HS2022 第32類:なめしエキス、染色エキス、タンニン及びその誘導体、染料、顔料その他の着色料、ペイント、ワニス、パテその他のマスチック並びにインキ(Tanning or dyeing extracts; tannins and their derivatives; dyes, pigments and other colouring matter; paints and varnishes; putty and other mastics; inks)

  • 用語(本資料内の呼び方)
    • 類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 植物性なめしエキス/タンニン(例:ケブラチョエキス、ワットル(ミモザ)エキス、各種タンニン)【3201】
    • 合成なめし剤(合成タンニン剤等)や、なめし用の調製品【3202】
    • 有機合成染料・有機合成顔料(蛍光増白剤を含む)【3204】
    • 塗料・ワニス(溶剤系=3208、水系=3209)
    • パテ・シーリング材・マスチック(ただしアスファルト系を除く)【3214】
    • 印刷インキ、筆記・描画用インキ等【3215】
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 化学的に単一の元素・化合物(例:単一の溶剤、単一の顔料成分、単一の有機化合物)
      → 原則として第28類/第29類(ただし例外あり:3203/3204、ルミノホア用無機物(3206)、特定形状の石英ガラス(3207)、小売包装の染料等(3212))
    • アスファルトマスチック等の歴青質マスチック → 第27類 2715
    • 接着剤(調製接着剤) → 第35類 3506(シーリング材と紛らわしい)
    • 化粧品・トイレタリーの着色調製品 → 第33類(用途と表示で分かれやすい)
    • 写真用薬品(例:写真用現像等の化学品) → 第37類(インキと誤認注意)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 化学的に単一か/混合・調製品か(注1(a)が強い)
    2. 「着色料」そのものか/塗料・インキ・パテ等の“用途調製品”か(注3で線引き)
    3. 水系か溶剤系か、分散媒体が何か(特に顔料分散体)(3208/3209/3212で大きく変わる)
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • **危険物・SDS・輸送規制(引火性溶剤等)**の要否が変わるのに、品名だけで「塗料」として一括してしまう(通関だけでなく物流が止まりやすい)。
    • **RCEP等のPSR(品目別規則)**で参照HS版が異なるため、HS付番のズレが原産性判断に直撃する。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR
    • GIR1(見出し文言+部注/類注が最優先)
      第32類は「注(Notes)」が分類範囲をかなり強く決めています。特に「化学的に単一の元素・化合物は原則除外(例外付き)」や、「顔料分散体は一定条件で除外」など、注に合うかどうかが起点です。
    • GIR6(6桁の号は“同じ階層の文言”で比較)
      例:塗料は「水系/非水系」「樹脂の種類」「黒インキ/その他」など、号の文言で枝分かれします。
    • GIR3(b)や“部注(Section Note)”が効く場面
      2液型塗料(主剤+硬化剤)のように複数構成で提示される場合、部注(第6部注3)により「混合して製品にするセット」は完成品側へ寄せる考え方が出ます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点
    • 用途(着色用か、被膜形成=塗装用か、印字用か、充填・シール用か)
    • 状態(粉末/粒、溶液、分散液、ペースト、シート状)
    • 媒体(水か、有機溶剤か、その他)
    • 組成(樹脂/結合剤、溶剤比率、顔料含有、添加剤)
    • 包装(小売用の形状・包装か):3212へ飛ぶ典型

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:その製品は何をするものですか?
    • 皮なめし用/染色用抽出物・タンニン系 → 3201/3202候補
    • 色を付けるための“着色料(染料・顔料)” → 3203〜3207/3212/3213候補
    • 被膜形成(塗ると膜になる) → 3208〜3210/3211/3214候補
    • 印字・筆記 → 3215候補
  • Step2:化学的に単一の元素・化合物ですか?(=単一物質名で純度が高い等)
    • YES → 原則 第28類/第29類へ(ただし 3203/3204 等の例外確認)
    • NO(混合・調製品) → Step3へ
  • Step3:形状・媒体・包装を確認(ここが第32類の勝負所)
    • 顔料を水以外の媒体に分散した液体/ペーストで、塗料製造用タイプ → 3212側を優先検討(注3)
    • 染料・着色料が小売用の形状/包装 → 3212へ(部注2も後押し)
    • 塗料・ワニス:水系か非水系か → 3208/3209/3210へ
  • Step4:境界を最終チェック(よく迷う境界)
    • 第32類 ↔ 第28/29類(単一物質か、例外か)
    • 第32類 ↔ 第35類(シーリング材/マスチック vs 接着剤3506)
    • 第3214 ↔ 第2715(歴青質=アスファルト系は2715)
    • 第3208/3209 ↔ 第39類(樹脂溶液の“溶剤50%超”など)

