HS2028相関表の第1ドラフトは、企業のHS移行を「単なるコード置換の作業」から「経営管理とリスクマネジメント」に格上げする起点になります

HS2028相関表と実装期間の位置づけ

2026年1月21日、世界税関機構(WCO)はHS2028改正が受け入れられたことを公表し、2028年1月1日の発効までの2年間を実装期間と位置づけています。wcoomd+2
この発表では、公衆衛生や環境、プラスチック廃棄物や新興製品など、政策課題を反映した改正である点とともに、加盟国および関係者が影響評価と準備を進めるための時間が確保されたことが強調されています。freightnews+1

WCOは、HS改正の実装作業として、相関表の作成、HS解説書や出版物の改訂、ITシステム更新、加盟国による国内法化、教育訓練などを挙げています。wcoomd+1
この流れはHS2022のときと同様であり、HS2028についても、相関表が実務へのブリッジとして中心的な役割を果たすことが想定されます。customsmanager+2

2025年9月に開催されたHS委員会(HSC)第76回会合では、HS2022とHS2028の相関表作成作業を開始し、分かりやすさと使いやすさを高めるためのフォーマット改善が採択されたと報告されています。strtrade+1
この会合の成果として、HS2028の効果的な実装を支える「参考ツール」としての相関表開発が、HSCの重要なタスクの一つに位置づけられています。strtrade+1

企業側の視点で見ると、相関表が公開されるタイミングから、製品マスタ、関税コスト、EPA・FTAの原産地判定、輸出入管理、見積条件、BIの集計軸といった社内データやプロセスが連鎖的に更新され始めます。
相関表は、こうした連鎖の出発点になり得るため、「第1ドラフト」が持つ意味は非常に大きいと言えます。

相関表とは何か:性質と限界

WCOが公表しているHS2017からHS2022への相関表は、HS改正時にどのコードがどのコードに移るのかを示す「移行の地図」として作成されています。wcoomd+1
ただし、WCO自身が強調している通り、相関表はいくつかの重要な前提を伴います。wcoomd+1

  1. 法的拘束力はない
    HS2017–HS2022相関表の説明では、相関表は加盟国や企業が新しい版への移行を準備するためのガイドであり、法的な解釈や分類決定そのものではないと明記されています。wcoomd+1
    したがって、最終的な分類や課税・監査の判断は、各国法令や税関当局の運用に基づいて行われます。
  2. 1対1の単純な置換表ではない
    相関表では、旧サブヘディングから新サブヘディングへの移行が、分岐(旧1コードから新複数コード)や統合(旧複数コードから新1コード)として示される場合があります。[wcoomd]​
    また、旧サブヘディングの一部のみが新サブヘディングに移る場合、接頭辞「ex」が付され、そのコードのうち一部の品目だけが対象であることが示されます。[wcoomd]​
  3. 複数の対応が併記される場合がある
    HS2017–HS2022相関表の解説では、改正や相関の検討過程で、特定品目の現行分類について加盟国間で見解が分かれたケースがあったことが説明されています。[wcoomd]​
    こうした場合、相関表には複数の相関候補が併記され、各国・地域のナショナルまたはリージョナル相関表が、実務上の最終的な対応関係を示す役割を果たすとされています。[wcoomd]​
  4. 相関表は将来修正されうる
    相関表は後から変更や修正が行われる可能性があり、最新版は常にWCOのウェブサイト上にあると明記されています。wcoomd+1
    したがって、ドラフト段階はもちろん、正式版についても版管理と更新確認が企業側の必須作業になります。

これらの性質は、HS2028の相関表でも基本的に踏襲されると考えるべきであり、「相関表に書いてあるから安全」という前提で動くことは危険です。customsmanager+2

なぜ第1ドラフトが企業にとって重要なのか

HS改正では、発効日までの実装期間の間に、WCOと各国が相関表や解説書、ITシステムなどを順次整備していくことが制度的に組み込まれています。ddcustomslaw+2
HS2028についても、改正の受入れが公表されてから発効日までの2年間で、相関表作成と関連ツールの更新が進められることが示されています。linkedin+2

この文脈で、第1ドラフトは企業にとって「検証と準備を始める合図」となります。
経営視点で整理すると、次の三つの意味があります。

  1. 影響範囲を数量的に把握できる
    自社が現在使用しているHS2022の6桁コードを相関表に当てることで、どのコードがそのまま維持され、どこが分岐し、どこが統合されるかが見える化されます。wcoomd+1
    これに売上高、利益率、数量、主要仕向地などを掛け合わせることで、どの品目群から優先的に見直すべきか、作業量とリスクを定量的に把握できます。
  2. 経営レベルの意思決定が必要な論点が露出する
    旧1コードが新複数コードに分岐する場合や、exが付されて一部のみが新コードに移る場合、自社製品がどの定義に当てはまるかを判断する必要があります。[wcoomd]​
    分岐の選択は、監査や訴訟時の説明責任にも直結するため、現場担当だけでなく、法務・コンプライアンスを含む会社としての方針決定が求められます。
  3. システム要件の具体化が進む
    新旧コードの併存、適用開始日の管理、過去データの再集計など、ITシステム側で必要となる要件が、相関表ドラフトを前提に具体的に設計できるようになります。ddcustomslaw+1
    単なる「コード検索機能」ではなく、「年版と適用日の版管理」を前提とした設計が求められます。

相関表ドラフトの実務的な読み方

相関表は、眺めて満足する資料ではなく、自社データに当てて初めて意味を持ちます。
ドラフト段階で企業が取るべき実務ステップは、次のように整理できます。

ステップ1 影響度のスクリーニング

  • 自社のHS2022の6桁コード一覧を作り、相関表上で変化のあるコードを抽出する。wcoomd+1
  • そのコードに紐づく売上・利益・数量・主要仕向地を付け、影響度の高い順に優先順位を付ける。
  • まずは「分岐」「統合」「ex」が関係するコードを上位から検討し、リスクの大きい箇所を先に潰す。

相関表は後から修正されうるため、初期段階で全品番を完全にやり切ることを目指すよりも、高リスク領域から段階的に精度を上げていく方が現実的です。wcoomd+1

ステップ2 分岐・統合の意思決定基準を作る

分岐やexが伴う移行では、最終的に「商品の定義」を読み解く作業が必要になります。[wcoomd]​
HS2028の改正は、公衆衛生、環境、廃棄物管理、新興製品など政策目的との紐づけが強いことが特徴とされており、定義の読み込みとそれを裏付ける証拠がより重要になります。freightnews+1

ドラフト段階でやるべきことは、最終コードを急いで決めることではなく、社内の判断基準を言語化することです。具体的には、次の切り口で基準を整理します。

  • 用途で区分されるのか(民生用、産業用、医療用など)
  • 材質で区分されるのか(プラスチック廃棄物の種類など)
  • 機能で区分されるのか(医療機器、測定機器、通信機器など)
  • 規制目的で区分されるのか(特定条約や環境規制の対象か否かなど)

この基準を各事業部門と共有できる形にしておくことで、正式版相関表や各国税関の運用が明らかになった段階で、スムーズに最終判断につなげることができます。linkedin+2

ステップ3 ドシエ型で分類根拠を残す

WCOは相関表について「法的文書ではないが、新版HS導入準備に不可欠なツール」と位置づけています。[wcoomd]​
逆に言えば、企業は「なぜその新コードに移行したのか」を自ら説明できるようにしておく必要があります。

実務上は、次の要素をセットでドシエ化する形が有効です。

  • 製品説明(材質、構造、主要機能、用途、写真・図面など)
  • 現行HSコードの根拠(関税分類表の条文、部・類注、品目注、関連する解説書の要点)
  • HS2028側で変化する定義の要点(新設・改正される見出しやサブヘディングの趣旨)freightnews+1
  • 相関表上での位置づけ(分岐か統合か、exが付されているかどうか)wcoomd+1
  • 社内判断の結論と、その判断に用いた製品仕様・用途情報

このような形で分類ドシエを整備しておけば、後に税関から照会を受けた場合や、内部監査・グローバル税務調査の場面でも、一貫した説明が可能になります。

ステップ4 ITは「版管理」前提で設計する

WCOは、相関表や解説書、出版物、ITシステムなどがHS改正の実装期間に更新されると説明しており、各国税関システムもこれに合わせて改修されます。customsmanager+2
企業側も同様に、HS改正を見据えたシステム設計を前倒しで進める必要があります。

