■HS2028■⑤半導体、トランスデューサ等のエレクトロニクス関連のHSコード

8541と8542の境界が、関税だけでなく原産地と輸出管理まで動かす

2028年1月1日に発効するHS2028は、WCO(世界税関機構)の改正勧告(HS条約第16条)に基づく次期HSです。WCOは、HS委員会(HSC)がHS2028向けの改正勧告を暫定採択し、2025年末の正式採択後に2026年1月に公表、2028年1月1日に発効すると説明しています。(世界税関機関)
EUの公式説明文書でも、HS2028の改正目的として「新技術や新製品を反映し分類を容易にする」例の一つに、半導体とトランスデューサが明示されています。

この記事では、半導体とトランスデューサ(センサー等)で、企業実務にどのような影響が出やすいかを、一次情報で確度高く言える範囲に絞って整理します。
注意点として、どのHS6桁が新設・統合・移動するかの確定は、WCOが公表するHS2028の法文と相関表(HS2022↔HS2028)で最終確認が必要です。ここでは、変化の方向性と、実務上「どこが動くと困るのか」を具体化します。(世界税関機関)


1. なぜ半導体とトランスデューサがHS2028の注目領域なのか

理由はシンプルです。分類が揺れやすいからです。
半導体は、単体デバイス、IC、複合パッケージ、センサー内蔵モジュールなど形態の進化が速く、従来の品名だけでは「どこまでが8541(半導体デバイス)で、どこからが8542(電子集積回路)か」「機器(90類など)に寄るのか」が揺れやすい分野です。

EUはHS2028改正の狙いとして、新技術の反映と分類容易化を掲げ、半導体とトランスデューサを具体例に挙げています。つまり、この周辺で文言や注記、区分の調整が入り得るという前提で企業側は備えるべきです。


2. まず押さえる 現行HSの分岐点

トランスデューサは定義がある。仕様書が弱いと誤分類が起きる

半導体とトランスデューサの分類は、第85類の注記が実務の分岐点になります。米国のSchedule B(輸出統計品目表)や豪州関税表でも、8541・8542のために「半導体デバイス」と「半導体ベーストランスデューサ」を定義し、さらに多成分IC(MCO)まで定義しています。(Census.gov)

ここで重要なのは次の3点です。

2-1. 半導体ベーストランスデューサは、センサーやアクチュエータ等を含む

定義上、半導体ベーストランスデューサは「半導体ベースのセンサー、アクチュエータ、レゾネータ、オシレータ」を含み、物理量や化学現象を電気信号に変換する等の固有機能を持つ離散デバイスと整理されています。(Census.gov)
自動車・産業機器・医療機器で多いセンサー素子やMEMS系の一部が、まさにこの定義に乗ります。

2-2. 多成分IC(MCO)は、ICとセンサー等が一体化したものを想定している

MCOは「1個以上の集積回路に、シリコンベースのセンサー等や一定の受動部品機能を組み合わせ、PCB実装用の単一ボディとして不可分にしたもの」と定義されています。(Census.gov)
つまり、同じ“センサー”でも、単体素子なのか、ICと一体のパッケージなのかで、8541と8542の分岐が生まれます。

2-3. 8541と8542は、原則として他の見出しより優先する

注記では、定義に合致する限り、8541・8542が機能ベースで他の見出しに引っ張られることを抑える優先規定が置かれています(例外は8523など)。(Census.gov)
これは「最終用途が自動車部品だから部品の見出しへ」という短絡が通りにくいことを意味します。


3. HS2028で企業に起きやすい具体的な影響

番号が変わるだけではなく、判定に必要な情報が増える

HS2028で半導体・トランスデューサ領域が動くとき、企業が現場で直面しやすい変化は大きく3つです。

3-1. 8541か8542かの判断が、より仕様依存になる

半導体ベーストランスデューサの定義は「半導体基板上に作られ、物理・化学現象を電気信号へ変換する等の固有機能を持つ離散デバイス」という技術要件を含みます。(Census.gov)
HS2028で分類容易化が進むほど、この技術要件を説明できない製品が、税関照会や差戻しの対象になりやすくなります。特に、センサー素子とセンサーモジュールを同一カテゴリで運用している会社ほど、影響が出やすいです。

