センサー・計測機器のHSコード分類を国際裁定で読み解く



EU・米国・日本を横串で比較する実務ガイド

センサーや計測機器は、製造業の競争力を左右する中核部品である一方で、HSコードの解釈が揺れやすい分野でもあります。誤った分類は、関税コストの想定違いにとどまらず、FTAの原産地判定、輸入規制の該当性、顧客への価格提示、契約条件に連鎖して影響します。

本記事では、ビジネスマンが意思決定に使える形で、センサー・計測機器の分類を国際裁定比較の視点で深掘りします。EUのBTI(Binding Tariff Information)、米国CBPのルーリング、日本税関の事前教示を中心に、制度の差と読み解き方、社内判断への落とし込みまでを整理します。


1. 国際裁定比較とは何か

1-1. 裁定や事前教示は、どこまで頼れるのか

関税分類の裁定や事前教示は、税関当局が特定の貨物について輸入前に文書で取扱いを示す制度です。申請者が提出した事実関係を前提に、一定条件の下で当局側の取扱いを拘束または強く拘束的に運用する仕組みとして位置づけられています。

ただし、最も重要な前提はこれです。

裁定や事前教示は、他社品の結論を自社品へ機械的に当てはめるための道具ではありません。自社品の仕様、輸入形態、同梱物、機能範囲が一致して初めて参考になります。

加えて、米国CBPのルーリングは、申請した当事者との関係においてのみCBPを拘束します 。他の輸入者が類似製品を輸入する場合に自動的に適用されるわけではありませんが、公開先例として分類の根拠を支える有力な参照材料となります。[cbsa-asfc.gc]​

1-2. なぜ国際裁定比較がビジネスで効くのか

国際裁定比較が効く理由は、結論そのものよりも、結論に至る論点を抽出できるからです。

1つの国の判断だけを見ていると、分類が揺れる要因が見えにくいことがあります。複数国の判断を並べると、どの機能や構造が分岐点になるのか、どの説明が弱点になり得るのかが浮き彫りになります。結果として、事前教示を取るべき国、必要資料の優先順位、契約や価格に織り込むべき不確実性を整理しやすくなります。


2. センサー・計測機器で分類が揺れやすい理由

センサーと計測機器が難しいのは、「測る」「変換する」「記録する」「通信する」「制御する」機能が一体化しやすいからです。特に次の論点が、国や担当官によって判断が割れやすいポイントです。

  • 測定か、制御か
  • 何を測っているか(流体・気体の変量か、電気量か、物理・化学分析か)
  • 電気量の測定か、非電気量の測定か
  • 単体製品か、部品か
  • 複合機能品の主要機能は何か

現場でよく起きるのは、設計側の意図は測定であっても、製品としては制御ロジックを内蔵し、設定値と比較して自動で出力を変える領域に踏み込んでいるケースです。この瞬間に、分類の候補が大きく変わります。

2-1. センサー・計測機器に関連する主要HS見出し

分類判断を始める前に、候補見出しの全体像を押さえることが実務の基本です。以下は、センサー・計測機器の検討において頻出するHS見出しです 。tsukanshi+1

HS見出し品目内容(概要)
9025液体用温度計、気圧計、湿度計など
9026流量、液位、圧力その他の変量の測定用または検査用の機器(例:流量計、マノメーター、熱流量計)
9027物理分析用または化学分析用の機器(例:分光計、ガス分析器)、粘度・多孔度等の測定機器
9028ガスメーター、液体メーター、電力量計等(供給量・消費量の計量用メーター)
9030電気量(電圧・電流・周波数等)の測定または検査用の機器(例:電圧計、電流計、オシロスコープ)
9031他のいずれの見出しにも含まれない測定または検査用の機器(例:座標測定機、非接触センサーを使った長さ・角度測定機器)
9032自動調整用または自動制御用の機器(例:温度調節器、自動制御弁、PIDコントローラー)
8542電子集積回路(センサー機能内蔵ICを含む)
8543電気機器(他の見出しに含まれないもの。例:電気式変換器、トランスデューサー)

第90類の注3では、電気量を測定する機器は原則として第9030項に分類されると明記されています 。また、センサー機能を内蔵した集積回路(IC)については、WCO(世界関税機構)が2024年3月の第73回HS委員会において、測定機器(第90類)ではなく電子集積回路(第8542項)として分類する意見を採択しています 。設計上はセンサーでも、ICとして製造・輸入される場合は第85類が優先されます(後述 5-4 参照)。jaftas+1


3. 主要国の裁定制度を、拘束力と使いどころで整理する

制度を並べる前に、押さえるべき実務観点は2つです。

1つ目は、どこまで拘束力があるか。
2つ目は、公開情報としてどれだけ参照できるか。

以下は、代表的制度の比較です。

国・地域制度名ビジネス上の使いどころ有効期間公開性
EUBTI(Binding Tariff Information)EU域内のすべての税関で一貫した分類が可能。域内複数国に輸出入がある企業に効く。3年間(2016年5月のUCC施行以降。以前は6年間) taxation-customs.ec.europa+1EBTIデータベース(公開)で参照可能 [taxation-customs.ec.europa]​
米国CBPルーリング申請者との関係でCBPを拘束。第三者への直接拘束力はないが、CROSS(公開検索システム)で膨大な先例を参照できる [cbsa-asfc.gc]​。固定期限なし(改廃まで有効)CROSSで多数参照可能
日本事前教示(文書回答)通関審査において文書内容が尊重され、全国で扱いを揃えやすい [customs.go]​。発出日から原則3年間 [customs.go]​税関ウェブサイトで公開検索が可能
カナダAdvance Ruling(CBSA)条件を満たせば申請者に対して拘束的。北米サプライチェーンで有効。固定期限なし(重要事実・適用法令が変わらず、かつ改廃されない限り有効) cbsa-asfc+1公開の扱いあり
英国Advance Tariff Ruling(ATaR、HMRC)Brexit後、2021年1月1日から新設(EU BTIに代わる制度)[barbournebrook.co]​。コモディティコードを事前確定し、見積や契約に使いやすい。3年間(HMRCが30〜120日以内に回答) gov+1HMRC制度案内が明確
豪州Tariff Advice(ABF)特定品目の事前分類確定として活用しやすい。5年間(申請日から) abf.gov+1ABF制度案内が明確

EUのBTIは、UCC(Union Customs Code)の実体規定が2016年5月1日に施行されたことで有効期間が6年から3年に短縮されています 。カナダのAdvance Rulingは有効期限が設定されておらず、「重要事実・法令の変化がない限り継続有効」という仕組みです 。英国のATaRはEU離脱に伴い2021年1月1日から導入された独自制度です 。目的と市場に応じた使い分けが重要です。taxation-customs.ec.europa+3


4. 国際裁定比較を、再現性ある社内プロセスにする

国際裁定比較で一番ありがちな失敗は、似た案件を見つけた時点で結論に飛びつくことです。分類は、仕様差が1つあるだけで結論が変わります。比較を意思決定に耐える形へ落とすには、次の順で進めるのが安全です。

4-1. ステップ1 分類仕様書を作る

エンジニア資料をそのまま税関言語に翻訳すると抜け漏れが出ます。分類専用の仕様書で、最低限次を固定します。

  • 測定対象
  • 測定原理
  • 出力形式
  • 機能範囲(測定のみ、記録、表示、演算、判定、制御信号出力、アクチュエータ駆動)
  • 同梱物
  • 輸入形態(IC単体、センサーモジュール、制御ユニット組込品、セット、基板、ユニット)

4-2. ステップ2 候補見出しを争点別に並べる

候補を単に羅列するのではなく、争点に紐づけます。

  • 流体や気体の特定変数の測定が中心か(→第9026項候補)[tsukanshi]​
  • 電気量の測定・検査が中心か(→第9030項候補)[jaftas]​
  • 他に当てはまらない一般の測定・検査か(→第9031項候補)[jaftas]​
  • 自動で調整・制御する機能が主要か(→第9032項候補)
  • センサー機能を内蔵したICとして製造されているか(→第8542項候補)[global-scm]​

この整理は、製品説明資料の書き方にも直結します。説明が曖昧だと、分類だけでなく通関審査の照会や追加資料要求も増えます。

4-3. ステップ3 裁定の比較可能性をチェックする

国際裁定比較では、次のチェックに合格して初めて参考にできます。

  • 同一性:機能、構造、輸入形態が実質的に同じか
  • 時点:解釈変更や改正(HS改正・法令改正・WCO分類意見の採択)の前後ではないか
  • 拘束範囲:どこまで拘束される決定か(申請者限定か、第三者参照か)[cbsa-asfc.gc]​
  • 条件:前提条件や限定事項が付いていないか
  • 改廃:無効化、撤回、修正がないか[taxation-customs.ec.europa]​

4-4. ステップ4 結論は事前教示取得の要否に落とす

比較の目的は、机上で最適解を当てることではありません。目的は、追加課税、通関遅延、契約トラブルを避けるために、どの国で事前教示を取るべきかを決めることです。

取引規模が大きい、輸入者責任が重い、顧客契約が厳しい、FTA適用を確実にしたい。こうした条件がある場合、文書で固める価値が上がります。


5. 境界論点を、裁定比較の視点で深掘りする

5-1. 測定か制御か センサーが制御側へ寄る瞬間

測定値を出すだけのセンサーと、設定値と比較して自動で出力を変える機能を持つ製品では、分類の候補が変わります(第9026項等の測定機器から、第9032項の自動調整・制御機器へ)。特に次の要素があると、制御機能と評価される可能性が上がります。

  • 設定値を保持し、測定値と比較する機能
  • 制御信号を生成し、外部機器へ出力する機能
  • アクチュエータを直接駆動する構成
  • 制御の主要機能が本体で完結している

社内では、仕様書に制御の役割分担を明記し、製品の主要機能が測定なのか制御なのかを言語化することが重要です。

5-2. 電気量の測定か データ解析か

高度化した計測機器は、信号処理やデータ解析を伴います。ここで重要なのは、何を測っているのかを明確にすることです。

  • 電圧、電流、抵抗、周波数などの電気量を測る機器なのか(→第9030項)[jaftas]​
  • 電気信号を入力として、対象物の状態や品質を検査する機器なのか(→第9026項、第9027項、第9031項等)tsukanshi+1
  • ネットワークデータやログを分析して、運用状態を可視化する機器なのか(→第8471項等も視野)

同じように見える機器でも、説明の焦点が変わると候補見出しの順番が変わります。裁定比較では、結論の番号以上に、当局が何を測定対象と捉えたのかを読み取ることが肝になります。

5-3. 部品か機器か 単体センサーと組込み品の扱い

センサー単体、センサーモジュール、制御ユニットに組み込まれた状態では、同じ技術でも分類が変わり得ます。裁定を引用する場合は、輸入形態が一致しているかを必ず確認します。

特に部品扱いでは、専用性が鍵になります。汎用品として他用途にも広く使えるのか、特定機器に専用に使うことが前提なのかで、説明と根拠資料の作り方が変わります。

5-4. センサー機能内蔵ICの新たな分類基準

WCOは2024年3月の第73回HS委員会において、「Dual-die Hall sensor integrated circuit(IC)」をHS 8542.39(電子集積回路:その他)に分類する分類意見を採択しました 。第85類注12(b)(iii)とGIR1・GIR6を根拠として、以下の構造条件を満たすものが8542.39に分類されると示されています 。[global-scm]​

  • 1パッケージ内に2つのセンサーを内蔵した冗長構成であること
  • 各センサーが電気的に非接続であること
  • 追加の能動素子・受動素子等が組み付けられていないこと

この判断が実務に与えるインパクトは、製品の「階層」によって変わります 。[global-scm]​

  • ICとして完結している段階:第8542項(電子集積回路)が優先
  • 基板実装・他素子と一体化したモジュール段階:第8543項(トランスデューサー等)や第90類が候補
  • 機器・ユニットとして組み込まれた段階:機器全体の主機能・章注・部分品規定が判断軸になる

なお、WCO分類意見は各国の実装状況によってタイムラグや例外が生じる場合があります 。主要仕向地ごとに当局の公表資料や事前教示で運用を確認することが、リスクを閉じる最終手段です。[global-scm]​


6. 経営判断に落とすための実務ポイント

6-1. 価格と契約に効く分類の不確実性の扱い

分類が揺れている段階で価格を固定すると、利益が後から削れます。裁定比較で論点が見えたら、次のどれで扱うかを決めます。

  • 主要市場で事前教示を取得し、分類を固定してから長期価格を出す
  • 分類が確定するまで、契約条項に関税差分の扱いを織り込む
  • DDPなど関税負担者が自社側になる取引は、分類確定を先行条件にする

6-2. 変更管理を製品ライフサイクルに組み込む

通信方式の変更、ファームウェア更新、同梱物の追加で、主要機能の説明は変わり得ます。分類は、設計変更管理と同じテーブルで回すべき領域です。

  • どの変更が分類へ影響するかの判定基準
  • 変更時に更新すべき資料(仕様書、BOM、レイアウト図)
  • 事前教示を取得している国での再検討条件

これらを運用ルールとして定めると、現場の手戻りが大きく減ります。


7. まとめ

センサー・計測機器のHS分類は、技術の複合化で難易度が上がり続けています。国際裁定比較は、結論を真似るためではなく、論点を可視化し、必要資料と事前教示取得の優先順位を決め、社内の分類決定を再現性ある形にするための武器になります。

