HS2022 第78類:鉛及びその製品(Lead and articles thereof)

用語の統一:類=Chapter、項=Heading(4桁)、号=Subheading(6桁)、部=Section、注=Notes(部注/類注) です。

0. まず結論:この類に入るもの/入らないもの(超要約)

  • この類に入る代表例(3〜6個):
    • 鉛の塊(インゴット等):精製鉛・その他(硬鉛等)→ 7801
    • 鉛のくず(スクラップ):切粉、端材、使用不能な鉛材のくず → 7802
    • 鉛の板・シート・ストリップ・はく(厚さ条件あり)→ 7804
    • 鉛の粉・フレーク(“粉”の定義あり)→ 7804.20
    • その他の鉛製品:おもり、容器、鉛管・継手、鉛棒・線など → 7806
  • この類から除外されやすい代表例(3〜6個/除外先の類・項も併記):
    • 鉛製造で生じるスラグ・灰・残留物(例:鉛マット)2620
    • 鉛のくずを再溶解して鋳造したインゴット等 → “くず”ではなく 7801
    • 塗料・着色剤用に調製した鉛粉/フレーク(結合剤・溶剤でペースト等)→ 第32類
    • 弁(コック等)付きの鉛管用継手8481
    • 絶縁電線で鉛外装を被覆したもの8544
    • 使用済/くず鉛蓄電池(そのまま電池として認識できる廃棄物)8549.11(第85類)
  • 実務での最重要分岐(1〜3個):
    1. 「鉛のくず」か「鉛の塊(インゴット)」か(再溶解・鋳造の有無)
    2. 粉・フレークが“原料状態”か、“塗料等に調製済”か(混合・ペースト化)
    3. “鉛のくず”と思ったものが、実は「使用済鉛蓄電池」等の別章(85.49)か
  • (任意)この類で特に“誤分類が高コスト”になりやすい場面:
    • 使用済鉛蓄電池や鉛スクラップは、分類誤りがバーゼル法手続・通関遅延・差止めに波及しやすい(規制と直結)。

1. 区分の考え方(どうやってこの類に到達するか)

1-1. 分類の基本ルール(GIRの使いどころ)

  • この類で特に効くGIR:
    • GIR1:見出し(項)+注(部注/類注)でまず決めます。第78類は特に、
      • 精製鉛の定義(号注)
      • “くず”の定義(部注)
      • 形状(板・管など)の定義(部注)
        が実務の分岐点になります。
    • GIR6:号(6桁)では、厚さ(0.2mm)や“精製鉛”定義など、号の文言・注で詰めます。
  • 「品名だけで決めない」ための観点:
    • 状態:塊(unwrought)/くず(waste & scrap)/粉末/成形品
    • 成分:純度(Pb 99.9%以上か)、合金成分(Sbが主成分か)
    • 形状・寸法:板/シート/はく(厚さ 0.2mm境界)、管・継手の“弁付き”など
    • 調製の有無:粉末が塗料等へ“調製済”なら第32類へ飛ぶ

1-2. 判定フロー(疑似フローチャート)

  • Step1:それは「鉛(または鉛合金)」としての物品ですか?
    • 鉛が主体なら第78類候補。ただし、機械/電気機器としての完成品・部品は部注で除外され得ます(例:弁付き継手、絶縁電線)。
  • Step2:“くず(waste and scrap)”か?
    • 使えない金属くずなら 7802 が候補。
    • ただし、**使用済鉛蓄電池(廃棄物)**は HS2022 では **85.49(8549.11)**が明確に存在するため、まずここを疑います(電池として認識できる形状が残っているか)。
  • Step3:塊(7801)/板・粉(7804)/その他(7806)
    • 鋳造塊・インゴット等 → 7801
    • 板・シート・ストリップ・はく/粉・フレーク → 7804(厚さ・粉の定義で細分)
    • それ以外の鉛製品(おもり、容器、鉛棒・線、鉛管・継手など)→ 7806
  • よく迷う境界(例:第○類と第○類の境界):
    • 7802(鉛くず) vs 7801(鉛塊):くずを再溶解して塊に鋳造すると 7801 側へ
    • 7802(鉛くず) vs 8549.11(使用済/くず鉛蓄電池):電池として認識できる廃棄物は 85.49 を優先的に検討
    • 7804.20(鉛粉) vs 第32類(調製した粉):結合剤・溶剤・他の着色剤を混ぜて“塗料状/ペースト状”なら 32類

