【WCO改正解説】センサー・半導体の「境界」が変わる

──「用途」から「構造」判定への実務的転換と、企業が取るべき対応

センサーと半導体は、いまや自動車から産業機械、家電、医療機器に至るまで、あらゆる製品の中核部品です。しかし、貿易実務の現場では、その技術的進化ゆえに分類の境界線が曖昧になっています。

「機能はセンサー(測定)だから第90類ではないか?」「いや、構造は集積回路(IC)そのものだから第85類ではないか?」──こうした解釈の揺れは、国や担当官によって判断が分かれる大きなリスク要因となっていました。

この問題に対し、WCO(世界税関機構)のHS委員会は、分類意見(Classification Opinions)を通じて明確な判断基準を打ち出しています。特に第73回HS委員会(2024年3月)で採択された決定は、センサーと半導体の境界線に新たな「構造重視」のルールを確定させる重要な転換点となりました。

本稿では、この決定が実務に与える影響と、企業がいま講じるべき対策について解説します。


1. 何が決まったのか? センサー内蔵ICは「85.42」へ

今回、実務への影響が特に大きいのは、以下の製品群が第90類(計測機器等)ではなく、明確に**「電子集積回路(HS 85.42)」**として分類整理された点です。

WCO分類意見の要点(代表例)

対象製品のイメージWCO分類 (HS)実務上のポイント
複数のスイッチ機能(複数ダイ)を1パッケージに内蔵するIC
(例:モータドライバ等)
8542.39用途がモータ駆動であっても、構造が「マルチチップIC」の定義に合致すれば85.42を優先。
2つのセンサーダイを同一パッケージに封止したホールセンサーIC
(角度・位置検出用)
8542.39「角度・位置の検出(測定)」という用途があっても、ICとしての一体性・構造要件を重視し、第90類を排除。

これらの決定において、WCOは一般解釈規則(GIR)1および6に加え、**第85類注12(b)(iii)(マルチチップ集積回路の定義)を根拠としています。 特にホールセンサーICの事例は、「測定機能を持つものは第90類」という従来の直感的な判断を覆し、「構造がICであれば第85類」**という原則を強く印象づけるものとなりました。

2. WCOが示した判断軸:機能ではなく「構造と一体性」

今回の分類意見が企業に示唆しているのは、「争点になりやすい『用途』よりも、まず『構造』を見よ」というメッセージです。

分類意見で重視された構造要件

  • 複数ダイ(または機能ブロック)の集積: 複数のダイが1つのパッケージに収められていること。
  • 受動・能動素子の不在: マルチチップICの場合、ダイ以外の追加回路要素(個別のコンデンサや抵抗等)が含まれていないこと。
  • 不可分な一体性: ダイ製造およびパッケージングの時点で、物理的に一体化されていること。

【重要な注意点:相互接続の解釈】

実務上、「ダイ同士が直接ワイヤで繋がっていない(電気的に相互接続されていない)なら、マルチチップICの定義(注12(b)(iii))に当たらないのでは?」と判断し、第90類へ分類してしまうケースが見受けられます。

しかし、WCOの判断はこれとは異なります。ダイ同士が直接接続されていなくても、リードフレームやパッケージ配線を介して機能的に結合(相互接続)していれば、マルチチップICの要件を満たすと解釈されます。

つまり、見た目の配線にとらわれず、「パッケージ全体として一つのICとして機能しているか」という構造的一体性が、分類の決定打となるのです。

3. 法的根拠:第85類注12が持つ「強制力」

この線引きを支えているのが、関税定率法(HS条約)における第85類注12の規定です。

注12は、半導体デバイス(85.41)と電子集積回路(85.42)を定義すると同時に、以下の強力な優先ルールを定めています。

「この注に規定する物品については、第85.41項及び第85.42項は、この表の他のいずれの項(第85.23項を除く。)よりも優先する。」

つまり、ある製品が「センサー」としての機能を持ち(第90類)、同時に「集積回路」の構造定義(第85類注12)も満たす場合、HS条約は「第85類(半導体/IC)に分類せよ」と強制しているのです。

今回のWCOの決定は、この原則をセンサーIC等の「境界領域」の製品に厳格に適用した結果と言えます。

4. 企業への影響:分類ブレ=経営リスク

この解釈更新を単なる「コード変更」と捉えるのは危険です。不正確な分類が引き起こす「不確実性コスト」は、関税率の差以上にビジネスを圧迫します。

  • 通関遅延・追加照会: 構造説明が不十分で「センサー(90類)では?」と疑義を持たれ、貨物が止まる。
  • 事後調査での否認: 過去に遡って過少申告を指摘され、加算税・延滞税が発生する。
  • FTA/EPA適用の崩壊: HSコードが変わることで、原産地規則(CTC要件など)を満たさなくなり、関税ゼロの特典を失う。
  • システム修正の負担: 品目マスタ、ERP、輸出入システムの改修コスト。

WCOの判断が出たからといって、世界中の税関が即座に運用を統一するわけではありません。だからこそ、企業側が論理的な説明(Defense File)を用意しておく必要があります。

5. 実務チェックリスト:いま着手すべき5つのアクション

  1. 対象品目の棚卸し(Inventory)センサーIC、MEMS、モータドライバ、パワーモジュールなど、境界領域にあるSKUを抽出。現行のHS採番理由が「用途」寄りになっていないか再点検します。
  2. 「構造」を証明する技術資料の整備単なるスペックシート(機能説明)では不十分です。パッケージ内部構造、ダイの枚数・構成、リードフレームとの接続、追加部品の有無を図解できる資料(Cross-section図など)を準備します。今回のWCO判断において、勝負を決めるのはこの情報です。
  3. 製品記述(Description)の標準化インボイスやマスタ品名において、「Sensor」という単語を強調しすぎると誤解を招きます。「Integrated Circuit (Dual die Hall sensor type)」のように、構造(IC)を主語にした記述へ統一することを推奨します。
  4. 重点国での事前教示(Advance Ruling)主要な輸出入国において、今回のWCO判断が浸透しているかを確認し、リスクが高い場合は事前教示制度を利用して分類を確定させます。
  5. 変更管理(Change Management)の制度化設計変更やサプライヤ変更により、1ダイから2ダイへ、あるいは受動部品の内蔵有無が変わると、HSコードも変わる可能性があります。設計変更通知(PCN)とHS分類部門が連動する仕組み作りが不可欠です。

まとめと今後の見通し

WCOのHS委員会は、継続的にこの領域の整備を進めています。直近の第76回会合(2025年9月)に続き、次回第77回会合(2026年3月予定)でも新たな分類議論が行われる見込みです。この領域は「一度決めたら終わり」ではなく、「技術進化に合わせて更新され続ける」テーマです。

今回のWCOのメッセージは明確です。「迷ったら構造を見よ」。

特にセンサー機能を内包するデバイスについては、用途ではなく**構造(ICの定義合致性)**で85.42に整理する流れが確定しました。

経営層および実務責任者は、これを機に対象品目の棚卸しを行い、税関に対して「構造」を正しく説明できる体制(技術資料とロジックの整備)への投資を急ぐべきです。それが、無用なサプライチェーンの混乱を防ぐ最善策となります。

HSコードは番号から説明責任へ:ドシエの必要性が強く推奨される

HSコードは、正しい番号を当てるだけの業務ではなくなりつつあります。製品が高度化し、機能や用途が複合化するほど、分類の論点は増え、判断の揺らぎも起きやすくなります。だからこそ近年は、結論としてのHSコードに加えて、その結論に至った根拠をどれだけ明確に示せるかが、通関スピードや事後対応の負担を左右する局面が増えています。

この流れの中で注目されているのが、HSコード分類根拠書、いわゆるドシエです。ドシエは追加の書類ではありません。経営の視点でいえば、通関停滞、追加照会、事後調査、再分類といった不確実性を下げ、サプライチェーンの時間とコストを安定させるための説明責任インフラです。

税関がドシエを推奨する理由

税関がドシエを重視する背景は、実務上の必要性に集約されます。
第一に、審査を速く正確に進めるためです。仕様や用途の情報が不足すると、税関は照会を増やして確認せざるを得ません。最初から仕様と根拠が整理されていれば、審査の起点が共有され、照会の往復が減り、結果として通関が速くなります。

第二に、判断の一貫性を高めるためです。人や部署、時期によって解釈のブレが出やすい領域ほど、事実と根拠を文書化しておくことで、同じ判断を再現しやすくなります。

第三に、事後調査や紛争のコストを抑えるためです。過去にどんな事実認定をし、どの根拠で結論に至ったかが整理されている企業ほど、説明が短期間で済み、修正が必要な場合でも影響範囲の特定が速くなります。

ドシエに入れるべき中身

ドシエの目的は、難しい文章を書くことではなく、事実と論理を一体で提示できる状態を作ることです。基本の骨格は次のとおりです。

  1. 製品の客観仕様
    材質、構造、機能、用途、製造工程、構成部品、型番体系、性能値など
  2. 証拠資料
    仕様書、図面、写真、カタログ、取扱説明書、SDS、分析成績、工程表など
  3. 候補コードと除外理由
    なぜそのコードで、なぜ他の候補ではないのか。境目となる条件は何か
  4. 法的根拠
    解釈に関する通則、部注・類注、関連する参考資料や先例など

この構造を揃えるだけで、社内承認の速度も、対外説明の再現性も大きく変わります。

ドシエで使うべき言語

ここは輸入と輸出で考え方を分けるのが現実的です。

日本に輸入する場合

日本の税関対応を前提にするなら、日本語で要点が整理されていることが最も有利です。理由は単純で、誤解が減り、照会が短くなりやすいからです。外国語の資料が添付されること自体は珍しくありませんが、少なくとも要点と論点は日本語で押さえておくほうが、結果として通関が安定します。

