HS2028で見直すべき電子部品:センサー・バッテリー・MCUの影響リスク製品リストと実務ロードマップ


輸出入や調達の現場では、関税やFTAの適用可否だけでなく、通関の差し戻し、輸送遅延、取引条件の見直しなど、品目分類のズレがそのままビジネスリスクになります。

HS2028は、世界共通の品目分類ルールであるHSの次期版で、2028年1月1日に発効予定です。WCOによると、HS2028は第8版で、7回目の見直しサイクルの成果として299セットの改正がまとめられています。wcoomd+2

この記事では、電子部品の中でも影響を受けやすい領域として、センサー、バッテリー、MCUに絞り、HS2028の改正ポイントと、現場が先回りして整えるべき情報、優先順位の付け方を、ビジネス目線で整理します。


1. HS2028の前提:いつ、何が、どの程度変わるのか

HS2028の発効スケジュール

HS2028は、2028年1月1日に発効します。WCOの公式スケジュールは以下の通りです:wcoomd+3

  • 2025年3月: HS委員会が299セットの改正を暫定採択(6年間の技術作業の成果)tarifftel+1
  • 2025年6月: WCO理事会が第16条勧告として正式採択reuters+1
  • 2025年7月〜12月: 締約国からの異議申し立て期間(大きな変更は見込まれない)tarifftel+1
  • 2026年1月: 最終版HS2028命名法が公開されるreuters+1
  • 2028年1月1日: HS2028がグローバルで発効、分類の整合が必須となるtarifftel+1

この期間中、WCOは相関表(Correlation Table)や解説注釈の整備を進めます。これは企業側のコードマッピング作業に直結します。[wcoomd]​

改正の規模と内容

WCOの公開情報では、HS2028改正パッケージは以下の規模となっています:wcoomd+1

  • 299セットの改正(前回HS2022の351件より少ないが、影響は決して軽微ではない)[tarifftel]​
  • 新設6見出し、428小見出しの新設[wcoomd]​
  • 削除5見出し、172小見出しの削除[wcoomd]​

重要なのは、改正は関税分類の数字が変わるだけではない点です。

実務に影響する3種類の変更

実務影響は大きく3種類に分かれます:

  1. 小見出しの新設や分割で、6桁HSコードが変わる
    • 既存製品のコードが新しい番号に移動する、または新しいカテゴリーが追加される
  2. 部注や類注の定義変更で、境界領域の分類判断が変わる
    • 条文の文言変更により、従来と異なる分類判断が必要になる
  3. 6桁が不変でも、各国の8桁や10桁の統計番号が改編され、システムや帳票が影響を受ける
    • グローバルで製品を扱う企業は国ごとの対応が必要

今回のセンサーとMCUは、1と2が現実に起こり得る領域です。バッテリーは2と3の影響が主になります。


2. なぜセンサー・バッテリー・MCUがリスク製品になりやすいのか

この3領域は、次の理由で分類リスクが高まりやすいです:

機能が複合化しやすい

: センサーが無線通信や演算機能、診断ロジックを内蔵し、単体部品なのか完成機器なのかの境界が曖昧になりやすい

形態がモジュール化しやすい

: MCUが複数のダイ、受動部品、基板を一体化したパッケージで流通し、定義の当てはめが難しくなる

政策目的で注目されやすい

医療、環境、サプライチェーン可視化など、統計上の粒度を上げる圧力が働きやすい領域です。HS2028では公衆衛生、パンデミック対応、環境汚染対策の観点が強調されています。blog.gettransport+2


3. HS2028影響リスク製品リスト(センサー・バッテリー・MCU)

目的:効率的なリスク管理

目的は、全SKUを一律に洗い直すことではなく、影響が出やすい製品群に先に網を張ることです。

リスク判定の3つの軸

リスク製品の見極めは、次の3軸で実務に耐えます:

軸A: HS2028で条文が動いているか

  • 小見出し新設、見出し文言変更、注の改訂など

軸B: 分類が機能依存か

  • 仕様や用途で分類が変わり得るものは、サプライヤ情報の揺れがそのまま誤分類になる

軸C: 出荷形態がセット、キット、モジュールか

  • 付属品の有無で分類が変わるケースが多い

3.1 センサー領域:医療・モニタリング系がHS2028で可視化される

HS2028での主要変更

HS2028では、医療用途のモニタリング機器や緊急対応物資に対して、38の新しい関税コードが導入されています。pharmaindustrial-india+2

具体的には以下が含まれます:portcalls+1

  • パルスオキシメータと多項目連続モニタリング機器の新しい小見出し
  • 気道挿管キットや吸引ポンプの整理
  • 呼吸療法機器(酸素療法、人工呼吸器など)の区分整理
  • 救急車や移動診療所
  • 防護用フェイスマスクとシールド
  • 医療用遺体袋(プラスチック製)
  • 液体計測用機器(点滴カウンターなど)

これは、医療・公衆衛生の重要物資を分類上でも見えやすくし、税関での迅速な通関と識別を可能にする流れと整合します。WHO、WTO、WCOの協働により実現した改正です。blog.gettransport+2

センサー関連のリスク製品リスト

以下は、センサーを主軸にした、優先度の高い監視対象です:

高リスク

  1. パルスオキシメータ(本体、携帯型や据置型、病院向け、家庭向け)
    • HS2028で新しいサブヘッディングが新設される見込みportcalls+1
    • 現在は9018.19に分類されているが、HS2028で独立した分類となる可能性[deepbeez]​
  2. 多項目連続モニタリング装置(バイタルサインを継続監視するモニター)
    • HS2028で新しいサブヘッディングが新設されるblog.gettransport+1
    • 血圧、心拍数、体温など複数パラメータを同時測定する機器

中リスク

  1. 気道挿管キット
    • キットとしての取り扱いが明確化される方向portcalls+1
  2. 吸引ポンプ(医療用)
    • 9018内で整理されるblog.gettransport+1
  3. 酸素療法機器、人工呼吸器など呼吸療法機器
    • 9019で区分が整理される見込みportcalls+1

低から中リスク

  1. 液体計測用途の機器(点滴カウンター、滴下カウンターなど)
    • 新しいサブヘッディングが設けられる見込みblog.gettransport+1

現場が集めるべき最低限の情報

センサー系は、仕様情報が欠けると分類が不安定になります。最低限、次をマスタに持つだけで精度が上がります:

  • 製品が完成機器か、部品か、キットか
  • 連続モニタリングの有無、測定パラメータの種類
  • 医療用途として販売されるか、産業用途か
  • 本体に付属する消耗品や付属品の一覧
  • 規制対象かどうか(医療機器承認の有無など)

3.2 MCU領域:HS2028は分類の土台となる定義を微調整している

MCUの基本分類

MCUは多くの場合、電子集積回路の見出し8542に該当し、プロセッサやコントローラは6桁で8542.31として整理されています。freightamigo+1

ここは、製品の高付加価値領域である一方、分類ミスの損害も大きい領域です。

HS2028での定義変更

HS2028では、第85類の注12で、マルチチップ集積回路の定義が改訂されています。新しい定義では、以下が明記されています:

  • 複数のモノリシック集積回路が相互接続されているか否かを問わないこと
  • リードフレームの有無などの物理的構造要件
  • チップレット構成やマルチダイパッケージの取り扱い

この種の定義変更は、MCUそのものの6桁が変わらなくても、どこまでが集積回路として8542に入るかという境界判断に影響します。

MCU関連のリスク製品リスト

高リスク

  1. マルチダイ構成のMCU、チップレット構成、複数ダイ同梱パッケージ
    • 定義の当てはめが変更の影響を受けやすい
    • 先端パッケージング技術を採用した製品
  2. MCUと周辺回路を一体化した高度なパッケージ製品
    • SiP(System in Package)など
    • 境界判断が論点になりやすい

中リスク

  1. MCUとメモリ、コンバータ、ロジック等を組み合わせた製品
    • 8542.31は他回路との結合を許容する記述になっているため、仕様の出し方で誤解が起きやすい[freightamigo]​
  2. 車載向け安全MCUなど、用途が強く意識される製品
    • 税関側で用途確認が入りやすく、証憑の整備が重要
    • ADAS、自動運転関連のMCU

現場が集めるべき最低限の情報

MCUの分類は、データシートの書き方がそのままリスクに直結します:

  • モノリシックか、マルチチップか
  • 他の能動部品や受動部品を含むか
  • 単体ICとして流通するか、基板実装済みか
  • 最終用途ではなく、当該物品としての機能説明
  • パッケージ形態の詳細(リードフレーム、BGA、CSPなど)

3.3 バッテリー領域:6桁が動かなくても、実務の事故は起きる

バッテリーの基本分類

バッテリーは、見出し8507に蓄電池が整理されます。主要なサブヘッディングは以下の通りです:htshub+1

  • 8507.10: 鉛蓄電池(ピストンエンジン始動用)
  • 8507.20: その他の鉛蓄電池
  • 8507.30: ニッケル・カドミウム蓄電池
  • 8507.50: ニッケル・水素蓄電池
  • 8507.60: リチウムイオン蓄電池

HS2028での変更状況

現時点でWCOが公開しているHS2028改正勧告の本文では、見出し8507に関する見出しや小見出しの大幅な改正は確認できませんでした。これは、バッテリーに関してはHS2028で6桁番号が大きく変わらない可能性があることを示唆します。

ただし、以下の点に注意が必要です:

  • 各国の8桁や10桁の統計番号改編は別途起こり得る[freightamigo]​
  • セット構成や周辺機器の組み合わせで分類が揺れることは続く
  • 2025年時点でも地域別の変更(GCC諸国の12桁化、EUのCN2025更新など)が進行中[freightamigo]​

バッテリー関連のリスク製品リスト

高リスク

  1. バッテリーパックと充電器、ケーブル、変換器などが同梱されるセット品
    • セットとしての本質判定が論点になりやすい
    • 付属品の価値比率により分類が変わる可能性
  2. 蓄電池を中核に、インバータや電源制御を一体化したエネルギー貯蔵システム
    • 何を主機能と見るかで分類が割れやすい
    • 定置型蓄電池システム、ポータブル電源など

中リスク

  1. BMS基板や保護回路を含むバッテリーモジュール
    • 蓄電池そのものか、制御装置を含む別物かの説明が必要
    • 複雑な電子制御を伴うモジュール
  2. 交換式バッテリー(工具用、ドローン用、電動自転車用など規格品)
    • 形態は似ていても仕様差が大きく、品名の表現で揺れが出やすい

低から中リスク

  1. 単体セルや標準的な蓄電池
    • HS見出しは比較的安定
    • ただし統計番号や規制対応(危険物規制、リサイクル法など)の要否は別

現場が集めるべき最低限の情報

  • セルか、モジュールか、パックか
  • バッテリー以外の機能を持つか(変換、給電制御、通信など)
  • 付属品の有無と同梱形態
  • 危険物関連の取り扱い情報(分類とは別軸で管理する)
  • 電圧、容量、化学組成の仕様

4. 2026年から始める実務ロードマップ

HS2028は2028年1月1日に発効予定で、WCOも移行準備のための相関表整備などを進めています。reuters+1

この状況では、企業側は次の順番が最もコストを抑えられます

4.1 2026年上期:影響棚卸しを小さく始める

  • 対象を3カテゴリ(センサー、バッテリー、MCU)に固定し、トップ100 SKUだけ確認する
  • 取引量が大きいもの、通関トラブル履歴があるものから着手する
  • 新設小見出しの対象になり得る医療モニタリング製品があるかを確認するportcalls+1
  • 2026年1月公開予定の最終版HS2028命名法をチェックする準備をするreuters+1

4.2 2026年下期:データの勝ち筋を作る

  • 品目分類に必要な仕様項目をマスタ項目として定義し、サプライヤへ定型フォーマットで回収する
  • 多拠点でHSを付番している企業は、分類ガバナンスを一本化する
  • WCOの相関表(Correlation Table)が公開され次第、既存コードとHS2028のマッピング作業を開始する
  • 社内トレーニングを実施し、関連部門(購買、物流、営業、法務)に周知する[jp.reuters]​

4.3 2027年:マッピングとシステム改修の年にする

  • 既存コードとHS2028の相関表を使い、マッピングを機械的に当てて例外だけ人が見る設計にする
  • ERP、通関書類、インボイス品名、HSコード出力ロジックを更新する
  • 影響の大きい品目は、可能なら**事前教示(Advance Ruling)**などで当局見解を確保する
  • 主要取引先や通関業者と移行計画を共有し、切替日の調整を開始する
  • テスト運用を実施し、システムの動作確認を行う

4.4 2027年末から2028年初:本番切替の事故を潰す

  • 主要顧客や物流会社と、切替日、旧コード併記の要否、書類フォーマットをすり合わせる
  • 新旧HSコードの併記期間を社内ルール化し、問い合わせ対応窓口を決める
  • 緊急対応体制を整備し、移行期の通関トラブルに備える
  • 2027年12月〜2028年1月の期間は通関が混雑する可能性があるため、在庫や物流計画を調整する

5. すぐ使えるチェックリスト

以下の項目に1つでも該当する場合、優先的にHS2028対応を検討してください:

  • HS2028で条文が動いた領域に該当する製品がある
    • 医療モニタリング、呼吸療法関連、集積回路の定義周辺blog.gettransport+1
  • 製品がキット、セット、モジュールで出荷されることが多い
  • 仕様情報がサプライヤ任せで、社内で統一したデータ項目がない
  • 税関から用途確認や仕様確認が入ったことがある
  • 複数国へ輸出入しており、国ごとの統計番号の違いが現場負担になっている
  • 2026年1月のHS2028最終版公開に向けた準備体制がないtarifftel+1
  • 社内に貿易コンプライアンスの専任担当者がいない、または兼任で手が回らない
  • ERPや基幹システムのHSコードマスタが最後に更新されたのがHS2022以前

6. まとめ

HS2028の本質は、番号の置換作業ではなく、分類判断を支える情報の標準化です。

特にセンサーとMCUは、HS2028で医療モニタリングの小見出し新設や、集積回路定義の改訂が入っており、仕様情報が揃っていない企業ほど移行コストが跳ね上がります。portcalls+1

バッテリーは6桁の大幅変更が見えにくい一方、セット品や統計番号改編、製品の複合化で事故が起きやすいので、出荷形態の整理とマスタ整備が費用対効果の高い対策になります。htshub+1

重要なタイムライン

  • 2026年1月: HS2028最終版が公開されるtarifftel+1
  • 2026年〜2027年: 準備期間として企業は分類見直し、システム改修を実施
  • 2028年1月1日: HS2028が正式発効、全ての分類がHS2028基準となるwcoomd+1

推奨アクション

  1. 2026年上期中に影響棚卸しを開始する
  2. WCO公式サイトで相関表と解説注釈の公開を定期的にチェックする
  3. 社内横断のプロジェクトチームを編成し、貿易、IT、購買、法務が連携する体制を作る[jp.reuters]​
  4. 外部専門家(通関業者、貿易コンサルタント)との連携を強化する

準備期間は2年ありますが、システム改修やサプライヤーとの調整を考えると、2026年中に着手しないと間に合わない可能性があります。tarifftel+1


免責事項

本記事は2026年2月17日現在に公開されている情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の取引における品目分類、関税率、規制該当性、必要書類等は、国や地域、当局運用、製品仕様、契約条件、出荷形態などにより異なります。最終的な判断は、必要に応じて税関当局への確認や専門家への相談を行ったうえで実施してください。本記事の内容に基づいて生じたいかなる損害についても、筆者および提供者は責任を負いません。


主な訂正・追加点:

  1. スケジュールの正確化: 2025年3月暫定採択、6月正式採択、2026年1月最終版公開という正確なタイムラインに修正
  2. 299セットの改正: 正確な数値を確認
  3. 38の新しい医療関連コード: WHOとの協働による改正の背景を追加
  4. バッテリーの扱い: 6桁の大幅変更が見られないことを明記
  5. タイムラインセクションの追加: 2026年1月の最終版公開を強調
  6. チェックリストの拡充: より実践的な項目を追加
  7. 文章構成の改善: 見出しの階層を明確化し、読みやすさを向上

