HS2022 第52類:綿及び綿織物(Cotton)

本文での用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 実綿・繰綿(カード/コーム前の原綿)(5201)
    • 綿のくず(糸くず・反毛(ガーネット)を含む)(5202)
    • カード綿・コーム綿(5203)
    • 綿の縫糸(5204)
    • 綿糸(縫糸以外)(5205〜5207:小売用か否か、綿比率で分岐)
    • 綿織物(平織・綾織など、デニム含む)(5208〜5212)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • コットンリンター(綿実の短繊維)第14類(例:1404)
    • 脱脂綿・ウォッディング:3005 または 5601 へ(用途・形態で)
    • 不織布・フェルト:第56類(例:5603 不織布)
    • メリヤス(ニット)生地:第60類
    • タオル地(テリー):5802 など(織物でも特掲が優先)
    • 樹脂・ゴムで含浸/被覆/積層したもの:第39類/40類または第59類へ飛ぶ可能性(状態次第)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 形態が「繊維」か「糸」か「織物」か(5201/5203/5204〜5207/5208〜5212で大きく分岐)
    2. (織物)綿の重量比率(85%閾値)と、混用繊維が主に人造繊維か(5208/5209 vs 5210/5211/5212)
    3. (糸)縫糸か/小売用にした糸か(5204 vs 5205-5207)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • FTA/EPAのPSR(品目別規則)適用:HSを誤ると原産性判断が崩れ、追徴・否認のリスク
    • デニム(“商業名デニム”)の思い込み:HS上の「デニム」定義に合わず、5209.42/5211.42を外すことがある

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し文言+注):まず「繊維・糸・織物」のどれか、そして**部注(第11部注)で除外・定義を確認します。特に混用繊維(綿+化繊など)では第11部注2(混用の考え方)**が強く効きます。
    • GIR6(6桁の決定):織物は「漂白してない/漂白/浸染/異色糸/なせん」など加工状態、さらに「平織・綾織」「重量g/㎡」等で6桁が分かれます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 材質(綿%、他繊維%)
    • 状態(原綿・カード綿・糸・織物)
    • 加工状態(漂白・染色・プリント等)
    • 規格(糸番手/デシテックス、織物重量g/㎡、織組織)
    • 包装形態(糸が“小売用”か)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:これは「綿」関連か?
    • 綿が主素材でも、コットンリンターは第14類(第11部注で除外)に飛びます。
  • Step2:形態で分岐
    • 繊維:カード/コーム前=5201、カード/コーム後=5203、くず=5202
    • :縫糸=5204、それ以外=5205〜5207(綿比率・小売用で分岐)
    • 織物:5208〜5212(綿比率85%、混用繊維、重量200g/㎡、加工状態で分岐)
  • Step3:6桁で最終分岐
    • 糸:単糸/双糸、コームの有無、太さ(デシテックス)
    • 織物:平織/綾織、重量、加工状態(漂白・染色・プリント等)、デニム定義
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第52類(綿織物) vs 第60類(ニット):編んでいるか、織っているか
    • 第52類 vs 第56類(不織布・わた等):織物構造か、繊維を結合したシートか
    • 第52類 vs 第59類/第39類(樹脂被覆等):被覆の有無・程度で飛ぶ

