用語の約束(本稿内):部=Section、類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、注=Notes(部注/類注)
第55類は、人造繊維の短繊維(ステープル)を中心に、一定条件を満たす長繊維のトウ(tow)、人造繊維のくず、紡績糸、織物までを扱う類です。実務では、品名の印象だけで決めると外しやすく、特に「トウの数値要件」「縫糸かどうか」「小売用かどうか」「混用比率と織物の目付」でコードが動きます。

1. まず結論:この類に入るもの/入らないもの
1-1. 第55類に入る代表例
- 合成繊維の長繊維のトウ(一定要件を満たすもの):ポリエステルトウ、ナイロン系トウなど(55.01)
- 再生繊維又は半合成繊維の長繊維のトウ:アセテートトウなど(55.02)
- 合成短繊維(紡績準備の処理をしていない):ポリエステル短繊維(ベール梱包)など(55.03)
- 再生繊維又は半合成繊維の短繊維(紡績準備の処理をしていない):ビスコース短繊維など(55.04)
- 人造繊維のくず:ノイル、糸くず、反毛した繊維など(55.05)
- 紡績準備後の短繊維:カード、コーム等を経た短繊維や処理済みくず(55.06、55.07)
- 縫糸:人造繊維短繊維の縫糸(55.08)
- 紡績糸(縫糸を除く):小売用でない糸(55.09、55.10)/小売用の糸(55.11)
- 織物:合成短繊維の織物(55.12〜55.15)/再生・半合成短繊維の織物(55.16)
1-2. 第55類から除外されやすい代表例(除外先の目安)
- 長繊維の糸や織物など、第54類(人造繊維の長繊維)で扱うもの(例:フィラメント糸、長繊維織物など)
- 長さが5ミリメートル以下の紡織用繊維(フロック)、繊維ダスト、ミルネップ:56.01
- 炭素繊維及びその製品:68.15
- ガラス繊維及びその製品:70.19
- 石綿および石綿製品(該当する場合):25.24、68.12、68.13
2. 最重要ポイント:トウ(tow)の数値要件で55.01/55.02に入るかが決まる
第55類の類注(注1)は、55.01と55.02に入る「トウ」を数値条件で限定しています。条件を満たさないと、55.03/55.04や、第54類など別の行先になり得ます。
2-1. 55.01/55.02に入るトウの要件(5条件)
| 判定項目 | 基準 | 実務メモ |
|---|---|---|
| 長さ | 2メートルを超える | 2メートル以下なら55.03または55.04に回る可能性が高いです |
| より数 | 1メートルにつき5未満 | 仕様書で撚りの有無と撚り数を確認します |
| 単糸繊度 | 構成する1本の長繊維が67デシテックス未満 | 67デシテックス以上の長繊維が混じると別分類リスクが上がります |
| 延伸 | 合成繊維のトウは延伸済みで、長さの2倍を超えて伸びない | 延伸の有無は分類トラブルの典型ポイントです |
| 総繊度 | 1束につき20,000デシテックス超 | 20,000以下だと55.01から外れる可能性があります |
上の要件は、第55類の類注(注1)として明示されています。
2-2. トウが55.01/55.02から外れる典型パターン
- 長さが2メートル以下のトウは、55.03または55.04に属します(要件を満たしていても「長さ」で落ちます)。
- 55.01の説明では、総繊度が20,000デシテックス以下のものや、延伸していない長繊維(状況により)は54.02側へ行く例が示されています。トウとフィラメント糸の境界では、総繊度と延伸が特に効きます。
- 構成する1本の長繊維が67デシテックス以上など、単糸繊度が大きい場合は、54.04や39類になることがある旨が示されています(素材が「繊維」扱いか、プラスチックのストリップ等扱いかまで波及します)。
3. 第55類の地図:項(4桁)の全体像
まずは「何の形状か(短繊維/トウ/くず/糸/織物)」で項が決まります。次に、合成か再生・半合成か、紡績準備の有無、小売用かどうか、混用・目付などで号(6桁)へ落とします。
| 項番号(4桁) | 見出しの要旨(日本語) | 典型例(製品名) | 重要な分岐条件/除外/注意点 |
|---|---|---|---|
| 5501 | 合成繊維の長繊維のトウ | ポリエステルトウ、ナイロン系トウ | 類注1の5条件を満たすトウだけ |
| 5502 | 再生繊維又は半合成繊維の長繊維のトウ | アセテートトウ | 55.01の考え方を準用(合成の延伸条件を除く考え方) |
| 5503 | 合成短繊維(カード・コーム等の処理前) | PSFベール(未カード) | 長さ2m以下のトウがここへ入る場合あり |
| 5504 | 再生・半合成短繊維(カード・コーム等の処理前) | ビスコース短繊維(未カード) | 5503と同様の考え方 |
| 5505 | 人造繊維のくず(ノイル、糸くず、反毛など) | スピニングくず、反毛繊維 | フロック(56.01)と混同しやすい |