3-2. センサー内蔵パッケージの扱いが、社内マスターの整合を崩しやすい

MCOの定義は、まさにセンサー内蔵ICなどの実装形態を想定しています。(Census.gov)
HS2028側で文言や区分が調整されると、同一製品群でも「この型番は8542寄り」「この型番は8541寄り」の差が出て、関税率だけでなく、原産地規則のCTC判定や統計集計が分断されがちです。

3-3. 各国の国内コード(8桁・10桁)の再整列が起きやすい

HSは6桁が国際共通で、各国はその下に独自の細分を置きます。HS6桁が動けば、国内の8桁・10桁は連鎖的に動きます。WCOは299セットの改正からなるHS2028勧告を公表し、各国は自国の関税・統計分類を整合させる必要があります。(世界税関機関)
半導体は国別の統計・規制連動が強い分野なので、国内細分の変更は現場影響が大きくなります。


4. ビジネス部門に効く論点

関税だけではない。原産地と輸出管理が同時に動く

半導体はサプライチェーンが複雑で、分類変更が与える影響が大きいことが指摘されています。業界資料でも、8541・8542の注記や定義が技術進化に合わせて改訂されてきた経緯が整理されています。(世界税関機関)
ビジネス側が押さえるべきは、分類変更が次の領域に波及する点です。

  1. 関税と追加関税の適用品目が変わり得る
  2. FTAやEPAの原産地規則で、CTCの起点コードが変わり得る
  3. 統計コードの変更で、取引実績やKPIが連続しなくなる
  4. 輸出管理や制裁対応で、コード参照のルールがある場合に差分が出る

5. いまからできる準備

HS2028の公表テキストが出た瞬間に動ける会社が勝つ

最後に、半導体・トランスデューサ領域で、準備効果が高い順に並べます。

  1. 製品を3階層に分ける
    半導体デバイス単体(8541候補)
    電子集積回路やMCO(8542候補)
    モジュールや完成品(他章の可能性が残る)
  2. 仕様情報の最小セットをマスターに持たせる
    半導体基板上の構造か
    固有機能がトランスデューサか
    ICと不可分に一体化しているか
    これらは注記の定義に直結します。(Census.gov)
  3. HS2022とHS2028の二重管理を前提に設計する
    WCOは2026年1月の公表と2028年1月1日の発効を示しています。切替直前の一括置換は高リスクです。(世界税関機関)
  4. 高額品目と規制連動品目は、分類根拠メモを先に作る
    後から説明できる根拠があるかどうかで、照会対応コストが決まります。

まとめ

HS2028は、半導体とトランスデューサを含む新技術領域で、分類を容易にする方向が公式に示されています。
そして現行制度でも、トランスデューサやMCOは第85類注記で技術的に定義されており、製品形態の違いが8541と8542の分岐を生みます。(Census.gov)

企業にとっての実務インパクトは、番号の付け替え以上に、分類の説明責任が増え、マスター整合と原産地・規制連動が同時に揺れる点です。
いまのうちに、製品群を階層分解し、定義に効く仕様項目を整備しておけば、HS2028の確定テキストと相関表が出た瞬間に、最短で安全な移行ができます。

HSCFのアップデート予定

HSCF、HS2028対応に向けて動きます(HS2022とHS2028を同時表示へ)

HS2028の内容が、少しずつ輪郭を帯びてきました。
分類が変わるということは、現場の「調べる」「付番する」「説明する」の手間が、これまでと同じでは済まないということでもあります。

そして当然、HSCFも“何もしない”わけにはいきません。

そこで今回、HSCFの機能拡充を企画しています。


いまのHSCFは「HS2022の付番ツール」

正式にHS2028が運用開始されるまでは、HSCFは基本的に HS2022のHSコード付番・検索ツールとしてお使いいただく形になります。

ただ、HS2028が近づくにつれ、こんなニーズが増えてくるはずです。

  • 「HS2022ではこのコードだけど、HS2028だとどうなる?」
  • 「分類変更の影響を、早めに把握しておきたい」
  • 「取引先や社内に、変更点を説明できる材料がほしい」

