WCOが公開したHS2028の新設コード技術解説とは何か

新設コード一覧の読み方と、企業が今すぐやるべき実務

2026年1月、WCOはHS2028改正に関する情報発信を本格化させ、改正の全体像とともに、特定分野の新設コードについて技術的な解説を公開しています。ポイントは、HS2028の新設コード一覧が「番号の追加」ではなく、規制運用と統計精度を変える設計図になっていることです。読み方を誤ると、2028年の切替時点で通関だけでなく、原産地判定、輸出入規制、社内マスタ、価格設計まで連鎖的に影響します。 (世界税関機構)

この記事では、WCOが公開した一次情報を軸に、新設コード一覧の技術解説が何を意味するのか、そして企業がどう使うべきかを、ビジネスマン向けに整理します。


1. まず前提:HS2028は何がどれだけ変わるのか

WCOは、HS2028改正が299セットの改正で構成されること、HS2022比で新設が「見出し6件、号428件」、削除が「見出し5件、号172件」であることを明示しています。発効は2028年1月1日で、残り約2年の実装期間に相関表の整備やツール更新が進む、という整理です。 (世界税関機構)

ここから読み取るべきは次の2点です。

1つ目は、企業が影響を受けるのは8桁や10桁だけではなく、土台である6桁の構造が動くことです。
2つ目は、相関表の完成を待って着手すると遅いということです。WCOが公開する技術解説は、相関表が出る前に、影響を受ける領域と論点を先読みするための材料になります。 (世界税関機構)


2. 新設コード一覧は、なぜ企業リスクに直結するのか

新設コードは、次のどれかの目的で作られます。

・国際的な規制や取締りで識別が必要になった
・統計の粒度が足りず、政策判断や需給分析に使えない
・現場の分類が割れ、法的安定性が低い

HSは「関税番号」ですが、現実には許認可、輸入規制、輸出管理、環境規制、統計、サプライチェーン可視化の共通言語です。WCOの技術解説は、新設コードがどの目的に紐づくのか、どんな条件でそのコードに落ちるのかを説明します。つまり、単なる新番号ではなく、将来の検証ポイントが文章化された資料です。 (世界税関機構)


3. 技術解説の深掘り:WCOが示した新設コードの具体像

ここでは、WCOが公開した技術解説のうち、企業実務への波及が大きい代表例を取り上げます。結論から言うと、HS2028は「環境」と「健康」の領域で、分類判断に必要なデータ項目が増えます。

3-1 プラスチック廃棄物:バーゼル条約に合わせて39.15を再構成

WCOは、プラスチック廃棄物の国際移動を巡る課題として、違法投棄や不適切処理のリスクを挙げ、バーゼル条約のプラスチック廃棄物改正に合わせてHS2028で39.15を再構成したと説明しています。 (世界税関機構)

技術解説で重要なのは、どのコードに落ちるかが「樹脂の種類」だけでなく「混合の有無」「汚染や有害性」「条約上の管理区分」によって左右される、という設計になっている点です。WCOは、危険なプラスチック廃棄物を識別する新設号や、一定条件を満たす再資源化向けの廃棄物を識別する号群などを具体的に示しています。 (世界税関機構)

企業側の実務論点は明確です。

・廃棄物やスクラップを扱う企業は、品名だけでは申告できない
・ポリマー種別、混合の有無、汚染度合い、用途(リサイクル目的)などの属性情報が必要になる
・輸出入や委託処理の契約条件に、分類根拠となるデータ提供義務を入れないと、通関遅延や差止めが起きる

これはリサイクル業だけの話ではありません。製造業でも、戻り材、端材、スクラップ、副産物を国境越えで動かす企業は直撃します。

3-2 プラスチック製品:単回使用という概念を法的に定義し、個別コードへ落とす

WCOは、プラスチック汚染に関する国際的議論を踏まえ、HS2028で「単回使用」の概念を定義し、プラスチック関連の複数品目で新設号を設けたと説明しています。 (世界税関機構)

ここがビジネス上の地雷です。単回使用かどうかが分類の分岐条件になると、製品設計と販売形態が分類に影響します。WCOは単回使用を「通常1回の使用で廃棄またはリサイクルされ、反復的または長期の使用を目的としない」ものとして定義しています。 (世界税関機構)

この定義が入ることで、企業は次の対応が必要になります。

・同じ見た目でも、単回使用か再使用かでコードが分かれる可能性がある
・営業資料や仕様書に、反復使用を前提とする設計根拠がないと、単回使用扱いで分類されやすい
・海外子会社や委託先で、説明の粒度が落ちると分類がブレる

WCOは例として、単回使用ストロー、包装容器、キャップ類、台所用品、手袋、プラスチック製帽子類などで新設号が導入されたことを挙げています。 (世界税関機構)

さらにWCOは、環境上注目されるポリマー(一次形状)や、特定の発泡ポリスチレン製品などにも新設号を設けたことを示しています。これにより、素材の種類が統計や規制運用に直結しやすくなります。 (世界税関機構)

3-3 ワクチン:30.02から分離し、30.07と30.08を新設して粒度を上げる

WCOは、HS2022ではワクチンが人用と動物用の大枠しかなく、国際貿易フローや政策対応に必要な粒度が不足していたと指摘し、HS2028でワクチン体系を再編したと説明しています。具体的には、人用ワクチンを30.07に、その他(獣医用等)を30.08に分け、疾病ベース等で細分化した構造にしています。 (世界税関機構)

医薬品企業だけでなく、コールドチェーン機材、医療機器、緊急時物資など、ヘルスケア周辺産業にも影響が及びます。理由は単純で、分類粒度が上がるほど、輸入国での規制運用や統計モニタリングが強くなるからです。 (世界税関機構)


4. 企業へのインパクト:通関だけで終わらない連鎖

新設コードは、次の領域で連鎖します。

  1. 関税コスト
    6桁が動けば、各国の8桁や10桁の枝番も再設計され、税率や特恵の適用可否が変わり得ます。 (世界税関機構)
  2. EPA・FTAの原産地判定
    品目別規則はHSベースです。6桁の再編は、PSRや関税譲許表の移行に波及し、移行期に照合ミスが起こりやすくなります。(世界税関機構)
  3. 輸出入規制とコンプライアンス
    プラスチック廃棄物のように、国際条約や環境規制と結びつく新設コードは、検査や許可、手続の厳格化とセットで動きます。 (世界税関機構)
  4. 社内マスタとデータガバナンス
    単回使用かどうか、ポリマー種別、混合や汚染など、従来は任意だった属性が、分類根拠として必須に近づきます。設計部門、調達、品質保証、通関が同じデータを共有できない企業ほど事故ります。 (世界税関機構)

5. 今すぐ実装に落とすための、実務手順

相関表が出るまで待たず、WCOの技術解説を使って前倒しで準備するのが合理的です。

ステップ1 影響品目の棚卸しを「新設コード起点」でやる

自社のHSリストから出発すると漏れます。新設コードのテーマ領域(環境、健康、食品と医薬の境界など)から逆算して、自社の製品・原材料・副産物を当てに行くのが早いです。 (世界税関機構)

ステップ2 分類根拠に必要な属性を、設計と調達に要求仕様として渡す

単回使用の定義が入った以上、製品の仕様書に「反復使用の設計意図」や「材質」を書かないと分類の説明ができません。廃棄物なら、ポリマー組成や汚染の有無をサプライヤー証明に落とす必要が出ます。 (世界税関機構)

ステップ3 2028切替はデュアル運用を前提にする

WCO自身が実装期間中に各国の法改正、IT更新、教育が必要だと述べています。企業側も、HS2022とHS2028を併記できるマスタ、社内照会フロー、申告データの変換ロジックを準備しておくのが安全です。 (世界税関機構)


6. 1枚で分かるチェックリスト

  1. 自社の品目群に、プラスチック廃棄物、単回使用製品、医療・ワクチン関連が含まれるか
  2. それらの品目で、材質や用途の属性が社内で統一されているか
  3. 単回使用と再使用の境界を、設計仕様で説明できるか (世界税関機構)
  4. 廃棄物・スクラップのポリマー種別、混合、汚染の情報を入手できるか (世界税関機構)
  5. 海外拠点や委託先と、分類根拠のテンプレートを共有しているか
  6. HS2022とHS2028を併記できるマスタ構造になっているか (世界税関機構)
  7. 規制や許認可の対象品目が、新設コードで拡大し得る前提で監視しているか
  8. 見積と価格条項に、HS変更リスクを織り込む運用があるか
  9. 原産地判定やPSRの照合で、HS移行期の例外処理を設計しているか
  10. 2027年中にテスト申告や社内リハーサルを回す計画があるか

まとめ

WCOの技術解説は、新設コード一覧を「実務で使える形」に翻訳したものです。HS2028は299セットの改正で、新設号だけでも数百規模に及びます。だからこそ、まずはWCOが技術解説で取り上げた分野から、影響と必要データを前倒しで整備するのが、最短で確実な対応になります。 (世界税関機構)

