- 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)
0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)
- この類に入る代表例(3〜6個):
- 銑鉄・スピーゲル(一次形状の塊など)=7201
- フェロアロイ(フェロシリコン、フェロマンガン等の合金添加材)=7202
- **直接還元鉄(DRI)**や高純度鉄(規定の形状)=7203
- 鉄鋼スクラップ/再溶解用スクラップインゴット=7204(「スクラップ」の定義に注意)
- 鋼材(板・コイル・棒・形材・線材・線):熱延・冷延、めっき等の加工状態に応じて7208〜7217/ステンレスは7218〜7223/その他合金鋼は7224〜7229
- 中空ドリル棒(寸法要件あり)=7228(ただし「その他の中空棒」は7304へ)
- この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
- 鉄鋼製品(完成品):ボルト・ナット等(7318)、継手(7307)、ワイヤロープ(7312)などは原則**第73類(鉄鋼製品)**へ
- 鋼管・中空形材(一般の中空棒を含む)=7304等(中空ドリル棒の例外を除く)
- 矢板・溶接形鋼(7301)やレール等の軌道材料(7302)は、第72類の「形鋼」定義から明示的に除外されやすい
- 機械・電気機器等の物品(Section XVI 等)は、部注で第15部(=第72類を含む)から除外される場合がある
- 実務での最重要分岐(1〜3個):
- 化学成分で「非合金鋼/ステンレス鋼/その他の合金鋼」を決める(Cr 10.5%等の閾値、合金元素の閾値)
- 形状・寸法・巻取りで「フラットロール製品/棒・形材/線/線材(不規則巻)/半製品」を決める(厚さ4.75mm、幅600mm扱い等)
- 「材料(第72類)」か「製品(第73類)」か(ねじ・継手・ワイヤロープ等の“parts of general use”を見落としやすい)
- (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
- **特殊関税(不当廉売関税等)**の対象になっている場合(原産地・品目で税額影響が大きい)
- 輸出(または技術提供)での安全保障貿易管理(リスト規制):該当時は許可要否に直結
- FTA/EPAのPSR(品目別規則):最終品HSがズレると原産性判断が崩れる(協定ごとに参照HS版も違う)
1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)
1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)
- この類で特に効くGIR:
- GIR1(項の文言+部注・類注で決める)
鉄鋼は、類注(定義)が非常に強い類です。まず「鋼」「ステンレス鋼」「その他の合金鋼」などの定義(成分閾値)を類注で確定し、その上で形状・加工状態を当てはめます。 - GIR6(号=6桁は“同じ項内”でさらに文言と注で分ける)
例えば「めっき鋼板」の号は、“電解か否か”“波形か否か”“厚さ”など、同じ項内の枝分かれ条件が多いです。
- GIR1(項の文言+部注・類注で決める)
- 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
- 材質(成分):ミルシート(MTC)や成分分析表が最重要。ステンレス(Cr 10.5%以上など)や合金鋼判定は、通称名では確定できません。
- 状態(加工度):「熱間圧延のみ/冷間圧延済み/めっき・塗装/クラッド」など、表面処理の有無が号を変えます。
- 形状・寸法:「幅600mm」「厚さ4.75mm」「不規則巻か否か」「中空か否か」で章・類をまたぐことがあります。
- 重要補足:第72類の注1(d)〜(f)(鋼、ステンレス鋼、その他の合金鋼の定義)は、この表全体に適用される旨が明記されています。つまり、第73類など他の章で「鋼/鋳鉄」を区別する際にも影響します。
1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)
- Step1:「材料」か「製品」か
- ねじ・継手・ワイヤロープ等の“parts of general use”に該当しないか(該当なら多くは第73類へ)。
- 鋼管・中空形材なら原則第73類(中空ドリル棒の例外を除く)。
- Step2:第72類内での大区分(原料→鋼材)