2. 主な項(4桁)とその内容

2-1. 4桁(項)の主なもの一覧表(必須)

(第78類は4桁見出しが少ないため全列挙します。)

項番号(4桁)見出しの要旨(日本語)典型例(製品名)重要な分岐条件/除外/注意点
7801鉛の塊(unwrought lead)精製鉛インゴット、硬鉛(Sb含有)インゴット、電解精製用の鋳造陽極など精製鉛の定義(Pb≥99.9%+不純物上限)で 7801.10 判定
7802鉛のくず(waste and scrap)端材、切粉、解体で出た鉛片製錬スラグ等は除外(2620)。再溶解して塊に鋳造したものは 7801
7804鉛の板等/はく/粉・フレーク鉛シート(遮蔽・屋根材)、鉛はく(包装)、鉛粉末0.2mm境界(補強材除外)。粉は“粉の定義”あり。調製粉は 32類へ
7806その他の鉛製品おもり、鉛容器、鉛棒・線、鉛管・継手、鉛陽極など弁付き継手→8481、鉛被覆絶縁電線→8544、被覆棒→8311等は除外

2-2. 6桁(号)で実務上重要な分岐(必須)

  • 分岐条件の整理(この類で頻出):
    • 純度・不純物上限(精製鉛):7801.10 の鍵
    • 合金成分(Sbが“鉛以外で主”か):7801.91 vs 7801.99
    • 厚さ 0.2mm(補強材除外):7804.11 vs 7804.19
    • 粒度(粉の定義):7804.20 の適否
  • 間違えやすい6桁ペア/グループ(2〜5組):
    1. 7801.10(精製鉛) vs 7801.99(その他の鉛塊)
      • どこで分かれるか:Pb 99.9%以上に加え、各元素の上限を満たすか(単に「99.9%」だけでは足りません)。
      • 判断に必要な情報:ミルシート/分析表(元素別%)、規格(JIS等のグレード)、ロット管理
      • 典型的な誤り:「純度99.9%とだけ書かれた資料」や「商品名(refined)だけ」で 7801.10 と断定してしまう
      精製鉛(refined lead)判定の実務用チェック表(号注ベース)
      Pbが全重量の99.9%以上で、かつ他元素が以下を超えないこと: 他元素上限(全重量に対する%)銀(Ag)0.02砒素(As)0.005ビスマス(Bi)0.05カルシウム(Ca)0.002カドミウム(Cd)0.002銅(Cu)0.08鉄(Fe)0.002硫黄(S)0.002アンチモン(Sb)0.005すず(Sn)0.005亜鉛(Zn)0.002その他(例:Te)各0.001
    2. 7801.91(Sbが主な鉛以外元素) vs 7801.99(その他)
      • どこで分かれるか:鉛以外の元素のうち、重量でアンチモンが最大かどうか
      • 判断に必要な情報:合金成分表(Sb、Sn、As等の比較)、用途(硬鉛用途か)
      • 典型的な誤り:「硬鉛だからSb主」と思い込み、成分比較をせずに 7801.91
    3. 7804.11(厚さ0.2mm以下:補強材除外) vs 7804.19(その他)
      • どこで分かれるか:厚さ(“補強材の厚さを除く”)が 0.2mm以下か
      • 判断に必要な情報:断面図、厚み測定結果、ラミネート/補強材の仕様
      • 典型的な誤り:ラミネート材込みの総厚で判定してしまう
    4. 7804.20(粉・フレーク) vs 32類(調製粉)
      • どこで分かれるか:粉自体が部注の“粉”定義に該当し、かつ塗料等に調製されていない
      • 判断に必要な情報:粒度分布(ふるい試験等)、SDS、配合表(結合剤・溶剤・他着色剤の有無)
      • 典型的な誤り:「鉛粉末」とだけ聞いて 7804.20。実はペースト状で32類相当

3. 部注と類注の詳細解釈(条文→実務的な意味)

3-1. 関連する部注(Section Notes)

