HSコードにおける「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」の意味と、部分品分類の実務

0. この文章で扱う範囲

HSコードの符番説明や部・類の注には、部分品の所属決定に関して「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」という表現が出てきます。実務では特に、第16部注2の注2(b)で問題になることが多いため、この文章では第16部注2を中心に、ビジネスマンが分類作業で迷いにくくなるように解説します。

1. この表現の意味を一言で言うと

「特定の機器にもっぱら、または主として使用される」とは、部品の設計や仕様、一般的な流通実態から見て、使用先が特定の機器に強く結びついている状態を指します。

この表現が使われる場面の本質は次のとおりです。

  1. 部品が独立した品目として、別の見出しに明確に当たるなら、その見出しで分類する
  2. それ以外の部品で、特定の機器向けに専用または主要用途が偏っているなら、機器側の見出しや指定された部分品見出しへ寄せる
  3. それでも決まらない部品は、残余の部分品見出しに回す

この考え方は、第16部注2が定める判断順序そのものです。

2. 「もっぱら」と「主として」の違い

2.1 もっぱら

実務上は次のイメージです。

形状や接続方式、寸法、制御仕様などの客観的特徴から見て、ほぼその機器にしか使えない
他用途への転用が現実的に難しい
市場でもその機器用部品として取引されるのが通常

ポイントは、輸入者がどう使う予定かではなく、部品そのものの客観的性質で判断されることです。

2.2 主として

こちらは、他用途も理屈上はあり得るが、通常の用途や流通の中心が特定機器向けに偏っている、という状態です。

例えば次のような材料が根拠になりやすいです。

メーカーのカタログで対応機種が限定されている
互換性表で特定系列機器だけに適合する
販売実績や取引実態として特定用途が大半を占める
機器側の仕様に合わせた設計で、他用途だと過剰仕様または不適合になる

条文上、数値の閾値が固定で示されているわけではないため、証拠の質と量で説得力を作ることが重要になります。

3. 「特定の機器向け」を判断する時に見ているもの

分類実務で見られるのは、概ね次の3点です。

  1. 物としての特徴
    取付、嵌合、コネクタ、寸法公差、電気特性、通信プロトコル、耐環境仕様など
  2. 適合範囲
    どの機器に付くのか、同一見出しの複数機器に共通なのか、見出しを跨いで広く使えるのか
  3. 一般的用途と取引実態
    市場でどう呼ばれ、どう売られ、何向けが中心なのか

この3点が揃うほど、「もっぱら」または「主として」の判断が安定します。

4. 第16部注2を、実務の判断順に並べる

4.1 まず確認すること

第16部注2は、機械の部分品についての所属決定ルールですが、すべての部分品に無条件で当たるわけではありません。

注2の適用から除かれるものがあります。代表例として、次の見出しの物品の部分品は注2の対象外です。

第84.84項の物品の部分品
第85.44項から第85.47項までの物品の部分品

また、第16部注1で除外される「卑金属製のはん用性の部分品」などは、そもそも第16部の物品として扱わない整理になります。

4.2 注2(a) 部品が第84類または第85類の別見出しに当たるか

注2(a)は、先に独立の見出しがあるものを優先するルールです。

部品であっても、それ自体が第84類または第85類のいずれかの見出しに明確に該当するなら、原則その見出しに分類します。

ただし、注2(a)には例外として、次の見出しは除外されています。ここは実務上、非常に重要です。

第84.09項、第84.31項、第84.48項、第84.66項、第84.73項、第84.87項
第85.03項、第85.22項、第85.29項、第85.38項、第85.48項

この例外に入る見出しは、典型的に部分品を収容するための見出しなので、注2(a)で機械一般の独立見出しに吸収させず、注2(b)や注2(c)の枠組みに乗せる設計になっています。

実務メモ
専用品だからといって、必ず機械側の部分品見出しへ行くわけではありません。まず注2(a)で、部品そのものの独立見出しがあるかを確認することが基本動作です。

4.3 注2(b) 「もっぱら、または主として使用される」部品の帰属

注2(a)に当たらない部品について、次の判断をします。

特定の機械、または同一見出しの複数の機械に、もっぱらまたは主として使用されるか
ここでいう機械には、第84.79項または第85.43項の機械も含まれます

該当する場合、原則として次のいずれかに分類します。

その機械の見出し
または、次の部分品見出しのうち該当するもの
第84.09項、第84.31項、第84.48項、第84.66項、第84.73項
第85.03項、第85.22項、第85.29項、第85.38項

そして、注2(b)には重要なただし書きが2つあります。ここは誤記や脱落が起きやすいので、社内資料では必ず明記することをおすすめします。

第85.17項の物品と、第85.25項から第85.28項までの物品に共通して主として使用する部分品は、第85.17項へ
第85.24項の物品に、もっぱらまたは主として使用する部分品は、第85.29項へ

このただし書きは、注2(b)の一般ルールよりも優先して分類先を指定する性格のものです。

4.4 注2(c) それ以外の残余部分品

注2(c)は、注2(a)にも注2(b)にも当てはまらない部品の行き先を、見出し番号で明示しています。

原則として、次の見出しのうち該当するものへ分類します。

第84.09項、第84.31項、第84.48項、第84.66項、第84.73項
第85.03項、第85.22項、第85.29項、第85.38項

それでも該当がない場合は、次のいずれかに分類します。

第84.87項 または 第85.48項

実務上は、注2(c)を「残余の部分品項へ」とだけ書くと誤解が生まれやすいので、少なくとも見出し番号の並びまで記載しておくのが安全です。

5. 社内で迷いがちなポイントと、実務のコツ

5.1 予定用途だけで「主として」と言わない

輸入者の社内予定や販売計画は補助情報にはなりますが、それだけだと根拠として弱くなります。仕様と客観的適合性を中心に、説明を組み立てるほうが安定します。

5.2 同一見出しの複数機械に使う場合は整理しやすい

注2(b)は、特定の機械だけでなく、同一の見出しの複数機械に主として使う部品も想定しています。ここは材料を集めやすい領域です。

5.3 見出しを跨いで広く使える部品ほど、注2(b)に乗りにくい

汎用性が高く、複数の見出しの機器に幅広く使える場合、特定機器向けの結びつきが弱くなり、注2(b)で機械側へ寄せる論拠が薄くなります。その場合は注2(a)で独立見出しに当たらないか、注2(c)の行き先を丁寧に検討します。

6. 立証資料のそろえ方

分類担当として、最低限そろえたい資料は次のとおりです。

  1. 仕様書
    寸法、材質、電気特性、通信規格、耐熱など
  2. 図面や写真
    取付部、コネクタ、嵌合形状、機器側との関係が見えるもの
  3. カタログや取説
    対応機種、用途説明、交換部品の扱いが分かる記載
  4. 互換性表
    どの機種に適合するかを一覧で示せる資料
  5. 取引実態の補強
    販売実績の傾向、用途別の販売構成、主要顧客の業界など

7. 根拠となる規定

分類の大原則は、見出しの文言と部・類の注に基づいて決める、という考え方です。 (wcoomd.org)
第16部の部分品については、第16部注2が、判断順序と分類先の見出し番号まで含めてルール化しています。

免責事項

本文章は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別取引の品目分類、課税関係、申告の適否や結果を保証するものではありません。最終的な分類は、対象貨物の実物、仕様、提示態様、適用される通則および部・類の注等に基づき、必要に応じて税関の事前教示制度の利用や専門家への相談を行った上でご判断ください。

 

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投稿者: shima

嶋 正和 株式会社ロジスティック 代表取締役社長

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