| 5506 | 合成短繊維(カード・コーム等の処理後) | カード済みPSF、トップ等 | 紡績準備の有無が分岐 |
| 5507 | 再生・半合成短繊維(カード・コーム等の処理後) | カード済みビスコース短繊維 | 5506と同様 |
| 5508 | 人造繊維短繊維の縫糸 | 縫製用のミシン糸 | 部注の「縫糸」定義で判定 |
| 5509 | 合成短繊維の紡績糸(小売用でない、縫糸除く) | 工業用コーン糸 | 小売用かどうかで5511に動く |
| 5510 | 再生・半合成短繊維の紡績糸(小売用でない、縫糸除く) | ビスコース糸(工業用) | 5509と同様 |
| 5511 | 人造繊維短繊維の紡績糸(小売用、縫糸除く) | 小巻の手芸糸 | 小売用の定義は部注で数値条件あり |
| 5512 | 合成短繊維の織物(合成短繊維が85パーセント以上) | ポリエステル短繊維主体の服地 | 85パーセント判定が重要 |
| 5513 | 合成短繊維の織物(85パーセント未満、綿が主、170g/㎡以下) | T/C薄地(目付軽め) | 85パーセント未満、綿が主、目付170以下 |
| 5514 | 合成短繊維の織物(85パーセント未満、綿が主、170g/㎡超) | T/C厚地(目付重め) | 目付170超で5514へ |
| 5515 | その他の合成短繊維の織物 | 混用の多い合繊短繊維織物 | 「綿が主」条件に当てはまらない等 |
| 5516 | 再生・半合成短繊維の織物 | レーヨン短繊維織物 | 再生・半合成側の織物 |
項の範囲はHSの見出し(WCO)と、日本税関の解説で確認できます。
4. 6桁(号)で実務上重要な分岐
4-1. 5508(縫糸)か、5509〜5511(縫糸以外の糸)か
縫糸は「複数(合糸)またはケーブル糸であること」「支持体に巻かれた状態で重量が1,000g以下」「縫糸としての仕上げ」「最終撚りがZ撚り」という部注の定義で判定します。単に品名がミシン糸でも、定義に当てはまらないと縫糸として扱えないことがあります。
4-2. 5511(小売用)か、5509/5510(小売用でない)か
「小売用にしたもの」は、支持体に巻いた糸の重量や、玉巻・かせの重量、また工業用形態(コップ、管、ピルン等)などの例外で定義されています。実務では、包装形態と重量、用途(手芸用か工業用か)の証拠が必要です。
4-3. 5512〜5514で頻出する「85パーセント」と「170g/㎡」
織物側の頻出分岐は次の2つです。
- 合成短繊維が全重量の85パーセント以上なら、基本的に5512(合成短繊維の織物)側の枠になります。
- 合成短繊維が85パーセント未満で、混用繊維の全部又は大部分が綿で、目付が170g/㎡以下なら5513、170g/㎡を超えるなら5514です。
ここでの「綿が主」「85パーセント判定」「目付」は、インボイスの品名だけでは確定できません。試験成績書、混用率表、織物仕様(g/㎡)が必要になります。
4-4. 55.05(くず)と56.01(フロック等)の境界
第55類の解説では、56.01の「長さ5ミリメートル以下の繊維(フロック)」や「フロック、ダスト、ミルネップ」は第55類に入らないと明示されています。くずの形状や粒度が細かいと、55.05ではなく56.01へ行く可能性があるため、繊維長の情報が重要です。
4-5. 混用繊維の基本ルール(第11部注2)
第50類〜第55類の混用繊維は、原則として「重量が最も大きい繊維」で分類します。どれも優勢でない場合は「後ろに出てくる見出し(最後に記載された繊維側)」で分類するルールです。混用率の算定根拠(製品全体の重量比)を確実に取るのが安全です。
5. 判定フロー(迷ったときの順番)
社内の一次判定は、次の順番にすると手戻りが減ります。
- 材質の確定
- そもそも「人造繊維」に該当するかを確認します。定義は第54類の注で示され、合成繊維と再生・半合成繊維の区分もここで整理されます。
- 形状の確定(ここで項がほぼ決まります)
- トウか(55.01/55.02の候補)
- 短繊維か(55.03/55.04/55.06/55.07の候補)
- くずか(55.05の候補)
- 糸か(55.08〜55.11の候補)
- 織物か(55.12〜55.16の候補)
- トウの場合は、類注1の数値条件をチェック
- 5条件を満たせば55.01/55.02
- 長さ2メートル以下など条件外なら55.03/55.04等に回り得る
- 総繊度や延伸などで第54類へ動く可能性もあるため注意
- 短繊維の場合は「紡績準備の処理」の有無をチェック
- カード、コーム等の処理前:55.03/55.04
- 処理後:55.06/55.07
- 糸の場合は「縫糸」か「小売用」かを先に確定
- 縫糸(55.08)は部注の定義で判定
- それ以外は、小売用(5511)か小売用でない(5509/5510)かを部注の定義で判定
- 織物の場合は「85パーセント」「綿が主」「目付170g/㎡」をチェック
- 5512〜5514の分岐が頻出です。混用の扱い(部注2)も同時に確認します。
6. よくある誤分類と、社内での防ぎ方
