HS2028で見落とせない、EV・自動車部品の6つのリスク

コード改定を通関部門だけの話で終わらせないために

2028年1月1日、HS2028が発効する。WCOによれば、HS2028は299件の改正から成り、HS2022に比べて6つの見出しと428の細分が新設され、5つの見出しと172の細分が削除される。移行期間中には、相関表、解説資料、各国の国内法、IT、教育が順次整備される。ここで重要なのは、HS2028が単なる番号の置き換えではないという点だ。EV・自動車部品企業では、関税、EPA原産地、価格見積もり、社内マスター、監査証跡が連動して揺れる。

1. HS2028は「通関の作業」ではなく「経営の作業」になる

WCOの公表資料では、HS2028の大きな改正テーマとして公衆衛生と環境が前面に出ているが、同時に技術進歩への対応と解釈の統一も重要な狙いとして挙げられている。加えて、WCOの2024年検討報告では、解釈通則の適用をめぐる見解相違を含む分類判断の比率が、サンプル比較で2002年から2003年の8パーセント、2012年から2013年の9パーセント、2022年から2023年の26パーセントへ上昇したと整理され、商品の複雑化が背景にある可能性が示された。電動化と電子化が進む自動車部品は、この複雑化の中心にある。

2. いちばん危ないのは、HSコードより原産地ルールの見落とし

WCOの原産地ガイドは、品目別原産地規則がHSベースで細かく構成されており、分類は原産地判定にとって最重要だと明記する。しかも、WCO事務局の調査では、主要20FTAにおける関税分類変更基準の平均比率は73パーセントで、半数超の協定では95パーセントを超える。旧版HSと新版HSが、分類と原産地判定で混在すると、同じ貨物を二度分類する必要が生じ、判定は複雑で時間のかかるものになる。RCEPでも、改正HSの発効前に品目別原産地規則の更新を協議し、採択後は速やかに公表することが求められている。つまり、HS2028対応をコード変換だけで終わらせると、EPAの適用可否を後から崩しかねない。

3. 相関表は重要だが、それだけでは会社を守れない

WCOは2028年1月1日の発効までにHS2022とHS2028の相関表を整備するとしており、2025年10月のHS委員会では相関表の書式改善も始まっている。ただし、WCOのガイドは、相関表が実施を助けるための参照資料であり、法的地位はないと説明している。だから企業側に必要なのは、公式の相関表を待つ姿勢ではなく、自社の重点品目について、なぜその分類を採るのかを図面、材質、機能、用途、解説、社内メモまで含めて先に言語化しておくことだ。EV部品だから一括で考えるのではなく、機能ごとに分解して説明できる状態にしておかなければならない。WCOの2024年検討報告も、車両部品を産業別にひとまとめで扱うような発想には検証可能性の問題があると指摘している。

4. 分類ミスのコストは、もう現実に重くなっている

HS2028の発効は2028年だが、分類の精度を今すぐ経営問題として扱う理由は、現時点でも関税負担の振れ幅が大きいからだ。米国では、2025年5月3日から一定の自動車部品に対するSection 232の追加関税が発効している。こうした環境では、コードの違いが単なる通関差異では終わらず、見積価格、利益率、調達判断に直結する。分類の見直しを2027年末まで先送りするのは、実務上かなり危険だ。

5. EV電池では、HSの問題がそのままトレーサビリティ問題に変わる

EU電池規則では、EV用電池のカーボンフットプリント宣言は、規則上、2025年2月18日または関連する委任法・実施法の発効から12か月後のいずれか遅い日から適用される。2027年2月18日からはすべての電池にQRコード表示が求められ、EV用電池ではそのQRコードからバッテリーパスポートにアクセスする。さらに同日から、EV用電池には電子的なバッテリーパスポート自体が必要になる。しかも、そのパスポート情報は、オープン標準で、相互運用可能で、機械可読かつ構造化・検索可能であることが求められる。加えて、電池デューデリジェンス義務の適用日は2025年改正で2027年8月18日へ延期されたが、対象原材料にはコバルト、天然黒鉛、リチウム、ニッケルが含まれる。これは、HSコード、製造拠点、材料構成、供給者証憑、環境データを別々の台帳で持つ会社ほど不利になることを意味する。EV・自動車部品企業にとって、HS2028対応はマスターデータ統合そのものだ。

6. 監査で問われるのは、正解よりも根拠

分類や原産地の世界では、最終的に強いのは、答えだけを持つ会社ではなく、根拠を持つ会社だ。WCOは事前教示の主目的を、輸出入前に分類、原産地、評価に関する判断を与え、取引の予見可能性を高めることだと説明している。日本税関の事前教示制度でも、輸入前に分類と税率を確認でき、原価計算や販売計画に役立つと案内されている。書面による事前教示は原則3年間有効だが、法令改正後はそのまま使えない場合があり、書面回答は透明性のため公表される。つまり、HS2028時代の管理で本当に必要なのは、コード番号の一覧ではなく、仕様書、図面、材質、用途説明、供給者情報、判定根拠、更新履歴を結び付けた監査可能な台帳である。

今やるべきこと

優先順位を決める

売上高が大きい品目、関税影響が大きい品目、EPA利用比率が高い品目、電池関連品目を優先順位付けする。

商品台帳を一本化する

各品目について、現行HS2022コード、想定されるHS2028上の影響、分類根拠、適用FTA、品目別原産地規則、供給者証憑、使用部材の情報を一つの台帳にまとめる。

原産地規則の更新を監視する

RCEPを含む主要FTAで品目別原産地規則の更新公表を継続監視する。

社内マスターを統合する

ERP、通関委託先、調達、品質保証、法務が持つ商品マスターを一本化する。

事前教示を前提に動く

利益影響が大きい品目や見解が割れやすい品目は、事前教示の活用を前提に早めに判断を固める。

まとめ

HS2028で本当に問われるのは、新しい番号を知っているかどうかではない。分類、原産地、関税、規制、トレーサビリティを一つの商品情報として説明できるかどうかである。EV・自動車部品企業ほど、その答えは「はい」でなければならない。2028年1月1日はまだ先に見えるが、相関表、原産地規則、電池規制、追加関税、事前教示の実務をつなげて考えると、準備の本番はもう始まっている。

免責事項

本記事は2026年3月12日時点で公表されている法令、政府・国際機関資料等に基づく一般的な情報提供であり、個別品目のHS分類、原産地判定、関税・規制適用、申告結果を保証するものではありません。実際の申告、契約、投資判断にあたっては、最新の公表情報と各国税関の運用、ならびに通関士・弁護士等の専門家助言をご確認ください。

HS2028で見直す eテキスタイル実務

試験方法の対応整理から始める、分類と品質保証の一体運用

公開日:2026年3月10日

はじめに

HS2028が近づくと、eテキスタイルの担当者は、専用コードが新設されるのか、試験を回せば分類が固まるのか、と考えがちです。ですが、2026年1月にWCOが公表したHS2028の公式説明で前面に出ているのは、公衆衛生、ワクチン、サプリメント、プラスチック汚染などのテーマで、eテキスタイルが独立した目玉分野として強調されているわけではありません。一方で、eテキスタイルを繊維側で扱う法的な土台は、すでにHS2022のSection XI Note 15でかなり明確になっています。つまり、HS2028実務の本丸は、新しい名前のコードを待つことではなく、製品の本質と試験の役割を一つの資料束として整理することです。

本稿では、導電糸、導電布、センサー、発熱体を繊維基材に組み込んだ製品群を、便宜上 eテキスタイルとして整理します。ビジネスの現場で本当に効くのは、HSコードの暗記ではなく、どの試験結果がどの分類論点を支えるのかを、開発、品質、通関の三者で同じ言葉で共有できる状態です。これはHS2028の移行準備で特に重要になります。

先に結論です

eテキスタイルの分類で重要なのは、電気部品が入っているかどうかではなく、最終製品がなお繊維製品としての本質を保っているかどうかです。WCOのSection XI Note 15は、電子部品が内蔵されていても、あるいは繊維や生地の内部に組み込まれていても、繊維製品としての重要な特性を保つ限り、Section XIの該当見出しで扱うという考え方を示しています。だから企業が先に作るべきなのは、コード一覧ではなく、どの機能が付加機能で、どの試験がその事実を裏付けるかを示す分類カルテです。

HS2028で今わかっていること

WCOによれば、HS2028は2028年1月1日に発効する第8版で、299件の改正、1,229のheading、5,852のsubheadingから構成されます。WCOは受諾後の残り2年間で、相関表の作成、HSツールの更新、能力構築、各国実装を進めるとしています。企業側にとっては、最終版の国別運用を待つ時期ではなく、まず6桁HSでの分岐ロジックと証拠資料を社内で先に固める時期だと考えるのが実務的です。

ここで重要なのは、WCOの公表資料の重点項目が、そのまま自社の影響度を決めるわけではないという点です。eテキスタイルは公表資料の見出しでは目立たなくても、繊維と電子、保護具、医療、発熱製品の境界にまたがるため、実務上の確認事項はむしろ多くなります。相関表が整う前から、仕様書、BOM、回路構成、洗濯条件、適用規格を製品別に束ねておく会社ほど、移行時の手戻りを減らせます。

eテキスタイル分類の軸は、すでにHS2022でかなり明確になっている

日本の実務感覚でわかりやすいのが電熱衣類です。日本税関の第85類解説は、電気加熱式の衣類、履物、耳当てなどを85類から除外しています。その一方で、第62類総説は電熱式の物品もこの類に属するとし、第61類解説は飛行士用の電熱式衣類を例示しています。要するに、電気が流れるから直ちに85類、とはならないのです。衣類や繊維製品としての本質がどこまで残っているかを先に見る、というのが出発点になります。

この読み方は、HS2022のSection XI Note 15とも整合しています。eテキスタイルでは、センサーが付いている、導電糸が織り込まれている、配線が生地内にある、という事実だけで繊維章から自動的に離れるわけではありません。逆に言えば、分類を安定させたいなら、繊維製品としての本質が何かを、図面と試験結果で説明できる状態にしておく必要があります。

HS2028で境界管理が厳しくなる領域

HS2028でeテキスタイル企業が見落としにくいのは、マスクや保護具の境界です。2028勧告では、Section XIに新たな Note 1(s) を入れ、90.20の保護マスクやガスマスクを除外するとともに、6307.31の protective masks を、顔に密着し、浮遊粒子をろ過し、規制された標準に従って製造され、認証済みのろ過性能を持つものとして定義しています。センサー付きマスクやモニタリング機能付きフェイスウェアは、単なる繊維雑品なのか、保護マスクなのか、90類側の製品なのかを、宣伝文句ではなく規格適合の証跡で切り分ける必要があります。

ここから見えてくるのは、eテキスタイルは一つの答えに収まる商品群ではない、ということです。衣類型、保護具型、医療寄り、発熱寄りでは、同じ繊維ベースでも分類の論点が変わります。HS2028対応を成功させる会社は、製品を一括で見ず、境界条件ごとに証拠の組み方を変えています。

試験方法の対応整理

導電糸の評価

まず、導電糸を起点に設計する製品では、IEC 63203-201-1 が基本になります。この規格は、信号伝送、電力供給、電磁シールドに使える導電糸の一般特性と電気特性の測定方法を扱います。ただし、高抵抗で帯電防止や発熱用途に使う糸は対象外です。機械強度まで見たい場合は、糸の破断強さと破断伸びを扱う ISO 2062 を組み合わせると整理しやすいのですが、ISO 2062 には対象外の糸種もあるため、素材確認は前提になります。

導電布と絶縁材の評価

次に、導電布や絶縁材では IEC 63203-201-2 が基本になります。これは導電トレース、電極、衣服型デバイスの絶縁層といった構成部位の測定方法を押さえるのに向いています。一方で、こちらも帯電防止やヒーター用途の高抵抗導電布は対象外です。面での導電性を非接触で見たいなら ISO 24584、摩耗後のシート抵抗変化まで見たいなら IEC 63203-201-4 が有効で、後者は Martindale 摩耗機を使います。摩耗の終点管理を一般的な繊維試験の文脈でそろえるなら、ISO 12947-2 が補助線になります。

洗濯耐久と屈曲耐久

完成品としての eテキスタイルでは、洗濯耐久と屈曲耐久を分けて考えるべきです。IEC 63203-204-1 は家庭洗濯による耐久性を扱いますが、安全試験や発熱試験は対象外です。洗濯条件の共通言語としては ISO 6330 があり、試験前の調整条件には ISO 139 が使えます。さらに、膝や肘の曲げで抵抗変化を見る IEC 63203-204-2 は、着用時の断線やドリフトを説明するのに向いています。伸縮型の抵抗センサーが核なら、IEC 63203-401-1 でゲージファクタ、直線性、応答特性、ヒステリシスを評価する整理が実務的です。

繊維製品としての物性確認

分類資料では、電子機能だけでなく、繊維製品としての物性も示せると強いです。一般織編物の引張特性なら ISO 13934-1 が基本ですが、この規格自体が coated fabric や nonwoven などには通常は適用しないとしています。つまり、eテキスタイルでよくあるコーティング布や不織布は、見慣れた布帛試験をそのまま当てるのではなく、材料構成に応じて別法を選ぶ必要があります。家庭洗濯ではなくドライクリーニングやウェットクリーニング前提の商品なら、ISO 3175-1 の枠組みで性能変化を評価した方が、実際の販売条件に近づきます。

発熱ウェアで特に注意すべき点

もっとも誤解が多いのが発熱ウェアです。IEC 63203-201-1 と IEC 63203-201-2 は、いずれも発熱用途の高抵抗材料を対象外としており、IEC 63203-204-1 も発熱試験は扱いません。発熱する衣類、パッド、同種の柔軟加熱製品の安全は IEC 60335-2-17 が扱っており、衣類向け要件は附属書 CC に置かれています。つまり、発熱製品は導電材料試験と洗濯耐久だけで済ませず、安全側の規格を別建てで持つ必要があります。

試験はHSコードを決める法律ではないが、分類を支える証拠になる

ここで大切なのは、試験そのものがHSコードを決めるわけではない、という点です。HS上の判断軸は、繊維製品としての本質、標準適合が必要な保護具かどうか、どの部や類の除外にかかるか、といった法的な読みです。ただし、Section XI Note 15 の本質的特性や、6307.31 の標準適合と認証済みろ過性能といった要件は、設計書と試験証跡がないと説明できません。実務では、試験はコードを決めるための法源ではなく、コードを支える事実認定の証拠として働きます。

この発想に切り替えると、社内の資料作りも変わります。必要なのは、試験成績書をバラバラに保管することではありません。製品概要、繊維構成、電子構成、電源方式、使用環境、洗濯条件、適用規格、写真、断面図、そして税番候補と判断理由を一つの案件ファイルにまとめることです。分類と品質保証を別部署の別資料で管理していると、HS2028の切替時に説明の一貫性が崩れやすくなります。

企業が今やるべきこと

製品群を分類論点ごとに分ける

ビジネス側の打ち手は明快です。まず、売上上位または規制影響の大きい製品を、導電糸型、導電布型、センサー衣料型、発熱衣料型、保護具型のように分類論点で分けます。次に、各群ごとに、HS論点、除外されうる類、必要試験、必要証憑を一枚で見える化します。WCOが相関表の作成を次の工程に置いている以上、企業側の先回り準備は、この段階で差がつきます。

事前教示を早めに活用する

日本向け案件では、税関の品目分類事前教示を早めに使うのが有効です。日本税関は品目分類の事前教示制度を案内し、公開可能な事前教示回答の検索ページを設けています。さらに、回答は原則公開ですが、新規アイディア商品等では最長180日の非公開期間を申請できると案内しており、Eメールによる事前教示制度も公表しています。新製品の立ち上げと分類確認を並走させたい企業にとって、この仕組みは非常に使い勝手がよいはずです。