  • ポイント要約:
    • 部注8
      • “くず(waste and scrap)”=金属くず全般/破損等で使用不能な金属製品
      • “粉(powders)”=重量の90%以上が1mmふるいを通過
    • 部注9:板・線・管などの形状定義(第74〜76類・第78〜81類共通の言葉の意味)
    • 部注1(除外):塗料等に該当するもの、機械・電気機器等、弾薬用散弾等はSection XVから除外され得る
  • 実務での意味(具体例つき):
    • “くず”判定では「鉛が含まれている」だけでなく、商品としてそのまま使えるか(破損・切断・摩耗等で使用不能か)を見ます。
    • “粉”は粒度の定義があるため、粉末でも粒が粗いと 7804.20 で説明しづらい場合があります(粒度データを取るのが安全)。
    • “板/シート/はく”は厚さや形状定義が背景にあります。特に 0.2mm境界は書類で裏付けが必要です。
  • “この部注で他章に飛ぶ”代表パターン:
    • 鉛粉が調製済(ペースト/分散液) → 第32類
    • 弁付き管用継手 → 8481
    • 鉛外装の絶縁電線 → 8544
    • 弾薬用に調製した散弾等 → 第93類(例:9306)

3-2. この類の類注(Chapter Notes)

  • ポイント要約:
    • HS2022の第78類は、号注(Subheading Note)として「精製鉛」の定義を置いています(Pb 99.9%以上+不純物上限表)。
    • **[78.03]・[78.05]**は角括弧付きで表示され、HS上「削除された見出し」であることを示します(実務上は 7806 側で扱う場面が増えます)。
  • 用語定義(定義がある場合):
    • 「精製鉛(refined lead)」=Pb 99.9%以上かつ、Ag/As/Bi/Ca/Cd/Cu/Fe/S/Sb/Sn/Zn/その他の各上限を満たす金属
  • 除外規定(除外先の類・項も明記):
    • 類注自体の除外というより、部注・各類解説で第26類(残留物)第32類(調製粉)、**第84/85類(機械・電気)**などへ分岐が出ます。

4. 類注が分類に与える影響(“どこでコードが変わるか”)

  • 影響ポイント1:7801.10(精製鉛)に該当するか
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):元素別の分析(Pb含有率と不純物)
    • 現場で集める証憑:ミルシート、分析表、SDS、規格書、ロット証跡
    • 誤分類の典型:「純度99.9%」だけで 7801.10 としてしまい、実は不純物上限を超えて 7801.99 相当
  • 影響ポイント2:7802(くず)か 7801(塊)か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):再溶解・鋳造の有無、形状(インゴット等)、取引実態(原料としての塊か、くずとしての雑材か)
    • 現場で集める証憑:工程図(回収→溶解→鋳造)、写真、インボイス品名、梱包状態
    • 誤分類の典型:「原料だからスクラップ」という思い込み(溶解して塊なら 7801)
  • 影響ポイント3:“鉛くず”が実は 85.49(使用済/くず鉛蓄電池)
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):貨物が電池の形状・構成を保っているか、廃棄物としての性状(“spent”)
    • 現場で集める証憑:写真(外観・端子・ケース)、品名(used lead-acid batteries等)、梱包明細、処理契約情報
    • 誤分類の典型:電池を「鉛含有物=鉛スクラップ」として 7802 申告(通関・規制で止まりやすい)
  • 影響ポイント4:鉛粉が 7804.20 か 32類か
    • 何を見れば判断できるか(必要情報):粒度(1mmふるい90%)、混合/分散/ペースト化の有無
    • 現場で集める証憑:配合表、SDS、製品形態(粉体/ペースト/スラリー)
    • 誤分類の典型:“粉末”という単語だけで 7804.20(実は調製品)

5. 分類でよくある間違い(原因→対策)