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
5201実綿・繰綿(カード/コーム除く)原綿ベール、繰綿リンターは第14類。カード/コーム後は5203へ。
5202綿のくず(糸くず・反毛含む)紡績くず、糸くず、反毛製造工程で出る“くず”や反毛。
5203カード綿・コーム綿スライバー、コーム綿5201との違いは「カード/コーム工程の有無」。
5204綿の縫糸(小売用含む)ミシン糸、縫製用糸**縫糸の定義(仕上げ・Zより等)**を注で確認。
5205綿糸(縫糸以外)綿85%以上・小売用でない工業用綿糸、織布用糸綿比率≥85%&小売用でない。太さ(デシテックス)等で細分。
5206綿糸(縫糸以外)綿85%未満・小売用でない綿/ポリエステル混紡糸(業務用巻)綿<85%&小売用でない。
5207綿糸(縫糸以外)小売用にしたもの手芸用糸、毛糸玉(綿混)「小売用にしたもの」定義は第11部注4で判定。
5208綿織物(綿85%以上、≤200g/㎡)ブロード/ローン系、薄手綿平織重量200g/㎡が閾値。加工状態(漂白等)で細分。
5209綿織物(綿85%以上、>200g/㎡)厚手ツイル、デニム生地**5209.42「デニム」**は定義あり。
5210綿織物(綿<85%、主に化繊混、≤200g/㎡)綿/ポリ混の先染め平織など第11部注2で“綿織物扱い”になった上で条件充足が必要。
5211綿織物(綿<85%、主に化繊混、>200g/㎡)綿/ポリ混の厚地ツイル等5210の>200g/㎡版。デニム(5211.42)定義あり。
5212その他の綿織物綿混で5210/5211に当てはまらない織物他項に特掲されない混用織物の受け皿。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 綿重量比率:85%閾値(糸:5205/5206、織物:5208/5209/5210/5211)
    • 織物重量:200g/㎡閾値(5208 vs 5209、5210 vs 5211、5212も≤200/>200で分岐)
    • 織組織:平織 vs 3枚/4枚綾(ツイル)(織物の6桁で分岐)
    • 加工状態:漂白してない/漂白/浸染/異なる色糸/なせん(プリント)
      ※これらの用語定義は第11部の号注(糸の状態定義等)も参照すると安全です。
    • (糸)小売用にしたもの:コーン・ボール・かせ等の形態と重量閾値で判断
    • デニム定義:5209.42/5211.42は“商業名”でなく定義で判定
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 5204(縫糸) vs 5205〜5207(縫糸以外の糸)
      • どこで分かれるか:縫糸は「縫糸用の仕上げ」「最後のZより」「糸巻重量1kg以下」など注の定義で判定
      • 判断に必要な情報:用途表示だけでなく、撚り方向・仕上加工・糸の構成(双糸等)・包装重量
      • 典型的な誤り:「ミシン糸っぽい」だけで5204に寄せる
    2. 5205/5206(小売用でない糸) vs 5207(小売用)
      • どこで分かれるか:「小売用にした糸」の定義(巻き形態+重量閾値)
      • 判断に必要な情報:糸の形態(コーン/ボール/かせ等)、1個当たり重量(芯含む)
      • 典型的な誤り:EC向け小分けでも重量が基準を超えており“小売用”扱いにならないケース
    3. 5208(≤200g/㎡) vs 5209(>200g/㎡)(綿85%以上の織物)
      • どこで分かれるか:面積重量(g/㎡)
      • 判断に必要な情報:試験成績書(g/㎡)、規格表、サンプル計量
      • 典型的な誤り:ロットによりg/㎡が境界付近で変動しているのに、固定コードで申告
    4. 5209.42 / 5211.42(デニム) vs “その他のツイル”
      • どこで分かれるか:デニムは「異なる色の糸」「3枚/4枚綾」「たて糸は同一色」「よこ糸は未漂白/漂白/灰色浸染/淡色」等の要件
      • 判断に必要な情報:組織図、たて/よこ糸の色・染色条件、現物(表裏)
      • 典型的な誤り:「ジーンズ用=デニム」と決め打ち(黒デニム風、ストレッチ混などで外れることがある)
    5. (日本の国内コードの注意)“ポプリン/ギンガム”の扱い
      • 6桁は同じでも、国内コードで「ギンガム」「ポプリン」等に細分されることがあります。国内例規で定義・規格(糸番手、密度等)が示されています。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第11部注1(c):コットンリンター(第14類)は第11部(=第50〜63類の大枠)から除外
    • 第11部注2:混用繊維(第50〜55類の対象)を、原則「最大重量の繊維」基準で扱う(同率なら番号が後の項へ)
    • 第11部注4:「糸の“小売用にしたもの”」の判定基準(巻き形態・重量閾値)
    • 第11部注5:「縫糸」の定義(仕上加工・Zより等)
    • 第11部注7:「製品にしたもの(made up)」の定義(裁断形状・縁処理等)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例)**綿90%/ポリエステル10%の先染め格子柄平織(170g/㎡)**は、混用でも綿が優位なら第52類側に来ます(この“第52類側に来る”判断に第11部注2が効きます)。
    • 例)同じ綿糸でも、小分けのボール巻で重量が閾値以下なら「小売用」で5207に寄る、など。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • コットンリンター(第14類へ)
    • 樹脂/ゴムの含浸・被覆等(第39類/第40類の物品として扱われる場合がある)