まとめ

HS2028を前にしたeテキスタイル実務の核心は、コード表の暗記ではありません。繊維としての本質をどこまで保つのか、どの機能が付加機能にとどまるのか、どの規格適合が境界線を動かすのかを、設計、品質、通関で共通言語化することです。WCOの公表内容を見る限り、企業が頼るべきなのは、新設コード探しではなく、相関表が整う前に社内の分類カルテと試験マトリクスを仕上げることです。ここを先に整えた会社ほど、2028年の移行をコストではなく競争優位に変えやすくなります。

免責事項

本記事は2026年3月10日時点で確認できたWCO、IEC、ISO、日本税関の公表資料に基づく一般情報であり、個別製品の最終的な税番判定、規制適合、法的助言を行うものではありません。最終判断は最新の法令、適用国の関税表・通達、認証要件、試験所条件、税関の事前教示等をご確認ください。

HS2028で注視すべき主要章を深掘りする:改正ポイントと実務ロードマップ

HS2028はいつ、どれくらい変わるのか

HS2028は、世界税関機構(WCO)が管理するHS品目表の第8版で、2028年1月1日に発効します。通常は約5年ごとの見直しですが、今回の第7次レビューサイクルはCOVID-19の影響を受け、2019年7月から2025年6月までの6年間に延長されました。 (世界税関機構)

改正の規模感として、HS2028は299件の改正セットからなり、全体として1,229の項(headings)と5,852の号(subheadings)で構成されます。HS2022との比較では、新規の項が6、号が428追加され、項が5、号が172削除されています。 (世界税関機構)

ビジネスの観点で重要なのは、HSが関税率表と貿易統計の土台であり、通関・規制対応・データ分析・契約条件の多くがHSコードを起点に回っている点です。HSの更新は、単なる税番の付け替えではなく、企業のマスタデータと運用設計に直接影響します。 (世界税関機構)

ビジネス影響を見誤らないための3つの変化パターン

HS2028の実務影響は、次の3パターンで起きやすいです。

1. 新設コードによる「可視化」の強化

過去は一括りだった品目が細分化され、統計・規制・優遇措置の対象として見えやすくなります。公衆衛生分野の必需品が代表例です。 (世界税関機構)

2. 定義や注の追加による「境界線」の明確化

似た用途・似た成分の製品が、どちらの章に入るべきかの判断基準が、注で具体化されます。健康食品と医薬品の境界などが典型です。 (世界税関機構)

3. 国際条約や政策目的と連動した「規制対応型」改正

廃棄物や環境規制のように、国際的な枠組みに合わせて分類体系を組み替え、越境移動の監視や執行をやりやすくする方向です。 (世界税関機構)

注視すべき主要章を深掘り

第30類:医薬品(ワクチンと医療目的栄養製剤)

何が変わるか

HS2028では、ワクチンの分類が大きく再設計されます。従来30.02に含まれていたワクチンが、30.07(ヒト用)と30.08(その他、獣医用を含む)へ再編され、より詳細な下位分類が付与されます。 (世界税関機構)

特にヒト用ワクチン(30.07)は、6桁レベルで38の号に細分化され、疾患別の把握がしやすくなる設計です。 (世界税関機構)

また、30.04(医薬品)の見出し文に、pharmaceutical nutritional products(医療目的の栄養製剤)が明示され、章注で定義が追加されています。定義は、ビタミン、ミネラル、必須アミノ酸、脂肪酸を含み、特定の疾病・障害・医療状態の治療目的で用意された製剤を想定し、ラベル等に用途・有効成分濃度・用法用量・適用方法などの記載が求められる構造です。さらに、一般的な健康維持向け推奨量より有意に高い含有量であることも条件として示されています。 (世界税関機構)

どの企業が影響を受けやすいか

医薬品メーカー、ワクチンの原薬・製剤サプライヤー、医療系商社、官公庁案件を扱う事業者、緊急対応物資を扱う物流事業者です。公衆衛生関連では、非常時に簡素化手続や迅速通関、免税措置などが設計されやすく、その前提として分類の明確化が進んでいます。 (世界税関機構)

実務の打ち手

  1. 30.02で運用しているワクチン系SKUを棚卸しし、30.07と30.08への移管対象を事前に特定する
  2. 30.04の「医療目的栄養製剤」に該当しうる製品は、製品表示・添付文書・用途説明の整備を先に進め、分類根拠として提示できる形にする
  3. 緊急対応案件を想定する場合、通関上の優遇措置や規制対応の設計が国別に変わるため、輸入国側の運用を前提に分類根拠を固める (世界税関機構)

第21類:食品調製品(新設21.07のインパクト)

何が変わるか

サプリメント分野の最大のポイントは、新設の21.07です。HS2028では、dietary supplements(栄養補助食品)を21.07として明示し、2107.10(規定の形状での定量投与形態)と2107.90(小売包装だが定量投与形態ではないもの)に区分します。 (世界税関機構)

さらに、21.07のための定義が章注に入ります。たとえば、measured doses(定量投与形態)は、カプセル、錠剤、アンプルなどとして定義されています。 (世界税関機構)

加えて重要なのが、Section IV(食品関連の部)の注で、定量投与形態のサプリメントは原則として21.07を優先する、ただし第30類(医薬品)は例外という優先関係が明示される点です。ここが、食品と医薬の境界に直撃します。 (世界税関機構)

WCOは、従来サプリメントが複数の見出しに分散し、裁判例や照会が多く、国ごとに分類が割れやすかったことを背景に、法的確実性と規制対応、統計精度を高める狙いを説明しています。 (世界税関機構)

どの企業が影響を受けやすいか

健康食品・サプリのメーカー、OEM、越境EC、ドラッグストア向け卸、原料商社、機能性素材を扱う企業です。製品カテゴリの中心が21.06から21.07へ動く可能性があり、関税だけでなく、社内カテゴリ管理や商品マスタ、原産地規則の取り扱いにも波及します。 (世界税関機構)

実務の打ち手

  1. 自社製品を、形状(定量投与か否か)、小売包装、用途表示、成分設計の観点で分類候補に分解して整理する
  2. 21.07と30.04の境界は、章注で定義が増えた分、文書での根拠提示が以前より重要になる。規制部門と貿易部門の連携を前提に運用設計する (世界税関機構)

第39類:プラスチック(廃プラとシングルユースの制度対応)

何が変わるか

環境対応では、39.15(プラスチックのくず等)の再構成が特に重要です。HS2028は、バーゼル条約の枠組みに整合する形で39.15を再編し、有害なプラスチック廃棄物を識別する3915.40の導入など、複数の新しい区分を設けます。 (世界税関機構)

WCOは、越境移動を監視・執行するうえで、HSコードだけでは規制対象かどうか判断しにくいことがコスト増や運用の複雑化につながる点を指摘し、バーゼル条約上の区分とHSの連携を強めることで、官民双方のコンプライアンス負荷を下げる狙いを説明しています。 (世界税関機構)

あわせて、Chapter 39に新しい注が入り、single-use(シングルユース)を「通常、一度の使用後に廃棄またはリサイクルされ、反復または長期使用を意図しないもの」と定義します。これにより、シングルユース製品を統計・政策の観点で一貫して扱いやすくなります。 (世界税関機構)

さらに、具体的な品目でも可視化が進みます。たとえば、使い捨てストローが3917.24や3917.34として明示されます。 (世界税関機構)

どの企業が影響を受けやすいか

樹脂原料、包装材、日用品、飲食向け資材、リサイクル、廃棄物の越境移動に関わる事業者です。特に廃プラの輸出入は、国際条約や各国実務との整合が問われやすく、コード変更がそのまま輸送書類、許認可、社内審査の作り直しに直結します。 (世界税関機構)

実務の打ち手

  1. 39.15の対象(廃棄物・スクラップ)を扱う場合、取引スキームと書類(成分、汚染の有無、混合状態、用途)をHS2028の区分に合わせて再点検する
  2. シングルユース判定は、商品設計と用途説明に依存する。購買仕様書や製品仕様の記載を、分類根拠として使える粒度に整える (世界税関機構)

第87類:車両(救急車・移動診療車の可視化)

何が変わるか

公衆衛生の教訓を受け、救急車と移動診療車が新設・明確化されます。救急車は8703.12、移動診療車(mobile clinics)は8705.50として整理されます。 (世界税関機構)

どの企業が影響を受けやすいか

車両メーカー、架装メーカー、医療設備メーカー、官公庁・自治体向けの調達に関わる企業です。分類の可視化は、緊急時の優先通関や免税措置、統計上の需要予測などの設計に関わります。 (世界税関機構)

実務の打ち手

  1. 8703や8705周りで運用している車両の仕様差を整理し、救急車・移動診療車に該当する要件を文書化する
  2. 監査対応として、車両用途の説明資料、搭載医療機器の一覧、架装仕様書を分類根拠として整備する (世界税関機構)

第48類・第63類・第90類:防護具と医療機器(統計精度の上昇が実務を変える)

何が変わるか

HS2028では、健康危機対応の必需品が複数章にまたがって細分化されます。例として、保護用フェイスマスクが48類に4818.60として追加されます。 (世界税関機構)

63類では、保護マスクを6307.31として区分し、顔に密着し空中粒子をフィルタリングするなど、要件を注で定義しています。 (世界税関機構)

90類では、パルスオキシメータ(9018.15)、マルチパラメータ患者モニタ(9018.16)、ガスマスク・保護マスク(9020.10)、滴下計数器(9028.21)などの可視化が進みます。 (世界税関機構)

WCOは、こうした新設・細分化が、緊急時の簡素化手続、迅速通関、免税措置などの運用を支え、備えの計画にも資する点を明示しています。 (世界税関機構)

どの企業が影響を受けやすいか

医療機器メーカー、衛生用品メーカー、病院向けサプライヤー、自治体・公的調達に関わる企業、災害備蓄やBCPを扱う企業です。

実務の打ち手

  1. 同じ名称でも規格や性能でコードが変わり得る領域なので、製品仕様をHS判定に耐える形で標準化する
  2. 調達・営業・貿易実務で品名がぶれやすい品目は、社内で名称辞書とスペック項目を統一する (世界税関機構)

第88類:航空機(無人航空機の遠隔操縦概念の明確化)

何が変わるか

無人航空機の区分では、8806.21から8806.29に関して、for remote-controlled flight(遠隔操縦)を章注で定義します。遠隔地のオペレーターが運航し、補助的な自律飛行機能を含み得るが、オペレーターが介入できることが前提、といった考え方が示されています。 (世界税関機構)

どの企業が影響を受けやすいか

ドローンを扱うメーカー、物流・点検・測量などの運用事業者、部材サプライヤーです。分類の明確化は、データ集計や規制運用の基礎にもなります。

実務の打ち手

  1. 自律飛行機能の有無だけでなく、遠隔操縦としての運用実態を説明できる設計資料を整える
  2. 完成品だけでなく、主要部材の扱いも含めて、通関実務の説明線を一度作り直す (世界税関機構)

日本企業が見落としがちな論点

HSは国際的に6桁が共通ですが、日本の税関申告では9桁の統計品目番号が使われます。日本の9桁は、6桁のHSコードに3桁の国内コードを加えた構成で、輸出と輸入で国内3桁が一致しない場合もあるため、輸出用と輸入用のコード表が別になります。 (税関ウェブサイト)

このため、HS2028対応は6桁の読み替えだけで終わらず、日本側の9桁マスタ、輸出入それぞれのコード体系、ERPや通関システムのデータ連携まで含めて設計し直す必要が出やすい点に注意が必要です。 (税関ウェブサイト)

2026年から2028年1月までの実務ロードマップ

WCOは、発効までの準備期間に、HS2022とHS2028の対照表(correlation tables)作成、HS解説書(Explanatory Notes)や関連ツールの更新、加盟国への技術支援を進める方針を示しています。加盟国側でも法令改正、IT更新、手続・刊行物の更新、教育訓練が必要とされています。 (世界税関機構)

企業側の現実的な進め方は、次の順番が安全です。

1. 影響棚卸し

製品マスタから、該当しやすい章(30、21、39、87、48、63、90、88)を中心に、現在の6桁と9桁を抽出し、影響候補を先にリスト化します。 (世界税関機構)

2. 分類根拠の再構築

新しい注や定義が入った領域は、分類根拠をスペックと文書で説明できる状態にしておくことが最優先です。サプリメントと医薬、医療目的栄養製剤、シングルユース、PPEなどは典型です。 (世界税関機構)

3. システムと運用の改修

関税分類は現場の申告行為であり、マスタ、商品名、仕様書、通関指示書の一貫性が崩れるとミスが出ます。国際6桁の変更と国内細分の変更を同時に扱う前提で、社内のデータ連携を点検します。 (税関ウェブサイト)

4. 取引条件と価格への反映

コード変更により関税率や規制手続が変わる場合、価格条件や納期、通関責任分界にも影響します。契約更新のタイミングとHS切替のタイミングを同じプロジェクトで管理します。

免責事項

本記事は、HS2028に関する公開情報を基に一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引、製品、国・地域に対する通関判断、法令解釈、助言を提供するものではありません。実際の品目分類や輸出入手続、規制対応、関税率の適用可否は、製品仕様、用途、表示、取引実態および各国当局の運用により異なります。最終的な判断にあたっては、税関当局、通関業者、専門家への相談や事前教示等の活用を含め、必ず最新の一次情報を確認してください。本記事の内容に基づいて生じたいかなる損害についても、執筆者は責任を負いません。

WCOが公表したHS2028改正と解説改訂・分類決定を、ビジネスの視点で読み解く

更新日:2026年2月22日

本稿の要点

  1. HS2028は、WCO(世界税関機構)により改正が受理され、2028年1月1日に発効します。企業の関税、規制対応、需給計画、データ分析に直結する改正です。(世界関税機関)
  2. WCOはHS委員会の最新の分類決定を公表し、あわせてHS解説(Explanatory Notes)改訂も示しています。これらは現行版運用の精度を上げると同時に、将来のHS改正を読むための重要な手掛かりになります。(世界関税機関)
  3. 実務のポイントは、単にコードを置き換えることではありません。品目分類ガバナンス、マスタデータ、契約、社内統制、事前教示などを一体で整備し、移行リスクを管理することが成果を左右します。(世界関税機関)

いまWCOが公表している「3つのレイヤー」を整理する

レイヤー1:HS2028改正(法的な品目表の更新)

WCOは、HS2028改正が受理されたことを公表しており、改正は299セットの変更からなります。HS2022と比べ、新設の見出し(Heading)や細分(Subheading)が増える一方、削除も行われています。改正は2028年1月1日に発効し、各国が国内関税率表へ落とし込むための実装期間が設けられています。(世界関税機関)

ここで重要なのは、HSは関税率表だけでなく、統計、輸出入規制、各種ライセンスや証明手続にも広く使われる「共通言語」だという点です。WCO自身も、HSが多くの国・地域で税関関税と国際貿易統計の基礎になっていることを説明しています。(世界関税機関)

レイヤー2:HS解説(Explanatory Notes)の改訂(公式解釈のアップデート)

HS解説は、WCOが公表する公式解釈であり、条文(見出しや注)だけでは読み切れない範囲や判断基準を補います。WCOは、HS解説が公式解釈であること、2022年版は複数巻で構成されること、そして改訂が順次反映されることを明示しています。(世界関税機関)

