第85類と第90類の境界をどう見抜くか

直近事例から学ぶ、ビジネス現場の判断軸

はじめに

HSコードの第85類と第90類は、実務で最も迷いやすい境界の一つです。理由は明確です。最近の製品ほど、電気機器であると同時に、測定機器、検査機器、光学機器、医療機器としての性格も持つからです。

日本税関は、品目分類が関税だけでなく、原産品判定や貿易統計の基礎になると説明しています。実務では、関税率表、関税率表解説、分類例規、事前教示事例をあわせて確認することが重要です。特に関税率表解説は、WCOのExplanatory Notesを基礎として整備されています。(customs.go.jp)

第85類は電気機器やその部分品を広く受け止める類です。一方、第90類は、光学機器、写真用機器、測定機器、検査機器、精密機器、医療機器などを扱います。したがって、スマート化された装置ほど両者がぶつかりやすくなります。電子回路が入っているから第85類、センサーがあるから第90類、という見方だけでは足りません。(customs.go.jp)

第85類と第90類の境界を見る三つの軸

1 主たる機能は何か

日本税関の説明では、第90類に属する測定、試験、検査、選別、調整機器は、測定可能な量や値を検出して表示または記録できるもの、試験条件を与えて性能や精度を評価できるもの、検出した値に基づいて調整や選別を行うものとして整理されています。つまり、単に電気で動くかどうかではなく、何を測り、その結果をどう使うのかが核心になります。(customs.go.jp)

2 部分品そのものが独立した項に当たるか

第90類の注では、部分品や附属品であっても、その物品自体が第84類、第85類、第90類、第91類の特定の項で表現されるなら、原則としてその項に分類するとされています。日本税関の解説でも、変圧器、電磁石、コンデンサー、抵抗器、リレー、ランプなどは、たとえ第90類機器に組み込まれる用途であっても、第85類に残る例として示されています。最終用途だけで第90類に移るわけではない、という点は実務上とても重要です。(customs.go.jp)

3 単体ではなくシステムとして一つの機能を果たすか

日本税関は、第90類でも機能ユニットの考え方を採ると説明しています。複数の構成品が一つの明確な機能に直接寄与し、通常は同時に輸入されるような場合には、全体を一体として評価します。複数機能が併存する場合は、主たる機能で決めるという整理です。複雑な装置ほど、この視点を落とすと誤判定が起きやすくなります。(customs.go.jp)

直近事例で見る、境界の動き方

事例1 家庭用の電子血圧計は第90類

日本税関の2025年9月1日適用の改正概要では、腕帯、加圧ポンプ、血圧センサー、表示部などから成り、血圧と脈拍を自動測定する家庭用の電子血圧計が第9018.19号に分類されています。ここで効いているのは、家庭用であるかどうかよりも、生理学的な値を測定する医療系機器としての性格です。消費者向け製品であっても、測定対象と機能の中心が医療的な計測にあるなら、第90類に入ることがあります。(customs.go.jp)

事例2 光療法用の装置は第85類

同じく2025年9月1日適用の改正概要では、家庭用や美容施設、ヘルスケア施設向けに設計され、ハロゲン光源と光学ユニットで偏光を照射する光療法用装置が第8543.70号に分類されています。創傷治癒、疼痛緩和、皮膚疾患への使用などが説明されていても、それだけで自動的に第90類の医療機器になるわけではありません。ここで学ぶべきなのは、ヘルスケアや療法という販売上の言葉と、HS上の所属は一致しないことがある、という点です。(customs.go.jp)

事例3 インバーター関連は第85類と第90類に割れる

日本税関の分類例では、非同期電動機の速度制御に用いる電子速度制御装置が第8504.40号に分類される一方、三相非同期電動機の速度、トルク、位置の制御を確保することを主機能とし、リアルタイム測定カードなどを備えた電子周波数インバーターは第9032.89号に分類されています。両者の違いは、電力変換や駆動が中心なのか、測定値を取り込み、比較し、自動調整する仕組みが中心なのかという点です。見た目や商品名が似ていても、制御ロジックまで追わなければ結論は出ません。(customs.go.jp)

事例4 ゴーグル型製品は、電気製品より光学・眼鏡類として見られることがある

公開されている事前教示事例では、液晶シャッターを備えた3-Dゴーグルについて、第85.43項の固有の機能を有する電気機器よりも、第90.04項の眼鏡類の方が具体的であるとして、第9004.90号に分類しています。また、日本税関の分類例では、CPU、レンズ、各種センサー、接続端子を備え、特定のスマートフォンと組み合わせて使うVRヘッドセットも第9004.90号に分類されています。電子部品が多く入っていても、眼鏡やゴーグルとしての具体的な性格が勝つ場合がある、という好例です。(customs.go.jp)

事例5 制度改正そのものが境界の難しさを示している

HS2022では、第85.24項としてフラットパネルディスプレイモジュールの項目が新設されました。日本税関の資料では、その背景として、こうしたモジュールが従来は第85.28項や第85.29項、さらには第90類の測定機器などに分かれて分類され、統一的ではなかったことが説明されています。つまり、第85類と第90類の境界が難しいのは、担当者が迷うからではなく、制度側も整理を必要としたほど構造的に難しいからです。(customs.go.jp)

ビジネス現場で外さない見方

営業資料より、仕様書と機能説明を見る

税関資料から逆算すると、社内で第85類と第90類を見分けるときは、少なくとも次の順で確認すると精度が上がります。何を測るのか。測定値を表示または記録するのか。目標値との比較があるのか。その比較結果に基づいて自動調整するのか。単体品として輸入するのか、システムとして一体で輸入するのか。さらに、構成部品それ自体がすでに第85類などの独立した項に当たるのか。

結局のところ、営業資料のキャッチコピーより、仕様書、回路構成、制御ロジック、輸入形態のほうが分類には効きます。(customs.go.jp)

重要案件では事前教示を使う

継続輸入品や、税率、原産品判定、通関運用への影響が大きい案件では、文書による事前教示を使う価値があります。日本税関は、文書回答による事前教示について、原則として全国の税関で3年間尊重され、通関の迅速化にもつながると案内しています。一方で、貨物内容が回答時と異なる場合、期間を過ぎた場合、法令改正があった場合などは、その前提が崩れます。大事なのは、一度判断して終わりにしないことです。モデルチェンジ、ソフト更新、センサー追加、セット内容変更があれば、分類も見直す前提で運用したほうが安全です。(customs.go.jp)

まとめ

第85類と第90類の境界で問われるのは、電子化の度合いではありません。主たる機能は何か。測定や検査が本質なのか。測定値に基づく自動調整まで行うのか。部分品自体が独立した項に当たるのか。システム全体で一つの機能を果たしているのか。この順で見れば、迷いはかなり減ります。

最近の公表例が示しているのも、結局は同じことです。名前ではなく機能で見る。販促表現ではなく条文で見る。これが、第85類と第90類の境界で判断をぶらさないための基本姿勢です。(customs.go.jp)

免責事項

本記事は、日本税関その他の公的資料に基づく一般的な解説であり、個別貨物の最終的な所属区分、税率、原産品判定、通関結果を保証するものではありません。実際の品目分類は、輸入申告時の現況、構造、機能、用途、セット構成、同時輸入の有無、法令改正などによって変わり得ます。重要案件については、最新の関税率表と公表資料を確認したうえで、必要に応じて税関の文書による事前教示を利用してください。