  1. 間違い:使用済鉛蓄電池を 7802(鉛くず)にしてしまう
    • なぜ起きる:鉛が主材料なので“鉛スクラップ”と思い込みやすい
    • 正しい考え方(どの注・どの見出しが根拠か):HS2022では使用済/くず蓄電池として **85.49(例:8549.11)**が明確(第85類)
    • 予防策:写真で「電池として認識できるか」を必ず確認/インボイス品名に “spent/used lead-acid accumulators” 等の記載有無を確認
  2. 間違い:くずを溶かして鋳造したインゴットを 7802(くず)
    • なぜ起きる:原料用途=スクラップ、という商慣習語の混同
    • 正しい考え方:再溶解・鋳造でインゴット等の塊になれば 7801
    • 予防策:工程図(溶解・鋳造の有無)/形状写真(インゴット、スラブ)を必須資料に
  3. 間違い:鉛製錬のスラグ・灰・残留物を 7802(くず)
    • なぜ起きる:見た目が“くず”に近い
    • 正しい考え方:製造時残留物は 2620 に飛ぶ(鉛マット等の例示あり)
    • 予防策:発生工程(製錬/精錬工程)を確認、MSDS/分析で“残留物”性状を整理
  4. 間違い:鉛粉ペースト(結合剤入り)を 7804.20(鉛粉)
    • なぜ起きる:名称が“鉛粉”のまま取引される
    • 正しい考え方:塗料・着色剤等に調製された粉は第32類(結合剤・溶剤・分散等)
    • 予防策:配合表(樹脂/溶剤/添加剤)確認。SDSで形態(paste/suspension)確認
  5. 間違い:鉛はく/薄板の 0.2mm境界を見落とし 7804.19 に一括
    • なぜ起きる:寸法データがインボイスにない
    • 正しい考え方:厚さ(補強材除外)0.2mm以下は 7804.11 として区別
    • 予防策:仕様書に「鉛層厚み(単体)」を記載。測定記録を保管
  6. 間違い:弁付きの鉛管用継手を 7806(鉛製品)
    • なぜ起きる:材質(鉛)だけで判断
    • 正しい考え方:弁(コック等)付き継手は 8481 側に除外され得る
    • 予防策:図面で弁の有無確認。セット構成(継手+弁)を明確に分けて記載
  7. 間違い:鉛外装の絶縁電線を 7806
    • なぜ起きる:外装が鉛で目立つ
    • 正しい考え方:絶縁電線として 8544 に除外され得る
    • 予防策:製品の本質(電線/導体/絶縁)を優先。カタログ・断面図で確認
  8. 間違い:被覆した棒・線(溶接/ろう付け用)を 7806
    • なぜ起きる:棒状=鉛棒という認識
    • 正しい考え方:被覆棒は 8311 等に除外され得る(解説で言及)
    • 予防策:用途(溶接・ろう付け)、被覆材(フラックス等)を仕様書で確認
  9. 間違い:複合金属(鉛+他の卑金属)を用途で決め打ち
    • なぜ起きる:用途・名称が先行
    • 正しい考え方:複合卑金属品は原則「重量で優勢な金属」による扱いが基本(部注の考え方)
    • 予防策:構成金属の重量比をBOM/図面で取り、GIRの順序で整理

6. FTAやEPAで原産地証明をする際に気をつける点

6-1. HSコードとPSR(品目別規則)の関係

  • HSの付番がPSR選択に直結します。最終製品のHSを誤ると、適用すべきPSR自体が変わるため、原産性判断(CTC/RVC等)が崩れます。
  • よくある落とし穴:
    • 材料(非原産材)のHSと最終品HSの取り違え
    • “鉛くず(7802)”と思ったら実は“使用済鉛蓄電池(8549)”で、PSRが根本から変わる

6-2. 協定が参照するHS版の違い(HS2012/2017/2022のズレ)

  • 協定ごとに採用しているHSバージョン(HS2002/2007/2012/2017等)が異なり得ます。日本税関のPSR検索でも、協定のHS版と異なる版で検索すると結果が誤る可能性がある旨が明示されています。
  • 実務対応(一般論):
    • 輸入申告は最新HS(例:HS2022)、一方で協定PSRは協定が採用するHS版で確認
    • HS版がズレる場合は、(1)協定側HS版でPSRを確認→(2)最新HSとの対応(トランスポジション)を取って社内メモ化、が安全です。

6-3. 実務チェック(原産性判断に必要なデータ)

  • 材料表(BOM)、原価、工程、原産国、非原産材料のHS、RVC計算の前提
  • 証明書類・保存要件(一般論):協定・運用で異なるため、税関/発給機関のガイドに合わせて整備

7. HS2022とそれ以前のHSコードでの違い(違うことになった根拠)

7-1. 変更点サマリー(必須:表)

比較(例:HS2017→HS2022)変更タイプ(新設/削除/分割/統合/文言修正/範囲変更)該当コード変更の要旨実務への影響
HS2017→HS2022範囲(定義)の実質は同等/所在変更(注の所在)棒・線・板・管などの定義が、HS2017では第78類注に置かれていたが、HS2022では第15部注9へ整理“類注を見ていた人”が見落としやすい。定義確認は部注へ
HS2017→HS2022変更なし(コード構造)7801/7802/7804/7806第78類のHS6桁は同一([78.03]・[78.05]も同様に欠番表示)コード自体の付替えは原則不要(ただし周辺章改正には注意)

※参考(周辺章):HS2022で**85.49(電気・電子廃棄物等)**が新設され、使用済/くず蓄電池が 8549.11 等で整理されています。鉛取引では誤分類が起きやすいので注意してください。