輸出する場合

輸出側のドシエは、英語が事実上必須になる場面が多いです。相手国の通関関係者、輸入者、通関業者、保税倉庫、監査担当など、関与者が国境を越えて増えるため、共通言語として英語が標準になりやすいからです。
加えて、輸出では自社だけで完結しません。相手先が輸入申告を行う国では、分類の説明責任は輸入者側に置かれるのが一般的です。輸入者が説明できなければ、結果として貨物は止まり、追加照会や保留が発生します。このとき、英語で整理されたドシエがあるかどうかが、輸入者の対応力と通関スピードを左右します。

なお、相手国によっては英語だけで十分とは限らず、現地語の補足が有効な場合もあります。現実解としては、次の二段構えが運用しやすいです。
・社内の正本として日本語版を整備し、意思決定と統制を固める
・対外共有用として英語版を整備し、輸入者や海外拠点と同じ論点で会話できる状態を作る

ここでHSCFが有益になるポイント

ドシエ運用のボトルネックは、知識不足よりも、情報収集と論点整理と文書化です。HSCFが効くのはまさにこの部分です。

  1. 証拠の回収を速くする
    写真、PDF、仕様書など、現場に散らばる材料を起点に検討を始められると、ドシエの土台作りが前に進みます。
  2. 不足情報を対話で特定し、抜けを減らす
    分類が割れる多くの原因は、必要な仕様が欠けていることです。追加確認すべきポイントを早い段階で洗い出せれば、照会されやすい穴を先回りして塞げます。
  3. 候補と分岐点を明示し、除外理由を作りやすくする
    ドシエで最も価値が出るのは、なぜ他のコードではないかの説明です。候補の並列提示と論点の切り分けができると、除外理由が短時間で固まります。
  4. 日英の併用運用に向く
    輸入は日本語、輸出は英語という二重運用は、理屈は正しくても現場負担が重くなりがちです。HSCFを活用して、日本語で統制を固めながら、英語の対外共有版も同じ骨格で整える運用にできると、スピードと再現性が両立します。用語や表現のブレを抑えられることも、海外とのコミュニケーションでは効いてきます。

まとめ

ドシエが重視されるのは、分類の正しさだけでなく、説明可能性が通関速度とコストを左右するからです。税関側にとっても、企業側にとっても、審査の起点となる情報と論理を共有できることが、最大の合理化になります。

そして言語は、輸入は日本語での明確化、輸出は英語での対外共有が鍵になります。輸出では英語のドシエがあるかどうかが、相手国側の通関を動かす実務上の決め手になり得ます。
この二重運用を現場で回すための加速装置として、証拠収集、論点整理、候補比較、文書化を一気通貫で支援できるHSCFは、有益な選択肢になります。

日本の通関実務が変わる日。税関が推奨する「HSコード分類根拠書」とは何か

2026年1月26日、日本の貿易実務において静かですが重要な変化がありました。財務省関税局は、輸入申告に際し「HSコード分類根拠書(通称:ドシエ)」の任意提出を一層積極的に推奨する方針を示しました。

これまでHSコードの決定過程は企業内部の判断に委ねられ、税関には「結論としてのコード」だけが申告されるのが一般的でした。ところが今後は、そのコードを選定した論理的根拠の提示が求められる方向に動いています。これは形式的な申告から、説明責任を伴う判断型の通関へと移行する兆しです。


数字だけでなく「ロジック」を問われる時代へ

税関が推奨するのは、単なるHSコード入力ではなく、それを選定した過程と法的根拠をまとめた文書の添付です。典型的なドシエには以下の内容が含まれます。

  • 製品の客観的な仕様(材質、機能、用途)
  • 検討したHSコードの候補と除外理由
  • 適用した法的根拠(関税率表の解釈に関する通則、類注・部注)
  • 参照した過去の事前教示やWCO分類意見など

税関がこのような詳細情報を求める背景には、製品の多様化・AI技術の進展があります。複雑化する貨物を短時間で正確に分類するためには、輸入者自身による「論理の見える化」が不可欠になっています。つまり、税関と企業が同じ視点で審査の起点を共有する仕組みづくりが進んでいるのです。


企業にとってのメリット:防御から戦略へ

一見すると事務負担が増える施策に見えますが、実は企業に大きな利点があります。

  1. 通関の迅速化。
    ドシエによって判断の根拠が明確になれば、審査時に疑義が生じる可能性が下がり、貨物滞留リスクを減らせます。
  2. 事後調査リスクの軽減。
    万一HSコードが誤っていたとしても、合理的な根拠を提出していれば、企業は「正当な注意義務(Reasonable Care)」を果たしたと評価され得ます。これにより、重加算税などの厳罰を回避し、修正申告で済む場合が増えるでしょう。

このようにドシエは、単なる説明書ではなく企業を守る保険であり、同時に通関精度を高める経営戦略ツールでもあります。


「なんとなく分類」からの脱却

これまで多くの現場では、「前回と同じ」「仕入先からそう言われた」といった慣習的判断に頼る傾向がありました。税関の今回の方針転換は、そうした「前例主義」からの脱却を意味します。今後の優秀な貿易担当者には、合理的根拠を文書化できる力が不可欠になります。HSコードの知識だけでなく、「なぜそのコードなのか」を説明できる論理構成力が問われる時代に入りました。


AIとテクノロジーがカギを握る

すべての申告で人手による詳細なドシエ作成を行うのは非現実的です。そこで注目されるのがAIや専門システムの活用です。
商品仕様を入力するだけで、関連通則・類注を自動抽出し、分類根拠を論理的に組み立てるAIツールも登場しています。企業はこうした技術を導入することで、人の判断を強化しつつ業務負担を抑え、コンプライアンスの精度を高めることが可能になります。


まとめ

2026年1月26日は、日本の通関実務が「結果主義」から「プロセス重視」へと舵を切った節目となるかもしれません。
税関のメッセージは明快です。――「あなたの会社の論理を示してください」。

この要求に根拠あるドシエで応えられる企業こそが、通関トラブルの少ない持続的な貿易を実現し、ホワイトな物流体制を築くことができるでしょう。

変化を恐れず、根拠を武器に。新しい通関の時代が、すでに始まっています。

韓国:「品目分類変更告示」(2026年1月22日)の実務ポイント

2026年1月22日、韓国関税庁(Korea Customs Service)は、2025年12月16日に開催された「第8回 品目分類委員会」の審議結果(9件)を反映した「輸出入物品等に対する品目分類変更告示」の改正内容を官報に掲載したと公表しました。
この種の告示は、韓国向け輸出入に関わる企業にとって、関税率だけでなく、FTA適用や申告実務(品目マスタ、通関指示、事後修正の要否)に直接影響します。


1. 今回の改正で何が起きたか

今回のポイントは、韓国での品目分類の取り扱いについて、品目分類委員会の決定を通じて解釈が明確化され、その内容が告示改正という形で公式ルールに組み込まれた、という位置付けです。
同じ製品であっても、分類の変更や整理が行われると、次のような要素が連鎖的に変わり得ます。

  • 適用関税率(基本税率、WTO譲許税率、協定税率など)
  • FTAの原産地規則における判定起点(HSベースのCTC基準など)
  • 輸入側での審査観点(補足資料要求、差し止め、事後調査リスクなど)

公表された9件のうち、実務的に象徴性が高い事例として、冷凍水産品と情報機器関連品の分類が説明されています(以下では代表的な論点として整理)。


2. 注目すべき分類事例

事例A:冷凍「チュクミ(주꾸미)」の扱い

争点は、「国際的な学名(属名)の変更が、HS上の分類変更を当然に意味するのか」という点です。
HS2017・HS2022体系では、タコ類は一般に「0307.52 Octopus (Octopus spp.), frozen」に分類されており、コードの構造自体は属の学名変更に直接連動しない形で設計されています。

韓国税関は、学名の変更は生物分類学上の名称変更にとどまり、HS体系の構造やコードの範囲が自動的に変わるものではない、という考え方に立ち、タコ類としての取扱いを維持する判断を示しています(具体の10桁分類「0307.52-3000」自体は韓国の細分コードであり、国際HSでは6桁までである点に注意が必要です)。
実務的には、韓国・ASEANはじめ各FTAで、同じHSコードに属するか否かにより関税率(0%か、そうでないか)が分かれる場合があり、この判断は輸入者・輸出者双方にとって影響が大きいテーマです。

また、韓国関税庁はこのような学名変更とHS分類の関係について、世界税関機構(WCO)の場で整理を進める姿勢を示しており、将来的な国際的ガイダンス整備につながる可能性があります。

事例B:CPUクーラー(液冷+ファン等の複合品)の扱い

CPU冷却用の装置(ラジエーター、ポンプ、チューブ、冷却ヘッド、ファン等で構成された液冷クーラーなど)について、「単なるファン(HS第84.14項)」や「一般的な冷却機器(HS第84.19項)」としてではなく、「自動データ処理機器用の部品(HS第84.73項)」として整理した点が重要です。

理由としては、次のような事情が総合的に評価されたと説明されています。

  • 複数の構成要素が一体となってCPU冷却という単一の機能を果たしている点(複合品としての一体性)
  • コンピュータ(自動データ処理機器)に専用、または主として使用される点(用途の専用性)

このような判断は、WCO解釈通則の「機能の一体性」や「特定用途向け部品」の考え方とも整合的であり、韓国としてコンピュータ関連部品の分類を整理していく流れの一端と位置付けられます。