- 間違い:トウを55.01/55.02に入れたが、実は類注1の要件を満たしていない
- なぜ起きる:品名がtowで、数値条件(長さ、総繊度、延伸など)を取らずに決めてしまうためです。
- 正しい考え方:55.01/55.02は類注1の5条件を全て満たすトウに限定されます。
- 予防策:供給者仕様書で「長さ」「撚り」「単糸繊度」「延伸」「総繊度」を必ず回収します。
- 間違い:長さ2メートル以下のトウを55.01にした
- なぜ起きる:トウはトウ、という思い込みで長さ条件を見落とします。
- 正しい考え方:2メートル以下は55.03または55.04へ回る旨が明記されています。
- 予防策:梱包状態だけでなく、トウの実測値または製造仕様の長さ情報を取得します。
- 間違い:55.05(くず)と56.01(フロック等)を取り違えた
- なぜ起きる:どちらも「繊維の細片」に見え、見た目で判断してしまうためです。
- 正しい考え方:フロックは長さ5ミリメートル以下として56.01側で整理され、55類から除外されます。
- 予防策:繊維長(分布)と製造由来(切断か、粉砕か、紡績くずか)を確認します。
- 間違い:縫糸(55.08)を、単に小巻だから5511にした
- なぜ起きる:小巻=小売用糸、という見た目判断になりがちです。
- 正しい考え方:縫糸は部注で定義され、Z撚り、仕上げ、支持体重量などの要件で判定します。
- 予防策:糸の撚り方向、仕上げ(縫糸用の処理)、支持体込み重量を確認します。
- 間違い:5511(小売用)か5509/5510(小売用でない)かを包装形態だけで決めた
- なぜ起きる:ラベルや箱の有無で判断してしまうためです。
- 正しい考え方:「小売用」は重量条件や工業用形態の例外を含む定義で決まります。
- 予防策:支持体込み重量、玉巻・かせ重量、工業用形態(コップ等)かどうかを仕様書と現物写真で確認します。
- 間違い:織物で「85パーセント」判定を、糸番手や混率表示だけで推定した
- なぜ起きる:混率ラベルと実重量比が一致している前提で進めてしまうためです。
- 正しい考え方:見出し条件は重量比です。部注2の混用ルールも含め、製品全体の重量比で判定します。
- 予防策:混用率の試験成績書、BOM、製造ロットの混率管理記録を取得します。
- 間違い:5513と5514を取り違えた(目付170g/㎡の見落とし)
- なぜ起きる:混用条件だけ見て、目付を確認しないためです。
- 正しい考え方:5513は170g/㎡以下、5514は170g/㎡超で明確に分かれます。
- 予防策:検査成績書または製品仕様でg/㎡を取得し、対象生地がどちらに該当するかを記録します。
- 間違い:第55類のつもりで進めたが、実は炭素繊維やガラス繊維だった
- なぜ起きる:用途や外観が似ており、材料定義を飛ばしてしまうためです。
- 正しい考え方:炭素繊維(68.15)やガラス繊維(70.19)は第55類から除外されます。
- 予防策:材質証明(MSDS、材料証明書)で繊維種を確定してから分類に入ります。
7. HS2017からHS2022で変わった点(第55類で実務に効きやすいところ)
第55類では、少なくともHS2017からHS2022への変更として、55.01(合成繊維の長繊維のトウ)の一部で細分が入っています。
| 比較(HS2017→HS2022) | 変更タイプ | 該当コード | 変更の要旨 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|---|
| HS2017の5501.10(ナイロンその他のポリアミドのトウ)→ HS2022で分割 | 分割 | 5501.11(アラミド)/5501.19(その他) | アラミドのトウを別掲して識別性を上げる | マスタの旧コード踏襲に注意。アラミド関係の取引は統計・管理面で誤りが見つかりやすい |
この分割の趣旨として、相関表の備考では「二重用途品目の監視・管理を容易にするため」と記載されています。
8. 参考資料(出典、参照日:2026-02-24)
- 日本税関:第55類(人造繊維の短繊維及びその織物)類注
- 日本税関:関税率表解説 第55類(総説、各項解説、除外例、数値条件)
- WCO:HS2022 Chapter 55(Man-made staple fibres)
- WCO:HS2022 Section XI Notes(混用ルール、小売用、縫糸の定義など)
- WCO:HS2022 Chapter 54(人造繊維の定義、Chapter 55のトウとの関係)
- 日本税関:第54類注(人造繊維の定義、日本語)
- 日本税関:関税率表解説 第56類(56.01 フロック等の説明)
- WCO:HS2022 Chapter 56(56.01でフロックを5mm以下とする見出し)
- WCO相関表(HS2017–HS2022):5501.10の細分理由(dual use監視等)
- WCO:HS2017 Chapter 55(旧コード体系の確認)
免責事項
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