推奨される設計の考え方は次の通りです。

  • HS年版(例:HS2022、HS2028)をマスタ項目として保持する
  • 適用開始日をキーにして、新旧コードを自動で切り替えられるようにする
  • 移行期間中は、新旧コードの併記や両方での検索を許容する
  • 過去の取引データが、どの年版のHSコードに基づいているか追跡できるようにする

こうした「版管理」が最初から組み込まれていないと、後から改修する際にコストと工期が膨らみがちです。
HS2028相関表のドラフトが出た段階で、要件定義と影響度見積りを始めておくことが、IT投資を最適化するうえでも重要です。ddcustomslaw+1

経営者が押さえるべきリスクと機会

相関表ドラフトは、リスクと機会の両面で経営に直結します。

リスク面では、次の点が挙げられます。

  • 誤申告や監査指摘のリスク
    相関表はガイドであっても、分岐やexの判断を誤れば、その選択の説明責任は企業に残ります。wcoomd+1
  • 関税・追加関税コストの読み違い
    新コード側で税率や追加関税の対象が変わると、見積条件や価格戦略の前提が崩れる可能性があります。
  • EPA・FTAの原産地判定の混乱
    多くの原産地規則(PSR)はHSコードベースで構成されており、品目の移行が遅れれば、原産地証明の運用やサプライチェーン設計に支障が出ます。

一方、機会としては次のような効果が期待できます。

  • 製品マスタと技術情報の品質向上
    分岐判断には詳細な仕様情報が不可欠であり、その整備は分類だけでなく、購買分類、規制管理、品番統合、製品戦略の精度向上にも寄与します。
  • 通関・分類実務の属人化の軽減
    ドシエ化と判断基準の明文化によって、担当者の異動や委託先の変更があっても、組織として一貫した判断を維持しやすくなります。
  • HSを軸にした経営データの再設計
    HS改正に合わせてBIや収益管理の集計軸を見直すことで、国・製品・顧客別の収益性分析やリスク分析の精度を高めることができます。

この2年間で企業が取り組むべきこと

HS2028は2028年1月1日に発効し、その前の2年間でWCOと加盟国は相関表や解説書の更新、ITシステムの改修を進めていきます。linkedin+2
HS委員会では既にHS2022とHS2028の相関表作成作業が開始され、フォーマット改善も含めた実務ツール整備が動き出しています。strtrade+1

企業側がこの期間に重視すべきポイントは、次の三つに整理できます。

  • 影響度の高い品番から、分岐・統合・exを優先的に検討する
  • 判断基準を先に作り、分類ドシエで根拠とプロセスを記録する
  • コード置換ではなく、HS年版と適用日を軸にした版管理としてITを設計する

HS2028相関表の第1ドラフトは、単なる参考資料ではありません。
自社の分類体系とデータ構造を、次の8年間を見据えて再設計するためのスタートラインとして位置づけることが、グローバルサプライチェーンを持つ企業の経営課題になっていくでしょう。customsmanager+2

日本の税関が公表した「HSコード分類ドシエ」の作成ガイドライン(AI活用編)は、

なぜ今「HSコード分類ドシエ」なのか

国際取引の高度化に伴い、同じ商品でも構造や機能が複雑化し、HSコードの判断に揺らぎが生じやすくなっています。rieti+1
税関側もAIやデータ分析を活用した審査を進めており、単に番号だけを申告する従来型のやり方では、疑義照会や事後調査のリスクが高まっています。global-scm+1

こうした状況の中で、税関は企業に対し、HSコードの結論だけでなく、その結論に至る「分類根拠」を体系的に示す文書として、ドシエの整備を強く求める方向に舵を切りました。[youtube]​global-scm+1
ドシエは、通関停滞や追加照会、再分類などの不確実性を減らし、サプライチェーン全体の時間とコストを安定させるための説明責任インフラと位置付けられています。global-scm+2

ドシエに求められる中身と構造

ドシエとは、特定商品について「どのHSコードを、なぜ採用したのか」を、事実と論理で説明するためのファイルです。global-scm+1
難解な文章を増やすことではなく、誰が見ても同じ結論にたどり着けるよう情報を整理することが目的です。global-scm+1

一般的に盛り込むべき要素は、次の三つに整理できます。global-scm+1

  • 製品の客観的な仕様情報
    材質、構造、主要機能、用途、製造工程、構成部品、性能値、型番体系など、分類判断に影響する要素を網羅的に記録します。global-scm+1
  • 根拠となる証拠資料
    図面、仕様書、カタログ、写真、SDS、試験成績、工程表など、客観的に確認できる資料を紐づけます。global-scm+1
  • 候補コードと除外理由
    最終的に採用したHSコードだけでなく、他に考え得た候補コードと、その候補を採用しなかった理由を整理します。global-scm+1

特に税関が重視するのは、「なぜ他のコードではないのか」という除外理由部分です。global-scm+1
候補と論点を先に分解しておくことで、審査の起点が企業と税関の間で共有され、照会の往復回数を減らす効果が期待できます。global-scm+2

税関がドシエとAI活用を推奨する背景

日本の税関は、審査の高度化と効率化のためにAIを組み込んだ通関システムへの移行を進めています。rieti+1
AI審査では、申告内容の一貫性や論理構造がこれまで以上に重視され、説明が曖昧な申告は自動的にリスク高と判定される可能性があります。global-scm+1

ドシエによって分類根拠が明確に示されていれば、税関側のAI審査や人による確認で疑義が生じる余地が小さくなり、審査の優先度を上げやすいとされています。[global-scm]​
税関が「ドシエ添付申告を優先的に審査する」という運用に移れば、ドシエの有無がリードタイムに直結する環境になることも想定されます。global-scm+2

また、企業側にとっても、ドシエを標準化することで次のようなメリットが生じます。rieti+2

  • 社内でのHSコード判断のばらつきを減らし、属人化を防ぐ
  • 複数拠点・複数ベンダー間で分類ロジックを共有しやすくなる
  • 税関からの事後調査や再分類の際に、過去の判断を迅速に説明できる

通関現場だけの課題に留まらず、調達、物流、経理、経営の各レイヤーに影響する「経営インフラ」として位置付け直す必要があります。rieti+2

企業が取るべき実務対応とAI活用の勘所

ビジネスマンの視点では、「明日から何を変えればよいか」が最も重要です。ここでは、具体的なステップとAI活用のポイントを整理します。global-scm+3

  1. 対象品目の優先順位付け
    年間の輸入金額が大きい品目、税率差が大きい品目、過去に税関照会や再分類が多かった品目からドシエ整備を始めます。rieti+2
  2. ドシエのテンプレート設計
    全社共通で使えるフォーマットを用意し、項目定義を明確にします。製品仕様欄や候補コード欄、除外理由欄、根拠資料一覧などを標準化することで、担当者が変わっても品質を維持できます。global-scm+1
  3. 社内情報源の棚卸し
    設計部門、品質保証、営業、購買など、どの部署がどの情報を持っているかを整理します。ドシエ作成は通関担当だけでは完結せず、横断的な情報連携が必須です。global-scm+1
  4. AIを使う場面と使わない場面の線引き
    AIは、候補コードの洗い出し、条文や解説の要点抜き出し、類似品の過去事例検索などで有効です。global-scm+1
    一方で、最終コードの決定や税関との交渉は、人が責任を持って行うべき領域です。[rieti.go]​
  5. 生成AIと専用ツールの役割分担
    一般的な生成AIは、通関実務の補助や文書構成案の作成に向いていますが、最新の品目別分類や各国の解釈まで自動で保証するものではありません。[rieti.go]​
    HSコードに特化したAIツール(例として、分類根拠整理や候補比較を支援するソリューションなど)が提供されつつあり、証拠収集から論点整理、文書化までを一気通貫でサポートする選択肢も出ています。global-scm+2
  6. 税関とのコミュニケーション設計
    事前教示制度や相談窓口の活用を前提に、ドシエを用いた説明のフローを社内マニュアル化します。[rieti.go]​
    ドシエを共有しながら税関と認識を合わせていくことで、後戻りコストを抑えられます。[youtube]​global-scm+1

実務イメージの一例

例えば、複合機能を持つ電子機器を輸入する場合を考えます。
通関担当は、設計部門から構造と機能の一覧を入手し、AIツールで類似品の分類事例や候補コードの候補をリストアップします。global-scm+3
その上で、関税率や過去の照会履歴を踏まえつつ、人が条文と解釈を読んで最終コードを判断し、「なぜ他ではないのか」をドシエに記録します。global-scm+2
完成したドシエは、次回以降の申告や他国での分類検討にも再利用でき、社内の統一ルールとして機能することになります。global-scm+3