2事例をビジネス視点で整理

実務上の示唆を、争点・結論・企業側の着眼点という切り口で整理すると、次のようになります(以下の表のコメント部分は筆者による実務的解釈です)。

対象争点韓国側の結論・方向性(要約)企業への示唆(実務的な解釈)
冷凍チュクミ(タコ類)学名(属名)の変更がHS分類を動かすか学名の変更それ自体ではHSの分類範囲は自動的には変わらない。タコ類としての分類を維持する方向。商品説明を生物分類上の名称だけに頼り過ぎず、実際の形態・用途・通関上の既存取扱いとの整合を確認する。FTA税率差の有無も含め、韓国側の分類と社内マスタを合わせる必要。
CPUクーラー(液冷+ファン等の複合品)ファン(8414)か、冷却機器(8419)か、それともコンピュータ部品(8473)か複数部材が一体となってCPU冷却という単一機能を果たし、かつコンピュータに専用または主として使用されることから、コンピュータ部品側(8473)に整理。構成部材の「寄せ集め説明」ではなく、用途の専用性と機能の統合性を文書で示す。写真・構成図・取付先機器等を整理し、「一般用ファン」や「汎用冷却装置」とは異なることを根拠立てる。

3. 日本企業が取るべき実務アクション

ここからは、日本企業が自社の業務フローにどう落とし込むかという視点で整理します。

アクション1:該当可能性のある品目の棚卸し

  • 韓国向け出荷品のうち、食品(水産物)、PC部材、冷却・電装周辺品など、今回の事例に類似性が高い分野を優先的に抽出する。
  • インボイス記載HS(6桁)と、韓国側申告コード(10桁)の間でズレが生じやすい品目(生物名ベースの品目、複合機能品など)を重点的に確認する。

アクション2:品目マスタと通関指示書の更新

  • 社内の輸出用HSマスタ(6桁・必要に応じて9桁)と、韓国輸入者側で使用される10桁コード体系を、定期的に照合しながら管理する。
  • 過去に韓国向け輸出実績がある品目については、分類根拠を1枚の説明資料(根拠シート)に整理しておくと有効です(例:
    製品概要、構成要素、主要用途、写真・図面、カタログ抜粋、取付先機器、比較候補コード(なぜ他の号ではないか)など)。

アクション3:不確実な品目は事前照会ルートを活用

韓国税関は、品目分類の不確実性を減らすための事前審査制度を運用しており、UNIPASS(韓国の通関電子申告システム)上で申請が可能と案内しています。
また、2026年1月2日施行の制度改正では、一定条件下で不足税額に対する加算税(不誠実申告加算税)の減免が認められるケースにも言及されており、輸入後に修正が生じ得る業種ほど、社内での修正手順と期限管理のルールをあらかじめ設計しておく価値があります。


4. 実務上の意味合いと今後の活用

今回の「品目分類変更告示(2026年1月22日)」は、単なる個別事例の紹介にとどまらず、韓国が品目分類の予測可能性を高めつつ、WCOとの整合も意識して運用をアップデートしているシグナルといえます。
日本企業としては、影響が出やすい品目から優先度を付け、韓国側の分類ロジックに沿った形で根拠書類の整備と品目マスタ更新を進めることが、最も効率的な対応策となります。

HSCF: 付番トライアル010:JRで見つけたハイテク・コインロッカー

家に帰る途中でJRの駅で見つけたコインロッカーで試してみました。

判定に使った写真

  • 品名/用途:—(画像のみ)
  • 材質:—
  • 構成・セット:—
  • 電気性・測定/通信:—
  • 寸法・仕様値:—
  • 型番・画像:画像1枚(IMG_5034.JPG)
  • 通関国・前提:—

1) 結論

  • 推定HS(6桁):9403.20(その他の金属製の家具)
  • 国別例示(任意):
    • JP:9403.20-000(その他の金属製の家具)
    • US:9403.20.00(Other metal furniture)
    • EU:9403 20 80(Other metal furniture)
  • 要約:駅等で使われるコインロッカーは、本質が「荷物を一時保管するロッカー=家具」。支払い・電子解錠部は従属機能のため、第94.03項の金属製家具(9403.20)に分類が妥当。
  • 確度(%):85%

2) 根拠

  • 適用通則・注(例:GRI 1, 3(b), 6、類注・部注):
    項・注の文言を優先(GRI 1)、複合物品は主たる性質で決定(GRI 3(b))、号レベルは同水準比較(GRI 6)。本品は「収納家具」として把握し、附属の電子端末は主機能を変えないため家具の号へ帰着。
  • 判定ポイント(主用途、主要材質、機能、構成、セット該当性 等):
    • 主用途:利用者の手荷物を一時保管するロッカー群=家具用途が支配的。
    • 主要材質:外装・仕切りは金属(画像から一般的に推測可能)。
    • 機能:タッチパネル・投貨/IC読取は施錠管理の附属装置。物品全体の主たる性質は収納にある(GRI 3(b))。
    • 構成:多数扉のロッカー+集中操作盤の一体設備。小売用セットではなく、単一設備として提示される想定。
  • 仮定(入力不足を補う前提):
    金属筐体・屋内据付、耐火金庫等の「装甲仕様」ではない、決済は硬貨/IC等の電子制御…(いずれも画像から合理的に想定)。
  • 排他・除外の理由(他の類・項ではない理由):
    • 83.03(8303.00:金庫・強化金庫等):対象は装甲・強化構造の金庫類や金庫室用保管箱。一般的なコインロッカーはそこまでの防護を目的とせず、収納家具に該当。
    • 84.76(自動販売機等):商品を販売・払出す機械。ロッカーは「収納の賃貸」であり払出機構の主機能を持たないため不適。
    • 84.79(他の個別機能機械):家具として特定できるため包括項は使わない(GRI 1優先)。
  • 型番・画像(観察メモ):
    • 画像A(全体):ロッカー列と集中端末、各扉の取手・表示灯が見える=収納家具の構成が明確。
    • 画像B(操作部):タッチパネル、投貨口/IC読取、券口等=施錠管理の附属機構。
    • 画像C(扉部):個別扉・電子ラッチ・表示灯=収納機能が主。

3) 候補比較

候補HS理由(該当可能性)棄却理由確度%
9403.20金属製ロッカー=家具。電子決済・解錠は従属機能。85
8303.00金庫・強化金庫・金庫室用保管箱(ベースメタル製)。一般的コインロッカーは装甲金庫ではなく銀行保管箱でもない。10
8476.89自動販売機(その他)。商品払出し機能を有さず、主機能は収納家具。5

4) 争点・注意

  • 装甲・耐火・耐工具等の仕様(扉厚・鋼板・UL/EN規格)を満たす場合は83.03の可能性が生じうる。
  • ロッカー部と端末を別送する場合:通則2(a)/3(b)・16部注等の適用関係に留意し、単体品は性質に応じて別分類(端末単体は85類相当の可能性)。
  • 据付(アンカー固定)か可搬かで国内統計細分の切り分けが変わることがある。

5) 追加で必要な情報

  • 材質・構造:板厚、補強・耐火・耐工具の有無(83.03との境界判定の核心)。
  • 端末仕様:決済方式(硬貨/IC/QR等)、通信・遠隔管理の有無。
  • 輸入形態:完成一体か、ロッカー部と端末部の別送か。
  • 据付方法:アンカー固定、壁面固定の有無。

6) 参考資料・出所

  • 関税率表の解釈に関する通則(GRI 1, 3(b), 6)。
  • 関税率表解説(第94類家具・第83.03 金庫等の範囲)。
  • 税関・講習資料/分類の基礎(複合物品の主たる性質、実務留意点)。
  • HS商品インデックス(日本関税協会)。

補足:本回答は画像に基づく推定であり、仕様確認により最終分類が変動し得ます(特に83.03との境界)。必要なら、仕様書・構造図(板厚・耐火性能・施錠ユニット)をご提示ください。

HS 2028「最終合意」とデジタル製品・サービス区分が、実務に突きつけるもの


2026年1月21日、世界税関機構(WCO)はHS 2028改正(Harmonized System 2028)の改正パッケージが受け入れられたことを公表しました。発効は2028年1月1日。つまり、各国が国内制度や通関システム、統計、企業のマスタデータを切り替えるための実装期間が、いま明確にスタートした形です。 (世界関税機関)

一方で、企業の現場感として最も悩ましいのが、デジタル製品とデジタルサービスの区分です。モノとして国境を越えるのか、データとして越えるのか。単体販売なのか、ハードとサブスクが束ねられているのか。こうした論点は、HSという制度の外側にまで波及します。

この記事では、HS 2028の「最終合意」が何を意味し、なぜいま「デジタル製品・サービスの区分」が企業課題として深刻化するのかを、ビジネス実務の観点で掘り下げます。


1. まず押さえる:HS 2028で何が「最終合意」したのか

HS 2028は、第7次見直しサイクルの成果です。このサイクルは通常より長く、2019年7月から2025年6月までの6年間に延長されました。コロナ禍の影響で議論を完結させるために例外的に延長された、という位置づけです。 (世界関税機関)

その上で、2025年3月(10日から21日)に開催されたHS委員会(HSC)第75回会合で、HS 2028を構成する改正勧告(Article 16 Recommendation)が暫定採択され、「すべての交渉が完了した」とWCOが明記しています。ここで言う「最終合意」は、技術交渉としての決着、という意味合いが強い。 (世界関税機関)

そして2026年1月、WCOはHS 2028改正が受け入れられたと発表しました。改正は299セット、HS 2022比で見出し(headings)数や小見出し(subheadings)数が増減し、新設や削除も行われています。発効は2028年1月1日で、残り2年の実装期間に入った、という説明も併記されています。 (世界関税機関)

この「2年」は、制度側だけでなく企業側にも重い意味を持ちます。HSは関税率だけの話ではなく、輸入規制、統計、FTA原産地判定の入口、社内の品目マスタのキーになっていることが多いからです。