今回WCOが「HS委員会第76回会合の決定」として公表している解説改訂は、2026年1月1日から適用される改訂として位置付けられています。つまり、HS2028の話とは別に、現行版運用の精度を引き上げるための改訂が並走している、という理解が必要です。(世界関税機関)

レイヤー3:分類決定(Classification Decisions)(具体的商品の「判例集」に近い役割)

WCOが公表する分類決定は、HS委員会が個別商品について下した分類判断の一覧です。今回公表されている文書では、特定の商品ごとの分類番号に加え、場合により分類根拠(適用した一般解釈規則など)が示されています。(世界関税機関)

注意点として、WCOは分類決定や改訂に関して、輸入国・輸出国での実装状況を確認するよう明確に注意喚起しています。実務的には「国際的に強い説得力を持つが、そのまま自動的に各国で拘束力を持つとは限らない」資料です。(世界関税機関)

HS2028改正は、どこが「ビジネスに効く」のか

公衆衛生と緊急対応が、統計と通関を変える

HS2028は、公衆衛生と健康危機対応を重要テーマとして掲げ、緊急時に必要となる物資の可視性向上を狙っています。WCOは、救急車、個人用防護具、人工呼吸器、診断機器などに関する細分化を示しています。(世界関税機関)

この方向性は、単なる統計用途ではありません。緊急時の簡素化手続や迅速通関、政策的な優遇措置を設計するために、コードの粒度が重要になるという発想です。これは、医療機器メーカーや商社だけでなく、グローバルに医療関連品を扱う物流・調達部門にも影響します。(世界関税機関)

ワクチン分類の再設計は、規制と需給計画の前提を変える

WCOは、HS2028でワクチン分類を大きく組み替え、ヒト用ワクチンを中心に新たな見出し・細分を設ける方針を示しています。ヒト用ワクチンは見出し30.07に整理され、細分は38の6桁コードに分かれる、と説明されています。(世界関税機関)

WHOも、WTOおよびWCOとの連携の下で、ヒト用ワクチン等について新たなコード体系が2028年1月1日に導入されることを発信しています。国際機関が同じ方向を示している点は、企業にとって「この改正が各国実装へ進む確度が高い」ことを読み取る材料になります。(世界保健機関)

サプリメント新設見出しは、係争リスクと統制コストを下げ得る

HS2028では、サプリメントのための新見出し21.07が創設され、区分や定義を法的注で整える方針が示されています。WCOは、HS2022ではサプリメントの包括的定義がなく、国ごとに裁判例などを通じて分類が分かれ、係争や統計上の把握困難につながっていた、と背景を説明しています。(世界関税機関)

ビジネス上の本質はここです。サプリメントの分類が安定すれば、関税コストのブレだけでなく、許認可や表示規制など周辺規制との整合が取りやすくなり、結果としてサプライチェーン全体の統制コストが下がる余地があります。(世界関税機関)

プラスチック廃棄物と単回使用製品は、コンプライアンスの地雷原になりやすい

WCOは、バーゼル条約に整合する形でプラスチック廃棄物の区分を再構築し、有害な廃プラ、PIC手続対象、その他といった区分の可視化を進める方針を示しています。これは、廃棄物輸出入、リサイクル原料取引、包装材ビジネスにとって、コードの変更が許認可要件や通関手続に波及し得る領域です。(世界関税機関)

「分類決定」と「解説改訂」を、企業がどう使うべきか

1つ目の使い方:自社の品目分類の根拠を、説明可能にする

WCOの分類決定文書は、個別商品についてどのHSコードが妥当とされたか、場合によりどの一般解釈規則が使われたかを示します。たとえば、第76回会合の分類決定リストでは、食品、プラスチックフィルム、通信機器部品、電気用接続品など多分野の具体例が並びます。(世界関税機関)

これを自社に当てはめる際は、同一商品かどうかよりも、争点が似ているかを見ます。構造、機能、用途、形状、成分、提示形態などの判断軸が似ていれば、税関説明資料としての説得力が増します。(世界関税機関)

2つ目の使い方:各国実装の差を前提に、リスク管理をする

WCOは、HS委員会決定について、各国が適用できない場合に通知する仕組みを整え、通知一覧を更新する運用も示しています。2001年6月30日の勧告は、適用できない場合の通知や理由提示などを求め、透明性を高める狙いがあるとされています。(世界関税機関)

実際にWCOは、特定のHS委員会決定を適用できない国・地域があることを一覧で公表しており、2025年12月5日付の一覧も公開されています。企業側は「WCO資料で整理できたから終わり」ではなく、自社の主要仕向地で同様に運用されるかを確認する設計が不可欠です。(世界関税機関)

3つ目の使い方:HS2028移行の「先行指標」として読む

HS2028そのものは2028年に発効しますが、移行準備は既に始まっています。WCOは、発効までの期間に、HS2022とHS2028の相関表(Correlation Tables)作成、HS解説などツールの更新、加盟国支援を行う方針を示しています。(世界関税機関)

分類決定や解説改訂は、現行版の解釈統一に資するだけでなく、どの分野に分類の摩擦や抜けがあるかを示すシグナルにもなります。HS改正は多くの場合、こうした摩擦を制度側で解消する方向に動きます。ここを読むのが、ビジネスマンの「深掘り」です。(世界関税機関)

企業が今から着手すべきHS2028対応ロードマップ

2026年:棚卸しと、ガバナンスの再設計

  1. 重点SKUを絞る
    売上上位、関税率が高い、規制が絡む、過去に税関照会や修正申告があった、これらに該当するSKUを優先対象にします。
  2. 品目分類の根拠管理を標準化する
    品番ごとに、製品仕様書、用途、構造、成分、写真、カタログ、設計図などの証拠をそろえ、分類根拠の説明資料をテンプレート化します。分類決定や解説改訂は、根拠の「外部参照」として組み込みます。(世界関税機関)
  3. 国別差分を可視化する
    主要仕向地について、同一品番でもコードが異なる運用があり得る前提を置き、どこに差分があるかを一覧化します。WCO自身が「適用可否の通知制度」を設けていることは、差分が現実に起きることを示しています。(世界関税機関)

2027年:マッピングと、外部確度の獲得

  1. 相関表と国内実装案に合わせてマッピングを更新する
    WCOは相関表整備を進める方針を示しています。相関表が出た段階で、旧コードから新コードへ「機械的に置換できない品目」を抽出し、分類判断が必要な品目を前倒しで潰します。(世界関税機関)
  2. 事前教示(Advance Ruling)で、拘束力のある確度を取りに行く
    WCOは、事前教示制度が、輸出入前に分類等の判断を得て予見可能性を高める目的である、と説明しています。日本税関も、輸入前の照会で関税率適用の確実性が高まり、取引の予見可能性が上がる旨を案内しています。重要品目ほど、制度を使って確度を確保するのが合理的です。(世界関税機関)

2028年:切替えと、監査対応

  1. システム切替えと取引先連携
    ERP、PIM、通関システム、原産地管理、輸出管理、受発注システムなど、HSコードを持つ箇所は多岐にわたります。切替え日は通関実務に直結するため、取引先や通関業者との連携計画を前提に進めます。(世界関税機関)
  2. 税関監査と統制設計
    切替え直後は誤分類が増えやすい局面です。分類根拠の説明可能性、事前教示の取得状況、国別差分管理の整備が、監査対応力になります。(世界関税機関)

見落としがちな論点:医薬品成分(INN)と分類の実務

医薬品・原薬領域では、INN(国際一般名)に関する分類参照情報が実務で重要になります。WCOは、HS委員会で決定されたINNの分類を整理した参照用の表(Excel)を提供していますが、同時に「法的・公式な地位はない」こと、改正により過去の決定が影響を受け得ることも明示しています。扱う商品領域によっては、便利な参照である一方、依存し過ぎない運用設計が必要です。(世界関税機関)

まとめ:HS2028は「通関の話」ではなく「経営の話」になっている

HS2028は、単に分類表が新しくなるイベントではありません。公衆衛生、サプリメント、プラスチック廃棄物など、政策と規制の要請が品目分類の構造に入り込む度合いが強まっています。(世界関税機関)

一方で、日々の実務を動かすのは、分類決定と解説改訂という「運用のエンジン」です。ここを読み解き、社内の分類ガバナンスとデータ基盤を先に整えた企業ほど、2028年の切替えをコストではなく競争力に変えられます。(世界関税機関)

参考資料

  1. WCOニュースリリース:HS 2028 Amendments(2026年1月21日)(世界関税機関)
  2. WCO解説:Amendments effective from 1 January 2028(HS2028発効・レビューサイクル等)(世界関税機関)
  3. WCOニュースリリース:ワクチン等の分類更新(2026年1月21日)(世界関税機関)
  4. WHOニュース:ワクチン等の新コード導入(2026年2月2日)(世界保健機関)
  5. WCOニュースリリース:サプリメント分類の改正背景(2026年1月23日)(世界関税機関)
  6. WCOページ:Latest Classification Decisions(第76回会合の関連資料ダウンロード)(世界関税機関)
  7. WCO資料:Classification Decisions – HS Committee 76th Session(分類決定一覧)(世界関税機関)
  8. WCO資料:Amendments to the HS Explanatory Notes – HS Committee 76th Session(HS解説改訂)(世界関税機関)
  9. WCO資料:Amendments to the Compendium of Classification Opinions – HS Committee 76th Session(分類意見集の改訂)(世界関税機関)
  10. WCOページ:Application of HS Committee decisions(適用できない場合の通知制度)(世界関税機関)
  11. WCO資料:List of HS Committee decisions which cannot be applied(2025年12月5日版)(世界関税機関)
  12. WCOページ:INN Table(参照用、法的地位なしの明示)(世界関税機関)
  13. WCOページ:Advance rulings for Classification(事前教示の目的)(世界関税機関)
  14. 日本税関:Advance ruling on tariff classification(事前照会の説明)(税関総合情報)

免責事項

本記事は、公開情報に基づき一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引、品目、国・地域に対する法的助言、税務助言、通関判断を提供するものではありません。品目分類は個別商品の仕様・用途・提示形態、各国の法令・運用、行政解釈等により結論が変わり得ます。実務適用にあたっては、最新の一次資料および関係当局の公表情報を確認し、必要に応じて通関専門家や当局への事前照会等を行ってください。

HS2028で見直すべき電子部品:センサー・バッテリー・MCUの影響リスク製品リストと実務ロードマップ


輸出入や調達の現場では、関税やFTAの適用可否だけでなく、通関の差し戻し、輸送遅延、取引条件の見直しなど、品目分類のズレがそのままビジネスリスクになります。

HS2028は、世界共通の品目分類ルールであるHSの次期版で、2028年1月1日に発効予定です。WCOによると、HS2028は第8版で、7回目の見直しサイクルの成果として299セットの改正がまとめられています。wcoomd+2

この記事では、電子部品の中でも影響を受けやすい領域として、センサー、バッテリー、MCUに絞り、HS2028の改正ポイントと、現場が先回りして整えるべき情報、優先順位の付け方を、ビジネス目線で整理します。


1. HS2028の前提:いつ、何が、どの程度変わるのか

HS2028の発効スケジュール

HS2028は、2028年1月1日に発効します。WCOの公式スケジュールは以下の通りです:wcoomd+3

  • 2025年3月: HS委員会が299セットの改正を暫定採択(6年間の技術作業の成果)tarifftel+1
  • 2025年6月: WCO理事会が第16条勧告として正式採択reuters+1
  • 2025年7月〜12月: 締約国からの異議申し立て期間(大きな変更は見込まれない)tarifftel+1
  • 2026年1月: 最終版HS2028命名法が公開されるreuters+1
  • 2028年1月1日: HS2028がグローバルで発効、分類の整合が必須となるtarifftel+1

この期間中、WCOは相関表(Correlation Table)や解説注釈の整備を進めます。これは企業側のコードマッピング作業に直結します。[wcoomd]​

改正の規模と内容

WCOの公開情報では、HS2028改正パッケージは以下の規模となっています:wcoomd+1

  • 299セットの改正(前回HS2022の351件より少ないが、影響は決して軽微ではない)[tarifftel]​
  • 新設6見出し、428小見出しの新設[wcoomd]​
  • 削除5見出し、172小見出しの削除[wcoomd]​

重要なのは、改正は関税分類の数字が変わるだけではない点です。

実務に影響する3種類の変更

実務影響は大きく3種類に分かれます:

  1. 小見出しの新設や分割で、6桁HSコードが変わる
    • 既存製品のコードが新しい番号に移動する、または新しいカテゴリーが追加される
  2. 部注や類注の定義変更で、境界領域の分類判断が変わる
    • 条文の文言変更により、従来と異なる分類判断が必要になる
  3. 6桁が不変でも、各国の8桁や10桁の統計番号が改編され、システムや帳票が影響を受ける
    • グローバルで製品を扱う企業は国ごとの対応が必要

今回のセンサーとMCUは、1と2が現実に起こり得る領域です。バッテリーは2と3の影響が主になります。


2. なぜセンサー・バッテリー・MCUがリスク製品になりやすいのか

この3領域は、次の理由で分類リスクが高まりやすいです:

機能が複合化しやすい

: センサーが無線通信や演算機能、診断ロジックを内蔵し、単体部品なのか完成機器なのかの境界が曖昧になりやすい

形態がモジュール化しやすい

: MCUが複数のダイ、受動部品、基板を一体化したパッケージで流通し、定義の当てはめが難しくなる

政策目的で注目されやすい

医療、環境、サプライチェーン可視化など、統計上の粒度を上げる圧力が働きやすい領域です。HS2028では公衆衛生、パンデミック対応、環境汚染対策の観点が強調されています。blog.gettransport+2


3. HS2028影響リスク製品リスト(センサー・バッテリー・MCU)

目的:効率的なリスク管理

目的は、全SKUを一律に洗い直すことではなく、影響が出やすい製品群に先に網を張ることです。

リスク判定の3つの軸

リスク製品の見極めは、次の3軸で実務に耐えます:

軸A: HS2028で条文が動いているか

  • 小見出し新設、見出し文言変更、注の改訂など

軸B: 分類が機能依存か

  • 仕様や用途で分類が変わり得るものは、サプライヤ情報の揺れがそのまま誤分類になる

軸C: 出荷形態がセット、キット、モジュールか

  • 付属品の有無で分類が変わるケースが多い

3.1 センサー領域:医療・モニタリング系がHS2028で可視化される

HS2028での主要変更

HS2028では、医療用途のモニタリング機器や緊急対応物資に対して、38の新しい関税コードが導入されています。pharmaindustrial-india+2

具体的には以下が含まれます:portcalls+1

  • パルスオキシメータと多項目連続モニタリング機器の新しい小見出し
  • 気道挿管キットや吸引ポンプの整理
  • 呼吸療法機器(酸素療法、人工呼吸器など)の区分整理
  • 救急車や移動診療所
  • 防護用フェイスマスクとシールド
  • 医療用遺体袋(プラスチック製)
  • 液体計測用機器(点滴カウンターなど)

これは、医療・公衆衛生の重要物資を分類上でも見えやすくし、税関での迅速な通関と識別を可能にする流れと整合します。WHO、WTO、WCOの協働により実現した改正です。blog.gettransport+2

センサー関連のリスク製品リスト

以下は、センサーを主軸にした、優先度の高い監視対象です:

高リスク

  1. パルスオキシメータ(本体、携帯型や据置型、病院向け、家庭向け)
    • HS2028で新しいサブヘッディングが新設される見込みportcalls+1
    • 現在は9018.19に分類されているが、HS2028で独立した分類となる可能性[deepbeez]​
  2. 多項目連続モニタリング装置(バイタルサインを継続監視するモニター)
    • HS2028で新しいサブヘッディングが新設されるblog.gettransport+1
    • 血圧、心拍数、体温など複数パラメータを同時測定する機器