そこで:HS判定結果に「HS2028だとどう変わるか」も表示します

HSCFでHSコードを検索・判定したときに、

  • HS2022での検索結果(現行)
    に加えて、
  • HS2028ではどうなるか(変更見込み)

並べて確認できるようにする予定です。

つまり、ひと目で「現行」と「次期」の差分がつかめる状態を目指します。


※ただし、HS2028確定までは「暫定表示」です

この機能は、HS2028が正式に確定するまで、あくまで暫定情報としての提示になります。
(確定版が出次第、表示内容も順次アップデートしていく想定です。)


HS2028の本格運用が始まってから慌てるのではなく、
“変わる前提で準備できる”状態を、HSCFでつくっていきます。

EU:スマートテキスタイル(電子機能付き衣類)の分類基準を策定

EUでスマートテキスタイルが普及するほど、企業実務では「衣類なのか、電気機器なのか」という関税分類の迷いが増えます。EUは、こうした境界領域の製品について、単発の解釈ではなく、CN運用の枠組みの中で判断の一貫性を担保する仕組みを整備してきました。本稿では、スマートテキスタイルを巡るEUの分類基準が、実務上どのように組み立てられているかを、一次情報に基づいて整理します。 (Taxation and Customs Union)

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  1. スマートテキスタイルとは何か
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    スマートテキスタイルは、一般に「スマート(インテリジェント)テキスタイル/繊維製品」を対象に、定義やカテゴリ分けが議論されている領域です。国際標準化の文脈では、ISO/TR 23383:2020 が、スマートテキスタイルと繊維製品の定義や類型化を扱う文書として位置づけられています。 (ISO)

実務上のスマートテキスタイルは、例えば次のような特徴を持ちます。

  1. 導電糸や配線を繊維に織り込む
  2. センサー、発光、加温、通信などの電子機能を衣類に付与する
  3. 電子モジュールが縫い付け固定か、着脱式かで輸入時の姿が変わる

この「輸入時の姿」と「主要な機能」が、EUの関税分類を左右します。

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2. EUの関税分類はCNが軸になる
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EUでの関税分類は、HSを基礎にした8桁体系のCombined Nomenclature(CN)が中核です。CNは、共通関税率の適用と対外貿易統計の双方の要請を満たすための分類体系として説明されています。 (Taxation and Customs Union)

加えて、TARIC(EU Customs Tariff)は、CNを土台に、貿易救済や規制措置などの情報を紐づけて運用する実務基盤です。TARICの法的基礎がCouncil Regulation (EEC) No 2658/87であることも、欧州委員会が明示しています。 (Taxation and Customs Union)

またCNは毎年更新され、官報で公表される運用です。これは、毎年の改訂と公表が制度として定着していることを示します。 (Taxation and Customs Union)

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3. 「EUの分類基準」とは何を指すのか
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スマートテキスタイルに限らず、EUは分類のブレを抑えるために、複数の手段を組み合わせています。EU側の資料では、加盟国間で解釈が割れた場合に、分類規則、CN説明注、分類ステートメント等で統一的な分類を確保する旨が述べられています。 (Taxation and Customs Union)

ここが重要です。つまり「基準を策定」といっても、ひとつの包括ガイドラインで一気に規定するより、次のように積み上げで基準が形作られます。

  1. 分類規則(特定商品のCN分類を法的に確定)
  2. CN説明注(解釈指針を官報で明確化)
  3. BTI(個別企業が法的安定性を得るための仕組み)
  4. 公開データベースでの参照性向上(CLASS等)

この流れを補強する動きとして、欧州委員会は「分類規則の統合リストを公表した」と発表しています。実務者が過去の分類規則を横断的に参照しやすくするための環境整備といえます。 (Taxation and Customs Union)