- 原料:7201(銑鉄等)/7202(フェロアロイ)/7203(直接還元鉄)/7204(スクラップ)/7205(粒・粉)
- 鋼材:
- 鉄・非合金鋼:7206〜7217
- ステンレス鋼:7218〜7223
- その他合金鋼:7224〜7229
- Step3:成分で“鋼種”を確定
- ステンレス鋼(C≤1.2%、Cr≥10.5%)か。
- その他合金鋼(Mn≥1.65% 等、列挙元素のいずれかが閾値以上)か。
- それ以外は(多くの場合)非合金鋼へ。
- よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
- 第72類(材料)⇔第73類(製品):
「板・棒」なのか「管・継手・ねじ・構造物」なのか、加工度・用途・形状で変わります。特に**中空品(ドリル棒の例外)**と、**7301/7302(矢板・レール等)**は典型的な境界です。
- 第72類(材料)⇔第73類(製品):
2. 主な項(4桁)とその内容
2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)
- 原則:第72類は項が多いですが、実務で境界を見落とすと大きく外すため、ここでは全列挙します(HS6桁ではなく4桁の見出し一覧)。
| 項番号(4桁) | 見出しの要旨(日本語) | 典型例(製品名) | 重要な分岐条件/除外/注意点 |
|---|---|---|---|
| 7201 | 銑鉄・スピーゲル(一次形状) | 銑鉄塊、スピーゲル | P含有量や「合金銑鉄」定義で号が分かれることあり |
| 7202 | フェロアロイ | フェロシリコン、フェロマンガン | 「二成分/三成分系」扱い等のルールあり |
| 7203 | 直接還元鉄等 | DRI(スポンジ鉄) | 7206等と混同注意 |
| 7204 | くず・スクラップ等 | 鉄スクラップ、再溶解用スクラップインゴット | 「スクラップ」定義(使用不能)確認必須 |
| 7205 | 粒・粉 | 鉄粉、鋼粉、粒状品 | 粉末(1mmふるい90%通過)等の定義あり |
| 7206 | 鉄・非合金鋼のインゴット等(7203除く) | インゴット | 7203除外、鋼の定義(C≤2%等)前提 |
| 7207 | 鉄・非合金鋼の半製品 | スラブ、ブルーム、ビレット(巻いてない) | 「半製品」定義、巻取り除外 |
| 7208 | 幅≥600mm 熱延(非被覆) | 熱延コイル、熱延板 | フラットロール定義、加工状態に注意 |
| 7209 | 幅≥600mm 冷延(非被覆) | 冷延コイル、冷延板 | 冷間圧延の位置づけ |
| 7210 | 幅≥600mm 被覆(めっき等) | 亜鉛めっき鋼板、ブリキ | 電解めっき/その他、波形等で号分岐 |
| 7211 | 幅<600mm 熱延等(非被覆) | スリットコイル | 600mm境界、フラットロール定義 |
| 7212 | 幅<600mm 被覆 | 亜鉛めっき帯鋼 | 被覆種別・電解か否か |
| 7213 | 鉄・非合金鋼の線材(不規則巻の棒) | ワイヤロッド | 「棒(不規則巻)」定義が鍵 |
| 7214 | 鉄・非合金鋼の棒(熱間加工中心) | 棒鋼(熱間圧延・鍛造等) | 7213/7215との境界、ねじり含む |
| 7215 | 鉄・非合金鋼のその他の棒 | 研磨棒、さらに加工した棒 | 7214より加工が進んだもの等 |
| 7216 | 鉄・非合金鋼の形鋼 | H形鋼、山形鋼 | 7301/7302は除外 |
| 7217 | 鉄・非合金鋼の線 | 鉄線、鋼線 | 「線」定義(冷間成形・巻取り) |
| 7218 | ステンレス鋼の一次形状・半製品 | ステンレススラブ等 | ステンレス定義(Cr≥10.5%等)前提 |
| 7219 | ステンレス 幅≥600mm フラットロール | SUS板/コイル(600mm以上) | 厚さ4.75mm境界が号で出る |
| 7220 | ステンレス 幅<600mm フラットロール | SUS帯鋼 | 600mm境界、加工状態で号分岐 |
| 7221 | ステンレス線材(不規則巻) | SUSワイヤロッド | 7213と同様に“線材”の概念 |
| 7222 | ステンレスの棒・形鋼 | SUS棒、SUS形鋼 | 熱間/冷間加工で号分岐 |
| 7223 | ステンレスの線 | SUS線 | 7217と同様「線」概念 |
| 7224 | その他合金鋼の一次形状・半製品 | 合金鋼スラブ等 | “その他合金鋼”の成分判定が先 |