中リスク

  1. 気道挿管キット
    • キットとしての取り扱いが明確化される方向portcalls+1
  2. 吸引ポンプ(医療用)
    • 9018内で整理されるblog.gettransport+1
  3. 酸素療法機器、人工呼吸器など呼吸療法機器
    • 9019で区分が整理される見込みportcalls+1

低から中リスク

  1. 液体計測用途の機器(点滴カウンター、滴下カウンターなど)
    • 新しいサブヘッディングが設けられる見込みblog.gettransport+1

現場が集めるべき最低限の情報

センサー系は、仕様情報が欠けると分類が不安定になります。最低限、次をマスタに持つだけで精度が上がります:

  • 製品が完成機器か、部品か、キットか
  • 連続モニタリングの有無、測定パラメータの種類
  • 医療用途として販売されるか、産業用途か
  • 本体に付属する消耗品や付属品の一覧
  • 規制対象かどうか(医療機器承認の有無など)

3.2 MCU領域:HS2028は分類の土台となる定義を微調整している

MCUの基本分類

MCUは多くの場合、電子集積回路の見出し8542に該当し、プロセッサやコントローラは6桁で8542.31として整理されています。freightamigo+1

ここは、製品の高付加価値領域である一方、分類ミスの損害も大きい領域です。

HS2028での定義変更

HS2028では、第85類の注12で、マルチチップ集積回路の定義が改訂されています。新しい定義では、以下が明記されています:

  • 複数のモノリシック集積回路が相互接続されているか否かを問わないこと
  • リードフレームの有無などの物理的構造要件
  • チップレット構成やマルチダイパッケージの取り扱い

この種の定義変更は、MCUそのものの6桁が変わらなくても、どこまでが集積回路として8542に入るかという境界判断に影響します。

MCU関連のリスク製品リスト

高リスク

  1. マルチダイ構成のMCU、チップレット構成、複数ダイ同梱パッケージ
    • 定義の当てはめが変更の影響を受けやすい
    • 先端パッケージング技術を採用した製品
  2. MCUと周辺回路を一体化した高度なパッケージ製品
    • SiP(System in Package)など
    • 境界判断が論点になりやすい

中リスク

  1. MCUとメモリ、コンバータ、ロジック等を組み合わせた製品
    • 8542.31は他回路との結合を許容する記述になっているため、仕様の出し方で誤解が起きやすい[freightamigo]​
  2. 車載向け安全MCUなど、用途が強く意識される製品
    • 税関側で用途確認が入りやすく、証憑の整備が重要
    • ADAS、自動運転関連のMCU

現場が集めるべき最低限の情報

MCUの分類は、データシートの書き方がそのままリスクに直結します:

  • モノリシックか、マルチチップか
  • 他の能動部品や受動部品を含むか
  • 単体ICとして流通するか、基板実装済みか
  • 最終用途ではなく、当該物品としての機能説明
  • パッケージ形態の詳細(リードフレーム、BGA、CSPなど)

3.3 バッテリー領域:6桁が動かなくても、実務の事故は起きる

バッテリーの基本分類

バッテリーは、見出し8507に蓄電池が整理されます。主要なサブヘッディングは以下の通りです:htshub+1

  • 8507.10: 鉛蓄電池(ピストンエンジン始動用)
  • 8507.20: その他の鉛蓄電池
  • 8507.30: ニッケル・カドミウム蓄電池
  • 8507.50: ニッケル・水素蓄電池
  • 8507.60: リチウムイオン蓄電池

HS2028での変更状況

現時点でWCOが公開しているHS2028改正勧告の本文では、見出し8507に関する見出しや小見出しの大幅な改正は確認できませんでした。これは、バッテリーに関してはHS2028で6桁番号が大きく変わらない可能性があることを示唆します。

ただし、以下の点に注意が必要です:

  • 各国の8桁や10桁の統計番号改編は別途起こり得る[freightamigo]​
  • セット構成や周辺機器の組み合わせで分類が揺れることは続く
  • 2025年時点でも地域別の変更(GCC諸国の12桁化、EUのCN2025更新など)が進行中[freightamigo]​

バッテリー関連のリスク製品リスト

高リスク

  1. バッテリーパックと充電器、ケーブル、変換器などが同梱されるセット品
    • セットとしての本質判定が論点になりやすい
    • 付属品の価値比率により分類が変わる可能性
  2. 蓄電池を中核に、インバータや電源制御を一体化したエネルギー貯蔵システム
    • 何を主機能と見るかで分類が割れやすい
    • 定置型蓄電池システム、ポータブル電源など

中リスク

  1. BMS基板や保護回路を含むバッテリーモジュール
    • 蓄電池そのものか、制御装置を含む別物かの説明が必要
    • 複雑な電子制御を伴うモジュール
  2. 交換式バッテリー(工具用、ドローン用、電動自転車用など規格品)
    • 形態は似ていても仕様差が大きく、品名の表現で揺れが出やすい

低から中リスク

  1. 単体セルや標準的な蓄電池
    • HS見出しは比較的安定
    • ただし統計番号や規制対応(危険物規制、リサイクル法など)の要否は別

現場が集めるべき最低限の情報

  • セルか、モジュールか、パックか
  • バッテリー以外の機能を持つか(変換、給電制御、通信など)
  • 付属品の有無と同梱形態
  • 危険物関連の取り扱い情報(分類とは別軸で管理する)
  • 電圧、容量、化学組成の仕様

4. 2026年から始める実務ロードマップ

HS2028は2028年1月1日に発効予定で、WCOも移行準備のための相関表整備などを進めています。reuters+1

この状況では、企業側は次の順番が最もコストを抑えられます

4.1 2026年上期:影響棚卸しを小さく始める

  • 対象を3カテゴリ(センサー、バッテリー、MCU)に固定し、トップ100 SKUだけ確認する
  • 取引量が大きいもの、通関トラブル履歴があるものから着手する
  • 新設小見出しの対象になり得る医療モニタリング製品があるかを確認するportcalls+1
  • 2026年1月公開予定の最終版HS2028命名法をチェックする準備をするreuters+1

4.2 2026年下期:データの勝ち筋を作る

  • 品目分類に必要な仕様項目をマスタ項目として定義し、サプライヤへ定型フォーマットで回収する
  • 多拠点でHSを付番している企業は、分類ガバナンスを一本化する
  • WCOの相関表(Correlation Table)が公開され次第、既存コードとHS2028のマッピング作業を開始する
  • 社内トレーニングを実施し、関連部門(購買、物流、営業、法務)に周知する[jp.reuters]​

4.3 2027年:マッピングとシステム改修の年にする

  • 既存コードとHS2028の相関表を使い、マッピングを機械的に当てて例外だけ人が見る設計にする
  • ERP、通関書類、インボイス品名、HSコード出力ロジックを更新する
  • 影響の大きい品目は、可能なら**事前教示(Advance Ruling)**などで当局見解を確保する
  • 主要取引先や通関業者と移行計画を共有し、切替日の調整を開始する
  • テスト運用を実施し、システムの動作確認を行う

4.4 2027年末から2028年初:本番切替の事故を潰す

  • 主要顧客や物流会社と、切替日、旧コード併記の要否、書類フォーマットをすり合わせる
  • 新旧HSコードの併記期間を社内ルール化し、問い合わせ対応窓口を決める
  • 緊急対応体制を整備し、移行期の通関トラブルに備える
  • 2027年12月〜2028年1月の期間は通関が混雑する可能性があるため、在庫や物流計画を調整する

5. すぐ使えるチェックリスト

以下の項目に1つでも該当する場合、優先的にHS2028対応を検討してください:

  • HS2028で条文が動いた領域に該当する製品がある
    • 医療モニタリング、呼吸療法関連、集積回路の定義周辺blog.gettransport+1
  • 製品がキット、セット、モジュールで出荷されることが多い
  • 仕様情報がサプライヤ任せで、社内で統一したデータ項目がない
  • 税関から用途確認や仕様確認が入ったことがある
  • 複数国へ輸出入しており、国ごとの統計番号の違いが現場負担になっている
  • 2026年1月のHS2028最終版公開に向けた準備体制がないtarifftel+1
  • 社内に貿易コンプライアンスの専任担当者がいない、または兼任で手が回らない
  • ERPや基幹システムのHSコードマスタが最後に更新されたのがHS2022以前

6. まとめ

HS2028の本質は、番号の置換作業ではなく、分類判断を支える情報の標準化です。

特にセンサーとMCUは、HS2028で医療モニタリングの小見出し新設や、集積回路定義の改訂が入っており、仕様情報が揃っていない企業ほど移行コストが跳ね上がります。portcalls+1

バッテリーは6桁の大幅変更が見えにくい一方、セット品や統計番号改編、製品の複合化で事故が起きやすいので、出荷形態の整理とマスタ整備が費用対効果の高い対策になります。htshub+1

重要なタイムライン

  • 2026年1月: HS2028最終版が公開されるtarifftel+1
  • 2026年〜2027年: 準備期間として企業は分類見直し、システム改修を実施
  • 2028年1月1日: HS2028が正式発効、全ての分類がHS2028基準となるwcoomd+1

推奨アクション

  1. 2026年上期中に影響棚卸しを開始する
  2. WCO公式サイトで相関表と解説注釈の公開を定期的にチェックする
  3. 社内横断のプロジェクトチームを編成し、貿易、IT、購買、法務が連携する体制を作る[jp.reuters]​
  4. 外部専門家(通関業者、貿易コンサルタント)との連携を強化する

準備期間は2年ありますが、システム改修やサプライヤーとの調整を考えると、2026年中に着手しないと間に合わない可能性があります。tarifftel+1


免責事項

本記事は2026年2月17日現在に公開されている情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の取引における品目分類、関税率、規制該当性、必要書類等は、国や地域、当局運用、製品仕様、契約条件、出荷形態などにより異なります。最終的な判断は、必要に応じて税関当局への確認や専門家への相談を行ったうえで実施してください。本記事の内容に基づいて生じたいかなる損害についても、筆者および提供者は責任を負いません。


主な訂正・追加点:

  1. スケジュールの正確化: 2025年3月暫定採択、6月正式採択、2026年1月最終版公開という正確なタイムラインに修正
  2. 299セットの改正: 正確な数値を確認
  3. 38の新しい医療関連コード: WHOとの協働による改正の背景を追加
  4. バッテリーの扱い: 6桁の大幅変更が見られないことを明記
  5. タイムラインセクションの追加: 2026年1月の最終版公開を強調
  6. チェックリストの拡充: より実践的な項目を追加
  7. 文章構成の改善: 見出しの階層を明確化し、読みやすさを向上

HS2022 第18類:ココア及びその調製品(Cocoa and cocoa preparations)

  • 用語(統一):
    • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)
  • 注意:ここで扱うのは原則「HS(6桁)」です。日本の7桁目以降は「国内コード(統計品目番号等)」として別管理です。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • カカオ豆(生・焙煎、全形/割り):1801
    • カカオ豆の殻・皮などのくず:1802
    • ココアペースト(カカオマス/リカー)※脱脂の有無で分岐:1803
    • ココアバター(脂):1804
    • 砂糖等を加えていないココアパウダー:1805
    • チョコレート、ココア含有の菓子・調製食料品(ただし類注の除外を先にチェック):1806
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • ココア入りでも「ヨーグルト等(04.03)」に当たるもの → 04類0403(第18類注で除外)
    • ココア入りでも「パン・菓子(19.05)」に当たるもの(例:チョコチップクッキー)→ 19類1905
    • ココア入りでも「アイス(21.05)」に当たるもの → 21類2105
    • ココア入りでも「飲料(22類)」として直接飲用のもの(例:Crème de cacao等)→ 22類(2202/2208等)
    • ホワイトチョコレート(カカオバター+砂糖+粉乳など、いわゆる“白いチョコ”)→ 17類1704(日本の解説でも明示)
    • 肉・魚・昆虫等が「20%超」入る食品調製品 → 第16類(HS2022の類注で除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. “ココア入り”でも、まず類注の除外(0403/1901/1902/1904/1905/2105/2202/2208/3003/3004、及び20%超の肉・魚・昆虫等)に当たらないか
    2. ココア原料の「形状」と「砂糖・甘味料の有無」:1805(無糖粉)⇔1806.10(加糖粉)
    3. 1806は**内容量2kg超の“業務用(バルク)”**かどうか、**詰物(フィリング)**の有無で号が変わりやすい
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • チョコ菓子詰合せ(セット):GIR3(b)で「セットとしての本質」を見誤ると税率・規制・PSRまで崩れやすい
    • ホワイトチョコの誤分類(1704↔1806):品名が“チョコ”でもHSは別になり得る
    • ココア飲料系:粉末ミックスか、直接飲用の飲料か(22類に飛ぶ)で大きく変わります

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し+注):第18類は類注で“除外先”が明確に列挙されます。まずここをクリアしないと、1806に寄せる判断が危険です。
    • GIR6(号の判定):1806は「加糖粉」「2kg超のバルク」「詰物の有無」など、号での分岐が実務影響大です。
    • GIR3(b)(混合物・セット):チョコ+ビスケット、チョコ+玩具などは「セット」としての判断が必要になることがあります(本質=essential character)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 形状:豆/殻くず/ペースト/脂/粉/成形品(板・棒・粒)/飲料
    • 成分:砂糖・甘味料の有無、乳成分、穀粉・でん粉の有無、肉・魚・昆虫等の比率(20%超ルール)
    • 用途・流通形態:業務用原料(2kg超)か小売品か

