HS2022 第68類:石、プラスター、セメント、石綿、雲母その他これらに類する材料の製品(Articles of stone, plaster, cement, asbestos, mica or similar materials)

本稿では用語を次で統一します。

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 天然石の舗装用石・縁石・敷石(例:花こう岩の縁石)→ 6801
    • 天然石をさらに加工した建築用石材・装飾品(例:研磨仕上げの大理石板、石製の置物)→ 6802
    • 砥石・グラインディングホイール等の研磨用物品(天然・人造研磨材)→ 6804
    • 研磨布・研磨紙など「研磨材を基材(紙・布等)に付着」させた物品 → 6805
    • 鉱物系断熱材(スラグウール/ロックウール等)や断熱・吸音用鉱物材料製品 → 6806
    • 石こう製品、コンクリート製品、繊維補強セメント板等の建材、ならびに雲母加工品(条件により)炭素繊維製品等 → 6809〜6815
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 鉱物の一次産品(例:採石場からの原石、加工が限定的な石材)→ 原則として第25類(例外あり)
    • 雲母粉・黒鉛・アスファルト等を塗布した紙・板紙 → 4810/4811(第68類注で除外が明示)
    • 雲母粉・ビチューメン等を塗布した繊維の織物類 → 第56類/第59類(同上)
    • 電気絶縁用物品・がい子 → 8546/8547(同上)
    • 家具・照明器具・プレハブ建築物 → 第94類(同上)
    • 一脚・二脚・三脚(モノポッド/バイポッド/トライポッド)等 → 9620(同上)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 原材料(第25類)か、製品(第68類)か:加工度(切断・研磨・成形・結合材の有無等)で分岐します。
    2. 焼成品(陶磁:第69類)/ガラス(第70類)との境界:同じ「タイル/板」でも材料と製法で類が変わります。
    3. 石綿(アスベスト)含有の有無:HS分類だけでなく、日本では輸入・譲渡・使用の可否に直結します(0.1%超で原則禁止)。
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 石綿含有の建材・ガスケット・摩擦材(輸入できない/回収・廃棄・コンプラ事故に直結しやすい)
    • 炭素繊維関連(分類誤りに加え、輸出時は安全保障貿易管理の許可要否確認が必要になり得る)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1:品目は「項(4桁)の文言」と「関係する部注/類注」で決めるのが基本です。章や部の表題はあくまで参照用です。
    • GIR6:6桁は「同一4桁内の6桁同士の比較」で決めます。たとえば6802の中で、モザイク用(6802.10)か、単に切断した板か、彫刻等の加工品か、など。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(この類で特に重要):
    • 材質:天然石/人工石/石こう/セメント/アスファルト/雲母/炭素繊維など
    • 加工度:未成形(原材料寄り)→切断→研磨→彫刻→成形・鋳造→焼成(陶磁に飛ぶ)
    • 支持体の有無:研磨材が「紙・布・樹脂」等に付着しているか(6805)
    • 用途:舗装用・建築用・断熱/吸音用・摩擦材(ブレーキ等)など

