ等アトマイザー、スプレーヘッド、化粧用パフ容器単体は材質別へ、機械式噴霧器は84類の可能性等。
9617魔法瓶その他の真空容器(完成品)と部品(ガラス内瓶除く)真空断熱ボトル、真空ジャー、外部ケース、ふたガラス内瓶は除外(70.20)。外部ケースなしの真空断熱ボトルも含み得る。
9618洋裁用ダミー等、ショーウインドー用自動人形等トルソー、マネキン、動く展示装置人形玩具は95類、実物説明用模型は90.23等に注意。
9619生理用ナプキン、タンポン、おむつ等(材料を問わない)生理用品、紙おむつ、成人用失禁パッド、吸水性の母乳パッド「材料を問わない」が核心。吸収性のない物品や用途が違う医療用吸収パッド等は除外。
9620一脚・二脚・三脚・自撮り棒等カメラ三脚、一脚、自撮り棒マイクスタンド(8518)等は除外。93類用に特化設計のものも除外。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 材質で分かれる:9606(ボタン)、9615(くし類:硬質ゴム/プラ vs その他)など
    • 用途で分かれる:9603(歯ブラシ/化粧用筆/塗装用刷毛/機械用ブラシ等)
    • 構造・詰替可否で分かれる:9613(ガス・ポケットライターの詰替可否)
    • 完成品/部品で分かれる:9607(部品)、9613(部品)、9617(部品:ガラス内瓶除外)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    • グループ1:9619(衛生用品) vs 材質別の章(紙製品、繊維製品、プラスチック製品など)
      • どこで分かれるか:用途が「生理用品・おむつ等(吸収性を有する同類品)」かどうか
      • 判断に必要な情報:吸収体の有無、用途(失禁用・母乳用など)、医療用ドレープ等との違い
      • 典型的な誤り:「不織布だから繊維」「プラ外層があるからプラ製品」等で材質に引きずられる
    • グループ2:9620(三脚・自撮り棒) vs 8518(マイクスタンド)
      • どこで分かれるか:カメラ・スマホ等の“無作為の動き抑制”の支持具か、マイク用スタンドか
      • 判断に必要な情報:取付対象(何を載せるか)、構造(雲台・クイックリリース等)、仕様書
      • 典型的な誤り:スタンド類を一括で9620に寄せる
    • グループ3:9608(筆記具) vs 90.17(製図用からす口等)
      • どこで分かれるか:「一般筆記具」か「製図・計測用途の機器/器具」か
      • 判断に必要な情報:用途(製図用か)、カタログの用途説明、構造(製図器具か)
      • 典型的な誤り:高級・精密=90類、あるいはペン形状=9608と短絡
    • グループ4:9617(真空容器) vs 70.20(ガラス内瓶)
      • どこで分かれるか:「真空容器の完成品/外装部品」か「単独のガラス製内部容器」か
      • 判断に必要な情報:輸入形態(完成品か部品か)、部品の材質・用途(内瓶か)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第96類の章注1(d)は、「はん用性の部分品(parts of general use)」(Section XV 注2で定義)を第96類から除外します。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例えば「金属製の汎用クリップ・金具」など、**別章で一般的に扱う“はん用性の部分品”**は、第96類の“雑品”に寄せず、まずSection XVや該当章で検討します(※実務上は品名だけでなく規格・用途・取付形態が重要)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 9606/9607等の周辺部材を「ボタン・ファスナー」と誤認し、実は“はん用性の部分品”だった、というパターン(章注1(d)で除外の方向)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:第96類に入らないもの(化粧用鉛筆、66類、模造身辺細貨類、はん用性の部分品、90類、94類、95類、97類等)を列挙
    • 注2:9602の「植物性又は鉱物性の彫刻用材料」の定義(コロゾ等、琥珀、海泡石、黒玉等)
    • 注3:9603の「結束し又は房状にした物品」の定義(未装着で、ほうき/ブラシに組み込める状態)
    • 注4:貴金属・真珠・宝石等を含む場合の扱い(9601〜9606・9615は“微量使用”に限る等)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 9602の「植物性又は鉱物性の彫刻用材料」
    • 9603の「prepared knots and tufts」相当
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 例:化粧用鉛筆→33類、医療用特殊ブラシ→90.18、玩具→95類、家具→94類など

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:章注1(除外リスト)で“第96類に行く前に落とす”
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):用途(化粧/医療/玩具/家具等)、製品説明、販路(化粧品売場か等)
    • 現場で集める証憑:カタログ、パッケージ表示、取扱説明書、用途が分かる商品ページ写し
    • 誤分類の典型:アイブロウペンシルを9609へ(実際は章注1(a)で33類)
  • 影響ポイント2:9619(材料を問わない)の“材質ブレ”を止める
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):吸収性の有無、用途(生理用/失禁用/乳児用/母乳用等)、医療用途との違い
    • 現場で集める証憑:断面構造図、材質構成(内層/吸収体/外層)、用途説明
    • 誤分類の典型:不織布だから繊維章、プラ外層だからプラ章と判断して9619を見落とす
  • 影響ポイント3:9620に“自撮り棒(セルフィースティック)”が含まれる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):地面に接地させる支持具か、手持ち自撮り用途か、取付対象(スマホ/カメラ等)
    • 現場で集める証憑:仕様書(伸縮・ホルダー・リモコン有無)、写真
    • 誤分類の典型:スマホ周辺機器として別章に寄せる/マイクスタンド等まで9620に入れる

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:アイブロウペンシル等を9609(鉛筆)にする
    • なぜ起きる:形が鉛筆状で、品名も“pencil”表記になりやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):章注1(a)で化粧用鉛筆は第33類へ除外
    • 予防策:用途の確認(化粧/筆記)、化粧品としての表示・販売形態の取得
  2. 間違い:象牙等の柄付きナイフ(完成品)を9601/9602にする
    • なぜ起きる:高価な材料(象牙等)に目が行き、材料主導で分類してしまう
    • 正しい考え方:章注1(e)により、刃物等(第82類)が原則。9601/9602は“柄を単独提示”などの局面で問題になる
    • 予防策:輸入形態(完成品か、柄単体か)を確認し、商品構成図を入手
  3. 間違い:製図用のからす口等を9608(ペン)にする
    • なぜ起きる:見た目がペンに近い
    • 正しい考え方:96.08の解説で製図用からす口(90.17)を除外として明示
    • 予防策:用途(製図/計測か)と製品カタログの“Designed for drafting”相当の記載を確認
  4. 間違い:成人用失禁パッド等を材質で分類して9619を外す
    • なぜ起きる:紙/不織布/プラのどれが主かで迷う
    • 正しい考え方:9619は生理用品・おむつ等を“材料を問わず”包含し、成人用失禁者向け等も含む
    • 予防策:断面構造(内層・吸収体・外層)と用途説明(失禁用等)を資料化
  5. 間違い:自撮り棒をスマホアクセサリとして別章(通信機器系など)へ寄せる
    • なぜ起きる:スマホと一緒に売られるため
    • 正しい考え方:9620の解説で自撮り棒(セルフィースティック)を含む旨が明記
    • 予防策:カメラ支持具としての機能説明、ホルダー構造・伸縮・リモコン有無を確認
  6. 間違い:香水噴霧器の“容器だけ”を9616にしてしまう
    • なぜ起きる:製品名がatomizerで一括されやすい
    • 正しい考え方:9616の解説では、噴霧器の容器(瓶など)を単独提示する場合は材質で分類する旨が示される
    • 予防策:輸入形態(ヘッド付き完成品か、容器単体か)をインボイス・写真で確認
  7. 間違い:魔法瓶のガラス内瓶(単体)を9617にする
    • なぜ起きる:魔法瓶関連部材=9617と短絡
    • 正しい考え方:9617はガラス内瓶を除外(解説で70.20を示唆)
    • 予防策:部品図で「glass inner」かを確認、材質証明を取得
  8. 間違い:歯ブラシと医療用ブラシを9603で一括する
    • なぜ起きる:どちらも“brush”
    • 正しい考え方:章注1(f)で医療・獣医の特殊ブラシ(90.18)を例示して除外
    • 予防策:用途(歯科治療用/日用品)と販売先(医療機関向け等)を確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。誤ったHSでPSRを見てしまうと、原産性判断(CTC/RVC等)の前提が崩れます(一般論)。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品(例:ボールペン=9608)と、非原産材料(例:替芯、インキカートリッジ、金属部品)のHSを混同
    • “材質で分類すると思い込む”ことで、9619(材質不問)などの大前提がズレる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 経済連携協定等は、採用しているHS版が異なることがあり、協定が参照するHS版で検索すべき旨が税関のPSR検索画面でも注意喚起されています。
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意(一般論):
    • 「HS2022でのコード」→「協定が採用するHS版への読み替え(トランスポジション)」が必要
    • コード番号が同じでも、文言が変わっている場合がある(第96類ではHS2022で一部文言修正あり)

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論)
  • 実務のコツ:
    • 「完成品のHS(6桁)」と「主要材料のHS(6桁)」を並べた管理表を作り、改正時は相関表で更新(一般論)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022文言修正(表現整理)9617.00「complete with cases」→「complete」等、完成品表現の整理外部ケースの有無に引きずられず“完成品としての9617”を再確認
HS2017→HS2022文言修正(範囲の明確化)9619.00「napkins」表現を「napkins (diapers)」等と明確化・整理“おむつ等”であることを明示。材質・対象者で迷わず9619を起点に検討
HS2017→HS2022文言修正(軽微)章注1(k) 等例:「lamps」→「luminaires」等の用語調整第94類除外の趣旨自体は同じ(実務影響は限定的)
HS2017→HS2022変更なし(番号体系)9601〜9620見出し番号・号の体系は維持(第96類内での新設・削除は確認できず)税率・国内コード細分は別途改正の可能性があるため最新表を確認

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料として、WCOのHS2017版とHS2022版の第96類(Chapter 96)を突合し、9617および9619の見出し文言がHS2022で整理されていることを確認しました。
  • また、日本税関の「HS2022改正について」では、HS改正に伴う新旧対応としてWCO作成の相関表が案内されています(一般的に、改正影響の確認は相関表・新旧条文の突合で行う、という位置付け)。
  • なお、第96類については、HS2017→HS2022で見出し番号や号の“新設・削除・分割”よりも、文言の明確化・整理が中心であることを、本章の条文比較から判断しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要な流れ(HS2007→2012→2017→2022)を、条文(WCO品目表)ベースで整理します。

変遷変更タイプ旧コード → 新コード(または行き先)要旨実務メモ
HS2007→HS2012新設(HS2007に該当コードなし)→ 9619.00生理用ナプキン・タンポン・おむつ等を“材料を問わず”扱う見出しが追加材質別に分散しがちな品目を「用途」で束ねる設計へ
HS2007→HS2012統合(再編)9608.31/9608.39 → 9608.30“万年筆その他のペン”の細分(インディアンインク製図ペン等)を一本化旧版コードでの資料(BOM/契約/PSR)参照時に注意
HS2012→HS2017新設(HS2012に該当コードなし)→ 9620.00一脚・二脚・三脚等を独立見出し化“カメラ支持具”の定番分類。自撮り棒の扱い整理にも影響
HS2017→HS2022文言修正9617.00/9619.007章参照(完成品表現、diapers明記等)コードは同じでも“文言”更新により説明資料の更新が必要

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):化粧用ペンシルを鉛筆として申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):章注1(a)の除外(化粧用鉛筆は33類)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が “cosmetic pencil” ではなく “pencil” のみ
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、説明資料要求
    • 予防策:用途説明、化粧品表示、成分・用途資料を添付
  • 事例名:象牙柄のナイフを9601で申告
    • 誤りの内容:章注1(e)(第82類の刃物は第96類ではない。柄単体なら別)
    • 起きやすい状況:材料が高価で、材料主導で分類してしまう
    • 典型的な影響:分類更正、検査強化(場合により種規制の追加確認)
    • 予防策:完成品/部材単体の輸入形態、構成部品リストの整備
  • 事例名:成人用失禁パッドを材質別で申告
    • 誤りの内容:9619(材料を問わない)を見落とし
    • 起きやすい状況:不織布・プラ・紙など複合材で判断が散る
    • 典型的な影響:分類更正、追加納税、品目説明補完要求
    • 予防策:断面構造、吸収体の有無、用途資料(失禁用等)
  • 事例名:自撮り棒を通信機器の付属品として申告
    • 誤りの内容:9620に含まれるべき物品を別章へ
    • 起きやすい状況:スマホ売場の周辺機器扱い
    • 典型的な影響:分類更正、統計品目の修正
    • 予防策:支持具としての仕様(伸縮、ホルダー、リモコン等)を提示

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制(該当し得る代表):
    • 9601(象牙等の動物性材料の加工品)は、原材料がCITES/国内法の対象になり得ます。日本国内では象牙製品等の取引が原則禁止を前提に、例外的に管理下で取引可能となる制度が案内されています。
    • 象牙製品等の国内取引を業として行う場合の登録・記録保存等(制度詳細は公的案内に従う)。
    • 輸出(CITES対象貨物)の場合、METI側で輸出承認・CITES許可書等の手続き案内があります。
  • その他の許認可・届出(消費生活用製品安全法:ライター):
    • 9613(ライター)は、ディスポーザブル(使い捨て)式ライター多目的ライターが、消費生活用製品安全法の枠組みで対象製品として整理されています(PSCマーク制度の案内)。
    • 実務では、輸入時点だけでなく「国内で販売できる状態か」(適合性検査・表示等)まで含めて確認が必要です。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 種規制:環境省の象牙規制案内、METIのCITES手続き案内
    • 製品安全:経済産業省(PSCマーク制度)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(材質・用途・構造)、写真、原材料の由来情報(動物由来の場合)、製品安全の適合資料(該当品のみ)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 用途(化粧/医療/一般)、構造(完成品/部品)、材質、セット構成、写真
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 章注1の除外に当たらないか(33/66/71/82/90/94/95/97等)
    • 9619(材質不問)・9620(自撮り棒含む)など“特別に迷いやすい項”の再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名が用途を誤誘導しないか(pencil/brush/stand等)
    • 断面構造図・カタログ添付で説明力を上げる
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版の確認(税関PSR検索の注意喚起を踏まえる)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 9601:象牙等なら種規制の該当性確認
    • 9613:PSC対象のライター類は適合性・表示等の確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 Chapter 96(WCO PDF)
    • HS2017 Chapter 96(WCO PDF)
    • HS2012 Chapter 96(WCO PDF)
    • HS2007 Chapter 96(WCO PDF)
    • HS2017–2022 Correlation Tables(WCO案内)
  • 日本(税関・公的機関)
    • 関税率表解説 第96類(日本税関)
    • HS2022改正について(相関表の位置付け等:日本税関)
    • 事前教示(品目分類)検索(日本税関)
    • Eメール事前教示制度(品目分類)(日本税関)
    • 事前教示制度(カスタムスアンサー:品目分類)(日本税関)
    • 品目別原産地規則(PSR)検索(HS版違いの注意喚起:日本税関)
  • 規制(日本)
    • 象牙の国外持ち出し規制/国内取引規制(環境省)
    • 特別国際種事業者登録(象牙関連:自然環境研究センター等)
    • ワシントン条約(CITES)輸出承認手続き(METI)
    • PSCマーク制度(ライターを含む:METI)
      ※Web参照日:2026-03-02

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点(任意)

  • 国内コード(日本の統計品目等)は、HS6桁(国際共通)より細かく分かれ、税率・統計・規制実務に影響します。
  • 第96類は特に、9613(ライター)、9619(衛生用品)などで国内細分が運用上重要になり得るため、必ず最新の輸入統計品目表(国内コード)を確認してください(本稿はHS6桁の整理です)。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • 税関の公開情報として、**事前教示回答(品目分類)**の検索が可能です(一般的品名、税番、貨物概要等)。
  • 相談を早めるために揃えるとよい情報(一般論):
    • 製品の用途・構造・材質(必要なら断面図)
    • 写真(外観・梱包・表示)
    • カタログ、取扱説明書、成分表(該当品のみ)
  • 申請ルート:Eメールを用いた事前教示制度の案内もあります(実務は管轄税関の案内に従ってください)。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第95類:玩具、遊戯用具及び運動用具並びにこれらの部分品及び附属品(Toys, games and sports requisites; parts and accessories thereof)

  • (用語の統一)
    類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 三輪車・スクーター等の車輪付き玩具、人形、その他の玩具、パズル(95.03)
    • 家庭用ゲーム機(外部モニターに映すタイプ)や、画面内蔵の携帯型ゲーム機(95.04のうち、主に9504.50の対象)
    • クリスマス装飾などの祝祭用品(95.05)
    • スポーツ・屋外遊戯用の用具(ゴルフ、テニス、卓球、プール等)(95.06)
    • 釣りざお・釣針・リール等の釣具(95.07)
    • 遊園地の乗り物(ジェットコースター等)、ウォーターパーク設備、射的場などの興行用設備、巡回劇場設備等(95.08)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • ゲームソフト(ディスク等の記録媒体):85.23(第95類注1(m)や95.04の解説で明示)
    • 無人航空機(いわゆるドローン):88.06(第95類注1(p)で除外)
    • ストリングライト(イルミネーション等):94.05(第95類注1(u)/95.05の除外でも言及)
    • 玩具っぽい外観でも、実体がポンプ・モーター・フィルター等の機械/電気機器:84類・85類など(第95類注1(m)で例示)
    • 実用性のある生活用品(衣類・寝具・リネン等):材質により別類(注1(x)の考え方)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「遊ぶ/競う/運動する」ための品か、それ以外の実用品(機械・電気製品・衣類等)か(注1で“他章へ飛ぶ”頻度が高い)
    2. ゲーム機本体(95.04)と、ゲームソフト(85.23)の切り分け
    3. 95.08(遊園地・興行設備)に該当する“設備”の範囲(ユニット同時提示・本質的必要ユニットの考え方)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 家庭用ゲーム機・アーケード筐体(9504.30/9504.50の分岐、周辺機器・ソフトの除外)
    • 遊園地設備(95.08)(大型・高額で、誤ると税率や許認可確認、PSR(原産地規則)へ波及しやすい)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • 第95類は、見出し(品名)だけで決めると事故りやすい類です。理由は、注1で機械・電気・実用品などへ広く除外されるためです。
  • 実務では次が効きます:
    • GIR1:まず見出しと注(特に類注)で当たりを付ける
    • GIR6:4桁(項)→6桁(号)の分岐に落とす(例:9504.30 vs 9504.50、9508の細分など)
    • GIR3(b):複数品の組合せ(セット)で「主要な性質(essential character)」が問題になるケース(玩具の組合せ等)
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 用途(遊戯・運動・興行設備か/実用機器か)
    • 機能の実体(“玩具風デザイン”でも中身がポンプ・モーター等なら注1(m)で除外されうる)
    • 提示のされ方(95.08は“設備として一式”かが重要)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:その品は「玩具/ゲーム/祝祭用品/スポーツ用品/釣具/遊園地・興行設備」のいずれですか?
  • Step2:第95類注1の除外に当たりませんか?
    • 記録媒体(85.23)、無人航空機(88.06)、ストリングライト(94.05)、機械・電気機器(84/85類)等
  • Step3:95.03〜95.08のどれに最も素直に当てはまりますか?(2章の表で確認)
  • Step4:6桁(号)まで落として、分岐条件(支払手段の有無、設備の類型、水上か否か等)を確認
  • よく迷う境界:
    • 玩具(95.03) vs 無人航空機(88.06)(“飛行するもの”は注1(p)の影響が大きい)
    • ゲーム機本体(95.04) vs 記録媒体(85.23)
    • 家庭用遊具(公園・住宅向け) vs 95.08(遊園地設備)(95.08の定義・要件で整理)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:
    • 第95類は4桁(項)が多くないため、**実務上は原則「全列挙」**が読みやすいです。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
9503玩具(車輪付き玩具、人形、縮尺模型、パズル等)三輪車・キックボード(玩具)、人形、レゴ等、ジグソーパズル注1(m)(p)(u)等の除外に注意(ドローン/電気機器/記録媒体等)
9504ビデオゲーム機・卓上/室内ゲーム、コイン作動娯楽機等家庭用ゲーム機、携帯ゲーム機、トランプ、ビリヤード用品、アーケード筐体9504.30(支払手段で作動)と9504.50(家庭用等)の分岐ゲームソフト(85.23)除外
9505祝祭・カーニバル等の装飾用品、手品用品、いたずら用品クリスマス飾り、仮装用小物(実用品でないもの)、手品道具実用性がある物品(衣類・食器等)は除外ストリングライト(94.05)除外
9506スポーツ・屋外遊戯・プール等ゴルフクラブ、テニスラケット、卓球用品、スキー用品、プール章内で細分が多い。衣類・靴・バッグ等は別類になりやすい
9507釣具釣りざお、釣針、リール、釣り具セットの一部糸など未仕上げは別類、周辺小物も材質・用途で除外あり
9508遊園地の乗り物、ウォーターパーク設備、興行用設備(射的場等)、巡回劇場設備、巡回サーカス/動物園設備ジェットコースター、回転木馬、ウォータースライダー設備、射的設備“設備として一式”要件/ユニット同時提示他類により特定される設備は除外

(注)WCOのHS上、**[95.01]・[95.02]は欠番(表示のみ)**で、実務的には9503以降が中心です。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(頻出ポイント):
    • 9504.30 vs 9504.50
      • 9504.50は「外部画面に映すコンソール」または「画面内蔵のビデオゲーム機」等をカバーし、
      • 硬貨・紙幣・カード・トークン等の“支払手段で作動するもの”は9504.30へ、という整理が明示されています。
    • ゲームソフト(記録媒体):ゲーム機に専ら使う光ディスク等でも、記録媒体は85.23へ除外されます(95.04の解説で明示)。
    • 9508の細分(HS2022で重要度が上がった)
      • 9508.10:巡回サーカス・巡回動物園の設備
      • 9508.21〜.29:遊園地の乗り物/ウォーターパーク娯楽設備(ジェットコースター等、水上設備等)
      • 9508.30:興行用設備(射的場等)
      • 9508.40:巡回劇場の設備
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 9504.30(支払手段で作動) vs 9504.50(それ以外のビデオゲーム機)
      • どこで分かれるか:“コイン等の支払手段で作動するか”
      • 判断に必要な情報:
        • 筐体がアーケード用途か(運用形態)
        • 支払モジュール(コインメック等)の搭載有無、仕様書
      • 典型的な誤り:家庭用ゲーム機を9504.30に入れる/逆にアーケード筐体を9504.50に入れる
    2. 95.04(ゲーム機本体) vs 85.23(ゲームソフト等の記録媒体)
      • どこで分かれるか:“物がハードか、記録媒体か”
      • 判断に必要な情報:
        • 商品形態(ディスク・カートリッジ・ダウンロードコード等)
        • セット販売の内訳(インボイス明細)
      • 典型的な誤り:ゲームディスクを95.04扱い
    3. 9503(玩具) vs 8806(無人航空機)
      • どこで分かれるか:“無人航空機(88.06)に該当するか”(第95類注1(p)で95類から除外)
      • 判断に必要な情報:
        • 飛行のための構造・機能(仕様書、取説、カタログ)
        • 用途(単なる玩具か、航空機としての機能を持つか)
      • 典型的な誤り:“玩具だから9503”と即断する(注1(p)の見落とし)
    4. 9508(設備) vs 「単品部材」
      • どこで分かれるか:通常の活動に本質的に必要なユニットを含む“設備一式”か。また、単独なら他類の物品でも、設備を構成し同時提示される場合に95.08となりうる、という整理があります。
      • 判断に必要な情報:
        • 出荷単位(ユニット構成表、据付図、BOM)
        • 同時提示(同梱)か、別送か
      • 典型的な誤り:設備一式を部材単品として別類へ分断して申告

