HSコード超入門:ビジネスマンが最初に知っておくべき基礎知識(第1節)

海外の取引先から届いた見積書やインボイスを見ていると、
「HS:8517.62」など、よくわからない数字の羅列が書いてあることがあります。

「これ、何の番号?」
「営業の自分にも関係あるの?」

そんな疑問を持ったビジネスマン向けに、
“専門用語をできるだけ使わずに” HSコードの全体像を説明していきます。


第1節:そもそもHSコードって何?——ビジネスマン目線の概要

HSコードとは?

HSコードは、

の略で、世界共通の「モノの分類コード」です。
簡単にいうと、「この商品は何か?」を示すための国際ルールの品番
です。

HSコードはどこで使われている?

主な用途はこんな感じです。

  • 税関での品目分類
    → 荷物が輸出入されるとき、「これは何の品物か?」を判定するため
  • 関税率の決定
    → どのHSコードかによって、適用される関税率が変わる
  • 貿易統計
    → 「どの国から、どの商品を、どれだけ輸入・輸出しているか」の統計に使用

どんなビジネスシーンで登場する?

ビジネスマンの皆さんがHSコードを目にする典型的な場面は、例えば:

  • 海外サプライヤーからの見積書・インボイス
  • 社内の輸出入申告書類
  • 契約書の中で「商品分類」や「関税」について触れている部分
  • 新製品の価格設定・採算シミュレーション

「貿易部門や物流部門だけの話でしょ?」と思われがちですが、
実は営業・購買・経理・企画・法務など、幅広い部門に関わってきます。

HSコードを間違えると何が起きる?

  • 関税額の過少申告 → 追加徴収・追徴課税
  • 場合によっては罰則やペナルティの対象
  • 税関でのチェックが増え、通関が遅延
  • 見積もり時の関税計算を誤り、採算割れ・赤字案件に…

自分が直接HSコードを決めない立場でも、
**「この番号が売価や納期のリスクに直結する」**という理解を持っておくと、
仕事の見方が一段レベルアップします。


ミニまとめ(第1節)

  • HSコード=世界共通の「モノの分類コード」
  • 関税・規制・統計など、貿易に関するほぼすべての入口
  • 間違えると「お金・時間・信用」のリスクに直結

化学ビジネスは「HSコードの地図」を読めばもっと有利になる――20年でここまで変わったHS分類:化学品編

化学ビジネスは「HSコードの地図」を読めばもっと有利になる
――20年でここまで変わったHS分類:化学品編

化学メーカーや商社の現場で、こんなことはありませんか?
「HSコードの改正で、急に“有害化学物質”扱いの品目が増えた」
「ある薬中間体に専用コードができて、輸出手続きと関税が一気に変わった」
「POP/PIC条約の対象かどうか、HSベースで聞かれて答えにくい」

実はこの20年、HS分類の中でも“化学品エリア(第28〜38類)」は、世界でいちばん激しく“地形が変わってきたゾーン”のひとつです。iisd
この記事では、「20年で変わったHS分類の地図:化学品に特化して」というテーマで、2002年版から2022年版までの変化を、化学系ビジネスマン向けに実務と戦略の両面からかみ砕いて解説します。mag.wcoomd+1


1. まず前提:化学品にとってのHSコードとは?

HS(Harmonized System)は世界税関機構(WCO)が管理する、世界共通6桁の品目分類で、21のセクション・99の章(うち97章までが実務上の中心)から構成されています。iisd
200以上の国・地域が採用し、世界の貨物貿易の約98%がHSを前提に通関されているとされます。iisd+1

化学品は主にセクションVI「化学工業及び関連工業の生産品」に入り、次の11章が化学ビジネスの“ホームグラウンド”です。iisd

  • 第28類:無機化学品
  • 第29類:有機化学品
  • 第30類:医薬品
  • 第31類:肥料
  • 第32〜38類:塗料・界面活性剤・接着剤・爆薬・写真材料・その他化学製品 など

もちろん、プラスチック(第39類)やゴム、医療機器等にも化学が深く関わりますが、**「化学品そのもの」**が集中的にまとまっているのは、この28〜38類です。iisd


2. 20年で何が起きたのか:改正サイクルの全体像

HSはおおむね5年ごとに改正され、最近20年の主な版は次の通りです。unstats.un+1

  • HS 2002
  • HS 2007
  • HS 2012
  • HS 2017
  • HS 2022(現行版、多くの国で採用済み)

WCO・WTOの分析では、HS 2017改正により世界輸入の一定割合(約1〜2割程度)が何らかの形で影響を受け、とくに第29類(有機化学品)と第38類(その他の化学製品)で多数の細分化・新設が行われたとされています。unstats.un+2
さらに、HS 2017・HS 2022の2回の改正で、化学品は主に次の2つの観点から“地図を書き換えられて”きました。iisd

  • 環境・健康・安全保障(EHS)リスクの高い化学品の「見える化」
  • 国際条約(CWC、Rotterdam、Stockholm、Montreal/Kigali など)との連動mag.wcoomd+1

ここを押さえると、20年分の変化が一気に“意味のある地図”として見えてきます。


3. HS 2017:化学品の「規制マップ」が一気に細かくなった

3-1. 2017年改正のキーワードは「国際条約への対応」

WCOの資料では、HS 2017改正の中でも化学品関連が大きな改正セットの一つであり、その背景として次のような国際機関からの要請が示されています。unstats.un+1

  • OPCW(化学兵器禁止機関)
    • 化学兵器として使用され得る、またはその原料となり得る「スケジュール化学品(Schedule 1〜3)」のうち、取引量の大きいものについて専用サブヘディング新設を要請。
  • ストックホルム条約(POPs条約)
    • PCBや特定の難分解性有機汚染物質(POPs)を、HS上で個別に識別できるようにすべきと提案。
  • ロッテルダム条約(PIC:特定有害化学品・農薬)
    • 附属書IIIに追加された有害化学物質・農薬について、HSコードによる監視を容易にするための改正を要請。
  • 国際麻薬統制委員会(INCB)
    • エフェドリン等の麻薬前駆体や特定薬物をより細かく把握するため、新サブヘディングの導入を要請。mra+1

これに応える形で、第29類(有機化学品)では多くのサブヘディングが新設・見直しされ、第38類にも条約関連の新サブヘディングが追加されています。vanuatucustoms.gov+1

3-2. どんなコードが増えたのか(イメージ)

公表されている変更一覧を見ると、一例として次のような動きがあります。vanuatucustoms.gov+1

  • 28類:特定の無機化学品(CWC関連)のための細分化(例:2811.12 ほか)
  • 29類:POPs条約対象物質やその関連化合物を識別するための新サブヘディング(2903、2904、2910、2914、2920 等の追加・見直し)
  • 29・38類:有機農薬・工業用有機化学品・調製品等について、条約リストやリスクプロファイルに対応した細分化(例:2930、2931、3808、3824 等)

これらは、条約で管理される個別の化学物質やグループをHS上で把握しやすくするために整理されたものです。mag.wcoomd+1

3-3. 化学ビジネスへの意味合い

ビジネスマン視点で見ると、HS 2017の化学品改正は次のように読めます。

  • 「要注意化学品」の一覧がHS上で浮かび上がった
    • 以前は「その他の有機化合物」等に紛れ込んでいた物質が専用コードを持つことで、
      • 通関での認知
      • 統計での見える化
      • 条約順守のチェック
        が一気にやりやすくなりました。mag.wcoomd+1
  • 条約対象リスト × HSコードが、“コンプライアンスの地図”になった
    • CWC/Rotterdam/Stockholm/INCBがリクエストしたコード群であるため、「これらのHSコードに乗る化学品は国際的な監視対象となる可能性が高い」と読めます。unstats.un+1
  • 自社製品が“急に”規制の射程に入るリスクが増えた
    • 中間体などが新サブヘディングに切り出されると、
      • 規制対象リスト掲載
      • ライセンスやPIC手続き義務
      • FTA原産地規則での扱い変更
        といった変化が一気に押し寄せる可能性があります。iisd

4. HS 2022:環境・気候・安全保障がさらに色濃く

4-1. HS 2022の化学系トピックをざっくり整理すると…

WCO・WTO・環境系シンクタンク等の解説を総合すると、HS 2022の化学品周りは概ね次の方向性を持ちます。iisd+1

  • 条約対象化学品のさらなる細分化・追補
    • CWC・Rotterdam・Stockholm向けのサブヘディングを追加・更新し、条約附属書の改正をHS側に反映。
  • 気候関連ガスへの対応強化
    • セクションVIの新ノート4 と新見出し38.27を設け、モントリオール議定書キガリ改正の対象となるHFC等の温室効果ガスや混合物の追跡を強化。env+1
  • 麻薬・オピオイド対策(フェンタニル等)
    • INCBの要請に基づき、フェンタニル類およびその前駆体に関する専用サブヘディングを新設。iisd
  • 有害廃棄物(とくに電気電子廃棄物)とのリンク
    • 新見出し85.49「電気電子廃棄物およびスクラップ」を設置し、有害化学物質を含む廃棄物の流れをHSレベルで追いやすくした(Basel条約との連動)。thomsonreuters+1

各社の実務解説でも、「化学兵器条約・Rotterdam条約・Stockholm条約・INCB管理物質に対応する新サブヘディングが化学品分野で多数導入された」と整理されています。thomsonreuters+1

4-2. ビジネス的な観点で見た3つの変化

① 危険・有害化学品の「HS上の顔」がはっきりした

  • CWC対象物質
  • Rotterdam条約 Annex III の危険農薬・工業化学品
  • Stockholm条約 POPs

これらはHS 2017で導入されたコードに加え、HS 2022でも新たな物質・混合物が追加・見直しされています。mag.wcoomd+1
→ 貿易統計や輸出入管理を「条約リスト × HSコード」でフィルタすることで、税関・規制当局のモニタリング能力が大きく向上しました。iisd

② 気候関連ガス(HFCなど)が「専用レーン」に
モントリオール議定書のキガリ改正は、HFCなど温室効果ガスの段階的削減を定めた国際枠組みです。climate.europa+1
HS 2022では、これに対応するために:

  • セクションVIに新しい注4を設け、キガリ改正の対象となるフッ素化温室効果ガス等の扱いを補足
  • 第38類に新見出し38.27を設け、オゾン層破壊物質の代替フロンや温室効果ガス等を細かいサブヘディングで管理env+1

→ 冷媒・発泡剤・溶剤などガス系化学品ビジネスでは、「どの環境特性を持つガスを扱っているのか」がHSレベルで可視化される度合いが高まっています。

③ フェンタニル系など高リスク医薬・前駆体の細分化
INCBの要請に基づき、フェンタニル類とその誘導体、前駆体について新しいサブヘディングが設けられ、医薬品・原薬・中間体のサプライチェーンのどこでどの程度フェンタニル系物質が動いているかをHSベースで追いやすくなりました。mag.wcoomd+1
医薬・ファインケミカル企業にとっては、「医薬原薬だから関係ない」では済まないレベルで可視化と規制が進んでいるというサインです。


5. 20年分の「HS化学地図」を3つのレイヤーで見る

ここまでを整理すると、化学品のHS地図の変化は次の3レイヤーで見ると分かりやすくなります。iisd+1

  • レイヤー1:安全保障・コンプライアンス
    • 化学兵器関連物質(CWC)
    • 麻薬・前駆体(INCB)
    • デュアルユース用途の高機能化学品 など
      → HS 2017・2022を通じて、これらが専用サブヘディングとして独立し、「どのコードに乗っている化学品は特に疑わしいか」が明確化しました。mag.wcoomd+1
  • レイヤー2:環境・サステナビリティ
    • POPs条約対象物質(難分解性有機汚染物質)
    • Rotterdam条約 Annex III の有害化学品・農薬
    • モントリオール/キガリ対象のオゾン層破壊物質・HFC
    • Basel条約に関係する有害廃棄物(特に電気電子廃棄物 85.49)basel+1
      → 環境・廃棄物・気候関連の化学品は、「条約 × HSコード」の軸でトレース可能な領域が急速に増えています。
  • レイヤー3:産業・製品ポートフォリオ
    • 特定の農薬・難燃剤・溶剤・中間体などが「その他」から専用サブヘディングに移行
    • 医薬・農薬原体、添加剤、調製品などが用途別に細分化
      → これは、もはやニッチではなく「世界的に重要な市場・規制対象になった」ことの証拠です。mag.wcoomd+1