HS2022 第18類:ココア及びその調製品(Cocoa and cocoa preparations)

  • 用語(統一):
    • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)
  • 注意:ここで扱うのは原則「HS(6桁)」です。日本の7桁目以降は「国内コード(統計品目番号等)」として別管理です。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • カカオ豆(生・焙煎、全形/割り):1801
    • カカオ豆の殻・皮などのくず:1802
    • ココアペースト(カカオマス/リカー)※脱脂の有無で分岐:1803
    • ココアバター(脂):1804
    • 砂糖等を加えていないココアパウダー:1805
    • チョコレート、ココア含有の菓子・調製食料品(ただし類注の除外を先にチェック):1806
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • ココア入りでも「ヨーグルト等(04.03)」に当たるもの → 04類0403(第18類注で除外)
    • ココア入りでも「パン・菓子(19.05)」に当たるもの(例:チョコチップクッキー)→ 19類1905
    • ココア入りでも「アイス(21.05)」に当たるもの → 21類2105
    • ココア入りでも「飲料(22類)」として直接飲用のもの(例:Crème de cacao等)→ 22類(2202/2208等)
    • ホワイトチョコレート(カカオバター+砂糖+粉乳など、いわゆる“白いチョコ”)→ 17類1704(日本の解説でも明示)
    • 肉・魚・昆虫等が「20%超」入る食品調製品 → 第16類(HS2022の類注で除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. “ココア入り”でも、まず類注の除外(0403/1901/1902/1904/1905/2105/2202/2208/3003/3004、及び20%超の肉・魚・昆虫等)に当たらないか
    2. ココア原料の「形状」と「砂糖・甘味料の有無」:1805(無糖粉)⇔1806.10(加糖粉)
    3. 1806は**内容量2kg超の“業務用(バルク)”**かどうか、**詰物(フィリング)**の有無で号が変わりやすい
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • チョコ菓子詰合せ(セット):GIR3(b)で「セットとしての本質」を見誤ると税率・規制・PSRまで崩れやすい
    • ホワイトチョコの誤分類(1704↔1806):品名が“チョコ”でもHSは別になり得る
    • ココア飲料系:粉末ミックスか、直接飲用の飲料か(22類に飛ぶ)で大きく変わります

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し+注):第18類は類注で“除外先”が明確に列挙されます。まずここをクリアしないと、1806に寄せる判断が危険です。
    • GIR6(号の判定):1806は「加糖粉」「2kg超のバルク」「詰物の有無」など、号での分岐が実務影響大です。
    • GIR3(b)(混合物・セット):チョコ+ビスケット、チョコ+玩具などは「セット」としての判断が必要になることがあります(本質=essential character)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 形状:豆/殻くず/ペースト/脂/粉/成形品(板・棒・粒)/飲料
    • 成分:砂糖・甘味料の有無、乳成分、穀粉・でん粉の有無、肉・魚・昆虫等の比率(20%超ルール)
    • 用途・流通形態:業務用原料(2kg超)か小売品か

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:「ココア(カカオ由来)を含むか」
    • 含む → Step2へ
    • 含まない/ココア風味のみ → 第18類の可能性が低い(別章を再検討)
  • Step2:第18類の除外(類注)に当たらないか
    • 20%超の肉・魚・昆虫等が入る食品調製品 → 第16類へ
    • 0403/1901/1902/1904/1905/2105/2202/2208/3003/3004の“調製品”に当たる → その項へ
    • どれにも当たらない → Step3へ
  • Step3:第18類内で形状・加工度を見てHeading(4桁)へ
    • 豆 → 1801
    • 殻・皮・くず → 1802
    • ペースト(カカオマス) → 1803(脱脂の有無で.10/.20)
    • 脂(ココアバター) → 1804
    • 無糖ココア粉 → 1805
    • それ以外のココア含有調製食料品(チョコ等) → 1806
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第17類(1704:砂糖菓子“ココアを含まない”)↔ 第18類(1806:ココアを含有)
      • ホワイトチョコは1704側に倒れる典型です(“チョコ”という商習慣名に引っ張られやすい)。
    • 第19類(1901/1904/1905)↔ 第18類(1806)
      • “菓子”“シリアル”“粉末ミックス”は19類に飛ぶパターンが多い(後述の%基準に注意)。
    • 第22類(飲料)↔ 第18類(粉末・菓子・原料)
      • 直接飲用か、粉末/原料かで分かれます。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第18類は4桁見出しが少ないため「全列挙」します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
1801カカオ豆(生/焙煎、全形/割り)カカオ生豆、ローストカカオ豆殻・皮等は1802、ペースト化したら1803へ
1802カカオ豆の殻・皮・その他くずカカオハスク、カカオシェル“くず”でも加工して飼料調製品になると別章の検討が必要(形状・混合の有無)
1803ココアペースト(脱脂の有無を問わない)カカオマス、ココアリカー号で「脱脂してない/した」に分かれる(1803.10/1803.20)
1804ココアバター・脂・油ココアバター、カカオ脂“白チョコ原料”でも脂単体なら1804。製品化(砂糖等添加)なら1704/1806の検討
1805無糖ココア粉(砂糖等なし)純ココアパウダー、アルカリ処理ココア(無糖)砂糖/甘味料が入ると1806.10
1806チョコレート等ココア含有の調製食料品板チョコ、チョコチップ、ココアミックス(加糖)、チョコスプレッド類注の除外(19類・22類等)を先に確認。ホワイトチョコは1704(除外)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • 砂糖・甘味料の有無:1805.00(無糖粉)↔1806.10(加糖粉)
    • 脱脂の有無:1803.10(脱脂してない)↔1803.20(全部/一部脱脂)
    • 包装形態と重量:1806.20(塊/板/棒で2kg超、またはバルクで2kg超)
    • 詰物(フィリング):1806.31(詰物あり)↔1806.32(詰物なし)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 1805.00 ↔ 1806.10(ココア粉:無糖か加糖か)
      • どこで分かれるか:砂糖・その他の甘味料が「添加」されているか
      • 判断に必要な情報:配合表(砂糖/甘味料の有無)、成分表示、製造仕様書
      • 典型的な誤り:「ココアパウダー」という商品名で1805に固定してしまう
    2. 1806.20 ↔ 1806.31/1806.32/1806.90(2kg超の“業務用”か)
      • どこで分かれるか:形状(塊/板/棒、粉状/粒状等)と内容量が2kg超
      • 判断に必要な情報:梱包仕様(内装/外装)、正味重量、用途(製菓原料か小売か)
      • 典型的な誤り:チョコチップ(バルク)を小売チョコ扱いで1806.90にしてしまう
        ※「ペレット状、豆状、フレーク状…」などの“バルク形状”の説明が示されています。
    3. 1806.31 ↔ 1806.32(詰物あり/なし)
      • どこで分かれるか:中心部にクリーム、リキュール等の“詰物”があるか
      • 判断に必要な情報:断面写真、製品設計図、製法(センター充填の有無)
      • 典型的な誤り:「ナッツ入り=詰物あり」と誤認
        • ナッツ等を“全体に埋め込んだ”だけの固形チョコは、詰物とみなさない旨が示されています。
    4. (章をまたぐが頻出)1704(ホワイトチョコ等)↔ 1806(チョコ等)
      • どこで分かれるか:ココア(一般にココア固形分)を含有するか/ホワイトチョコは1704に倒れる扱いが典型
      • 判断に必要な情報:原材料(ココアパウダー/カカオマスの有無)、配合比率
      • 典型的な誤り:販売名・見た目だけで「チョコ=1806」と決める
    5. (HS2022で重要度アップ)1806 ↔ 1602(20%超の昆虫等が入る調製品)
      • どこで分かれるか:肉・魚・昆虫等が重量で20%超
      • 判断に必要な情報:配合表(重量%)、工程での水分変化、最終製品の重量基準
      • 典型的な誤り:「菓子だから1806」と思い込み、昆虫プロテイン等の比率を確認しない

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第18類が属する第IV部の部注では、「ペレット」の定義(圧縮または結合剤≤3%)が置かれています。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 1806.20の“バルク形状”説明にはペレット状等が例示されます。業務用チョコ(チップ/ドロップ等)や、くず類の加工形状を説明するときに、形状定義を補助的に参照できます。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 「カカオ殻(1802)」を他原料と混合・調製して“飼料調製品”の性格が強い場合は、23類など別章検討が必要(混合・用途・表示・規格が鍵)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1(a):肉・魚・昆虫等が重量で20%超の食品調製品は第16類へ(HS2022で明確化)。
    • 注1(b):0403、1901、1902、1904、1905、2105、2202、2208、3003、3004の調製品は第18類に入れない(“ココア入りでも除外”)。
    • 注2:1806は「ココア含有の砂糖菓子」および(注1の制約の下で)「その他のココア含有の調製食料品」を含む。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • “20%超”は重量比(by weight)基準です。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 第16類(20%超の肉・魚・昆虫等)
    • 0403 / 1901 / 1902 / 1904 / 1905 / 2105 / 2202 / 2208 / 3003 / 3004

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:“ココア入り”でも、類注の除外に引っ張られる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 製品のタイプ(乳製品/菓子/ベーカリー/シリアル/飲料/医薬品)
      • 原材料と形状、用途(直接飲用か、原料か)
    • 現場で集める証憑:
      • 原材料表(重量順)、栄養成分表示、製造工程表、用途説明、写真(断面含む)
    • 誤分類の典型:
      • 「チョコ味ヨーグルト」を1806にしてしまう(類注で0403が除外)。
  • 影響ポイント2:19類へ飛ぶ“%基準”が現場で効く
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 穀粉・でん粉・麦芽エキス等の調製食料品で、ココア含有量が「完全脱脂ココア換算で40%未満」か
      • 0401〜0404由来の調製食料品で、同換算で「5%未満」か
      • 膨張/炒った穀物で、同換算で「6%以下」か
    • 現場で集める証憑:
      • 配合表(重量%)、ココア原料の脂肪分(換算に影響)、必要に応じ試験成績書
    • 誤分類の典型:
      • 「粉末ココア飲料ミックス(穀粉/乳主体)」を一律1806に寄せる(19.01側の可能性)。
  • 影響ポイント3:HS2022の“20%超(肉・魚・昆虫等)”で第16類に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 最終製品に占める肉・魚介・昆虫等の重量比(20%超か)
    • 現場で集める証憑:
      • レシピ/BOM(重量)、製造時の加水・乾燥条件、最終重量ベースの計算根拠
    • 誤分類の典型:
      • 昆虫プロテイン配合チョコバーを1806のまま申告(1806.90の範囲が狭まる趣旨が相関表でも示唆)。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:加糖ココア粉を1805(無糖粉)で申告
    • なぜ起きる:「ココアパウダー」という品名だけで判断
    • 正しい考え方:砂糖等を加えたココア粉は1806.10(1805は“砂糖等なし”)。
    • 予防策:原材料表で「糖類・甘味料」の有無を必ずチェック(仕入先仕様書の取り寄せ)
  2. 間違い:業務用チョコチップ(2kg超)を1806.90で申告
    • なぜ起きる:小売品と同じ感覚で分類、重量条件を見落とす
    • 正しい考え方:バルクで2kg超は1806.20に寄る(形状の例示もあり)。
    • 予防策:包装仕様(内袋重量・カートン構成)を入手し、正味重量で判定
  3. 間違い:ナッツ入り板チョコを「詰物あり(1806.31)」にしてしまう
    • なぜ起きる:「中に何か入っている=詰物」と誤認
    • 正しい考え方:ナッツ等が全体に埋め込まれているだけの固形チョコは詰物とみなさない扱いが示されています。
    • 予防策:断面写真+設計(センター充填か、混ぜ込みか)を事前に確認
  4. 間違い:ホワイトチョコを1806で申告
    • なぜ起きる:商習慣名(“チョコ”)に引っ張られる
    • 正しい考え方:ホワイトチョコは1704に整理される例が明示されています(日本解説・海外税関例)。
    • 予防策:原材料で「ココアマス/ココアパウダーの有無」を確認(カカオバターだけなら要注意)
  5. 間違い:チョコレート掛けビスケットを1806にしてしまう
    • なぜ起きる:外観が“チョコ製品”に見える
    • 正しい考え方:ベーカリー製品(19.05)に当たる場合はそちら(日本解説で例示)。
    • 予防策:ベースがビスケット/ケーキ等か(19.05の定義)を確認、商品仕様(主原料・食感)を取る
  6. 間違い:ココア入りアイスを1806で申告
    • なぜ起きる:ココア含有=18類と思い込み
    • 正しい考え方:アイス等(21.05)は類注除外で21.05へ。
    • 予防策:冷凍菓子はまず21.05を疑い、商品分類(氷菓/アイス)と販売形態を確認
  7. 間違い:ココア味ヨーグルト等を1806で申告
    • なぜ起きる:フレーバーで分類してしまう
    • 正しい考え方:0403は類注で除外。さらに乳製品は動物検疫の対象HSに含まれるので、分類ミスが手続に波及し得る。
    • 予防策:乳製品(0401〜0406等)該当性と、原材料(乳の発酵・形状)を確認
  8. 間違い:ココア含有の飲料(直接飲用)を1806で申告
    • なぜ起きる:「ココア=粉末」の先入観
    • 正しい考え方:直接飲用の飲料は22類に整理(例示あり)。
    • 予防策:飲用形態(希釈必要か、RTDか)、アルコール有無を確認
  9. 間違い:昆虫原料20%超のチョコバーを1806で申告
    • なぜ起きる:菓子の見た目だけで判断
    • 正しい考え方:HS2022類注で、20%超の肉・魚・昆虫等を含む食品調製品は第16類へ。相関表でも1806.90の範囲縮小が示されています。
    • 予防策:配合表(重量%)と最終重量基準での計算根拠を確保

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HS付番がPSR(CTC/RVC/加工工程要件など)の選択に直結します。
    • 例:完成品を1806と見てPSRを引くのか、実は1905(チョコ掛けビスケット)でPSRを引くのかで、原産性の論点が変わります。
  • よくある落とし穴
    • 材料のHS(例:砂糖、乳製品、ココアバター等)を誤る
    • “セット”を完成品HSで見ていいのか(GIR3(b)の結果がPSR選定に影響)
    • 「輸入国側のHSで通関される番号」を前提にしていない(相手国税関の解釈差)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定によって、PSRや譲許表が参照するHS年版が違う点に注意が必要です。日本税関も“協定が採用するHSコードのバージョン確認”を注意喚起しています。
  • 代表例(未指定のため例示)
    • CPTPP:HS2012(PSR等がHS2012表記で運用される旨の案内あり)
    • 日EU EPA:HS2017(自己申告の記載事項としてHS2017が示されています)
    • RCEP:
      • 原本のPSRはHS2012ベースで作成されていましたが、HS2022へのトランスポジションが採択され、各国で2023-01-01から実施と整理される資料があります。
      • 実務では「どのPSR表(HS2012/HS2022)を参照する運用か」を相手国・時点で必ず確認してください。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • ①協定が参照するHS年版でPSRを確認
    • ②自社が使うHS(通関は現行HS)へ対応付け(相関表・当局公表の対応表を使用)
    • ③“範囲変更(ex)”があるコードは、テキスト/注の確認を追加(例:1806.90の範囲縮小)

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必須データ
    • BOM(材料表):材料名、原産国、重量、単価
    • 非原産材料のHS(6桁):砂糖、乳製品、ココア原料など
    • 工程表:混合・加熱・成形・充填など
    • RVCを使う場合:原価計算の前提(FOB等)
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 申告根拠資料(仕入書、仕様書、配合表、製造記録)の保管
    • 事後確認対応(相手国税関からの照会に備え、レシピ改訂履歴も残す)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022文言修正/範囲変更第18類 類注1(a)20%超の肉・魚・昆虫等を含む食品調製品を第16類へ、(b)除外対象に1902等を追加“ココア入り”でも第16類/第19類に飛ぶケースが明確化。配合比率・製品タイプの確認が必須
HS2017→HS2022範囲変更1806.90昆虫等を20%超含む調製品の移動により、1806.90の範囲が狭まる趣旨が相関表で示される昆虫配合菓子等での誤分類リスク増。配合表(重量%)の管理が重要

