0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)
- この類に入る代表例(3〜6個):
- 亜麻(フラックス)繊維(生・レッティング済・破砕/スカッチ/ハックル等の「精紡前」まで)と、そのトウ・くず(5301)
- 大麻(True hemp / Cannabis sativa L.)繊維(精紡前)と、そのトウ・くず(5302)
- ジュート等の靭皮繊維(亜麻・大麻・ラミー以外)と、そのトウ・くず(5303)
- ココやし(コイヤ)、アバカ、ラミー、サイザル等の「その他の植物性紡織用繊維」(精紡前)と、そのトウ/ノイル/くず(5305)
- 紙のストリップを撚って作る「紙糸」(5308、通常は5308.90側で扱われます)
- この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
- 綿(コットン)・綿織物:第52類(第53類ではありません)
- 「ひも・綱・ロープ」として扱うべき太い糸(線密度や構成で判定):第56類 5607(“twine, cordage, ropes and cables”)
- 紙を単に折り重ねたストリップ(撚っていない):第48類(紙製品側)
- 紙のストリップを交錯(組物・編組的)させた「組物状」のもの:46.01(第46類)
- 織物が「裁断・縫製済み=製品(made up)」になっているもの:第63類など(部注の“made up”定義で移動)
- 実務での最重要分岐(1〜3個):
- 形状・段階:**繊維(精紡前)**か、糸か、織物か(5301〜5305/5306〜5308/5309〜5311)
- 糸の太さ・構成:**糸(Ch.53)**か、**ひも・綱(5607)**か(線密度/仕上げ/撚り本数等)
- 紙系:**紙糸(撚って糸)**か、単なる紙ストリップ/紙製品か、**紙ストリップの組物(46.01)**か
- (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
- 大麻(ヘンプ)関連:HS分類(5302/5308など)とは別に、日本の薬物規制・取扱規制の確認が必須で、誤認すると通関差止・行政対応につながり得ます。
1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)
1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)
- この類で特に効くGIR:
- GIR1:見出し文言(例:Flax yarn / paper yarn / woven fabrics)と部注(第11部注)でまず決めます。第53類は「素材(植物繊維/紙)」と「形状(繊維・糸・織物)」が軸です。
- GIR6:号(6桁)では、特に
- 5301/5302/5303の「生・レッティング」vs「その他」、
- 5306/5307の「単糸」vs「マルチプル/ケーブル」、
- 5309の「亜麻85%」閾値、
- 5310の「漂白してない」
が実務分岐になります。
- 混紡・混用が出たら、まず第11部注(混合繊維の取扱い=重量優先など)を当ててから該当章・項を決めます。
- 「品名だけで決めない」ための観点:
- 植物名(可能なら学名)と繊維の種類(亜麻/ジュート/ラミー/コイヤ/サイザル等)
- 加工状態(生、レッティング、破砕・スカッチ・ハックル、精紡済み/未)
- 糸なら:線密度(decitex)、仕上げ(polished/glazedの有無)、撚り本数(ply)・編組の有無(braidedかどうか)
- 織物なら:繊維混率(重量%)、漂白/染色/プリントの状態
1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)
- Step1:それは「繊維素材」か「糸」か「織物」か「出来上がり製品(袋など)」か?
