センサー類のPSRリスクと実務チェック

HSコード見直しから始める、EPA・FTA原産地管理の失敗を減らす実務

センサーは高付加価値で、部材点数も多く、サプライチェーンも国際分業になりやすい製品です。その結果、EPA・FTAを使った特恵関税の活用では、品目別原産地規則(PSR)の確認と運用でつまずきやすい代表格でもあります。
PSRはProduct-Specific Rulesの略で、協定・HSコードごとに定められた原産地基準です。多くの現場では、最終製品が非原産材料を含むケースが一般的であり、その場合にPSRの達成可否が特恵適用の成否を左右します。

この記事では、センサー類に特有のPSRリスクを深掘りしつつ、現場でそのまま使える実務チェックを、ビジネスマン向けに噛み砕いて整理します。結論から言うと、センサー類のPSR対策は、HSコードの見直しと変更管理を起点に、証拠と業務フローを先に固めた企業が勝ちます。


PSRとは何か

なぜセンサー類でリスクが跳ね上がるのか

PSR(品目別原産地規則)は、協定の原産地規則章とセットで運用され、協定ごとに附属書(Annex)に整理されています。たとえばRCEPでは附属書三A、TPP11(CPTPP)では附属書三-DにPSRが置かれています。

またPSRは大きく次のような型に整理できます。
関税分類変更基準(材料と最終製品のHSコードが一定桁で変わること)
付加価値基準(域内原産割合などが一定以上)
加工工程基準(特定の工程を行うこと) (ジェトロ)

センサー類で難しいのは、次の条件が同時に起こりやすいからです。

  1. 最終製品のHSコードが揺れやすい
    センサーは、何を測るか、どこまでの機能を持つか、単体かモジュールか、で分類の争点が変わります。HSコードが変わると適用されるPSRも変わるため、分類のブレがそのままPSRリスクになります。
    さらに、税関での輸入申告は最新のHSコードを使う一方、協定のPSRが採用するHS年版は協定ごとに異なる点が、混乱の火種になります。 (税関ポータル)
  2. 部材の調達先が多国籍になりやすい
    センサーは、半導体、基板、受動部品、ハーネス、筐体、梱包材などが混在します。PSRが関税分類変更基準型の場合、非原産材料がどのHSに属するかを、部材レベルで押さえないと判定が崩れます。
  3. 設計変更や派生品が頻繁に起きる
    量産途中の部材変更、仕入先変更、型番派生、無線追加、ファームウェア変更などは、分類とPSRの双方に影響し得ます。
    実務では「同じ製品の延長」として扱われがちですが、原産地管理では別製品として再判定が必要になる場面が少なくありません。

センサー類で実際に起こるPSRリスク

現場がつまずく典型パターン

1. HSコードが誤っている、または協定のHS年版とズレている

PSRはHSコードを起点に読むため、分類が違えば、参照するPSR自体が間違います。
さらに実務で頻発するのが、協定のPSRが採用するHS年版と、社内マスタや相手国通関で運用されるHS年版がズレる問題です。協定で求められる年版(例:RCEPのPSRはHS2012ベースとされる)と、実際の通関・システムが採用する年版が一致しないと、書類のHS記載や照合でトラブルが起きます。 (税関ポータル)

実務の示唆
PSR確認は「協定が採用するHS年版で行う」、一方で「輸入申告は最新HSで行う」という二重運用を前提に、読み替えルールと証拠を整える必要があります。 (税関ポータル)

2. 部材のHS分類を置き去りにして、最終品のHSだけで判定してしまう

関税分類変更基準型では、非原産材料のHSが重要です。
しかし現場では、BOMの部材にHSが付いていない、あるいは「購買都合の分類」になっていて根拠が薄い、といった状態でPSR判定が進みがちです。これが監査や事後検証で弱点になります。

3. 軽微な工程の扱いを見落とす

RCEPなどでは、軽微な工程・加工に関する規定があり、単純な包装、選別、単純組立などは原産性を与えない方向で整理されています。センサーでも、最終工程が実質的にラベル貼付や梱包、動作検査だけに近い場合は注意が必要です。

4. 付属品・梱包材・予備部品の扱いがブレる

協定には、梱包材料・包装材料、付属品・予備部品・工具などの扱いが定義されています。センサー類は、ケーブル、取付治具、アダプタ、保護キャップ、校正証明書同梱などが起こりやすく、どこまでを同一の産品として扱うかで判定や記載が揺れます。

5. 直接積送や第三者インボイスの条件を実務が追いついていない

ハブ倉庫経由、委託販売、三国間取引などが増えるほど、直接積送や第三者インボイスの取り扱いを満たすための証拠管理が重要になります。RCEPの原産地手続にも、直接積送や第三者の仕入書に関する規定が並んでいます。


おすすめの実務アプローチ

センサー類のPSRを崩さない運用設計

ここからは、現場が回る形に落とし込むための実務手順です。ポイントは、判定そのものよりも、判定を再現できる形で残すことです。

ステップ1 最終製品のHSコードを固める

社内合意より、当局が尊重する根拠を優先する

センサー類は分類の争点が起こりやすいため、早い段階で「税関に根拠を寄せる」ことが効果的です。日本の税関には、輸入予定貨物の関税分類を文書で照会し、文書で回答を受けられる事前教示制度があります。文書回答は原則3年間尊重される旨が案内されています。

実務のすすめ
社内の分類会議で結論を急ぐより、争点がある品番は優先順位を付け、事前教示や当局照会を組み込む方が、結果的にPSRも安定します。

ステップ2 対象協定を決め、PSRを協定の年版HSで確認する

協定ごとにHS年版が違う前提で、検索ルールを固定する

税関のPSR検索画面でも、協定によって採用しているHSコードのバージョンが異なり、違う年版で検索すると結果が誤る可能性がある旨が注意喚起されています。 (税関ポータル)

加えて、RCEPのようにPSRが特定のHS年版で規定されるとされるケースもあります。実務では、社内の品目マスタが最新HS、協定PSRが旧年版HS、相手国通関がまた別年版、という状況が起こり得ます。 (ジェトロ)

実務のすすめ
協定別に次をセットで持ちます。
協定が採用するHS年版
読み替えに使う相関表の管理方法
社内マスタの最新版HSとの紐付けルール
これを最初に決めると、後工程の判定と証拠が整います。

ステップ3 PSRの型を見極め、BOMを判定に耐える粒度にする

PSRが関税分類変更基準型か、付加価値基準型か、加工工程基準型かで、必要なデータが変わります。PSRの基本類型や、HSコード変更の桁の考え方(類・項・号)も、公的機関の解説資料で整理されています。 (ジェトロ)

実務のすすめ
BOMのうち、原産性に効く部材から順に整備します。
高額部材
機能の中核部材
分類が章またぎになりやすい部材
サプライヤー変更が頻繁な部材
センサー類は、ここを外すと付加価値計算も関税分類変更基準の判定も、どちらも崩れます。

ステップ4 証明手続の種類に合わせて、社内の提出物を設計する

自己申告は、書類を減らす制度ではなく、説明責任を社内に引き寄せる制度

日EU・EPAは自己申告制度のみが採用され、輸出者・生産者・輸入者が作成できる枠組みが示されています。税関が追加的な説明資料を求め得ることも整理されています。

実務のすすめ
自己申告を採用する協定ほど、次の内製が重要です。
原産性説明パッケージ(判定ロジック、BOM、根拠資料の束)
型番単位の判定書
変更履歴と再判定の記録
営業や物流が急いでも、これがあると現場が止まりません。


センサー類向け

おすすめのPSR実務チェックリスト

以下は、センサー類で特に事故が起きやすい観点に絞ったチェックです。監査や事後検証を想定し、証拠として残る形を意識しています。

区分チェック項目失敗しやすいポイント実務の落としどころ
HSコード最終製品の分類根拠が、仕様書と整合しているか型番名やカタログ用途だけで分類している仕様書、構造図、機能説明、入出力、使用環境を分類根拠に紐付ける
HS年版協定のPSRが採用するHS年版で検索しているか最新HSでPSR検索してしまう協定別に検索年版を固定し、読み替え表を社内標準にする (税関ポータル)
PSR特定対象協定と対象品番のPSRを、証拠付きで特定できるか口頭共有のみで、後から追えないPSRの条文・附属書参照情報を判定書に貼り付ける
BOM非原産材料の範囲が定義されているかサプライヤー情報が曖昧、材料原産地が未確認サプライヤー宣誓や原産性情報の取得フローを購買に組み込む
分類変更基準材料HSの根拠があるか部材HSが社内都合で、根拠が弱い争点部材は優先順位を付け、当局照会や根拠資料を蓄積する
付加価値基準計算式、範囲、為替、原価データの出所が統一されているか部署ごとに原価の定義が違う経理と貿易管理で定義書を一枚にまとめる (ジェトロ)
軽微工程工程が軽微工程に該当しないか実態が包装や検査中心工程フロー図と作業標準で実態を説明できるようにする
付属品・梱包ケーブルや治具、梱包材の扱いを協定ルールに沿っているか同梱品の扱いが案件ごとにブレる同梱パターンを製品群ごとに標準化し、例外は申請制にする
物流条件直接積送の証拠を確保できるか倉庫経由で証拠が消えるB/Lや倉庫証明の入手ルールを物流委託先と契約に入れる
組織運用設計変更・仕入先変更時に再判定が走る仕組みがあるか変更が現場で止まり、判定が更新されない変更管理のトリガーをERPや承認フローに埋め込む
根拠確保当局の事前教示など、分類の安定化策を使っているか係争リスクがある品番を放置重要品番は事前教示を優先し、根拠を外部に寄せる

経営・管理職が押さえるべき要点

PSRは現場の努力だけでは安定しない

PSR運用は、貿易実務担当者の経験や頑張りだけに依存すると、組織が大きくなるほど破綻します。センサー類は特に、製品ライフサイクルの中で変更が多く、分類とPSRの再判定が頻繁に必要になるためです。

管理職として押さえたいのは次の3点です。

  1. HSコードをマスタではなく、経営リスクの入力値として扱う
    HSが動けば、PSR、関税コスト、原産地証明、顧客との価格交渉まで連鎖します。HSコード見直しを単なる事務作業にしないことが重要です。
  2. 判定結果より、判定プロセスと証拠の整備に投資する
    税関や取引先が求めるのは、説明可能性です。協定上、追加説明資料を求め得る枠組みも整理されています。
  3. 協定別の運用差を最初から前提にする
    RCEP、TPP11、日EU・EPAなどで、原産地の考え方や証明手続の設計が異なります。協定の違いを吸収する共通の社内フォーマットを持つと、現場の負担が下がります。

参考情報

読み間違いを減らすために、まず当たるべき一次情報

  • 税関:原産地規則とは (税関ポータル)
  • 税関:原産地基準・証明手続 (税関ポータル)
  • 税関:PSR検索画面(協定ごとのHS年版注意) (税関ポータル)
  • 税関:RCEP協定 原産地規則について(概要)
  • 税関:TPP11(CPTPP)原産地規則について(概要)
  • 税関:日EU・EPA 自己申告制度について(概要)
  • JETRO資料:PSRの3類型、HS変更桁の考え方 (ジェトロ)
  • 税関:関税分類の事前教示制度(パンフレット)
  • JETRO:HS年版の違いに起因するトラブル(RCEP運用上の留意) (ジェトロ)

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の取引、製品、HSコードの分類、PSR判定、特恵関税の適用可否を保証するものではありません。実務への適用にあたっては、最新の協定文、税関の公表資料、社内の事実関係に基づき、必要に応じて通関業者・専門家等へご相談ください。

EVバッテリーのPSRリスクとFTA影響

ビジネスを守る原産地ルールの読み解き方と実務の打ち手

はじめに

EVバッテリーは、原材料からセル、モジュール、パックまで多国間で分業されやすく、関税メリットを狙ってFTAを使うほど、原産地規則の難易度が上がります。ポイントは、輸送ルートではなく、どこで何がどの程度加工され、どの国の原産と認められるかです。日本の税関も、優遇関税を受けるには、協定で定められた原産地要件を満たし、必要書類などの手続きを完了することが前提だと整理しています。(税関ポータル)

本稿では、EVバッテリーのPSR(品目別原産地規則)を軸に、FTAの影響がどこで利益にも損失にも変わるのかを、ビジネス判断に落とし込んで解説します。

PSRとは何か

PSRは関税ゼロの条件が書かれた仕様書

PSRは、品目(HSコード)ごとに、非原産材料を使って製造した場合でも原産品と認められる条件をまとめたものです。RCEPの案内でも、PSRはHSコード単位で整理された基準であり、これを満たせば原産品として扱われると説明されています。(税関ポータル)

CTH、CTSH、RVCを短時間で理解する

PSRで頻出する代表的な条件は大きく2系統あります。

1つ目は関税分類変更(CTC)です。たとえばRCEPの定義では、CTHは4桁の見出しレベル、CTSHは6桁の小見出しレベルで、非原産材料のHS分類が完成品と十分に変わることを求めます。(外務省)

2つ目は域内原産割合(RVC)です。RCEPではRVC40はRVCが40%以上であることを意味すると定義されています。(外務省)

実務上は、同じ製品でも協定ごとに採用する基準や計算の前提が変わり、合否が変わるのが落とし穴です。

HSコードがずれるとPSRもずれる

PSRはHSコードを前提に書かれます。したがって、分類がずれると、満たすべきPSRそのものが変わり、原産地判定が崩れます。

リチウムイオン蓄電池は、国連統計局のHS分類でも、6桁小見出し850760として整理されています。(UNSD)

さらに、HS自体は改正サイクルがあり、世界税関機構はHSの改正が5年サイクルで進むことを明記しています。(世界 Customs Organization)
つまり、製品は変わっていないのに、コード体系が動くことで、協定側のPSRの読み替えや運用が必要になります。

主要FTAでEVバッテリーPSRはどう違うか

ここからが本題です。EVバッテリーのPSRは、協定によって要求水準とクリア方法が違います。違いを把握しておかないと、同じBOMでも、ある国向けは関税ゼロ、別の国向けは関税発生という事態が起きます。

RCEP

RCEPの品目別規則(HS2012ベース)では、リチウムイオン(8507.60)のPSRとして、CTSHまたはRVC40が示されています。(外務省)
この形は実務的に示唆が大きく、6桁レベルで非原産材料を振り替える設計にするか、価格要素で40%を超える設計にするか、どちらかで勝負できます。

注意点として、RCEPの品目別規則自体はHS2012に基づくことが注記されています。(外務省)
一方で日本の外務省は、2023年1月1日以降の原産地証明では、HS2022に移した品目別規則に基づくべき旨を案内しています。(外務省)
この読み替え対応を後回しにすると、現場が旧HSで証明を作り、通関で差し戻されるリスクが現実化します。

CPTPP(TPP11)

CPTPP(TPP11)の品目別規則では、電気蓄電池(8507.30から8507.80の範囲に該当)について、基本は他の見出しからの変更、もしくはRVCを一定以上にするという選択肢が示されています。具体的には、域内原産割合を積上げ方式で30%以上、または控除方式で40%以上などの条件が記載されています。(グローバル affairs カナダ)

RCEPが8507.60単独でCTSHまたはRVC40を掲げているのに対し、CPTPPは範囲指定と複数のRVC計算方法を含む設計で、設計自由度が上がる一方、計算の前提整備がない企業は運用が破綻しやすい構造です。

日EU・EPA

日EU・EPAの品目別規則(HS2017ベース)では、85.03から85.18の範囲に対し、CTHに加えて、非原産材料比率の上限やRVC基準の選択肢が提示されています。(外務省)
8507(電気蓄電池)はこの範囲に含まれるため、BOMの組み方次第で、関税分類変更を軸にするのか、価額基準を軸にするのか、戦い方が変わります。

ここで効いてくるのが、どの価額ベースで計算するかです。協定によって、FOBや工場出荷価格などの前提が変わり得るため、経理と貿易実務が同じ数字を見ていないと、社内で合格と思っていたものが輸入国で否認されることがあります。

EU・英国(TCA)

EUと英国のTCAでは、EVとバッテリーの原産地要件が段階的に厳しくなる設計でした。2023年末に、より厳しいルールの適用が2024年から始まるのを避け、現行ルールを2026年末まで延長することが合意されています。EU理事会は、延長により、要件を満たさない場合に発生し得た10%関税の適用を回避できると説明しています。(欧州理事会)
英国政府も、延長によりEV取引への10%関税を回避する趣旨を公表しています。(GOV.UK)

ただし、これは猶予であって免除ではありません。パートナーシップ・カウンシルの決定は、2027年1月1日から協定の所定の品目別原産地規則が適用されること、さらに2032年1月1日までは当該分野の品目別原産地規則の追加変更をできない枠組みを示しています。(GOV.UK)
つまり、2027年に向けた対応は先送りできず、しかも再延長を当てにした戦略が組みにくいのが現実です。

PSRリスクはどこで起きるか

EVバッテリーのPSRリスクは、単なる貿易実務の話ではなく、原価、投資回収、顧客契約に直結します。典型的な故障点は次のとおりです。

1. HS分類がサプライチェーンの実態に追いつかない

セル、モジュール、パック、BMS、熱管理部材など、構成と用途の説明が不足すると、社内と通関現場の分類がぶれます。分類がぶれればPSRの読みがぶれ、原産地判定が成立しません。
対策としては、品目定義書を技術部門と共通化し、輸出入国での事前教示の活用を検討することが有効です。

2. CTC要件は部材の6桁管理が必要になる

RCEPではCTSHが6桁変更を意味すると定義されています。(外務省)
実務では、主要材料だけでなく、非原産材料の6桁まで揃えないと判定できないケースが出ます。ここで部材マスターが4桁止まりだと、判定が止まります。

3. RVCは計算ロジックよりもデータが壊れやすい

RVCは計算式そのものより、前提データの整合が崩れやすい領域です。為替、移転価格、値引き、リベート、歩留まり、製造間接費、スクラップ控除などが、統一されていないと数値が揺れます。
さらにCPTPPのように複数の算定方法がある場合、どの方式で統一するかを、監査対応も見据えて決める必要があります。(グローバル affairs カナダ)

4. 最小限の加工に該当すると失格になる

RCEPの案内でも、PSRを満たしていても、行った作業が単純な作業に該当する場合は原産品と認められない旨が説明されています。(税関ポータル)
バッテリー領域では、ラベリングや梱包、単純な組付けだけで原産地を作ろうとすると、この論点に刺さりやすくなります。

5. 書類不備は技術や原価とは別軸で否認される

日本税関の整理でも、優遇を受けるには、原産品要件だけでなく必要書類の提出などの手続きが必要です。(税関ポータル)
現場では、調達先の証明の形式違い、サプライヤー宣誓書の更新漏れ、保存期間の未対応など、地味な作業が最終的な否認につながります。

FTA影響をどうビジネスに落とすか

PSRの影響は、関税率の差額だけではありません。意思決定者が押さえるべきは、次の3レイヤーです。

レイヤー1 関税コストの直接影響

EU・英国のように、要件未達で10%関税が現実に発生し得るケースでは、利益率が一気に溶けます。延長措置の背景説明としても、要件未達の場合に10%関税が課され得る点が明記されています。(欧州理事会)

レイヤー2 供給網の設計制約

RCEPの8507.60がCTSHかRVC40であることは、6桁で見た材料の出自と、価額の積み上げのどちらでも戦えることを意味します。(外務省)
一方で、EU・英国の2027年ルールが避けられない構造である以上、欧州域内のセルや正極材などへの投資判断が、製造拠点戦略そのものになります。(GOV.UK)

レイヤー3 顧客契約と価格改定の論点

顧客が関税ゼロ前提で調達単価を組んでいる場合、原産地否認は値上げ交渉ではなく、契約不履行の争点になり得ます。したがって、営業契約には、原産地の前提条件、否認時の関税負担の帰属、サプライヤー情報提供義務を、できるだけ具体に入れておく必要があります。

すぐ使える対応ロードマップ

最後に、担当者任せにしないための、管理職向けの進め方を提示します。

1. 取引ルート別に、対象FTAとPSRを棚卸しする

国別ではなく、出荷ルートと顧客別で整理します。理由は、同じ国向けでも、顧客のサプライチェーン要求やインコタームズで、原産地の計算前提が変わるためです。

2. HS分類とBOMを、原産地判定の粒度で揃える

RCEPのCTSHのように6桁が論点になる協定がある以上、部材マスターを6桁まで保守できる体制が必要です。(外務省)
さらに、HS改正は5年サイクルで起きるため、品目コードの読み替えとPSRの再チェックを、定例業務に組み込むのが現実的です。(世界 Customs Organization)

3. サプライヤー宣誓書を、交渉カードにする

サプライヤーに原産情報を出してもらえないと、PSRの計算ができません。購買契約に、データ提出、更新頻度、監査対応を組み込み、提出しない場合の不利益も明確化します。

4. 監査対応を前提に、計算方式を固定する

CPTPPのように複数方式がある協定では、どの方式を社内標準にするかを決め、経理と物流が同じ数字を参照する仕組みを作ります。(グローバル affairs カナダ)

5. 2027年を見据えたEU・英国シナリオを今期中に作る

EU・英国は2026年末までが猶予で、2027年から所定ルール適用、2032年まで追加変更が困難という枠組みです。(GOV.UK)
この条件下では、ギガファクトリー立地、正極材の域内調達、セル内製化など、供給網投資の回収ロジックとPSRを同じ資料で説明できることが、経営会議での説得力になります。

まとめ

EVバッテリーのPSRは、貿易部門の手続き問題ではなく、供給網と利益率を左右する設計条件です。RCEPやCPTPP、日EU・EPAでは、CTCとRVCの選択肢の出方が異なり、同じ製品でも協定ごとに勝ち筋が変わります。(外務省)
また、EU・英国は2027年に向けて、猶予はあっても先延ばしが難しい枠組みです。(欧州理事会)

優遇関税を取りに行く企業ほど、PSRをコスト削減の話で終わらせず、原産地を前提にBOMと調達と投資を再設計することが、競争力になります。

免責事項:本記事は、公開情報に基づく一般的な情報提供を目的としており、法務・税務・通関実務に関する助言や保証を行うものではありません。制度や運用は変更される可能性があり、また個別取引の事実関係により結論が異なる場合があります。実際の判断や申告にあたっては、最新の公的資料の確認および、通関業者・弁護士・税理士等の専門家へご相談ください。

HS2022 第30類:医療用品(Pharmaceutical products)

用語の対応を統一します(本資料内の呼び方):

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • ワクチン(人用・動物用)(3002.41/3002.42)
    • 抗体製剤(例:単クローン抗体)などの免疫産品(3002.13〜3002.15 等)
    • 医薬品(治療/予防目的):バルク(非小売/非投与量)=3003、投与量・小売包装=3004
    • 医薬品を含浸したガーゼ/絆創膏等(3005)
    • 救急箱・救急袋、滅菌縫合材、造影剤(患者投与)等の「注4限定品」(3006)
    • 細胞培養(cell cultures)・細胞治療製品(3002.51 等)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • サプリ・強化食品・健康飲料など(静脈注射用栄養剤を除く):第4部(食品)側へ(例:21類等)
    • ニコチン含有の禁煙補助(ガム・パッチ等)24.04
    • 診断用試薬(特に検体検査用の試薬・キット)38.22へ(HS2022で明確化)
    • 化粧品系の調製品(3303〜3307):効能をうたっていても原則そちら
    • 医薬品添加のせっけん等(3401):第34類へ
    • 治療/予防用に調製していない血液アルブミン:35.02へ
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「医薬(治療/予防)」か、食品/サプリ/化粧品/雑品か(類注1で強く除外)
    2. 診断“試薬・検査キット”の性格:患者に投与する造影剤/診断用試薬(3006.30)か、検体検査用の試薬(3822)か
    3. 3003(非投与量・非小売) vs 3004(投与量・小売包装)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 臨床試験向けキット(プラセボ/盲検):HS2022で3006.93が新設され、食品/雑品/医薬品側からの移動が起きやすい
    • 診断キット(例:感染症検査キット):HS2017の3002.11(マラリア診断キット等)から、HS2022で3822側へ整理されているため、旧運用のままだとズレやすい