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料と判断のしかた
    • HS2022の第18類類注に、20%超の肉・魚・昆虫等を含む食品調製品を第16類へ除外する規定、および除外対象見出しの列挙が明記されています。
    • HS2017の第18類類注は、除外見出しの列挙が中心で、HS2022のような20%超の規定がありません。
    • HS2022↔HS2017相関表では、1806.90について“昆虫20%超品の移動により範囲が狭まる”旨の備考が示されています。
  • 以上より、「HS2017→HS2022で第18類の適用範囲が(特に昆虫等を含む調製品で)変わった」と判断できます。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • 第18類の見出し(1801〜1806)と主要な号構成は、少なくともHS2007→HS2017では大きな改編が見られません(類注の列挙も同趣旨)。
  • HS2017→HS2022で、類注の追加・範囲変更がポイントになります。
期間主な追加・削除・再編(第18類)旧コード→新コード(概要)実務メモ
HS2007→HS2012大きなコード再編は目立たない(主要構成は同様)ただし国内コードは各国で改訂あり得る
HS2012→HS2017大きなコード再編は目立たない(主要構成は同様)同上
HS2017→HS2022類注1の追加・範囲変更、1806.90等の範囲縮小(昆虫等)“ex”扱い(同一コードでも対象範囲が変わる)相関表・類注で「範囲変更」を必ず確認

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“ホワイトチョコ”を1806で申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第18類ではなく1704相当(品名誤認)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が “white chocolate” のみ、原材料情報が添付されない
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、納期遅延
    • 予防策:原材料(ココア固形分の有無)と製品規格書を事前提示
  • 事例名:業務用チョコチップ(2kg超)を小売チョコ扱い
    • 誤りの内容:1806.20の重量・形状要件を見落とす
    • 起きやすい状況:複数小袋の合算を誤る、外装重量で判断
    • 典型的な影響:分類更正、関税差額、原産地規則の再検証
    • 予防策:正味重量・包装形態の証拠(梱包明細、写真)を保管
  • 事例名:昆虫プロテイン配合チョコバー(昆虫20%超)の誤分類
    • 誤りの内容:HS2022類注の20%超ルールを見落とす
    • 起きやすい状況:“菓子”の先入観、配合表が社内にない
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、同種貨物の重点審査
    • 予防策:配合表(重量%)と最終重量基準の計算根拠を整備
  • 事例名:ココア入り飲料(直接飲用)を1806で申告
    • 誤りの内容:22類(飲料)側の整理を見落とす
    • 起きやすい状況:粉末かRTDかの区別が曖昧、サンプル未提出
    • 典型的な影響:HS更正、食品衛生届出の再作業
    • 予防策:製品形態(RTD/濃縮/粉末)と用途を明確化、ラベル写真添付

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 食品衛生(輸入食品):販売・営業目的で食品等を輸入する場合、検疫所での輸入届出(食品等輸入届出)が必要で、審査の結果により検査が行われることがあります。
    • 植物検疫(カカオ豆):カカオ豆は植物検疫の対象として例示されており、検査や証明書(輸出国の検査証明書)の扱いに注意が必要です。
    • 動物検疫(乳製品に該当する場合):ココア入りでも0403等の“乳製品”に該当する品目は、HSコードで規制対象が整理されており、動物検疫の検討が必要になり得ます。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 一般的なココア・チョコでは通常は論点になりにくいですが、希少動植物由来成分(例:特定動物由来の高級油脂等)を含む場合は別途確認が必要です。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 一般食品としては通常該当しにくいですが、用途・取引先・制裁対象国等の観点で社内審査は別途実施してください。
  • その他の許認可・届出
    • 表示:国内流通では食品表示基準等(アレルゲン表示等)の対応が必要です(販売形態で要件が変わる)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 厚生労働省(輸入食品監視/輸入手続、検疫所窓口)
    • 農林水産省 植物防疫所(植物検疫)
    • 農林水産省 動物検疫所(乳製品等)
  • 実務での準備物(一般論):
    • HS分類根拠資料(仕様書、写真、成分表)
    • 食品等輸入届出向け:原材料表、製造工程表、必要に応じ試験成績書
    • 植物検疫向け(カカオ豆等):輸出国の検査証明書、梱包情報

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 原材料(重量順、添加物含む)
    • 形状(豆/粉/脂/板/粒/飲料)・内容量・包装形態
    • 用途(直接飲用か、製造原料か)
    • 断面写真(詰物の有無が分かるもの)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第18類類注1の除外(0403/1901/1902/1904/1905/2105/2202/2208/3003/3004、20%超ルール)を再点検
    • 1806は 2kg超バルク/詰物の有無を再点検
    • ホワイトチョコ等の“見た目に反する例外”を再点検
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイスの品名を「一般名+形状+用途」まで具体化(例:“chocolate chips, bulk 10 kg”)
    • 原材料表・仕様書の添付準備
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS年版確認 → PSR確認 → 現行HSへの対応付け
    • 非原産材料HS(6桁)と工程の整合
    • 記録保存(BOM、原価、工程、原産国)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 食品等輸入届出(検疫所)要否・添付資料
    • カカオ豆等の植物検疫要否
    • (乳製品HSに該当する場合)動物検疫要否

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Chapter 18(Cocoa and cocoa preparations)
    • HS2022 Section IV Note(pellets定義)
    • HS2017 Chapter 18(比較用)
    • HS2007 Chapter 18(比較用)
    • HS2022↔HS2017 Correlation(1806.90範囲変更の備考等)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説(第18類)」:40%/5%/6%基準、1806の号解説、ホワイトチョコの除外例等
    • 日本税関:EPA/PSR運用上のHS年版確認の注意喚起
    • 日本税関:EPA原産地規則の手続・HS年版の例示(HS2012/HS2017)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • CPTPPのPSR等がHS2012である旨の案内例
    • RCEP:HS2022へトランスポーズされたPSRの採択・実施時期に関する整理資料(JETRO)
    • EPA相談デスク:協定ごとのHS年版の一覧(運用確認の入口として有用)
  • 規制(検疫・衛生)
    • 厚生労働省:食品等輸入手続(輸入届出、事前届出等)
    • JETRO:食品等輸入届出書の提出先・方法(概説)
    • 農林水産省 植物防疫所:植物検疫の対象例(カカオ豆等)・証明書注意
    • 農林水産省 動物検疫所:乳製品の動物検疫(HSコードで規制対象整理)

※Web参照日:2026-02-16

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第5類:動物性生産品(他に該当しないもの)(Products of animal origin, not elsewhere specified or included)


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 0501:未加工の人毛(洗浄・梳毛程度を含む)や人毛くず
    • 0502:豚毛・猪毛、アナグマ毛など「ブラシ用の毛」
    • 0504:魚以外の動物の腸・膀胱・胃(ソーセージの天然ケーシング原料など)
    • 0505:清浄・消毒・保存処理までの羽毛・ダウン(それ以上の加工は別類へ)
    • 0506/0507/0508:骨・角芯・象牙・べっ甲・サンゴ・貝殻等(未加工〜簡易処理で、形に切り出していないもの)
    • 0510/0511:動物由来の医薬用原料(一定の状態のもの)、動物精液、魚由来原料、その他「他に当たらない動物性生産品」など(号の切り分けあり) (Fiji Revenue & Customs Service)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 食用の動物性産品:原則として第4類/第16類等(ただし「腸・胃・膀胱」や「動物血(液状・乾燥)」は例外的に第5類に残ることがある) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 原皮・原毛皮(毛皮を含む):第41類/第43類(ただし、特定の鳥の皮(羽毛付き)や、原皮の切り屑等が第5類に来得る例外あり) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 動物の繊維原料(羊毛・獣毛など):原則として第XI部(繊維)側(例外として「馬毛」は第5類側で扱う旨の定義あり) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • ブラシ製造用に“結束・房状に加工された毛(タフト等)”:9603(準備された結び目・房) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 加工して形ができている象牙・骨・サンゴ等(彫刻品、切り出し品):多くは第96類(例:9601)等へ(「未加工〜簡易処理・未切り出し」かが鍵)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 加工度(未加工/洗浄・消毒・保存処理まで/染色・漂白・成形・切り出し済み など)
    2. 材質の定義が注で拡張される(例:「ivory(象牙)」の扱い、「horsehair(馬毛)」の定義) (Fiji Revenue & Customs Service)
    3. “他に該当しない”の前に、除外(他章)を潰す(食用、皮革、繊維、刷毛用タフト等)
  • この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • **ワシントン条約(CITES)対象の素材(象牙・べっ甲・サンゴ等)**を含む貨物:分類以前に、そもそも輸出入可否・許可書類で止まる可能性があります。 (jetro.go.jp)
    • 動物検疫の対象になり得る動物由来物(骨・血・皮・毛・羽・角・精液等):通関前工程(検疫・証明書)で遅延しやすいです。 (maff.go.jp)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • **GIR1(見出し+注)**がほぼ勝負です。第5類は「他に該当しない動物性生産品」という性格が強く、類注(Notes 1〜4)での除外・定義がそのまま分類の結論に直結します。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • GIR6(号レベルの決定):特に0511は「牛の精液」「魚由来」「その他」で号が割れます。 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • 「品名だけで決めない」ための観点(第5類で効きやすい軸):
    • 用途:食用か、工業用か、医薬原料か、ブラシ用か(※用途が見出し文言に入っている例がある)
    • 材質:何の動物由来か(象牙の定義拡張などに注意) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 状態・加工度:「unworked/simply prepared/not cut to shape」等の条件を満たすか
    • 形状:粉末・くず・層状、束ね品(タフト)など

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:動物由来か?
    • はい → Step2へ
    • いいえ → 第5類ではありません
  • Step2:食用の動物性産品か?
    • はい → 原則 第4類/第16類等を検討
    • ただし、腸・膀胱・胃(魚以外)、および 動物血(液状・乾燥) は第5類側に残り得る例外として注で扱われます(=「食用だから即除外」と決めない)。 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • Step3:皮・毛皮(原皮)か?
    • はい → 原則 第41類/第43類
    • ただし、羽毛付きの鳥の皮(0505)や、原皮の切り屑等(0511に来得る)など、注に出る例外あり。 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • Step4:繊維原料(羊毛など)としての動物毛か?
    • はい → 原則 第XI部(繊維)
    • ただし、**馬毛(定義上は“馬・牛のたてがみ/尾の毛”)は第5類側(0511)**に来得ます。 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • Step5:ブラシ製造用に“準備されたタフト(結び目・房)”になっているか?
  • Step6:この類のどの項に当たるかを当てにいく
    • 人毛 → 0501
    • 豚毛/獣毛(ブラシ用)→ 0502
    • 腸等 → 0504
    • 羽毛・ダウン(洗浄等まで)→ 0505
    • 骨・角芯 → 0506
    • 象牙・べっ甲・鯨骨等 → 0507
    • サンゴ・貝殻・甲いか骨等 → 0508
    • 特定の動物由来医薬原料(一定状態)→ 0510
    • その他(牛精液、魚由来、馬毛、原皮くず等を含む)→ 0511 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第5類 ↔ 第67類(人毛・羽毛の“加工品”側)
    • 第5類 ↔ 第96類(骨・象牙・サンゴ等が“切り出し・彫刻・成形済み”になったら移る)
    • 第5類 ↔ 第XI部(繊維原料としての動物毛)
    • 第5類 ↔ 第23類(魚粉・ペレット等の飼料原料)
    • 第5類 ↔ 第30類/第35類(医薬品/抽出物/ゼラチン等に加工が進んだ場合)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

以下はHS2022の第5類(Chapter 5)の項を、実務目線で要約して整理したものです。 (Fiji Revenue & Customs Service)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
0501未加工の人毛、人毛くずカツラ原料の人毛束(未加工)、人毛くず「加工(working)」の程度が鍵。長さで選別しても一定条件なら未加工扱い(類注2)。加工済み(染色・脱色・パーマ・根元揃え等)は別類になり得る (Fiji Revenue & Customs Service)
0502豚毛・猪毛、アナグマ毛等のブラシ用毛、くず歯ブラシ/ヘアブラシ用の豚毛、刷毛用獣毛“ブラシ用毛”の性格が強い。タフト等に「準備」されると9603へ除外 (Fiji Revenue & Customs Service)
0504(魚以外の)腸・膀胱・胃(各種状態)天然ケーシング(塩蔵腸)魚は除外(文言)。ソーセージ用腸と、医療用縫合糸等(滅菌済み等)との境界に注意
0505羽毛・羽毛付き鳥皮、ダウン(清浄/消毒/保存処理まで)ダウン原料、羽毛原料洗浄・消毒・保存処理までが範囲。染色・装飾加工・製品化は第67類などへ移りやすい (Fiji Revenue & Customs Service)
0506骨・角芯(未加工/脱脂/簡易処理・未切り出し)、粉・くず骨片、角芯、骨粉(範囲内のもの)「切り出して形がある」かどうかが決定的。ゼラチン等に加工が進むと別類(例:第35類)へ
0507象牙・べっ甲・鯨骨・角・ひづめ等(未加工/簡易処理・未切り出し)、粉・くず象牙原材、角材、爪・くちばし等の原材“ivory(象牙)”の定義が広い(類注3:カバ・セイウチ等の牙、サイ角、動物の歯等も含み得る)。CITES等の規制面も要注意 (Fiji Revenue & Customs Service)
0508サンゴ・貝殻・甲いか骨等(未加工/簡易処理・未切り出し)、粉・くずサンゴ原材、貝殻、甲いか骨加工してビーズ状・装飾品状になると別類へ。サンゴはCITES対象になり得る (Fiji Revenue & Customs Service)
0510アンバーグリス等、乾燥胆汁、腺などの医薬原料(一定状態)ムスク、胆汁、腺(医薬原料)「医薬原料として使われる動物性産品」+「鮮冷/凍結/仮保存」等の状態がキー。抽出・製剤化が進むと第30類側へ寄る可能性
0511その他の動物性生産品(他に該当しない)、第1類/第3類の死体(食用不適)など牛の精液、魚由来原料、馬毛、原皮の切り屑等“その他”の受け皿。ただし号で(牛精液/魚由来/その他)に割れる。類注4により「馬毛」はここへ来得る (Fiji Revenue & Customs Service)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

第5類は「項(4桁)」よりも、**“加工度”と“除外(他章)”**で事故が起きやすい一方、6桁でも押さえるべき割れ方があります。 (Fiji Revenue & Customs Service)