- 繊維(精紡前)→ Step2
- 糸 → Step3
- 織物 → Step4
- 裁断・縫製済み(made up)→ 第63類等を優先検討
- Step2(繊維):亜麻(5301)/大麻(5302)/ジュート等靭皮(5303)/その他植物繊維(5305)へ
- サイザル等は5305側で扱うのが現行(HS2022に5304は欠番)。
- Step3(糸):亜麻糸(5306)/ジュート糸(5307)/その他植物繊維の糸+紙糸(5308)
- ただし、線密度等の条件で“twine/rope”に当たると56.07へ移動します(例:亜麻/大麻の太糸、3本撚り以上のコイヤ等)。
- Step4(織物):亜麻織物(5309)/ジュート等の織物(5310)/その他植物繊維・紙糸の織物(5311)
- 紙ストリップを交錯させた「組物状(plaiting)」は46.01へ(5311ではない)。
- よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
- 第53類(紙糸) vs 第48類(折り重ねただけの紙ストリップ)
- 第53類(糸) vs 第56類(ひも・綱・ロープ:線密度/構成で判定)
- 第53類(織物) vs 第63類(出来上がり品:made up)
2. 主な項(4桁)とその内容
2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)
| 項番号(4桁) | 見出しの要旨(日本語) | 典型例(製品名) | 重要な分岐条件/除外/注意点 |
|---|---|---|---|
| 5301 | 亜麻(精紡前)+トウ/くず | 亜麻の生繊維、レッティング済亜麻、亜麻トウ | 「精紡前」まで。糸になれば5306。 |
| 5302 | 大麻(True hemp, Cannabis sativa L.)繊維(精紡前)+トウ/くず | ヘンプ繊維(生/レッティング) | 規制(大麻関連)はHSと別軸で必確認。 |
| 5303 | ジュート等の靭皮繊維(亜麻/大麻/ラミー除く) | ジュート、ケナフ等の繊維(精紡前) | 「麻」名称が紛らわしい(ケナフ等は5303側の例が多い)。 |
| 5304(欠番) | HS2022では使用しない([53.04]) | (該当なし:旧版でサイザル等に使われた時期あり) | 古い資料で5304が出ることがありますが、HS2022では欠番。履歴は後述(§8)。 |
| 5305 | コイヤ/アバカ/ラミー等+その他植物繊維(精紡前) | コイヤ繊維、アバカ、ラミー、サイザル、アロエ繊維など | 第14類に行く未加工葉(アルファ等)は除外(加工度が鍵)。 |
| 5306 | 亜麻糸 | リネン糸(単糸/双糸/ケーブル) | 太さ等で56.07に飛ぶ場合あり(部注)。 |
| 5307 | ジュート等(5303)の糸 | ジュート糸、ケナフ糸 | 同上(56.07判定に注意)。 |
| 5308 | その他植物繊維の糸/紙糸 | コイヤヤーン、ヘンプヤーン、紙糸 | 紙糸は「紙ストリップを撚ったもの」。単に折っただけは48類。 |
| 5309 | 亜麻織物 | リネン生地(衣料・寝具・テーブルリネン等) | 亜麻重量比85%が号分岐。漂白/染色区分あり。 |
| 5310 | ジュート等(5303)の織物 | 麻袋用ジュート生地、基布 | 漂白してない/その他。出来上がり袋は63類検討。 |
| 5311 | その他植物繊維の織物/紙糸織物 | ラミー織物、紙糸織物、包装用生地 | 紙ストリップの組物(46.01)は除外。 |
2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)
- 分岐条件の整理(この類で頻出):
- 原料状態:生/レッティング(5301.10、5302.10、5303.10) vs その他加工済(5301.21/29、5302.90、5303.90)
- トウ・くず:5301.30 など(用途が充填/製紙でも含む)
- 糸の形態:単糸 vs マルチプル/ケーブル(5306.10/20、5307.10/20)
- 織物の組成閾値:亜麻織物は「亜麻85%以上」かどうか(5309)
- 漂白区分:5309や5310の「unbleached/bleached/other」は第11部の定義で判断(“unbleached/bleached woven fabric”等)
- 糸 vs 綱(56.07):線密度・仕上げ・撚り本数等で“twine/rope”扱いになると章が変わる
- 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
- 5301.10(生/レッティング亜麻) vs 5301.21/29(破砕・スカッチ等) vs 5301.30(トウ/くず)
- どこで分かれるか:加工工程(retted / broken / scutched / hackled)と、トウ/くずかどうか
- 判断に必要な情報:工程フロー、写真(繊維束/トウ)、品名に「tow」「waste」表記の有無
- 典型的な誤り:「トウ」を単に“未加工繊維”として5301.10側に寄せてしまう
- 5308(紙糸) vs 第48類(紙ストリップ)
