HS2028相関表の第1ドラフトは、企業のHS移行を「単なるコード置換の作業」から「経営管理とリスクマネジメント」に格上げする起点になります

HS2028相関表と実装期間の位置づけ

2026年1月21日、世界税関機構(WCO)はHS2028改正が受け入れられたことを公表し、2028年1月1日の発効までの2年間を実装期間と位置づけています。wcoomd+2
この発表では、公衆衛生や環境、プラスチック廃棄物や新興製品など、政策課題を反映した改正である点とともに、加盟国および関係者が影響評価と準備を進めるための時間が確保されたことが強調されています。freightnews+1

WCOは、HS改正の実装作業として、相関表の作成、HS解説書や出版物の改訂、ITシステム更新、加盟国による国内法化、教育訓練などを挙げています。wcoomd+1
この流れはHS2022のときと同様であり、HS2028についても、相関表が実務へのブリッジとして中心的な役割を果たすことが想定されます。customsmanager+2

2025年9月に開催されたHS委員会(HSC)第76回会合では、HS2022とHS2028の相関表作成作業を開始し、分かりやすさと使いやすさを高めるためのフォーマット改善が採択されたと報告されています。strtrade+1
この会合の成果として、HS2028の効果的な実装を支える「参考ツール」としての相関表開発が、HSCの重要なタスクの一つに位置づけられています。strtrade+1

企業側の視点で見ると、相関表が公開されるタイミングから、製品マスタ、関税コスト、EPA・FTAの原産地判定、輸出入管理、見積条件、BIの集計軸といった社内データやプロセスが連鎖的に更新され始めます。
相関表は、こうした連鎖の出発点になり得るため、「第1ドラフト」が持つ意味は非常に大きいと言えます。

相関表とは何か:性質と限界

WCOが公表しているHS2017からHS2022への相関表は、HS改正時にどのコードがどのコードに移るのかを示す「移行の地図」として作成されています。wcoomd+1
ただし、WCO自身が強調している通り、相関表はいくつかの重要な前提を伴います。wcoomd+1

  1. 法的拘束力はない
    HS2017–HS2022相関表の説明では、相関表は加盟国や企業が新しい版への移行を準備するためのガイドであり、法的な解釈や分類決定そのものではないと明記されています。wcoomd+1
    したがって、最終的な分類や課税・監査の判断は、各国法令や税関当局の運用に基づいて行われます。
  2. 1対1の単純な置換表ではない
    相関表では、旧サブヘディングから新サブヘディングへの移行が、分岐(旧1コードから新複数コード)や統合(旧複数コードから新1コード)として示される場合があります。[wcoomd]​
    また、旧サブヘディングの一部のみが新サブヘディングに移る場合、接頭辞「ex」が付され、そのコードのうち一部の品目だけが対象であることが示されます。[wcoomd]​
  3. 複数の対応が併記される場合がある
    HS2017–HS2022相関表の解説では、改正や相関の検討過程で、特定品目の現行分類について加盟国間で見解が分かれたケースがあったことが説明されています。[wcoomd]​
    こうした場合、相関表には複数の相関候補が併記され、各国・地域のナショナルまたはリージョナル相関表が、実務上の最終的な対応関係を示す役割を果たすとされています。[wcoomd]​
  4. 相関表は将来修正されうる
    相関表は後から変更や修正が行われる可能性があり、最新版は常にWCOのウェブサイト上にあると明記されています。wcoomd+1
    したがって、ドラフト段階はもちろん、正式版についても版管理と更新確認が企業側の必須作業になります。

これらの性質は、HS2028の相関表でも基本的に踏襲されると考えるべきであり、「相関表に書いてあるから安全」という前提で動くことは危険です。customsmanager+2

