EVバッテリー分類:監査で問われる3つのリスク

はじめに:分類は「関税」だけでは終わらない

EVバッテリーは高額で、国際物流では危険物輸送や環境規制とも接続しやすい商材です。そのため、品目分類(HSコード)が一度ずれると、関税・特恵・規制対応が連鎖し、税関の事後調査(ポストクリアランス監査)で説明責任が一気に重くなります。

制度面でも、世界貿易機関の貿易円滑化協定は、各国が事後調査を採用し、結果をリスク管理に活用することを求めています。(WTO)
つまり、監査は例外イベントではなく、前提として組み込むべきリスクです。

本稿では、EVバッテリー分類を監査目線で深掘りし、監査で問われやすい3つのリスクと、ビジネス側で実装できる対策まで落とし込みます。なお、品目分類は最終的に各国税関の判断が前提です。迷う論点は事前教示(アドバンスルーリング)等で当局見解を取りに行くことが、監査コストを最小化します。(税関総合情報ポータル)

前提整理:なぜEVバッテリー分類は監査論点になりやすいのか

監査は「申告の整合性」を再構成してくる

監査の本質は、結論としての税番よりも、当時の申告が取引実態と整合していたかの検証です。世界税関機構のPCAガイドラインでも、事後調査は企業の商取引システムや契約、会計・非会計記録などの記録群を検証してコンプライアンスを測る、と整理されています。(世界関税機関)
EVバッテリーは、仕様変更や梱包形態の違いが起きやすく、この整合性が崩れやすい領域です。

バッテリーは税・物流・環境が連鎖しやすい

バッテリーは、通関分類だけでなく、危険物輸送の試験証跡、返品・回収品の取り扱い、国境を越える場合の環境手続など、社内の複数部門データがつながります。部門ごとに言葉がずれると、監査で矛盾として浮き上がります。

提示形態で分類論点が変わる

セル、モジュール、パック、さらに制御・保護部品とのセットのされ方で、説明が難しくなります。ここで重要なのは、機能として蓄電池なのか、あるいは別の機器・部品として提示されているのかを、当時の提示形態に即して説明できるかです。

まず押さえる分類の土台:85.07(蓄電池)とバッテリーパック

HS上の位置づけ

HS2022では、85.07が電気式蓄電池で、リチウムイオンは8507.60に位置づきます。(世界関税機関)
実務では、まず85.07を起点に、各国の国内細分に落とす流れになります。

バッテリーパックが85.07に属し得る理由

監査で誤りが出やすいのが、いわゆるバッテリーパックです。日本税関の関税率表解説では、セルを連結する回路を有する蓄電池(バッテリーパック)は、接続子、温度制御装置、回路保護装置、保護ハウジングなどの補助機構を含むか否かを問わず85.07項に属し、たとえ特別な装置とともに使用されるよう設計されていても85.07項に属する、と明確に整理されています。
この一文を説明できるかどうかが、監査での勝敗を分けやすいポイントです。

同じ解説では、使用済み蓄電池やそのくずは85.49に区分されることも明示されています。返品・回収品が絡む場合、ここがリスク3に直結します。

監査で問われる3つのリスク

リスク1:課税リスク(追徴、加算、延滞、そして利益率の毀損)

分類のずれが最初に刺さるのは課税です。税差が大きいほど、監査では重要度が上がります。加えて、特恵関税を適用している場合は、原産地ルール判定の前提(HS)が崩れ、影響範囲が広がります。

監査で典型的に起きるパターンは次の通りです。

  1. バッテリーパックを別の枠(例:車両部品としての扱い)で説明していた
    当局側から見ると、なぜ蓄電池として扱わなかったのかが質問になります。85.07に属し得る根拠を、当時の提示形態と機能で説明できないと不利になります。
  2. 仕様変更やサプライヤー変更で、社内マスターと実物がずれていた
    監査は、品名、型番、仕様書、BOM、写真、梱包形態から申告貨物を再構成します。事後調査が記録群を検証するプロセスであることは、WCOのPCAガイドラインの定義とも一致します。(世界関税機関)
  3. 申告の説明が「結論のみ」で、根拠が残っていない
    事後調査は過去が対象です。根拠資料が残っていないと、当時正しかったことを示せません。