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4. スマートテキスタイルで実務判断が割れやすいポイント
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スマートテキスタイルは、繊維と電子の複合製品です。EU実務で争点になりやすい判断軸を、制度の建て付けから逆算して整理すると、次の順序になります。

  1. 輸入時の提示形態がどうなっているか
    ・衣類に電子部品が縫い付け固定か
    ・電子モジュールが着脱式で、別梱包か
    ・複数の構成品が「セット」として提示されるのか

この「輸入時点の姿」が違うと、同じ製品コンセプトでも分類ロジックが変わります。

  1. 主要機能と客観的特性は何か
    ・衣類としての着用が主で、電子は補助的か
    ・電子機能が主で、衣類は保持体や装着体に近いのか
    ・通信、計測、加温、発光など、何が価値の中心か

EUの分類は、宣伝文句よりも、構造や機能など客観的特性に引き寄せて判断されやすいのが特徴です。

  1. 複数素材や複合品のとき、どの要素が「本体」を決めるか
    この点は、スマートウオッチ用ストラップに関するCN説明注が、分かりやすい実例になります。EUは、スマートウオッチ(通信機器側の分類になり得る機器)に専用設計されたストラップであっても、ストラップ単体で提示される限り、ストラップとして分類されることを明確にしています。さらに、ストラップが複数素材から成る場合は、一般規則3(b)の「本質的特性」により素材を決める、と説明しています。 (EUR-Lex)

この考え方は、スマートテキスタイルにもそのまま波及します。
・電子機器に接続する部材でも、単体提示なら「部材側の分類」に残る場合がある
・複合素材なら「本質的特性」をどれが与えるかが焦点になる

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5. 企業が取るべき実務対応
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スマートテキスタイルは、分類の迷いが起きやすい一方、事前に手を打てる領域でもあります。

  1. 分類ドシエの作り込み
    ・BOM、回路図、着脱構造、電源の有無、通信方式、使用手順、洗濯可否
    ・輸入時の提示形態(同梱か別梱か、セット扱いか)を明文化
    この資料が薄いほど、分類の再現性が落ちます。
  2. CLASSで先行情報を検索する
    欧州委員会は、CLASS(分類文書、CNノート、TARIC情報、BTI決定等を参照する入口)を公開しています。まずは既存の整理を探索するのが近道です。 (European Commission)
  3. BTIで法的安定性を取りに行く
    Access2Marketsの解説では、BTIは税関当局が出す法的決定であり、EU域内で3年間有効で、申請者とEUの全税関当局を拘束すると説明されています。スマートテキスタイルのような境界製品では、BTIの費用対効果が高くなりやすい領域です。 (EU貿易)
  4. 分類規則とCN説明注の更新を追う
    欧州委員会が分類規則の統合リストを公表した事実は、企業側も「点のBTI」だけでなく「面の動向」を追う必要があることを示唆します。 (Taxation and Customs Union)
  5. 原産地規則への波及を必ず試算する
    衣類として分類されるのか、電気機器として分類されるのかで、EPAやFTAの品目別規則の読み方が変わります。衣料品が一般にHS 61類または62類に入り、原産地規則の確認が必要になることは、JETROの解説でも触れられています。スマートテキスタイルは、ここに「分類ブレ」が加わるため、分類と原産地は必ずセットで検証してください。 (ジェトロ)

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6. まとめ
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スマートテキスタイルのEU分類は、単一の新ルールが突然降ってくるというより、CNの枠組みの中で、分類規則、CN説明注、BTI、公開システムを通じて基準が積み上がっていく性格が強い分野です。 (Taxation and Customs Union)

実務での勝ち筋は明確です。

  1. 輸入時の提示形態を設計し、文書化する
  2. 主要機能と本質的特性を、客観資料で説明できるようにする
  3. CLASSで探索し、必要ならBTIで確定させる
  4. 分類変更が原産地規則と関税率に与える影響まで同時に試算する

HS2028に備えるための主要国8桁公表状況(2026年1月16〜20日点検)