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第95類の注1(k)で参照される「はん用性の部分品(Section XV 注2)」は、玩具・スポーツ用品に使うものであっても、原則として各材質の類で扱う、という考え方と相性が良いです。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:スポーツ用具の「汎用ボルト・ナット」「汎用ヒンジ」「汎用バネ」等は、部品だからといって95類に寄せず、まず“はん用性の部分品”かを疑います。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 「専用品に見えるが、寸法・規格が一般用で流通している」=はん用性の部分品として別章へ

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:第95類からの広範な除外(記録媒体85.23、無人航空機88.06、ストリングライト94.05、機械・電気機器84/85類など)
    • 注3(部品・附属品):原則として“当該物品に専ら又は主として使用する”部品・附属品は同じ項で扱うが、注1で除外される物品は含めない(=部品でも注1で落ちる)
    • 注6(95.08の用語定義):遊園地の乗り物/ウォーターパーク設備/興行用設備の範囲・定義が整理され、さらに「95.04の設備は含まない」「他で特定される設備は除く」等の方向性が示されます。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 95.08の「amusement park rides」「water park amusements」「fairground amusements」等の定義と、95.04との境界(95.04の設備は含まない)が整理されています。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 記録媒体:85.23
    • 無人航空機:88.06
    • ストリングライト:94.05

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:注1(m)で “玩具っぽい電気製品/メカ” が95類から落ちる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 中核機能(ポンプ、モーター、トランス、フィルター等)と該当章(84/85類)
      • 記録媒体(85.23)かどうか
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書、回路図、取説、構成部品表、販売ページ(用途表示)
    • 誤分類の典型:
      • 「子ども向けデザイン」だけで玩具扱い
      • 逆に、玩具としての遊戯機能が主であるのに機器扱いへ寄せる(用途・市場実態の見落とし)
  • 影響ポイント2:注1(p)で “無人航空機(88.06)” が95類から除外
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 飛行のための構造・性能(推進、制御、滞空など)
      • 商品説明・用途(撮影等の機能)
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書、取説、技術資料、構造図、販売カタログ
    • 誤分類の典型:
      • “玩具ドローン”を一律に9503へ(注1(p)の見落とし)
  • 影響ポイント3:注3(部品・附属品)で「部品=一律部品分類」にならない
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 専用性(専ら又は主として95類品に使用か)
      • 注1で除外される部品(例:記録媒体85.23等)ではないか
    • 現場で集める証憑:
      • 互換表、適用機種一覧、図面、取説、梱包表示
    • 誤分類の典型:
      • ゲームソフト(85.23)を“ゲーム機の部品”として95類に寄せる
  • 影響ポイント4:95.08は「設備一式」か「単品」かでコードが変わり得る
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 設備として通常活動に必要なユニットを含むか、同時提示か
    • 現場で集める証憑:
      • 据付図、ユニット構成表、出荷単位、契約範囲(EPC範囲)
    • 誤分類の典型:
      • 設備一式を部材単位に分断して別類へ(結果として税関説明が難しくなる)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:ゲームディスク(ソフト)を95.04に入れる
    • なぜ起きる:商品名が「ゲーム」で同じに見える
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):
      • 記録媒体は注1(m)で例示され、95.04の解説でもゲームソフトの光ディスクは85.23と整理されています。
    • 予防策:
      • インボイスで「console」「controller」「disc」等を分ける
      • 形態(媒体か機器か)の写真を添付
  2. 間違い:家庭用ゲーム機を“コイン作動機”側(9504.30)へ入れる
    • なぜ起きる:アーケードと家庭用の境界を見ず、見た目で判断
    • 正しい考え方:
      • 9504.50のカバー範囲と、9504.30への除外(支払手段で作動)を確認します。
    • 予防策:
      • 支払手段の有無、運用形態(店舗設置か家庭用か)を仕様書で確認
  3. 間違い:“玩具っぽい外観の電気製品”を無条件に玩具(9503)へ
    • なぜ起きる:キャラクター形状=玩具と短絡
    • 正しい考え方:
      • 注1(m)で機械・電気機器への除外が広く示されます。
      • さらに日本では電安法上、子供向け装飾等の条件で「電熱式おもちゃ/電動式おもちゃ」相当になるかの考え方も示されています(分類ではなく規制面の注意ですが、製品属性整理に役立ちます)。
    • 予防策:
      • 目的(遊戯か調理・乾燥等の実用か)を取説・広告で確認
      • 電源・発熱・駆動部の仕様を入手
  4. 間違い:祝祭柄の“実用品”(食器・衣類など)を95.05へ
    • なぜ起きる:“クリスマス柄”だけで祝祭用品と思い込む
    • 正しい考え方:
      • 95.05の解説では、祝祭デザインでも実用性がある物品(衣類、リネン等)は除外されます。
    • 予防策:
      • 「使い捨て装飾か/通常使用の実用品か」を機能で判断
  5. 間違い:イルミネーション(ストリングライト)を95.05へ
    • なぜ起きる:クリスマス装飾=95.05と連想
    • 正しい考え方:
      • 注1(u)および95.05の除外で、ストリングライトは94.05に整理されています。
    • 予防策:
      • 電気照明か否か(電源、光源)を必ず確認
  6. 間違い:飛行する機体(ドローン)を“玩具”として9503へ
    • なぜ起きる:“子ども用”表示だけで決める
    • 正しい考え方:
      • 注1(p)で無人航空機(88.06)が除外されます。
    • 予防策:
      • 飛行性能・構造を確認し、88.06の検討を必須化
  7. 間違い:95.08(設備)を単品部材扱いでバラバラ申告
    • なぜ起きる:輸送・工事都合で分納され、税番も分けたくなる
    • 正しい考え方:
      • 95.08は「通常の活動に本質的に必要な全ユニットを含む場合」に属し得る、という枠組みが示されます。
    • 予防策:
      • 契約範囲(設備一式)と出荷単位を紐付け、税関説明資料(ユニット表)を準備

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR(品目別規則)の選択に直結します。最終製品HSが誤ると、PSRの条項自体がズレます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料HS(部材の税番)と最終製品HSの混同
    • 95.04(ハード)と85.23(ソフト/媒体)の取り違えが、PSR・材料表を崩す

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定により参照HS版が異なる場合があり、HS2022の6桁とPSRの6桁がズレることがあります。
  • 日本税関の原産地関連情報(PSR検索等)では、協定・品目による取り扱いを確認できます。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • まず協定が参照するHS版を特定
    • 次に相関表(WCO/税関の対応表)でコード対応を確認

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 工程図、原価計算根拠、仕入書、製造記録などを“後から説明できる形”で保存
    • 95.08のような設備案件は、ユニット構成・据付範囲の説明資料が重要

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割(細分化)95.08(9508.90等→9508.21〜.40等)95.08の構造が再設計され、遊園地の乗り物・ウォーターパーク設備・興行設備・巡回劇場等がより明確に区分9508周りのトランスポジション必須。設備案件の分類説明・PSR適用にも影響
HS2017→HS2022範囲変更(注の影響)注1(p)関連新設の88.06(無人航空機)へ品目移転があり、95類では無人航空機が除外に明示“玩具ドローン”の扱い検討が増える。輸入規制・航空法等の確認にも波及

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 95.08の細分化については、HS2022-HS2017相関表側で「95.08の構造が再設計された」旨が明記され、かつ日本税関の解説でも9508.21〜9508.40等の区分が示されています。
  • 無人航空機(88.06)の新設と品目移転は、HS2022-HS2017相関表で新設理由(無人航空機のための新見出し)とともに示され、また第95類注1(p)で95類からの除外が確認できます。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

(主要なものを抜粋。詳細は相関表で最終確認してください)

期間主な動き旧コード → 新コード(代表)コメント
HS2007→HS2012ビデオゲーム関連の再整理9504.10(TV用ビデオゲーム)→(2012以降は9504.50側へ整理)HS2007の9504.10はHS2012以降の構造で置換された位置づけ
HS2017→HS202295.08の細分化9508.90(等)→ 9508.21〜.29、9508.30、9508.40 など95.08の範囲自体というより、統計・監視等を意識した区分の明確化
HS2017→HS2022無人航空機の新設に伴う整理(旧:88.02の一部等)→ 88.06新設、95類からも除外明示95類での“飛行する玩具”の検討が増える

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:ゲーム機とソフトを一括で「9504」申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):注1(m)の見落とし(記録媒体85.23)
    • 起きやすい状況:セット販売、インボイスが「game set」とだけ記載
    • 典型的な影響:修正申告、資料要求、審査長期化(一般論)
    • 予防策:ハード・媒体・周辺機器を明細分離、写真添付
  • 事例名:“玩具ドローン”を9503で申告→88.06の疑いで保留
    • 誤りの内容:注1(p)の見落とし(無人航空機は88.06へ)
    • 起きやすい状況:商品名にtoy/droneが混在、仕様書なし
    • 典型的な影響:分類照会、輸入規制(航空法等)の追加確認(一般論)
    • 予防策:飛行仕様・用途を示す資料を準備(取説、仕様表)
  • 事例名:祝祭柄の衣類を95.05で申告して否認
    • 誤りの内容:実用性ある物品は除外(95.05解説の考え方)
    • 起きやすい状況:コスチューム・仮装衣装の境界
    • 典型的な影響:税番修正、繊維製品側の追加要件確認(一般論)
    • 予防策:素材・縫製・耐久性・反復使用性を整理し、実用品か仮装用かを説明
  • 事例名:遊園地設備(95.08)の“分納”で税番が分断
    • 誤りの内容:95.08の「設備一式(本質的必要ユニット)」の考え方の不整合
    • 起きやすい状況:建設工事案件、複数船積
    • 典型的な影響:説明困難、審査・検査の増加(一般論)
    • 予防策:ユニット構成表・据付図・契約範囲で“設備一式”として説明できるよう整備

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • {COUNTRY}前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)

製品安全(乳幼児用玩具:子供PSCマーク)

  • 令和7年(2025年12月25日)から、3歳未満向け玩具(乳幼児用玩具)に新たな規制が開始され、技術基準適合、警告表示、子供PSCマーク等が求められます(製造・輸入事業者の義務、販売事業者の販売規制も記載)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省(乳幼児用玩具の規制案内)
    • 消費者庁(子供PSCマークの周知)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 対象年齢根拠(設計意図、試験、説明書)
    • 技術基準適合の確認記録、表示版下、サプライヤー情報

食品衛生(指定おもちゃ等)

  • おもちゃに関する食品衛生の基準行政は、2024年4月1日に厚生労働省から消費者庁へ移管された旨が明記されています。
  • 「指定おもちゃ」の考え方(乳幼児が口に入れたり舐めたりすることが想定されるもの等)や、運用上の“乳幼児”の扱い(例:6歳未満として運用)など、通知Q&Aで整理されています。
  • 確認先:
    • 消費者庁(食品衛生基準審査)
    • 関連通知・Q&A(厚労省掲載資料として参照可能)

電気安全(電安法:電熱式おもちゃ/電動式おもちゃに該当し得るもの)

  • 子供向けの装飾を施した電気製品が、状況により「電熱式おもちゃ」または「電動式おもちゃ」として扱われ得る判断基準例(対象年齢表示、玩具としての販売形態、装飾の占める割合(例:投影面積の1/16超)等)が示されています。
  • HS分類そのものとは別ですが、**製品の性質整理(用途・販売実態)**に関して通関実務にも影響し得るため、該当可能性がある場合は早めに確認するのが安全です。

ドローン(無人航空機:HS上は95類除外になり得る)

  • HS上、無人航空機(88.06)は第95類から除外されます。
  • さらに日本では、無人航空機の登録や飛行ルール等の制度案内が国交省から提供されています(分類の前後でコンプライアンス確認が必要になる典型例)。

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 仕様書(機能・材質・サイズ・電源・対象年齢)
    • 写真(全体、銘板、付属品)
    • 取説・カタログ(用途表示、販売実態)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 注1(85.23、88.06、94.05等)に当たらないか
    • 95.04はハード/媒体の切り分けができているか
    • 95.08は設備一式の要件整理ができているか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 「console」「disc」「controller」等、形態別に明細化
    • セット品は内訳と主要性(GIR3(b)想定)を説明できるように
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版の確認、相関表でのトランスポジション
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 乳幼児用玩具:子供PSCマーク制度、表示、技術基準適合
    • 指定おもちゃ:食品衛生関連の対象確認
    • 無人航空機:登録・飛行ルール等(必要に応じて)

12. 参考資料(出典)

  • WCO:HS Nomenclature 2022 Edition, Section XX / Chapter 95(参照日:2026-03-02)
  • 日本税関:関税率表解説 第95類(95r.pdf)/分類例規(95rd.pdf)(参照日:2026-03-02)
  • 日本税関:HS2022-HS2017 相関表(参照日:2026-03-02)
  • WCO:HS2007/HS2012(Chapter 95)および日本税関HS2012-HS2007相関表(参照日:2026-03-02)
  • 経済産業省:乳幼児用玩具の新規制(子供PSCマーク等、開始日含む)(参照日:2026-03-02)
  • 消費者庁:子供PSCマーク周知(参照日:2026-03-02)
  • 厚生労働省:器具・容器包装、おもちゃ関連(食品衛生基準行政の移管案内含む)(参照日:2026-03-02)
  • 厚生労働省(通知資料):指定おもちゃの範囲等に関するQ&A(参照日:2026-03-02)
  • 経済産業省:電気用品安全法の解釈(電熱式/電動式おもちゃ判断例)(参照日:2026-03-02)
  • 国土交通省:無人航空機登録・飛行ルール等(参照日:2026-03-02)
  • 日本税関:EPA/原産地関係(PSR検索等)(参照日:2026-03-02)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第94類:家具、寝具、照明器具及びプレハブ建築物(Furniture: bedding…: luminaires…: prefabricated buildings)

  • 用語(この文書内の呼び方を統一します)
  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 椅子・ソファ・オフィスチェア等の「腰掛け」(9401)
    • 医療・歯科・理髪向けの専用家具(手術台、診察台、理髪椅子等)(9402)
    • 収納家具・テーブル・台所家具・寝室家具など「その他の家具」(9403)
    • マットレス、布団、枕、寝袋などの寝具類(9404)
    • 天井灯、壁付け灯、デスクライト、クリスマス用ライト(電飾)や発光サイン等(9405)
    • 工場で完成/要素として提示され現地組立するプレハブ建築物(木製、鋼製モジュール等)(9406)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 空気・水を入れて使うマットレス/枕/クッション:第39類・第40類・第63類(類注1(a))
    • 床置き用の鏡(姿見など):70.09(類注1(b))
    • 蝶番・取手・錠前・ねじ等の「はん用性の部分品」:第15部(部注2の定義)や83類等(類注1(d))
    • 電球・LEDランプ・LEDモジュール等の「光源そのもの」:第85類(類注1(f))
    • 歯科用機器を組み込んだ歯科用椅子等:90.18(類注1(ij))
    • 三脚・一脚(モノポッド等):96.20(類注1(m))
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    • 「家具(9401〜9403)」として扱えるか:床・地面に置いて使う設計が原則(類注2)。例外(壁付け棚等)もあります。
    • 「照明器具(9405)」か「光源(第85類)」か:**器具(ルミネア)光源(LEDランプ/モジュール等)**を分けて考えます。
    • 「プレハブ建築物(9406)」か「建材・部材」か:建築物として一式提示か、部材が単独提示かで分かれます。
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • LED照明:9405(器具)と85類(光源)の取り違えで、税率だけでなく電気用品安全法(PSE等)対応の社内手順が噛み合わないことがあります(分類そのものは別ですが、実務上の影響が大きい)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(品名+部注/類注):第94類は類注(特に注1〜4)が強力で、まずここで「入る/除外」を決めます。
    • GIR2(a)(未組立・分解状態):フラットパック家具など、分解・未組立でも「部品一式で提示」される場合、完成品として扱うのが基本です(国内解説でも明記)。
    • GIR6(6桁の分岐):HS2022では9405(照明)がLED対応で細分化され、6桁の選択が実務上重要です。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 家具:設置形態(床置き/壁付け)、可動性、用途(医療用か一般用か)
    • 寝具:中材(発泡ゴム/プラか、その他か)、空気/水を入れて使うか(除外)
    • 照明:器具光源か、LED専用設計か、太陽光発電(PV)か
    • プレハブ:現地組立の「建築物」一式か、部材単体か、鋼製モジュール(コンテナ形状)か

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象物は「家具/寝具/照明器具/発光サイン/プレハブ建築物」のどれですか?
    • 家具・腰掛け → Step2へ
    • 寝具・マットレス等 → Step3へ
    • 照明器具・発光サイン → Step4へ
    • プレハブ建築物 → Step5へ
  • Step2(家具):床・地面に置く設計ですか?(原則)
    • Yes → 9401(腰掛け)/9402(医療等専用)/9403(その他)へ
    • No → 例外(食器棚・本箱・棚付き家具、ユニット家具、腰掛け/寝台)は家具扱いの余地あり。設計・提示形態を確認。
    • なお、家具でも機械の専用部分品(冷凍機器・ミシン等)なら除外の可能性(類注1(e)(g)等)。
  • Step3(寝具):空気/水を入れて使うタイプですか?
    • Yes → 第39類/第40類/第63類の可能性(第94類から除外)
    • No → 9404(マットレス、布団、枕、寝袋等)へ
  • Step4(照明):それは「光源そのもの(電球・LEDランプ・LEDモジュール)」ですか?
    • Yes → 第85類の可能性(第94類から除外)
    • No(器具・本体) → 9405(照明器具/発光サイン/部品)へ。LED専用設計かで6桁が変わる。
  • Step5(プレハブ):建築物として「一式提示」されていますか?
    • Yes → 9406へ(木製/鋼製モジュール/その他)
    • No(部材単体) → 原則として各部材の該当項へ(9406の部品としては扱わない)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 9405(照明器具) vs 第85類(LEDランプ/LEDモジュール等の光源)
    • 9404(寝具) vs 第39/40/63類(エアマット等)
    • 家具の「部分品(9401.91/9403.91等)」 vs ガラス板・石板(第70類/第68類等:類注3(A))
    • 9406(プレハブ) vs “ただの鋼製コンテナ/自立ユニット”(設計要件で分岐)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
9401腰掛け(医療等専用を除く)及び部分品オフィスチェア、ソファ、車両用シート家具の定義(床置き原則)に注意。未組立でも一式提示なら完成品扱いのことが多い。
9402医療・外科・歯科・獣医用家具、理髪いす等及び部分品手術台、診察台、病院用ベッド(機構付き)、理髪椅子歯科用機器を組み込んだ歯科用椅子は90.18へ除外の可能性(類注1(ij))。
9403その他の家具及び部分品食器棚、ワードローブ、キッチンキャビネット、プラ家具壁付け棚等の例外(類注2)を確認。ガラス板・石板は家具部品に含めない(類注3(A))。
9404マットレスサポート、寝具等マットレス、敷布団、掛け布団、枕、寝袋空気/水式は除外(類注1(a))。9404品を家具の部分品として扱わない(類注3(B))。
9405照明器具、イルミネーションサイン等及び部分品LED天井灯、デスクライト、クリスマスライト、発光看板光源(電球・LEDランプ等)は第85類へ(類注1(f))。LED専用設計の有無で6桁が分岐(HS2022)。
9406プレハブ建築物プレハブ住宅、現場事務所、鋼製モジュール建築工場完成または要素一式で提示→9406。部材単体提示は各項へ。鋼製“モジュール建築”は9406.20。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • 材質(木製か否か):9401(回転昇降いす/ソファベッド/部分品)、9403(部分品)で「木製」分岐あり。
    • 中材(発泡ゴム/プラか否か):マットレス(9404.21/9404.29)。
    • LED専用設計か否か:照明器具(9405.11/19、.21/29、.31/39、.41/42/49、.61/69)。
    • 太陽光発電(PV)か:9405.41(PVかつLED専用)。
    • 建築物の形態(モジュール建築):9406.20(鋼製モジュール) vs 9406.90(その他)。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 9405.11(LED専用の天井/壁付け) vs 9405.19(その他)
      • どこで分かれるか:器具が「LED光源のみで使用する設計」かどうか。
      • 判断に必要な情報:取扱説明書(対応光源)、口金/ソケットの有無、LEDモジュール内蔵か、交換式か、製品仕様(適合ランプ)
      • 典型的な誤り:LED電球(光源)を“照明器具”として9405に入れる(実際は第85類の可能性)。
    2. 9405.41(PVかつLED専用)/9405.42(LED専用・PV以外)/9405.49(その他)
      • どこで分かれるか:太陽光発電(PV)の有無+LED専用設計の有無。
      • 判断に必要な情報:電源仕様(ソーラーパネル、蓄電池の構成)、光源仕様、カタログ
      • 典型的な誤り:ソーラー式ガーデンライトを“電気機器(85類)”と早合点(器具として9405側の検討が必要)。
    3. 9406.20(鋼製モジュール建築) vs 9406.90(その他のプレハブ)
      • どこで分かれるか:標準的な輸送用コンテナサイズ/形状で、内部が相当に(又は完全に)設備済みで、複数ユニットを組み合わせ恒久建築物を作る設計か。
      • 判断に必要な情報:設計図、結合方法(連結金具等)、内装/設備の施工状況、プロジェクト仕様(組合せ前提か)
      • 典型的な誤り:単体で完結し、他モジュールと組み合わせ前提でない“鋼製ユニット/コンテナ”を9406.20扱い(除外の考慮が必要)。
    4. 9404.21(発泡ゴム/プラのマットレス) vs 9404.29(その他素材)
      • どこで分かれるか:中材がセル状ゴム/プラスチックか。
      • 判断に必要な情報:材料構成(発泡PU、ラテックス等)、断面、MSDS/SDS、仕様書
      • 典型的な誤り:「ウレタン=ゴム」と決め打ちして誤る(素材定義は技術資料で確認)。
    5. 9404.40(布団・掛け布団・ベッドカバー等) vs 9404.90(その他)
      • どこで分かれるか:品目が“Quilts, bedspreads, eiderdowns and duvets”に該当するか。
      • 判断に必要な情報:商品名だけでなく用途(掛け寝具か)、構造(詰物、カバー)、販売形態
      • 典型的な誤り:寝具一括りで9404.90に寄せる(HS2022で9404.40が新設)。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第94類の類注1(d)は「はん用性の部分品」を除外します。この“はん用性の部分品”の定義は第15部注2にあります。
    • 第15部注2では、配管継手、チェーン、ねじ類(73類など)や、ばね、さらに錠前・金具類(83.01/83.02等)などを「parts of general use」として定義しています。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:家具用の蝶番・取手・金属レール・錠前 → 形状が家具向けでも、原則「はん用性の部分品」側(83類等)で検討し、9403の“家具の部分品”に安易に入れません。
    • 例:照明器具に使う汎用ねじ・ばね → 9405の部分品としてではなく、部注2の扱いを確認します。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 家具部品と称して「ガラス天板」「大理石天板」だけを輸入 → 類注3(A)で家具部品ではなく、ガラス/石材側へ。
    • 家具の金具(蝶番・金属取付具) → 第15部注2の“parts of general use”として第83類等へ。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:第94類からの除外(空気/水マットレス、床置き鏡、71類、はん用性の部分品、85類の光源等、90.18歯科機器付き椅子、玩具家具、96.20三脚等)。
    • 注2:9401〜9403の物品は原則「床・地面に置いて使用する設計」のものに限る。ただし棚付き家具・ユニット家具、腰掛け/寝台は例外。
    • 注3(A):9401〜9403の“部分品”に、ガラス板・石板等(単独のシート/スラブ)は含めない。
    • 注3(B):9404の物品を「家具の部分品」として9401〜9403に分類しない。
    • 注4:9406の“プレハブ建築物”の定義。HS2022では鋼製モジュール建築も含む旨が明記。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「家具」の実務的定義(国内解説):可動性があり床/地面に置く設計の実用品が中心。ボルト固定設計でも可動性家具とみなす点など、運用上の注意が示されています。
    • 「プレハブ建築物」:工場で完成、または要素として提示され現地組立される建築物。鋼製のモジュール建築(コンテナ形状、内部設備済み、組合せで恒久建築)も含む。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 空気/水式寝具 → 39/40/63(注1(a))
    • 光源(ランプ/LED等) → 85類(注1(f))
    • ねじ・金具等(はん用性の部分品) → 73類/83類等(注1(d)、第15部注2)
    • 歯科機器付き椅子等 → 90.18(注1(ij))