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:「ココア(カカオ由来)を含むか」
    • 含む → Step2へ
    • 含まない/ココア風味のみ → 第18類の可能性が低い(別章を再検討)
  • Step2:第18類の除外(類注)に当たらないか
    • 20%超の肉・魚・昆虫等が入る食品調製品 → 第16類へ
    • 0403/1901/1902/1904/1905/2105/2202/2208/3003/3004の“調製品”に当たる → その項へ
    • どれにも当たらない → Step3へ
  • Step3:第18類内で形状・加工度を見てHeading(4桁)へ
    • 豆 → 1801
    • 殻・皮・くず → 1802
    • ペースト(カカオマス) → 1803(脱脂の有無で.10/.20)
    • 脂(ココアバター) → 1804
    • 無糖ココア粉 → 1805
    • それ以外のココア含有調製食料品(チョコ等) → 1806
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第17類(1704:砂糖菓子“ココアを含まない”)↔ 第18類(1806:ココアを含有)
      • ホワイトチョコは1704側に倒れる典型です(“チョコ”という商習慣名に引っ張られやすい)。
    • 第19類(1901/1904/1905)↔ 第18類(1806)
      • “菓子”“シリアル”“粉末ミックス”は19類に飛ぶパターンが多い(後述の%基準に注意)。
    • 第22類(飲料)↔ 第18類(粉末・菓子・原料)
      • 直接飲用か、粉末/原料かで分かれます。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第18類は4桁見出しが少ないため「全列挙」します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
1801カカオ豆(生/焙煎、全形/割り)カカオ生豆、ローストカカオ豆殻・皮等は1802、ペースト化したら1803へ
1802カカオ豆の殻・皮・その他くずカカオハスク、カカオシェル“くず”でも加工して飼料調製品になると別章の検討が必要(形状・混合の有無)
1803ココアペースト(脱脂の有無を問わない)カカオマス、ココアリカー号で「脱脂してない/した」に分かれる(1803.10/1803.20)
1804ココアバター・脂・油ココアバター、カカオ脂“白チョコ原料”でも脂単体なら1804。製品化(砂糖等添加)なら1704/1806の検討
1805無糖ココア粉(砂糖等なし)純ココアパウダー、アルカリ処理ココア(無糖)砂糖/甘味料が入ると1806.10
1806チョコレート等ココア含有の調製食料品板チョコ、チョコチップ、ココアミックス(加糖)、チョコスプレッド類注の除外(19類・22類等)を先に確認。ホワイトチョコは1704(除外)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • 砂糖・甘味料の有無:1805.00(無糖粉)↔1806.10(加糖粉)
    • 脱脂の有無:1803.10(脱脂してない)↔1803.20(全部/一部脱脂)
    • 包装形態と重量:1806.20(塊/板/棒で2kg超、またはバルクで2kg超)
    • 詰物(フィリング):1806.31(詰物あり)↔1806.32(詰物なし)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 1805.00 ↔ 1806.10(ココア粉:無糖か加糖か)
      • どこで分かれるか:砂糖・その他の甘味料が「添加」されているか
      • 判断に必要な情報:配合表(砂糖/甘味料の有無)、成分表示、製造仕様書
      • 典型的な誤り:「ココアパウダー」という商品名で1805に固定してしまう
    2. 1806.20 ↔ 1806.31/1806.32/1806.90(2kg超の“業務用”か)
      • どこで分かれるか:形状(塊/板/棒、粉状/粒状等)と内容量が2kg超
      • 判断に必要な情報:梱包仕様(内装/外装)、正味重量、用途(製菓原料か小売か)
      • 典型的な誤り:チョコチップ(バルク)を小売チョコ扱いで1806.90にしてしまう
        ※「ペレット状、豆状、フレーク状…」などの“バルク形状”の説明が示されています。
    3. 1806.31 ↔ 1806.32(詰物あり/なし)
      • どこで分かれるか:中心部にクリーム、リキュール等の“詰物”があるか
      • 判断に必要な情報:断面写真、製品設計図、製法(センター充填の有無)
      • 典型的な誤り:「ナッツ入り=詰物あり」と誤認
        • ナッツ等を“全体に埋め込んだ”だけの固形チョコは、詰物とみなさない旨が示されています。
    4. (章をまたぐが頻出)1704(ホワイトチョコ等)↔ 1806(チョコ等)
      • どこで分かれるか:ココア(一般にココア固形分)を含有するか/ホワイトチョコは1704に倒れる扱いが典型
      • 判断に必要な情報:原材料(ココアパウダー/カカオマスの有無)、配合比率
      • 典型的な誤り:販売名・見た目だけで「チョコ=1806」と決める
    5. (HS2022で重要度アップ)1806 ↔ 1602(20%超の昆虫等が入る調製品)
      • どこで分かれるか:肉・魚・昆虫等が重量で20%超
      • 判断に必要な情報:配合表(重量%)、工程での水分変化、最終製品の重量基準
      • 典型的な誤り:「菓子だから1806」と思い込み、昆虫プロテイン等の比率を確認しない

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第18類が属する第IV部の部注では、「ペレット」の定義(圧縮または結合剤≤3%)が置かれています。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 1806.20の“バルク形状”説明にはペレット状等が例示されます。業務用チョコ(チップ/ドロップ等)や、くず類の加工形状を説明するときに、形状定義を補助的に参照できます。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 「カカオ殻(1802)」を他原料と混合・調製して“飼料調製品”の性格が強い場合は、23類など別章検討が必要(混合・用途・表示・規格が鍵)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1(a):肉・魚・昆虫等が重量で20%超の食品調製品は第16類へ(HS2022で明確化)。
    • 注1(b):0403、1901、1902、1904、1905、2105、2202、2208、3003、3004の調製品は第18類に入れない(“ココア入りでも除外”)。
    • 注2:1806は「ココア含有の砂糖菓子」および(注1の制約の下で)「その他のココア含有の調製食料品」を含む。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • “20%超”は重量比(by weight)基準です。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 第16類(20%超の肉・魚・昆虫等)
    • 0403 / 1901 / 1902 / 1904 / 1905 / 2105 / 2202 / 2208 / 3003 / 3004

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:“ココア入り”でも、類注の除外に引っ張られる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 製品のタイプ(乳製品/菓子/ベーカリー/シリアル/飲料/医薬品)
      • 原材料と形状、用途(直接飲用か、原料か)
    • 現場で集める証憑:
      • 原材料表(重量順)、栄養成分表示、製造工程表、用途説明、写真(断面含む)
    • 誤分類の典型:
      • 「チョコ味ヨーグルト」を1806にしてしまう(類注で0403が除外)。
  • 影響ポイント2:19類へ飛ぶ“%基準”が現場で効く
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 穀粉・でん粉・麦芽エキス等の調製食料品で、ココア含有量が「完全脱脂ココア換算で40%未満」か
      • 0401〜0404由来の調製食料品で、同換算で「5%未満」か
      • 膨張/炒った穀物で、同換算で「6%以下」か
    • 現場で集める証憑:
      • 配合表(重量%)、ココア原料の脂肪分(換算に影響)、必要に応じ試験成績書
    • 誤分類の典型:
      • 「粉末ココア飲料ミックス(穀粉/乳主体)」を一律1806に寄せる(19.01側の可能性)。
  • 影響ポイント3:HS2022の“20%超(肉・魚・昆虫等)”で第16類に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 最終製品に占める肉・魚介・昆虫等の重量比(20%超か)
    • 現場で集める証憑:
      • レシピ/BOM(重量)、製造時の加水・乾燥条件、最終重量ベースの計算根拠
    • 誤分類の典型:
      • 昆虫プロテイン配合チョコバーを1806のまま申告(1806.90の範囲が狭まる趣旨が相関表でも示唆)。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:加糖ココア粉を1805(無糖粉)で申告
    • なぜ起きる:「ココアパウダー」という品名だけで判断
    • 正しい考え方:砂糖等を加えたココア粉は1806.10(1805は“砂糖等なし”)。
    • 予防策:原材料表で「糖類・甘味料」の有無を必ずチェック(仕入先仕様書の取り寄せ)
  2. 間違い:業務用チョコチップ(2kg超)を1806.90で申告
    • なぜ起きる:小売品と同じ感覚で分類、重量条件を見落とす
    • 正しい考え方:バルクで2kg超は1806.20に寄る(形状の例示もあり)。
    • 予防策:包装仕様(内袋重量・カートン構成)を入手し、正味重量で判定
  3. 間違い:ナッツ入り板チョコを「詰物あり(1806.31)」にしてしまう
    • なぜ起きる:「中に何か入っている=詰物」と誤認
    • 正しい考え方:ナッツ等が全体に埋め込まれているだけの固形チョコは詰物とみなさない扱いが示されています。
    • 予防策:断面写真+設計(センター充填か、混ぜ込みか)を事前に確認
  4. 間違い:ホワイトチョコを1806で申告
    • なぜ起きる:商習慣名(“チョコ”)に引っ張られる
    • 正しい考え方:ホワイトチョコは1704に整理される例が明示されています(日本解説・海外税関例)。
    • 予防策:原材料で「ココアマス/ココアパウダーの有無」を確認(カカオバターだけなら要注意)
  5. 間違い:チョコレート掛けビスケットを1806にしてしまう
    • なぜ起きる:外観が“チョコ製品”に見える
    • 正しい考え方:ベーカリー製品(19.05)に当たる場合はそちら(日本解説で例示)。
    • 予防策:ベースがビスケット/ケーキ等か(19.05の定義)を確認、商品仕様(主原料・食感)を取る
  6. 間違い:ココア入りアイスを1806で申告
    • なぜ起きる:ココア含有=18類と思い込み
    • 正しい考え方:アイス等(21.05)は類注除外で21.05へ。
    • 予防策:冷凍菓子はまず21.05を疑い、商品分類(氷菓/アイス)と販売形態を確認
  7. 間違い:ココア味ヨーグルト等を1806で申告
    • なぜ起きる:フレーバーで分類してしまう
    • 正しい考え方:0403は類注で除外。さらに乳製品は動物検疫の対象HSに含まれるので、分類ミスが手続に波及し得る。
    • 予防策:乳製品(0401〜0406等)該当性と、原材料(乳の発酵・形状)を確認
  8. 間違い:ココア含有の飲料(直接飲用)を1806で申告
    • なぜ起きる:「ココア=粉末」の先入観
    • 正しい考え方:直接飲用の飲料は22類に整理(例示あり)。
    • 予防策:飲用形態(希釈必要か、RTDか)、アルコール有無を確認
  9. 間違い:昆虫原料20%超のチョコバーを1806で申告
    • なぜ起きる:菓子の見た目だけで判断
    • 正しい考え方:HS2022類注で、20%超の肉・魚・昆虫等を含む食品調製品は第16類へ。相関表でも1806.90の範囲縮小が示されています。
    • 予防策:配合表(重量%)と最終重量基準での計算根拠を確保

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HS付番がPSR(CTC/RVC/加工工程要件など)の選択に直結します。
    • 例:完成品を1806と見てPSRを引くのか、実は1905(チョコ掛けビスケット)でPSRを引くのかで、原産性の論点が変わります。
  • よくある落とし穴
    • 材料のHS(例:砂糖、乳製品、ココアバター等)を誤る
    • “セット”を完成品HSで見ていいのか(GIR3(b)の結果がPSR選定に影響)
    • 「輸入国側のHSで通関される番号」を前提にしていない(相手国税関の解釈差)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定によって、PSRや譲許表が参照するHS年版が違う点に注意が必要です。日本税関も“協定が採用するHSコードのバージョン確認”を注意喚起しています。
  • 代表例(未指定のため例示)
    • CPTPP:HS2012(PSR等がHS2012表記で運用される旨の案内あり)
    • 日EU EPA:HS2017(自己申告の記載事項としてHS2017が示されています)
    • RCEP:
      • 原本のPSRはHS2012ベースで作成されていましたが、HS2022へのトランスポジションが採択され、各国で2023-01-01から実施と整理される資料があります。
      • 実務では「どのPSR表(HS2012/HS2022)を参照する運用か」を相手国・時点で必ず確認してください。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • ①協定が参照するHS年版でPSRを確認
    • ②自社が使うHS(通関は現行HS)へ対応付け(相関表・当局公表の対応表を使用)
    • ③“範囲変更(ex)”があるコードは、テキスト/注の確認を追加(例:1806.90の範囲縮小)

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須データ
    • BOM(材料表):材料名、原産国、重量、単価
    • 非原産材料のHS(6桁):砂糖、乳製品、ココア原料など
    • 工程表:混合・加熱・成形・充填など
    • RVCを使う場合:原価計算の前提(FOB等)
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 申告根拠資料(仕入書、仕様書、配合表、製造記録)の保管
    • 事後確認対応(相手国税関からの照会に備え、レシピ改訂履歴も残す)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022文言修正/範囲変更第18類 類注1(a)20%超の肉・魚・昆虫等を含む食品調製品を第16類へ、(b)除外対象に1902等を追加“ココア入り”でも第16類/第19類に飛ぶケースが明確化。配合比率・製品タイプの確認が必須
HS2017→HS2022範囲変更1806.90昆虫等を20%超含む調製品の移動により、1806.90の範囲が狭まる趣旨が相関表で示される昆虫配合菓子等での誤分類リスク増。配合表(重量%)の管理が重要

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料と判断のしかた
    • HS2022の第18類類注に、20%超の肉・魚・昆虫等を含む食品調製品を第16類へ除外する規定、および除外対象見出しの列挙が明記されています。
    • HS2017の第18類類注は、除外見出しの列挙が中心で、HS2022のような20%超の規定がありません。
    • HS2022↔HS2017相関表では、1806.90について“昆虫20%超品の移動により範囲が狭まる”旨の備考が示されています。
  • 以上より、「HS2017→HS2022で第18類の適用範囲が(特に昆虫等を含む調製品で)変わった」と判断できます。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • 第18類の見出し(1801〜1806)と主要な号構成は、少なくともHS2007→HS2017では大きな改編が見られません(類注の列挙も同趣旨)。
  • HS2017→HS2022で、類注の追加・範囲変更がポイントになります。
期間主な追加・削除・再編(第18類)旧コード→新コード(概要)実務メモ
HS2007→HS2012大きなコード再編は目立たない(主要構成は同様)ただし国内コードは各国で改訂あり得る
HS2012→HS2017大きなコード再編は目立たない(主要構成は同様)同上
HS2017→HS2022類注1の追加・範囲変更、1806.90等の範囲縮小(昆虫等)“ex”扱い(同一コードでも対象範囲が変わる)相関表・類注で「範囲変更」を必ず確認

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“ホワイトチョコ”を1806で申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第18類ではなく1704相当(品名誤認)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が “white chocolate” のみ、原材料情報が添付されない
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延
    • 予防策:原材料(ココア固形分の有無)と製品規格書を事前提示
  • 事例名:業務用チョコチップ(2kg超)を小売チョコ扱い
    • 誤りの内容:1806.20の重量・形状要件を見落とす
    • 起きやすい状況:複数小袋の合算を誤る、外装重量で判断
    • 典型的な影響:分類更正、関税差額、原産地規則の再検証
    • 予防策:正味重量・包装形態の証拠(梱包明細、写真)を保管
  • 事例名:昆虫プロテイン配合チョコバー(昆虫20%超)の誤分類
    • 誤りの内容:HS2022類注の20%超ルールを見落とす
    • 起きやすい状況:“菓子”の先入観、配合表が社内にない
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、同種貨物の重点審査
    • 予防策:配合表(重量%)と最終重量基準の計算根拠を整備
  • 事例名:ココア入り飲料(直接飲用)を1806で申告
    • 誤りの内容:22類(飲料)側の整理を見落とす
    • 起きやすい状況:粉末かRTDかの区別が曖昧、サンプル未提出
    • 典型的な影響:HS更正、食品衛生届出の再作業
    • 予防策:製品形態(RTD/濃縮/粉末)と用途を明確化、ラベル写真添付

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 食品衛生(輸入食品):販売・営業目的で食品等を輸入する場合、検疫所での輸入届出(食品等輸入届出)が必要で、審査の結果により検査が行われることがあります。
    • 植物検疫(カカオ豆):カカオ豆は植物検疫の対象として例示されており、検査や証明書(輸出国の検査証明書)の扱いに注意が必要です。
    • 動物検疫(乳製品に該当する場合):ココア入りでも0403等の“乳製品”に該当する品目は、HSコードで規制対象が整理されており、動物検疫の検討が必要になり得ます。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 一般的なココア・チョコでは通常は論点になりにくいですが、希少動植物由来成分(例:特定動物由来の高級油脂等)を含む場合は別途確認が必要です。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 一般食品としては通常該当しにくいですが、用途・取引先・制裁対象国等の観点で社内審査は別途実施してください。
  • その他の許認可・届出
    • 表示:国内流通では食品表示基準等(アレルゲン表示等)の対応が必要です(販売形態で要件が変わる)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 厚生労働省(輸入食品監視/輸入手続、検疫所窓口)
    • 農林水産省 植物防疫所(植物検疫)
    • 農林水産省 動物検疫所(乳製品等)
  • 実務での準備物(一般論):
    • HS分類根拠資料(仕様書、写真、成分表)
    • 食品等輸入届出向け:原材料表、製造工程表、必要に応じ試験成績書
    • 植物検疫向け(カカオ豆等):輸出国の検査証明書、梱包情報