HSC77前注視領域:第85・90類の実務論点

2026年3月会合を見据えた分類リスクと社内対応

エレクトロニクス、センサー、電池、光学機器、医療機器。こうした領域は、製品の進化スピードが速い一方で、HSコードの境界線が揺れやすい領域でもあります。
その「揺れ」が企業実務に直撃するタイミングが、WCO(世界税関機構)のHSC(Harmonized System Committee:Harmonized System Committee)での検討や整理が進む局面です。直近では、HSC第76回会合(2025年9月開催)で多数の分類判断が行われ、HS解説書(Explanatory Notes)の改訂や分類意見(Classification Opinions)の整備も進みました。次回HSC77は2026年3月にWCO本部で開催予定とされています。

本稿は、HSC77を見据えて企業が特に注視したい第85類(電気機器等)と第90類(精密機器等)の実務論点を、法的根拠となる注(部注・類注)を軸に、現場で使える形に落とし込んだものです。


HSコードは「世界共通の言語」だが、現場では「境界線の運用」が勝負になる

HSはWCOが管理する国際的な品目分類で、6桁コードを基礎に各国が関税・統計で運用します。200を超える国・地域が採用し、国際貿易貨物の大半(98%超)がHSで分類されると説明されています。

一方で、現場が悩むのは「似た機能の製品が複数の章・類にまたがる」ケースです。特に第85類と第90類は、次の事情で境界線が難しくなります。

  1. 物理量を測る製品が、電気的にはセンサーや基板で構成される
  2. 製品がモジュール化し、部分品やユニットとして取引される
  3. ひとつの筐体に複数機能(表示、通信、測定、制御)が入る

ここで重要なのは、HS分類の法的な出発点が「見出し(Heading)の文言と、関係する部注・類注」であることです。通則1の考え方として、部・類・節の表題は参照の便宜であり、分類は見出しの文言と注に基づいて決める、という構造が明示されています。


HSCで何が動くのか

企業が注視すべき成果物は3つ

HSC(Harmonized System Committee)は、分類の難所について国際的な統一解釈を積み上げる場でもあります。第76回会合では、分類判断が多数行われ、HS解説書の改訂や分類意見の作成などが実施されたことがWCOから公表されています。

企業実務への影響が出やすい成果物は、概ね次の3つです。

  1. 分類判断の蓄積(各国税関の判断に影響)
  2. HS解説書(Explanatory Notes)の改訂
  3. 分類意見(Compendium of Classification Opinions)の整備

分類意見は、HSCで採択された重要・難解な分類判断をまとめたもので、WCOは「分類意見はHS解説書と同じ位置づけだが、特定製品に関するもの」と説明しています。
ただし、HS解説書や分類意見は一般に法的拘束力そのものではなく、各国法令や運用の中で参照される性格のものです。例えばカナダCBSAは、HS解説書と分類意見は法的拘束力はないが分類の際に考慮すべきと整理しています。
この整理は、企業として「法的根拠(見出し+注)を土台に、解説書や分類意見で解釈を固める」という実務フローを取るうえで重要です。


第85類の実務論点

論点1:85.07 蓄電池は「補助部品込み」で広く捉えられる

第85類注3は、85.07項の「蓄電池」概念を広げています。要旨として、蓄電池には、エネルギーの蓄積・供給機能に貢献する、または蓄電池を損傷から保護する補助部品(接続子、温度制御装置、回路保護装置など)と一緒に提示するものを含み、さらに蓄電池が使用される物品の保護ハウジングの一部を取り付けたものも含む、とされています。

実務で何が起きるか

ビジネス現場では、次のような設計・購買の変化が分類リスクを呼びます。

  1. BMS(保護回路、温度管理、コネクタ)を載せた電池パック
  2. 製品筐体の一部と一体化したバッテリーモジュール
  3. 「電池ユニット」と「電池+周辺回路」の境界が曖昧な部材調達

注3の構造を踏まえると、補助部品が付いたからといって直ちに「電池ではない」とは言い切れません。逆に言えば、電池の範囲が広いからこそ、電池以外の機能(例えば、外部電源からの変換・制御など)がどの程度入っているか、製品仕様書と回路構成で説明できる状態にしておくことが、後工程のトラブル(申告差、修正申告、供給遅延)を減らします。


論点2:85.34 印刷回路の定義は「できること」より「含まないもの」を読む

第85類注8は、85.34項の「印刷回路」を定義し、境界線を明確にしています。注8の骨格は次の通りです。

  1. 印刷技術や膜回路技術で、導体や接触子等の印刷した構成部分を絶縁基板上に形成して得た回路であること
  2. 電気信号の発生・整流・変調・増幅ができる素子(例:半導体素子)は除く
  3. 印刷工程で得た素子以外の素子を結合した回路、個々の抵抗器・コンデンサー・インダクターは含まない
  4. 薄膜回路・厚膜回路で、受動素子と能動素子から成るものは85.42項に属する
    これらが注として明記されています。

実務での落とし穴

よくある誤解は「基板っぽいものは全部85.34」という短絡です。注8は、印刷回路が含まないものを強く書いています。つまり、部材が「基板」だとしても、

  1. 何が実装されているか
  2. 印刷工程で形成された部分なのか、後付け部品なのか
  3. 薄膜・厚膜の回路で、能動素子を含むか

この3点を棚卸ししないと、85.34の前提が崩れます。

会社としての実務対策

調達仕様書やサプライヤー図面に、次の項目を必須化すると、分類根拠の説明が一気に楽になります。

  1. 実装部品の有無(IC、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等)
  2. 製造工程(印刷、めっき、エッチング、薄膜・厚膜の有無)
  3. 当該基板が単体取引か、特定装置専用の部分品か

論点3:半導体ベースのセンサーは「物理量を電気信号に変換する」定義が核

第85類注12は、85.41項・85.42項で使う用語を定義しており、半導体ベースの変換器やセンサーの範囲を示しています。
注12では、物理現象や化学現象に関連する現象として、圧力、音波、加速度、振動、移動、方向、ひずみ、磁界強度、電界強度、光、放射能、湿度、フロー、化学物質濃度などが挙げられています。
また、半導体ベースセンサーについて、半導体の内部または表面に生成したマイクロ電子構造体または機械構造体などから成り、電気特性または機械構造体の変位により生ずる物理量・化学量を検出し、それらを電気信号に変換する機能を有する旨が示されています。

第85類と第90類の境界で起きやすいこと

センサー製品は、同じ「測る」でも次のように分岐します。

  1. 素子としてのセンサー(半導体デバイス側の整理が効く)
  2. センサーを含む測定機器(第90類の測定・検査機器に寄る)
  3. 通信や制御まで含むユニット(複合機能で判断が難しくなる)

ここで注12の価値は、製品が「どこまでが変換素子で、どこからが機器・システムなのか」を説明するための共通言語になる点です。設計部門が「センサーです」と言っていても、通関実務では、注の定義に当てはまる要件(構造、変換の仕方、組込み要素)で整理し直す必要が出ます。