- どこで分かれるか:紙を“撚って糸にしているか”。単に折り重ねただけは紙製品扱い
- 判断に必要な情報:製造方法(twist/rollingの有無)、サンプル写真、用途(織物用糸か)
- 典型的な誤り:紙バンド(折り畳み)を「紙糸」と呼んで5308に入れる
- 5308(糸) vs 5607(ひも・綱)
- どこで分かれるか:第11部注で“twine/rope”に該当する線密度等か(例:亜麻/大麻の閾値、3本撚り以上のコイヤ等)
- 判断に必要な情報:線密度(decitex)、polished/glazedの有無、ply数、金属補強の有無
- 典型的な誤り:太いヘンプ糸を5308のまま申告(実は5607)
- 5309(亜麻85%以上) vs 5309(85%未満)
- どこで分かれるか:重量比85%
- 判断に必要な情報:混率表(重量%)、試験成績書、仕様書(gsm/組成)
- 典型的な誤り:「見た目リネン」で85%超と決め打ち
- 5311(紙糸織物) vs 46.01(紙ストリップの交錯品)
- どこで分かれるか:素材が“紙糸(yarn)”として織られた織物か、紙ストリップを交錯させた組物か
- 判断に必要な情報:原糸が「紙糸」か(撚り有無)、組織(織物/組物)、製法資料
- 典型的な誤り:紙ストリップの組物マットを5311で申告
- 5301.10(生/レッティング亜麻) vs 5301.21/29(破砕・スカッチ等) vs 5301.30(トウ/くず)
3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)
3-1. 関連する部注(Section Notes)
- ポイント要約:
- 混用繊維(2種以上):第11部注2により、基本は「重量が最も多い繊維」で分類。優劣がつかない場合は、該当見出しのうち番号が後ろのもの。
- 糸が“ひも・綱”になる基準(部注3):亜麻/大麻/コイヤ/その他植物繊維は、線密度・仕上げ・ply数等で“twine/rope”扱いになり、5607へ。例:
- 亜麻または大麻:polished/glazedで1,429 decitex以上、または未仕上げで20,000 decitex超
- コイヤ:3本撚り以上
- その他植物繊維:20,000 decitex超
- 金属糸で補強したもの 等
- made up(部注7・8):裁断・縫製済み等は、Ch.50〜55(=繊維・糸・織物)から外れ、Ch.56〜63側で扱うのが原則。
- 実務での意味(具体例つき):
- 例:ヘンプ糸でも、線密度が大きく“綱”判定になると、5308ではなく5607(税率・規制・原産地規則の前提が変わる)
- 例:ジュート生地(5310)を裁断して縫製した「袋」なら、織物ではなく出来上がり製品側(第63類)を検討
- “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
- 太糸・多本撚り → 5607(twine/rope)
- 裁断・縫製済み → 56〜63(made up)
- 紙ストリップ(撚りなし/折り重ね) → 第48類
3-2. この類の類注(Chapter Notes)
- ポイント要約:
- HS2022の第53類は、類注(Chapter Notes)そのものは置かれておらず、実務上は見出し文言と第11部注で分岐する作りです(条文構造上)。
- 用語定義(定義がある場合):
- 「unbleached/bleached/printed」等は第11部の定義を使用します(織物区分の根拠)。
- 除外規定(除外先の類・項も明記):
- 紙糸の除外(折り重ね紙=48類、紙糸の組綱=56.07 等)は、第53類の解説上も明示されています。
4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)
この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。
※第53類は類注自体が薄いので、第11部注(Section Notes)起因の分岐を中心に整理します。
- 影響ポイント1:混紡・混用(第11部注2)で“素材章”がズレる
- 何を見れば判断できるか(必要情報):繊維混率(重量%)、複合素材の内訳(例:亜麻80%+綿20%)
- 現場で集める証憑:仕様書、混率証明、試験成績書(繊維鑑別)、BOM
- 誤分類の典型:外観だけで「リネン(5309の85%以上)」と判断し、実際は85%未満だった
- 影響ポイント2:“糸”が“綱(5607)”に飛ぶ(第11部注3:線密度等)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):decitex(線密度)、polished/glazedの有無、ply数(特にコイヤ)、金属補強の有無
- 現場で集める証憑:メーカー仕様(線密度/番手換算表)、試験データ、サンプル写真、加工工程
- 誤分類の典型:「ヘンプヤーン」と呼ばれているため5308で申告したが、実測線密度で5607判定
- 影響ポイント3:織物が“made up”扱いでCh.53から外れる(第11部注7・8)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):裁断形状(四角形以外)、縫製/ヘム処理、完成品としての使用可能性