2. HS 2028の改正思想は「政策目的を帯びた可視化」

HS 2028の特徴は、貿易実務の利便性だけでなく、政策目的に直結する可視化を強めている点です。WCOは、改正が「世界的な優先課題と貿易の変化」に適応するものだと位置づけ、特に公衆衛生と環境を強く打ち出しています。 (世界関税機関)

例として分かりやすいのが、ワクチンとプラスチックです。

ワクチンについては、HS 2028で新たな見出しの枠組みを導入し、人用ワクチンとその他(動物用を含む)を分け、より詳細な分類を可能にする方向が示されています。WCOの説明では、従来30.02に含まれていたものを30.07(人用ワクチン)と30.08(その他のワクチン)に再編する構造が明確に書かれています。 (世界関税機関)
WTO側も、HS 2028の改正がワクチン等の分類の改善に繋がる点をニュースで取り上げています。 (WTO)

プラスチックについては、バーゼル条約との整合を意識して、プラスチック廃棄物の分類を再編し、有害性やPIC(事前通報・同意)対象かどうか等を識別しやすくする、とWCOは説明しています。さらに「単回使用(single-use)」という概念を法的注として明示し、分類の一貫性やデータ精度、政策実装を支えるとしています。 (世界関税機関)

ここまで読むと、HS 2028はデジタル製品やサービスにも同じ発想で踏み込むのでは、と思うかもしれません。ところが実際には、ここにHSの構造的な限界が出てきます。


3. ここが本題:HSは物品分類であり、デジタル取引の核心はしばしばHSの外にある

HSはあくまで「物品」を分類する体系です。つまり、国境を越える対象が「モノ」ならHSが中心に来る。しかし、デジタル経済では、価値の中核が「データの送信」や「利用権」「クラウド上の機能提供」に移りやすい。

このとき問題になるのが、電子送信されるデジタル製品を財(goods)と見るのか、サービス(services)と見るのか、という整理です。WCOの文書でも、電子送信される製品が財かサービスかの性格付けは、例えば電子書籍、ソフトウェア、映画、雑誌、新聞などのケースで市場アクセス上の実務的帰結を持つ、と明示されています。 (世界関税機関)

さらに、WCOのEnvironmental Scan 2024では、WTOが2024年に「電子送信への関税賦課のモラトリアム」をさらに2年更新したことに触れた上で、HSや関税評価(Valuation)との関係で、電子送信をどう扱い、どう区分し、どう課税するかをWCOとしても検討し得る論点だ、と問題提起しています。 (世界関税機関)

つまり、ここにあるのは「HS 2028の中でデジタルが整理されて終わった」という話ではなく、むしろ逆です。HS 2028が最終合意して発効準備に入ったことで、物品としての分類整備は進む。しかし、価値が電子送信やサービス提供に移る取引は、HSだけでは完結しない、という現実がより鮮明になっています。


4. ビジネス実務で使える「デジタル製品・サービス区分」3分類

制度論を待っても、企業の現場は止まりません。そこで実務上は、取引を次の3つに切り分けるところから始めるのが現実的です。

4.1 物品としてのデジタル関連商品

例:ハードウェア、端末、記録媒体、デバイスに同梱されたソフト、物理的に輸送される製品

ここはHSのど真ん中です。HS 2028の改正により、該当品目の見出しや小見出しが変わる可能性があるため、輸出入量が多い製品から順にマッピングが必要になります。WCO自身が、発効までの2年で相関表(Correlation Tables)の整備などを進める、としています。 (世界関税機関)

4.2 電子送信されるデジタル製品

例:ソフトウェアのダウンロード、電子書籍、デジタルコンテンツ配信

ここは「国境を越えて価値は移転するが、物品としての通関がない」領域です。財かサービスかの整理自体が、国際的にも一枚岩ではないことをWCO文書は示唆しています。 (世界関税機関)
また、電子送信に対する関税の扱いはWTOのモラトリアム議論と連動し得るため、ビジネス側は制度動向の監視が必要になります。 (世界関税機関)
実際、各種の通商協定でも電子送信に関税を課さない旨を定める例があり、日EU・EPAでも電子送信への関税を課さない条項が置かれています。 (外務省)

4.3 デジタルサービス

例:SaaS、クラウド利用、保守、サポート、運用代行、データ分析サービス

これはHSではなく、サービスとしての税務・契約・規制の世界が中心になります。ただし重要なのは、物品とサービスがセットで売られることが多い点です。ここを曖昧にすると、税関評価や間接税、移転価格などの論点が連鎖します。


5. いちばん危ないのは「束ね売り」:ハードとサブスク、機器と利用権、導入費と保守

デジタル製品・サービス区分の論点が、実際に燃えやすいのは「束ね売り」の場面です。

典型例として、機器の販売に、初期設定費、導入支援、トレーニング、保守、クラウド利用料が混在するケースがあります。このとき請求書や契約が一体化していると、どこまでが物品の対価で、どこからがサービスなのかが不明確になりやすい。

実務的には、物品に含まれない費用要素を切り分け、根拠を揃えることが重要です。例えばKPMGの解説でも、トレーニング、組立、保守、保証などのアフターサービスや導入後サービスは、関税上の非課税要素になり得る点が示されています(ただし具体の扱いは契約と当局実務に依存)。 (KPMG Assets)

ここでのポイントは、関税コストの最適化というよりも、説明可能性の確保です。税関・税務当局のデジタル化が進むほど、取引データの整合性は機械的に突合されやすくなります。契約、請求、製品マスタの整合が崩れると、後から修正するコストが跳ね上がります。


6. HS 2028発効までに企業がやるべきこと

HS 2028は2028年1月1日発効です。これは単なる将来の予定ではなく、すでに国際的には「切替が前提の世界」に入っています。 (世界関税機関)

デジタル製品・サービス区分の観点も含め、企業が今から進めるべき実務を、優先度順にまとめます。

  1. 取引タイプの棚卸しをする
    物品の輸出入なのか、電子送信なのか、サービス提供なのか。さらに、単体か束ね売りか。まずは売上上位とリスク上位の取引から分類します。
  2. 物品側はHS 2022からHS 2028へのマッピング準備を始める
    発効前にWCOが相関表などの実装ツールを整備するとしています。各国の8桁や10桁への落とし込みは国ごとにタイムラグが出るため、主要国別にウォッチします。 (世界関税機関)
  3. 契約と請求書を「区分できる構造」にする
    物品対価、導入支援、保守、サブスク利用料などを分け、説明可能な形にします。後追いでの区分は、監査・税関調査で弱いです。 (KPMG Assets)
  4. 製品マスタとルールを、関税分類だけでなく商品設計と連動させる
    HSは分類番号に見えますが、実際は事業の共通キーです。営業、購買、経理、法務、物流、ITが同じデータを参照できる体制が、後の事故を減らします。
  5. 電子送信の論点は、制度動向を前提に「変化に耐える設計」にする
    WCOも電子送信をどう区分し、どう課税するかは将来的に検討が必要になり得ると示唆しています。WTOのモラトリアム動向も含め、固定的な前提を置き過ぎない設計が安全です。 (世界関税機関)

おわりに:HS 2028は「コード更新」ではなく、取引の設計思想を試すイベント

WCOのHS 2028改正は、最終合意を経て2028年発効に向けた実装フェーズに入りました。公衆衛生や環境など、政策目的を帯びた可視化が強まるのが今回の特徴です。 (世界関税機関)

ただし、デジタル製品・サービスの区分という観点では、HSの最終合意が「解決」を意味しません。むしろ、HSが物品分類である以上、電子送信やデジタルサービスは別の制度軸で整理される、という構造がより鮮明になります。 (世界関税機関)

だからこそ、企業にとっての勝ち筋は、制度が完全に確定するのを待つことではありません。取引を区分できる契約と請求、説明可能なマスタ、変更に耐える運用ガバナンスを整えること。HS 2028対応は、その体制を作るための最も分かりやすいタイミングです。


米国で揺れる「スマートウォッチ」と「医療用モニター」の境界線

最終更新:2026年1月24日(日本時間)

2025年8月、Appleは米国で一時停止されていたApple Watchの血中酸素(Blood Oxygen)機能について、ソフトウェア更新で再提供する「再設計版」を発表しました。ポイントは、Apple Watch側で取得したセンサーデータを、ペアリングしたiPhone側で計測と計算を行い、iPhoneのヘルスケアアプリ内で結果を表示する設計に変えた点です。Appleは「最近の米国税関の判断が、この更新を可能にした」と明言しています。(Apple)

この出来事は「ある健康機能が、いつから医療用モニター級の扱いになるのか」という、境界線をビジネス面から突きつけました。しかも論点は、FDAの医療機器規制だけではありません。米国では、特許紛争を背景にした輸入差止(貿易救済)と税関当局の運用が、製品設計と市場投入を左右しうることが、改めて可視化されました。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)

以下は、ビジネスパーソン向けに「今回の最新裁定の意味」を深掘りした整理です。この記事は一般情報であり、個別案件の法的助言ではありません。


忙しい人向けの要点

  • 最新の焦点は、Apple Watch単体ではなく「WatchとiPhoneの組み合わせで成立する血中酸素機能」を、輸入差止の対象とみなすかどうかに移りました。(Apple)
  • 税関判断を契機に機能が復活した一方、医療モニタリング企業Masimoはその判断を不服として提訴し、輸入差止の復活を求めています。(Reuters)
  • 2025年11月、米国国際貿易委員会(ITC)は、再設計版が輸入差止の対象になるかを改めて審査する新たな手続を開始しました(目標は約6か月)。(Reuters)
  • 2026年1月にはFDAが「低リスクのウェルネス機器」をめぐる考え方を改めて明確化しました。ただし、規制上の位置付けがウェルネス寄りでも、特許と輸入差止のリスクが消えるわけではありません。(U.S. Food and Drug Administration)