第90類の実務論点

論点4:第90類注2の「部分品・附属品」は三段階で決まる

いちばん多いミスは、段階を飛ばすこと

第90類注2は、部分品・附属品の帰属を三段階で決める構造です。要旨は次の通りです。

  1. 当該部分品・附属品が、第90類、第84類、第85類または第91類のいずれかの項(ただし8487、8548、9033を除く)に該当する場合は、その項に属する
  2. それ以外で、特定の機器(または同一項の複数機器)に専ら又は主として使用する部分品・附属品は、その機器の項に属する
  3. その他は90.33項に属する
    この骨格が注として明示されています。

企業実務への示唆

現場で起きがちなのは「この装置の部品だから90類」という思い込みです。注2は、まずその部品自体が84類や85類として成立していないかを先に見よ、と言っています。
つまり、測定装置の部品でも、電気的な機能部材が強いものや、独立した電気機器として評価されうるものは、90類に残らず85類側へ引っ張られる余地があります。注2の段階を社内ルール化しておくと、判断の属人化を減らせます。


論点5:第90類注3は、第16部の複合機械・機能ユニット規定を持ち込む

第90類注3は「第16部の注3及び注4の規定はこの類においても適用する」と定めています。
これは、測定・検査装置が複数機器の組合せや機能ユニットとして構成される場合に、主たる機能や明確に規定された単一機能で分類する、という第16部側の考え方を第90類でも使うという意味です。

実務で効くポイント

測定システムは、センサー、制御ユニット、表示、通信、電源などがセットになりがちです。設計が一体化するほど「複合機械」「機能ユニット」の論点が立ちます。
このとき、機能を言語化せずに「完成品名」で分類を決めに行くと、後から説明が破綻します。注3・注4の枠組みで、どの単一機能に向けて結合されているのかを先に定義し、構成表(BOM)と機能ブロック図で示すのが、監査や税関照会で強い運用です。


論点6:光学式の測定・検査は、9013と9031の二択で迷ったら注5を確認する

第90類注5は、90.13項と90.31項のいずれにも属するとみられる光学式測定機器・光学式検査機器は90.31項に属する、と定めています。

実務での使いどころ

外観検査、寸法測定、レーザーやカメラを用いた検査装置など、光学要素を使う測定機器は増え続けています。注5は「光学要素があるから9013」と短絡しないための安全装置です。
特に、現場での機能説明が「光学機器」寄りになっている場合は、測定・検査という目的機能を軸に整理し直すと、分類の一貫性が保ちやすくなります。


ケーススタディ

VRヘッドセットが9004.90に整理される理由から学ぶ、境界線の考え方

日本税関の分類事例では、スマートフォンに接続して使用するVRヘッドセットが9004.90として示されています。事例では、筐体にCPU、凸面レンズ、焦点リング、音量キー、micro USBコネクター、加速度・ジャイロ・近接センサー、タッチパッド等が組み込まれ、スマートフォンの画面を拡大し、頭の動きを検出してスマートフォン側へ送信する仕組みが説明されています。
そのうえで、通則1および6の適用により9004.90と整理されています。

ここから得られる実務上の教訓

  1. 電子部品やセンサーが入っていても、製品の本質が別の見出しに明確に当てはまると、そちらが優先されうる
  2. 「何ができるか」だけでなく、「見出し文言に何が書かれているか」「注で何が除外・包含されているか」が勝つ
  3. VR機器でも、単体で表示機能を持つもの、通信機能が主のものなどは別の論点になりうるため、仕様差を前提に個別判断が必要

この事例は、85類と90類の境界で悩むときほど「注の定義と、製品の主たる性格」をぶらさないことが重要だと示しています。


ビジネス側が今すぐやるべき社内アクション

分類を「担当者の経験」から「再現できる手順」へ

分類の品質を上げるコツは、判断を早い段階で仕組みに落とすことです。おすすめは次の3本柱です。

1. 設計変更フローに、HS影響レビューを組み込む

電池の補助部品追加、基板の実装変更、センサーの統合などは、まさに第85類・第90類の境界を動かします。リリース前に「見出しと注に照らした分類影響」を確認するだけで、後工程の修正コストが激減します。

2. 分類根拠ファイルを標準化する

最低限、次のセットを社内テンプレート化すると強いです。

  1. 製品仕様(機能、構成、入出力、用途)
  2. 主要部材リスト(BOM)
  3. 見出しと注に基づく判断プロセス(通則1からの道筋)
  4. 参考情報として、HS解説書や分類意見、過去の照会結果

HS解説書はWCOがHS分類を支援する目的で刊行し、見出しの範囲や技術的説明、識別の実務ガイダンスを提供する、と日本税関も説明しています。
分類意見についても、HSCでの分類決定がまとめられる旨が整理されています。

3. 重要品目は事前教示や照会で、予測可能性を取りに行く

日本税関は、輸入申告で関税率表に沿ったコード記載が必要であり、透明性・予測可能性向上のために文書の事前教示を開示していると説明しています。
社内の「売上上位品目」「規制対象にかかりやすい品目」「調達が頻繁に変わる品目」は、優先度を付けて事前に論点を潰すほうが、結果として安いです。


HSC77の先にあるHS2028

今から準備して損をしない理由

WCOはHS2028改正が受諾されたこと、そして2028年1月1日に発効することを明記しています。
また、受諾後の残り2年間の実施準備期間に、相関表(Correlation Tables)の作成、HS関連ツールや刊行物の更新、加盟国側の実装準備が進む、と説明しています。

第85類・第90類は、技術進化の中心にあるため、改正による影響が出やすい領域です。HSC77は、HS2028へ向けた「解釈の地ならし」が進む局面としても、企業のウォッチ対象になります。


まとめ

第85・90類は「複合化」が分類リスクを増幅する。だから、注を軸に社内プロセスを固める

第85類は、電池、基板、半導体センサーといった部材の定義が注で細かく整備されており、製品のモジュール化が進むほど注の読み込みが利益に直結します。
第90類は、部分品・附属品の三段階ルールや、複合機械・機能ユニット規定の持ち込み、光学式測定の整理など、境界線に強い注が並びます。

HSC77という外部イベントを「他人事」にしないために、社内では次の順番が効果的です。

  1. 製品仕様の変化を、HS分類の変化として捉える
  2. 注を起点に、再現可能な分類根拠を残す
  3. 重要品目は、早めに照会して予測可能性を確保する


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引・製品に対する関税分類の結論や法務・税務上の助言を行うものではありません。HSコードの最終判断は、個別商品の仕様、取引形態、提出資料、各国税関当局の運用等により左右されます。実際の申告や契約への適用にあたっては、最新の法令・通達等を確認のうえ、必要に応じて通関士・専門家への相談、または税関への事前教示制度の利用をご検討ください。

HS2022 第90類:光学機器、写真用機器、映画用機器、測定機器、検査機器、精密機器及び医療用機器並びにこれらの部分品及び附属品(Optical, photographic, cinematographic, measuring, checking, precision, medical or surgical instruments and apparatus; parts and accessories thereof)