なぜ第1ドラフトが企業にとって重要なのか

HS改正では、発効日までの実装期間の間に、WCOと各国が相関表や解説書、ITシステムなどを順次整備していくことが制度的に組み込まれています。ddcustomslaw+2
HS2028についても、改正の受入れが公表されてから発効日までの2年間で、相関表作成と関連ツールの更新が進められることが示されています。linkedin+2

この文脈で、第1ドラフトは企業にとって「検証と準備を始める合図」となります。
経営視点で整理すると、次の三つの意味があります。

  1. 影響範囲を数量的に把握できる
    自社が現在使用しているHS2022の6桁コードを相関表に当てることで、どのコードがそのまま維持され、どこが分岐し、どこが統合されるかが見える化されます。wcoomd+1
    これに売上高、利益率、数量、主要仕向地などを掛け合わせることで、どの品目群から優先的に見直すべきか、作業量とリスクを定量的に把握できます。
  2. 経営レベルの意思決定が必要な論点が露出する
    旧1コードが新複数コードに分岐する場合や、exが付されて一部のみが新コードに移る場合、自社製品がどの定義に当てはまるかを判断する必要があります。[wcoomd]​
    分岐の選択は、監査や訴訟時の説明責任にも直結するため、現場担当だけでなく、法務・コンプライアンスを含む会社としての方針決定が求められます。
  3. システム要件の具体化が進む
    新旧コードの併存、適用開始日の管理、過去データの再集計など、ITシステム側で必要となる要件が、相関表ドラフトを前提に具体的に設計できるようになります。ddcustomslaw+1
    単なる「コード検索機能」ではなく、「年版と適用日の版管理」を前提とした設計が求められます。

相関表ドラフトの実務的な読み方

相関表は、眺めて満足する資料ではなく、自社データに当てて初めて意味を持ちます。
ドラフト段階で企業が取るべき実務ステップは、次のように整理できます。

ステップ1 影響度のスクリーニング

  • 自社のHS2022の6桁コード一覧を作り、相関表上で変化のあるコードを抽出する。wcoomd+1
  • そのコードに紐づく売上・利益・数量・主要仕向地を付け、影響度の高い順に優先順位を付ける。
  • まずは「分岐」「統合」「ex」が関係するコードを上位から検討し、リスクの大きい箇所を先に潰す。

相関表は後から修正されうるため、初期段階で全品番を完全にやり切ることを目指すよりも、高リスク領域から段階的に精度を上げていく方が現実的です。wcoomd+1

ステップ2 分岐・統合の意思決定基準を作る

分岐やexが伴う移行では、最終的に「商品の定義」を読み解く作業が必要になります。[wcoomd]​
HS2028の改正は、公衆衛生、環境、廃棄物管理、新興製品など政策目的との紐づけが強いことが特徴とされており、定義の読み込みとそれを裏付ける証拠がより重要になります。freightnews+1

ドラフト段階でやるべきことは、最終コードを急いで決めることではなく、社内の判断基準を言語化することです。具体的には、次の切り口で基準を整理します。

  • 用途で区分されるのか(民生用、産業用、医療用など)
  • 材質で区分されるのか(プラスチック廃棄物の種類など)
  • 機能で区分されるのか(医療機器、測定機器、通信機器など)
  • 規制目的で区分されるのか(特定条約や環境規制の対象か否かなど)

この基準を各事業部門と共有できる形にしておくことで、正式版相関表や各国税関の運用が明らかになった段階で、スムーズに最終判断につなげることができます。linkedin+2

ステップ3 ドシエ型で分類根拠を残す

WCOは相関表について「法的文書ではないが、新版HS導入準備に不可欠なツール」と位置づけています。[wcoomd]​
逆に言えば、企業は「なぜその新コードに移行したのか」を自ら説明できるようにしておく必要があります。