2028年に向けて進むHS改正(HS2028)は、通関部門だけの話ではありません。関税コスト、原産地管理(EPA・FTA)、輸出入規制、商品マスタ、売上集計、価格改定、契約条件まで、企業の意思決定の前提データをまとめて揺らします。
今回の記事では、主要国の8桁(各国の拡張桁を含む実務上のコード)に関して、どこまで情報が公表プロセスに入っているかを、2026年1月16〜20日の公開情報点検という前提で整理し、経営・事業サイドが取るべき実務アクションまで落とし込みます。

まず前提整理:HS2028はいつ何が起きるのか

世界税関機構(WCO)の枠組みで、HSは国際標準として6桁までが共通です。HS2028はその6桁体系の改正で、各国は自国の関税率表・統計分類をそれに合わせて改訂していきます。WCOの発表では、HS2028改正案は2025年末に正式採択され、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効する流れが示されています。 (World Customs Organization)

ここで重要なのは、企業実務で普段使っているのは6桁だけではないという点です。多くの国は6桁の上に、国内事情に合わせた桁(8桁、9桁、10桁など)を積んで運用します。つまり、HS2028の6桁改正は、その上に載る国内拡張桁の組み替えを引き起こします。

8桁公表状況とは何を指すのか

ここでいう「8桁公表状況」は、単に「WCOの6桁改正が出たか」ではなく、次のような段階を含めて実務的に捉えるのが有効です。

  • 段階1:WCOのHS2028(6桁改正)の公表
  • 段階2:各国当局が、自国の拡張体系(8桁や10桁など)へ落とすための国内プロセスを開始
  • 段階3:当局がドラフト(案)を公開し、意見募集や事前周知を開始
  • 段階4:法令・官報・公定データベースとして確定版を公表
  • 段階5:通関システム、申告様式、統計、FTA運用などへ実装し、適用開始

企業にとって痛いのは、段階4や5で初めて慌てることです。データ更新やシステム改修は時間がかかり、品目数が多いほど遅れが致命傷になります。だからこそ、段階2や3が見えた時点で社内の準備を始めるのが勝ち筋です。

主要国の8桁周辺の制度と、HS2028に向けた公表状況(点検期間:2026年1月16〜20日)

以下は、各国の「桁の考え方」と「公表プロセスの見え方」を、一次情報を中心にまとめたものです。国によって“8桁”の意味合いが異なるので、そこも含めて比較します。

米国:8桁と10桁が実務の中心、2026年2月にドラフト公開予定という具体的マイルストーンがある

米国のHTS(Harmonized Tariff Schedule)は、国際HS(4桁、6桁)に加え、米国独自の8桁・10桁の区分を持ちます。USITC(米国国際貿易委員会)も、国際HSは4桁・6桁、米国独自部分が8桁・10桁である旨を説明しています。 (usitc.gov)

HS2028対応に関しては、USITCが改正反映プロセスを開始しており、2026年2月に暫定ドラフト(HTS改訂案)を公表して意見募集、その後2026年9月に大統領向け報告を提出する見通しが公式に示されています。 (usitc.gov)

ビジネス的に重要なポイントはここです。
主要国の中で、ドラフト公開の時期がここまで明確に読める国は多くありません。米国向け売上が大きい企業ほど、2026年2月のドラフトを「分類番号の更新イベント」ではなく、「関税と規制の再設計イベント」として扱う必要があります。

実務アクションの例

  • 米国売上上位品目、対米調達上位品目を棚卸しし、現行HTSの8〜10桁でリスト化
  • 2026年2月のドラフト公開時に、該当品目が分割・統合・移動していないかを即時確認
  • 影響が大きい品目は、社内分類根拠(なぜその番号なのか)を説明可能にしておく

EU:8桁はCN(Combined Nomenclature)。毎年更新され官報で公表される仕組みが明確

EUの8桁はCN(Combined Nomenclature)で、国際HS(6桁)にEU独自の2桁を加えた8桁体系です。CNは関税率の決定や統計に使われ、毎年更新され、官報(EU Official Journal)で公表される仕組みになっています。 (EU Trade)