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 原材料(重量順、添加物含む)
    • 形状(豆/粉/脂/板/粒/飲料)・内容量・包装形態
    • 用途(直接飲用か、製造原料か)
    • 断面写真(詰物の有無が分かるもの)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第18類類注1の除外(0403/1901/1902/1904/1905/2105/2202/2208/3003/3004、20%超ルール)を再点検
    • 1806は 2kg超バルク/詰物の有無を再点検
    • ホワイトチョコ等の“見た目に反する例外”を再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイスの品名を「一般名+形状+用途」まで具体化(例:“chocolate chips, bulk 10 kg”)
    • 原材料表・仕様書の添付準備
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS年版確認 → PSR確認 → 現行HSへの対応付け
    • 非原産材料HS(6桁)と工程の整合
    • 記録保存(BOM、原価、工程、原産国)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 食品等輸入届出(検疫所)要否・添付資料
    • カカオ豆等の植物検疫要否
    • (乳製品HSに該当する場合)動物検疫要否

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Chapter 18(Cocoa and cocoa preparations)
    • HS2022 Section IV Note(pellets定義)
    • HS2017 Chapter 18(比較用)
    • HS2007 Chapter 18(比較用)
    • HS2022↔HS2017 Correlation(1806.90範囲変更の備考等)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説(第18類)」:40%/5%/6%基準、1806の号解説、ホワイトチョコの除外例等
    • 日本税関:EPA/PSR運用上のHS年版確認の注意喚起
    • 日本税関:EPA原産地規則の手続・HS年版の例示(HS2012/HS2017)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • CPTPPのPSR等がHS2012である旨の案内例
    • RCEP:HS2022へトランスポーズされたPSRの採択・実施時期に関する整理資料(JETRO)
    • EPA相談デスク:協定ごとのHS年版の一覧(運用確認の入口として有用)
  • 規制(検疫・衛生)
    • 厚生労働省:食品等輸入手続(輸入届出、事前届出等)
    • JETRO:食品等輸入届出書の提出先・方法(概説)
    • 農林水産省 植物防疫所:植物検疫の対象例(カカオ豆等)・証明書注意
    • 農林水産省 動物検疫所:乳製品の動物検疫(HSコードで規制対象整理)

※Web参照日:2026-02-16

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第5類:動物性生産品(他に該当しないもの)(Products of animal origin, not elsewhere specified or included)


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 0501:未加工の人毛(洗浄・梳毛程度を含む)や人毛くず
    • 0502:豚毛・猪毛、アナグマ毛など「ブラシ用の毛」
    • 0504:魚以外の動物の腸・膀胱・胃(ソーセージの天然ケーシング原料など)
    • 0505:清浄・消毒・保存処理までの羽毛・ダウン(それ以上の加工は別類へ)
    • 0506/0507/0508:骨・角芯・象牙・べっ甲・サンゴ・貝殻等(未加工〜簡易処理で、形に切り出していないもの)
    • 0510/0511:動物由来の医薬用原料(一定の状態のもの)、動物精液、魚由来原料、その他「他に当たらない動物性生産品」など(号の切り分けあり) (Fiji Revenue & Customs Service)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 食用の動物性産品:原則として第4類/第16類等(ただし「腸・胃・膀胱」や「動物血(液状・乾燥)」は例外的に第5類に残ることがある) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 原皮・原毛皮(毛皮を含む):第41類/第43類(ただし、特定の鳥の皮(羽毛付き)や、原皮の切り屑等が第5類に来得る例外あり) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 動物の繊維原料(羊毛・獣毛など):原則として第XI部(繊維)側(例外として「馬毛」は第5類側で扱う旨の定義あり) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • ブラシ製造用に“結束・房状に加工された毛(タフト等)”:9603(準備された結び目・房) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 加工して形ができている象牙・骨・サンゴ等(彫刻品、切り出し品):多くは第96類(例:9601)等へ(「未加工〜簡易処理・未切り出し」かが鍵)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 加工度(未加工/洗浄・消毒・保存処理まで/染色・漂白・成形・切り出し済み など)
    2. 材質の定義が注で拡張される(例:「ivory(象牙)」の扱い、「horsehair(馬毛)」の定義) (Fiji Revenue & Customs Service)
    3. “他に該当しない”の前に、除外(他章)を潰す(食用、皮革、繊維、刷毛用タフト等)
  • この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • **ワシントン条約(CITES)対象の素材(象牙・べっ甲・サンゴ等)**を含む貨物:分類以前に、そもそも輸出入可否・許可書類で止まる可能性があります。 (jetro.go.jp)
    • 動物検疫の対象になり得る動物由来物(骨・血・皮・毛・羽・角・精液等):通関前工程(検疫・証明書)で遅延しやすいです。 (maff.go.jp)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • **GIR1(見出し+注)**がほぼ勝負です。第5類は「他に該当しない動物性生産品」という性格が強く、類注(Notes 1〜4)での除外・定義がそのまま分類の結論に直結します。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • GIR6(号レベルの決定):特に0511は「牛の精液」「魚由来」「その他」で号が割れます。 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • 「品名だけで決めない」ための観点(第5類で効きやすい軸):
    • 用途:食用か、工業用か、医薬原料か、ブラシ用か(※用途が見出し文言に入っている例がある)
    • 材質:何の動物由来か(象牙の定義拡張などに注意) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 状態・加工度:「unworked/simply prepared/not cut to shape」等の条件を満たすか
    • 形状:粉末・くず・層状、束ね品(タフト)など

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:動物由来か?
    • はい → Step2へ
    • いいえ → 第5類ではありません
  • Step2:食用の動物性産品か?
    • はい → 原則 第4類/第16類等を検討
    • ただし、腸・膀胱・胃(魚以外)、および 動物血(液状・乾燥) は第5類側に残り得る例外として注で扱われます(=「食用だから即除外」と決めない)。 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • Step3:皮・毛皮(原皮)か?
    • はい → 原則 第41類/第43類
    • ただし、羽毛付きの鳥の皮(0505)や、原皮の切り屑等(0511に来得る)など、注に出る例外あり。 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • Step4:繊維原料(羊毛など)としての動物毛か?
    • はい → 原則 第XI部(繊維)
    • ただし、**馬毛(定義上は“馬・牛のたてがみ/尾の毛”)は第5類側(0511)**に来得ます。 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • Step5:ブラシ製造用に“準備されたタフト(結び目・房)”になっているか?
  • Step6:この類のどの項に当たるかを当てにいく
    • 人毛 → 0501
    • 豚毛/獣毛(ブラシ用)→ 0502
    • 腸等 → 0504
    • 羽毛・ダウン(洗浄等まで)→ 0505
    • 骨・角芯 → 0506
    • 象牙・べっ甲・鯨骨等 → 0507
    • サンゴ・貝殻・甲いか骨等 → 0508
    • 特定の動物由来医薬原料(一定状態)→ 0510
    • その他(牛精液、魚由来、馬毛、原皮くず等を含む)→ 0511 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第5類 ↔ 第67類(人毛・羽毛の“加工品”側)
    • 第5類 ↔ 第96類(骨・象牙・サンゴ等が“切り出し・彫刻・成形済み”になったら移る)
    • 第5類 ↔ 第XI部(繊維原料としての動物毛)
    • 第5類 ↔ 第23類(魚粉・ペレット等の飼料原料)
    • 第5類 ↔ 第30類/第35類(医薬品/抽出物/ゼラチン等に加工が進んだ場合)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

以下はHS2022の第5類(Chapter 5)の項を、実務目線で要約して整理したものです。 (Fiji Revenue & Customs Service)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
0501未加工の人毛、人毛くずカツラ原料の人毛束(未加工)、人毛くず「加工(working)」の程度が鍵。長さで選別しても一定条件なら未加工扱い(類注2)。加工済み(染色・脱色・パーマ・根元揃え等)は別類になり得る (Fiji Revenue & Customs Service)
0502豚毛・猪毛、アナグマ毛等のブラシ用毛、くず歯ブラシ/ヘアブラシ用の豚毛、刷毛用獣毛“ブラシ用毛”の性格が強い。タフト等に「準備」されると9603へ除外 (Fiji Revenue & Customs Service)
0504(魚以外の)腸・膀胱・胃(各種状態)天然ケーシング(塩蔵腸)魚は除外(文言)。ソーセージ用腸と、医療用縫合糸等(滅菌済み等)との境界に注意
0505羽毛・羽毛付き鳥皮、ダウン(清浄/消毒/保存処理まで)ダウン原料、羽毛原料洗浄・消毒・保存処理までが範囲。染色・装飾加工・製品化は第67類などへ移りやすい (Fiji Revenue & Customs Service)
0506骨・角芯(未加工/脱脂/簡易処理・未切り出し)、粉・くず骨片、角芯、骨粉(範囲内のもの)「切り出して形がある」かどうかが決定的。ゼラチン等に加工が進むと別類(例:第35類)へ
0507象牙・べっ甲・鯨骨・角・ひづめ等(未加工/簡易処理・未切り出し)、粉・くず象牙原材、角材、爪・くちばし等の原材“ivory(象牙)”の定義が広い(類注3:カバ・セイウチ等の牙、サイ角、動物の歯等も含み得る)。CITES等の規制面も要注意 (Fiji Revenue & Customs Service)
0508サンゴ・貝殻・甲いか骨等(未加工/簡易処理・未切り出し)、粉・くずサンゴ原材、貝殻、甲いか骨加工してビーズ状・装飾品状になると別類へ。サンゴはCITES対象になり得る (Fiji Revenue & Customs Service)
0510アンバーグリス等、乾燥胆汁、腺などの医薬原料(一定状態)ムスク、胆汁、腺(医薬原料)「医薬原料として使われる動物性産品」+「鮮冷/凍結/仮保存」等の状態がキー。抽出・製剤化が進むと第30類側へ寄る可能性
0511その他の動物性生産品(他に該当しない)、第1類/第3類の死体(食用不適)など牛の精液、魚由来原料、馬毛、原皮の切り屑等“その他”の受け皿。ただし号で(牛精液/魚由来/その他)に割れる。類注4により「馬毛」はここへ来得る (Fiji Revenue & Customs Service)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

第5類は「項(4桁)」よりも、**“加工度”と“除外(他章)”**で事故が起きやすい一方、6桁でも押さえるべき割れ方があります。 (Fiji Revenue & Customs Service)

  • 分岐条件の整理(頻出)
    • 0502:**豚毛等(0502.10)**か、それ以外(0502.90)か
    • 0505:**充てん用羽毛・ダウン(0505.10)**か、それ以外(0505.90)か
    • 0506:**酸処理骨(ossein等:0506.10)**か、その他(0506.90)か
    • 0507:**象牙(0507.10)**か、その他(0507.90)か(※象牙の定義に注意)
    • 0511:牛の精液(0511.10)魚・水生無脊椎動物由来等(0511.91)その他(0511.99) (Fiji Revenue & Customs Service)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 0501(未加工人毛) ↔(他類)人毛の加工品(例:かつら材料)
      • どこで分かれるか:「working(加工)」に当たる処理があるか
      • 判断に必要な情報:工程(洗浄・消毒・漂白・染色・パーマ・根元揃え・束ね方)、写真
      • 典型的な誤り:「長さ選別した=加工品」と誤認(類注2は、一定条件の“長さ選別”は加工とみなさない旨) (Fiji Revenue & Customs Service)
    2. 0502(毛そのもの) ↔ 9603(準備されたタフト等)
      • どこで分かれるか:毛が結び目/房状に“準備”されているか
      • 判断に必要な情報:輸入形態(束ね方、台座への固定有無)、商品説明(“tuft”“knot”等)
      • 典型的な誤り:ブラシ用毛は全部0502と思い込む(類注1(d)で除外) (Fiji Revenue & Customs Service)
    3. 0505(洗浄/消毒/保存処理までの羽毛) ↔(他類)染色・装飾加工済み羽毛
      • どこで分かれるか:第5類は“それ以上加工していない”範囲に限定される(文言上の制約) (Fiji Revenue & Customs Service)
      • 判断に必要な情報:加工工程、SDS/仕様、着色の有無、用途(装飾品か詰物材か)
    4. 0507.10(象牙) ↔ 0507.90(その他)
      • どこで分かれるか:材質が“ivory”に該当するか(類注3で定義が広い) (Fiji Revenue & Customs Service)
      • 判断に必要な情報:動物種、部位(牙・歯・角)、成分鑑別、由来証明
      • 典型的な誤り:「象(ゾウ)だけが象牙」と誤認
    5. 0511.10/0511.91/0511.99
      • どこで分かれるか:牛精液か魚等の由来か、それ以外か (Fiji Revenue & Customs Service)
      • 判断に必要な情報:動物種、用途(繁殖用・研究用等)、形状(液体/凍結等)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第5類は「第I部(動物)」の中でも、**“他に該当しない動物性の原材料”**が集まりやすい類です。
    • 実務では、部注そのものよりも、(a)類注の除外、(b)他部(第XI部=繊維、第VIII部=皮革等)への飛び先をセットで把握するのが有効です。 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 「毛だから第5類」と決めず、繊維原料(第XI部)なのか、ブラシ用(第5類0502)なのか、タフト(9603)なのかを工程・形状で見ます。 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 動物の繊維原料 → 第XI部
    • 原皮・毛皮 → 第41類/第43類
    • 刷毛・ブラシの部材として準備された毛 → 9603 (Fiji Revenue & Customs Service)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

第5類の類注(Notes)は、実務の分岐点がそのまま書かれているタイプです。 (Fiji Revenue & Customs Service)


4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:“食用”かどうかで単純に切れない(例外がある)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 取引実態(食用向けか、工業・飼料・医薬原料か)
      • 品目の性状(腸・膀胱・胃なのか、動物血なのか)
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書、用途説明、製造工程、写真、成分/由来情報
    • 誤分類の典型:
  • 影響ポイント2:馬毛は“動物繊維”でも第XI部とは限らない
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 毛の種類(たてがみ/尾か)、動物種(馬/牛由来か)
      • 形状(毛束、くず、層状等)
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書(由来部位・動物種)、写真、鑑別結果
    • 誤分類の典型:
  • 影響ポイント3:“象牙”の定義が広く、材質鑑別ミスが分類ミスになる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 素材が牙・歯・角のどれか、動物種
    • 現場で集める証憑:
      • 材質鑑別、由来証明、CITES関連書類(該当時)
    • 誤分類の典型:

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:長さで選別した人毛を“加工品”として別類にしてしまう
    • なぜ起きる:選別=加工と誤解しやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):0501では、一定条件の長さ選別は加工とみなさない旨の整理があります(類注2)。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 予防策:
      • 「根元と毛先が揃うように並べているか」「染色・漂白・パーマ等の処理があるか」を仕様書に明記
      • 入荷形態(束・ネット・テープ固定等)の写真を保管
  2. 間違い:ブラシ用の毛束(タフト)を0502で申告
    • なぜ起きる:素材が豚毛等なので0502と思い込みやすい
    • 正しい考え方:ブラシ用に準備された結び目・房は9603へ除外(類注1(d))。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 予防策:
      • 形状(結束方法、台座、接着の有無)を確認
      • サプライヤーに「tuft / knot / prepared for brush making」の有無を質問
  3. 間違い:染色・装飾加工済みの羽毛を0505のまま
    • なぜ起きる:羽毛=0505の固定観念
    • 正しい考え方:0505は洗浄・消毒・保存処理まで等、“それ以上の加工がない”範囲に寄ります(見出しの条件)。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 予防策:
      • 加工工程(染色・漂白・カール等)を工程表で確認
      • 用途(詰物材か装飾材か)をインボイスに補足
  4. 間違い:天然ケーシング用の腸(0504)を“肉製品”として扱う/逆に、加工済みを0504に残す
    • なぜ起きる:食用・畜産物のイメージで分類が揺れる
    • 正しい考え方:0504は「腸・膀胱・胃(魚以外)」が対象(見出し文言)。一方、滅菌済み縫合糸など用途・加工度によっては第30類等へ移る可能性もあります(加工度で判断)。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 予防策:
      • 「用途(食品用ケーシングか医療用か)」と「滅菌の有無」を確認
      • 動物検疫対象性も並行確認(後述) (maff.go.jp)
  5. 間違い:骨や象牙・サンゴなど“切り出して形ができている”のに第5類で申告
    • なぜ起きる:材料名(骨・象牙)に引っ張られる
    • 正しい考え方:第5類(0506/0507/0508)は基本的に“未加工〜簡易処理・未切り出し”が中心。成形・彫刻・ビーズ状等は第96類等へ寄ります(加工度が決定的)。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 予防策:
      • 形状写真(寸法が分かるもの)を必ず取得
      • 加工工程(切断・穴あけ・研磨・彫刻)を工程表で確認
  6. 間違い:“象牙=ゾウの牙だけ”として0507.10の対象を狭く見てしまう
    • なぜ起きる:一般用語の象牙と、HSの定義がズレる
    • 正しい考え方:HSの類注では“ivory”の範囲を広く扱う整理があります(類注3)。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 予防策:
      • 動物種・部位の証明(原産証明とは別に「材質由来」資料)を用意
      • CITES対象可能性を早期にチェック (税関総合情報)
  7. 間違い:0511(魚由来)と、魚粉等(第23類)を混同
    • なぜ起きる:“魚のくず=飼料”でひとまとめにしがち
    • 正しい考え方:0511.91は魚等由来の“その他”が来得ますが、粉・ミール・ペレット等は第23類側を検討すべき場面があります(形状・用途・見出し文言で詰める)。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 予防策:
      • 形状(粉末/ペレット/液体/固形片)と用途(飼料/肥料/抽出用)を確認
      • 製造工程(乾燥・粉砕の程度)を入手

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します
    • 第5類は「原材料(animal products)」として流通することも多く、**最終製品だけでなく“材料のHS”**が原産性判断(CTH/CC/RVC等)の前提になります。
  • よくある落とし穴
    • 材料側の分類(例:毛が0502なのか、繊維として第XI部なのか)がズレる
    • 医薬原料(0510/0511相当)が、抽出・精製により別章へ移っているのに材料HSを据え置く

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 日本の国内実務(通関・統計番号)はHS改正で更新されますが、EPA/FTAのPSRや譲許表は“協定が参照するHS版”で作られているため、ズレが出ます。 (経済産業省)
  • 例(一般論+代表的な動き):
    • RCEPは、PSRのHS2022対応(トランスポーズ表)を2023-01-01から使用する運用が案内されています。 (jetro.go.jp)
    • 一方で、CPTPPなど一部協定・ガイドでは、約束税率・PSRがHS2012ベースで整理されている旨が説明されることがあります(=協定文書のHS版確認が必須)。 (Australian Border Force Website)
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • ①協定のPSRが参照するHS版を特定 → ②旧HSのコードでPSRを当てる → ③新HS(通関で使うHS2022)に対応付け → ④材料HSや工程要件を再確認
    • 特に第5類は、“削除された/使われない番号(例:0503等)”が古い資料に残っているケースがあり得るため、番号だけで判断しないことが重要です。 (Fiji Revenue & Customs Service)

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 収集すべき情報(例)
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国
    • 非原産材料のHS(6桁レベルは最低限)
    • 動物由来の場合:動物種、採取・処理場所、検疫関連書類の有無
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 協定ごとに異なるため、自己申告/第三者証明の方式、保存年限、監査対応を確認

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

(注)WCOのHS2017→HS2022相関表(Table I/II)は「改正で影響を受けるコード」を中心に整理されています。 (世界税関機構)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(第5類に関する改正記載が確認できないため)第5類(0501,0502,0504〜0508,0510,0511)WCO相関表(改正反映表)で第5類の改正対象として示されない範囲では、HS2017→HS2022で大きな構造変更は見込みにくい通関実務は基本的に“加工度・除外先”の論点が中心。協定HS版のズレ(HS2012/2017)には引き続き注意 (世界税関機構)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料
  • どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか
    • WCO相関表は「改正で影響を受ける見出し・号」を整理する資料であり、第5類コードが改正対象として現れない範囲では、HS2017→HS2022で第5類の大きな改正はない(=変更なし)と整理しました。 (世界税関機構)
    • 加えて、HS2022側の第5類の類注(Notes 1〜4)と、主要号(0511.10/0511.91/0511.99等)の構造を確認し、少なくともHS2022における実務分岐が上記整理で説明可能であることを確認しました。 (Fiji Revenue & Customs Service)

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第5類は「他に該当しない動物性産品」の性格から、協定・統計などで参照するHS版によって“見慣れない番号”が出てくることがあります。特に“馬毛”は、類注により0511側で扱う整理が明示されています。 (Fiji Revenue & Customs Service)

主要論点(実務向け):

  • HS2022(少なくともHS2022準拠の関税率表)では、第5類の見出し列挙に0503が現れず、馬毛は類注4で0511に含まれ得ると整理されています。 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • そのため、古い資料・協定(HS2012等)で0503等の番号が出てくる場合は、トランスポジション(旧→新)で0511側へ対応付ける必要が生じ得ます(協定・当局資料で確認)。 (経済産業省)

(整理表:主要な“見た目のズレ”に絞った例)

版の流れ旧コード(例)新コード(例)コメント(実務の見方)
HS2012/旧資料 → HS20220503(馬毛として記載される場合がある)0511(少なくとも馬毛は0511に含まれ得る)号レベルは国・協定の参照HS版で要確認。日本の国内コード例では0511.99側に馬毛の細分が置かれています (税関総合情報)

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「染色羽毛」を0505で申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):0505は“清浄・消毒・保存処理まで”の範囲で、装飾加工等が進んでいると別類へ移り得る(加工度の見落とし) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が “feathers” だけ、加工工程が書類に出ない
    • 典型的な影響:修正申告、検査強化、納期遅延
    • 予防策:工程表・写真・用途説明(詰物材/装飾材)を添付、必要なら事前教示
  • 事例名(短く):ブラシ用タフトを0502で申告→9603へ訂正
    • 誤りの内容:準備された結び目・房(タフト)を見落とし(類注1(d)) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 起きやすい状況:部材輸入(完成品でなく“毛束”だけ)で、現物確認が甘い
    • 典型的な影響:HS訂正、関税・統計の修正、原産性判定や規制判定のやり直し
    • 予防策:形状写真、商品仕様(tuft/knot/ready for brush making)を確認
  • 事例名(短く):象牙(または象牙相当素材)でCITES書類不備→差止
    • 誤りの内容:分類以前に規制(ワシントン条約)確認が不足 (環境省)
    • 起きやすい状況:アンティーク・装飾部品で「少量だから大丈夫」と誤認
    • 典型的な影響:差止・没収リスク、取引中止、罰則リスク(一般論)
    • 予防策:素材の由来・年代の証明、許可要否の事前確認(環境省・税関情報)
  • 事例名(短く):動物由来物の検疫対象を見落として通関遅延
    • 誤りの内容:骨・毛・羽・角・精液等が動物検疫の対象になり得る点を未確認 (maff.go.jp)
    • 起きやすい状況:サンプル輸入、研究用試料、EC小口
    • 典型的な影響:検疫手続や証明不足による保留・返送(一般論)
    • 予防策:AQS(動物検疫)で対象性と必要書類を事前確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)

検疫・衛生(SPS等)

  • 動物検疫(Animal Quarantine Service:AQS)
    • 日本では、海外から持ち込む動物由来物のうち、骨、脂、血、皮、毛、羽、角、ひづめ、腱などが動物検疫の対象になり得ることが明示されています(完成品の一部は除外される旨も併記)。 (maff.go.jp)
    • 第5類に典型的な対象例:羽毛、毛、骨、角、精液(0511)など
  • 実務での準備物(一般論)
    • 品目・加工度・由来国で要件が変わるため、輸出国政府の証明書の要否や、検疫での提出資料を事前に確認

ワシントン条約(CITES)等の種規制

  • 0507(象牙等)、0508(サンゴ等)を含む貨物は、CITES対象となり得ます。JETROの案内でも、さんご・象牙・べっこう等はワシントン条約の規制対象とされています。 (jetro.go.jp)
  • 象牙は、環境省の案内で条約と国内法に基づき規制され、原則として日本と海外間の輸出入や国内取引が禁止と説明されています。 (環境省)
  • 税関もワシントン条約対象の加工品・製品例を掲示しています(象牙製品等)。 (税関総合情報)

安全保障貿易管理

  • 第5類自体が典型的にリスト規制に直結するケースは多くありませんが、生物由来試料として輸出入する場合は別途社内規程・該非判定プロセスの対象になり得ます(一般論)。

確認先(行政・公式ガイド・窓口)

  • 動物検疫:農林水産省 動物検疫所(AQS) (maff.go.jp)
  • CITES:環境省(象牙等)・税関(ワシントン条約情報) (環境省)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 動物種、部位(毛/腸/骨/角/歯等)、用途(食用/工業/医薬)、加工工程
    • 写真(形状・束ね方・切り出しの有無が分かる)
    • 成分・由来証明、SDS(ある場合)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第5類の類注(除外・定義)に抵触していないか(食用、皮革、繊維、9603等) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 「未加工/簡易処理/未切り出し」要件を満たすか(0506〜0508で特に)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「動物種」「加工度」「用途」を入れる(例:“cleaned and disinfected down” 等)
    • HS6桁と国内コード(日本の統計番号)を混同しない(国内コードは別管理)
    • 税関説明用の資料(工程表・写真・仕様)を添付できる状態にする
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS版(HS2012/2017等)を確認し、必要に応じてトランスポーズ表でHS2022へ対応付け (経済産業省)
    • 材料HSの整合(特に“毛”や“医薬原料”でズレやすい)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 動物検疫の対象性(毛・羽・骨・角・精液等)と必要書類を確認 (maff.go.jp)
    • CITES対象素材(象牙・べっ甲・サンゴ等)の有無を確認 (jetro.go.jp)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022相関表)
    • WCO “TABLE I – Correlating the 2022 version to the 2017 version of the Harmonized System” (世界税関機構)(参照日:2026-02-13)
    • WCO “TABLE II – Correlating the 2017 version to the 2022 version of the Harmonized System” (世界税関機構)(参照日:2026-02-13)
  • HS見出し・類注の確認(HS2022準拠の関税率表例)
  • 日本の検疫・規制(公的機関)
    • 農林水産省 動物検疫所(AQS)“Bring animal products into Japan from overseas” (maff.go.jp)(参照日:2026-02-13)
    • 環境省 “象牙の国外持ち出し規制について(一般の方向け)” (環境省)(参照日:2026-02-13)
    • 税関 “ワシントン条約” (税関総合情報)(参照日:2026-02-13)
    • JETRO Q&A “ジュエリーや貴金属、アクセサリーの輸入手続き:日本”(さんご・象牙・べっこう等のCITES言及) (jetro.go.jp)(参照日:2026-02-13)
  • FTA/EPA(HS版ズレの実務注意)
    • 経済産業省:HSコード改正とEPA利用時の留意(国内HS更新と協定HS版ズレの注意) (経済産業省)(参照日:2026-02-13)
    • JETRO:RCEPのPSR(HS2022対応表の使用開始に関する案内) (jetro.go.jp)(参照日:2026-02-13)
    • Australian Border Force:RCEP HS2022 transposed PSR 運用開始(参考) (Australian Border Force Website)(参照日:2026-02-13)
    • Australian Border Force:CPTPP importers guide(HS2012ベース言及のあるガイド例) (Australian Border Force Website)(参照日:2026-02-13)

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点(任意)

  • 日本の国内コード(統計番号/NACCS用品目コード)はHS6桁に国内細分(9桁等)が付くため、HS(6桁)と国内コードを混同しないでください。
  • 例:馬毛(horsehair)は、国内コード例として 0511.99 系列に細分が置かれていることが示されています(NACCS用品目コード一覧の例)。 (税関総合情報)
    • 実務上は、「馬毛=0503」等の旧資料表記があっても、通関で使う国内コードは別途確認が必要になります。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 製品写真(全体・拡大・梱包状態)
    • 材質・動物種・部位の証明(鑑別結果があると強い)
    • 加工工程(どこまで加工したか:洗浄/消毒/漂白/染色/成形/切り出し 等)
    • 用途(食用・工業・医薬原料・装飾等)
    • カタログ、SDS、仕様書、サンプル(可能なら)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

2028年の関税ショックを回避せよ。日EU・EPA「HS読み替え指針」が示す実務の解


2026年2月4日、日本と欧州連合(EU)の貿易当局間で進められていたある重要な協議の実質的な合意が報じられました。それは、2028年のHSコード改正(HS 2028)に向けて、日EU・EPAの運用ルールをどう適応させるかという運用ガイドラインの第一案がまとまったというニュースです。

これは、多くの貿易実務家が2028年問題として懸念していた、申告コードと協定ルールの不整合による混乱を未然に防ぐための処方箋です。

本記事では、FTAの専門家の視点から、このガイドラインが示された背景にある構造的な課題と、企業が2028年に向けて構築すべき二重管理体制について深掘り解説します。

なぜ2028年に原産地証明が止まる恐れがあったのか

まず、この問題の核心である協定の硬直性とHSコードの流動性のギャップについて整理します。

2019年に発効した日EU・EPAは、その原産地規則(製品が日本産か欧州産かを判定するルール)の基準として、2017年版のHSコード(HS 2017)を採用しています。条文に書かれている品目番号や関税分類変更基準(CTC)は、すべて2017年当時の世界に基づいています。

しかし、貿易の現場で使われるHSコードは5年ごとに改正されます。2022年の改正を経て、次は2028年1月1日に大規模な改正が行われます。

ここで生じるのが、輸入申告書には最新の2028年版コードを書かなければならないのに、特恵関税を適用するためのルールブックは2017年版のままという矛盾です。もし、ある製品のコードが改正で変更されていた場合、どのルールを適用すればよいのかが不明確になり、最悪の場合、原産地証明書の不備として関税優遇が否認されるリスクがありました。

魔法の辞書、相関表の公式化

今回まとまったガイドラインの核となるのは、相関表(Correlation Table)の公式な導入です。

本来、新しいHSコードに対応するためには、協定の条文そのものを書き換える転換(Transposition)という手続きが理想ですが、これには膨大な時間と法的承認プロセスが必要です。そこで当局は、条文は書き換えずに、読み替えのための辞書を用意するという現実的な解決策を選びました。

相関表の役割

この公式相関表は、HS 2028のコードとHS 2017のコードを紐付ける変換テーブルです。

例えば、HS 2028で新設されたある化学品のコードが、HS 2017ではどのコードに該当していたのかを一対一、あるいは一対多で定義します。企業はこの表を参照することで、最新のコードで申告しつつ、裏側では正しい旧コードの原産地規則を適用することが可能になります。

ガイドライン案では、この相関表を日EU双方の税関が公式な判定基準として認めることが明記される見込みです。これにより、企業は独自の解釈ではなく、当局のお墨付きを得た変換ロジックに基づいて業務を行うことができます。

企業に求められるHSコードの二重管理

このニュースは朗報ですが、同時に企業に対して高度なデータ管理を求めています。それは、通関用コードと原産地判定用コードの完全な分離管理です。

2028年の実務フロー

これまでは、インボイスに記載するHSコードが決まれば、そのままそのコードの原産地規則を確認すれば済みました。しかし、2028年以降のEPA活用プロセスは以下のようになります。