HS2028採択後、公式に何が公表されているのか

2026年1月23日現在、HS2028は「採択を経て、改正内容が公式に公表され、各国が2028年1月1日の切替に向けて国内実装へ移る」フェーズに入りました。いま重要なのは、企業が日々使うコードが多くの場合8桁以上で運用されている点です。国際共通の6桁が動くと、各国の拡張桁、通関システム、統計、FTA運用まで連鎖して動きます。したがって「採択後の公式公表状況」を押さえることは、単なる情報収集ではなく、基幹データ更新の着手判断そのものになります。 (世界関税機関)


1. まず前提:HS2028はどう採択され、いつ効力を持つのか

HS2028は、WCOのHS委員会が改正勧告(HS条約第16条に基づく勧告パッケージ)を取りまとめ、理事会での勧告を経て、異議がなければ受諾される、という国際手続で進みます。EU側の公式文書でも、理事会が勧告した改正は、締約国から6か月以内に異議がなければ受諾と扱われることが明記されています。

今回、WCOは2025年3月(HSC第75回会合)にHS2028改正案を暫定採択した旨を公表しており、その中で改正パッケージが299セットの改正から成ることなどが示されています。 (世界関税機関)
そして2026年1月21日付のWCO公表では、HS2028改正が受諾されたこと、2028年1月1日の発効に向けて相関表作成や各種ツール更新を進めることが示されています。 (世界関税機関)

さらに決定的なのが、WCOが公開している改正条文の公式PDFです。そこには、2025年6月26日の勧告に基づき受諾された改正であり、発効日は2028年1月1日であることが明記されています。 (世界関税機関)


2. 企業がいう「公式公表」は、実は5層ある

現場で混乱が起きやすいのは、「WCOが出した」だけでは通関実務がまだ動かない点です。企業の実務に効く公式公表は、おおむね次の5層で見ます。

  1. WCOの改正条文(HS条約附属書の改正)
  2. WCOの解説類の更新(HS解説書など)
  3. WCO相関表(HS2022とHS2028の対応表)
  4. 各国・地域の拡張桁の確定公表(8桁、10桁等の国内関税率表・統計品目表)
  5. 税関システム、申告様式、統計、FTA運用への実装開始

WCO自身も、受諾後の2年間で相関表作成、解説類更新、加盟国側の立法やIT改修、訓練が必要だと明確に述べています。 (世界関税機関)


3. 2026年1月時点の公式公表状況

下表は「今、一次情報として何が出ているか」を、企業実務の観点で整理したものです。

公表物2026年1月時点の状況企業にとっての意味主な一次情報
1HS条約附属書の改正条文WCOが改正条文PDFを公開、発効日も明記6桁の改正内容を一次情報で確定できるWCO改正条文PDF (世界関税機関)
1から2改正の公式概要受諾と主要改正テーマをWCOが公表影響領域の当たりを付け、社内棚卸しを開始できるWCOニュース (世界関税機関)
2主要改正ポイントの説明ページWCOが主要変更点を整理し、PDFも提示どこが大きく動くかを経営層にも説明しやすいWCO「Amendments effective from 1 January 2028」 (世界関税機関)
3相関表(HS2022↔HS2028)WCOが作成を進める段階と明言品目マスター一括移行の実務は相関表が出てからが本番WCO同ページ記載 (世界関税機関)
4各国の拡張桁国により今後順次。現時点は準備段階が中心8桁以上は国別に最終確定を待つ必要次章参照
5国内IT・申告実装これから各国で本格化通関委託先やERP改修のリードタイムが勝負WCOが必要作業を明示 (世界関税機関)

4. 主要国・地域は今どこまで動いているか

ここでは、公式に確認できる「手続の開始」や「公表サイクル」を中心に、企業が追うべき観測点を示します。国ごとの8桁確定版は、最終的には官報や公定データに落ちるまで確定しません。

米国:HTSUS改正に向けた手続が公式に走り始めた

USITCは、HS改正に整合させるための調査を開始したと公表しており、2026年2月にドラフト改正案を公表し意見募集、2026年9月に大統領へ報告する見込みまで具体的に示しています。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)
企業にとっては、米国向け輸出入がある場合、ドラフト段階から自社品目がどう扱われるかを追い、差分が大きい品目は早期に代理店や通関先とすり合わせる価値があります。

EU:CNは毎年更新され、官報公表の締切ルールがある

EUのCNは毎年更新され、EU官報に実施規則として公表されることが欧州委員会の説明ページで明記されています。 (Taxation and Customs Union)
さらに、CNの年次版は遅くとも10月31日までに官報公表し、翌年1月1日から適用する、という運用ルールが法令上も示されています。 (EUR-Lex)
この仕組みから、HS2028を取り込むCNは、発効日の2028年1月1日に合わせた年次規則として整理されるのが通常の筋になります。ここがEUの観測ポイントです。

ASEAN:AHTN 2028の開発が公式に言及されている

ASEANは、AHTN 2022の見直しがAHTN 2028の策定につながり、WCOのHS2028改正に整合させる旨を公式ページで述べています。 (ASEAN)
ASEAN向けは国ごとの国内実装時期の差が出やすいため、AHTNと各国国内税関の切替時期を二重に追う前提で計画を組むのが安全です。

日本:統計品目表は毎年更新され、公開サイクルがある

日本の税関は輸出統計品目表を年次で公開しており、2026年1月版が2026年1月1日に掲載されています。 (税関総合情報)
HS2028そのものの国内拡張桁がいつどの形で公表されるかは、最終的には公定の関税率表・統計品目表の形で確定するため、普段からこの種の公表サイクルの場所を固定して監視するのが現実的です。


5. WCOが示した主要改正テーマを、企業の影響領域に翻訳する

WCOの説明ページでは、299セットの改正、見出し数や号数の増減、主要テーマが整理されています。 (世界関税機関)
この中で、ビジネス影響が読める論点を、経営目線に直すと次の通りです。

  1. 医療・公衆衛生関連の見える化が進む
    救急車、PPE、人工呼吸器、診断・監視機器など、緊急時物資の識別がより細かくなる方向が示されています。 (世界関税機関)
    実務では、関税というより輸出入規制、統計、危機時の簡素化措置などに波及します。
  2. ワクチンやサプリなど、境界領域の整理が進む
    ワクチンを2つの新見出しに再編すること、サプリメント向けの新見出し21.07を設けることなどが明記されています。 (世界関税機関)
    企業にとっては、食品と医薬の境界、景表法・薬機法的な位置づけ、輸入時の規制要件に直結しやすい領域です。
  3. 環境対応としてプラ関連の整理が進む
    プラ廃棄物の区分見直しや、単回使用の概念を法的注記で明確化することが示されています。 (世界関税機関)
    ここは環境規制、輸出入許可、リサイクル物流、原材料調達の説明責任に波及しやすい領域です。

6. 企業がいま着手すべき準備

相関表や各国8桁が揃うまで待つと、2027年後半からの改修ラッシュに巻き込まれます。WCOが示す通り、2年間は各国が立法とIT改修を進める期間です。 (世界関税機関)
いまは次の順で、軽くても着手しておくのが合理的です。

  1. 自社の品目マスター棚卸し
    輸出入で使っているコード、相手国の拡張桁、FTAの品目別規則で参照している桁数を一覧化します。
  2. 影響の優先順位付け
    売上・購買金額、関税率差、規制該当、原産地規則依存度の4軸で、先に見る品目を決めます。
  3. 分類根拠の整備
    改正でコードが動くときに説明できるよう、用途、材質、機能、構成、技術資料を根拠として束ねます。後で8桁が出たときの再判定が速くなります。
  4. 2026年2月以降のドラフト群を追う
    米国のようにドラフト公開予定まで明示している国は、そこが最初の分岐点になります。 (アメリカ合衆国国際貿易委員会)

まとめ

HS2028は、受諾と発効日が公式に確定し、改正条文PDFも公開されました。 (世界関税機関)
これからの勝負は、相関表の公開と、各国の拡張桁確定、公定データ化、システム実装の連鎖にどう先回りするかです。WCOが示した2年間を、企業側の準備期間として使い切れるかが、そのまま2028年1月の安定稼働に直結します。 (世界関税機関)

デモ依頼が増える理由 曖昧な情報でも結論まで導くHS判定の進め方

今日のデモ依頼は「情報が揃わない」現場あるある

今日も、ある企業さまからHSCFのデモのご依頼をいただきました。テーマは、現場で本当によく起きる悩ましいケースです。情報が揃いきらない状態でも、どこまで精度を上げて判断できるか。ここが今回の焦点でした。

ご相談は大きく3つ

今回のご相談は、次の3点に集約されました。

  1. 写真がややぼけている商品の判定を、SDSと突き合わせてどう進めるか
  2. 3Dプリンタで作成した補助具を、どの考え方で整理するか
  3. CTCでの部材HSコード付番を、HS年次変換込みでどう揃えるか

1つ目:写真がぼけていても、SDSで判断の筋道は作れる

写真がややぼけている商品は、見た目だけで判断すると誤判定につながりやすい一方で、SDSには組成や性状の重要な手掛かりが詰まっています。

HSCFでは、写真の情報を補いながら、SDSの要点を根拠として整理し、判断の筋道を見える形にするところまで一気に進めました。
ポイントは、見た目の印象ではなく、根拠として残せる情報に判断軸を寄せることです。


2つ目:3Dプリンタ補助具は、用途と組み込み方で結論が変わる

次は、3Dプリンタで作成した補助具の扱いです。用途や設計思想、最終的にどの機械や工程にどう組み込まれるかで結論が変わりやすく、担当者が最も迷いやすい類型のひとつです。

