■専門的■ USITCが公表したHS2028対応スケジュールを、いま企業がどう使うべきか

米国向けビジネスでは、HSコードと米国のHTSUS(米国関税率表)が、関税率だけでなく、追加関税、輸入規制、統計、社内マスタや契約条件にまで連鎖します。usitc+1

その前提で、USITC(米国国際貿易委員会)がHS2028対応に向けた手続とスケジュールを示したことは、実務の準備開始を促す重要な合図です。usitc

以下では、USITCが示した公式スケジュールの読み方と、企業が今から取るべき実務アクションを、専門家の視点で整理します。

まず押さえるべき前提:HS2028と米国のHTSUSは同じではない

HS(Harmonized System)はWCO(世界税関機構)が管理する国際的な品目分類の共通基盤で、200を超える国と地域の関税率表や統計品目表がHSを土台に組み立てられています。米国も例外ではなく、HTSUS(米国の関税率表)はHSの章・項・号(6桁)構造を核にしつつ、米国独自の細分(主に8桁や10桁の統計番号など)を上乗せして運用します。strtrade+2

このため、HS2028の改正は「世界共通の6桁の変更」を意味しますが、米国実務ではそれに連動してHTSUSの枝番や統計番号、米国独自の注記や運用も調整されます。企業側は「HS6の改正」と「HTSUSの改正」を分けて観察することが、混乱を防ぐ近道です。strtrade+1

USITCが公表したHS2028対応の公式スケジュール

USITCは、HS改正をHTSUSへ取り込むための調整プロセスを開始し、主要な節目を明示しています。USITCは法律により、WCOのHS改正に合わせてHTSUSの修正を大統領に勧告する責任を負っており、その修正はHS改正との整合性、健全な品目分類原則との整合性、実質的な税率中立性の確保という3つの要件を満たす必要があります。usitc+1

重要ポイントだけを、実務目線で表にします。

時点USITCの公表内容企業側の意味
2025年8月HS2028対応に向けた調査を開始(調査番号も付与)usitcここが「公式に準備が始まった」起点。社内でプロジェクト化しやすい
2026年1月WCOの改正勧告(Recommendation)をUSITCが掲載予定strtrade初めて「世界共通の改正パッケージ」を具体的に精査できる段階
2026年2月USITCがHTSUS改正の提案(予備ドラフト)を掲載予定usitc+1企業がコメント提出や、社内影響評価を本格化させる段階
2026年9月USITCが大統領に報告書を提出予定usitc+1以降は米国側で最終化プロセスが進み、実装に向けた確度が上がる

上記の月次は、USITC自身が変更の可能性を示唆しています。従って、日程は固定視せず「この順番で進む」ことを前提に、監視と準備を進めるのが安全です。usitc

さらに、世界側の大枠として、WCOはHS2028改正勧告を2025年12月末に正式採択し、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効することを示しています。米国だけでなく、世界同時に品目体系が動く前提に立つ必要があります。wcoomd+1

なぜビジネスマンが今から気にすべきか:影響は関税率だけではない

HS2028改正が企業に与える影響は、関税率表の読み替えに留まりません。特に次の領域で、実務リスクが顕在化しやすくなります。strtrade+1

誤分類リスクの再燃

長年運用してきた分類が、改正により別の号に再配置されることがあります。自社は同じ製品のつもりでも、税関システム上は別コードとして扱われ、申告エラーや追加確認の要因になり得ます。wcoomd

追加関税・規制・統計の連動崩れ

米国では追加関税や各種措置、統計管理がHTSUSの特定番号に結び付く場面が多く、番号の変更は「制度の適用関係」を組み替えます。品目番号の読み替えが遅れると、想定外のコストや手続が発生します。usitc

社内マスタ、見積、契約、原価の再計算

HSやHTSUSは、通関指示書、購買条件、原産地証明関連の書類、SAP等の品目マスタに埋め込まれています。改正対応は、貿易部門だけで完結しません。strtrade

USITCスケジュールを起点にした、企業の実務アクション

ここからが本題です。スケジュールは「読むもの」ではなく「社内段取りに落とすもの」です。次のように、節目ごとにやることを固定すると、準備の抜け漏れが減ります。usitc

いまから2026年1月までにやること(準備フェーズ)