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:原材料か製品か
    • 採石場産品など「加工が限定的」→ まず第25類を疑う
    • 切断・研磨・彫刻・成形など「製品化が進んでいる」→ 第68類候補
  • Step2:材料×製法で第68/69/70を切る
    • 土を成形して焼成したもの(多くの陶磁製品)→ 原則第69類(例外:陶磁製研磨用物品は6804にあり得る)
    • ガラスおよびその製品 → 第70類
    • 石・石こう・セメント・雲母・(一定の)炭素繊維等 → 第68類候補
  • Step3:第68類の中で「どの製品群か」を決める
    • 舗装用の石/縁石/敷石 → 6801
    • 建築用・装飾用に加工した石(モザイク含む)→ 6802(ただしスレート加工品は除外があり得る)
    • スレート製品 → 6803(※見出し確認)
    • 砥石・研磨ホイール等 → 6804
    • 研磨材を紙/布等に付着 → 6805
    • 鉱物系断熱材等 → 6806
    • アスファルト製品 → 6807(ただし紙/板紙ベースは4810/4811へ飛びやすい)
    • 石こう製品 → 6809
    • セメント/コンクリート/人造石製品 → 6810
    • 繊維補強セメント板等 → 6811
    • 石綿(アスベスト)繊維・混合物・製品 → 6812(ただし日本では輸入禁止が原則)
    • ブレーキ等の摩擦材(未装着) → 6813
    • 雲母加工品 → 6814
    • その他(残余) → 6815(最終手段)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 6801(舗装用石) vs 2517(成形していない小石等):形状が「舗装用石等として認められる程度に加工」されているか。
    • 6807(アスファルト製品) vs 4811(アスファルト塗布の紙/板紙):基材が紙/板紙なら第68類注で除外されやすい。
    • 6815(炭素繊維製品など) vs 9620(三脚等):第68類注で三脚等は9620へ。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第68類は4桁が多すぎないため、全列挙します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
6801舗装用の石、縁石、敷石(天然石、スレート除く)花こう岩の縁石、砂岩の敷石成形していない小石は2517へ飛びやすい。
6802加工した石碑用/建築用の石とその製品、天然石モザイク等、着色した粒・粉研磨大理石板、モザイクキューブ、石製置物、硯「最大面が7cm未満の正方形に収まる」モザイク等は6802.10。注2で対象石種が広い(けい石/フリント/ドロマイト/ステアタイト等)。
6803加工したスレートおよびスレート製品スレートの屋根材、スレート板6802の注2で「加工したスレート」は含まない扱いに注意。
6804砥石・研磨石・グラインディングホイール等(研磨用)回転研削用砥石、切断砥石「基材に研磨材付着」なら6805。製法(結合材)や用途で6桁分岐が出ることがある。
6805研磨材を紙/織物/その他の基材に付着した物品等研磨紙、研磨布、研磨ホイール(布ベース)「研磨布にほかならない」等の理屈で6805に落ちることがある(形状が特殊でも)。
6806スラグウール/ロックウール等の鉱物ウール、膨張鉱物材料、断熱・吸音用鉱物材料製品ロックウール断熱材、触媒コンバータ用マット組成・目的が断熱/吸音/吸収であることの説明資料が重要。
6807アスファルト等の製品アスファルトシート、ルーフィング材紙/板紙にアスファルト塗布→4810/4811に飛び得る(注1の除外)。
6808植物繊維等を鉱物性結合材で凝結した板/パネル等断熱パネル中間層に発泡プラスチックがあっても6808とされ得る実例あり。
6809石こう製品(石こうボード等)石こうボード、断熱・防音用石こうパネル「石こう基材」か「セメント/コンクリート基材」かで6810と迷う。
6810セメント/コンクリート/人造石の製品(補強の有無不問)コンクリートブロック、テラゾー製品建材でも「プレハブ建築物」等は94類へ(注1の除外)。
6811石綿セメント、セルロース繊維セメント等の製品繊維補強セメント板石綿を含む可能性があるため、コンプラ確認が必須(日本は0.1%超で原則禁止)。
6812石綿繊維・石綿混合物・その製品石綿板、石綿ガスケットHS上は存在するが、日本では輸入等が禁止される領域。HS2022で一部6桁再編あり。