ビジネスマンが押さえるべきポイント

最後に、経営層や事業責任者を含むビジネスマンが理解しておきたい要点を整理します。global-scm+3

  • HSコードは、単なる通関コードではなく、関税負担、FTA活用、サプライチェーン全体の設計に直結する「経営数値」である
  • ドシエは、担当者の頭の中にある暗黙知を形式知化し、AI審査時代の説明責任を果たすための基盤である
  • AIの役割は、候補整理と情報抽出、文書化の効率化であり、最終判断の責任を肩代わりするものではない
  • ドシエ整備をプロジェクトとして位置付けることで、通関リードタイムの短縮とリスク低減を同時に狙うことができる

今後、税関の運用がさらにAI志向にシフトすれば、きちんと作り込まれたドシエを持つ企業とそうでない企業の間で、通関スピードとリスク対応力に明確な差が生まれる可能性があります。global-scm+3
現場任せにせず、組織として早めに体制を整えることが、中長期の競争力維持につながると言えるでしょう。global-scm+2

写真だけの“無茶ぶりデモ”で、HSCFが本気を出した日

先日、自動車部品関連の会社へ伺い、HSCFのデモを実施してきました。
会場の空気は終始なごやか。雑談もはさみながら、肩の力を抜いてスタート……のはずが、いきなり飛んできたのは、HSCFにとってかなり手強いお題でした。

今回の条件はシンプル、しかし苛烈。
文字情報はゼロ。写真だけ。

お題その1:断面写真、ぱっと見は「お菓子」

一つ目は断面を写した写真。
一瞥すると、正直「これ、お菓子じゃない?」と思っても不思議じゃない見た目。
材料も用途も書かれていない。ここからHSコードの方向性を掴むのは、人間でも悩むやつです。

お題その2:粉末の小山、何にでも見える

二つ目は粉末が小山になった写真。
砂?顔料?金属粉?樹脂?鉱物?
見る人の想像力に合わせて姿を変える、まさに“正体不明”。

「これは厳しい」からの、トライアル開始

思わず口から出たのは、
「これは厳しいですね……」
という率直なひと言。

でも、だからこそやってみる価値がある。
そのままトライアルを開始しました。

結果は、100%の正解ではありませんでした。
ただ、出てきた答えは驚くほど近い。

その瞬間、お客さまの表情が変わりました。
「え、そこまで行くんですか」
という驚きが、空気にスッと混ざる感じ。あれは忘れられません。

追加情報で確度90%へ。到達が早いのは正義

さらに、追加の情報を入力して条件を補強。
すると、確度90%まで一気に到達しました。

この「答えにたどり着くまでの時間が短い」ことが、実務では本当に効きます。
迷いの時間が減る。社内確認の回転が速くなる。次の作業にすぐ移れる。
このスピード感は、デモの場でもはっきり体感できました。

観察眼が鋭い。写真から“消去法”で絞り込む力

特に印象的だったのが、観察にもとづく絞り込みです。例えば、

「金属粉末特有の強い光沢や、片状黒鉛の反射は見られない。」

こうした見立てが入ると、候補が一気に狭まります。
写真だけという不利な条件でも、見える特徴から外せる選択肢を外していく。
この“静かな推理”が効いてくるのは、なかなか痛快でした。

まとめ:難題でこそ見える、HSCFの実力

今回のデモは、いわば写真だけの無茶ぶりテスト。
それでもHSCFは、かなり近い答えを返し、追加情報で確度90%まで短時間で到達しました。

現場で感じたのは、これです。
難しいからこそ、価値が浮かび上がる。
そして、答えに近づくスピードは、実務を前に進める力になる。

次は、もう一段“意地悪”な課題でも試してみたくなりました。

日本の通関実務におけるパラダイムシフト:HSコード分類根拠書の電子提出推奨がもたらす未来


2026.01.29 | 貿易実務・通関

2026年1月26日、日本の貿易実務において、静かですが極めて重要な変革が始まりました。財務省関税局が、輸入申告時におけるHSコード分類根拠書(通称:ドシエ)の電子的な添付を、強く推奨する運用方針を打ち出したのです。

これまで、輸入申告におけるHSコードの決定プロセスは、企業のブラックボックスの中にありました。税関への申告は結果としての数字(コード)を伝えるだけで、なぜその数字を選んだのかという理由まで求められることは稀でした。しかし、今回の新しい運用は、その慣習を過去のものにしようとしています。

本記事では、このニュースが示唆する税関の意図と、ビジネスマンが今すぐ取るべき対応策について深掘りします。

デジタル時代の通関はプロセス重視へ

今回、税関が推奨を開始したドシエの電子提出とは、単にHSコードを入力するだけでなく、そのコードを選定した論理的な根拠を示した文書を、API連携やシステムを通じてデジタルデータとして添付することを指します。

従来のアナログな書類提出とは異なり、データとして提出することで、税関の審査システムが自動的に内容を解析できる点が画期的です。

なぜ税関はこのようなデータを求めているのでしょうか。最大の理由は、サプライチェーンの複雑化と製品の高度化です。一見しただけでは分類が困難な物品が増える中で、税関職員がゼロから審査を行うコストは限界に達しています。そこで、輸入者側からあらかじめ正解への道筋を提示してもらい、審査を効率化したいという狙いがあります。

分類根拠書(ドシエ)に記載すべき3つの要素

では、具体的にどのようなデータを準備すればよいのでしょうか。税関が期待するドシエには、主に以下の3つの要素が含まれている必要があります。

第一に、製品の客観的な仕様です。

カタログのコピーだけでは不十分です。材質の構成比率、主要な機能、使用用途など、分類の決め手となるスペックを明確に整理する必要があります。

第二に、法的根拠の引用です。

これが最も重要です。単にパソコンだからという理由ではなく、関税率表の解釈に関する通則1に基づき、第84類の注5(E)を適用した結果といったように、関税法上のルール(通則、部注、類注)を引用して論理を構成します。

第三に、参考とした先例です。

過去の事前教示回答事例や、世界税関機構(WCO)の解説書、あるいは類似品に関する他国の分類事例などを記載することで、自社の判断が客観的なものであることを証明します。

企業にとってのメリット:防御から攻撃への転換

一見すると事務負担が増えるだけの施策に見えますが、戦略的な実務担当者にとっては、これは自社を守る強力な武器になります。メリットは大きく分けて二つあります。

一つ目は、通関スピードの劇的な向上です。

ドシエによって分類の根拠が明確に示されていれば、税関のAI審査や検査官が疑義を抱く余地が少なくなります。今回の新運用では、ドシエが添付された申告は審査の優先順位が上がるとされており、結果として貨物が止められることなくスムーズに許可される確率が高まります。

二つ目は、事後調査におけるリスク低減です。

これが最も重要な点です。もし万が一、申告したHSコードが誤りだったとしても、事前にしっかりとした根拠書を提出していれば、企業側には正当な注意義務を果たしたという証拠が残ります。これにより、悪質な虚偽申告や重加算税の対象となるリスクを回避し、単なる修正申告で済む可能性が高まります。つまり、ドシエは企業にとっての保険として機能するのです。

テクノロジーによる自動化が鍵

とはいえ、すべての輸入案件で詳細なドシエを人間が手書きで作成するのは現実的ではありません。今回のニュースの肝は、これを電子提出(API連携)で推奨している点にあります。

製品データを入力すれば、該当する法的根拠を引用し、論理構成まで含めたドシエを自動生成し、そのまま通関システムへ連携できるAIツールの活用が、これからのスタンダードになるでしょう。人間はAIが作った論理を最終確認するだけで済むようになれば、負担を増やさずにコンプライアンスレベルを最高水準に引き上げることが可能です。

まとめ

2026年1月26日は、日本の通関が結果主義からプロセス重視へと舵を切った日として記憶されるかもしれません。

税関からのメッセージは明確です。「あなたの会社の論理をデジタルで見せてください」。この問いかけに対し、テクノロジーを活用してしっかりとしたドシエで応えられる企業だけが、通関トラブルとは無縁のホワイトな物流を実現できるのです。変化を恐れず、根拠ある申告を武器にビジネスを加速させていきましょう。

HS2028改正後のEU動向と原産地証明の実務指針:2028年に備える「二重管理」のススメ


2026年1月現在、HS条約の第8次改正となる「HS2028」はすでにWCO(世界税関機構)理事会で採択・受諾され、2028年1月1日の発効に向けてカウントダウンが始まっています。