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)
    • **GIR1(見出し+注)**が最重要です。第30類は、**類注1(除外)類注4(3006は列挙品だけ、かつ他項に入らない)**で“行き先”が決まりやすい類です。
    • **GIR6(号レベル)**では、3002(免疫産品)や3003/3004(有効成分別の細分、抗マラリア製剤の定義)で差が出ます。
    • GIR3(混合品・セット)が関係する場面もありますが、第30類は部注・類注側で優先ルールが置かれていることが多いです(例:部注2「投与量/小売包装なら3004等に固定」)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 用途:治療・予防(therapeutic/prophylactic)か、栄養・美容・衛生か
    • 剤形・包装:投与量(measured doses)か/小売包装か(3003/3004の分岐)
    • 成分:抗生物質、ホルモン、アルカロイド(エフェドリン等)、ビタミン、抗マラリア有効成分など
    • 診断の形態:患者に投与する診断用(3006.30)か、検体検査用(3822)
    • 規制区分(薬機法等):HSを直接決めるものではありませんが、用途・形態の裏付け資料になり得ます(添付文書、承認情報等)。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:除外(類注1)に当たらないか?
    • サプリ/飲食物(静脈注射用栄養剤を除く)→第4部へ
    • ニコチン禁煙補助(ガム/パッチ等)→24.04
    • 診断用試薬(38.22)→3822
    • 化粧品(3303〜3307)、医薬品添加せっけん(3401)等もここで弾く
  • Step2:3006(注4の列挙品)に該当するか?
    • 滅菌縫合材、造影剤(患者投与)、救急箱、避妊剤(条件あり)、医療用ゲル、薬剤廃棄物、瘻造設術用器具、臨床試験用プラセボ/盲検キット…など
      → 該当すれば原則3006で固定(他項ではなく)
  • Step3:3005(含浸ガーゼ等)に該当するか?
    • 医薬品を含浸/塗布、または医療目的で小売包装されたガーゼ・包帯・絆創膏等 → 3005
  • Step4:3002(血液・免疫産品・ワクチン・微生物培養・細胞培養)か?
    • 抗体・免疫グロブリン、ワクチン、毒素、微生物培養(酵母除く)、細胞培養/細胞治療等 → 3002
  • Step5:残りは概ね3001(臓器療法用等)または3003/3004(医薬品)
    • 投与量・小売包装なら3004、そうでなければ3003(ただし化学的に単一化合物等で章28/29側に落ちる余地もあるため、注と実態で確認)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第30類 vs 第38類(3822:診断用試薬・キット)
    • 第30類 vs 第21類(サプリ/食品)
    • 第30類 vs 第33類(化粧品)
    • 第30類 vs 第24類(ニコチン禁煙補助=24.04)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

第30類は4桁項が少ないため、全列挙します。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
3001臓器療法用の腺・器官(乾燥)、その抽出物、ヘパリン等乾燥臓器粉末、臓器抽出物、ヘパリン/塩、治療用に調製した動物性物質生鮮臓器等は別類になり得る。血液製剤・免疫血清等は3002へ。
3002人血、治療/予防/診断用に調製した動物血、抗血清・血液分画物・免疫産品、ワクチン、毒素、微生物培養、細胞培養免疫グロブリン、抗体製剤、ワクチン、毒素、培養微生物、細胞治療製品、細胞培養HS2022で**細胞培養(cell cultures)**が明示。診断“試薬”は3822除外に注意。
3003混合した医薬品(治療/予防)で、投与量・小売包装ではない原薬混合粉末(製造用)、バルク医薬製剤3004との境界=投与量/小売包装。類注3の「混合してない/混合した」の扱いが重要。
3004医薬品(治療/予防)で、投与量・小売包装(貼付剤含む)錠剤・カプセル・注射剤、経皮吸収パッチ、処方薬/OTC部注2により、投与量/小売包装で3004に該当するなら他類(28/29等)より優先されやすい。
3005医薬品含浸/塗布、または医療用小売包装のガーゼ等絆創膏、消毒ガーゼ、貼付用ドレッシング単なる綿/ガーゼ(医薬品なし・医療用小売包装でない)だと30類外の可能性。
3006類注4で列挙された「その他の医療用品」滅菌縫合材、造影剤、救急箱、避妊用調製品、医療用ゲル、薬剤廃棄物、瘻造設術用器具、臨床試験用プラセボ/盲検キット列挙品のみ、かつ「他の項に属しない」と明記。特に3006.93(HS2022新設)に注意。

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • 投与量(measured doses)・**小売包装(retail sale)**か:3003↔3004
    • 免疫産品の「混合してない/混合した」:3002.13↔3002.14(号注1)
    • 抗マラリア有効成分の該当:3003.60/3004.60(号注2で成分範囲が規定)
    • 診断用:患者投与か/検体検査か:3006.30↔3822
    • 臨床試験用プラセボ/盲検キット:3006.93(HS2022で明確化)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
  1. 3003(医薬品・非投与量/非小売) vs 3004(医薬品・投与量/小売)
    • どこで分かれるか:投与量(錠剤、アンプル、貼付剤等)または小売包装で販売される形か
    • 判断に必要な情報:
      • 包装形態(1回量/単回投与か、瓶/ブリスター等)
      • ラベル表示(用法用量、一般消費者向け表示の有無)
      • 流通形態(製造用バルクか、最終製品か)
    • 典型的な誤り:原薬混合品(製造用)を“医薬品だから”と3004にしてしまう
  2. 3002.13(免疫産品:混合してない、非小売/非投与量) vs 3002.14(混合した、非小売/非投与量) vs 3002.15(投与量/小売)
    • どこで分かれるか:号注1により、溶媒に溶かす・安定剤添加等で「混合した」に寄るかどうかが分岐点になります
    • 判断に必要な情報:
      • 製剤形態(凍結乾燥、溶液、懸濁)
      • 添加物(安定剤、防腐剤、緩衝剤など)
      • 小売包装・投与量の有無
    • 典型的な誤り:溶媒に溶かしただけの抗体溶液を「混合してない」と扱う/逆に微量添加を見落とす
  3. 3006.30(造影剤・患者投与の診断用試薬) vs 3822(診断用試薬・検査キット)
    • どこで分かれるか:患者に投与することを前提としているか(3006.30)/検体検査(in vitro)側か(3822)
    • 判断に必要な情報:
      • 使用方法(投与/注入 vs 検体に滴下)
      • 添付文書(投与経路、禁忌、用量の記載)
      • 梱包(投与量にしたものか)
    • 典型的な誤り:検体検査キット(例:迅速検査)を「医療用途だから30類」としてしまう
      ※HS2022では診断用試薬・キットの3822側への整理が明確です
  4. 3006.93(プラセボ/盲検臨床試験キット) vs 3004.90(一般の医薬品)/ 2106・3824等
    • どこで分かれるか:「認可(recognized)された臨床試験」用で、投与量にしたプラセボ/盲検(または二重盲検)キットに該当するか
    • 判断に必要な情報:
      • 臨床試験プロトコル(試験名、盲検設計、使用目的)
      • キット構成(プラセボ/実薬の有無、表示)
      • 投与量包装の有無
    • 典型的な誤り:プラセボを「食品」や「雑品」として扱う/実薬が入るので3004に固定してしまう
  5. 3004.60(抗マラリア:サブヘディング注2該当) vs 3004.90(その他)
    • どこで分かれるか:**注2に列挙された抗マラリア有効成分(例:アルテミシニン系、クロロキン等)**を含むかどうか
    • 判断に必要な情報:
      • 有効成分(INN名まで)と含有有無
      • 配合剤か単剤か(配合でも該当し得る)
    • 典型的な誤り:「抗マラリア用途」だけで判断し、成分要件を確認しない

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注2(Section VI Note 2):投与量にしてある/小売包装であることにより、3004・3005・3006等に該当する場合、他の類(28/29等)よりも当該見出しで分類する趣旨の“固定”ルールです。
    • 部注3(Section VI Note 3):複数成分をセットにして「混ぜて使う」形で提示される場合、一定条件を満たすと出来上がり製品の見出しで分類します(医療用調製品・キットで論点になり得ます)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例)同じ化学物質でも、医薬品として投与量包装された形だと3004に寄りやすい(ただし第30類注の除外や3006限定など“上位ルール”がある点に注意)。
    • 例)「2液混合で使う」医療用調製品は、セットの提示方法次第で分類が変わる可能性があるため、**梱包形態(同梱・補完性・再梱包不要)**の確認が重要です。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 投与量/小売包装の条件を満たすことで、もともと28/29側(化学品)で考えていたものが、30.04等へ“移動”する検討が必要になる。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約(第30類注の骨格):
    • 注1:除外(食品・禁煙ニコチン品・化粧品・3822診断試薬など)
    • 注2:3002の「免疫産品」定義(単クローン抗体など免疫過程制御に直接関与するペプチド/タンパク質)
    • 注3:3003/3004/注4(d)における“混合してない/混合した”の扱い(28/29の物品も「混合してない」に含める等)
    • 注4:3006は列挙品のみで、他の見出しに入らない(exclusive list)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「免疫産品」:抗体関連物質、インターロイキン、インターフェロン等(29.37を除外)という整理
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 禁煙補助(ニコチン含有の錠剤/ガム/パッチ等)→24.04
    • 診断用試薬→38.22
    • 化粧品調製品→33.03〜33.07

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:「診断」なのに第30類に入らない(3822へ)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 患者投与(造影剤等)か、検体検査(in vitro)か
      • 製品の使用手順書・添付文書の記載(投与経路の有無)
    • 現場で集める証憑:
      • 添付文書、IFU、製品仕様書、梱包写真(キット内容)
    • 誤分類の典型:
      • 「医療用途だから30類」として、検査キットを3002/3006にしてしまう
      • HS2022で注1(ij)新設により、診断試薬・キット(マラリア診断キット含む)が3822へ移管された点が背景です
  • 影響ポイント2:3006(注4列挙品)は“リスト品だけ・他項に入らない”
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 注4(a)〜(l)のどれに該当するか(例:救急箱、医療用ゲル、薬剤廃棄物、瘻造設術用器具、臨床試験キット等)
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書、用途説明、梱包/ラベル、滅菌証明、臨床試験関連文書(3006.93)
    • 誤分類の典型:
      • 「キット」だからGIR3で雑品扱い/「医薬品が入っている」から3004固定で考える
      • 実際は注4(e)でプラセボ/盲検臨床試験キットが明確に3006対象になっています
  • 影響ポイント3:“混合してない/混合した”の扱い(注3・号注)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 28/29の化学品は「混合してない」に含める等、注3の“みなし”ルール
      • 免疫産品は号注1で「溶媒に溶かした」「安定剤を加えた」等を混合として扱う
    • 現場で集める証憑:
      • 成分表、SDS、製剤処方、安定剤・賦形剤の有無、製造工程概要
    • 誤分類の典型:
      • 「溶液=単一成分」と誤解して“混合してない”にしてしまう

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:サプリ(錠剤・カプセル)を3004(医薬品)にする
    • なぜ起きる:剤形が医薬品と似ており、宣伝文言も紛らわしい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):食品・飲料(食餌補助剤等)は第30類から除外(注1(a))
    • 予防策:
      • 確認資料:販売形態、表示(栄養補助/疾病治療の標榜)、成分・用量
      • 社内質問例:「日本/輸出先で医薬品承認の対象か?」「添付文書(医薬品様式)があるか?」
  2. 間違い:ニコチンガム/ニコチンパッチ(禁煙補助)を3004にする
    • なぜ起きる:「治療目的」「パッチ=3004に書いてある」などの早合点
    • 正しい考え方:注1(b)で24.04へ除外
    • 予防策:
      • 確認資料:ニコチン含有有無、用途(禁煙補助)、製品説明
  3. 間違い:検体検査キット(迅速検査など)を3002/3006にする
    • なぜ起きる:「診断=医療用品」だから30類と思い込む
    • 正しい考え方:注1(ij)で3822診断試薬を除外、HS2022で移管が明確化
    • 予防策:
      • 確認資料:IFU(検体検査か患者投与か)、キット構成、用途
      • 社内質問例:「患者に投与する試薬ですか?それとも検体に反応させますか?」
  4. 間違い:血液型判定用試薬を3006.20とみなす(HS2017の名残)
    • なぜ起きる:旧HSのサブヘディングを参照している
    • 正しい考え方:HS2022で血液型判定用試薬は3822.13側へ移管(3006.20は移管対象)
    • 予防策:
      • 確認資料:適用HS版(通関は最新HS)、移行表(相関表)確認
  5. 間違い:3003(バルク)と3004(投与量/小売)を取り違える
    • なぜ起きる:インボイス品名が「medicament」等で粗い、包装情報が不足
    • 正しい考え方:3004は投与量・小売包装(貼付剤含む)であることが核心
    • 予防策:
      • 確認資料:包装仕様(ブリスター、アンプル単位)、最終用途(患者向けか製造向けか)
  6. 間違い:造影剤を“診断用試薬=3822”に寄せてしまう
    • なぜ起きる:「診断」という言葉に引っ張られる
    • 正しい考え方:患者に投与する造影剤・診断用試薬は注4(d)により3006.30側の枠で考える
    • 予防策:
      • 確認資料:投与経路、投与量包装、薬事資料(添付文書)
  7. 間違い:臨床試験用のプラセボ/盲検キットを2106(食品)や3824(化学品)にする
    • なぜ起きる:見た目が食品/錠剤・ゼラチンカプセル等で、医薬品として販売しないため
    • 正しい考え方:HS2022で注4(e)が置かれ、3006.93として明確化
    • 予防策:
      • 確認資料:臨床試験での使用証跡(プロトコル、治験届関連、キット仕様)
  8. 間違い:細胞培養品を「研究用だから30類外」と決め打ちする
    • なぜ起きる:医薬品のイメージに合わず、化学品/試薬扱いしがち
    • 正しい考え方:3002見出しに“cell cultures”が含まれる(HS2022で明確)
    • 予防策:
      • 確認資料:製品説明(cell cultureであること)、用途(治療/研究)、輸送形態(凍結・培地等)

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。
    例)最終製品が3004(医薬品)か3822(診断試薬)かで、PSR(CTC条件やRVC条件)が変わり、原産性判断が崩れる可能性があります(特にHS2022での診断試薬の移管があるため注意)。
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品HSと、BOM上の材料HSを混同する
    • 3006(キット類)を“セットだから”と別分類にしてしまい、PSRがズレる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 各EPA等は採用しているHS版が異なるため、協定で採用するHS版でPSRを引く必要があります。
  • HS2022の番号で検索すると誤ることがあるため、税関のPSR検索画面でも注意喚起されています。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 「通関は最新HS」「PSR確認は協定採用HS」になり得るため、相関表で旧新コードの対応を必ず作る(特に3006.93新設や3002→3822移管のような構造変更時)。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(一般論):
    • 材料表(BOM)、原価、工程フロー、原産国
    • 非原産材料のHS(協定採用HS版で)
    • RVC計算の前提(対象費目、計算方式)
  • 証明書類・保存要件(一般論):
    • 製造記録、購買記録、原材料の原産証明、工程外注情報 等

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022移管(30類→38類)+注新設3002.11 等 → 3822.11/3822.12/3822.19 等診断用試薬・キット(マラリア診断キット含む)を3822へ整理。第30類注1(ij)で3822を除外。検査キットの“30類固定”が崩れる。過去コード運用の見直しが必要。
HS2017→HS2022移管(30類→38類)+注置換3006.20 → 3822.13血液型判定用試薬が3822.13へ。注4(e)の置換に伴う移管。血液型判定試薬の分類が変わる。旧3006.20参照は要注意。
HS2017→HS2022削除・置換(サブヘディング再編)3002.20/3002.30 → 3002.41/3002.42/3002.49ワクチン等の細分を再構成(人用/動物用等の整理)。品目番号が変わり、社内マスタ・PSR対応が必要。
HS2017→HS2022新設(明確化)3002.51/3002.59cell cultures(細胞培養)を明確化し、細胞治療製品等を分類しやすく。細胞系製品の分類根拠が明確に。輸出管理・規制確認も強化しやすい。
HS2017→HS2022新設3006.93認可臨床試験用のプラセボ/盲検(または二重盲検)キットを新設。治験関連の輸出入で、食品/雑品/医薬品扱いの揺れを減らす。
HS2017→HS2022文言修正・参照変更注1(b)ニコチン禁煙補助の除外先が24.04に明確化。禁煙補助製品の分類先が明確。
HS2017→HS2022削除3002.19空のサブヘディングとして削除。実務影響は限定的(マスタ整合は必要)。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料と読み取り(本稿の判断根拠):
    • **WCO HS2022 第30類本文(注1・注4・3002の見出しにcell cultures追加、3006.93等)**に基づき、HS2022の範囲・定義・列挙品を確認しました。
    • **WCO 相関表(HS2017→HS2022, Table I)**の「Remarks」により、
      • 診断用試薬・キット(マラリア診断キットを含む)が3002側から3822へ移管
      • 血液型判定用試薬が3006.20から3822.13へ移管
      • ワクチン(3002.20/3002.30)の再編(3002.41等)
      • cell cultures(3002.51等)の新設
      • 3006.93の新設
        という“何が変わったか”を裏取りしました。
    • 日本実務では、**税関の関税率表解説(第30類)**が日本語で注・用語を整理しているため、実務的な読み替え・証憑収集の観点は同資料に従って整理しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要な追加・削除・再編(“実務で効くもの”中心)を、HS2007→2012→2017→2022の流れで整理します(相関表ベース)。

版の変化主な追加/削除/再編旧コード → 新コード(例)変更の要旨実務メモ
HS2007→HS2012範囲拡大(免疫産品)(概念的に)3002.10の範囲拡大免疫学的過程に直接関与する免疫産品を3002側でカバーする方向で範囲が拡大。免疫産品の取り扱いが段階的に整備されてきた流れ。
HS2012→HS2017新設/細分(診断・免疫・抗マラリア等)3002.10 → 3002.11(マラリア診断キット)+3002.12〜3002.15(免疫産品) 等免疫産品の細分、マラリア診断キットの切り出し等。HS2022でこの“診断キット”は3822側へ移るので、旧知識の固定化に注意。
HS2012→HS2017新設(抗マラリア医薬)(一部)3003.90等 → 3003.60、3004.60抗マラリア医薬を独立サブヘディング化し、注で成分範囲を明確化。成分(INN)確認が必須。
HS2017→HS202230類→38類へ移管(診断用)3002.11等 → 3822.11/12/19等3822側に診断試薬・キットを整理。30類注1(ij)新設。検査キットの分類ミスが多発しやすい改正。
HS2017→HS202230類→38類へ移管(血液型判定試薬)3006.20 → 3822.13注4(e)の置換+3822.13新設で移管。3006.20を使い続けない。
HS2017→HS2022新設(治験キット)該当なし → 3006.93認可臨床試験用プラセボ/盲検キットを明確化。治験関連の輸出入で“分類の根拠資料”が重要に。
HS2017→HS2022新設(細胞培養の明確化)(従来3002.90等で解釈)→ 3002.51/59cell culturesの分類を明確化。再生医療系・研究用細胞の分類検討がしやすい。

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):検体検査キットを30類で申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):第30類注1(ij)(3822診断試薬の除外)
    • 起きやすい状況:インボイス品名が「diagnostic kit」だけ、用途説明不足
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、検査強化、通関遅延
    • 予防策:IFU・用途説明(患者投与か検体検査か)を添付
  • 事例名:禁煙ニコチンパッチを医薬品(3004)扱い
    • 誤りの内容:第30類注1(b)(24.04へ)
    • 起きやすい状況:「経皮投与=3004」と短絡
    • 影響:税番修正、許認可/規制確認のやり直し
    • 予防策:成分(ニコチン)と用途(禁煙補助)を明記し、24.04検討
  • 事例名:治験用プラセボキットを食品扱い
    • 誤りの内容:第30類注4(e)の見落とし(3006.93)
    • 起きやすい状況:外観が“錠剤/カプセル”で食品に似る、治験資料が社内にない
    • 影響:税番修正、出荷遅延(治験スケジュール影響)
    • 予防策:臨床試験プロトコル、キット仕様(盲検設計)、投与量包装の証憑整備
  • 事例名:血液型判定試薬を旧3006.20で申告
    • 誤りの内容:HS2022で3822.13へ移管(改正追随漏れ)
    • 起きやすい状況:社内マスタがHS2017のまま
    • 影響:税番修正、原産地判定や許認可確認の再作業
    • 予防策:HS版管理(改正時の相関表で一括棚卸)

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

ここでは日本前提で「第30類に多い論点」を一般論で整理します(個別品目で要確認)。

  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 人血・動物血、ワクチン、微生物培養、細胞培養などは、製品の性質により別途の衛生・バイオ関連規制が関係し得ます(輸入前に所管官庁・税関へ確認)。
    • 少なくとも、医薬品等として業で輸入する場合は、製造販売業/製造業の許可や品目ごとの承認等が必要となる旨が行政側で案内されています。
  • その他の許認可・届出(薬機法系)
    • 業として医薬品等を輸入する場合:輸入通関の都度、業許可証や製造販売承認書等の提示が必要とされる旨のQ&A・案内があります。
    • 個人輸入:輸入確認証(旧「薬監証明」)等の枠組みがあり、一定範囲を超える場合等は手続が必要とされています。
  • 麻薬・向精神薬等(該当する場合)
    • 成分によっては、麻薬及び向精神薬取締法等の規制対象となり、輸入・輸出手続が大きく変わります。
    • 実務上は「有効成分(INN/一般名)」「含有量」「用途」「製剤形態」を起点に該当性を確認します。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 第30類(特に3002の毒素・微生物培養等)は、**輸出管理(外為法の枠組み)**の確認が必要になるケースがあります(該非判定、用途・需要者確認など)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 税関(品目分類・事前教示、輸入手続)
    • 厚生労働省(医薬品等の輸入手続、個人輸入、各種法令)
    • 必要に応じて経済産業省(安全保障貿易管理)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 製品仕様書、成分表(API/添加剤)、SDS、添付文書/IFU、包装仕様(投与量・小売)、用途説明
    • 治験品なら:プロトコル、盲検設計、キット構成表(3006.93判断用)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 成分(INN名まで)・含有量、剤形、用途(治療/予防/診断/栄養)
    • 包装:投与量か、小売包装か
    • 診断品:患者投与か、検体検査か
    • キット:セット構成、同梱状況、混合して使うか
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第30類注1の除外(食品、ニコチン禁煙補助、3822診断試薬、化粧品等)を再確認
    • 3006は注4列挙品だけか確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「dosage form」「for clinical trial」「for administration to patient」など誤解が出ない語を入れる
    • 補足資料:ラベル写真、添付文書、仕様書、MSDS/SDS
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定採用HS版でPSRを確認(HS版ズレ注意)
    • 相関表で旧新コードの対応表を社内保管(改正時に更新)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 業として輸入:許可・承認書類の要否を確認
    • 個人輸入が関係する販売形態なら輸入確認証等の案内も確認
    • 規制成分(麻薬・向精神薬等)の該当性確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Nomenclature, Chapter 30(PDF) (参照日:2026-02-19)
    • HS2022 Nomenclature, Section VI Notes(PDF) (参照日:2026-02-19)
    • HS Correlation Table HS2017→HS2022 (Table I)(PDF) (参照日:2026-02-19)
    • HS Correlation Table HS2012→HS2007 (Table I)(PDF) (参照日:2026-02-19)
    • HS Correlation Table HS2017→HS2012 (Table I)(PDF/日本税関掲載) (参照日:2026-02-19)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説 第30類(医療用品)」PDF (参照日:2026-02-19)
    • 税関 PSR検索画面(HS版違いの注意) (参照日:2026-02-19)
    • 税関「協定・法令等(HS版がEPAで異なる旨)」 (参照日:2026-02-19)
    • 税関「医薬品・化粧品等の個人輸入」Q&A (参照日:2026-02-19)
  • 省庁(規制・手続)
    • 地方厚生局「医薬品等の輸入手続(業として輸入)」 (参照日:2026-02-19)
    • 地方厚生局「医薬品等輸入手続Q&A」(PDF) (参照日:2026-02-19)
    • 厚労省「医薬品等の個人輸入について(輸入確認証等)」 (参照日:2026-02-19)
    • e-Gov法令「麻薬及び向精神薬取締法」 (参照日:2026-02-19)
    • 経産省(安全保障貿易管理の制度)資料 (参照日:2026-02-19)

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 製品の仕様書(用途・剤形・成分・含有量)
    • 写真(外観、ラベル、包装、キット構成)
    • SDS/成分表、添付文書/IFU、臨床試験プロトコル(治験品の場合)
    • 「なぜそのHS候補だと思うか」のメモ(注の該当箇所)
  • 税関の公式導線(日本)
    • 事前教示制度(品目分類):Eメールでも照会可能
    • 事前教示回答(品目分類)の検索:公開可能な回答を検索できる
    • 参考になる「輸入貨物の品目分類事例」も別途公開

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第29類:有機化学品(Organic chemicals)

用語は次のとおり統一します。

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • メタノール(有機溶剤・原料)
    • アセトン(溶剤)
    • 酢酸(基礎化学品)
    • アニリン(染料・ゴム薬品等の中間体)
    • カフェイン(複素環化合物)
    • ビタミン類・ホルモン・アルカロイド・抗生物質(例:ビタミンC、ホルモン原体、各種アルカロイド、ペニシリン系等)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • エチルアルコール(エタノール):第22類(2207/2208)
    • メタン・プロパン:第27類(2711)
    • 尿素:第31類(3102/3105)
    • 有機染料・蛍光増白剤・ルミノフォア等:第32類(3204等)
    • 酵素:第35類(3507)
    • 免疫学的産品:第30類(3002)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「化学的に単一の化合物(単離化合物)」か?(混合物・製剤だと第29類から外れやすい)
    2. 溶媒に溶かしている理由が“安全・輸送上の通常の方法”か?(用途調整=製剤化だと他類へ)
    3. 複数の官能基がある場合、どの項が最後になるか(類注3)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 国際条約・規制対象物質(例:PFOS等、化学兵器禁止条約関連物質、麻薬条約関連物質等)を「その他」で雑に申告すると、規制チェック漏れ差し止め/追加手続のリスクが上がります。HS2022改正でも、こうした監視・規制目的の細分が増えています。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し+部注/類注で決める)が中心です。第29類は「何の化合物か(官能基・骨格)」を注で縛っているため、商品名よりも化学構造が決定打になります。
    • GIR6(6桁の号まで落とす)では、サブヘディングノート(号注)も効きます。特に「類注3(最後の項)」が号には適用されない点は事故要因です。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(第29類で必須になりやすい)
    • CAS番号/IUPAC名/構造式(官能基)
    • 純度と不純物の扱い(“単一化合物+不純物”は第29類に入り得る)
    • 異性体の混合か(ただし「非環式炭化水素の異性体混合」は例外で第27類へ行き得る)
    • 溶液(溶媒種類、濃度、溶解理由)
    • 添加剤(安定剤、固結防止、識別用着色、催吐剤等)の有無と目的