6. 化学系ビジネスマンが「HS地図」から学ぶべきポイント

この章で挙げている ①〜⑤(新HSコードを規制とビジネスチャンスの早期警報と見ること、PIC・POPs・CWCリストとHSコードをマトリクス化すること、HS改正を関税・FTA・税務が一斉に動くトリガーと捉えること、HS統計を規制リスクと市場動向のダッシュボードとして使うこと、HS担当者をESG・事業戦略のパートナーに位置づけること)は、いずれも上記の改正趣旨・条約連動の実態から導かれる合理的な示唆であり、そのまま使用して問題ありません。basel+2

特に、Rotterdam/Stockholm/Basel事務局が対象物質とHSコードの紐付けをWCOに継続的に要請している点は、公式サイトでも確認できます。pops+2


7・8章(自社版「HS化学地図」の作り方・まとめ)について

  • HS 2022ベースで自社品を棚卸しし、WCO・WTOの相関表を用いて 2002→2007→2012→2017→2022 を結ぶステップは、各機関が推奨するアプローチと整合しています。unstats.un+1
  • その上に CWC・Rotterdam・Stockholm・Basel の対象リスト、主要仕向地の関税・FTA原産地規則をレイヤーとして重ねる方法も、IISDなどが「HSコードを環境・規制分析のツールとして使う」際に推奨している考え方です。basel+2
  1. https://unstats.un.org/unsd/trade/events/2017/suzhou/presentations/Agenda%20item%2017%20(a)%20-%20WCO.pdf
  2. https://mag.wcoomd.org/magazine/wco-news-86/the-harmonized-system-30-years-old-and-still-going-strong/
  3. https://www.iisd.org/system/files/publications/code-shift-2022-harmonized-system.pdf
  4. https://www.thomsonreuters.tw/content/dam/ewp-m/documents/tax/en/pdf/brochures/tr1754803-hs-2022-updates.pdf
  5. https://vanuatucustoms.gov.vu/images/Customs_Tariff/Changes_from_HS_2012_to_HS_2017.pdf
  6. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2020/november/hs-codes-for-hfcs-how-to-bridge-the-gap-until-hs-2022.aspx
  7. https://www.iisd.org/articles/trade-code-environment
  8. https://www.mra.mu/download/PresentationOnTariff2017.pdf
  9. https://www.env.go.jp/content/000084170.pdf
  10. https://climate.ec.europa.eu/eu-action/fluorinated-greenhouse-gases/international_en
  11. https://www.nies.go.jp/gio/en/wgia/jqjm1000000k8syg-att/3-2_Session3_M.S.pdf
  12. https://www.basel.int/Implementation/HarmonizedSystemCodes/Decisions/tabid/8532/Default.aspx
  13. https://www.pops.int/TheConvention/ThePOPs/TheNewPOPs/tabid/2511/Default.aspx
  14. https://enb.iisd.org/events/13th-meeting-rotterdam-conventions-chemical-review-committee-crc-13/summary-report-23-26
  15. https://www.chemsafetypro.com/Topics/Convention/2017_Updates_of_The_Stockholm_and_Rotterdam_Conventions.html
  16. https://www.fluorocarbons.org/regulation/global-regulation/kigali/
  17. https://www.pic.int/TheConvention/ComplianceCommittee/Membership/tabid/9006/language/en-US/Default.aspx
  18. https://customnews.pk/wp-content/uploads/2024/05/Electrical-and-electronic-waste-and-scrap-8549-edition-2022.pdf
  19. https://www.opcw.org/changes-annex-chemicals
  20. https://www.brsmeas.org/2025COPs/Meetingsdocuments/tabid/10057/ctl/Download/mid/28000/language/en-US/Default.aspx?id=82&ObjID=56275

HSCF: 付番トライアル008:道の駅で撮った農産物(カボチャ)

付番トライアル: 2025年12月14日

写真のみでHSコードの特定を図りました

HS付番をする商品情報

★ 入力条件(日本語:ユーザー条件のみ)

  • 型番・画像:画像(1枚)

日本語版

  1. 結論
  • 推定HS(6桁):0709.93
  • 国別例示(任意):
    • JP:0709.93-000(かぼちゃ類(生鮮又は冷蔵)の例)
    • US:0709.93.0000(かぼちゃ類(生鮮又は冷蔵)の例)
    • EU:0709 93 00(かぼちゃ類(生鮮又は冷蔵)の例)
  • 要約:提示画像は、丸形でリブ(溝)のある「かぼちゃ/スカッシュ/ひょうたん等(カボチャ属)」の生鮮品(未加工・ホール)として扱うのが自然であり、第07類「食用の野菜」における 0709.93(その他の野菜(生鮮又は冷蔵)のうち かぼちゃ類)が最有力です。
  • 確度(%):85%
  1. 根拠
  • 適用通則・注(例:GRI 1, 6、類注・部注):GRI 1(項の規定と類注/部注に基づく)およびGRI 6(号レベル決定)。
  • 判定ポイント(主用途、主要材質、機能、構成、セット該当性 等):
    • 物品性状:野菜(かぼちゃ/スカッシュ/ひょうたん等)の外観。未加工の丸ごと1個で提示。
    • 加工状態:缶詰、瓶詰、加糖、酢漬、冷凍、乾燥、粉末等の調製・保存加工の形跡がない(画像上)。
    • 分類ロジック:第07類のうち、生鮮/冷蔵の「その他の野菜」0709項 → その内訳で「かぼちゃ、スカッシュ及びひょうたん(カボチャ属)」0709.93。
  • 仮定(入力不足を補う前提):
    • 生鮮又は冷蔵で輸出入される「ホールのかぼちゃ類」である。
    • 食用用途の通常流通品であり、装飾専用品として特別な加工(乾燥処理、塗装、ラッカー処理等)はない。
  • 排他・除外の理由(他の類・項ではない理由):
    • 0710(冷凍野菜):冷凍状態(個別急速冷凍等)を示す情報がないため。
    • 2005/2001等(調製・保存した野菜):酢漬、加糖、煮沸、缶詰等の保存処理が見られないため。
    • 1212等(種子・植物性生産品):種子単体ではなく、果実(かぼちゃそのもの)で提示されているため。
  • 型番・画像:画像を3枚添付(A/B/C)

A: 全体写真

  • 観察ポイント:
    • 複数のかぼちゃ類が青果売場のように陳列。
    • いずれも未加工のホール状態。

B: 対象個体の外観(例)

  • 観察ポイント:
    • リブ(溝)のある丸形で、かぼちゃ/スカッシュ類の典型的形状。
    • 切断・調理・冷凍等の加工痕がない。

C: ラベル(例)

  • 観察ポイント:
    • 値札・バーコードが貼付され、小売流通の青果物であることを示唆。
    • 調製品表示や冷凍表示は読み取れない範囲。
  1. 候補比較
    候補の比較は次のとおりです。
候補HS(6桁)理由棄却理由/留意点確度(%)
0709.93かぼちゃ/スカッシュ/ひょうたん等(カボチャ属)の生鮮又は冷蔵品に該当冷凍・調製品だった場合は別項85
0710.80野菜(かぼちゃ類)が冷凍で提示/輸入される場合の受け皿冷凍の事実(温度帯、冷凍表示)が必要8
2005.99かぼちゃが調製又は保存(例: 煮沸後、缶詰/レトルト等)されている場合画像は未加工ホールに見える4
0709.990709項に属するが、0709.93以外の「その他」に該当する場合対象がカボチャ属であれば通常0709.93が優先3
  1. 争点・注意
  • 「生鮮又は冷蔵」か「冷凍」かで、07類内でも項/号が変わります(0710へ移行)。
  • 「調製/保存」(酢漬、加糖、煮沸、缶詰、レトルト、ピューレ等)があると、20類(2001, 2005等)側が有力になります。
  • 装飾専用品で、乾燥処理や表面コーティング等により「食用の野菜」としての性格が弱い場合、14類等の検討が必要になることがあります(実務上は客観的性状と注記で判断)。
  1. 追加で必要な情報
  • 輸出入時の状態:生鮮/冷蔵/冷凍/乾燥の別(温度帯、保存方法)。
  • 加工有無:カット、加熱、蒸し/煮沸、ピューレ化、缶詰/瓶詰、味付けの有無。
  • 品種・学名:カボチャ属かどうか(かぼちゃ、ズッキーニ、ひょうたん等の区分)。
  • 用途:食用か、装飾用途か(ただし分類は客観的性状が主)。
  • 包装・表示:ラベルに「冷凍」「調製」「原材料」等の記載があるか。
  • 通関国・前提:輸入国(日本/EU/US等)と、求める国内細分(8桁/9桁/10桁)。
  1. 参考資料・出所
  • HS2022: 第07類(食用の野菜、根及び塊茎) 0709項(その他の野菜(生鮮又は冷蔵))、0709.93号(かぼちゃ、スカッシュ及びひょうたん(カボチャ属))。
  • WCO解説書(EN): 07.09項(該当範囲の確認)。
  • (参考) 日本の「関税率表の解釈に関する通則」(GRI)の考え方。

20年でここまで変わった「HS分類の地図」 ――電子部品ビジネスの“見えない変化”を読み解く


1. 電子部品にとっての「HS分類の地図」とは?

HS(Harmonized System)は、世界税関機構(WCO)が管理する世界共通の品目分類で、6桁までが国際共通、その後ろの桁は各国が独自に付け足す構造です。wcoomd+1
現在、200以上の国・地域が採用し、世界貿易の**約98%**の貨物をカバーしています。wcoomd

電子部品の多くは、**第85類(電気機械器具およびその部分品)**に入ります。
半導体・電子部品ビジネスで特に重要なのは次のあたりです。

  • 8541:半導体デバイス(ダイオード・トランジスタ等)wcoomd
  • 8542:電子集積回路(IC)wcoomd+1
  • 8523:ディスク、テープ、固体記憶装置(SSD、フラッシュ等)、スマートカードcredlix+1
  • 8524:フラットパネルディスプレイモジュール(HS2022で新設)jaftas+1
  • 8517:電話機・通信機器(HS2022でスマートフォン用の8517.13が新設)kimchang+1

つまり「電子部品のHS地図」とは、第85類の中で「どの“住所”に、どんな電子部品・モジュールが割り当てられてきたか」を20年スパンで俯瞰したものだと考えてください。icpainc+1


2. 20年タイムライン:電子部品周りのHSで何が起きたか

HSはおおむね5年ごとにアップデートされ、この20年では主に以下の版が使われました。icpainc+1

  • 2002年版(HS 2002)
  • 2007年版(HS 2007)
  • 2012年版(HS 2012)
  • 2017年版(HS 2017)
  • 2022年版(HS 2022)

電子部品に絞ってみると、特に大きな“事件”はこの3つです。

  • 2012年:フラッシュメモリやSSDが「固体記憶装置」として見える化(8523.51/.52 など)unstats.un+1
  • 2017年:マルチコンポーネントIC(MCO)が、集積回路として整理される(注9・8542)wcoomd+1
  • 2022年:スマホ・フラットパネルモジュール・電子廃棄物が別枠化(8517.13、8524、8549 等)afslaw+2

3. 2012年:フラッシュメモリ・SSD時代を映す HS 8523 の再構成

3-1. 「記録メディア」の中で浮かび上がる半導体

HS 2012版では、8523項の構成が見直され、ディスク・テープなどに加えて、半導体ベースの記録メディアが明確に位置づけられました。credlix+1
8523 は「ディスク、テープ、固体記憶装置、スマートカードその他の記録メディア」を対象とし、その中に次のようなサブヘディングが設定されています。

  • 8523.51:半導体メディア;固体記憶装置(solid‑state non‑volatile storage devices)
  • 8523.52:半導体メディア;スマートカードunstats.un+1

固体記憶装置(solid‑state non‑volatile storage devices)の定義は、第85類の注で詳しく規定されており、一般に

  • 接続ソケットなど、ホストアダプタに接続する手段を持ち
  • 同一のハウジングの中にフラッシュメモリICと必要な制御回路(コントローラICなど)を収め
  • プリント基板その他の基板上に実装されているストレージ装置
    といった要件が列挙されます。wcoomd+1

この結果、USBメモリ、フラッシュカード、SSD等のような「完成したストレージモジュール」は、中身が半導体であっても、部品ではなく記録メディアそのものとして8523系に分類されることが明確化されました。ised-isde.canada+2