米国向けの重点品目リストを作成します。輸出数量、利益、通関頻度、追加関税の影響度などで優先順位を付け、対象を絞ります。strtrade

現行コードの棚卸しを実施します。HS6、HTSUS(必要なら10桁)、社内品目番号のひも付けを整えます。ここが崩れていると、改正影響を評価できません。usitc

関係者を巻き込みます。米国側の輸入者(Importer of Record)、通関業者、社内の営業・購買・原価管理と、改正対応の窓口を決めます。strtrade

2026年1月(WCO改正勧告の掲載)にやること(一次情報で差分確認)

改正パッケージで「自社品目が触れている領域」を特定します。全品目を読むのではなく、重点品目が属する章・類・項を中心に差分を追います。wcoomd+1

影響を3区分に仕分けします。コードが変わる可能性が高い、コードは同じだが説明や注記が変わる可能性がある、影響は当面小さい、という区分です。この仕分けが、次のドラフト評価のスピードを決めます。usitc

2026年2月(USITCドラフト掲載)にやること(社内評価と必要なら意見提出)

USITCは、予備ドラフト公表時にクロスリファレンス表(新旧コード対応の参考表)を提供する方針を示しています。これは、企業が読み替えと影響評価を進めるうえで重要な補助輪になります。ただし、この対照表は非公式で変更される可能性があるため、確定表として社内システムへ直入れしない運用が安全です。usitc

ここでの実務は次の通りです。重点品目の新旧候補コードを当て、税率・追加関税・規制の影響を試算します。通関エラーや輸入要件変更の有無を、通関業者とすり合わせます。影響が大きい場合は、USITCの公開コメント手続に沿って意見提出を検討します。strtrade+1

2026年9月以降(大統領への報告提出後)に備えること

USITCの役割は「大統領への勧告・報告」までですが、その後、大統領が勧告に基づきHTSUSの改正を布告できる法的枠組みがあります。布告は連邦官報での公表から30日後に発効するのが通例です。従って、報告提出後は「実装に向けた確度が上がる局面」として、社内のシステム改修やマスタ改定、取引先への周知の準備を前倒しで進めるのが現実的です。govinfo+3

情報収集の実務:どこを見れば一次情報に当たれるか

今回の件は、一次情報の所在が比較的明確です。strtrade+1

USITCのプレスリリースと連邦官報(Federal Register)で、スケジュールと手続が確認できます。USITCのHTS検索サイトと、調査案件の電子ドケット(EDIS)で、資料と更新が追えます。usitc+2

更新タイミングは前後し得るため、月次で機械的に確認するより、USITCが示した節目(2026年1月、2月、9月)に照準を合わせて監視する方が、工数対効果が高くなります。strtrade+1

まとめ:HS2028は2026年が勝負どころになる

USITCが示したスケジュールは、企業にとって「2026年に差分を読み、影響を試算し、社内実装の設計を固める」ためのロードマップです。usitc+1

HS2028の発効日である2028年1月1日から逆算すると、2026年の一次情報公開とドラフト提示の時点で、準備を終えている企業ほど、コストと混乱を抑えられます。wcoomd+1

貴社が米国向けに複数品目を扱っているなら、まずは重点品目を絞った棚卸しから始め、2026年1月と2月の公開資料で差分評価を回す体制を作ることが、最も確実で実務的な第一歩になります。strtrade+1

  1. https://www.usitc.gov/press_room/news_release/2025/er0812_67410.htm
  2. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/august/next-round-of-htsus-modifications-anticipated-to-take-effect-in-2028
  3. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx
  4. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2016-12-02/pdf/2016-29200.pdf
  5. https://obamawhitehouse.archives.gov/the-press-office/2016/12/01/presidential-proclamation-modify-harmonized-tariff-schedule-united
  6. https://www.usitc.gov/harmonized_tariff_information/announcement_archive
  7. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-08-15/pdf/2025-15518.pdf
  8. https://starusa.org/trade-news/usitc-investigation-launched-on-2028-harmonized-tariff-schedule-changes-to-align-with-global-standards/
  9. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-01-08/pdf/2025-00157.pdf
  10. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2023/october/successful-conclusion-of-the-72nd-session-of-the-harmonized-system-committee.aspx