| 7225 | その他合金鋼 幅≥600mm フラットロール | 合金鋼板(600mm以上) | けい素電気鋼/亜鉛めっき等で号分岐 |
| 7226 | その他合金鋼 幅<600mm フラットロール | 合金鋼帯(600mm未満) | 高速度鋼、けい素電気鋼など |
| 7227 | その他合金鋼の線材(不規則巻) | 合金ワイヤロッド | 高速度鋼/シリコマンガン鋼等の号 |
| 7228 | その他合金鋼の棒・形鋼/中空ドリル棒 | 合金棒、ドリル用中空棒 | 中空ドリル棒の寸法要件、他の中空棒は7304 |
| 7229 | その他合金鋼の線 | 合金鋼線 | シリコマンガン鋼の号等 |
2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)
- 分岐条件の整理(よく効く順)
- 成分(鋼種判定)
- 鋼:原則C≤2%(例外としてクロム鋼はC>2%含みうる旨の注記)
- ステンレス鋼:C≤1.2%、Cr≥10.5%
- その他合金鋼:Al 0.3%、B 0.0008%、Cr 0.3%、Co 0.3%、Cu 0.4%、Pb 0.4%、Mn 1.65%、Mo 0.08%、Ni 0.3%、Nb 0.06%、Si 0.6%、Ti 0.05%、W 0.3%、V 0.1%、Zr 0.05%、その他元素(S,P,C,N除く)0.1% のいずれか以上(ステンレス定義に当たらないもの)
- 号注の定義が効く鋼種例:
- 合金銑鉄(Cr 0.2%超等)
- 非合金快削鋼(S≥0.08%、Pb≥0.1%等)
- けい素電気鋼(Si 0.6〜6%、C≤0.08%等)
- 高速度鋼(Mo/W/Vのうち二以上、合計≥7%、C≥0.6%、Cr 3〜6%等)
- シリコマンガン鋼(C≤0.7%、Mn 0.5〜1.9%、Si 0.6〜2.3%等)
- 形状・寸法(フラットロール/棒/形鋼/線/半製品)
- フラットロール製品の定義:
- 「巻いたもの」または
- 厚さ<4.75mmで幅≥厚さの10倍、または
- 厚さ≥4.75mmで幅>150mmかつ幅≥厚さの2倍
などの要件(さらに、穴あけ・波形・研磨等でも“他の項の特性”を持たなければ含みうる)
- **長方形以外の形状でも、他の項の特性がなければ“幅600mm以上扱い”**となる規定があり、7208/7209/7210/7219/7225等の「幅≥600mm」系へ寄ることがあります。
- 「棒(不規則巻)」と「線」の定義が別:
- 線材(7213/7221/7227等):熱間圧延の不規則巻の棒
- 線(7217/7223/7229等):冷間成形で巻いたもの(フラットロール該当除外)
- フラットロール製品の定義:
- 加工状態(熱間/冷間/被覆・めっき)
- 例:7210/7212で「電解亜鉛めっき」か「それ以外の亜鉛めっき」か、さらに波形か等で分岐。
- スクラップ・粉末等の定義
- スクラップ:金属くず全般+破損等で“そのままでは使用不能”な金属製品
- 粉末:1mmふるいに重量90%以上通過
- 粒:1mmふるい90%未満通過、かつ5mmふるい90%以上通過
- 中空品(例外)
- 中空ドリル棒:外側最大寸法>15mm〜52mm以下、内側最大寸法≤外側の1/2(形状不問)。それ以外の鉄鋼中空棒は7304へ。
- 成分(鋼種判定)
- 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
- 7204.41 vs 7204.49(スクラップの形態)
- どこで分かれるか:
- 7204.41:切粉・削りくず・切断片等(turnings, shavings, chips…)
- 7204.49:その他の鉄鋼スクラップ
- 判断に必要な情報:発生形態(機械加工由来か、解体材か)、写真、梱包状態、スクラップ仕様書
- 典型的な誤り:解体スクラップを「切粉系」として申告(または逆)
- どこで分かれるか:
- 7210.30 vs 7210.41/7210.49(亜鉛めっき方法/波形)
- どこで分かれるか:電解亜鉛めっき(electrolytically)か、その他の亜鉛めっきか。その他の場合は波形(corrugated)かどうか。
- 判断に必要な情報:めっき仕様(電解/溶融等)、表面処理工程図、製品規格、写真
- 典型的な誤り:「電解」を単に“めっきしている”と読み替えて誤分類
- 7219/7220の厚さ4.75mm境界(ステンレスのフラットロール)
- どこで分かれるか:号の枝で“厚さ4.75mm以上/未満”が出る(項内で細分化)。
