※用語は次で統一します:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注)。
0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)
- この類に入る代表例(3〜6個):
- **羊毛(sheep/lamb)**の原毛(未カード・未コーム)…例:剪毛したグリースウール(5101)
- カシミヤ、アルパカ、モヘヤ等の獣毛(未カード・未コーム)…例:カシミヤ原毛(5102.11)
- 羊毛・獣毛のくず(ノイル等)…例:コーミング工程のノイル(5103.10)
- 羊毛・獣毛の反毛(ガーネットしたもの)…例:反毛原料(5104)
- 羊毛・獣毛のトップ/カード・コームしたもの…例:羊毛トップ(5105)
- 毛糸(糸)や毛織物(織物)…例:小売用毛糸(5109)、梳(そ)毛織物(5112)
- この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
- 羊毛付きの原皮(毛皮付き皮):原毛ではなく原皮扱いになりやすい(41.02 または 43.01)
- ブラシ製造用の獣毛・剛毛:粗獣毛の定義から除外(05.02)
- 馬毛(単毛)や馬毛のくず:第51類の「馬毛の糸・織物」とは別で、馬毛そのものは 05.11(※第5類注で定義)
- フェルト・不織布・特殊糸・ロープ等:加工形態により第56類(例:フェルト 56.02)に移りやすい
- コーティング/工業用(技術的用途)の織物:条件次第で第59類(例:59.11)に移りやすい
- 衣類・出来上がり品(made up):第61〜63類へ(「裁断・縫製・裾処理」等があると外れやすい)
- 実務での最重要分岐(1〜3個):
- 素材の定義:羊毛(sheep/lamb)か、繊獣毛(カシミヤ等)か、粗獣毛か、馬毛か(類注の定義)
- 加工段階:原毛(未カード/未コーム)→トップ(カード/コーム)→糸→織物、どこまで加工されているか
- 糸の「小売用」判定:5106/5107/5108(小売用でない)か、5109(小売用)か
- (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
- **希少種由来(例:ビクーニャ)**はCITES/種の保存法の規制が絡み、通関だけでなく譲渡規制・表示要件まで影響します(分類ミス+規制見落としが高コスト)。
- 未洗浄の毛・毛類は動物検疫(指定検疫物)対象になり得て、書類不備で止まりやすいです。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)
1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)
- この類で特に効くGIR(例:GIR1/GIR6など)を、ビジネスマン向けに説明
- GIR1(見出し+注で決める)が中心です。第51類は「素材(羊毛/繊獣毛/粗獣毛/馬毛)」と「加工段階(原毛→トップ→糸→織物)」で見出しがほぼ決まるため、まず類注(素材定義)と項の文言に当てはめます。
- **GIR6(6桁は6桁同士の比較)**で、たとえば「5101.11(剪毛)」か「5101.19(その他)」のように、同一項内で条件(状態・種類)を詰めます。
- 「品名だけで決めない」ための観点(用途、材質、状態、加工度など)
- “wool”表記=羊毛(5101)とは限りません。HS上の「羊毛」は羊・子羊に限定され、カシミヤ等は「繊獣毛」(5102など)です。
- カード(carded)/コーム(combed)済みか、糸が小売用の形態かなど、加工度・包装形態が決定打になります。
1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)
- Step1:繊維原料・糸・織物か/出来上がり品かを確認
- 裁断・縫製・裾処理などのmade upなら第61〜63類側を疑います。
- Step2:素材の定義を確定(類注)
- 羊毛(sheep/lamb)/繊獣毛(カシミヤ等)/粗獣毛/馬毛(単毛は05.11)を切り分けます。
- Step3:加工段階を確定
- 原毛(未カード/未コーム:5101/5102)→くず(5103)→反毛(5104)→トップ(5105)→糸(5106〜5110)→織物(5111〜5113)。
- よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
- 第51類 vs 第05類:馬毛(単毛)・ブラシ毛は第05類へ(05.11/05.02)。
- 第51類 vs 第59類:工業用(技術的用途)やコーティング等で59章へ(例:59.11)。
- 第51類(糸)内の分岐:小売用(5109)か、工業用(5106〜5108)か。
2. 主な項(4桁)とその内容