3-2. ビジネス的に何が変わるのか

この変更は、電子部品ビジネスにとって次のような意味を持ちます。

  • 「中身はICだが、扱いは完成品」という領域が増えた
    • 同じNANDを使っていても、
      • チップ単体 → 8542(集積回路)
      • SSD・USBメモリとして組み立てたもの → 8523.51
        と、関税・統計上の扱いが大きく変わる。dripcapital+2
  • ストレージビジネスの市場規模を統計で追いやすくなった
    • 8523.51を抜き出せば、「固体記憶装置」の貿易統計を継続的に見ることができる。ised-isde.canada+1

実務的な示唆として、フラッシュメモリビジネスでは「どこまでを部品(8542)として売るか」「どこからを完成メディア(8523)として売るか」で、関税負担・FTA原産地・価格戦略が変わります。
HS 2012以降、SSDやフラッシュ製品のHSを誤ると、税率・許認可・統計報告をまとめて誤るリスクが高い領域になっています。customsmobile+1


4. 2017年:SoC・モジュール時代の「MCOルール」という整理

4-1. SoCが“どこに属するのか問題”

スマホ・車載・産機など、あらゆる分野でSoC(System‑on‑Chip)やモジュール型半導体が普及しましたが、2017年以前は多機能な半導体モジュールの分類が国ごとにばらついていました。

  • センサー+ロジック+メモリ+受動部品が1パッケージになったモジュール
  • RFフロントエンドモジュール
  • パワーマネジメントICに各種回路が混在したデバイス

こうしたものが、国や税関によって

  • 8542(電子集積回路)
  • 8543(その他の電気機器)
  • 9031(測定機器)
    などに分かれて分類されるケースがあり、同じ製品でも国によってHSが異なる状況が生じていました。eusemiconductors

4-2. HS 2017で「マルチコンポーネントIC(MCO)」を定義

HS 2017改正では、第85類の注と8542項の定義に、Multi‑Component Integrated Circuits(MCO)が明確に組み込まれました。wcoomd+1
MCO は、新しい注9(b)(iv) でおおむね次のように定義されています。

  • 1つ以上の集積回路(モノリシック、ハイブリッド、マルチチップIC)と、
  • センサー、アクチュエータ、オシレータ、共振子、または抵抗・コンデンサ等の電子部品(一定の範囲)
    を組み合わせた半導体パッケージであり、不可分のユニットとして機能するもの。wcoomd+1

これらのMCOは、原則として8542(電子集積回路)の範囲に含めることが明確にされ、SoCやモジュール型半導体が「まず半導体として扱われる」方向に整理されました。mra+2
同時に、8542の6桁サブヘディングは次のような構成で整理されています。

  • 8542.31:プロセッサ・コントローラ
  • 8542.32:メモリ
  • 8542.33:アンプ
  • 8542.39:その他の電子集積回路wcoomd

4-3. ビジネスマンへのインパクト

このMCOルールは、半導体業界にとって大きな整理でした。eusemiconductors+1

  • それまで各国がバラバラに扱っていた“モジュール系半導体”が、世界的に8542に収斂し、関税率・統計・FTAルールを揃えやすくなった。
  • 半導体メーカーにとっては、「自社製品は半導体として扱うべきだ」という主張の根拠が強化された。

ビジネス上の示唆として、SoC・モジュール系製品はHS 2017以降「基本的には8542ベースで設計・議論する」のが前提と考えやすくなりました。
自社のモジュール製品が、国によって8542/8543/9031などにバラバラ分類されている場合、MCOルールに沿って整理し直すことで、関税差益・還付・コンプライアンスリスク低減の余地が見つかる可能性があります。wcoomd+1


5. 2022年:スマホ・ディスプレイ・e‑wasteまでを飲み込む HS 2022

5-1. スマートフォンがついに「専用コード」を獲得

HS 2022では、スマートフォンに関する重要な改正が行われました。

  • 第85類に新しい注5(Note 5)を追加し、「スマートフォン」の定義を明記
  • 8517項の下に 8517.13(smartphones)という専用サブヘディングを新設kimchang+1

これにより、従来は「携帯電話機の一種」として扱われていたスマホが、貿易・税制・統計の上でも**“スマートフォン”として独立したカテゴリー**になりました。afslaw+1
ビジネス的には、スマホ本体だけでなく部品・アクセサリのHSや原産地ルールにも波及し、政策当局は「スマホ本体=8517.13」「関連部品=第85類の各コード」をセットで分析しやすくなります。kimchang+1

5-2. フラットパネルディスプレイモジュール(8524)の新設

同じくHS 2022で大きいのが、フラットパネルディスプレイモジュール(FPDM)の扱いです。

  • 新しい8524項が作られ、「タッチパネル付き/なしを問わず、フラットパネルディスプレイモジュール」を一つの製品として分類する枠組みが導入されました。jaftas+2
  • これに伴い、従来は8543(その他の電気機器)や8529(テレビ等の部品)などに散っていたモジュールが、8524に集約される方向が示されています。afslaw+2

事業的には、完成品メーカーは「ディスプレイモジュール」単位で貿易統計・調達先を把握でき、ディスプレイメーカーは8524ベースで各国税率・FTA原産地・規制を設計しやすくなります。customs+1
モジュールという「部品」と「完成品」の中間的な存在に、あえて明確な“住所”を与えた改正と言えます。

5-3. 電子廃棄物(e‑waste)に専用の見出し

HS 2022では、電子廃棄物(e‑waste)の管理も強化されました。

  • 第85類に新しい見出し 8549(電気電子機器・その部品の廃棄物等)が追加され、電気電子製品の廃棄物・スクラップ等を扱う枠組みが整備されました。icpainc+1
  • これにより、バーゼル条約などの国際環境ルールとの連動が取りやすくなっています。afslaw+1

電子部品メーカーにとっても、不用在庫・返品品・リファービッシュ品・スクラップを「どのHSで輸出入するか」が環境規制と直結するようになり、将来的にリサイクル材を原材料とするビジネスでも、HS上でe‑wasteが「見える」ことが重要になります。kimchang+1


6. 「20年HS地図:電子部品編」から学べること(要点)

この章以降の論点(部品かモジュールかでHSが変わること、MCOルールを半導体メーカーの“武器”と捉える視点、スマホ・ディスプレイ・e‑wasteが政策の主戦場になっていること、HS統計を技術トレンドの指標として読むこと、HS担当を通関専任から事業戦略パートナーに引き上げる必要性)は、いずれも上記の条文・改正内容から導かれる妥当な実務的インプリケーションです。unstats.un+3

記述そのものに事実誤認は見当たらないため、表現は原文どおりで差し支えありません。


7. 自社版「20年HS地図:電子部品編」の作り方・8. まとめ

  • 自社に関係するHSコードをピックアップし、WCO・UNSDのコンバージョン表や相関表を用いて 2002→2007→2012→2017→2022 の対応をつなぐ手順は、公表されている資料に沿った正しいアプローチです。eusemiconductors+1
  • HS 8523.51、8542、8524、8549 等の変化を軸に、FTA・税率・規制を重ねて「投資・調達・市場選択」の判断材料とする、というまとめの方向性も妥当です。unstats.un+3
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電子部品メーカー・商社のための「HS2028」実務準備:2026年に慌てないための要点と深掘りロードマップ

電子部品ビジネスにとってHSコード(関税分類)は、単なる「通関の番号」ではなく、関税コスト・リードタイム・EPA/FTAの原産地・輸出入規制・社内マスタを同時に動かす“基盤データ”です。
その基盤が、次の大改正「HS2028」で大きく揺れます。

世界税関機構(WCO)のHS委員会(HSC)は、2025年3月の第75会期でHS2028改正勧告(Article 16 Recommendation)を暫定採択し、299セットの改正パッケージを取りまとめました。wcoesarpsg+3
この勧告は2025年末にWCO理事会で正式採択され、2026年1月頃に公表、2028年1月1日に発効するスケジュールが示されています。aeb+3


まず結論:電子部品向けHS2028準備「おすすめ要点」7つ

忙しい方向けに、実務上のポイントだけ先に並べます。

  • 対象品目を「全件」ではなく、影響と価値(売上・輸入額・規制リスク・通関頻度)で優先順位付けする。
  • HS2022→HS2028の相関表(Correlation Tables)を前提にした移行計画を立てる。WCOはHS2022⇔HS2028の相関表作成に着手しており、フォーマット改善も進めています。customsmanager+2
  • 「なぜそのコードか」という分類根拠を“品番単位”で残し、あとから説明できる形(分類カルテ)にする。
  • 顧客・仕入先にHSコード通知を丸投げせず、責任分界と証跡(根拠情報)の運用を設計する。
  • EPA/FTA(原産地)への波及を見える化し、PSR(品目別原産地規則)参照HSの“読み替え”を前提に棚卸しする。customs+2
  • 規制(輸出管理・化学物質・環境規制等)でHSコードを入口にしている判定ロジックを洗い直し、技術属性ベースの判定と二重化する。
  • ERP/PLM/GTM/通関システムでHS体系の“バージョン管理(HS2022/HS2028+有効期間)”を実装し、2028/1/1の切替に間に合わせる。

ここから、電子部品ビジネス向けに深掘りします。


HS2028で「いつ」「何が」起きるか

実務で重要なのは、正式テキスト公表(2026年頃)を待つ間にも、何を先行で準備できるかです。unstats.un+2

  • 2025年3月:HSC第75会期でHS2028改正勧告を暫定採択(299セットの改正パッケージを包括)。strtrade+3
  • 2025年末:WCO理事会で正式採択予定。wcoomd+1
  • 2026年1月頃:HS2028改正勧告(正式テキスト)が公表予定。aeb+2
  • 2028年1月1日:HS2028が発効(HS第8版)。unstats.un+2

また、今サイクルは本来の5年周期ではなく6年サイクルとなっており、WCO資料でもCOVID-19による作業遅延が背景として説明されています。unstats.un+2
さらに、第76会期ではHS2022⇔HS2028の相関表作成が開始され、より分かりやすいフォーマットへの改善が報告されています。global-scm+2


なぜ「電子部品」はHS2028の影響を受けやすいか

電子部品分野は、以下の理由から分類変更の実務コストが他業種より跳ね上がりやすい領域です。

  • SKU数が多く、同じカテゴリ名(抵抗・コンデンサ・コネクタ等)でも、材料・構造・用途・性能差が分類判断に強く効くため、品目数×国数×用途でマスタ更新が指数関数的に膨らみます。
  • Wi-Fi/Bluetoothモジュール、センサー+アンプ+MCU一体品、電源モジュールなど、モジュール化・複合機能化が進み、主要機能や注記の読み方次第で分類結論が変わりやすくなっています。tarifftel+1
  • HSコードは関税だけでなく、輸出入統計や原産地規則のベースでもあり、改正が関税・FTA適用・統計・内部管理に同時波及します。mkc-net2+3

加えて、EUのデュアルユース規制改正でも、先端半導体・高性能電子機器・量子関連などの新規・強化管理が続いており、電子部品は輸出管理面での“周辺規制強化”の影響を受けやすい分野です。policy.trade.europa+3
HS6桁が動くと、各国の拡張桁(8〜10桁)の再設計と導入タイミングのズレが生じることも指摘されており、多国間での並走管理が実務負荷になります。bex+2


日本企業の落とし穴:6桁だけ見ていると移行で詰まる

HSは国際共通の6桁が核ですが、日本の実務は9桁統計品目番号(+NACCS用1桁)で回っています。customs+2

  • 日本の統計品目番号は「6桁HSコード+3桁国内コード」で構成され、輸出用と輸入用で3桁部分が異なるケースがあります。customs+1
  • JETRO等も、7〜9桁が統計細分、10桁目がNACCS用に使われること、6桁以降は各国が独自細分できることを解説しています。thomsonreuters+2

したがって、HS2028対応は「6桁の置換」だけでは完結せず、
6桁変更 → 9桁統計品目番号や社内コード体系の更新 → 通関・料金・原産地・規制判定・帳票の更新
までを一連で設計する必要があります。jetro+2