おすすめの進め方は次の通りです。分類仕様書で事実を固定し、争点別に候補HS見出しを整理し、裁定の比較可能性をチェックした上で、重要市場では事前教示で固める。これが、コスト、リードタイム、コンプライアンスの三方を同時に守る近道です。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定取引に対する法的助言、税務助言、通関判断を代替するものではありません。HSコードの最終判断は、貨物の仕様、輸入形態、適用法令、最新の通達や裁定の有無により変わり得ます。個別案件については、必ず当該国の税関当局への事前教示申請や、通関士・貿易実務の専門家への相談を通じて確認してください。



センサー・計測機器のHSコード分類を国際裁定で読み解く:EU・米国・日本を横串で比較する実務ガイド

センサーや計測機器は、製造業の競争力を左右する中核部品である一方、HSコードの解釈が揺れやすい分野でもあります。誤った分類は、関税コストの想定違いだけでなく、FTAの原産地判定、輸入規制の該当性、顧客への価格提示、契約条件に連鎖して影響します。

本記事では、ビジネスマンが意思決定に使える形で、センサー・計測機器の分類を「国際裁定比較」で深掘りします。EUのBTI、米国CBPのルーリング、日本税関の事前教示を中心に、カナダ、英国、豪州の制度も併記し、実務でどう読み解き、どう社内判断に落とすかを解説します。

1. 国際裁定比較とは何か

1-1. そもそも「裁定」「事前教示」は、どこまで信頼できるのか

関税分類の「裁定」や「事前教示」は、税関当局が特定の貨物について、輸入前に文書で分類の取扱いを示す制度です。WTO貿易円滑化協定(TFA)でも、加盟国が合理的な期間内に事前教示を出すこと、事前教示が発給国に対して申請者に関して拘束力を持ち得ること、必要事項の公表などが規定されています。つまり、事前教示は単なる慣行ではなく、国際的にも予見可能性と透明性を高める仕組みとして位置付けられています。 :contentReference[oaicite:0]{index=0}

1-2. なぜ「国際裁定比較」がビジネスで効くのか

HSは国際共通の品目分類体系であり、原則として6桁レベルまでは各国共通です。そのため、複数国の裁定を比較すると、分類理由のどこが争点になりやすいか、どの機能や構造が分類を決める決定打になるかが見えてきます。さらに、輸出先が複数ある場合は、輸入国ごとに分類の揺れ幅を先に把握し、コストとスケジュールの手当てができます。

ただし、重要な前提があります。国際裁定比較は「自社の分類を自動的に正当化する道具」ではなく、「論点を特定し、追加資料や事前教示の要否を判断するための診断装置」です。ここを取り違えると、参考情報のつもりが過信になり、リスクが増えます。

2. センサー・計測機器で分類が揺れやすい理由

センサーと計測機器の分類が難しい理由は、技術進化により、測る・変換する・記録する・通信する・制御する、が一体化しやすいからです。特に次の論点が、国や担当官によって判断が割れやすいポイントです。

  1. 測定か、制御か(自動制御まで行うか)
  2. 何を測っているか(流量・圧力など特定変数か、その他一般か)
  3. 電気量の測定か、非電気量の測定か(信号解析をどう捉えるか)
  4. 単体製品か、部品か(部品の扱い、専用性の評価)
  5. 複合機能品の主要機能は何か(通信や演算が主になる瞬間がある)

たとえば、代表的な見出しとして、見出し9026は「液体・気体の流量、液面、圧力などの変数を測定・検査する機器(ただし9032などを除く)」、見出し9031は「90類の他の見出しに該当しない測定・検査機器」、見出し9032は「自動式の調整・制御機器」です。センサーや計測機器は、これらの境界線上に立つことが多いのが実情です。 :contentReference[oaicite:1]{index=1}

3. 主要国・地域の「分類裁定」を比較する

まずは、ビジネスで使いやすい主要制度を、拘束力と運用の観点から整理します。

国・地域制度名(通称)特徴(ビジネス上の使いどころ)代表的な有効期間公開性
EUBTI(Binding Tariff Information)EU全域で通用する「法的決定」。EU税関と保有者を拘束し、EU内で分類の一貫性を作りやすい。原則3年有効・無効を含め公開DBに収載
米国CBPのルーリング(ruling letter)特定取引・事実関係に基づく公式見解。事実一致が条件で、改廃もあり得る。明確な年限よりも改廃管理が重要検索DBで多数公開
日本関税分類の事前教示(文書回答)輸入通関審査で原則尊重。全国税関で扱いを揃えやすい。公開検索も可能。原則3年公開検索システムあり
カナダAdvance Ruling(tariff classification)条件を満たせば当局を拘束。効力発生日以降の輸入に適用。条件維持が前提(改廃あり)公開の扱いあり
英国Advance Tariff Ruling合法的に拘束力のある決定として、事前に関税等を見積もる用途に向く。概ね3年制度案内が明確
豪州Tariff Advice(Advance Ruling)特定品目・特定メーカーの分類に対する拘束力ある判断。ビジネス判断に直結させやすい。5年制度案内が明確

EUのBTIは、加盟国税関が発給する関税分類の法的決定で、原則3年間有効であり、EUの全税関当局と決定保有者を拘束します。また、有効・無効を含むBTIが公開データベース(EBTI)で参照できることが明記されています。 :contentReference[oaicite:2]{index=2}

米国のルーリングは、規則上、当該取引や論点に関する税関の公式見解であり、原則として改廃されるまで税関職員を拘束します。一方で、提出情報が正確であること、実際の取引がルーリング記載の事実と同一であることなどが適用条件で、現場は事実確認のうえで適用します。公開ルーリングは検索システム(CROSS)で検索できます。 :contentReference[oaicite:3]{index=3}

日本の関税分類の事前教示は、文書による回答であれば、輸入通関審査で原則3年間尊重され、全国どこの税関でも有効であることが周知されています。加えて、日本税関には事前教示回答事例を検索できる公開システムが用意されています。 :contentReference[oaicite:4]{index=4}

カナダでは、関税分類のアドバンスルーリングが、効力発生日以降に輸入される当該貨物に適用され、一定の条件下で当局(Minister)を拘束する旨が法令上規定されています。CBSAも、アドバンスルーリングが当局と受領者の間で拘束力を持つ決定になる点を説明しています。 :contentReference[oaicite:5]{index=5}

英国は、コモディティコードの合法的拘束力ある決定として、一般に3年間有効であることを制度案内で明示しています。豪州は、Tariff Adviceが特定品目に対する拘束力ある私的ルーリングであり、分類の事前確定として活用でき、原則5年適用されることを説明しています。 :contentReference[oaicite:6]{index=6}

4. 国際裁定比較を「再現性ある社内プロセス」にする

裁定比較で一番ありがちな失敗は、検索して似た案件を見つけた時点で結論に飛びつくことです。分類は、仕様差が1つあるだけで結論が変わります。比較を意思決定に耐える形へ落とすには、次の順で進めるのが安全です。

4-1. ステップ1 分類仕様書を作る

エンジニア資料をそのまま税関言語に翻訳すると抜け漏れが出ます。分類専用の「分類仕様書」を作り、最低限次を固定します。

  • 測定対象(温度、圧力、流量、位置、加速度、ガス成分など)
  • 測定原理(抵抗式、容量式、MEMS、光学式など)
  • 出力(アナログ、デジタル、無線、有線プロトコル)
  • 機能範囲(測定のみ、記録、表示、演算、判定、制御信号出力、アクチュエータ駆動)
  • 同梱物(表示器、ゲートウェイ、電源、ソフトウェア媒体、ケーブル)
  • 輸入形態(単体、セット、ユニット、基板、モジュール、組込済み)

4-2. ステップ2 候補見出しを「争点別」に並べる

候補を機械的に羅列するのではなく、争点に紐づけます。例として、流体・気体の圧力や流量の測定なら9026、汎用の測定・検査で他に当てはまらないなら9031、自動式の調整・制御まで担うなら9032が中心線になります。ここで重要なのは、9026の見出し自体が9032を除外している点です。つまり、制御機能の有無は分類の分岐点になり得ます。 :contentReference[oaicite:7]{index=7}

4-3. ステップ3 裁定の「比較可能性」をチェックする

国際裁定比較では、次のチェックが合格して初めて「参考にできる裁定」になります。

  • 同一性:機能、構造、輸入形態が実質的に同じか
  • 時点:HS改正や解釈変更の前後ではないか
  • 拘束範囲:当局がどこまで拘束される決定か
  • 条件:前提条件や限定事項が付いていないか
  • 改廃:無効化、撤回、修正がないか

EUではBTIが原則3年有効である一方、申請情報の不備による取消し、CN改正、欧州委員会の分類措置などにより失効し得ます。また、HS注釈の改正、EU司法判断、WCOの分類決定や分類意見が原因でBTIが撤回され得ることも制度上明示されています。過去のBTIを引用する場合は、発給日と現在の有効性を必ず確認してください。 :contentReference[oaicite:8]{index=8}

4-4. ステップ4 結論は「事前教示取得の要否」に落とす

比較の目的は、机上で最適解を当てることではありません。目的は、追加課税・通関遅延・契約トラブルを避けるために、どの国で事前教示を取るべきかを決めることです。

日本でも、口頭やメールでの照会は参考情報に留まり、文書による事前教示は通関審査で尊重されると整理されています。大きな商流ほど、文書で固める方が期待損失を下げやすい構造です。 :contentReference[oaicite:9]{index=9}

5. よくある境界論点を「裁定比較の視点」で深掘りする

5-1. 測定か、制御か センサーが9032へ寄る瞬間

制御要素を持つ製品は、分類が急に難しくなります。現場で多いのは、センサーが「測定値を出すだけ」のつもりでも、製品としては制御ロジックを実装し、設定値との比較、制御信号の生成、アクチュエータの駆動まで内蔵しているケースです。

見出し9032は自動式の調整・制御機器であり、サブヘディングにはサーモスタット、マノスタットなどの例も含まれます。測ること自体が目的なのか、目標値に合わせて自動で制御することが目的なのかを、仕様書で明確に言語化する必要があります。 :contentReference[oaicite:10]{index=10}

5-2. 9030と9031の境界 信号解析を「電気量測定」と見るか

高度化した計測機器は、電気信号やデジタルデータの解析を伴います。ここで、見出し9030(電気量の測定・検査)と見出し9031(他に該当しない測定・検査)の境界が争点になり得ます。

WCOのHS委員会関連文書では、ネットワークアナライザの分類をめぐり、EU側が9031、米国側が9030を主張した経緯が示されています。議論の核心は、ネットワークトラフィック解析が「電気量の測定」なのか、それとも「データを用いた運用分析」なのか、という解釈の違いです。つまり、同じ機器でも、何を測っていると捉えるかで見出しが変わるということです。 :contentReference[oaicite:11]{index=11}

5-3. 部品か、機器か センサー単体と組込み品の扱い

センサー単体と、機械に組み込まれた状態(モジュールやユニット)では、同一技術でも分類が変わり得ます。国際裁定比較では、裁定が前提とする輸入形態が「単体」「セット」「部品」「完成品」のどれなのかを必ず見抜く必要があります。

例えば9026や9031には部品・付属品のサブヘディングがありますが、当局は「その部品が本当にその見出しの部品として適切か」も見ます。比較のときは、見出しだけでなく、部品扱いの論理と、専用性の評価軸を読み取ることが重要です。 :contentReference[oaicite:12]{index=12}

5-4. 公開DBの使い分け 情報の粒度が違う

公開DBの価値は、国によって性格が異なります。

  • EUのEBTIは、EU全域に効く法的決定が公開され、分類理由の整理に向く
  • 米国のCROSSは、案件数が多く、類似製品の言語表現を学ぶのに向く
  • 日本税関は、事前教示回答事例の検索機能があり、日本語で社内展開しやすい

ただし、公開されているからといって自社品にそのまま当てはまるとは限りません。特に米国は、規則上も「記載事実と実取引が同一であること」が適用の条件として強調されています。検索は入口であり、最終判断は同一性の検証と、必要に応じた事前教示取得で固めるべきです。 :contentReference[oaicite:13]{index=13}

6. 経営判断に落とすための実務ポイント

6-1. 価格と契約に効く「分類の不確実性」を見積もる

分類が揺れている段階で価格提示を固定すると、利益が後から削れます。国際裁定比較で論点が見えたら、次のどれで扱うかを決めるのが実務的です。

  • 主要市場で事前教示を取得し、分類を固定してから長期価格を出す
  • 分類が確定するまで、価格条項に関税差分の扱いを織り込む
  • インコタームズや関税負担者が複雑な取引は、分類確定を先行条件にする