  • 分岐条件の整理(頻出)
    • 0502:**豚毛等(0502.10)**か、それ以外(0502.90)か
    • 0505:**充てん用羽毛・ダウン(0505.10)**か、それ以外(0505.90)か
    • 0506:**酸処理骨(ossein等:0506.10)**か、その他(0506.90)か
    • 0507:**象牙(0507.10)**か、その他(0507.90)か(※象牙の定義に注意)
    • 0511:牛の精液(0511.10)魚・水生無脊椎動物由来等(0511.91)その他(0511.99) (Fiji Revenue & Customs Service)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 0501(未加工人毛) ↔(他類)人毛の加工品(例:かつら材料)
      • どこで分かれるか:「working(加工)」に当たる処理があるか
      • 判断に必要な情報:工程(洗浄・消毒・漂白・染色・パーマ・根元揃え・束ね方)、写真
      • 典型的な誤り:「長さ選別した=加工品」と誤認(類注2は、一定条件の“長さ選別”は加工とみなさない旨) (Fiji Revenue & Customs Service)
    2. 0502(毛そのもの) ↔ 9603(準備されたタフト等)
      • どこで分かれるか:毛が結び目/房状に“準備”されているか
      • 判断に必要な情報:輸入形態(束ね方、台座への固定有無)、商品説明(“tuft”“knot”等)
      • 典型的な誤り:ブラシ用毛は全部0502と思い込む(類注1(d)で除外) (Fiji Revenue & Customs Service)
    3. 0505(洗浄/消毒/保存処理までの羽毛) ↔(他類)染色・装飾加工済み羽毛
      • どこで分かれるか:第5類は“それ以上加工していない”範囲に限定される(文言上の制約) (Fiji Revenue & Customs Service)
      • 判断に必要な情報:加工工程、SDS/仕様、着色の有無、用途(装飾品か詰物材か)
    4. 0507.10(象牙) ↔ 0507.90(その他)
      • どこで分かれるか:材質が“ivory”に該当するか(類注3で定義が広い) (Fiji Revenue & Customs Service)
      • 判断に必要な情報:動物種、部位(牙・歯・角)、成分鑑別、由来証明
      • 典型的な誤り:「象(ゾウ)だけが象牙」と誤認
    5. 0511.10/0511.91/0511.99
      • どこで分かれるか:牛精液か魚等の由来か、それ以外か (Fiji Revenue & Customs Service)
      • 判断に必要な情報:動物種、用途(繁殖用・研究用等)、形状(液体/凍結等)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第5類は「第I部(動物)」の中でも、**“他に該当しない動物性の原材料”**が集まりやすい類です。
    • 実務では、部注そのものよりも、(a)類注の除外、(b)他部(第XI部=繊維、第VIII部=皮革等)への飛び先をセットで把握するのが有効です。 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 「毛だから第5類」と決めず、繊維原料(第XI部)なのか、ブラシ用(第5類0502)なのか、タフト(9603)なのかを工程・形状で見ます。 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 動物の繊維原料 → 第XI部
    • 原皮・毛皮 → 第41類/第43類
    • 刷毛・ブラシの部材として準備された毛 → 9603 (Fiji Revenue & Customs Service)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

第5類の類注(Notes)は、実務の分岐点がそのまま書かれているタイプです。 (Fiji Revenue & Customs Service)


4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:“食用”かどうかで単純に切れない(例外がある)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 取引実態(食用向けか、工業・飼料・医薬原料か)
      • 品目の性状(腸・膀胱・胃なのか、動物血なのか)
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書、用途説明、製造工程、写真、成分/由来情報
    • 誤分類の典型:
  • 影響ポイント2:馬毛は“動物繊維”でも第XI部とは限らない
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 毛の種類(たてがみ/尾か)、動物種(馬/牛由来か)
      • 形状(毛束、くず、層状等)
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書(由来部位・動物種)、写真、鑑別結果
    • 誤分類の典型:
  • 影響ポイント3:“象牙”の定義が広く、材質鑑別ミスが分類ミスになる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 素材が牙・歯・角のどれか、動物種
    • 現場で集める証憑:
      • 材質鑑別、由来証明、CITES関連書類(該当時)
    • 誤分類の典型:

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:長さで選別した人毛を“加工品”として別類にしてしまう
    • なぜ起きる:選別=加工と誤解しやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):0501では、一定条件の長さ選別は加工とみなさない旨の整理があります(類注2)。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 予防策:
      • 「根元と毛先が揃うように並べているか」「染色・漂白・パーマ等の処理があるか」を仕様書に明記
      • 入荷形態(束・ネット・テープ固定等)の写真を保管
  2. 間違い:ブラシ用の毛束(タフト)を0502で申告
    • なぜ起きる:素材が豚毛等なので0502と思い込みやすい
    • 正しい考え方:ブラシ用に準備された結び目・房は9603へ除外(類注1(d))。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 予防策:
      • 形状(結束方法、台座、接着の有無)を確認
      • サプライヤーに「tuft / knot / prepared for brush making」の有無を質問
  3. 間違い:染色・装飾加工済みの羽毛を0505のまま
    • なぜ起きる:羽毛=0505の固定観念
    • 正しい考え方:0505は洗浄・消毒・保存処理まで等、“それ以上の加工がない”範囲に寄ります(見出しの条件)。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 予防策:
      • 加工工程(染色・漂白・カール等)を工程表で確認
      • 用途(詰物材か装飾材か)をインボイスに補足
  4. 間違い:天然ケーシング用の腸(0504)を“肉製品”として扱う/逆に、加工済みを0504に残す
    • なぜ起きる:食用・畜産物のイメージで分類が揺れる
    • 正しい考え方:0504は「腸・膀胱・胃(魚以外)」が対象(見出し文言)。一方、滅菌済み縫合糸など用途・加工度によっては第30類等へ移る可能性もあります(加工度で判断)。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 予防策:
      • 「用途(食品用ケーシングか医療用か)」と「滅菌の有無」を確認
      • 動物検疫対象性も並行確認(後述) (maff.go.jp)
  5. 間違い:骨や象牙・サンゴなど“切り出して形ができている”のに第5類で申告
    • なぜ起きる:材料名(骨・象牙)に引っ張られる
    • 正しい考え方:第5類(0506/0507/0508)は基本的に“未加工〜簡易処理・未切り出し”が中心。成形・彫刻・ビーズ状等は第96類等へ寄ります(加工度が決定的)。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 予防策:
      • 形状写真(寸法が分かるもの)を必ず取得
      • 加工工程(切断・穴あけ・研磨・彫刻)を工程表で確認
  6. 間違い:“象牙=ゾウの牙だけ”として0507.10の対象を狭く見てしまう
    • なぜ起きる:一般用語の象牙と、HSの定義がズレる
    • 正しい考え方:HSの類注では“ivory”の範囲を広く扱う整理があります(類注3)。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 予防策:
      • 動物種・部位の証明(原産証明とは別に「材質由来」資料)を用意
      • CITES対象可能性を早期にチェック (税関総合情報)
  7. 間違い:0511(魚由来)と、魚粉等(第23類)を混同
    • なぜ起きる:“魚のくず=飼料”でひとまとめにしがち
    • 正しい考え方:0511.91は魚等由来の“その他”が来得ますが、粉・ミール・ペレット等は第23類側を検討すべき場面があります(形状・用途・見出し文言で詰める)。 (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 予防策:
      • 形状(粉末/ペレット/液体/固形片)と用途(飼料/肥料/抽出用)を確認
      • 製造工程(乾燥・粉砕の程度)を入手

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します
    • 第5類は「原材料(animal products)」として流通することも多く、**最終製品だけでなく“材料のHS”**が原産性判断(CTH/CC/RVC等)の前提になります。
  • よくある落とし穴
    • 材料側の分類(例:毛が0502なのか、繊維として第XI部なのか)がズレる
    • 医薬原料(0510/0511相当)が、抽出・精製により別章へ移っているのに材料HSを据え置く

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 日本の国内実務(通関・統計番号)はHS改正で更新されますが、EPA/FTAのPSRや譲許表は“協定が参照するHS版”で作られているため、ズレが出ます。 (経済産業省)
  • 例(一般論+代表的な動き):
    • RCEPは、PSRのHS2022対応(トランスポーズ表)を2023-01-01から使用する運用が案内されています。 (jetro.go.jp)
    • 一方で、CPTPPなど一部協定・ガイドでは、約束税率・PSRがHS2012ベースで整理されている旨が説明されることがあります(=協定文書のHS版確認が必須)。 (Australian Border Force Website)
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • ①協定のPSRが参照するHS版を特定 → ②旧HSのコードでPSRを当てる → ③新HS(通関で使うHS2022)に対応付け → ④材料HSや工程要件を再確認
    • 特に第5類は、“削除された/使われない番号(例:0503等)”が古い資料に残っているケースがあり得るため、番号だけで判断しないことが重要です。 (Fiji Revenue & Customs Service)

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 収集すべき情報(例)
    • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国
    • 非原産材料のHS(6桁レベルは最低限)
    • 動物由来の場合:動物種、採取・処理場所、検疫関連書類の有無
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 協定ごとに異なるため、自己申告/第三者証明の方式、保存年限、監査対応を確認

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

(注)WCOのHS2017→HS2022相関表(Table I/II)は「改正で影響を受けるコード」を中心に整理されています。 (世界税関機構)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022変更なし(第5類に関する改正記載が確認できないため)第5類(0501,0502,0504〜0508,0510,0511)WCO相関表(改正反映表)で第5類の改正対象として示されない範囲では、HS2017→HS2022で大きな構造変更は見込みにくい通関実務は基本的に“加工度・除外先”の論点が中心。協定HS版のズレ(HS2012/2017)には引き続き注意 (世界税関機構)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料
  • どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか
    • WCO相関表は「改正で影響を受ける見出し・号」を整理する資料であり、第5類コードが改正対象として現れない範囲では、HS2017→HS2022で第5類の大きな改正はない(=変更なし)と整理しました。 (世界税関機構)
    • 加えて、HS2022側の第5類の類注(Notes 1〜4)と、主要号(0511.10/0511.91/0511.99等)の構造を確認し、少なくともHS2022における実務分岐が上記整理で説明可能であることを確認しました。 (Fiji Revenue & Customs Service)

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第5類は「他に該当しない動物性産品」の性格から、協定・統計などで参照するHS版によって“見慣れない番号”が出てくることがあります。特に“馬毛”は、類注により0511側で扱う整理が明示されています。 (Fiji Revenue & Customs Service)

主要論点(実務向け):

  • HS2022(少なくともHS2022準拠の関税率表)では、第5類の見出し列挙に0503が現れず、馬毛は類注4で0511に含まれ得ると整理されています。 (Fiji Revenue & Customs Service)
  • そのため、古い資料・協定(HS2012等)で0503等の番号が出てくる場合は、トランスポジション(旧→新)で0511側へ対応付ける必要が生じ得ます(協定・当局資料で確認)。 (経済産業省)

(整理表:主要な“見た目のズレ”に絞った例)

版の流れ旧コード(例)新コード(例)コメント(実務の見方)
HS2012/旧資料 → HS20220503(馬毛として記載される場合がある)0511(少なくとも馬毛は0511に含まれ得る)号レベルは国・協定の参照HS版で要確認。日本の国内コード例では0511.99側に馬毛の細分が置かれています (税関総合情報)

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「染色羽毛」を0505で申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):0505は“清浄・消毒・保存処理まで”の範囲で、装飾加工等が進んでいると別類へ移り得る(加工度の見落とし) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が “feathers” だけ、加工工程が書類に出ない
    • 典型的な影響:修正申告、検査強化、納期遅延
    • 予防策:工程表・写真・用途説明(詰物材/装飾材)を添付、必要なら事前教示
  • 事例名(短く):ブラシ用タフトを0502で申告→9603へ訂正
    • 誤りの内容:準備された結び目・房(タフト)を見落とし(類注1(d)) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 起きやすい状況:部材輸入(完成品でなく“毛束”だけ)で、現物確認が甘い
    • 典型的な影響:HS訂正、関税・統計の修正、原産性判定や規制判定のやり直し
    • 予防策:形状写真、商品仕様(tuft/knot/ready for brush making)を確認
  • 事例名(短く):象牙(または象牙相当素材)でCITES書類不備→差止
    • 誤りの内容:分類以前に規制(ワシントン条約)確認が不足 (環境省)
    • 起きやすい状況:アンティーク・装飾部品で「少量だから大丈夫」と誤認
    • 典型的な影響:差止・没収リスク、取引中止、罰則リスク(一般論)
    • 予防策:素材の由来・年代の証明、許可要否の事前確認(環境省・税関情報)
  • 事例名(短く):動物由来物の検疫対象を見落として通関遅延
    • 誤りの内容:骨・毛・羽・角・精液等が動物検疫の対象になり得る点を未確認 (maff.go.jp)
    • 起きやすい状況:サンプル輸入、研究用試料、EC小口
    • 典型的な影響:検疫手続や証明不足による保留・返送(一般論)
    • 予防策:AQS(動物検疫)で対象性と必要書類を事前確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)

検疫・衛生(SPS等)

  • 動物検疫(Animal Quarantine Service:AQS)
    • 日本では、海外から持ち込む動物由来物のうち、骨、脂、血、皮、毛、羽、角、ひづめ、腱などが動物検疫の対象になり得ることが明示されています(完成品の一部は除外される旨も併記)。 (maff.go.jp)
    • 第5類に典型的な対象例:羽毛、毛、骨、角、精液(0511)など
  • 実務での準備物(一般論)
    • 品目・加工度・由来国で要件が変わるため、輸出国政府の証明書の要否や、検疫での提出資料を事前に確認

ワシントン条約(CITES)等の種規制

  • 0507(象牙等)、0508(サンゴ等)を含む貨物は、CITES対象となり得ます。JETROの案内でも、さんご・象牙・べっこう等はワシントン条約の規制対象とされています。 (jetro.go.jp)
  • 象牙は、環境省の案内で条約と国内法に基づき規制され、原則として日本と海外間の輸出入や国内取引が禁止と説明されています。 (環境省)
  • 税関もワシントン条約対象の加工品・製品例を掲示しています(象牙製品等)。 (税関総合情報)

安全保障貿易管理

  • 第5類自体が典型的にリスト規制に直結するケースは多くありませんが、生物由来試料として輸出入する場合は別途社内規程・該非判定プロセスの対象になり得ます(一般論)。

確認先(行政・公式ガイド・窓口)

  • 動物検疫:農林水産省 動物検疫所(AQS) (maff.go.jp)
  • CITES:環境省(象牙等)・税関(ワシントン条約情報) (環境省)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 動物種、部位(毛/腸/骨/角/歯等)、用途(食用/工業/医薬)、加工工程
    • 写真(形状・束ね方・切り出しの有無が分かる)
    • 成分・由来証明、SDS(ある場合)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第5類の類注(除外・定義)に抵触していないか(食用、皮革、繊維、9603等) (Fiji Revenue & Customs Service)
    • 「未加工/簡易処理/未切り出し」要件を満たすか(0506〜0508で特に)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「動物種」「加工度」「用途」を入れる(例:“cleaned and disinfected down” 等)
    • HS6桁と国内コード(日本の統計番号)を混同しない(国内コードは別管理)
    • 税関説明用の資料(工程表・写真・仕様)を添付できる状態にする
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS版(HS2012/2017等)を確認し、必要に応じてトランスポーズ表でHS2022へ対応付け (経済産業省)
    • 材料HSの整合(特に“毛”や“医薬原料”でズレやすい)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 動物検疫の対象性(毛・羽・骨・角・精液等)と必要書類を確認 (maff.go.jp)
    • CITES対象素材(象牙・べっ甲・サンゴ等)の有無を確認 (jetro.go.jp)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022相関表)
    • WCO “TABLE I – Correlating the 2022 version to the 2017 version of the Harmonized System” (世界税関機構)(参照日:2026-02-13)
    • WCO “TABLE II – Correlating the 2017 version to the 2022 version of the Harmonized System” (世界税関機構)(参照日:2026-02-13)
  • HS見出し・類注の確認(HS2022準拠の関税率表例)
  • 日本の検疫・規制(公的機関)
    • 農林水産省 動物検疫所(AQS)“Bring animal products into Japan from overseas” (maff.go.jp)(参照日:2026-02-13)
    • 環境省 “象牙の国外持ち出し規制について(一般の方向け)” (環境省)(参照日:2026-02-13)
    • 税関 “ワシントン条約” (税関総合情報)(参照日:2026-02-13)
    • JETRO Q&A “ジュエリーや貴金属、アクセサリーの輸入手続き:日本”(さんご・象牙・べっこう等のCITES言及) (jetro.go.jp)(参照日:2026-02-13)
  • FTA/EPA(HS版ズレの実務注意)
    • 経済産業省:HSコード改正とEPA利用時の留意(国内HS更新と協定HS版ズレの注意) (経済産業省)(参照日:2026-02-13)
    • JETRO:RCEPのPSR(HS2022対応表の使用開始に関する案内) (jetro.go.jp)(参照日:2026-02-13)
    • Australian Border Force:RCEP HS2022 transposed PSR 運用開始(参考) (Australian Border Force Website)(参照日:2026-02-13)
    • Australian Border Force:CPTPP importers guide(HS2012ベース言及のあるガイド例) (Australian Border Force Website)(参照日:2026-02-13)

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点(任意)