    • 製品にしたもの(made up)(反物ではなく第63類等へ)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 第52類は、実質的に**「号注(Subheading Note)」として“デニム”定義**が置かれているのが重要点です。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • デニム(5209.42 / 5211.42):3枚または4枚綾(破れ斜文含む)、たて糸=同一色、よこ糸=未漂白/漂白/灰色浸染/淡色等、などの要件で判定
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 類注としての明確な“除外条文”は多くありませんが、実務上は第11部注1・注7等で他章へ飛ぶケースが典型です(例:リンター→第14類、製品にしたもの→第63類等)。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:コットンリンターを第52類に入れない
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):原料が「原綿」か「リンター」か、繊維長の目安、製造工程(綿実由来の短繊維か)
    • 現場で集める証憑:原料仕様書、工程説明(綿繰り工程の有無)、分析・写真
    • 誤分類の典型:5201(原綿)に入れてしまう
    • 根拠:第11部注でリンター除外、解説でもリンターは14.04と整理
  • 影響ポイント2:混用繊維の“章またぎ”を第11部注2で決める
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):混用率(重量比)、他繊維が何か(人造繊維か等)
    • 現場で集める証憑:混用率表示(仕様書/BOM)、試験成績書、糸/織物の組成証明
    • 誤分類の典型:
      • 綿30%/ポリエステル70%なのに「綿製品だから第52類」としてしまう(実務上は第11部注2で“最大重量の繊維”側に寄る)
      • 逆に、綿優位(例:綿60%/ポリ40%)なのに化繊側へ寄せてしまう
    • 根拠:第11部注2(最大重量の繊維基準)+ 52.10/52.11の解説が「注2適用により綿織物に属し…」と明示
  • 影響ポイント3:糸の“小売用”判定で5207に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):巻き形態(コーン/ボール/かせ等)、1個重量(芯含む)、糸のデシテックス帯
    • 現場で集める証憑:包装仕様、重量(実測)、商品カタログ
    • 誤分類の典型:工業用巻(重い)なのに小売用5207にしてしまう/逆
    • 根拠:第11部注4
  • 影響ポイント4:“デニム”は定義で判定(商業名は参考)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):組織(3/4枚綾、warp-faced)、たて/よこの色条件
    • 現場で集める証憑:織物規格書、組織図、現物確認(表裏)
    • 誤分類の典型:「デニム風」をすべて5209.42/5211.42にする
    • 根拠:第52類号注(デニム定義)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:コットンリンターを5201(原綿)にしてしまう
    • なぜ起きる:取引書類の品名が「cotton」としか書かれていない
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):リンターは第11部から除外され第14類扱い。解説でもリンターは14.04と整理
    • 予防策:仕様書に「リンターか否か」「繊維長の目安」「原料工程」を追記する
  2. 間違い:縫糸(5204)と、一般の綿糸(5205〜5207)を混同
    • なぜ起きる:「糸=縫糸」と思い込み、用途表示だけで判断
    • 正しい考え方:縫糸は注で要件(仕上げ、Zより、糸巻重量等)が定義される
    • 予防策:撚り方向、仕上加工、糸構成(双糸等)、糸巻重量を確認する
  3. 間違い:5207(小売用糸)かどうかを“販売チャネル”で決める
    • なぜ起きる:「小売用=店で売るもの」という誤解
    • 正しい考え方:小売用は“巻き形態+重量”等の定義で判定
    • 予防策:包装仕様(巻き形態、個装重量)を通関資料に添付する
  4. 間違い:混用織物を“綿が入っている”だけで第52類にする
    • なぜ起きる:混用率(重量)を確認していない
    • 正しい考え方:第11部注2で最大重量の繊維により所属決定。52.10/52.11も注2を前提に条件整理される
    • 予防策:混用率(重量比)を必ず取得(試験成績書や規格書)
  5. 間違い:織物の200g/㎡境界(5208↔5209、5210↔5211)を軽視
    • なぜ起きる:重量がインボイス・仕様書にない/ロット差を考慮しない
    • 正しい考え方:見出し自体が重量で分岐しているため、実測・証明が重要
    • 予防策:g/㎡の試験成績書、または社内測定記録を保管(境界品は特に)
  6. 間違い:“デニム”の商業名で5209.42/5211.42に決め打ち
    • なぜ起きる:アパレル業界用語とHS定義のズレ
    • 正しい考え方:デニムは号注で織組織・色条件が定義される
    • 予防策:組織図、たて/よこ糸の色条件を確認(“デニム風”は要注意)
  7. 間違い:裁断済み生地(手芸用)を“製品にしたもの”として第63類にしてしまう(または逆)
    • なぜ起きる:裁断・縁処理の程度を確認していない
    • 正しい考え方:「製品にしたもの」は第11部注7の要件で判断
    • 予防策:裁断形状、縁処理(熱溶着・縁縫い等)の有無を写真で残す