6-2. 変更管理を製品ライフサイクルに組み込む

センサー製品は、通信方式の変更、ファームウェア更新、同梱物の追加で、主要機能の説明が変わり得ます。分類は、設計変更管理と同じテーブルで回すべき領域です。EUのBTIも、解釈変更やWCOの分類意見などで撤回され得ることが明記されている以上、社内でも「分類は固定資産ではなく、条件付きの決定」と扱う方が安全です。 :contentReference[oaicite:14]{index=14}

7. まとめ

センサー・計測機器のHS分類は、技術の複合化で難易度が上がり続けています。その中で、国際裁定比較は、単なる調査ではなく、論点を可視化し、事前教示取得の投資対効果を判断し、社内の分類決定を再現性ある形にするための武器になります。

おすすめの進め方は、公開DBで類似裁定を拾って結論を急ぐのではなく、分類仕様書で事実を固定し、候補見出しの争点を整理し、比較可能性のチェックを通した上で、必要な国で事前教示を取りに行くことです。これが、コストとリードタイム、そしてコンプライアンスの三方を同時に守る最短ルートになります。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定取引に対する法的助言、税務助言、通関判断を代替するものではありません。HSコードの最終判断は、貨物の仕様、輸入形態、適用法令、最新の通達や裁定の有無により変わり得ます。個別案件については、必ず当該国の税関当局への事前教示申請や、通関士・貿易実務の専門家への相談を通じて確認してください。

::contentReference[oaicite:15]{index=15}

センサー類のPSRリスクと実務チェック

HSコード見直しから始める、EPA・FTA原産地管理の失敗を減らす実務

センサーは高付加価値で、部材点数も多く、サプライチェーンも国際分業になりやすい製品です。その結果、EPA・FTAを使った特恵関税の活用では、品目別原産地規則(PSR)の確認と運用でつまずきやすい代表格でもあります。
PSRはProduct-Specific Rulesの略で、協定・HSコードごとに定められた原産地基準です。多くの現場では、最終製品が非原産材料を含むケースが一般的であり、その場合にPSRの達成可否が特恵適用の成否を左右します。

この記事では、センサー類に特有のPSRリスクを深掘りしつつ、現場でそのまま使える実務チェックを、ビジネスマン向けに噛み砕いて整理します。結論から言うと、センサー類のPSR対策は、HSコードの見直しと変更管理を起点に、証拠と業務フローを先に固めた企業が勝ちます。


PSRとは何か

なぜセンサー類でリスクが跳ね上がるのか

PSR(品目別原産地規則)は、協定の原産地規則章とセットで運用され、協定ごとに附属書(Annex)に整理されています。たとえばRCEPでは附属書三A、TPP11(CPTPP)では附属書三-DにPSRが置かれています。

またPSRは大きく次のような型に整理できます。
関税分類変更基準(材料と最終製品のHSコードが一定桁で変わること)
付加価値基準(域内原産割合などが一定以上)
加工工程基準(特定の工程を行うこと) (ジェトロ)

センサー類で難しいのは、次の条件が同時に起こりやすいからです。

  1. 最終製品のHSコードが揺れやすい
    センサーは、何を測るか、どこまでの機能を持つか、単体かモジュールか、で分類の争点が変わります。HSコードが変わると適用されるPSRも変わるため、分類のブレがそのままPSRリスクになります。
    さらに、税関での輸入申告は最新のHSコードを使う一方、協定のPSRが採用するHS年版は協定ごとに異なる点が、混乱の火種になります。 (税関ポータル)
  2. 部材の調達先が多国籍になりやすい
    センサーは、半導体、基板、受動部品、ハーネス、筐体、梱包材などが混在します。PSRが関税分類変更基準型の場合、非原産材料がどのHSに属するかを、部材レベルで押さえないと判定が崩れます。
  3. 設計変更や派生品が頻繁に起きる
    量産途中の部材変更、仕入先変更、型番派生、無線追加、ファームウェア変更などは、分類とPSRの双方に影響し得ます。
    実務では「同じ製品の延長」として扱われがちですが、原産地管理では別製品として再判定が必要になる場面が少なくありません。

センサー類で実際に起こるPSRリスク

現場がつまずく典型パターン

1. HSコードが誤っている、または協定のHS年版とズレている

PSRはHSコードを起点に読むため、分類が違えば、参照するPSR自体が間違います。
さらに実務で頻発するのが、協定のPSRが採用するHS年版と、社内マスタや相手国通関で運用されるHS年版がズレる問題です。協定で求められる年版(例:RCEPのPSRはHS2012ベースとされる)と、実際の通関・システムが採用する年版が一致しないと、書類のHS記載や照合でトラブルが起きます。 (税関ポータル)

実務の示唆
PSR確認は「協定が採用するHS年版で行う」、一方で「輸入申告は最新HSで行う」という二重運用を前提に、読み替えルールと証拠を整える必要があります。 (税関ポータル)

2. 部材のHS分類を置き去りにして、最終品のHSだけで判定してしまう

関税分類変更基準型では、非原産材料のHSが重要です。
しかし現場では、BOMの部材にHSが付いていない、あるいは「購買都合の分類」になっていて根拠が薄い、といった状態でPSR判定が進みがちです。これが監査や事後検証で弱点になります。

3. 軽微な工程の扱いを見落とす

RCEPなどでは、軽微な工程・加工に関する規定があり、単純な包装、選別、単純組立などは原産性を与えない方向で整理されています。センサーでも、最終工程が実質的にラベル貼付や梱包、動作検査だけに近い場合は注意が必要です。

4. 付属品・梱包材・予備部品の扱いがブレる

協定には、梱包材料・包装材料、付属品・予備部品・工具などの扱いが定義されています。センサー類は、ケーブル、取付治具、アダプタ、保護キャップ、校正証明書同梱などが起こりやすく、どこまでを同一の産品として扱うかで判定や記載が揺れます。

5. 直接積送や第三者インボイスの条件を実務が追いついていない

ハブ倉庫経由、委託販売、三国間取引などが増えるほど、直接積送や第三者インボイスの取り扱いを満たすための証拠管理が重要になります。RCEPの原産地手続にも、直接積送や第三者の仕入書に関する規定が並んでいます。


おすすめの実務アプローチ

センサー類のPSRを崩さない運用設計

ここからは、現場が回る形に落とし込むための実務手順です。ポイントは、判定そのものよりも、判定を再現できる形で残すことです。

ステップ1 最終製品のHSコードを固める

社内合意より、当局が尊重する根拠を優先する

センサー類は分類の争点が起こりやすいため、早い段階で「税関に根拠を寄せる」ことが効果的です。日本の税関には、輸入予定貨物の関税分類を文書で照会し、文書で回答を受けられる事前教示制度があります。文書回答は原則3年間尊重される旨が案内されています。

実務のすすめ
社内の分類会議で結論を急ぐより、争点がある品番は優先順位を付け、事前教示や当局照会を組み込む方が、結果的にPSRも安定します。

ステップ2 対象協定を決め、PSRを協定の年版HSで確認する

協定ごとにHS年版が違う前提で、検索ルールを固定する

税関のPSR検索画面でも、協定によって採用しているHSコードのバージョンが異なり、違う年版で検索すると結果が誤る可能性がある旨が注意喚起されています。 (税関ポータル)

加えて、RCEPのようにPSRが特定のHS年版で規定されるとされるケースもあります。実務では、社内の品目マスタが最新HS、協定PSRが旧年版HS、相手国通関がまた別年版、という状況が起こり得ます。 (ジェトロ)

実務のすすめ
協定別に次をセットで持ちます。
協定が採用するHS年版
読み替えに使う相関表の管理方法
社内マスタの最新版HSとの紐付けルール
これを最初に決めると、後工程の判定と証拠が整います。

ステップ3 PSRの型を見極め、BOMを判定に耐える粒度にする

PSRが関税分類変更基準型か、付加価値基準型か、加工工程基準型かで、必要なデータが変わります。PSRの基本類型や、HSコード変更の桁の考え方(類・項・号)も、公的機関の解説資料で整理されています。 (ジェトロ)

実務のすすめ
BOMのうち、原産性に効く部材から順に整備します。
高額部材
機能の中核部材
分類が章またぎになりやすい部材
サプライヤー変更が頻繁な部材
センサー類は、ここを外すと付加価値計算も関税分類変更基準の判定も、どちらも崩れます。

ステップ4 証明手続の種類に合わせて、社内の提出物を設計する

自己申告は、書類を減らす制度ではなく、説明責任を社内に引き寄せる制度

日EU・EPAは自己申告制度のみが採用され、輸出者・生産者・輸入者が作成できる枠組みが示されています。税関が追加的な説明資料を求め得ることも整理されています。

実務のすすめ
自己申告を採用する協定ほど、次の内製が重要です。
原産性説明パッケージ(判定ロジック、BOM、根拠資料の束)
型番単位の判定書
変更履歴と再判定の記録
営業や物流が急いでも、これがあると現場が止まりません。


センサー類向け

おすすめのPSR実務チェックリスト

以下は、センサー類で特に事故が起きやすい観点に絞ったチェックです。監査や事後検証を想定し、証拠として残る形を意識しています。

区分チェック項目失敗しやすいポイント実務の落としどころ
HSコード最終製品の分類根拠が、仕様書と整合しているか型番名やカタログ用途だけで分類している仕様書、構造図、機能説明、入出力、使用環境を分類根拠に紐付ける
HS年版協定のPSRが採用するHS年版で検索しているか最新HSでPSR検索してしまう協定別に検索年版を固定し、読み替え表を社内標準にする (税関ポータル)
PSR特定対象協定と対象品番のPSRを、証拠付きで特定できるか口頭共有のみで、後から追えないPSRの条文・附属書参照情報を判定書に貼り付ける
BOM非原産材料の範囲が定義されているかサプライヤー情報が曖昧、材料原産地が未確認サプライヤー宣誓や原産性情報の取得フローを購買に組み込む
分類変更基準材料HSの根拠があるか部材HSが社内都合で、根拠が弱い争点部材は優先順位を付け、当局照会や根拠資料を蓄積する
付加価値基準計算式、範囲、為替、原価データの出所が統一されているか部署ごとに原価の定義が違う経理と貿易管理で定義書を一枚にまとめる (ジェトロ)
軽微工程工程が軽微工程に該当しないか実態が包装や検査中心工程フロー図と作業標準で実態を説明できるようにする
付属品・梱包ケーブルや治具、梱包材の扱いを協定ルールに沿っているか同梱品の扱いが案件ごとにブレる同梱パターンを製品群ごとに標準化し、例外は申請制にする
物流条件直接積送の証拠を確保できるか倉庫経由で証拠が消えるB/Lや倉庫証明の入手ルールを物流委託先と契約に入れる
組織運用設計変更・仕入先変更時に再判定が走る仕組みがあるか変更が現場で止まり、判定が更新されない変更管理のトリガーをERPや承認フローに埋め込む
根拠確保当局の事前教示など、分類の安定化策を使っているか係争リスクがある品番を放置重要品番は事前教示を優先し、根拠を外部に寄せる

経営・管理職が押さえるべき要点

PSRは現場の努力だけでは安定しない

PSR運用は、貿易実務担当者の経験や頑張りだけに依存すると、組織が大きくなるほど破綻します。センサー類は特に、製品ライフサイクルの中で変更が多く、分類とPSRの再判定が頻繁に必要になるためです。

管理職として押さえたいのは次の3点です。

  1. HSコードをマスタではなく、経営リスクの入力値として扱う
    HSが動けば、PSR、関税コスト、原産地証明、顧客との価格交渉まで連鎖します。HSコード見直しを単なる事務作業にしないことが重要です。
  2. 判定結果より、判定プロセスと証拠の整備に投資する
    税関や取引先が求めるのは、説明可能性です。協定上、追加説明資料を求め得る枠組みも整理されています。
  3. 協定別の運用差を最初から前提にする
    RCEP、TPP11、日EU・EPAなどで、原産地の考え方や証明手続の設計が異なります。協定の違いを吸収する共通の社内フォーマットを持つと、現場の負担が下がります。

参考情報

読み間違いを減らすために、まず当たるべき一次情報

  • 税関:原産地規則とは (税関ポータル)
  • 税関:原産地基準・証明手続 (税関ポータル)
  • 税関:PSR検索画面(協定ごとのHS年版注意) (税関ポータル)
  • 税関:RCEP協定 原産地規則について(概要)
  • 税関:TPP11(CPTPP)原産地規則について(概要)
  • 税関:日EU・EPA 自己申告制度について(概要)
  • JETRO資料:PSRの3類型、HS変更桁の考え方 (ジェトロ)
  • 税関:関税分類の事前教示制度(パンフレット)
  • JETRO:HS年版の違いに起因するトラブル(RCEP運用上の留意) (ジェトロ)

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の取引、製品、HSコードの分類、PSR判定、特恵関税の適用可否を保証するものではありません。実務への適用にあたっては、最新の協定文、税関の公表資料、社内の事実関係に基づき、必要に応じて通関業者・専門家等へご相談ください。