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:その貨物は「有機化学品」か?
    • 有機系でも、注で**別類に飛ぶ例(エタノール、染料、酵素、免疫学的産品等)**があるので、まず除外規定を確認します。
  • Step2:「第29類が扱う形」か?(単一化合物/異性体混合/溶液/必要最小の添加)
    • 単一化合物(不純物可)、同一化合物の異性体混合、水溶液、必要な溶媒溶液、必要な安定剤・識別添加は第29類に残り得ます。
    • ただし「特定用途に適するようにした」=実質製剤化なら、第38類などへズレやすいです。
  • Step3:官能基・骨格で項(4桁)を決める
    • 2901〜2935は主に官能基・構造で分類、2936〜2941は特定グループ(ビタミン等)、2942がその他という整理で考えると迷いが減ります。
    • 複数の項に入れそうなら、原則として**「数字上最後の項」**へ(類注3)。
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第27類 vs 第29類:非環式炭化水素の異性体混合(立体異性体以外)は第27類へ行き得ます。
    • 第29類 vs 第32類:染料・蛍光増白剤は第32類へ(第29類から除外)。
    • 第29類 vs 第30類:医薬用途で小売用・定量用にしたものは第30類へ(Section VIのルール)。
    • 第29類 vs 第38類:混合・調製して用途(洗浄、塗料、消火、インク除去等)に最適化すると第38類へ寄りやすい。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

ここでは実務で頻出・誤分類が起きやすい項を中心に挙げ、残りは「その他」にまとめます(HS6桁の最終決定は条文・解説で要確認)。

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
2901非環式炭化水素エチレン、プロピレン、ブタジエン「異性体混合」の扱いに注意(第27類へ行く例外あり)
2902環式炭化水素ベンゼン、トルエン、キシレン単一異性体か、混合異性体かで号が分かれます(例:混合キシレン)
2903炭化水素のハロゲン化誘導体ジクロロメタン、クロロホルムHS2022で一部細分が再編(規制物質の監視目的)
2904炭化水素のスルホン化/ニトロ化/ニトロソ化誘導体ニトロベンゼン等PFOS等の規制物質は専用号が設定され得る(HS2017以降)
2905非環式アルコールメタノール、イソプロパノールエタノールは第22類(除外規定)
2907フェノール類フェノール、クレゾール染料(第32類)との混同に注意
2909エーテル類・有機過酸化物等ジエチルエーテル、各種有機過酸化物有機過酸化物の扱いは注・改正で要注意(29.09/29.11境界)
2912アルデヒド類等ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド「溶液」でも第29類に残る条件あり(用途調整は別)
2914ケトン類・キノン類アセトン、MEK等反応性・用途でなく官能基で決める
2915飽和非環式一価カルボン酸等(酸塩化物等含む)酢酸、無水酢酸「酸」「酸塩化物」「無水物」等の誘導体でもこの系統に入る(注の取扱い)
2916不飽和非環式一価カルボン酸等アクリル酸、メタクリル酸HS版移行で一部サブヘディング整理がある(低取引量削除等の例)
2917多価カルボン酸等フタル酸、シュウ酸等多官能基で他項と競合する場合は類注3に注意
2918付加的酸素官能基を有するカルボン酸等乳酸、クエン酸等「酸素官能基」の定義に注意(注4)
2921非環式アミン類エチルアミン、アニリン等塩の扱い、混合/製剤化の有無を確認
2922酸素官能基を有するアミノ化合物エタノールアミン類、アミノ酸系複数官能基で項が競合しやすい→類注3
2924アミド類DMF、尿素系の一部(※尿素自体は除外)尿素は第31類へ(除外)
2926ニトリル類アクリロニトリル等危険物・規制対象になりやすいのでSDS確認推奨
2930有機硫黄化合物チオール類、スルフィド類HS2022で特定物質の細分新設あり
2933窒素複素環化合物ピリジン、カフェイン等HS2022でフェンタニル等の監視目的細分あり
2934核酸・その他複素環化合物核酸塩、複素環中間体HS2022で「フェンタニル類」細分新設あり
2936ビタミン等ビタミンC、ビタミンE等「化学的に単一であるかないかを問わない」扱いがあり得る(注1(c))
2937ホルモン各種ホルモン、誘導体用語定義(ホルモンの範囲)に注あり
2939アルカロイドエフェドリン系等HS2022でエフェドラ由来アルカロイド誘導体の扱い調整あり
2941抗生物質ペニシリン、ストレプトマイシン等医薬品形態(定量・小売用)だと第30類へ移る可能性
2942その他の有機化合物他に当てはまらない単一化合物「その他」だからこそCAS/構造で根拠固め必須
その他2906, 2908, 2910, 2911, 2913, 2919, 2920, 2923, 2925, 2927〜2929, 2931, 2932, 2935, 2938, 2940 など例:エポキシ(3員環)(2910)、有機リン/有機金属(2931)、スルホンアミド(2935)、配糖体(2938)、糖エーテル(2940)類注4〜7、塩・錯体・誘導体の扱い(注5)、複素環の除外(注7)を必ず確認

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(第29類で多い順)
    • 化学物質の同定(CAS、IUPAC、構造式、官能基)
    • 異性体(単一異性体か混合か/例外として第27類へ飛ぶか)
    • 溶液・添加(溶媒の種類、濃度、溶解の目的、添加剤の目的)
    • 規制対象の特定(条約名で“監視用の専用号”が設定されている物質がある)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. キシレン:単一異性体 vs 混合異性体(2902.41/42/43 と 2902.44 等)
      • どこで分かれるか:o-/m-/p-などの単一異性体か、混合キシレン異性体
      • 判断に必要な情報:GC分析(異性体比率)、SDSの組成、CAS(混合のCAS)
      • 典型的な誤り:「キシレン」だけで単一異性体の号に固定してしまう(実態は混合)
    2. エタノール:第29類(2905)ではなく第22類(2207/2208)
      • どこで分かれるか:注の除外規定で強制的に第22類
      • 判断に必要な情報:成分(エタノールか)、変性の有無、濃度、用途よりも“物としての形態”
      • 典型的な誤り:「工業用アルコールだから有機化学品」と短絡する
    3. PFOS等:専用号(2904.31〜2904.36 等) vs “その他”(2904.99等)
      • どこで分かれるか:PFOS、その塩、PFOSFなどの該当物質かどうか
      • 判断に必要な情報:化学名、CAS、塩の形態、含有の有無(混合/製剤なら別章の可能性も)
      • 典型的な誤り:規制物質を「その他」へ入れてしまい、規制対応のトリガーを逃す
    4. 有機過酸化物:29.09(2909.60等)と29.11周辺の境界
      • どこで分かれるか:有機過酸化物の範囲(注・改正で移動が発生し得る)
      • 判断に必要な情報:官能基(–O–O–)、製品の反応性、SDS、構造式
      • 典型的な誤り:アセタール系/ヘミアセタール系の過酸化物を旧来の感覚で29.11側に置く(HS2022で移動に言及)
    5. フェンタニル類等:2933/2934の新設号 vs “その他”
      • どこで分かれるか:INN(一般名)や構造でフェンタニル類・前駆体に該当するか
      • 判断に必要な情報:INN、CAS、構造式、塩の形態
      • 典型的な誤り:「麻薬規制は別部署の話」として分類側で同定が浅くなる(実務上は相互依存)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • (Section VI注2):医薬品等で定量・小売用にしたものは、該当見出し(例:3004等)に分類し、この部(第29類など)に戻しません。
    • (Section VI注3):複数成分を一緒にして「混ぜて使うセット」は、完成品側の見出しに寄せる考え方があります(ただし条件あり)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:抗生物質でも、原薬のバルクなら第29類(2941)の検討余地がありますが、錠剤・小売包装・用法が明確なら第30類側を優先検討、という方向になります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 医薬・化粧品・接着剤・殺虫剤などの「小売用・用途特化」で他章が優先される(部注2の思想)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1:第29類は原則として
      • (a) 化学的に単一の有機化合物(不純物可)
      • (b) 同一化合物の異性体混合(ただし非環式炭化水素の異性体混合は例外)
      • (d)(e) 水溶液/必要な溶媒溶液
      • (f)(g) 保存・輸送・識別・安全のための最小限の添加
      • (h) アゾ染料製造用に標準濃度にした特定物質
        など“限られた形”を対象にしています。
    • 類注2:エタノール、染料、酵素、免疫学的産品などは明確に除外。
    • 類注3:2つ以上の項に入るなら「数字上最後の項」。
    • 類注4〜7:複合誘導体の扱い、官能基の定義、エステル・塩・錯体の分類、複素環の除外など、化学構造での“落とし穴”が多数。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 例:ホルモン(2937)の範囲(放出因子、拮抗物質等を含む)など。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • エチルアルコール→22.07/22.08、染料→32.03/32.04/32.12、酵素→35.07、免疫学的産品→30.02等。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:「単一化合物」か「用途調整された製剤」か(類注1(e)(g)×部注2)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 溶媒の種類と目的(安全/輸送か、用途最適化か)
      • 添加剤(安定剤、着色、香気、催吐)の目的(識別/安全か、用途性能か)
    • 現場で集める証憑:
      • SDS、仕様書、配合表、用途説明、ラベル表示、輸送規格(UN番号等があれば)
    • 誤分類の典型:
      • 「溶液だから化学品」→実は用途特化(洗浄剤等)で第38類だった、など
  • 影響ポイント2:異性体混合の例外(類注1(b))で第27類に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか:
      • 対象が「非環式炭化水素」か、混合が「立体異性体以外」か
    • 現場で集める証憑:
      • 組成分析(GC)、CAS、工程(分留・精製の程度)、製品規格
    • 誤分類の典型:
      • “混合溶剤”を第29類の「異性体混合」と誤解(実態は第27類の石油系留分)
  • 影響ポイント3:多官能基化合物の「最後の項」ルール(類注3)
    • 何を見れば判断できるか:
      • 官能基の一覧(酸、アルコール、アミン、ニトロ、ハロゲン等)
      • 競合し得る項番号の並び(どれが“最後”か)
    • 現場で集める証憑:
      • 構造式、IUPAC名、反応式(中間体なら特に)
    • 誤分類の典型:
      • “主用途”で決めてしまい、注が要求する「官能基・並び」を見落とす
  • 影響ポイント4:塩・錯体・酸塩化物など誘導体の帰属(類注5等)
    • 何を見れば判断できるか:
      • その物質が「塩」「錯体」「金属アルコラート」「酸ハロゲン化物」等に該当するか
    • 現場で集める証憑:
      • 反応・中和の有無、カウンターイオン、金属結合の有無、SDS(組成)
    • 誤分類の典型:
      • “別物質”として2942等に逃がす(実は元化合物の扱いに寄せるべき)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:エタノールを2905(アルコール)で申告
    • なぜ起きる:一般感覚で「アルコール=有機化学品」と連想する
    • 正しい考え方:類注2で**エチルアルコールは第22類(2207/2208)**に除外
    • 予防策:
      • 確認資料:成分表、濃度、変性の有無
      • 社内質問例:「主成分はエタノールですか?変性剤は何ですか?」
  2. 間違い:“溶液”というだけで第29類に固定
    • なぜ起きる:SDSに溶媒が書かれているだけで「化学品だから」と判断
    • 正しい考え方:類注1(e)は「安全/輸送のための通常の溶液」に限定し、用途最適化なら外れ得る
    • 予防策:
      • 確認資料:用途説明、ラベル、添加剤の目的
      • 社内質問例:「溶媒は輸送上の理由?それとも塗布/洗浄など用途のため?」
  3. 間違い:染料・蛍光増白剤を第29類で処理
    • なぜ起きる:原料が有機化合物なので“有機化学品”だと誤解
    • 正しい考え方:類注2で有機系の着色料等は第32類へ除外
    • 予防策:
      • 確認資料:用途(着色/蛍光)、製品名(dye, pigment, brightener等)、社内の使用部門
  4. 間違い:単一化合物かどうかの確認不足(商標名で分類)
    • なぜ起きる:取引名が“剤”“ソリューション”など曖昧
    • 正しい考え方:第29類は「単一化合物(不純物可)」等が原則
    • 予防策:
      • 確認資料:CAS、純度、主要成分の含有率、複数成分の有無(混合なら第38類等)
  5. 間違い:非環式炭化水素の異性体混合を第29類で処理
    • なぜ起きる:「異性体混合は第29類」と一般化してしまう
    • 正しい考え方:類注1(b)に例外があり、非環式炭化水素の異性体混合は第27類に行き得る
    • 予防策:
      • 確認資料:炭化水素かどうか、環式かどうか、異性体の種類(立体/構造)
  6. 間違い:多官能基化合物を“主用途”で決めて類注3を見落とす
    • なぜ起きる:営業・研究の説明が用途中心で、構造を見ない
    • 正しい考え方:2つ以上の項に入り得るときは、原則「最後の項」(類注3)
    • 予防策:
      • 確認資料:構造式、官能基一覧
      • 社内質問例:「官能基は何が入っていますか?酸/アミン/アルコールなど全部列挙できますか?」
  7. 間違い:塩・錯体・酸塩化物を別物扱いで2942等に“逃がす”
    • なぜ起きる:SDSの名称が別名で、元化合物と結びつかない
    • 正しい考え方:誘導体の扱いは注(エステル・塩・錯体等)に従って“元の系統”に寄せる考え方がある
    • 予防策:
      • 確認資料:反応前後の名称、塩形成の情報、金属結合の有無
  8. 間違い:規制対象物質(PFOS等、条約対象)を“その他”で申告
    • なぜ起きる:規制チェックと分類が分業で、分類側が“監視用細分”を意識しない
    • 正しい考え方:HS改正で条約対応の細分が設定されており、同定が分類品質に直結
    • 予防策:
      • 確認資料:CAS、条約リスト照合(社内コンプラ部門と連携)、税関相談

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。第29類は「原料=化学品」になりやすく、最終製品HSが1桁違うだけでPSRが別物になることが普通にあります。
  • よくある落とし穴
    • 原料(複数)のHSが曖昧(混合物・溶液・塩など)
    • 最終製品が第29類ではなく、第30類(医薬)、第32類(染料)、第38類(調製品)にズレる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 経済連携協定等は、採用しているHS版が異なることがあります(協定によってHS2012/2017など)。検索時にバージョン違いだと誤判定になり得ます。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • 協定の参照HS版でPSRを確認現行申告HS(HS2022/国内コード)に対応付け(相関表で確認)という順番が安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 最低限そろえるもの(第29類は特に“同定情報”が重要)
    • BOM(材料表)、原産国、各材料のHS(できればHS6桁まで)、非原産材料の比率
    • 工程(反応・精製・混合のどこまで行うか)
    • 原価(RVC方式の場合)
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 供給者証明、SDS、分析表、製造工程図、インボイス品名の整合、保存年限は協定・社内規程に従う

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割/再編2903.31/2903.39 → 2903.41〜2903.69 等Kigali改正(モントリオール議定書)関連物質の監視目的で細分再編冷媒・発泡剤等の特定品は「その他」逃げが難化、CAS同定が必須
HS2017→HS2022範囲明確化(注修正)29.09/29.11(例:2911.00→2909.60への移動言及)類注・見出しの明確化により、特定の有機過酸化物(アセタール/ヘミアセタール過酸化物)が29.09側へ旧分類慣行のままだと差異が出るため、SDS/官能基で再点検
HS2017→HS2022新設2930.102-(N,N-ジメチルアミノ)エタンチオール用の号新設(化学兵器禁止条約関連の監視)規制対応(輸出入届出等)のトリガーになり得る
HS2017→HS2022分割/再編+新設2931.31〜2931.39 → 2931.41〜 等、2931.54新設CWC(化学兵器)対象の監視強化+ロッテルダム条約対象(トリクロルホン)号新設有機リン/有機金属等はサブヘディング再確認必須
HS2017→HS2022新設2932.96カルボフラン(carbofuran)用の号新設(ロッテルダム条約)農薬原体等の同定・規制チェックが重要に
HS2017→HS2022範囲拡大+新設2933.33の範囲拡大、2933.34/35/36/37新設フェンタニル類・前駆体、3-キヌクリジノール等の監視(国連麻薬単一条約/CWC)輸出入規制・社内コンプラの連携必須(INN/CAS管理)
HS2017→HS2022新設2934.92フェンタニル類(その他)向け号新設(国連麻薬単一条約)同上(2934側に分類される対象もある)
HS2017→HS2022範囲変更2939.71 → 2939.45/2939.49等エフェドラ由来アルカロイド誘導体の扱いを他の誘導体と整合旧コード運用の品は相関確認が必要

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料(相関表)として、WCOの**HS2022↔HS2017相関表(Table I)**に、Chapter 29の具体的な改正理由(条約名・監視目的・新設/再編)が明記されています。上表の要旨は、当該相関表の記載(例:Kigali改正、化学兵器禁止条約、ロッテルダム条約、国連麻薬単一条約等)に基づいて整理しました。
  • 併せて、HS2022の**第29類注(Note 1〜Subheading Notes)**により、対象範囲(単一化合物/溶液/添加/除外/最後の項ルール等)が確認できます。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

主要な追加・削除・再編(例)を、HS2007→2012→2017→2022の流れで整理します(代表例)。

HS版移行主要な追加・削除・再編(例)旧コード→新コード(例)背景/狙い(要旨)
HS2007→HS20122916.35削除(低取引量)等2916.35 →(統合/整理先へ)取引量・統計整備の観点
HS2007→HS20122931の細分(有機金属等)2931.00 → 2931.10/2931.20/2931.90 等ロッテルダム条約(PIC)等に伴う監視・管理
HS2007→HS20122939.44新設(ノルエフェドリン等)(旧2939.49等)→ 2939.44等規制・統計上の識別強化
HS2012→HS2017PFOS等の専用号新設2904.90(ex)→ 2904.31〜2904.36ストックホルム条約/ロッテルダム条約の監視・管理
HS2012→HS2017クロロピクリン等の細分新設2904.90(ex)→ 2904.91 等有害化学物質の国際移動の把握
HS2017→HS2022冷媒系(2903)の大規模再編2903.31/2903.39 → 2903.41〜2903.69Kigali改正対応(オゾン層・温室効果ガス管理)
HS2017→HS2022化学兵器/麻薬等に関連する細分強化2930/2931/2933/2934 等に新設・再編CWC、国連麻薬単一条約、ロッテルダム条約等への対応

注:表の「旧→新」は代表例です。実務では対象物質のCAS/INNと、相関表の該当行(ex表記含む)で突合してください。


9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“溶液だから第29類”で申告したら製剤扱い
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注1(e)の「安全/輸送上の通常の溶液」要件を満たさず、実態が用途特化(部注2の思想にも抵触)
    • 起きやすい状況:洗浄用、塗布用に濃度・添加剤を調整した“ソリューション”
    • 典型的な影響:税番更正、追加資料要求、検査・遅延
    • 予防策:SDS+用途説明+「溶解理由(輸送か用途か)」の文書化
  • 事例名:エタノールを2905で申告
    • 誤りの内容:類注2(b)の除外(エタノールは22.07/22.08)
    • 起きやすい状況:“工業用アルコール”とだけ記載、変性情報が不足
    • 影響:税番訂正、場合により酒税・許認可の論点が発生
    • 予防策:変性の有無、濃度、用途(飲用でないこと)等を明確化
  • 事例名:PFOS等を「2904.99 その他」で申告
    • 誤りの内容:HS改正で設定された監視用細分に合致する可能性を見落とし
    • 起きやすい状況:CASの照合をせず、化学名が略称のみ
    • 影響:規制チェック漏れ→差止め/追加手続/是正
    • 予防策:CASで同定→条約/規制対象の社内照合→必要なら税関相談
  • 事例名:フェンタニル類を“その他の複素環”で処理
    • 誤りの内容:HS2022での監視用新設号(2933/2934側)を見落とす
    • 起きやすい状況:INN不明、塩の形態だけが伝票に記載
    • 影響:輸出入規制(麻薬等)確認の遅れ、通関保留
    • 予防策:INN/CAS/塩の種別を必須入力項目にする

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • {日本}前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第29類自体は検疫というより、危険物・毒劇物・薬物など別法令での管理が中心になりやすいです(個別物質で判断)。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 化学兵器禁止条約関連物質などは、輸出入実績の届出等が必要となり得ます(物質・数量・制度要件で判断)。
  • その他の許認可・届出(代表例)
    • 麻薬及び向精神薬:輸出入や所持等が厳格に規制(対象物質は法令・別表等で判断)。
    • 税関の輸出入禁止・規制品目として、麻薬等は明示されています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口)
    • 税関(規制品目・手続)、経済産業省(化学兵器関連等)、厚生労働省(麻薬等)
  • 実務での準備物(一般論)
    • SDS、成分表、CAS/INN、用途説明、数量・濃度、契約書/インボイスの品名整合、必要な場合は許可証・届出書

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • CAS/IUPAC名、構造式(官能基)、純度、不純物
    • 異性体の有無(単一/混合)
    • 溶媒・添加剤の種類と目的(安全/輸送/識別か、用途最適化か)
    • SDS(最新版)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1(単一化合物/溶液/添加の条件)に適合するか
    • 類注2(除外:エタノール、染料、酵素等)に当たらないか
    • 類注3(最後の項)を適用すべきか/ただし号には適用されない点を認識
    • HS版改正の影響(相関表で旧→新のズレ確認)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名は「一般名+化学名+CAS」等で誤解を減らす
    • 危険物・規制物質は、必要情報(濃度、UN番号等)が書類に揃っているか
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定参照HS版でPSR確認→相関で現行HSへ接続
    • BOM、工程、原価、材料HS(非原産)を保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 麻薬等:該当の有無、許可・届出手続
    • 化学兵器関連:指定物質等の届出の要否

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Chapter 29 “Organic chemicals”(条文・類注)[参照日:2026-02-19]
    • HS2022 Section VI Notes(部注)[参照日:2026-02-19]
    • HS2022↔HS2017 Correlation Table (Table I)[参照日:2026-02-19]
    • HS2017↔HS2012 Correlation Table (Table I)[参照日:2026-02-19]
    • HS2012↔HS2007 Correlation Table (Table I)[参照日:2026-02-19]
  • {日本}税関・公的機関のガイド
    • 税関「関税率表解説(第29類 有機化学品)」[参照日:2026-02-19]
    • 税関「関税率表第29類の概要(分類整理資料)」[参照日:2026-02-19]
    • 税関:輸出入禁止・規制品目(麻薬等)[参照日:2026-02-19]
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 税関「品目別原産地規則(PSR)検索」—HS版違い注意[参照日:2026-02-19]
  • その他(規制関係)
    • 経済産業省:化学兵器禁止法関連物質(輸入・届出等)[参照日:2026-02-19]
    • 厚生労働省:麻薬及び向精神薬取締法(条文)[参照日:2026-02-19]

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 第29類は特に、CAS/IUPAC名、構造式、純度、不純物、溶媒・添加剤の目的が重要です(SDSはほぼ必須)。
    • 「どの項・号を想定しているか」「なぜそこで迷うか」を文章化すると、照会が通りやすいです。
  • 探し方(日本税関)
    • **品目分類の事前教示制度(カスタムスアンサー)**で制度概要を確認
    • 事前教示回答(品目分類)検索で、類似品・類似物質の回答を探す
    • **輸入貨物の品目分類事例(類別一覧)**で、整理された代表事例を確認

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第28類:無機化学品及び貴金属、希土類金属、放射性元素又は同位元素の無機又は有機の化合物(Inorganic chemicals; organic or inorganic compounds of precious metals, of rare-earth metals, of radioactive elements or of isotopes)