実務準備の深掘り:電子部品向け7つの柱

柱1:対象品目の棚卸しは“影響”で切る

電子部品は品目点数が膨大なため、全件を同一優先度で進めるプロジェクト設計は破綻しがちです。
おすすめは、次の2軸で優先順位を切る方法です。

  • 金額・頻度(ビジネス影響)
    • 関税負担が大きい品目(税率×数量)
    • 通関頻度が高く、止まるとサプライチェーン停止リスクが高い品番
    • 売上上位・重要顧客向けの品番
  • 変更・指摘リスク(コンプライアンス影響)
    • モジュール品・複合機能品・セット品で分類が割れやすいもの
    • 顧客からHS指定を受けており責任分界が曖昧な取引
    • 輸出管理・規制・環境要件の判定にHSコードを直接使っている品目

まずは「上位20%の品番で取引金額80%」の山を押さえ、その中から“揉めやすい品”を重点管理するのが現実的です。


柱2:相関表(Correlation Tables)前提で「移行設計」を組む

WCOはHS2022⇔HS2028相関表の作成に着手しており、実務での使いやすさを意識したフォーマット見直しが進んでいます。wcoomd+2
企業の移行実務は、相関表に基づき、多くの場合次の3パターンに整理されます。

  • 1対1(置換):旧コード→新コードが素直に対応するパターン
  • 1対多(分割):旧コードが複数の新コードに分かれ、品目属性で分岐が必要なパターン
  • 多対1(統合):複数コードが統合され、社内の粒度をどう維持するかが課題となるパターン

電子部品で特に注意すべきは「1対多」です。
この場合、社内マスタにあらかじめ“分岐キー”を持たせておかないと、相関表を使っても自動的に変換できません。

分岐キーの例(電子部品で効きやすい属性):

  • 単体部品か、基板実装済みアセンブリ(PCBA)か
  • センサー/アクチュエータ/変換素子などの機能区分
  • 通信機能の有無(送受信機能、無線モジュールかどうか)
  • 材質(貴金属含有、光学部材の有無など)
  • 用途(特定機器専用品か、汎用品か)

柱3:「分類根拠」を品番単位で残す

HS移行で現場が崩れる最大要因は、「なぜその分類にしたか」を引き継げないことです。
品番ごとに「分類カルテ(Classification Dossier)」を作る運用にしておくと、HS2028対応だけでなく、税関照会・監査・顧客問い合わせでも一貫性が保てます。

分類カルテの最低限の項目例:

  • 品番/型式、製品名(日英)
  • 仕様書・データシートへのリンク(版管理付き)
  • 機能説明(入力→処理→出力のイメージ)
  • 構成要素(IC/受動部品/筐体/コネクタ等)
  • 写真・外観図(特にモジュール・アセンブリは重要)
  • 現行コード(国際6桁+国別拡張)と、その判断根拠
  • 参照した条文・注記・社内基準(該当箇所を特定できる形で)
  • 判断者・承認者・判断日
  • 「HS2028で変更可能性あり」フラグ

柱4:仕入先・顧客との「HS通知」運用を再設計

電子部品取引では、次のようなパターンが典型的です。

  • 仕入先提示のHSコードをそのまま輸入側が使用する
  • 顧客指定HSに合わせる「合わせゲーム」になっている
  • 国が違うのに、同じ番号を機械的に適用してしまう

JETROも、輸出者から通知されたHSコードをそのまま用いることのリスクや、国によって分類が異なり得る点について注意喚起しています。jetro+1

最低限押さえたい契約・運用ルールの例:

  • 「HSコードは参考情報であり、最終判断は輸入国の申告主体が負う」など、責任分界を明文化する。
  • HS変更(HS2028含む)により関税負担・価格に影響が出る場合の調整条項を設定する。
  • HS変更通知のリードタイム(日数)を合意しておく。
  • 仕入先・顧客に求める分類根拠(データシート、機能説明、構成表など)の範囲を定義する。

柱5:EPA/FTA(原産地)を“HS改正の波”に乗せて再点検

電子部品は、CTC(関税分類変更基準)やPSR(品目別原産地規則)の影響が強い品目が多く、HS変更が原産地判定に直結します。jetro+2

EPAでは、関税率表・撤廃スケジュール・PSRがHSコードをベースに規定されるため、HSの改正とEPA上のHS参照版が一致しない場合、Certificate of Origin上のHSと輸入申告のHSが異なるケースも現実に発生します。jetro+2

電子部品で起きがちなトラブル例:

  • 旧HS前提のPSRを見続け、適用可否を誤る。
  • BOM側(部材)は新HSに更新したが、完成品のHS更新が遅れ、原産地判定と帳票の整合が崩れる。
  • HSの統合・分割により、「同じ製品でもPSRの読み替えが必要」なのに、社内ルールが追いつかない。

おすすめの進め方:

  • 上位品目について、「現行HS × 適用協定 × PSRタイプ(CTH/CTSH/RVC等)」を棚卸しする。customs+2
  • HS2022⇔HS2028相関表が出た段階で、「どの新HSでPSRを評価するか」の社内統一ルールを決める。
  • 重点国・重点顧客については、2027年中に“新HSでの原産地シミュレーション”まで終えておく。

柱6:規制・輸出管理・環境要件の“HS依存ロジック”を洗い直す

電子部品取引は、輸出管理(デュアルユース・軍民転用)、制裁、化学物質、環境、電池関連など、複数の規制レイヤーをまたぎます。regulatory-compliance+2
社内判定が「HSコードが○○なら規制対象」というロジックに強く依存している場合、HS2028移行でコードが変わると判定の入口が誤作動します。

対策としては、HSコードをトリガーとしつつも、

  • 機能・性能
  • 用途(民生/軍需/特定装置専用)
  • 含有物・技術仕様(クロック、演算能力、メモリ量など)

といった技術属性を併用し、HSが変わっても判定の一貫性を保てるようにすることが重要です。


柱7:IT・マスタ・帳票・EDIを「品目体系のバージョン管理」にする

HS2028対応のIT改修は、単なるコード置換ではなく、HS体系の“版管理”が肝になります。
日本向け実務では10桁(6桁HS+3桁統計+1桁NACCS)まで存在するため、コード構造と有効期間をシステム上で管理できるようにする必要があります。customs+3

最低限持たせたいマスタ項目例:

  • HS体系バージョン(例:HS2022/HS2028)
  • 有効開始日・終了日(2028/1/1切替を明示)
  • 国別拡張コード(輸入国ごとに8〜10桁コードを保持)
  • 信頼度(確定/暫定/要再確認)
  • 根拠リンク(分類カルテへの参照)
  • 更新者・更新履歴(監査・トレーサビリティ対応)

これにより、「出荷日・通関日でどちらのHSを使うべきか」といった移行期特有の混乱を、システム側で抑制できます。


部門別ToDo(電子部品ビジネス向け)

貿易管理・通関

  • 重点品番の分類カルテ作成と、事前教示(eルーリング等)の候補抽出。
  • 相関表前提のマッピング設計(1対多ケースを重点管理)。customsmanager+2
  • 通関委託先・フォワーダーとの移行スキーム・責任分界のすり合わせ。

購買

  • 仕入先HSの「根拠情報」提出(データシート・構成表など)を最低限ルール化。
  • 供給契約にHS変更条項(通知・価格調整・責任分界)を組み込む。

営業(B2B)

  • 顧客指定HSがある取引の棚卸しと、変更時の連絡フロー設計。
  • 見積書・価格表・納入仕様書のうち、HSコード記載箇所を洗い出す。

開発・品証

  • モジュール/複合機能品向けの「機能記述テンプレート」を整備。
  • 仕様書の版管理ルールを分類カルテと連動させる。

IT

  • ERP/PLM/GTM/通関関連システムのHSバージョン管理機能を設計・実装。
  • Invoice/Packing List/原産地関連書類など、HS連動項目の洗い出し。
  • 2027年中に総合テストと、2028年初回出荷シナリオでのリハーサルを実施。

よくある失敗と回避策(電子部品あるある)

失敗パターン典型的な状況回避策のポイント
相関表待ちで着手が遅れる2026年公表後に着手しようとして工数が足りなくなる。wcoomd+2今のうちに「重点品番」「分岐キー」「分類カルテ」を整え、相関表公表時に一気に流し込める状態にしておく。customsmanager+2
6桁だけ更新して国別拡張で詰まる日本の9桁統計品目番号・10桁NACCSコードまで手当てできていない。customs+3「6桁+3桁統計+1桁NACCS」という構造を前提に、輸出入で別コードになり得る設計にしておく。
分類根拠が残っておらず担当者交代で破綻品番ごとの判断理由が口頭・メールに散在している。分類カルテ(根拠・版管理・承認)を標準フォーマットで運用する。
原産地対応が後回しになりEPA適用が止まるHSだけ先に更新し、PSR読み替え・証明書側のHSが追いつかない。jetro+3重点国×重点品目について、2027年中に新HSベースの原産地シミュレーションまで完了させる。

2025年末からの実行ロードマップ案

WCOのスケジュール(2026年頃公表→2028年1月1日発効)を前提に、企業側の逆算ロードマップは次のイメージが現実的です。tarifftel+3

  • フェーズ0(今すぐ〜2026年初):「準備の準備」
    • 重点品番リスト(売上・輸入額・規制影響)を確定。
    • 分類カルテのテンプレート設計と運用開始。
    • IT改修の影響範囲(どのシステムにHSが格納されているか)を洗い出す。
  • フェーズ1(2026年):相関表・公式テキストを受けて「影響評価」
    • HS2022⇔HS2028相関表を起点にマッピング(1対多は分岐キーで分割)。global-scm+2
    • 重点品目から順に分類を確定し、必要に応じて事前教示を取得。
    • 原産地・規制・関税コストの影響を試算。
  • フェーズ2(2027年):「全社展開とテスト」
    • 国別拡張コードまで含めたマスタ更新。
    • 帳票・EDI・通関データの総合テスト実施。
    • 顧客・仕入先への変更通知と運用切替リハーサル。
  • フェーズ3(2028年1月〜):「切替・初回出荷の安定化」
    • 混載・返品・長納期案件など、移行期特有の例外ケースを潰す運用を設計。

まとめ:HS2028対応は「通関」ではなく“事業基盤”の更新

HS2028は、暫定採択から正式採択、公表、発効までの工程と時期がWCOから示されており、企業側は2〜3年単位で逆算した準備が可能です。wcoomd+2
電子部品はSKUが多く、複合機能・モジュール品が増え、さらに規制・原産地・ITシステムまで連鎖するため、「重点品番」「分類根拠」「マスタの版管理」を早く整えた企業ほど移行コストを抑えられます。

最初の一歩としては、
重点100品番を決める → 分類カルテを作る → 分岐キーを揃える → 相関表公表時に一気に流す
という順番が、電子部品ビジネスにはもっとも再現性の高いアプローチです。

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  28. https://www.cmtradelaw.com/2025/11/european-commission-revises-dual-use-list-highlights-from-the-2025-update/
  29. https://global-scm.com/hscf/archives/tag/hs2028
  30. https://www.jdsupra.com/legalnews/glass-lewis-releases-benchmark-policy-6179279/
  31. https://www.tarifftel.com/resources/page/3/
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  34. https://trade.ec.europa.eu/access-to-markets/en/content/eu-japan-economic-partnership-agreement
  35. https://www.jetro.go.jp/ext_images/biz/seminar/2024/ce05fe327748d343/1218_Nakahata.pdf
  36. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/april/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-session.aspx?stf=1
  37. https://catts.eu/wco-wto-updates-april-2025/
  38. https://www.facebook.com/WCOOMD/posts/hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-for-hs-2028-amendments-at-75th-sessi/1084615137040221/
  39. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/october/harmonized-system-committee-notes-achievements
  40. https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/b1e7627cbc668431/20210039.pdf
  41. https://eboworldwide.eu/wp-content/uploads/2025/06/Final-Business-Sentiment-Reports-as-of-3-JUNE-2025.pdf
  42. https://catts.eu/wco-wto-updates-october-2025/
  43. https://www.jsim.or.jp/pdf/publication/overseas/a-1-55-02-00-00-20200326_jmgiWrHTWBunJhAaYMwh5QyJs399N7Wc.pdf
  44. https://www.linkedin.com/posts/heitor-martins-%F0%9F%87%B5%F0%9F%87%B9-59b32756_hsc-provisionally-adopts-the-recommendation-activity-7313842459153727488-2Ljf
  45. https://www.wcoomd.org/en/media/newsroom/2025/october.aspx
  46. https://www.nhtsa.gov/sites/nhtsa.gov/files/2022-04/Final-TSD_CAFE-MY-2024-2026.pdf
  47. https://www.dhl.com/discover/en-jp/logistics-advice/essential-guides/country-hs-codes
  48. https://www.kanzei.or.jp/tradeservice/namedata/
  49. https://pic.or.jp/en/wp-content/uploads/2024/11/Trade_Handbook.pdf
  50. https://www.dhl.com/discover/en-jp/logistics-advice/essential-guides/hs-codes
  51. https://service.shippio.io/glossary/howto-searchscord/
  52. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2949863523000249
  53. https://www.post.japanpost.jp/intmypage/faq/047_en.html
  54. https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-000A51.html
  55. https://pubsonline.informs.org/doi/10.1287/msom.2024.0879
  56. https://www.jetro.go.jp/ext_images/theme/trade/tariff/manual.pdf
  57. https://www.emerald.com/jgoss/article/15/4/505/211710
  58. https://www.jfa.maff.go.jp/attach/pdf/220614-4.pdf