EU向けにビジネスを行う企業にとって、今回の改正は単なるコードの書き換えでは済みません。特に注意が必要なのが、「通関用コード」と「EPA/FTA用コード」のズレから生じる原産地証明の事故リスクです。

本記事では、HS2028導入に向けたEUの動向と、企業がいま準備すべき実務指針について、信頼できる一次情報をもとに解説します。


1. 確定したタイムライン:HS2028は2028年1月1日発効

WCOの公式発表によれば、HS2028改正は2028年1月1日に発効することが確定しています。今回の改正は299セットの変更を含み、環境物品や新技術製品の分類を明確化するための大規模な見直しとなります。

WCOは現在、新旧コードの対応関係を示す**相関表(Correlation Tables)**の作成など、円滑な移行に向けた準備を進めています。企業の実務担当者にとって、この相関表は自社製品が新旧どのコードに該当するかを確認する上で最も重要な羅針盤となります。


2. EUの動き:CNコードとTARICの自動更新

EUでは、HSコードをベースに独自の細分を加えた**CN(Combined Nomenclature)を統計および関税分類の基礎としています。EU委員会(Taxation and Customs Union)によると、CNは毎年更新され、通常は前年の10月末までに翌年版が官報(Official Journal)**に掲載されます。

実装のメカニズム

  • CNの更新: HS2028の発効に合わせ、EUは2027年秋ごろに公布される「CN 2028」にて、HS2028の内容を全面的に取り込むことになります。
  • TARICとの連携: 加盟国の税関システムと日次で連携する統合データベースTARICも、このCN更新に基づいて自動的に整備されます。

つまり、EUへの輸出においては、2028年1月1日時点で現地の輸入通関システムがHS2028ベースに切り替わっているため、輸出者側も最新コードでのインボイス作成が必須となります。


3. 最大のリスク:原産地規則における「版のズレ」

HSコードが変わる際、最も事故が起きやすいのが原産地証明のプロセスです。

なぜ事故が起きるのか

多くのEPA(経済連携協定)やFTAでは、原産地規則(PSR)が特定のHSバージョンの分類に基づいています。

例えば、日EU・EPAの品目別規則は、HS2017版の分類体系を参照しています。

  • 通関現場: 2028年1月1日以降、最新のHS2028で申告する必要がある。
  • 原産地判定: 協定が改正されない限り、引き続きHS2017の基準で判定しなければならない。

この「通関用コード」と「判定用コード」の乖離を見落とすと、本来満たしているはずの関税分類変更基準(CTHなど)が満たせないと誤認したり、逆に満たしていないのに証明書を発行してしまうコンプライアンス違反につながります。


4. 日EU・EPA実務の再確認:自己申告制度の鉄則

日EU・EPAでは、輸出者自身が原産性を証明する「自己申告制度」が採用されています。実務上の要件を改めて整理しておきましょう。

  • 原産地申告文(Statement on Origin): 商業書類(インボイス等)に所定の文言を記載して作成します。
  • 有効期間: 作成日から12か月間有効です。
  • 長期申告: 同一産品の複数回出荷に対し、最大12か月間有効な包括的な申告を行うことも可能です。
  • 保存義務: 輸出者は、申告の写しおよび原産性の根拠資料を少なくとも4年間保存する義務があります。
  • 言語: 商業書類と同じ言語(英語など)で記載することが推奨されています。

特に重要なのは、輸出者参照番号として**法人番号(13桁)**を使用することです。記載がない場合でも直ちに無効とはなりませんが、EU税関からの照会リスクを避けるため、必ず記載する運用を徹底すべきです。


5. 企業が今やるべき3つのアクションプラン

2028年に向けた混乱を防ぐため、今のうちから以下の「HSの版の違いに耐える設計」を導入することを推奨します。

① 品目番号の「二重管理」体制を作る

社内の製品マスタに、以下の2つのフィールドを設け、それぞれ独立して管理できるように改修します。

  1. 通関申告用コード: 最新版(将来のHS2028/CN2028)
  2. 原産地判定用コード: 協定参照版(日EU・EPAならHS2017)

② 根拠資料(ドシエ)の固定化

原産地検認(事後調査)に備え、以下のセットを案件ごとに、あるいは製品ごとに保管(ドシエ化)します。

  • HS2017ベースでの分類根拠
  • 適用したPSR(関税分類変更基準や付加価値基準の計算根拠)
  • 部品表(BOM)とサプライヤーからの証明書

③ 影響品目の早期抽出

HS2028では、環境物品や新技術製品を中心にコードが細分化されます。自社の取扱品目が改正対象に含まれているか、WCOの相関表が出次第すぐに確認し、影響度を洗い出しましょう。


まとめ

HS2028は2028年1月1日に確実にやってきます。

EU側はCNとTARICを通じてシステム的に対応を進めますが、企業側で最も警戒すべきは**「通関は最新コード、原産地判定は旧コード」**という二重基準の運用です。

今のうちからマスタデータの二重管理体制を整え、協定ごとの参照バージョンを意識した業務フローを確立しておくことが、2028年以降もスムーズなEUビジネスを継続する鍵となります。

産業用ロボットの定義が激変。WCOによるスマート製造ロボット定義確定がもたらす未来


2026年1月28日、世界税関機構(WCO)の技術委員会から、世界の製造業と貿易実務に大きな影響を与える重要な合意事項が発表されました。それは、2028年のHSコード改正に向けた、スマート製造ロボットの定義の確定です。

これまで、単調な繰り返し作業を行うアームロボットも、AIを搭載して自律的に判断する高度なロボットも、貿易上は同じ産業用ロボットとして一括りにされてきました。しかし、今回の決定により、その歴史が終わろうとしています。

本記事では、この新しい定義が何を意味するのか、そしてメーカーや商社が2028年に向けてどのような準備をすべきかについて解説します。


産業用ロボットの分類における長年の課題

現在、多くの産業用ロボットはHSコード第8479.50項に分類されています。このコードは他掲のものを除く産業用ロボットという非常に広い定義であり、自動車工場で溶接を行う従来型のアームも、物流倉庫で障害物を避けながら荷物を運ぶ自律走行搬送ロボット(AMR)も、すべて同じ番号で申告されてきました。

しかし、技術の進化により、この大雑把な分類は限界を迎えていました。AIによる学習機能や判断能力を持つロボットと、単なるプログラム通りに動く機械を区別できないことは、適切な関税政策や安全保障貿易管理を行う上で大きな障害となっていたのです。


今回確定したスマート製造ロボットの定義

WCOが今回合意した技術指針によると、従来のロボットとスマートロボットを分ける決定的な要素は、自律的適応能力の有無です。

具体的には、以下の要件を満たすものが、2028年改正で新設される独立項(コード)の対象となります。

  • 外部環境の認識能力センサーやカメラを通じて周囲の状況をリアルタイムで把握できること。
  • 作業プロセスの自己修正能力あらかじめプログラムされた動作を繰り返すのではなく、認識した状況に基づいて、ロボット自身が動作の軌道や力加減、手順を最適化できること。
  • AIとの統合機械学習やディープラーニングのアルゴリズムを内蔵、またはクラウド経由で利用し、経験に基づいてパフォーマンスを向上させる機能を有していること。

つまり、人間が細かく指示しなくても、自分で考えて動くロボットだけが、新しい分類の対象となります。


ビジネス実務への具体的な影響

この定義変更は、単なる名称の変更ではありません。実務には以下のような影響が出ると予想されます。

1. 関税率と協定税率の変化

新しいコードが設定されることで、従来適用されていた関税率が変わる可能性があります。特に注目すべきは、情報技術協定(ITA)の適用範囲です。スマートロボットがIT製品としての性格を強く認められれば、より多くの国で無税扱いとなる可能性があります。一方で、保護主義的な政策をとる国では、ハイテク製品として新たな関税が設定されるリスクもあります。

2. 安全保障貿易管理の厳格化

AIを搭載したロボットは、軍事転用可能なデュアルユース技術とみなされやすくなります。HSコードが独立することで、輸出管理の対象として特定されやすくなり、該非判定や輸出許可の審査がこれまで以上に厳格化されることが予想されます。

3. 設備投資計画への影響

減価償却期間や補助金の対象認定において、政府がこの新しいHSコードを参照する可能性があります。スマートロボットと認定されることで、税制優遇を受けやすくなる国も出てくるでしょう。