6813摩擦材(ブレーキ/クラッチ等、未装着)ブレーキパッド材、摩擦ライニング石綿ベース/他鉱物/セルロースベース等。用途・装着済みかで迷う。
6814加工した雲母および雲母製品(支持体の有無不問)雲母シート、雲母板「紙/織物に雲母粉を塗布」だと別類(注1で除外)。
6815その他の鉱物性材料の製品(他に該当しないもの)マグネシアカーボンれんが、炭素繊維製品、(場合により)黒鉛製品残余項目。HS2022で炭素繊維等の細分化あり。誤って“何でも6815”にしない。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 寸法要件:例)6802.10は、モザイク用のタイル等で「最大面が一辺7cm未満の正方形に収まる」要件が出ます。
    • 加工度:「単に切り/のこぎりでひいた平面」か、研磨・彫刻等の加工品か(6802内の分岐で重要)。
    • 支持体:研磨材が「紙・布・樹脂」等に付着した物品は6805(砥石等の6804と混同しやすい)。
    • 組成割合(判断資料):断熱材などで配合比が重要になることがあります(例:鉱物材料製マットで主要成分比が提示される分類例あり)。
    • 石綿(アスベスト)の含有有無:6811/6812/6813の分岐と、日本国内法での可否に直結。
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 6802.10(モザイク等) vs 6802.2x/6802.9x(その他の加工石)
      • どこで分かれるか:モザイク用の小片か(寸法要件)、または石材の加工形態。
      • 判断に必要な情報:最大面寸法、用途(モザイク用か)、石種、加工内容(切断のみ/研磨/彫刻等)。
      • 典型的な誤り:「見た目がタイル」だけで、陶磁タイル(第69類)に寄せる/または寸法要件を見落とす。
    2. 6804(砥石等) vs 6805(研磨材付着の基材物品)
      • どこで分かれるか:研磨材が“固まり(砥石)”か、“紙・布などの基材に付着”か。
      • 判断に必要な情報:断面構造(基材があるか)、結合材、用途(機械取付けの砥石か、研磨布/研磨紙か)。
      • 典型的な誤り:研磨ホイールを「砥石」と誤認。分類例では「特殊な形状でも研磨布にほかならない」ため6805とする整理があります。
    3. 6807(アスファルト製品) vs 4811等(アスファルト塗布の紙/板紙)
      • どこで分かれるか:基材が紙/板紙かどうか。第68類注で「塗布紙・板紙」を明確に除外しています。
      • 判断に必要な情報:基材材質(紙/板紙か、ガラス繊維マット等か)、層構造(多層か)、製品の本体が何か。
      • 典型的な誤り:「屋根材=6807」と短絡し、基材が紙のボードを誤分類(分類例でも4811との参照関係が示されています)。
    4. 6812(石綿製品) vs 6813(摩擦材)
      • どこで分かれるか:用途がブレーキ/クラッチ等の摩擦材か(6813)、一般の石綿板・石綿混合物の製品か(6812)。
      • 判断に必要な情報:用途(摩擦材か)、取付け済みか否か、組成(石綿の有無・割合)、製品形状(板/シート/パッド等)。
      • 典型的な誤り:用途情報がインボイスに無く、6812/6813の整理が曖昧になる。
    5. 6815(残余) vs 9620(三脚等)
      • どこで分かれるか:製品が一脚・二脚・三脚等の「支持具」であれば第68類注で除外され9620へ。
      • 判断に必要な情報:製品の機能(支持具か)、構造(脚・クランプ等)、用途(カメラ/測量等)。
      • 典型的な誤り:材質が炭素繊維だからといって6815へ寄せてしまう。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第68類は、同じ部(周辺章)に陶磁製品(第69類)、**ガラス・ガラス製品(第70類)**があるため、材料・製法で章が分かれやすいです。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 「タイル」でも、天然石タイル(切断・研磨した石)は6802になり得ますが、焼成した陶磁タイルなら第69類が基本です。
    • 「断熱材」でも、発泡プラスチック主体なら第39類を疑い、鉱物ウールや膨張鉱物主体なら6806を疑う、といった“素材起点”で整理します。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 焼成品(陶磁)→ 第69類
    • ガラス製品 → 第70類