■専門的■ 関税とWCOの最新発表は一次情報で確認する

情報の流れが速いほど、誤読のコストは増大します。関税率や品目番号、原産地、課税価格といった論点は、ニュースや解説記事で把握したつもりでも、実務で真に必要なのは「どの一次情報に、何が、いつから記載されているか」という正確な根拠です。一次情報で裏取りできる体制を持つだけで、追加関税の見落とし、誤分類、優遇適用ミスといった損失を大幅に減らせます。

本稿は、関税とWCOの最新発表を一次情報だけで最短確認するための実務ガイドです。

一次情報とは何か

ポイントは役割分担の理解にあります。WCOは主に国際標準としてのHS分類体系、原産地規則、課税価格評価の枠組みや解釈ツールを整備する機関です。一方で、実際に適用される関税率や国内の統計番号、運用の細目は各国や地域の税関当局が決定します。つまり、WCOの発表を見ても、輸入国の税率が自動的に変わるわけではありません。逆に、各国の関税率表だけを追っても、HS改正や解釈変更の国際的な潮流を見落としがちです。wcoomd+1

一次情報の基本形は次の3つに整理できます。

  • 国際標準と解釈の一次情報: WCOの公表物、委員会成果、公式データベース
  • 各国の関税率と国内番号の一次情報: 関税率表、統合関税、官報や法令
  • 発効日と経過措置の一次情報: 施行日、適用開始日、旧番号との対照表、手続通達

WCOの情報でも、解説書や分類意見など一部のコンテンツは購読や購入が前提となる点も押さえておきましょう。linkedin

WCOの最新発表を追うなら、まずここを見る

WCOはニュースルームで最新の公表を体系的に確認できます。年次の一覧から、どの委員会や分野で何が動いたかを俯瞰でき、理事会決定や技術文書の公表が随時更新されています。wcoomd+1

HS改正の一次情報は、段階と日付が命

HS改正は、会議での合意、理事会への提出、正式採択、公表、発効という複数の段階を踏みます。例えばHS2028改正では、HSC(調和システム委員会)が改正勧告を2025年3月に暫定採択し、2025年12月末に正式採択後、2026年1月に勧告公表、2028年1月1日に発効というタイムラインが示されています。usitc+1

このように、一次情報は必ず「公表日」と「適用日」をセットで読む必要があります。社内のマスタ更新や顧客見積への反映は、適用日を基準に逆算して計画するのが安全です。wcoomd

HSCの決定は、分類実務に直撃する

HSCは分類の解釈に直結する決定や、HS解説書の更新を積み上げます。直近の例として、2025年10月の第76回HSC会合では、分類決定、解説改訂、分類意見の新設など多数の成果が公表されています。こうした一次情報を追うことで、通関現場で突然判断が変わるリスクを先回りできます。wcoomd

WCO Trade Toolsは、一次情報に最短で届く入口

HS、原産地、課税価格を一つの公式プラットフォームで参照したい場合、WCO Trade Toolsが中核になります。HSの複数版(2022、2017、2012、2007、2002年版)、解説、分類意見、対照表、さらに約200のFTAの原産地規則まで統合している点が実務向きです。wcotradetools+2

HS分類体系自体は無料でアクセス可能ですが、解説書や分類意見などの詳細な解釈資料は購読や購入が前提のものもあります。社内で必要な範囲を決め、購読範囲と利用部門を整理しておくと、確認スピードが上がります。linkedin

関税率は各国の一次情報で確定する

同じHS6桁コードでも、関税率と国内の細分番号は国や地域で異なります。一次情報の入口を、輸入国別に固定しておくのが最も堅実です。customsknowledge+1

日本

日本税関の関税率表ページは、版の切り替えが明確で、最新版の参照導線として使えます。ただし英語ページには「参照用」であり、日本語の法令等で確認するよう明記されています。監査や社内稟議の根拠としては、日本語の法令ベースに当たる運用をセットで持つべきです。wcoomd

米国

HTSはUSITCのHTSサイトが一次情報の入口です。版や改正が頻繁に入るため、検索結果の章注や脚注、改正履歴の確認が重要です。また、HS改正に向けた国内手続の動きはUSITCのプレスリリースや、連邦官報の告示で追えます。2025年8月にはHS2028改正を反映するためのHTS修正手続が開始されており、2026年2月に予備草案、2026年9月に最終勧告という日程が示されています。usitc