そもそも何が「裁定」なのか

今回は「裁定」という言葉が複数の層を指します。

  1. ITCの輸入差止命令(セクション337)
    ITCは2023年10月、Masimo側の主張を一部認め、特定の特許を侵害する「光学式パルスオキシメトリ(血中酸素)機能を持つウェアラブル電子機器」等について、限定的輸入差止命令(Limited Exclusion Order)などを出したと公表しています。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)
    その後の大統領審査期間(60日)において、米国通商代表部(USTR)はITC判断を覆さない(不承認にしない)と表明しました。これにより、輸入差止の効力が維持される流れが固まりました。(United States Trade Representative)
  2. 税関当局(CBP)による「輸入差止の執行判断」
    ITCの命令は、実際の水際での運用は米国税関・国境警備局(CBP)が担います。そこで、当該命令の対象に該当するか否かが「税関判断」として争点化します。(Reuters)

今回ビジネス上のインパクトが大きいのは、まさに2番目です。製品の作り方(どこで何を計算し、どこで結果を表示するか)により、水際での扱いが変わり得ることが示唆されたからです。(Apple)


時系列で理解する:境界線が動いたポイント

時期出来事ビジネス上の意味
2023年10月ITCが限定的輸入差止命令などを発出(血中酸素機能のあるウェアラブル等)特許紛争が「輸入そのもの」を止め得る領域へ(アメリカ合衆国国際貿易委員会)
2023年12月USTRが不承認(覆す)を行わないと表明輸入差止が実運用へ(United States Trade Representative)
2024年〜米国向けモデルでは血中酸素機能が停止される動き機能のオンオフが市場対応手段に(ただし顧客体験に影響)(AP News)
2025年8月14日Appleが「再設計版Blood Oxygen」を公表。Watchで測定し、iPhoneで計算し、ヘルスケアアプリで表示。税関判断で可能に機能の分散設計が水際リスクを左右し得る(Apple)
2025年8月MasimoがCBPを提訴し、税関判断の無効化などを求める水際判断自体が訴訟対象に(Reuters)
2025年11月ITCが再設計版の扱いを改めて検討する新手続を開始境界線が確定せず、再び輸入差止が拡大する可能性(Reuters)
2025年12月連邦地裁がMasimo側の差止(TRO・仮差止)申立てを退けたと報じられる短期的には輸入継続。ただし本案とITCは別軸で残る(news.bloomberglaw.com)

今回の「境界線」の核心:医療用モニターはハードで決まらない

今回の示唆は、単純に「スマートウォッチは民生品、医療用モニターは医療機器」という二分法が崩れている点にあります。

  • Appleは再設計版について、計算と表示をiPhone側に移し、結果はiPhoneのヘルスケアアプリ(呼吸器関連の表示セクション)で見られると説明しています。(Apple)
  • つまり「測定センサーを腕に付ける」ことと「医療的意味を持つ数値として算出し、ユーザーに提示する」ことが別デバイスに分割されました。(Apple)

これがなぜ境界線の話になるか。
輸入差止の実務では「輸入される物が、命令の対象かどうか」が問われます。再設計により、輸入時点でのWatch単体が命令対象から外れる余地が生まれた、と理解されているのが今回の騒動です。(Reuters)

しかし、2025年11月にITCが新手続を開始したこと自体が「結論がまだ揺れている」ことを示します。ITCは、再設計版が従来命令の射程に入るかを改めて検討する方向へ動きました。(Reuters)


MasimoがCBPを提訴した理由:争点は「手続」と「実質」

Reutersによると、MasimoはCBPの判断が輸入差止命令を弱めると主張し、CBPに対して訴訟を提起しました。Masimo側は、CBPが従前の判断を適切な通知なく変更したなどと訴え、当該判断の差し止めを求めています。(Reuters)

ここで重要なのは、相手がAppleだけでなく「税関当局」である点です。
ビジネス的には、次の現象を意味します。

  • 製品の設計変更を巡り、民間同士の特許訴訟だけでなく、行政手続の適法性(行政訴訟)に争点が広がる
  • 「水際で通るかどうか」が、単なる解釈問題ではなく、訴訟リスクとして長期化しうる

この構図は、医療領域に隣接する機能を持つ民生デバイス全般に波及し得ます。(Reuters)


裁判所の動きと、短期的な落ち着き

2025年12月には、Masimoが求めた一時的な差止(TRO・仮差止)について、連邦地裁が認めなかったと報じられています。これにより、短期的には輸入継続の公算が高い状態が続いています。(news.bloomberglaw.com)

ただし、これは「最終的にどちらが勝つか」とは別問題です。
ITC側の新手続が動いている以上、企業としては「一度通った設計が、半年後も通る」とは言い切れません。(Reuters)


規制(FDA)面の境界線も動いている

ここで混同しがちなのが「FDAの医療機器規制」と「特許と輸入差止」の軸です。別軸として理解した方が安全です。

  • Apple自身、Blood Oxygenの測定について「医療用途を意図したものではなく、一般的なフィットネスとウェルネス目的」と説明しています。(Apple サポート)
  • そして2026年1月、FDAは「General Wellness: Policy for Low Risk Devices」というガイダンスを更新し、健康的生活の維持・促進に関する一定のソフトウェア機能が、疾病の診断・治療等と無関係であれば、法令上の医療機器の定義から外れることがある、という枠組みを改めて明確化しています。(U.S. Food and Drug Administration)
  • Reutersも、FDAが健康・フィットネス系ウェアラブルの規制を限定し、医療的な主張(例:医療グレードの血圧測定など)を行わない限り、情報提供型のツールを許容する方向を報じています。(Reuters)

ここから得られる実務的な結論はシンプルです。
規制上はウェルネス寄りに位置付けられても、特許と輸入差止の世界では「医療モニタリング技術」として争われ得ます。境界線は1本ではなく、複数の当局と制度の重なりで決まります。(Apple サポート)


ビジネスへの示唆:この事案が他業界にも刺さる理由

スマートウォッチ業界だけの話ではありません。特に、ヘルスケア寄り機能を持つIoTや家電、アプリ、B2Bデバイスにも共通する論点が含まれます。

  1. 機能分散アーキテクチャは、法務と貿易の論点になる
    今回の再設計は「どこで計算し、どこで結果を表示するか」を変えています。これは製品設計の話ですが、水際リスクを左右する可能性があることが示されました。(Apple)
  2. 民生機器でも、輸入差止で一気にサプライチェーンが止まる
    ITCの命令は、訴訟の勝ち負けだけでなく、特定モデルの輸入停止という形で事業インパクトを直撃します。これは関税率の問題よりも急激です。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)
  3. 争点が「機能のオンオフ」になると、顧客体験と説明責任が重くなる
    機能停止や表示先の変更は、同じ型番でも体験が変わることを意味します。アップデートや地域差がある場合、販売現場やカスタマーサポート、契約条項まで連動します。(Apple)
  4. 規制コンプライアンスとIPリスク評価を一体運用する必要がある
    FDAガイダンスの枠内に収める設計や表示をしても、特許紛争や輸入差止とは別で火が付く場合があります。社内の担当分断があるほど対応が遅れます。(U.S. Food and Drug Administration)
  5. 「医療」企業との競争領域に入った瞬間、相手の戦い方が変わる
    Masimoは医療モニタリング企業であり、争点が医療計測技術に絡むと、特許、ITC、税関手続、複数裁判地が同時進行になり得ます。事実として、この紛争は複数の場で動いています。(Reuters)

実務チェックリスト:製品企画と事業責任者が押さえるべきこと

社内で今すぐ点検できる観点を、実務寄りにまとめます。

  • 製品機能の分解表を作る
    センサー、アルゴリズム、表示、保存、共有、外部連携(医師との共有など)が、どのデバイスで動くかを明文化する。今回のように分散設計が争点化し得るため。(Apple)
  • 市場別の機能差とアップデート方針を契約・表示に落とし込む
    地域差や購入時期で機能が変わる可能性がある場合、販売条件とアフターサービスの説明責任を整理する。(Apple)
  • IPと貿易救済(ITC)を初期段階で横串評価する
    特許調査が訴訟回避だけでなく、輸入可否の事業継続性に直結する。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)
  • 規制上の主張(ウェルネスか、医療か)をマーケと法務で統一する
    FDAの枠組みを意識しつつ、医療的な主張の一線を越えない表現設計にする。(U.S. Food and Drug Administration)
  • 水際で止まった場合の代替案を事前に用意する
    モデル切替、ソフトウェア機能の限定、在庫・販路の切替などのシナリオを準備する。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)

今後の見通し:2026年前半の注目点

2026年1月時点で、注視すべきは次の3点です。

  • ITCの新手続の行方
    再設計版が輸入差止の射程に入るかどうかは、ビジネス上の不確実性の源泉です。目標は約6か月とされています。(Reuters)
  • CBP判断を巡る訴訟の進展
    短期の差止が退けられたとしても、本案で判断枠組みが変われば、再び水際運用が動く可能性があります。(news.bloomberglaw.com)
  • 規制面では、ウェルネス枠の拡大と「医療的主張」への監視の両立
    FDAは低リスク領域を明確化する一方、医療グレードをうたう主張には警戒を示しています。製品の言い方が市場アクセスを左右します。(U.S. Food and Drug Administration)

まとめ

今回の一連の動きが教えるのは、ウェアラブルの健康機能が進化すると「医療」と「民生」の線引きが、規制だけでなく、特許と貿易救済、そして税関の水際運用で決まっていくという現実です。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)

ビジネス側に必要なのは、機能の設計、法務、規制、貿易実務を分けて考えないことです。分散コンピューティングやソフトウェア更新が当たり前になった今、境界線は仕様書の中にあります。