直近の例として、EUは2026年適用のCNを2025年10月31日に公表し、2026年1月1日から適用する旨を欧州委員会が案内しています。 (Taxation and Customs Union)

HS2028に向けた意味合いは次の通りです。

  • EUでは、8桁(CN)が実務上の基準であり、更新と公表が毎年必ず回る
  • HS2028の6桁変更は、CNの年次改訂の中で反映されていく可能性が高い
  • 企業側は「次のCN改訂で何が変わるか」を継続監視し、品目マスタや価格テーブルに反映する運用が必要

実務アクションの例

  • EU向けの主要品目について、現行CNと社内品目マスタを必ず一致させる
  • CN改訂のたびに、統計・関税・規制(対象品目指定)に波及がないかを点検する

日本:実務は9桁(統計品目番号)。6桁HS+国内3桁という構造が明確で、改正時はマッピングが鍵

日本の通関実務では、9桁の統計品目番号が基本です。日本税関は、9桁の統計品目番号が6桁HS+国内3桁で構成されることを明示しています。 (Japan Customs)

また、日本税関は「Japan’s Tariff Schedule」として、改訂版を日付付きで公表しています(2026年1月1日版が掲載されていることが確認できます)。 (Japan Customs)

HS2028に向けて日本企業が注意すべき点は、6桁変更に連動して9桁の国内3桁が見直され、過去データの継続性が崩れるリスクがあることです。
輸入の関税計算、EPA適用、調達コスト配賦、品目別採算などで「前年同一品目の比較」が効かなくなりやすい局面です。

実務アクションの例

  • 主要品目について、9桁をただの番号としてではなく、分類根拠とセットで管理する
  • HS改正に備え、現行9桁→将来体系への対照表(マッピング)を前提にしたデータ設計へ切り替える

中国:8桁ベースの国内細分が公式に示されており、6桁変更の影響は8桁再編に直結する

中国税関の公開資料では、HSに基づく中国の分類(CCCS)について、8桁の細分があり、最初の6桁はHSに対応し、7桁目と8桁目が国内細分である旨が説明されています。 (Customs.gov.cn)

また、ジェトロの整理では、中国の税則の品目総数について、HSコード8桁分類ベースでの言及があります(特定年版の税則に基づく説明)。 (JETRO)

HS2028の観点では、WCOの6桁が動けば、中国の7〜8桁(国内細分)も、分類ロジックの再整理を迫られる可能性が高いということです。特に中国は規制・許認可・監督条件が品目に紐づくケースが多いため、番号変更は通関可否や必要書類に波及し得ます。

実務アクションの例

  • 中国向け主要品目について、該当する規制や必要書類がHSに紐づいていないかを先に棚卸し
  • 取引先(輸入者)と、どの番号を使うかの合意形成と証憑整備を早めに開始

韓国:10桁体系。6桁HSを超える国内拡張が明確で、HS改正時は10桁の組み替えが発生する

韓国税関(Korea Customs Service)は、韓国が10桁コードを使用し、6桁HSは世界共通で、各国が6桁以降を独自に拡張する旨を明示しています。 (customs.go.kr)

HS2028に向けては、韓国の10桁体系のうち、影響が出るのは「国内拡張部分だけ」とは限りません。6桁の構造が変われば、その下に積まれた10桁全体の再編が起き得ます。

実務アクションの例

  • 韓国向けの主要品目について、現行10桁を輸入者と突合し、品名と仕様が一致する状態を作る
  • FTAの運用が絡む場合、品目別規則がどの桁を参照しているかを確認し、改正時の影響を事前に試算する

英国:コードは最長10桁。ただし関税は8桁を基礎にする場面が多く、9〜10桁が追加条件を左右する

英国政府のガイダンスでは、英国の申告で用いるcommodity codeは最長10桁になり得ると説明されています。 (Business Growth Service)
さらに、関税率は多くの場合最初の8桁で設定される一方で、9桁目と10桁目が関税や適用措置に影響することがある、と明記されています。 (GOV.UK)