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。誤分類すると、適用すべきPSRが変わり、原産性判断(CTC/RVC等)が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料(糸)のHS最終製品(織物)のHSが混在したまま検討してしまう
    • 繊維分野は「紡績→織布→縫製」など工程要件が出やすく、工程実態の説明資料が不足しがち(協定ごとのガイド確認が必要)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 日本の輸出入申告(国内法上)はHS2022で運用される一方、協定ごとにPSRが参照するHS版が異なる点が重要です。
  • 例(代表的なもの):
    • CPTPP:HS2012参照
    • 日EU・EPA:HS2017参照
    • RCEP:HS2022参照(HS2012から置換されたPSRが採択され、2023/1/1から実施)
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定PSRが旧版HS参照の場合、PSR側のHSに合わせて最終品・材料のコードを対比(相関表・税関の案内等を利用)してから判定する

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 生産工程フロー(紡績・織布・染色/プリント等)、加工委託先情報
    • 混用率・g/㎡・糸番手など“分類にも原産性にも効く”仕様項目をセットで保存

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(本章に関する4桁/6桁体系・デニム号注に実質変更が見当たらない)5201〜5212コード体系・主要文言が同一版ズレ起因の“コード変更”対応は原則不要(ただし協定HS版は別問題)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料:
    • WCOのHS2017 Chapter 52(Cotton)と、HS2022 Chapter 52(Cotton)を突合すると、見出し構成(5201〜5212)および“デニム”号注を含め、内容が同一に見えます。
  • したがって、本資料では 「HS2017→HS2022で第52類の大きな改正はなし」 と整理します。
    ※ただし、実務では“国内コード(8桁/9桁)”や、FTA/EPAが参照するHS版の違いが別途影響します(第6章参照)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第52類は、少なくともHS2007→HS2012→HS2017→HS2022の各版で、主要な見出し体系(5201〜5212)に大きな再編が見当たりません(WCO各版の章条文比較ベース)。

版の流れ主な追加・削除・再編旧コード→新コード(概要)実務メモ
HS2007→HS2012目立った再編なし該当なし6桁の枠組みは概ね維持
HS2012→HS2017目立った再編なし該当なし同上
HS2017→HS2022目立った再編なし該当なし同上