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:類注2(家具の定義:床置き原則+例外)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 設置形態(床置きか、壁固定か)、可動性、用途、提示形態(棚+支持具セットか)
    • 現場で集める証憑:
      • 組立説明書、設置図、取付金具の有無、製品写真、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • 壁に掛ける棚板単体(支持具なし)を9403扱いにしてしまう(実際は材質・形状により他類の可能性)。
  • 影響ポイント2:類注3(A)(家具“部分品”から板材を除外)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • その部材が「板(シート/スラブ)単体」なのか、他部材と結合した“部品”形態なのか
    • 現場で集める証憑:
      • 図面(穴加工・金具取付の有無)、加工工程、部品表(BOM)、梱包明細
    • 誤分類の典型:
      • ガラス天板・鏡板(単体)を家具部品として9403.91/9403.99に入れる。
  • 影響ポイント3:類注1(f)+9405(照明器具)と85類(光源)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 製品が「器具(ルミネア)」か「光源(LEDランプ/モジュール)」か。LEDモジュールとLEDランプの区別(口金の有無等)は第85類側の定義も参照。
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書(光源部の構造)、口金/コネクタ、交換方式、電気回路の範囲、適合規格資料
    • 誤分類の典型:
      • “LED照明”という商品名だけで9405に決める(実態がLEDランプ単体の場合がある)。
  • 影響ポイント4:類注4(9406:プレハブ建築物)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 一式提示か、部材単体か。鋼製モジュール建築としての設計(複数ユニット組合せ前提)か。
    • 現場で集める証憑:
      • 出荷形態(セット構成)、設計図、連結方法、内装設備の施工状況、契約仕様書
    • 誤分類の典型:
      • 建築物一式でなく部材単体なのに9406で申告、または組合せ前提でない鋼製ユニットを9406.20で申告。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:エアマットレス(空気注入式)を9404に入れる
    • なぜ起きる:商品名に「マットレス」「ベッド」とあるため
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):類注1(a)で空気/水式の寝具は第94類から除外(39/40/63へ)。
    • 予防策:
      • 確認資料:構造断面、バルブの有無、取説
      • 社内質問例:「空気を入れて使いますか?」「中材は発泡材ですか?」
  2. 間違い:LED電球(口金付き)を9405(照明器具)として扱う
    • なぜ起きる:「LED照明」という表現が広く、器具と光源が混同される
    • 正しい考え方:類注1(f)で“ランプ/光源”は第85類。LEDモジュール/LEDランプの区別も第85類の定義参照。
    • 予防策:
      • 確認資料:口金の有無、交換可能性、製品構成(光源単体か)
      • 社内質問例:「これは器具ですか?それとも電球(光源)ですか?」
  3. 間違い:ガラス天板(単体)を“家具の部分品(9403.91/9403.99)”に入れる
    • なぜ起きる:最終用途がテーブルの天板なので部品に見える
    • 正しい考え方:類注3(A)で、ガラス(鏡含む)や石材等の板(単体)は9401〜9403の部分品に含めない。
    • 予防策:
      • 確認資料:板単体か、金具等と結合されているか、梱包明細
      • 社内質問例:「他の部材と一体ですか?穴加工や金具固定はありますか?」
  4. 間違い:マットレス単体を“ベッド(家具)の部品”として扱う
    • なぜ起きる:「ベッドの一部」という商流上の言い方
    • 正しい考え方:類注3(B)により、9404品は9401〜9403の部分品として扱わない。
    • 予防策:寝具は寝具として個別分類する前提でBOMを整理(ベッドフレーム/マットレスの別明細)
  5. 間違い:フラットパック家具(未組立)を部材ごとに別コードで申告する
    • なぜ起きる:箱が複数で、部材ごとに見える
    • 正しい考え方:分解・未組立でも一式提示なら完成品扱い(GIR2(a)の考え方、国内解説にも言及)。
    • 予防策:
      • 確認資料:セット構成表、梱包リスト、組立説明書
      • 社内質問例:「1セットとして販売されますか?不足部材はありますか?」
  6. 間違い:壁付け収納(ユニット家具要素)を“家具ではない”として別類へ
    • なぜ起きる:床置きでないため家具から外す誤解
    • 正しい考え方:類注2の例外で、棚付き家具やユニット家具は壁付け等でも9403等に分類し得る。
    • 予防策:支持具付き提示か、ユニット要素として提示かを確認
  7. 間違い:歯科用機器を組み込んだ歯科用椅子を9402に入れる
    • なぜ起きる:見た目が「歯科用椅子」そのもの
    • 正しい考え方:類注1(ij)で、歯科用機器を組み込むものは90.18へ。
    • 予防策:機器(スピットン、治療ユニット等)の組込み有無を仕様書で確認
  8. 間違い:鋼製の輸送コンテナ風ユニットを一律に9406.20とする
    • なぜ起きる:HS2022で“モジュール建築”が新設されたため拡大解釈
    • 正しい考え方:9406.20は“モジュール建築ユニット”として組合せ前提等の要件を確認。単体で自己完結し組合せ前提でないものは除外され得る旨の国内解説も参照。
    • 予防策:設計意図(組合せ前提か)、連結構造の有無を必ず確認
  9. 間違い:三脚(撮影用等)を家具の一種として扱う
    • なぜ起きる:スタンド=家具的と誤認
    • 正しい考え方:類注1(m)で三脚等は96.20へ除外。
    • 予防策:用途(撮影/測量等)と構造(雲台等)の確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。最終製品のHS(例:9403家具、9405照明器具)を誤ると、参照すべきPSR自体が変わるため原産性判断が崩れます(一般論)。
  • よくある落とし穴(一般論)
    • 「器具(9405)」と「光源(85類)」の取り違え → PSRが別物になる
    • 家具の「部分品」扱い(9403.91/9403.99 等)と完成品(9403.xx)の混同
    • 材料HS(非原産材料)を“社内呼称”で済ませ、正しいHS(6桁)で管理していない

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 日本の輸出入申告など国内手続は、HS2022に基づく表記で行われています。
  • 一方、EPA等の品目別規則は、協定ごとに採用しているHS版が異なる旨が公表されています(日本税関)。
  • RCEPについては、HS2012ベースのPSRをHS2022へ置き換えたPSRが合同委員会で採択され、2023年1月1日から実施とされています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • ①協定の採用HS版を確定 → ②相関表で旧↔新を対応 → ③PSRの適用条文・運用を確認
    • HS2022で新設された6桁(例:9406.20、9404.40、9405のLED細分)は、協定側HS版にない場合があるため、必ず相関で“協定側の行き先コード”に落とします。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須に近いデータ(一般論)
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS(6桁)、RVC計算の前提
  • 第94類で特に効く資料例
    • 家具:主要材料(木/金属/プラ)、表面材、金具類(parts of general useの扱い)
    • 照明:光源部(LEDモジュール/ランプ/器具)、電源(PV有無)、交換可否
    • プレハブ:一式提示の範囲、モジュール結合設計、内装設備の施工範囲
  • 証明書類・保存要件:協定・輸出入国で異なるため、最新の協定運用ガイドを確認(一般論)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割9401.30 → 9401.31/9401.39回転・昇降いすを「木製」「その他」に細分木材/非木材でHS6が変わり、統計・PSR選択に影響
HS2017→HS2022分割9401.40 → 9401.41/9401.49ソファベッド等を「木製」「その他」に細分同上
HS2017→HS2022分割9401.90 → 9401.91/9401.99腰掛けの部分品を「木製」「その他」に細分部品輸出入でHS6の統一管理が必要
HS2017→HS2022分割9403.90 → 9403.91/9403.99家具の部分品を「木製」「その他」に細分家具部品ビジネスでのHS見直しが必須
HS2017→HS2022新設(分割)9404.90 → 9404.40+9404.90掛け布団等(quilts等)を9404.40として独立寝具のHS6が変わる可能性(協定HS版とのズレ注意)
HS2017→HS2022分割(LED対応)9405.10/20/30/40/60 → LED専用・その他へ照明器具・発光サインを「LED専用設計」等で細分LED関連の分類精度が求められ、旧コード運用だとズレが出る
HS2017→HS2022新設9406.20鋼製モジュール建築ユニットを独立コンテナ型建築の分類で要件確認が必須

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料として、(1) WCO公表のHS2017/HS2022の第94類条文(品目表と類注)を比較し、(2) 日本税関のHS2017↔HS2022相関表(改正理由の備考付き)で変更の方向性(分割/新設)を確認しました。
  • 例えば、照明(9405)はHS2022条文上で「Designed for use solely with LED…」のサブヘディングが追加され、HS2017の9405.10/20/30/40/60がLED対応で細分化されています(条文比較)。
  • プレハブ(9406)はHS2022で9406.20(鋼製モジュール建築ユニット)が新設され、類注4にも鋼製モジュール建築が含まれる旨が追記されています。
    • なお、日本税関の相関表の備考欄で“9404.20”と読める箇所がありますが、同じ行で新設コードは9406.20として示され、類注4の追記内容とも整合します(実務上は9406.20の理解で整理するのが自然です)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要な流れ(HS6桁)を中心に整理します(コードの“文言修正”は割愛し、実務に効きやすい再編を優先)。

期間主な追加・削除・再編(要旨)旧コード→新コード(代表)コメント
HS2007→HS2012HS6桁レベルの大きな再編は少ない(少なくとも第94類の主要見出し構造は同型)例:9406.00(2007)→9406.00(2012)条文(WCO公表)上、主要見出しは同型。
HS2012→HS2017竹/とう(ラタン)を分ける細分、プレハブの木製区分の新設など9401.51→9401.52/9401.53、9403.81→9403.82/9403.83、9406.00→9406.10/9406.90日本税関の相関表により確認。
HS2017→HS2022木製/その他の区分追加(9401/9403の部分品等)、寝具の新設(9404.40)、LED対応細分(9405)、鋼製モジュール建築(9406.20)9405.40→9405.41/9405.42/9405.49 等セクション7のとおり。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):エアマットレスを寝具(9404)で申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注1(a)(空気/水式の除外)
    • 起きやすい状況:EC品名が「Air mattress」「エアベッド」だけで、材質・構造情報が不足
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延(一般論)
    • 予防策:構造(空気注入か)を事前に仕様書・写真で確定
  • 事例名:ガラス天板を家具部品として申告
    • 誤りの内容:類注3(A)(板材は家具部品に含めない)
    • 起きやすい状況:テーブル部材として同梱されるが、通関書類上は単体部材
    • 典型的な影響:分類変更、課税標準の再計算、通関遅延
    • 予防策:部材の提示形態(結合の有無)を梱包明細で管理
  • 事例名:LED電球を9405で申告
    • 誤りの内容:類注1(f)(光源は85類)
    • 起きやすい状況:「LED照明」としか書いていないインボイス
    • 典型的な影響:分類再判定、規制対応の手戻り(一般論)
    • 予防策:インボイス品名に「lamp/bulb」「luminaire/fixture」を分けて記載
  • 事例名:鋼製ユニットを9406.20に誤投入
    • 誤りの内容:類注4の“モジュール建築”要件の取り違え
    • 起きやすい状況:コンテナ形状の製品を一括りで「モジュール建築」と誤解
    • 典型的な影響:分類修正、確認資料の追加提出、遅延
    • 予防策:設計(複数ユニット組合せ前提)を図面で確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 木製家具など加工品は、一般に輸入植物検疫の対象とならないものとして整理されています(ただし個別事情は要確認)。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 家具・建材に規制対象種の木材(例:ローズウッド等)が含まれると、輸出入に許可書等が必要になることがあります。日本の制度はワシントン条約と種の保存法に基づきます。
  • その他の許認可・届出
    • 照明器具(9405)の一部は、電気用品安全法(DENAN)の対象になり得ます。対象・非対象の解釈例や対象品目情報が公表されています(PSE対応の要否は製品仕様で判断)。
    • プレハブ建築物や一部の家庭用品等で、石綿(アスベスト)含有リスクがある場合、日本では0.1%超含有品の製造・輸入等が禁止され、輸入時の確認が求められます。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 電気用品安全法:経済産業省(DENAN関連ページ)
    • 植物検疫:農林水産省 植物防疫所
    • CITES:環境省(種の保存法・ワシントン条約)
    • 石綿:厚生労働省(アスベスト関連)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(電気仕様・材料)、SDS、木材樹種情報、構造図、試験報告書(必要な場合)、取扱説明書、写真

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 家具:床置き/壁付け、可動性、用途(医療用か)、主要材質、未組立か
    • 寝具:空気/水式か、素材(発泡材か)
    • 照明:器具か光源か、LED専用設計か、PVか
    • プレハブ:一式提示か、モジュール組合せ前提か
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1(除外)に当たらないか(特に85類光源、39/40/63のエア寝具)
    • 類注2(家具定義)、類注3(部分品の範囲)を再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 「luminaire(器具)」と「lamp/light source(光源)」を品名で分ける
    • 未組立家具は“1 set”としての提示形態を説明できるようにする
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の採用HS版を確認し、HS2022との相関を取る
    • 材料HS(非原産)を6桁で確定してBOM管理
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 照明:電気用品安全法の対象性確認(必要に応じPSE)
    • CITES:木材樹種と原産地、許可書の要否
    • 石綿:含有確認(0.1%超は輸入禁止)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS条文)
    • WCO HS2022 第94類(2094_2022e.pdf) (参照日:2026-03-02)
    • WCO HS2017 第94類(2094_2017e.pdf) (参照日:2026-03-02)
    • WCO HS2012 第94類(2094_2012e.pdf) (参照日:2026-03-02)
    • WCO HS2007 第94類(2094E.pdf) (参照日:2026-03-02)
    • WCO HS2022 第15部注(parts of general use の定義:1500_2022e.pdf) (参照日:2026-03-02)
    • WCO HS2022 第85類(LEDモジュール/LEDランプの定義が含まれる箇所) (参照日:2026-03-02)
  • 日本(税関・公的機関)
    • 税関:関税率表解説 第94類(94r.pdf) (参照日:2026-03-02)
    • 税関:HS2017↔HS2022 相関表(PDF) (参照日:2026-03-02)
    • 税関:HS2012↔HS2017 相関表(PDF) (参照日:2026-03-02)
    • 税関:EPA/原産地規則におけるHS版の違い(案内) (参照日:2026-03-02)
    • 税関:RCEP HS2022版PSRの採択(案内) (参照日:2026-03-02)
    • 税関:RCEP HS2022版PSR(PDF) (参照日:2026-03-02)
    • 経済産業省:日本の国内手続がHS2022表記で行われる旨(EPA関連説明) (参照日:2026-03-02)
    • 経済産業省:電気用品安全法(特定電気用品一覧) (参照日:2026-03-02)
    • 経済産業省:電気用品安全法(対象/非対象解釈例:照明器具の例を含む) (参照日:2026-03-02)
    • 農林水産省 植物防疫所:輸入植物検疫の対象外(加工品としての家具等) (参照日:2026-03-02)
    • JETRO:木材の輸入手続きQ&A(植物検疫/CITES言及あり) (参照日:2026-03-02)
    • 環境省:ワシントン条約と種の保存法 (参照日:2026-03-02)
    • 厚生労働省:アスベスト含有製品の輸入禁止等(0.1%超) (参照日:2026-03-02)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第93類:武器及び銃砲弾並びにこれらの部分品及び附属品(Arms and ammunition; parts and accessories thereof)


用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 軍用武器(大砲、迫撃砲、ロケット発射装置など)→ 93.01(9301) (国際通関機関)
    • けん銃・拳銃(ただし 93.03/93.04に属するものを除く)→ 93.02(9302) (国際通関機関)
    • 猟銃・ライフル、前装式銃、空包発射用のけん銃等(装薬の発火で作動する火器)→ 93.03(9303) (国際通関機関)
    • 空気銃・ガスガン、警棒など(93.07除く)→ 93.04(9304) (国際通関機関)
    • 上記武器の部分品・附属品(一定の除外あり)→ 93.05(9305) (国際通関機関)
    • 弾薬・軍需弾(カートリッジ、爆弾・手りゅう弾・ミサイル等)→ 93.06(9306) (国際通関機関)
    • 刀剣類(剣・銃剣・さや等)→ 93.07(9307) (国際通関機関)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 雷管・起爆装置・信号筒などの「第36類の物品」→ 第36類(例示として注で明記) (国際通関機関)
    • ねじ・ボルト・ナット等の「はん用性のある部品(parts of general use)」→ 第15部(Section XV)や第39類等(第93類注で除外) (国際通関機関)
    • 装甲戦闘車両 → 87.10(第93類注で除外) (国際通関機関)
    • 望遠照準器などの光学機器(単体)→ 第90類(ただし「火器に装備」または「火器とともに提示」なら例外あり) (国際通関機関)
    • 弓矢・玩具・フェンシング用具 → 第95類(第93類注で除外) (国際通関機関)
    • 収集品・骨とう品 → 97.05 / 97.06(第93類注で除外) (国際通関機関)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「武器そのもの」か「部分品・附属品」か(9301〜9304 vs 9305) (国際通関機関)
    2. 発射原理(装薬の発火で作動=9303、空気/ガス等=9304) (国際通関機関)
    3. 除外注の踏み抜き(望遠照準器、はん用部品、36類品、装甲車両など) (国際通関機関)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 日本では武器類の輸入に「輸入承認(外為法ベース)」が関係するケースがあり、税番特定が手続きの前提になる旨が公的に示されています。誤分類は通関遅延・差戻し等の実務コストに直結しやすいです。 (経済産業省)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し+注):第93類は注で除外が明確です。まず「第93類注に引っかからないか」を最優先で確認します。 (国際通関機関)
    • GIR6(号の選択):9303(銃の種類)、9305(親品目の種類)、9306(弾薬の種類)など、6桁の切り分けは「号の文言」で決めます。 (国際通関機関)
    • GIR3(セット/同梱):例として、火器と望遠照準器を**“火器とともに提示”**する場合、注により光学機器側の例外扱いが起こり得ます(単体提示なら90類)。 (国際通関機関)
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 作動原理(爆発装薬で射出するか/空気・ガス等で射出するか) (国際通関機関)
    • 提示形態(単体か、火器に装備済みか、火器と同梱・同時提示か) (国際通関機関)
    • 部品の性格(専用品か、ねじ等の「はん用部品」か) (国際通関機関)
    • “武器類”という行政用語≠第93類:輸入承認の対象説明にはスタンガン・催涙スプレー等も例示されますが、HS上の所属は別途判定が必要です。 (経済産業省)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:貨物は「武器/弾薬/その部分品・附属品」に該当しそうか?
    • まず第93類注の除外(36類、90類、95類、97類、87.10、はん用部品等)を同時に意識します。 (国際通関機関)
  • Step2:本体か、弾薬か、部品か?
    • 本体:9301〜9304/刀剣:9307/弾薬・軍需弾:9306/部品・附属品:9305 (国際通関機関)
  • Step3:本体なら「作動原理」と「種類」で項を決める
    • 軍用(けん銃・刀剣除く)→9301
    • けん銃・拳銃(ただし93.03/93.04除く)→9302
    • 爆発装薬で作動する火器等 →9303
    • 空気・ガス等で作動、警棒等 →9304 (国際通関機関)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 93類 vs 36類:弾薬・信号弾のうち、火工品的なもの(雷管等)に注意。 (国際通関機関)
    • 93類 vs 90類:望遠照準器等は「単体」か「火器に装備/火器と同時提示」か。 (国際通関機関)
    • 93類 vs 95類:玩具・スポーツ用品(弓矢・玩具銃等)との線引き。 (国際通関機関)
    • 93類 vs 87.10:装甲戦闘車両(車両本体)か、武器単体か。 (国際通関機関)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

(第93類は項が少ないため全列挙します。(国際通関機関))