企業が今から準備すべきこと

2028年の発効まではまだ時間があるように思えますが、製品開発のサイクルを考えれば、対応は今すぐ始めるべきです。

まず、自社の製品ラインナップや導入予定の設備が、今回のWCO定義に当てはまるかどうかを技術的な観点から検証してください。特に、適応能力の有無は、カタログスペックだけでは判断が難しいグレーゾーンになりがちです。

次に、輸出入管理システムのマスタデータ更新計画です。2028年には大規模なコードの書き換えが発生します。どの製品が新コードに移行し、どの製品が旧コードに残るのか、分類ロジックの再構築が必要です。


まとめ

WCOによるスマート製造ロボットの定義確定は、貿易ルールがようやくテクノロジーの進化に追いつこうとしている証拠です。

この変化をリスクと捉えるか、それともサプライチェーンを最適化するチャンスと捉えるか。その分かれ目は、この新しい定義を正しく理解し、自社の戦略に組み込めるかどうかにかかっています。2028年を見据えた準備は、今日から始まっています。

日本の通関実務が激変。税関が求めるHSコード分類根拠書、その真意と対策

2026年1月26日、日本の貿易実務の現場において、極めて重要な運用変更が静かに、しかし確実に動き出しました。財務省関税局が、輸入申告時におけるHSコード分類根拠書(通称:ドシエ)の任意提出を、これまで以上に強く推奨する方針を打ち出したのです。

これは単なる事務手続きの追加ではありません。これまでの結果としての数字(コード)さえ合っていればよいという時代から、なぜその数字を選んだのかというプロセス(論理)が問われる時代へと、パラダイムシフトが起きたことを意味します。

本記事では、このニュースの背景にある税関の意図と、ビジネスマンが今すぐ着手すべき具体的な対策について深掘りします。

税関が求めているのは正解へのプロセス

今回、税関が推奨を強化したドシエの提出とは、輸入申告書にHSコードを記載する際、その分類に至った論理的な根拠を記した文書を添付することを指します。

これまで、多くの企業はHSコードという結果のみを申告してきました。しかし、製品がハイテク化し、一見しただけでは機能や材質が判別できない物品が急増しています。税関職員がゼロから製品を調査し、コードの正誤を判断するには膨大な時間が必要です。そこで税関は、輸入者側にあらかじめ正解への道筋(ガイドマップ)を提示してもらうことで、審査を効率化しようとしているのです。

根拠書(ドシエ)に記載すべき3つの要素

では、具体的にどのような資料を作成すればよいのでしょうか。税関が期待するドシエには、主に以下の3つの要素が含まれている必要があります。

第一に、客観的な製品仕様です。

カタログのコピーだけでは不十分です。材質の構成比率、主要な機能、使用用途など、分類の決め手となるスペックを明確に整理する必要があります。

第二に、法的根拠の引用です。

これが最も重要です。単に「パソコンだから」という理由ではなく、「関税率表の解釈に関する通則1に基づき、第84類の注5(E)を適用した結果」といったように、関税法上のルール(通則、部注、類注)を引用して論理を構成します。

第三に、参考とした先例です。

過去の事前教示回答事例や、世界税関機構(WCO)の解説書、あるいは類似品に関する他国の分類事例などを記載することで、自社の判断が独りよがりなものではないことを証明します。

企業にとってのメリット:防御から攻撃への転換

一見すると、ドシエの作成は企業にとって負担増に思えるかもしれません。しかし、戦略的な実務担当者にとっては、これは自社を守り、物流を加速させる強力な武器となります。

最大のメリットは、通関リードタイムの短縮です。

ドシエによって分類の根拠が明確に示されていれば、税関検査官が疑義を抱く余地が少なくなります。不必要な質問や検査が減り、結果として貨物がスムーズに許可される確率が飛躍的に高まります。

もう一つのメリットは、事後調査におけるリスク管理です。

数年後に税関の事後調査が入り、万が一、申告していたHSコードが誤りだったと判定された場合でも、事前にしっかりとした根拠書を提出していれば、企業側には「正当な注意義務」を果たした証拠が残ります。これにより、悪質な虚偽申告として重加算税を課されるリスクを回避し、単なる修正申告で済む可能性が高まります。つまり、ドシエは企業のコンプライアンスを守る保険として機能するのです。

なんとなくの分類からの脱却

これまで多くの中小規模の貿易現場では、前回と同じだから、あるいは輸出者がそう言っているから、といった曖昧な理由でHSコードが決められてきました。しかし、今回の税関の動きは、そうした根拠のない分類はもはやリスクでしかないというメッセージでもあります。

今後、優秀な貿易担当者の条件は、単にコード表を検索できることではなく、そのコードである理由を文書化できる能力へとシフトしていくでしょう。

テクノロジーの活用が鍵を握る

とはいえ、すべての輸入案件で詳細なドシエを人間が手書きで作成するのは現実的ではありません。ここで重要になるのが、AIやデジタルの活用です。

製品データを入力すれば、該当する法的根拠を自動的に引用し、論理構成まで含めたドシエの下書きを生成してくれるツールの導入が、企業の競争力を分けることになります。人間はAIが作った論理を最終確認するだけで済むようになれば、業務負荷を増やさずに、コンプライアンスレベルを最高水準に引き上げることが可能です。

まとめ

2026年1月26日を境に、日本の通関実務はプロセス重視へと舵を切りました。税関からの「あなたの会社の論理を見せてください」という問いかけに対し、しっかりとしたドシエで応えられる企業だけが、通関トラブルとは無縁の強固なサプライチェーンを構築できるのです。変化を恐れず、根拠ある申告を武器にビジネスを進化させていきましょう。

センサーのHSコードで迷う「9026」と「9031」

国別分岐を間違えないための実務ガイド

センサーは見た目が似ていても、「何を測るのか」「どこまでの機能を持つのか」でHSコードが変わります。特に迷いやすいのが9026と9031です。
6桁までは国際的に共通性がありますが、8桁以降は国・地域で異なる枝分かれになります。輸出入の現場では、この国別分岐の違いが関税、原産地判定、通関リードタイム、監査対応に直結します。
(参考:Data.gov

この記事では、センサー分類で頻出する9026と9031の境界を実務的な判断軸で整理し、日本・米国・英国・EUにおける国別分岐までを明確に解説します。


前提:HSコードは輸入国税関の判断が基準

HSコードは、社内で決めた番号を一方的に通すことはできません。実際に基準となるのは輸入国税関の判断です。輸出者側の想定と輸入国側の認定が異なるケースも珍しくありません。
またEPA・FTAの適用にはHSコードが前提となるため、分類を誤ると適用税率や品目別規則の解釈がズレるリスクがあります。
(出典:JETRO

このため、社内で「おすすめ分類」を設計する際は、輸入国側でも通用する論拠と証拠を整えることが前提となります。


9026と9031の違い

判断の焦点は「測定対象」と「他の見出しに当てはまるか」

9026の範囲

液体または気体の流量・液位・圧力などの変量を測定・検査する機器。流量計、液位計、マノメーター、熱流量計などが該当します。
(出典:関税庁

測定対象が液体または気体であり、その変量を明確に測る場合は9026が第一候補です。

9031の範囲

この章で他の見出しに特定されない測定または検査用の機器・装置・機械が対象です。つまり、9031は章内で分類できない機器の「受け皿」となります。
(出典:関税庁

ただし受け皿である分、**「なぜ他の見出しではないか」**という説明が求められます。


実務で起きやすい誤分類

  1. 液体も固体も測定できるレベル計
     液位の測定は通常9026に分類されますが、米国では液体と固体の両方を測定可能なレーダー式レベル計が9031に分類された例があります。
     (例:CustomsMobile)
     → カタログに「粉体にも対応」と記載があるだけで9026主張が難しくなる場合があります。
  2. 圧力を使用しているが、測っているのは圧力そのものではない
     測定原理として圧力を用いていても、測定対象が「圧力」でなければ9026は適用困難です。測定対象が寸法や特性の場合、9031が優勢になります。
  3. 単体機能か部分品か
     製品が単独で測定を完結できるか否かで分類が変わります。米国では、コリオリ式質量流量計のコンバーターが「部分品」として9026.90.2000に分類されています。
     (出典:CustomsMobile

再現性を高める判断フロー

  • 測定対象を一文で言い切る(例:液体の流量、タンク内液位、圧力、振動など)。
  • 対象が液体または気体なら9026を優先検討。
  • 固体にも対応する場合は9031側を検討。
  • 単体機能がなければ部分品コード(9026.90、9031.90など)も確認。
  • 国別8桁以降では電子式・非電子式・航空機用などの枝を精査。