デモでは、判断に必要な追加質問を最短距離で引き出し、結論に至るロジックを分解して説明しました。
曖昧さを減らす鍵は、仕様や役割を言語化し、判断に必要な条件を先に揃えることにあります。


3つ目:CTCは部材HS付番の一貫性と年次差の整理が勝負

3つ目は、CTCでの部材のHSコード付番です。部材点数が多いほど、付番の一貫性と、年次の違いによる齟齬がボトルネックになります。

今回は、HS年次変換を織り込みながら、部材ごとの付番とCTC判定の前提条件を揃えるところまで確認しました。
CTCの議論は、前提が揃った瞬間にスムーズになります。逆に言えば、前提が揃っていないと、議論がいつまでも終わりません。


デモの反応は良好、そして話題は自然にFTA検証へ

得意領域の案件だったこともあり、デモ後の反応はかなり良好でした。
ただ、印象的だったのは、その後の会話が自然にFTAの原産地検証の話へ移ったことです。

実務では、HSコードが正しくても、運用や証明の組み立てが弱いと、検証対応で時間とコストを失います。
逆に言えば、ここを整えるだけで、FTAは守りではなく攻めの武器になります。


私たちが提供しているのは、HSだけではなくFTAの戦略活用まで

私どもは、HSコードの支援にとどまらず、FTAをどう戦略的に活用するかまで含めてコンサルティングしています。そこで最後に、「ご心配があれば、証明方法や運用が適切かを点検するFTA診断もあります」とお伝えしました。


まとめ:HSCFのデモも、FTAの相談も歓迎です

HSCFのデモはもちろん、FTAの運用設計や検証対応の不安、証明の仕組みづくりまで、相談は大歓迎です。
現場で詰まりやすい論点ほど、早めに整えて、安心して攻めに転じられる状態を一緒に作っていきましょう。

HSコードの「ドシエ」とは何か?通関の答え合わせではなく、経営のリスク管理である

輸出入の現場では、HSコードを決める作業が「通関担当者だけの仕事」と見なされがちです。しかし実際には、HSコードは関税コスト、EPA/FTAの適用可否、輸入規制、統計、さらには社内マスタの整合性まで、あらゆるビジネスプロセスに連鎖します。

そこで今、先進的な企業が取り入れているのが「HSコードのドシエ(Dossier)」という考え方です。本稿では、ドシエの重要性と、ビジネスマンがとるべき対応を実務視点で解説します。


1. HSコードにおける「ドシエ」の定義

ドシエとは、ある品目を特定のHSコードで申告することについて、「なぜその番号なのか」を合理的に説明できる根拠一式をまとめた証拠ファイルです。

英語では Classification DossierClassification Rationale File と呼ばれます。

ポイント:ドシエは単なる「番号のメモ」ではない

判断のプロセスと証拠を残す「仕組み」です。税関の事後調査や監査が入った際、第三者が納得できる形で説明できることを目的とします。


2. なぜ今、ドシエが必要なのか?

属人的な運用(「あの人が決めたから大丈夫」)には限界があります。以下のリスクを回避するために、ドシエによる組織的な管理が不可欠です。

  • 製品の高度化・複合化: センサー付部品やソフトウェア搭載機器など、分類の判断が分かれやすい製品が増えている。
  • サプライチェーンの分断: 設計は日本、製造は海外、通関は業者委託。情報が断片化し、分類の根拠が不明になりがち。
  • 税関のデータ分析力向上: 申告データがデジタル化され、同じ品目なのにコードが揺れていると、即座に照会の対象となる。
  • HS改正への対応: 数年ごとのHS改正や各国独自の細分改訂に対し、個人の記憶だけで整合性を保つのは危険。

3. 「強いドシエ」を構成する5つの要素

監査や照会に耐えうるドシエには、以下の情報が整理されている必要があります。

カテゴリ含まれるべき中身
A. 製品特定情報写真、図面、仕様書、カタログ、材質・組成、用途、機能の有無、変更履歴
B. 分類ロジック解釈通則の適用方針、参照した部類注・類注、候補から外した号とその理由
C. 外部根拠事前教示(Advance Ruling)、当局のガイダンス、他国での決定事例(EUのBTI等)
D. 運用情報適用税率、特恵適用の可否、他法令(許認可)の有無、統計品目番号
E. 統制・版管理作成・承認者、適用開始日、改訂理由(仕様変更やHS改正など)

4. 実務担当者が意識すべき「5つの論点」

ドシエを現場任せにせず、経営として機能させるための戦略的な視点です。

① 優先順位を決める(全品目を目指さない)

「支払関税額が大きい」「分類が難しい部品」「過去に指摘を受けた」など、リスクの高い品目から着手するのが現実解です。

② 情報の「所有権」を明確にする

分類は通関部門だけで完結しません。

  • 設計・品質管理: 製品の事実(Fact)を担保する。
  • 貿易担当: 分類ロジック(Logic)を構築する。最終的な説明責任は、外部業者ではなく自社にあります。

③ マスタデータと連動させる

ドシエはERP(基幹システム)や品目マスタの「裏付け」です。書類とシステム上のデータが一致していることが統制の基本です。

④ 変更管理のトリガーを定義する

「設計変更」「材料の変更」「ソフト更新による機能追加」があった際、自動的にドシエが再評価されるワークフローを構築します。

⑤ 事前教示を戦略的に使う

論点が大きい重要品目は、ドシエを土台にして税関の「事前教示」を取得し、公的なお墨付きを得ることでリスクをゼロに近づけます。


5. よくある失敗と回避策

  • 失敗:カタログだけで分類している
    • 対策: 仕様書や図面、用途限定の根拠をドシエに含める。
  • 失敗:結論(番号)しか書かれていない
    • 対策: 「なぜ他の号ではないのか」という消去法のプロセスを1行でも残す。
  • 失敗:サプライヤーの提示したHSを鵜呑みにする
    • 対策: サプライヤーの情報はあくまで参考。自社のロジックで再確認する。

まとめ:ドシエは「事業を守る資産」である

HSコードのドシエは、単なる通関書類ではありません。利益(過払い・追徴防止)、リードタイム(納期遅延防止)、そして企業の信頼を守るための経営資産です。

まずは重要品目から、**「1ページの最小ドシエ」**を作ることから始めてみてください。その運用が回り始めたとき、貴社の通関品質は劇的に安定するはずです。

HSCFで実現する「HSドシエ」の現在地:中身の生成と組織運用のギャップを整理する

これまでの仕様に基づくと、HSCFは**「HSドシエの核となる根拠を生成する機能」において非常に強力なポテンシャルを持っています。一方で、「社内統制(承認フロー・ERP連携等)」**については、今後の設計や外部システムとの連携が鍵となる領域です。

現在のHSCFがドシエの主要機能をどの程度カバーしているのか、一覧表で整理しました。

HSドシエ機能別のカバー範囲一覧

ドシエの機能ブロック具体的な実現内容HSCFの対応状況補足・今後の展望
1. 製品特定情報の収集仕様・用途・材質・構造の集約● カバー自然文、写真、図面等から属性を抽出。不足情報の自動質問機能あり。
2. 分類候補の提示候補コードの提示と確度比較● カバー複数候補のスコアリングと、比較検討の入口を提供。
3. 分類ロジックの説明選定理由・除外理由の文章化● カバー「なぜその号か」「なぜ他ではないか」の判断道筋を言語化。
4. 根拠ソースの提示通則、部類注・類注、WCO解説等の参照● カバーGIR(解釈通則)や各国ノート、WCO解説書等の紐付けを想定。
5. 証拠の添付・記録写真、仕様書、SDS等の保管● カバー分類レコードに各種ファイルを添付・記録可能。
6. 版管理・改正追随HS2022/2028等の版差分管理△ 一部カバー相関表による切替支援は想定。ただし社内承認・通知等の統制は未確定。
7. FTA/EPA観点の接続原産地規則(PSR)への展開△ 一部カバー相関表を用いた原産性チェック支援。ルールエンジンとの連携は要設計。
8. 関税・規制影響の整理税率、許認可、輸入規制のマッピング― 未確定関税率や他法令規制の自動紐付け機能は現時点では明示なし。
9. 承認フローと監査統制作成・承認、変更履歴、責任の明確化― 未確定ワークフロー機能や組織的な統制機能は現時点では明示なし。
10. ERP/PLM連携品目マスタとの同期、社内データ運用― 未確定基幹システムへの自動反映やコネクタ連携は現時点では明示なし。

HSCFの強み:ドシエの「コア(中身)」を作る力

要するに、HSCFはドシエにおける以下の「実務の核心部分」を高いレベルでカバーしています。

  1. 根拠を作る: 膨大なデータから最適なロジックを導き出す。
  2. 再現性のある説明文を作る: 属人性を排除した納得感のある推論を展開する。
  3. 証拠を紐づける: 根拠となる資料を分類結果と一体化させる。