※部注そのものの逐語引用は避け、ここでは第68類解説に含まれる境界説明に基づく実務整理として記載しました。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1:この類に「入らないもの」を多数列挙し、紙・織物の塗布品、電気絶縁品、家具、玩具、三脚などを他章へ誘導しています。
    • 類注2:6802の「加工した石碑用/建築用の石」の対象を広く定義し、25.15/25.16の石材加工品に限らず、けい石・フリント・ドロマイト・ステアタイト等の“その他天然石”の加工品も含める一方、加工したスレートは含めない旨を明示しています。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 国内の分類例規では、たとえば6802.91の「板」について「建築用・装飾用等の目的で板状に切ったもの」などの定義が示されています。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 紙/板紙の塗布品(例:雲母粉・黒鉛・アスファルト塗布)→ 4810/4811
    • 繊維の塗布品(例:雲母粉/アスファルト塗布の織物)→ 第56類/第59類
    • がい子・電気絶縁用物品 → 8546/8547
    • 家具・照明・プレハブ建築物 → 第94類
    • 一脚・二脚・三脚等 → 9620

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:「6802に入る石」は思ったより広い(注2の効果)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 石種(大理石・花こう岩以外でも、天然石であれば対象になり得る)
      • 加工内容(切断だけか、研磨・彫刻・面取り等があるか)
      • スレートか否か(加工スレートは別扱いになり得る)
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書(石種、産地、寸法、表面仕上げ)
      • 写真(表面加工、エッジ形状)
      • カタログ(用途:建築用/装飾用/モザイク用)
    • 誤分類の典型:
      • 「一般的な建材ではない石だから第68類ではない」と誤解する(硯などが6802に整理される例がある)。
  • 影響ポイント2:“塗布した紙/織物”は第68類から外れる(注1の効果)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 基材が紙/板紙か、織物か、その他(ガラス繊維等)か
      • 何を塗布しているか(雲母粉・黒鉛・アスファルト等)
    • 現場で集める証憑:
      • 断面構造がわかる資料(層構造図、成分表)
      • SDS(ビチューメン等の有無)
    • 誤分類の典型:
      • アスファルト系の屋根材をすべて6807に寄せる(紙/板紙ベースは4811等が候補)。
  • 影響ポイント3:三脚等は材質に関係なく9620へ(注1の効果)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 製品の機能が「支持具」かどうか(脚の有無、伸縮機構等)
    • 現場で集める証憑:
      • 製品写真、取扱説明書、用途説明(カメラ/測量/照明等)
    • 誤分類の典型:
      • 炭素繊維製なので6815、としてしまう。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:原石・簡易加工石を第68類(6802等)として申告
    • なぜ起きる:インボイス品名が「stone slab」「stone block」だけで、加工度の記載が薄い。
    • 正しい考え方:第68類は「第25類よりもさらに加工した物品」等が中心。まず加工度を確認します。
    • 予防策:
      • 確認資料:加工工程表(切断/研磨/成形/彫刻)、写真
      • 社内質問例:「表面仕上げは?(研磨・面取りの有無)」「用途は舗装/建築/装飾か?」
  2. 間違い:天然石タイル(6802)を陶磁タイル(第69類)としてしまう
    • なぜ起きる:「tile」という商流用語に引っ張られる。
    • 正しい考え方:焼成した土製品は第69類、石材加工品は第68類、という素材・製法で切る。
    • 予防策:
      • 確認資料:材質証明、製造方法(焼成の有無)
      • 社内質問例:「原料は石?粘土?」「焼成工程はある?」
  3. 間違い:屋根材を一律に6807(アスファルト製品)とする
    • なぜ起きる:用途ベースで短絡しがち。
    • 正しい考え方:第68類注で「アスファルト等を塗布した紙/板紙」は別項に飛ぶ可能性がある。
    • 予防策:
      • 確認資料:基材(紙/板紙/ガラス繊維等)と層構造の説明
      • 社内質問例:「基材は何?紙ですか?」「金属箔のラミネートはある?」
  4. 間違い:砥石(6804)と研磨布/研磨紙(6805)を混同
    • なぜ起きる:どちらも「abrasive」「grinding」と表現される。
    • 正しい考え方:固形砥石は6804、基材に研磨材付着なら6805、という構造で切る。分類例でも“特殊形状でも研磨布”として6805とする整理がある。
    • 予防策:
      • 確認資料:断面写真、材料構成(基材の有無)
      • 社内質問例:「紙/布/不織布の基材はある?」「研磨粒は付着?混練?」
  5. 間違い:鉱物系断熱材(6806)を“発泡材”として第39類寄りに誤分類
    • なぜ起きる:断熱用途が同じで見た目も似る。
    • 正しい考え方:鉱物ウール・膨張鉱物材料等の「鉱物系断熱」は6806が候補。具体例として、自動車触媒用の鉱物材料マットが6806.90とされる例があります。
    • 予防策:
      • 確認資料:組成(鉱物/有機結合剤)、用途説明
      • 社内質問例:「主成分は何%?」「耐熱温度は?」
  6. 間違い:石こう製品(6809)とセメント/コンクリート製品(6810)を混同
    • なぜ起きる:「ボード」「パネル」など外観が近い。
    • 正しい考え方:基材が石こう(plaster)か、セメント/コンクリートかで整理。
    • 予防策:
      • 確認資料:成分表、製造仕様書
      • 社内質問例:「主結合材は石こう?セメント?」
  7. 間違い:繊維補強セメント板(6811)で、石綿含有の確認をせず取引を進める
    • なぜ起きる:商品名が「fiber cement」「slate board」等で誤認しやすい。
    • 正しい考え方:日本では石綿を0.1%超含む物の輸入等が禁止。疑いがあれば最優先で含有確認を行う。
    • 予防策:
      • 確認資料:メーカーの無石綿証明、分析結果(第三者試験)
      • 社内質問例:「石綿フリーの証明書はある?」「過去ロットはどうだった?」
  8. 間違い:“その他(6815)”を安易に使う
    • なぜ起きる:説明資料不足で、最終的に残余へ逃げがち。
    • 正しい考え方:GIR1でより具体的な見出し(6801〜6814)をまず検討し、6815は最後。
    • 予防策:
      • 確認資料:用途、構造、製造方法の説明(カタログ)
      • 社内質問例:「これは断熱材?摩擦材?雲母製品?研磨材?」