国別分岐の考え方

まず6桁で分類を固め、その後、各国の枝分かれを確認するのが安全です。

日本

  • 9026.10:液体の流量・液位測定機器
  • 9026.20:圧力測定機器
  • 9026.80:その他液体・気体変量測定機器
  • 9031.80:他の見出しに属さない測定機器
    (出典:関税庁

事前教示制度を活用し、グレーなケースは税関回答を取得しておくと監査耐性を高められます。
(参照:税関総合ポータル

米国

  • ノックセンサー:9031.80.8070
  • レーダー式レベル計:9031.80.8085
  • 流量計コンバーター(部分品):9026.90.2000
    (参照:CBP Rulings

米国ではカタログや技術文書の一語一句が分類根拠になります。確証を得たい場合はPart 177のルーリングレターを申請するのが有効です。

英国・EU

英国では電子式か非電子式か、用途限定かで9026内に枝分かれがあります。
(例:UK Trade Info

EUでは結合品目分類(CN)を基に年度ごとに改訂されます。2026年版CNは2026年1月1日から適用。BTI(Binding Tariff Information)制度を使えば法的確実性を担保できます。
(出典:EU Taxation and Customs Union)


失敗しない社内実装:分類カルテの導入

9026/9031の判定は経験に依存しやすいため、「分類カルテ」を標準化して運用すると再現性が上がります。推奨項目は以下の通り。

  • 測定対象と変量(流量、圧力、液位など)
  • 測定媒体(液体のみ・固体含む)
  • 測定原理と出力仕様
  • 単体機能の有無(部分品か否か)
  • カタログと技術資料の整合性
  • 輸入国での根拠(BTI・裁決・教示等)

「分類番号は輸入国側の判断を基準とする。したがって、輸入国側で説明できる根拠と文言に揃える」
(出典:JETRO


まとめ

  • 9026:液体または気体の流量・液位・圧力を測定する機器
  • 9031:章内他見出しで定義できない測定・検査用機器
  • 境界製品に注意:固体も測定できる・部分品・単体不可など
  • 手順:6桁で分類確定 → 各国8桁分岐を精査
  • 制度活用:日本の事前教示/米国のPart 177/EUのBTIで根拠を確保
    (参照:税関総合ポータル

このガイドは、9026と9031の議論を社内で共通言語化することを目的にしています。センサーごとの仕様や用途を当てはめることで、どこが争点になり得るかを可視化できます。

主要国のHS2028条文と即応タスクまとめ

2026年1月時点の一次情報をもとに、経営判断に直結する論点を整理する

はじめに

HSコード改正は通関部門だけのテーマではありません。
関税コスト、輸出入規制、製品マスター、原産地判定、顧客向け書類、統計、BIの集計軸に至るまで、企業の意思決定を支える共通キーが一斉に更新されるイベントです。

2026年1月21日、世界税関機構(WCO)は、HS2028改正が受理され、2028年1月1日に発効することを公表しました。
HS2028改正は299セットの改正から構成され、全体として1,229見出し・5,852サブヘディングで構成される新たな品目表となります(HS2022比で新設6見出し・428サブヘディング、削除5見出し・172サブヘディング)。

ここからの約2年間は、単に「待つ期間」ではなく、各国が自国の関税率表や統計品目表に落とし込む準備期間です。
WCOは、この期間に相関表(HS2022とHS2028の対応関係)や関連ツールを整備し、各国による実装作業が進むと位置づけています。

本稿では、主要国ごとにどの文書が法令上の根拠となるのか(便宜上「条文」と呼びます)を整理し、企業が今すぐ着手すべき即応タスクを、経営目線で具体化します。


1. HS2028の「条文」とは何か

WCO改正と各国の国内実装

HS品目表は、HS条約(Harmonized System Convention)に基づく国際的な分類表であり、改正はWCOの手続きを経て各国に波及します。
WCO理事会が改正勧告(Article 16 Recommendation)を採択した後、締約国は6か月間、勧告された改正に対して留保(異議)を表明することができます。

この仕組みにより、企業側は「WCOの改正文書を起点に、各国の国内法令・関税率表への実装を追いかける」という発想が必要になります。

HS2028で何が変わるか

WCOと関連情報が示しているHS2028の主な特徴は、次の通りです。

  • 改正規模は299セットの改正。
  • ワクチンや医療関連品目の可視性向上(新しい見出し・サブヘディングの創設、疾病別・用途別の整理強化など)。
  • 医療・緊急対応機器(救急車、保護具、モニタリング機器など)の新サブヘディング追加。
  • 環境・廃棄物関連品目(特にプラスチック廃棄物など)の国際的な環境枠組みに沿った再編。

ここで重要なのは、分類表の更新が「見出しや小区分の新設・削除」だけでなく、「法的注・部注の改訂」や「構造再編」を含む点です。
単なるコード置換ではなく、分類根拠そのものの組み替えが起こり得るため、企業の分類ロジックやエビデンスの見直しが不可欠になります。


2. 主要国の「条文」はどこで確定するか

以下では、企業が一次情報として追いかけるべき公表物を、国・地域別に整理します。

国際(共通):WCO

  • HS2028改正文書(Article 16 Recommendation、HS2028 Nomenclature)。
  • HS2028改正概要やニュースリリース(発効日、改正件数、背景説明)。
  • HS改正手続きの説明(6か月の留保期間など)。

企業がまず押さえるべき一次情報は、WCOが公表するHS2028改正文書とその解説ページです。

EU:CN(Combined Nomenclature)への取り込み

EUは、WCOのHS改正を受け、Council Regulation (EEC) No 2658/87 に基づき、関税・統計の共通分類であるCN(Combined Nomenclature)に反映します。

  • CNは8桁で構成され、最初の6桁がHS、7桁・8桁がEU固有のCNサブヘディングです。
  • 第9・10桁はTARICコードとして、EU域内の追加的な貿易措置や細分に用いられます。
  • CNは、輸入・輸出申告、関税率の決定、統計、各種規制措置の適用の基礎となります。

WCO理事会での改正勧告を受けて、EUは理事会決定・委員会実施規則などを通じてHS改正をCNに取り込みます(2026年版CNの公表など)。

米国:HTSUS(Harmonized Tariff Schedule of the United States)

米国では、USITC(U.S. International Trade Commission)がHS改正に対応するHTSUS改正案を作成し、大統領への勧告プロセスを担います。

  • 2025年8月12日付のUSITCニュースリリースにおいて、2028年版HTSへの改正作業を開始する調査「Recommended Modifications in the Harmonized Tariff Schedule, 2028」の実施が公表されています。
  • USITCは、2026年2月にHTS改正の予備的ドラフトを公表しパブリックコメントを募集し、その後、2026年9月に大統領へ報告書を提出する予定としています。

また、USITCのFAQでは、HTSコードの構造について次のように説明しています。

  • 4桁が「heading」、6桁・8桁が「subheading」であり、法的テキストとしてのHTSは8桁レベルまでで完結する。
  • さらに、10桁目は統計用細分が付されることがあり、これらを合わせてHTSUSとして運用する。

従って、企業にとっての最終的な「条文」は、大統領による改正反映後のHTSUS(8桁)と、それに基づく10桁統計番号です。

日本:9桁統計品目番号とHS版の混在

日本では、HS条約改正に合わせて、関税定率法等および関連告示・解説資料を改正し、関税率表と輸出入統計品目表に反映します(HS2022改正時も同様の整理)。

  • 日本の「統計品目番号」は9桁であり、6桁のHSコードに3桁の国内細分コードを加えた構造です。
  • 9桁コードは、日本の通関申告・貿易統計の基礎となるコードとして運用されています。

一方、EPA(経済連携協定)では、協定ごとに採用しているHSの版(例:HS2012、HS2017、HS2022など)が異なり、原産地規則の品目別規則(PSR)は協定で定めるHS版に紐づきます。
このため、日本の通関実務がHS2022や将来のHS2028に移行していても、原産地証明書等に記載するHSコードは、当該EPAで採用しているHS版に合わせる必要があると説明されています。

英国:UK Integrated Tariff(UK Global Tariff)

英国は、EU離脱後、UK Global Tariff(UKGT)に基づくUK Integrated Tariffを運用しており、HS改正に合わせて国内の統合関税表を改正します。