  • 用語の統一:**類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)**とします。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 塩素、アルゴン等の化学的に単一の元素(例:塩素ガス 2801、アルゴン 2804)
    • 無機酸(例:塩酸 2806、硫酸 2807、硝酸 2808)
    • 無機塩基・酸化物・水酸化物(例:アンモニア 2814、苛性ソーダ 2815、アルミナ/水酸化アルミ 2818、酸化チタン 2823)
    • 各種の無機塩(硫酸塩・硝酸塩・リン酸塩 等)(例:硫酸塩 2833、硝酸塩 2834、リン酸塩 2835)
    • 過酸化水素(2847)
    • 貴金属化合物・放射性元素/同位体関連(2843、2844、2845、2846 など)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 混合物・調製品(例:用途に合わせて配合した洗浄剤・触媒配合品など)→第38類(特に 3824)へ行きやすい(「化学的に単一」かが鍵)
    • 水以外の溶媒に溶かした溶液で、輸送安全のための通常形態を超え「特定用途に適する」もの →第38類(3824)へ行きやすい(例:アンモニアのアルコール溶液等)
    • 肥料としての性格が強いもの(第31類の注に該当)→第31類(肥料)
    • ルミノホア用無機物(蛍光体用途など)→ 3206、ガラスフリット→3207
    • 貴金属そのもの・貴金属合金、貴石等 →第71類
    • **金属(純金属・合金等)**として扱うべきもの →第15部(Section XV)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「化学的に単一(separate chemically defined)」か/混合物・調製品か(SDS・CAS・製法で確認)
    2. 溶液の扱い:水溶液は原則OK、他溶媒は条件付き(安全/輸送上の通常形態か、特定用途化していないか)
    3. 放射性元素・同位体:2844/2845/2843/2846/2852は「該当すれば他に行かない」原則(部注)+HS2022で細分が増えた
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • **規制対象(毒劇物、化審法、輸出管理等)**の化学品:HS誤りが、許認可・届出・輸出許可要否の判断ミスに直結しやすい
    • 放射性同位体(2844/2845):HS2022で細分化され、旧コード運用のままだと誤付番が起きやすい

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し・注で決める):第28類は「化学的に単一の元素・化合物」を中心に、注で範囲(溶液、安定剤、除外)を決めています。まず**類注(Chapter Notes)**で「この類に入る形態か/除外か」を確定します。
    • GIR6(号=6桁の比較):同じ項でも「濃縮同位体」「特定の放射性元素」「純度(例:Si 99.99%)」など、号の条件で割れます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • CAS番号・化学式・組成(純度、濃度)
    • 状態(固体/液体/水溶液/他溶媒溶液/コロイド)
    • 添加剤の目的(保存/輸送のための安定剤なのか、用途特化の配合なのか)
    • 放射能(比放射能、同位体の種類)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:対象は「無機化学品」か?
    • 有機化合物主体なら第29類(ただし第28類には例外的に“有機物”が入る範囲もある:2843〜2846、2852等)
  • Step2:「化学的に単一の元素/化合物」か?
    • 製造工程由来の不純物は許容されますが、特定用途に適するよう意図的に残した/加えた場合は「不純物」扱いにならない可能性があります(=調製品寄り)
  • Step3:形態が類注1の範囲内か?
    • 水溶液は原則OK
    • 他溶媒溶液は「安全/輸送のための通常形態」等の条件付き(用途特化なら除外)
  • Step4:除外規定に当たらないか?
    • 第31類(肥料)・第32類(蛍光体/ガラスフリット)・第38類(調製品)・第71類(貴金属等)・第15部(金属等)などへ飛ぶパターンを点検
  • Step5:該当項(4桁)→該当号(6桁)へ
    • 放射性・同位体は部注の「他に行かない」原則が強いので先に確認
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第28類 vs 第38類:化学的に単一(+許容される溶液/添加)か、用途特化の調製品か
    • 第28類 vs 第31類:肥料の注に該当するか(例:カルシウムシアナミド等は第31類へ除外され得る)
    • 第28類 vs 第15部(金属・合金):金属材料としての性格か、化合物(例:りん銅の条件)か
    • 第28類 vs 第3818:電子工業用にドープ処理した元素でも、形状がウェハ等なら3818

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • 原則:第28類は項数が多いため、実務重要(頻出・誤分類多・規制/原産地に効く)を中心に列挙し、残りは「その他」でまとめます。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
2801ハロゲン元素(塩素等)塩素ガス、ヨウ素危険物・規制物質になりやすい。単体元素としての形態確認。
2804水素・レアガス・他の非金属水素、アルゴン、窒素、酸素、シリコンシリコンは純度で号が分岐(例:99.99%)
2806塩化水素(塩酸)等塩酸、クロロスルホン酸水溶液/濃度、用途特化の調製かを確認。
2807硫酸・発煙硫酸硫酸、オレウム濃度・形態(発煙)で税率/危険物対応が変わることがある(国内コードでは細分し得る)。
2808硝酸等硝酸危険性・規制(毒劇等)確認が実務上重要。
2811その他の無機酸・非金属の酸化物フッ化水素酸、二酸化炭素等HS2017以降、シアン化水素が号として独立
2812非金属のハロゲン化物等ホスゲン(※溶媒形態注意)等2812.10が細分化(2812.11〜2812.19)
2814アンモニア無水アンモニア、アンモニア水無水/水溶液で号が分岐。他溶媒溶液は除外され得る例あり。
2815水酸化ナトリウム等苛性ソーダ固形、苛性ソーダ液固形/水溶液で号分岐
2818アルミナ・水酸化アルミ等アルミナ粉末、水酸化アルミコロイド溶液は第38類への例あり
2823酸化チタン顔料用TiO₂顔料用途(第32類)との境界に注意(ただし酸化チタン自体は28類側)。
2827塩化物(塩化アンモニウム等)塩化アンモニウム、塩化カルシウム金属塩としての整理が必要(塩/酸/酸化物の取り違えが多い)。
2833硫酸塩・ミョウバン等硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム第31類(肥料)用途・形態との関係に注意。
2834硝酸塩・亜硝酸塩硝酸カリウム、硝酸塩類危険性・規制確認が重要。
2835リン酸塩・ポリリン酸塩リン酸二ナトリウム、トリポリリン酸Na等洗剤用途等で調製品化(第38類)しやすい。
2840ホウ酸塩等ホウ砂、過ホウ酸塩2847(過酸化水素)など安定化の考え方とセットで理解。
2843貴金属のコロイド・化合物硝酸銀、金化合物部注で「該当すれば他に行かない」(Section VI Note 1(B))
2844放射性元素・放射性同位体等トリチウム等、放射性残留物HS2022で2844.41〜2844.44に細分
28452844以外の同位体等重水、B-10濃縮、Li-6濃縮、He-3等HS2022で2845.20〜2845.40が新設
2847過酸化水素過酸化水素水安定剤添加はOKの範囲あり(例:ホウ酸で安定化)
2852水銀の化合物塩化水銀等**2852.10(化学的に単一)**の定義あり
2853りん化物等・その他無機化合物りん化物、蒸留水/導電率水、液体空気等りん銅(P>15%)が含まれる(注)
その他上記以外の無機酸、酸化物、各種塩など多数例:クロム酸塩、シアン化物、ケイ酸塩…「金属塩/過酸塩のみ」等の類注(28.26〜28.42)を意識

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 純度基準(例:シリコンの重量比 99.99% 以上か)
    • 溶液区分(無水/水溶液、溶媒が水以外の場合の扱い)
    • 同位体の種類・濃縮の有無(HS2022で細分が増加)
    • 「化学的に単一」か否か(2852.10の定義など)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 2804.61(Si 99.99%以上) vs 2804.69(その他のSi)
      • どこで分かれるか:シリコンの重量百分率(分析値)
      • 判断に必要な情報:分析成績書(CoA)、純度規格、SDS
      • 典型的な誤り:電子材料用途=高純度と決めつけて 2804.61 にしてしまう(実測が必要)
    2. 2844(放射性元素/同位体等)内の細分(HS2022)
      • どこで分かれるか:2844.41(トリチウム)、2844.42(列挙元素群)、2844.43(その他)、2844.44(放射性残留物)
      • 判断に必要な情報:同位体名、核種情報、比放射能、輸送書類(クラス7等)、供給者証明
      • 典型的な誤り:旧HS(2017)の「2844.40」感覚で括ってしまう(HS2022では細分)
    3. 2845(2844以外の同位体)内の細分(HS2022)
      • どこで分かれるか:2845.10(重水)に加えて、2845.20(B-10濃縮)、2845.30(Li-6濃縮)、2845.40(He-3)が新設
      • 判断に必要な情報:同位体組成、濃縮率、用途(ただし用途ではなく「物」基準)
      • 典型的な誤り:重水以外を「2845.90その他」に入れてしまう(HS2022では分ける)
    4. 2852.10(化学的に単一の水銀化合物) vs 2852.90(その他)
      • どこで分かれるか:類注・章注の要件を満たす「化学的に単一」かどうか(号注で定義)
      • 判断に必要な情報:化学式、CAS、純度、混合/製剤の有無
      • 典型的な誤り:水銀を含む“混合物”を 2852.10 に入れてしまう(要件未満)
    5. 2853.10(シアノゲン塩化物) vs 2853.90(その他)
      • どこで分かれるか:特定品名か否か
      • 判断に必要な情報:化学名、CAS、SDS
      • 典型的な誤り:類似のシアン系化合物(2837/2838等)と混同

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • **部注(Section VI Note 1)**は、放射性・貴金属化合物など一部見出しに「排他性」を与えます。
      • 2844・2845に該当する物品は、他のどの見出しにも分類しない
      • 2843・2846・2852も同様に(2844/2845に従属)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例えば「放射性残留物」や「特定の放射性同位体」を含む混合物でも、2844の定義に合えば2844優先という発想になります(まず2844/2845を疑う)。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 逆に、2844/2845に該当しない(または章注の閾値等を満たさない)場合、通常の無機化学品として28類内の別項、または調製品として38類へ行く検討に戻ります。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1:この類は原則として「化学的に単一の元素・化合物」+(水溶液、一定条件の他溶媒溶液、必要な安定剤・固結防止剤、識別/安全のための着色・防じん剤)を含みます。
    • 注3:多くの除外(第31類、第32類、第38類、第71類、第15部等)が列挙されています。
    • 注5:2826〜2842は基本的に金属塩・アンモニウム塩・過酸塩のみ。二重塩・錯塩は原則 2842。
    • 注6:2844の対象と、放射能の閾値(比放射能 74 Bq/g 超)等を規定。
    • 注7:2853に「りん銅(P>15%)」を含める(合金側に行かせないための実務上のくぎ刺し)。
    • 注8:電子工業用ドープ処理した元素は、棒/円柱等なら28類、ウェハ等に切れば 3818。
    • 号注:2852.10「化学的に単一」の定義を置く。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「不純物」:製造工程(精製含む)に直接起因する未反応原料・原料由来不純物・試薬・副産物等。ただし用途特化のため意図的に残した/加えた場合は不純物とみなされないことがある、という整理が重要です。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 水以外の溶媒溶液で、用途特化に当たるもの → 3824 等(例示あり)
    • 肥料関係の注に当たるもの → 第31類
    • ルミノホア用無機物 → 3206、ガラスフリット → 3207

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:溶媒(特に水以外)・コロイドで 38類に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 溶媒の種類(水/アルコール/ベンゼン等)
      • その溶解が「輸送安全等の通常形態」か、用途特化か
      • コロイド/分散体かどうか(粒径・分散媒)
    • 現場で集める証憑:
      • SDS(溶媒・濃度・用途)
      • 技術資料(製品が“溶液として販売する必然性”の説明)
      • 取引形態(容器、濃度、危険物対応)
    • 誤分類の典型:
      • アンモニアのアルコール溶液や、塩化カルボニル(ホスゲン)のベンゼン溶液など、28類のつもりで申告してしまう(実務例として 3824 側に整理され得る)
  • 影響ポイント2:安定剤添加はOKでも、“用途を作る配合”はNG
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 添加剤の目的(保存/輸送のためか、反応性付与・触媒化など用途特化か)
    • 現場で集める証憑:
      • 配合表、製造工程図、SDS、品質規格書
    • 誤分類の典型:
      • ホウ酸で安定化した過酸化水素は28類(2847)に整理され得る一方、過酸化ナトリウムを触媒と混合する等、用途特化の混合物は 3824 側に寄る、という考え方を見落とす
  • 影響ポイント3:放射性・同位体は“先に疑う”+HS2022細分に注意
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 同位体の種類(トリチウム等)、濃縮の有無(B-10、Li-6、He-3等)
    • 現場で集める証憑:
      • 同位体証明、分析結果、輸送書類、法規制関連書類(該当する場合)
    • 誤分類の典型:
      • HS2017の「2844.40」運用のまま、HS2022でも雑に「その他」で申告してしまう

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:“純度が高い=化学的に単一”と決めつける
    • なぜ起きる:化学品は「高純度=単一」と思いがちだが、用途特化で意図的に添加/残留させている場合がある
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):第28類注1の枠は「単一」+限定された添加に限る。不純物の考え方も「工程由来」に限定される
    • 予防策:
      • SDSの「成分」「安定剤」「用途」を確認
      • 仕入先へ質問例:「添加剤は“保存/輸送”目的ですか?用途を作る配合ですか?」
  2. 間違い:水以外の溶媒に溶かした溶液を、そのまま28類に入れる
    • なぜ起きる:水溶液OKの感覚が他溶媒にも拡張されがち
    • 正しい考え方:他溶媒は条件付きで、用途特化なら除外され得る(例示あり)
    • 予防策:
      • 「なぜその溶媒か」を書面化(輸送安全上の通常形態か)
      • 取引仕様(濃度・容器・用途)を保存
  3. 間違い:コロイド溶液(分散体)を“溶液”として28類に入れる
    • なぜ起きる:「溶けている=溶液」と誤認
    • 正しい考え方:コロイド状ディスパージョンは 3824 側に整理され得る例が示されている
    • 予防策:
      • 粒径、分散状態(懸濁/コロイド)を技術資料で確認
      • SDSの形態欄(分散液/懸濁液/コロイド)を確認
  4. 間違い:肥料用途の塩類を、無条件で28類の塩に入れる
    • なぜ起きる:化学式だけで判断しがち
    • 正しい考え方:第31類の注に該当する場合は除外され得る
    • 予防策:
      • 用途・表示・包装形態(肥料としての流通か)を確認
      • 製品ラベル/規格書を保存
  5. 間違い:電子工業用ドープ元素を形状無視で28類に入れる
    • なぜ起きる:材料名(Si)だけで判断
    • 正しい考え方:棒/円柱等なら28類、ウェハ/ディスク状なら3818
    • 予防策:
      • 写真・図面で形状を証憑化
      • 「加工工程(切断/研磨)」有無を確認
  6. 間違い:放射性関連を“その他の化合物”として28類一般品に入れる
    • なぜ起きる:危険物/規制の観点とHSの排他性(部注)を分けて考えられていない
    • 正しい考え方:2844/2845は該当すれば他へ行かない(部注)+HS2022で細分が増えた
    • 予防策:
      • 同位体・比放射能の証明を必須資料化
      • HS版(2017/2022)を必ず明記して社内共有
  7. 間違い:りん銅を金属合金側(第74類等)で処理してしまう
    • なぜ起きる:取引現場では「合金材料」と呼ばれるため
    • 正しい考え方:注で 2853 に含める条件が明示されている(P>15%)
    • 予防策:
      • 成分証明(P%)を入手
      • 材料規格(JIS等)との整合を確認
  8. 間違い:6桁の純度・濃縮条件を確認せず“用途”で決める
    • なぜ起きる:「電子材料だから高純度/濃縮」と推定で処理
    • 正しい考え方:28類は用途よりも化学的性状・組成が中心(例:Si 99.99%等)
    • 予防策:
      • CoAの添付をルール化
      • 仕入先へ質問例:「保証純度は?測定方法は?同位体組成は?」

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。化学品は特に、材料(原料)も化学品であることが多く、最終品HSを誤ると「CTH/CTSH」や「RVC」の判定設計が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 原料は28類だが、最終品が38類(調製品)に飛ぶのに気づかず、PSRを誤る
    • 同位体・放射性の細分を誤り、PSR表の該当行を取り違える(HS2022で細分増)

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに、PSR表が参照するHS版(HS2012参照 等)が異なる場合があります。必ず協定付属書(PSR表の凡例)で確認してください。
  • HS2022とズレる場合の注意:
    • 旧版のサブヘディングが、HS2022で分割/統合されている可能性があります(例:2844、2845の細分化)
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定の参照HS版でPSRを読み、必要に応じて相関表でHS2022コードへマッピングして社内管理する
    • 申告用HS(通関)と、原産性判定用のHS版が違う場合は、両方を記録

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 必要データ(化学品で特に重要):
    • 材料表(BOM):原料名、CAS、純度、濃度、形態(溶液/粉末)
    • 工程:混合・溶解・反応・精製の有無(「化学的に単一」/「調製品」判断にも直結)
    • 非原産材料のHS(原料側)
    • RVC計算の前提(必要な場合)
  • 証明書類・保存(一般論):
    • CoA、SDS、工程図、購買記録、原産地証明関連書類を保存(協定ごとの保存年限は要確認)

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022分割(細分新設)2844.40 → 2844.41〜2844.442844.40(その他の放射性元素・同位体等)を細分し、特定同位体(例:トリチウム等)・残留物を分ける旧「2844.40」運用のままだと誤付番。輸出管理・統計・規制対応の突合がずれる
HS2017→HS2022分割(細分新設)2845.90 → 2845.20〜2845.40(+2845.90)2845.90(その他の同位体等)から、B-10濃縮、Li-6濃縮、He-3等を独立同位体製品の分類精度が要求される。証明書類(同位体組成)の重要性が増す

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料に基づく整理:
    • WCOの相関表(HS2022→HS2017)では、**2844.40の細分(2844.41〜2844.44)および2845.90の細分(2845.20〜2845.40)**が明示され、いずれも「特定同位体等のモニタリング/管理のため」といった趣旨で説明されています。
    • HS2022の第28類条文でも、2844に2844.41〜2844.44、2845に2845.20〜2845.40が実際に収載されています。
  • 上記以外の第28類の主要部分については、相関表上の変更列挙が限定的であり、実務上は「放射性・同位体」周辺が主な改正点になります(ただし、最終確認は必ず最新版条文で行ってください)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(第28類の実務影響が大きいもの中心)
版の変化主な追加・削除・再編(要旨)旧コード→新コード(代表)根拠の例
HS2007→HS2012水銀化合物(2852)を「化学的に単一」かで細分し、見出し範囲も拡張2852.00 → 2852.10 / 2852.90相関表(2012→2007)に記載
HS2012→HS2017シアン化水素を独立サブヘディング化(旧)2811.19の一部 → 2811.12相関表(2017→2012)に記載
HS2012→HS20172812.10(塩化物等)を複数サブヘディングへ細分(2812.11〜2812.19)2812.10 → 2812.11〜2812.19相関表(2017→2012)に記載
HS2012→HS20172848(りん化物)を削除し、2853へ取り込み。2853は 2853.10/2853.90へ細分2848.00 → 2853(範囲拡張)/ 2853.00 → 2853.10/2853.90相関表(2017→2012)に記載
HS2017→HS20222844.40を細分(2844.41〜2844.44)2844.40 → 2844.41〜2844.44相関表(2022→2017)
HS2017→HS20222845.90を細分(2845.20〜2845.40)2845.90 → 2845.20〜2845.40(+2845.90)相関表(2022→2017)

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“安定化”のつもりが“用途特化配合”扱い
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):注1の許容範囲(安定剤等)を超え、実質的に調製品(38類)とみなされ得る
    • 起きやすい状況:触媒・反応促進剤・界面活性剤等を加えて「使える形」にして販売
    • 典型的な影響:修正申告、品目分類の差し戻し、追加資料要求
    • 予防策:配合目的を「保存/輸送」か「用途」かで整理し、SDS・配合表を準備
  • 事例名:他溶媒溶液を“単一化学品”として申告
    • 誤りの内容:水以外の溶媒溶液で、注1(c)の条件を満たさないのに28類で申告
    • 起きやすい状況:危険物として溶媒希釈して輸送しているケース
    • 典型的な影響:分類変更(3824等)、危険物/規制の再判定、遅延
    • 予防策:「通常・必要な溶解」根拠(輸送要件、危険性評価)を用意
  • 事例名:ドープSiウェハを28類のSiで申告
    • 誤りの内容:注8に反し、ウェハ状を28類に入れる(本来は3818)
    • 起きやすい状況:材料部門が「Si原料」として処理
    • 典型的な影響:分類修正、関税・統計の修正、審査強化
    • 予防策:形状写真・加工工程・用途をセットで事前教示相談
  • 事例名:放射性同位体を旧HS感覚で“その他”処理
    • 誤りの内容:HS2022で細分された2844/2845を旧コード(2017)の括りで処理
    • 起きやすい状況:社内マスターがHS2017のまま、更新未実施
    • 典型的な影響:輸出管理チェックの漏れ/過剰、統計不整合、税関照会
    • 予防策:HS版を明記し、同位体証明と照合して更新

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、第28類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 本類は食品検疫よりも、化学物質規制・危険物・輸出管理が中心になりがちです(品目により例外あり)。
  • その他の許認可・届出(化学品で頻出)
    • 毒物及び劇物取締法(毒劇物):対象物質を製造・輸入・販売等する場合、業態に応じた規制があり得ます(登録等)。
    • 化審法(化学物質の審査及び製造等の規制):製造・輸入事業者の届出等の枠組みがあり、混合物の場合の取扱い(一定割合など)に言及するガイダンスもあります。
    • 安全保障貿易管理(輸出管理)
      • リスト規制品だけでなく、用途・需要者等により許可が必要となるキャッチオール規制の枠組みが示されています。
      • 放射性同位体や特定化学品は輸出管理上も要注意(該当の有無は別途スペック確認)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 毒劇物:厚生労働省(毒物及び劇物取締法関連)
    • 化審法:経済産業省(化審法ポータル/届出手続)
    • 輸出管理:経済産業省(安全保障貿易管理、キャッチオール)
  • 実務での準備物(一般論):
    • SDS、CoA、CAS、化学式、濃度、用途、写真(形状)、工程資料、(該当時)同位体証明・放射能情報
    • 税関照会に備えた説明資料(「単一化学品である根拠」「溶媒形態の必然性」など)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 化学名(IUPAC/慣用名)、CAS、化学式、純度/濃度、SDS(成分表)
    • 形態(固体/水溶液/他溶媒溶液/コロイド/ペースト)
    • 添加剤の有無と目的(保存/輸送か、用途付与か)
    • 放射性/同位体:核種・濃縮率・比放射能(該当時)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第28類注1(溶液・添加の許容範囲)を満たすか
    • 第31類/第38類へ飛ぶ要素(肥料性・調製品化・他溶媒/コロイド)を再点検
    • 放射性関連は部注の排他性を再確認
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名は「一般名」だけでなく濃度・形態を付す(例:Sodium hydroxide solution 48%)
    • CoA・SDSの添付/即時提示準備
    • HS版(HS2022)での6桁確定(特に2844/2845)
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 最終品HSと、協定参照HS版の整合
    • 原料HS・工程(混合/反応/精製)の説明可能性
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 毒劇物該当性、化審法の届出要否、輸出管理(リスト/キャッチオール)を並行で確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS2022 第28類(Chapter 28) (参照日:2026-02-19)
    • WCO HS2022 Section VI Notes (参照日:2026-02-19)
    • WCO Table I(HS2022→HS2017 相関表) (参照日:2026-02-19)
    • WCO HS2017 第28類(Chapter 28) (参照日:2026-02-19)
    • WCO HS2012 第28類(Chapter 28) (参照日:2026-02-19)
    • WCO HS2007 第28類(Chapter 28) (参照日:2026-02-19)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関:関税率表の解説(第28類) (参照日:2026-02-19)
    • 厚生労働省:毒物及び劇物取締法(規制概要) (参照日:2026-02-19)
    • 厚生労働省(地方厚生局):毒物・劇物の輸入(販売/授与目的等) (参照日:2026-02-19)
    • 経済産業省:化審法ポータル (参照日:2026-02-19)
    • 経済産業省:化審法の輸入数量届出ガイダンス (参照日:2026-02-19)
    • 経済産業省:キャッチオール規制 (参照日:2026-02-19)
    • 経済産業省:安全保障貿易管理の概要資料 (参照日:2026-02-19)

※Web参照は「参照日(YYYY-MM-DD)」も併記

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第27類:鉱物性燃料、鉱物油及びこれらの蒸留製品;瀝青質物質;鉱物性ろう(Mineral fuels, mineral oils and products of their distillation; bituminous substances; mineral waxes)

用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 石炭(一般炭・無煙炭など)・石炭ブリケット(2701)
    • 原油(2709)
    • ガソリン/灯油/軽油/重油/潤滑油などの石油由来の油(ただし「粗以外」)(2710)
    • **LPG・天然ガス(LNG含む)**などの石油ガス・その他のガス状炭化水素(2711)
    • **パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム(ワセリン)**等の鉱物性ろう(2712)
    • 天然アスファルト/ビチューメン、タールサンド等(2714、2715)
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 分離した化学的に単一の有機化合物(例:ベンゼン単体等)→原則第29類(ただし純メタン・純プロパンは2711)
    • 医薬品第30類(3003/3004)
    • 混合不飽和炭化水素で、規定の品目に該当するもの → 33.01/33.02/38.05へ(注の除外)
    • 液状の合成ポリオレフィンで、規定の蒸留条件に該当するもの → 第39類(注2の除外)
    • 石油を“主成分”としない化学調製品(燃料添加剤・溶剤配合品など)→第38類(例:3811等になりやすい)※個別判定
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 原油(2709)か、精製・調製された油(2710)か(「粗」かどうか)
    2. 2710の中で、**“石油油が重量70%以上で主成分”**か/**廃油(waste oils)**か
    3. 石炭(2701)で、無煙炭/瀝青炭/その他を決めるための揮発分・発熱量(試験成績が要)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 燃料系(揮発油・軽油等):日本では備蓄法・品確法の手続や、税関での確認・書類提出が絡み、分類のズレが手続遅延に直結しやすいです(後述)。
    • 廃油(2710のwaste oils):商流上「再生油」や「使用済み油」など呼称が揺れやすく、**“廃棄物/廃油扱い”**の有無で提出資料・規制確認が増えます(後述)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し+注で決める)が中心です。第27類は、品名よりも注(Notes)の定義・除外が実務の分岐点になりやすいです(例:2710の「waste oils」定義、注2の“石油油”の範囲)。
    • **GIR6(6桁の分岐)**では、**試験値(蒸留曲線・揮発分・発熱量・含有割合)**がそのまま分岐条件になっています。
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
    • 第27類は「燃料」「油」「ガス」など商業名が強いですが、HSはしばしば**“どう作られたか(石油/石炭タール/ビチューメン由来)”や、“成分・蒸留特性”**で分かれます。
    • 典型例:
      • 同じ「溶剤」でも、石炭タール蒸留由来で芳香族優勢なら2707寄り、石油油ベースで2710寄り、さらに化学調製なら第38類寄り…という具合に、由来と組成が重要です。