2月前半のBMS・センサー分類スナップショットを深掘りする

2026年の税番見直しで、コストとリスクを同時に下げる実務ガイド


はじめに

BMSと各種センサーは、EVや蓄電システム、産業機械、IoT機器の中核部品です。一方で、見た目が似ていても「電池として提示されるのか」「制御盤として提示されるのか」「半導体センサーとして提示されるのか」によって、税番の方向性が大きく変わります。

HSは世界共通の6桁が出発点ですが、実務では各国で統計細分や運用差が生じます。日本でも、輸出入統計品目番号は6桁HSコードに国内3桁を付した9桁で運用されます。ここを理解していないと、社内マスターの整合が崩れ、仕入先や海外拠点との会話が噛み合いません。

本記事では、2026年2月前半に見直しておきたい観点として、BMSとセンサーの分類論点を「判断の軸」と「実務の落とし穴」に分けて整理します。最終的に、経営・調達・物流の意思決定に使える形まで落とし込みます。


2月前半のスナップショット

この時期に優先度が上がりやすい論点は次の5つです。

  1. BMSが電池パックの一部として提示されるのか、制御ユニットとして提示されるのか
  2. センサーがHS2022で新設された「半導体ベースの変換器」の範囲に入るのか
  3. センサーが「測定機器」として第90類に寄るのか、それとも「半導体デバイス」に寄るのか
  4. 基板やユニットが、単なる印刷回路なのか、制御盤なのか、特定機器の部分品なのか
  5. 社内の品名、仕様書、BOM、梱包形態が「提示態様」を曖昧にしていないか

これらは関税率だけの話ではありません。原産地判定、輸出管理、顧客への価格提示、輸送書類の整合など、ビジネスの下流工程に連鎖します。


BMS分類を深掘りする

まず押さえる前提

HS分類の基本は、品目表の文言と部注・類注に基づいて判断することです。複合品やセットなど複数の要素がある場合は、「重要な特性」を与える要素で判断するという考え方が軸になります(WCO解釈通則3(b))。

この原則を前提に、BMSは実務上、次の2タイプに分けて考えると誤分類が減ります。


タイプ1:セルやモジュールを含む、電池パック内蔵型BMS

セルを含む構成で外観上も電源として提示される場合、論点は「電池として提示されているか」に収束します。日本の関税率表では、リチウムイオン蓄電池は第85類の8507.60に位置づけられます。

米国の事例では、BMSがリチウムイオンセルを含み電源として機能する提示態様において、セルが不可欠である点などを踏まえ、電気蓄電池の範囲で扱う判断が示されています(HQ H155376、第三者アーカイブに掲載)。

実務上のポイントは次の3点です。

①見積・契約段階で「セル入りか」を明確化する 同じBMSという品名でも、セル入りとセル無しで分類候補が分かれます。品名だけで処理すると誤分類が起きやすくなります。

②梱包と提示資料が「電池らしさ」を強めるかを点検する 仕様書や梱包ラベルに「power source」「battery pack」という表現が中心になっていると、電池としての提示性が強まります。

③部分品輸入の可能性も並走して検討する 電池そのものではなく「蓄電池の部分品」として提示されるケースもあり、8507.90が候補になる局面があります。


タイプ2:セルを含まない、制御ユニット型BMS

セルを含まない場合、BMSは「電池」より「制御」「監視」「保護」「配電」に軸足が移ります。候補になりやすいのが次の領域です。

① 第85類 8537.10(制御・配電用の盤) 8537は、電気の制御または配電用の盤・パネル等で、機器を二以上備えるものなどを含みます。BMSがヒューズ、スイッチング、遮断、配電・制御を担い、盤としての提示態様が強い場合に論点になります。8537.10は電圧1,000V以下のものが対象です。

② 第90類 9032.89(自動調整機器) 9032は自動調整・自動制御の機器で、電気式のものを含む区分があります。BMSが測定値に基づいて充放電を自動制御し、制御装置として提示される場合に候補として浮上しやすい領域です。

③ 部分品としての8538.90、または印刷回路としての8534.00 BMSが特定の制御盤や機器に専ら又は主として使用される部品として提示される場合、8538.90が論点になります。単に印刷回路として提示される場合は8534.00が候補になる局面があります。

ここで重要なのは、BMSを「基板」「ユニット」「制御盤」「部分品」のどれとして提示しているかを、書類と現物の両方で整合させることです。技術的に同じ回路でも、通関上の提示態様が違えば、分類ロジックが変わります。

BMS分類で必ず確認すべき質問

社内でレビューするときは、次の問いに答えられるようにしておくと判断がブレにくくなります。

  1. セルを含むか。含むなら、どこまでが一体か
  2. 電池としての機能(蓄電と出力)が主か、制御が主か
  3. 遮断、保護、配電などの電気的機能がどの部品で実現されるか
  4. 単体で機能するか、特定の機器に専用か
  5. 提示資料における主たる用途の説明は何か

センサー分類を深掘りする

HS2022で重要度が上がった「半導体ベースの変換器」

センサー分類で見落としが増えやすいのが、HS2022改正で新設された「半導体ベースの変換器」です。税関関税協会の解説FAQでも、従来は多数のHSコード(例:第84.31項、第84.66項、第84.73項等)に分類されていたものが、今次改正により特定のコード(8541.51)に分類されることとなった旨が明確に説明されています。

日本の関税率表でも、8541.51として「半導体ベースの変換器」が明確に掲げられています。

ビジネス上の意味はシンプルです。センサーを「測定機器」として第90類に入れていた慣行が、製品によっては見直し対象になり得るということです。特に、半導体素子としての提示性が強い場合や、モジュール構成が軽い場合に論点になりやすくなります。

センサーを3層で整理する

実務では、センサーを次の3層で整理すると、社内マスターの混乱を防げます。

① 半導体デバイス寄り 半導体ベースの変換器(8541.51)など。

② 測定機器寄り(第90類) 温度計などの9025(電気式を含む区分あり)、圧力測定などの9026.20(電気式を含む区分あり)、その他の測定・検査機器としての9031.80など。

③ 組込み・部分品寄り 特定の装置の部品として提示されるケース。基板単体の提示なら8534.00、制御系の部品なら8538.90などの論点が出ます。

ありがちな落とし穴

落とし穴①:センサーという品名だけで第90類に寄せてしまう HS2022以降、半導体ベースの変換器に該当する可能性があるため、まず「半導体デバイスとしての提示態様か」を確認する必要があります。

落とし穴②:基板付きセンサーを無条件で印刷回路扱いにしてしまう 基板があるだけで8534.00に固定すると、センサー機能が重要な特性を与えるケースでズレが出ます。複合品のときは重要な特性の見極めが必要です。

落とし穴③:電気式の測定機器区分の取りこぼし 例えば圧力測定の9026.20には電気式の区分が存在します。電気式であること自体が分類の枝分かれになることがあります。

落とし穴④:通信機能付きセンサーモジュール 無線やネットワーク機能を持つモジュールは、通信機器との境界が論点になり得ます。製品構成が千差万別なため、仕様書と提示態様の精査が欠かせません。


1枚で整理する:BMSとセンサーの候補マップ

以下は、社内で議論を始めるための「候補の地図」です。確定税番ではなく、製品の提示態様ごとに論点が出やすい方向性として使ってください。

対象提示態様の典型論点になりやすい区分例(日本の6桁起点)
BMS(セル入り)電池パックとして機能・提示8507.60(リチウムイオン蓄電池)
BMS(セル無し)制御盤・制御ユニットとして提示8537.10(制御・配電用の盤等)、9032.89(自動調整機器)
BMS関連の部品盤・開閉器等に専用の部品として提示8538.90(部分品)
基板単体印刷回路として提示8534.00(印刷回路)
半導体センサー半導体デバイスとして提示8541.51(半導体ベースの変換器)
温度・圧力などの測定機器測定機器として提示9025(温度計等)、9026(圧力等)、9031(その他の測定・検査)

この表の各行が根拠を持つのは、日本の関税率表上の各品目説明とHSの解釈通則の考え方に基づきます。


2月後半に向けたアクションプラン

社内マスターを6桁と9桁で二層化する

日本の輸出入統計品目番号は、6桁HSに国内3桁が付いた9桁です。海外拠点や仕入先との会話は6桁で合わせ、申告や統計管理は9桁で運用する二層構造が有効です。

事前教示とBTIで、分類の不確実性を取り除く

分類で迷う製品は、早めに当局の判断を取りに行くほうが、監査・遅延・追加課税のリスクを下げられます。

日本の事前教示制度では、サンプル、写真、原材料、加工工程などの資料を添えて照会でき、文書による回答は原則3年間にわたって全国の税関で尊重されます。口頭照会は「参考」扱いにとどまり、文書回答とは効力が異なる点に注意が必要です。

EUのBTI(拘束的関税情報) は、一般に3年間EU全域で有効な法的決定として位置づけられており、すべてのEU加盟国の税関を拘束します。

分類ファイルを標準化する

監査対応まで見据えるなら、最低限、次のセットを製品ごとに揃えることを推奨します。

  1. 製品仕様書と機能説明(何を測り、何を制御し、何を保護するか)
  2. 構成部品表(主要部品、ヒューズや開閉器の有無、半導体センサーの有無)
  3. 写真、図面、外形、端子・コネクタ情報
  4. 梱包形態と同梱物(単体かセットか)
  5. 社内判断メモ(解釈通則の当てはめ、重要な特性の根拠)

このファイルがあるだけで、担当者が変わっても判断が再現でき、国別運用差に直面したときも修正が効きます。


まとめ

BMSとセンサーの分類は、単なるコード当てはめではなく、製品の提示態様と重要な特性を言語化する作業です。2月前半の見直しでは、次の順で整理すると迷いが減ります。

  1. セルを含むか、電池として提示されるか
  2. 制御盤か、自動調整機器か、部分品か
  3. センサーは半導体ベースの変換器か、測定機器か
  4. 基板は印刷回路か、制御系の部品か
  5. 6桁と9桁のマスター整合、当局照会の準備

ここまでを固めれば、分類ブレによる原価の揺れ、通関の差戻し、顧客への価格再提示といったビジネス上の手戻りを現実的に減らせます。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の製品や取引に対する法令上の助言、関税分類の確定判断、申告指示を行うものではありません。関税分類は、各国税関の規定、部注・類注、解釈通則、貨物の仕様、提示態様、契約条件、同梱物等により結論が変わる場合があります。実務適用にあたっては、最新の関係法令・公表資料を確認のうえ、必要に応じて税関の事前教示制度や専門家へ照会してください。

BMS・センサー分類 実務アクションパック

製品仕様の揺れに負けない、HSコード区分を社内で回し切るための実務設計


電動化とIoTが進むほど、BMS(Battery Management System)と各種センサーは、輸出入の現場で「分類が割れやすい」代表格です。理由は単純で、どちらも電池・制御・計測の境界に立つ部品やモジュールになりやすく、輸入形態(単体か、ユニットか、完成品の一部か)によって客観的性格が変わるからです。

しかもHSコードは、6桁までは国際的に共通でも、各国はその先を拡張して運用します。たとえば日本は9桁の統計品目番号を使い、6桁HSと国内コードの組み合わせで申告します。輸出と輸入で国内コードが一致しないこともあります。つまり、同じ製品でも「国」「輸出入」「申告実務」の条件によって結論が揺れやすいのが現実です。

そこで本記事では、BMSとセンサーの区分を短期間で安定させるための「BMS・センサー分類:実務アクションパック」を、ビジネス実務の観点から深掘りします。目指すのは、単発の正解探しではなく、社内で再現できる判断の仕組みを作ることです。


1. まず押さえるべき前提

HSコードは情報ではなく、運用のインフラである

1-1. HSは6桁までが世界共通——ただし最新版の読み替えが必要

HSは世界の貿易品目を体系化した分類で、WCO(世界税関機構)が管理しています。定期的な改正を重ねており、2022年1月1日に発効したHS 2022(2022年版)は、WCO公表資料によれば最新の改正版に位置付けられています。WCOはさらに、加速改正手続き(accelerated amendment process)の枠組みの下で、一定の品目について継続的な更新を進めています。

一方、各国の関税率表は6桁HSを基礎にしつつ、8桁や10桁などに拡張して詳細管理します。EUではCN(Combined Nomenclature)が8桁、TARIC(統合関税品目番号)が10桁という体系で運用されます。

1-2. 事業インパクトは「関税」だけではない

BMSやセンサーの分類が崩れると、次の領域に連鎖します。

  • 関税・通関の遅延、追加資料要請
  • 原産地(EPA/FTA)の判定、原価計算への波及
  • 輸出管理や規制品目スクリーニングの誤判定
  • 取引先への見積価格や納期コミットの崩れ