2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)
- 原則:第51類は4桁見出しが多くないため全列挙します。
| 項番号(4桁) | 見出しの要旨(日本語) | 典型例(製品名) | 重要な分岐条件/除外/注意点 |
|---|---|---|---|
| 5101 | 羊毛(未カード・未コーム) | グリースウール、洗い上げ羊毛 | 「羊毛」は羊・子羊に限定。原皮(毛付き皮)は除外。 |
| 5102 | 繊獣毛・粗獣毛(未カード・未コーム) | カシミヤ原毛、アルパカ原毛、やぎ毛 | カシミヤ(5102.11)か否か、繊獣毛か粗獣毛か(類注定義)。 |
| 5103 | 羊毛・獣毛のくず(反毛除く) | ノイル、落ち綿状のくず、糸くず | 反毛(5104)と混同注意。フロック等は56.01へ行く場合あり。 |
| 5104 | 反毛(ガーネットしたもの) | 反毛原料(shoddy原料) | くず(5103)と区別:ガーネット工程の有無が鍵。 |
| 5105 | 羊毛・獣毛(カード/コーム済み、トップ等) | 羊毛トップ、カシミヤトップ | 「小塊状のコーム羊毛」等、見出しで明示。 |
| 5106 | カード羊毛糸(小売用でない) | 工業用コーン巻き毛糸 | 5109(小売用)との境界は包装形態・重量基準。 |
| 5107 | コーム羊毛糸(小売用でない) | 梳毛糸(工業用) | 5106(カード)との区別=紡績工程(梳毛/紡毛)。 |
| 5108 | 繊獣毛糸(小売用でない) | カシミヤ糸(工業用)、モヘヤ糸 | カード/コーム(5108.10/5108.20)で分岐。 |
| 5109 | 羊毛または繊獣毛の小売用糸 | 手編み用毛糸玉 | 「小売用にした糸」定義(部注)で判定。 |
| 5110 | 粗獣毛糸または馬毛糸 | 馬毛糸、粗獣毛糸 | 「馬毛そのもの(単毛)」は05.11、糸はここ。 |
| 5111 | カード羊毛/カード繊獣毛の織物 | 紡毛織物(厚地) | 85%基準、重量300g/m²基準、混用(化繊)で分岐。 |
| 5112 | コーム羊毛/コーム繊獣毛の織物 | 梳毛スーツ地 | 85%基準、重量200g/m²基準、混用(化繊)で分岐。 |
| 5113 | 粗獣毛または馬毛の織物 | 芯地、内装材、馬毛の織物 | 工業用織物(59.11)に該当すると除外。 |
(根拠:HS2022 第51類の見出し・号体系、および日本税関解説の類注・総説)
2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)
- 分岐条件の整理(この類で頻出)
- 状態(原毛):グリース(脂付き)/洗い上げ(脱脂)/化炭処理の有無(5101)
- 種類(獣毛):カシミヤか、その他の繊獣毛か、粗獣毛か(5102、5105)
- 工程(糸):カード糸(5106)かコーム糸(5107)、繊獣毛糸(5108)か
- 包装(糸):「小売用にした糸」か(5109)
- 組成と重量(織物):85%以上ルール、g/m²(5111は300、5112は200)
- 混用相手(織物):主に/専ら「人造繊維フィラメント」か「ステープル」か(5111.20/5111.30、5112.20/5112.30)
- 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
- (1) 5101(羊毛・未カード/未コーム) vs 5105(カード/コーム羊毛・トップ)
- どこで分かれるか:カード/コーム工程を経ているか、トップ等の形態か。
- 判断に必要な情報:製造工程(カード・コーム有無)、形状(トップ、スライバー等)、写真。
- 典型的な誤り:「洗い上げ=加工品」と誤解して5105へ寄せる(洗浄だけなら5101のままのことが多い)。
- (2) 5103(くず) vs 5104(反毛)
- どこで分かれるか:ガーネット(反毛)工程を経た“再生繊維状”か、単なるくず(ノイル、落ち綿状)か。
- 判断に必要な情報:発生工程(ガーネット工程の有無)、繊維の状態(長さ・絡み・混入物)、仕様書。
- 典型的な誤り:「再生原料=全部5104」としてしまい、ノイル等(5103)を誤る。
- (3) 5106/5107/5108(小売用でない糸) vs 5109(小売用糸)
- どこで分かれるか:部注の「小売用にした糸」定義(巻き方・重量・支持体など)に該当するか。
- 判断に必要な情報:1個当たり重量、巻き形態(玉・かせ・コーン等)、ラベル、デシテックス(dtex)、単糸/双糸。
- 典型的な誤り:工業用コーン巻きを「毛糸=5109」としてしまう。
- (4) 5111(カード系織物) vs 5112(コーム系織物)
- どこで分かれるか:使用糸がカード(紡毛)かコーム(梳毛)か。重量基準(300/200)や85%基準は“項内”の分岐。