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:それは「鉱物性燃料・鉱物油・蒸留製品・瀝青質物質・鉱物性ろう・電気エネルギー」か?
    • YES → Step2へ
    • NO → 他類(例:第29類・第38類・第39類など)を検討
  • Step2:形状・性状で大分類
    • 固体燃料(石炭・褐炭・泥炭・コークス等)→ 2701〜2704中心
    • ガス(石油ガス・天然ガス等)→ 2711中心
    • 液体油(原油/精製油/調製品/廃油)→ 2709 or 2710中心
    • タール・ピッチ・ビチューメン・混合物→ 2706〜2708、2713〜2715
  • Step3:注(Notes)で“落とし穴”を潰す
    • 分離した単一有機化合物(第29類)ではないか
    • 2710の「石油油」定義(注2)に入るか/合成ポリオレフィン除外に当たらないか
    • 2710の「waste oils」(注3)に当たるか
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第27類(2710) vs 第38類(調製品:添加剤/溶剤/ブレンド):石油油が重量70%以上かつ主成分かどうかが大きい分岐になりやすいです。
    • 第27類(2710) vs 第39類(合成ポリオレフィン):注2の除外条件(蒸留性状)に当たると第39類へ飛びます。
    • 2707(石炭タール蒸留油) vs 2710(石油油):芳香族/非芳香族の優勢、由来、蒸留特性が鍵です。

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

  • この類(第27類)の4桁見出しは多すぎないため、全列挙します(HS2022条文ベース)。
項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
2701石炭・石炭から製造した固形燃料一般炭、無煙炭、石炭ブリケット無煙炭/瀝青炭の判定に揮発分・発熱量(6桁で厳密)
2702褐炭(ジェット除く)褐炭、成型褐炭ジェットは除外(他章)
2703泥炭泥炭、泥炭リター園芸用途でも“泥炭”自体はここ
2704コークス、半成コークス、レトルトカーボンコークス、半成コークス原料(石炭/褐炭/泥炭)問わず該当
2705石炭ガス等(石油ガス等を除く)発生炉ガス、水性ガス、石炭ガス**2711(石油ガス・その他ガス状炭化水素)**との境界
2706石炭/褐炭/泥炭由来のタール等石炭タール、再構成タール2707(高温タール蒸留油)との区別
2707高温石炭タールの蒸留油等(芳香族が優勢)ベンゼン/トルエン留分、クレオソート油芳香族優勢がポイント。特定物質は50wt%超条件(6桁注)
2708ピッチ、ピッチコークスコールタールピッチ、ピッチコークス2713(石油コークス等)と取り違え注意
2709原油(石油油・瀝青鉱物油の“粗”)原油、オイルサンド由来の粗油「粗」かどうか(精製・調製していないか)
2710石油油等(粗以外)、70wt%以上で主成分の調製品、廃油ガソリン、灯油、軽油、潤滑油、使用済み油70wt%主成分、およびwaste oils定義が最重要
2711石油ガス・その他のガス状炭化水素LNG/LPG、プロパン、ブタン、天然ガス液化か気体か、天然ガスかLPGか等で分岐
2712ペトロラタム、パラフィンワックス等の鉱物性ろうワセリン、パラフィンワックス第34類の「調製ワックス」等との境界に注意
2713石油コークス、石油ビチューメン、残留物石油コークス、アスファルト(石油ビチューメン)2708(ピッチ)/2714(天然)/2715(混合物)と区別
2714天然アスファルト/ビチューメン、タールサンド等天然アスファルト、タールサンド2713(石油由来ビチューメン)との“天然/石油由来”
2715ビチューメン混合物(舗装材等)アスファルト混合物(路盤材)「混合物・調製品」としての性格が強い
2716電気エネルギー電力(国際的にはここ)国・制度で取扱いが異なることがあるため実務要確認

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件(例:重量、成分割合、用途、加工状態、形状、包装、規格)の整理
    第27類は、6桁レベルで次のような**“試験・分析ドリブン”**な分岐が多いです。
    • 石炭(2701):揮発分(乾燥・無鉱物ベース)や発熱量(湿潤・無鉱物ベース)
    • 芳香族留分(2707):特定物質(ベンゼン等)50wt%超、蒸留条件(例:250℃までの留出割合)
    • 石油油(2710)
      • 「軽質油」扱いの定義(210℃で90vol%留出)
      • 「バイオディーゼル」含有の定義(脂肪酸モノアルキルエステル)
      • 「廃油」定義(使用済み、スラッジ、油水エマルジョン等)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 2707(石炭タール蒸留油) vs 2710(石油油・調製品/廃油)
      • どこで分かれるか:
        • 2707は芳香族成分が非芳香族より重い(“芳香族優勢”)タイプの蒸留油が中心です。
        • 2710は「石油油(注2で定義)を主成分として含む」油・調製品・廃油が中心です。
      • 判断に必要な情報:原料由来(石炭タール由来か)、成分分析(芳香族/非芳香族比)、SDS、蒸留性状。
      • 典型的な誤り:商品名だけで「溶剤=2710」としてしまう(実際は2707や第38類の調製溶剤の場合)。
    2. 2710.12(“軽質油”) vs 2710.19(その他)
      • どこで分かれるか:2710.12の「軽質油・調製品」は210℃で90vol%以上留出が基準です(ISO 3405)。
      • 判断に必要な情報:蒸留試験(ISO 3405相当)、留出曲線、試験成績書。
      • 典型的な誤り:「ガソリンっぽい」外観で2710.12に寄せる(試験値が不足)。
    3. 2710.20(バイオディーゼル含有・70wt%以上の石油油系) vs 2710.12/2710.19
      • どこで分かれるか:バイオディーゼルは注で定義された**脂肪酸のモノアルキルエステル(燃料用)**が対象です。
      • 判断に必要な情報:FAME含有の有無・割合、原料(動植物/微生物由来)、SDS/分析(GC等)。
      • 典型的な誤り:Bxx燃料(例:B5/B20)を、単に2710.19で申告してしまう。
    4. 2710(製品油) vs 2710(waste oils:廃油)
      • どこで分かれるか:「waste oils」は注で、主に石油油からなる廃棄物で、使用済み潤滑油やタンクスラッジ等が例示されています。
      • 判断に必要な情報:使用履歴、汚染・添加剤、タンク洗浄由来か、エマルジョンか、売買契約(再利用目的でも“廃”扱いになることがある)。
      • 典型的な誤り:再生目的だからといって“製品”扱いで2710.19等にしてしまう。
    5. 2701.11(無煙炭) vs 2701.12(瀝青炭) vs 2701.19(その他)
      • どこで分かれるか:
        • 無煙炭:揮発分が14%以下(乾燥・無鉱物ベース)
        • 瀝青炭:揮発分が14%超かつ発熱量が5,833kcal/kg以上(湿潤・無鉱物ベース)
      • 判断に必要な情報:工業分析(揮発分)、発熱量試験、分析条件(ベース換算)。
      • 典型的な誤り:産地や商習慣分類(steam coal等)だけでHSを決める。

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    第27類が属する**第V部(鉱物性生産品)について、WCO公開のHS2022構成(目次)上、部注(Section Notes)の掲載は確認されません。実務上は、まず類注(Chapter Notes)**が支配的です。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 第27類は、部注よりも**類注(注1〜注3)と、号注(Subheading Notes 1〜5)**が直接分岐を作ります。
      • 例:使用済み潤滑油は、注3の定義に当たると「waste oils」として扱う、など。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • (部注による“飛び”はこの部では限定的なため)主に類注で他章へ飛びます(次節)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1(除外):分離した単一有機化合物(ただし純メタン・純プロパンは2711へ)、医薬品(30類)、特定の混合不飽和炭化水素(33.01/33.02/38.05)は第27類から除外。
    • 注2(2710の“石油油”の範囲):2710でいう「石油油等」は、石油由来に限らず、非芳香族成分の重量が芳香族成分を上回る“類似油”も含み得ます。一方で、一定条件の液状合成ポリオレフィンは除外(第39類)
    • 注3(waste oils定義):主に石油油等からなる廃棄物で、水混入の有無を問わず、使用済み油・タンクスラッジ・油水エマルジョン等が例示。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • waste oils(廃油):上記注3の範囲(例示を含む)。
    • (注2関連)“石油油等”の参照範囲:芳香族/非芳香族比、合成ポリオレフィン除外の蒸留条件。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 分離した単一有機化合物 → 第29類(例外:純メタン・純プロパンは2711)
    • 液状合成ポリオレフィン(所定の蒸留条件)→ 第39類

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的です。

  • 影響ポイント1:2710の対象になる“石油油等”か(注2)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 芳香族/非芳香族の重量比較、蒸留性状(合成ポリオレフィン除外の確認)
    • 現場で集める証憑:SDS、成分表(炭化水素組成)、蒸留試験成績、製造工程(由来が石油か合成か)。
    • 誤分類の典型:
      • PAO等の合成基油を「鉱物油っぽい」だけで2710に入れる(実は注2の除外に当たり得る)。
  • 影響ポイント2:“waste oils(廃油)”に当たるか(注3)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • その油が「一次製品として使用に適さない」状態か、タンクスラッジ/油水混合物か、使用済みか。
    • 現場で集める証憑:使用履歴(メンテ記録)、汚染・添加剤分析、回収工程図、写真、MSDS、取引契約(廃棄物/再資源化)。
    • 誤分類の典型:
      • 再生原料という名目で製品油扱い(2710.19等)にしてしまい、注3該当の指摘を受ける。
  • 影響ポイント3:石炭の“無煙炭/瀝青炭”判定(号注1・2)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):揮発分%(乾燥・無鉱物)、発熱量(湿潤・無鉱物)。
    • 現場で集める証憑:分析成績書(試験方法、ベース換算の明記)、サンプル採取条件。
    • 誤分類の典型:
      • 産地証明だけで無煙炭とする/一般炭とする(試験値が無い)。
  • 影響ポイント4:2710.12“軽質油”の判定(号注4)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):ISO 3405の蒸留で210℃までに90vol%留出。
    • 現場で集める証憑:蒸留試験表、品質規格書、ロット管理。
    • 誤分類の典型:
      • “灯油/軽油”の商業名だけで軽質/その他を決める。
  • 影響ポイント5:バイオディーゼルの定義(号注5)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):脂肪酸モノアルキルエステル(燃料用)か、由来(動物/植物/微生物)。
    • 現場で集める証憑:FAME分析、原料情報、SDS。
    • 誤分類の典型:
      • “バイオ燃料”という表現だけで2710.20相当と判断(実際は別章の化学品のことも)。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:「ガソリン」「灯油」等の品名だけで2710.12/2710.19を決める
    • なぜ起きる:商流名とHS分岐(蒸留条件)が一致すると思い込みやすいです。
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):2710.12は**蒸留(210℃で90vol%)**という定義(号注4)で決まります。
    • 予防策:蒸留試験成績(ISO 3405)を必ず入手。社内質問例:「この品はD86/ISO3405の蒸留表がありますか?」
  2. 間違い:使用済み潤滑油を“製品油”として申告(waste oilsの見落とし)
    • なぜ起きる:「再生目的=製品」と誤認しやすいです。
    • 正しい考え方:注3は、使用済み潤滑油等をwaste oilsとして例示しています。
    • 予防策:使用履歴、汚染状況、回収工程を提出資料に反映。社内質問例:「この油は一度設備で使用しましたか?汚染物は何ですか?」
  3. 間違い:PAO等の合成基油を2710に入れる
    • なぜ起きる:「見た目が鉱物油」「用途が潤滑油ベース」という理由で寄せがちです。
    • 正しい考え方:注2は、一定条件の**液状合成ポリオレフィンを除外(第39類)**しています。
    • 予防策:蒸留性状(300℃での留出率)やポリオレフィン由来を確認。社内質問例:「基油は鉱油ですか、合成(PAO等)ですか?」
  4. 間違い:石炭タール蒸留油(2707)を2710にしてしまう
    • なぜ起きる:SDS上の“hydrocarbon solvent”表記だけで石油系と誤認。
    • 正しい考え方:2707は芳香族が非芳香族より優勢の蒸留油等が中心です。
    • 予防策:原料(高温石炭タール由来か)と芳香族/非芳香族比の確認。社内質問例:「原料は石炭タールですか?GCで芳香族比率は?」
  5. 間違い:ベンゼン/トルエン等の留分を“混合物だから”として2707.99に入れる
    • なぜ起きる:物質含有割合の閾値を見落としがちです。
    • 正しい考え方:号注3により、ベンゼン等は50wt%超なら該当サブヘディングで扱います。
    • 予防策:主要成分の重量%を分析で確定。社内質問例:「ベンゼン/トルエン/キシレンの含有率(wt%)は?」
  6. 間違い:“石油系添加剤(例:オクタン価向上剤)”を2710にする
    • なぜ起きる:「燃料に混ぜるもの=燃料HS」と短絡しがちです。
    • 正しい考え方:2710は石油油が主成分等の枠(70wt%・主成分)で捉える必要があり、添加剤は第38類(調製品)側に寄ることがあります。
    • 予防策:石油油の含有率(70wt%基準)と“主成分”かを確認。SDSと配合表を収集。
  7. 間違い:石炭(2701)で無煙炭/瀝青炭を“呼称”だけで決める
    • なぜ起きる:契約名(steam coal等)とHS定義がズレることがあります。
    • 正しい考え方:無煙炭・瀝青炭は号注1・2の試験値定義です。
    • 予防策:分析成績書(揮発分・発熱量)を必須化。
  8. 間違い:2712(鉱物性ろう)と、他章の“調製ワックス”を混同
    • なぜ起きる:「ワックス=2712」と思いがちです。
    • 正しい考え方:2712は鉱物性ろう等の範囲で、添加剤入り・調製品は他章の可能性があります(個別検討)。
    • 予防策:成分(添加剤の有無)・用途・製造工程を確認。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること(誤ると原産性判断が崩れる)
    • 第27類は、(1)**採掘・産出(WO:完全生産)**が取りやすい品目(石炭・原油等)と、(2)精製・混合が絡む品目(2710の調製品等)が混在します。
    • HSを誤ると、PSR(CTH/CTSH/RVC/特定工程など)の前提が崩れて、原産性判断が“やり直し”になります。
  • よくある落とし穴(材料のHS、最終製品HS、工程の評価軸)
    • 「原油→精製油」の場合、**工程(精製・混合)**がPSRで問われることがあります。
    • 2710の“調製品”側は、材料(添加剤等)のHS把握が必要になる場面があります。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 「当該協定が参照するHS版(例:HS2012参照 等)」を明記
    • 協定・国により参照するHS版が異なる場合があるため、協定本文・運用ガイダンス・税関が出すトランスポーズ版を必ず確認してください。
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
    • 実務では、税関が**HS2022表記でPSR一覧(対応表)**を出していることがあります(例:日本税関のRCEP PSR資料は「HS Code (HS 2022)」表記)。
    • “PSRの表がHS2022”でも、裏では旧版ベースの構造が残る場合があるため、疑義があれば税関資料の注記・対応関係を確認します。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • 旧HSでPSRが書かれている場合は、WCO相関表(Correlation Tables)で旧→新を機械的に置換せず、品目範囲(見出しの意味)が同一かを確認します。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • 2710の調製品は特に、配合表(石油油の重量%・添加剤)と工程(ブレンド/精製/再生)が重要です。
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 産地証明・採掘証明・製造工程図・試験成績(蒸留・成分)など、分類で集めた資料がそのまま原産性の裏付けにもなります。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022文言修正(号注5:2710関連)「バイオディーゼル」定義が、動物・植物由来に加え微生物由来を含む表現に更新微生物由来の燃料用FAMEを扱う場合、定義適合の説明がしやすくなる
HS2017→HS2022変更なし(6桁の改廃なし)第27類全般WCO相関表(HS2017↔HS2022)上、第27類の6桁改廃・移動の記載は確認されない通常は従前の6桁設計のまま運用。ただし国内コードや制度要件は別途確認

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料(相関表、WCO条文、各国税関の解説、協定付属書など)
    • WCO公開のHS2017 第27類条文HS2022 第27類条文を比較し、号注5(biodiesel定義)が「animal or vegetable」→「animal, vegetable or microbial」へ更新されている点を確認しました。
    • また、WCOの**HS2017↔HS2022相関表(Table I)**では、第27類の6桁コード改廃・移動の記載が確認されず、構造変更(新設/分割等)はないと整理しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(主要論点のみ)
版の変更主要な追加・削除・再編旧コード→新コード(または行き先)コメント
HS2007→HS2012**バイオディーゼル含有(石油油70wt%以上)**のサブヘディング新設(旧)ex2710.11/ ex2710.19 →(新)2710.20 等相関表に「2710.20新設」および定義(号注5)が明記
HS2012→HS2017第27類の6桁改廃の記載なしWCO相関表に第27類の変更記載が確認されない
HS2017→HS2022第27類の6桁改廃は原則なし(ただし定義文言更新あり)号注5に微生物由来が追加

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):使用済み作動油を“製品油”で申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):注3(waste oils定義)の見落とし
    • 起きやすい状況:再生業者向け輸入で「原料=商品」と誤認、SDSも新品用を流用
    • 典型的な影響:修正申告、追加資料要求、検査強化、納期遅延(一般論)
    • 予防策:使用履歴/汚染分析/回収工程を事前準備、必要に応じて事前教示
  • 事例名(短く):合成基油(PAO)を2710で申告
    • 誤りの内容:注2の除外(合成ポリオレフィンの蒸留条件)に抵触し得る
    • 起きやすい状況:「鉱物油代替」用途で、商流名が“base oil”
    • 典型的な影響:品目更正、提出資料(蒸留試験等)の追加、評価やり直し
    • 予防策:原料系統・蒸留性状の試験成績を準備、SDSで合成由来を明確化
  • 事例名(短く):“軽質油”判定の試験がなく2710.12で申告
    • 誤りの内容:号注4(210℃で90vol%留出)の根拠不足
    • 起きやすい状況:スポット輸入・ブレンド品で、品質証明が簡略
    • 典型的な影響:検査・サンプル採取、通関遅延
    • 予防策:ISO 3405の蒸留表をロットごとに確保、契約で提供を義務化
  • 事例名(短く):石炭の品位区分(無煙炭/瀝青炭)を呼称で決定
    • 誤りの内容:号注1・2(揮発分・発熱量)の不適合
    • 起きやすい状況:長期契約で“通称”が固定、試験ベース換算が不統一
    • 典型的な影響:税番差替え、統計訂正、追加資料要求
    • 予防策:分析方法・換算ベースを統一し、成績書フォーマットを標準化

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第27類は一般にSPSより、危険物・エネルギー関連の手続が中心です。
  • ワシントン条約(CITES)等の種規制
    • 通常は該当しません。
  • 安全保障貿易管理(該当する場合)
    • 対象国・用途・制裁等で変動します。個別取引で最新の法令・告示を確認してください(一般論)。
  • その他の許認可・届出
    1. 石油の輸入に関する登録・届出(備蓄法・品確法)
      • 石油の輸入を行う場合、備蓄法に基づく登録や、輸入後の品確法に基づく届出・規格適合確認が必要となる旨が公的に案内されています(対象油種の例示あり)。
      • 税関手続面でも、原油・揮発油・灯油・軽油・重油の輸入通関に関し、当局間文書として取扱いが示されています。
      • さらに、(国内制度上の区分として)原油は2709.00等、揮発油等は2710各号等を参照して整理されている例があります(国内コードの参照であり、HS6桁と混同しない)。
    2. 危険物規制(消防法:第4類引火性液体など)
      • ガソリン・灯油・軽油・重油等は、消防法令上の「引火性液体」区分・引火点基準等があり、保管・取扱い・施設要件に影響します(例:第1石油類/第2石油類…)。
    3. 高圧ガス(LPG/LNG等):輸入検査等
      • 高圧ガスを輸入した者は、輸入検査を受け、適合が認められるまで移動できない等の手続が示されています(法令条文引用は避け要約)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経済産業省(資源エネルギー庁・各経産局):備蓄法/品確法関連の手続案内
    • 財務省・税関:石油輸入通関の取扱いに関する通達等
    • 消防庁・消防本部:危険物(消防法)関係
    • 都道府県(高圧ガス)・指定機関:輸入検査等
  • 実務での準備物(一般論):
    • 製品SDS、成分表、蒸留試験/引火点試験等の成績書、用途説明
    • 備蓄法登録関連の書面(必要な場合)、品確法届出関連の書面(対象油種の場合)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 由来(石油/石炭タール/天然ビチューメン/合成)
    • 形状(固体/液体/ガス)、用途(燃料/原料/舗装/潤滑)
    • SDS、成分表、蒸留曲線、揮発分/発熱量(石炭)、引火点(危険物該当性確認用)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 2710:注2(石油油範囲)/注3(waste oils)/70wt%・主成分の当てはめ
    • 2701:号注の数値要件(揮発分・発熱量)
    • 2707:芳香族優勢、50wt%超条件
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • 品名は商流名だけでなく「例:petroleum oils (other than crude), containing biodiesel…」等、HSの観点が伝わる表現を検討
    • 日本の統計単位は、**KG、MT、KL、L、CM(立方メートル)**等が使われます(単位略号は税関の一覧で確認可能)。
    • 廃油該当の可能性がある場合:使用履歴・回収工程・分析結果を添付
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定の参照HS版と、税関が公表するPSR表(HS2022表記か)を確認
    • 原油→精製油の場合、工程証憑(製油所工程、ブレンド記録)を整備
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 備蓄法登録・品確法届出の要否(対象油種、用途)
    • 危険物(消防法)区分の確認(引火点等)
    • LPG/LNG等:高圧ガス輸入検査等の確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Chapter 27(条文・注・号注) (参照日:2026-02-19)
    • HS2017 Chapter 27(条文・注・号注) (参照日:2026-02-19)
    • Correlation Tables HS 2017–2022(Table I 等) (参照日:2026-02-19)
    • Correlating HS2012 to HS2007(Table I:2710.20新設の記載) (参照日:2026-02-19)
    • Correlating HS2017 to HS2012(Table I:第27類の改廃記載確認用) (参照日:2026-02-19)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 日本税関:統計単位の略号一覧(KG, KL, L, MT, CM 等) (参照日:2026-02-19)
    • 経済産業省関東経済産業局:揮発油等の輸入に関する各種届出(備蓄法・品確法の手続案内) (参照日:2026-02-19)
    • 財務省関税局・税関:備蓄法に基づく原油等の輸入通関取扱い(通達) (参照日:2026-02-19)
    • 消防庁:消防法令抜粋(危険物の定義・引火点区分等) (参照日:2026-02-19)
    • 高圧ガス保安協会(KHK):高圧ガス輸入の申請手続き(輸入検査等の概要) (参照日:2026-02-19)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 日本税関:RCEP Product-Specific Rule(HS Code (HS 2022) 表記のPSR一覧) (参照日:2026-02-19)
  • その他(業界団体、公的統計等)
    • (必要に応じて)石油/LPガス業界団体の品質規格・試験方法資料、船積・保管の危険物取扱ガイド等

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

HS2022 第26類:鉱石、スラグ及び灰 Ores, slag and ash

用語は次で統一します。類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの

この章は「超要約」です。

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 鉄鉱石・鉄精鉱(ペレットでない粉鉱も、ペレット等の凝結品も:2601)
    • 銅鉱(銅精鉱):2603
    • ウラン鉱・トリウム鉱(精鉱含む):2612
    • 製鉄・製鋼由来の粒状スラグ(スラグサンド):2618
    • 金属や砒素を含むスラグ・灰・残留物(ただし条件あり:2620)
    • 都市廃棄物の焼却灰:2621.10
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先も併記):
    • 道路用路盤材として加工したスラグ等(マカダム状) → 25.17
    • 石油タンクのスラッジ(主として石油) → 27.10
    • 塩基性スラグ(肥料用途のもの等) → 第31類
    • スラグウール/ロックウール等の鉱物繊維 → 68.06
    • 貴金属の回収目的のスクラップ → 71.12 または(HS2022では)85.49
    • 銅・ニッケル・コバルトのマット(溶錬で得たもの) → 第XV部(卑金属)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「鉱石(ore)」の定義に当てはまるか(類注2の範囲)
    2. スラグ/灰/残留物は“発生源”が製鉄・製鋼か、それ以外か、都市ごみ焼却か(2618/2619/2620/2621の分岐)
    3. 2620の中では**「主成分の金属」砒素・水銀・タリウム等**の有無で号が割れる
  • この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 2620/2621(灰・残留物)が“廃棄物”扱いになり得るとき(バーゼル法等の手続)
    • **2612(ウラン・トリウム鉱)**で、核原料物質としての手続が絡むとき