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
3201植物性なめしエキス、タンニン、タンニン誘導体ケブラチョ/ワットル抽出物、各種タンニン植物原料(抽出前)は14.04、合成なめし剤と混合したものは3202、歴青質は別章など。化学的単一物質は原則除外(注1(a))
3202合成なめし物質・無機なめし物質・なめし用調製品合成タンニン剤、なめし用配合剤「なめし用途の調製品」であること。単なる単一化学品は28/29候補になり得る
3203植物性/動物性の着色料・染色エキス、調製品アナトー、コチニール系色素、天然色素調製品カーボンブラックは28.03、有機合成着色料は3204、小売包装の染料等は3212へ
3204合成有機着色料・それを基にした調製品・蛍光増白剤等分散染料、反応染料、有機顔料、蛍光増白剤アゾ染料生成用(ジアゾ塩+カップリング成分の混合)は3204に含む(注2)。小売包装は3212へ寄りやすい
3205レーキ顔料・それを基にした調製品カルミンレーキ、各種レーキ顔料「レーキ(担体に沈着固定した顔料)」の概念が鍵。単なる染料粉末は3203/3204側
3206その他の着色料(無機顔料等)・調製品(注3)TiO₂系顔料調製品、クロム化合物系顔料、メタリック粉等TiO₂は乾燥物換算80%等の号分岐が重要。粉末顔料と“分散液”で3212へ分かれ得る(注3)
3207セラミック/ガラス/ほうろう用の調製顔料・釉薬等釉薬(うわぐすり)調製品、フリット、液状光沢剤工業用途(セラミック/ガラス等向け調製品)であること。注1(a)で石英ガラスの特定形状が例外的にここへ
3208合成高分子等を非水系媒体に分散/溶解した塗料・ワニス溶剤系アクリル塗料、溶剤系ウレタンワニス注4:39.01〜39.13の物品を揮発性有機溶剤に溶かし、溶剤が全重量の50%超の溶液もここに含み得る
3209同上(水系媒体)水性アクリル塗料、水性ワニス水が主媒体。溶剤系との混同注意(3208/3209)
3210その他の塗料/ワニス、皮革仕上げ用水性顔料等ディステンパー等、皮革仕上げ用調製品3208/3209に当たらない塗料類。皮革仕上げ用の“調製水性顔料”が入るのが特徴
3211調製乾燥剤(ドライヤー)塗料用乾燥促進剤(コバルト系等の調製品)「調製」されていること(単一化学品は28/29候補)
3212塗料製造用の非水系顔料分散液/ペースト、スタンプ用箔、小売包装の染料等カラーペースト、ホットスタンプ箔、染料小袋注6でスタンプ箔の構成が定義。小売包装で3212へ飛ぶ(部注2も関係)
3213画家用/学生用/ポスターカラー等(小売形状)絵具チューブ、水彩絵具、ポスターカラー“用途と形状(小売向け)”が鍵。業務用顔料とは分ける
3214ガラス用パテ、樹脂セメント、コーキング材、マスチック等シーリング材、充填材、パテ注1(c):アスファルトマスチック等は2715へ。接着剤3506との境界も実務頻出
3215印刷インキ、筆記・描画インキ等グラビアインキ、フレキソインキ、サインペンインキ“インキ用途”が鍵。塗料(被膜形成)との混同注意。黒印刷インキ等で号分岐

