写真だけの“無茶ぶりデモ”で、HSCFが本気を出した日

先日、自動車部品関連の会社へ伺い、HSCFのデモを実施してきました。
会場の空気は終始なごやか。雑談もはさみながら、肩の力を抜いてスタート……のはずが、いきなり飛んできたのは、HSCFにとってかなり手強いお題でした。

今回の条件はシンプル、しかし苛烈。
文字情報はゼロ。写真だけ。

お題その1:断面写真、ぱっと見は「お菓子」

一つ目は断面を写した写真。
一瞥すると、正直「これ、お菓子じゃない?」と思っても不思議じゃない見た目。
材料も用途も書かれていない。ここからHSコードの方向性を掴むのは、人間でも悩むやつです。

お題その2:粉末の小山、何にでも見える

二つ目は粉末が小山になった写真。
砂?顔料?金属粉?樹脂?鉱物?
見る人の想像力に合わせて姿を変える、まさに“正体不明”。

「これは厳しい」からの、トライアル開始

思わず口から出たのは、
「これは厳しいですね……」
という率直なひと言。

でも、だからこそやってみる価値がある。
そのままトライアルを開始しました。

結果は、100%の正解ではありませんでした。
ただ、出てきた答えは驚くほど近い。

その瞬間、お客さまの表情が変わりました。
「え、そこまで行くんですか」
という驚きが、空気にスッと混ざる感じ。あれは忘れられません。

追加情報で確度90%へ。到達が早いのは正義

さらに、追加の情報を入力して条件を補強。
すると、確度90%まで一気に到達しました。

この「答えにたどり着くまでの時間が短い」ことが、実務では本当に効きます。
迷いの時間が減る。社内確認の回転が速くなる。次の作業にすぐ移れる。
このスピード感は、デモの場でもはっきり体感できました。

観察眼が鋭い。写真から“消去法”で絞り込む力

特に印象的だったのが、観察にもとづく絞り込みです。例えば、

「金属粉末特有の強い光沢や、片状黒鉛の反射は見られない。」

こうした見立てが入ると、候補が一気に狭まります。
写真だけという不利な条件でも、見える特徴から外せる選択肢を外していく。
この“静かな推理”が効いてくるのは、なかなか痛快でした。

まとめ:難題でこそ見える、HSCFの実力

今回のデモは、いわば写真だけの無茶ぶりテスト。
それでもHSCFは、かなり近い答えを返し、追加情報で確度90%まで短時間で到達しました。

現場で感じたのは、これです。
難しいからこそ、価値が浮かび上がる。
そして、答えに近づくスピードは、実務を前に進める力になる。

次は、もう一段“意地悪”な課題でも試してみたくなりました。

日本の通関実務におけるパラダイムシフト:HSコード分類根拠書の電子提出推奨がもたらす未来


2026.01.29 | 貿易実務・通関

2026年1月26日、日本の貿易実務において、静かですが極めて重要な変革が始まりました。財務省関税局が、輸入申告時におけるHSコード分類根拠書(通称:ドシエ)の電子的な添付を、強く推奨する運用方針を打ち出したのです。

これまで、輸入申告におけるHSコードの決定プロセスは、企業のブラックボックスの中にありました。税関への申告は結果としての数字(コード)を伝えるだけで、なぜその数字を選んだのかという理由まで求められることは稀でした。しかし、今回の新しい運用は、その慣習を過去のものにしようとしています。

本記事では、このニュースが示唆する税関の意図と、ビジネスマンが今すぐ取るべき対応策について深掘りします。

デジタル時代の通関はプロセス重視へ

今回、税関が推奨を開始したドシエの電子提出とは、単にHSコードを入力するだけでなく、そのコードを選定した論理的な根拠を示した文書を、API連携やシステムを通じてデジタルデータとして添付することを指します。

従来のアナログな書類提出とは異なり、データとして提出することで、税関の審査システムが自動的に内容を解析できる点が画期的です。

なぜ税関はこのようなデータを求めているのでしょうか。最大の理由は、サプライチェーンの複雑化と製品の高度化です。一見しただけでは分類が困難な物品が増える中で、税関職員がゼロから審査を行うコストは限界に達しています。そこで、輸入者側からあらかじめ正解への道筋を提示してもらい、審査を効率化したいという狙いがあります。

分類根拠書(ドシエ)に記載すべき3つの要素

では、具体的にどのようなデータを準備すればよいのでしょうか。税関が期待するドシエには、主に以下の3つの要素が含まれている必要があります。

第一に、製品の客観的な仕様です。

カタログのコピーだけでは不十分です。材質の構成比率、主要な機能、使用用途など、分類の決め手となるスペックを明確に整理する必要があります。

第二に、法的根拠の引用です。

これが最も重要です。単にパソコンだからという理由ではなく、関税率表の解釈に関する通則1に基づき、第84類の注5(E)を適用した結果といったように、関税法上のルール(通則、部注、類注)を引用して論理を構成します。

第三に、参考とした先例です。

過去の事前教示回答事例や、世界税関機構(WCO)の解説書、あるいは類似品に関する他国の分類事例などを記載することで、自社の判断が客観的なものであることを証明します。

企業にとってのメリット:防御から攻撃への転換

一見すると事務負担が増えるだけの施策に見えますが、戦略的な実務担当者にとっては、これは自社を守る強力な武器になります。メリットは大きく分けて二つあります。

一つ目は、通関スピードの劇的な向上です。

ドシエによって分類の根拠が明確に示されていれば、税関のAI審査や検査官が疑義を抱く余地が少なくなります。今回の新運用では、ドシエが添付された申告は審査の優先順位が上がるとされており、結果として貨物が止められることなくスムーズに許可される確率が高まります。

二つ目は、事後調査におけるリスク低減です。

これが最も重要な点です。もし万が一、申告したHSコードが誤りだったとしても、事前にしっかりとした根拠書を提出していれば、企業側には正当な注意義務を果たしたという証拠が残ります。これにより、悪質な虚偽申告や重加算税の対象となるリスクを回避し、単なる修正申告で済む可能性が高まります。つまり、ドシエは企業にとっての保険として機能するのです。

テクノロジーによる自動化が鍵

とはいえ、すべての輸入案件で詳細なドシエを人間が手書きで作成するのは現実的ではありません。今回のニュースの肝は、これを電子提出(API連携)で推奨している点にあります。

製品データを入力すれば、該当する法的根拠を引用し、論理構成まで含めたドシエを自動生成し、そのまま通関システムへ連携できるAIツールの活用が、これからのスタンダードになるでしょう。人間はAIが作った論理を最終確認するだけで済むようになれば、負担を増やさずにコンプライアンスレベルを最高水準に引き上げることが可能です。

まとめ

2026年1月26日は、日本の通関が結果主義からプロセス重視へと舵を切った日として記憶されるかもしれません。

税関からのメッセージは明確です。「あなたの会社の論理をデジタルで見せてください」。この問いかけに対し、テクノロジーを活用してしっかりとしたドシエで応えられる企業だけが、通関トラブルとは無縁のホワイトな物流を実現できるのです。変化を恐れず、根拠ある申告を武器にビジネスを加速させていきましょう。