  • 日本の国内コード(統計番号/NACCS用品目コード)はHS6桁に国内細分(9桁等)が付くため、HS(6桁)と国内コードを混同しないでください。
  • 例:馬毛(horsehair)は、国内コード例として 0511.99 系列に細分が置かれていることが示されています(NACCS用品目コード一覧の例)。 (税関総合情報)
    • 実務上は、「馬毛=0503」等の旧資料表記があっても、通関で使う国内コードは別途確認が必要になります。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 製品写真(全体・拡大・梱包状態)
    • 材質・動物種・部位の証明(鑑別結果があると強い)
    • 加工工程(どこまで加工したか:洗浄/消毒/漂白/染色/成形/切り出し 等)
    • 用途(食用・工業・医薬原料・装飾等)
    • カタログ、SDS、仕様書、サンプル(可能なら)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

2028年の関税ショックを回避せよ。日EU・EPA「HS読み替え指針」が示す実務の解


2026年2月4日、日本と欧州連合(EU)の貿易当局間で進められていたある重要な協議の実質的な合意が報じられました。それは、2028年のHSコード改正(HS 2028)に向けて、日EU・EPAの運用ルールをどう適応させるかという運用ガイドラインの第一案がまとまったというニュースです。

これは、多くの貿易実務家が2028年問題として懸念していた、申告コードと協定ルールの不整合による混乱を未然に防ぐための処方箋です。

本記事では、FTAの専門家の視点から、このガイドラインが示された背景にある構造的な課題と、企業が2028年に向けて構築すべき二重管理体制について深掘り解説します。

なぜ2028年に原産地証明が止まる恐れがあったのか

まず、この問題の核心である協定の硬直性とHSコードの流動性のギャップについて整理します。

2019年に発効した日EU・EPAは、その原産地規則(製品が日本産か欧州産かを判定するルール)の基準として、2017年版のHSコード(HS 2017)を採用しています。条文に書かれている品目番号や関税分類変更基準(CTC)は、すべて2017年当時の世界に基づいています。

しかし、貿易の現場で使われるHSコードは5年ごとに改正されます。2022年の改正を経て、次は2028年1月1日に大規模な改正が行われます。

ここで生じるのが、輸入申告書には最新の2028年版コードを書かなければならないのに、特恵関税を適用するためのルールブックは2017年版のままという矛盾です。もし、ある製品のコードが改正で変更されていた場合、どのルールを適用すればよいのかが不明確になり、最悪の場合、原産地証明書の不備として関税優遇が否認されるリスクがありました。

魔法の辞書、相関表の公式化

今回まとまったガイドラインの核となるのは、相関表(Correlation Table)の公式な導入です。

本来、新しいHSコードに対応するためには、協定の条文そのものを書き換える転換(Transposition)という手続きが理想ですが、これには膨大な時間と法的承認プロセスが必要です。そこで当局は、条文は書き換えずに、読み替えのための辞書を用意するという現実的な解決策を選びました。

相関表の役割

この公式相関表は、HS 2028のコードとHS 2017のコードを紐付ける変換テーブルです。

例えば、HS 2028で新設されたある化学品のコードが、HS 2017ではどのコードに該当していたのかを一対一、あるいは一対多で定義します。企業はこの表を参照することで、最新のコードで申告しつつ、裏側では正しい旧コードの原産地規則を適用することが可能になります。

ガイドライン案では、この相関表を日EU双方の税関が公式な判定基準として認めることが明記される見込みです。これにより、企業は独自の解釈ではなく、当局のお墨付きを得た変換ロジックに基づいて業務を行うことができます。

企業に求められるHSコードの二重管理

このニュースは朗報ですが、同時に企業に対して高度なデータ管理を求めています。それは、通関用コードと原産地判定用コードの完全な分離管理です。

2028年の実務フロー

これまでは、インボイスに記載するHSコードが決まれば、そのままそのコードの原産地規則を確認すれば済みました。しかし、2028年以降のEPA活用プロセスは以下のようになります。

  1. 通関用コードの特定:製品のスペックに基づき、最新のHS 2028コードを決定する。(輸入申告用)
  2. 相関表の参照:ガイドラインに基づき、そのコードに対応するHS 2017コードを特定する。
  3. 原産地規則の適用:特定されたHS 2017コードに基づき、協定上のルール(関税分類変更基準や付加価値基準)を満たしているか判定する。

もし、自社のシステムが最新のHSコードしか保持できない仕様になっている場合、このプロセスに対応できません。

落とし穴となるみなし変更

特に注意が必要なのは、HSコードの項番(上4桁)が変わるような改正があった場合です。

例えば、技術革新により製品の機能定義が変わり、第84類から第85類へ移動した場合、最新コードだけを見ていると関税分類変更基準(CTH)を満たしているように見えるかもしれません。しかし、2017年版のコードに引き直すと実は項番が変わっていない(変更基準を満たさない)というケースが発生し得ます。

このような意図しないミスを防ぐためにも、公式相関表を用いたロジックチェックは必須となります。

まとめ

日EU・EPAの運用ガイドライン第一案の策定は、2028年の貿易実務における交通整理が始まったことを意味します。

FTAの専門家として助言できることは一つです。2028年になってから慌てて相関表を見るのではなく、今のうちから自社の製品マスタにEPA判定用(HS 2017)という固定フィールドを設け、最新コードとは切り離して管理できる体制を整えておくことです。

過去のルールを正しく参照し続ける能力こそが、未来の関税削減メリットを確実に享受するための鍵となります。

テクノロジーの進化に追いつく貿易ルール。HS 2028改正で6Gや量子技術が「その他」から脱却する日

2026年2月2日、世界税関機構(WCO)において、今後のハイテク製品の貿易実務を左右する重要な定義案が承認されました。それは、2028年のHSコード改正(HS 2028)に向けて、次世代通信規格(6G)関連機器や量子コンピュータ部材を、独立した固有の品目として定義するという決定です。

これまで、最先端のテクノロジー製品の多くは、既存の分類表に該当する項目がないため、その他という大雑把なカテゴリに分類されてきました。しかし、今回の決定により、これらの戦略物資に世界共通の背番号(HSコード6桁)が与えられることになります。

本記事では、なぜ今WCOがこの定義を急いだのか、そして製品コードが特定されることが、企業のコンプライアンスや関税コストにどのような影響を与えるのかを解説します。

その他に隠れていた最先端技術の可視化

貿易実務において、技術の進化スピードとHSコードの改正サイクル(5年ごと)のズレは長年の課題でした。

統計の空白地帯を埋める

現在、開発が進んでいる6G通信機器や量子コンピュータの部品は、多くの場合、第85類(電気機器)や第84類(自動データ処理機械)の中にあるその他の機器というバスケットカテゴリーに分類されています。

この状態では、世界でどれだけの量子関連部材が流通しているのか、正確な貿易統計を取ることが不可能です。WCOが新コードの定義を承認した最大の目的は、これらの次世代技術を独立した項目として切り出し、グローバルなサプライチェーンの実態を可視化することにあります。

6Gと量子技術の定義が確定

今回承認された定義案により、例えば量子プロセッサや極低温制御装置といった量子コンピュータ特有のハードウェア、そして6Gネットワークを構成するテラヘルツ波対応の基地局設備などが、明確な品目定義を持つことになります。

これにより、2028年以降は、その他として申告する曖昧さが排除され、製品のスペックとHSコードの定義を厳密に照らし合わせる作業が必須となります。

経済安全保障と輸出管理の強化

ビジネスマンが最も警戒すべきは、このコード変更が単なる統計目的だけではないという点です。HSコードが特定されることは、各国の輸出管理(安全保障貿易管理)の精度が格段に上がることを意味します。

ピンポイントでの規制が可能に

これまでは、量子コンピュータ部品を輸出規制の対象にしようとしても、HSコードが汎用的なその他の電子部品と同じであったため、税関のシステム上で当該貨物だけを自動的に止めることが困難でした。

しかし、2028年改正で固有のコードが割り当てられれば、当局はそのHSコードに対して輸出ライセンスの必須要件を紐付けることができます。つまり、通関システム上で自動的にフラグが立ち、審査対象として抽出される精度が飛躍的に向上します。

企業にとっては、該非判定(リスト規制に該当するかどうかの判定)とHSコードの紐付け管理が、これまで以上にシビアになることを示唆しています。

関税率への影響とITA(情報技術協定)

もう一つの重要な視点は関税コストです。ハイテク製品だからといって、自動的に関税がゼロになるわけではありません。

新コードは無税になるのか

多くのIT製品は、WTOの情報技術協定(ITA)によって関税撤廃の恩恵を受けています。しかし、新しく新設されたHSコードが、自動的にITAの対象リストに含まれるかどうかは、各国の解釈や新たな交渉に委ねられる場合があります。

もし、6G機器や量子部材が新しいコードに移行した結果、従来のITA対象コードから外れ、一時的に有税扱いになるような事態になれば、サプライチェーンのコスト構造は大きく変わります。2028年に向けて、業界団体を通じた各国政府への働きかけや、関税譲許表の確認が重要になります。

企業が今から準備すべきこと

2028年はまだ先の話ではありません。特に製品開発サイクルが長いハイテク産業においては、今の設計段階から将来のHSコードを意識する必要があります。

R&D部門と通関部門の連携

開発中の次世代製品が、2028年の新定義のどこに該当する可能性があるのか、R&D部門と通関部門が情報を共有する必要があります。特に、製品の機能説明書(スペックシート)において、WCOの新定義に合致する用語を使用しているかどうかが、将来のスムーズな通関を左右します。

システム改修のロードマップ

基幹システム(ERP)の商品マスタにおいて、2028年版のHSコードを登録するフィールドの準備や、輸出管理システムとの連携ロジックの更新計画を立てる必要があります。

まとめ

WCOによるIT・デジタル技術品目の定義案承認は、次世代技術が実験室からグローバル貿易の表舞台へと正式に移動したことを象徴しています。

透明性が高まることは、ビジネスの予見可能性を高める一方で、規制当局による監視の目も厳しくなることを意味します。その他で逃げることができなくなる2028年に備え、自社のハイテク製品の戸籍(HSコード)を正しく管理する体制づくりが求められています。

HS2022からHS2028へ 品目別原産地規則PSRをクロスウォークする実務手順

経営と実務を止めないための更新設計

1. PSRクロスウォークが急に難しくなる理由

PSRは品目別原産地規則のことで、協定ごとに、品目分類にひもづけて原産地判定の条件が定められています。多くは関税分類変更基準CTCや付加価値基準RVC、または特定工程基準などです。

一方、HSは定期改正され、HS2028は2028年1月1日に発効予定です。改正時には新設、削除、範囲変更が大量に起きるため、PSRが参照している品目番号の体系も影響を受けます。結果として、関税分類は最新HSで行うのに、原産地判定は協定が採用する旧HSで行う、という二重運用が現場に発生しやすくなります。WCOも、分類と原産地で異なるHS版を使うと、判定が複雑化し時間がかかり、誤適用リスクが上がると整理しています。

この状況を止めるために必要なのが、HS2022とHS2028の間でPSRを技術的に読み替えるクロスウォークです。

2. まず押さえる前提

2-1. HSは1つではない

協定ごとに採用しているHS版が異なることがあります。日本税関のPSR検索でも、協定が採用するHS版と入力したHSコードの版が違うと検索結果が誤りになり得る、と明示されています。さらに、輸入申告では最新のHSコードを使う必要がある、とも書かれています。(税関ポータル)

つまり、企業側は次の二系統を同時に管理する必要が出ます。

  1. 申告と統計のための最新HS
  2. 協定の法文に紐づくPSR用HS

2-2. HS2028の確定と相関表の位置づけ

WCOによれば、HS2028は2028年1月1日に発効し、その準備期間にHS2022とHS2028の相関表の整備などが進む、とされています。(世界関税機関)
また、2026年1月時点でHS2028改正が受諾され、相関表整備などの実施期間に入ったこともWCOニュースで整理されています。(世界関税機関)

重要なのは、相関表は実務のための道具であり、法的効力そのものではない点です。WCOのガイドでも、相関表は実装を助ける目的で作成され、法的地位を持たない、と説明されています。

3. PSRクロスウォークとは何を作る作業か

目的は単純です。
HS2022で書かれているPSRを、HS2028の品目体系に読み替えても、同じ商品範囲に同じ原産地条件を適用できる状態にすることです。

ここで言うクロスウォークは、次の2つを分けて考えると整理しやすいです。

  1. 社内用クロスウォーク:自社の品目とサプライチェーンに照らして、影響と対応を判断するための表
  2. 協定改正としての技術更新:相手国との手続を経て協定附属書のPSR表を更新する行為

EUのPEM関係では、HS更新に伴うPSRの理解を助けるため、HS2022への技術的読み替え資料が提供されています。発想としては、品目分類の変更でルールの趣旨が変わるわけではないが、PSR表は新HSに合わせて書き直す必要がある、という整理です。(Taxation and Customs Union)

4. 手順全体像

ここからが実務手順です。現場が迷いやすい順に並べます。

手順1 対象協定と対象品目を棚卸しする

最初にやるべきは、協定と品目の棚卸しです。

  1. 自社が実際に使っている協定を列挙する
  2. 各協定のPSRが採用しているHS版を確認する
  3. 自社の輸出入品目をHS2022で確定させ、品目別に該当PSR条項を紐づける

この時点で、協定によってはPSRが古いHS版で書かれていることが普通にあります。英国の対日CEPAのガイダンスでも、PSRはHS2017で規定されており、HS改正でコードが変わる場合は相関表を参照する、という趣旨の案内があります。(GOV.UK)

手順2 HS2022→HS2028のマッピングを準備する

基本はWCO相関表を使います。HS2028の相関表は、WCOが準備期間に整備すると明記しています。(世界関税機関)
ただし、相関表は法文ではなく、更新途中の版や注釈の読み違いが起きやすい領域です。社内のクロスウォークでは、必ず次の情報を同時に持ちます。

  1. 相関表上の対応関係
  2. 変更タイプ 新設、削除、範囲変更、分割、統合
  3. 自社製品の実際の仕様と用途

手順3 PSRを構造分解してから移し替える

PSRを文章のまま移すのではなく、構造に分解します。最低限、次のタグを付けます。

  1. ルール型 CTC、RVC、工程、複合型、例外
  2. レベル CC、CTH、CTSHなど
  3. 例外条件 例 外部材の除外や許容条件
  4. 追加要件 最小工程否認、累積、許容誤差など

この分解ができると、HSの分割や統合が起きても、ルールの意図を保ったまま再組立てできます。

手順4 変更タイプ別に読み替え規則を適用する

WCOガイドでは、HS改正は大きく、新設、削除、範囲変更の3類型に整理でき、単純ケースの更新方法も例示されています。
HS2022→HS2028でも、この考え方で十分に回せます。

ケースA 1対1で対応する

最も簡単です。PSR文章は基本的にそのまま移せます。
注意点は、号の説明や範囲注記が変わる場合があることです。品目名だけで判断しないでください。

ケースB 1つの号が複数に分割される

現場で事故が起きる典型です。
対応は、分割後の各号が、元のどの範囲を受け継いだのかを仕様と照合し、PSRの例外条件を再設計します。WCOガイドでも、分割後の各号に対して、元ルールを維持しつつ、相互に例外を置く形で記述できることが示されています。

実務上のコツは、分割後の号ごとに、主要な非原産材料のHS分類がどこへ落ちるかを同時に確認することです。CTC型のPSRは材料側の分類にも依存するため、ここを飛ばすと誤判定が起きます。

ケースC 複数の号が統合される

統合されると、PSRの適用範囲が広がって見えるため、ルールを強めてしまう誤りが起きます。
基本は、統合前に別々だったルールを、統合後の号の中で品目群ごとに分岐する形で管理することです。協定文の改正が完了するまでは、社内クロスウォークでは分岐注記で運用します。

ケースD 範囲が変わる

最も危険です。番号は同じでも、含まれる製品範囲が変わると、見かけ上の読み替えは成立しません。
この場合は、協定の法的更新を前提に、社内では暫定措置として次を行います。