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
9301軍用武器(けん銃・刀剣類を除く)大砲、迫撃砲、ロケット発射装置、火炎放射器等けん銃は9302、刀剣は9307。車両(装甲戦闘車両)は87.10除外。 (国際通関機関)
9302けん銃・拳銃(ただし9303/9304除く)けん銃、拳銃空包発射用等は9303側に行き得る(見出しに例示)。 (国際通関機関)
9303爆発装薬で作動するその他火器等猟銃、ライフル、前装式銃、信号弾発射器(Very pistol)、空包発射用けん銃等「爆発装薬で作動」が芯。信号弾そのもの等は36類の可能性。 (国際通関機関)
9304その他の武器(空気銃・ガスガン、警棒等)空気銃、ガスガン、警棒93.07除外。玩具(95類)との境界に注意。 (国際通関機関)
93059301〜9304の部分品・附属品銃身、銃床、機関部、弾倉(専用品)、照準器取付部品など「はん用部品」や「望遠照準器単体」は除外され得る。 (国際通関機関)
9306軍需弾・弾薬(爆弾/手りゅう弾/ミサイル等含む)カートリッジ、散弾、弾頭、爆弾・手りゅう弾等93.06の“parts”から無線機器/レーダー(85.26)が除外。 (国際通関機関)
9307刀剣類等・さや等刀、剣、銃剣、さや収集品/骨とう品(97類)に飛ぶ場合あり。 (国際通関機関)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
    第93類は「重量・成分割合」といった定量基準より、種類(火器のタイプ)/作動原理/親品目/提示形態が分岐軸です。 (国際通関機関)
  • 代表的な6桁分岐(例)
    • 9301(軍用武器)
      • 9301.10:砲(大砲・迫撃砲等)
      • 9301.20:ロケット発射装置、火炎放射器、てき弾発射機、魚雷発射管等
      • 9301.90:その他 (国際通関機関)
    • 9303(その他火器)
      • 9303.10:前装式銃
      • 9303.20:猟銃等(散弾銃・コンビ銃含む)
      • 9303.30:ライフル等
      • 9303.90:その他(空包発射用けん銃、索発射銃等が例示されています) (国際通関機関)
    • 9305(部分品・附属品)
      • 9305.10:けん銃・拳銃用
      • 9305.20:9303の散弾銃またはライフル用
      • 9305.91:9301の軍用武器用
      • 9305.99:その他 (国際通関機関)
    • 9306(弾薬等)
      • 9306.21:散弾銃用カートリッジ(+当該区分の“parts”)
      • 9306.29:上の区分のその他(例:エアガン弾丸等が含まれる区分)
      • 9306.30:その他のカートリッジ(+parts)
      • 9306.90:その他(爆弾・手りゅう弾・ミサイル等の軍需弾側が典型) (国際通関機関)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 9302(けん銃) vs 9303.90(“その他火器等”)
      • どこで分かれるか:空包発射用けん銃や信号弾発射用装置等は9303側に例示があり、9302の範囲から外れ得ます。 (国際通関機関)
      • 判断に必要な情報:発射するもの(実包か空包か/信号弾か)、構造、用途、カタログ、取扱説明書。
      • 典型的な誤り:「けん銃=9302」と品名だけで決める。
    2. 9303(爆発装薬で作動) vs 9304(空気・ガス等で作動)
      • どこで分かれるか:発射の駆動源(爆発装薬か、圧縮空気・ガス等か)。 (国際通関機関)
      • 判断に必要な情報:作動原理、使用弾(火薬か否か)、構造図。
      • 典型的な誤り:「BB弾を撃つから玩具」「ガスで撃つから弾薬」などの連想で判断。
    3. 9305(部品・附属品) vs “はん用部品”(第15部/第39類等)
      • どこで分かれるか:ねじ・ボルト等の“parts of general use”は第93類に入らない(注で除外)。 (国際通関機関)
      • 判断に必要な情報:部品図面、用途(専用品か)、規格(汎用品か)。
      • 典型的な誤り:「銃の部品は全部9305」としてしまう。
    4. 93.06の“parts” vs 85.26(無線機器・レーダー)
      • どこで分かれるか:93.06の“parts”には85.26の機器を含めない(注で明示)。 (国際通関機関)
      • 判断に必要な情報:当該部品が無線/レーダー機器に当たるか、仕様書(周波数・送受信機能等)。
      • 典型的な誤り:ミサイル等の部品を「全部9306の部品」としてしまう。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第93類注は、**第15部注2の“parts of general use(はん用部品)”**を引いて、これらを第93類から除外します(同様のプラスチック品も除外)。 (国際通関機関)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:銃に使う「ねじ」「ワッシャー」「一般規格のばね」等が、汎用品として扱われると、9305ではなく別章での分類になり得ます。
    • 逆に、銃身や機関部のように「武器の専用品」と整理できる部品は9305側に寄りやすいです(ただし最終判断は各国税関)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 「銃専用」と思っていたが、図面上は一般規格で汎用流通しており、はん用部品扱いにされる。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第93類には入らないものとして、36類品、はん用部品、87.10、望遠照準器等(原則90類)、95類品、97類品が列挙されています。 (国際通関機関)
    • さらに、93.06の“parts”の範囲から**85.26(無線機器・レーダー)**が外れることが明記されています。 (国際通関機関)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • この類注自体は詳細な定義条項というより「除外の線引き」を示す性格が強いです。 (国際通関機関)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:望遠照準器・光学機器(90類)と“火器とともに提示”例外
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 光学機器が火器に装備済み
      • **火器と一緒に提示(同梱・同時提示)**と評価される取引実態か (国際通関機関)
    • 現場で集める証憑:
      • 梱包写真、同梱明細、カタログ、マウント状態の写真、SKUの紐づけ資料
    • 誤分類の典型:
      • 望遠照準器単体を「武器の附属品だから9305」としてしまい、90類除外に抵触。
  • 影響ポイント2:“はん用部品”除外(9305に入れない)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 部品の規格(一般規格か、専用設計か)、用途、交換部品の互換性
    • 現場で集める証憑:
      • 図面(寸法公差)、材質、規格番号、BOM、購入仕様書
    • 誤分類の典型:
  • 影響ポイント3:装甲戦闘車両(87.10)除外
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 輸入形態が「車両」なのか「武器単体」なのか(インボイス・契約・構成品)
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書、構成品リスト、写真、取付状態(武器が車両の構成要素か)
    • 誤分類の典型:
      • 砲塔付き車両を「砲があるから9301」としてしまう。 (国際通関機関)
  • 影響ポイント4:93.06“parts”から85.26(無線・レーダー)を除外
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 当該“部品”が無線/レーダー装置として機能するか(送受信、周波数、アンテナ等)
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書、機能説明、回路図、周波数帯、法規適合資料(該当する場合)
    • 誤分類の典型:
      • 誘導・探知系を含む部品を「弾薬の部品=9306」と短絡する。 (国際通関機関)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:望遠照準器(単体)を9305(附属品)として申告
    • なぜ起きる:品名に「銃用」とあると93類に寄せたくなる
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):第93類注で「望遠照準器等は原則90類、ただし装備済み/同時提示なら例外」と整理されています。 (国際通関機関)
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 「装備済み?」「同時提示(同梱)?」「マウント同梱だけ?」を営業・物流に確認。梱包写真を必ず取得。
  2. 間違い:空包発射用けん銃(または信号弾発射器)を9302として申告
    • なぜ起きる:形が拳銃に見える
    • 正しい考え方:9303の見出し説明に、信号弾発射用装置や空包発射用のけん銃・回転式けん銃が例示されています。 (国際通関機関)
    • 予防策:
      • 「発射するのは実包か空包か」「銃口構造」「用途(信号用/訓練用)」の資料(取説・仕様)を添付できるようにする。
  3. 間違い:エアガン(空気/ガスで射出)を9303(火器)として申告
    • なぜ起きる:「弾を撃つ=火器」と誤解
    • 正しい考え方:9303は「爆発装薬の発火で作動する」類型、9304は「空気・ガス等で作動する」類型です。 (国際通関機関)
    • 予防策:
      • 作動原理の記載(ガス/電動/ばね等)、使用弾種、エネルギー源をカタログで明確化。
  4. 間違い:玩具銃・玩具の弓矢を93類として申告
    • なぜ起きる:外観が武器に似ている
    • 正しい考え方:弓矢や玩具は第93類注で95類へ除外されています。 (国際通関機関)
    • 予防策:
      • 対象年齢、玩具安全基準、材質、射出性能(玩具としての設計)を資料化。
  5. 間違い:信号筒・雷管・起爆装置などを9306(弾薬)で固定してしまう
    • なぜ起きる:火薬関連を全部「弾薬」と考える
    • 正しい考え方:第93類注で、雷管・起爆装置・信号筒など「36類品」が除外例として示されています。 (国際通関機関)
    • 予防策:
      • 「発射体(projectile)を伴うか」「火工品単体か」を確認し、SDS/仕様書を準備。
  6. 間違い:銃用のねじ・ばね・ピン等を一括で9305
    • なぜ起きる:「銃の中に入る部品=専用品」と誤認
    • 正しい考え方:第93類注は“parts of general use”を明示的に除外しています。 (国際通関機関)
    • 予防策:
      • 一般規格品か(JIS/ISO等)、他用途互換があるかを設計部門に確認。
  7. 間違い:装甲戦闘車両(武器付き)を9301で申告
    • なぜ起きる:「武器が主」と見てしまう
    • 正しい考え方:装甲戦闘車両は第93類注で87.10へ除外。 (国際通関機関)
    • 予防策:
      • 車両としての仕様・機能(走行装置、装甲等)を提示できるようにする。
  8. 間違い:刀剣類を9307で固定し、97類(収集品・骨とう)を見落とす
    • なぜ起きる:現物が刀剣だから
    • 正しい考え方:第93類注で、収集品・骨とう品は97.05/97.06へ除外。 (国際通関機関)
    • 予防策:
      • 製造年代、鑑定書、来歴資料の有無を確認(骨とう該当性は取引実態次第)。
  9. 間違い:93.06の“parts”に、無線・レーダー機器まで含める
    • なぜ起きる:「ミサイル部品=全部9306」と短絡
    • 正しい考え方:93.06の“parts”には85.26(無線・レーダー)を含めないと注で明示。 (国際通関機関)
    • 予防策:
      • 機能が通信・探知に当たるかを電気系仕様で確認。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。武器・弾薬は品目の誤りが致命傷になりやすいので、最終製品HS(6桁)と、主要材料HSをセットで固めてから原産性判断に進むのが安全です。
  • よくある落とし穴:
    • 材料(部品)のHSが実は“はん用部品”扱いで別章になり、CTC判定が崩れる
    • 9302/9303など、本体HSを取り違える(PSRの章・類ルールが変わる可能性)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定によって参照HS版が異なることがあるため、協定本文・附属書のHS版を必ず確認してください(一般論)。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 例:HS2007では 9301.11/9301.19 が、HS2012では 9301.10 に統合されています。旧版ベースのPSRや譲許表を読む際は、相関表で読み替えが必要になります。 (国際通関機関)

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提(該当する場合)
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 取引がセンシティブになりやすい領域なので、**分類の根拠資料(仕様書・構造図・写真)**を原産地資料と同レベルで保管する運用が現実的です。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022(確認できた範囲で)実質変更なし第93類(HS6桁)HS2022の93類の号立てはHS2012と同一で、2012以降大きな構造変更は見えません。 (国際通関機関)HS版差より、注の除外・提示形態の確認が重要
HS2012→HS2022変更なし9301〜9307見出し・号構造が同一です。 (国際通関機関)トランスポジション不要(2012↔2022間)
HS2007→HS2012統合(番号再編)9301.11/9301.19 → 9301.10砲(自走/その他)の区分が統合され、9301.10へ(低取引量を理由)。 (国際通関機関)旧版資料を参照する場合、読み替えが必要
HS2007→HS2012統合(番号再編)9305.21/9305.29 → 9305.209303用ショットガン/ライフル部品の区分が統合(低取引量を理由)。 (国際通関機関)旧版資料(9305.21/29)を使う社内DBの更新が必要
HS2007→HS2012削除(条文上の消滅)9306.10HS2007にあった9306.10がHS2012/2022の条文上見当たりません。 (国際通関機関)旧コードで管理している場合は要更新。移行先は個別貨物で要確認

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料として、以下を参照しました:
    • WCOのHS条文(第93類):HS2007/HS2012/HS2022の第93類(コード体系と注)を対比し、コードの有無・号構造の差を確認しました。 (国際通関機関)
    • WCO相関表(HS2007↔HS2012):9301および9305の統合理由(低取引量)と旧→新の対応(ex付き)を確認しました。 (国際通関機関)
    • 日本税関の関税率表解説(第93類):日本語実務での除外(36類、90類、87.10等)や考え方を確認しました。 (税関のウェブサイト)
  • この結果、「HS2012で 9301.10/9305.20 が新設(統合)」、および「HS2007に存在した 9306.10 がHS2012以降の条文に見当たらない」点を、差分として整理しました。 (国際通関機関)
  • HS2012とHS2022は第93類の号構造が同一であるため、少なくともこの範囲では「変更なし」と判断しました。 (国際通関機関)

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

流れ主要な追加・新設主要な削除旧コード→新コード(または行き先)備考
HS2007→HS20129301.10、9305.209301.11、9301.19、9305.21、9305.299301.11/19 → ex9301.10、9305.21/29 → ex9305.20 (国際通関機関)WCO相関表で統合(低取引量)と説明 (国際通関機関)
HS2007→HS2012(条文上)—9306.10行き先は貨物性状により要確認(HS2012/2022条文に当該号が見当たらない) (国際通関機関)旧コードで管理している場合はマスタ更新必須
HS2012→HS2017→HS2022(確認できた範囲で)大きな再編なしHS2012とHS2022が同一構造 (国際通関機関)

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):望遠照準器を9305で申告し差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):望遠照準器は原則90類(火器に装備/火器と同時提示の例外を外してしまった)。 (国際通関機関)
    • 起きやすい状況:別送・別梱包、同一船積でも書類上の紐づけが弱い
    • 典型的な影響:税番修正、追加説明要求、検査強化、通関遅延
    • 予防策:同梱明細、梱包写真、取付状態の写真を事前準備
  • 事例名:銃用ねじ・ばねを9305で一括申告し修正
    • 誤りの内容:はん用部品除外(第15部注2参照)を踏み抜き。 (国際通関機関)
    • 起きやすい状況:BOMが粗く、部品単位の規格情報がない
    • 典型的な影響:税番修正、資料追加提出、コスト増
    • 予防策:図面・規格・用途(専用性)をセットで提示
  • 事例名:信号弾関連を9306にまとめて申告
    • 誤りの内容:36類(信号筒等)の除外例を見落とし。 (国際通関機関)
    • 起きやすい状況:危険物管理の用語(火工品)とHSのズレ
    • 典型的な影響:税番修正、危険物申告の再点検、遅延
    • 予防策:製品が「弾薬」か「火工品」かを仕様書・SDSで確認
  • 事例名:装甲戦闘車両を9301で申告
    • 誤りの内容:装甲戦闘車両(87.10)除外。 (国際通関機関)
    • 起きやすい状況:武器搭載を理由に武器章へ寄せる
    • 典型的な影響:大幅な分類修正、関税・規制確認のやり直し
    • 予防策:車両としての機能・構成を示す資料を先に揃える

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • その他の許認可・届出(頻出):
      • 銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法):銃砲・刀剣類の定義や所持等に関する規制の根拠法令です。取引形態によって必要手続が変わるため、必ず原典確認が必要です。 (e-Gov 法令検索)
      • 輸入承認(外為法関連):経済産業省は「武器類」を輸入する場合に承認が必要となる旨、また申請前に関税率表番号(税番)特定が必要である旨を案内しています。 (経済産業省)
      • 税関(例:東京税関)でも、銃砲・刀剣類の輸入に輸入承認が関係する旨の案内があります。 (税関のウェブサイト)
    • 安全保障貿易管理(該当する場合):
      • 武器・関連品は輸出管理の対象となり得ます。案件ごとに経済産業省の安全保障貿易管理の最新情報で確認してください(一般論)。 (経済産業省)
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
  • 実務での準備物(一般論):
    • 税番(HS6+必要なら国内コード)、仕様書、写真、構造図、用途説明
    • 承認・許可が絡む場合:行政が求める添付資料(案件により異なるため、必ず最新の案内に従う) (経済産業省)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 作動原理(爆発装薬/空気・ガス等)
    • 本体/弾薬/部品/附属品の別
    • 同梱品(光学機器、工具、マウント等)と提示形態
    • 図面・BOM・写真・カタログ
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 36類(雷管等)、90類(望遠照準器等)、95類(玩具等)、97類(収集品)、87.10(装甲戦闘車両)、はん用部品除外を再点検 (国際通関機関)
    • 93.06 “parts” に85.26を含めない点の再確認 (国際通関機関)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名が「toy」「replica」等を含むか(95類可能性)
    • 型式・用途・発射方式を品名欄に反映
    • 追加資料(梱包写真、仕様書)の準備
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS版の確認(一般論)
    • 旧版コード(例:9301.11/19、9305.21/29)で管理していないか点検 (国際通関機関)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 Chapter 93(条文・注・見出し) (国際通関機関)(参照日:2026-03-02)
    • HS2012 Chapter 93(条文・注・見出し) (国際通関機関)(参照日:2026-03-02)
    • HS2007 Chapter 93(条文・注・見出し) (国際通関機関)(参照日:2026-03-02)
    • WCO Correlation Tables(HS2007↔HS2012:Table I/II) (国際通関機関)(参照日:2026-03-02)
    • WCO Correlation Tables(HS2017↔HS2022:Table I) (国際通関機関)(参照日:2026-03-02)
  • 日本税関・公的機関のガイド
  • 法令(日本)
    • 銃砲刀剣類所持等取締法(e-Gov) (e-Gov 法令検索)(参照日:2026-03-02)
  • 輸入規制(日本:経済産業省)
    • 経産省:武器類の輸入承認案内(税番特定が前提である旨を含む) (経済産業省)(参照日:2026-03-02)
    • 経産省:輸入承認要否照会フォーム(武器類) (経済産業省)(参照日:2026-03-02)
    • 東京税関:銃砲・刀剣類/銃部品・附属品の案内 (税関のウェブサイト)(参照日:2026-03-02)
  • 輸出管理(日本:一般論)
    • 経産省:安全保障貿易管理(武器関連の位置づけを含むページ) (経済産業省)(参照日:2026-03-02)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第92類:楽器並びにその部分品及び附属品(Musical instruments; parts and accessories of such articles)

用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • アコースティックピアノ(アップライト/グランド)・自動ピアノ等:9201
    • ギター、バイオリン、ハープなどの弦楽器:9202
    • 管楽器(クラリネット、トランペット、バグパイプ、アコーディオン、教会用パイプオルガン等):9205
    • 打楽器(ドラム、シンバル、マラカス等):9206
    • 音が電気的に生成される/又は電気的増幅が必須の楽器(例:電子オルガン、電子ピアノ、共鳴箱のないエレキギター等):9207
    • 部分品・付属品(弦、メトロノーム、音叉、機械式楽器用カード/ディスク/ロール等):9209
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • マイク、アンプ、スピーカー、ヘッドホン、スイッチ、ストロボスコープ等で、楽器に取り付けられていない同一キャビネットに組み込まれていないもの:第85類または第90類(例:8518等)
    • 楽器の形をしていても、材質・作り・音質等から玩具と明らかなもの9503
    • 楽器清掃用ブラシ:9603/一脚・二脚・三脚等:9620
    • 卑金属製の「はん用性の部分品(parts of general use)」や、プラスチック製の類似品:第15部または第39類(例:ねじ・ボルト等)
    • 収集品・こっとう(例:歴史的価値のある楽器、製作後100年超のアンティーク等):9705/9706
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「楽器」か「音響機器(第85/90類)」か:取り付け有無・同一キャビネット内かが鍵
    2. 電気式/電子式でないと演奏できないか(→9207)/電気装置がなくても通常の楽器として演奏できるか(→9201/9202等)
    3. 完成品か、部分品・付属品か(→9209、ただし部品でも「parts of general use」は除外)
  • この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 電子楽器・無線機能付き機器:HS分類ミス+国内規制(PSE/電波法等)対応漏れの同時発生
    • CITES対象素材(象牙・べっ甲等や対象樹種等)が含まれる楽器:通関差止・許可書不足のリスク

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し+部注/類注で決める):第92類は類注の除外(第85/90類、玩具、三脚等、parts of general use等)が強く効きます。まず類注(Note 1, 2)を読み、品名よりも「実体(構造・機能)」で当てに行きます。
    • GIR6(6桁は号の文言で):例:9207.10(鍵盤でアコーディオン以外)か9207.90(その他)など、6桁は「同一レベルの号同士」で比較します。
    • GIR5(a)(ケース類の扱い):楽器用ケースは、条件を満たすと楽器と同一分類になります(「特定品用に成形/適合」「長期使用」「本体と同時提示」「通常同時販売」など)。ケースを別コードで申告しないよう要注意です。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 音の生成/増幅の仕組み:電気式/電子式の機構がないと演奏できないなら9207寄り。電気装置がなくても通常の楽器として使えるなら9201/9202等の「本来の楽器」寄り。
    • 取り付け・組込みの有無:アンプやマイク等が別体なら第85/90類へ飛びやすい(同一キャビネット内かも重要)。
    • 完成品か、部分品/付属品か:弦・リード・マウスピース・メトロノーム等は9209の典型。ただし金具類は「parts of general use」該当で第15部へ行くことがあります。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象は「楽器そのもの」?
    • YES → Step2へ
    • NO(部分品・付属品)→ 原則9209だが、**除外(parts of general use/第85/90類機器/三脚等)**に該当しないか先に確認
  • Step2:電気がないと演奏できない(音が生成される/増幅が必須)?
    • YES → 9207候補(鍵盤か否かで9207.10/9207.90
    • NO → Step3へ(9201/9202/9205/9206/9208
  • Step3:楽器のタイプで4桁(項)を決める
    • 鍵盤弦(ピアノ等)→ 9201
    • 弦楽器(ギター、バイオリン等)→ 9202
    • 管楽器→ 9205(ただし見世物オルガン等は9208側)
    • 打楽器→ 9206
    • 上記のどれにも当てにくい/機械式楽器・鳥型自動歌唱・笛など → 9208
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第92類 vs 第85類:楽器に使うアンプ・スピーカー等でも、別体なら第85類(多くは8518等)
    • 9202(弦楽器) vs 9207(電気式/電子式楽器):ピックアップ付きでも共鳴箱があり通常の弦楽器として演奏できるなら9202に残る一方、共鳴箱のないギターのような電子楽器は9207
    • 9205(管楽器) vs 9208(笛/信号用口吹き等)9208には「whistles, call horns…」等も入るため、用途・形状で要確認。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
9201ピアノ(自動ピアノ含む)、ハープシコード等の鍵盤弦楽器アップライト/グランドピアノ、自動ピアノ、クラビコード等電子ピアノは9207。ピアノに電子効果装置を付ける用途でも、電子式楽器は9207とされる旨に注意。
9202その他の弦楽器ギター、バイオリン、ハープ、ウクレレ等ギター等で音が電子的に増幅されても、通常の弦楽器として演奏可能なら除外されない。一方、共鳴箱のないギター等は9207
[9203]欠番(現行HSでは使用なし)HS条文上ブラケットで表示される欠番。実務上は使用しません。
[9204]欠番(現行HSでは使用なし)同上。
9205吹奏(管)楽器(例:鍵盤付パイプオルガン、アコーディオン等を含む)、ただし見世物オルガン等を除くトランペット、クラリネット、教会用オルガン、アコーディオン、バグパイプ等見世物オルガン・機械式街頭オルガンは9208へ。9205.10の「金管」は材質より音質/構造概念(サックス等は材質が真鍮でも“金管”扱いにならないことが多い)。
9206打楽器ドラム、木琴、シンバル、カスタネット、マラカス等4桁内での6桁分岐なし(9206.00のみ)。ばち等は提示態様により注2で楽器本体に付随。
9207音が電気的に生成される、又は電気的増幅が必須の楽器電子ピアノ、電子オルガン、シンセ、共鳴箱のないエレキギター等外付けアンプ等は第85/90類(取り付けなし・同一キャビネット外)。電子/電気機構がないと演奏できない楽器が中心。
9208オルゴール、見世物オルガン/機械式街頭オルガン、機械式歌唱鳥、のこぎり琴、その他他項に入らない楽器/狩猟用デコイコール/笛・角笛など口吹き信号用オルゴール、機械式オルガン、ホイッスル、ホーン等9205の除外対象(見世物/機械式オルガン)がこちらに入る。玩具の笛は9503の可能性。
9209楽器の部分品・付属品(例:オルゴール機構、カード/ディスク/ロール)、メトロノーム、音叉、ピッチパイプ等弦、リード、マウスピース、メトロノーム、音叉、パンチカード等注2:カード/ディスク/ロールは楽器と一緒でも別扱い。また金具類は「parts of general use」除外に注意。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(第92類で実際に効く軸)
    • 鍵盤か否か9207.10 vs 9207.90
    • 弓で弾くか否か9202.10 vs 9202.90
    • 金管か否か9205.10 vs 9205.90)※「金管」は材質ではなく“概念”に近い点を要注意
    • 部分品の対象楽器9209.91/92/94/99)+ 弦は独立で9209.30
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 9201.xx(ピアノ等) vs 9207.xx(電気式/電子式楽器)
      • どこで分かれるか:電子ピアノは9207。一方、(アコースティック)ピアノは9201で、電気式音声変換装置や増幅装置の有無のみで直ちに9207へは行かない整理が示されています。
      • 判断に必要な情報:
        • 音源が弦打弦の機械式か(=アコースティック)/電子音源か
        • 電気機構がないと演奏できるか(電源必須か)
        • 製品仕様書(音源方式、内部構造、消音機構の有無 等)
      • 典型的な誤り:商品名が「デジタルピアノ」でも「ピアノだから9201」と短絡する
    2. 9202.90(ギター等) vs 9207.90(電気式楽器・その他)
      • どこで分かれるか:ギター等で電子的増幅があっても9202から除外されない場合がある一方、**共鳴箱を有しないギターのような電子楽器は9207**とされています。
      • 判断に必要な情報:
        • 共鳴箱(ボディ)の有無・構造(アコースティックとして成立するか)
        • アンプが必須か(仕様・カタログ記載、設計思想)
      • 典型的な誤り:ピックアップ付き=即9207と決める
    3. 9205(吹奏楽器) vs 9208(笛・口吹き信号用等/見世物オルガン等)
      • どこで分かれるか:9205は吹奏楽器全般だが、**見世物オルガン/機械式街頭オルガンは9208**に回り、9208にはホイッスル等の「口吹き信号用」も含まれます。
      • 判断に必要な情報:
        • 用途(演奏用か信号用か)
        • 構造(機械式オルガンか、通常の楽器か)
      • 典型的な誤り:ホイッスルを「管楽器」として9205に寄せる/玩具ホイッスルを9208で申告してしまう
    4. 9209(部分品・付属品)の中の 9209.94(9207用) vs 第85類(電子部品・音響機器)
      • どこで分かれるか:類注1(b)で**第85/90類のアクセサリー機器(別体)**は除外されます。例として「電子音楽モジュール(8543)」が除外例に挙げられています。
      • 判断に必要な情報:
        • “楽器用の部品/付属品”なのか、“一般の電子機器/モジュール”なのか
        • 接続方式・機能(音源モジュール、エフェクター、アンプ等)
      • 典型的な誤り:楽器用途だから電子モジュールを9209に入れてしまう