- 判断に必要な情報:実測値(公差含む)、規格(JIS等)、ミルシート
- 典型的な誤り:呼称厚さのみで判断して境界を跨ぐ
- 7226.11 vs 7226.19(けい素電気鋼:方向性の有無)
- どこで分かれるか:けい素電気鋼のうち、grain-oriented(方向性)か否か。
- 判断に必要な情報:電磁鋼板の仕様(方向性、磁気特性)、成分(Si、C等)
- 典型的な誤り:「けい素が入っている=方向性」と早合点
- 7228.80(中空ドリル棒) vs 7304(その他中空棒)
- どこで分かれるか:中空ドリル棒の寸法要件に当たるか。
- 判断に必要な情報:外径・内径(最大寸法)、用途(ドリル用)、図面
- 典型的な誤り:「中空=管」として無条件に7304へ(または逆)
- 7204.41 vs 7204.49(スクラップの形態)
3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)
3-1. 関連する部注(Section Notes)
- ポイント要約:
- 第15部は「卑金属とその製品」ですが、部注で機械(Section XVI)や完成車両等(Section XVII)などは除外されます。
- “parts of general use(一般用の部分品)”の定義があり、該当品(例:7307、7312、7315、7317、7318等)は、他の章の“部品”として扱わないルールがあります。
- 混合金属の複合品は「重量で主となる卑金属」に分類し、鉄と鋼(鋼種の違い含む)は同一金属扱いです。
- 「スクラップ」「粉末」の定義が部注で与えられます。
- 実務での意味(具体例つき):
- 例:鉄鋼製のボルトは、機械の部品に見えても“parts of general use”に該当し、原則7318で扱う方向になります(第72類ではない)。
- 例:鉄スクラップは「中古鉄材」との線引きが重要で、“そのまま使用できる”状態だとスクラップの定義から外れる可能性があります(結果として7204以外の可能性)。
- “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
- ねじ・継手・ワイヤロープ等 → 第73類の該当項(parts of general use)へ
- 組立て済み軌道(assembled railway track)等 → Section XVII(例:8608)へ
3-2. この類の類注(Chapter Notes)
- ポイント要約:
- 第72類は「鉄鋼の材料」中心で、類注で材質(鋼種)・形状(フラットロール、棒、線等)・粒/粉が細かく定義されています。
- 注1(d)〜(f)(鋼、ステンレス鋼、その他の合金鋼の定義)はこの表全体に適用されます。
- 用語定義(定義がある場合):
- 銑鉄・スピーゲル・フェロアロイ(各元素の上限/下限)
- 鋼/ステンレス鋼/その他の合金鋼(成分閾値)
- 粒・半製品・フラットロール製品・棒・形鋼・線・中空ドリル棒(寸法・状態)
- 号注:合金銑鉄、非合金快削鋼、けい素電気鋼、高速度鋼、シリコマンガン鋼等
- 除外規定(除外先の類・項も明記):
- 形鋼の定義に関し、第72類には7301(矢板等)・7302(軌道材料)を含まない旨が明記されています。
- 中空ドリル棒以外の鉄鋼中空棒は7304に属する旨が明記されています。
4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)
- 影響ポイント1:「ステンレス鋼」か否かで、項(4桁)が丸ごと変わる
- 何を見れば判断できるか(必要情報):C%、Cr%(少なくとも)、合金元素の有無
- 現場で集める証憑:ミルシート(MTC)、成分分析表、規格書(JIS等)、製品カタログ
- 誤分類の典型:品名に「SUS」「ステン」等が無いから非合金鋼と扱う/表面処理(めっき)を“ステンレス”と誤認
- 根拠:ステンレス鋼の定義(C≤1.2%、Cr≥10.5%)
- 影響ポイント2:「その他の合金鋼」判定(合金元素の閾値)で、非合金鋼(72.06〜72.17)⇔合金鋼(72.24〜72.29)が分かれる
- 何を見れば判断できるか:Mn≥1.65%、Si≥0.6%など、列挙元素のいずれかが閾値以上か
- 現場で集める証憑:MTC(成分)、鋼種表(材質規格)、顧客仕様書
- 誤分類の典型:MnやSiの多い鋼(例:電磁鋼板)を非合金側に入れてしまう
- 根拠:その他合金鋼の定義(閾値一覧)