  1. 通関用コードの特定:製品のスペックに基づき、最新のHS 2028コードを決定する。(輸入申告用)
  2. 相関表の参照:ガイドラインに基づき、そのコードに対応するHS 2017コードを特定する。
  3. 原産地規則の適用:特定されたHS 2017コードに基づき、協定上のルール(関税分類変更基準や付加価値基準)を満たしているか判定する。

もし、自社のシステムが最新のHSコードしか保持できない仕様になっている場合、このプロセスに対応できません。

落とし穴となるみなし変更

特に注意が必要なのは、HSコードの項番(上4桁)が変わるような改正があった場合です。

例えば、技術革新により製品の機能定義が変わり、第84類から第85類へ移動した場合、最新コードだけを見ていると関税分類変更基準(CTH)を満たしているように見えるかもしれません。しかし、2017年版のコードに引き直すと実は項番が変わっていない(変更基準を満たさない)というケースが発生し得ます。

このような意図しないミスを防ぐためにも、公式相関表を用いたロジックチェックは必須となります。

まとめ

日EU・EPAの運用ガイドライン第一案の策定は、2028年の貿易実務における交通整理が始まったことを意味します。

FTAの専門家として助言できることは一つです。2028年になってから慌てて相関表を見るのではなく、今のうちから自社の製品マスタにEPA判定用(HS 2017)という固定フィールドを設け、最新コードとは切り離して管理できる体制を整えておくことです。

過去のルールを正しく参照し続ける能力こそが、未来の関税削減メリットを確実に享受するための鍵となります。

テクノロジーの進化に追いつく貿易ルール。HS 2028改正で6Gや量子技術が「その他」から脱却する日

2026年2月2日、世界税関機構(WCO)において、今後のハイテク製品の貿易実務を左右する重要な定義案が承認されました。それは、2028年のHSコード改正(HS 2028)に向けて、次世代通信規格(6G)関連機器や量子コンピュータ部材を、独立した固有の品目として定義するという決定です。

これまで、最先端のテクノロジー製品の多くは、既存の分類表に該当する項目がないため、その他という大雑把なカテゴリに分類されてきました。しかし、今回の決定により、これらの戦略物資に世界共通の背番号(HSコード6桁)が与えられることになります。

本記事では、なぜ今WCOがこの定義を急いだのか、そして製品コードが特定されることが、企業のコンプライアンスや関税コストにどのような影響を与えるのかを解説します。

その他に隠れていた最先端技術の可視化

貿易実務において、技術の進化スピードとHSコードの改正サイクル(5年ごと)のズレは長年の課題でした。

統計の空白地帯を埋める

現在、開発が進んでいる6G通信機器や量子コンピュータの部品は、多くの場合、第85類(電気機器)や第84類(自動データ処理機械)の中にあるその他の機器というバスケットカテゴリーに分類されています。

この状態では、世界でどれだけの量子関連部材が流通しているのか、正確な貿易統計を取ることが不可能です。WCOが新コードの定義を承認した最大の目的は、これらの次世代技術を独立した項目として切り出し、グローバルなサプライチェーンの実態を可視化することにあります。

6Gと量子技術の定義が確定

今回承認された定義案により、例えば量子プロセッサや極低温制御装置といった量子コンピュータ特有のハードウェア、そして6Gネットワークを構成するテラヘルツ波対応の基地局設備などが、明確な品目定義を持つことになります。

これにより、2028年以降は、その他として申告する曖昧さが排除され、製品のスペックとHSコードの定義を厳密に照らし合わせる作業が必須となります。

経済安全保障と輸出管理の強化

ビジネスマンが最も警戒すべきは、このコード変更が単なる統計目的だけではないという点です。HSコードが特定されることは、各国の輸出管理(安全保障貿易管理)の精度が格段に上がることを意味します。

ピンポイントでの規制が可能に

これまでは、量子コンピュータ部品を輸出規制の対象にしようとしても、HSコードが汎用的なその他の電子部品と同じであったため、税関のシステム上で当該貨物だけを自動的に止めることが困難でした。

しかし、2028年改正で固有のコードが割り当てられれば、当局はそのHSコードに対して輸出ライセンスの必須要件を紐付けることができます。つまり、通関システム上で自動的にフラグが立ち、審査対象として抽出される精度が飛躍的に向上します。

企業にとっては、該非判定(リスト規制に該当するかどうかの判定)とHSコードの紐付け管理が、これまで以上にシビアになることを示唆しています。

関税率への影響とITA(情報技術協定)

もう一つの重要な視点は関税コストです。ハイテク製品だからといって、自動的に関税がゼロになるわけではありません。

新コードは無税になるのか

多くのIT製品は、WTOの情報技術協定(ITA)によって関税撤廃の恩恵を受けています。しかし、新しく新設されたHSコードが、自動的にITAの対象リストに含まれるかどうかは、各国の解釈や新たな交渉に委ねられる場合があります。

もし、6G機器や量子部材が新しいコードに移行した結果、従来のITA対象コードから外れ、一時的に有税扱いになるような事態になれば、サプライチェーンのコスト構造は大きく変わります。2028年に向けて、業界団体を通じた各国政府への働きかけや、関税譲許表の確認が重要になります。

企業が今から準備すべきこと

2028年はまだ先の話ではありません。特に製品開発サイクルが長いハイテク産業においては、今の設計段階から将来のHSコードを意識する必要があります。

R&D部門と通関部門の連携

開発中の次世代製品が、2028年の新定義のどこに該当する可能性があるのか、R&D部門と通関部門が情報を共有する必要があります。特に、製品の機能説明書(スペックシート)において、WCOの新定義に合致する用語を使用しているかどうかが、将来のスムーズな通関を左右します。

システム改修のロードマップ

基幹システム(ERP)の商品マスタにおいて、2028年版のHSコードを登録するフィールドの準備や、輸出管理システムとの連携ロジックの更新計画を立てる必要があります。

まとめ

WCOによるIT・デジタル技術品目の定義案承認は、次世代技術が実験室からグローバル貿易の表舞台へと正式に移動したことを象徴しています。

透明性が高まることは、ビジネスの予見可能性を高める一方で、規制当局による監視の目も厳しくなることを意味します。その他で逃げることができなくなる2028年に備え、自社のハイテク製品の戸籍(HSコード)を正しく管理する体制づくりが求められています。

HS2022からHS2028へ 品目別原産地規則PSRをクロスウォークする実務手順

経営と実務を止めないための更新設計

1. PSRクロスウォークが急に難しくなる理由

PSRは品目別原産地規則のことで、協定ごとに、品目分類にひもづけて原産地判定の条件が定められています。多くは関税分類変更基準CTCや付加価値基準RVC、または特定工程基準などです。

一方、HSは定期改正され、HS2028は2028年1月1日に発効予定です。改正時には新設、削除、範囲変更が大量に起きるため、PSRが参照している品目番号の体系も影響を受けます。結果として、関税分類は最新HSで行うのに、原産地判定は協定が採用する旧HSで行う、という二重運用が現場に発生しやすくなります。WCOも、分類と原産地で異なるHS版を使うと、判定が複雑化し時間がかかり、誤適用リスクが上がると整理しています。

この状況を止めるために必要なのが、HS2022とHS2028の間でPSRを技術的に読み替えるクロスウォークです。

2. まず押さえる前提

2-1. HSは1つではない

協定ごとに採用しているHS版が異なることがあります。日本税関のPSR検索でも、協定が採用するHS版と入力したHSコードの版が違うと検索結果が誤りになり得る、と明示されています。さらに、輸入申告では最新のHSコードを使う必要がある、とも書かれています。(税関ポータル)

つまり、企業側は次の二系統を同時に管理する必要が出ます。

  1. 申告と統計のための最新HS
  2. 協定の法文に紐づくPSR用HS

2-2. HS2028の確定と相関表の位置づけ

WCOによれば、HS2028は2028年1月1日に発効し、その準備期間にHS2022とHS2028の相関表の整備などが進む、とされています。(世界関税機関)
また、2026年1月時点でHS2028改正が受諾され、相関表整備などの実施期間に入ったこともWCOニュースで整理されています。(世界関税機関)

重要なのは、相関表は実務のための道具であり、法的効力そのものではない点です。WCOのガイドでも、相関表は実装を助ける目的で作成され、法的地位を持たない、と説明されています。

3. PSRクロスウォークとは何を作る作業か

目的は単純です。
HS2022で書かれているPSRを、HS2028の品目体系に読み替えても、同じ商品範囲に同じ原産地条件を適用できる状態にすることです。

ここで言うクロスウォークは、次の2つを分けて考えると整理しやすいです。

  1. 社内用クロスウォーク:自社の品目とサプライチェーンに照らして、影響と対応を判断するための表
  2. 協定改正としての技術更新:相手国との手続を経て協定附属書のPSR表を更新する行為

EUのPEM関係では、HS更新に伴うPSRの理解を助けるため、HS2022への技術的読み替え資料が提供されています。発想としては、品目分類の変更でルールの趣旨が変わるわけではないが、PSR表は新HSに合わせて書き直す必要がある、という整理です。(Taxation and Customs Union)

4. 手順全体像

ここからが実務手順です。現場が迷いやすい順に並べます。

手順1 対象協定と対象品目を棚卸しする

最初にやるべきは、協定と品目の棚卸しです。

  1. 自社が実際に使っている協定を列挙する
  2. 各協定のPSRが採用しているHS版を確認する
  3. 自社の輸出入品目をHS2022で確定させ、品目別に該当PSR条項を紐づける

この時点で、協定によってはPSRが古いHS版で書かれていることが普通にあります。英国の対日CEPAのガイダンスでも、PSRはHS2017で規定されており、HS改正でコードが変わる場合は相関表を参照する、という趣旨の案内があります。(GOV.UK)

手順2 HS2022→HS2028のマッピングを準備する

基本はWCO相関表を使います。HS2028の相関表は、WCOが準備期間に整備すると明記しています。(世界関税機関)
ただし、相関表は法文ではなく、更新途中の版や注釈の読み違いが起きやすい領域です。社内のクロスウォークでは、必ず次の情報を同時に持ちます。

  1. 相関表上の対応関係
  2. 変更タイプ 新設、削除、範囲変更、分割、統合
  3. 自社製品の実際の仕様と用途

手順3 PSRを構造分解してから移し替える

PSRを文章のまま移すのではなく、構造に分解します。最低限、次のタグを付けます。

  1. ルール型 CTC、RVC、工程、複合型、例外
  2. レベル CC、CTH、CTSHなど
  3. 例外条件 例 外部材の除外や許容条件
  4. 追加要件 最小工程否認、累積、許容誤差など

この分解ができると、HSの分割や統合が起きても、ルールの意図を保ったまま再組立てできます。

手順4 変更タイプ別に読み替え規則を適用する

WCOガイドでは、HS改正は大きく、新設、削除、範囲変更の3類型に整理でき、単純ケースの更新方法も例示されています。
HS2022→HS2028でも、この考え方で十分に回せます。

ケースA 1対1で対応する

最も簡単です。PSR文章は基本的にそのまま移せます。
注意点は、号の説明や範囲注記が変わる場合があることです。品目名だけで判断しないでください。

ケースB 1つの号が複数に分割される

現場で事故が起きる典型です。
対応は、分割後の各号が、元のどの範囲を受け継いだのかを仕様と照合し、PSRの例外条件を再設計します。WCOガイドでも、分割後の各号に対して、元ルールを維持しつつ、相互に例外を置く形で記述できることが示されています。

実務上のコツは、分割後の号ごとに、主要な非原産材料のHS分類がどこへ落ちるかを同時に確認することです。CTC型のPSRは材料側の分類にも依存するため、ここを飛ばすと誤判定が起きます。

ケースC 複数の号が統合される

統合されると、PSRの適用範囲が広がって見えるため、ルールを強めてしまう誤りが起きます。
基本は、統合前に別々だったルールを、統合後の号の中で品目群ごとに分岐する形で管理することです。協定文の改正が完了するまでは、社内クロスウォークでは分岐注記で運用します。

ケースD 範囲が変わる

最も危険です。番号は同じでも、含まれる製品範囲が変わると、見かけ上の読み替えは成立しません。
この場合は、協定の法的更新を前提に、社内では暫定措置として次を行います。

  1. 旧HSでのPSR対象範囲を文章で定義する
  2. 新HSでその範囲に該当する品目集合をリスト化する
  3. その集合に同一PSRを当てる

EUがHS更新に合わせてPSR表の書き直しを支援する資料を出しているのは、まさにこのケースでの混乱を抑える狙いです。(Taxation and Customs Union)

手順5 検証は机上ではなく取引データで行う

クロスウォークが正しいかは、実際のBOMと工程で検証しないとわかりません。
おすすめの検証は二段階です。

  1. 過去の代表案件を抽出し、HS2022版PSRで原産判定結果を再現する
  2. 同じ案件をHS2028クロスウォーク版で判定し、結果の差分を説明できる状態にする

差分が出た場合、原因はだいたい次のどれかです。

  1. 材料側のHS分類が分割で変わった
  2. 例外条件の読み替えが不十分
  3. 範囲変更を見落とした

手順6 成果物は1枚の表に落とす

経営レビューと監査対応を両立させるには、成果物の形が重要です。最低限、次の列を持つクロスウォーク表があると回ります。

内容
協定名利用協定、相手国
PSR採用HS版協定附属書が採用するHS版
自社品目 HS2022現行管理コード
対応 HS2028相関表に基づく候補コード群
変更タイプ1対1、分割、統合、範囲変更
元PSR要件CTC、RVC、工程、例外条件
読み替え方針そのまま、分岐、集合適用など
検証結果代表案件での判定差分
リスク判定高 中 低 と理由
根拠リンク相関表、協定条文、社内仕様書

日本税関の案内が示すとおり、HS版の取り違えは検索結果や判定結果の誤りに直結し得ます。表で版管理を明示し、誰が見ても間違えない状態にするのが最短です。(税関ポータル)

手順7 運用設計としての版管理を入れる

HS2028発効後も、すべての協定が同時にHS2028へ更新されるとは限りません。WCOガイドが述べるように、協定にはPSR更新の手続があり、簡易改正条項を持つものもありますが、タイミングは協定ごとに異なります。

したがって経営としては、次の二重管理を前提にします。

  1. 申告HSはHS2028へ移行
  2. 原産判定は協定ごとのHS版に合わせて継続

この二重管理を前提に、社内システム、マスタ、教育、監査資料の更新計画を組むべきです。

5. 2026年から2028年までの進め方の目安

WCOはHS2028発効までの準備期間で相関表整備などを進める、としています。(世界関税機関)
企業側はそれに合わせて、次の順で進めると失速しにくいです。

  1. 2026年 棚卸しとクロスウォーク表の骨格を作る
  2. 2027年 代表案件で検証し、例外ケースを潰す
  3. 2027年末 協定別の更新状況を確認し、運用を確定する
  4. 2028年初頭 申告HSの移行と、原産判定の版管理を同時に稼働させる

6. まとめ

HS2022からHS2028へのPSRクロスウォークは、関税分類の変更に追従する作業ではなく、原産判定の誤適用を防ぎ、協定利用を止めないための版管理プロジェクトです。
相関表を使いつつ、変更タイプ別の読み替え規則、取引データでの検証、協定別のHS版管理をセットで回すことで、2028年の移行は管理可能になります。

免責
本稿は一般的な実務整理であり、個別案件の原産地認定や協定解釈は、当該協定の正文と当局運用、必要に応じて専門家助言に基づいて判断してください。