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第92類類注1(a)で出てくる「parts of general use(はん用性の部分品)」は、第15部注2で定義される“ねじ類・ばね・金具類等”を指し、楽器専用品っぽく見えても“はん用品”なら第92類から除外されます。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:ギター用の金属ねじ・ボルト・ワッシャー・蝶番などが、形状・規格的に「はん用品(parts of general use)」の範囲に入る場合、9209ではなく第15部(例:7318等)に分類され得ます。
    • 逆に、“明確に楽器の機能を構成する”専用部品(例:特定機種専用の鍵盤アクション部品、特定モデル用の特殊機構部品など)は9209側で検討します(ただし電子機能部は第85類になり得る)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 9209と思った金具が、parts of general use扱いで第15部へ

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(類注1):
    • 第92類には含めないものとして、
      • parts of general use(第15部注2の定義)
      • 第85/90類のマイク・アンプ等(ただし「取り付けなし/同一キャビネットに組込みなし」に限る)
      • 玩具(9503)、清掃ブラシ(9603)、一脚/三脚等(9620)、収集品・こっとう(9705/9706
        が列挙されています。
  • ポイント要約(類注2):
    • 弦楽器(9202)・打楽器(9206)の演奏用の弓・ばち等は、本体と一緒に提示され、通常数量で明らかに当該楽器用なら、本体と同じ項に分類します(9209にしない)。
    • ただし、9209のカード・ディスク・ロールは、楽器と一緒でも別個の物品として扱います。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 法文レベルの厳密定義は少ないため、実務は「機能・構造・提示態様」で詰めます(例:弓/ばちの“通常数量”、電気機構が“ないと演奏できない”か等)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 第85/90類の音響・測定機器(別体):第85類/第90類
    • 玩具:9503
    • ブラシ:9603/三脚等:9620
    • 収集品・こっとう:9705/9706

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:外付けのマイク/アンプ等を楽器の一部と誤認しない(類注1(b))
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 機器が楽器に取り付けられているか
      • 同一キャビネットに組み込まれているか(例:同じ筐体内か)
    • 現場で集める証憑:
      • 外観写真(取り付け状態が分かるもの)
      • 配線図、筐体構造図、製品仕様書(内蔵か別体か)
      • セット梱包の明細(同梱でも“別体”なら別分類になり得る)
    • 誤分類の典型:
      • ギター+外付けアンプを、まとめて9207で申告(アンプ側は第85類へ)
  • 影響ポイント2:弓・ばち等が「本体と同じ項」になる(類注2)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 本体と同時提示
      • 通常数量か(例:バイオリンに弓1本、ドラムにスティック2本など、商慣習上の妥当性)
    • 現場で集める証憑:
      • セット内容表、梱包写真、販売形態(通常同梱か)
      • カタログ(標準付属品の記載)
    • 誤分類の典型:
      • バイオリン(本体)を9202、弓を9209として分けて申告(同時提示・通常数量なら同一項扱い)
  • 影響ポイント3:「parts of general use」該当で第92類から飛ぶ(類注1(a)→第15部注2)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 物品がねじ・金具・ばね等の“はん用品”に当たるか(規格品か、汎用か)
    • 現場で集める証憑:
      • 図面(寸法・規格)、材質表
      • 他用途に転用可能かの説明(汎用性)
    • 誤分類の典型:
      • 「楽器用だから」と、汎用ねじを9209に入れてしまう

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:電子ピアノ(デジタルピアノ)を9201にしてしまう
    • なぜ起きる:商品名が「ピアノ」なので、鍵盤弦楽器と短絡しやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):電子ピアノは9207に属する旨が明記されています。
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 音源方式(打弦弦振動か、電子音源か)
      • 電源がないと演奏できるか
      • メーカー仕様書・回路/構造説明書を入手
  2. 間違い:ピックアップ付きアコギ/セミアコを9207にしてしまう
    • なぜ起きる:「電気を使う=電気楽器」と思い込みやすい
    • 正しい考え方:ギター等は電子的増幅があっても9202から除外されない場合があり、共鳴箱のないギター等が9207の例として示されています。
    • 予防策:
      • 共鳴箱の有無、アンプ必須性
      • 音が生楽器として成立するか(仕様・構造)
  3. 間違い:外付けアンプ・マイク等を楽器本体(第92類)に含めてしまう
    • なぜ起きる:「楽器セット」=同一分類と誤解
    • 正しい考え方:類注1(b)で、取り付けなし/同一キャビネット内でない音響機器等は第85/90類へ除外されます。
    • 予防策:
      • 梱包状態よりも「取り付け・組込み」を確認
      • セット明細で“別体機器”を分解して分類
  4. 間違い:バイオリン+弓(同梱)を、本体9202・弓9209に分けて申告
    • なぜ起きる:弓は「部品/付属品」と思いがち
    • 正しい考え方:類注2により、弓・ばち等は条件を満たすと本体と同じ項に分類されます。
    • 予防策:
      • 同時提示か、通常数量かを確認
      • カタログの「標準付属品」記載を保存
  5. 間違い:楽器用ケースを別HSで申告してしまう(または逆に、条件未充足なのに本体に含める)
    • なぜ起きる:ケースは“包装”と思う/または“付属品だから必ず同一”と思う
    • 正しい考え方:GIR5(a)で、特定品用に成形・長期使用・同時提示・通常同時販売などの条件を満たすと本体と同じ分類。一方で「全体の重要な特性を与える容器」等は例外があります。
    • 予防策:
      • ケース形状(汎用バッグか、専用成形か)
      • “通常同時販売”か(販売形態・梱包)
  6. 間違い:三脚(譜面台/マイクスタンド等)を9209にしてしまう
    • なぜ起きる:「楽器周辺機器=92類」と誤解
    • 正しい考え方:類注1(d)で、一脚・二脚・三脚等は9620に除外されています。
    • 予防策:
      • “楽器の一部”か、“汎用スタンド類”かを用途・構造で確認
  7. 間違い:電子音源モジュール等を9209(楽器部品)として申告
    • なぜ起きる:「楽器用」=9209と思いがち
    • 正しい考え方:除外例として「電子音楽モジュール(8543)」が挙げられています。機能が“電子機器そのもの”なら第85類を検討。
    • 予防策:
      • 機能説明(音源生成・信号処理・増幅の別)
      • 接続I/F(MIDI、USB等)と単体機器性

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。例えば「楽器(92類)」なのか「音響機器(85類)」なのかで、適用する品目別規則(PSR)の条文・要件が変わり得ます。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品は92類だが、非原産材料が85類(アンプ・電子モジュール等)に分かれる、など「材料HSの取り違え」でCTH/CTSH判定が崩れる
    • セット品で「セット全体のHS」を誤り、PSR選択がズレる(GIR3/5の見落とし)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定によって採用HS版が異なり、**原産地証明書に記載すべきHSが「協定が参照する版」**である点に注意が必要です(輸入申告は最新HSで行うため、両者がズレる場面があります)。
  • 例(一次情報で確認できる範囲):
    • RCEP:PSRがHS2022に置換された版が示され、2023年1月1日から実施とされています。
    • 日EU・EPA/日英EPA等:HS2017ベースで運用される旨が整理されています(少なくとも日英EPAについてはHS2017採用が明記)。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 「協定PSRのHS(旧版)」→「輸入申告のHS(新版)」へ変換が必要な場合、税関や協定当局が提供する対照表・運用文書を根拠に対応します(社内で勝手に読み替えない)。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須データ(例):
    • BOM(材料表)、各材料の原産国、非原産材料のHS(可能なら6桁)、工程フロー、原価(RVC計算がある場合)
    • セット品の場合:セット構成、各構成品の価額・役割(重要な特性)
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 協定ごとに保存期間や必要書類が異なるため、最新版の税関マニュアル・協定本文・運用手続を確認(疑義があれば税関相談/事前教示の活用)。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(HS6桁の移動・分割等の改正セットが確認できない)Chapter 92(92019209WCOのHS2022↔HS2017相関資料上、92xxの移動・新設・削除が見当たらないため、HS6桁レベルの体系変更はないと整理できます。協定参照HS版の違いは別問題として残る(原産地証明・譲許表で要注意)。国内細分は国ごとに更新され得る。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料:
    • WCO HS2022の第92類(条文・見出し・類注)
    • WCOのHS2022↔HS2017相関資料(変更・移動が生じたコード群の対応を示す資料)
  • 上記に基づく説明:
    • HS2022の第92類の見出しは92019209で構成され、欠番[92.03][92.04]を含む点も含めて示されています。
    • 一方、HS2022↔HS2017相関資料において、第92類(92xx)に関する分割・統合・移動等の記載が確認できないため、HS2017→HS2022で第92類のHS6桁体系が変更されたとは読み取れません(=変更なし整理)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第92類は、HS2022時点での見出し(92019209)自体は大きくは変わっていない一方、類注の除外範囲見出し文言が過去改正で調整されています(実務上はここが効きます)。

版の流れ主要な追加・削除・再編(例)旧コード→新コード(または扱い)実務メモ
HS2007→HS201292.05見出し文言が「Other wind…」から、例示追加+「見世物オルガン/機械式街頭オルガン除外」を含む形へ調整コード自体(9205)は維持、見出し解釈が明確化92059208の境界(見世物/機械式オルガン)がより明確に
HS2012→HS2017以降(注:ここではHS2022条文との差分で確認)類注1(d)の除外に「一脚、二脚、三脚…(96.20)」が追加(除外先)9620への言及追加譜面台/スタンド類の誤分類が起きやすいので注意
HS2017→HS2022変更なし(上記7章参照)HS版差(協定・国内細分)は残る

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):外付けアンプを楽器(92類)に含めて申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注1(b)(取り付けなし/同一キャビネット外の音響機器は第85/90類)
    • 起きやすい状況:ギター+アンプの「初心者セット」で、インボイス品名がまとめ書き
    • 典型的な影響:修正申告、税番更正、必要に応じ追加納税、検査強化・遅延(一般論)
    • 予防策:セット明細を分解し、取り付け有無・筐体内蔵有無を写真/仕様書で説明
  • 事例名:バイオリン同梱の弓を9209として別申告
    • 誤りの内容:類注2(同時提示・通常数量の弓等は本体と同一項)
    • 起きやすい状況:物流でSKUが分かれており、システム上別行で申告
    • 影響:税番の整合性指摘、補正資料要求(一般論)
    • 予防策:標準付属品であることをカタログ・梱包写真で提示
  • 事例名:譜面台/マイクスタンドを9209で申告
    • 誤りの内容:類注1(d)(一脚/三脚等は9620
    • 起きやすい状況:楽器販売店が「付属品」として一括出荷
    • 影響:分類更正、関税・統計のやり直し(一般論)
    • 予防策:スタンド類はまず9620を当て、楽器との関連は二次的に扱う
  • 事例名:楽器用の汎用ねじを9209で申告
    • 誤りの内容:類注1(a)+第15部注2(parts of general use の除外)
    • 起きやすい状況:部品表が「楽器用ねじ」としか書かれていない
    • 影響:税番更正、説明不足による通関遅延(一般論)
    • 予防策:規格・寸法・汎用性(他用途に使えるか)を図面で説明

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 楽器そのものは一般にSPSの中心ではありませんが、動植物由来素材(例:皮革、木材、骨等)を含む場合は、別法令(動物検疫・植物防疫など)が関係する可能性があります。個別素材で確認が必要です(一般論)。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • CITES対象素材を使用した楽器(部品・付属品含む)の輸出入は、原則として輸出国当局のCITES許可書等が必要で、種によっては日本側での輸入承認/事前確認が必要とされています。
    • 海外公演等で携帯して持ち出し・持ち帰りする場合は、条件を満たすと「楽器証明書制度」を使える旨が案内されています(非商業目的で、販売・譲渡目的でない等)。
    • 実務メモ:商流(販売・譲渡を伴う商業輸出入)と、演奏家の携帯(非商業)では手続が変わるため、目的を明確にして制度を選びます。
  • 電気用品安全法(PSE)等(電気/電子楽器に関係)
    • METIの「特定電気用品以外の電気用品(341品目)」の一覧に**「電子楽器」**が掲げられており、電子楽器は仕様によって電安法の対象となり得ます。
    • 電安法は改正・運用更新があり得るため、METIの電安法ポータルや手引書で最新の手続・対象範囲(型式区分等)を確認してください。
  • 電波法(無線機能付き機器:Bluetooth、無線送受信等)
    • 楽器に無線機能(例:Bluetooth MIDI、無線送信機内蔵等)がある場合、電波法上の適合(技適等)の確認が必要になり得ます(一般論)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • CITES(経済産業省):楽器証明書制度、輸出入手続、FAQ
    • 電安法(経済産業省):電気用品安全法ポータル/手引書
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(電源・無線・材質)、構成部材の材質証明、写真、回路/構造説明、CITES関連書類(該当時)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 何の楽器か(弦/管/打/鍵盤/機械式/信号用等)
    • 音の生成方式:電気がないと演奏できるか
    • 取り付け・内蔵:アンプ/マイク/スピーカー等が別体か同一キャビネット内か
    • 部品の場合:汎用金具(parts of general use)該当性、電子機能部の有無
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1の除外に当たらないか(85/90類、玩具、三脚、収集品等)
    • 類注2(弓/ばち等同梱)や、カード/ディスク/ロール別扱いを踏んでいないか
    • ケースがGIR5(a)で本体同一分類になるか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • セット内容を分解して品名・型番・数量を明記
    • 写真、仕様書、カタログ、構造説明(内蔵/別体)を準備
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版を確認(原産地証明書のHS)
    • BOM(非原産材料のHS含む)、工程、原価データを保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • CITES対象素材がないか(該当時は許可書・承認手続)
    • 電子楽器はPSE対象となり得る(製品仕様で判断)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO, HS Nomenclature 2022, Chapter 92(1892_2022e) (参照日:2026-03-01)
    • WCO, General Rules for the Interpretation of the Harmonized System(0001_2022e-gir) (参照日:2026-03-01)
    • WCO, HS Nomenclature 2022, Section XV Notes(parts of general use 定義) (参照日:2026-03-01)
    • WCO/Customs, HS2022↔HS2017 相関資料(HS2022-HS2017) (参照日:2026-03-01)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説 第92類(92r.pdf)」 (参照日:2026-03-01)
    • 税関「関税率表の解釈に関する通則(tuusoku.pdf)」 (参照日:2026-03-01)
    • 税関「EPA原産地規則マニュアル(epa.pdf)」 (参照日:2026-03-01)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 税関(RCEP)Product-Specific Rules(HS2022版、実施日記載あり) (参照日:2026-03-01)
    • JETRO「経済連携協定の利用」(協定ごとのHS年版差の注意) (参照日:2026-03-01)
    • JETRO「日英EPA」資料(HS2017採用の明記) (参照日:2026-03-01)
  • 規制(日本)
    • 経済産業省:ワシントン条約(CITES)手続・楽器証明書制度 (参照日:2026-03-01)
    • 経済産業省:電気用品安全法(電安法)ポータル/非特定電気用品リスト(「電子楽器」含む) (参照日:2026-03-01)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第91類:時計及びその部分品(Clocks and watches and parts thereof)

用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 腕時計・懐中時計・ストップウォッチ(ケース材質で 9101 / 9102 を分けます)。
    • 置時計(ウォッチムーブメント入りの置時計は 9103、それ以外の一般の時計は 9105 が中心)。
    • 車両・航空機等の計器盤用時計9104)。
    • タイムレコーダー等の時刻記録/時間間隔の測定・表示機器(条件付きで 9106)。
    • タイムスイッチ(条件付きで 9107)。
    • ムーブメント(完成品 9108/9109、未完成・セット等 9110)や、ケース・バンド・部品(91119114)。
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • スマートウォッチ(通信機能中心のウェアラブル):日本税関の分類例では 8517.62(第85類)に分類される例があります(腕時計に見えても第91類とは限りません)。
    • 歩数計9029(第90類)として除外例が明記されています。
    • 原子時計(一次基準源として同期信号生成用)8543(第85類)として除外例が明記されています。
    • 時計用ガラス・おもり:材質により他章(第91類注で除外)
    • 携帯用時計の鎖7113 または 7117(第71類)
    • はん用性の部分品(例:多くのねじ等):第15部注2の「はん用性の部分品」側へ(ただし“時計用ばね”の扱いは注意)。
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 完成品の種類:携帯用時計(9101/9102)か、置時計等(9103/9104/9105)か、記録機・スイッチ(9106/9107)か、部品(91089114)か。
    2. ケース材質9101 は「ケース全体が貴金属/貴金属張り」等に限定(類注2)。
    3. “ウォッチムーブメント”該当性(類注3のサイズ定義):9103(ウォッチムーブメント入りの時計)・9108(ウォッチムーブメント完成品)などで決定的。
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • “見た目が時計”でも、通信・計測が主機能のウェアラブルは第85類/第90類側になり得る(関税率だけでなく、電波法・PSE・CITES等の周辺コンプライアンスも連鎖します)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)
    • GIR1:見出し(項)文言と、関連する部注・類注でまず決めます。第91類は類注1〜4が強く効きます。
    • GIR6:6桁(号)は、同一レベルの号の文言・関連注で決めます。
    • GIR2(a):未完成・未組立で提示される「ムーブメントセット」等は、GIR2(a)が絡みやすく、結果として 9110 を検討する場面が多いです。
    • GIR3(b):複合機能品(典型:スマートウォッチ)は「本質的特性」で判断する枠組みが現実に使われています(日本税関分類例でもGIR1・3(b)・6の適用が示されています)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 用途(時間表示なのか、通信・計測が主なのか)
    • 構造(ムーブメントの種類・サイズ、同期電動機の有無)
    • 材質(特に 9101 のケース材質)
    • 状態(完成品/未完成・セット/部品単体)
    • 提示形態(時計本体とバンドが“同梱だが未装着”など)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:「時間の測定・表示・記録・切替」に関係する品か?
    • まず第91類の射程かを確認(ただし、スマートウォッチや歩数計のように他類に明確に飛ぶ例もあります)。
  • Step2:完成品か/ムーブメントか/ケース・バンドか/その他部品か
    • 完成品→91019107
    • ムーブメント→91089110
    • ケース→9111/9112、バンド→9113、その他部品→9114
  • Step3:完成品の場合の枝分かれ
    • 携帯用時計(腕時計・懐中時計等)→9101/9102(ケース材質で分岐)
    • 置時計等でウォッチムーブメント入り→9103(ただし車載等は 9104
    • 車両・航空機・宇宙機・船舶向けの計器盤用等→9104
    • その他の時計→9105(原子時計は除外例あり)
    • 時刻記録/時間間隔の測定・表示(ムーブメント又は同期電動機が要件)→9106/9107
  • Step4:類注1の除外に当たらないか最終チェック
    • 時計用ガラス・おもり/携帯用時計の鎖/はん用性の部分品/軸受関連/第85類品の扱い等。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第91類 vs 第85類:スマートウォッチ等(通信主機能なら第85類の例)。
    • 第91類 vs 第90類:歩数計のように第90類へ飛ぶ例が明記。
    • 第91類内9103(ウォッチムーブメント入りの時計)と 9105(その他の時計)の境界=類注3のサイズ定義。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