EUのHS2028対応で実務が詰まるのはどこか

2028年1月1日、世界共通の品目分類であるHSはHS2028へ切り替わります。WCOは、HS2028が2028年1月1日に発効し、発効までの準備期間に相関表の作成や解説書類の更新などを進める方針を明記しています。つまり、コード変更は確定事項であり、企業側は準備の先送りができません。 (World Customs Organization)

EU向けビジネスでは、この変更がEU独自の品目表であるCNと、関税措置や規制措置まで含むTARICに波及します。分類コードの変更は、単なる表の更新ではなく、関税額、輸入規制、統計申告、社内マスタやERP連携まで直撃します。

この記事では、EUの官報とCN改正をどう監視すべきかを、ビジネスマン向けに実務目線で深掘りします。

まず押さえるべき構造

HSとCNとTARICの関係

CNは、EUの共通関税率と貿易統計の要件を満たすための品目分類で、WCOのHSを土台にEU独自の細分を加えたものです。EU委員会の説明でも、CNはHSの発展形であり、EU向けの品目分類として使われることが示されています。 (Taxation and Customs Union)

実務上は、次のように理解すると整理が早いです。

  1. HSは世界共通の6桁
  2. CNはEUの8桁
  3. TARICはEUの統合関税データベースで、関税措置や規制措置まで含めて運用される

CN改正は毎年起きる

EUでは、CNの最新版本が毎年更新され、EU官報のLシリーズで委員会実施規則として公表されます。EU委員会は、CNが毎年更新され官報で公表されること、そしてそれが事業者と税関にとって重要な作業ツールであることを明記しています。 (Taxation and Customs Union)

さらに、EUR-Lexの要約情報では、毎年のCNと共通関税率の完全版を再現する規則が採択され、官報で遅くとも10月31日までに公表され、翌年1月1日から適用されると整理されています。 (EUR-Lex)

この毎年10月末という節目を知っているかどうかで、監視体制の設計が大きく変わります。

TARICは日次で動く

TARICはEUの統合関税データベースで、EUの関税、商業、農業関連の措置を統合して提供する仕組みです。EU委員会は、TARICデータが電子ネットワークで日次送信され、加盟国の税関システムに反映されることで、即時かつ正確な情報提供が担保されると説明しています。 (Taxation and Customs Union)

また、TARICのデータ抽出に関するEU側の説明資料では、TARICのデイリー更新と照会サイトが、原則として欧州委員会の稼働日の月曜から金曜に、夜7時以降に日次更新される旨が示されています。

結論として、年1回のCN改正だけを追うと、途中で変わる規制措置や追加コードの変更を見落としやすいという構造があります。

HS2028がEUにどう入ってくるか

EUはHS条約の枠組みで改正を受け入れた場合、締約当事者として自らの関税統計品目表を改正HSに整合させる必要があります。EU委員会が2025年に公表した文書でも、受諾されたHS改正は国際法上拘束力を持ち、EU法では規則2658/87の付属書Iに取り込まれる、と明確に述べられています。

このため、HS2028は2028年1月1日の発効に合わせて、EUでもCNとTARICに反映される方向で動くと読むのが自然です。

官報とCN改正の監視点

ここからが本題です。監視点は、いつ、どこを、何の観点で見るかに分解すると実務に落ちます。

監視点1 官報で何を拾うべきか

EU官報は、改正の確定情報が出る場所です。特に見るべきはLシリーズの規則です。

見る対象の優先順位は次の通りです。

  1. 翌年版CNを確定する委員会実施規則
  2. 年途中に品目表や関連付属書に影響を与える実施規則
  3. TARIC上の措置変更につながる規制や実施規則

例えば、2026年版CNは2025年10月31日に官報で公表され、2026年1月1日から適用されています。こうした年次改正の型を知っておくと、HS2028対応年の動きも読みやすくなります。 (Taxation and Customs Union)

加えて、EUR-Lexの各規則ページには、メール通知やRSS通知の作成機能が用意されています。官報を目視で追うだけでなく、通知を前提にした監視設計にするのが現実的です。 (EUR-Lex)

実務で効く検索軸は、規則のタイトルや本文に頻出する定型句です。
例としては、規則2658/87付属書Iの改正、CN、Common Customs Tariff、amending Annex I といった要素が核になります。

監視点2 CN改正で確認すべき論点

CN改正を見たときに、単にコードが変わったかだけを見ると危険です。見るべきは、ビジネス影響に直結する変更パターンです。

  1. 分割と統合
    1つのコードが複数に分割されたり、逆に統合されると、社内の商品マスタや取引条件、原産地管理の前提が崩れます。
  2. 品目文言の変化
    文言の追加や削除は、分類判断の境界が変わったサインです。
  3. 追加注記や脚注、補助単位
    統計単位や補助単位の変更は、申告システムや帳票の仕様に響きます。EU委員会もCNには脚注や補助単位などが含まれると説明しています。 (Taxation and Customs Union)
  4. 関税率の変化
    WTO約束税率の変更や自律関税の調整が絡むと、損益に直結します。

ここで重要なのは、CNの8桁だけを見て終わらせないことです。輸入の現場ではTARICのコード体系や措置条件のほうが実際の通関可否を左右します。

監視点3 TARICの監視は日次前提で設計する

規制対応やコストに直撃するのは、年次改正よりも、日々変わる措置です。TARICは日次送信され加盟国側で運用される仕組みであるため、監視間隔は商品カテゴリにより最適化すべきです。 (Taxation and Customs Union)

特に次に該当する場合、日次に近い監視が現実的です。

  1. 貿易救済、制裁、輸入許可、証明書などの措置に触れる品目
  2. 自社の主力売上や原価に関係する関税額が大きい品目
  3. 短納期で止められない物流を抱える品目

TARIC照会サイトの更新タイミングが夜7時以降とされている点も踏まえ、社内のデータ更新ジョブやチェックの時間帯を設計すると、無駄な差分や当日反映漏れを減らせます。

HS2028対応で企業が実際に詰まりやすいポイント

ここは現場でよく起きます。

  1. 商品マスタと申告コードの不一致
    営業や調達は旧コードで動き、通関は新コードを要求される。結果として荷物が止まる。
  2. 原産地管理や協定適用の判定ロジックが崩れる
    品目コードをキーにしている場合、マッピングが遅れると適用可否の判断が止まります。
  3. 調達契約の通関費用条項が古い前提のまま
    関税負担の帰属や価格改定条項が想定どおりに働かなくなります。
  4. 外部委託先任せで、社内の意思決定が遅れる
    通関業者やフォワーダーは手続きはしてくれますが、分類やリスク判断の最終責任は原則として事業者側に残ります。

監視を仕組みに落とす 失敗しない運用モデル

おすすめは、官報とTARICを分けて考え、二層で監視する方法です。

層A 官報ベースの確定情報監視

目的は、年次CN改正とHS2028反映の確定情報を最速で拾うことです。
運用例

  1. EUR-Lexで規則2658/87付属書I改正に関する規則ページの通知を設定する
  2. 10月は監視頻度を上げ、翌年版CN公表のタイミングに備える
  3. 公表後は社内影響評価の締切日を決め、更新を滞留させない

CNが毎年更新され官報で公表される点、そして翌年版が10月末までに公表される点は、監視カレンダーを固定する根拠になります。 (Taxation and Customs Union)

層B TARICベースの実務影響監視

目的は、当日の措置を見落として通関を止めないことです。
運用例

  1. 自社の重点コードをリスト化し、TARIC上で措置条件の差分を確認する
  2. 規制品や高リスク品は日次、その他は週次などで監視間隔を変える
  3. データ更新時間帯を考慮し、夜間更新後にチェックする

TARICが日次送信されること、照会サイトが日次更新されることは、運用設計の根拠になります。 (Taxation and Customs Union)

2026年から2028年1月までの実務ロードマップ

2026年1月時点で残り2年です。今からやるべきことを、優先度順に並べます。

  1. 影響範囲の棚卸し
    輸出入、三国間取引、EU域内統計、関税コスト、規制対象を、コード単位で見える化する。
  2. マッピングの準備
    現行HSやCNからHS2028や将来CNへの対応表を作る前提を置く。WCOが相関表作成を進める方針であるため、公開後にすぐ取り込める体制にしておく。 (World Customs Organization)
  3. 監視の自動化
    官報は通知、TARICは差分監視を基本にする。
  4. システム改修の段取り
    ERP、通関連携、品目マスタ、帳票、BIの集計キーをコード変更に耐えられる形にする。
  5. 2027年10月の山場に備える
    翌年版CNが10月末までに公表される型があるため、2027年10月に社内切替準備が集中する可能性を前提に、リソースと締切を先に確保する。 (EUR-Lex)

まとめ

HS2028は2028年1月1日に発効し、企業側には準備期間が残されています。 (World Customs Organization)
EU向け実務では、年1回のCN改正を官報で確実に拾うことと、日次で動くTARICの措置変更を取りこぼさないことが両輪です。 (Taxation and Customs Union)

この二層監視を、通知と差分監視を前提に仕組み化できれば、HS2028対応は焦りやすい年末プロジェクトではなく、通常業務として吸収できます。

免責
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別案件の分類判断や通関可否、契約条件の見直しは、社内の責任者や専門家とあわせて確認してください。

韓国と中国:HS2028国内適用の現状と発表動向(2026年1月時点)

はじめに

2028年1月1日、世界共通の商品分類体系であるHS(Harmonized System)は、第8版となる「HS2028」に切り替わります。
WCO(世界税関機構)は、HS2028改正案が正式に採択されたことを公表し、今後2年間で相関表の整備、解説書の更新、各国での国内実装が進むことを明示しています。

韓国と中国は、日本企業の取引量やサプライチェーン依存度が高い相手国です。両国それぞれの国内コード体系と、公表の「癖」を理解しておくことが、HS2028対応プロジェクトの成否を左右します。