これは、従来「ベテランの頭の中」にしかなかった暗黙知を、形式知化してドシエに落とし込む作業を劇的に効率化することを意味します。

今後の課題:ビジネス実装としての「ガバナンス」

一方で、ビジネスの仕組みとして完結させるために必要な「最後のピース」は、現時点では未確定の領域です。

  • 承認と改訂統制: 誰が承認し、いつから有効とするのかという運用フロー。
  • ERP品目マスタへの反映: 決定したコードをいかにミスなく基幹データへ同期するか。
  • 関税・規制情報の自動整理: 分類の結果、ビジネスにどのような実務的制約が生じるかの自動提示。

結論:HSCFをどう活用すべきか

あなたが想定しているドシエの定義が、「社外提出・監査に耐えうる完成品(要約+証拠+承認印)」であるなら、HSCFは「中身の自動生成と証拠収集のエキスパート」と言えます。

最終的な「社内統制」や「システム連携」までを仕組み化する場合、HSCFを中核に据えつつ、既存のワークフローシステムやERPとのAPI連携を設計していくのが、次なる開発・導入のステップになるでしょう。

WCOがHS2028改正を正式に確定。企業実務で注視すべき4領域はセンサー、半導体、EV電池、スマート繊維

2026年1月21日、世界税関機構WCOはHS2028改正(HS2028 amendments)が受け入れられたことを公表しました。HSは各国の関税率表、統計、各種規制の土台であり、改正は通関部門だけでなく、調達、設計、営業、経営管理にまで影響します。発効は2028年1月1日で、いまは実務準備のための移行期間に入った局面です。 (wcoomd.org)

本稿では、公式一次情報で確認できる範囲を軸に、改正の全体像と、タイトルで挙げたセンサー、半導体、EV電池、スマート繊維がなぜ経営課題になりやすいのか、そして今から何を準備すべきかを整理します。



1. 何が決まったのか。HS2028の確定内容とスケジュール

HS2028は2028年1月1日に発効。改正は299セット

WCOの公表によれば、HS2028の改正は299セットの変更で構成され、HS2022と比べて新設と削除が発生しています。公式発表では、見出しは1,229、号は5,852となり、HS2022比で見出し6本と号428本が新設、見出し5本と号172本が削除と説明されています。 (wcoomd.org)

また、レビューサイクルは通常5年ですが、今回はCOVID-19等の影響で2019年7月から2025年6月までの6年に延長されたことも明記されています。 (wcoomd.org)

改正の意思決定はHS条約第16条の勧告として進んだ

実務上重要なのは、HS2028がHS条約第16条に基づく勧告パッケージとして取りまとめられた点です。2025年3月10日から21日のHSC第75回会合で、HS2028の改正勧告が暫定採択され、WCO理事会に回付される流れが示されています。 (wcoomd.org)

そのうえで、WCOは2026年1月21日に改正が受け入れられたと公表し、2028年1月1日に発効するとしています。 (wcoomd.org)


2. 公式発表で強調された主題と、企業にとっての意味

WCOの発表は、今回の改正が単なる品目名の整理ではなく、政策目的や規制執行を支える役割が強まっている点を繰り返し強調しています。 (wcoomd.org)

公衆衛生と緊急対応をHSで見える化

WCOは、ワクチンと医療緊急物資の見える化を主要成果として詳細に説明しています。ワクチンはHS2022の30.02から再編され、ヒト用ワクチンを30.07、その他を30.08とする新見出しと詳細な号構造が導入されるとしています。 (wcoomd.org)

環境対応は廃棄物と単回使用製品を中心に具体化

環境面では、プラスチック廃棄物をバーゼル条約の枠組みに整合させる形で整理し、単回使用という概念を法的注記で明示して分類と統計の一貫性を高める方向が示されています。 (wcoomd.org)

この方向性は、企業実務に直結します。HSは関税率だけでなく、規制対象品の特定、禁制品管理、サプライチェーンの可視化、統計分類、さらにEPAやFTAの原産地規則運用にも影響します。HS改正は、企業データの基準軸が入れ替わるイベントと捉えるべきです。


3. なぜセンサー、半導体、EV電池、スマート繊維が注目領域なのか

WCOの公式発表は公衆衛生と環境を前面に出していますが、HS2028は技術進化に合わせて分類を簡素化し、新製品や組成変化に対応することも狙いに入っています。EUはWCO理事会での第16条勧告採択に向けた説明文書で、具体例として半導体とトランスデューサ、清掃ロボット、ドローン、e-bike等を挙げ、分類容易化の対象になっていると明記しています。 (EUR-Lex)

ここでいうトランスデューサは、センサー領域と重なります。さらに、EV電池とスマート繊維は、環境規制と複合製品化という二つの潮流の中心にあり、HS改正が引き金となって各国が8桁や10桁で細分や運用明確化を進めやすい領域です。


4. 領域別に起きやすい論点と、実務での備え

以下は、HS2028で何番がどう変わるという断定ではなく、公式文書が示す方向性と、各国当局の分類実務で繰り返し問題化している境界から、企業が先回りで潰すべき論点を整理したものです。

4-1. センサー。争点は機能の複合化と分類境界

センサーは単体部品ではなく、信号処理、通信、電源、ソフトウェアを組み込んだモジュールとして取引されることが増えています。すると、測定機器なのか、電気機器なのか、あるいは特定機械の部分品なのかという境界論点が表面化します。

スマート繊維の事例ですが、米国CBPの分類事前教示では、センサー付きコンプレッション衣類、データモジュール、USBケーブルのセットについて、セットの本質的特性は衣類側にあるとして衣類側の号でセットを分類しつつ、データモジュールを単体輸入すれば測定機器側、ケーブルは電気導体側に分けて分類しています。複合製品がどこで分解され、どこでセットとして扱われるかが、税番と税率を左右する典型です。 (CROSS)

企業側の備えは、製品仕様の情報粒度を上げることです。最低限、測定対象、測定原理、出力形態、通信機能の有無、当該機械専用品か汎用品か、部品としての完成度を、型番単位でマスタ化しておくと、改正後の移行でも揺れにくくなります。

4-2. 半導体。品名より実体で分類される時代に入っている

半導体は、ウェハ、ダイ、パッケージ品、モジュール、基板実装品など形態が多様で、同じ用途でも供給形態が変われば分類ロジックが変わります。EU文書が半導体とトランスデューサを、分類容易化の対象例として名指しした点は、改正の方向性を読むうえで重要です。 (EUR-Lex)

企業実務では、材料名や用途説明だけでは足りません。取引単位が何か、電気的機能がどこまで内蔵されているか、複数機能のうち主たる機能は何かを、設計部門と調達部門が共通言語で説明できる状態を作る必要があります。HS2028対応を機に、半導体関連は分類ドシエを標準化し、品目説明のテンプレート化まで踏み込むと効果が出ます。

4-3. EV電池。環境規制と国際取引の両面で監視が強まる

EV電池は、製品としての分類だけでなく、使用済み電池や電池廃棄物、リサイクル原料としての取引が増えること自体が、分類と規制運用を難しくします。OECDは、リチウムイオン電池の循環型バリューチェーンを進めるうえで、廃棄物としての位置付けの明確化、輸送保管の安全規則の整合、設計標準の調和、回収とリサイクルの規制目標などが必要だと指摘しています。 (OECD)

一方、WCOはHS2028で環境保護を主要テーマに掲げ、廃棄物分類を国際環境枠組みに整合させ、単回使用概念まで法的注記で明確化する方向を打ち出しています。 (wcoomd.org)

この二つを合わせて読むと、EV電池は次の3点を社内で先に固めるのが合理的です。新品のセル、モジュール、パックの取引単位と機能定義。車両と一体輸入される場合と単体輸入の扱い。使用済み電池と廃棄物の線引きに必要な証憑と、物流側の安全規則対応。ここが曖昧だと、HS改正後に税番移行だけでなく、規制対応や廃棄物該当性の判断まで連鎖して止まります。

4-4. スマート繊維。複合製品の典型で、分類の根拠が問われる

スマート繊維は、繊維製品としての性格と、電子機能としての性格を同時に持ちます。実務上の争点は、電子部品が着脱可能か、着脱後も繊維製品としての価値が成立するか、機能の中心はどちらかです。

先のCBP事例は示唆が大きく、衣類にセンサーが縫い込まれ、モジュールが着脱式で、セットとして販売される場合に、セットの本質は衣類側にあるという評価が採られています。モジュール単体は測定機器側、ケーブルは導体側と分けて評価されています。スマート繊維は設計段階で、何を一体化し、何を分離するかが、分類と税率に直結する領域です。 (CROSS)


5. いま企業が着手すべきHS2028対応ロードマップ

WCOは、2028年1月1日の発効までに相関表の整備、HS関連ツールと刊行物の更新、各国実装の準備が進むと説明しています。企業側も、この2年で何を終えるかを逆算する必要があります。 (wcoomd.org)

  1. 影響棚卸し
    自社の輸出入上位品目を、HS6桁と国別8桁10桁まで含めて一覧化し、売上、原価、関税インパクト、規制リスクで優先順位を付けます。
  2. 二重管理の設計
    2027年のどこかで、現行コードとHS2028想定コードを並記できる状態を作ります。ERP、品目マスタ、通関指示書、原産地判定ロジックのどこで切り替えるかを先に決めます。
  3. 分類ドシエの標準化
    センサー、半導体、スマート繊維は、製品説明の粒度が勝負です。設計仕様、機能、構成、用途、写真、データシートを型番単位で一枚にまとめ、当局照会や監査で即答できる形にします。
  4. 国別実装の監視
    HS6は共通でも、各国は8桁以降の細分と運用で差が出ます。主要仕向け国の改正版タリフ公布とガイダンスを継続監視し、通関委託先とも切替手順を合意します。
  5. 先行してルールを取りに行く
    グレーになりやすい品目は、主要国で事前教示制度の活用を検討します。改正後の初期は当局側も運用を固めるため、早期に根拠を確保した企業が有利になります。