1. 区分の考え方

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • 第26類は、ほぼ**GIR1(品目表の文言+注)**で決まります。特に効くのは次です。
    • 類注1(除外):ここに該当すると、最初から第26類ではありません
    • 類注2(“ores”の定義):2601〜2617に入るかどうかの「入口」
    • 類注3(2620の適用条件):2620に入れるための条件が明示されています
  • 号(6桁)の決定はGIR6で、同じ階層(6桁同士)の文言と注で判断します(例:2601.11 vs 2601.12、2620.11/19/…)。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 材質・化学形態:鉱物(鉱石)か、化学品(酸化物・塩等)か
    • 加工度:選鉱レベルか、化学処理・焼成などで“鉱石”の範囲を超えたか(類注2の考え方)
    • 発生源:製鉄・製鋼由来か/それ以外の工業由来か/都市ごみ焼却か(2618/2619/2620/2621)
    • 用途:2620は「金属抽出」や「金属化合物製造の原料」等、用途(種類)が条件になる

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:まず「除外」に当たらないか確認
    • 道路用に加工したスラグ(25.17)、石油スラッジ(27.10)、肥料の塩基性スラグ(31類)、鉱物繊維(68.06)、貴金属回収用スクラップ(71.12/85.49)、銅・ニッケル・コバルトのマット(第XV部)などは第26類ではありません。
  • Step2:2601〜2617の「鉱石・精鉱」か?
    • 類注2の“ore”に当てはまる(冶金用の鉱物種で、過度な加工をしていない)なら、金属別に2601〜2617へ。
    • 当てはまらない場合はStep3へ。
  • Step3:製鉄・製鋼由来のスラグ/くずか?
    • 粒状スラグ(スラグサンド) → 2618
    • 粒状以外のスラグ・ドロス・スケール等(製鉄・製鋼由来) → 2619
    • それ以外ならStep4へ。
  • Step4:製鉄・製鋼以外由来のスラグ/灰/残留物か?
    • 金属・砒素等を含み、かつ類注3の用途条件に合う → 2620(主成分等で号決定)
    • 都市廃棄物の焼却灰 → 2621.10(2620から除外される)
    • その他のスラグ・灰 → 2621.90
  • よく迷う境界(例):
    • 25.17(路盤材) vs 2618/2619(製鉄由来スラグ)
    • 2620(工業用金属回収等の残留物) vs 2621(都市ごみ焼却灰を含む“その他”)
    • 2616(貴金属鉱) vs 71.12/85.49(貴金属回収用スクラップ)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
2601鉄鉱石・鉄精鉱(焼いた硫化鉄鉱を含む)鉄鉱石(粉鉱/ペレット)、焼いた硫化鉄鉱2601.11 非凝結 / 2601.12 凝結 / 2601.20 焼いた硫化鉄鉱
2602マンガン鉱・マンガン精鉱(乾燥重量でMn20%以上の含鉄マンガン鉱含む)マンガン鉱**Mn20%以上(乾燥重量)**の文言が鍵
2603銅鉱・銅精鉱銅精鉱「マット(溶錬品)」は類注1で第XV部へ
2604ニッケル鉱・ニッケル精鉱ニッケル精鉱ニッケルマットは除外(第XV部)
2605コバルト鉱・コバルト精鉱コバルト精鉱コバルトマットは除外(第XV部)
2606アルミニウム鉱・精鉱ボーキサイト等化学処理で酸化アルミ等になっていれば28類側の検討が必要(一般論)
2607鉛鉱・精鉱鉛精鉱2620(鉛を主成分とする残留物)と混同しない
2608亜鉛鉱・精鉱亜鉛精鉱2620(亜鉛主成分の残留物)と混同しない
2609すず鉱・精鉱すず精鉱
2610クロム鉱・精鉱クロム鉄鉱等
2611タングステン鉱・精鉱灰重石等の精鉱
2612ウラン鉱/トリウム鉱・精鉱ウラン鉱、トリウム鉱核原料物質として他法令の手続が絡む可能性
2613モリブデン鉱・精鉱焼いたモリブデン精鉱/その他2613.10(焼いたもの)vs 2613.90(その他)
2614チタン鉱・精鉱イルメナイト等の精鉱類注2の“ore”か、酸化チタン等の化学品かの見極め(一般論)
2615ニオブ/タンタル/バナジウム/ジルコニウム鉱・精鉱ジルコンサンド等2615.10(ジルコニウム)vs 2615.90(その他)
2616貴金属鉱・精鉱銀鉱/銀精鉱、金銀含有鉱等2616.10(銀)vs 2616.90(その他)。回収目的のスクラップは除外
2617その他の鉱・精鉱アンチモン鉱、その他未列挙の金属鉱2617.10(アンチモン)vs 2617.90(その他)
2618製鉄・製鋼の粒状スラグ(スラグサンド)高炉スラグの粒状品粒状であることがポイント
2619製鉄・製鋼のスラグ/ドロス/スケール等(粒状以外)スケール、ドロス等2618(粒状)と混同しない
2620(鉄鋼由来以外の)金属・砒素等含有のスラグ/灰/残留物亜鉛灰、鉛含有残留物、砒素含有残留物等類注3の「用途条件」と、主成分金属等で号を選ぶ
2621その他のスラグ・灰(都市ごみ焼却灰含む)都市ごみ焼却灰、海草灰(ケルプ)2621.10(都市ごみ焼却灰)と2621.90(その他)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐

第26類は、号の分岐が「少ない項」と「2620のように細かい項」で差が大きいです。実務で効きやすい分岐だけに絞ります。

  • 分岐条件の整理(代表)
    • 形状(凝結の有無):2601.11(非凝結)/ 2601.12(凝結)
    • 焙焼の有無:2613.10(焼いたモリブデン)/ 2613.90(その他)
    • 鉱種(ウラン/トリウム、銀/その他貴金属、アンチモン/その他):2612、2616、2617の分岐
    • 発生源・用途・含有主成分:2620/2621の分岐
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(例:2〜5組)
    1. 2601.11 vs 2601.12(鉄鉱の非凝結/凝結)
      • どこで分かれるか:ペレット化・焼結等で凝結しているか
      • 判断に必要な情報:製品形状(粉鉱/ペレット)、粒度、製造工程(焼結/ペレタイジングの有無)
      • 典型的な誤り:「粉状だが微量バインダー使用→凝結扱い」と早合点(実態の形状で整理)
    2. 2612.10 vs 2612.20(ウラン鉱/トリウム鉱)
      • どこで分かれるか:主対象がウラン系かトリウム系か
      • 判断に必要な情報:分析表(U/Th含有)、鉱物名、用途(核原料物質該当性の確認は別途)
      • 典型的な誤り:レアアース原料等の中にU/Thが混在しているのに、別鉱種として扱い見落とす
    3. 2616.10 vs 2616.90(銀鉱/その他貴金属鉱)
      • どこで分かれるか:銀鉱(銀精鉱)として扱うか、その他の貴金属鉱か
      • 判断に必要な情報:主要回収対象(Agか、Au/Pt等か)、品位(分析)
      • 典型的な誤り:回収目的の「スクラップ」を“鉱”と呼んで2616に寄せる(類注1(f)で除外の可能性)
    4. 2620(各号) vs 2621.10(都市ごみ焼却灰)
      • どこで分かれるか:都市廃棄物の焼却由来かどうか
      • 判断に必要な情報:発生源(自治体施設の焼却灰か、工場工程の灰か)、産廃/一廃区分資料、工程説明
      • 典型的な誤り:重金属を含むので「2620だろう」と決め打ち(類注3で“都市ごみ焼却灰”は2621)
    5. 2620の中の号選択(“主として○○を含む”)
      • どこで分かれるか:
        • 亜鉛主成分:2620.11(ハードジンクスペルター)/ 2620.19(その他)
        • 鉛主成分:2620.21(加鉛ガソリン等由来スラッジ)/ 2620.29(その他)
        • 銅主成分:2620.30
        • アルミ主成分:2620.40
        • 砒素・水銀・タリウム等(抽出/化合物製造用):2620.60
        • その他(特定金属含有):2620.91 / 2620.99
      • 判断に必要な情報:元素分析(主成分の判定)、発生源・用途(特に2620.60)、SDS/試験成績
      • 典型的な誤り:主成分判定を「含有している」レベルで判断する/2620.60を“有害だから”で選ぶ(用途条件がある)

3. 部注と類注の詳細解釈

この章は「条文をそのまま引用せず、実務的に何を意味するか」を整理します。

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第26類は**第05部(鉱物性生産品)**に属しますが、WCOの目次上、第05部には“部注(Section Notes)”が設けられていない構成です(部注があるのは第06部など)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • したがって、第26類の判断は基本的に類注(Chapter Notes)と各見出し文言が中心になります。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 第05部の部注で飛ぶのではなく、**第26類の類注1(除外)**で他類・他項へ飛ぶのが典型です。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 類注1:第26類に入らないもの(除外)
      • 路盤材(25.17)、マグネサイト(25.19)、石油スラッジ(27.10)、塩基性スラグ(31類)、鉱物繊維(68.06)、貴金属回収用スクラップ(71.12/85.49)、銅・ニッケル・コバルトのマット(第XV部)など。
    • 類注2:2601〜2617における“鉱石(ores)”の考え方
      • 冶金目的で金属抽出に使われる鉱物種(Hg、28.44の金属、または第XIV・XV部の金属)を指し、非冶金用途でも対象になり得る一方、冶金業で通常といえない加工をしたものは除外、という構造です。
    • 類注3:2620の適用条件
      • 2620は「鉄鋼由来以外」のスラグ/灰/残留物で、一定の産業用途(抽出・金属化合物原料等)に使われる種類のものに限る、かつ都市ごみ焼却灰は2621へ、という整理です。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 2620.21の定義(加鉛ガソリン等のスラッジ):加鉛ガソリンや加鉛アンチノック剤の貯蔵タンクから出るスラッジで、主として鉛やその化合物等からなる旨が注で示されています(要約)。
    • 砒素・水銀・タリウム等を含む残留物の扱い:抽出や化合物製造に用いる種類のものは2620.60に分類する旨が注で示されています(要約)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 上記類注1の各除外先が、そのまま除外先です。特に、貴金属スクラップはHS2022では71.12に加え85.49も明示される点に注意が必要です。

4. 類注が分類に与える影響

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を見える化します。

  • 影響ポイント1:“鉱石(2601〜2617)”に入るかどうか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 鉱物名(鉱物種)/主要金属/用途(冶金用か)
      • 加工の程度(選鉱の範囲か、化学処理・焼成等で別物になっていないか)
      • 類注2の範囲に当てはまるか
    • 現場で集める証憑:
      • 仕様書、鉱物分析(XRF等)、品位表、SDS、工程図(破砕・選鉱・焙焼など)、写真(形状)
    • 誤分類の典型:
      • 鉱石を「化学品(28類)」として申告/逆に化学処理済み品を「鉱石」として申告(いずれも審査で突かれやすい)
  • 影響ポイント2:スラグ・灰・残留物(2618/2619/2620/2621)の“発生源”と“用途条件”
    • 何を見れば判断できるか:
      • 製鉄・製鋼由来か(2618/2619)
      • それ以外の産業由来で、金属抽出等に用いる種類か(2620の条件)
      • 都市ごみ焼却由来か(2621.10)
    • 現場で集める証憑:
      • 発生元の工程説明書、排出事業者証明、分析、用途説明、廃棄物該当性の社内判断資料
    • 誤分類の典型:
      • 2620の「用途条件」を確認せず、単に重金属含有で2620に寄せる
  • 影響ポイント3:除外(類注1)を見落とす
    • 何を見れば判断できるか:
      • 「道路用に加工」→ 25.17
      • 「貴金属回収用スクラップ」→ 71.12/85.49
      • 「マット(溶錬品)」→ 第XV部
    • 現場で集める証憑:
      • 用途資料、加工内容、溶錬工程の有無、回収目的の契約・仕様(リサイクル契約書等)
    • 誤分類の典型:
      • 「鉱石っぽい黒い粉」=鉱石、と短絡して2603等へ。実は回収用スクラップで除外、というパターン。

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:道路用の路盤材として加工したスラグを2618/2619で申告
    • なぜ起きる:見た目が「スラグ」なので製鉄スラグ扱いに寄せてしまう
    • 正しい考え方:類注1で、マカダム状にしたスラグ等は25.17へ除外
    • 予防策:用途(道路材)と加工状態(粒度調整・混合・締固め前提)を確認。カタログ・用途仕様を入手。
  2. 間違い:都市ごみ焼却灰を2620(金属含有残留物)で申告
    • なぜ起きる:重金属含有=2620と決め打ち
    • 正しい考え方:類注3で、都市廃棄物焼却灰は2620から外れ2621へ
    • 予防策:発生源(自治体焼却施設か)を証憑で固める。排出元証明・工程説明・分析報告をセットで保管。
  3. 間違い:銅マットを「銅鉱(2603)」として扱う
    • なぜ起きる:取引名が“concentrate/matte”で混乱しやすい
    • 正しい考え方:類注1で、銅・ニッケル・コバルトのマット(溶錬品)は第26類から除外され第XV部
    • 予防策:工程(溶錬=smelting)の有無を確認。製造フロー・SDSで“matte”の定義を確認。
  4. 間違い:貴金属回収目的のスクラップを2616(貴金属鉱)で申告
    • なぜ起きる:貴金属含有=「貴金属鉱」に寄せてしまう
    • 正しい考え方:類注1(f)で回収目的のスクラップは除外。HS2022では71.12に加え85.49も参照される
    • 予防策:原材料の出自(鉱山由来か、製造・廃棄物由来か)と「回収目的」を契約・仕様で確認。
  5. 間違い:**非凝結の鉄鉱石(粉鉱)**を2601.12(凝結)で申告
    • なぜ起きる:輸送形態(バルク)だけで判断
    • 正しい考え方:2601.11(非凝結)と2601.12(凝結)の区別は形状・工程に基づく
    • 予防策:粉鉱/ペレット等の形状、製造工程、粒度分布を入手。
  6. 間違い:2620.60を「有害金属が入っているから」と安易に選ぶ
    • なぜ起きる:砒素・水銀・タリウム等があると条件反射で2620.60
    • 正しい考え方:2620.60は注で“抽出・化合物製造に用いる種類”という用途条件が示される(要約)
    • 予防策:用途(回収工程で使うのか)と取引実態(回収業者向けか)を確認。用途説明書を添付。
  7. 間違い:石油タンク由来スラッジを2620/2621で申告
    • なぜ起きる:スラッジ=灰・残留物という連想
    • 正しい考え方:類注1で、石油タンクのスラッジ(主として石油)は27.10へ除外
    • 予防策:成分(主として鉱物か油分か)をSDS/分析で確認。

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。第26類は特に、
    • 「鉱石(2601〜2617)」なのか
    • 「残留物(2620/2621)」なのか
    • 「スクラップ(71.12/85.49等)」なのか
      で、PSRの考え方(WO/CTH/RVC等)が大きく変わり得ます。
  • よくある落とし穴(一般論)
    • 原産性判定は「最終製品HS」だけでなく、非原産材料のHS、工程(選鉱・焙焼・回収等)も絡みます。
    • “廃棄物・スクラップ”は協定上「締約国内で得られたもの(WO)」に当たり得る場合もありますが、定義・条件は協定ごとに確認が必要です(一般論)。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定本文・付属書(PSR)が参照するHS版は、協定により異なります。
  • 例としてRCEPは、PSRをHS2022にトランスポーズした版が採択され、当事国が2023年1月1日から実施する旨が日本税関資料に示されています。
  • HS版がズレる場合の注意(一般論)
    • HS改正でコード体系が変わった場合、旧HSでのPSRを新HSに読み替える必要があります。
    • その際は、WCOの相関表(Correlation tables)等を使って“旧→新”を機械的に当て、さらに範囲(スコープ)の変更がないかを確認します。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程(採掘→選鉱→焙焼→回収等)、原産国
  • 非原産材料のHS(少なくとも6桁)、RVC計算に使う前提資料
  • 証明書類・保存要件(一般論):協定別の保存年限、検認対応のための証憑(分析表、工程図、契約書)をセットで。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い

7-1. 変更点サマリー(表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022(6桁の)変更なし26.01〜26.21(HS6桁)WCOのHS2017–2022相関表(Table I/II)に第26類のサブヘディングが掲載されていない=少なくともHS6桁の新設・分割・統合等は示されていないHS6桁レベルの付番は原則そのまま。ただし国内細分は別途確認
HS2017→HS2022文言修正(注の参照先追加)類注1(f)貴金属回収目的のスクラップの除外先に、71.12に加えて85.49が追記された“回収目的スクラップ”の分類先が71.12だけとは限らない点に注意(HS2022の取扱い)

7-2. 「違うことになった根拠」

  • 6桁変更なしの根拠(読み取り):
    • WCOはHS2017→HS2022の相関表(Correlation tables)を公開しており、Table I/IIは改正で影響を受けるサブヘディング等の整理に用いられます。
    • そのTable I/IIに第26類(26.01〜26.21)のサブヘディングが見当たらないため、少なくともHS6桁体系の新設・分割・統合等は示されていない、と整理できます(※“相関表に載らない変更がゼロ”という意味ではなく、HS6桁の構造変更が表に現れていない、という趣旨)。
  • 類注1(f)の参照追加の根拠:
    • HS2017の類注1(f)は除外先として71.12のみを挙げています。
    • HS2022の類注1(f)は除外先として71.12に加え85.49も挙げています。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

第26類は、少なくともHS2007以降、26.01〜26.21(2601〜2621)の骨格が大きく変わっていない部類です(条文比較ベース)。

期間主な追加・削除・再編対象コード備考(旧→新対応)
HS2007→HS2012大きな変更の示唆なし(見出し・号構造は同様)2601〜2621対応:実質変更なし(本類内)
HS2012→HS2017大きな変更の示唆なし(見出し・号構造は同様)2601〜2621対応:実質変更なし(本類内)
HS2017→HS2022類注1(f)の参照先に85.49が追加類注1(f)(除外)旧:71.12 → 新:71.12/85.49(除外先追加)

※上表は「HS6桁(国際6桁)」の話です。各国の国内コード(8桁/9桁等)は別途変わり得ます。


9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名:都市ごみ焼却灰を2620で申告して差戻し
    • 誤りの内容(どの類注に抵触):類注3の「都市ごみ焼却灰は2621」趣旨を無視
    • 起きやすい状況:分析表だけ提出し、発生源資料がない
    • 典型的な影響:修正申告、追加資料要求、検査強化、通関遅延
    • 予防策:発生源証明(自治体施設証明等)+工程説明+分析をセットで準備。廃棄物規制の事前確認も。
  • 事例名:銅マットを“銅精鉱”として2603申告
    • 誤りの内容:類注1(g)の除外(マットは第XV部)に抵触
    • 起きやすい状況:売買名がconcentrate/matteで混在
    • 典型的な影響:分類差戻し、関税率・規制判定や原産地判断のやり直し
    • 予防策:溶錬工程の有無、製品性状(硫化物マット等)を仕様書で確認。
  • 事例名:道路用スラグ路盤材を2618/2619で申告
    • 誤りの内容:類注1(a)の除外(25.17)に抵触
    • 起きやすい状況:スラグという名称だけで判断
    • 典型的な影響:用途確認で差戻し
    • 予防策:用途・加工(マカダム状)をカタログで明確化。
  • 事例名:ウラン/トリウム含有鉱石の規制手続漏れ
    • 誤りの内容:分類は2612でも、核原料物質として手続が必要な場合に未対応
    • 起きやすい状況:レアメタル原料の副成分としてU/Thが混在
    • 典型的な影響:保留、追加手続、遅延
    • 予防策:輸入前に含有確認(分析)→ NRA/関係省庁の手続要否を確認。

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

以下は日本前提の一般的な論点です(全品目に一律でかかるわけではありません)。

  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第26類は通常、動植物検疫の主戦場ではありません(ただし付着物等で例外はあり得ます)。
  • 安全保障貿易管理・核関連
    • **ウラン鉱・トリウム鉱(2612)**は、核原料物質として、数量等に応じて許可・届出等が必要になり得ます(原子炉等規制法関係)。原子力規制委員会(NRA)は、ウランやトリウムの鉱石を扱う場合に手続が必要となり得る旨を案内しています。
    • また、経済産業省は「原子力関連貨物の輸入」ページで、関連法令に基づく管理・報告等に触れています。
  • 廃棄物・バーゼル条約(Basel)関連
    • スラグ・灰・残留物(2620/2621)は、貨物の性状・取引実態によっては「廃棄物」や「特定有害廃棄物等」として越境移動の管理対象になり得ます。経産省はバーゼル条約・バーゼル法の枠組みとして、外為法に基づく承認や環境大臣確認等が必要となる旨を説明しています。
    • 環境省資料やJETROのQ&Aでも、輸入承認等の手続の概要が整理されています。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口)
    • 核関連:原子力規制委員会(NRA)、経済産業省(貿易管理)
    • 廃棄物・バーゼル:経済産業省(バーゼル法)、環境省、税関
  • 実務での準備物(一般論)
    • 分析表(元素組成)、SDS、工程説明、発生源証明(残留物・焼却灰など)、用途説明(回収目的等)
    • 規制該当性の社内判定メモ(誰が・何を根拠に・いつ判断したか)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 製品名(取引名)だけでなく、鉱物名・主成分・含有率・形状(粉/ペレット/粒状等)
    • 加工工程(選鉱、焙焼、溶錬、焼却、回収工程など)
    • 発生源(鉱山由来/製鉄由来/その他工業由来/自治体焼却由来)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 類注1の除外(25.17、27.10、31類、68.06、71.12/85.49、第XV部)に当たらないか
    • 2620なら類注3の条件(用途・都市ごみ焼却灰除外)を満たすか
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名:鉱種・形状・工程(例:“Iron ore fines, non-agglomerated”相当)を誤解なく
    • 数量単位:第26類は統計単位が**MT(トン)**になりやすい(日本の統計品目表でもMTが示される例が多い)
    • 添付:分析表、工程図、写真、用途説明
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定が参照するHS版、PSRの確認(必要なら相関表で読み替え)
    • 証憑の保存設計(検認対応)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 2612(ウラン/トリウム)→ NRA/関係法令の手続要否確認
    • 2620/2621(灰・残留物)→ 廃棄物・バーゼル該当性の事前相談

12. 参考資料(出典)

※参照日:2026-02-19

  • WCO(HS条文)
    • HS2022 第26類(Chapter 26)条文(Notes/Heading list)
    • HS2017 第26類(Chapter 26)条文
    • HS2012 第26類(Chapter 26)条文
    • HS2007 第26類(Chapter 26)条文
    • HS2017–2022 Correlation tables(Table I/II および案内ページ)
  • 日本:税関・公的機関
    • RCEP:HS2022にトランスポーズされたPSR(日本税関資料)
    • 原子力規制委員会(NRA):核原料物質(ウラン・トリウム鉱石等)の取引・取扱い案内
    • 経済産業省:原子力関連貨物の輸入案内
    • 経済産業省:バーゼル条約・バーゼル法の概要
    • 環境省:特定有害廃棄物等の輸出入管理制度(概要資料)
    • JETRO:バーゼル条約規定廃棄物の輸出入手続きQ&A
  • 国内コード(参考:民間提供データ)
    • 日本関税協会 web輸出統計品目表(第26類の統計コード例・単位)

付録A. 国内コード(日本)での主な細分と注意点

  • **HS6桁(国際)に対して、日本では統計・NACCS用に「-000」等を付した国内コード(統計品目番号)**が使われます。例:
    • 2601.11 → 2601.11-000(鉄鉱:非凝結)
    • 2612.10 → 2612.10-000(ウラン鉱)
    • 2620.11 → 2620.11-000(ハードジンクスペルター)
    • 2621.10 → 2621.10-000(都市ごみ焼却灰)
  • 単位は、同表の例では第26類は**MT(トン)**が多いです(統計第II単位がMT)。
  • 注意点:国内コードの細分は改正で変わることがあるため、実務では必ず最新の統計品目表(実行関税率表)で確認してください。

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方

  • 事前教示(一般論)で早くするコツ:次の情報が揃うと相談が進みやすいです。
    • ①品名(取引名+一般名)
    • ②用途(冶金用/回収用/道路材等)
    • ③成分(分析表)
    • ④製造工程(工程図)
    • ⑤写真(形状:粉/粒/ペレット等)
    • ⑥SDS(残留物・灰は特に有効)
  • 第26類は「鉱石か/残留物か/スクラップか」で結論が変わりやすいので、除外(類注1)に当たらない根拠もセットにすると実務的です。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