- 判断に必要な情報:糸種(梳毛/紡毛)、織物規格(目付g/m²)、混用率(重量%)。
- 典型的な誤り:「スーツ地=5112」と決め打ち(実際はカード系もあり得る)。
- (5) 5113(粗獣毛/馬毛織物) vs 5911(技術的用途の織物)
- どこで分かれるか:工業用・技術的用途に該当する性状/用途か(59.11側の要件確認)。
- 判断に必要な情報:用途(フィルター/ふるい等)、仕様(目開き、耐熱等)、販売形態(産業資材用途の明確性)。
- 典型的な誤り:「馬毛の織物=必ず5113」として工業用織物の除外を見落とす。
- (1) 5101(羊毛・未カード/未コーム) vs 5105(カード/コーム羊毛・トップ)
3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)
3-1. 関連する部注(Section Notes)
- ポイント要約:
- 混用(異なる繊維が混ざる)時の原則:第50〜55類の多くは、原則として“重量で優勢な繊維”で分類し、同程度なら番号が後の見出しへ寄せる考え方です(部注で整理)。
- **「小売用にした糸」**の定義:糸の分類(5106〜5109)で決定打になります。
- 太さ(dtex)でロープ扱いに飛ぶルールはありますが、羊毛・獣毛糸は原則としてその例外に入る点が実務的に重要です(=太い毛糸だから即56.07とはしない)。
- 実務での意味(具体例つき):
- 例:ウール50%+ポリエステル50%の織物は、「名称」ではなく混用率(重量%)で判断します。優勢がなければ、該当する見出しのうち番号が後の方へ寄るルールを使います。
- 例:手編み用の毛糸玉でも、重量・巻き方・支持体が定義を満たさなければ小売用にならず、5106〜5108側に残ることがあります(例外規定も含め確認)。
- “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
- **「made up」**の扱い:裁断・縫製などが入ると、第50〜55類(原料〜織物の章)ではなく、56〜63類(出来上がり品側)へ。
- 工業用(技術的用途):織物でも条件により59.11へ。
3-2. この類の類注(Chapter Notes)
- ポイント要約:
- 第51類の類注は、まず**「羊毛」「繊獣毛」「粗獣毛」を定義し、粗獣毛からブラシ毛(05.02)と馬毛(05.11)**を除外しています。
- 用語定義(定義がある場合):
- 羊毛:羊・子羊の天然繊維。
- 繊獣毛:カシミヤやぎ、アルパカ、ラマ、ビクナ、らくだ、やく、うさぎ等の毛(類注列挙の範囲)。
- 粗獣毛:上記以外の獣毛(ただしブラシ毛・馬毛は除外)。
- 除外規定(除外先の類・項も明記):
- ブラシ製造用の獣毛・剛毛 → 05.02
- 馬毛(単毛)・馬毛のくず → 05.11(馬毛の糸・織物は第51類側)
4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)
この章は「類注があるからこそ起きる分岐」を可視化することが目的。
- 影響ポイント1:“wool”表記の誤解(羊毛≠獣毛全般)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):動物種(sheep/lambか、goat/camelid等か)、原産証明や検査書、商品説明書。
- 現場で集める証憑:仕様書(素材名+学名/動物名)、混用率証明、写真、サプライヤー宣誓書。
- 誤分類の典型:「カシミヤ=高級ウール」として5101(羊毛)へ入れてしまう(正しくは5102/5105/5108/5109等)。
- 影響ポイント2:粗獣毛の定義からの除外(ブラシ毛・馬毛)
- 何を見れば判断できるか(必要情報):用途(ブラシ用か)、部位(たてがみ/尾毛か)、原料形態(単毛か糸か)。
- 現場で集める証憑:用途資料(ブラシ用途/繊維用途)、工程表(紡績の有無)、サンプル写真。
- 誤分類の典型:馬毛(単毛)を5110(糸)扱いにしてしまう/ブラシ毛を粗獣毛として5102へ入れてしまう。
- 影響ポイント3:混用(ウール×化繊等)の“重量ルール”
- 何を見れば判断できるか(必要情報):繊維ごとの重量%(試験成績書がベスト)。
- 現場で集める証憑:組成分析(JIS等の試験)、BOM、糸番手・目付(織物)。
- 誤分類の典型:名称や用途で「ウール製」と決め打ちし、重量優勢の化繊側を見落とす。
5. 分類でよくある間違い(原因→対策)
- 間違い:カシミヤ原毛を「羊毛(5101)」で申告
- なぜ起きる:商流で“cashmere wool”などと呼ばれ、HS上の「羊毛」定義(sheep/lamb限定)を見落とすため。
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):類注で羊毛と繊獣毛が別定義。カシミヤは繊獣毛側(5102.11等)へ。