6. まとめ。HS2028は分類改正であり、基準データの更新である

HS2028は、2026年1月21日に受け入れが公表され、2028年1月1日に発効します。改正は299セットで、見出しと号の新設と削除が伴います。 (wcoomd.org)

公衆衛生と環境が公式発表の主役ですが、EUの公式説明は半導体とトランスデューサを明示的に挙げ、技術進化に合わせた分類容易化が改正の柱であることも示しています。 (EUR-Lex)

さらにWCOは、HSそのものの分かりやすさと使いやすさを高めるための枠組み強化プロジェクトを進め、2033に向けたより深い見直しも議論しています。今回の改正対応は、次の改正を楽にする投資でもあります。 (wcoomd.org)

センサー、半導体、EV電池、スマート繊維は、複合化と規制強化の交点にあります。だからこそ、いま必要なのは税番を当てることではなく、税番が揺れないように仕様情報と根拠を整え、切替の手順を設計し、国別実装を監視することです。これを2年で終えた企業だけが、2028年の切替をコストではなく競争力に変えられます。

■HS2028■⑥規制・監視目的(環境、健康、安全保障)で取締り対象になりやすい品目関連のHSコード品目分類

環境、健康、安全保障で止まらないために企業が知るべき変化

2028年1月1日に発効するHS2028は、関税分類の更新という枠を超え、社会、環境、安全保障の観点で「特定品目を把握しやすくし、取締りやモニタリングをやりやすくする」方向性が明確に打ち出されています。EUの公式説明では、299セットの改正は貿易パターンや新技術の反映に加え、社会、環境、セキュリティ上の懸念に対応し、特定品目のコントロールと監視を容易にする目的を持つ、と整理されています。
WCOも、HS2028改正勧告パッケージがまとまり、2025年末に正式採択、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効するタイムラインを示しています。(世界税関機関)

この記事では、規制や監視の対象になりやすい品目群で、HS2028が企業実務にどんな影響を与え得るかを、ビジネスマン向けに整理します。


1. なぜ「規制・監視目的の品目」がHS2028で影響を受けやすいのか

HSコードは、関税率を決めるだけの番号ではありません。輸出入許可、危険物や有害化学物質の管理、廃棄物規制、制裁や輸出管理、取引審査やリスク選別など、行政の判断トリガーとして広く使われます。
そのため、規制や監視の対象になりやすい品目ほど、HS側で区分を細かくして「見分けやすくする」メリットが大きく、改正の優先度が上がります。EUの説明でも、取締りや監視をしやすくするための改正として、プラスチック廃棄物やワクチン、健康関連グループなどが例示されています。


2. HS2028で起きやすい変化のパターン

規制・監視に効くHS改正は、企業側から見ると次の形で現れやすいです。

  1. 見出しや号の新設、細分化
    対象品目を識別しやすくするため、区分を増やす動きです。ワクチンの粒度を上げる提案が典型例です。(WTO)
  2. 注記や定義の追加
    見分け方を明確にして、各国運用のブレを減らします。分類に必要な製品情報が増えやすい点が実務インパクトになります。
  3. 低取引量区分の整理
    一方で、取引量の少ない見出しや号を削除して体系を簡素化する動きも併存します。統計や社内マスターの連続性を確保する工夫が必要になります。

3. 環境で取締り対象になりやすい品目群

廃棄物、有害化学物質、持続可能性関連

3-1. プラスチック廃棄物は代表格

HS2028の改正例として、プラスチック廃棄物は公式に挙げられています。
また、WCOの地域会合報告でも、HS2028改正のカテゴリーとして「プラスチック廃棄物」が言及されています。
企業目線では、廃棄物の区分が細かくなるほど、材質、混合状態、汚染の有無など、分類と規制判断に必要な証拠が増えると見ておくべきです。

3-2. 国際条約で管理される有害化学物質は、HSと連動が強い

有害化学物質や農薬を国際的に管理する枠組みの一つにロッテルダム条約があります。WCOは、HSが各改正でロッテルダム条約の対象物質の変化を反映し、正当な貿易の監視とPIC手続への適合確認を可能にする、と説明しています。(世界税関機関)
さらに、HS2028の発効を待つ間でも統計上の追跡を可能にするため、WCOは各国に対し、特定化学物質について国内統計品目で追加細分を設けるよう推奨しています。例として、デカブロモジフェニルエーテルをHS 2909.30の下、PFOAとその塩をHS 2915.90の下で細分する推奨が示されています。(世界税関機関)
ここは、化学品を扱う企業ほど影響が直撃しやすい領域です。税番の変更だけでなく、SDSや成分証明、用途説明などの整備が、通関と規制対応の安定性を左右します。


4. 健康で取締り対象になりやすい品目群

ワクチン、医薬品、パンデミック対応物資

4-1. ヒト用ワクチンは、より細かい識別へ

WTOの公表情報では、HS2028で「ヒト用ワクチン」の新見出しを設け、複数の区分を置く提案が進んでいるとされています。(WTO)
パンデミック時に、統計と政策判断のためにワクチン分類の粒度を上げたいという問題意識が背景にあり、企業側には品目マスターの再設計や、製品属性の整理が求められます。

4-2. 医薬品はコード変更より「分類運用の厳密化」が効いてくる

WCOはHS委員会の会合成果として、WHOのINNリストに基づく医薬品物質について多数の分類整理が行われたことを公表しています。(世界税関機関)
これはHS本文の改正とは別枠ですが、医薬品や関連物資が当局にとって重要な監視対象であること、そして分類の統一運用が強く求められている現実を示します。ビジネスでは、成分特定の証拠や品名管理を軽視すると、照会や差戻しのコストが増えやすくなります。


5. 安全保障で取締り対象になりやすい品目群

違法薬物製造関連、爆発物前駆体、デュアルユース

5-1. 違法薬物製造に使われる物質のトラッキング強化

WCOの会合報告を引用した地域資料では、HS2028改正のカテゴリーとして「違法薬物製造に用いられる物質」が挙げられています。
規制対象になりやすい化学品は、合法用途と違法用途が混在しやすく、HSの識別力が上がるほど、企業側には用途説明、顧客審査、出荷管理の厳密さが求められます。

5-2. 爆発物前駆体など、合法流通品の悪用がリスクになる

WCOは2025年の国際取締り作戦で、爆発物前駆体などのデュアルユース品が不正に転用され得ること、税関がリスク選別と監視で重要な役割を担うことを強調しています。(世界税関機関)
HS2028の直接改正項目そのものは別途確認が必要ですが、安全保障分野では「品目を特定しやすいHS区分」が、取締り実務の基盤になります。企業側は、輸出管理や制裁スクリーニングのルールがHS参照で組まれている場合、HS変更が誤検知や見逃しにつながる点に注意が必要です。


6. 企業が受ける実務インパクト

止まりやすいのは、通関ではなく社内の情報連携

規制・監視目的の品目は、HSの区分が細かくなるほど「説明できるデータ」が必要になります。しかも影響は関税部門だけに留まりません。

・輸出入許可、危険物、有害化学物質管理などの法令対応
・制裁、輸出管理、取引審査システムのルール更新
・ERPや品目マスター、統計分析の連続性確保
・取引先へのHS版指定と証拠要求の標準化

この連鎖を短時間で処理するには、HS2022とHS2028の対応表が鍵になります。WCOもHS2028とHS2022の相関表を整備し、実装のための重要ツールになると位置づけています。(世界税関機関)


7. いまからできる最小の準備

規制対象品目ほど、先に動いた企業が勝つ

  1. 規制、監視に紐づく品目を棚卸しする
    環境、健康、安全保障のいずれかに関係する品目をリスト化し、現行HSと関連法令、社内ルールの紐付けを見える化します。
  2. 分類に効く属性情報を品目マスターに追加する
    化学品は成分と用途、廃棄物は材質と混合状態、ヘルスケアは用途区分など、分類と規制判断の根拠になる情報を最小セットで整備します。(世界税関機関)
  3. HS変更が効くシステムを先に特定する
    制裁、輸出管理、危険物、許認可、物流制御、統計集計など、HS参照のルールが埋め込まれているシステムを洗い出し、相関表で一括更新できる構造にします。(世界税関機関)

まとめ

HS2028は、新技術対応だけでなく、社会、環境、安全保障の観点から、特定品目の取締りとモニタリングを強化する目的が明確に示されています。
プラスチック廃棄物、ワクチン、有害化学物質、違法用途に転用され得る化学品やデュアルユース品は、まさにその中心にある領域です。

企業にとっての勝ち筋は、番号が変わってから慌てるのではなく、規制対象品目から先に、証拠とデータ項目を整え、HS2022とHS2028を接続できる状態を作ることです。これが2028年の切替で止まらない最短ルートになります。