つまり分類は、貿易実務にとどまらず、営業・調達・設計変更管理・マスタ管理までを含む業務基盤です。


2. BMSの分類をブレさせない「3つの分岐」

同じBMSでも、輸入形態で見える性格が変わる

BMSは大きく次の3パターンに分けると、実務が回しやすくなります。


分岐A:電池セルと一体で入ってくるか

一体なら「電池として扱う」根拠が取りやすい

HSの第85類では、見出し8507(電気蓄電池)について、「蓄電池には、蓄電・給電機能に寄与する、または損傷から保護する付属部品を伴って提示されるものを含む」とされており、例として電気コネクタ、温度制御装置(サーミスタ等)、回路保護装置が挙げられています。電池が組み込まれる機器の保護筐体の一部を含む場合もある、という趣旨です。

この注記が実務上有力なのは、BMSが「電池を成立させる付属要素」として説明しやすいからです。セルと制御基板、温度保護、筐体などを含む構成は、製品の客観的性格が電池に寄りやすくなります。

米国の公開裁定(HQ H155376)でも、セルや基板などから成るBMSを、電池機能を支える構成として見出し8507に分類した例が示されています。EUの品目実務でも、BMSを含む一体型の電池システムをCNコード8507 60 00(リチウムイオン蓄電池)に紐づけて扱う記載が、EUR-Lex掲載の関税規則文書に見られます。

実務アクション セル同梱や電池ユニット形態であれば、BMS単体の機能説明より先に「8507注記に当てはまる付属部品か」を起点に整理すると、社内合意が速まります。


分岐B:配電・制御の盤やユニットとして成立しているか

成立しているなら「制御・配電機器」側の検討が必要

見出し8537は、8535や8536の機器を2つ以上備えた、電気の制御または配電用の盤・パネル・コンソール等を対象にします。

BMSが「電池の付属」ではなく、設備側の制御盤として独立している場合、8537が候補になり得ます。たとえば、充放電設備やラックの電力系統を制御する盤で、遮断・切替・保護を担う構成(リレー、遮断器、端子台など)が明確に備わり、盤としての客観的特性が強いケースです。

実務アクション 仕様書や図面から、8536に該当し得る構成要素(スイッチング・保護・接続の機器)を洗い出し、盤としての成立性を確認します。


分岐C:計測・監視・制御の「機能装置」寄りか

機能装置なら「計測・自動制御」側も同時に検討する

BMSは電池の保護・監視・均等化・通信まで含むことが多く、制御ロジックが強い場合があります。このとき、次の観点で計測・自動制御側の候補が浮上します。

  • 9031:その他の測定・検査機器(第90類で他に特掲されないもの)
  • 9032:自動調整または制御用の機器

実務アクション BMSの要件定義を、保護(過電流遮断等)・調整(セルバランス等)・計測(電圧・温度等)・通信(CAN等)に分解し、どの機能が「客観的性格の中心」かを社内で文章化します。ここを曖昧にしたままHS番号だけ決めると、設計変更のたびに崩れます。


3. センサー分類は「完成した計測機器」か「素子・IC」かで世界が変わる

実務で迷うポイントを先に固定する

センサーは、同じ測定対象でも製品の完成度によって分類が変わりやすい領域です。実務では、まず形態を次の2つに分けます。


3-1. 完成した計測機器・計測装置として販売されるセンサー

第90類の見出しから当てにいく

代表的な見出しは以下のとおりです。

  • 9025:温度計、湿度計、気圧計など
  • 9026:流量、液位、圧力など(液体・気体の変数)
  • 9031:第90類の他の見出しに特掲されない測定・検査機器
  • 9032:自動調整または制御用機器

実務アクション 型番単位で「測るだけ」か「制御まで自動でやる」かを分けます。センサーが単独で測定値を出すだけなら9025や9026側の検討が中心です。設定値に基づき弁やモータ等を制御する仕組みが本体に組み込まれ、客観的に自動制御装置といえる場合は9032が視野に入ります。


3-2. センサー素子・トランスデューサー・ICとして販売されるセンサー

第85類の注記を起点に整理する

第85類の注記では、半導体デバイスの定義に「半導体ベースのトランスデューサー」が含まれており、物理・化学現象を電気信号へ変換するデバイスとして定義されています。また8541および8542が他の見出しに優先する趣旨も示されています。

つまり、センサーが「計測機器」ではなく「半導体素子やICとしての性格」が強い場合、8541(半導体デバイス)や8542(電子集積回路)の検討が実務上不可欠になります。

実務アクション センサーを次の3層に分けて仕様を集めます。

  • 素子層:半導体ベースのセンサー素子、MEMS、ダイ
  • 回路層:信号処理IC、アンプ、A/D、制御IC
  • 製品層:筐体、表示、通信、校正、電源、取り付け機構

この分解をすると、同じ「圧力センサー」でも、素子販売か計測装置販売かで論点が別物になることが、社内で共有しやすくなります。


4. 実務アクションパックの中身

現場が止まらないための成果物を「テンプレ化」する

実務アクションパックは、結論のHS番号よりも、結論に至るプロセスと証跡を先に整えることを重視します。推奨の成果物は次の6点です。


成果物1:製品インテークシート

設計部門から最短で情報を取るための共通フォーマット

以下の項目が揃えば一次判断が可能になります。

  • 製品名、型番、用途、販売形態(単体・キット・ユニット組み込み)
  • 機能分解(計測・制御・保護・通信・電力変換など)
  • 構成部品(セル有無、半導体素子、保護回路、スイッチング機器等)
  • 入出力(電圧範囲、通信規格、アナログ・デジタル)
  • 写真、外観図、ブロック図、主要仕様書

成果物2:BMS分岐チャート

セル同梱・盤成立・計測機能寄りの三分岐で迷いを減らす

チャートは難しくするほど運用されません。実務では次の問いを順番に当てます。

  1. セルと一体で提示されるか
  2. 8535/8536の機器を複数備えた盤として成立しているか
  3. 自動制御の装置として客観的性格が立つか
  4. それでも残る場合は、他の見出しの該当性と除外規定を確認する

この順番にするだけで、会議が「候補の羅列」から「論点の絞り込み」に変わります。


成果物3:センサー分岐チャート

完成計測機器か素子・ICかを最初に固定する

  1. 表示・校正・出力が揃っていて、計測機器として販売されるか
  2. 目的変数が温度・圧力・流量などで、特定の見出しに当てられるか
  3. 自動調整または制御まで行う装置か
  4. 半導体素子・ICとしての性格が強いか

成果物4:分類メモ

関係者が同じ文章を読めるようにする1枚資料

分類メモの核となる6項目です。

  1. 申告対象の客観的特性(何が、何をするものか)
  2. 候補見出しと採否理由
  3. 採用した見出しの根拠(注記、定義、類似事例など)
  4. 除外した見出しの理由
  5. 適用範囲(どのSKU、どの仕様まで同一扱いか)
  6. 変更管理のトリガー(セル仕様・IC変更・筐体変更など)

成果物5:エビデンスパック

税関照会や社内監査に耐える証拠一式

米国では関税分類の裁定申請(19 CFR 177.2)において、物品の完全な記述・用途・写真やサンプルなどの提出が求められます。日本の事前教示でも書面回答が税関検査で尊重されること、EUでもBTI(拘束的関税情報)が法的確実性の手段として位置づけられていることは共通しており、いずれも判断のための資料の質が問われます。


成果物6:マスタ連携の運用設計

分類を「知識」から「データ」へ落とす

分類は担当者の頭の中に置いた瞬間に崩れます。SKUマスタに次を持たせます。

  • HSコード(国別の桁まで)
  • 適用開始日と根拠資料リンク
  • 仕様の前提条件
  • 設計変更時の再判定フラグ

5. 30日で立ち上げる運用ロードマップ

分類プロジェクトを短期で「仕組み化」する

1週目:対象範囲と型番棚卸し

  • 対象SKUの一覧化
  • 輸入形態別にグルーピング(セル同梱・単体基板・計測装置など)
  • 不明点を設計に返すための質問票を確定

2週目:一次分類と論点リスト化

  • 候補見出しの一次当て
  • 分岐チャートで論点を残す
  • 関係者レビュー会を30分単位で回す

3週目:証跡整備とリスク分類

  • 分類メモをSKU単位で固定
  • 高リスク品は事前教示・裁定の検討対象に上げる
  • 監査に耐えるフォルダ構造を作る

4週目:マスタ実装と変更管理の接続

  • ERPや貿易システムへ反映
  • 設計変更プロセスに分類再判定を組み込む
  • 月次で差分レビューを回す

6. 実務で起きがちな失敗と先回りの打ち手

仕様の説明が「機能」だけで終わっている

税関や監査で問われるのは客観的特性です。ブロック図、構成部品、形態、提示のされ方を揃えます。

国別の桁の違いを放置している

HS6桁は共通でも、国別の拡張桁は運用が分かれます。日本は9桁で申告し、国内コードの扱いもあります。EUはCN8桁を基礎にし、TARICで10桁まで管理します。

口頭の回答を「正式」と誤解している

日本の事前教示制度では、書面回答が尊重される一方、口頭回答は原則として税関検査で尊重されません。実務は必ず書面と証跡に寄せます。


参考資料

  1. WCO HS Nomenclature 2022(2022年1月1日発効、加速改正手続きの枠組みも参照)
  2. 米国商務省 ITA:HSは6桁共通、構造の概説
  3. 日本の統計品目番号(9桁は6桁HSと国内コードの組み合わせ)
  4. 第85類 注記(8507の付属部品、半導体ベースのトランスデューサー定義など)—Census.gov(米国Schedule B / HTS)
  5. 国連統計部(UNSD)HS見出しの定義:9025、9026、9031、9032、8536、8537、8541、8542
  6. EU:BTIプロセスのガイダンス(CN8桁、TARIC10桁、BTIの位置付け等)—Taxation and Customs Union
  7. 日本税関:事前教示(品目分類)制度の概要(書面回答の尊重、有効期間など)
  8. 米国:関税分類の裁定申請に求められる記載事項(19 CFR 177.2)—Cornell LII
  9. 米国公開裁定 HQ H155376(BMSを8507として扱う論旨の例)—Customs Mobile


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、関税分類、法令解釈、通関手続等に関する助言または保証を行うものではありません。実際のHSコードや統計品目番号の決定は、商品の客観的特性、提示形態、取引条件、各国の関税率表および税関の運用等により異なり得ます。必ず最新の法令・通達・関係当局の公表情報を確認し、必要に応じて税関への事前教示申請や通関士、弁護士等の専門家へご相談ください。本記事の内容は正確性に配慮して作成していますが、完全性、最新性、特定目的への適合性を保証するものではなく、本記事の情報に基づいて生じた損害について一切の責任を負いません。

HS2028で見直すべき電子部品:センサー・バッテリー・MCUの影響リスク製品リストと実務ロードマップ


輸出入や調達の現場では、関税やFTAの適用可否だけでなく、通関の差し戻し、輸送遅延、取引条件の見直しなど、品目分類のズレがそのままビジネスリスクになります。

HS2028は、世界共通の品目分類ルールであるHSの次期版で、2028年1月1日に発効予定です。WCOによると、HS2028は第8版で、7回目の見直しサイクルの成果として299セットの改正がまとめられています。wcoomd+2

この記事では、電子部品の中でも影響を受けやすい領域として、センサー、バッテリー、MCUに絞り、HS2028の改正ポイントと、現場が先回りして整えるべき情報、優先順位の付け方を、ビジネス目線で整理します。


1. HS2028の前提:いつ、何が、どの程度変わるのか

HS2028の発効スケジュール

HS2028は、2028年1月1日に発効します。WCOの公式スケジュールは以下の通りです:wcoomd+3

  • 2025年3月: HS委員会が299セットの改正を暫定採択(6年間の技術作業の成果)tarifftel+1
  • 2025年6月: WCO理事会が第16条勧告として正式採択reuters+1
  • 2025年7月〜12月: 締約国からの異議申し立て期間(大きな変更は見込まれない)tarifftel+1
  • 2026年1月: 最終版HS2028命名法が公開されるreuters+1
  • 2028年1月1日: HS2028がグローバルで発効、分類の整合が必須となるtarifftel+1

この期間中、WCOは相関表(Correlation Table)や解説注釈の整備を進めます。これは企業側のコードマッピング作業に直結します。[wcoomd]​

改正の規模と内容

WCOの公開情報では、HS2028改正パッケージは以下の規模となっています:wcoomd+1

  • 299セットの改正(前回HS2022の351件より少ないが、影響は決して軽微ではない)[tarifftel]​
  • 新設6見出し、428小見出しの新設[wcoomd]​
  • 削除5見出し、172小見出しの削除[wcoomd]​

重要なのは、改正は関税分類の数字が変わるだけではない点です。

実務に影響する3種類の変更

実務影響は大きく3種類に分かれます:

  1. 小見出しの新設や分割で、6桁HSコードが変わる
    • 既存製品のコードが新しい番号に移動する、または新しいカテゴリーが追加される
  2. 部注や類注の定義変更で、境界領域の分類判断が変わる
    • 条文の文言変更により、従来と異なる分類判断が必要になる
  3. 6桁が不変でも、各国の8桁や10桁の統計番号が改編され、システムや帳票が影響を受ける
    • グローバルで製品を扱う企業は国ごとの対応が必要