- 影響ポイント3:フラットロール製品の定義(厚さ4.75mm、幅比、幅600mm扱い)で“板類”の項が分かれる
- 何を見れば判断できるか:厚さ、幅、形状(長方形か否か)、巻取りの有無
- 現場で集める証憑:図面、実測記録、製品仕様書、梱包写真(コイルか否か)
- 誤分類の典型:異形(長方形以外)を幅<600mm扱いしてしまい、実は“幅600mm以上扱い”で7208等に寄るケース
- 根拠:フラットロール製品定義・非長方形の幅600mm扱い規定
- 影響ポイント4:スクラップ(7204)か否かは、部注の定義で決まる
- 何を見れば判断できるか:そのまま使用できるか(破損・切断・摩耗等で“使用不能”か)、取引実態(原料用途か)
- 現場で集める証憑:写真、検収基準、スクラップ規格(例:等級表)、用途説明
- 誤分類の典型:中古材(再使用可能)をスクラップとして申告
- 根拠:第15部注8(スクラップ定義)
- 影響ポイント5:中空ドリル棒(7228.80)の例外で、72⇔73が入れ替わる
- 何を見れば判断できるか:外側最大寸法(>15〜52mm)、内側最大寸法(≤外側の1/2)、用途(ドリル用)
- 現場で集める証憑:図面、仕様書、用途説明、実測データ
- 誤分類の典型:「中空=管」として無条件に7304へ
- 根拠:中空ドリル棒の定義・その他中空棒は7304
5. 分類でよくある間違い(原因→対策)
- 間違い:亜鉛めっき鋼板を“非被覆の鋼板(7208/7209等)”として申告
- なぜ起きる:品名が「鋼板」だけで、めっき情報がインボイス等に出ない
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):被覆・めっきは7210/7212側で扱うのが基本で、同項内で電解/その他等の分岐がある
- 予防策:表面処理(めっき種、方法、塗装)を仕様書で確認/工程表の入手
- 間違い:「SUS」表示がないからステンレスではない、と判断
- なぜ起きる:取引名・商品名に引きずられる
- 正しい考え方:ステンレスは成分定義(C≤1.2%、Cr≥10.5%)で判断
- 予防策:MTCでCrとCを必ず確認/社内質問例「Cr何%ですか?」「C何%ですか?」
- 間違い:合金鋼を非合金鋼(72.06〜72.17)側に入れる
- なぜ起きる:MnやSiなど“見落としやすい合金元素”が閾値を超えている
- 正しい考え方:その他合金鋼の閾値(Mn 1.65%、Si 0.6%等)に一つでも当たれば合金鋼側
- 予防策:成分表を“閾値表と突合”するチェックシート化(BOM/成分表に閾値欄を作る)
- 間違い:線材(7213等)と線(7217等)を混同
- なぜ起きる:「ワイヤ」「ロッド」など呼称が混在
- 正しい考え方:線材は“熱間圧延の不規則巻の棒”、線は“冷間成形で巻いたもの”という定義差を押さえる
- 予防策:製造工程(熱間/冷間)と形状(不規則巻か、コイルか)を必ず確認
- 間違い:幅600mm境界を実測せず、呼称で判断
- なぜ起きる:スリット品・異形品で実幅が変動
- 正しい考え方:フラットロール定義に基づき、非長方形でも“幅600mm以上扱い”となる場合がある
- 予防策:図面・実測値(公差含む)提出を社内ルール化
- 間違い:スクラップ(7204)に中古材(再使用可能)を入れる
- なぜ起きる:取引上「スクラップ」と呼ぶ慣行
- 正しい考え方:部注の“使用不能”要件がある
- 予防策:写真・用途説明・検収基準を添付し、“使用不能”根拠を残す
- 間違い:中空ドリル棒(7228.80)を鋼管(7304)として申告(または逆)
- なぜ起きる:「中空=管」という短絡
- 正しい考え方:ドリル棒は寸法要件があり、それ以外の中空棒は7304へ飛ぶ
- 予防策:外径・内径(最大寸法)の図面を必須化/用途(ドリル用)を明記
- 間違い:ボルト・ナット等を“棒鋼”として第72類で申告
- なぜ起きる:素材(鋼)に引っ張られ、製品形態を見落とす
- 正しい考え方:parts of general use の規定により、第73類で扱う方向
- 予防策:形状(ねじ切り・頭部形状)写真+製品規格(ISO/JIS)を必ず確認
- 間違い:FTA/EPAで協定の参照HS版を見ず、HS2022でそのままPSR判断
- なぜ起きる:社内のHSがHS2022で統一されており、協定側のHS版を忘れる
- 正しい考え方:協定ごとに参照HS版が異なる(例:日EU・日英はHS2017、RCEPは2023年以降HS2022等)
- 予防策:PSR確認シートに「協定参照HS版」欄を追加し、旧↔新の突合を必須化