- 予防策:サプライヤーに「動物種」「学名」「混用率」を必ず確認。品名は「cashmere hair」等に寄せて記載。
- 間違い:カード/コーム済み(トップ等)を未カード扱い(5101/5102)で申告
- なぜ起きる:洗浄とカード/コームを混同しやすい。
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):カード/コーム済みは5105(トップ等)。未カード/未コームは5101/5102。
- 予防策:工程フロー(カード・コーム有無)と形状(トップ/スライバー)写真を入手。
- 間違い:工業用コーン巻き糸を「小売用毛糸(5109)」にしてしまう
- なぜ起きる:毛糸=小売用という先入観。
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):「小売用にした糸」は部注定義で判定。工業用形態なら5106〜5108へ。
- 予防策:1個当たり重量、巻き形態(コーン/チーズ/玉)、ラベル有無、dtexを確認。
- 間違い:ノイル等の「くず(5103)」を「反毛(5104)」にしてしまう(または逆)
- なぜ起きる:どちらも“再生・端材”に見えるため。
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):5103はくず(ノイル等)、5104はガーネット工程で得た反毛。
- 予防策:発生工程(紡績くず/反毛工程)を仕入先に確認し、製造記録を保管。
- 間違い:馬毛(単毛)を「馬毛糸(5110)」で申告
- なぜ起きる:馬毛という単語が同じで混乱。
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):馬毛そのものは05.11、馬毛“糸”や“織物”が第51類。
- 予防策:形態(単毛/糸/織物)を写真で証明。用途も併記。
- 間違い:毛織物(5111/5112)を、コーティング・ラミネートの有無を確認せず申告
- なぜ起きる:表面処理が軽微に見える、または情報が伝わらない。
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):コーティング・技術的用途等は第59類に移る可能性。
- 予防策:断面写真、樹脂種別、コート量、用途(工業資材か衣料か)を確認。
- 間違い:カード織物(5111)とコーム織物(5112)を用途だけで決める
- なぜ起きる:「スーツ=梳毛」などの経験則。
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):見出しは糸の種類(カード/コーム)で分かれる。
- 予防策:糸種(梳毛/紡毛)を製造側に確認し、規格書を添付。
- 間違い:獣毛を通常の繊維原料として扱い、動物検疫・CITESを見落とす
- なぜ起きる:繊維=“非食品だから規制なし”と誤解。
- 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):毛類は指定検疫物になり得る。ビクーニャ等はCITES/種の保存法が絡む。
- 予防策:仕入先から「動物種」「処理状態(洗浄・消毒)」「CITES許可の要否」を事前に確認し、手続担当(通関+法規)を巻き込む。
6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点
6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係
- HSの付番がPSR選択に直結すること(誤ると原産性判断が崩れる)
- 例:同じ「毛糸」でも、5106/5107/5108/5109でPSRが変わり得ます。まず**最終製品のHS(国内コード含む)**が確定しないと、材料側のHSや工程の評価がズレます。
- よくある落とし穴(材料のHS、最終製品HS、工程の評価軸)
- 原料(トップ5105)→糸(5106〜)→織物(5111〜)と工程段階でHSが動くため、材料HSを“完成品と同じ”にしてしまうのが典型的な落とし穴です。
6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)
- 「当該協定が参照するHS版(例:HS2012参照 等)」を明記
- たとえばRCEPは当初HS2012ベースでしたが、HS2022に置換したPSRが採択され、2023-01-01から実施されています。
- 協定本文・運用が参照するHS版がHS2022とズレる場合の注意
- 協定や税関のPSR検索で指定すべきHS版を誤ると、PSR適用自体を間違えます。税関の原産地規則ポータル等で確認してください。
- トランスポジション(旧→新対応)の扱い方(一般論)
- HS改正時はWCO相関表等で旧→新を確認し、製品側HSだけでなく材料側HSも同様に見直すのが安全です。