今回のセンサーとMCUは、1と2が現実に起こり得る領域です。バッテリーは2と3の影響が主になります。


2. なぜセンサー・バッテリー・MCUがリスク製品になりやすいのか

この3領域は、次の理由で分類リスクが高まりやすいです:

機能が複合化しやすい

: センサーが無線通信や演算機能、診断ロジックを内蔵し、単体部品なのか完成機器なのかの境界が曖昧になりやすい

形態がモジュール化しやすい

: MCUが複数のダイ、受動部品、基板を一体化したパッケージで流通し、定義の当てはめが難しくなる

政策目的で注目されやすい

医療、環境、サプライチェーン可視化など、統計上の粒度を上げる圧力が働きやすい領域です。HS2028では公衆衛生、パンデミック対応、環境汚染対策の観点が強調されています。blog.gettransport+2


3. HS2028影響リスク製品リスト(センサー・バッテリー・MCU)

目的:効率的なリスク管理

目的は、全SKUを一律に洗い直すことではなく、影響が出やすい製品群に先に網を張ることです。

リスク判定の3つの軸

リスク製品の見極めは、次の3軸で実務に耐えます:

軸A: HS2028で条文が動いているか

  • 小見出し新設、見出し文言変更、注の改訂など

軸B: 分類が機能依存か

  • 仕様や用途で分類が変わり得るものは、サプライヤ情報の揺れがそのまま誤分類になる

軸C: 出荷形態がセット、キット、モジュールか

  • 付属品の有無で分類が変わるケースが多い

3.1 センサー領域:医療・モニタリング系がHS2028で可視化される

HS2028での主要変更

HS2028では、医療用途のモニタリング機器や緊急対応物資に対して、38の新しい関税コードが導入されています。pharmaindustrial-india+2

具体的には以下が含まれます:portcalls+1

  • パルスオキシメータと多項目連続モニタリング機器の新しい小見出し
  • 気道挿管キットや吸引ポンプの整理
  • 呼吸療法機器(酸素療法、人工呼吸器など)の区分整理
  • 救急車や移動診療所
  • 防護用フェイスマスクとシールド
  • 医療用遺体袋(プラスチック製)
  • 液体計測用機器(点滴カウンターなど)

これは、医療・公衆衛生の重要物資を分類上でも見えやすくし、税関での迅速な通関と識別を可能にする流れと整合します。WHO、WTO、WCOの協働により実現した改正です。blog.gettransport+2

センサー関連のリスク製品リスト

以下は、センサーを主軸にした、優先度の高い監視対象です:

高リスク

  1. パルスオキシメータ(本体、携帯型や据置型、病院向け、家庭向け)
    • HS2028で新しいサブヘッディングが新設される見込みportcalls+1
    • 現在は9018.19に分類されているが、HS2028で独立した分類となる可能性[deepbeez]​
  2. 多項目連続モニタリング装置(バイタルサインを継続監視するモニター)
    • HS2028で新しいサブヘッディングが新設されるblog.gettransport+1
    • 血圧、心拍数、体温など複数パラメータを同時測定する機器

中リスク

  1. 気道挿管キット
    • キットとしての取り扱いが明確化される方向portcalls+1
  2. 吸引ポンプ(医療用)
    • 9018内で整理されるblog.gettransport+1
  3. 酸素療法機器、人工呼吸器など呼吸療法機器
    • 9019で区分が整理される見込みportcalls+1

低から中リスク

  1. 液体計測用途の機器(点滴カウンター、滴下カウンターなど)
    • 新しいサブヘッディングが設けられる見込みblog.gettransport+1

現場が集めるべき最低限の情報

センサー系は、仕様情報が欠けると分類が不安定になります。最低限、次をマスタに持つだけで精度が上がります:

  • 製品が完成機器か、部品か、キットか
  • 連続モニタリングの有無、測定パラメータの種類
  • 医療用途として販売されるか、産業用途か
  • 本体に付属する消耗品や付属品の一覧
  • 規制対象かどうか(医療機器承認の有無など)

3.2 MCU領域:HS2028は分類の土台となる定義を微調整している

MCUの基本分類

MCUは多くの場合、電子集積回路の見出し8542に該当し、プロセッサやコントローラは6桁で8542.31として整理されています。freightamigo+1

ここは、製品の高付加価値領域である一方、分類ミスの損害も大きい領域です。

HS2028での定義変更

HS2028では、第85類の注12で、マルチチップ集積回路の定義が改訂されています。新しい定義では、以下が明記されています:

  • 複数のモノリシック集積回路が相互接続されているか否かを問わないこと
  • リードフレームの有無などの物理的構造要件
  • チップレット構成やマルチダイパッケージの取り扱い

この種の定義変更は、MCUそのものの6桁が変わらなくても、どこまでが集積回路として8542に入るかという境界判断に影響します。

MCU関連のリスク製品リスト

高リスク

  1. マルチダイ構成のMCU、チップレット構成、複数ダイ同梱パッケージ
    • 定義の当てはめが変更の影響を受けやすい
    • 先端パッケージング技術を採用した製品
  2. MCUと周辺回路を一体化した高度なパッケージ製品
    • SiP(System in Package)など
    • 境界判断が論点になりやすい

中リスク

  1. MCUとメモリ、コンバータ、ロジック等を組み合わせた製品
    • 8542.31は他回路との結合を許容する記述になっているため、仕様の出し方で誤解が起きやすい[freightamigo]​
  2. 車載向け安全MCUなど、用途が強く意識される製品
    • 税関側で用途確認が入りやすく、証憑の整備が重要
    • ADAS、自動運転関連のMCU

現場が集めるべき最低限の情報

MCUの分類は、データシートの書き方がそのままリスクに直結します:

  • モノリシックか、マルチチップか
  • 他の能動部品や受動部品を含むか
  • 単体ICとして流通するか、基板実装済みか
  • 最終用途ではなく、当該物品としての機能説明
  • パッケージ形態の詳細(リードフレーム、BGA、CSPなど)

3.3 バッテリー領域:6桁が動かなくても、実務の事故は起きる

バッテリーの基本分類

バッテリーは、見出し8507に蓄電池が整理されます。主要なサブヘッディングは以下の通りです:htshub+1

  • 8507.10: 鉛蓄電池(ピストンエンジン始動用)
  • 8507.20: その他の鉛蓄電池
  • 8507.30: ニッケル・カドミウム蓄電池
  • 8507.50: ニッケル・水素蓄電池
  • 8507.60: リチウムイオン蓄電池

HS2028での変更状況

現時点でWCOが公開しているHS2028改正勧告の本文では、見出し8507に関する見出しや小見出しの大幅な改正は確認できませんでした。これは、バッテリーに関してはHS2028で6桁番号が大きく変わらない可能性があることを示唆します。

ただし、以下の点に注意が必要です:

  • 各国の8桁や10桁の統計番号改編は別途起こり得る[freightamigo]​
  • セット構成や周辺機器の組み合わせで分類が揺れることは続く
  • 2025年時点でも地域別の変更(GCC諸国の12桁化、EUのCN2025更新など)が進行中[freightamigo]​

バッテリー関連のリスク製品リスト

高リスク

  1. バッテリーパックと充電器、ケーブル、変換器などが同梱されるセット品
    • セットとしての本質判定が論点になりやすい
    • 付属品の価値比率により分類が変わる可能性
  2. 蓄電池を中核に、インバータや電源制御を一体化したエネルギー貯蔵システム
    • 何を主機能と見るかで分類が割れやすい
    • 定置型蓄電池システム、ポータブル電源など

中リスク

  1. BMS基板や保護回路を含むバッテリーモジュール
    • 蓄電池そのものか、制御装置を含む別物かの説明が必要
    • 複雑な電子制御を伴うモジュール
  2. 交換式バッテリー(工具用、ドローン用、電動自転車用など規格品)
    • 形態は似ていても仕様差が大きく、品名の表現で揺れが出やすい

低から中リスク

  1. 単体セルや標準的な蓄電池
    • HS見出しは比較的安定
    • ただし統計番号や規制対応(危険物規制、リサイクル法など)の要否は別

現場が集めるべき最低限の情報

  • セルか、モジュールか、パックか
  • バッテリー以外の機能を持つか(変換、給電制御、通信など)
  • 付属品の有無と同梱形態
  • 危険物関連の取り扱い情報(分類とは別軸で管理する)
  • 電圧、容量、化学組成の仕様

4. 2026年から始める実務ロードマップ

HS2028は2028年1月1日に発効予定で、WCOも移行準備のための相関表整備などを進めています。reuters+1

この状況では、企業側は次の順番が最もコストを抑えられます

4.1 2026年上期:影響棚卸しを小さく始める

  • 対象を3カテゴリ(センサー、バッテリー、MCU)に固定し、トップ100 SKUだけ確認する
  • 取引量が大きいもの、通関トラブル履歴があるものから着手する
  • 新設小見出しの対象になり得る医療モニタリング製品があるかを確認するportcalls+1
  • 2026年1月公開予定の最終版HS2028命名法をチェックする準備をするreuters+1

4.2 2026年下期:データの勝ち筋を作る

  • 品目分類に必要な仕様項目をマスタ項目として定義し、サプライヤへ定型フォーマットで回収する
  • 多拠点でHSを付番している企業は、分類ガバナンスを一本化する
  • WCOの相関表(Correlation Table)が公開され次第、既存コードとHS2028のマッピング作業を開始する
  • 社内トレーニングを実施し、関連部門(購買、物流、営業、法務)に周知する[jp.reuters]​

4.3 2027年:マッピングとシステム改修の年にする

  • 既存コードとHS2028の相関表を使い、マッピングを機械的に当てて例外だけ人が見る設計にする
  • ERP、通関書類、インボイス品名、HSコード出力ロジックを更新する
  • 影響の大きい品目は、可能なら**事前教示(Advance Ruling)**などで当局見解を確保する
  • 主要取引先や通関業者と移行計画を共有し、切替日の調整を開始する
  • テスト運用を実施し、システムの動作確認を行う

4.4 2027年末から2028年初:本番切替の事故を潰す

  • 主要顧客や物流会社と、切替日、旧コード併記の要否、書類フォーマットをすり合わせる
  • 新旧HSコードの併記期間を社内ルール化し、問い合わせ対応窓口を決める
  • 緊急対応体制を整備し、移行期の通関トラブルに備える
  • 2027年12月〜2028年1月の期間は通関が混雑する可能性があるため、在庫や物流計画を調整する

5. すぐ使えるチェックリスト

以下の項目に1つでも該当する場合、優先的にHS2028対応を検討してください:

  • HS2028で条文が動いた領域に該当する製品がある
    • 医療モニタリング、呼吸療法関連、集積回路の定義周辺blog.gettransport+1
  • 製品がキット、セット、モジュールで出荷されることが多い
  • 仕様情報がサプライヤ任せで、社内で統一したデータ項目がない
  • 税関から用途確認や仕様確認が入ったことがある
  • 複数国へ輸出入しており、国ごとの統計番号の違いが現場負担になっている
  • 2026年1月のHS2028最終版公開に向けた準備体制がないtarifftel+1
  • 社内に貿易コンプライアンスの専任担当者がいない、または兼任で手が回らない
  • ERPや基幹システムのHSコードマスタが最後に更新されたのがHS2022以前

6. まとめ

HS2028の本質は、番号の置換作業ではなく、分類判断を支える情報の標準化です。

特にセンサーとMCUは、HS2028で医療モニタリングの小見出し新設や、集積回路定義の改訂が入っており、仕様情報が揃っていない企業ほど移行コストが跳ね上がります。portcalls+1

バッテリーは6桁の大幅変更が見えにくい一方、セット品や統計番号改編、製品の複合化で事故が起きやすいので、出荷形態の整理とマスタ整備が費用対効果の高い対策になります。htshub+1

重要なタイムライン

  • 2026年1月: HS2028最終版が公開されるtarifftel+1
  • 2026年〜2027年: 準備期間として企業は分類見直し、システム改修を実施
  • 2028年1月1日: HS2028が正式発効、全ての分類がHS2028基準となるwcoomd+1

推奨アクション

  1. 2026年上期中に影響棚卸しを開始する
  2. WCO公式サイトで相関表と解説注釈の公開を定期的にチェックする
  3. 社内横断のプロジェクトチームを編成し、貿易、IT、購買、法務が連携する体制を作る[jp.reuters]​
  4. 外部専門家(通関業者、貿易コンサルタント)との連携を強化する

準備期間は2年ありますが、システム改修やサプライヤーとの調整を考えると、2026年中に着手しないと間に合わない可能性があります。tarifftel+1


免責事項

本記事は2026年2月17日現在に公開されている情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成しています。個別の取引における品目分類、関税率、規制該当性、必要書類等は、国や地域、当局運用、製品仕様、契約条件、出荷形態などにより異なります。最終的な判断は、必要に応じて税関当局への確認や専門家への相談を行ったうえで実施してください。本記事の内容に基づいて生じたいかなる損害についても、筆者および提供者は責任を負いません。


主な訂正・追加点:

  1. スケジュールの正確化: 2025年3月暫定採択、6月正式採択、2026年1月最終版公開という正確なタイムラインに修正
  2. 299セットの改正: 正確な数値を確認
  3. 38の新しい医療関連コード: WHOとの協働による改正の背景を追加
  4. バッテリーの扱い: 6桁の大幅変更が見られないことを明記
  5. タイムラインセクションの追加: 2026年1月の最終版公開を強調
  6. チェックリストの拡充: より実践的な項目を追加
  7. 文章構成の改善: 見出しの階層を明確化し、読みやすさを向上

センサーのHSコードで迷う「9026」と「9031」

国別分岐を間違えないための実務ガイド

センサーは見た目が似ていても、「何を測るのか」「どこまでの機能を持つのか」でHSコードが変わります。特に迷いやすいのが9026と9031です。
6桁までは国際的に共通性がありますが、8桁以降は国・地域で異なる枝分かれになります。輸出入の現場では、この国別分岐の違いが関税、原産地判定、通関リードタイム、監査対応に直結します。
(参考:Data.gov

この記事では、センサー分類で頻出する9026と9031の境界を実務的な判断軸で整理し、日本・米国・英国・EUにおける国別分岐までを明確に解説します。


前提:HSコードは輸入国税関の判断が基準

HSコードは、社内で決めた番号を一方的に通すことはできません。実際に基準となるのは輸入国税関の判断です。輸出者側の想定と輸入国側の認定が異なるケースも珍しくありません。
またEPA・FTAの適用にはHSコードが前提となるため、分類を誤ると適用税率や品目別規則の解釈がズレるリスクがあります。
(出典:JETRO

このため、社内で「おすすめ分類」を設計する際は、輸入国側でも通用する論拠と証拠を整えることが前提となります。


9026と9031の違い

判断の焦点は「測定対象」と「他の見出しに当てはまるか」

9026の範囲

液体または気体の流量・液位・圧力などの変量を測定・検査する機器。流量計、液位計、マノメーター、熱流量計などが該当します。
(出典:関税庁

測定対象が液体または気体であり、その変量を明確に測る場合は9026が第一候補です。

9031の範囲

この章で他の見出しに特定されない測定または検査用の機器・装置・機械が対象です。つまり、9031は章内で分類できない機器の「受け皿」となります。
(出典:関税庁

ただし受け皿である分、**「なぜ他の見出しではないか」**という説明が求められます。


実務で起きやすい誤分類

  1. 液体も固体も測定できるレベル計
     液位の測定は通常9026に分類されますが、米国では液体と固体の両方を測定可能なレーダー式レベル計が9031に分類された例があります。
     (例:CustomsMobile)
     → カタログに「粉体にも対応」と記載があるだけで9026主張が難しくなる場合があります。
  2. 圧力を使用しているが、測っているのは圧力そのものではない
     測定原理として圧力を用いていても、測定対象が「圧力」でなければ9026は適用困難です。測定対象が寸法や特性の場合、9031が優勢になります。
  3. 単体機能か部分品か
     製品が単独で測定を完結できるか否かで分類が変わります。米国では、コリオリ式質量流量計のコンバーターが「部分品」として9026.90.2000に分類されています。
     (出典:CustomsMobile

再現性を高める判断フロー

  • 測定対象を一文で言い切る(例:液体の流量、タンク内液位、圧力、振動など)。
  • 対象が液体または気体なら9026を優先検討。
  • 固体にも対応する場合は9031側を検討。
  • 単体機能がなければ部分品コード(9026.90、9031.90など)も確認。
  • 国別8桁以降では電子式・非電子式・航空機用などの枝を精査。

国別分岐の考え方

まず6桁で分類を固め、その後、各国の枝分かれを確認するのが安全です。

日本

  • 9026.10:液体の流量・液位測定機器
  • 9026.20:圧力測定機器
  • 9026.80:その他液体・気体変量測定機器
  • 9031.80:他の見出しに属さない測定機器
    (出典:関税庁

事前教示制度を活用し、グレーなケースは税関回答を取得しておくと監査耐性を高められます。
(参照:税関総合ポータル

米国

  • ノックセンサー:9031.80.8070
  • レーダー式レベル計:9031.80.8085
  • 流量計コンバーター(部分品):9026.90.2000
    (参照:CBP Rulings

米国ではカタログや技術文書の一語一句が分類根拠になります。確証を得たい場合はPart 177のルーリングレターを申請するのが有効です。

英国・EU

英国では電子式か非電子式か、用途限定かで9026内に枝分かれがあります。
(例:UK Trade Info

EUでは結合品目分類(CN)を基に年度ごとに改訂されます。2026年版CNは2026年1月1日から適用。BTI(Binding Tariff Information)制度を使えば法的確実性を担保できます。
(出典:EU Taxation and Customs Union)


失敗しない社内実装:分類カルテの導入

9026/9031の判定は経験に依存しやすいため、「分類カルテ」を標準化して運用すると再現性が上がります。推奨項目は以下の通り。

  • 測定対象と変量(流量、圧力、液位など)
  • 測定媒体(液体のみ・固体含む)
  • 測定原理と出力仕様
  • 単体機能の有無(部分品か否か)
  • カタログと技術資料の整合性
  • 輸入国での根拠(BTI・裁決・教示等)

「分類番号は輸入国側の判断を基準とする。したがって、輸入国側で説明できる根拠と文言に揃える」
(出典:JETRO


まとめ

  • 9026:液体または気体の流量・液位・圧力を測定する機器
  • 9031:章内他見出しで定義できない測定・検査用機器
  • 境界製品に注意:固体も測定できる・部分品・単体不可など
  • 手順:6桁で分類確定 → 各国8桁分岐を精査
  • 制度活用:日本の事前教示/米国のPart 177/EUのBTIで根拠を確保
    (参照:税関総合ポータル

このガイドは、9026と9031の議論を社内で共通言語化することを目的にしています。センサーごとの仕様や用途を当てはめることで、どこが争点になり得るかを可視化できます。

WCOが示すセンサー関連の新分類意見


WCOが示す新しい線引き

WCOが2024年3月の第73回HS委員会で採択した分類意見により、Dual-die Hall sensor integrated circuit(IC)がHS 8542.39に分類されることが明文化されました。 センサー機能を内蔵したICを「測定機器」ではなく「電子集積回路」として扱う境界が、構造面から具体的に示された点が企業実務にとって重要です。


1. 分類意見とは何か

WCOの分類意見(Classification Opinions)は、HS委員会が扱った重要・難解な分類判断を、具体的な品目ごとに整理した公式資料です。 WCOは、分類意見がHS解説(Explanatory Notes)と並ぶ国際的な解釈ツールであり、特定製品に対する分類を示す点に特徴があると説明しています。[wcoomd]​

実務上のポイントは次のとおりです。

  • 分類意見は、各国税関が運用をそろえる際の強い参照点となる。**
  • もっとも、最終的な適用は各国の法令・運用に依存するため、WCOも「各国での実施状況を確認するように」と注意書きを付しています。
  • 実際にWCOは、「HS委員会の決定を適用していない、または適用できない」と通報した国の一覧を公表しています。[cbsa-asfc.gc]​

したがって、分類意見は軽視できない一方で、「自国・仕向国がどう実装しているか」の確認を含めて初めてリスクが閉じます。[cbsa-asfc.gc]​


2. Dual-die HallセンサーICの内容

2-1 対象品目と分類

今回センサー関連で実務に直結するのが、「Dual-die Hall sensor integrated circuit(IC)」をHS 8542.39に分類した新しい分類意見です。 HS上は85.42「電子集積回路」のうち「その他」に該当するサブヘディングに位置づけられています。[trademo]​

分類意見では、同じページで「4スイッチを3ダイに集積したIC」と「Dual-die Hall sensor IC」の2件がいずれも8542.39として示されており、いずれも第85類注12(b)(iii)とGIR1・GIR6を根拠としています。

2-2 製品構造の要点

Dual-die Hall sensor ICに関する分類意見で示されている構造要件は次のとおりです。

  • 1パッケージ内に、冗長構成の2つのセンサーを内蔵したDual-die Hall sensor integrated circuit(IC)である
  • 2つのセンシング要素は「個別の離散部品」ではなく、同一パッケージ内で同じ横方向位置(same lateral position)に配置された要素として集積されている
  • 2つのセンサーはいずれも半導体技術により製造されたモノリシック集積回路であり、互いに電気的には接続されていない
  • ダイ製造時にすべての構成要素が同時に集積されており、追加の能動素子・受動素子など他の回路要素は組み付けられていない
  • 用途は「角度および位置の検出(angle and position detection)」
  • 適用根拠として、GIR1、GIR6、および第85類注12(b)(iii)が明記されている

ここから企業側が読み取るべきメッセージは明確です。
センサー機能を備えていても、構造が電子集積回路そのものであり、追加の回路素子(能動・受動)を組み付けていない限り、測定機器ではなく8542の電子集積回路として整理され得る、という線引きが国際レベルで示されました。[trademo]​


3. なぜこの判断がビジネスに効くか

3-1 HSコード変更の連鎖

HSコードが8542か、それ以外(例えば測定機器、トランスデューサー等)かで変わると、影響は単なる関税率にとどまりません。

  • 原産地規則の品目別規則(CTH、CTSH、RVC等)の該当性
  • 社内マスタやERP・販売管理システム上の品目分類
  • 輸出入統計および社内KPIの集計ロジック
  • 取引契約書の品番・仕様欄に紐づく条文(関税・関税負担条項等)

センサーは採用品目の裾野が広く、同じ技術要素が複数製品に跨るため、一度分類が揺れると影響が部門横断で波及しやすい領域です。[perplexity]​

3-2 サプライヤー資料とBOMの書き方

今回の分類意見は、構造条件(冗長センサー構成、電気的非接続、追加素子の不在など)をかなり具体的に記述しています。

  • これらの条件が、サプライヤーのデータシートや仕様書、FMEA、機能安全ドキュメントのどこに記載されているか
  • BOM上で「ICとして完結しているのか」「基板上の他素子と一体でモジュール化されているのか」がどう表記されているか

といった「書き方」次第で、同じ技術内容でも分類判断の強度が変わり得ます。 調達部門が受け取る仕様書の粒度が、そのまま通関時の説明可能性とリスクに直結するイメージです。[perplexity]​

3-3 モジュール化による分類の変化可能性

今回の分類意見が対象とするのはあくまでICそのものです。
実務では、同じHallセンサーでも、次のレイヤーで取引されるケースが多くなります。

  • 半導体ダイを一定のパッケージに封止したIC単体
  • ICを基板実装し、抵抗・コンデンサ・レギュレータ等を組み合わせたセンサーモジュール
  • コネクタ付き・筐体組込みのユニットとして自動車・産業機械に搭載される段階

モジュール化が進むほど、第85類注12(b)が定義する「電子集積回路」から外れ、他の見出し(例:8543のトランスデューサー類、計測機器類、車両部分品など)へ分類が移る可能性が高まります。 したがって、製品階層ごとに「どこまでがICで、どこからが装置か」を棚卸ししておく意味が大きくなります。[customsmobile]​


4. 実務落とし込み:3段階の切り分け

センサー品目を整理する際は、次の3段階で切り分けると迷いを減らせます。

A. 集積回路としてのセンサーIC

  • 今回の分類意見の射程に入る領域です。
  • 第85類注12(b)で定義される電子集積回路に該当するかどうかが中心論点になり、「追加の回路素子が組み付けられていないこと」が重要な判断材料となります。[trademo]​

B. センサーモジュール

  • IC以外の能動素子・受動素子、基板、コネクタ、シールド、磁性体等が一体化した段階では、Note 12(b)から外れてくる可能性が高まります。[customsmobile]​
  • 構成要素や主たる機能によっては、8543や90類の測定機器、あるいは装置の部分品としての検討が必要であり、品ごとの差が大きいため先入観で決めない方が安全です。[perplexity]​

C. センサー機能を含む機器・ユニット

  • 自動車、産業機械、ロボット、家電等の一部として機能する段階では、機器全体の主機能、章注、部品規定(例えば第17部注2など)が判断の軸になります。[perplexity]​
  • この段階では、もはや「センサーであること」よりも「当該機器が何をする装置か」が分類を決める主因になります。

今回の分類意見はAの領域をクリアにしたものであり、B・Cの判断を行う際の基準点としても位置づけることができます。


5. 各国実装のばらつきへの備え

分類意見は国際的に強い参照資料ですが、各国での適用にはタイムラグや例外があり得ます。WCO自身も、分類決定を輸出入に適用する際は、相手国での実装状況を確認するよう助言しており、適用できない決定の一覧も公開しています。[cbsa-asfc.gc]​

企業が取り得る現実的な対応は次のとおりです。

  • 主要仕向地ごとに、税関の公表資料・事前教示・通達などを通じて、自社が想定するHSコードと当局運用が一致しているか点検する
  • 差異が予見される国については、事前教示や技術資料の添付など、申告根拠を補強する運用を取る
  • 国別の運用差は、社内マスタに履歴として残し、営業・物流・経営層と共有することで、「国ごとにHSが違う」ことを前提にした価格・契約設計を可能にする