6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点
6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係
- HSの付番がPSR選択に直結すること
- 最終製品のHS(通常6桁)でPSRが決まるため、ここがズレると原産性判断(CTC/RVC/加工工程条件)が根本から崩れます。
- よくある落とし穴
- 材料(鉄鉱石、フェロアロイ、鋼材)と最終品(例:鉄鋼製品=第73類)でHSが変わるのに、BOM上のHS付番が曖昧
- “合金鋼”か否かの判定ミスで、PSRの番号レンジが変わる(例:72.10系と72.25系のように章内で規則が分かれるケースもあり得る)
6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)
- 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
- 日本税関の原産地規則マニュアルでは、発効中EPAがHS2002/2007/2012/2017/2022のいずれを参照しているかが整理されています(例:RCEPは2023-01-01以降HS2022、〜2022-12-31はHS2012)。
- トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
- 協定の参照HS版に合わせてPSRを確認し、社内HS(HS2022)とは相関表/トランスポーズ資料で突合してから、最終判断を組み立てるのが安全です。
6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)
- 必要なデータ(例)
- 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS(少なくとも6桁)、RVC計算前提
- 証明書類・保存要件(一般論)
- 仕入証憑(インボイス)、製造工程資料、MTC(成分証明)、製造指図書、原産地証明(第三者/自己申告)等を、協定の要求に沿って保存
- 鉄鋼は材料が多段階(鉱石→原料→鋼材→製品)になりやすいので、工程と材料HSの紐付けを早めに行うのが実務上重要です。
7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)
7-1. 変更点サマリー(必須:表)
| 比較(例:HS2017→HS2022) | 変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更) | 該当コード | 変更の要旨 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|---|
| HS2017→HS2022 | (改正相関表で確認できる範囲では)大きな新設/削除/分割/統合は見当たらず | 第72類(7201〜7229) | 日税関掲載のHS2022-HS2017相関表(改正対象の対応表)内で「720/721/722」系コードが検出できず、改正対象として掲示されていないことを確認 | HS6桁の体系は概ね継続と考えられるため、実務は“定義(類注)・形状/成分の判定”が中心。※国内細分や協定税率は別途改正あり得る |
7-2. 「違うことになった根拠」(必須)
- 参照した根拠資料と判断:
- 日本税関掲載の**HS2022-HS2017相関表(PDF)**は、HS改正で変更が生じた品目の“旧→新対応”を示す資料です。
- そのPDFテキスト検索(720/721/722)で該当が見つからないため、第72類の6桁レベルの大きな再編(新設・分割・統合等)は、少なくとも相関表に掲示される形では確認できませんでした。
- ただし、これは「HS6桁の体系変更がない可能性が高い」ことを示すもので、国内コード(日本の9桁細分)や関税率(EPA税率等)の改正、解釈通達の改正まで否定するものではありません。重要取引では、最新の実行関税率表・税関通達も併せて確認してください。
8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード
- HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理
(注:ここでは「相関表に掲載されるようなコード再編」を対象にしています。)
| 版の変更 | 第72類(7201〜7229)に関する主な追加・削除・再編 | 旧コード→新コードの例 | 備考 |