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。HSが1桁でもずれると、適用PSRが別物になり、原産性判断が崩れます(特に680x/681xは材料・工程でPSRが変わりやすいと想定)。
  • よくある落とし穴(この類で起きやすい):
    • “石材”のつもりで6802にしたが、実は焼成品で69類→PSRが根本から変わる
    • 研磨材(6804/6805)の取り違え→材料HSや工程要件の見方が変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 日本国内の輸出入申告は、HS条約改正に合わせHS2022ベースで行われています(国内法上の手続は最新HSで実施)。
  • 一方で、EPA/FTAの品目別規則(PSR)は協定ごとに採用HS版が異なるため、協定が採用していない版で検索・引用すると誤りが出る旨が税関・関係機関から注意喚起されています。
  • 例(代表的な一次情報に基づくもの):
    • RCEP:税関資料で「HS2012版HS番号に基づく」旨が示されています。
    • TPP11(CPTPP):税関資料で「HS2012年版」表記で整理されています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定のHS版と、通関で使うHS版がズレる場合、協定のPSRは協定HS版で読み、通関は最新HSで行い、両者の対応(相関)をとります。
    • 税関のPSR検索システムでも「協定ごとにHS版が異なるため一致確認が必要」と案内されています。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 最低限そろえるもの(一般論):
    • 材料表(BOM)、各材料の原産国、非原産材料のHS(協定HS版)、工程フロー、原価要素(RVC用)
    • 製品仕様書(材質・配合・用途)
  • 保存する書類の例(一般論):
    • 仕入書、仕様書、製造指図書、原産品申告明細書/原産地証明書関連の根拠資料

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022削除+範囲変更(統合に近い)6812.92 / 6812.93 / 6812.996812.92と6812.93が削除され、6812.99の範囲が拡大(旧6812.92/93の範囲を包含)旧コードでの資料・PSRが残ると齟齬。石綿系は特に“旧コード参照”が事故になりやすい。
HS2017→HS2022分割(細分化)6815.10 → 6815.11/6815.12/6815.13/6815.196815.10が細分化され、炭素繊維・炭素繊維織物・炭素繊維製品、非電気用黒鉛製品等を区分輸出管理(該非判定)や統計・PSRで6桁を厳密に扱う必要が増える。
HS2017→HS2022範囲変更(移管)6815.91 / 6815.996815.91の範囲が拡大(例:一部が6815.99から6815.91へ移る趣旨)耐火物(マグネシア系等)の分類で旧コード参照ミスに注意。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料(一次情報):
    • WCO(世界税関機構)の**HS2017→HS2022 相関表(Table I)**で、6812および6815の改正内容(削除・細分化・範囲拡大)が明示されています。
  • どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか:
    • 6812:Table Iにおいて、6812.92/6812.93の削除と6812.99の範囲拡大が記載されているため、HS2022では旧6812.92/93相当が6812.99側へ集約されたと判断しました。
    • 6815:Table Iにおいて、6815.10の細分化(6815.11〜.19の新設)と、6815.91の範囲拡大(6815.99からの移管を伴う)が記載されているため、炭素繊維・黒鉛・耐火物等の6桁運用がHS2022で変化したと判断しました。
  • なお、WCO Table Iは「改正が入った箇所」を列挙する性格の資料です。このため、同資料に明示がない第68類内の他項目については、少なくともHS2017→HS2022の“HSレベルの大改正”は相対的に少ない可能性が高い、という整理になります(※これはTable Iの性格に基づく推論です)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第68類に関連して、HS2007→2012→2017→2022の流れで「一次情報で確認できた」主要変更を整理します。