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で効きやすい軸)
    • 媒体(非水系/水系):3208(非水系)↔3209(水系)
    • 溶剤比率(50%超):樹脂の溶液が3208に入るトリガー(注4)
    • 包装形態(小売用か):3212(小売包装の染料等)
    • 分散形態(顔料粉末 vs 非水系分散液/ペースト):3203〜3206 ↔ 3212(注3)
    • 含有率(例:TiO₂の乾燥物換算80%など、号で閾値があるもの)
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 3208(非水系塗料) vs 3209(水系塗料)
      • どこで分かれるか:媒体が「水」か「非水(有機溶剤等)」か
      • 判断に必要な情報:SDS、配合表(溶剤・水の比率)、製品仕様(“water-based / solvent-based”表示)
      • 典型的な誤り:水性なのに“溶剤系塗料”の品名だけで3208にしてしまう
    2. 3206(顔料・着色料) vs 3212(非水系顔料分散液/ペースト、塗料製造用)
      • どこで分かれるか:粉末等の「着色料/顔料」か、**非水媒体に分散した“カラーペースト”**か
      • 判断に必要な情報:形状(液/ペースト/粉)、媒体(水以外か)、用途(塗料製造用か)、SDS
      • 典型的な誤り:“顔料”という品名だけで3206に固定し、分散体を見落とす(注3の落とし穴)
    3. 3204.18(カロテノイド系着色料) vs 3204.19(その他)(HS2017→HS2022で新設)
      • どこで分かれるか:合成有機着色料のうち、カロテノイド系として扱われるか
      • 判断に必要な情報:着色成分(CAS、成分名)、用途資料(色素の系統)、分析/仕様書
      • 典型的な誤り:旧HSの感覚で3204.19にまとめ続け、HS2022の分岐を反映しない
    4. 3208(樹脂系塗料/ワニス) vs 第39類(樹脂そのもの)
      • どこで分かれるか:樹脂が「塗料/ワニスとしての調製品」か、単なる樹脂(一次形状等)か。さらに溶剤が全重量の50%超なら3208に入り得る(注4)
      • 判断に必要な情報:樹脂のHS候補(39.01〜39.13相当か)、溶剤比率、揮発性有機溶剤の有無、製品用途(coating用か)
      • 典型的な誤り:“アクリル樹脂溶液”を無条件で39類にしてしまう
    5. 3214(マスチック/シーリング材) vs 2715(アスファルトマスチック)
      • どこで分かれるか:主材が歴青質(アスファルト等)かどうか
      • 判断に必要な情報:原材料(アスファルト/ビチューメン含有)、SDS、技術資料
      • 典型的な誤り:建材用途=3214と短絡し、注1(c)の除外を見落とす

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注2(第6部):一定の物品は「小売用の形状/包装」「定量・小分け」などの理由で、指定の項(例:3212)に分類され、他の項に行かない、という整理です。
    • 部注3(第6部):複数構成品(セット)で提示され、混合して1つの製品(第6部または第7部の製品)になる場合、条件を満たせば完成品側の項に分類する、という考え方です(2液型塗料・2液型マスチック等の典型)。
  • 実務での意味(具体例つき):
    • 例:主剤(樹脂+顔料)と硬化剤(別容器)を“セット”で輸入し、混ぜて2液型塗料として使う
      → 条件(同梱、詰替不要、補完関係が明確)を満たすなら、部注3に沿って塗料側(3208/3209等)で一体評価しやすいです。
    • 例:染料を家庭用に小袋で販売する形にしたもの
      → 「小売包装」要素により3212へ寄る設計になっているため、原料染料(3204等)とは切り分けが必要です。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 3212(小売包装の染料等)や3506(接着剤)など、「小売形態」や「用途調製品」の見出しが優先してしまい、28/29の単一化学品分類より強くなるケース(部注2)。

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • 注1(a):化学的に単一の元素・化合物は原則この類に入らない(ただし例外あり)
    • 注1(b):特定のタンナート等(タンニン誘導体)は除外(対象章が明示)
    • 注1(c):アスファルトマスチック等は2715へ
    • 注2:アゾ染料生成用の混合物を3204に含める
    • 注3:3203〜3206は「着色料を基にした調製品」も含むが、非水系分散の液/ペーストで塗料製造用のもの等は除外(=3212等)
    • 注4:3208には、39.01〜39.13の物品を揮発性有機溶剤に溶かし、溶剤が全重量の50%超の溶液も含み得る
    • 注5:この類の「着色料」には、油ペイントの体質顔料(フィラー)として使う種類の物品は含めない(=別章へ行き得る)
    • 注6:3212の「スタンプ用のはく(箔)」の範囲を構成要件で定義
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「スタンプ用のはく(箔)」は、印捺用途の薄いシート状で、金属粉/顔料+結合剤で凝結したもの、または支持体上に金属/顔料を付着させたもの、という趣旨で限定されています(注6)。
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 化学的に単一の元素・化合物 → 第28類/第29類(例外は注1(a)の列挙を確認)
    • 歴青質マスチック(アスファルトマスチック等) → 第27類 2715
    • 特定のタンナート等 → 第29類/第35類側(注1(b)に列挙)