※ご指定どおり、第91類の4桁見出しは全て掲載します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
9101貴金属/貴金属張りケースの携帯用時計(ストップウォッチ含む)金無垢ケース腕時計、貴金属張りケースの高級腕時計類注2で範囲が限定。「ケース全体」が要件。象眼は9102側へ。
91029101以外の携帯用時計(ストップウォッチ含む)ステンレスケース腕時計、樹脂ケース腕時計、一般のストップウォッチ9101該当しない携帯用時計は基本こちら。歩数計は除外例。
9103ウォッチムーブメントを有する時計(携帯用時計・9104除く)小型ムーブメント入り目覚まし時計、小型置時計“ウォッチムーブメント”の定義(厚さ≤12mm・幅/長さ/直径≤50mm等)で判定。
9104車両・航空機・宇宙機・船舶用等の計器盤用時計自動車ダッシュボードクロック、航空機計器時計用途・装着先が決定要素。
9105その他の時計(携帯用時計除く)掛時計、置時計、振り子時計、船舶用クロノメーター等原子時計は除外例(8543)。
9106時刻記録機・時間間隔測定/表示機(ムーブメント又は同期電動機付き)タイムレコーダー、タイムスタンプ、ピジョンタイマー等“ムーブメント又は同期電動機”が要件。
9107タイムスイッチ(ムーブメント又は同期電動機付き)タイマー付きスイッチ、時間でON/OFFするスイッチ“ムーブメント又は同期電動機”の有無を仕様で確認。
9108ウォッチムーブメント(完成品)クォーツ腕時計ムーブメント、機械式腕時計ムーブメント類注3のサイズ定義+“完成品”要件。デジタル表示部が不可分の場合の注意あり。
9109その他の時計用ムーブメント(完成品)壁掛時計のムーブメント、同期モーター時計用ムーブメントウォッチムーブメント定義に外れるもの。
9110ムーブメントセット等(未組立/一部組立/未完成/ラフ)ムーブメントセット、未完成ムーブメントGIR2(a)が絡みやすい領域。完成品 9108/9109 と混同注意。
9111携帯用時計のケース及び部分品腕時計ケース、裏ぶた、ガラス縁等ケース単体。バンドは9113。ケース用の“はん用性の部分品”(例:ケース用ばね等)は除外に注意。
9112携帯用時計以外の時計のケース等及び部分品掛時計ケース、タイムレコーダー筐体等“時計のケースに類するか”の判断が必要(計測器の筐体様式なら他類の可能性)。
9113携帯用時計のバンド・ブレスレット等及び部分品レザーバンド、金属ブレス、シリコンバンドバックル等は材質により除外(例:7115/8308)。時計と同梱でも未装着だと扱いが変わり得る点に注意。
9114その他の時計部品文字板、地板・受け、針、ぜんまい等類注1の除外(ガラス・おもり・はん用性部分品等)を落としやすい。ぜんまい等はここ(HS2022は9114.90側で処理)。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • ケース材質(9101 vs 9102)
      • 9101は「貴金属/貴金属張りケース」に限定(類注2)。
      • “貴金属張り(metal clad)”は、第71類注7で「はんだ付け・ろう付け・溶接・熱間圧延等の機械的方法で貴金属被覆を付したもの」と定義されています。
      • ただし、第91類類注2が「象眼ケースは9102」と明示しており、ここは“文脈により別”の典型です。
    • “ウォッチムーブメント”該当性(9103/9108/9109等)
      • 厚さ ≤12mm、幅/長さ/直径 ≤50mm 等の寸法要件。
      • 日本税関解説では、寸法の測り方(突起部の扱い等)の実務注意が示されています。
    • 表示方式(機械式表示のみ/光電式表示のみ 等)
      • 9102.12(光電式表示のみ)等、デジタル表示の時計で効きやすい枝。
    • 完成品か未完成・セットか(9108/9109 vs 9110)
      • “完成品”の要件を満たさない場合は 9110 側へ寄ります。
    • 9114の中の重要枝
      • 9114.30(文字板)、9114.40(地板・受け)、9114.90(その他)。
      • HS2017にあった「ぜんまい等(9114.10)」はHS2022では廃止され、ぜんまい等は 9114.90 で扱うのが実務上の要点です。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 9101 vs 9102
      • どこで分かれるか:ケース材質が類注2の条件を満たすか
      • 判断に必要な情報:ケースの材質構成、張り(clad)か、象眼か、裏ぶた等を含め“ケース全体”の材質。
      • 典型的な誤り:「金色=9101」と早合点(めっき・装飾は別概念になり得ます)。
    2. 9103 vs 9105
      • どこで分かれるか:置時計等がウォッチムーブメント(類注3の寸法)かどうか。
      • 判断に必要な情報:ムーブメント寸法、構造(調速機構等)、仕様書/図面。
      • 典型的な誤り:「小さい置時計=9103」と決めつけ(寸法と機構の確認不足)。
    3. 9108/9109 vs 9110
      • どこで分かれるか:完成品(complete and assembled)か、未組立/一部組立/未完成/ラフか。
      • 判断に必要な情報:部品構成、組立状態、表示部の有無(デジタル表示が不可分の場合の注意)。
      • 典型的な誤り:部材一式を「完成ムーブメント」と扱い 9108/9109 に寄せてしまう。
    4. 9113 vs 9114
      • どこで分かれるか:それがバンド/ブレスレットか(9113)、それ以外の部品か(9114)。
      • 判断に必要な情報:装着用途、形状(バンドとしての特性)、バックル等付属の材質。
      • 典型的な誤り:金属ブレスを「部品」として 9114 にしてしまう。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第91類注1(c)が参照するのが、**第15部注2(はん用性の部分品)**です。多くのねじ・ばね等は「時計っぽい用途」でも第91類に入らない可能性があります。
    • 第15部注2(b)では、ばね類のうち**“clock or watch springs”は例外的に第91.14項**とされる一方、ケース用のばね等は別扱いになり得るため、用途・部位の確認が重要です。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:腕時計のムーブメント用ぜんまい/ひげぜんまい → 9114(HS2022では通常 9114.90)。
    • 例:時計ケース周りで使う“はん用性”のばね(ケース用ばね等)→ 第15部注2の対象として除外され得る(日本税関解説に注意書きあり)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • ねじ・ピン・バックル等が、はん用性の部分品(第15部)や他章の構成品として整理される。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1:時計用ガラス・おもり、時計鎖、はん用性の部分品、軸受、未組立の第85類品などを除外。
    • 類注29101 はケース材質により範囲限定。象眼等は 9102
    • 類注3:ウォッチムーブメントの定義(調速機構+寸法条件)。
    • 類注4:時計用にも他用途にも使えるムーブメント・部品でも、除外(類注1)に当たらなければ第91類に分類。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「ウォッチムーブメント」=類注3の定義(厚さ・外形寸法が鍵)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 時計用ガラス・おもり(材質別)、携帯用時計の鎖(7113/7117)、軸受関連(7326/8482)、原子時計(8543 例)等。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:類注2(9101の限定)で 91019102 が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • ケースの材質構成(裏ぶた等を含む)
      • “貴金属張り(clad)”か、単なる装飾・象眼か
    • 現場で集める証憑:
      • 材料証明(ミルシート/材質証明)、図面、断面構造(張り構造かどうか)、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • ケースが一部卑金属(例:裏ぶたが鋼)なのに 9101 としてしまう(税関解説で 9102 と示例)。
  • 影響ポイント2:類注3(ウォッチムーブメント定義)で 9103/91089105/9109 側が変わる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 厚さ・幅/長さ/直径の寸法、調速機構(てん輪・水晶等)
    • 現場で集める証憑:
      • ムーブメント仕様書、寸法図、部品表、写真
      • (日本税関解説で示される)測り方の注意に沿った測定結果
    • 誤分類の典型:
      • 小型時計のつもりで 9103 に入れたが、寸法が >50mm9105/9109 側だった。
  • 影響ポイント3:類注1(c)×第15部注2(はん用性の部分品)で、部品が第91類から外れる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • その部品が「はん用性の部分品」に該当するか(ねじ・ピン等)、素材(卑金属/プラ/貴金属)
      • “時計用ばね”か(ぜんまい等)/ケース用のばね等か
    • 現場で集める証憑:
      • 部品図、用途(ムーブメント内か/ケース・バンド周辺か)、材質表
    • 誤分類の典型:
      • ねじ・バックル等を「時計部品」として 9114 に寄せる(除外明記)。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:スマートウォッチを 9102(腕時計)で申告してしまう
    • なぜ起きる:外観が腕時計で、時刻表示機能もあるため。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):通信機能中心のウェアラブルが **8517.62(第85類)**となる分類例が示されており、機能・構造により第91類から外れ得ます。
    • 予防策:仕様書で「無線トランシーバーの有無」「接続形態」「主要機能(通知・通話・データ送受信等)」「搭載センサー」を確認し、必要に応じて分類例や事前教示を参照。
  2. 間違い:歩数計を 91029105 に入れてしまう
    • なぜ起きる:時間表示機能が付いている/腕に装着する等、時計に近い形状のため。
    • 正しい考え方:日本税関解説で「歩数計は 9029」として除外例が明記。
    • 予防策:「時間表示=時計」と短絡しない。主目的(歩数の計測)と該当章の除外例を確認。
  3. 間違い:時計用ガラス(風防)を 9114 にしてしまう
    • なぜ起きる:「時計部品」だから第91類と思い込み。
    • 正しい考え方:類注1(a)で時計用ガラスは第91類から除外され、材質で分類。
    • 予防策:部品でも、類注の除外(ガラス・おもり・鎖等)を必ずチェック。
  4. 間違い:バンド・ブレスレットを 9114 にしてしまう
    • なぜ起きる:時計部品の一種と考える。
    • 正しい考え方:バンド・ブレスは 9113。バックル等は材質により 7115/8308 等へ外れることも明記。
    • 予防策:バンド単体か、時計本体とセットか(同梱・未装着の扱い)まで確認。
  5. 間違い:“金色のケース”を理由に 9101 にしてしまう
    • なぜ起きる:「金っぽい=貴金属」と誤認。
    • 正しい考え方:9101 は類注2で限定。さらに“貴金属張り(clad)”の定義(第71類注7)と、象眼は 9102 とする類注2の特則がある。
    • 予防策:材質証明・断面構造で「貴金属張り」か、めっき・象眼かを確認。裏ぶた材質も含め“ケース全体”で判断。
  6. 間違い:置時計を 9105 と決め打ちし、9103 を見ない
    • なぜ起きる:置時計=9105 の思い込み。
    • 正しい考え方:ウォッチムーブメント入りの時計は 9103。定義(類注3)で判定。
    • 予防策:ムーブメント寸法(≤12mm・≤50mm)と構造を確認し、9103 を必ず検討。
  7. 間違い:原子時計を 9105 としてしまう
    • なぜ起きる:名称に「時計」が入っているため。
    • 正しい考え方:日本税関解説で、一次基準源としての原子時計は 8543 として除外例が明記。
    • 予防策:用途(一次標準か、一般の時計か)と仕様(同期信号生成等)を確認。
  8. 間違い:ムーブメントセットを完成ムーブメント(9108/9109)として申告
    • なぜ起きる:部材が揃っている=完成品と誤認。
    • 正しい考え方:未組立・一部組立・未完成・ラフは 9110。GIR2(a)の考え方も絡む。
    • 予防策:組立状態、表示部の有無(不可分の表示部が欠けると完成とみなされない等)を確認。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します(最終製品のHSが違うと、適用PSR自体が変わります)。
  • よくある落とし穴:
    • “見た目時計”で第91類と思い込み→実は第85類(スマートウォッチ例)で、PSRが全く別になる。
    • 部品のHS(例:バンド・ケース・ムーブメント)と完成品HSを取り違える。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 日本税関のPSR検索画面でも、協定ごとに採用HS版が異なり、別版で検索すると誤りがあり得る旨が明示されています。また輸入申告では最新HSを使う旨も注意書きがあります。
  • 例:CPTPPの手引きでは、掲載の関税分類番号がHS2012に従う旨の記載があります(協定運用上のHS版確認が必須)。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • 協定の採用HS版と、通関申告の最新HS(HS2022)がズレる場合、相関表・税関ガイダンスで対応関係を確認してからPSRを当てに行くのが安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須データ(一般論):
    • BOM(材料表)、材料ごとの原産国、非原産材料のHS、工程フロー、原価(RVC計算の場合)
  • 書類・保存(一般論):
    • 仕入書類、仕様書、製造記録、原産品申告や証明に用いた根拠資料一式(保存年限は協定・制度で異なるため要確認)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022削除(統合)9114.10HS2017で独立していた「ぜんまい等(Springs, including hair-springs)」がHS2022では独立号としては存在しないぜんまい等はHS2022では 9114.90 側で扱う運用になり、旧コード参照の社内マスタ・PSR検討でズレが出る

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料:
    • WCOのHS2017版 第91類の号一覧に 9114.10(Springs, including hair-springs)が存在。
    • WCOのHS2022版 第91類の号一覧では 9114 の内訳が 9114.30 / 9114.40 / 9114.90 で、9114.10 が存在しない。
  • 以上より、HS2017→HS2022で 9114.10 が削除され、該当物品(ぜんまい等)は 9114.90 の範囲で扱う必要があると判断しました(第91類注1(c)の“時計用ばねは第91.14項”という枠自体は維持)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要な追加・削除・再編(HS2007→2012→2017→2022の流れ)を、第91類の条文(号一覧)比較にもとづき整理します。

期間主要な変更旧コード → 新コード(代表)コメント
HS2007→HS20129109 の細分見直し9109.11/9109.199109.10HS2007はアラーム等の区分があり、HS2012以降は「電気式 9109.10」に整理。
HS2007→HS20129114 の細分見直し9114.20(Jewels)→(後続では 9114.90 等に包含され得る)HS2012以降の 9114 には 9114.20 が存在しない(専用号が消滅)。
HS2017→HS20229114.10 の削除9114.10 →(HS2022では 9114.90HS2022は 9114.10 がなく、9114.90 側で扱う実務。

注:上表の「旧→新」の“行き先”は、HS6桁体系で見た一般的な包含関係の整理です。個別品目は仕様により別の号・他章となり得るため、相関表や税関の運用資料で個別確認してください。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):スマートウォッチを時計(第91類)で申告して差し戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注以前に、実態が第85類(通信機器)として整理され得るのに第91類として申告。
    • 起きやすい状況:インボイス品名が “watch” だけ、仕様書未添付。
    • 典型的な影響:HS更正、税額差、追加資料提出、検査・保留による遅延。
    • 予防策:無線機能・主要機能・接続形態を明記した仕様書を準備し、必要なら事前教示で確定。
  • 事例名:金色ケースを 9101 と誤認(実際は 9102
    • 誤りの内容:類注2の「ケース全体が貴金属/貴金属張り」要件の見落とし(象眼や一部卑金属ケース等)。
    • 起きやすい状況:表面処理(めっき)と“貴金属張り”の混同。
    • 影響:税番更正、原産地規則(PSR)の取り違い、社内マスタ修正。
    • 予防策:材質証明・断面構造・裏ぶた材質まで取得。
  • 事例名:ねじ等の“はん用性部分品”を 9114 で申告
    • 誤りの内容:類注1(c)および第15部注2により除外され得る物を、時計部品として申告。
    • 起きやすい状況:部品名が「時計用」とだけ書かれ、規格(一般規格品か専用品か)が不明。
    • 影響:差し戻し、分類再検討、追加資料要求。
    • 予防策:図面・用途(ムーブメント内か外か)・一般規格の有無を整理して提出。
  • 事例名:ムーブメントセットを完成ムーブメントで申告
    • 誤りの内容:9110(ムーブメントセット等)に該当する可能性があるのに 9108/9109 とした。
    • 起きやすい状況:輸送形態が「分解・未組立」、部品表が不十分。
    • 影響:税番更正、輸入許可の遅れ。
    • 予防策:組立状態の説明書、完成状態の写真、欠けている部材の有無を整理。

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 時計そのものは通常SPSの中心ではありませんが、**動植物由来素材(皮革・木材等)**を使う場合は別途、輸入規制・表示・検疫の有無を確認してください(本稿では一般論に留めます)。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 腕時計バンド(革・皮)や装飾に、ワニ・トカゲ等の規制対象種が含まれる場合があります。
    • METIは「規制対象か調べるには、まず学術名(ラテン語)を特定し、附属書I〜IIIの掲載状況を確認する」旨を案内しています。
    • 税関でも、絶滅のおそれのある野生動植物の輸出入規制を水際で扱う旨が案内されています。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 一般の時計は典型的には該当しにくいですが、衛星通信・暗号・高精度計測など別分野機能を持つ場合は個別確認が必要です(ここでは一般論)。
  • その他の許認可・届出
    • PSE(電気用品安全法):タイムスイッチ等が日本国内でPSE対象となる可能性があります(製品区分の一覧に「タイムスイッチ」が含まれる)。
    • 電波法(技適等):無線機能を備える機器(典型:スマートウォッチ等)は、電波法令の技術基準適合の枠組みが関係し得ます(登録証明機関による制度である旨の説明)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • CITES:経済産業省(ワシントン条約)
    • PSE:経済産業省(電気用品安全法)
    • 技適等:総務省/登録証明機関(例:TELECの案内)
    • HS分類:日本税関(関税率表解説・分類例・事前教示)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(機能・通信の有無・電源・構造)、材質証明、写真、カタログ、BOM、必要に応じCITESの種情報(学術名)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 完成品か部品か(ムーブメント/ケース/バンド/その他部品)
    • 主要機能(時間表示が主か、通信・計測が主か)
    • 材質(特にケース:貴金属/貴金属張り/卑金属/象眼/めっき)
    • ムーブメント寸法(類注3)と測り方
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1の除外(ガラス・おもり、鎖、はん用性部分品、軸受、第85類品など)
    • 9103/9105 など境界は類注3で再確認
    • 9114 は“部品なら何でも”ではない(除外多い)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイスに「watch」「parts」だけでなく、表示方式・材質・機能・用途を追記
    • 必要に応じ仕様書・写真・材質証明を添付
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の採用HS版(HS2012等)と、申告HS(最新HS)のズレを確認
    • BOM、原産国、工程、原価の裏付け資料を保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • CITES(バンド等の素材)
    • PSE(タイムスイッチ等)
    • 技適(無線機能品)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022 – Chapter 91(条文PDF)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS Nomenclature 2017 – Chapter 91(条文PDF)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS Nomenclature 2012 – Chapter 91(条文PDF)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS Nomenclature 2007 – Chapter 91(条文PDF)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO「HS通則(GIR)」〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS2022 – Section XV Notes(第15部注2:はん用性の部分品)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS2022 – Chapter 71 Notes(注7:metal clad with precious metal の定義)〔参照日:2026-03-01〕
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説 第91類(91r)」〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関「関税率表解説・分類例(85類)」(スマートウォッチの分類例を含む)〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関「品目別原産地規則(PSR)検索画面」(協定ごとのHS版注意)〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関「事前教示回答(品目分類)」検索・制度案内〔参照日:2026-03-01〕
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 税関「自己申告制度」利用の手引き ~CPTPP~(HS2012参照の注意)〔参照日:2026-03-01〕
  • その他(規制)
    • 経済産業省:ワシントン条約 規制対象種の調べ方(学術名→附属書確認)〔参照日:2026-03-01〕
    • 経済産業省:電気用品安全法(特定電気用品一覧:タイムスイッチ)〔参照日:2026-03-01〕
    • TELEC:技術基準適合証明・工事設計認証(電波法令適合の証明)〔参照日:2026-03-01〕

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第90類:光学機器、写真用機器、映画用機器、測定機器、検査機器、精密機器及び医療用機器並びにこれらの部分品及び附属品(Optical, photographic, cinematographic, measuring, checking, precision, medical or surgical instruments and apparatus; parts and accessories thereof)

用語は以下で統一します。

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

また、本稿は**HS(6桁)を中心に説明します。日本の輸入申告等では国内コード(9桁等)**が使われますが、国内細分は別途「国内コード」と明記します。


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 眼鏡・ゴーグル・サングラス(9004)、眼鏡フレーム(9003)
    • 双眼鏡・望遠鏡(9005)※暗視鏡がここに来る例もあります(後述)
    • 顕微鏡(光学顕微鏡:9011、電子顕微鏡等:9012)
    • 医療用診断・治療機器(MRI 9018.13、超音波 9018.12、X線/CT 9022 など)
    • 流量計・圧力計・温度計などの各種計測機器(9025〜9026)
    • 自動調整器(温度調節器・圧力調整器など)(9032)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • テレビカメラ/デジタルカメラ/ビデオカメラ → 第85類 8525(類注で明示除外)
    • ビデオプロジェクター(映像信号を投影する一般の映像用)→ 第85類 8528(90.08から除外される旨が税関解説で明確)
    • フラットパネルディスプレイモジュール → 第85類 8524(HS2022で新設・定義、優先分類ルールあり)
    • 光ファイバーケーブル(8544)やコネクタ(8536)→ 第85類(類注で除外)
    • 汎用部品(ねじ、ばね等)=「parts of general use」→ 第15部(第90類注1で除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 完成品か、部分品・附属品か(第90類注2で分類ルールが強制されます)
    2. 第90類に見えても、第85類(8524/8525/8528等)に“飛ぶ”除外があるか(第90類注1、及び第85類注7等)
    3. 「光学の測定・検査」系は 9013 と 9031 の境界に要注意(第90類注5で9031へ寄せるルール)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 医療機器(9018/9022等):税番誤りが、税率だけでなく薬機法対応や輸出入手続の整理にも連鎖しやすいです。
    • 分析機器(9027、とくに質量分析計9027.81):HS2022で細分が新設され、統計・管理面での取扱いが変わっています。
    • 制御機器(9032):単なる“計測”か“自動制御”かで税番が変わり、誤りが起きやすいです。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)
    • **GIR1(見出し+注)**が最重要です。第90類は、注(Notes)による除外・優先ルール・部分品ルールが非常に強い章です(例:デジタルカメラは85.25へ、光学測定器は注5で9031へ、部分品は注2で整理)。
    • **GIR6(号レベルの決定)**も重要です。特にHS2022では、**9027.81(質量分析計)**のように6桁で新設・再編があり、旧版慣れのまま申告するとズレます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 機能(何を測る/何をするか):測定・分析・制御・医療・光学など
    • 方式(X線/超音波/MRI/レーザー等):9018/9022/9013/9030の境界に効きます。
    • 構造(装置か部品か、マウント有無、交換フィルタ等の有無)
    • 電気機器要素の強さ:第85類へ移る典型(8524/8525/8528等)があります。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:第90類“に見えるが除外”のチェック
    • デジタルカメラ・ビデオカメラ(8525)、ビデオプロジェクター(8528)、フラットパネルディスプレイモジュール(8524)などに該当しないか確認します。
  • Step2:完成品か/部分品・附属品か
    • 部分品の場合は第90類注2の3段階ルール((a)(b)(c))に従います。
  • Step3:4桁(項)を機能で特定
    • 光学部品(9001〜9002)、眼鏡(9003〜9004)、写真・映画(9006〜9010)、顕微鏡(9011〜9012)、レーザー等(9013)、医療(9018〜9022)、計測/分析/制御(9024〜9032)…のように“用途・機能”で当たりを付けます。
  • Step4:6桁(号)の分岐条件を確認
    • 例:質量分析計は9027.81、MRIは9018.13、CTは9022.12など、方式・種類で号が決まるものがあります。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第90類 vs 第85類(カメラ・プロジェクター・表示モジュール・光ファイバー関連)
    • 9013 vs 9031(光学の“測定・検査”をする機器)※注5の強制ルールあり
    • 9026/9025(測定) vs 9032(自動制御) ※注7の定義が効く