版の移行変更タイプ旧コード → 新コード(または扱い)変更の要旨備考(根拠)
HS2007→HS2012削除(統合)6811.83 → (削除、6811.89側に整理)6811.83が低取引量を理由に削除された旨の記載WCO HS2012↔HS2007 相関表 Table I
HS2012→HS2017範囲変更(他章へ移管)(一部)6815.10 ほか → 新設の9620へ移管96.20(モノ/バイ/トライポッド等)新設に伴い、複数章から移管が発生した旨の記載WCO HS2017↔HS2012 相関表 Table I
HS2017→HS2022削除+範囲変更6812.92/6812.93 → 6812.996812.92/93削除、6812.99の範囲拡大WCO HS2022↔HS2017 相関表 Table I
HS2017→HS2022分割+範囲変更6815.10 → 6815.11〜.19、6815.99 →(一部)6815.916815.10細分化、6815.91範囲拡大(移管)WCO HS2022↔HS2017 相関表 Table I

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):「石綿フリー」表示のガスケットに石綿混入
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):HS以前に、国内規制として石綿0.1%超含有品の輸入等が禁止。
    • 起きやすい状況:海外サプライヤーの証明が弱い、旧規格品の混入、部材(パッキン等)を見落とす
    • 典型的な影響:輸入差止め、返品・廃棄、検査強化、社内外説明コスト
    • 予防策:無石綿証明+第三者分析、部材レベル(ガスケット/パッキン/摩擦材)の含有確認
  • 事例名(短く):未成形の小石を「舗装用石(6801)」で申告
    • 誤りの内容:舗装用に加工された形状かどうか(成形していない小石等は別項へ、という整理を見落とす)。
    • 起きやすい状況:現物写真がない、採石場出荷状態のまま輸入
    • 典型的な影響:修正申告、分類再審査
    • 予防策:形状・加工状態の写真、用途説明(舗装用としての成形)を添付
  • 事例名(短く):アスファルト屋根材を6807としたが基材が紙/板紙
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第68類注で塗布紙・板紙が除外され、別項へ飛ぶ可能性。
    • 起きやすい状況:商品名が「roofing board」「roofing felt」だけ
    • 典型的な影響:分類補正、関税・統計の修正
    • 予防策:層構造図・基材材質の明示(紙/板紙か否か)
  • 事例名(短く):炭素繊維製三脚を6815で申告
    • 誤りの内容:第68類注で三脚等は9620へ除外される点の見落とし。
    • 起きやすい状況:材質(炭素繊維)に引っ張られて“鉱物性材料の製品”と誤認
    • 典型的な影響:修正申告、原産地規則・統計のずれ
    • 予防策:用途(支持具)を明確化し、注の除外先を確認

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)

検疫・衛生(SPS等)

  • 第68類は食品系ではないためSPSの中心領域ではありませんが、化学物質・粉体の取扱いではSDS等が実務上求められることがあります(一般論)。

石綿(アスベスト)等の化学物質・労働安全関連

  • 日本では、石綿および石綿を重量の0.1%を超えて含有する物について、製造・輸入・譲渡・提供・使用が禁止される旨が周知されています。
  • 第68類では、6811/6812/6813周辺(建材、板、ガスケット、摩擦材)で「疑義」が出やすいため、品目分類と同時にコンプライアンス確認が必須です。

安全保障貿易管理(該当する場合)

  • 炭素繊維等は、用途・仕様によっては安全保障貿易管理の対象になり得ます。METIの解説では、リスト規制は「輸出令別表第1」等に基づき、仕様(スペック)により許可要否を判断する必要がある旨が示されています。
  • 炭素繊維について、申請時に求められる資料の考え方等がQ&Aで示されています(用途・需要者確認の重要性など)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省:安全保障貿易管理(リスト規制/キャッチオール)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 該非判定資料(メーカー該非判定、仕様表)、最終用途・最終需要者情報、取引審査記録
    • METIが提供するマトリクス表等を参照し、項番・仕様該当性を確認

