現場で日常的に行われるHSコード付番と問題点

現場で日常的に行われるHSコード付番は、多くの場合「業務を回すための便宜的な割り当て」に寄りやすく、GRI(通則)や注に基づく厳密な「分類」とはズレが生じがちです。
しかし本来、HS分類は見出し(項)の文言と部注・類注、そして一般解釈通則に従って行うことが原則であり、部・類・節の表題はあくまで参照便宜にすぎません。
また日本では、通関や統計で一般に用いる番号は「6桁のHSコード(国際共通)+国内細分3桁=9桁」の統計品目番号であり、最初の6桁が各国共通のHSコード、下3桁が日本独自の細分です。

1) 現場でよく見られるHSコード付番パターン

パターンA:相手先提示コードのコピペ採用

  • 見積書・インボイス・仕様書・カタログ等に記載されたHSコードを、そのまま自社の申告や社内マスタに流用するパターン。
  • 「早い・工数ゼロ」という点ではもっとも手軽で、現場では頻出の方法。

問題になりやすい点

  • その番号が「どの国の、何桁体系(HS6桁/各国8~10桁など)」なのかが曖昧になりやすい。
  • HS6桁は国際的に共通でも、最終的な判断権限は輸入国税関にあり、相手先提示の番号がそのまま正解になる保証はない。輸出時相談でも「輸入国のHS番号は輸入国税関の最終判断」と整理されている。

パターンB:社内過去実績・品目マスタの横展開

  • 「前にこの品番で通った番号」「類似品番の番号」を横展開し、社内で番号をそろえるやり方。
  • 会社内の整合性は取りやすく、運用負荷も小さいため、大企業ほど定着しやすい。

問題になりやすい点

  • 元の分類が誤っていた場合、その誤りを大量に再生産してしまう。
  • HS改正や各国統計品目改正の際、統廃合や細分新設が発生してマスタが陳腐化し、気づかないうちに「昔の正解」が「今の誤り」になる。HSは概ね5年ごとに改正が行われている。

パターンC:Web検索・民間DBのキーワード検索頼み

  • 商品名(日本語・英語など)を検索窓に入れ、ヒットした候補から「それっぽい」番号を選ぶ方法。
  • 担当者1人で完結しやすく、スピードは出る。

問題になりやすい点

  • HS分類は「商品名検索ゲーム」ではなく、見出し文言・注・通則に基づく法的ロジックの当てはめであり、検索キーワード一致は分類根拠になりにくい。
  • マーケティング上の商品名と、分類上の本質(材質・機能・用途・加工度等)がズレているケースが多く、名前に引きずられて誤分類しやすい。

パターンD:関税率表を見出しベースで「雰囲気読み」

  • 実行関税率表などで章→類→項→号の見出しを順に眺め、「一番近そうな表現」を選んで決めるパターン。
  • 一見すると「公式資料を使っている」ため、方法としてはもっともらしく見える。

問題になりやすい点

  • 本来は見出し+部注・類注+通則をセットで読む必要があるのに、注や通則を読み飛ばすと誤分類の温床になる。
  • 特に複合材、セット品、未完成品・未組立品などは、通則2・3の論点になることが多く、「名称が近いかどうか」だけでは決まらない。

パターンE:通関業者・フォワーダーへの丸投げ相談

  • 「この貨物、何番になりますか?」と外部業者に尋ね、その回答番号を自社の番号として採用する方法。
  • 実務上は非常に多く、短期的には効率的。

問題になりやすい点

  • 社内に「なぜその番号なのか」という根拠(通則・注の当てはめ)が残らず、税関照会や監査、取引先からの説明要求への耐性が弱い。
  • 担当者や委託先が変わると番号がブレやすく、属人化した分類になりがち。

パターンF:EPA/FTA(特恵)からの“逆算付番”

  • 先に「特恵が取れそうな税番」を探し、その税番に寄せてHSを決めてしまうパターン。
  • あるいは、譲許表など古いHS版を前提とした資料から、現在の税番に無理やりマッピングするケース。

問題になりやすい点

  • EPA/FTAでは関税率も品目別規則もHSベースで規定されるため、HSコードを誤ると適用税率・原産地規則の両方がズレる。
  • 譲許表側のHS版(例:HS2012)と最新の輸入申告用統計番号との間で細分構成が異なり、適切なトランスポジションを行わないと誤判定の原因になる。