2月前半のBMS・センサー分類スナップショットを深掘りする

2026年の税番見直しで、コストとリスクを同時に下げる実務ガイド


はじめに

BMSと各種センサーは、EVや蓄電システム、産業機械、IoT機器の中核部品です。一方で、見た目が似ていても「電池として提示されるのか」「制御盤として提示されるのか」「半導体センサーとして提示されるのか」によって、税番の方向性が大きく変わります。

HSは世界共通の6桁が出発点ですが、実務では各国で統計細分や運用差が生じます。日本でも、輸出入統計品目番号は6桁HSコードに国内3桁を付した9桁で運用されます。ここを理解していないと、社内マスターの整合が崩れ、仕入先や海外拠点との会話が噛み合いません。

本記事では、2026年2月前半に見直しておきたい観点として、BMSとセンサーの分類論点を「判断の軸」と「実務の落とし穴」に分けて整理します。最終的に、経営・調達・物流の意思決定に使える形まで落とし込みます。


2月前半のスナップショット

この時期に優先度が上がりやすい論点は次の5つです。

  1. BMSが電池パックの一部として提示されるのか、制御ユニットとして提示されるのか
  2. センサーがHS2022で新設された「半導体ベースの変換器」の範囲に入るのか
  3. センサーが「測定機器」として第90類に寄るのか、それとも「半導体デバイス」に寄るのか
  4. 基板やユニットが、単なる印刷回路なのか、制御盤なのか、特定機器の部分品なのか
  5. 社内の品名、仕様書、BOM、梱包形態が「提示態様」を曖昧にしていないか

これらは関税率だけの話ではありません。原産地判定、輸出管理、顧客への価格提示、輸送書類の整合など、ビジネスの下流工程に連鎖します。


BMS分類を深掘りする

まず押さえる前提

HS分類の基本は、品目表の文言と部注・類注に基づいて判断することです。複合品やセットなど複数の要素がある場合は、「重要な特性」を与える要素で判断するという考え方が軸になります(WCO解釈通則3(b))。

この原則を前提に、BMSは実務上、次の2タイプに分けて考えると誤分類が減ります。


タイプ1:セルやモジュールを含む、電池パック内蔵型BMS

セルを含む構成で外観上も電源として提示される場合、論点は「電池として提示されているか」に収束します。日本の関税率表では、リチウムイオン蓄電池は第85類の8507.60に位置づけられます。

米国の事例では、BMSがリチウムイオンセルを含み電源として機能する提示態様において、セルが不可欠である点などを踏まえ、電気蓄電池の範囲で扱う判断が示されています(HQ H155376、第三者アーカイブに掲載)。

実務上のポイントは次の3点です。

①見積・契約段階で「セル入りか」を明確化する 同じBMSという品名でも、セル入りとセル無しで分類候補が分かれます。品名だけで処理すると誤分類が起きやすくなります。

②梱包と提示資料が「電池らしさ」を強めるかを点検する 仕様書や梱包ラベルに「power source」「battery pack」という表現が中心になっていると、電池としての提示性が強まります。

③部分品輸入の可能性も並走して検討する 電池そのものではなく「蓄電池の部分品」として提示されるケースもあり、8507.90が候補になる局面があります。


タイプ2:セルを含まない、制御ユニット型BMS

セルを含まない場合、BMSは「電池」より「制御」「監視」「保護」「配電」に軸足が移ります。候補になりやすいのが次の領域です。

① 第85類 8537.10(制御・配電用の盤) 8537は、電気の制御または配電用の盤・パネル等で、機器を二以上備えるものなどを含みます。BMSがヒューズ、スイッチング、遮断、配電・制御を担い、盤としての提示態様が強い場合に論点になります。8537.10は電圧1,000V以下のものが対象です。

② 第90類 9032.89(自動調整機器) 9032は自動調整・自動制御の機器で、電気式のものを含む区分があります。BMSが測定値に基づいて充放電を自動制御し、制御装置として提示される場合に候補として浮上しやすい領域です。

③ 部分品としての8538.90、または印刷回路としての8534.00 BMSが特定の制御盤や機器に専ら又は主として使用される部品として提示される場合、8538.90が論点になります。単に印刷回路として提示される場合は8534.00が候補になる局面があります。

ここで重要なのは、BMSを「基板」「ユニット」「制御盤」「部分品」のどれとして提示しているかを、書類と現物の両方で整合させることです。技術的に同じ回路でも、通関上の提示態様が違えば、分類ロジックが変わります。

BMS分類で必ず確認すべき質問

社内でレビューするときは、次の問いに答えられるようにしておくと判断がブレにくくなります。

  1. セルを含むか。含むなら、どこまでが一体か
  2. 電池としての機能(蓄電と出力)が主か、制御が主か
  3. 遮断、保護、配電などの電気的機能がどの部品で実現されるか
  4. 単体で機能するか、特定の機器に専用か
  5. 提示資料における主たる用途の説明は何か

センサー分類を深掘りする

HS2022で重要度が上がった「半導体ベースの変換器」

センサー分類で見落としが増えやすいのが、HS2022改正で新設された「半導体ベースの変換器」です。税関関税協会の解説FAQでも、従来は多数のHSコード(例:第84.31項、第84.66項、第84.73項等)に分類されていたものが、今次改正により特定のコード(8541.51)に分類されることとなった旨が明確に説明されています。

日本の関税率表でも、8541.51として「半導体ベースの変換器」が明確に掲げられています。

ビジネス上の意味はシンプルです。センサーを「測定機器」として第90類に入れていた慣行が、製品によっては見直し対象になり得るということです。特に、半導体素子としての提示性が強い場合や、モジュール構成が軽い場合に論点になりやすくなります。

センサーを3層で整理する

実務では、センサーを次の3層で整理すると、社内マスターの混乱を防げます。

① 半導体デバイス寄り 半導体ベースの変換器(8541.51)など。

② 測定機器寄り(第90類) 温度計などの9025(電気式を含む区分あり)、圧力測定などの9026.20(電気式を含む区分あり)、その他の測定・検査機器としての9031.80など。

③ 組込み・部分品寄り 特定の装置の部品として提示されるケース。基板単体の提示なら8534.00、制御系の部品なら8538.90などの論点が出ます。

ありがちな落とし穴

落とし穴①:センサーという品名だけで第90類に寄せてしまう HS2022以降、半導体ベースの変換器に該当する可能性があるため、まず「半導体デバイスとしての提示態様か」を確認する必要があります。

落とし穴②:基板付きセンサーを無条件で印刷回路扱いにしてしまう 基板があるだけで8534.00に固定すると、センサー機能が重要な特性を与えるケースでズレが出ます。複合品のときは重要な特性の見極めが必要です。

落とし穴③:電気式の測定機器区分の取りこぼし 例えば圧力測定の9026.20には電気式の区分が存在します。電気式であること自体が分類の枝分かれになることがあります。

落とし穴④:通信機能付きセンサーモジュール 無線やネットワーク機能を持つモジュールは、通信機器との境界が論点になり得ます。製品構成が千差万別なため、仕様書と提示態様の精査が欠かせません。


1枚で整理する:BMSとセンサーの候補マップ

以下は、社内で議論を始めるための「候補の地図」です。確定税番ではなく、製品の提示態様ごとに論点が出やすい方向性として使ってください。

対象提示態様の典型論点になりやすい区分例(日本の6桁起点)
BMS(セル入り)電池パックとして機能・提示8507.60(リチウムイオン蓄電池)
BMS(セル無し)制御盤・制御ユニットとして提示8537.10(制御・配電用の盤等)、9032.89(自動調整機器)
BMS関連の部品盤・開閉器等に専用の部品として提示8538.90(部分品)
基板単体印刷回路として提示8534.00(印刷回路)
半導体センサー半導体デバイスとして提示8541.51(半導体ベースの変換器)
温度・圧力などの測定機器測定機器として提示9025(温度計等)、9026(圧力等)、9031(その他の測定・検査)

この表の各行が根拠を持つのは、日本の関税率表上の各品目説明とHSの解釈通則の考え方に基づきます。


2月後半に向けたアクションプラン

社内マスターを6桁と9桁で二層化する

日本の輸出入統計品目番号は、6桁HSに国内3桁が付いた9桁です。海外拠点や仕入先との会話は6桁で合わせ、申告や統計管理は9桁で運用する二層構造が有効です。

事前教示とBTIで、分類の不確実性を取り除く

分類で迷う製品は、早めに当局の判断を取りに行くほうが、監査・遅延・追加課税のリスクを下げられます。

日本の事前教示制度では、サンプル、写真、原材料、加工工程などの資料を添えて照会でき、文書による回答は原則3年間にわたって全国の税関で尊重されます。口頭照会は「参考」扱いにとどまり、文書回答とは効力が異なる点に注意が必要です。

EUのBTI(拘束的関税情報) は、一般に3年間EU全域で有効な法的決定として位置づけられており、すべてのEU加盟国の税関を拘束します。

分類ファイルを標準化する

監査対応まで見据えるなら、最低限、次のセットを製品ごとに揃えることを推奨します。

  1. 製品仕様書と機能説明(何を測り、何を制御し、何を保護するか)
  2. 構成部品表(主要部品、ヒューズや開閉器の有無、半導体センサーの有無)
  3. 写真、図面、外形、端子・コネクタ情報
  4. 梱包形態と同梱物(単体かセットか)
  5. 社内判断メモ(解釈通則の当てはめ、重要な特性の根拠)

このファイルがあるだけで、担当者が変わっても判断が再現でき、国別運用差に直面したときも修正が効きます。


まとめ

BMSとセンサーの分類は、単なるコード当てはめではなく、製品の提示態様と重要な特性を言語化する作業です。2月前半の見直しでは、次の順で整理すると迷いが減ります。

  1. セルを含むか、電池として提示されるか
  2. 制御盤か、自動調整機器か、部分品か
  3. センサーは半導体ベースの変換器か、測定機器か
  4. 基板は印刷回路か、制御系の部品か
  5. 6桁と9桁のマスター整合、当局照会の準備

ここまでを固めれば、分類ブレによる原価の揺れ、通関の差戻し、顧客への価格再提示といったビジネス上の手戻りを現実的に減らせます。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の製品や取引に対する法令上の助言、関税分類の確定判断、申告指示を行うものではありません。関税分類は、各国税関の規定、部注・類注、解釈通則、貨物の仕様、提示態様、契約条件、同梱物等により結論が変わる場合があります。実務適用にあたっては、最新の関係法令・公表資料を確認のうえ、必要に応じて税関の事前教示制度や専門家へ照会してください。

BMS・センサー分類 実務アクションパック

製品仕様の揺れに負けない、HSコード区分を社内で回し切るための実務設計


電動化とIoTが進むほど、BMS(Battery Management System)と各種センサーは、輸出入の現場で「分類が割れやすい」代表格です。理由は単純で、どちらも電池・制御・計測の境界に立つ部品やモジュールになりやすく、輸入形態(単体か、ユニットか、完成品の一部か)によって客観的性格が変わるからです。

しかもHSコードは、6桁までは国際的に共通でも、各国はその先を拡張して運用します。たとえば日本は9桁の統計品目番号を使い、6桁HSと国内コードの組み合わせで申告します。輸出と輸入で国内コードが一致しないこともあります。つまり、同じ製品でも「国」「輸出入」「申告実務」の条件によって結論が揺れやすいのが現実です。

そこで本記事では、BMSとセンサーの区分を短期間で安定させるための「BMS・センサー分類:実務アクションパック」を、ビジネス実務の観点から深掘りします。目指すのは、単発の正解探しではなく、社内で再現できる判断の仕組みを作ることです。


1. まず押さえるべき前提

HSコードは情報ではなく、運用のインフラである

1-1. HSは6桁までが世界共通——ただし最新版の読み替えが必要

HSは世界の貿易品目を体系化した分類で、WCO(世界税関機構)が管理しています。定期的な改正を重ねており、2022年1月1日に発効したHS 2022(2022年版)は、WCO公表資料によれば最新の改正版に位置付けられています。WCOはさらに、加速改正手続き(accelerated amendment process)の枠組みの下で、一定の品目について継続的な更新を進めています。

一方、各国の関税率表は6桁HSを基礎にしつつ、8桁や10桁などに拡張して詳細管理します。EUではCN(Combined Nomenclature)が8桁、TARIC(統合関税品目番号)が10桁という体系で運用されます。

1-2. 事業インパクトは「関税」だけではない

BMSやセンサーの分類が崩れると、次の領域に連鎖します。

  • 関税・通関の遅延、追加資料要請
  • 原産地(EPA/FTA)の判定、原価計算への波及
  • 輸出管理や規制品目スクリーニングの誤判定
  • 取引先への見積価格や納期コミットの崩れ

つまり分類は、貿易実務にとどまらず、営業・調達・設計変更管理・マスタ管理までを含む業務基盤です。


2. BMSの分類をブレさせない「3つの分岐」

同じBMSでも、輸入形態で見える性格が変わる

BMSは大きく次の3パターンに分けると、実務が回しやすくなります。


分岐A:電池セルと一体で入ってくるか

一体なら「電池として扱う」根拠が取りやすい

HSの第85類では、見出し8507(電気蓄電池)について、「蓄電池には、蓄電・給電機能に寄与する、または損傷から保護する付属部品を伴って提示されるものを含む」とされており、例として電気コネクタ、温度制御装置(サーミスタ等)、回路保護装置が挙げられています。電池が組み込まれる機器の保護筐体の一部を含む場合もある、という趣旨です。

この注記が実務上有力なのは、BMSが「電池を成立させる付属要素」として説明しやすいからです。セルと制御基板、温度保護、筐体などを含む構成は、製品の客観的性格が電池に寄りやすくなります。

米国の公開裁定(HQ H155376)でも、セルや基板などから成るBMSを、電池機能を支える構成として見出し8507に分類した例が示されています。EUの品目実務でも、BMSを含む一体型の電池システムをCNコード8507 60 00(リチウムイオン蓄電池)に紐づけて扱う記載が、EUR-Lex掲載の関税規則文書に見られます。

実務アクション セル同梱や電池ユニット形態であれば、BMS単体の機能説明より先に「8507注記に当てはまる付属部品か」を起点に整理すると、社内合意が速まります。


分岐B:配電・制御の盤やユニットとして成立しているか

成立しているなら「制御・配電機器」側の検討が必要

見出し8537は、8535や8536の機器を2つ以上備えた、電気の制御または配電用の盤・パネル・コンソール等を対象にします。

BMSが「電池の付属」ではなく、設備側の制御盤として独立している場合、8537が候補になり得ます。たとえば、充放電設備やラックの電力系統を制御する盤で、遮断・切替・保護を担う構成(リレー、遮断器、端子台など)が明確に備わり、盤としての客観的特性が強いケースです。

実務アクション 仕様書や図面から、8536に該当し得る構成要素(スイッチング・保護・接続の機器)を洗い出し、盤としての成立性を確認します。


分岐C:計測・監視・制御の「機能装置」寄りか

機能装置なら「計測・自動制御」側も同時に検討する

BMSは電池の保護・監視・均等化・通信まで含むことが多く、制御ロジックが強い場合があります。このとき、次の観点で計測・自動制御側の候補が浮上します。

  • 9031:その他の測定・検査機器(第90類で他に特掲されないもの)
  • 9032:自動調整または制御用の機器

実務アクション BMSの要件定義を、保護(過電流遮断等)・調整(セルバランス等)・計測(電圧・温度等)・通信(CAN等)に分解し、どの機能が「客観的性格の中心」かを社内で文章化します。ここを曖昧にしたままHS番号だけ決めると、設計変更のたびに崩れます。


3. センサー分類は「完成した計測機器」か「素子・IC」かで世界が変わる

実務で迷うポイントを先に固定する

センサーは、同じ測定対象でも製品の完成度によって分類が変わりやすい領域です。実務では、まず形態を次の2つに分けます。


3-1. 完成した計測機器・計測装置として販売されるセンサー

第90類の見出しから当てにいく

代表的な見出しは以下のとおりです。

  • 9025:温度計、湿度計、気圧計など
  • 9026:流量、液位、圧力など(液体・気体の変数)
  • 9031:第90類の他の見出しに特掲されない測定・検査機器
  • 9032:自動調整または制御用機器

実務アクション 型番単位で「測るだけ」か「制御まで自動でやる」かを分けます。センサーが単独で測定値を出すだけなら9025や9026側の検討が中心です。設定値に基づき弁やモータ等を制御する仕組みが本体に組み込まれ、客観的に自動制御装置といえる場合は9032が視野に入ります。


3-2. センサー素子・トランスデューサー・ICとして販売されるセンサー

第85類の注記を起点に整理する

第85類の注記では、半導体デバイスの定義に「半導体ベースのトランスデューサー」が含まれており、物理・化学現象を電気信号へ変換するデバイスとして定義されています。また8541および8542が他の見出しに優先する趣旨も示されています。

つまり、センサーが「計測機器」ではなく「半導体素子やICとしての性格」が強い場合、8541(半導体デバイス)や8542(電子集積回路)の検討が実務上不可欠になります。

実務アクション センサーを次の3層に分けて仕様を集めます。

  • 素子層:半導体ベースのセンサー素子、MEMS、ダイ
  • 回路層:信号処理IC、アンプ、A/D、制御IC
  • 製品層:筐体、表示、通信、校正、電源、取り付け機構

この分解をすると、同じ「圧力センサー」でも、素子販売か計測装置販売かで論点が別物になることが、社内で共有しやすくなります。


4. 実務アクションパックの中身

現場が止まらないための成果物を「テンプレ化」する

実務アクションパックは、結論のHS番号よりも、結論に至るプロセスと証跡を先に整えることを重視します。推奨の成果物は次の6点です。


成果物1:製品インテークシート

設計部門から最短で情報を取るための共通フォーマット

以下の項目が揃えば一次判断が可能になります。

  • 製品名、型番、用途、販売形態(単体・キット・ユニット組み込み)
  • 機能分解(計測・制御・保護・通信・電力変換など)
  • 構成部品(セル有無、半導体素子、保護回路、スイッチング機器等)
  • 入出力(電圧範囲、通信規格、アナログ・デジタル)
  • 写真、外観図、ブロック図、主要仕様書

成果物2:BMS分岐チャート

セル同梱・盤成立・計測機能寄りの三分岐で迷いを減らす

チャートは難しくするほど運用されません。実務では次の問いを順番に当てます。

  1. セルと一体で提示されるか
  2. 8535/8536の機器を複数備えた盤として成立しているか
  3. 自動制御の装置として客観的性格が立つか
  4. それでも残る場合は、他の見出しの該当性と除外規定を確認する

この順番にするだけで、会議が「候補の羅列」から「論点の絞り込み」に変わります。


成果物3:センサー分岐チャート

完成計測機器か素子・ICかを最初に固定する

  1. 表示・校正・出力が揃っていて、計測機器として販売されるか
  2. 目的変数が温度・圧力・流量などで、特定の見出しに当てられるか
  3. 自動調整または制御まで行う装置か
  4. 半導体素子・ICとしての性格が強いか

成果物4:分類メモ

関係者が同じ文章を読めるようにする1枚資料

分類メモの核となる6項目です。

  1. 申告対象の客観的特性(何が、何をするものか)
  2. 候補見出しと採否理由
  3. 採用した見出しの根拠(注記、定義、類似事例など)
  4. 除外した見出しの理由
  5. 適用範囲(どのSKU、どの仕様まで同一扱いか)
  6. 変更管理のトリガー(セル仕様・IC変更・筐体変更など)

成果物5:エビデンスパック

税関照会や社内監査に耐える証拠一式

米国では関税分類の裁定申請(19 CFR 177.2)において、物品の完全な記述・用途・写真やサンプルなどの提出が求められます。日本の事前教示でも書面回答が税関検査で尊重されること、EUでもBTI(拘束的関税情報)が法的確実性の手段として位置づけられていることは共通しており、いずれも判断のための資料の質が問われます。


成果物6:マスタ連携の運用設計

分類を「知識」から「データ」へ落とす

分類は担当者の頭の中に置いた瞬間に崩れます。SKUマスタに次を持たせます。

  • HSコード(国別の桁まで)
  • 適用開始日と根拠資料リンク
  • 仕様の前提条件
  • 設計変更時の再判定フラグ

5. 30日で立ち上げる運用ロードマップ

分類プロジェクトを短期で「仕組み化」する

1週目:対象範囲と型番棚卸し

  • 対象SKUの一覧化
  • 輸入形態別にグルーピング(セル同梱・単体基板・計測装置など)
  • 不明点を設計に返すための質問票を確定

2週目:一次分類と論点リスト化

  • 候補見出しの一次当て
  • 分岐チャートで論点を残す
  • 関係者レビュー会を30分単位で回す

3週目:証跡整備とリスク分類

  • 分類メモをSKU単位で固定
  • 高リスク品は事前教示・裁定の検討対象に上げる
  • 監査に耐えるフォルダ構造を作る

4週目:マスタ実装と変更管理の接続

  • ERPや貿易システムへ反映
  • 設計変更プロセスに分類再判定を組み込む
  • 月次で差分レビューを回す

6. 実務で起きがちな失敗と先回りの打ち手

仕様の説明が「機能」だけで終わっている

税関や監査で問われるのは客観的特性です。ブロック図、構成部品、形態、提示のされ方を揃えます。

国別の桁の違いを放置している

HS6桁は共通でも、国別の拡張桁は運用が分かれます。日本は9桁で申告し、国内コードの扱いもあります。EUはCN8桁を基礎にし、TARICで10桁まで管理します。

口頭の回答を「正式」と誤解している

日本の事前教示制度では、書面回答が尊重される一方、口頭回答は原則として税関検査で尊重されません。実務は必ず書面と証跡に寄せます。


参考資料

  1. WCO HS Nomenclature 2022(2022年1月1日発効、加速改正手続きの枠組みも参照)
  2. 米国商務省 ITA:HSは6桁共通、構造の概説
  3. 日本の統計品目番号(9桁は6桁HSと国内コードの組み合わせ)
  4. 第85類 注記(8507の付属部品、半導体ベースのトランスデューサー定義など)—Census.gov(米国Schedule B / HTS)
  5. 国連統計部(UNSD)HS見出しの定義:9025、9026、9031、9032、8536、8537、8541、8542
  6. EU:BTIプロセスのガイダンス(CN8桁、TARIC10桁、BTIの位置付け等)—Taxation and Customs Union
  7. 日本税関:事前教示(品目分類)制度の概要(書面回答の尊重、有効期間など)
  8. 米国:関税分類の裁定申請に求められる記載事項(19 CFR 177.2)—Cornell LII
  9. 米国公開裁定 HQ H155376(BMSを8507として扱う論旨の例)—Customs Mobile


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、関税分類、法令解釈、通関手続等に関する助言または保証を行うものではありません。実際のHSコードや統計品目番号の決定は、商品の客観的特性、提示形態、取引条件、各国の関税率表および税関の運用等により異なり得ます。必ず最新の法令・通達・関係当局の公表情報を確認し、必要に応じて税関への事前教示申請や通関士、弁護士等の専門家へご相談ください。本記事の内容は正確性に配慮して作成していますが、完全性、最新性、特定目的への適合性を保証するものではなく、本記事の情報に基づいて生じた損害について一切の責任を負いません。

HS2022 第25類:塩、硫黄、土石類、プラスター、石灰及びセメント(Salt; sulphur; earths and stone; plastering materials, lime and cement)

用語は以下で統一します。

  • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 昇華硫黄/沈降硫黄/コロイド硫黄 → 第28類 2802 (世界関税機関)
    • アースカラー(酸化鉄として70%以上) → 第28類 2821 (世界関税機関)
    • ドロマイトラミングミックス → 第38類 3816(HS2022で明確化) (世界関税機関)
    • 舗装用の石・縁石・敷石/モザイクキューブ等/屋根用スレート → 第68類 6801〜6803 (世界関税機関)
    • 筆記・図画用チョーク/テーラースチョーク → 第96類 9609(天然チョーク2509と混同注意) (世界関税機関)
    • ビリヤードチョーク → 第95類 9504 (世界関税機関)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 加工度:粗品/洗浄/粉砕等の“物理処理まで”か、焼成・混合・化学的処理までしているか(注1が強い) (世界関税機関)
    2. 鉱石(第26類)との境界:砂でも“金属含有砂(metal-bearing sands)”は第26類へ(2505の但書) (世界関税機関)
    3. 第68類(石・セメント等の製品)との境界:石材が“製品化(タイル・舗装石など)”されると第68類へ飛びやすい(注2(f)) (世界関税機関)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 石綿(アスベスト):2524自体だけでなく「石綿を含有するおそれのある製品」も輸入手続が絡みやすい(後述) (厚生労働省)
    • HS改正影響:HS2017の2518.30(ドロマイトラミングミックス)がHS2022で3816へ移行(過年度データ・契約で旧コードが残ると事故りやすい) (税関ポータル)