- 現場で集める証憑:製品写真、寸法図、縫製仕様、出荷形態(ロールか完成品か)
- 誤分類の典型:ジュート布を「袋完成品」なのに5310で申告
- 影響ポイント4:紙系(紙糸/紙ストリップ/紙の組物)で章が変わる
- 何を見れば判断できるか(必要情報):撚って糸にしているか、単なる折り重ねか、紙ストリップ交錯品か
- 現場で集める証憑:製造方法説明、原材料(紙ストリップ幅・撚り工程)、サンプル
- 誤分類の典型:紙ストリップ交錯品を「紙糸織物」と誤認し5311へ
5. 分類でよくある間違い(原因→対策)
- 間違い:日本語の「麻」表記だけで、5302(大麻)/5303(ジュート等)/5305(ラミー等)を取り違える
- なぜ起きる:商習慣名(○○hemp、○○flax)が多く、植物学的な区別が曖昧
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):見出しは「True hemp(Cannabis sativa L.)」など植物を特定しています。
- 予防策:
- 確認資料:学名/原料植物、繊維採取部位(靭皮/葉など)、工程図
- 社内質問例:「この“hemp”はCannabis sativa L.ですか?Kenaf/Agave系では?」
- 間違い:サイザル等を「5304」として扱う(古いコード参照)
- なぜ起きる:旧版のHSや民間サイト情報が残っている
- 正しい考え方:HS2022の条文では[53.04]が欠番で、サイザル等は5305の説明例として扱われます。
- 予防策:HS版(HS2022)を明示した一次資料でコード表を引く/旧コードの履歴は相関表で確認
- 間違い:紙ストリップ(折り重ね)を紙糸(5308)に入れる
- なぜ起きる:「紙糸」「紙紐」の呼称が製法を反映しないことがある
- 正しい考え方:紙糸は紙ストリップを“撚る/ローリング”して糸化したもの。折り重ねは48類扱い。
- 予防策:製造工程の有無(twist/rolling)をサプライヤーに確認し、写真/動画/工程図を保存
- 間違い:太いヘンプ/亜麻糸を5306/5308のまま申告(実は5607)
- なぜ起きる:線密度(decitex)での“綱判定”を見落とす
- 正しい考え方:第11部注3にある線密度・仕上げ・ply数で“twine/rope”扱いに変わります。
- 予防策:仕様書にdecitex/番手/ply/仕上げ(polished/glazed)を必須項目として入れる
- 間違い:紙糸を編んだ綱(braided)を5308に入れる
- なぜ起きる:「紙糸だから第53類」と決め打ち
- 正しい考え方:紙糸自体は5308でも、**組んだ綱(braided cordage)**は除外され得ます(56.07等)。
- 予防策:編組(braided)か単なる撚り合わせかを図面・現物で判定
- 間違い:亜麻織物(5309)で「85%閾値」を見ずに号を決める
- なぜ起きる:混率が外観で分からない/BOMがない
- 正しい考え方:5309は亜麻含有量85%で号が分かれます。
- 予防策:混率証明/試験成績書をインボイス・仕様書と紐づけて保管
- 間違い:ジュート織物(5310)を「袋(完成品)」と同列に扱う
- なぜ起きる:ロール生地と縫製済み袋の区別が曖昧
- 正しい考え方:裁断・縫製済み等は“made up”でCh.53から外れる可能性。
- 予防策:出荷形態(ロール/裁断/縫製)を品名・仕様書に明記
- 間違い:アルファ/エスパルト等の「未加工葉」を5305に入れる
- なぜ起きる:「繊維っぽい」見た目で判断
- 正しい考え方:紡織用途を示す加工(ロール、破砕、コーム等)をした場合のみ5305側に来る趣旨(未加工は第14類側)。
- 予防策:加工状態の証憑(工程、写真)を入手し、用途(紡績/ブラシ/詰物等)を確認
6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点
6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係
- HSの付番がPSR選択に直結します。第53類は「繊維→糸→織物」ステージが明確で、HSの取り違いがそのままPSRの条文適用違いになります。
- よくある落とし穴:
- 材料側のHS(例:植物繊維=5305)と、最終製品側(例:織物=5311、袋完成品=Ch.63)の取り違い
- “糸”と“綱(5607)”の境界(線密度)でPSRの見出しが変わる
6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)
- 例(代表例として):
- **CPTPP(TPP11)**の繊維・衣類のPSR(Annex 4-A)は「HS2012分類」で提示されています。
- RCEPのPSR(Annex 3A)は「HS2012版に基づく」旨が明記されています。
- 日本税関のPSR検索画面でも、EPAごとに採用HS版(HS2002/2007/2012/2017…)が異なるため、協定が採用するHS版で検索するよう注意喚起されています。
- トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