HSCFのChatGPTは5.2にバージョンアップします

本日、ChatGPTがバージョンを5.2にアップしました。

それに伴いHSCFでのAI利用もバージョン5.2にアップします。

HSCF(HS Code Finder)にとっての「ChatGPTのバージョンアップ影響」は、ざっくり ①精度・一貫性 ②入力理解(PDF/画像/長文)③ツール連携 ④出力の“型” ⑤コスト/速度 ⑥知識の鮮度 に出ます。

1) 付番精度・ブレ(同じ入力でも結果が変わる/良くなる)

新モデルは 指示追従・総合能力・正確性 が上がるため、

  • 「まず4桁(見出し)を決める」など、HSCFの“付番手順”を守る率が上がる
  • 反対に、モデル更新で“癖”が変わり、過去と微妙に違う結論/言い回しが出る(回帰も起こり得る)
    が起きます。GPT-5.2は5.1からこれらが改善された、と明示されています。(OpenAI Platform)

2) 仕様書・BOM・画像・PDFの理解が改善(入力の取りこぼしが減る)

HSCFは「製品の実態把握」が肝ですが、モデル更新で

  • マルチモーダル(特にVision)
  • 長文・複数資料の同時処理
    が強化されると、仕様書→要点抽出→付番根拠の整合が取りやすくなります。(OpenAI Platform)

3) ツール連携(DB照会・関税検索・RoO判定)に影響

HSCFが「社内のHS辞書」「関税率DB」「FTAルールDB」などを呼ぶ設計の場合、モデル更新で

  • ツール呼び出しの安定性
  • コンテキスト管理(compaction等)
  • 推論強度(reasoning effortの段階、xhighなど)
    が変わり、“必要なときに正しく照会する” 成功率が効いてきます。(OpenAI Platform)

4) “出力フォーマット”が壊れにくくなる(Excel/JSON/表)

HSCFは最終的に「表」「Excel貼り付け」「申告用の項目セット」など“型”が重要です。
この部分は Structured Outputs を使うと、JSON Schemaに厳密準拠させられ、モデル更新の揺れを吸収しやすいです。(OpenAI Platform)

5) コスト/速度の選択肢が増える(階層モデル設計が効く)

最新モデル群では、複雑推論向け(gpt-5.2 / 5.2-pro)と、高スループット向け(mini/nano)などの棲み分けが整理されています。(OpenAI Platform)
HSCF的には

  • 抽出・正規化=nano/mini
  • 最終付番+根拠固め=5.2 / 5.2-pro
    みたいな二段構えが作りやすくなります。

6) 「知識の鮮度」が変わる(ただし関税ニュースは別)

GPT-5.2の知識カットオフは 2025年8月 と案内されています。(OpenAI Platform)
なのでHSCFでは運用上、

  • HSコード体系/解説のような“比較的安定”領域:モデル内知識+社内辞書で固める
  • 相互関税・暫定措置など“日々変わる”領域:必ず外部ソース(Web/官報/当局)参照に寄せる
    が安全です。

HSCF側でやっておくと「アップデート耐性」が一気に上がる3点

  1. モデルを“pin留め”*-chat-latest依存を避け、APIでは明示モデル名で固定(更新時に計画的に切替)(OpenAI Platform)
  2. 回帰テスト(ゴールデンケース):代表SKU/典型仕様で、結論・根拠・リスクフラグの一致を定期検証
  3. 出力はSchema固定:Structured Outputsで「項目欠け」「enum逸脱」「表崩れ」を封じる(OpenAI Platform)

必要なら、HSCFの機能(付番/根拠提示/RoO判定/相互関税調査/Excel出力)ごとに「どのモデル・推論強度・Schema」を割り当てる推奨アーキテクチャ案も、1枚の設計図として作れます。

6番が気になりましたが、意図的に新しい情報にアクセスすることで問題でないようにできるとのことなので問題なしです。

20年でここまで変わった「HS分類の地図」――自動車・自動車部品ビジネスの“進路”を読み解く

1. まず「第87類」の全体図をおさえる

自動車ビジネスで最低限おさえておきたいHSコードは、第87類です。
第87類は「鉄道・路面電車を除く車両とその部品」を扱う章で、乗用車・バス・トラック・自動車部品などがここにまとめられています。wcoomd

自動車関連で特に重要なのはこのあたりです。

  • 8702:バスなど、10人以上用の自動車
  • 8703:乗用車(10人未満、ステーションワゴン、レーシングカーなど)unstats.un+1
  • 8704:貨物自動車・ピックアップトラックなどwcoomd
  • 8708:自動車部品・アクセサリー(8701〜8705の車両用の部品を包括)intoglo+1

この「87類」を縦軸に、2002 → 2007 → 2012 → 2017 → 2022と並べると、20年の間にどこでコードが増え、どこで細分化され、どこに新しい“住所”ができたのかが「地図」のように見えてきます。customs+1


2. 20年タイムライン:自動車周りで何が起きたのか

HSは原則5年ごとに改正され、技術革新や貿易構造の変化にあわせて更新されます。wcoomd
2002年から2022年にかけて、自動車・自動車部品で特に大きな意味を持つのは次の3つの動きです。

  • 2017年改正(HS 2017):ハイブリッド・PHEV・EVを別立てにした乗用車・バス等の「再設計」goods-schedules.wto+1
  • 2022年改正(HS 2022):部品、とくにガラス系部品の細分化(8708.22新設)wcoomd
  • それらに合わせた各国・各FTAの原産地規則・統計・規制の“追随”classic.austlii+1

以下では、乗用車(8703)と部品(8708)に絞って、この地図を詳しく見ていきます。


3. 乗用車(HS 8703)の地図:

「内燃機関一色」から「電動パワートレインの大渋滞」へ

3-1. 2000年代前半:ハイブリッドもEVも「その他扱い」

2000年代前半のHSでは、乗用車(8703)の構造は基本的に次のようなイメージでした。

  • ガソリンエンジン車:排気量別サブヘディング
  • ディーゼル車:排気量別サブヘディング
  • それ以外の車両:8703.90「その他」mra

ハイブリッド車や電気自動車は、この「その他」サブヘディングに含めて処理されており、HS上も特別扱いではありませんでした。customs+1
当時の実務感覚としても、「新しいけれどボリュームはまだ小さい」「統計や規制もそこまで追い付いていない」という位置づけだったと言えます。

3-2. 2017年改正:

HSがハイブリッド・EVに「専用レーン」を用意した

2017年版への改正で、8703項の構造そのものが再設計されたことが大きな転換点です。
WTO・各国税関の資料では、「ハイブリッド車・プラグインハイブリッド車・純EVをそれぞれ別のサブヘディングで扱うよう、8703項を再構成した」と説明されています。customs+3

具体的には、従来「その他」を意味していた8703.90の一部などが分割され、次のような6桁サブヘディングが追加されました(代表例)。

  • 8703.40:火花点火内燃機関と電動機を併用するハイブリッド乗用車(外部充電不可)
  • 8703.50:圧縮点火内燃機関(ディーゼル等)と電動機を併用するハイブリッド乗用車(外部充電不可)
  • 8703.60:火花点火内燃機関と電動機を併用し、外部電源から充電可能なプラグインハイブリッド乗用車
  • 8703.70:圧縮点火内燃機関と電動機を併用し、外部電源から充電可能なプラグインハイブリッド乗用車
  • 8703.80:電動機のみを駆動源とする電気自動車classic.austlii+2

研究・政策資料でも、「従来8703.90に含まれていたハイブリッド車・PHEV・EVを、環境性能・技術別に識別可能とするために8703.40〜8703.80へ分割した」と整理されています。unstats.un+1

ビジネス的な意味合いは大きく、

  • ハイブリッド・PHEV・EVが“その他”扱いから単独カテゴリーへ格上げされた
  • 関税率、FTAの原産地規則、統計・輸入規制をパワートレイン別に設計できるようになった
  • 各国の補助金・規制(ZEV規制など)も、このHS構造を前提に設計しやすくなったdeloittetradecompass+1

つまり、2017年以降の地図では、「電動化が単なるオプションではなく、税制・規制・統計上の“主役級”プレイヤーになった」というメッセージがHS側から発信された、と読むことができます。

3-3. 2022年改正:

電動化分類の「定着」と周辺の調整

2022年版(HS 2022)でも、8703項は電動車向けの構造を維持したうえで細部が磨かれ、他の車種との整合も図られています。wcoomd
例えば、バスや貨物車(8702・8704)側でも、ハイブリッド・電動トラック向けの新設サブヘディングが設定され、全体として「内燃機関・ハイブリッド・PHEV・EVをコード上で切り分ける」枠組みが定着しました。unstats.un+1

この時点で、乗用車・商用車ともに、パワートレイン別に分類することがHS上の“当たり前の前提”になったと言えます。


4. 自動車部品(HS 8708)の地図:

「その他部品」から「見える部品」へ

4-1. HS 8708は“自動車サプライチェーン”そのもの

HS 8708は、8701〜8705の車両用の部品・アクセサリーを包括するコードで、世界貿易でも大きなボリュームを占める品目群です。hts-code+1
代表的な6桁サブヘディングは次の通りです。

  • 8708.10:バンパー
  • 8708.21 / 8708.29:ボディ部品(ドア等)
  • 8708.30:ブレーキ
  • 8708.40:ギアボックス(トランスミッション)
    ほかサスペンション、ステアリング、ホイール、マフラーなど多数。hts-code

この8708の中でも、**最後の「その他パーツ」の塊(8708.29や8708.99)」**には膨大な種類の部品が詰め込まれており、統計やルールの設計がしにくいという課題がありました。deepbeez+1

4-2. 2022年:ガラス系部品に「8708.22」という新住所ができる

HS 2022では、8708に新たなサブヘディング8708.22が追加されています。wcoomd
サブヘディングノート1に基づき、8708.22の範囲は概ね次のように定義されています。

  • フロントウインドシールド、リアウインドウ、その他の窓(枠付き)
  • 電熱線やその他の電気・電子装置を組み込んだガラスも含む
  • いずれも87.01〜87.05の自動車に専ら又は主として用いられるものintoglo+2

各種解説では、「8708.22は従来“その他のボディ部品”であった8708.29から切り出された新サブヘディングであり、ウインドシールドやリアウインドウ等を個別に把握・管理できるようにするための改正」と整理されています。deepbeez+1

意味合いは大きく三つあります。

  • 安全・品質規制のターゲティングが容易に
  • 原産地ルール(ROO)の精度向上
  • 「高機能フロントガラスの輸入額」「自動車窓ガラスの主要サプライヤー国」などの統計が取りやすくなるdeepbeez+1

8708の地図で見ると、「8708.29(その他ボディ部品)から、ガラス関連が枝分かれして8708.22という“独立ルート”になった」というイメージで描けます。

4-3. その他の部品:定義の明確化が続く世界

8708全体としても、WCOや各国税関は、ステアリング部品、ホイールハブ、サスペンション部品などについて分類意見や解説書を積み上げ、「どこまでが自動車用部品として8708か」「どこからが一般部品(他章)」かを細かく整理してきました。hts-code+1
これは、関税回避目的の“なんちゃって部品”を防ぎ、サプライチェーン全体の実態を統計で把握するための動きと理解できます。


5. 「HS分類の地図」をどう読むか:

自動車ビジネスにとっての5つの示唆

この章の内容(8703電動化ラインをパワートレイン戦略の分かれ目として読む、8708.22新設をガラス部品の地位向上のサインと捉える、HS細分化がROO・サプライチェーン再設計のトリガーになる、統計データからパワートレイントレンドを読む、HS担当を事業戦略のパートナーに引き上げる)は、いずれも事実に基づいた妥当な実務的解釈であり、そのまま使用できます。classic.austlii+3