パターンG:税関の事前教示(分類)回答の類似事例当て込み

  • 公開されている事前教示回答のデータベースを検索し、自社品に似た貨物の事例から税番を参考にする方法。
  • パターンA~Cよりは、法的根拠に近い情報を参照できる点で一歩前進。

問題になりやすい点

  • 事例と自社品の仕様(材質比率・構造・用途など)が異なると、そのまま適用はできない。
  • 事前教示は「その申請貨物の説明」に基づく判断であり、自社側の商品情報が粗いまま当て込むと、かえって誤分類リスクを高める。

2) 付番が“事故”になる典型ポイント

(1) 「輸入国税関が最終判断」という前提の抜け落ち

  • HS6桁は国際的に共通だが、税率適用や分類の最終判断は各輸入国税関が行うことが、各国の通関案内や解説でも整理されている。
  • 取引先提示やWeb上の番号を「確定番号」と誤解すると、更正・追徴・通関遅延のきっかけになりやすい。

(2) 桁体系の混同(HS6桁・各国10桁・日本9桁)

  • 日本では、HS6桁(号)+国内細分3桁=9桁の統計品目番号が、通関や統計に用いられる標準体系。
  • 他国の10桁コード(例:HTSUS・CNなど)を、日本9桁にそのまま“移植”しようとしたり、6桁止まりのまま社内処理したりすると、国・用途による細分のズレを見逃しやすい。

(3) 根拠(通則・注)の不在と説明責任の弱さ

  • HSの分類原則は、見出しの文言と関連する部注・類注・節注に従い、一般解釈通則を適用して決定することであり、表題はあくまで参照便宜とされる。
  • 「商品名が似ていた」「前回通ったから」という理由だけでは、税関照会・社内監査・取引先への説明の場面で行き詰まりやすい。

(4) 製品情報が不足したまま付番してしまう

  • HSで分岐キーになりやすい情報は、例えば次のようなもの:
    • 材質(混率・主たる材質・被覆の有無など)
    • 用途・機能(どのような機能を持つ機械か、医療用途か否か等)
    • 加工度(原料・半製品・完成品)
    • 構成(セット品・付属品・複合品・複合材)
    • 形態(未完成品、未組立/分解状態)
  • こうした情報が欠けているほど、パターンB(過去流用)やC(検索依存)は誤分類を生みやすくなる。

(5) セット品・複合材・未完成/未組立品で急に難易度が上がる

  • 通則2は未完成品・未組立/分解状態の品目、通則3は複数の見出しにまたがる場合(セット品・複合材など)の分類方法を定めている。
  • このゾーンは名称一致だけでは決まらず、通則の適用順序や「本質的特性(essential character)」の判断が必要になるため、「簡易付番」のロジックが破綻しやすい領域。

(6) HS改正・統計品目改正によるマスタの“サイレント崩壊”

  • HSはWCOで定期的に改正され、それに合わせて各国の関税率表や統計品目表も更新される。
  • 改正を前提にマスタをメンテナンスしないと、「旧版では正しかった番号」が新版では統廃合・再細分により誤りとなり、気づかないまま使われ続ける。

(7) 影響は関税率だけでなくEPA/FTA・原産地規則にも波及

  • 多くのEPA/FTAでは、関税率表および品目別原産地規則がHSコード(通常は6桁)をベースに組み立てられている。
  • HSを誤ると、適用すべき協定税率や原産地規則も誤ることになり、過払いだけでなく特恵否認・追徴といった両方向のリスクが発生しうる。

(8) 「電話・メールで税関に聞いたから安心」という誤解

  • 多くの税関では、口頭(電話)やEメールの照会は参考情報としては尊重されうるものの、拘束力のある判断とは位置付けられていない一方、書面による事前教示等は一定期間、税関側が尊重する制度として整備されている。
  • 「電話で聞いたから大丈夫」と根拠を残さず付番してしまうと、後日の更正・争訟の場面で防御力が弱くなる。

HS Code Finder(HSCF)

HSコード分類は、関税率の確認だけでは終わりません。EPA/FTAの適用可否、原産地規則、輸入規制、通関の追加照会。番号を一つ誤るだけで、時間もコストも一気に膨らみます。

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期待できる効果
・候補探索の時間を大幅に圧縮
・担当者ごとの判断差を抑え、分類の再現性を向上
・税関照会や監査に備えた論点整理を効率化
・外部専門家への相談を、前提が整った状態でスムーズに