- 協定本文のHS版と、輸入申告で使う最新HS(HS2022)がズレる場合、**協定側PSRをHS2022へ読み替え(transposed PSR)**して運用することがあります。例えばRCEPについて、日本の外務省は「原産地証明に記載するHSコード等はHS2022へ転置したPSRに基づく」旨を注記しています(適用開始日も明記)。
- 転置の考え方(一般論)はWCOのガイダンスも参照すると安全です。
6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)
- 必須データ:
- 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
- 「糸/綱」境界の根拠データ(decitex、ply、仕上げ)
- 織物の混率(重量%)と仕上げ状態(漂白/染色等)
- 証明書類・保存要件(一般論):
- 協定・運用により異なるため、税関・商工会議所等のガイドに沿って、根拠資料(仕様書・試験成績・工程)を保存
7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)
7-1. 変更点サマリー(必須:表)
| 比較(例:HS2017→HS2022) | 変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更) | 該当コード | 変更の要旨 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|---|
| HS2017→HS2022 | 変更なし(第53類のHS6桁レベル) | 5301〜5311([53.04]欠番含む構造も同様) | 見出し/号の体系は同一 | HS付番自体の見直し対応は基本不要(ただし国内コードや協定側HS版には注意) |
7-2. 「違うことになった根拠」(必須)
- 根拠資料:
- WCOのHS2022第53類(項・号一覧)と、WCOのHS2017第53類(項・号一覧)を突合し、5301〜5311の見出し・号構造が一致することを確認しました。
- したがって、**HS2017→HS2022の第53類は「変更なし」**と整理します(HS6桁ベース)。
8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード
第53類はHS2017→HS2022では安定していますが、**古い版(HS2002→HS2007)で大きな整理(5304の消滅)**があります。
| 版の流れ | 主な追加・削除・再編 | 旧コード→新コード(または行き先) | 実務メモ |
|---|---|---|---|
| HS2002→HS2007 | 5304(サイザル等)を含む複数の細分が整理され、5305.00へ統合(低取引量を理由とする削除・統合の趣旨が相関資料で説明) | (例)HS2002の5304.10/5304.90 等 → HS2007の5305.00 に統合 | 旧資料で「5304」を見た場合は、HS版を確認して読み替えが必要 |
| HS2007→HS2012 | 大きな再編なし(5305.00のまま) | ― | HS2012でも[53.04]は欠番構造 |
| HS2012→HS2017 | 大きな再編なし | ― | ― |
| HS2017→HS2022 | 大きな再編なし | ― | ― |
9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)
- 事例名(短く):紙糸と紙ストリップの取り違い
- 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):紙を折っただけのストリップを「紙糸」として5308申告(実際は48類側)
- 起きやすい状況:品名が“paper yarn”“paper cord”で統一されていない
- 典型的な影響:分類更正、必要書類追加、検査・遅延
- 予防策:製法(撚り/折り)を仕様書に明記し、写真を添付
- 事例名:太いヘンプ糸を“糸(5308)”で申告
- 誤りの内容:第11部注3の“twine/rope”条件に該当するのに5607へ移していない
- 起きやすい状況:線密度データが無い/番手換算の誤り
- 典型的な影響:追加納税、原産地規則の再計算、分類照会対応
- 予防策:decitex/ply/仕上げ情報を仕入先から取得し、申告資料に添付
- 事例名:紙ストリップ交錯品(46.01)を紙糸織物(5311)で申告
- 誤りの内容:53.11の除外(紙ストリップの交錯品は46.01)を見落とし
- 起きやすい状況:マット/帽体/バッグ材料など「織物っぽい」製品
- 典型的な影響:分類更正、取引先の関税コスト見直し
- 予防策:原糸が紙糸(撚りあり)か、紙ストリップの組物かを製法で判定
- 事例名:ジュート織物ロールと袋完成品の混同
- 誤りの内容:縫製済み袋を5310(織物)として申告(made upでCh.63側の可能性)
- 起きやすい状況:インボイス品名が“jute bag cloth”など曖昧
- 典型的な影響:修正申告、検査強化、納期遅延
- 予防策:出荷形態(ロール/裁断/縫製)を品名欄に必ず入れる
10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)