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。

  • 影響ポイント1:「化学的に単一」かどうかで、第28/29類に飛ぶ
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):純度、単一CASか、混合物か、添加剤の有無、仕様書
    • 現場で集める証憑:SDS(第3章/第9章)、CoA(分析表)、配合表、製造工程概要
    • 誤分類の典型:単一の有機化合物(溶剤・添加剤等)を“塗料の原料”という理由だけで第32類に置いてしまう
  • 影響ポイント2:顔料が「粉」か「非水系分散液/ペースト」かで 320x ↔ 3212 が動く
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):形状(液・ペースト・粉)、分散媒体(水以外か)、用途(塗料製造用か)
    • 現場で集める証憑:SDS、技術データシート(TDS)、製品写真、用途説明(カタログ)
    • 誤分類の典型:「pigment dispersion」「color paste」を“顔料”として3206に入れてしまう(注3の除外)
  • 影響ポイント3:樹脂溶液の“溶剤50%超”で 3208 に入ることがある
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):溶剤含有率(重量%)、揮発性有機溶剤の種類、樹脂が39.01〜39.13相当か
    • 現場で集める証憑:SDS、配合表、製品仕様(固形分/不揮発分)
    • 誤分類の典型:「樹脂溶液」=39類と決め打ちし、注4を確認しない
  • 影響ポイント4:マスチックが“アスファルト系”だと 2715 に除外
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):歴青質(ビチューメン/アスファルト)を主材としているか
    • 現場で集める証憑:SDS、原材料表、用途・施工説明書
    • 誤分類の典型:建材系のコーキングをすべて3214とみなす

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:単一化学物質(高純度の溶剤・添加剤など)を第32類に入れる
    • なぜ起きる:用途が塗料・インキ関連だと、製品名に引っ張られる
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):注1(a)で「化学的に単一」は原則除外(例外以外は28/29へ)
    • 予防策(確認すべき資料/社内で聞くべき質問例):
      • SDSで「単一物質」か「混合物」かを確認
      • 社内質問例:「着色成分・樹脂・溶剤は何が何%ですか?CASは何ですか?」
  2. 間違い:顔料分散体(非水系カラーペースト)を3206(粉末顔料)で申告
    • なぜ起きる:品名が“pigment”で、形状(ペースト)を見落とす
    • 正しい考え方:注3で、特定の分散液/ペースト(塗料製造用)は3203〜3206から外れる
    • 予防策:
      • 「媒体は水ですか?有機溶剤ですか?」「塗料の製造工程で使う中間品ですか?」を確認
      • TDS(用途・粘度・固形分)と製品写真を入手
  3. 間違い:水性塗料を3208(非水系)にしてしまう/逆も同様
    • なぜ起きる:品名が“paint”“coating”だけで、媒体を確認しない
    • 正しい考え方:3208は非水系、3209は水系(媒体の違いが本質)
    • 予防策:
      • SDSの溶剤欄、水分含有、危険物情報(引火点など)を確認
      • 社内質問例:「希釈は水ですか?シンナーですか?」
  4. 間違い:樹脂溶液を第39類に固定してしまい、3208の注4を見落とす
    • なぜ起きる:“resin solution”=樹脂の一種、と理解してしまう
    • 正しい考え方:注4により、一定の樹脂溶液(溶剤>50%等)が3208に含まれ得る
    • 予防策:
      • 固形分(不揮発分)と溶剤重量%を確認
      • 製品が「塗装用途(coating)」として販売されているか確認
  5. 間違い:2液型(主剤+硬化剤)を別々のHSで別申告してしまう
    • なぜ起きる:容器が別で、別商品に見える
    • 正しい考え方:部注3(第6部)で、混合して製品となるセットは完成品側へ分類し得る(条件あり)
    • 予防策:
      • “セットで提示されるか”“詰替不要か”“補完関係が明確か”を確認
      • 梱包明細(セット構成)を入手
  6. 間違い:シーリング材/マスチックを3214に入れるべきところ、アスファルト系を見落とす
    • なぜ起きる:用途(シール)で一括してしまう
    • 正しい考え方:注1(c)で歴青質マスチックは2715へ除外
    • 予防策:
      • SDSで“bitumen/asphalt”含有を確認
      • 社内質問例:「主材はアスファルト系ですか?樹脂系ですか?」
  7. 間違い:“インキ”を塗料(3208/3209)として扱う/逆
    • なぜ起きる:どちらも液体で着色するため、工程側の呼び方が混ざる
    • 正しい考え方:印字用途のインキは3215。被膜形成の塗料・ワニスは3208〜3210
    • 予防策:
      • 用途(印刷方式:グラビア/フレキソ等、筆記等)と乾燥後の機能(印字か塗膜か)を確認
  8. 間違い:小売用の染料(家庭用染色セット等)を原料染料(3204等)で申告
    • なぜ起きる:成分からだけで見てしまう
    • 正しい考え方:小売用の形状/包装は3212へ寄る(部注2+類注の例外)
    • 予防策:
      • 販売形態(小袋、説明書付き、消費者向け)と梱包状態を確認
  9. 間違い:セラミック用釉薬調製品を“粉末”というだけで他章(69/70等)へ寄せる
    • なぜ起きる:セラミック=陶磁器の章、という先入観
    • 正しい考え方:釉薬・フリット等の「調製品」は3207に立つことが多い(用途・調製の有無が鍵)
    • 予防策:
      • 「ガラス/ほうろう/陶磁器工業用の調製品か」「フリット(融着ガラス)を含むか」を確認