■日本■ 2026年からヘビースクラップHSコードが2区分へ。何が変わり、実務はどう備えるか

鉄スクラップ取引の現場では、品種名として長く使われてきたヘビースクラップが、統計上の扱いでも大きく動きました。日本の輸出統計品目番号では、ヘビースクララップに相当する7204.49のヘビーくずが、2026年1月1日から2つに細分化されています。 (jisri.or.jp)

この変更は、単なる番号の付け替えではありません。厚さ6ミリメートルという明確な数値基準が入ることで、現場の選別、契約条件、申告根拠の作り方まで影響が及びます。

まず結論。2026年の新コードはこの2つ

ヘビーくずは、2026年1月1日版で次の2区分になっています。 (jisri.or.jp)

区分輸出統計細分要点
厚さが6ミリメートル以上7204.49-110最も薄い部分の厚さが6ミリ以上であることが条件
その他7204.49-190上記以外。実務上は厚さ6ミリ未満側が中心

7204.49-110は、説明文でも厚さ6ミリ以上が明記されています。 (kanzei.or.jp)
7204.49-190は、品名概要として厚さ6ミリ未満のヘビーくずと整理されています。 (kanzei.or.jp)

ここで注意したいのは、いわゆる国際的なHS6桁が変わったというより、日本の輸出統計細分がより細かく分かれた、という性格が強い点です。実務ではこの枝番まで正しく入れて申告するため、影響は十分に大きいと考えるべきです。

ヘビーくずの定義が、数値で整理された

今回の見直しでは、ヘビーくずとは何か、どこまでが別物か、が文章で整理されています。

ヘビーくずの基本像は次のとおりです。

・鋼板、形鋼、レール、列車車体、船舶胴体、重機、ボンベ等の鉄鋼製品を切断、解体したもの
・圧縮成形されたプレスくずは除外
・1個当たり重量が1kg以上1,000kg以下
・寸法の目安として、厚さ1mm以上から500mm以下、幅または高さ300mm以上から500mm以下、長さ300mm以上から1,200mm以下が示されている

この整理の意味は大きく、税関側の判断軸が明確になる一方で、輸出者側も根拠を示せるように整備しないと、通関段階で止まりやすくなります。

分岐点は厚さ6ミリ。判断方法が実務向けに定義されている

今回の最大ポイントは、7204.49-110の判定方法が、現場で揉めやすいところまで踏み込んで定義されている点です。

・厚さ6ミリ以上とは、最も薄い部分の厚さが6ミリ以上であること
・厚さ6ミリ未満のものと分けていないものは含めない、とされている

つまり、荷姿の中に6ミリ未満が混ざっているのにまとめて6ミリ以上として扱う、という運用はリスクが高い、というメッセージになります。

さらに、取引実務でよく出る等級呼称との対応も示されています。

・厚さ6ミリ以上は、HSまたはH1として取引されることがある
・厚さ6ミリ未満は、H2、H3またはH4として取引されることがある

統計番号の変更は、現場の商慣行に近い区分を税関手続きに持ち込んだ、と捉えると理解しやすいはずです。

なぜ今、細分化なのか。背景は資源循環の可視化

報道ベースでは、今回の改正は、輸出入の動きをより細かく把握して金属資源の流れを見える化し、国際資源循環の適正化につなげる狙いがある、と説明されています。 (イルミル)

一方で、現場負担が増えることへの懸念も強く、業界団体が反対や不安の声を上げていることも報じられています。 (鉄鋼・非鉄金属業界の専門紙「日刊産業新聞」)

ビジネス側として重要なのは、背景の是非よりも、税関実務がこの基準で動き始めたという事実です。基準が明文化された以上、事後的に説明できる体制がない企業ほど、遅延や差し戻し、追加確認の影響を受けやすくなります。

企業実務への影響。特に効くのは5点

1. HSマスターとNACCS連携の改修が必須

7204.49-110、7204.49-190は、NACCS用コードも付いて流通します。 (kanzei.or.jp)
社内の品目マスター、通関業者への指示票、インボイス品名、出荷システムのコード連携を、枝番まで含めて点検してください。

2. 選別と検収の定義が契約条件になる

厚さ6ミリの判定が入ると、仕入、ヤード選別、積込検収のどこで判定し、どの記録を残すかが、取引トラブルの焦点になります。特に最も薄い部分基準は、測り方を決めておかないと現場で判断が割れます。

3. 混載リスクが上がる

厚さ6ミリ未満と分けていないものを含めない、という書き方は、混載しているだけで110側が否定され得る設計です。
コンテナ単位、船積みロット単位で区分が明確になる運用に寄せるのが現実的です。

4. 通関で聞かれるポイントが変わる

従来は、ヘビーくずかどうかの説明で済んでいた場面でも、今後は厚さの根拠を聞かれる可能性が上がります。写真、計測表、検収基準書、ヤードの選別ルールなど、後から出せる証跡を整えておく方が強いです。

5. 輸出管理の観点も再確認

該当品目には、輸出貿易管理令の参照が付されています。取引先や仕向地によっては、分類だけでなく輸出管理側の確認も併走させるべきです。 (kanzei.or.jp)

すぐに使える実務チェックリスト

・社内の品目マスターで、7204.49-110と7204.49-190を別品目として登録したか
・ヤード選別で、厚さ6ミリの判定基準と測定方法を文章化したか
・最も薄い部分の厚さを測る運用と、記録様式を決めたか
・混載を避ける積込ルールを設定し、通関業者に共有したか
・契約書、検収条件、クレーム条件に厚さ基準を反映したか
・輸出管理上の確認が必要な仕向地、取引先に対して、社内フローを更新したか (kanzei.or.jp)

まとめ。細分化は、トラブル予防の仕組みでもある

今回の改正は、ヘビースクラップを厚さ6ミリで2区分し、定義と判定方法を明文化した点に本質があります。 (jisri.or.jp)
統計を細かくする狙いは資源循環の可視化にあるとされますが、企業側から見ると、通関で説明できる材料を揃えれば揃えるほど、通関遅延や差し戻しを減らせる設計になったとも言えます。 (イルミル)

現場の選別、契約条件、申告根拠の3点をセットで整備し、通関業者と同じ判定軸で動ける状態にすること。それが、2026年以降のヘビースクラップ取引で最も効く実務対応になります。

自動車用センサーの分類リスクを深掘りする HSコードの税番ミスが、利益と納期を静かに削る理由

自動車用センサーは、いまや部品ではなく「事業の要」になりました。ADAS向けのカメラやミリ波レーダー、排ガス向けのガスセンサー、圧力や流量の各種センサーまで、車両の価値はセンサーとソフトウェアで決まると言っても過言ではありません。

一方で、サプライチェーンが国境を跨ぐほどに増えるのが、HSコードの分類ミスです。HSは世界の200以上の国や経済圏で使われる国際的な品目分類で、6桁コードを基礎に、関税や統計などに用いられます。しかも技術や貿易の変化に合わせて定期的に改正されます。ここでの判断を誤ると、関税コストだけでなく、通関遅延、監査対応、取引条件の見直しなど、ビジネス全体に波及します。 (World Customs Organization)

本稿は、以前の「自動車用センサー分類リスク一覧」を、実務に落ちる粒度まで掘り下げたものです。狙いは、現場で起きやすい失敗を、構造として理解し、再発しない運用に落とすことです。


1. なぜ自動車用センサーは分類が難しいのか

難しさの本質は、センサーが「車の部品」に見えやすい一方で、HSの世界では「何の部品か」より「何として機能するか」が強く問われる点にあります。

HSの解釈では、まず見出し(heading)と、セクション注や章注(Notes)に従って分類します。見出しのタイトルは参考であって、法的には見出し文言と注記が優先です。 (Canada Border Services Agency)

ここで自動車業界の落とし穴になるのが、「車両の部分品(8708)に寄せたくなる心理」です。確かに第87類には「自動車の部分品及び附属品(87.08)」があります。 (Canada Border Services Agency)

しかし、セクションXVIIの注記では、部分品や附属品の考え方が適用されない品目が明確に列挙されています。代表的な除外として、電気機器(第85類)や測定・検査等の機器(第90類)が挙がります。つまり、車に付くからといって、自動的に8708になるわけではありません。 (Canada Border Services Agency)

センサーは、まさに第85類や第90類に該当しやすい典型例です。だからこそ、分類リスクが高いのです。


2. センサーを「税番を決める観点」で分類し直す

技術分類(レーダー、LiDAR、カメラ…)は開発や調達では有効ですが、HSの初動判断では別の切り口が効きます。ポイントは次の3つです。

  1. 測定・検査の機器か(第90類になりやすい)
  2. 画像・電波などの電気機器か(第85類になりやすい)
  3. それでも部分品として扱えるのか(第87類で検討できるのか)