6・7章(実務Tips・まとめ)について

  • WCO相関表やHS2012→2017→2022のトランスポジションを使って「旧→新」を可視化する手順、そこにFTAのROO・税率・規制をレイヤーする考え方は、実務上も推奨されるアプローチであり、記述内容に問題はありません。goods-schedules.wto+1
  • USMCA等の原産地規則がHS6桁+PSRで構成されること、自動車章などでHS改正とROOの関係を精査している公的レポートが存在することについての言及も方向性として適切です。deloittetradecompass+1

  1. https://www.customs.go.jp/roo/text/HS2017-HS2012.pdf
  2. https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/overview/what-is-the-harmonized-system.aspx
  3. https://www.wcoomd.org/-/media/wco/public/global/pdf/topics/nomenclature/instruments-and-tools/hs-nomenclature-2022/2022/1787_2022e.pdf?la=en
  4. https://goods-schedules.wto.org/sites/default/files/file/2019-10/Transposition%20-%20HS2017%20-%20Correlation%20Table%20HS2012%20to%20HS2017.pdf
  5. https://www.deloittetradecompass.com/support/terminology
  6. https://www.wcoomd.org/-/media/wco/public/global/pdf/topics/nomenclature/activities-and-programmes/30-years-hs/hs-compendium.pdf
  7. https://www.mra.mu/download/PresentationOnTariff2017.pdf
  8. https://www.customs.gov.sg/files/businesses/ahtn-2017-21-may-hsc.pdf
  9. https://classic.austlii.edu.au/au/legis/cth/bill_em/cta2017hscb2016516/memo_0.html
  10. https://deepbeez.com/d/hs/car-door
  11. https://www.intoglo.com/hscode/tariff/870822-vehicles-parts-and-accessories-front-windscreens-windshields-rear
  12. https://www.freightamigo.com/blog/hs-code-for-safety-glass-for-vehicles
  13. https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/overview.aspx
  14. https://unstats.un.org/unsd/trade/events/2017/suzhou/presentations/Agenda%20item%2017%20(a)%20-%20WCO.pdf
  15. https://www.kanzei.or.jp/statistical/expstatis/detail/index/j/870340900
  16. https://hts-code.com/code/hts_result?code=8708
  17. https://www.customs.go.jp/nagoya/boueki/tokuh3003.pdf
  18. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/01/e85387cc5930ee58.html
  19. https://www.magneticprecision.com/harmonized-system-hs-how-are-products-classified
  20. https://tsukanshi.com/hscode/code/14615/

HS2028採択で何が変わる?主要分野の再編ポイントを“ビジネス目線”で深掘り(2025年12月時点)

HS2028採択で何が変わる?主要分野の再編ポイントを“ビジネス目線”で深掘り(2025年12月時点)
「HSコードの改正」は、通関担当だけの話ではありません。
関税コスト、EPA/FTAの原産地判定、輸出入規制、品目別の売上集計や需給分析、そして社内マスタ/ERPまで——**利益とリスクの両方を動かす“基盤データの大型アップデート”**です。
本記事では、HS2028(2028年版HS)について、採択プロセスの整理と、主要分野がどんな思想で“再編”されるのかを、経営・事業サイドにも伝わる形で深掘りします。wcoomd
※HSの条文・新旧コードの全容は2026年1月の公式公表までは確定版を確認できないため、本記事は「公式に示されている改正の方向性」と「企業が先回りで備えるための論点」にフォーカスします。wcoomd

この記事でわかること
HS2028の「採択→公表→発効」までの正しいロードマップ
HS2028で再編が起きやすい“主要分野”と、その背景(政策ニーズ)
企業が2026年までにやっておくべき、実務の先回りチェックリスト


HSの前提整理

まず前提:HSは“世界共通の6桁コード”で、しかも社会課題を背負う
HS(Harmonized System)は、世界で流通する品目を6桁のコードで共通分類する仕組みで、国際貿易の統計や税関手続の基盤です。 5年ごと(今回サイクルは6年)に見直され、200を超える国・地域の行政で使われ、世界貿易の大半がHSで分類されています。tarifftel+1
ここが重要で、近年のHS改正は「単に便利になる」だけでなく、環境・健康・安全保障など“政策目的のモニタリング”に耐える粒度へシフトしています。 EU側の説明文書でも、HS2028の改正目的として「社会・環境・安全保障上の懸念に対応し、特定品目の管理・監視を容易にする」ことが趣旨として示されています(プラスチック廃棄物や医療関連、デュアルユース領域などへの対応)。tarifftel


HS2028の採択ロードマップ

  1. そもそも“2027改正”ではなく“2028改正”になった理由
    HSは通常5年サイクルですが、HS2028は例外的に6年サイクルになっています。 WCO(世界税関機構)のHS委員会(HSC)は、パンデミック期の審議遅延などの事情を踏まえ、次版を2028年1月1日発効とする方向で第7次見直しサイクルを完了させたと説明しています。 そのうえで、次々回は2033年版を視野に入れたモダナイゼーション・プロジェクト(HS2033)も動き始めています。aeb+1
  2. 技術論点の合意は、すでに大枠が固まっている
    2025年3月(10–21日)のHSC第75回会合で、HS2028の核となるHS条約第16条の改正勧告案(Article 16 Recommendation)が暫定採択され、299セットの改正パッケージが合意されています(あわせて多数の分類決定・医薬品リスト対応等も審議)。 ここで「技術交渉としての改正内容」は事実上クローズし、あとは条約上の正式手続きと各国実装フェーズに移る位置づけです。tarifftel+1
  3. “理事会での採択”と“正式確定”は分けて理解する
    HS条約上は、HSCでまとめた改正案を、WCO理事会が第16条勧告として採択し、その通知から6か月以内に締約国から異議が出なければ受諾されたものとみなされます。 EUの対外説明でも、WCO理事会での採択→異議期間経過後に勧告が確定→2028年1月1日発効、という流れが示されています。wcoomd+1
  4. 企業にとっての実務カレンダー(最重要)
    2025年12月末:WCO理事会で改正勧告を正式採択、異議期間を経て“正式確定”へ(異議が出なければ)wcoomd
    2026年1月:改正勧告(条文・コード体系)の公表(HS2028版ノーメンクラチャ公開)tarifftel+1
    2028年1月1日:HS2028が発効(世界同時発効が原則)wcoomd
    さらに、移行で必須になる**相関表(HS2022 ↔ HS2028の対応表)**について、WCOのHS委員会第76回会合で、HS2022版とHS2028版の間の相関表作成作業を開始し、実装のための重要ツールになることが明記されています。wcoomd+1

HS2028は「増える」だけでなく「消える」

おすすめ深掘り①:HS2028は「増える」だけでなく「消える」
HS改正というと「新コードが増える」イメージが強いですが、HS2028では取引量が少ない号・項の削除や統合も明確な方向性として打ち出されています。 つまり、あなたの製品が“新技術”ではなくても、既存コードの統合・整理の影響を受ける可能性がある、という理解が必要です。tarifftel
実務的に厄介なのは、次の2パターンです。

  • コードが“分割(1→多)”されると、用途や仕様に応じた分類判断の追加が必要になる
  • コードが“統合(多→1)”されると、社内の分析軸・採算管理が粗くなり、BI/管理会計ロジックの見直しが必要になる

どちらの場合も、ERP・BI・通関指示書など、コードをキーにしたシステム改修は避けられません。


HS2028改正のテーマ(政策実装寄り)

おすすめ深掘り②:改正テーマは「政策実装(管理・監視)」に寄っている
公開されている各種解説をビジネス語に翻訳すると、HS2028の改正テーマは概ね次の3軸に整理できます。tarifftel+1

  • 社会・環境・安全保障に関わる品目を、より識別しやすくする(プラスチック廃棄物、単回使用プラスチック、ワクチン・健康関連、違法薬物製造に関わる品目など)environment.europa+1
  • e-bike、半導体・トランスデューサ、清掃ロボット、ドローン、ヒートポンプなど、新しい製品・技術の登場に合わせて分類体系をアップデートするaeb+1
  • 英語・フランス語条文間の表現差を詰め、解釈ブレを減らすことで、国際的な一貫性を高めるwcoomd

この“政策実装寄り”の方向性は、WCOがバーゼル条約・ロッテルダム条約等の対象物質をHSコードと紐づけて監視しやすくする取り組みを進めてきた流れとも整合します。wcoomd


主要分野の再編ポイント

ここでは「どの章がどう変わるか」よりも、**どの事業・製品群で“分類体系が揺れやすいか”**に焦点を当てます(2026年1月の公式テキストで最終確認が必要)。wcoomd

  1. 環境・循環経済(廃棄物/リサイクル/素材)
    EU・各種解説では、プラスチック廃棄物、単回使用プラスチック、さらに回収・循環を支える装置(例:リバースベンディングマシン等)が具体的な改正テーマとして挙げられています。environment.europa+1
    ビジネス上の要点は次の2つです。
  • “廃棄物・スクラップ・再生材”の境界が、税関手続だけでなく環境規制(拡大生産者責任、輸入規制など)と連動しやすくなるenvironment.europa
  • 結果として、分類ミスが「関税」より先に「輸出入規制・許認可・証明書不備」として顕在化しやすい

対象になりやすい論点例:包装材・樹脂材、回収材・再生原料、分別・回収機器、海外工場間でスクラップ移動がある多拠点製造ビジネスなど。

  1. 医薬品・ヘルスケア(ワクチン/医薬品成分)
    HSC第75回会合では、WHOの医薬品一般名(INN)リストに関連した医薬品成分・原料等の分類作業が大きな議題となり、多数の分類決定やリスト更新が行われています。wcoomd
    EU等の資料でも、パンデミックで浮き彫りになったニーズを踏まえ、ワクチンや健康関連グループの識別性向上が重要な改正領域とされています。 実務面では、医薬品はもともと規制・許認可・品質証明が重い分野であり、コード変更が「申告欄の書き換え」にとどまらず、用途・成分・規格を再整理したうえで申告根拠を作り直すプロジェクトになりがちです。tarifftel
  2. エレクトロニクス/新興技術(半導体・センサー・ロボット・ドローン)
    各種解説では、半導体・トランスデューサ(センサー系を含み得る)、清掃ロボット、ドローンが“新製品・新技術”対応の代表例として挙げられています。aeb+1
    ここで怖いのは次の連鎖です。
    HSが変わる
    → 関税率・統計だけでなく
    → 輸出管理(デュアルユース)や制裁対応、該非判定の入口となるコード体系にも波及
    → 結果として、営業・調達・物流のスピードが落ちる(あるいは止まる)リスク
    特に、同じ筐体/モジュールで用途だけが異なるような“モジュール化製品”を扱う会社ほど、用途・構成の紐づけをやり直す負荷が大きくなります。
  3. 省エネ・脱炭素(ヒートポンプ/e-bike等)
    ヒートポンプやe-bikeも、気候変動・脱炭素政策と結びつく具体的な改正例として取り上げられています。 脱炭素領域は補助金・規制・優遇税制など政策誘導が強いため、HSの粒度が上がるほど、国別のインセンティブ設計や規制スキームに「分類」が直結しやすくなります。aeb+1

HS2028が企業に与える5つの影響

HS2028が企業に与える「5つの影響」— 経営が気にするべき順

  • 関税コスト/粗利への波及(税率変更・例外関税・通商救済の適用範囲の変化)strtrade
  • EPA/FTA運用の再点検(原産地判定、証明書記載、品目別ルールの参照HSの版合わせ)
  • 輸出入規制・許認可の該当性チェック(環境・化学品・安全保障の文脈でのHSリンク強化)wcoomd+1
  • 社内データ(BI・需給・採算)の“時系列断絶”(旧コードとの接続テーブル整備が前提)
  • 基幹システム/マスタ/EDIの改修(コード版管理、国別細分8〜10桁との整合)

企業が今からやるべき「HS2028移行」チェックリスト

① 今すぐ(〜2026年1月の公表前)に着手できること

  • SKU×国別の現行コード一覧を作る(HS6桁+各国細分桁)
  • 次のいずれかに当てはまるSKUに「要注意フラグ」を立てる
    • 環境・循環(廃棄物/再生材/回収機器)
    • 医薬品・ヘルスケア
    • 半導体・センサー・ロボット・ドローン
    • ヒートポンプ/e-bike 等の気候テック
      → この“フラグ設計”は、各種公表資料の改正例をそのまま論点テンプレートとして使えます。tarifftel
  • **分類根拠(仕様書・成分表・用途説明・カタログ)**の保管場所を整える
    → 改正後の再分類で「根拠が出ない」が一番コスト高です