1. HS2028で何が変わるのか:ビジネスが先に見るべき改正テーマ

HS2028は、299件の改正セットから構成され、見出し(heading)および号(subheading)レベルで多数の新設・削除が行われます。
WCOは、次のようなテーマを主要ポイントとして挙げています。

  • 公衆衛生・保健危機対応
    救急関連機器、PPE(個人防護具)、人工呼吸器、診断機器、ワクチンなどについて、より細分化されたコードを設定。
  • ワクチン分類の再編
    さまざまな感染症別に分類を整理し、統計・政策立案での可視性を向上。
  • サプリメント(栄養補助食品)の新設・再構成。
  • プラスチック廃棄物・使い捨てプラスチック関連の分類見直し
    バーゼル条約等との整合を図り、廃棄物・環境関連規制とのリンクを明確化。

この種の改正は、「関税率そのもの」よりも、次のような領域に波及しやすい点が実務上の要注意ポイントです。

  • 許認可・検疫・化学物質・廃棄物関連の規制要件
  • 統計コードの再編
  • 原産地規則(品目別規則やCTC判定の前提となるHSコード)

2. 韓国:国内適用のルートと、現時点で見える動き

2.1 国内実装の基本ライン

韓国のHS改正対応では、概ね次の三つがセットで動きます。

  • 関税率表(関税法別表等)
  • HSK(韓国の関税・統計統合品目番号、一般に10桁)
  • HS解説書や運用基準(韓国関税庁が公表する解釈ツール)

前回HS2022では、韓国はHS協約改正に合わせて、関税率表、HSK(企画財政部の告示)、HS解説書(関税庁の告示)を改正し、2022年1月1日から適用しました。
この前例から、HS2028でも同様の立て付け(関税率表+HSK+解説書の三点セット)で国内実装が進む可能性が高いと考えられます。

2.2 現時点(2026年1月)の公表状況

2026年1月時点で、韓国関税庁は、WCOの会合でHS2028に伴う解説書改正が議論されたこと、とりわけワクチン関連の新設を踏まえた分類明確化について各国が意見交換したことを公表しています。
これは、韓国側が少なくとも「解説書・運用解釈の整備フェーズ」に入りつつあることを示す一次情報といえます。

一方で、HS2028版HSK(国内10桁コード体系)や改正関税率表の具体的な案・最終版は、2026年1月時点ではまだ「山場前」と見るのが自然です。前回HS2022でも、実際の告示や対照表は施行前年に集中して公表されました。

2.3 韓国の発表を追うときの実務的な「当たり先」

韓国でHS2028関連情報を追う際の主な入口は次の通りです。

  • 韓国関税庁(Korea Customs Service)の公式発表
    報道資料、行政予告、告示などが掲載される。
  • CLIP(関税法令情報ポータル)
    • HS比較:国別・年次の関税率表を並べて参照するための機能。
    • HS解説書検索:WCO版解説書へのアクセス窓口。
    • HS協約改正資料:HS改正関連の公式資料。

2026年の段階では、「どのタイプの情報がどのサイトから出るか」を整理しておき、2027年以降の告示ラッシュに備えてウォッチ体制を整えるのが現実的です。


3. 中国:国内適用のルートと、コード体系の注意点

3.1 関税税則と申告コードの構造

中国では、HS改正は主に次の二本立てで国内反映されます。

  • 関税税則(進出口税則):税率・基本統計コード(8桁)を規定。
  • 申告コード(海关商品编号):通関実務で使用される拡張桁を含むコード。

通関現場では、申告コードが最大13桁で運用されることがあり、一般的な構造は次のように説明されています。

  • 1〜8桁:税則・統計上の基本コード(HSベース)
  • 9〜10桁:監管附加(規制・税制上の追加番号)
  • 11〜13桁:検験検疫関連の附加番号(CIQコードなど)

この構造は、HS2028で6桁・8桁レベルの改正が行われた場合、後段の監管・検疫関連桁も連動して変更され得ることを意味します。
ERPや品目マスタが「8桁/10桁のみ」で固定されている場合、移行期に申告用コードとの間で齟齬やデータ欠損が発生しやすいため注意が必要です。

3.2 前回HS2022の対応と、HS2028への含意

前回HS2022では、中国はHS改正の国内反映に向けて、海关总署公告(2021年第78号)によりHS2022対応の修正目録(中文版)を公表したと報告されています。
これに合わせて、進出口税則および関連通達が改正され、2022年1月1日から適用されました。

この前例から、HS2028でも以下のような流れになる可能性が高いと考えられます。

  • 海关总署(GACC)公告で、HS2028対応の修正目録・申告コードルールを公表。
  • 税則委員会(関税税則委員会)関連の公表で、年次の関税調整・税目修正を告知。

3.3 中国の発表を追うときの実務的な「当たり先」

中国でHS2028関連情報を追う際の主な入口は次の通りです。

  • 海关总署(GACC)公式サイト
    公告、政策法規、通関関連通知。
  • 税則委員会(関税税則委員会)
    年次の関税調整・税目修正に関する公表。
  • 地方税関の公式Q&A・ガイド
    実際の申告要件やコードの桁運用、ローカルな解釈が出ることがある。

申告コードの多桁構造が移行時の落とし穴になりやすいため、「どの桁まで社内マスタに持つか」「どの桁をどの部門がメンテナンスするか」をあらかじめ決めておくことが重要です。


4. 発表動向の読み方:いつ情報が揃い始めるか

WCOは、HS2028改正の採択後、「残り2年の期間で相関表の整備や解説書更新を進め、2028年1月1日の発効に備える」と説明しています。
HS2022のときの各国の動き(施行前年に公告・告示が集中しやすい)も踏まえると、企業側の情報収集は次の三段階で設計するのが現実的です。

  • 2026年:
    WCOの一次情報(改正内容・相関表)と、韓国・中国それぞれの「準備着手サイン」(会合報告、研究報告、制度改正の予告的資料)を押さえるフェーズ。
  • 2027年:
    各国の国内コード案、対照表、運用通知が本格的に出始めるタイミング。告示や公告のウォッチを強化し、社内マスタの「新旧対照」設計に着手するフェーズ。
  • 2028年:
    施行直後の現場運用(申告却下の理由、追加情報要求、検査指示の傾向など)をフィードバックし、社内ルール・マスタを微修正するフェーズ。

5. 企業が今すぐ着手すべき実務チェックリスト(韓国・中国共通)

5.1 品目マスタの棚卸し

  • 現在、韓国ではHSK10桁、中国では8桁・10桁・13桁のどこまでを社内マスタで管理しているのかを確認する。
  • 桁数と採番ルール(例:8桁までをグローバル共通、以降は国別拡張など)を明確化し、将来のHS2028対応時に一括変換できる構造にしておく。

5.2 影響が出やすい領域から先に当てる

WCOがHS2028で大きく見直すと明示している領域(ワクチン、医療機器、サプリメント、プラスチック廃棄物・使い捨てプラスチック関連など)は、取扱量が少なくても規制要件に直撃しやすい分野です。
これらの商材を扱う場合は、優先順位を高く設定し、早期にHS2028のコード候補を検討しておくとリスクを抑えられます。

5.3 二重コード運用の設計

2027年以降、WCOおよび各国から相関表や国内コード案が揃い始めた段階で、社内マスタに「現行版コード」と「HS2028想定コード」を併記できる構造に移行することが望ましいです。
WCOの相関表が正式に出たタイミングで、即座に本番コードを差し替えられるよう、情報項目やテーブル設計を前もって決めておくとスムーズです。

5.4 原産地規則・許認可・検疫の横串チェック

HSコードの変更は、単なる関税分類だけでなく、次のような領域に横串で影響します。

  • 原産地規則(品目別規則・CTC判定の前提HS)
  • 輸入規制(ライセンス・承認制度)
  • 検疫・化学物質・廃棄物規制の対象判定

とくに中国では、申告コードの後段桁(監管附加、CIQ)に規制要件がぶら下がる構造になっているため、HS2028移行時は「基本コード+附加コードのセット」で見直す必要があります。


6. まとめ

  • HS2028は2028年1月1日に発効予定であり、WCOは改正案の採択を行い、2026~2027年を各国の準備フェーズと位置づけています。
  • 韓国は、少なくともHS解説書改正の議論に参加していることが公表されており、今後HSKや関税率表の改正情報が、どの経路(告示・報道資料・CLIP等)で出るかを押さえておく段階にあります。
  • 中国は、申告コードが多桁構造であること自体が移行時のリスク要因になり得るため、海关总署公告と年次税則改定をセットで追いながら、「どの桁まで社内で持つか」を含めて設計することが重要です。

必要であれば、貴社の主要品目(上位20〜50品目)を前提に、韓国HSKと中国申告コードの「移行監視リスト」(どのサイトをいつ見るか、誰が担当するか)まで落とし込んだ運用表のたたき台も作成できます。

米国と日本:HS2028を国内法に移す正式ルートを深掘りする

この記事は、2026年1月23日時点で確認できる一次情報を中心に、HS2028が米国と日本でどのように国内制度へ反映されるかを、ビジネス実務の視点で整理したものです。HS改正は「税番が変わる」だけでは終わりません。関税率、EPAやFTAの原産地規則、通商救済措置の対象品目、社内マスターや通関システムまで波及します。だからこそ、正式ルートを理解しておくことが、準備の精度を上げます。

まず押さえるべき国際スケジュール:HS2028は2028年1月1日に発効

HS2028は、世界税関機構WCOが管理するHS品目表の第8版で、2028年1月1日に発効します。今回の改正は、通常5年サイクルの見直しが例外的に6年へ延長された上で成立したもの、とWCOが明確にしています。(World Customs Organization)