これは、8桁だけを見て「だいたい合っている」と判断すると、措置や税率の取りこぼしが起きることを意味します。HS2028で6桁が動くと、英国の8桁と10桁は連鎖的に更新対象になります。

実務アクションの例

  • 英国向けは、8桁で一次判定しつつ、最終的な適用措置まで含めて10桁で確定する運用へ
  • サンクション、規制、セーフガード等の対象品目は、10桁までの一致を前提に管理する

まとめ表:主要国の「桁」と「公表プロセスの見え方」

地域・国実務で中心になる桁公式に確認できるポイントHS2028に向けて今見えるマイルストーン
WCO(国際)6桁2026年1月公表、2028年1月1日発効の流れ (World Customs Organization)まず6桁改正の確定内容を把握することが全ての起点
米国8桁・10桁8桁と10桁は米国独自 (usitc.gov)2026年2月ドラフト、2026年9月報告 (usitc.gov)
EU8桁(CN)CNは8桁で毎年更新、官報公表 (EU Trade)年次改訂の枠でHS2028反映が進む可能性が高い
日本9桁9桁=6桁HS+国内3桁 (Japan Customs)将来の対照表(マッピング)前提のデータ設計が重要
中国8桁(国内細分)8桁細分で、最初の6桁がHS、7〜8桁が国内 (Customs.gov.cn)6桁改正は8桁再編に直結しやすい
韓国10桁韓国は10桁を使用 (customs.go.kr)6桁変更に伴い10桁の組み替えが発生し得る
英国最長10桁(関税は8桁基礎が多い)9〜10桁が措置や税額に影響する場合あり (GOV.UK)8桁だけの管理で止めず、10桁確定まで運用設計

経営・事業サイドが今やるべきこと:通関の話を「経営課題」に変える手順

ここからが本題です。HS改正対応は、突き詰めると「社内の型」を作る仕事です。大きく外さないために、次の順番で着手するのが現実的です。

1) 影響範囲を「品目」ではなく「売上と原価」で切る

  • 売上上位、粗利上位、調達額上位の品目から着手する
  • 国別に、どの桁で申告しているか(EUならCN、米国ならHTSなど)を揃える

2) 二層管理に切り替える

  • 国際6桁:全世界で共通の骨格として管理
  • 国別拡張(8〜10桁):国ごとの申告・税率・規制の確定値として管理

この二層を混ぜると、改正時に詰みます。特に「海外拠点が現地コードで管理している」「本社は6桁しか持っていない」といった分断は、改正局面でデータ整合が崩壊しやすい典型パターンです。

3) 取引先との合意を先に作る

  • 輸入者側が最終判断権を持つ国が多い
  • 自社だけで番号を決めたつもりでも、相手国税関で止まると意味がない

結論:2026年は「公表を待つ年」ではなく「仕組みを作る年」

2026年1月16〜20日の時点で見える構図はシンプルです。

  • HS2028は、2026年1月公表、2028年1月1日発効という国際スケジュールが明確 (World Customs Organization)
  • 各国の実務コードは、6桁の上に国内拡張(8〜10桁)があり、国ごとに桁も運用も異なる (EU Trade)
  • 米国は2026年2月にドラフト公開予定という具体的な山場がある (usitc.gov)
  • EUや日本は、年次改訂と公表の仕組みが制度として確立しているので、改正局面では「改訂情報の取り込み運用」が勝負になる (Taxation and Customs Union)

HS2028対応で差がつくのは、情報収集の速さよりも、社内データと業務運用の型を先に作れるかどうかです。
次に何が出たら動くのか、そのトリガー(米国なら2026年2月、EUなら次のCN改訂情報、日本なら改訂版の公表と対照表など)を決め、監視と更新をルーチン化してください。

必要であれば、この枠組みをそのまま社内向けの「HS2028対応ロードマップ(部門別タスク、マスタ設計、監視頻度、改正時の意思決定フロー)」に落とし込んだ雛形も、文章として作れます。