目線合わせのために、代表例を「当たりを付ける早見表」として整理します。最終決定は個別仕様で変わるため、ここではあくまで検討の出発点として扱ってください。

自動車用センサーの代表例と、検討に上がりやすい見出し

  • 車載カメラ系
    第85類の85.25には、テレビカメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラレコーダー等が含まれます。ADASカメラやサラウンドビューは、この周辺が候補になりやすい領域です。 (Canada Border Services Agency)
  • ミリ波レーダー系
    第85類の85.26には、レーダー装置、無線航行援助装置、無線遠隔制御装置が掲げられています。一般に車載レーダーは、この見出しの検討が避けられません。 (Canada Border Services Agency)
  • 圧力・流量・レベルなどのプロセス系センサー
    第90類の90.26は、液体や気体の流量、液位、圧力などを測定または検査する機器を対象にしています。燃料、冷媒、吸気、ブレーキ等、車両内の流体を扱うセンサーは、この枠に入り得ます。 (Canada Border Services Agency)
  • ガス分析・排ガス関連センサー
    第90類の90.27には、ガスまたは煙の分析装置など、物理的・化学的分析の機器が含まれます。排ガス関連の分析用途はこの見出しが論点になります。 (Canada Border Services Agency)
  • 上記に当てはまらない測定・検査機器
    第90類の90.31は、同章の他の見出しに特掲されない測定・検査機器を扱います。仕様によってはここが候補になることがあります。 (Canada Border Services Agency)
  • いわゆる「自動車の部分品」
    第87類の87.08は、87.01から87.05の自動車の部分品・附属品を対象にします。ただし前述のとおり、セクションXVII注記の除外に当たる場合は、車用と識別できても8708にできないケースがあります。 (Canada Border Services Agency)

3. 自動車用センサー分類リスク一覧(深掘り版)

ここからが本題です。現場で起きやすい「分類ミスの型」を、原因と対策まで含めて掘り下げます。

リスク1 品名や業界呼称だけで決めてしまう

起きる理由
センサーは略称が多く、同じ呼び名でも機能が異なります。例えば「センサーECU」「センサーモジュール」は、純粋な検知素子なのか、演算・制御まで含むのかで分類論点が変わります。

典型的な失敗
仕入先のインボイス品名だけを見て、既存品の税番を流用する。

打ち手
仕様書から、最低限次を揃えます。検知対象、測定原理、出力(アナログ、デジタル、画像、電波)、演算の有無、制御ループの有無、通信機能の有無、単体販売か車両組込みか。分類は「現物の提示状態」で決まるという原則も、要注意です。 (Canada Border Services Agency)


リスク2 何でも8708に寄せたくなる

起きる理由
調達や設計の目線では「車の部品」だからです。しかしHSでは、部分品の考え方が適用されない除外が明確に存在します。電気機器(第85類)や第90類の物品は、車用で識別できても「部分品扱い」から外れる可能性があります。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
カメラやレーダー、測定機器を「車に付くから」と8708で通そうとして差し戻される。

打ち手
最初にセクションXVII注記の除外リストを確認し、該当するなら第85類・第90類側から検討を始める。部分品に寄せるのは、除外に当たらないことを確認してからです。 (Canada Border Services Agency)


リスク3 より具体的な見出しを飛ばして、一般的な見出しに逃げる

起きる理由
分類は「最も具体的な記述」を優先するのが基本です。例えば、車用だからと部分品に寄せるより、品名や機能を具体的に指す見出しがあれば、そちらが優先される考え方が示されています。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
一旦90.31や8708に入れておけばよい、と考えてしまう。

打ち手
候補見出しが複数出たら、具体性の比較を必ず行う。どの見出しが「物そのもの」を名指ししているか、見出し文言で説明できるか、を文章で残しておく。


リスク4 複合モジュールの「本体」が何かを決められない

起きる理由
現代のセンサーは、検知素子だけでなく、基板、演算、信号処理、筐体、コネクタ、場合によっては通信機能まで含みます。複合品として複数見出しが競合することが増えます。分類はルールに従って順に判断します。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
BOMの主要部材の価格比だけで「本体」を決めてしまい、機能の説明と矛盾する。

打ち手
「何をする装置か」を先に言語化し、その機能に最も整合する見出しを探す。価格比は補助情報に留め、機能説明が主役になるように整理する。


リスク5 測定なのか、自動制御なのかを取り違える

起きる理由
測るだけの機器と、設定値に合わせて制御する機器では、議論の土俵が変わります。第90類には、自動制御に関する見出しの適用範囲が注記で示されています。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
センサー名義で購入しているが、実は制御機能を持つユニットで、分類根拠が崩れる。

打ち手
入力(測定値)と出力(制御信号)の関係が、制御ループとして閉じているかを確認する。制御目標値を保持し、実測値を一定に保つ設計か、という観点で仕様を切る。


リスク6 専用性と汎用性の証拠が弱く、後から説明が崩れる

起きる理由
部分品の議論では、「専ら又は主として」どれに使うかが焦点になります。セクションXVII注記でも、部分品・附属品が、どの用途に適するかが分類に影響する旨が示されています。 (Canada Border Services Agency)

典型的な失敗
車載専用と主張したいのに、販促資料や仕様が他用途も示してしまっている。

打ち手
設計仕様、認証要件、耐環境条件、車載専用品番体系、OEM向け契約書や用途限定条項など、「車載主用途」を裏付ける証拠を揃える。


リスク7 国・地域で下位桁が違うのに、他国コードを流用する

起きる理由
HSは6桁が国際共通ですが、多くの国はそれより下位の桁を独自に細分化します。EUは8桁の体系を使うとされています。 (EU Trade)

典型的な失敗
ある国で通ったコードを、別の国でも同じだと思い込み、申告で不整合が出る。

打ち手
輸出入先ごとに、6桁までは共通、下位桁は各国の関税率表で確定する、という運用に切り替える。社内マスタも、6桁と国別下位桁を分けて管理する。


リスク8 HS改正でのコードずれを放置する

起きる理由
HSは技術や貿易の変化に応じて更新され、WCOはおおむね5から6年周期で改正すると説明しています。EU側の解説でも、直近の改正が2022年に発効した旨が示されています。 (World Customs Organization)

典型的な失敗
旧版の税番をそのまま使い続け、監査や照会で説明不能になる。

打ち手
年次でHS改正点を点検し、影響品目の洗い出しとマスタ更新を必ず行う。関税率表は少なくとも年1回以上更新され得る、という前提で体制を組む。 (Canada Border Services Agency)


リスク9 事前教示を取らずに量産・大量出荷に入る

起きる理由
分類に不確実性が残るまま量産すると、通関現場で止まったときの損失が大きくなります。EUには、分類の法的確実性のためにBTIを取得する仕組みがあり、一般に3年間有効でEU全域で拘束力を持つ、と説明されています。 (Taxation and Customs Union)

日本でも、輸入前に税番や税率について照会し回答を得る事前教示制度があり、条件を満たす書面回答は通関時に添付でき、原則3年間有効である旨が示されています。 (Japan Customs)

典型的な失敗
量産後に分類見解が割れ、取引価格を見直す羽目になる。

打ち手
不確実性が残る品目ほど、事前教示やBTIなどの制度を活用して、分類の前提を固める。コストではなく保険として扱う。


リスク10 サプライヤー提供のHSコードを無批判に採用する

起きる理由
サプライヤーのHSコードは、相手国前提だったり、梱包状態やセット構成が違ったりします。さらに、分類は申告者側の責任になる場面が多く、説明責任が自社に残りやすいのが現実です。

典型的な失敗
サプライヤーのインボイス記載をそのまま社内マスタ化し、製品改版で破綻する。

打ち手
サプライヤーHSは参考情報として受け取り、社内で根拠文言と注記を添えて決裁する。品番変更、基板変更、通信追加などの設計変更は、分類再評価のトリガーとして制度化する。


4. 失敗しないための実務フレーム(ビジネス向け)

最後に、現場で回る形に落とします。分類は担当者の勘に寄せるほど、属人化して事故が増えます。おすすめは、次の手順での標準化です。

ステップ1 技術情報を一枚にまとめる

最低限、次を一枚で説明できる状態にします。

  1. 検知対象と測定原理
  2. 出力の種類(電圧、デジタル信号、画像、電波など)
  3. 演算や制御の有無
  4. 通信機能の有無
  5. 提示状態(単体、モジュール、ハーネス同梱、ECU一体など)

ステップ2 候補見出しを「章」でまず切る

車載だから第87類、ではなく、まず第85類か第90類かを疑う。セクションXVIIの除外に触れると8708にできないため、最初の分岐が重要です。 (Canada Border Services Agency)

ステップ3 ルール順に根拠を積み上げる

見出し文言と注記で決める、という原則から外れない。複数候補なら、具体性が高い方を優先する、という考え方で説明文を作る。 (Canada Border Services Agency)

ステップ4 国別の下位桁と税率を確定する

6桁の議論が固まったら、国ごとの下位桁と税率表で最終確定する。EUなどは独自の下位桁体系を持つため、輸出入先別の確定プロセスが不可欠です。 (EU Trade)

ステップ5 不確実なものは制度で確実性を買う

EUのBTI、日本の事前教示など、公式な事前確認を活用する。ビジネスとしては、損失の上限を固定するための投資です。 (Taxation and Customs Union)


まとめ 分類はコストではなく、経営リスクの制御である

自動車用センサーは、機能が高度化するほど、モジュール化するほど、分類論点が増えます。そして分類の間違いは、数字としては関税に見えても、実態は納期、在庫、取引条件、監査対応など、経営の複合損失として跳ね返ります。

HSは世界共通の6桁を軸に、多くの国で運用され、技術進化に合わせて定期改正されます。だからこそ、分類を現場の経験則に任せるのではなく、根拠と更新を前提にした運用に切り替えることが、最も費用対効果の高い対策になります。 (World Customs Organization)