6. すぐ使える社内チェックリスト

今回の分類意見を踏まえ、Hallセンサー関連のSKUを整理する際の社内チェックポイントは以下が有効です。

  • 自社の「Hallセンサー関連SKU」を、IC単体、基板実装品、モジュール、ユニット等の階層に分解して一覧化する
  • 「IC単体」と主張するSKUについて、追加の能動素子・受動素子を組み付けていないことを、仕様書・BOM・レイアウト図で確認する(Note 12(b)の要件を満たすかどうか)[trademo]​
  • 仕様書に「冗長構成」「電気的に非接続」「角度・位置の検出」など、今回の分類意見の記述と対応する文言があるかを確認し、分類根拠資料として保管する。
  • 主要国(例:日本、EU、米国、韓国、中国など)で、当該分類意見がどのタイミングで反映されているかを確認し、必要に応じて事前教示を取得する。[cbsa-asfc.gc]​
  • HSコード変更が、原産地規則(PSR)、輸出管理、社内マスタ、取引契約、価格設定に与える影響を同時にレビューする

7. 一次情報へのアクセスルート

WCOは、HS品目表・法的注・解説・分類意見などの公式資料を「WCO Trade Tools」から参照できると案内しており、単なるPDF配布からオンラインサービスへと軸足を移しています。 継続的にHS分類を監視する企業ほど、この参照ルートを社内で固定し、定期的なアップデートを確認できる体制を持つことが、分類判断のスピードと再現性を高めます。[wcoomd]​


8. まとめ

今回のポイントは、センサー機能を持つICであっても、構造が電子集積回路そのものであり、追加の回路素子を組み付けていない場合には、8542.39に整理され得るという基準が、Dual-die Hall sensor ICを例に明確に示されたことです。 センサーは技術進化に伴い形態が急速に変わる一方で、分類体系は相対的にゆっくり動きます。

分類の再現性を高めるカギは、技術理解そのものに加え、

  • 製品階層の切り分け(IC/モジュール/機器)
  • それぞれの階層でNote 12(b)や部品規定をどう適用するかというルールの明文化
  • 根拠資料(仕様書・BOM・図面・安全認証資料等)の整理・保管

にあります。 Dual-die HallセンサーICの分類意見は、その起点として実務で活用しやすい材料と言えるでしょう。[wcoomd]​

HS2028で変わる半導体・センサー分類 ビジネスに効く論点と、今からできる準備


半導体やセンサーは、関税分類の世界で「技術進化が速いのに、分類体系の更新は緩やか」という典型例です。そこにHS2028の改正が迫っています。コードが変わるだけに見えますが、実務では関税率、原産地規則、統計、輸出管理、社内マスタの整合まで連鎖的に影響します。wcoomd

本記事は、技術者向けではなく、調達・営業・経営企画・貿易管理・物流のビジネス部門が、HS2028の半導体・センサー領域をどう捉え、どこにリスクと機会が生まれるかを整理するための実務ガイドです。なお、HS2028の改正はWCOの正式手続きを経て進行中で、発効日は2028年1月1日と確定しています。wcoomd

1. まずHS2028を正しく理解する

なぜ2028なのか、いつ何が起きるのか

HSは原則5年ごとに改正されますが、第7次見直しサイクルはパンデミック等の影響で1年延長され、次の版はHS2028として2028年1月1日に実施されます。次回は5年サイクルに戻り、HS2033が続くとWCOが明示しています。aeb+1​

2025年3月開催の第75回HS委員会(HSC)では、Article 16勧告として、299件の改正セットを含むHS2028勧告パッケージが暫定採択されました。この299件には、105件の品目改正案、5件の注解改正、66件の分類決定、14件の新分類意見が含まれます。正式採択は2025年12月末に予定され、2026年1月に最終版が公表、2028年1月1日に発効します。tarifftel+2​

HS改正は「合意が必要な国際標準」です。WCO理事会承認後、各締約国には6か月の異議申立期間があり、異議が出た部分は除外される可能性があります。つまり、企業は早期に影響を見積もりつつ、最終確定版で必ず再検証する姿勢が必須です。wcoomd

2. なぜ半導体・センサーがHS2028の注目テーマなのか

ビジネス側の論点は「税率」より広い

半導体業界団体は以前から、技術進化のスピードが5年サイクルのHS改正を上回るペースで進んでおり、より迅速な改正メカニズムが必要だと主張してきました。実際、多機能化したMCO(Multi-Chip Optoelectronics)やセンサー統合製品は、機能別分類か素子基準かで分類がぶれやすく、2017年および2022年のHS改正でも半導体定義の拡張が行われています。deepbeez+1​

HS2028でも、半導体ベースのトランスデューサー(変換素子)を含む分野が改正対象に挙がっています。これは単なる統計目的にとどまらず、次の実務要素に連動します。wcoomd+1​

  • 関税率と通商救済: MFN税率だけでなく、追加関税、セーフガード、アンチダンピング等がHSコードに紐づくため、コード変更は対象判定に影響します。
  • 原産地規則: 多くのFTAは品目別規則をHSの類・項・号で定義するため、HS変更は「同じ製品でも、どの規則を見るべきか」を変え得ます。
  • 輸出管理・規制: 規制リスト自体は性能・仕様基準が中心でも、運用現場ではHSコードをスクリーニングキーにすることが多く、分類変更は監視ロジックに影響します。
  • 企業の意思決定: 調達先分散、在庫配置、製造地設計、価格交渉など、サプライチェーンKPIにHS分類が組み込まれています。

3. 半導体・センサー分類で「揺れやすい境界」

HS改正が起きると影響が出やすい典型ポイント

半導体とセンサーは、商品形態が連続的に変化します。

  • ウエハ、ダイ
  • パッケージ化された素子
  • 信号処理ICと一体化したモジュール
  • 筐体、通信、電源、ソフトを含む完成品

HS分類は、こうした連続体を「どこで線を引くか」を国際標準として定める作業なので、改正が入ると境界付近の品目が動きます。ビジネスで影響が大きいのは、まさにこの境界品です。wcoomd

センサーで特に揺れやすい論点は次のとおりです。

  • センサー素子か、測定機器か: センサー素子は部品寄り(8541系)、測定機器は完成品寄り(他類)です。完成品側に寄るほど、半導体の章(第85類)から離れやすくなります。deepbeez
  • 変換素子か、信号処理まで含むか: 物理量を電気信号に変換するだけの段階と、補正・演算・デジタル出力まで含む段階は、税関分類の評価ポイントが変わります。deepbeez
  • 単機能か、多機能か: 環境センサーは温湿度、気圧、ガス、照度など複数要素を統合しがちで、多機能化は「主たる機能は何か」という論点を強めます。
  • どの産業用途に組み込まれるか: 同じセンサーでも、自動車、産業機械、医療、家電でパッケージや付加機能が変わり、分類は用途だけで決まらない一方、用途に由来する構成差は分類に影響します。youtube​

4. HS2028で半導体・センサー分類は何が「変わる」のか

確定情報と、実務上の読み方を分ける

情報の信頼性を最優先に、言い切れる範囲と言い切れない範囲を分けます。

4-1. 現時点で一次資料から言い切れること

  • HS2028は2028年1月1日に発効されるwcoomd
  • HS2028は299件の改正セットを含む勧告パッケージとして暫定採択されたstrtrade+1​
  • 改正には105件の品目改正案、5件の注解改正、66件の分類決定、14件の新分類意見が含まれるstrtrade+1​
  • 半導体ベースのトランスデューサー(変換素子)が改正議題に含まれているwcoomd+1​

つまり、半導体・センサー領域はHS2028の改正議題に含まれており、何らかの分類上の調整が入る可能性が高い、という点までは公的文書で裏づけられます。

4-2. 企業実務として「ここが動くと困る」を先に特定する

個別の6桁コードがどう変わるかは、2026年1月公表予定のWCO正式なHS2028法文と相関表(correlation table)で最終確認が必要です。ここを飛ばして断定すると、誤った社内判断につながります。tarifftel+1​

ビジネス側は、コード表の暗記ではなく「自社品が分類境界のど真ん中にいるか」を見抜くことが重要です。具体的には、次のような品目群はHS2028で影響を受けやすい位置にあります。

  • 半導体ベースの変換素子(各種トランスデューサー)deepbeez
  • センサー素子に信号処理ICが付随するモジュール
  • 複合センサー(複数の測定要素を統合)
  • 完成品に近いスマートセンサー(補正、演算、通信を内蔵)
  • センサーを搭載したユニットやサブアセンブリ(他機能と不可分)youtube​

これらは、分類が「素子」寄りか「機器」寄りかで分かれ、HS改正で線引きが再定義されると影響が出やすい領域です。

5. HS2028対応で失敗しやすい会社のパターン

通関担当だけに任せると、ほぼ確実に抜ける

半導体・センサー企業でよくある失敗は、HS改正を「通関部門のコード置換作業」にしてしまうことです。これだと次が抜けます。

  • 製品マスタの粒度が足りない: 分類に必要な属性(素子の役割、信号処理の有無、通信機能、主たる機能など)がマスタに入っていないと、相関表が出ても機械的に当てはめられません。
  • 原産地規則の影響評価が後回し: HS変更は、FTAの品目別規則(PSR)の参照単位を変え得ます。関税率がゼロでも、原産地判定でコストが跳ねることがあります。
  • 規制スクリーニングが壊れる: 社内の輸出審査フローでHSコードをキーにしている場合、誤分類や未更新は審査漏れの原因になります。

6. ビジネスマン向けの実務チェックリスト

2028年までに何を終わらせるか

以下は、半導体・センサー企業がHS2028で痛手を避けるための現実的な進め方です。

ステップ1: 影響範囲の棚卸し

  • 製品群を「素子」「モジュール」「完成品寄り」に3分類する
  • 売上上位、利益上位、規制リスク上位の品目を優先対象にする
  • 輸出入の主要国別に、関税率とFTA利用の有無を紐づける

ステップ2: 分類に必要な属性を社内で標準化する

センサーや半導体は、品名だけでは分類できません。仕様書を見なくても判断できる属性項目を、マスタに落とし込みます。

  • 測定対象(温度、圧力、加速度、光、ガスなど)
  • 変換方式と主要構成(半導体要素の有無、MEMSかどうかなど)
  • 信号処理の範囲(増幅、A/D、演算、補正)
  • 出力形態(アナログ、デジタル、通信プロトコル)
  • 単体販売か、ユニットの一部か

ステップ3: 相関表が出た瞬間に「自動変換」しない

WCO手続き上、最終的な確定内容や各国の国内拡張桁への転記を確認する必要があります。相関表は出発点で、個別品目の仕様と照合して初めて確定に近づきます。wcoomd

ステップ4: 社内の下流影響を先に洗い出す

  • 価格条件(関税負担者)
  • 原産地証明の運用(PSR参照箇所)
  • 輸出入ライセンスや社内審査フロー
  • 統計や経営レポート(品目別KPI)
  • 取引先との品目コード整合(発注、納品、請求)

7. まとめ

HS2028は「半導体・センサーの線引き」がビジネスコストになる改正

HS2028は2028年1月1日に発効され、299件の改正セットからなる勧告パッケージとして暫定採択されました。改正には105件の品目改正案、5件の注解改正、66件の分類決定、14件の新分類意見が含まれます。また、半導体ベースのトランスデューサーが改正対象として明示されています。wcoomd+3​

ただし、個別のコード改編の詳細は、2026年1月公表予定のWCO正式なHS2028法文と相関表、さらに各国の国内法への転記で最終確認が必要です。ここを飛ばして社内で断定しないことが、信頼性の高いHS2028対応の第一歩です。tarifftel+1​

半導体・センサー企業にとっての成功の鍵は、改正が出てから慌てて置換することではありません。分類境界にいる品目を先に特定し、仕様に基づく分類判断を回せるマスタ設計と運用体制を2028年までに構築することです。


https://hts.usitc.gov/search?query=8541.42.00.10

https://www.wcoomd.org/-/media/wco/public/global/pdf/events/2019/hs-conference/semiconductors-and-the-future-of-the-hs_sia-white-paper_april-2019.pdf?la=fr

https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx

https://www.aeb.com/en/magazine/articles/hs-code-2028.php

https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2023/october/successful-conclusion-of-the-72nd-session-of-the-harmonized-system-committee.aspx

https://www.tarifftel.com/blog/hs-2028-your-guide-to-the-next-harmonised-system-update/

https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/april/amendments-to-2028-harmonized-schedule-advanced

https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/activities-and-programmes/amending_hs.aspx

https://deepbeez.com/d/hs/transducer

https://www.youtube.com/watch?v=d__kmRP19WA

https://global-scm.com/hscf/archives/134

https://global-scm.com/hscf/

https://global-scm.com/hscf/archives/34

https://www.ul.com/resources/global-market-access-regulatory-news-update

https://www.flexport.com/data/hs-code/85-electrical-machinery-and-equipment-and-parts-thereof-sound-recorders-and-reproducers-television-image-and-sound-recorders-and-reproducers-and-parts-an/