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結すること(誤ると原産性判断が崩れる)
    • 第32類は「調製品」が多く、媒体や包装形態の違いでHSが動くため、PSR(例:CTH/CTSH/RVC等)の当てはめがズレやすいです。
  • よくある落とし穴(材料のHS、最終製品HS、工程の評価軸)
    • “顔料(粉)”としてBOMを組んでいたが、実際に輸出するのは“非水系分散ペースト(3212)”だった、など。

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 当該協定が参照するHS版(代表例)
    • 日EU EPA:HS2017(PSR附属書がHS2017分類を前提)
    • RCEP:HS2022版PSRが2023年1月1日から実施(従来HS2012→HS2022に置換)
    • CPTPP:PSRがHS2012体系(HS2012 nomenclature)を前提
  • 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
    • 輸入申告は最新HS(日本では最新の実行関税率表)を使用しつつ、PSR参照は協定のHS版で見る、という“二重管理”が起きます。
  • トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
    • 旧HSでPSRを見ている場合は、WCO相関表(Correlation Table)で新旧コードを対応づけ、**「PSRの参照コード」と「通関申告コード」**を混同しない運用が安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
    • 第32類は溶剤・樹脂・添加剤が多く、非原産材料が多数になりがちです。BOMは「重量%」「固形分(不揮発分)」も併記すると、後工程の説明が楽になります。
  • 証明書類・保存要件(一般論)
    • 仕様書(組成・用途)、SDS、工程フロー、製造指図、原料原産証憑、コスト積上げ根拠を、協定の保存年限に合わせて保管。

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022新設/分割3204.183204.19(その他の合成有機着色料)から、カロテノイド系着色料を独立させた扱い(相関表上の備考で示される)HS2017運用のまま3204.19で管理している場合、HS2022で6桁が変わる可能性。原産地規則/統計/社内コード連携に影響
HS2017→HS2022変更なし(相関表に当該改正の記載なし)第32類(上記以外)相関表(改正箇所の一覧)上、第32類で他の改正は示されていない基本は継続だが、国内細分(各国の8桁/9桁)改正や解釈運用は別途確認が必要