  • 2022年の分類改正時には、HS改正に対応したUK Integrated Tariffの変更内容や相関情報が、政府サイトの「tariff stop press」等で告知されています。
  • また、輸入関税率の案内としてUK Global Tariffに関するガイダンスが提供されています。

実務上、企業が確認すべき「条文」は、最新のUK Integrated Tariff(UK Tariff)およびその改正告知です。

カナダ:Customs Tariff

カナダでは、Customs TariffがHSに基づく国内関税率表として機能し、必要に応じて改正・公表されます。

  • カナダ国境サービス庁(CBSA)は、Customs Tariffの最新版をウェブサイト上で提供し、改正がある場合は通知・更新を行う方針を示しています。
  • HS2028改正についても、HSが多くの国の関税率表の基礎であり、カナダにも影響する旨が業界向け情報で紹介されています。

中国:HSベースの8桁体系

中国は、HSベースの分類体系(CCCCS)を用いており、8桁を標準とする国内細分を採用しています。

  • 2024年版のCCCCSでは8,966の8桁品目が存在し、最初の6桁がHSコード、7桁・8桁が中国独自の細分と説明されています。
  • 一般的な解説でも、中国のHSコードは通常8〜10桁で、最初の6桁が共通のHS、その後ろが国内サブヘディングであるとされています。

従って、中国における最終的な「条文」は、中国税関が公表する最新のCustoms Commodity Codes(CCCCS)およびその改正告示です。

韓国:10桁コード

韓国は、6桁HSを基礎に、国内で拡張した10桁のHSKコード(tariff number)を用いています。

  • 韓国税関は、HSコードの概要説明の中で、6桁は国際共通であり、各国は自国のニーズに応じて6桁以降を拡張すると説明しています。
  • 公開データセットでも、「韓国税関のHSKコードに基づく2桁・4桁・6桁・10桁の関税番号」として10桁コードを明示しています。

したがって、韓国では10桁HSKコードが実務上の最終的な「条文」として機能します。


3. 主要国別に、実務で起こりやすいこと

米国:ドラフト公開とパブリックコメント

USITCは、HS改正に整合したHTS改正のため、2028年版HTSの改正案作成プロセスを開始したと公表しています。

  • 2026年2月に予備的なドラフト改正案を公表し、パブリックコメントを募集する予定です。
  • コメント期間後、必要な修正を行い、2026年9月に最終報告書を大統領へ提出するとしています。

また、USITC FAQ等によれば、国際共通の6桁HSに対し、8桁までがHTSの法的テキストであり、その後ろの10桁までが統計用途を含む米国固有の細分となります。

企業の即応ポイント(米国)

  • 米国向けでは、6桁HSだけでなく、最終的にHTSUSの8桁・10桁レベルまで確定しないと関税・統計上の影響が判断できない。
  • 2026年2月のドラフト時点から、自社品目の候補コードを当て、論点のある品目は根拠資料(技術仕様、カタログ、判定ロジック)を前倒しで整備しておく。
  • 2027年末〜2028年初にかけて、年跨ぎ貨物や長いリードタイム案件では旧・新HTSの境界で書類不一致が起こりやすいため、切替条件を事前に整理する。

EU:WCO改正→CN→TARIC

EUは、WCOの改正勧告を受けたうえで、CN(8桁)に取り込み、さらにTARIC(9桁・10桁)で各種措置を追加する形で運用します。

  • CNは、EUの共通関税と統計のための分類であり、輸入・輸出申告、関税率決定、統計、各種規制措置の参照コードとして用いられます。
  • CNの構造上、最初の6桁がHS、7桁・8桁がEUのCNサブヘディングであることが制度文書に明記されています。

企業の即応ポイント(EU)

  • EU向けでは、WCO段階ではなく、CNの改正情報が実務上の確定点となる(関税・統計・規制すべての基礎)。
  • HS2028で6桁が動く品目は、後続でCNサブヘディング(7・8桁)の再編が起こる可能性が高く、規制・統計要件も連動して変更されうる。
  • 関税率だけでなく、輸入規制、アンチダンピング等の措置、統計報告もCNに紐づくため、部門横断で影響評価する必要がある。

日本:9桁運用とEPAのHS版

日本では、通関・統計は9桁統計品目番号で運用され、そのうち先頭6桁がHS、後ろ3桁が国内細分です。

  • 9桁統計コードは、輸出入申告と貿易統計の基礎であり、輸出用・輸入用で3桁の細分が異なる場合があります。
  • HS改正は、関税定率法等の改正を通じて、関税率表・統計品目表に反映されます。

一方、EPAでは協定ごとに採用するHS版が異なるため、原産地規則の品目別規則は協定で定めるHS版に紐づきます。
そのため、原産地証明書などEPA関連書類に記載するHSコードは、国内通関用の最新版ではなく、協定の採用HS版に合わせる運用が必要とされています。

企業の即応ポイント(日本)

  • 社内マスターは、「国内申告用の最新版HS+9桁統計コード」と「EPA別に採用しているHS版」を並行管理できる設計が必要。
  • HS2028対応は、通関だけでなく、原産地判定・証明業務の作業量を増やしやすい(複数HS版の併存)。
  • 営業や顧客向け書類(インボイス等)に記載するコードの「版」と「桁数」を、国と用途(通関・原産地・統計)ごとに定義し直す必要がある。

英国:UK Tariffでの告知

英国は、UK Integrated Tariff(UK Global Tariffを含む)として自国の関税率表を運用し、HS改正に対応した変更や相関情報を政府サイトで告知します。

企業の即応ポイント(英国)

  • 英国向けでは、UK Tariff(UK Integrated Tariff)の最新版を確認し、要求される桁数までコードを揃えて書類の整合を取る。
  • EUと見た目は似ていても、7桁以降の国内細分の設計が異なることがあるため、CNコードの単純流用は危険。

カナダ・中国・韓国:それぞれの国内公表物が最終確定点

  • カナダ:CBSAが公表するCustoms Tariffが、HSに基づく関税率表として運用され、改正時は通知・更新が行われます。
  • 中国:中国税関が公表するCCCCSは、最初の6桁がHS、7桁・8桁が中国独自の細分で構成される8桁体系であり、必要に応じて10桁まで拡張される場合もあります。
  • 韓国:韓国税関は、6桁HSを基礎に10桁HSKコードを運用しており、輸入者は韓国の10桁体系で分類する必要があります。

企業の即応ポイント(カナダ・中国・韓国)

  • 同じ6桁HSでも、7桁以降の国内細分は国ごとに別物と割り切る。
  • 取引先向けの資料は、可能な限り相手国側の桁数(カナダのCustoms Tariff、中国の8桁、韓国の10桁等)で提示できるように準備する。
  • 制度の最終確定点は、それぞれの税関・関税率表等の公表物に置き、二次情報だけで判断しない。

4. 経営として今すぐやるべき即応タスク

ここからは国別ではなく、企業側の実務タスクに落とし込みます。鍵となるのは、「二層管理」と「切替境界の事故防止」です。

即応タスクA:棚卸しと影響評価

  • 取扱品目の現行コードを、「どの国向け」「どのHS版」「何桁か(6桁・8桁・9桁・10桁など)」の観点で棚卸しする。
  • 売上上位、利益上位、関税額上位、規制該当品目など、影響の大きい品目から優先順位を付ける。
  • HS2028で6桁が動きやすい品目群(医療・ワクチン・環境関連など)を早期に特定し、技術仕様や使用用途など分類根拠情報を集約する。
  • 税率だけでなく、規制、許認可、統計単位、原産地判定(EPA)の影響も同時に洗い出す。

即応タスクB:マスターデータの二層化

  • 国際共通の6桁HSと、国別の実務桁(EUのCN8桁、日本の9桁、中国の8桁、韓国の10桁など)を分離して管理する設計に見直す。
  • マスターデータに「HS版」フィールドを持たせる(HS2022、HS2028、EPA別に採用するHS版など)。
  • 取引先に提示するコード(インボイス・仕様書・見積書など)のルールを、国別・用途別に社内標準化する。
  • 変更履歴と根拠を残し、監査対応や後日の説明に耐えられるようにしておく(特に高関税・規制品目)。

即応タスクC:書類と原産地の事故防止

  • インボイス、パッキングリスト、原産地証明書、輸出管理資料などで、どの桁のコードを載せるかを国別に定義する。
  • EPA関連書類では、協定で採用しているHS版に合わせてHSコードを記載する運用を業務手順に明記する。
  • 2027年末から2028年初にかけて、年跨ぎ貨物や長納期案件について、旧HS2022・新HS2028のどちらで申告・証明するかの境界条件を洗い出し、切替手順を事前に設計する。