用語は以下で統一します。

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

また、本稿は**HS(6桁)を中心に説明します。日本の輸入申告等では国内コード(9桁等)**が使われますが、国内細分は別途「国内コード」と明記します。


0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 眼鏡・ゴーグル・サングラス(9004)、眼鏡フレーム(9003)
    • 双眼鏡・望遠鏡(9005)※暗視鏡がここに来る例もあります(後述)
    • 顕微鏡(光学顕微鏡:9011、電子顕微鏡等:9012)
    • 医療用診断・治療機器(MRI 9018.13、超音波 9018.12、X線/CT 9022 など)
    • 流量計・圧力計・温度計などの各種計測機器(9025〜9026)
    • 自動調整器(温度調節器・圧力調整器など)(9032)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • テレビカメラ/デジタルカメラ/ビデオカメラ → 第85類 8525(類注で明示除外)
    • ビデオプロジェクター(映像信号を投影する一般の映像用)→ 第85類 8528(90.08から除外される旨が税関解説で明確)
    • フラットパネルディスプレイモジュール → 第85類 8524(HS2022で新設・定義、優先分類ルールあり)
    • 光ファイバーケーブル(8544)やコネクタ(8536)→ 第85類(類注で除外)
    • 汎用部品(ねじ、ばね等)=「parts of general use」→ 第15部(第90類注1で除外)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 完成品か、部分品・附属品か(第90類注2で分類ルールが強制されます)
    2. 第90類に見えても、第85類(8524/8525/8528等)に“飛ぶ”除外があるか(第90類注1、及び第85類注7等)
    3. 「光学の測定・検査」系は 9013 と 9031 の境界に要注意(第90類注5で9031へ寄せるルール)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 医療機器(9018/9022等):税番誤りが、税率だけでなく薬機法対応や輸出入手続の整理にも連鎖しやすいです。
    • 分析機器(9027、とくに質量分析計9027.81):HS2022で細分が新設され、統計・管理面での取扱いが変わっています。
    • 制御機器(9032):単なる“計測”か“自動制御”かで税番が変わり、誤りが起きやすいです。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)
    • **GIR1(見出し+注)**が最重要です。第90類は、注(Notes)による除外・優先ルール・部分品ルールが非常に強い章です(例:デジタルカメラは85.25へ、光学測定器は注5で9031へ、部分品は注2で整理)。
    • **GIR6(号レベルの決定)**も重要です。特にHS2022では、**9027.81(質量分析計)**のように6桁で新設・再編があり、旧版慣れのまま申告するとズレます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 機能(何を測る/何をするか):測定・分析・制御・医療・光学など
    • 方式(X線/超音波/MRI/レーザー等):9018/9022/9013/9030の境界に効きます。
    • 構造(装置か部品か、マウント有無、交換フィルタ等の有無)
    • 電気機器要素の強さ:第85類へ移る典型(8524/8525/8528等)があります。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:第90類“に見えるが除外”のチェック
    • デジタルカメラ・ビデオカメラ(8525)、ビデオプロジェクター(8528)、フラットパネルディスプレイモジュール(8524)などに該当しないか確認します。
  • Step2:完成品か/部分品・附属品か
    • 部分品の場合は第90類注2の3段階ルール((a)(b)(c))に従います。
  • Step3:4桁(項)を機能で特定
    • 光学部品(9001〜9002)、眼鏡(9003〜9004)、写真・映画(9006〜9010)、顕微鏡(9011〜9012)、レーザー等(9013)、医療(9018〜9022)、計測/分析/制御(9024〜9032)…のように“用途・機能”で当たりを付けます。
  • Step4:6桁(号)の分岐条件を確認
    • 例:質量分析計は9027.81、MRIは9018.13、CTは9022.12など、方式・種類で号が決まるものがあります。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第90類 vs 第85類(カメラ・プロジェクター・表示モジュール・光ファイバー関連)
    • 9013 vs 9031(光学の“測定・検査”をする機器)※注5の強制ルールあり
    • 9026/9025(測定) vs 9032(自動制御) ※注7の定義が効く

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

ご指定どおり、第90類の4桁(項)を全て表にしています(HS2022の条文構成上、90.09は「[90.09]」として空番扱いです)。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
9001光ファイバー束・偏光板・未装着光学素子偏光フィルム、コンタクトレンズ、未装着レンズ/プリズム「未装着」が要点。光ファイバーケーブルは8544等へ(注1)
9002装着光学素子(器具の部品/取付具)カメラ用レンズユニット、光学フィルタ取付済(mounted)。未装着は9001側。
9003眼鏡等のフレーム・マウント、部品眼鏡フレーム、ゴーグル枠、テンプル完成眼鏡(9004)と混同注意。
9004眼鏡・ゴーグル等(矯正/保護/その他)メガネ、保護メガネ、サングラス9004.10(サングラス)/9004.90(その他)
9005双眼鏡・単眼鏡・望遠鏡、天体観測機器等双眼鏡、天体望遠鏡、暗視鏡(例あり)銃用照準望遠鏡等は注4で9013へ。暗視鏡が9005.80に来る例あり。
9006写真機(映画用以外)・フラッシュ等フィルムカメラ、インスタントカメラ(写真)デジタルカメラは8525へ(注1)。フィルム幅等で6桁分岐。
9007映画用カメラ・プロジェクター16mm映画撮影機、映画映写機9008(静止像投影)と混同注意。
9008静止像用投影機・写真引伸機/縮小機スライドプロジェクター、引伸機ビデオプロジェクターは8528(税関解説で除外明確)。
9009[90.09]空番(HS上の予約)HS2022でも条文上は空番表示。
9010写真(映画含む)ラボ機器、ネガ観察器、投影スクリーン自動現像機、ネガトスコープ、スクリーンデジタル化された機器でも“写真ラボ用途”か要確認。
9011光学顕微鏡(複式)実体顕微鏡、研究用顕微鏡9012(非光学顕微鏡)と区別。
9012非光学顕微鏡、回折装置電子顕微鏡、回折装置9012.10/9012.90(部品)
9013レーザー(LD除く)等の光学機器(他にないもの)レーザー発振器(LD除く)、潜望鏡等HS2017までの“液晶デバイス”文言はHS2022で外れた(重要)。光学測定器は注5で9031へ。
9014方位測定コンパス、その他航法機器方向探知コンパス、航空/宇宙航法機器レーダ等は8526へ(注1)。
9015測量・気象・地球物理など(コンパス除く)、距離計トータルステーション、レベル、距離計9014(コンパス)と区別。
90165cg感度以上の天びん分析天びん9016.00の構成(HS6)。
9017製図・計算器具、手持ち長さ測定器ノギス、マイクロメータ、巻尺他章に特掲がないか確認。
9018医療・外科・歯科・獣医用器具(診断含む)超音波、MRI、注射器、カテーテル方式/用途で細分多い。MRI 9018.13の分類例あり。
9019機械療法・マッサージ等、酸素療法/人工呼吸等マッサージ器、酸素吸入装置9020(ガスマスク等)と混同注意。
9020その他の呼吸用器具・ガスマスク(一定の簡易マスク除外)交換フィルタ式防毒マスク等“機械部品も交換フィルタもない保護マスク”は除外(注の文言に沿って判断)。
9021整形外科用等、義肢、補聴器、体内植込み機器等人工関節、ペースメーカー、補聴器注6で「整形外科用」の定義あり(特殊インソール等)。
9022X線・その他電離放射線利用装置(医療用含む)X線撮影装置、CT(9022.12)、放射線治療装置HS2022で「その他の電離放射線」まで含む方向に拡大(相関表に影響記載)。
9023教育/展示用モデル等(他用途不可)解剖模型、教育用デモ装置“他用途に適する”と外れる可能性。
9024材料の機械特性試験機引張試験機、硬さ試験機90.24の範囲か、機械(84類)か要確認。
9025温度計・気圧計・湿度計等温度計、バロメータ、湿度計9032(自動制御)と混同注意。
9026流量・液位・圧力等(液体/気体)測定器流量計、圧力計、液位計“自動制御”機能が本質なら9032へ(注7)。
9027物理/化学分析機器、光・音・熱量測定、ミクロトーム等分光計、ガスクロ、pH計、ミクロトームHS2022で質量分析計9027.81新設。
9028ガス・液体・電気の供給/生産メータガスメーター、水道メーター、電力量計日本では計量法の対象となり得る(取引・証明用途等)。
9029回転数計・速度計・歩数計等、ストロボスコープタコメータ、歩数計9014/9015該当なら除外(見出しに明記)。
9030電気量測定器(9028除く)、放射線検出/測定器等オシロスコープ、スペアナ、線量計9022(放射線“利用装置”)と区別。
9031他項にない測定・検査機器、投影検査器等三次元測定機、光学投影機(検査用)注5で9013に行きそうでも“光学の測定・検査”は9031へ。
9032自動調整/制御機器サーモスタット、圧力調整器注7の定義(測って目標値維持)が核心。
9033他に特掲のない部分品・附属品汎用化していない専用品の部品等部分品は注2でまず(a)(b)判定。最後に残るものが9033。