実務対策の要点は、税番の正解を当てることに加え、当時の判断材料と判断プロセスを再現できる形で残すことです。

リスク2:貿易政策リスク(対象品目の特定ミスが「回避」疑義につながる)

EVバッテリーは政策対象になりやすい分野で、当局目線では分類が各種措置の入口になります。ここで問題になるのは、単なる誤りとしての分類ミスを超えて、結果として政策措置の適用を回避したように見えるリスクです。

特に次の条件が重なると、説明責任が重くなります。

  1. 高額で税額影響が大きい
  2. グループ内取引など取引形態が複雑
  3. 仕様や品名が曖昧で、仕様書が弱い
  4. 物流書類と通関書類で貨物説明がずれている

実務対策の要点は、分類メモを税番を決める紙ではなく、疑義を潰す紙として作ることです。最低限、次は揃えます。

  1. その製品の機能を一文で言い切る
  2. 付属部品が蓄電池の機能に寄与する補助機構であることを整理する
    日本の関税率表解説が、補助機構を含んでも85.07に属する旨を示しています。
  3. 提示形態を証拠化する
    梱包写真、構成表、同梱物一覧は、後から効く証跡です。

リスク3:安全・環境リスク(危険物輸送と使用済み境界の崩壊)

ここがEVバッテリー特有の深い落とし穴です。分類は税関申告だけではなく、危険物輸送と環境規制のデータとも結びつきます。

論点A:UN38.3試験とテストサマリーの整備不足

リチウム電池は、国連の試験・基準マニュアルの38.3で試験手続が示されています。UN Manual of Tests and Criteria (国連欧州経済委員会)
米国のPHMSAは、リチウム電池のテストサマリー要件が2022年1月1日に有効となり、その後2024年5月10日に改訂が有効になったことを明示しています。(パイプラインおよび有害物質安全管理局)

監査で起きやすいのは、申告は新品の蓄電池なのに、危険物輸送側の証跡(試験、テストサマリー、型番一致)が出せないケースです。この場合、分類以前に貨物の同一性が疑われます。

論点B:新品と使用済み・くずの境界

HS2022では、電気電子機器の廃棄物・くずとして85.49が整理され、使用済み蓄電池の定義も示されています。具体的には、8549.11から8549.19における使用済み蓄電池は、破損や摩耗などで使用できず、再充電もできないもの、とされています。(世界関税機関)
日本の関税率表解説でも、使用済み蓄電池やそれらのくずは85.49と整理されています。

EVでは、返品、解析返送、リファービッシュ、リコール回収などが混在します。社内では返品でも、外形的に回収・処分目的に見えると、分類だけでなく必要手続も変わり得ます。

論点C:国境を越えると環境手続が重くなる

バーゼル条約の電子廃棄物改正は、2025年1月1日に発効したと公式に示されています。(バーゼル条約)
返品・回収品が環境手続の対象に見える状況で、通関上は新品として扱っていると、書類全体の整合性が崩れます。

実務対策の要点は、分類担当だけで完結させず、通関、物流(危険物)、品質保証(試験証跡)、環境(廃棄物手続)を型番単位でつなぐことです。

監査に強い会社がやっている実務設計

1. 分類根拠を再現可能なメモにする

次の要素を必ず入れます。

  1. 製品の機能、構造、用途
  2. セル、モジュール、パックの構成と同梱物
  3. 補助機構の役割(接続子、温度制御、回路保護、ハウジングなど)
    バッテリーパックが補助機構を含んでも85.07に属するという整理が根拠になります。
  4. 結論の税番(HS6桁と国内細分)
    HS2022上の8507.60(リチウムイオン)など、HS側の位置づけも紐づけます。(世界関税機関)
  5. 判断に使った証跡の所在(仕様書、BOM、写真、テストサマリー、梱包資料)

2. 事前教示を戦略的に使う

日本税関は、輸入予定貨物の税番や税率等について事前に照会し、回答を受けられる制度を案内しています。(税関総合情報ポータル)
論点が割れる可能性がある型番は、監査で争うよりも、早期に当局判断を取りに行く方が総コストを抑えやすいです。

3. 変更管理を分類の仕組みに入れる

分類ミスそのものより、ミスが放置された状態が監査で致命傷になりがちです。最低限、次をルール化します。

  1. 型番変更、材料変更、BMS設計変更、梱包変更のたびに分類レビュー
  2. サプライヤー変更時に、仕様書と写真を再取得し同一性を確認
  3. 危険物輸送の証跡と税番情報を型番で紐づけ