  1. 旧HSでのPSR対象範囲を文章で定義する
  2. 新HSでその範囲に該当する品目集合をリスト化する
  3. その集合に同一PSRを当てる

EUがHS更新に合わせてPSR表の書き直しを支援する資料を出しているのは、まさにこのケースでの混乱を抑える狙いです。(Taxation and Customs Union)

手順5 検証は机上ではなく取引データで行う

クロスウォークが正しいかは、実際のBOMと工程で検証しないとわかりません。
おすすめの検証は二段階です。

  1. 過去の代表案件を抽出し、HS2022版PSRで原産判定結果を再現する
  2. 同じ案件をHS2028クロスウォーク版で判定し、結果の差分を説明できる状態にする

差分が出た場合、原因はだいたい次のどれかです。

  1. 材料側のHS分類が分割で変わった
  2. 例外条件の読み替えが不十分
  3. 範囲変更を見落とした

手順6 成果物は1枚の表に落とす

経営レビューと監査対応を両立させるには、成果物の形が重要です。最低限、次の列を持つクロスウォーク表があると回ります。

内容
協定名利用協定、相手国
PSR採用HS版協定附属書が採用するHS版
自社品目 HS2022現行管理コード
対応 HS2028相関表に基づく候補コード群
変更タイプ1対1、分割、統合、範囲変更
元PSR要件CTC、RVC、工程、例外条件
読み替え方針そのまま、分岐、集合適用など
検証結果代表案件での判定差分
リスク判定高 中 低 と理由
根拠リンク相関表、協定条文、社内仕様書

日本税関の案内が示すとおり、HS版の取り違えは検索結果や判定結果の誤りに直結し得ます。表で版管理を明示し、誰が見ても間違えない状態にするのが最短です。(税関ポータル)

手順7 運用設計としての版管理を入れる

HS2028発効後も、すべての協定が同時にHS2028へ更新されるとは限りません。WCOガイドが述べるように、協定にはPSR更新の手続があり、簡易改正条項を持つものもありますが、タイミングは協定ごとに異なります。

したがって経営としては、次の二重管理を前提にします。

  1. 申告HSはHS2028へ移行
  2. 原産判定は協定ごとのHS版に合わせて継続

この二重管理を前提に、社内システム、マスタ、教育、監査資料の更新計画を組むべきです。

5. 2026年から2028年までの進め方の目安

WCOはHS2028発効までの準備期間で相関表整備などを進める、としています。(世界関税機関)
企業側はそれに合わせて、次の順で進めると失速しにくいです。

  1. 2026年 棚卸しとクロスウォーク表の骨格を作る
  2. 2027年 代表案件で検証し、例外ケースを潰す
  3. 2027年末 協定別の更新状況を確認し、運用を確定する
  4. 2028年初頭 申告HSの移行と、原産判定の版管理を同時に稼働させる

6. まとめ

HS2022からHS2028へのPSRクロスウォークは、関税分類の変更に追従する作業ではなく、原産判定の誤適用を防ぎ、協定利用を止めないための版管理プロジェクトです。
相関表を使いつつ、変更タイプ別の読み替え規則、取引データでの検証、協定別のHS版管理をセットで回すことで、2028年の移行は管理可能になります。

免責
本稿は一般的な実務整理であり、個別案件の原産地認定や協定解釈は、当該協定の正文と当局運用、必要に応じて専門家助言に基づいて判断してください。

WCO相関表が出た瞬間、HS2028対応は現実になる


企業が今やるべき準備と、相関表の読み方

2026年1月、WCOはHS2028改正(HS2028 Amendments)が受諾されたことを公表しました。発効日は2028年1月1日です。残り約2年は、企業にとって「まだ先」ではなく、分類とデータ、システム、契約をつなぐ移行計画を具体化する猶予期間です。(wcoomd.org)

その中で、実務上のスタートラインになり得るのが「WCO相関表(Correlation Tables)」です。相関表は、HS2022とHS2028の間で、どの品目コードがどう移るのかを体系的に示す地図です。HS2028の条文(改正パッケージ)が公表されても、企業の現場がすぐに全社影響を把握できるとは限りません。相関表が出ることで、初めて「自社の品目マスタをどこからどこへ動かすか」を俯瞰できるようになります。

ここでは、WCO相関表がなぜ「出発点」なのか、そして公開後に慌てないために、公開前から企業がやるべきことを深掘りします。


1. HS2028は何が変わるのか

相関表が必要になる背景

HS2028は、299セットの改正で構成され、結果として1,229の見出し(headings)と5,852の小見出し(subheadings)になります。HS2022と比較すると、新設は見出し6、HS6桁小見出し428。削除は見出し5、HS6桁小見出し172です。(wcoomd.org)

テーマも、単なる貿易統計の更新ではなく、規制・政策目的との連動が前提になっています。WCOが強調している主なポイントは次の通りです。(wcoomd.org)

・公衆衛生
救急車、個人防護具、人工呼吸器、診断・モニタリング機器など、健康危機で必要となる物資の可視性を高める新しい区分が入ります。

・ワクチンの構造変更
従来30.02に含まれていたワクチン関連を、人体用の30.07、その他(獣医用など)の30.08へ再編し、疾病別などの詳細な下位区分を設ける、とされています。

・サプリメントの新見出し
食品と医薬品の境界で揉めやすい領域に、新見出し21.07(dietary supplements)と新しい法的注記を設け、統一的な枠組みを目指す、とされています。

・環境分野
プラスチック廃棄物39.15を、バーゼル条約の区分との整合を意識して再編し、有害・PIC対象・その他を識別する新小見出しを導入する、とされています。さらに、単回使用の概念を第39類の新しい法的注記で明示し、ストロー等の幅広い品目で透明性を高める、と説明されています。

この手の改正は、品目コードが「番号だけ変わる」話ではありません。品目の定義が揺れるので、関税率、輸入規制、統計、原産地規則、社内マスタの整合性まで連鎖します。だからこそ、移行の地図として相関表が必要になります。


2. WCO相関表とは何か

誤解されやすい法的地位と限界

まず大前提として、WCO相関表は「法令」ではありません。WCOは、相関表について次の位置づけを明確にしています。

・相関表は、HS委員会の分類決定そのものとみなすものではない
・実装を容易にするためのガイドであり、法的地位はない(wcoomd.org)

この注意書きは、ビジネス側が一番見落としやすいポイントです。現場では「相関表が出たら、旧コードを新コードに置換して終わり」と考えがちですが、相関表は置換表ではなく、移行の参考情報です。

またWCOは、HS2022の相関表公表時に、相関表は法的文書ではない一方で、導入準備に不可欠なツールになっているとも述べています。つまり、法的拘束力はないが、実務上の標準的参照資料として扱われる、という現実があります。(wcoomd.org)


3. 相関表はどういう形で出てくるのか

HS2022の前例から読み解く

HS2022の前例では、WCOは相関表を2つの表として公表しました。(wcoomd.org)

・Table I:新しい版から旧版へ(新コード側を起点)
加えて、多くの相関に「備考」が付き、移動する品目の性格や関連条文の参照が示されるケースがある。

・Table II:旧版から新版へ(旧コード側を起点)
基本的にTable Iを機械的に反転した表で、備考は付かない。

さらに、WCOの相関表解説では、exという接頭表示が重要な意味を持ちます。exは「その旧コードの範囲の一部だけが移る」ことを示し、1対1の単純移行ではない、というサインです。(wcoomd.org)


4. なぜWCO相関表の公開がHS2028改訂の出発点なのか

出発点と言い切れる理由は3つあります。

4-1. 全社影響を一気に棚卸しできる

条文だけで影響を追うと、読み落としが発生します。相関表があれば、HS6桁ベースで「動くコード」を一覧化でき、影響範囲を見積もれます。

4-2. 曖昧さが可視化され、判断ポイントが特定できる

exや分岐・統合は、判断を要する場所です。相関表は、曖昧さを表面化させることで、社内ルール化を促します。(wcoomd.org)

4-3. 国別実装の監視が始めやすくなる

WCOの相関表は共通骨格であり、各国が自国のタリフラインに落とす過程で追加の分割や法令反映が入ります。(wcoomd.org)


5. HS2028の相関表はいつ出るのか

今わかっていることだけで整理する

現時点でWCOが公式に言っていることは、次の2点に集約されます。

・2025年9月のHS委員会で、HS2022とHS2028の相関表の開発に関する議論を開始し、形式を改善した(明確さと使いやすさの向上が目的)(wcoomd.org)

・2026年1月時点で改正は受諾されており、残る2年間で相関表の作成、解説書などWCOツールの更新、加盟国支援を進める(wcoomd.org)


6. 公開前から企業がやるべき準備

相関表が出ても詰まらないための実務設計

相関表が出てから着手すると、必ず間に合わない作業を先に片付けます。

6-1. 品目マスタの現状の正しさを固める

HS移行で一番危険なのは、現行コードが曖昧なまま新コードへ移してしまうことです。

6-2. 相関表を置換ではなく分岐ルールに落とす設計にする

分岐と統合、そしてexは、業務ルールと判断ログが必要です。

6-3. 国別実装を前提に、監視ポイントを先に置く

実務は国別枝番と税率、規制コードで動きます。相関表は国別実装の入口です。(wcoomd.org)

6-4. 参照情報の取り方を決めておく

相関表や関連資料は複数チャネルに出る可能性があり、社内で一次情報の定義が必要です。(wcoomd.org)


7. 相関表公開後に、企業がやってはいけない3つのこと

7-1. 相関表の自動変換を、そのまま申告に使う

相関表は法的文書でも分類決定でもありません。(wcoomd.org)

7-2. exや分岐を放置して、とりあえずどれかに割り付ける

判断が必要な場所は、判断に必要な製品属性を揃えるところからです。(wcoomd.org)

7-3. HS6桁だけ更新して満足する

国別枝番と税率、規制コードまで落とし込む必要があります。(wcoomd.org)


まとめ

相関表公開は開始合図。しかし準備は公開前に終わらせる

WCOは、HS2028が2028年1月1日に発効すること、そして残る2年で相関表の整備を含む実装準備を進めることを明確にしています。(wcoomd.org)

相関表が公開された瞬間に走り出せるよう、品目マスタの整備、分類根拠の棚卸し、分岐判断の設計、国別実装の監視体制を、公開前に作っておく。

HS2028対応は、貿易実務だけの問題ではありません。サプライチェーンとデータ、コンプライアンスをつなぐ経営課題です。相関表公開を出発点にするために、今日から準備を始めてください。


HS2028に備える 主要国ポータルの対応状況を確実に押さえる実務ガイド

2028年1月1日、HSコードが更新されます。HS2028は、世界税関機構が定めるHS品目表の第8版で、国際取引で使われる分類コードの基盤そのものです。2026年1月21日にHS2028改正が受理され、発効までの準備期間が公式にカウントダウンに入りました。(世界関税機関)

このタイミングで、最初に手を付けたいのが「主要国ポータルのHS2028対応状況を確認する」ことです。理由はシンプルで、通関申告や関税計算、規制対応の現場は、最終的に各国の公式ポータルに載っているコード体系と税率に従うからです。

この記事では、単にポータルを眺めるだけで終わらせず、ビジネスの意思決定に直結する見方と、国別にどこをチェックすべきかまで掘り下げます。

HS2028で何が変わるのか

まず、確実に押さえるべき事実は次の3点です。

1つ目。HS2028は2028年1月1日に発効します。(世界関税機関)
2つ目。改正は299セットに及び、見出しは1,229、子目は5,852という規模です。HS2022比で新設や削除もあり、単なる文言調整ではありません。(世界関税機関)
3つ目。WCOは残り2年間で、HS2022とHS2028の相関表の整備、解説書やツールの更新、加盟国支援を進めると明記しています。加盟国側も、国内法令、IT、手続、研修を更新するとされています。(世界関税機関)

テーマ面では、公衆衛生や環境が中心です。医療機器や防護具の識別強化、ワクチンの再編、栄養補助食品の新見出し、プラスチック廃棄物の再構成など、実務上インパクトの大きい領域が含まれます。(世界関税機関)

ここまでを踏まえると、HS2028は「ある日突然、コードが変わる」イベントではなく、2年間かけて各国が段階的に制度とシステムを移行するプロジェクトだと捉えるのが現実的です。

なぜ主要国ポータル確認が最優先になるのか

HS改正に関して、現場がつまずく典型パターンは、社内のマスタや取引書類の更新タイミングが各国の実装タイミングとズレることです。ズレると何が起きるか。

・輸入申告でコードが通らず、差し戻しや保留が増える
・税率や追加措置の適用判断が揺れ、コスト見積りが不安定になる
・統計品目や国内追加桁の変更に引きずられて、取引先やフォワーダーとの照合に時間が溶ける

このズレを最小化するうえで、各国の公式ポータルは一次情報の集合体です。更新日、適用日、改正履歴、データ形式、関連法令への導線など、移行の手がかりがまとまって出てきます。

つまり「主要国ポータルのHS2028対応状況を確認する」とは、単なる閲覧ではなく、次の問いに答えを出すための情報収集です。

・その国では、いつから新コードが申告に使えるのか
・旧コードはいつまで受け付けられるのか
・相関表や変換資料はどこで入手できるのか
・国内追加桁まで含めた変更はどの粒度で提供されるのか
・自社のITや業務が追随できる形式でデータを取れるのか

対応状況を見抜く 6つのチェックポイント

ポータルの見方は国によって違いますが、見るべきサインは共通化できます。

  1. 表示されている版と適用日
    年次版、基本版、改正号などの表示があるか。適用日が明記されているか。
  2. 改正履歴と更新頻度
    いつ、何が、どの根拠で変わったかが追えるか。更新が日次なのか、年次なのか、随時なのか。
  3. 日付指定で検索できるか
    HS改正は発効日で切り替わるため、取引予定日を入れて結果が変わる設計になっているかは重要です。
  4. 相関表や変換資料への導線
    WCO相関表に加え、国内追加桁を含む国別クロスウォークが出るか。その掲載場所が分かりやすいか。
  5. ダウンロードやAPIの有無
    画面で確認するだけでは、社内マスタ更新が回りません。CSVやJSON、Excelなどで取得できるか。
  6. 法令や公的通知へのリンク
    ポータルの表示は便利ですが、最終的な根拠は法令や告示です。リンクが整理されているかで信頼性が変わります。

この6点で見れば、HS2028対応状況は、専用ページの有無だけでなく、更新の兆候と実装の成熟度として評価できます。

主要国ポータル別に見るべき場所

以下は、主要国で実務上よく参照される公式情報源と、その読み解き方です。ここでは、今ある機能を使ってHS2028の到来をどう検知するかに焦点を当てます。

日本 税関の品目分類検索で確実に追う

日本税関の品目分類検索は、検索対象を輸入と輸出で切り替えられ、実行関税率表や輸出統計品目表など複数コンテンツを対象にできます。さらに、税番は上位2桁、4桁、6桁、全9桁の指定が可能で、検索対象日時も指定できます。(税関総合情報)

HS2028対応状況を確認するうえでの実務ポイントは、検索対象日時です。発効日をまたぐ案件では、同一品目でも結果が変わり得ます。ポータル側がHS2028に切り替われば、2028年1月1日以降の日付指定で新しいコード体系の検索結果が出るはずです。社内側では、案件の通関予定日に合わせたコード参照という運用を、今のうちに定着させると移行が楽になります。

アメリカ合衆国 米国国際貿易委員会 の改正履歴で変化点を捕まえる

USITCのHTSアーカイブは、版が体系的に保存されており、年次の基本版に加えて複数の改正を時系列で追えます。改正ごとに日付があり、HTMLに加えてCSVやXLS、JSONでのダウンロードが用意され、改正根拠として公的な文書への参照も付いています。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)

HS2028対応の観点では、ここが最大の観測地点になります。大きなコード再編が起きると、年次基本版だけでなく、複数の改正に分割されて反映される可能性があります。社内データ連携を見据えるなら、画面で眺めるよりも、ダウンロード形式で取得し、マスタ差分を機械的に検知できる体制に寄せるのが現実的です。