- 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
- 検疫・衛生(SPS等)
- 植物検疫は、原則「病害虫が付着する可能性のある植物は検査対象」という考え方で運用され、高度加工品等は対象外となる整理があります(ただし個別判断)。
- 例えば、中古の植物由来包装材などは別途「検疫指定物品」として扱われ得るため、ジュート袋などの用途・中古/新品・汚れ(土壌付着)には注意が必要です。
- 確認先:植物防疫所(MAFF)/輸入港での検査手続(必要に応じて輸出国の植物検疫証明書)
- 実務での準備物(一般論):成分/原料植物、加工工程、用途、梱包状態、汚れ・土壌付着の有無、必要なら輸出国側証明
- その他の許認可・届出(大麻関連:該当する場合)
- 第53類には「True hemp(Cannabis sativa L.)」の繊維・糸が含まれますが、HS分類と国内規制(薬物規制・栽培規制)は別物です。
- 2024年12月12日に、いわゆる大麻取締法等の改正法が施行され、法体系・定義(例:大麻草=Cannabis sativa L.、大麻の定義等)が整理されています。
- “種子や成熟した茎”およびその製品の扱い(除外規定等)も条文・通知で細かく整理されているため、ヘンプ繊維製品の輸入は、成分・部位・形状・含有成分等を含めて所管官庁の最新情報で確認してください。
- 確認先:厚生労働省(医薬局等の通知・Q&A)、税関の他法令確認窓口(必要に応じて専門家・事前相談)
- 安全保障貿易管理(該当する場合)
- 第53類の一般的な繊維・織物は該当しにくい一方、用途・特殊加工(軍用資材等)で別途規制対象となり得るため、用途と仕様を確認してください(一般論)。
11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)
- 分類前チェック(製品情報の収集)
- 原料植物(可能なら学名)/繊維種(亜麻・ジュート・ラミー・コイヤ・紙等)
- 加工状態(精紡前/糸/織物/完成品)、工程図、写真
- 糸の場合:decitex、ply、polished/glazed、金属補強の有無
- 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
- “糸→綱(5607)”の判定(第11部注3)
- “made up”でCh.53から外れないか(第11部注7・8)
- 紙系は48類・46.01との境界を再確認
- 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
- 「roll生地」か「縫製済み」かを品名に明記
- 混率(重量%)・漂白/染色状態の記載
- 必要に応じてサンプル写真・仕様書添付
- FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
- 協定の採用HS版でPSR確認(税関の注意喚起に従う)
- トランスポジション(HS2022読み替え)の要否(例:RCEP)
- BOM、原価、工程、材料HS、証憑保存
- 規制チェック(許可/届出/検査)
- 植物検疫:加工度・中古/新品・土壌付着等で要否判断(植物防疫所へ)
- ヘンプ関連:成分・部位・形状等の規制適合性を所管官庁情報で確認
12. 参考資料(出典)
- WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
- WCO HS Nomenclature 2022:Chapter 53(参照日:2026-02-22)
- WCO HS Nomenclature 2022:Section XI Notes(参照日:2026-02-22)
- 日本税関・公的機関のガイド
- 税関「関税率表解説」第53類(参照日:2026-02-22)
- 税関「品目別原産地規則」検索画面(HS版注意喚起)(参照日:2026-02-22)
- FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
- CPTPP(TPP)Annex 4-A(Textiles and Apparel PSR:HS2012表記)(参照日:2026-02-22)
- RCEP Annex 3A(PSR:HS2012に基づく旨の記載)(参照日:2026-02-22)
- 外務省:PSRのHS2022転置に関する注記(参照日:2026-02-22)
- WCO:Preferential ROOのTechnical Updateガイド(参照日:2026-02-22)
- 規制・検疫(日本)
- 農林水産省 植物防疫所:輸入植物検疫の考え方(対象外の考え方含む)(参照日:2026-02-22)
- 税関通達(輸入植物等の通関取扱い・検疫指定物品の考え方等)(参照日:2026-02-22)
- 厚生労働省:大麻関係法改正の施行通知(参照日:2026-02-22)
- 警察庁:改正内容の説明資料(施行日・除外規定等)(参照日:2026-02-22)
免責事項
本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。
FTAでAIを活用する:株式会社ロジスティック