6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)
- 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
- 繊維は混用が多いので、重量%(ウール/化繊等)をBOMに落としておくとPSR検討が速いです。
- 証明書類・保存要件(一般論)
- 仕入証明、工程表、加工記録、試験成績(混用率・目付)、原産地資料を取引単位で保存(協定ごとの年限は協定・運用で確認)。
7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)
7-1. 変更点サマリー(必須:表)
| 比較(例:HS2017→HS2022) | 変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更) | 該当コード | 変更の要旨 | 実務への影響 |
|---|---|---|---|---|
| HS2017→HS2022 | 変更なし(少なくともHS6桁の構造) | 5101〜5113 | 見出し・号の体系が同一 | 付番ロジックは継続。国内コードの改定有無は国別に要確認。 |
7-2. 「違うことになった根拠」(必須)
- 変更なし
- HS2017版とHS2022版の第51類の見出し・号(5101〜5113)を比較すると、構造が同一です。
- さらに、WCOのHS2017↔HS2022相関表は“変更・新設がある号”を中心に掲載する趣旨で公表されていますが、第51類の号(5101等)は変更対象として現れません(=少なくともHS6桁の改廃は見当たりません)。
8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード
- HS2007→2012→2017→2022の流れで、主要な追加・削除・再編を表で整理
(※第51類は、少なくともここで参照した各版のHS6桁体系では大きな改廃が確認できません。)
| 期間 | 主な追加・削除・再編(HS6桁) | 旧コード→新コードの対応 |
|---|---|---|
| HS2007→HS2012 | 変更なし(5101〜5113の体系維持) | 該当なし |
| HS2012→HS2017 | 変更なし(5101〜5113の体系維持) | 該当なし |
| HS2017→HS2022 | 変更なし(5101〜5113の体系維持) | 該当なし |
根拠:各版の第51類条文(コード表)の比較。
9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)
- 事例名(短く):“カシミヤ=羊毛”でHS誤り
- 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):類注の定義(羊毛と繊獣毛の区別)を無視。
- 起きやすい状況:インボイス品名が“cashmere wool”のみ、素材証明なし。
- 典型的な影響:修正申告、関税差額、原産地規則(PSR)再判定。
- 予防策:動物種・混用率の証明を添付し、品名に“cashmere hair”など識別を入れる。
- 事例名:馬毛(単毛)を5110/5113で申告
- 誤りの内容:馬毛(単毛)は05.11であり、第51類の対象は馬毛「糸」または「織物」。
- 起きやすい状況:原料名だけで分類、形態(糸化の有無)を確認しない。
- 典型的な影響:分類差替え、書類差戻し、検査対応。
- 予防策:形態写真(単毛/糸/織物)と用途資料を準備。
- 事例名:工業用の馬毛織物を5113で申告
- 誤りの内容:59.11の技術的用途の織物に該当する可能性を未確認。
- 起きやすい状況:用途が「ふるい・フィルター」なのに衣料用途として申告。
- 典型的な影響:用途確認・資料追加要求、修正申告。
- 予防策:用途仕様書(工業資材か否か)・性能表・販売形態を事前提出。
- 事例名:未洗浄毛類の動物検疫手続の見落とし
- 誤りの内容:指定検疫物(毛等)に該当するのに、検査証明書や申請手続が未整備。
- 起きやすい状況:繊維担当のみで進め、法規(動物検疫)を見ない。
- 典型的な影響:搬入停止、保留、追加書類、納期遅延。
- 予防策:出荷前に動物検疫所の手続・必要書類を確認し、通関計画に組み込む。
10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)
- 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
- 検疫・衛生(SPS等)
- 動物検疫(家畜伝染病予防法):指定検疫物には、対象動物およびその「皮・毛」等が含まれます。輸入時は検査申請・証明書添付等が必要になる場合があります。
- ワシントン条約(CITES)等の種規制
- **ビクーニャ(Vicugna vicugna)**は国内法(種の保存法)で国際希少野生動植物種に指定され、毛や毛皮製品等の譲渡が原則禁止(登録等の例外あり)。