7-2. 「違うことになった根拠」(必須)

  • 根拠資料(一次情報):
    • HS2017の第78類:棒・線・板・管等の定義がChapter Noteとして記載
    • HS2022の第78類:同定義がChapter側から外れ、第15部注9に集約(第78類側は精製鉛の号注のみ)
  • 以上より、「第78類のHS6桁(見出し・号)は変更なし」「ただし定義条文の所在が移動」と判断しました。

8. HS2022以前で付け加えられたHSコード/削除されたHSコード

  • HS2007→2012→2017→2022の流れ(第78類):
    • [78.03]・[78.05]が欠番表示である点は、少なくともHS2007時点から同様です。
    • HS2007/2012/2017では、棒・線・板・管等の定義が第78類注として記載されていましたが、HS2022では第15部注9へ移動しています。

(整理表:主要論点のみ)

HS版主要コード(第78類)78.03/78.05注(定義)の所在コメント
HS20077801/7802/7804/7806欠番表示あり第78類注に定義ありコード構造は概ね現行と同様
HS2012同上欠番表示あり第78類注に定義あり同様
HS2017同上欠番表示あり第78類注に定義あり同様
HS2022同上欠番表示あり第15部注9へ移動(78類は号注中心)“注を探す場所”が変わった

9. 類注違反による通関トラブル(想定事例)

  • 事例名(短く):使用済鉛蓄電池を鉛スクラップとして申告
    • 誤りの内容(どの類注/部注に抵触):HS2022で 85.49 が整理されているのに 7802 申告してしまう(分類根拠が弱い)
    • 起きやすい状況:中古部品や雑スクラップに電池が混入、外観確認不足
    • 典型的な影響:検査強化、差止め、書類追加、遅延(一般論)
    • 予防策:混入防止手順、写真添付、品名明確化、必要なら事前教示
  • 事例名:“くず”の再溶解インゴットを 7802 と誤申告
    • 誤りの内容:くずではなく塊(7801)側
    • 起きやすい状況:リサイクル材の売買(インゴット形状)
    • 典型的な影響:修正申告、追加納税(一般論)
    • 予防策:工程・形状写真・契約書で“鋳造塊”を明確化
  • 事例名:鉛粉ペーストを 7804.20 としてしまう
    • 誤りの内容:調製済なら第32類へ
    • 起きやすい状況:SDS未入手、配合不明のまま輸出入
    • 典型的な影響:分類差戻し、追加資料要求
    • 予防策:配合表・形態(粉/ペースト)を事前取得
  • 事例名:弁付き鉛継手を 7806 としてしまう
    • 誤りの内容:弁付きは 8481 側へ
    • 起きやすい状況:部品セットで輸入、品名が曖昧(“pipe fitting”のみ)
    • 典型的な影響:分類変更、追加説明
    • 予防策:図面で弁の有無確認、品名を “valve-fitted” 等で明確化

10. 輸出入規制事項(コンプライアンス観点)

  • 日本前提で、この類で頻出の規制・許認可・検疫を整理(該当があるものだけ)
  • 検疫・衛生(SPS等)
    • 第78類そのものは食品検疫の中心ではありませんが、鉛は有害性の高い化学物質として、取扱い上SDS整備やラベル・安全管理が求められる局面があります(輸送・保管・作業安全)。厚労省のGHSモデルSDS情報が参照できます。
  • その他の許認可・届出(バーゼル法等)
    • 使用済鉛バッテリーやそれを含む貨物の輸出入は、バーゼル法手続が問題となりやすい領域です。経産省は「特定有害廃棄物等の輸出承認」手続を案内し、使用済鉛バッテリーのように明確な対象の場合の書類取扱いにも言及しています。
    • 環境省も品目別情報として「使用済鉛バッテリー」関連の注意喚起・情報提供を整理しています。
    • 実際に、手続未了で使用済鉛バッテリーが混入した輸出申告が問題となった公表事例があります(混入防止が重要)。
  • 確認先(行政・公式ガイド・窓口):
    • 経産省:特定有害廃棄物等の輸出承認(バーゼル)
    • 環境省:廃棄物・特定有害廃棄物等の輸出入(品目別情報)
    • 厚労省:GHSモデルSDS(鉛)
  • 実務での準備物(一般論):
    • 仕様書(成分・形状・用途)、写真、SDS、分析表
    • 廃棄物該当性の整理(発生工程図、処理工程、契約書類等:バーゼル対応)