即応タスクD:外部との合意形成

  • 通関業者に対し、HS2028改正時の検証プロセスや必要情報(仕様書、図面、用途など)をあらかじめ確認する。
  • サプライヤーには、製品仕様情報の提供範囲・更新頻度・フォーマット(HS版・桁数の指定等)を明確化し、契約やSLAに反映する。
  • 顧客に対しては、コード変更が輸入側の関税や規制に与える影響を説明できる体制(FAQ、ガイド文書、営業への教育)を整える。

5. 2028年までの実務ロードマップ

WCOは、HS2028の受理後から発効までの期間を、相関表整備や各国による実装準備期間と位置付けています。
USITCは、2026年2月ドラフト、2026年9月大統領報告というタイムラインを明示しており、企業側の準備スケジュール策定の基礎情報となります。

この情報を踏まえると、企業としては次のようなロードマップが現実的です。

  • 2026年:
    • 棚卸しと影響評価(即応タスクA)を実施し、優先品目を特定。
    • HS2028案の内容・WCOの相関情報を踏まえ、6桁レベルの候補付けと分類根拠資料の整備を開始。
    • 米国向けについては、2026年2月のUSITCドラフトを確認し、必要に応じてパブリックコメント提出を検討。
  • 2027年:
    • 各国の国内実装状況(HTSUS改正、CN改正、日本の9桁統計コード改正、中国・韓国の細分改正など)を確認し、国別の実務桁を確定。
    • 社内システム改修、マスターデータ二層化、UAT(ユーザー受入テスト)、取引先・通関業者との番号整合を完了させる。
  • 2028年:
    • 切替運用を開始し、誤分類や書類不一致のエラー監視を強化。
    • 税関からの差戻し・照会に即応できるよう、根拠資料と履歴管理のプロセスを稼働させる。

おわりに

HS2028は、分類表の単なるマイナーチェンジではなく、企業にとっては基盤データの大規模アップデートです。
WCOの一次情報を起点に、米国はUSITCとHTSUSプロセス、EUはCNとTARIC、日本は9桁統計コード運用とEPA版混在、そして中国・韓国・カナダなどは各国の関税率表・分類体系という現実に合わせて、二層管理と切替事故防止に投資することが、費用対効果の高い対応となります。

個別品目の最終コードを今すぐ決め切ることよりも、
「結論をブレなく・説明可能な形で出せる仕組み(根拠管理、履歴管理、HS版管理、相手国桁への変換ロジック)」を先に整えることが、2028年前後の現場混乱を最小化する近道です。

WCO注記改正で読み解く EV電池分類の新基準

バッテリーパックは「どこまで」HS 8507なのか

EV電池の国際取引では、セル、モジュール、パック、さらにBMS(電池管理)や温調、保護回路、筐体まで一体化した形で流通するのが当たり前になりました。ところが実務では、構成要素が増えるほど「電池そのもの」なのか「機器の部分品」なのかが揺れ、通関・原産地・規制対応まで連鎖的に事故が起きます。

この揺れに対して、WCO(世界税関機関)のHS注記は、電池を電池として扱うための線引きを、かなり明確にしています。結論から言うと、一定の付属部品や筐体の一部を伴っていても、電池は電池のまま(HS 85.07)に置く、という整理です。 (wcotradetools.org)


1. いまEV電池の分類がビジネス課題になる理由

EV電池のHS分類は、単なる番号付けでは終わりません。誤ると影響は広範囲です。

  1. 関税・追加関税・統計の誤り
  2. FTA/EPAの原産地判定(CTCの段・RVC計算・部材表)に波及
  3. 危険物輸送、環境規制、輸出管理など「対象品目判定」の入り口がズレる

つまり、電池の分類は、調達から輸出入、価格、契約、監査対応までを左右する“経営の基礎データ”になっています。


2. WCO注記が示す「電池として扱う」境界線

2-1. 注記の中核:付属部品があっても電池は電池

WCOのHS(第85類)の注記では、85.07項の「電気蓄電池(electric accumulators)」について、次の考え方が明文化されています。

・電池は、電力を蓄えて供給する機能に寄与する付属部品、または損傷から保護する付属部品を伴っていても、85.07に含まれる
・例として、電気コネクタ、温度制御デバイス(例:サーミスタ)、回路保護デバイスが挙げられている
・用途先の機器に使われる保護筐体の一部を含むこともある (wcotradetools.org)

ここが「新基準」の本体です。EV用のトラクションバッテリーは、まさにこの付属部品を標準装備しています。したがって、付属部品があること自体を理由に、電池を“別物”に寄せる判断は取りにくくなります。

2-2. 「バッテリーパック」概念の補強:特定機器向けでも85.07

さらに、WCOのHS解説注(Explanatory Note)側でも、セル群を接続して構成する「バッテリーパック」を85.07に含める考え方が示され、付属部品や保護筐体があっても、また特定機器向けに設計されていても、原則として85.07で扱う方向性が示されています。 (wcoomd.org)

実務的に重要なのは、「EV向け専用品だから車両部品(第87類)では?」という直感が、そのまま通らない点です。電池は“車両の部品っぽい”見た目でも、HSの体系上は電気機器として別建てで整理されやすい、というのがWCO側の設計思想です。


3. 実務で使える「新基準」チェックリスト

付属品が増えたとき、どこまでが電池か

通関事故を減らすには、「付属品の性格」を先に分類します。ポイントは1つです。

その部品は、電池の蓄電・放電(供給)機能に寄与するのか、保護のためなのか。あるいは別機能なのか。

3-1. 85.07に寄りやすい典型(注記の射程内)

・高電圧コネクタ、バスバー、端子
・温度センサー、温調用の安全部材(電池保護目的の範囲)
・ヒューズ、遮断器、保護回路
・保護筐体の一部(用途先機器の筐体と一体でも、電池保護の文脈なら議論に乗る) (wcotradetools.org)

3-2. ここから先は要注意(“別機能”が立つ可能性)

・インバータ、DC-DCコンバータなど電力変換
・車両制御ECUとしての機能が前面に出る制御ユニット
・充電器など外部電源との変換・充電制御が主体の機能

この領域に入ると、「電池+別機能機器」の複合体になり、HSの別の論点(複合機械、主要な機能、セット品判断など)が立ち上がります。ここは製品仕様次第で結論が割れやすいため、事前教示(Advance Ruling)を取る価値が急に上がります。


4. 企業が今すぐやるべきこと

HS分類を“設計図”として固定する

EV電池は、量産開始後に構成が変わりやすい製品です。だからこそ、分類の根拠を「最初に固定」しておく必要があります。

  1. 部材表(BOM)を「分類用」に再編集する
    電池セル、接続回路、保護回路、温調、筐体を、機能別に分解して説明できる形にする。
  2. 付属部品を「電池機能・保護」か「別機能」かでタグ付け
    設計変更が入っても、分類に影響する変更かどうかを即判定できるようになります。
  3. インボイス・仕様書・カタログの用語統一
    battery pack、battery module、BMS、thermal management などの用語が資料ごとに揺れると、税関側の解釈も揺れます。文言の統一はコスト削減そのものです。

5. HS2028時代の位置付け

「番号の変更」より前に、基準の理解が効く

WCOは、HS2028改正が受理され、2028年1月1日に発効すること、そして移行のために相関表作成などの準備を進める方針を明確にしています。 (wcoomd.org)

ただ、EV電池の現場で先に効くのは「コードが変わるか」よりも、「電池として扱う境界線を誤らないか」です。注記が示す基準は、HS版が切り替わっても、分類ロジックの土台として残り続ける可能性が高い領域です。


まとめ

EV電池の分類は「付属品の性格」で決まる

・WCO注記は、付属部品や筐体の一部を伴っても、蓄電池は85.07に含める考え方を明確化している (wcotradetools.org)
・実務の新基準は、付属品が「蓄電・供給に寄与」または「保護」か、それとも「別機能」かを切り分けること
・別機能が立つ構成は、最初から事前教示と根拠書類(分類ドシエ)を前提に設計した方が、長期コストが下がる

必要なら、想定しているEV電池(セル・モジュール・パックのどこまでか、BMSや温調の構成、筐体の役割)を箇条書きでいただければ、この基準に沿って「どこが論点で、何を証拠にすべきか」を実務用チェックリストに落として整理します。