|---|---|---|---|
| HS2007→HS2012 | 相関表上、720/721/722系の改正対象としての掲載は確認できず | (対応不要の可能性が高い) | 相関表の該当検索結果に基づく |
| HS2012→HS2017 | 同上 | (対応不要の可能性が高い) | 相関表の該当検索結果に基づく |
| HS2017→HS2022 | 同上 | (対応不要の可能性が高い) | HS2022-HS2017相関表の該当検索結果に基づく |
※実務上は、HS6桁が変わらなくても、**国内コード(9桁)**やEPA税率表(協定参照HS版)で影響が出ることがあります。
9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)
- 事例名(短く):「ステンレスではないのにSUS扱い」
- 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):ステンレス鋼の定義(Cr≥10.5%、C≤1.2%)の未確認
- 起きやすい状況:商流で「SUS相当」と呼ぶが、実際は表面処理鋼板・低Cr材
- 典型的な影響:修正申告、税率や協定適用の見直し、追加資料要求
- 予防策:MTC必須、Cr/Cを“閾値チェック”する社内工程
- 事例名(短く):「幅600mm扱いの見落とし(異形フラットロール)」
- 誤りの内容:フラットロールの“非長方形=幅600mm以上扱い”規定の見落とし
- 起きやすい状況:テーパー・異形カット材、穴あけ材
- 典型的な影響:項の取り違え(7208/7211など)、統計・協定税率の齟齬
- 予防策:形状図面+「他の項の特性の有無」を判定メモ化
- 事例名(短く):「スクラップ(7204)と中古材の混同」
- 誤りの内容:部注のスクラップ定義(使用不能)を満たさないのに7204で申告
- 起きやすい状況:「スクラップ」として売買されるが、実は再使用可能材
- 典型的な影響:分類否認、追加説明要求、検査強化・遅延
- 予防策:写真、検収基準、用途(溶解原料)を事前に整備
- 事例名(短く):「中空ドリル棒と鋼管(7304)の取り違え」
- 誤りの内容:中空ドリル棒の寸法要件を確認せず、72⇔73を誤る
- 起きやすい状況:中空棒=鋼管、と社内で一律処理
- 典型的な影響:修正申告、追加納税、通関遅延
- 予防策:外径・内径の図面提出を必須化、用途明記
10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)
- 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
- 検疫・衛生(SPS等)
- 鉄鋼そのものは一般に食品・動植物検疫の中心対象ではありませんが、**梱包材(木材)や付着物(油・汚れ)**等が別観点で問題になることがあります(ここでは一般論として注意喚起)。
- ワシントン条約(CITES)等の種規制
- 通常は該当しません。
- 安全保障貿易管理(該当する場合)
- 特殊鋼・合金・粉末等は、用途・性能・仕様によりリスト規制の対象となる可能性があります。
- METIは、該非判定で参照する「貨物のマトリクス表」等を案内しており、該当時は許可が必要としています。
- また、リスト規制品は原則毎年改正されるため“最新法令で分類”する注意喚起があります。
- その他の許認可・届出
- 特殊関税(不当廉売関税等):対象品目・原産地の組合せで追加課税があり得ます。MOFは制度概要(AD duty)を説明しており、税関は課税中品目リストを公開しています。
- 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
- 税関(特殊関税・課税中品目、分類相談)
- METI(安全保障貿易管理:該非判定・許可)
- MOF(不当廉売関税制度の概要)
- 実務での準備物(一般論):
- 仕様書(寸法・形状)、MTC(成分)、工程図(熱間/冷間/めっき等)、用途説明
- 規制が疑わしい場合:該非判定票、性能データ、エンドユーザー/用途確認書
11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)
- 分類前チェック(製品情報の収集)
- 材質(鋼種・成分%)、形状(板/棒/線/中空)、寸法(厚さ・幅・外径/内径)、巻取りの有無
- 加工状態(熱間/冷間、めっき・塗装、クラッド、穴あけ、波形)
- 用途(ドリル棒用途など、例外要件に関係するもの)