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):リンターを原綿として申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第11部注1(c)で除外されるリンターを第52類に入れてしまう
    • 起きやすい状況:インボイス品名が“cotton”のみ、原料工程説明なし
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、説明資料の追加要求
    • 予防策:原料の定義(リンター/原綿)と工程を事前に確認
  • 事例名:混用織物の章決定ミス(綿が少ないのに第52類)
    • 誤りの内容:第11部注2の最大重量ルールを無視
    • 起きやすい状況:混用率の根拠資料がなく、営業資料だけで申告
    • 典型的な影響:税番変更、統計訂正、FTAでの否認
    • 予防策:混用率試験成績書、BOM、材料証明の確保
  • 事例名:“小売用糸”判定誤りで5207と5205/5206を取り違え
    • 誤りの内容:第11部注4の判定(重量・形態)未確認
    • 起きやすい状況:小分け出荷・リパックが複数国で行われ、形態が混在
    • 典型的な影響:通関時の照会、申告差戻し
    • 予防策:包装仕様(重量・形態)を固定化し、梱包仕様書を添付
  • 事例名:“デニム”の定義未確認で5209.42/5211.42を誤用
    • 誤りの内容:第52類号注(デニム定義)を満たさない
    • 起きやすい状況:黒デニム風、ストレッチ混、特殊染色
    • 典型的な影響:税番更正、追加説明要求
    • 予防策:組織図とたて/よこ色条件を事前確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 植物検疫(輸入):一般論として植物は検疫対象になり得ますが、植物防疫所の案内では、**麻袋・綿・綿布等の繊維製品や粗繊維(原綿含む)で「植物の包装材料として使用されたことのないもの」**は、輸入植物検疫の対象とならない旨が示されています。
    • 注意:同じ「綿」でも、汚染状況や用途(包装材として使われた等)で扱いが変わり得るため、貨物実態と書類を揃えて確認が安全です。
  • その他の許認可・届出(国内流通も含めた実務観点)
    • 繊維製品の表示(家庭用品品質表示法関連):国内販売では繊維製品の品質表示規程に基づく表示が論点になり得ます(混用率など)。
    • 有害物質規制(家庭用品規制法関連):ホルムアルデヒド等の規制・通知があり、対象品目(乳幼児用など)で注意が必要です。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 植物防疫所(輸入植物検疫の要否)
    • 消費者庁(繊維製品の品質表示)
    • 厚生労働省(家庭用品の有害物質規制)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 原料・混用率の根拠(試験成績書、仕様書)
    • 染色/プリント工程情報(規制・表示・原産性に波及)
    • 製品用途(乳幼児用など)と販売形態(国内表示義務の有無)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 形態:繊維/糸/織物/裁断品(製品にしたものか)
    • 組成:綿%、他繊維%(重量比)
    • 規格:糸番手(またはデシテックス)、織組織、g/㎡
    • 加工:漂白・染色・先染め・プリント、コーティング有無
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • リンター除外(第11部注1)確認
    • 混用は第11部注2で章決定
    • “小売用糸”“縫糸”“製品にしたもの”定義を注で再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイスに「cotton fabric」だけでなく、composition / weight / weave / finish を明記
    • g/㎡や混用率の根拠資料を添付(境界品は特に)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版(HS2012/2017/2022)を確認してPSRを見る
    • 材料HS(糸・繊維)と最終品HS(織物)を分けて管理
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 植物検疫:対象外条件(包装材使用歴等)を確認
    • 国内販売:表示・有害物質(対象品目)確認

12. 参考資料(出典)

※参照日:2026-02-22

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 Chapter 52 “Cotton”(見出し・6桁・デニム定義)
    • HS2017 Chapter 52 “Cotton”(新旧比較用)
    • HS2012 Chapter 52 “Cotton”(新旧比較用)
    • HS2007 Chapter 52 “Cotton”(新旧比較用)
  • 日本の税関・公的機関ガイド
    • 税関:関税率表解説(第52類:綿及び綿織物、デニム定義・各項解説)
    • 税関:第11部注(混用繊維、縫糸/小売用糸/製品にしたものの定義 等)
    • 税関:国内分類例規(ポプリン/ギンガム定義・規格)
    • 税関:分類事例(ギンガムの国内細分例)
  • FTA/EPA本文・運用ガイダンス(HS版の違い)
    • 経済産業省:原産地証明書におけるHS版の注意(協定ごとのHS版一覧)
    • 税関:RCEP HS2022版PSRの採択・実施(2023/1/1〜)
    • 外務省:RCEPのHS2022置換PSR採択(案内)
  • 規制(国内)
    • 植物防疫所:輸入植物検疫の対象外となる植物(綿・綿布等の扱い)
    • 消費者庁:繊維製品品質表示規程
    • 厚生労働省:家庭用品(有害物質を含有する家庭用品の規制関連)

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点(任意)

  • HS6桁(例:5208.42)でも、国内コードでは「ギンガム」「ポプリン」等に細分されることがあります。
    • 国内例規では、ギンガムやポプリンの定義・規格(糸番手、密度など)が示されています。
  • 具体例(国内分類事例):
    • 綿90%/ポリエステル10%、先染め格子柄平織、170g/㎡が **5208.42(異色糸の平織)**となり、国内細分でギンガム扱いになった例が示されています(国内コードの例示あり)。
  • 実務メモ:
    • 社内のマスタは「HS6桁」と「国内コード」を分けて管理し、統計・関税率・規制・EPAの申告欄で取り違えない運用にするのが安全です。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • 事前教示を早くするために揃えるとよい情報(一般論):
    • ①現物写真(表裏、耳、組織が見える拡大)
    • ②組成(重量比)と根拠(試験成績書)
    • ③g/㎡、糸番手/デシテックス、組織図
    • ④加工工程(漂白・染色・プリント・コーティング)
    • ⑤用途・販売形態(糸なら小売用か等)
  • “国内分類例規・分類事例”も併用すると、国内細分(ギンガム等)の整理が速くなります。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。