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 参照した根拠資料(相関表、WCO条文、各国税関の解説、協定付属書など)
    • WCOのHS2022↔HS2017相関表(Table I)において、3204.18の新設と3204.19からの分割が備考付きで示されています。
    • 日本税関が公開しているHS2022↔HS2017相関表(WCO作成表の公表形)でも同趣旨の記載が確認できます。
    • HS条文(Chapter 32の品目表)として、HS2022の第32類(3204に3204.18が存在する構造)を確認しています。
  • “どの資料のどの情報に基づき、何が変わったと判断したか”
    • 相関表の「2017→2022」の該当行で、旧:3204.19 から新:3204.18 が派生した旨が示されているため、**号レベルの分割(新設)**と判断しました。
    • なお、相関表は改正があるコードを中心に列挙する形式のため、表に出てこないコードは“少なくとも大きな号構造改正が示されていない”と整理しています(ただし各国国内細分の改正は別途起こり得ます)。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理(第32類に関係する範囲)
    | 改正の流れ | 主な追加・削除・再編 | 旧コード→新コード(または影響) | 概要 | 実務メモ |
    |—|—|—|—|—|
    | HS2007→HS2012 | 範囲調整(他章新設の影響) | (一部の)3201.90 等 → 2852.90 へ移り得る | HS2012で非化学的に単一でない水銀化合物のための2852.90が整備され、その結果、旧分類に含まれていた一部が移る可能性が相関表備考で示される | 第32類に限らず「旧コードに含まれていた例外品」が抜けるタイプ。SDS成分で水銀化合物が関与する場合は特に要注意 |
    | HS2012→HS2017 |(相関表上)第32類の号構造改正の記載なし | — | HS2012↔HS2017相関表(改正一覧)に第32類コードが見当たらない=少なくとも改正一覧に載る変更は示されていない | “変更なし”扱いでも、各国国内コードや解釈事例は更新され得る |
    | HS2017→HS2022 | 新設/分割 | 3204.19 → 3204.18(カロテノイド系)等 | 3204の一部が細分化(カロテノイド系の識別) | 統計、社内品目コード、PSR参照HS版の整合に影響 |

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):2液型塗料セットを“別製品”として申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):部注3(セットで混合して製品になる場合)を考慮せず、主剤と硬化剤を別分類で申告
    • 起きやすい状況:インボイスに主剤・硬化剤が別行、HSも別で書かれている
    • 典型的な影響:修正申告、検査強化、到着後の保管・危険物対応の遅延(一般論)
    • 予防策:セット梱包の証憑(写真、梱包明細、使用手順)を準備し、セットとしての補完関係を説明できるようにする
  • 事例名:アスファルト系シーリング材を3214で申告
    • 誤りの内容:注1(c)(歴青質マスチックは除外)に抵触
    • 起きやすい状況:“sealant/caulking”という用途名だけで3214と判断
    • 典型的な影響:分類差し戻し、関税率差があれば追徴、危険物/建材関連の追加確認
    • 予防策:SDSでビチューメン含有を事前確認し、2715候補も並行検討
  • 事例名:顔料カラーペーストを粉末顔料として申告
    • 誤りの内容:注3(塗料製造用の非水系分散液/ペースト等は3203〜3206に含めない趣旨)を見落とす
    • 起きやすい状況:品名が“pigment”、梱包がドラム缶で中間原料っぽい
    • 典型的な影響:HS更正、用途説明追加、場合により規制(危険物・SDS)確認の追加
    • 予防策:形状(液/ペースト)・媒体(水以外)・用途(塗料製造用)を示すTDS/カタログを添付
  • 事例名:樹脂溶液の溶剤比率を確認せず39類で申告
    • 誤りの内容:注4(溶剤>50%等の樹脂溶液が3208に含まれ得る)を無視
    • 起きやすい状況:“acrylic resin solution”としか書かれていない
    • 典型的な影響:分類差し戻し、評価書類の追加要求
    • 予防策:固形分・溶剤重量%を明記した仕様書をインボイスに紐付ける