欧州連合 欧州委員会 TARICで日次更新の中から大改正を見分ける

TARICはEUの統合関税データベースで、関税措置だけでなく商業・農業関連の措置も統合して扱う多言語データベースです。加盟国に対して日次でデータが送信され、加盟国システムの通関処理にも使われることが明記されています。Excel形式のraw dataも提供されています。(Taxation and Customs Union)

HS2028対応状況の確認は、日次更新に埋もれがちです。ポイントは、日々の更新そのものではなく、品目体系の土台が変わるタイミングです。TARICは法令根拠も示しているので、HS2028に絡む大きな改正は、関連する法令の動きとセットで追うのが安全です。

イギリス 英国歳入関税庁 Trade Tariffは日付入力と更新情報が鍵

UKの関税検索サービスは、取引予定日を入力でき、品目、税率、割当などが時間とともに変わることを前提に設計されています。ページ上には最新ニュースと最終更新日、改正の参照導線もあります。(GOV.UK)

さらに、Trade TariffデータをAPIで取得できることも明記されています。(API Catalogue)
HS2028対応状況の確認では、日付入力欄がそのまま検証装置になります。将来日付が受け付けられる仕様であれば、2028年1月1日を入れて結果がどう変わるかを定点で観測できます。APIがある場合は、手作業確認から抜けて、定期ジョブで差分検知する運用に移しやすいのも利点です。

カナダ カナダ国境サービス庁 関税ファイルと告知をセットで見る

CBSAは、カナダの関税分類を知りたい事業者向けに、関税ファイルへのアクセス、ガイド、過去版アーカイブ、分類や原産地などの裁定、カスタムズノーティスの一覧などをまとめています。カナダの税則はWCOのHSに基づくことも明記されています。(カナダ国境サービス局)

章別に見られる関税スケジュールは、適用日と形式が整理されています。(カナダ国境サービス局)
HS2028の対応状況確認では、次の2点を並行で追うのがコツです。関税ファイルの版更新と、告知や通知の情報。版だけ見ていると背景が取りこぼれますし、告知だけ読んでいると現場適用に落ちません。

オーストラリア オーストラリア国境警備隊 Working Tariffの説明文が先行指標になる

ABFのWorking Tariffは、現行の関税分類のオンライン版であること、WCOの改正で始まった変更や、2022年1月1日開始の統計コード変更、その後の法令や統計コード変更を含むことが明記されています。分類はSchedule 3で参照する、といった構造も説明されています。(Australian Border Force Website)

ここは、HS2028対応状況の早期検知ポイントになり得ます。なぜなら、説明文がどの改正サイクルを取り込んでいるかを示しているからです。HS2028に向けて準備が進めば、説明文や対象範囲の表現が更新される可能性があります。画面の検索結果より先に、こうした概要説明が更新されることもあります。

韓国 韓国関税庁 10桁DBと6桁共通ルールを押さえる

KCSはHSコードの基本として、先頭6桁は世界共通で、7桁目以降は国ごとに異なるという構造を説明しています。韓国は10桁コードを使うことも明記されています。(韓国関税庁)
また、関税DB検索では10桁のHSコードまたは品名で検索できることが示されています。(韓国関税庁)

HS2028は6桁部分の変更を含むため、まず影響が出るのは6桁です。ただし実務で使うのは10桁です。ここがミソで、6桁の相関表だけでは社内マスタ更新が終わらない可能性があります。KCS側が国内追加桁をどう組み替えるかまで含めて、DBで早期に確認できる体制が重要になります。

中国 国務院関税税則委員会 中華人民共和国財政部 の公告を一次情報として組み込む

中国では、進出口税則が公告として公表され、例えば2026年版は2026年1月1日から実施される旨とPDFの掲載が確認できます。(関税司)

中国市場を扱う場合、現場ではポータル検索に加えて公告PDFが一次情報になります。HS2028移行でも、制度変更の根拠と施行日、変更点がどこで示されるかを見誤らないことが重要です。社内の観測リストに公告の発表ページを入れておくと、更新を取りこぼしにくくなります。

ポータル確認を社内の成果に変える運用設計

ポータルを確認して終わりではなく、社内の移行プロジェクトに落とすときの型を最後に整理します。

  1. 重要市場から優先順位を付ける
    全世界を同時に追うと疲弊します。売上、仕入れ、制裁や規制、リードタイムなどの観点で上位市場を決め、そこから始めます。
  2. 版と日付の観点でマスタを持つ
    国別に、現行版、切替予定日、確認日、参照元ポータル、担当者を持ちます。日付指定検索ができる国は、取引予定日ベースの照会に統一します。
  3. 相関表が出たら、6桁と国内追加桁を分けて管理する
    WCO相関表は6桁の基盤です。そこから先の国内追加桁は国ごとに別プロジェクトになります。両者を混ぜると、関係者が混乱します。
  4. 社内システムと外部委託先を同じタイムラインに乗せる
    ERP、PIM、貿易管理システム、フォワーダー、通関業者が別々に更新すると事故が起きます。ポータルの更新兆候をトリガーに、関係者に同報する設計にします。

まとめ

HS2028は、2028年1月1日発効の大規模改正です。2年間の準備期間で、WCO側は相関表や解説などを整備し、各国は国内法令とITを更新していきます。(世界関税機関)

だからこそ、主要国ポータルのHS2028対応状況を定点観測し、変化の兆候を早期に拾うことが、最も費用対効果の高い一手になります。画面の見た目より、版、適用日、改正履歴、日付指定検索、データ取得手段、法令根拠。この6点で見れば、HS2028移行は予測可能なプロジェクトに変わります。

情報確認日: 2026年1月31日

2026年1月21日、WCOが公表したHS2028改正


企業にとって何が「確定」したのか

2026年1月21日、世界税関機構(WCO)は、国際貿易における品目分類の共通言語であるHS(Harmonized System)の次期改正となる「HS2028」について、改正が受諾され、2028年1月1日に発効することを公表しました。wcoomd+1
この改正は299セットの変更から成り、結果として見出しは1,229、号(6桁サブヘディング)は5,852となり、HS2022と比較して見出しが6追加・5削除、号が428追加・172削除という大規模な見直しです。wcoomd+3

HSは各国の関税率表と貿易統計の基盤であり、輸出入申告、関税コスト、各種規制の適用、社内品目マスタ、販売・収益分析など幅広い領域に影響します。wcoomd+2
今回のHS2028改正は、健康危機への備え、疫病対策、環境汚染・プラスチック廃棄物、サステナビリティ関連など、政策課題との接続を一段と強める内容となっており、企業にとっては「基盤データの大型アップデート」と位置づけるべきタイミングに入ったと言えます。linkedin+3

以下では、2026年1月21日の「受諾公表」が手続き上何を意味するのかを整理したうえで、HS2028の重要な改正領域と、企業が今すぐ始めるべき実務対応を解説します。


1. 2026年1月21日に何が起きたか

なぜ今が重要なのか

WCOは2026年1月21日のニュースリリースで、HS2028改正が正式に受諾されたこと、改正パッケージが確定したこと、および2028年1月1日に発効することを公表しました。wcoomd+2
この改正パッケージは、前述のとおり299セットの変更で構成され、見出し1,229、号5,852という新たな体系を形成します。linkedin+3

WCOは別途、HSが200以上の国・地域の関税率表および貿易統計の基礎として用いられていること、そして当該改正が全世界で2028年1月1日に発効する旨を繰り返し説明しています。omnitrans+1
したがって、影響は特定国や特定業界に限定されるものではなく、多数の国・地域に生産・販売拠点を持つ多国籍企業ほど、品目マスタの変更が連鎖的に波及することになります。wcoomd+2


2. 「勧告の採択」と「改正の受諾」

HS改正が確定するまでの手続き

HS改正は、HS条約(「商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約」)にもとづき進められます。[wcoomd]​
実務上ポイントとなるのは、次の3段階です。

2-1. WCO理事会による勧告(Council Recommendation)

HS条約第16条は、WCO理事会が締約国に対して改正を勧告できる旨を定めています。[wcoomd]​
HS2028改正については、WCO文書NG0304Baの表紙に、2025年6月26日の理事会勧告に基づき受諾された改正であり、2028年1月1日に発効することが明記されています。linkedin+3
制度上の起点としては、この2025年6月26日の理事会勧告が「改正パッケージ」が形成された時点と位置付けられます。wcoomd+1

2-2. 異議申立て期間を経た「受諾」の成立

HS条約第16条第3項は、事務総長による改正の通報から6か月の間に締約国からの異議申立てが残っていなければ、その改正は受諾されたものとみなされる、と規定しています。wcoomd+1
この仕組みにより、理事会勧告後、通報から6か月間は締約国が異議を申し立てることができ、その期間経過時点で異議が残っていなければ「受諾成立」となります。ddcustomslaw+1

企業実務の観点では、改正が受諾され、条約上「確定した」時点で初めて、差分を前提とした詳細な影響分析や社内外の合意形成に進みやすくなります。wcoomd+1
2026年1月21日のWCO発表は、まさにこの「受諾が成立し、発効日に向けた実装段階に入った」ことを示す節目と言えます。freightnews+2

2-3. 発効日までの準備期間

HS条約第16条第4項は、事務総長による通報の時期に応じて、改正の発効日を、原則として通報の2年後または3年後の1月1日とする仕組みを定めています。[wcoomd]​
WCOは、HS改正には実質2年半程度の実装期間が組み込まれており、うち約半年を締約国の異議申立て期間、残り約2年を新旧対応表(コリレーションテーブル)の整備、解説書の更新、翻訳、各国法令・ITシステムの改修、通関当局と取引当事者の教育訓練などに充てるという整理を示しています。[wcoomd]​

つまり、企業側の準備に一定の時間を要することは制度設計上あらかじめ織り込まれており、「2年半のうち残り約2年」が実務上の準備期間として位置付けられていることになります。[wcoomd]​


3. HS2028の重点改正

ビジネスに直撃しやすい3領域

HS2028の特徴は、従来以上に公衆衛生や環境保護などの政策課題に直結する粒度・定義が強化されている点にあります。linkedin+3
WCOは、健康危機への備え、疫病対策、環境汚染・プラスチック廃棄物、サステナビリティなどを反映した改正であると説明しています。wcoomd+2

ここでは、企業への影響が特に大きい3領域に絞って見ていきます。

3-1. 公衆衛生と緊急対応

ワクチンと医療物資の「見える化」

HS2028では、ワクチン分類が大きく再編されます。
WCOは、従来の見出し30.02に含まれていたワクチンを再構成し、人用ワクチンを扱う見出し30.07と、それ以外(獣医用など)を含む見出し30.08に分けることを示しています。linkedin+2

また、人用ワクチンを扱う30.07の下では、疾病ごと・組合せごとに細分化された多数の6桁号が導入されることが各種解説で紹介されており、全体としてワクチン貿易の可視性を高める構造になっています。linkedin+1
これは、緊急時の優先通関や関税軽減などの措置を制度化しやすくするとともに、COVID-19で顕在化したデータ不足の課題を踏まえ、ワクチンや医療機器の供給網をより精度高く設計できるようにする意図と説明されています。wcoomd+1

医療緊急対応物資についても、救急車や移動診療所、防護用フェイスシールドやマスク、パルスオキシメータや患者モニタ、吸引ポンプ、人工呼吸器などを対象とする新たな号が追加されることが紹介されています。linkedin+2
これにより、従来は他の号に吸収され統計上把握しにくかった緊急対応関連品目が、より明確にコードとして立ち上がる方向にあります。wcoomd+1

医療機器やヘルスケア製品を扱う企業にとっては、輸出入申告だけでなく、地域別の需給見通し、緊急時の供給計画、調達契約の条件設計など、サプライチェーン全体に影響が及ぶことになります。linkedin+2

3-2. サプリメントの新設見出し

食品と医薬の境界整理

HS2028では、サプリメント(dietary supplements)向けに新見出し21.07が設けられ、その適用範囲を定める新たな法的注(Notes)が導入されます。wcoomd+3
WCOは、この改正により、食品と医薬品の境界で長年続いてきた分類上の難しさを緩和し、法的確実性と統計の質を高める狙いがあると説明しています。wcoomd+1

サプリメント市場は、健康食品としての販売に加え、原材料供給、OEM製造、越境ECなど、多様なビジネスモデルが並行しています。
分類が揺れやすい領域ほど国ごとの解釈差や通関上の不確実性が大きくなり、輸出入停止や追加資料要求などのリスクが高まりがちです。wcoomd+1
見出し21.07の新設と法的注の整備は、こうしたグレーゾーンを制度面から整理し、各国で一貫した分類を促す試みと評価できます。wcoomd+1

3-3. プラスチック汚染と廃棄物管理

バーゼル条約との整合

環境分野では、プラスチック廃棄物の分類がバーゼル条約の枠組みに合わせて再編されることが、HS2028改正の大きな柱となっています。freightnews+2
WCOは、見出し39.15を再構成し、有害なプラスチック廃棄物、事前同意手続(PIC)の対象となるプラスチック廃棄物、その他のプラスチック廃棄物を区別する新たな6桁号を導入することを明らかにしています。freightnews+1

各種解説では、新設されるサブヘディングの一例として3915.40が示され、バーゼル条約のプラスチック廃棄物区分(Y48、A3210、B3011)との対応を明確化することで、当局による越境移動のモニタリングを容易にする狙いが説明されています。basel+2
規制対象の区分(バーゼル区分)とHSコードが近づくほど、企業にはコンプライアンス対応の精緻化が求められる一方、適正な品目管理を行う企業にとっては手続きや要件が明確になり、取引コストを抑えられる余地もあります。basel+2

さらに、プラスチック製品についても、汚染と関係が深い物品の可視性向上が図られます。
WCOは、ストロー、包装材、台所用品、手袋、綿棒(プラスチック棒付き)、風船、漁網・ネット関連など、環境汚染に関連しやすい品目群について新たな号や明確化を行うと説明しています。wcoomd+2
また、プラスチック関連章では「シングルユース」の概念が法的注として導入され、単回使用のプラスチック製品について、より一貫した分類とデータ収集が可能になるとされています。wcoomd+2


4. 経営に効く論点

HS改正は関税だけの話ではない

HS条約上、締約国はHSの見出し・号とその数値コードを用いて自国の関税率表および貿易統計表を整合させる義務を負い、6桁より下の細分(国別8桁、10桁など)は各国が任意に設定できます。[wcoomd]​
したがって、国際6桁が変われば、各国の下位桁も原則として連動して見直されることになります。omnitrans+1

一方で、HSは品目分類の枠組みを定める条約であり、税率水準そのものを拘束するものではありません。
HS条約は、締約国が「関税率に関して義務を負うものではない」と明記しており、改正によって税率が自動的に変わるわけではありません。[wcoomd]​
しかし、適用税率が紐づく「号」が変更されれば、結果として実効税率が上がる・下がる可能性があるため、企業は分類変更と税率影響を切り分けて検証する必要があります。omnitrans+1

さらにHSコードは、関税だけでなく、輸出入規制、許認可、検疫・安全規制、環境規制、統計・市場分析、社内の品目マスタ・収益管理などに直接関わっています。wcoomd+2
WCO自身も、HSを貿易規制の実装と国際貿易統計の基盤と位置付けており、企業としては「税金の話」に矮小化せず、広い意味でのコンプライアンス基盤として捉えることが重要です。wcoomd+2


5. 企業が今すぐ着手すべき実務

2026年からのロードマップ

改正発効まで約2年あるとはいえ、品目数が多い企業にとっては決して長いとは言えません。
WCOは、残りの実装期間においてコリレーションテーブルの作成や解説書更新、関連ツール整備などを行うと説明しており、企業はこれらの公表タイミングと整合させて社内移行計画を設計するのが現実的です。wcoomd+2

以下では、企業が2026年時点から着手しやすい実務ステップを整理します。

5-1. 影響範囲の特定

どの部門を巻き込むかを先に決める

最初のステップとして、関税・通関部門だけでなく、調達、物流、販売、経理、法務、品質保証、サステナビリティ、IT・マスタ管理などを関係部門として明確に定義します。
HS改正は品目マスタ変更と規制対応が同時並行で進むため、部門間で情報が分断されていると、誤分類や対応漏れが重大なリスクとなります。