- CITES上も、特定個体群の毛を用いた製品は要件(原産国表示ロゴ等)やCITES許可書提出が求められる旨の案内があります。
- その他の許認可・届出
- 繊維製品の品質表示:最終製品として日本国内で販売する場合、混用率表示等のルール(繊維製品品質表示規程)が実務上重要です(輸入通関そのものとは別軸ですが、商流で要求されやすい)。
- 検疫・衛生(SPS等)
- 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
- 動物検疫所(MAFF):指定検疫物・輸入畜産物の検査手続
- 経産省:CITES(ビクーニャ表示等)
- 環境省:種の保存法(ビクーニャ製品の譲渡規制)
- 消費者庁:繊維製品の表示
- 実務での準備物(一般論):
- 動物検疫:品名・数量・原産国、処理状態(洗浄/消毒)、輸出国政府機関の証明書、輸入検査申請書類。
- CITES/種の保存法:動物種特定資料、CITES許可書/証明書、必要表示(ロゴ等)、国内登録の要否確認。
11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)
- 分類前チェック(製品情報の収集)
- 動物種(羊/やぎ/ラクダ科など)、混用率(重量%)、形態(原毛/トップ/糸/織物)、カード/コームの有無
- 原毛なら:グリース/洗い上げ/化炭処理の有無
- 糸なら:単糸/双糸、dtex、1個重量、巻き形態(玉/かせ/コーン)、ラベル表示
- 織物なら:目付(g/m²)、組織、混用相手(化繊フィラメント/ステープル)、用途(衣料/芯地/工業資材)
- 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
- 類注の定義(羊毛/繊獣毛/粗獣毛/馬毛)に矛盾がないか
- 小売用糸判定(5109)を部注定義で再確認
- 工業用織物(59.11)やコーティング(59章)への飛びを用途・性状で再確認
- 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
- インボイス品名に「wool(羊毛)」を使う場合、羊由来である根拠資料を添付
- 混用率証明、工程表、写真、目付・糸番手などの規格書を準備
- 日本の**国内コード(9桁等)**はHS6桁と別物なので、国内表で再確認(通関業者とすり合わせ)
- FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
- 税関ポータル等で対象協定・HS版を確認し、PSRを特定
- BOM(材料HS・原産国・重量/原価)、工程情報、RVC計算の前提を揃える
- 証憑保存(協定ごとに要件確認)
- 規制チェック(許可/届出/検査)
- 動物検疫:指定検疫物(毛等)に該当するか、検査証明書が必要か
- CITES/種の保存法:ビクーニャ等の希少種由来か、表示・許可・登録が必要か
12. 参考資料(出典)
- WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
- HS2022 Chapter 51(見出し・号、定義) (参照日:2026-02-22)
- HS2017 Chapter 51(比較用) (参照日:2026-02-22)
- Section XI Notes(混用・小売用糸等) (参照日:2026-02-22)
- Correlation Tables HS2017–2022(Table I/II、位置づけ) (参照日:2026-02-22)
- Chapter 5 Notes(馬毛の定義・05.11での扱い) (参照日:2026-02-22)
- 日本税関・公的機関のガイド
- 税関:関税率表解説 第51類(類注・総説・除外例) (参照日:2026-02-22)
- 税関:事前教示(制度概要/注意点、Eメール事前教示) (参照日:2026-02-22)
- 税関:RCEPのHS2022版PSR採択(2023-01-01実施) (参照日:2026-02-22)
- 外務省:RCEPのHS2022置換PSR(運用開始等) (参照日:2026-02-22)
- 検疫・規制
- 動物検疫所:検査が必要な物(指定検疫物等)/輸入畜産物の検査手続 (参照日:2026-02-22)
- 経産省:ビクーニャ毛製品の表示(ロゴ等)とCITES許可書提出 (参照日:2026-02-22)
- 環境省:ビクーナ製品の譲渡規制(種の保存法) (参照日:2026-02-22)
- 消費者庁:繊維製品品質表示規程/表示ガイド (参照日:2026-02-22)
※Web参照は「参照日(2026-02-22)」を付記しました。
免責事項
本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。