免責
本稿は一般的な情報提供を目的とし、個別案件の法的助言ではありません。最終的な分類は、実際の貨物の仕様、提示状態、契約条件、輸出入国の関税率表や運用により変わり得ます。公的制度や専門家を活用し、確定判断は必ず根拠とともに行ってください。 (Canada Border Services Agency)

■HS2028■⑤半導体、トランスデューサ等のエレクトロニクス関連のHSコード

8541と8542の境界が、関税だけでなく原産地と輸出管理まで動かす

2028年1月1日に発効するHS2028は、WCO(世界税関機構)の改正勧告(HS条約第16条)に基づく次期HSです。WCOは、HS委員会(HSC)がHS2028向けの改正勧告を暫定採択し、2025年末の正式採択後に2026年1月に公表、2028年1月1日に発効すると説明しています。(世界税関機関)
EUの公式説明文書でも、HS2028の改正目的として「新技術や新製品を反映し分類を容易にする」例の一つに、半導体とトランスデューサが明示されています。

この記事では、半導体とトランスデューサ(センサー等)で、企業実務にどのような影響が出やすいかを、一次情報で確度高く言える範囲に絞って整理します。
注意点として、どのHS6桁が新設・統合・移動するかの確定は、WCOが公表するHS2028の法文と相関表(HS2022↔HS2028)で最終確認が必要です。ここでは、変化の方向性と、実務上「どこが動くと困るのか」を具体化します。(世界税関機関)


1. なぜ半導体とトランスデューサがHS2028の注目領域なのか

理由はシンプルです。分類が揺れやすいからです。
半導体は、単体デバイス、IC、複合パッケージ、センサー内蔵モジュールなど形態の進化が速く、従来の品名だけでは「どこまでが8541(半導体デバイス)で、どこからが8542(電子集積回路)か」「機器(90類など)に寄るのか」が揺れやすい分野です。

EUはHS2028改正の狙いとして、新技術の反映と分類容易化を掲げ、半導体とトランスデューサを具体例に挙げています。つまり、この周辺で文言や注記、区分の調整が入り得るという前提で企業側は備えるべきです。


2. まず押さえる 現行HSの分岐点

トランスデューサは定義がある。仕様書が弱いと誤分類が起きる

半導体とトランスデューサの分類は、第85類の注記が実務の分岐点になります。米国のSchedule B(輸出統計品目表)や豪州関税表でも、8541・8542のために「半導体デバイス」と「半導体ベーストランスデューサ」を定義し、さらに多成分IC(MCO)まで定義しています。(Census.gov)

ここで重要なのは次の3点です。

2-1. 半導体ベーストランスデューサは、センサーやアクチュエータ等を含む

定義上、半導体ベーストランスデューサは「半導体ベースのセンサー、アクチュエータ、レゾネータ、オシレータ」を含み、物理量や化学現象を電気信号に変換する等の固有機能を持つ離散デバイスと整理されています。(Census.gov)
自動車・産業機器・医療機器で多いセンサー素子やMEMS系の一部が、まさにこの定義に乗ります。

2-2. 多成分IC(MCO)は、ICとセンサー等が一体化したものを想定している

MCOは「1個以上の集積回路に、シリコンベースのセンサー等や一定の受動部品機能を組み合わせ、PCB実装用の単一ボディとして不可分にしたもの」と定義されています。(Census.gov)
つまり、同じ“センサー”でも、単体素子なのか、ICと一体のパッケージなのかで、8541と8542の分岐が生まれます。

2-3. 8541と8542は、原則として他の見出しより優先する

注記では、定義に合致する限り、8541・8542が機能ベースで他の見出しに引っ張られることを抑える優先規定が置かれています(例外は8523など)。(Census.gov)
これは「最終用途が自動車部品だから部品の見出しへ」という短絡が通りにくいことを意味します。


3. HS2028で企業に起きやすい具体的な影響

番号が変わるだけではなく、判定に必要な情報が増える

HS2028で半導体・トランスデューサ領域が動くとき、企業が現場で直面しやすい変化は大きく3つです。

3-1. 8541か8542かの判断が、より仕様依存になる

半導体ベーストランスデューサの定義は「半導体基板上に作られ、物理・化学現象を電気信号へ変換する等の固有機能を持つ離散デバイス」という技術要件を含みます。(Census.gov)
HS2028で分類容易化が進むほど、この技術要件を説明できない製品が、税関照会や差戻しの対象になりやすくなります。特に、センサー素子とセンサーモジュールを同一カテゴリで運用している会社ほど、影響が出やすいです。

3-2. センサー内蔵パッケージの扱いが、社内マスターの整合を崩しやすい

MCOの定義は、まさにセンサー内蔵ICなどの実装形態を想定しています。(Census.gov)
HS2028側で文言や区分が調整されると、同一製品群でも「この型番は8542寄り」「この型番は8541寄り」の差が出て、関税率だけでなく、原産地規則のCTC判定や統計集計が分断されがちです。

3-3. 各国の国内コード(8桁・10桁)の再整列が起きやすい

HSは6桁が国際共通で、各国はその下に独自の細分を置きます。HS6桁が動けば、国内の8桁・10桁は連鎖的に動きます。WCOは299セットの改正からなるHS2028勧告を公表し、各国は自国の関税・統計分類を整合させる必要があります。(世界税関機関)
半導体は国別の統計・規制連動が強い分野なので、国内細分の変更は現場影響が大きくなります。


4. ビジネス部門に効く論点

関税だけではない。原産地と輸出管理が同時に動く

半導体はサプライチェーンが複雑で、分類変更が与える影響が大きいことが指摘されています。業界資料でも、8541・8542の注記や定義が技術進化に合わせて改訂されてきた経緯が整理されています。(世界税関機関)
ビジネス側が押さえるべきは、分類変更が次の領域に波及する点です。

  1. 関税と追加関税の適用品目が変わり得る
  2. FTAやEPAの原産地規則で、CTCの起点コードが変わり得る
  3. 統計コードの変更で、取引実績やKPIが連続しなくなる
  4. 輸出管理や制裁対応で、コード参照のルールがある場合に差分が出る

5. いまからできる準備

HS2028の公表テキストが出た瞬間に動ける会社が勝つ

最後に、半導体・トランスデューサ領域で、準備効果が高い順に並べます。

  1. 製品を3階層に分ける
    半導体デバイス単体(8541候補)
    電子集積回路やMCO(8542候補)
    モジュールや完成品(他章の可能性が残る)
  2. 仕様情報の最小セットをマスターに持たせる
    半導体基板上の構造か
    固有機能がトランスデューサか
    ICと不可分に一体化しているか
    これらは注記の定義に直結します。(Census.gov)
  3. HS2022とHS2028の二重管理を前提に設計する
    WCOは2026年1月の公表と2028年1月1日の発効を示しています。切替直前の一括置換は高リスクです。(世界税関機関)
  4. 高額品目と規制連動品目は、分類根拠メモを先に作る
    後から説明できる根拠があるかどうかで、照会対応コストが決まります。

まとめ

HS2028は、半導体とトランスデューサを含む新技術領域で、分類を容易にする方向が公式に示されています。
そして現行制度でも、トランスデューサやMCOは第85類注記で技術的に定義されており、製品形態の違いが8541と8542の分岐を生みます。(Census.gov)

企業にとっての実務インパクトは、番号の付け替え以上に、分類の説明責任が増え、マスター整合と原産地・規制連動が同時に揺れる点です。
いまのうちに、製品群を階層分解し、定義に効く仕様項目を整備しておけば、HS2028の確定テキストと相関表が出た瞬間に、最短で安全な移行ができます。

HSCFのアップデート予定

HSCF、HS2028対応に向けて動きます(HS2022とHS2028を同時表示へ)

HS2028の内容が、少しずつ輪郭を帯びてきました。
分類が変わるということは、現場の「調べる」「付番する」「説明する」の手間が、これまでと同じでは済まないということでもあります。

そして当然、HSCFも“何もしない”わけにはいきません。

そこで今回、HSCFの機能拡充を企画しています。


いまのHSCFは「HS2022の付番ツール」

正式にHS2028が運用開始されるまでは、HSCFは基本的に HS2022のHSコード付番・検索ツールとしてお使いいただく形になります。

ただ、HS2028が近づくにつれ、こんなニーズが増えてくるはずです。

  • 「HS2022ではこのコードだけど、HS2028だとどうなる?」
  • 「分類変更の影響を、早めに把握しておきたい」
  • 「取引先や社内に、変更点を説明できる材料がほしい」

そこで:HS判定結果に「HS2028だとどう変わるか」も表示します

HSCFでHSコードを検索・判定したときに、

  • HS2022での検索結果(現行)
    に加えて、
  • HS2028ではどうなるか(変更見込み)

並べて確認できるようにする予定です。

つまり、ひと目で「現行」と「次期」の差分がつかめる状態を目指します。


※ただし、HS2028確定までは「暫定表示」です

この機能は、HS2028が正式に確定するまで、あくまで暫定情報としての提示になります。
(確定版が出次第、表示内容も順次アップデートしていく想定です。)


HS2028の本格運用が始まってから慌てるのではなく、
“変わる前提で準備できる”状態を、HSCFでつくっていきます。