(出典:WCO HS2022 第90類条文、および日本税関「関税率表解説・分類例規」第90類等)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

ここでは“実務で迷いやすい”分岐に絞って整理します(全号の網羅ではありません)。

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
    • 第90類は「方式(何をどう測る/写す/投影するか)」「構造(装着/未装着、交換フィルタ有無等)」「完成品/部品」が効きます。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
  1. 9001(未装着光学素子) vs 9002(装着光学素子)
    • どこで分かれるか:
      • ざっくり「**mounted(装着/取付済)**かどうか」。
    • 判断に必要な情報:
      • 図面・写真(枠/ハウジング/マウントの有無)
      • “部品として器具に取り付ける状態か”の説明
    • 典型的な誤り:
      • フィルタ枠付きなのに9001(未装着)で申告してしまう
  2. 9003(フレーム) vs 9004(完成眼鏡)
    • どこで分かれるか:
      • レンズ等を含みそのまま着用できるか(9004)/枠のみ(9003)。
    • 判断に必要な情報:
      • セット内容(レンズ有無)、インボイス明細、写真
    • 典型的な誤り:
      • “フレーム付きレンズ”(完成品)をフレームとして9003申告
  3. 9008(静止像投影) vs 8528(映像用プロジェクター)
    • どこで分かれるか:
      • 90.08は「静止像投影」が中心(スライド等)。一方、一般のビデオプロジェクターは85.28に除外される旨が明確です。
    • 判断に必要な情報:
      • 入力信号(HDMI等の映像信号か、写真/スライド投影か)
      • 用途(会議用、映画/映像用、写真引伸用途など)
    • 典型的な誤り:
      • 「プロジェクター」という品名だけで9008に入れてしまう(映像用は8528の可能性が高い)
  4. 9013 vs 9031(光学“測定・検査”機器)
    • どこで分かれるか:
      • 注5により、光学の測定/検査機器で9013にも9031にも読めるなら9031に寄せます。
    • 判断に必要な情報:
      • “測定・検査”の有無(数値表示・検査判定・測定原理)
      • カタログ(測定精度、測定対象、検査機能)
    • 典型的な誤り:
      • “レーザーを使う検査装置”を、レーザー機器だから9013と短絡する(測定/検査なら9031寄り)
  5. 9027.81(質量分析計) vs 9027.89(その他)
    • どこで分かれるか:
      • HS2022で質量分析計が9027.81として独立しました。
    • 判断に必要な情報:
      • 方式(MSであるか)、メーカー仕様、型式
    • 典型的な誤り:
      • 旧来の感覚(“9027.80その他”)で9027.89等にしてしまう

(補足)**9032(自動制御) vs 9025/9026(測定)**も頻出です。注7の要件(測って目標値に維持する閉ループ)を満たすかで変わります。


3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第90類注3で、第16部(Section XVI)の注3・注4が第90類にも適用されるとされています。つまり、複合機能機械/システム(機能ユニット等)の考え方が第90類でも重要になります。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:MRI装置は巨大電磁石+無線周波装置+ADP装置等で構成されることがある、と税関資料に例示があります。システムとしての提示形態・構成次第で判断が変わり得るので、**「セットで輸入か」「一体として特定機能を果たすか」**を整理します。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 第90類“部分品”でも、部品それ自体が第84/85類の見出しに入るなら、注2(a)でそちらに行く、という形で「他章に飛ぶ」ことがあります。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:除外規定(デジタルカメラ等の85類、光ファイバー関連、ねじ等の汎用部品などが除外)
    • 注2:部分品・附属品の分類ルール(最重要)
    • 注4:銃用照準望遠鏡等は9005でなく9013
    • 注5:光学の測定・検査は9031へ寄せる
    • 注6:9021の「整形外科用」の定義(特殊インソール等の条件)
    • 注7:9032の定義(自動制御の範囲限定)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「orthopaedic appliances(整形外科用)」の定義は注6にあり、矯正/支持目的や、靴・インソールの条件(オーダーメイド又は大量生産でも単品提示等)が書かれています。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • デジタルカメラ等→85.25、ビデオプロジェクター→85.28、光ファイバーケーブル→85.44、コネクタ→85.36、数値制御装置→85.37…など、注1(h)は“飛び先”が具体的に列挙されています。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:注1(除外)で第85類へ飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 仕様書で「デジタルカメラ機能」「映像投影」「表示モジュール」などの有無
    • 現場で集める証憑:
      • メーカー仕様書、入出力仕様(HDMI等)、構成部品表、製品写真
    • 誤分類の典型:
      • “光学っぽい”から第90類に入れてしまう(例:ビデオプロジェクター→8528)
  • 影響ポイント2:注2(部分品ルール)で9033に“落とす前”の判定が必須
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • その部品が単体で84/85/90/91の見出しに入るか(注2(a))
      • 専用品・主用性の有無(注2(b))
    • 現場で集める証憑:
      • 図面、用途説明、装着対象機種一覧、部品番号、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • “部品だから”と機械的に9033へ(注2の(a)(b)を見ていない)
  • 影響ポイント3:注5で9013→9031に寄せる
    • 何を見れば判断できるか:
      • 測定・検査の機能(数値化、判定、精度保証など)
    • 現場で集める証憑:
      • 測定仕様(精度・分解能)、測定原理、検査工程図
    • 誤分類の典型:
      • “レーザー装置だから9013”としてしまう(測定・検査なら9031に寄る可能性)
  • 影響ポイント4:注7で9032(自動制御)か、単なる計測(9025/9026等)かが分かれる
    • 何を見れば判断できるか:
      • センサーで測定→制御演算→アクチュエータで目標値維持、の“閉ループ”要件
    • 現場で集める証憑:
      • 制御ブロック図、I/O仕様、制御方式説明
    • 誤分類の典型:
      • “温度を測る機器”を全部温度計(9025)にする/逆に全部制御器(9032)にする