5-2. 品目ポートフォリオの優先順位付け

全SKUを一度に精査するのは現実的ではないため、次の観点で重要度をスコアリングし、上位群から対応を始めると効率的です。

  • 売上高・利益への寄与
  • 輸入金額・関税コスト
  • 通関件数・仕向け国数
  • 規制該当品目(医療・化学・環境関連など)
  • 過去のトラブル・問い合わせ履歴

5-3. コリレーションテーブルを前提にしたマスタ移行設計

WCOはHS2022とHS2028のコリレーションテーブルを整備する方針を示しており、HS改正ごとに同様のツールが提供されてきました。wcoomd+2
ただし、コリレーションテーブルは「自動変換ツール」ではなく、1対1で移行できるケースもあれば、統合や分割により企業側の判断が必要となるケースも含みます。[wcoomd]​

したがって、コリレーションテーブルはあくまで出発点と位置付け、最終的なコード決定は、品名・用途・材質・規格など実際の仕様情報に基づく分類レビューで行う必要があります。
この前提で、ERPや通関システム、WMS、BIなどのマスタ構造をどう移行するかを、2026年の早い段階から検討しておくことが望まれます。

5-4. 国別実装タイムラインのモニタリング

HSは国際6桁が共通基盤ですが、実際の申告は各国の関税率表・統計品目表(8桁・10桁など)で行われます。omnitrans+1
各国は、WCO改正に合わせて国内法令およびシステムを改定するプロセスを進めます。

例として米国では、USITC(米国国際貿易委員会)がHS2028改正への整合を目的としたHTS改定プロセスを開始し、2025年8月11日のニュースリリースで、2026年2月に暫定案(preliminary draft modifications)を公表して意見募集を行い、同年9月に大統領向け報告書を提出する想定を明らかにしています。usitc+1
これは、主要国で既に国別実装作業が走り始めている具体例として、海外展開企業がタイムライン設計の参考にしうる情報です。usitc+1

5-5. 重要品目では先行して当局判断を取得する

分類は一定の解釈余地を伴う領域であり、特に税率差や規制有無が大きい品目については、移行後のコードをめぐる不確実性がリスクになります。
各国の事前教示制度(Binding Tariff Information等)や相談制度を活用し、主要品目については2028年の発効前に当局判断を得ておくことで、発効直後の混乱を最小化しやすくなります。


6. 社内で今日から使えるチェックリスト

以下は、経営層と実務担当が共通で使えるチェック項目です。

A. ガバナンス

  • HS2028移行の全社責任者(オーナー)を決めたか
  • 通関・財務・IT・サステナビリティ・事業部を含む横断プロジェクト体制を整えたか
  • 分類変更・税率影響・価格改定などの意思決定フローを文書化したか

B. データとシステム

  • 品目マスタの管理主体と変更手順が明確になっているか
  • 取引先から必要な技術情報(材質・用途・規格・組成など)を収集できる仕組みがあるか
  • ERP、WMS、通関システム、BIなどでHSコード情報が一貫しているか
  • 過去統計との比較(旧HSと新HSのブリッジ)をどう設計するか方針を持っているか

C. コストとリスク

  • 主要品目について、関税率表の変更に伴うコスト影響を試算する準備ができているか
  • 輸出入規制・許認可・環境規制など、HSコード連動の法令を洗い出しているか
  • 誤分類に伴う遅延・追徴・罰則・取引停止などの影響を定量的に把握しているか

D. 外部情報のウォッチ

  • WCOが整備するコリレーションテーブルや解説書等のアップデートを定期的に確認する体制があるか。wcoomd+3
  • 主要国(例:米国のUSITC)の関税率表改定プロセスと公表スケジュールを継続的にフォローしているか。usitc+1

7. 2026年1月21日は「準備開始の合図」

2026年1月21日のWCO発表は、HS2028改正が正式に受諾され、2028年1月1日の発効に向けて各国当局および企業が本格的な移行作業に入るべき段階に到達したことを示すものです。freightnews+3
改正は299セットという大規模なものであり、ワクチンや医療緊急対応物資、サプリメント、プラスチック汚染と廃棄物管理など、政策課題に直結する領域で粒度と定義が強化されています。linkedin+5

HS改正は、通関コストの最適化とコンプライアンス強化を同時に進めるチャンスである一方、準備が遅れれば2028年初頭に申告エラーや物流停滞、統計の断絶、規制違反リスクが一気に顕在化しうるイベントです。wcoomd+2
今の段階で求められるのは、全品目の結論を出し切ることではなく、影響範囲を「見える化」し、優先順位を付け、社内外の情報収集と意思決定プロセスを先に整えることです。wcoomd+1

WCOが想定する実装期間には限りがあります。
準備を早く始めるほど、損失を抑えつつ、改正を競争優位につなげる余地を広げることができます。wcoomd+2


HS2028相関表の第1ドラフトは、企業のHS移行を「単なるコード置換の作業」から「経営管理とリスクマネジメント」に格上げする起点になります

HS2028相関表と実装期間の位置づけ

2026年1月21日、世界税関機構(WCO)はHS2028改正が受け入れられたことを公表し、2028年1月1日の発効までの2年間を実装期間と位置づけています。wcoomd+2
この発表では、公衆衛生や環境、プラスチック廃棄物や新興製品など、政策課題を反映した改正である点とともに、加盟国および関係者が影響評価と準備を進めるための時間が確保されたことが強調されています。freightnews+1

WCOは、HS改正の実装作業として、相関表の作成、HS解説書や出版物の改訂、ITシステム更新、加盟国による国内法化、教育訓練などを挙げています。wcoomd+1
この流れはHS2022のときと同様であり、HS2028についても、相関表が実務へのブリッジとして中心的な役割を果たすことが想定されます。customsmanager+2

2025年9月に開催されたHS委員会(HSC)第76回会合では、HS2022とHS2028の相関表作成作業を開始し、分かりやすさと使いやすさを高めるためのフォーマット改善が採択されたと報告されています。strtrade+1
この会合の成果として、HS2028の効果的な実装を支える「参考ツール」としての相関表開発が、HSCの重要なタスクの一つに位置づけられています。strtrade+1

企業側の視点で見ると、相関表が公開されるタイミングから、製品マスタ、関税コスト、EPA・FTAの原産地判定、輸出入管理、見積条件、BIの集計軸といった社内データやプロセスが連鎖的に更新され始めます。
相関表は、こうした連鎖の出発点になり得るため、「第1ドラフト」が持つ意味は非常に大きいと言えます。

相関表とは何か:性質と限界

WCOが公表しているHS2017からHS2022への相関表は、HS改正時にどのコードがどのコードに移るのかを示す「移行の地図」として作成されています。wcoomd+1
ただし、WCO自身が強調している通り、相関表はいくつかの重要な前提を伴います。wcoomd+1

  1. 法的拘束力はない
    HS2017–HS2022相関表の説明では、相関表は加盟国や企業が新しい版への移行を準備するためのガイドであり、法的な解釈や分類決定そのものではないと明記されています。wcoomd+1
    したがって、最終的な分類や課税・監査の判断は、各国法令や税関当局の運用に基づいて行われます。
  2. 1対1の単純な置換表ではない
    相関表では、旧サブヘディングから新サブヘディングへの移行が、分岐(旧1コードから新複数コード)や統合(旧複数コードから新1コード)として示される場合があります。[wcoomd]​
    また、旧サブヘディングの一部のみが新サブヘディングに移る場合、接頭辞「ex」が付され、そのコードのうち一部の品目だけが対象であることが示されます。[wcoomd]​
  3. 複数の対応が併記される場合がある
    HS2017–HS2022相関表の解説では、改正や相関の検討過程で、特定品目の現行分類について加盟国間で見解が分かれたケースがあったことが説明されています。[wcoomd]​
    こうした場合、相関表には複数の相関候補が併記され、各国・地域のナショナルまたはリージョナル相関表が、実務上の最終的な対応関係を示す役割を果たすとされています。[wcoomd]​
  4. 相関表は将来修正されうる
    相関表は後から変更や修正が行われる可能性があり、最新版は常にWCOのウェブサイト上にあると明記されています。wcoomd+1
    したがって、ドラフト段階はもちろん、正式版についても版管理と更新確認が企業側の必須作業になります。

これらの性質は、HS2028の相関表でも基本的に踏襲されると考えるべきであり、「相関表に書いてあるから安全」という前提で動くことは危険です。customsmanager+2

なぜ第1ドラフトが企業にとって重要なのか

HS改正では、発効日までの実装期間の間に、WCOと各国が相関表や解説書、ITシステムなどを順次整備していくことが制度的に組み込まれています。ddcustomslaw+2
HS2028についても、改正の受入れが公表されてから発効日までの2年間で、相関表作成と関連ツールの更新が進められることが示されています。linkedin+2

この文脈で、第1ドラフトは企業にとって「検証と準備を始める合図」となります。
経営視点で整理すると、次の三つの意味があります。

  1. 影響範囲を数量的に把握できる
    自社が現在使用しているHS2022の6桁コードを相関表に当てることで、どのコードがそのまま維持され、どこが分岐し、どこが統合されるかが見える化されます。wcoomd+1
    これに売上高、利益率、数量、主要仕向地などを掛け合わせることで、どの品目群から優先的に見直すべきか、作業量とリスクを定量的に把握できます。
  2. 経営レベルの意思決定が必要な論点が露出する
    旧1コードが新複数コードに分岐する場合や、exが付されて一部のみが新コードに移る場合、自社製品がどの定義に当てはまるかを判断する必要があります。[wcoomd]​
    分岐の選択は、監査や訴訟時の説明責任にも直結するため、現場担当だけでなく、法務・コンプライアンスを含む会社としての方針決定が求められます。
  3. システム要件の具体化が進む
    新旧コードの併存、適用開始日の管理、過去データの再集計など、ITシステム側で必要となる要件が、相関表ドラフトを前提に具体的に設計できるようになります。ddcustomslaw+1
    単なる「コード検索機能」ではなく、「年版と適用日の版管理」を前提とした設計が求められます。

相関表ドラフトの実務的な読み方

相関表は、眺めて満足する資料ではなく、自社データに当てて初めて意味を持ちます。
ドラフト段階で企業が取るべき実務ステップは、次のように整理できます。

ステップ1 影響度のスクリーニング

  • 自社のHS2022の6桁コード一覧を作り、相関表上で変化のあるコードを抽出する。wcoomd+1
  • そのコードに紐づく売上・利益・数量・主要仕向地を付け、影響度の高い順に優先順位を付ける。
  • まずは「分岐」「統合」「ex」が関係するコードを上位から検討し、リスクの大きい箇所を先に潰す。

相関表は後から修正されうるため、初期段階で全品番を完全にやり切ることを目指すよりも、高リスク領域から段階的に精度を上げていく方が現実的です。wcoomd+1

ステップ2 分岐・統合の意思決定基準を作る

分岐やexが伴う移行では、最終的に「商品の定義」を読み解く作業が必要になります。[wcoomd]​
HS2028の改正は、公衆衛生、環境、廃棄物管理、新興製品など政策目的との紐づけが強いことが特徴とされており、定義の読み込みとそれを裏付ける証拠がより重要になります。freightnews+1

ドラフト段階でやるべきことは、最終コードを急いで決めることではなく、社内の判断基準を言語化することです。具体的には、次の切り口で基準を整理します。

  • 用途で区分されるのか(民生用、産業用、医療用など)
  • 材質で区分されるのか(プラスチック廃棄物の種類など)
  • 機能で区分されるのか(医療機器、測定機器、通信機器など)
  • 規制目的で区分されるのか(特定条約や環境規制の対象か否かなど)

この基準を各事業部門と共有できる形にしておくことで、正式版相関表や各国税関の運用が明らかになった段階で、スムーズに最終判断につなげることができます。linkedin+2

ステップ3 ドシエ型で分類根拠を残す

WCOは相関表について「法的文書ではないが、新版HS導入準備に不可欠なツール」と位置づけています。[wcoomd]​
逆に言えば、企業は「なぜその新コードに移行したのか」を自ら説明できるようにしておく必要があります。

実務上は、次の要素をセットでドシエ化する形が有効です。

  • 製品説明(材質、構造、主要機能、用途、写真・図面など)
  • 現行HSコードの根拠(関税分類表の条文、部・類注、品目注、関連する解説書の要点)
  • HS2028側で変化する定義の要点(新設・改正される見出しやサブヘディングの趣旨)freightnews+1
  • 相関表上での位置づけ(分岐か統合か、exが付されているかどうか)wcoomd+1
  • 社内判断の結論と、その判断に用いた製品仕様・用途情報

このような形で分類ドシエを整備しておけば、後に税関から照会を受けた場合や、内部監査・グローバル税務調査の場面でも、一貫した説明が可能になります。

ステップ4 ITは「版管理」前提で設計する

WCOは、相関表や解説書、出版物、ITシステムなどがHS改正の実装期間に更新されると説明しており、各国税関システムもこれに合わせて改修されます。customsmanager+2
企業側も同様に、HS改正を見据えたシステム設計を前倒しで進める必要があります。

推奨される設計の考え方は次の通りです。

  • HS年版(例:HS2022、HS2028)をマスタ項目として保持する
  • 適用開始日をキーにして、新旧コードを自動で切り替えられるようにする
  • 移行期間中は、新旧コードの併記や両方での検索を許容する
  • 過去の取引データが、どの年版のHSコードに基づいているか追跡できるようにする

こうした「版管理」が最初から組み込まれていないと、後から改修する際にコストと工期が膨らみがちです。
HS2028相関表のドラフトが出た段階で、要件定義と影響度見積りを始めておくことが、IT投資を最適化するうえでも重要です。ddcustomslaw+1

経営者が押さえるべきリスクと機会

相関表ドラフトは、リスクと機会の両面で経営に直結します。

リスク面では、次の点が挙げられます。

  • 誤申告や監査指摘のリスク
    相関表はガイドであっても、分岐やexの判断を誤れば、その選択の説明責任は企業に残ります。wcoomd+1
  • 関税・追加関税コストの読み違い
    新コード側で税率や追加関税の対象が変わると、見積条件や価格戦略の前提が崩れる可能性があります。
  • EPA・FTAの原産地判定の混乱
    多くの原産地規則(PSR)はHSコードベースで構成されており、品目の移行が遅れれば、原産地証明の運用やサプライチェーン設計に支障が出ます。

一方、機会としては次のような効果が期待できます。

  • 製品マスタと技術情報の品質向上
    分岐判断には詳細な仕様情報が不可欠であり、その整備は分類だけでなく、購買分類、規制管理、品番統合、製品戦略の精度向上にも寄与します。
  • 通関・分類実務の属人化の軽減
    ドシエ化と判断基準の明文化によって、担当者の異動や委託先の変更があっても、組織として一貫した判断を維持しやすくなります。
  • HSを軸にした経営データの再設計
    HS改正に合わせてBIや収益管理の集計軸を見直すことで、国・製品・顧客別の収益性分析やリスク分析の精度を高めることができます。

この2年間で企業が取り組むべきこと

HS2028は2028年1月1日に発効し、その前の2年間でWCOと加盟国は相関表や解説書の更新、ITシステムの改修を進めていきます。linkedin+2
HS委員会では既にHS2022とHS2028の相関表作成作業が開始され、フォーマット改善も含めた実務ツール整備が動き出しています。strtrade+1

企業側がこの期間に重視すべきポイントは、次の三つに整理できます。

  • 影響度の高い品番から、分岐・統合・exを優先的に検討する
  • 判断基準を先に作り、分類ドシエで根拠とプロセスを記録する
  • コード置換ではなく、HS年版と適用日を軸にした版管理としてITを設計する

HS2028相関表の第1ドラフトは、単なる参考資料ではありません。
自社の分類体系とデータ構造を、次の8年間を見据えて再設計するためのスタートラインとして位置づけることが、グローバルサプライチェーンを持つ企業の経営課題になっていくでしょう。customsmanager+2