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 材質(石種/結合材/繊維/樹脂/石綿の有無)
    • 加工度(切断・研磨・彫刻・成形・焼成の有無)
    • 断面構造(基材の有無、層構造)
    • 用途(舗装/建築/断熱/摩擦材/支持具 等)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第68類注1の除外(紙/織物の塗布品、電気絶縁品、家具、三脚等)を横断チェック
    • 6802は注2で対象石種が広い点を再確認
    • 6815を使う場合は「他に該当しない」根拠メモを残す(GIR1の説明)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイスに「材質」「加工度」「用途」を入れる(tile/board/wheel等の曖昧語だけにしない)
    • 写真、カタログ、成分表、SDSの添付準備
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定ごとのHS版を確認(税関のPSR検索画面の注意喚起参照)
    • RCEPやTPP11はHS2012表記の資料がある(例示)
    • BOM、工程、RVC前提、保存資料を整備
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 石綿0.1%超含有の疑いがあれば輸入前に止める(証明・分析)
    • 炭素繊維等は輸出時に安全保障貿易管理(該非判定・用途需要者確認)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS改正・相関表等)
    • WCO Correlation Tables HS 2017–2022(Table I:6812/6815の改正を確認)[参照日:2026-02-25]
    • WCO Correlation Tables HS 2012–2017(Table I:96.20新設に伴う移管の確認)[参照日:2026-02-25]
    • WCO Correlation Tables HS 2007–2012(Table I:6811.83削除の確認)[参照日:2026-02-25]
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:関税率表解説 第68類(68r.pdf)[参照日:2026-02-25]
    • 税関:分類例規(第68類:68rd.pdf、68r.pdf)[参照日:2026-02-25]
    • 税関:関税率表の解釈に関する通則(GIR)[参照日:2026-02-25]
    • 税関:品目別原産地規則(PSR)検索画面の注意(協定ごとにHS版が異なる)[参照日:2026-02-25]
  • FTA/EPA本文・運用ガイダンス(HS版の扱い)
    • 税関:RCEP協定 概要資料(HS2012表記の明示)[参照日:2026-02-25]
    • 税関:TPP11(CPTPP)原産地規則資料(HS2012表記の明示)[参照日:2026-02-25]
    • 経済産業省:EPA/FTA手続におけるHS版の留意(国内はHS2022、協定は版が異なる)[参照日:2026-02-25]
  • 規制(石綿・安全保障貿易管理)
    • 厚生労働省:石綿含有品の禁止(0.1%超で製造・輸入等が禁止)[参照日:2026-02-25]
    • 経済産業省:安全保障貿易管理(リスト規制/輸出令別表第1、キャッチオール規制)[参照日:2026-02-25]
    • 経済産業省:炭素繊維に関するQ&A(申請時に求められる資料等)[参照日:2026-02-25]
    • 経済産業省:該非判定マトリクス表の案内(政省令・通達の一覧化)[参照日:2026-02-25]

査読結果と主な修正点(ご依頼への対応)

  • 重要:今回のメッセージには「下記のブログ記事のドラフト」本文が含まれていませんでした。
    そのため、**草稿に対する逐条の赤入れ(どの文をどう直したか)**は実施できていません。草稿本文をご提示いただければ、同じ出典に照らして差分を明確化して再提示できます。
  • 代替として、本稿で「出所から確認して反映した点(=誤りが出やすい論点の是正ポイント)」を明確化します:
    1. 第68類注1・注2の実務影響(除外先、6802対象石の拡張、三脚は9620等)を、税関の関税率表解説に基づいて整理しました。
    2. **6802.10の寸法要件(7cm未満)**など、数値条件は根拠資料に当たって明記しました。
    3. 6812/6815のHS2017→2022改正点は、WCO相関表(Table I)で確認し、表(7-1)に落としました。
    4. 石綿(アスベスト)0.1%超の禁止は、厚労省の注意喚起・資料に基づき、分類だけでなく規制観点(証明・分析の必要性)として本文に組み込みました。
    5. 炭素繊維等の輸出管理は、経産省の公式ページ(リスト規制・キャッチオール、炭素繊維Q&A)を根拠に、確認先・準備物を整理しました。
    6. 読みやすさのため、用語(類/項/号/部/注)を冒頭で統一し、判断フロー・チェックリスト・誤り→対策の型に揃えました(体裁の校正)。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。