(補足:HS2022ではフラットパネルディスプレイモジュール(8524)が新設され、90.13等に分類されていたものの整理が進んだ、という改正背景が税関資料でも説明されています。)


5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:デジタルカメラを9006(写真機)にする
    • なぜ起きる:品名が「カメラ」だから
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):注1(h)でデジタルカメラは8525へ除外。
    • 予防策:
      • 仕様書で撮像素子、記録方式、デジタル出力の有無を確認
      • インボイス品名に「digital camera / video camera recorder」等を明記
  2. 間違い:会議用ビデオプロジェクターを9008にする
    • なぜ起きる:「プロジェクター=9008」と短絡
    • 正しい考え方:税関解説で、90.08は静止像投影中心で、ビデオプロジェクターは85.28へ除外される整理。
    • 予防策:
      • 入力信号・用途(映像投影/静止像投影)を仕様で確定
  3. 間違い:液晶/有機ELの表示モジュールを9013にする
    • なぜ起きる:旧版(HS2017以前)の「液晶デバイス」文言の記憶
    • 正しい考え方:
      • HS2017の9013は液晶デバイスを含む文言があるが、HS2022の9013にはその文言がない。
      • HS2022で**8524(フラットパネルディスプレイモジュール)**が新設され、注7で8524優先のルール。
    • 予防策:
      • HS版(2017/2022)を混同しない
      • モジュール構造(ドライバ/制御回路の有無等)を図面で確認
  4. 間違い:光学フィルタを9001にする(実は9002)
    • なぜ起きる:「フィルタ=光学素子」の一括り
    • 正しい考え方:9001は未装着、9002は装着済で器具の部品・取付具。
    • 予防策:マウント有無、装着状態の写真を入手
  5. 間違い:眼鏡フレーム(9003)と完成眼鏡(9004)の混同
    • なぜ起きる:取引上「眼鏡」と呼ぶ
    • 正しい考え方:見出しでフレーム(9003)と完成品(9004)が分かれる。
    • 予防策:レンズ有無・セット内容を明細化
  6. 間違い:部分品は全部9033
    • なぜ起きる:部品分類が難しく“最後の受け皿”に逃げる
    • 正しい考え方:注2で(a)(b)(c)の順に判定し、最後に残るものだけが9033。
    • 予防策:部品が単体で別見出し(84/85/90/91)に入らないかチェック表を作る
  7. 間違い:放射線“利用装置”(9022)と放射線“検出/測定”(9030)の混同
    • なぜ起きる:どちらも放射線関連で紛らわしい
    • 正しい考え方:
      • 9022=X線等を利用する装置(撮影/治療など)
      • 9030=電気量測定器+放射線検出/測定器等(線量計など)
    • 予防策:装置が「発生・照射」側か「検出・計測」側かを仕様で整理
  8. 間違い:流量計/圧力計(9026)を9032(自動制御)にしてしまう/逆
    • なぜ起きる:どちらも“センサー付き”に見える
    • 正しい考え方:注7により9032は閉ループ自動制御に限定。
    • 予防策:制御ループの有無(設定値維持・制御出力)を確認
  9. 間違い:質量分析計を9027.89(その他)で申告
    • なぜ起きる:旧HSで“9027.80その他”に慣れている
    • 正しい考え方:HS2022で9027.81(質量分析計)新設
    • 予防策:HS版を確認し、改正差分表・相関表を社内で更新

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること
    • 最終製品のHS(6桁)が誤ると、PSR(CTH/RVC等)も誤り、原産性判断が崩れます。
  • よくある落とし穴
    • 「材料HS」と「完成品HS」の取り違え
    • 部品(注2の扱い)を誤って“別章”に置いてしまい、CTH判定が狂う(例:本来は完成品9018だが、部品を84/85に置くべきもの/置かないものが混ざる)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定本文・付属書(PSR)が参照するHS版は協定ごとに異なり得ます。HS2022の税番をそのまま当てはめず、協定の参照HS版を必ず確認してください。
  • 参考:RCEPについては、税関がHS2022への転置PSRを公表し、適用開始(2023年)を案内しています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • ①協定の参照HS版でPSR確認 → ②相関表でHS2022へ対応付け → ③“範囲変更”がある品目(例:9013/8524、9027.81新設など)は個別に検証、が安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 協定・運用で求められる保存年限、サプライヤ証明、工程記録を整理

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022削除/範囲変更9006.51, 9006.52(削除)→9006.53/9006.59(範囲拡大)貿易量が小さい等の理由で9006.51/52を削除し、9006.53/59の範囲が調整された旨が相関表で説明“フィルム幅”に基づく細分運用の見直しが必要。社内マスタ更新必須。
HS2017→HS2022文言修正/範囲変更(他章新設と連動)9013(見出し文言)/8524(新設)HS2017の9013は液晶デバイス文言あり→HS2022では外れ、HS2022で8524(フラットパネルディスプレイモジュール)が新設・定義され優先ルール旧慣習で9013とする誤りが増えやすい。表示モジュールは8524/8528/8529等も含め再判定が必要。
HS2017→HS2022範囲変更9022.21 / 9022.29(拡大)+影響:9018.90(一部)9022.21/29の範囲が「X線/αβγ以外の放射線」もカバーする方向に拡大し、相関表では一部が9018.90から影響を受ける旨を記載放射線系医療装置の税番見直しが必要(特に“その他電離放射線”利用装置)。
HS2017→HS2022新設/分割9027.81(新設)/9027.89(その他)質量分析計を独立の号にし、統計把握等を容易にする目的が相関表に記載MSを扱う企業はHS6桁更新必須。輸出管理・統計・原産地判定にも影響。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料として、以下を突合しました:
    • WCOのHS条文(HS2017/HS2022)の見出し文言差(例:9013の液晶デバイス文言の有無)
    • 日本税関が公開するHS2022改正資料(8524新設と、90類側への影響説明)
    • HS2017→HS2022相関表(9006.51/52削除理由、9022.21/29拡大、9027.81新設の趣旨)
  • これらの資料に基づき、「コードの新設/削除」「見出し文言の変更」「範囲拡大」の有無を判断し、上表(7-1)に反映しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要な追加・削除・再編(可能な範囲)を、HS2007→2012→2017→2022で整理します。

時系列主要トピック旧コード → 新コード(または行き先)要点(簡潔)根拠
HS2007/2012/2017 → HS20229013の“液晶デバイス”文言の削除(他章新設と連動)9013(液晶デバイス部分)→ 主として8524等へ(要個別判定)HS2017/2012/2007では9013見出しに液晶デバイス文言があるが、HS2022の9013では外れている。HS2022で8524が新設・定義。HS2007/2012/2017条文、HS2022条文、85類注7、税関改正資料
HS2007/2012/2017 → HS20229006.51/9006.52の削除9006.51/9006.52 →(削除)→ 9006.53/9006.59へ実務的に吸収HS2007/2012/2017には9006.51/52があるがHS2022では無い。相関表で削除理由と範囲調整が説明されている。HS2007条文、HS2012条文、相関表、HS2022条文
HS2007/2012/2017 → HS2022質量分析計の号新設9027.80(その他)→ 9027.81(MS)+9027.89(その他)HS2007では9027.80に含まれていたが、HS2022で9027.81が新設。HS2007条文、HS2022条文、相関表
HS2017 → HS20229022の範囲拡大と影響9018.90(一部)→ 9022.21/29側へ影響相関表で、9022.21/29の範囲拡大(他の電離放射線)と、それに伴う影響が示されている。相関表、HS2022条文