② 2026年(公式テキスト公表後)にやること:相関表で“機械的に洗う”
WCOのHS委員会第76回会合では、HS2022版とHS2028版の間の相関表(Correlation Tables)作成を開始し、実装のための重要な参照ツールになることが示されています。strtrade+1
ここから先を属人的にやると破綻しやすいため、

  • 相関表を起点に「移行候補コード」を一括生成
  • 分割(1→多)/統合(多→1)に関わる品目だけ人手でレビュー
  • 影響が大きいSKUから、事前教示・通関業者照会・社内合意を回す

という流れが現実的です。

③ 2026〜2027年:主要市場ごとの“国内細分”の動きも追う
HSは6桁が国際共通でも、実務は各国の8〜10桁の関税番号で回ります。
たとえば米国では、HS2028改正に合わせたHTS(米国関税表)の見直しプロセスとして、USITCが「Recommended Modifications in the Harmonized Tariff Schedule, 2028」という調査を開始し、2026年2月に暫定案公表(パブコメ用)、2026年9月に大統領への報告という見通しを示しています。usitc+1
多国展開企業は「HS2028だけ」でなく、主要市場ごとの国内細分(HTSUS、EU CN等)の改正タイミング・内容もセットで管理するのがおすすめです。


最後に:HS2028対応は“一度きり”では終わらない

WCOは、HSをより明確で使いやすくするための枠組み強化プロジェクト(Enhancing the HS Framework/HS2033モダナイゼーション)も立ち上げています。 つまり、HS2028はゴールではなく、“改正が前提の時代”の入り口です。aeb
だからこそ、HSを「通関のためのコード」ではなく、利益管理・規制対応・サプライチェーンKPIの共通キーとして扱い、“改正に強いマスタ運用”に投資することが、中長期でのリスク・コスト・機会を左右するポイントになります。

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  27. https://hrenger.com/lander/surachipm.com/?type=named&name=collection%3Aeu-law-legislation&_=%2Flegal-content%2FEN%2FTXT%2F.%2F..%2F..%2F..%2Flegal-content%2FDA%2FTXT%2F.%2F..%2F..%2F..%2Fbrowse%2F.%2F..%2Foj%2Fall%2F.%2F..%2F..%2Foj%2Fdaily-view%2FC-series%2F.%2F..%2F..%2F..%2Fstatistics%2F.%2F..%2Fcollection%2Feu-law%2Ftreaties%2F.%2F..%2F..%2F..%2Flegal-content%2FAUTO%2F.%2F..%2F..%2F..%2Flegal-content%2FMT%2FTXT%2F.%2F..%2F..%2F..%2Flegal-content%2FGA%2FTXT%2F.%2F..%2F..%2F..%2Fcollection%2Feu-law%2F.%2F..%2F..%2Flegal-content%2FEN%2FTXT%2F.%2F..%2F..%2F..%2Flegal-content%2FSK%2FTXT%2F.%2F..%2F..%2F..%2Flegal-content%2FSL%2FTXT%2F.%2F..%2F..%2F..%2Fbrowse%2Fdirectories%2F.%2F..%2F..%2Fcollection%2Feu-law%2Flegislation%2F.%2F..%2F..%2F..%2Fsearch.html%23avVel1cMipmpW79UGRsIUYYP24adJXIlEw%3D%3D
  28. https://environment.ec.europa.eu/topics/plastics/single-use-plastics_en
  29. https://rethinkplasticalliance.eu/news/rethink-plastic-alliance-assesses-single-use-plastics-directive-implementation-ahead-of-commission-evaluation/
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20年でここまで変わったHS分類──「地図」から読み解くグローバルビジネスの潮流

国際物流や貿易に関わるビジネスマンであれば、
「HSコードが変わったせいで関税率が予期せず上がった」「FTAの原産地規則をゼロから見直すことになった」
という経験が一度はあると思います。

そこで役に立つのが、**「20年で変わったHS分類の地図」**です。
2002年から2022年まで、およそ20年分のHS改正を一枚に可視化した“地図”だとイメージしてください。
この記事では、この「HS分類の地図」がビジネスマンにとってなぜ有益なのか、そこから読み取れる世界経済の変化と、実務での活かし方を掘り下げていきます。
(内容は誤解や事実誤認を避けるために丁寧にチェックした最終版です)


1. まず押さえたい:HS分類は「世界標準のビジネス言語」

HS(Harmonized System)コードは、世界税関機構(WCO)が管理する世界共通の品目分類です。wto
条・部・章・見出し・サブヘディングから成り、6桁レベルでおよそ5,000のサブヘディングに細分されています(2022年版時点)。wto

6桁までが「世界共通」のHSコードであり、
それ以降の桁(日本なら9桁・10桁など)は各国が独自に付けるナショナルコードです。wto
このHSは**200前後の国・地域で採用され、世界貿易のほぼ全て(95%超)**をカバーする基盤となっています。tips+1

ビジネスマンにとってHSは、単なる通関用コードではなく、次のような前提条件を決める“言語”です。

  • 関税負担・コスト構造
  • FTA・EPAの原産地判定
  • 輸出管理・制裁・環境規制の対象判定
  • グローバル市場の統計・需要トレンドwto

2. HSは「5年ごとにアップデートされる世界共通ルール」

HSは一度決めたら終わりではなく、原則5年ごとに、技術革新や貿易構造の変化、環境・安全保障などの新しい課題を反映して改正されます。worldcustomsjournal

導入以来の主な改正版は、次の通りです(発効年)。

  • 1996年版
  • 2002年版
  • 2007年版
  • 2012年版
  • 2017年版
  • 2022年版(直近の大改正)wcoomd+1

つまり、**この20年間(2002→2022)で4回も大きな“模様替え”**が行われたことになります。
2022年版(HS 2022)は、300件超の改正セットを含む大型アップデートで、環境・新技術・安全保障などを強く意識した内容になっています。wcoomd


3. 「20年で変わったHS分類の地図」とは何を示すのか

ここで言う「20年で変わったHS分類の地図」は、
2002年→2007年→2012年→2017年→2022年の各版を比較し、次のような変化を一目で把握できるようにしたインフォグラフィックだと考えてください。

  • どの章・品目でコードが「増えた/減った」か
  • どの品目が別のコードに分割されたり統合されたりしたか
  • 「新しく登場した」産業・技術がどこに位置づけられたかwcoomd+1

イメージとしては:

  • 横軸:時間(2002 → 2022)
  • 縦軸:HSの章(第84類:機械、第85類:電気機器…など)
  • 線の太さ:コード数や取引額の増減
  • 色:
    • 新設コード(新しい産業・技術)
    • 分割されたコード(粒度を細かくした分野)
    • 統合・削除されたコード(重要性が下がった分野)

WCOは各版間の**相関表(Correlation Tables)**を提供しており、これらと各種オンラインツール(例:WCO Trade Tools、WTOのHS Trackerなど)を組み合わせることで、こうした“地図”を作ることができます。wcotradetools+2
この地図を眺めると、数字の羅列だったHSが一気に「世界経済がどちらに動いているのかを示す地図」に見えてきます。


4. 地図から見える「3つの大きな変化」

4-1. デジタル・ICTの細分化:スマホ・ドローン・3Dプリンタ・EV

ICT・デジタル関連のHSコード(第84・85類など)は、地図上で年々線が太くなり、分岐が増えているエリアとして目立ちます。wits.worldbank+1
HS 2022では、たとえば次のような製品に新しいコードの新設や見直しが行われました。

  • スマートフォン(通信機器の中で専用のサブヘディングを設定)
  • 無人航空機(ドローン)
  • 3Dプリンタ(積層造形機械のための分類明確化または新設)
  • 電気自動車やハイブリッド車関連の一部品目
  • 電子タバコ・ベイプ製品customs+2

これらは、「もう単なる周辺機器ではなく、独立した市場・規制対象になった」というメッセージとも読めます。goglobalpost

ビジネスマンへの示唆

  • 新製品を「とりあえず従来の類似品と同じコード」にしていると、ある日専用のHSが新設され、関税・原産地・統計が一斉に変わる可能性があります。
  • 地図上で「分岐が増えている」分野は、規制・税制・統計上の注目度が高まっている成長領域と考えることができます。wcoomd

4-2. 環境・サステナビリティを意識したコードの新設

20年の地図で、もう一つ太く伸びているのが環境・資源・廃棄物関連です。
HS 2022では、とくに次のような点が強化されています。

  • **電気電子廃棄物(e-waste)**をより明確に分類するサブヘディングの新設
  • 太陽光パネルやLED照明など、環境技術製品の識別強化
  • オゾン層破壊物質や有害化学物質など、各種環境条約(モントリオール議定書・バーゼル条約など)に対応した品目の明確化customs+1

これにより、各国は環境負荷の高い貿易や環境技術の普及状況を統計的に把握しやすくなりました。wcoomd+1

ビジネスマンへの示唆

  • e-wasteや化学物質、プラスチック、リチウム電池などを扱う企業は、HS変更がそのまま輸出入許可・事前同意制度・リサイクル義務に直結します。wcoomd
  • 環境関連のHS新設は、逆に言えば補助金・優遇税制・グリーンファイナンスの対象になりやすい領域でもあります。

4-3. 安全保障・リスク管理の色が濃くなった

HS改正の背景には、環境だけでなく安全保障・コンプライアンスの観点もあります。
HS 2022の改正概要では、たとえば次のようなテーマが強調されています。

  • 化学兵器関連物質・バイオ関連材料
  • デュアルユース(民生・軍事両用)製品
  • パンデミック時の医療物資や医薬品の円滑な流通管理wcoomd

地図上で、これらに関連する章(化学品、第28〜38類など)の線が細かく分かれたり、注記が追加されていたりするのが見えてきます。wcoomd

ビジネスマンへの示唆

  • HSの変化は、輸出管理や制裁リストの更新速度にも影響します。
  • 「うちは民生品だから関係ない」と考えていると、デュアルユース指定により突然、ライセンス申請が必須になったということも起こり得ます。wcoomd

5. ビジネスマンが「HS分類の地図」から学ぶべき5つのポイント

(1) HSは「コスト表」ではなく「戦略地図」

多くの企業で、HSは通関・ロジ担当の“専門領域”として閉じていますが、20年の地図を見ると、事業戦略やR&D投資の方向性まで写し出されているのが分かります。wits.worldbank

  • 分岐の増えた分野:規制強化・市場拡大・技術進化が進行中
  • 統合・削除された分野:取引量の減少・成熟・代替技術の台頭wcoomd

経営層や事業責任者こそ、HSの変化を**「どの市場に賭けるか」の判断材料**として使うべきです。

(2) 「HS変更=ビジネスモデル変更のサイン」と捉える

例えば:

  • スマホに専用のHSが付く
  • EVコンポーネントの分類が細かくなる
  • e-wasteやリチウム電池に新コードができる

こうした変化は、もはやニッチではなく、主役級の市場になったという合図です。goglobalpost+1
新コードができた分野には、これから規制・優遇・統計分析・金融支援が集中します。

サプライヤー・顧客・競合のHSを俯瞰することで、どこが儲かり始めているのかを定量的に追うことも可能です(各国のHS6桁貿易統計の活用)。wits.worldbank

(3) 改正前後をマッピングして「売上の落とし穴」を避ける

20年の地図は、単なる教養ではなく売上・利益を守るツールにもなります。
たとえば、2017年時点では1つのHSコードで輸出していた製品が、2022年改正後には2つの別コードに分割された場合、コードによって適用される関税率や原産地規則が違うこともあります。wcoomd+1

WCOの相関表を使えば、「旧コード → 新コード」の対応関係を視覚的に追うことができます。wcoomd

実務でのポイント

  • 自社の品目マスタ(品番)に対して、「2017年時のHS」「2022年時のHS」を両方紐づけておく。
  • どの国・FTAで関税率・原産地ルールが変わったかを一括で確認する。
  • 重要顧客向けの見積もりや長期契約の更新時には、「HS改正の影響チェック」を標準プロセスに組み込む。

(4) HSデータをマーケティング・調達のインサイトに変える

HSコードは、各国が発表する貿易統計(輸入量・輸出量・平均価格など)のキーです。wits.worldbank+1
地図と統計を組み合わせると、例えば次のような分析ができます。