実務上は、次の要素をセットでドシエ化する形が有効です。

  • 製品説明(材質、構造、主要機能、用途、写真・図面など)
  • 現行HSコードの根拠(関税分類表の条文、部・類注、品目注、関連する解説書の要点)
  • HS2028側で変化する定義の要点(新設・改正される見出しやサブヘディングの趣旨)freightnews+1
  • 相関表上での位置づけ(分岐か統合か、exが付されているかどうか)wcoomd+1
  • 社内判断の結論と、その判断に用いた製品仕様・用途情報

このような形で分類ドシエを整備しておけば、後に税関から照会を受けた場合や、内部監査・グローバル税務調査の場面でも、一貫した説明が可能になります。

ステップ4 ITは「版管理」前提で設計する

WCOは、相関表や解説書、出版物、ITシステムなどがHS改正の実装期間に更新されると説明しており、各国税関システムもこれに合わせて改修されます。customsmanager+2
企業側も同様に、HS改正を見据えたシステム設計を前倒しで進める必要があります。

推奨される設計の考え方は次の通りです。

  • HS年版(例:HS2022、HS2028)をマスタ項目として保持する
  • 適用開始日をキーにして、新旧コードを自動で切り替えられるようにする
  • 移行期間中は、新旧コードの併記や両方での検索を許容する
  • 過去の取引データが、どの年版のHSコードに基づいているか追跡できるようにする

こうした「版管理」が最初から組み込まれていないと、後から改修する際にコストと工期が膨らみがちです。
HS2028相関表のドラフトが出た段階で、要件定義と影響度見積りを始めておくことが、IT投資を最適化するうえでも重要です。ddcustomslaw+1

経営者が押さえるべきリスクと機会

相関表ドラフトは、リスクと機会の両面で経営に直結します。

リスク面では、次の点が挙げられます。

  • 誤申告や監査指摘のリスク
    相関表はガイドであっても、分岐やexの判断を誤れば、その選択の説明責任は企業に残ります。wcoomd+1
  • 関税・追加関税コストの読み違い
    新コード側で税率や追加関税の対象が変わると、見積条件や価格戦略の前提が崩れる可能性があります。
  • EPA・FTAの原産地判定の混乱
    多くの原産地規則(PSR)はHSコードベースで構成されており、品目の移行が遅れれば、原産地証明の運用やサプライチェーン設計に支障が出ます。

一方、機会としては次のような効果が期待できます。

  • 製品マスタと技術情報の品質向上
    分岐判断には詳細な仕様情報が不可欠であり、その整備は分類だけでなく、購買分類、規制管理、品番統合、製品戦略の精度向上にも寄与します。
  • 通関・分類実務の属人化の軽減
    ドシエ化と判断基準の明文化によって、担当者の異動や委託先の変更があっても、組織として一貫した判断を維持しやすくなります。
  • HSを軸にした経営データの再設計
    HS改正に合わせてBIや収益管理の集計軸を見直すことで、国・製品・顧客別の収益性分析やリスク分析の精度を高めることができます。

この2年間で企業が取り組むべきこと

HS2028は2028年1月1日に発効し、その前の2年間でWCOと加盟国は相関表や解説書の更新、ITシステムの改修を進めていきます。linkedin+2
HS委員会では既にHS2022とHS2028の相関表作成作業が開始され、フォーマット改善も含めた実務ツール整備が動き出しています。strtrade+1

企業側がこの期間に重視すべきポイントは、次の三つに整理できます。

  • 影響度の高い品番から、分岐・統合・exを優先的に検討する
  • 判断基準を先に作り、分類ドシエで根拠とプロセスを記録する
  • コード置換ではなく、HS年版と適用日を軸にした版管理としてITを設計する

HS2028相関表の第1ドラフトは、単なる参考資料ではありません。
自社の分類体系とデータ構造を、次の8年間を見据えて再設計するためのスタートラインとして位置づけることが、グローバルサプライチェーンを持つ企業の経営課題になっていくでしょう。customsmanager+2

 

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投稿者: shima

嶋 正和 株式会社ロジスティック 代表取締役社長

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