11. 実務チェックリスト(分類→通関→原産地→規制)

  • 分類前チェック(製品情報の収集)
    • 成分(Pb%、合金元素、微量元素)、形状(板/管/粉)、寸法(厚さ/粒度)、用途
    • 写真(外観・断面)、カタログ、工程図(スクラップなら発生工程)
  • 分類後チェック(注・除外・境界の再確認)
    • 精製鉛:不純物上限まで確認したか
    • くず:再溶解・鋳造の有無を確認したか
    • 電池:使用済鉛蓄電池(8549)に該当しないか
    • 調製粉:32類へ飛ばないか(結合剤・溶剤)
  • 申告前チェック(インボイス品名、数量単位、補足資料)
    • インボイス品名に「形状・状態」を入れる(例:lead ingots / lead scrap / lead sheets 0.18mm)
    • 厚さ・粒度・成分表を添付できる状態に
  • FTA/EPAチェック(PSR・材料・工程・保存)
    • 協定HS版でPSR確認→最新HSとの対応を社内メモ化
    • BOM、非原産材HS、工程、原価の保存
  • 規制チェック(許可/届出/検査)
    • 使用済電池・スクラップ混入の有無(バーゼル)
    • SDS整備(鉛)

12. 参考資料(出典)

  • WCO(HS2022条文、相関表、改正パッケージ等)
    • HS2022 Chapter 78(1578_2022e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022 Section XV Notes(1500_2022e) (参照日:2026-02-27)
    • HS2017/2012/2007 Chapter 78(比較用) (参照日:2026-02-27)
    • HS2022 Chapter 85(85.49/8549:使用済/くず蓄電池) (参照日:2026-02-27)
    • WCO Correlation Tables(HS2017–2022)案内 (参照日:2026-02-27)
  • 日本税関・公的機関のガイド
    • 税関 関税率表解説(第78類:78r.pdf) (参照日:2026-02-27)
    • 税関 事前教示回答(品目分類)検索 (参照日:2026-02-27)
    • 税関 品目分類の事前教示制度(カスタムスアンサー) (参照日:2026-02-27)
    • 税関 品目別原産地規則検索(HS版注意喚起あり) (参照日:2026-02-27)
    • 税関 原産地規則(概要) (参照日:2026-02-27)
  • 規制(バーゼル等)
    • 経産省:特定有害廃棄物等の輸出承認(使用済鉛バッテリー言及あり) (参照日:2026-02-27)
    • 環境省:品目別情報(使用済鉛バッテリー) (参照日:2026-02-27)
    • 経産省・環境省:使用済鉛バッテリー混入貨物に関する注意喚起例 (参照日:2026-02-27)
  • その他
    • 厚労省:職場のあんぜんサイト(鉛のGHSモデルSDS) (参照日:2026-02-27)

付録B. 税関の事前教示・裁定事例の探し方(任意)

  • どの情報を揃えると相談が早いか(一般論)
    • 製品の写真(全体・断面)、材質(成分表)、用途、製造工程、カタログ、梱包形態
    • “くず”なら「使用不能性」「発生工程」「再溶解の有無」を説明できる資料
  • 探し方
    • 日本税関の「事前教示回答(品目分類)」で、公開可能な事前教示の検索ができます。類似品名(例:lead scrap、鉛管、鉛はく等)で当たりを付け、論点(厚さ・弁付き等)を抽出すると効率的です。

免責事項

本資料は、HSコード(品目分類)、通関、FTA/EPA原産地、輸出入規制等に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の取引に対する法的助言、税務・関税上の助言、または通関上の最終判断を提供するものではありません。HSコードの最終的な決定は輸出入国の税関当局の判断により行われ、同一または類似の商品であっても、仕様・成分・用途・形状・加工度・取引実態・提出書類等により分類結果が異なる場合があります。関税率、原産地規則、輸出入規制、必要な許認可・検疫要件等は改正等により変更される可能性がありますので、必ず最新の法令・公的機関の公表情報・協定本文等をご確認ください。重要な取引については、税関の事前教示制度の活用、通関業者、弁護士・税理士等の専門家への相談を含め、必要な検証を行った上でご判断ください。本資料の内容の利用または利用不能により生じたいかなる損害についても、作成者は一切の責任を負いません。

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投稿者: shima

嶋 正和 株式会社ロジスティック 代表取締役社長

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