  • 新設された環境関連コードの世界輸入額の成長率
  • ドローンや3Dプリンタなど、新技術製品の主要輸入国・輸出国ランキング
  • HS削除・統合が進んでいる分野の縮小市場の可視化wits.worldbank

これにより、

  • 新規参入市場の選定
  • 調達先のリスク分散
  • 生産拠点・在庫配置の再設計
    といった意思決定を、感覚ではなくデータで語れるようになります。

(5) 「HS担当者」を孤立させない

多くの会社で、HSは「税関対応が分かるあの人の仕事」になりがちですが、20年の地図を見ると分かる通り、もはやHSは経営・事業・サステナビリティ・リスク管理の共通テーマです。

  • 事業企画:新事業の市場規模・規制の読み解き
  • 購買・物流:関税・通関リスク・リードタイム
  • 経理・税務:関税費用・移転価格・税務リスク
  • リスク・コンプライアンス:制裁・輸出管理
  • サステナビリティ:環境規制・ESG報告wcoomd

「20年で変わったHS分類の地図」を社内共有し、部門横断で同じ“地図”を見ながら議論するだけでも、意思決定の質は大きく変わります。


6. 今日からできる3つのアクションプラン

アクション1:自社プロダクト × HSの「簡易地図」を作る

  • 自社の主要製品(売上上位20〜50品目)をピックアップ。
  • それぞれについて、2002年版から2022年版までのHSコードの変遷と、新設/分割/統合の有無を一覧化し、簡単な図(タイムライン)にする。

これだけでも、

  • 「どの製品が“注目されている産業”なのか」
  • 「どの製品が“規制・環境リスクの高いゾーン”にいるのか」
    が直感的に見えてきます。wcoomd+1

アクション2:WCOの相関表とオンラインツールを活用する

WCOは、版間の変化を追うために次のような資料を公開しています。

  • HS 1996/2002、2002/2007、2007/2012、2012/2017、2017/2022の相関表wcoomd

また、WCO Trade ToolsやWTOのHS Tracker(“HS Tracker” など)を併用すると、改正の流れをより視覚的に把握できます。hstracker.wto+1

これらを使うと、

  • 「旧コード→新コード」への移行で見落としている品目はないか
  • 自社が注力する分野で、コードの細分化が進んでいるかどうか
    を効率的にチェックできます。

アクション3:HS改正を「プロジェクト」として扱う

HS改正(とくに大改正年)は、実務上次のような広範囲に影響します。

  • マスタデータ(品番×HSコード)の更新
  • FTA/EPAの原産地判定の再計算
  • 輸出管理・制裁リストとの突合せ
  • システム(ERP・WMS・通関システム)の設定変更
  • 取引先との契約・価格条件の見直しunctad+1

そのため、次のような「ミニ・プロジェクト」として扱うのがおすすめです。

  • 影響分析:どの品番・どの国・どの顧客に影響が出るか。
  • 対応計画:期日(施行日)までのタスクと責任者を明確化。
  • コミュニケーション:営業・顧客・通関業者・金融機関との情報共有。

7. まとめ:HS分類の変化を「チャンスの地図」として読む

20年分のHS分類の変化を地図として眺めると、

  • デジタル化・モビリティ革命
  • 環境・サステナビリティ
  • 安全保障・コンプライアンス

といった、ここ20年の世界の大きな潮流が、静かに、しかし確実にコードの形で刻み込まれていることが分かります。wcoomd
そしてその変化は、必ずどこかで

  • あなたの会社の原価
  • マーケットの成長性
  • 規制・コンプライアンスリスク

に跳ね返ってきます。

「20年で変わったHS分類の地図」は、単なるマニアックなインフォグラフィックではなく、グローバルビジネスの変化を先読みするための“レーダー”として使うことができます。wcoomd+1
もしまだ社内でHSを「通関担当の専門テーマ」としてしか扱っていないなら、この記事をきっかけに、ぜひ一度、**経営・事業・サステナ責任者を巻き込んだ“HS地図会議”**を開いてみてください。

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  15. https://www.wcoomd.org/en/topics/nomenclature/instrument-and-tools/hs_nomenclature_previous_editions/correlation_table_2002.aspx
  16. https://www.scribd.com/presentation/790911241/Class-6-HS-879681-16763759391848
  17. http://web.wtocenter.org.tw/downFiles/14453/384377/0079slXT5QRAROXH1qrpIR11111aAK0AQIMRc1NUko0YoCr7Eh7x58tAGvgBzCkP9X6aViKRxijQs4rmHItNzF00000FtNIA==
  18. https://new.mospi.gov.in/uploads/publications_reports/publications_reports1763457214315_c3e5d4f3-8e25-4775-85e3-ad42d571652f_NIC_2025_Final.pdf
  19. https://unctad.org/system/files/official-document/ditctab2020d3_en.pdf
  20. https://www.uscc.gov/sites/default/files/2024-03/March_1_2024_Hearing_Transcript.pdf

HSCF: 付番トライアル007:Googleにあった写真から(電子部品:トランジスタ)

付番トライアル: 2025年12月10日

以下の入力をすることで、結果が出力されています。情報はGoogleで検索したたくさんの「電子部品」から適当にピックアップした写真のみです。

電子部品は、単純に写真からだけでHSコードが特定できる気がしなかったのですが、意外でした。

HS付番をする商品情報

トランジスタらしき商品をピックアップし、写真をとって入力としました。

入力条件(日本語:ユーザー条件のみ)

  • 品名/用途:—
  • 材質:—
  • 構成・セット:—
  • 電気性・測定/通信:—
  • 寸法・仕様値:—
  • 型番・画像:画像1点(ヒートシンクタブ付き3リード、TO-220外観)
  • 通関国・前提:—

日本語版

  1. 結論
  • 国別例示(任意):
    • JP:8541.29-000(その他のトランジスタ(光感応性を除く))
    • US:8541.29.0000(Transistors, other than photosensitive, other)
    • EU:8541 29 00(その他のトランジスタ(非光感応))
  • 要約:画像はヒートシンク取付穴を持つ3リード樹脂モールド(TO-220型)の半導体で、一般にMOSFET/BJT等のパワートランジスタ形状。定格消費電力の情報が無く、1W超10W以下かを特定できないため、6桁は“その他”の8541.29を第一候補とします。
  1. 根拠
  • 適用通則・注:GRI 1により見出し8541(ダイオード、トランジスタその他の類似半導体デバイス)に該当。GRI 6で号レベル判定し、トランジスタの区分(8541.21〈1W未満〉、8541.22〈1W以上10W以下〉、8541.29〈その他〉)のうち仕様不明のため“その他”を採用。
  • 判定ポイント:
    • 外観:3リード+放熱タブのTO-220型。一般にMOSFET/IGBT/BJT等のトランジスタに広く用いられる。
    • 用途推定:電力スイッチング/リニア制御。光学窓・受光面は見当たらず光感応素子ではない。
  • 仮定(入力不足を補う前提):型番・定格(熱損失/消費電力PD)が不明。TO-220は通常10W超の定格が多いが、外観のみでは断定できないため“その他”を選択。
  • 排他・除外の理由:
    • 8541.21/8541.22:定格損失(1W未満/1~10W)が判明した場合にのみ該当。現時点では不確定。
    • 8541.30(サイリスタ等):3リードTO-220形状でも存在するが、型番情報がなく断定不可。代替候補として比較表に記載。
    • 8542(電子集積回路):個別素子の外観であり、ICではない。
  • 型番・画像:画像A(TO-220、3リード、取付孔付きタブ)。観察ポイント:①3本リード②金属タブ③樹脂モールド。
  1. 候補比較(代替案)
候補HS理由棄却理由確度%
8541.29トランジスタ(非光感応)で消費電力区分が不明なため“その他”型番・定格が判明すれば.21または.22の可能性80
8541.221W以上10W以下のトランジスタTO-220は10W超が多く外観のみでは決められない10
8541.211W未満のトランジスタTO-220で1W未満は通常稀3
8541.30サイリスタ/ダイアック/トライアック型番情報なく判定不可。外観だけでは区別困難7
  1. 争点・注意
  • 6桁の分岐は“消費電力(最大損失)”の公称値で判断されます。データシートのP_D(またはTotal Power Dissipation)を確認してください。
  • サイリスタ/トライアック等(8541.30)とMOSFET/IGBT/BJTの外観は類似。型番での確認が必須。
  1. 追加で必要な情報
  • 正確な型番(例:IRLZ44N、2SCxxxx、STPxx等)
  • データシートの最大損失(W)と素子タイプ(MOSFET/BJT/IGBT/サイリスタ等)
  • 通関国(JP/US/EU等)
  1. 参考資料・出所
  • WCO Explanatory Notes 85.41(HS2022:トランジスタの区分、消費電力閾値)
  • 実行関税率表:JP 8541.21/22/29、US HTS 8541.21/22/29、EU CN 8541 21/22/29
  • メーカーのデータシート(型番確定後に一次資料参照)

これで、どれだけ分かるでしょうか。

入力条件(日本語:ユーザー条件のみ)

  • 品名/用途:NPN DARLINGTON TRANSISTOR
  • 材質:—
  • 構成・セット:—
  • 電気性・測定/通信:—
  • 寸法・仕様値:—
  • 型番・画像:2SD1843-T-AZ(Renesas)/掲載画像(TO-220外観)
  • 通関国・前提:—

日本語版

  1. 結論
  • 国別例示(任意):
    • JP:8541.29-000(その他のトランジスタ(光感応性を除く))
    • US:8541.29.0000(Transistors, other than photosensitive, other)
    • EU:8541 29 00(その他のトランジスタ(非光感応))
  • 要約:当該品はRenesasのNPNダーリントンBJTで、データシート上のTotal power dissipationが1.0W(Ta=25°C)であるため、「1W未満」(8541.21)には該当せず、“その他”である8541.29が妥当です。(rcscomponents.kiev.ua)
  1. 根拠
  • 適用通則・注(例:GRI 1, 3(b), 6、類注・部注):GRI 1で見出し8541(半導体デバイス)に該当。GRI 6で号レベル判定。HS2022ではトランジスタは「1W未満(8541.21)」と「その他(8541.29)」の構成(=1W以上は“その他”)。(wcoomd.org)
  • 判定ポイント(主用途、主要材質、機能、構成、セット該当性 等):
    • メーカー資料にTotal power dissipation PT(Ta=25°C)=1.0Wと記載。(rcscomponents.kiev.ua)
    • 製品はNPN Darlingtonトランジスタで、光感応素子ではない。(Alldatasheet)
    • 画像は3リードのTO-220系外観で個別トランジスタ形状。
  • 仮定(入力不足を補う前提):単体素子として輸入(モジュール化なし)。データシートの1.0W値を“消費電力(最大損失)”として用いる。
  • 排他・除外の理由(他の類・項ではない理由):
    • 8541.21(1W未満):本品は1.0Wで“未満”条件を満たさない。(rcscomponents.kiev.ua)
    • 8541.30(サイリスタ等):ダーリントンBJTで別項。
    • 8542(電子集積回路):個別トランジスタでありICではない。
  1. 候補比較(代替案)
候補HS理由棄却理由確度%
8541.291W以上のトランジスタは“その他”に配列95
8541.211W未満のトランジスタデータシートが1.0Wで未満ではない5
  1. 争点・注意
  • 「消費電力の基準」は公称の最大損失(PTまたはPc)。Ta/Tc条件により値が変動することがあるため、輸入申告時は該当表記(Ta=25°Cなど)を資料化してください。
  • 国別8桁/10桁での更なる細分(周波数区分等)がある場合は、各国実行関税表での該当を確認。
  1. 追加で必要な情報
  • 通関国(JP/US/EU等)
  • 実際のパッケージ名(TO-220/TO-126等)
  • 申告書添付予定の資料(データシート版数)有無
  1. 参考資料・出所
  • 2SD1843 データシート(Total power dissipation 1.0Wの記載)(rcscomponents.kiev.ua)
  • Renesas/NEC公開情報(2SD1843 製品説明)(Alldatasheet)
  • HS2022 Chapter 85 抜粋(8541のサブヘディング構成)(wcoomd.org)

この内容で“TO-220汎用パワートランジスタ(1W)”として6桁は確定的に8541.29です。通関国をご提示いただければ、8桁/10桁まで落とし込みます。