監査が記録群を検証する以上、記録の整合性が通る仕組み作りが本質です。(世界関税機関)

よくある監査質問と、即答できる答え方

質問1:なぜこの貨物は85.07なのか

答えの骨子は、蓄電池の機能と提示形態です。バッテリーパックが補助機構を含んでも85.07に属すること、特定機器用に設計されていても85.07に属することを、当局向けに言語化します。

質問2:UN38.3試験とテストサマリーはあるか。型番と一致するか

国連マニュアルの38.3で試験手続が示されていること、米国PHMSAがテストサマリー要件の発効日と改訂日を明示していることを踏まえ、証跡の所在と更新管理を即答できるようにします。(国連欧州経済委員会)

質問3:返品・回収品は新品か、使用済みか。分類と手続の整理は

使用済み蓄電池の定義(再充電できない等)と85.49の位置づけを理解し、契約書と物流指示書の言葉まで含めて整合させます。(世界関税機関)
国境を越える場合は、バーゼル条約の改正発効日(2025年1月1日)を前提に、社内フローが動くようにします。(バーゼル条約)

まとめ:監査で強いのは「分類の正解」より「説明の再現性」

EVバッテリー分類は、課税、貿易政策、安全・環境が一本の線でつながる領域です。監査で問われるのは、結論の税番よりも、当時の実物に基づき説明できるか、そして同じ判断を社内で再現できるかです。(世界関税機関)

今日からの優先順位は次の通りです。

  1. 主要型番について、分類根拠メモを整備する
  2. 危険物輸送の証跡(UN38.3、テストサマリー)と税番を型番で紐づける
  3. 返品・回収品の新品と使用済みの判断基準を、契約と物流指示書の言葉まで揃える
  4. 迷う論点は事前教示で当局見解を取り、監査リスクを先に潰す (税関総合情報ポータル)

米国CBPが下したセット分類の否認。多機能タブレットとキーボードの分離課税がもたらすコスト増の衝撃

2026年2月1日、米国税関国境警備局(CBP)から、電子機器メーカーや輸入業者にとって看過できない重要な裁定が下されました。それは、タブレット端末と着脱式キーボードがセットで販売される製品について、今後は一つの製品(セット)として扱わず、それぞれ個別のHSコードに分類して課税するという方針決定です。

これまで、多くの企業はこれらのセット品を自動データ処理機械(ノートパソコン等と同等)として一括で申告し、関税上の恩恵を受けてきました。しかし、今回の決定はその商習慣を根底から覆すものです。

本記事では、この技術的な分類変更がなぜ行われたのか、そして企業実務にどのような金銭的・事務的負担を強いることになるのかを深掘り解説します。

通則3の解釈変更、セット品としての特権喪失

まず、これまでの通関実務の常識をおさらいします。

通常、異なる物品(タブレット本体とキーボード)が小売用にセット販売される場合、HSコードの分類ルールである関税率表の解釈に関する通則3(b)が適用されます。これは、セット全体に本質的な特性を与えている構成要素(この場合はタブレット本体)のHSコードで、セット全体を分類するというルールです。

これにより、附属のキーボードもタブレット本体と同じコード(通常は8471.30項など)に分類され、本体が無税であればキーボードも無税で輸入することが可能でした。

しかし、今回のCBPの裁定は、この解釈を厳格化しました。CBPは、着脱式キーボードはタブレットの機能に必須ではなく、それ単体でも独立した商品価値を持つ周辺機器であると判断しました。その結果、セットとしての分類を否認し、タブレットはタブレット、キーボードは入力装置(8471.60項など)として、別々に申告することを求めたのです。

なぜこれがコストアップに直結するのか

HSコードが分かれるだけであれば、単なる事務手続きの問題に見えるかもしれません。しかし、この分離には致命的なコストリスクが潜んでいます。

最大の懸念は、対中制裁関税(通商法301条)やその他の懲罰的関税の適用です。

IT製品の多くは、WTOの情報技術協定(ITA)により基本税率は無税です。しかし、米国が中国などの特定国に対して課している制裁関税は、HSコードごとに細かく指定されています。