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):ビデオプロジェクターを9008で輸入申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):90.08に当てはめたが、税関解説ではビデオプロジェクターは85.28へ除外される整理
    • 起きやすい状況:インボイス品名が「PROJECTOR」だけ、用途説明なし
    • 典型的な影響:修正申告、分類根拠の追加提出、納期遅延(一般論)
    • 予防策:用途(静止像/映像)、入力仕様を添付し、85.28/90.08を事前に比較検討
  • 事例名:表示モジュールを9013で申告(HS2022で8524新設後も旧運用のまま)
    • 誤りの内容:HS2022で8524が新設・優先ルールがあるのに、9013(旧“液晶デバイス”感覚)にしてしまう
    • 起きやすい状況:社内HSマスタがHS2017のまま
    • 典型的な影響:税番更正、FTA原産地判断のやり直し(一般論)
    • 予防策:HS版更新、8524定義(ドライバ/制御回路等)に沿って仕様確認
  • 事例名:質量分析計を9027.89で申告
    • 誤りの内容:HS2022の9027.81新設を見落とし
    • 起きやすい状況:旧HSで“9027.80その他”のまま運用
    • 典型的な影響:統計品目の修正、輸出管理/社内審査プロセスの再確認(一般論)
    • 予防策:型式仕様でMSを確定し、9027.81を優先検討
  • 事例名:部品を一括で9033にまとめ申告
    • 誤りの内容:注2(a)(b)を見ずに“部品=9033”
    • 起きやすい状況:部品点数が多く、機能説明が不足
    • 典型的な影響:追加資料要求、分類修正、審査長期化(一般論)
    • 予防策:部品ごとに「単体で別見出しに入るか」「主用性」を整理し、注2に沿って判定

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第90類そのものは食品等ではありませんが、**医療機器(9018〜9022等)**は国内流通の前提として薬機法の枠組み(承認・認証・届出等)が絡み得ます。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 第90類では一般に中心論点になりにくいですが、素材(象牙等)を使った装飾がある場合は別途検討が必要です(一般論)。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 分析機器・計測機器は安全保障貿易管理で論点になり得ます。制度自体はリスト規制+キャッチオール規制の枠組みで運用され、METIがQ&A等を公開しています。
    • ※HSコードだけで該当/非該当が決まるわけではなく、性能仕様・用途・需要者を含めて判断します(一般論)。
  • その他の許認可・届出
    • 計量法(特定計量器):取引・証明用途で使用する電力量計・水道メーター・ガスメーター等は、検定証印等が求められ、有効期限の考え方もあります。輸入・販売・使用の各段階で留意事項が整理されています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 医療機器:厚生労働省、PMDA(審査・区分等)
    • 計量法:経済産業省(特定計量器の制度・注意喚起)
    • 安全保障貿易管理:経済産業省(Q&A等)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(性能、方式、入出力)
    • 写真・図面
    • 医療機器なら承認/認証/届出状況、製造販売業の体制(当事者の役割整理)
    • 計量器なら検定・型式承認等の関連情報(該当する場合)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 何をする機器か(測定/分析/制御/診断/治療/投影)
    • 方式(X線/超音波/MRI/レーザー等)
    • 構造(装着/未装着、交換フィルタ、表示モジュールの構成)
    • 完成品か部品か(注2を意識)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 注1(除外)で85類に飛ばないか(8524/8525/8528等)
    • 注5(9013↔9031)・注7(9032)に抵触していないか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • “projector” “sensor” “module”など曖昧語は避け、機能・方式を明記
    • カタログ/写真を添付(必要時)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS版確認、相関表で転置
    • BOM・工程・原価の保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 医療機器(薬機法)・計量器(計量法)・輸出管理(該当時)を並行確認

(推奨)迷う場合は税関の**事前教示制度(品目分類)**を活用し、照会に必要な情報(仕様・写真等)を揃えます。


12. 参考資料(出典)

※参照日はいずれも 2026-03-01

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 Chapter 90(条文・類注)
    • HS2017 Chapter 90(9013文言比較等)
    • HS2012 Chapter 90(旧版比較)
    • HS2007 Chapter 90(旧版比較)
    • HS2022 Chapter 85(注7:8524優先等)
  • 日本税関・公的機関(分類・改正・手続)
    • 関税率表解説(第90類)
    • 分類例規(第90類:暗視鏡9005.80、MRI 9018.13等の例)
    • HS2022改正資料(8524新設と90類側への影響説明等)
    • HS2017→HS2022 相関表(9006.51/52削除、9027.81新設、9022範囲拡大等)
    • 事前教示制度(品目分類)案内・カスタムスアンサー
  • 日本:規制(計量法・薬機法・輸出管理)
    • 経済産業省:計量法(特定計量器の規制概要、検定証印等、有効期間注意)
    • 厚生労働省:医薬品・医療機器(薬機法の枠組み概要)
    • PMDA:医療機器の審査・区分(承認/認証/届出の考え方等)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理Q&A、キャッチオール関連資料
  • FTA/EPA(参考)
    • 日本税関:RCEPのHS2022転置PSR(案内)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

WCO HSC第76会期の分類決定が示すCh.85/90の実務信号

ビジネス現場での読み替えと、通関リスクを減らすための手当て

1. はじめに

HSコードは、関税だけでなく、原産地規則の品目別規則、輸出入規制、統計、移転価格や社内マスタ統制まで波及します。ところが現場では、製品の機能が高度化し、電気機器(Ch.85)と計測機器(Ch.90)の境界が曖昧になりやすい。
そこで重要になるのが、WCO(世界税関機構)のHSC(Harmonized System Committee)が採択する分類決定です。第76会期(2025年9月)では、議題71件の審査、40件の分類決定などが公表されました。

本稿では、公開されている第76会期の分類決定(留保対象を除く一覧)を材料に、Ch.85を中心に、Ch.90との境界実務に効く「信号」を深掘りします。なお、WCO文書自体が、当該決定の各国での実装は輸出入国で確認するよう注意喚起しています。ここが実務上の出発点です。

2. まず押さえるべき前提

2.1 分類決定は「世界の物差し」だが、各国実装の確認が必須

第76会期の分類決定一覧は、「留保対象を除く決定」を掲げ、輸出入当事者に対し、輸出入国での実装状況の確認を求めています。
実務では次の二段構えが安全です。

  1. WCO決定で世界標準の方向性を把握する
  2. 輸入国の関税率表、分類通達、裁定、運用で確定させる

2.2 Ch.85とCh.90の境界は「機能」と「注記」で決まる

境界論で見落としがちなのが注記です。
・Section XVI(Ch.84-85)では、そもそも「Ch.90の物品は対象外」と明記されています。
・一方、Ch.90側は「Section XVI注3・注4の考え方をCh.90にも適用する」と規定しています。
つまり、電気要素があるからCh.85、精密っぽいからCh.90、といった感覚分類は危険で、注記と機能の整理が必須です。