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

ご指定どおり、第90類の4桁(項)を全て表にしています(HS2022の条文構成上、90.09は「[90.09]」として空番扱いです)。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
9001光ファイバー束・偏光板・未装着光学素子偏光フィルム、コンタクトレンズ、未装着レンズ/プリズム「未装着」が要点。光ファイバーケーブルは8544等へ(注1)
9002装着光学素子(器具の部品/取付具)カメラ用レンズユニット、光学フィルタ取付済(mounted)。未装着は9001側。
9003眼鏡等のフレーム・マウント、部品眼鏡フレーム、ゴーグル枠、テンプル完成眼鏡(9004)と混同注意。
9004眼鏡・ゴーグル等(矯正/保護/その他)メガネ、保護メガネ、サングラス9004.10(サングラス)/9004.90(その他)
9005双眼鏡・単眼鏡・望遠鏡、天体観測機器等双眼鏡、天体望遠鏡、暗視鏡(例あり)銃用照準望遠鏡等は注4で9013へ。暗視鏡が9005.80に来る例あり。
9006写真機(映画用以外)・フラッシュ等フィルムカメラ、インスタントカメラ(写真)デジタルカメラは8525へ(注1)。フィルム幅等で6桁分岐。
9007映画用カメラ・プロジェクター16mm映画撮影機、映画映写機9008(静止像投影)と混同注意。
9008静止像用投影機・写真引伸機/縮小機スライドプロジェクター、引伸機ビデオプロジェクターは8528(税関解説で除外明確)。
9009[90.09]空番(HS上の予約)HS2022でも条文上は空番表示。
9010写真(映画含む)ラボ機器、ネガ観察器、投影スクリーン自動現像機、ネガトスコープ、スクリーンデジタル化された機器でも“写真ラボ用途”か要確認。
9011光学顕微鏡(複式)実体顕微鏡、研究用顕微鏡9012(非光学顕微鏡)と区別。
9012非光学顕微鏡、回折装置電子顕微鏡、回折装置9012.10/9012.90(部品)
9013レーザー(LD除く)等の光学機器(他にないもの)レーザー発振器(LD除く)、潜望鏡等HS2017までの“液晶デバイス”文言はHS2022で外れた(重要)。光学測定器は注5で9031へ。
9014方位測定コンパス、その他航法機器方向探知コンパス、航空/宇宙航法機器レーダ等は8526へ(注1)。
9015測量・気象・地球物理など(コンパス除く)、距離計トータルステーション、レベル、距離計9014(コンパス)と区別。
90165cg感度以上の天びん分析天びん9016.00の構成(HS6)。
9017製図・計算器具、手持ち長さ測定器ノギス、マイクロメータ、巻尺他章に特掲がないか確認。
9018医療・外科・歯科・獣医用器具(診断含む)超音波、MRI、注射器、カテーテル方式/用途で細分多い。MRI 9018.13の分類例あり。
9019機械療法・マッサージ等、酸素療法/人工呼吸等マッサージ器、酸素吸入装置9020(ガスマスク等)と混同注意。
9020その他の呼吸用器具・ガスマスク(一定の簡易マスク除外)交換フィルタ式防毒マスク等“機械部品も交換フィルタもない保護マスク”は除外(注の文言に沿って判断)。
9021整形外科用等、義肢、補聴器、体内植込み機器等人工関節、ペースメーカー、補聴器注6で「整形外科用」の定義あり(特殊インソール等)。
9022X線・その他電離放射線利用装置(医療用含む)X線撮影装置、CT(9022.12)、放射線治療装置HS2022で「その他の電離放射線」まで含む方向に拡大(相関表に影響記載)。
9023教育/展示用モデル等(他用途不可)解剖模型、教育用デモ装置“他用途に適する”と外れる可能性。
9024材料の機械特性試験機引張試験機、硬さ試験機90.24の範囲か、機械(84類)か要確認。
9025温度計・気圧計・湿度計等温度計、バロメータ、湿度計9032(自動制御)と混同注意。
9026流量・液位・圧力等(液体/気体)測定器流量計、圧力計、液位計“自動制御”機能が本質なら9032へ(注7)。
9027物理/化学分析機器、光・音・熱量測定、ミクロトーム等分光計、ガスクロ、pH計、ミクロトームHS2022で質量分析計9027.81新設。
9028ガス・液体・電気の供給/生産メータガスメーター、水道メーター、電力量計日本では計量法の対象となり得る(取引・証明用途等)。
9029回転数計・速度計・歩数計等、ストロボスコープタコメータ、歩数計9014/9015該当なら除外(見出しに明記)。
9030電気量測定器(9028除く)、放射線検出/測定器等オシロスコープ、スペアナ、線量計9022(放射線“利用装置”)と区別。
9031他項にない測定・検査機器、投影検査器等三次元測定機、光学投影機(検査用)注5で9013に行きそうでも“光学の測定・検査”は9031へ。
9032自動調整/制御機器サーモスタット、圧力調整器注7の定義(測って目標値維持)が核心。
9033他に特掲のない部分品・附属品汎用化していない専用品の部品等部分品は注2でまず(a)(b)判定。最後に残るものが9033。

(出典:WCO HS2022 第90類条文、および日本税関「関税率表解説・分類例規」第90類等)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

ここでは“実務で迷いやすい”分岐に絞って整理します(全号の網羅ではありません)。

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
    • 第90類は「方式(何をどう測る/写す/投影するか)」「構造(装着/未装着、交換フィルタ有無等)」「完成品/部品」が効きます。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
  1. 9001(未装着光学素子) vs 9002(装着光学素子)
    • どこで分かれるか:
      • ざっくり「**mounted(装着/取付済)**かどうか」。
    • 判断に必要な情報:
      • 図面・写真(枠/ハウジング/マウントの有無)
      • “部品として器具に取り付ける状態か”の説明
    • 典型的な誤り:
      • フィルタ枠付きなのに9001(未装着)で申告してしまう
  2. 9003(フレーム) vs 9004(完成眼鏡)
    • どこで分かれるか:
      • レンズ等を含みそのまま着用できるか(9004)/枠のみ(9003)。
    • 判断に必要な情報:
      • セット内容(レンズ有無)、インボイス明細、写真
    • 典型的な誤り:
      • “フレーム付きレンズ”(完成品)をフレームとして9003申告
  3. 9008(静止像投影) vs 8528(映像用プロジェクター)
    • どこで分かれるか:
      • 90.08は「静止像投影」が中心(スライド等)。一方、一般のビデオプロジェクターは85.28に除外される旨が明確です。
    • 判断に必要な情報:
      • 入力信号(HDMI等の映像信号か、写真/スライド投影か)
      • 用途(会議用、映画/映像用、写真引伸用途など)
    • 典型的な誤り:
      • 「プロジェクター」という品名だけで9008に入れてしまう(映像用は8528の可能性が高い)
  4. 9013 vs 9031(光学“測定・検査”機器)
    • どこで分かれるか:
      • 注5により、光学の測定/検査機器で9013にも9031にも読めるなら9031に寄せます。
    • 判断に必要な情報:
      • “測定・検査”の有無(数値表示・検査判定・測定原理)
      • カタログ(測定精度、測定対象、検査機能)
    • 典型的な誤り:
      • “レーザーを使う検査装置”を、レーザー機器だから9013と短絡する(測定/検査なら9031寄り)
  5. 9027.81(質量分析計) vs 9027.89(その他)
    • どこで分かれるか:
      • HS2022で質量分析計が9027.81として独立しました。
    • 判断に必要な情報:
      • 方式(MSであるか)、メーカー仕様、型式
    • 典型的な誤り:
      • 旧来の感覚(“9027.80その他”)で9027.89等にしてしまう

(補足)**9032(自動制御) vs 9025/9026(測定)**も頻出です。注7の要件(測って目標値に維持する閉ループ)を満たすかで変わります。


3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第90類注3で、第16部(Section XVI)の注3・注4が第90類にも適用されるとされています。つまり、複合機能機械/システム(機能ユニット等)の考え方が第90類でも重要になります。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:MRI装置は巨大電磁石+無線周波装置+ADP装置等で構成されることがある、と税関資料に例示があります。システムとしての提示形態・構成次第で判断が変わり得るので、**「セットで輸入か」「一体として特定機能を果たすか」**を整理します。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 第90類“部分品”でも、部品それ自体が第84/85類の見出しに入るなら、注2(a)でそちらに行く、という形で「他章に飛ぶ」ことがあります。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:除外規定(デジタルカメラ等の85類、光ファイバー関連、ねじ等の汎用部品などが除外)
    • 注2:部分品・附属品の分類ルール(最重要)
    • 注4:銃用照準望遠鏡等は9005でなく9013
    • 注5:光学の測定・検査は9031へ寄せる
    • 注6:9021の「整形外科用」の定義(特殊インソール等の条件)
    • 注7:9032の定義(自動制御の範囲限定)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「orthopaedic appliances(整形外科用)」の定義は注6にあり、矯正/支持目的や、靴・インソールの条件(オーダーメイド又は大量生産でも単品提示等)が書かれています。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • デジタルカメラ等→85.25、ビデオプロジェクター→85.28、光ファイバーケーブル→85.44、コネクタ→85.36、数値制御装置→85.37…など、注1(h)は“飛び先”が具体的に列挙されています。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:注1(除外)で第85類へ飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 仕様書で「デジタルカメラ機能」「映像投影」「表示モジュール」などの有無
    • 現場で集める証憑:
      • メーカー仕様書、入出力仕様(HDMI等)、構成部品表、製品写真
    • 誤分類の典型:
      • “光学っぽい”から第90類に入れてしまう(例:ビデオプロジェクター→8528)
  • 影響ポイント2:注2(部分品ルール)で9033に“落とす前”の判定が必須
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • その部品が単体で84/85/90/91の見出しに入るか(注2(a))
      • 専用品・主用性の有無(注2(b))
    • 現場で集める証憑:
      • 図面、用途説明、装着対象機種一覧、部品番号、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • “部品だから”と機械的に9033へ(注2の(a)(b)を見ていない)
  • 影響ポイント3:注5で9013→9031に寄せる
    • 何を見れば判断できるか:
      • 測定・検査の機能(数値化、判定、精度保証など)
    • 現場で集める証憑:
      • 測定仕様(精度・分解能)、測定原理、検査工程図
    • 誤分類の典型:
      • “レーザー装置だから9013”としてしまう(測定・検査なら9031に寄る可能性)
  • 影響ポイント4:注7で9032(自動制御)か、単なる計測(9025/9026等)かが分かれる
    • 何を見れば判断できるか:
      • センサーで測定→制御演算→アクチュエータで目標値維持、の“閉ループ”要件
    • 現場で集める証憑:
      • 制御ブロック図、I/O仕様、制御方式説明
    • 誤分類の典型:
      • “温度を測る機器”を全部温度計(9025)にする/逆に全部制御器(9032)にする

(補足:HS2022ではフラットパネルディスプレイモジュール(8524)が新設され、90.13等に分類されていたものの整理が進んだ、という改正背景が税関資料でも説明されています。)


5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:デジタルカメラを9006(写真機)にする
    • なぜ起きる:品名が「カメラ」だから
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):注1(h)でデジタルカメラは8525へ除外。
    • 予防策:
      • 仕様書で撮像素子、記録方式、デジタル出力の有無を確認
      • インボイス品名に「digital camera / video camera recorder」等を明記
  2. 間違い:会議用ビデオプロジェクターを9008にする
    • なぜ起きる:「プロジェクター=9008」と短絡
    • 正しい考え方:税関解説で、90.08は静止像投影中心で、ビデオプロジェクターは85.28へ除外される整理。
    • 予防策:
      • 入力信号・用途(映像投影/静止像投影)を仕様で確定
  3. 間違い:液晶/有機ELの表示モジュールを9013にする
    • なぜ起きる:旧版(HS2017以前)の「液晶デバイス」文言の記憶
    • 正しい考え方:
      • HS2017の9013は液晶デバイスを含む文言があるが、HS2022の9013にはその文言がない。
      • HS2022で**8524(フラットパネルディスプレイモジュール)**が新設され、注7で8524優先のルール。
    • 予防策:
      • HS版(2017/2022)を混同しない
      • モジュール構造(ドライバ/制御回路の有無等)を図面で確認
  4. 間違い:光学フィルタを9001にする(実は9002)
    • なぜ起きる:「フィルタ=光学素子」の一括り
    • 正しい考え方:9001は未装着、9002は装着済で器具の部品・取付具。
    • 予防策:マウント有無、装着状態の写真を入手
  5. 間違い:眼鏡フレーム(9003)と完成眼鏡(9004)の混同
    • なぜ起きる:取引上「眼鏡」と呼ぶ
    • 正しい考え方:見出しでフレーム(9003)と完成品(9004)が分かれる。
    • 予防策:レンズ有無・セット内容を明細化
  6. 間違い:部分品は全部9033
    • なぜ起きる:部品分類が難しく“最後の受け皿”に逃げる
    • 正しい考え方:注2で(a)(b)(c)の順に判定し、最後に残るものだけが9033。
    • 予防策:部品が単体で別見出し(84/85/90/91)に入らないかチェック表を作る
  7. 間違い:放射線“利用装置”(9022)と放射線“検出/測定”(9030)の混同
    • なぜ起きる:どちらも放射線関連で紛らわしい
    • 正しい考え方:
      • 9022=X線等を利用する装置(撮影/治療など)
      • 9030=電気量測定器+放射線検出/測定器等(線量計など)
    • 予防策:装置が「発生・照射」側か「検出・計測」側かを仕様で整理
  8. 間違い:流量計/圧力計(9026)を9032(自動制御)にしてしまう/逆
    • なぜ起きる:どちらも“センサー付き”に見える
    • 正しい考え方:注7により9032は閉ループ自動制御に限定。
    • 予防策:制御ループの有無(設定値維持・制御出力)を確認
  9. 間違い:質量分析計を9027.89(その他)で申告
    • なぜ起きる:旧HSで“9027.80その他”に慣れている
    • 正しい考え方:HS2022で9027.81(質量分析計)新設
    • 予防策:HS版を確認し、改正差分表・相関表を社内で更新

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること
    • 最終製品のHS(6桁)が誤ると、PSR(CTH/RVC等)も誤り、原産性判断が崩れます。
  • よくある落とし穴
    • 「材料HS」と「完成品HS」の取り違え
    • 部品(注2の扱い)を誤って“別章”に置いてしまい、CTH判定が狂う(例:本来は完成品9018だが、部品を84/85に置くべきもの/置かないものが混ざる)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定本文・付属書(PSR)が参照するHS版は協定ごとに異なり得ます。HS2022の税番をそのまま当てはめず、協定の参照HS版を必ず確認してください。
  • 参考:RCEPについては、税関がHS2022への転置PSRを公表し、適用開始(2023年)を案内しています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • ①協定の参照HS版でPSR確認 → ②相関表でHS2022へ対応付け → ③“範囲変更”がある品目(例:9013/8524、9027.81新設など)は個別に検証、が安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 協定・運用で求められる保存年限、サプライヤ証明、工程記録を整理

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022削除/範囲変更9006.51, 9006.52(削除)→9006.53/9006.59(範囲拡大)貿易量が小さい等の理由で9006.51/52を削除し、9006.53/59の範囲が調整された旨が相関表で説明“フィルム幅”に基づく細分運用の見直しが必要。社内マスタ更新必須。
HS2017→HS2022文言修正/範囲変更(他章新設と連動)9013(見出し文言)/8524(新設)HS2017の9013は液晶デバイス文言あり→HS2022では外れ、HS2022で8524(フラットパネルディスプレイモジュール)が新設・定義され優先ルール旧慣習で9013とする誤りが増えやすい。表示モジュールは8524/8528/8529等も含め再判定が必要。
HS2017→HS2022範囲変更9022.21 / 9022.29(拡大)+影響:9018.90(一部)9022.21/29の範囲が「X線/αβγ以外の放射線」もカバーする方向に拡大し、相関表では一部が9018.90から影響を受ける旨を記載放射線系医療装置の税番見直しが必要(特に“その他電離放射線”利用装置)。
HS2017→HS2022新設/分割9027.81(新設)/9027.89(その他)質量分析計を独立の号にし、統計把握等を容易にする目的が相関表に記載MSを扱う企業はHS6桁更新必須。輸出管理・統計・原産地判定にも影響。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料として、以下を突合しました:
    • WCOのHS条文(HS2017/HS2022)の見出し文言差(例:9013の液晶デバイス文言の有無)
    • 日本税関が公開するHS2022改正資料(8524新設と、90類側への影響説明)
    • HS2017→HS2022相関表(9006.51/52削除理由、9022.21/29拡大、9027.81新設の趣旨)
  • これらの資料に基づき、「コードの新設/削除」「見出し文言の変更」「範囲拡大」の有無を判断し、上表(7-1)に反映しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要な追加・削除・再編(可能な範囲)を、HS2007→2012→2017→2022で整理します。

時系列主要トピック旧コード → 新コード(または行き先)要点(簡潔)根拠
HS2007/2012/2017 → HS20229013の“液晶デバイス”文言の削除(他章新設と連動)9013(液晶デバイス部分)→ 主として8524等へ(要個別判定)HS2017/2012/2007では9013見出しに液晶デバイス文言があるが、HS2022の9013では外れている。HS2022で8524が新設・定義。HS2007/2012/2017条文、HS2022条文、85類注7、税関改正資料
HS2007/2012/2017 → HS20229006.51/9006.52の削除9006.51/9006.52 →(削除)→ 9006.53/9006.59へ実務的に吸収HS2007/2012/2017には9006.51/52があるがHS2022では無い。相関表で削除理由と範囲調整が説明されている。HS2007条文、HS2012条文、相関表、HS2022条文
HS2007/2012/2017 → HS2022質量分析計の号新設9027.80(その他)→ 9027.81(MS)+9027.89(その他)HS2007では9027.80に含まれていたが、HS2022で9027.81が新設。HS2007条文、HS2022条文、相関表
HS2017 → HS20229022の範囲拡大と影響9018.90(一部)→ 9022.21/29側へ影響相関表で、9022.21/29の範囲拡大(他の電離放射線)と、それに伴う影響が示されている。相関表、HS2022条文

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):ビデオプロジェクターを9008で輸入申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):90.08に当てはめたが、税関解説ではビデオプロジェクターは85.28へ除外される整理
    • 起きやすい状況:インボイス品名が「PROJECTOR」だけ、用途説明なし
    • 典型的な影響:修正申告、分類根拠の追加提出、納期遅延(一般論)
    • 予防策:用途(静止像/映像)、入力仕様を添付し、85.28/90.08を事前に比較検討
  • 事例名:表示モジュールを9013で申告(HS2022で8524新設後も旧運用のまま)
    • 誤りの内容:HS2022で8524が新設・優先ルールがあるのに、9013(旧“液晶デバイス”感覚)にしてしまう
    • 起きやすい状況:社内HSマスタがHS2017のまま
    • 典型的な影響:税番更正、FTA原産地判断のやり直し(一般論)
    • 予防策:HS版更新、8524定義(ドライバ/制御回路等)に沿って仕様確認
  • 事例名:質量分析計を9027.89で申告
    • 誤りの内容:HS2022の9027.81新設を見落とし
    • 起きやすい状況:旧HSで“9027.80その他”のまま運用
    • 典型的な影響:統計品目の修正、輸出管理/社内審査プロセスの再確認(一般論)
    • 予防策:型式仕様でMSを確定し、9027.81を優先検討
  • 事例名:部品を一括で9033にまとめ申告
    • 誤りの内容:注2(a)(b)を見ずに“部品=9033”
    • 起きやすい状況:部品点数が多く、機能説明が不足
    • 典型的な影響:追加資料要求、分類修正、審査長期化(一般論)
    • 予防策:部品ごとに「単体で別見出しに入るか」「主用性」を整理し、注2に沿って判定

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第90類そのものは食品等ではありませんが、**医療機器(9018〜9022等)**は国内流通の前提として薬機法の枠組み(承認・認証・届出等)が絡み得ます。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 第90類では一般に中心論点になりにくいですが、素材(象牙等)を使った装飾がある場合は別途検討が必要です(一般論)。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 分析機器・計測機器は安全保障貿易管理で論点になり得ます。制度自体はリスト規制+キャッチオール規制の枠組みで運用され、METIがQ&A等を公開しています。
    • ※HSコードだけで該当/非該当が決まるわけではなく、性能仕様・用途・需要者を含めて判断します(一般論)。
  • その他の許認可・届出
    • 計量法(特定計量器):取引・証明用途で使用する電力量計・水道メーター・ガスメーター等は、検定証印等が求められ、有効期限の考え方もあります。輸入・販売・使用の各段階で留意事項が整理されています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 医療機器:厚生労働省、PMDA(審査・区分等)
    • 計量法:経済産業省(特定計量器の制度・注意喚起)
    • 安全保障貿易管理:経済産業省(Q&A等)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(性能、方式、入出力)
    • 写真・図面
    • 医療機器なら承認/認証/届出状況、製造販売業の体制(当事者の役割整理)
    • 計量器なら検定・型式承認等の関連情報(該当する場合)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 何をする機器か(測定/分析/制御/診断/治療/投影)
    • 方式(X線/超音波/MRI/レーザー等)
    • 構造(装着/未装着、交換フィルタ、表示モジュールの構成)
    • 完成品か部品か(注2を意識)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 注1(除外)で85類に飛ばないか(8524/8525/8528等)
    • 注5(9013↔9031)・注7(9032)に抵触していないか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • “projector” “sensor” “module”など曖昧語は避け、機能・方式を明記
    • カタログ/写真を添付(必要時)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS版確認、相関表で転置
    • BOM・工程・原価の保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 医療機器(薬機法)・計量器(計量法)・輸出管理(該当時)を並行確認

(推奨)迷う場合は税関の**事前教示制度(品目分類)**を活用し、照会に必要な情報(仕様・写真等)を揃えます。


12. 参考資料(出典)

※参照日はいずれも 2026-03-01

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 Chapter 90(条文・類注)
    • HS2017 Chapter 90(9013文言比較等)
    • HS2012 Chapter 90(旧版比較)
    • HS2007 Chapter 90(旧版比較)
    • HS2022 Chapter 85(注7:8524優先等)
  • 日本税関・公的機関(分類・改正・手続)
    • 関税率表解説(第90類)
    • 分類例規(第90類:暗視鏡9005.80、MRI 9018.13等の例)
    • HS2022改正資料(8524新設と90類側への影響説明等)
    • HS2017→HS2022 相関表(9006.51/52削除、9027.81新設、9022範囲拡大等)
    • 事前教示制度(品目分類)案内・カスタムスアンサー
  • 日本:規制(計量法・薬機法・輸出管理)
    • 経済産業省:計量法(特定計量器の規制概要、検定証印等、有効期間注意)
    • 厚生労働省:医薬品・医療機器(薬機法の枠組み概要)
    • PMDA:医療機器の審査・区分(承認/認証/届出の考え方等)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理Q&A、キャッチオール関連資料
  • FTA/EPA(参考)
    • 日本税関:RCEPのHS2022転置PSR(案内)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第89類:船舶及び浮き構造物(Ships, boats and floating structures)

用語(本稿内の呼び方を統一します)

  • =Chapter、=Heading(4桁)、=Subheading(6桁)、=Section、=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 人員/貨物の輸送用の船舶(客船、フェリー、貨物船、はしけ等)→ 89.01
    • 漁船・工船(漁獲物の加工・保存用) → 89.02
    • ヨット・プレジャーボート、カヌー、櫓櫂船(膨張式ボート含む)→ 89.03
    • タグボート・プッシャー → 89.04
    • しゅんせつ船、クレーン船、浮きドック、浮遊式/潜水式の掘削・生産プラットホーム → 89.05
    • 船舶としての特性が弱い浮き構造物(浮き桟橋、ブイ、コファダム、いかだ等)→ 89.07
    • 解体目的で提示される船舶等 → 89.08
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 船舶の部分品・附属品(船体を除く):この類に入らず、構成や機能に応じ他類へ(例:プロペラは84.87、帆は63.06、いかりは73.16 等)
    • 水陸両用自動車(車両としての水陸両用)→ 第87類(部注で明記)
    • 水上機・飛行ボート → 88.02
    • 玩具のボート → 95.03、遊園地/ウォーターパークの娯楽設備用の小舟 → 95.08(部注で除外)
    • 装飾用の模型船 → 44.20、83.06 等(材質・品目により)
    • 固定式(浮遊式でも潜水式でもない)海洋掘削/生産プラットホーム → 84.30(89.05から除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「完成船」か「部分品(船体以外)」か(第89類は“部分品が原則入らない”のが最大の落とし穴)
    2. 輸送船(89.01)か、航行が従の作業船(89.05)か、停止して使う浮き構造物(89.07)か
    3. 未完成/船体/分解提示:特定の船舶の“重要な特性(essential character)”があるか(なければ89.06)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • RCEP等のPSR(品目別規則)選択が崩れる(HS違い・トランスポジション含む)
    • 輸出規制:漁船は外為法に基づく承認が必要(輸出)
    • 解体用船舶(89.08):シップ・リサイクル法や、輸出入形態によってはバーゼル法等の確認が必要