WCOは、HS2028について「国内レベルでは必要な立法手続、ITシステムや刊行物・手続の更新、税関職員や関係者への研修が必要」といった実装作業が不可欠であることも明記しています。つまり、HS2028は2028年にいきなり現場に降ってくるのではなく、各国が国内法制と運用を揃える準備期間を前提に動きます。(World Customs Organization)

国際的な採択手続の流れとしては、HS委員会での暫定採択を経て、WCO理事会で正式採択され、2026年1月に公開、2028年1月1日に発効というスケジュールがWCOから示されています。(World Customs Organization)

「国内法に移す」とは何を変えることか

HSは6桁までが国際共通で、各国はそれ以降の細分を設けます。したがって、各国がHS2028を国内で使える形にするには、少なくとも次の層を整合させる必要があります。

  1. 国際6桁の改正を反映する
  2. 自国の細分桁を作り直す
  3. 関税率や特恵税率、通商救済措置など、番号に紐づく制度をつなぎ替える
  4. 申告受理システムや統計システムを改修する
  5. 税関の解釈資料や運用通達を更新する

このうち、どこまでが「法律の改正」で、どこからが「行政の告示・通達・運用更新」かが、米国と日本で大きく異なります。

米国の正式ルート:USITCの勧告と大統領布告でHTSUSを更新する

米国の制度の土台:HTSUSは議会が制定し、USITCが維持し、CBPが執行する

米国の関税分類はHTSUSにより運用され、USITCの説明では、国際HSの4桁・6桁区分を米国独自に細分し、8桁の米国税率区分と、10桁の統計用区分へ展開するとされています。また、USITCがHTSを維持・公表し、CBPが解釈と執行を担う構図も明確です。(USITC)

HS改正を国内へ反映する公式プロセス:USITCが実施案を作り、大統領が布告する

WTO向け資料として公表されている米国側の説明では、WCOがHS改正を承認した後、USITCがHTSUSへ反映するための作業を行い、最終的に大統領が改正を布告できる、という整理になっています。

HS2022実施を例にした時系列は、実務目線で非常に示唆的です。

  • USITCが調査を開始
  • USITCがドラフトと経済影響の見込みを公表し、意見募集
  • USITCが最終勧告を大統領へ提出
  • 議会でのレビュー期間を経て、大統領が布告
  • 官報に当たるFederal Register掲載から30日後に発効

この「Federal Register掲載から30日後に発効」は、実務側の切替日を考える上で重要なポイントです。

法的根拠:1988年法に基づきUSITCが勧告し、大統領が改正を布告できる

HS2022反映を含むHTSUS改正の大統領布告(Proclamation 10326)を掲載したFederal Registerには、1988年法によりUSITCがHTSを継続的に見直し改正を勧告すること、そして大統領がUSITCの勧告に基づきHTS改正を布告できることが記載されています。(Federal Register)

現場に降りる最終段階:CBPとACEが受ける番号体系の切替

CBPの通達では、Proclamation 10326によりHTSUSが改正され、USITCの刊行物が参照されていること、そして改正内容が一定の日付以降の輸入に適用されることが明示されています。さらに、申告システムACE側の受入れ開始時刻にも触れており、制度改正がシステム実装と不可分であることがよく分かります。(GovDelivery)

ここから読み取れる米国の特徴は次の通りです。

  • 国内実装の最終トリガーは大統領布告とFederal Register掲載
  • 発効日は国際発効日と一致するとは限らず、実装上のタイムラグがあり得る
  • 現場はCBPの運用告知とACEの受入れ仕様に強く依存する

HS2028でも同様に、WCOの発効日だけでなく、Federal RegisterとCBPの実装告知をセットで追う必要があります。

日本の正式ルート:関税定率法の別表改正と、告示・通達で統計品目表や解説を更新する

日本の制度の土台:関税率表は関税定率法の別表で、HS条約に基づく

財務省・税関の分類センター資料では、日本の関税率表は関税定率法の別表であり、HS条約に基づいていることが明確に説明されています。(JETRO)

また同資料は、6桁までは国際共通で、7桁以降は各国が定めること、日本では輸出と輸入でそれぞれ3桁の細分を設け、9桁の統計品目番号として運用していることも示しています。(JETRO)

経済産業省のEPA案内でも、日本では9桁、米国では10桁という桁数の違い、6桁までが世界共通である点が説明されています。(Ministry of Economy, Trade and Industry)

立法ルート:関税定率法等の改正案を政府が作り、国会で成立させる

日本の正式ルートの中心は、「関税定率法等の一部を改正する法律案」という形での法改正です。財務省が公表しているHS2022対応の法案概要では、WCOで採択されたHS条約のHS品目表改正に応じて関税率表を改正する、と明記されています。さらに、その施行日として、HS対応部分は翌年1月1日が設定されていました。(Ministry of Finance Japan)

この構図はHS2028でも基本的に同じで、関税定率法の別表を改正して関税率表を更新するため、政府が法案を準備し、国会で成立し、公布され、施行日を迎えるという流れになります。

告示と通達:統計品目表や解説、分類例規などを実装レベルへ落とす

税関が公表しているHS2022のFAQは、HS改正を受けて、関税定率法別表、輸出入統計品目表、関税率表解説、分類例規が改正対象になることを具体的に示しています。さらに、輸出入統計品目表の改正は財務省告示として行われ、関連リンクが税関サイトに整理されていることも示されています。(Japan Customs)

同FAQでは、HS2022対応の実行関税率表、輸出統計品目表、関税率表解説が、発効日に合わせて税関サイトで公開されていることも明記されています。企業側の実務では、この「公開される版」と「適用開始日」を揃えて把握することが、切替事故を防ぐ鍵になります。(Japan Customs)

ここから読み取れる日本の特徴は次の通りです。

  • 関税率表の本体は法律の別表で、法改正を伴う
  • 9桁の統計品目番号や解説類は、告示や通達等で具体化される
  • 税関サイトでの版管理と公開日が、現場の実装上の重要情報になる

米国と日本の違いを一枚で整理

観点米国日本
国内の基本表HTSUS(国際HSを8桁税率区分と10桁統計区分へ展開)(USITC)関税定率法の別表(関税率表)。6桁まで共通、国内細分で9桁運用(JETRO)
主導機関USITCが改正案の勧告、CBPが執行(USITC)財務省・税関が制度整備、税関が運用・公表(Ministry of Finance Japan)
法的な最終トリガー大統領布告とFederal Register掲載(Federal Register)国会での法改正成立と施行、加えて告示・通達の整備(Ministry of Finance Japan)
切替日の読み方国際発効日と一致しない可能性がある。Federal Register掲載後30日発効の慣行が重要原則は1月1日施行が多いが、法案で施行日が明示される。税関サイトの版公開も併せて確認(Ministry of Finance Japan)

企業の実務ロードマップ:2026年から逆算して何をするか

WCOは、HS2028発効までの2年間で、各国が立法手続やIT更新、研修などを進める必要があると明記しています。企業側も同じ発想で、2年を「準備期間」として設計するのが合理的です。(World Customs Organization)

2026年に着手すべきこと

  • 自社取扱品目のHS2022コードの棚卸しと、変更影響の優先順位付け
  • 米国向けは10桁、日本向けは9桁のマスターを分けて管理し、相互参照表を整備する
  • 通関委託先と「切替日に何を正とするか」を合意する(旧コードの扱い、積送品の扱い、修正申告の方針)

2027年に固めるべきこと

  • 国内改正のドラフトが出るタイミングを想定し、マスターの改修をテスト環境で回す
  • FTAやEPAの原産地規則がHS版に依存する場合、協定で採用しているHS版と実務適用を棚卸しする
  • 取引条件を見直す(関税負担の帰属、税番変更時の価格条項、通関遅延の責任分界)

2028年の切替直前に必ずやること

  • 申告書、インボイス、品名、製品仕様書の記載と税番の整合性を最終点検
  • システムと帳票の改版日を、米国向けと日本向けで別に管理する
  • 切替日前後の出荷をルール化する(通関日の基準、入港日基準か、搬入日基準か等は制度と運用に依存するため、必ず通関関係者と確認する)

よくある落とし穴:分類変更は関税率だけでなく周辺制度を連鎖させる

  1. 関税率が変わらない場合でも、通商救済措置や追加関税の対象付け替えが起きる
    米国では、HTSUSの改正と同時に、特定措置の対象となる番号体系も整合させる必要があり、CBPが具体的な告知を出します。(GovDelivery)
  2. 原産地規則の判定がズレる
    原産地規則はHSコードに依存するため、分類ズレはそのまま原産地判定ズレにつながります。日本の実務資料でも、HSコードを誤ると税率や品目別規則が変わる旨が繰り返し強調されています。(JETRO)
  3. 社内の番号は更新したのに、通関委託先のシステムが追随していない
    米国はACEの受入れ仕様、日本は税関サイトの版公開と運用文書の更新が現場要件になります。切替期は、番号の正しさだけでなく、相手側システムが受ける形式になっているかが成否を分けます。(GovDelivery)

まとめ:正式ルートを理解すると、準備の打ち手が具体化する

HS2028は2028年1月1日に発効し、各国は国内の立法手続やIT更新を伴って実装します。(World Customs Organization)
米国は、USITCの勧告と大統領布告、Federal Register掲載を軸にHTSUSを更新し、CBPとACEの運用に落ちます。
日本は、関税定率法の別表改正を中心とする法改正に加え、告示・通達・税関サイトの版管理で運用を完成させます。(Ministry of Finance Japan)

この違いを踏まえて、企業側は「国際発効日」だけでなく、「米国はFederal RegisterとCBP告知」「日本は法改正の施行日と税関サイトの公開版」という二つの観測点を持つと、準備が現実的になります。