3. 実務信号その1 通信インフラは「8517で束ねる」圧が強い

3.1 事案の要点 Remote Radio Unitを8517.79へ

第76会期の分類決定には、携帯基地局を構成するDU(Digital Unit)、RU(Radio Unit)、アンテナのうち、RUに当たる「Remote Radio Unit」が登場します。トランシーバ基板、増幅器、フィルタ等で構成され、DUの制御下でRF信号の変換、フィルタリング、増幅を担う、と説明されています。分類は8517.79で、根拠としてSection XVI注2(b)が明示されています。

3.2 何が「信号」なのか

ポイントは、単体で完結する機器というより、基地局というシステム機能の中での役割と、専用性(solely or principally)が評価軸になっている点です。Section XVI注2(b)は、特定機械に専ら又は主として使用される部品は、その機械と一緒に分類するという基本を示します。
基地局関連は、製品名が基板、ユニット、モジュールとバラけるため、社内マスタ上で別カテゴリ扱いになりがちですが、通関では機能体系と専用性の立証が勝負になります。

3.3 ビジネス上の手当て

  1. 製品説明資料の整備
     システム構成図、I/F仕様、搭載先機器、代替用途が限定される理由を一枚で説明できる形にする。
  2. 部品認定の証拠づくり
     販売先の限定、取付互換性の限定、ファーム更新や制御がDU前提である点など、専用性の根拠を揃える。
  3. 関係部署の合意
     通信機器部品は、品番統合、原産地判定、関税影響が連鎖する。分類部門だけで閉じず、調達、営業、法務、原産地担当と早期に握る。

4. 実務信号その2 コンセント系は8536に寄せ、迷いは号レベルで決着させる

4.1 事案の要点 マルチソケットアダプタは8536.69

2口や3口のマルチソケットアダプタ(ソケット複数とプラグが同一筐体)は8536.69。候補として8536と8537が比較され、8536が選ばれています。

4.2 事案の要点 スイッチ付きは、号レベルでGRI 3(c)が登場

1口ソケット、オンオフスイッチ、プラグを同一筐体に収めたスイッチングアダプタも、結論は8536.69。ただし号レベルでGRI 3(c)が使われています。
これは実務的に重要です。製品が「スイッチ」でもあり「プラグ・ソケット」でもある場合、どちらが本質かが決め切れないと、最後の手段として数値順で決着する場面がある、という示唆になります。

4.3 ビジネス上の手当て

  1. 商品企画段階で、分類が割れる仕様を把握する
     スイッチ追加、ブレーカ追加、USB給電追加など、機能追加がHSを動かすポイントになりやすい。
  2. 型番体系とマスタを、機能差分でグルーピングする
     見た目が似ているだけで同一HSにまとめると、監査で説明不能になりやすい。
  3. 競合品情報は参考止まり
     同じように見えても、定格、構造、保護機能、接続形態で結論が変わり得る。WCO決定は「論点の地図」として使い、自社品に引き当てる。

5. 実務信号その3 電源タップとコードリールは8544へ寄せる判断が明確になった

5.1 事案の要点 電源タップ一群が8544.42

複数ソケット、オンオフスイッチ、過負荷時のサーキットブレーカ等を備え、1.5mや5mの電源ケーブルとプラグを持つ電源タップが、複数パターンで8544.42に分類されています。候補として8536、8537、8544が比較され、根拠にSection XVI注3が掲げられています。
さらに、ケーブル長が長いコードリール型でも8544.42に整理されています。

5.2 何が「信号」なのか

Section XVI注3は、複合機能を持つ機械等は、主たる機能で分類するという考え方です。
電源タップは、保護機能やスイッチが目立つため8536や8537に寄せたくなる場面があります。しかしWCO決定は、ケーブルとコネクタを備えた「通電・接続」の性格を主に見て、8544へ寄せています。実務上、タップ類の分類は各国で論点化しやすく、監査でも頻出です。ここで方向性が明確になった意義は大きい。

5.3 ビジネス上の手当て

  1. 8544寄せの説明書きを用意する
     ケーブル一体、定格、コネクタ形状、使用態様を整理し、なぜ主機能が通電・接続なのかを社内標準文に落とす。
  2. タリフと規制の二次影響を洗う
     関税だけでなく、対策関税、輸入統計、特定規制品目の該当性が動く場合がある。
  3. 既存SKUの棚卸し
     同一カテゴリ内で、ケーブル有無、保護機能有無、延長形態の違いが混在していないかを点検する。

6. Ch.90の実務信号 今回の決定をどう「境界案件」に使うか

6.1 直接のCh.90決定がなくても、使える論理がある

公開されている第76会期の分類決定一覧では、Ch.85の論点が中心で、Ch.90の具体案件は表に出ていません。
それでも、Ch.90の境界案件に転用できる理由は2つあります。

  1. Section XVIはCh.90を除外するという大原則がある。
  2. Ch.90は、Section XVI注3・注4の考え方を取り込む。

6.2 境界案件での実務フレーム

次の順で整理すると、社内合意が取りやすく、監査耐性も上がります。

  1. 物品の役割を一文で定義する
     測るための道具か、信号を送るための装置か、制御するための装置か。
  2. その役割が、Ch.90の計測・検査として自立しているかを点検する
     Ch.90には、計測・検査・医療など固有の領域があり、該当するならSection XVI側に引きずられない設計になっています。
  3. 複合機能なら、主たる機能と明確な機能を見極める
     Section XVI注3・注4の考え方は、複合機能品の整理に使えます。
  4. 部品か本体かを、専用性で立証する
     専ら又は主として使用されるかどうかの立証は、Ch.85でもCh.90でも監査で問われやすい論点です。

6.3 典型的な現場の落とし穴

  1. センサーに通信機能があるからCh.85、と短絡する
     通信は付随で、測定結果の取得が本体価値なら、Ch.90の可能性を丁寧に検討すべきです。
  2. 電気基板が入っているからCh.85、と短絡する
     Ch.90は電気式の計測機器も多く、電子化は分類を自動的に85へは動かしません。
  3. 部品扱いのまま、用途説明を省略する
     部品は専用性の説明が生命線で、ここが薄いと残余項へ押し込まれやすい。

7. まとめ ビジネスでの実装チェックリスト

  1. 通信インフラ部品は、システム専用性の立証を前提に、8517の体系で整理する。
  2. コンセント系は、8536中心に整理し、複合要素は号レベルでの決着も想定して根拠を整える。
  3. ケーブル一体の電源タップとコードリールは、8544寄せの論理が強い。製品群の棚卸しが費用対効果の高い打ち手になる。
  4. Ch.90境界は、除外規定と、注3・注4の共通ロジックで社内判断を整流化する。

8. 一次資料として参照した主要ソース

・WCOニュースリリース(第76会期の成果概要)
・Classification Decisions – HS Committee 76th Session(留保対象を除く分類決定一覧)
・HS 2022 Section XVI Notes(注2、注3など)
・HS 2022 Chapter 90 Notes(注2、注3など)

免責事項

本稿は、WCOが公開した資料に基づき、一般的な情報提供として作成したものであり、特定貨物の最終的なHSコード確定、法令解釈、通関可否、税額計算、監査対応方針を保証するものではありません。実際の分類・申告は、貨物の仕様、提示形態、契約条件、輸入国の関税率表・通達・裁定、当局運用により結論が変わり得ます。重要案件は、輸入国税関への事前教示や専門家への個別相談を推奨します。