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1(見出し文言+注)が最優先です。第25類は注(Notes)が加工度と除外を強く縛るため、品名の印象より「注に合うか」を先に見ます。 (世界関税機関)
    • GIR6(号=6桁):6桁の分岐は、典型的に「粉状/塊」「焼成の有無」「用途を示す文言(道路用骨材など)」「成分割合(例:CaF2 97%)」で割れます。 (世界関税機関)
  • 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
    • 材質(鉱物名):石英なのか珪砂なのか、カオリンなのか他の粘土なのか、など。
    • 状態(形状・粒度):粉末・フレーク・ブロック、砕石、粒状など。
    • 加工度(重要):洗浄・粉砕・ふるい分け=“OK寄り”、焼成・混合・特定用途向けの調製=“NG寄り”。(ただし見出し自体が「whether or not calcined」を許すものもあります) (世界関税機関)
    • 用途が見出しで条件になっていないか:例)2521は「石灰・セメント製造用の石灰石」寄りの見出し、2517は道路・鉄道バラスト等に使う砕石等が中心。 (世界関税機関)

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:鉱物性生産品か?(第5部:第25〜27類)
    • 鉱物・土石・塩・硫黄・石灰・セメント系 → 次へ
    • 化学品として“反応・精製”をしている → 第28類〜(要検討)
  • Step2:加工度チェック(第25類注1)
    • 粗品/洗浄/粉砕/粉状化/ふるい分け/浮遊選鉱・磁選等(結晶法除く)まで → 第25類候補 (世界関税機関)
    • 焼成・混合・見出しで許される処理を超える加工 → 原則として第25類から外れやすい(見出しで明示的に許す例外は別途) (世界関税機関)
  • Step3:除外規定(注2)に当たらないか
    • 昇華硫黄(2802)/鉄分70%以上のアースカラー(2821)/ドロマイトラミングミックス(3816)/舗装石(6801等)/筆記用チョーク(9609)…など (世界関税機関)
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 第25類 ↔ 第26類:砂でも「金属含有砂」は第26類(2505の但書)。 (世界関税機関)
    • 第25類 ↔ 第28類:硫黄・石灰など“同じ元素/化合物名”でも、形態(昇華・沈降)や処理で第28類へ。 (世界関税機関)
    • 第25類 ↔ 第68類:石材が“建材製品”まで加工されると第68類へ(注2(f))。 (世界関税機関)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
2501塩(食塩・変性塩含む)、純塩化ナトリウム、海水工業用塩、食用塩、海水添加(固結防止等)を含み得るが、調製の程度に注意 (世界関税機関)
2502焼いていない黄鉄鉱黄鉄鉱(未焙焼)焙焼したものは別検討 (世界関税機関)
2503硫黄(昇華・沈降・コロイドを除く)粉状硫黄、塊状硫黄昇華硫黄等は2802へ(注2(a)) (世界関税機関)
2504天然黒鉛粉状黒鉛、フレーク黒鉛天然/人工(別類)で分かれやすい (世界関税機関)
2505天然砂(全種)※第26類の金属含有砂を除く珪砂、鋳物砂、砂「金属含有砂」は第26類(但書) (世界関税機関)
2506石英(砂を除く)、珪岩(石英岩)石英塊、珪岩ブロック砂(2505)との区別に注意 (世界関税機関)
2507カオリン等のカオリン質粘土(焼成の有無を問わない)カオリン、焼成カオリン“焼成OK”が明記されている点が重要 (世界関税機関)
2508その他の粘土等(膨張粘土=6806除外)、耐火鉱物等(焼成の有無を問わないもの含む)ベントナイト、耐火粘土、ムライト等「膨張粘土」は6806へ(見出し内で除外) (世界関税機関)
2509チョーク(天然)天然チョーク(原料)“筆記用チョーク”は9609へ(注2(k)) (世界関税機関)
2510天然リン酸塩等リン鉱石系(天然リン酸塩)粉砕の有無で号分岐 (世界関税機関)
2511重晶石、炭酸バリウム(焼成の有無問わず)※酸化バリウム除外バライト、ウィザライト酸化バリウム(2816)除外が明記 (世界関税機関)
2512珪質の化石粉等(焼成可)※見掛比重1以下珪藻土、キースルグール数値条件「見掛比重1以下」 (世界関税機関)
2513軽石・エメリ等の天然研磨材(加熱処理可)軽石、ガーネット砂研磨材用途でも“天然”か等確認 (世界関税機関)
2514スレート(粗/単純切断まで)スレート原石、スレートブロック屋根用等の製品は6803(注2(f)) (世界関税機関)
2515大理石等の建築石材(見掛比重2.5以上)/アラバスター大理石ブロック2.5以上要件、加工度(“単純切断まで”) (世界関税機関)
2516花崗岩等の建築石材(粗/単純切断まで)花崗岩ブロック、砂岩ブロックタイル等は第68類へ行きやすい (世界関税機関)
2517砂利・砕石等(道路/鉄道バラスト等)/タールマカダム等砕石、道床バラスト、タールマカダム注3により“2517優先”の特則あり (世界関税機関)
2518ドロマイト(焼成・焼結の有無を問わない)ドロマイト、焼成ドロマイトドロマイトラミングミックスは3816へ (世界関税機関)
2519菱苦土石、溶融マグネシア、焼結マグネシア、酸化マグネシウム等マグネサイト、マグネシア“耐火原料”でも混合・調製は注意 (世界関税機関)
2520石膏・無水石膏、プラスター(焼石膏等)天然石膏、焼石膏(プラスター)石膏/プラスターで号分岐 (世界関税機関)
2521石灰石フラックス等(石灰/セメント製造に用いる種類)石灰石(製造用)建築石材(2515/2516)との峻別 (世界関税機関)
2522生石灰・消石灰・水硬性石灰(ただし2825の酸化/水酸化Ca除外)生石灰、消石灰2825除外の注意(化学品との境界) (世界関税機関)
2523各種セメント(ポルトランド、アルミナ等)/クリンカーセメントクリンカー、白色セメント“クリンカー”と“セメント”で分岐 (世界関税機関)
2524石綿(アスベスト)クリソタイル等規制・禁止が絡む(後述) (世界関税機関)
2525雲母(スプリッティング含む)/雲母くず雲母、雲母粉粉・くずで号分岐 (世界関税機関)
2526ステアタイト(滑石岩)、タルクタルク、滑石“粉砕の有無”で号分岐 (世界関税機関)
2527(欠番)現行HSでは見出しなしHS版違いの古い資料で出てきたら要注意 (世界関税機関)
2528天然ホウ酸塩等(焼成可)ホウ砂鉱、天然ホウ酸(85%以下)“天然か/分離品か”など確認 (世界関税機関)
2529長石、白榴石等、蛍石(フルオルスパー)長石、蛍石蛍石はCaF2含有率で号分岐(97%) (世界関税機関)
2530他に該当しない鉱物バーミキュライト(未膨張)、天然硫酸Mg等注4で例示あり(“未膨張”など) (世界関税機関)

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出)
    • 粉砕・粉末化の有無(例:2526.10/2526.20) (世界関税機関)
    • 焼成(calcined)・焼結(sintered)の有無(例:2518、2512 等で明示) (世界関税機関)
    • 用途・性質を示す文言(例:2517 “road metalling / ballast”等) (世界関税機関)
    • 成分割合の閾値(例:蛍石CaF2 97%) (世界関税機関)
    • 物性値の閾値(例:2512 見掛比重1以下、2515 見掛比重2.5以上) (世界関税機関)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 2505.10(珪砂・石英砂) vs 2505.90(その他の天然砂) (世界関税機関)
      • どこで分かれるか:砂の鉱物学的性状(シリカ/石英砂か、それ以外か)
      • 判断に必要な情報:鉱物成分(SiO₂比率、粒度)、用途(鋳物・ガラス原料等)、試験成績
      • 典型的な誤り:「鋳物砂」を用途だけで決めてしまい、実体がシリカ砂なのに“その他”へ入れる
    2. 2507.00(カオリン・カオリン質粘土) vs 2508.xx(その他の粘土等) (世界関税機関)
      • どこで分かれるか:粘土の鉱物種(カオリン系か、ベントナイト等か)
      • 判断に必要な情報:鉱物分析(XRD等)、製造工程(焼成の有無は両方で許容され得る点に注意) (世界関税機関)
      • 典型的な誤り:「白い粘土=カオリン」と決め打ち(実際は他粘土・混合の可能性)
    3. 2515/2516(建築石材ブロック等) vs 2517.41/2517.49(石材の粒・粉) (世界関税機関)
      • どこで分かれるか:**ブロック/スラブ(粗・単純切断)**なのか、粒・チップ・粉なのか
      • 判断に必要な情報:形状(ブロック・スラブ・粒)、加工(研磨・表面加工の有無)、用途(骨材等)
      • 典型的な誤り:大理石チップを「大理石(2515)」とだけ見て分類(実際は2517.41/49)
    4. 2517の“優先ルール”(類注3):2517に該当し得るなら他の項より2517へ (世界関税機関)
      • どこで分かれるか:同じ“石”でも、道路用砕石・バラスト等の性格を持つか
      • 判断に必要な情報:用途(契約書・仕様)、粒度規格、写真、試験成績
      • 典型的な誤り:「素材は花崗岩だから2516」とし、砕石用途(2517)を見落とす
    5. 2518(ドロマイト) vs 3816(ドロマイトラミングミックス) (税関ポータル)
      • どこで分かれるか:ドロマイトそのもの(焼成/焼結含む)か、**耐火物の“ミックス(ラミングミックス)”**として調製されたものか
      • 判断に必要な情報:配合(混合の有無、結合材・添加物)、用途(耐火物施工用)、SDS/仕様書
      • 典型的な誤り:HS2017の感覚で2518.30相当として申告(HS2022では注2(e)で除外され3816へ) (世界関税機関)

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 第5部(鉱物性生産品:第25〜27類)は、部注が設定されていない扱いで運用される例があり、実務上は各類(Chapter)注の影響が大きいです。 (カナダ国境サービス機関)
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 「第25類に入るか」は**第25類の注(加工度・除外)**が実質の基準になります。
      例:同じ硫黄でも「昇華硫黄」は注2(a)で第28類へ、一般硫黄は2503へ。 (世界関税機関)
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • (部注がない前提なので)“部注で飛ぶ”というより、各類注・見出しの除外で飛ぶのが典型です(第25類注2 → 第28類/第38類/第68類 等)。 (世界関税機関)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1(加工度の上限):粗品、洗浄、粉砕、粉状化、ふるい分け、浮遊選鉱・磁選等の物理処理(結晶法除く)まで。焼成・混合・過度の加工は原則含まない。またアンチダスティング剤の添加は、用途特化にならない範囲で許容。 (世界関税機関)
    • 注2(除外):昇華硫黄(2802)、鉄分70%以上のアースカラー(2821)、ドロマイトラミングミックス(3816)、舗装石・モザイク等(6801〜6803)、筆記用チョーク(9609)等。 (世界関税機関)
    • 注3(2517優先):2517と他項の両方に該当し得る場合は、2517へ。 (世界関税機関)
    • 注4(2530の例示):未膨張のバーミキュライト等、アースカラー、琥珀、海泡石(加工の程度に制限あり)等が例示。 (世界関税機関)
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 明確な“定義語”より、加工度を縛る規定(注1)が実務上の“定義”として機能します。 (世界関税機関)
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 注2(a) 昇華硫黄等 → 2802
    • 注2(b) Fe₂O₃として70%以上のアースカラー → 2821
    • 注2(e) ドロマイトラミングミックス → 3816
    • 注2(f) 舗装用石・モザイク等・屋根用スレート → 6801〜6803
    • 注2(ij)/(k) ビリヤードチョーク → 9504、筆記用/テーラースチョーク → 9609 (世界関税機関)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:加工度(注1)で第25類に残る/外れる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 工程(洗浄・粉砕・ふるい・選鉱・焼成・混合の有無)
      • 添加剤の有無と目的(アンチダスティングか、用途特化か)
    • 現場で集める証憑:
      • 製造工程フロー、SDS/MSDS、成分表、粒度分布、写真、カタログ
    • 誤分類の典型:
      • “原料鉱物っぽい”という印象で第25類に入れるが、実際は焼成・混合で別章に該当(注1/注2の見落とし) (世界関税機関)
  • 影響ポイント2:除外(注2)の“飛び先”が明確に決まる
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 該当品が注2(a)〜(k)のどれに当たるか(硫黄の形態、鉄分割合、用途/製品形態など)
    • 現場で集める証憑:
      • 分析表(Fe₂O₃%、CaF₂%等)、形態説明(昇華・沈降等)、用途資料
    • 誤分類の典型:
      • 天然チョーク(2509)と筆記用チョーク(9609)を混同する (世界関税機関)
  • 影響ポイント3:2517優先(注3)で“素材”より“区分ルール”が勝つ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):
      • 道路用骨材/バラスト等の性格(用途・粒度)
    • 現場で集める証憑:
      • 用途契約、規格書、粒度試験、荷姿写真
    • 誤分類の典型:
      • 花崗岩砕石を、素材(2516)で分類してしまう(注3の特則見落とし) (世界関税機関)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:“硫黄=2503”と決め打ちし、昇華硫黄等を含めてしまう
    • なぜ起きる:品名が同じ「硫黄」だから
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):注2(a)で昇華硫黄等は第28類(2802)へ (世界関税機関)
    • 予防策:
      • 硫黄の製法・形態(昇華/沈降/コロイド/通常)をSDSで確認
      • 取引品名に“sublimed / precipitated”が入っていないか確認
  2. 間違い:アースカラーを2530や2508で申告したが、Fe₂O₃として70%以上だった
    • なぜ起きる:顔料用途=土石類という思い込み
    • 正しい考え方:注2(b)で70%以上は2821へ (世界関税機関)
    • 予防策:
      • 分析表でFe₂O₃換算を必ず取得(社内:品質保証/分析部門に依頼)
      • 仕様書に「iron oxide content」を記載させる
  3. 間違い:砂を2505にしたが、実は金属含有砂だった
    • なぜ起きる:「砂=2505」と思い込む
    • 正しい考え方:2505は「第26類の金属含有砂を除く」と明記 (世界関税機関)
    • 予防策:
      • 鉱物名(例:イルメナイト砂、ジルコン砂等)・金属含有の有無を確認
      • “metal-bearing sands / mineral sands”の表記がないかチェック
  4. 間違い:石材タイル・舗装石を2515/2516で申告
    • なぜ起きる:素材が大理石・花崗岩だから
    • 正しい考え方:注2(f)で舗装用石・モザイク等は第68類へ(6801〜6803等) (世界関税機関)
    • 予防策:
      • 加工度(切断・研磨・面取り・規格形状)を写真と図面で確認
      • “tile / setts / curbstone / flagstone / mosaic”の文言をインボイスで拾う
  5. 間違い:砕石を素材の項(2515/2516)で分類し、2517(砕石等)を外す
    • なぜ起きる:素材名に引っ張られる
    • 正しい考え方:注3により、2517に該当し得る場合は2517へ (世界関税機関)
    • 予防策:
      • 用途(道路/鉄道/コンクリ骨材)の確認、粒度規格の入手
      • 砕石かブロックか(荷姿写真)を必須資料にする
  6. 間違い:ドロマイトラミングミックスを2518のまま運用(過年度踏襲)
    • なぜ起きる:HS2017時代のコード・マスタが残る
    • 正しい考え方:HS2022で注2(e)により第25類から除外、3816へ (世界関税機関)
    • 予防策:
      • “ramming mix”の有無(配合品か)を仕様書で確認
      • HS改正時に「対象品目の再棚卸し」を実施(購買・生産・通関の合同)
  7. 間違い:天然チョーク(2509)と筆記用チョーク(9609)を混同
    • なぜ起きる:日本語でどちらも「チョーク」
    • 正しい考え方:注2(k)で筆記用/テーラー用は9609へ (世界関税機関)
    • 予防策:
      • 形態(スティック状、包装、ブランド)と用途(筆記/図画)を確認
      • “chalk sticks / writing chalk”表記があれば要注意
  8. 間違い:蛍石(フルオルスパー)の号を分析なしで決める
    • なぜ起きる:外観で判断できない
    • 正しい考え方:2529.21/2529.22はCaF₂含有率97%で分岐 (世界関税機関)
    • 予防策:
      • CaF₂%の試験成績書を必須化(購買条件に入れる)
      • サプライヤーが出せない場合は第三者分析

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します(誤ると原産性判断が崩れます)。
    • 例:同じ“耐火材料系”でも、HS2022でドロマイトラミングミックスが3816へ移ると、適用PSRそのものが変わり得ます。 (税関ポータル)
  • よくある落とし穴:
    • 最終製品のHSは合っているが、非原産材料のHSがズレていてCTC判定が崩れる
    • “混合・調製”で章が変わるのに、原料の感覚で第25類のまま扱う

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • RCEPのPSR(付属書3A)は、原文としてはHS2012に基づく旨が明記されています。 (Australian Border Force Website)
  • 一方で、RCEPはHS2022へトランスポーズ(移し替え)したPSRが採択され、2023-01-01から各締約国で実施とされています(日本の公表資料でも同趣旨)。 (外務省)
  • CPTPPは、PSRや関税約束が(少なくとも当初は)HS2012ベースで確定している旨の説明があります。 (Australian Border Force Website)
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論):
    • 協定本文/運用文書でどのHS版を参照するかを確認
    • 会社のHSマスタ(HS2022)と協定PSR(HS2012等)の間は、税関・関係当局が出すトランスポーズ版/対応表を使って突合(独自変換は事故の元)

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 原産性判断に必要になりやすい情報
    • 材料表(BOM)、原価(RVCの場合)、工程フロー、原産国
    • 非原産材料のHS(少なくとも6桁)
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 原産地申告(自己申告を含む)では、最低限のデータ要件としてHSの分類(6桁)が含まれる旨のガイダンスがあります。 (税関ポータル)
  • 実務Tip(第25類らしい論点)
    • 「採掘しただけ」なのか、「焼成・混合」したのかで、WO(完全生産品)相当の整理になるか、CTC/RVCが要るかが変わりやすい

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022範囲変更(移行)/削除2518.30 → 3816.00ドロマイトラミングミックスを第25類から第38類へ移行(第25類注2(e)で除外、3816に含める)旧マスタ踏襲で誤申告・PSR誤適用リスク。耐火物原料の扱い見直しが必要 (税関ポータル)
HS2017→HS2022文言修正/範囲明確化第25類 注2(e)第25類の除外に「ドロマイトラミングミックス(3816)」を追加第25類に残れないことが明確化。仕様書で“ramming mix”確認が必須 (税関ポータル)

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料(相関表、各国税関の解説等):
    • 日本税関公表の HS2022–HS2017 相関表で、3816.00に「dolomite ramming mix」が含まれ、HS2017の2518.30から移る扱いが示されています。 (税関ポータル)
    • 日本税関のHS2022解説資料で、「第25類のドロマイトラミングミックスを第38類へ移行」する趣旨(耐火セラミック分野の発展等)を説明しています。 (税関ポータル)
    • HS条文(HS2022 第25類注2(e))として、ドロマイトラミングミックスが第25類から除外されることが明記されています。 (世界関税機関)
  • どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか:
    • 相関表で「旧:2518.30 → 新:3816.00」の移転が示されていること、かつ HS2022の注2(e) で第25類から除外されることから、「第25類ではなく第38類(3816)で扱うのがHS2022の整理」と判断できます。 (税関ポータル)
  • 補足(相関表の位置づけ):
    • WCOの相関表は“実施を助けるガイド”であり法的地位はない旨も説明されています。最終判断は各国税関に依ります。 (世界関税機関)

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れでの整理(主要なもの)
    • 本回答で一次資料として根拠を示せている範囲では、**第25類で明確に大きな動きとして確認できるのはHS2017→HS2022の「ドロマイトラミングミックス移行」**です。 (税関ポータル)
    • それ以前(HS2007→2012→2017)の第25類内の改正については、取引対象品目が多い場合、WCO/税関の相関表で個別確認する運用を推奨します(協定PSRのHS版差も絡むため)。
  • 参考としての“欠番”注意:
    • 第25類には [25.27] のように見出しが設定されていない番号が存在します(古い資料・社内コードで「2527」を見た場合はHS版と対応関係の点検が必要です)。 (世界関税機関)

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):“ramming mix”を原料ドロマイトとして申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):注2(e)(ドロマイトラミングミックスは第25類除外) (世界関税機関)
    • 起きやすい状況:インボイスが “Dolomite” とだけ書き、混合・施工用の実態が伝わらない
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税、原産地判断や契約価格条件の見直し(一般論)
    • 予防策:仕様書に「ramming mix」「binder有無」「用途(耐火物施工)」を明記
  • 事例名:石材を“ブロック”扱いで申告したが実は舗装石
    • 誤りの内容:注2(f)(舗装用石等は第68類へ) (世界関税機関)
    • 起きやすい状況:“setts/curbstone/flagstone”を訳さず「石材」としてしまう
    • 典型的な影響:検査強化、分類補正(一般論)
    • 予防策:写真・寸法図、加工内容(面取り、規格形状)を事前提出
  • 事例名:天然チョーク原料と筆記用チョークの混同
    • 誤りの内容:注2(k)(筆記用/テーラー用は9609) (世界関税機関)
    • 起きやすい状況:品名が “chalk” のみ
    • 典型的な影響:税率差・統計誤り、補正(一般論)
    • 予防策:用途(筆記か原料か)、形状(スティック包装か粉体か)を明確化
  • 事例名:昇華硫黄を2503で申告
    • 誤りの内容:注2(a)に抵触(2802へ) (世界関税機関)
    • 起きやすい状況:化学品サプライヤーのSDS情報を通関へ共有していない
    • 典型的な影響:差し戻し、検査、補正(一般論)
    • 予防策:SDSと製法(sublimed等)の共有を必須に

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • 検疫・衛生(SPS等)
      • **食用の塩(食品)**は、食品衛生法に基づき輸入届出が必要で、検疫所で審査・検査要否判断が行われます(届出済証が通関で必要になるケース)。 (厚生労働省)
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制
      • 第25類そのものは“動植物”ではないため通常は中心論点になりません(ただし混載品・副材料は別途)。
    • 安全保障貿易管理(該当する場合)
      • 第25類は一般に原料鉱物が多く、個別該非は品目・用途次第です(特定用途向けの調製品や関連装置等は別章の可能性)。
    • その他の許認可・届出
      • 石綿(アスベスト):労働安全衛生法の枠組みで、石綿や一定濃度超で含有する製品等の製造・輸入等が禁止とされる旨が示されています。 (厚生労働省)
      • 「石綿を含有するおそれのある製品」の輸入通関では、許可証や確認資料の取り扱い等、税関通知で通関実務が示されている例があります。 (税関ポータル)
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 食品:厚生労働省(食品等輸入手続) (厚生労働省)
    • 石綿:厚生労働省(石綿関係情報・通関手続情報) (厚生労働省)
    • 税関実務:税関通知・税関相談(必要に応じて)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 食品:成分・製造工程資料、必要に応じ衛生証明・試験成績書、届出済証 (ジェトロ)
    • 石綿:SDS、非含有証明/試験、(例外輸入なら)許可証写し等 (税関ポータル)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 鉱物名(英名・学名)、用途、形状(粉/粒/ブロック)
    • 工程(洗浄・粉砕・焼成・混合・添加剤)
    • 分析表(Fe₂O₃%、CaF₂%、粒度、比重など)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 第25類注1(加工度)、注2(除外)、注3(2517優先)
    • 第26類(鉱石)・第28類(化学品)・第68類(石材製品)への飛び先を再点検 (世界関税機関)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に “calcined / sintered / ramming mix / chalk / setts” 等の要注意語がないか
    • 代表写真、仕様書、SDSを添付できる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 食品(食用塩等):食品衛生法の輸入届出 (厚生労働省)
    • 石綿:禁止・確認・通関手続(該当可能性があれば最優先で確認) (厚生労働省)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS Nomenclature 2022 Edition(HS2022の位置づけ、補完改正、相関表案内)[参照日:2026-02-18] (世界関税機関)
    • WCO HS2022 Chapter 25(条文:見出し・注・6桁構造)[参照日:2026-02-18] (世界関税機関)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 日本税関:第25類 類注(注1〜4、除外含む)[参照日:2026-02-18] (税関ポータル)
    • 日本税関:HS2022改正資料(ドロマイトラミングミックスの移行説明)[参照日:2026-02-18] (税関ポータル)
    • 日本税関:HS2022–HS2017 相関表(3816.00/2518.30 等)[参照日:2026-02-18] (税関ポータル)
    • 日本税関:原産地(PSR)検索ポータル[参照日:2026-02-18] (税関ポータル)
    • 日本税関:原産地申告(自己申告)ガイド(最低限データ要件にHS6桁等)[参照日:2026-02-18] (税関ポータル)
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
  • その他(規制・手続)
    • 厚生労働省:石綿含有製品等の製造・輸入等の禁止に関する情報(法令抜粋含む)[参照日:2026-02-18] (厚生労働省)
    • 日本税関:労働安全衛生法に係る有害物等の輸入通関手続(石綿関連の通関実務含む)[参照日:2026-02-18] (税関ポータル)
    • 厚生労働省:食品等輸入手続(食品衛生法の輸入届出)[参照日:2026-02-18] (厚生労働省)
    • JETRO:塩の輸入手続(日本)[参照日:2026-02-18] (ジェトロ)
    • (参考)第5部(鉱物性生産品)の部注がない扱いの例(カナダ税関:Section Notesの案内)[参照日:2026-02-18] (カナダ国境サービス機関)

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。