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
    • 検疫・衛生(SPS等)
      • 第32類は化学工業製品が中心で、食品検疫の典型対象ではありませんが、用途が食品接触材や消費者向け化学品にまたがる場合は別途所管法令(例:用途規制)確認が必要です(一般論)。
    • ワシントン条約(CITES)等の種規制
      • 第32類自体は通常CITESの中心ではありません(ただし、原料由来が動植物の場合は別管理が起こり得るため、個別確認)。
    • 安全保障貿易管理(該当する場合)
      • 一部の化学品は規制対象になり得ますが、個別成分と用途で判断が分かれます(一般論)。
    • その他の許認可・届出(第32類で実務頻出)
      • 化審法(化学物質審査規制法):新規化学物質や指定物質等の枠組みがあり、輸入者側での確認が必要になり得ます。
      • PRTR(化管法):指定化学物質の排出・移動量把握と届出等の制度。塗料・インキは溶剤成分が対象に該当することがあります。
      • 毒物及び劇物取締法(毒劇法):毒物・劇物を販売/授与目的で輸入する場合、登録等が必要になり得ます(都道府県窓口等)。
      • 消防法(危険物):溶剤系塗料・インキ等は「引火性液体(第四類)」に該当し得ます。保管・運送・表示などの実務影響が大きいので、引火点等をSDSで確認します。
      • 安衛法(SDS/ラベル等):表示・SDS交付義務対象物質かどうかを確認し、SDSが日本語で整備されているか等をチェックします。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経産省:化審法、PRTR制度
    • 厚労省/関係機関:毒劇物、SDS・ラベル(職場のあんぜんサイト等)
    • 総務省消防庁:危険物の区分(消防法)
  • 実務での準備物(一般論):
    • SDS(最新版)、成分表(CAS/含有率)、用途説明(カタログ/TDS)、輸送区分情報(UN番号等がある場合)、ラベル表示案、保管条件資料

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 用途(着色/塗装/印字/充填・シール/なめし)
    • 形状(粉・液・ペースト・シート)
    • 媒体(水/非水)、溶剤重量%、固形分
    • 組成(樹脂、顔料、染料、添加剤、アスファルト有無)
    • 包装形態(小売用か、セットか)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 注1(a)(単一物質除外)・注3(分散体除外)・注4(溶剤50%超の樹脂溶液)・注1(c)(アスファルト除外)を再点検
    • 2液型/セットは部注3の要件に当てる
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • “water-based / solvent-based”“pigment dispersion”“for paint manufacture”など、分類に効く語を品名に反映
    • SDS、TDS、写真をすぐ出せる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定のHS版(HS2012/2017/2022)を確認し、通関HS(最新)と混同しない
    • 相関表でコード対応づけ(WCO correlation)
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • SDSに基づき:毒劇物、危険物、PRTR、安衛法(SDS/ラベル)を横断確認

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • WCO HS2022 Chapter 32(品目表PDF)〔参照日:2026-02-20〕
    • WCO HS2022 Section VI Notes(部注)〔参照日:2026-02-20〕
    • WCO HS2022→HS2017 Correlation Table(Table I)〔参照日:2026-02-20〕
    • WCO HS2017→HS2012 / HS2012→HS2007 Correlation Table(Table I)〔参照日:2026-02-20〕
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 関税率表解説 第32類(32r.pdf)〔参照日:2026-02-20〕
    • 税関:品目別原産地規則(PSR)検索ページ(HS版注意喚起含む)〔参照日:2026-02-20〕
    • 日本税関:HS2022↔HS2017相関表(公表PDF)〔参照日:2026-02-20〕
    • 外務省:RCEP HS2022版PSR採択(2023年1月1日運用開始の説明)〔参照日:2026-02-20〕
    • 税関:RCEP HS2022版PSRの実施案内〔参照日:2026-02-20〕
  • FTA/EPA本文・付属書・運用ガイダンス
    • 日EU EPA:PSR附属書(HS2017前提の記載がある)〔参照日:2026-02-20〕
    • CPTPP:PSRがHS2012 nomenclatureである旨の公的ガイド(豪州当局)〔参照日:2026-02-20〕
  • その他(業界団体、公的統計等)
    • 経産省:化審法〔参照日:2026-02-20〕
    • 経産省:PRTR制度〔参照日:2026-02-20〕
    • 厚労省関係:毒劇物(輸入時の登録等の注意)〔参照日:2026-02-20〕
    • 総務省消防庁:危険物の概要(消防法)〔参照日:2026-02-20〕
    • 厚労省:SDS/ラベル義務対象物質の調べ方等〔参照日:2026-02-20〕

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

 

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投稿者: shima

嶋 正和 株式会社ロジスティック 代表取締役社長

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