- 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
- ステンレス/合金鋼の閾値チェック(Cr 10.5%、Mn 1.65%等)
- フラットロール定義(4.75mm、幅比、非長方形の600mm扱い)
- 中空ドリル棒の寸法要件と、その他中空棒(7304)への飛び
- parts of general use(第73類へ)
- 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
- インボイス品名に「鋼種」「加工状態」「寸法」を入れる(例:electro-galvanized / hot-dip galvanized 等)
- 写真・MTC・仕様書を添付できる状態にする
- FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
- 協定の参照HS版を確認し、HS2022とのズレを相関資料で突合
- BOMに“非原産材料HS6桁”を付番し、工程と紐付ける
- 規制チェック(許可/届出/検査)
- 特殊関税(不当廉売等)対象か:税関の課税中リストで確認
- 安全保障貿易管理:該非判定が必要か、METIガイダンスで確認
12. 参考資料(出典)
- WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
- WCO HS Nomenclature 2022:Section XV Notes(部注)(参照日:2026-02-26)
- WCO HS Nomenclature 2022:Chapter 72 Iron and steel(参照日:2026-02-26)
- WCO HS Nomenclature 2022:Chapter 73 Articles of iron or steel(参照日:2026-02-26)
- 日本(税関・公的機関)のガイド
- 税関:第72類 類注(実行関税率表:条文)PDF(参照日:2026-02-26)
- 税関:関税率表の解釈に関する通則(GIR)PDF(参照日:2026-02-26)
- 税関:関税率表解説・分類例規(ページ案内)(参照日:2026-02-26)
- 税関:EPA 原産地規則マニュアル(協定参照HS版の整理を含む)PDF(参照日:2026-02-26)
- 税関:RCEP 原産地規則 Implementing Guidelines(IG2:2023-01-01実施の改訂)PDF(参照日:2026-02-26)
- FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
- 上記「EPA 原産地規則マニュアル」および各協定の公式資料に基づき、協定ごとの参照HS版を確認(参照日:2026-02-26)
- 規制・コンプライアンス
- 経済産業省:安全保障貿易管理(Export Control/リスト規制)案内(参照日:2026-02-26)
- 経済産業省:Security Export Control guidance(英語PDF、年次改正の注意喚起を含む)(参照日:2026-02-26)
- 財務省:Anti-dumping Duty(制度概要:英語)(参照日:2026-02-26)
- 税関:特殊関税制度/課税中の貨物・税率(案内)(参照日:2026-02-26)
- 相関表(HS改正確認)
- 税関:HS2022-HS2017 相関表PDF(参照日:2026-02-26)
- 税関:HS2017-HS2012 相関表PDF(参照日:2026-02-26)
- 税関:HS2012-HS2007 相関表PDF(参照日:2026-02-26)
付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)
- どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
- ①製品写真(全体・断面・表面)、②図面(寸法・公差)、③成分証明(MTC/分析表)、④製造工程(熱間/冷間、めっき等)、⑤用途説明、⑥比較対象(社内で迷っている候補コード)
- 第72類は「定義(閾値)」が多いので、成分・寸法・加工状態が揃っていないと結論が出ません。特にステンレス/合金鋼判定(Cr、Mn、Si等)と、フラットロール判定(4.75mm・幅比・600mm扱い)は必須です。
免責事項
本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。