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し+注で決める):船舶は用途(輸送/漁業/娯楽/作業)で項が分かれるため、まず見出し文言と第89類注(注1)第17部注で枠を確定します。
    • GIR2(a)(未完成・未組立/分解提示)+類注1の組合せ:未完成船舶や分解提示が多い業界なので、「重要な特性(essential character)」の有無を中心に判断します。
    • GIR6(6桁の選択):HS2022では特に**89.03(プレジャーボート等)**が重量/長さで細分され、6桁で差が出やすいです。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 主たる用途(輸送用か、作業用か、娯楽用か)
    • 航行の位置づけ(航行が主=輸送船等 / 航行が従=作業船89.05 / 停止して使用=浮き構造物89.07)
    • 状態(完成・未完成、組立済み/未組立、解体目的の提示か)
    • “部分品”か“船体/船舶そのもの”か(第89類はここが最重要)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象は「船舶/ボート/浮き構造物」か?
    • いいえ → 第89類以外(例:玩具ボート95.03、模型船44.20等)
  • Step2:単体で提示される「部分品・附属品(船体以外)」か?
    • はい → 原則として第89類ではなく、材質・機能により他類(例:プロペラ84.87、帆63.06等)
  • Step3:「船体」または「未完成/分解提示の船舶」か?
    • はい → 特定の船舶の重要な特性(essential character)があるかを評価
      • 重要な特性なし → 89.06
      • 重要な特性あり → その特定船舶(例:輸送船なら89.01 等)
  • Step4:完成船(または重要特性あり)なら、主用途で項(4桁)へ
    • 輸送 → 89.01/漁業・加工 → 89.02/娯楽・スポーツ → 89.03
    • タグ・プッシャー → 89.04/作業船・浮きドック・浮遊式プラットホーム → 89.05
    • その他(軍艦・救命艇・海底電線敷設船など)→ 89.06
    • 停止して使う浮き構造物 → 89.07/解体目的 → 89.08
  • Step5:号(6桁)の分岐条件(長さ・重量・モーター有無等)で確定(特に89.03)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 89.01(輸送) vs 89.05(作業船) vs 89.07(浮き構造物):航行の位置づけと設計目的で分岐
    • 第89類 vs 第87類(車両):水陸両用“自動車”は87類、ホバークラフトは設計により89類もあり得る
    • 89.05(浮遊式/潜水式プラットホーム) vs 84.30(固定式プラットホーム)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第89類の項(4桁)は全8項です。以下、全てを一覧化します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
8901人員または貨物の輸送用の船舶(客船・貨物船・はしけ等)フェリー、コンテナ船、ばら積み船、はしけ、RO-RO船娯楽用(8903)や救命艇・軍隊輸送船・病院船(8906)等は除外になり得る
8902漁船、工船、漁獲物の加工・保存用の船舶トロール船、まぐろ漁船、加工工船スポーツフィッシング用は8903。漁業用でも“櫓櫂船”は8903
8903ヨット等の娯楽/スポーツ用の船舶、櫓櫂船、カヌープレジャーボート、ヨット、カヤック、膨張式ボート(RHIB含む)HS2022で号(6桁)が大きく細分(重量・長さ・モーター等)
8904タグボート、プッシャー港湾タグ、押船主用途が曳航・押航であること(一般の輸送船は8901等)
8905照明船、消防船、しゅんせつ船、クレーン船等(航行が従)、浮きドック、浮遊式/潜水式プラットホームしゅんせつ船、クレーン船、浮きドック、半潜水式掘削プラットホーム“航行以外の機能が主”が核。固定式プラットホームは84.30へ
8906その他の船舶(軍艦・救命艇等。櫓櫂船は除外)軍艦、救命艇(非櫓櫂)、海底電線敷設船、気象観測船類注1:船体/未完成/分解提示で、特定船の重要特性がなければここへ
8907その他の浮き構造物(いかだ、タンク、コファダム、浮き桟橋、ブイ等)浮き桟橋、係留ブイ、水路浮標、浮きタンク一般に使用時は停止。輸送用ポンツーンは8901、クレーン台床は8905などに分岐
8908解体用の船舶その他の浮き構造物解撤(ship breaking)向けの廃船「解体目的で提示」されることが前提。装備品が事前に撤去されていても該当し得る

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(第89類で“数字条件”が効く代表)
    • 89.03(娯楽・スポーツ用等)
      • 膨張式ボート:モーター用か/重量(100kg)
      • セールボート/モーターボート/その他:長さ(7.5m、24m)
      • 「モーターボート(膨張式以外)」は船外機艇を含まない(=船外機艇は“Other”側へ行きやすい)
    • 89.05:しゅんせつ船(8905.10)/浮遊式・潜水式プラットホーム(8905.20)/その他(8905.90)
    • 89.07:膨張式いかだ(8907.10)/その他(8907.90)
  • 89.03(プレジャーボート等)HS2022の6桁構造(実務メモ)
    • 8903.11:モーター付き/装着設計、(モーター除く)正味重量100kg以下
    • 8903.12:モーター用に設計されず、正味重量100kg以下
    • 8903.19:上記以外の膨張式(RHIB含む)
    • 8903.21/22/23:膨張式以外のセールボート(補助モーター可)、長さで3区分(≤7.5m、7.5–24m、>24m)
    • 8903.31/32/33:膨張式以外のモーターボート(船外機艇を除く)、長さで3区分(≤7.5m、7.5–24m、>24m)
    • 8903.93/99:その他(例:船外機艇などがここに来やすい)、長さで2区分(≤7.5m、それ以外)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 8903.11 vs 8903.12 vs 8903.19(膨張式ボート)
      • どこで分かれるか:モーター用設計か/重量100kg条件の当てはまり
      • 判断に必要な情報:メーカー仕様(想定エンジン搭載可否)、正味重量(モーター除外の扱い含む)
      • 典型的な誤り:「電動モーター別売」の商品を“モーター用設計”と見落とす、重量の定義を取り違える
    2. 8903.31/32/33(モーターボート・船外機艇除く) vs 8903.93/99(その他)
      • どこで分かれるか:「船外機艇を含まない」という除外の読み落とし
      • 判断に必要な情報:推進方式(船外機/船内機/ウォータージェット等)、全長
      • 典型的な誤り:船外機艇を“モーターボート”側に入れてしまう
    3. 8907.10(膨張式いかだ) vs 8903.1(膨張式ボート)
      • どこで分かれるか:「いかだ(浮き構造物)」か「ボート(船舶)」か、設計目的(救難・漂流/停止使用 vs 航走)
      • 判断に必要な情報:救命設備としての仕様(自動膨張・定員・装備)、推進/操舵の設計、使用態様
      • 典型的な誤り:救難用の膨張式を“プレジャーボート”と誤認
    4. 8905.20(浮遊式/潜水式プラットホーム) vs 84.30(固定式プラットホーム)
      • どこで分かれるか:浮遊/潜水式か(曳航・自航・バラスト等)/固定式か
      • 判断に必要な情報:構造図、係留方式、バラストタンク、脚の有無、運用方法
      • 典型的な誤り:海洋掘削=すべて8905.20と決め打ち

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第17部は、玩具(95.03/95.08)等を除外します(=船っぽく見えても“玩具/娯楽設備”なら第89類に来ない)。
    • 「parts / parts and accessories」に当たるからといって第17部に来るとは限らず、部注で**部品の除外(機械類・電気品・工具等)**が列挙されています。
    • 水陸両用自動車は87類
    • エアクッションビークル(ホバークラフト等)は設計類似で分類(水上走行設計なら89類へ)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • “船外機”や“レーダー”を単体で輸出入する場合、船に使うからといって第89類にせず、機械/電気の章で検討します(第17部注2の発想)。
    • ホバークラフトは、水上を走る設計なら第89類になり得ますが、陸上/水陸両用寄りなら第87類の可能性が高い、という“設計思想”で分岐します。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 玩具・娯楽設備 → 第95類
    • 船舶の部品(船体以外)→ 第84類/第73類/第63類など(例:プロペラ84.87)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(注1):
    • 船体未完成・未組立/分解提示の船舶完成船の未組立/分解提示は、
      • その時点で「特定の船舶の重要な特性(essential character)」がなければ 89.06 に分類する、というルールです。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 条文は定義語を多く置かず「essential character」の判断を要求します(実務では、構造・主要機器の搭載状況・完成度などで総合判断)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • **船舶/浮き構造物の部分品(船体を除く)**は第89類に属さない(例:プロペラ84.87、帆63.06、いかり73.16、玩具ボート95.03等)。
    • 水陸両用自動車は87類、水上機は88.02。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:未完成/分解提示の扱い(注1+GIR2(a))
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • どの種類の船として設計されているか(輸送/作業/娯楽 等)
      • 組立状況(船体完成度、推進・操舵・航行装置の有無、搭載機器の状況)
    • 現場で集める証憑:
      • 造船仕様書、GA(General Arrangement)図、工程表、写真、インボイス明細(同梱部材リスト)
    • 誤分類の典型:
      • “鋼構造物”や“部品一式”として他類に逃がす(注1により89.06または本来の船の項へ)
  • 影響ポイント2:ホバークラフト等(第17部注5)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 走行設計(ガイドトラック/陸上/水上)、運用仕様(海上航行が主か)
    • 現場で集める証憑:
      • 製品仕様(メーカー)、用途説明、航行・揚陸・氷上走行の可否
    • 誤分類の典型:
      • “水陸両用”の語感だけで87類に固定、または逆に89類に固定(注5の設計基準に沿って再判定)
  • 影響ポイント3:「部分品(船体以外)は第89類に入らない」
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 提示形態が「船舶そのもの」か「部品」か(単体提示か、船の未組立一式か)
    • 現場で集める証憑:
      • 梱包明細、構成部材の用途、材質、機能(プロペラ/舵/マスト/帆/いかり等)
    • 誤分類の典型:
      • 890xでまとめて申告(→部品は84/73/63等に分解して検討)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:船舶用のプロペラいかりを「船の部品だから第89類」とする
    • なぜ起きる:第89類は“船の類”なので、部品も同じ類と誤解しやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):第89類は船体以外の部分品・附属品を原則含まない。例としてプロペラは84.87(HS6で8487.10)と示されています
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • 「提示形態は船そのもの?部品単体?」を必ず確認
      • 部品なら“機能”で章を当てる(機械/鉄鋼製品/繊維等)
  2. 間違い:未完成の船体(ハル)を「鉄鋼構造物(例:73類)」として処理
    • なぜ起きる:見た目が構造物で、船の完成度が低いと判断が揺れる
    • 正しい考え方:第89類注1により、船体・未完成船は「特定の船舶の重要な特性がなければ89.06」
    • 予防策:
      • 造船仕様書・工程表で「どの船のハルか」「どこまで出来ているか」を裏付ける
  3. 間違い:漁船(89.02)とスポーツフィッシング用ボート(89.03)を混同
    • なぜ起きる:どちらも“釣り”に使えるため用途認定が曖昧
    • 正しい考え方:漁業用に設計された漁船は89.02。スポーツフィッシング用は89.03と明示されています
    • 予防策:
      • 「商業漁業のための設計か(漁労設備、積載・保存設備等)」「遊漁・レジャー主体か」を確認
  4. 間違い:船外機艇を「モーターボート(8903.31等)」に入れる
    • なぜ起きる:一般用語の“モーターボート”=船外機艇、と思いがち
    • 正しい考え方:HS2022の89.03では、**モーターボート区分が“船外機艇を含まない”**と明記
    • 予防策:
      • 推進方式(船外機/船内機/ウォータージェット等)を仕様書で確認
  5. 間違い:膨張式の救難用いかだを「膨張式ボート(89.03)」にする
    • なぜ起きる:“膨張式=ボート”と連想
    • 正しい考え方:89.07には膨張式いかだ(8907.10)があり、救難者運搬用の円形の浮き船等も例示されています
    • 予防策:
      • 目的(救難・漂流用か、航走用か)、装備(自動膨張・定員等)を確認
  6. 間違い:浮きクレーン/しゅんせつ船を「貨物船(89.01)」とする(または逆)
    • なぜ起きる:大型で航行するため“船”として一括認識
    • 正しい考え方:89.05は「航行が主でなく、主機能が作業」の船舶。しゅんせつ船・クレーン船等が該当
    • 予防策:
      • 主機能(作業内容)と航行の位置づけをカタログ/運用実態で確認
  7. 間違い:ポンツーン(平底船)を一律に89.07へ
    • なぜ起きる:“浮いてる=浮き構造物”と短絡
    • 正しい考え方:ポンツーンでも、輸送用は89.01、クレーン等の台床は89.05、仮橋支持等の中空筒型やいかだ類は89.07…のように分岐が明記されています
    • 予防策:
      • 「輸送用か」「作業船の台床か」「停止して支持・係留に使うか」を確認
  8. 間違い:海洋プラットホームをすべて8905.20にする
    • なぜ起きる:石油・ガス関連=“プラットホーム”で一括しがち
    • 正しい考え方:89.05は浮遊式/潜水式が対象。固定式は89.05に含まれず84.30へ、という整理が示されています
    • 予防策:
      • 係留・脚・バラストなど構造情報を入手して分類
  9. 間違い:ホバークラフト等を“水陸両用”という理由だけで87類に固定(または89類に固定)
    • なぜ起きる:製品名だけで判断しがち
    • 正しい考え方:第17部注5により、エアクッションビークルは「最も類似するビークル」に分類し、水上走行設計なら89類へ
    • 予防策:
      • 設計仕様(主にどこを走るか)を確認し、部注5に当てはめる
  10. 間違い:解体目的の廃船を“金属スクラップ”として別章で申告
  • なぜ起きる:解体前でも「廃船=スクラップ」と思いがち
  • 正しい考え方:89.08は「89.01〜89.07の船舶等で、解体目的で提示されるもの」に限定して規定
  • 予防策:
    • 契約書・用途(breaking up)・引渡し条件等で「解体目的での提示」を立証できるよう整理
    • 併せて規制(シップ・リサイクル法、バーゼル法等)も確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。船舶(第89類)は高額品が多く、HSを誤ると原産性判断(CTC/RVC等)の前提が崩れ、遡及否認リスクがあります(一般論)。
  • よくある落とし穴:
    • 「最終製品(船舶)」のHSと「主要構成品(エンジン等)」のHSを混同する
    • 未組立/分解提示の扱い(GIR2(a))により、完成品HSとしてPSRを見るべきなのに部品HSで見てしまう

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 代表例(一般論):
    • RCEP:HS2012ベースのPSRをHS2022へ置換したPSRが採択され、2023-01-01から運用と案内されています(日本税関/外務省発表)。
    • 日英EPA:日EU EPAと同様にHS2017採用、と説明する資料があります。
    • CPTPP:HS2012基準とする政府ガイドがある一方で、委員会でPSRのHS2017/HS2022へのトランスポジションが議題となっています(=運用確認が必要)。
    • 協定ごとのHS版は、日本税関の協定関連ページでも確認できます。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • 協定が参照するHS版がHS2022と異なる場合:
      1. 協定で指定されたHS版のPSRを確認
      2. 必要に応じて相関表(correlation)で旧新コード対応を当てる
      3. 最終的に、輸入国税関の運用(ガイダンス/照会)に合わせて証明書の記載を整合

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須になりやすい社内データ(一般論)
    • BOM(材料表)、主要部材の原産国、非原産材料のHS、原価(RVC必要時)、工程表(CTC/工程要件必要時)
    • 船舶はサプライチェーンが広いので、主要ユニット(エンジン、推進器、航海機器等)の非原産性の扱いがボトルネックになりやすい点に注意(一般論)。
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 協定本文・運用ガイドライン、税関の手引きを確認(協定ごとに異なる)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割(細分化)8903(号レベル)旧:8903.10/91/92/99 → 新:8903.11/12/19/21/22/23/31/32/33/93/99(膨張式・セール・モーター・その他をより細かく識別)プレジャーボート等の6桁が変わりやすく、PSR参照・統計・許認可の前提が変わる
HS2017→HS2022変更なし8901, 8902, 8904〜8908(項・号レベル)第89類の他の項・号は、条文上は同一の構成に見える旧版からの移行影響は相対的に小さい(ただし国内コードは別途確認)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料の列挙と、何が変わったかの説明:
    • **相関表(HS2022↔HS2017)**では、89.03について「膨張式ボート、セールボート、モーターボートを区分するために新しい号が設定された」旨が示されています。
    • HS2017の89.03は、膨張式(8903.10)と、その他(セールボート8903.91、モーターボート8903.92、その他8903.99)という比較的粗い構造です。
    • HS2022の89.03では、膨張式ボートがモーター可否・重量(100kg)で区分され、セールボート/モーターボート/その他が長さ(7.5m、24m)で区分されています。
    • 以上から、HS2022改正で第89類全体が大きく変わったというより、89.03の統計・管理ニーズに合わせて号が細分化されたと判断できます。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第89類は、項(4桁)構成自体はHS2007→2012→2017→2022で同一に見えます。主な再編は**89.03の号(6桁)**です。

主要論点HS2007HS2012HS2017HS2022実務メモ(旧→新の当て方)
89.03 膨張式8903.108903.108903.108903.11/12/19旧8903.10は、モーター用設計・重量100kg条件等で新号へ分岐(条件確認が必須)
89.03 セールボート8903.918903.918903.918903.21/22/23旧8903.91は、長さ(≤7.5m、7.5–24m、>24m)で新号へ分岐
89.03 モーターボート8903.928903.928903.928903.31/32/33旧8903.92は、長さで分岐。ただし「船外機艇は含まない」点に注意
89.03 その他8903.998903.998903.998903.93/99旧“その他”も、長さ≤7.5mか否かで分岐

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):ノックダウン船の「部品」申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):未組立/分解提示でも、重要な特性があれば当該船として分類すべきところ、部品としてバラバラに申告(類注1・GIR2(a)の趣旨に反する)
    • 起きやすい状況:船体+機器一式を複数コンテナで分割輸送、インボイスが“parts”表記
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延(一般論)
    • 予防策:梱包明細と図面で「一体としての船舶提示」であることを整理、事前教示の活用
  • 事例名:ポンツーン(平底船)の誤分類
    • 誤りの内容:輸送用ポンツーンを89.07にしてしまう(実際は89.01)等、用途別の分岐を無視
    • 起きやすい状況:用途をインボイス品名に書かない(“pontoon”のみ)
    • 典型的な影響:税率差・統計差、説明資料要求
    • 予防策:用途・構造(甲板構造、推進の有無、使用時停止か)を資料化
  • 事例名:ホバークラフトの分類不一致(輸出入国で相違)
    • 誤りの内容:設計基準(第17部注5)を確認せず、呼称だけで87/89を決める
    • 起きやすい状況:水上も陸上も走れる製品で、販売資料が用途を幅広く記載
    • 典型的な影響:相手国側のHS差し戻し、通関遅延
    • 予防策:設計仕様書を整備し、必要なら税関相談
  • 事例名:解体目的の廃船(89.08)輸出入での追加コンプラ対応漏れ
    • 誤りの内容:89.08の分類自体は正しいが、解体・廃棄物規制やシップ・リサイクル法の確認をせずに手配
    • 起きやすい状況:中古船売買契約で“for demolition”が付く案件
    • 典型的な影響:追加書類要求、手続遅延、場合により差止め(一般論)
    • 予防策:船の状態(有害物質の有無等)と輸出入形態を整理し、関係官庁ガイドを確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 船舶そのもの(特に軍艦等)や搭載機器(レーダー等)によって、外為法・輸出貿易管理令の枠組みで個別判断が必要になり得ます(一般論)。確認窓口は経済産業省の安全保障貿易管理情報です。
  • その他の許認可・届出
    • 漁船の輸出:経済産業大臣の承認が必要で、水産庁長官の事前確認証が必要と案内されています(輸出案件で要注意)。
    • シップ・リサイクル(解体)関連:香港条約の発効(2025-06-26)に伴い、担保法である「シップ・リサイクル法(船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律)」が同日施行、総トン数500トン以上等を対象とする旨が国交省から案内されています。
    • バーゼル法(特定有害廃棄物等):輸出入する“もの”が規制対象に該当するかの判断が必要で、制度概要は経産省が整理しています(解体材・廃棄物性のある貨物は要注意)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経産省(漁船輸出、安全保障貿易管理、バーゼル法)
    • 国交省(シップ・リサイクル法)
    • 税関(品目分類・事前教示)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 船舶:仕様書、用途説明、全長/重量、推進方式、写真、契約書(中古/解体目的含む)
    • 解体:有害物質関係資料(IHM等、該当する場合)、輸出入先の手続要件整理

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 船種(輸送/漁業/娯楽/作業/軍用等)、運用実態
    • 仕様:全長、重量、推進方式(船外機/船内機等)、膨張式か
    • 提示形態:完成/未完成、組立/未組立、分解の範囲、同梱品リスト
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 部注(玩具除外、ホバークラフト、水陸両用)
    • 類注1(船体/未完成の扱い)
    • 「部分品(船体以外)ではないか」再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • “boat/ship/pontoon/platform”だけでなく、用途・仕様(長さ/重量)を品名欄に補足
    • 図面・仕様書を添付可能な状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版の確認(RCEPはHS2022置換PSRなど)
    • BOM・原価・工程の整備
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 漁船輸出承認の要否(該当時)
    • 解体関連(シップ・リサイクル法、バーゼル法等)の要否

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS2022 Chapter 89(条文・6桁構造)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS2022 Section XVII Notes(第17部注:玩具除外、ホバークラフト、水陸両用等)〔参照日:2026-03-01〕
    • WCO HS2007/2012/2017 Chapter 89(旧版比較用)〔参照日:2026-03-01〕
    • HS2022↔HS2017 相関表(第89類の改正点確認)〔参照日:2026-03-01〕
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:関税率表解説(第89類)〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関:EPA/原産地関連(協定ごとのHS版の情報等)〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関:事前教示(品目分類)・検索〔参照日:2026-03-01〕
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 外務省:RCEP HS2022置換PSRの採択(運用開始等)〔参照日:2026-03-01〕
    • 税関:RCEP HS2022版PSRに関する案内〔参照日:2026-03-01〕
    • (参考)CPTPPのHS版・トランスポジション関連情報〔参照日:2026-03-01〕
    • (参考)日英EPAのHS版に関する説明資料〔参照日:2026-03-01〕
  • 規制(日本)
    • 経産省:漁船の輸出(外為法に基づく承認等)〔参照日:2026-03-01〕
    • 国交省:シップ・リサイクル法(香港条約発効・国内法施行)〔参照日:2026-03-01〕
    • 経産省:バーゼル条約・バーゼル法の制度概要〔参照日:2026-03-01〕

※Web参照は「参照日(2026-03-01)」を記載しました。


付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 品名(一般名称+用途)、材質、構造、寸法(全長)、重量(正味重量)、推進方式、写真、カタログ、図面、梱包明細
    • 未完成/分解提示の場合:工程表・同梱一覧・完成時の仕様(重要特性の判断材料)
  • 探し方(日本税関の公開情報)
    • **事前教示回答(品目分類)**は、税関サイトでキーワード検索が可能です(公開可能な範囲の回答)。
    • 英語ページ(Advance Rulings on Tariff Classification)も用意されています。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。