EU

EUはCNとTARICの二段構えで押さえると確実です。CNは8桁の統合品目分類で年度版として整理され、2026版の公表も当局から告知されています。一方、実務で最も参照頻度が高いのは10桁の統合関税TARICです。関税率だけでなく、輸入規制などの措置も統合され、データベースとして提供されています。rotra+2

カナダ

CBSAのCustoms Tariffは、年度版のページで法令とスケジュールを整理しています。taxation-customs.europa

英国

英国はTrade Tariffサービスが一次情報の入口です。品目コード、関税、VAT、各種措置を検索でき、更新情報も出ます。taxation-customs.europa

ニュースを見たら、一次情報でこう確認する

社内の確認手順を、次の5ステップに固定すると属人化が減ります。

変化を分解する

品目番号の改正か、関税率の改正か、貿易救済や追加課税か、原産地要件か。ここを混ぜると確認先がぶれます。usitc+1

一次情報の発信主体を特定する

HSや解釈ならWCO。税率や国内運用なら輸入国当局。EUならCNとTARICの役割分担、のように整理します。wcoomd+3

日付を二つ確認する

公表日と適用日、さらに経過措置の有無を確認します。HS改正のように数年先の発効もあるため、適用日を基準にマスタ更新計画を組みます。wcoomd+1

対象範囲を一次情報の文言で切る

対象HS、例外、適用条件を一次情報の文言で範囲確定します。解説記事の要約だけで判断しないのが鉄則です。usitc+1

証跡を残す

URL、タイトル、更新日、該当箇所の保存、社内判断の根拠メモまで残します。後日の説明責任と、次回改正時の再利用が効きます。usitc

実務用に、最低限の記録項目はこの形で足ります。

項目記録内容の例
テーマHS改正、関税率改正、運用通達など
一次情報の発信元WCO、税関、USITC、EU TAXUDなど
公表日当局ページの掲載日
適用日施行日、適用開始日
影響範囲対象HS、対象国、例外条件
社内対応マスタ改定、見積更新、顧客通知
証跡PDF保存、該当箇所、社内判断メモ

ありがちな落とし穴

落とし穴は、一次情報を見ているつもりで別物を見ているケースです。

WCOの発表を、そのまま関税率の変更だと誤解する

WCOは国際標準と解釈の枠組みが中心で、税率の決定主体は各国です。wcoomd+1

参照用ページを公式根拠として扱う

日本税関の英語版関税率表が参照用であるように、ページの注記まで含めて一次情報です。wcoomd

CNとTARICを混同する

EUでは8桁の年度版CNと、10桁で日々更新される統合関税TARICで役割が違います。両方を使い分けると確認漏れが減ります。customsknowledge+1

まとめ

関税やWCO情報の確認は、スピード勝負に見えて実は「確認先の固定化」が最短です。WCOはHS、原産地、課税価格の解釈と標準を追う。税率は各国当局の関税率表や統合関税で確定する。公表日と適用日を分けて読み、証跡を残す。これだけで、判断の再現性が上がり、誤読コストが下がります。rotra+3

  1. https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/instrument-and-tools/tools-to-assist-with-the-classification-in-the-hs/hs-online.aspx
  2. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025.aspx
  3. https://www.linkedin.com/posts/world-customs-organization_wco-customs-nomenclature-activity-6844192177279524864-Ufrg
  4. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom.aspx
  5. https://www.usitc.gov/press_room/news_release/2025/er0812_67410.htm
  6. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx
  7. https://www.wcotradetools.org/en/harmonized-system
  8. https://customsknowledge.nl/en/publications/customs-concepts-in-the-eu-and-the-us-a-comparison/
  9. https://rotra.eu/en/knowledge-base/customs/taric-en-gn-codes
  10. https://taxation-customs.ec.europa.eu/news/global-customs-leaders-and-eu-drive-modernisation-wco-policy-commission-and-council-sessions-2025-07-01_en
  11. https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/instrument-and-tools/hs-nomenclature-2022-edition.aspx
  12. https://hstracker.wto.org
  13. https://www.youtube.com/watch?v=poBXA6j9NXo
  14. https://www.usitc.gov/sites/default/files/publications/tariff_affairs/pub5060.pdf