もし、タブレット本体(8471.30)が制裁関税の除外対象であっても、分離されたキーボード(8471.60)が制裁対象リストに入っていれば、キーボードの価格分に対して25パーセント等の追加関税が発生します。これまではセット全体の価格に対して関税ゼロだったものが、今後はキーボード部分だけ高率の課税を受けることになるのです。

さらに、品目分類が変わることで、これまで適用できていたFTA(自由貿易協定)の原産地規則を満たせなくなるリスクもあります。セット品としての原産地判定と、単体部品としての原産地判定では、計算式や必要となる部材の要件が異なるためです。

実務担当者が直面するインボイス作成の苦悩

この決定は、通関書類(インボイス)の作成業務にも多大な負荷をかけます。

これまでは、製品セット1式として1行で記載すれば済みました。しかし今後は、一つの箱に入っている商品であっても、インボイス上では本体とキーボードを別の行に分け、それぞれの単価(FOB価格)を明記しなければなりません。

ここで問題になるのが、セット価格の内訳です。

多くのメーカーはセット品としての販売価格しか設定しておらず、附属品の個別の原価や振替価格をインボイスに記載する準備ができていません。税関に対して妥当な価格内訳を提示できなければ、恣意的な価格操作(ダンピングや評価申告漏れ)を疑われるリスクが生じます。

企業が今すぐ着手すべき対応策

このCBPの方針転換を受けて、米国向けに電子機器を輸出する企業は、以下の3つの対策を講じる必要があります。

第一に、影響品目の洗い出しと関税試算です。

自社の製品ラインナップの中で、キーボードやペン、ドックなどが同梱されている製品をすべてリストアップし、それらが分離課税された場合の関税コストをシミュレーションしてください。特に対中関税の対象となるか否かは最優先の確認事項です。

第二に、インボイスシステムの改修です。

セット品番を入力した際に、自動的に本体と付属品の行に分解し、適切な単価を割り振って出力できる仕組みを構築する必要があります。手書き修正はミスの温床となるため推奨されません。

第三に、製品構成の見直しです。

関税コストが許容できないレベルになる場合、セット販売をやめて別売り(アンバンドル)にするか、あるいは付属品の調達先を関税のかからない国へ変更するサプライチェーンの再編を検討する必要があります。

まとめ

米国CBPによる多機能タブレットの分離分類決定は、単なるコードの変更ではなく、企業の利益率を直撃する実質的な増税措置です。

この決定は、今後タブレット以外の製品(スマートウォッチとバンド、ゲーム機とコントローラーなど)にも波及する可能性があります。セット品という魔法のヴェールが剥がされた今、企業は一つひとつの構成品に対する厳密なコンプライアンスとコスト管理を求められています。

WCO相関表が出た瞬間、HS2028対応は現実になる


企業が今やるべき準備と、相関表の読み方

2026年1月、WCOはHS2028改正(HS2028 Amendments)が受諾されたことを公表しました。発効日は2028年1月1日です。残り約2年は、企業にとって「まだ先」ではなく、分類とデータ、システム、契約をつなぐ移行計画を具体化する猶予期間です。(wcoomd.org)

その中で、実務上のスタートラインになり得るのが「WCO相関表(Correlation Tables)」です。相関表は、HS2022とHS2028の間で、どの品目コードがどう移るのかを体系的に示す地図です。HS2028の条文(改正パッケージ)が公表されても、企業の現場がすぐに全社影響を把握できるとは限りません。相関表が出ることで、初めて「自社の品目マスタをどこからどこへ動かすか」を俯瞰できるようになります。

ここでは、WCO相関表がなぜ「出発点」なのか、そして公開後に慌てないために、公開前から企業がやるべきことを深掘りします。


1. HS2028は何が変わるのか

相関表が必要になる背景

HS2028は、299セットの改正で構成され、結果として1,229の見出し(headings)と5,852の小見出し(subheadings)になります。HS2022と比較すると、新設は見出し6、HS6桁小見出し428。削除は見出し5、HS6桁小見出し172です。(wcoomd.org)

テーマも、単なる貿易統計の更新ではなく、規制・政策目的との連動が前提になっています。WCOが強調している主なポイントは次の通りです。(wcoomd.org)

・公衆衛生
救急車、個人防護具、人工呼吸器、診断・モニタリング機器など、健康危機で必要となる物資の可視性を高める新しい区分が入ります。

・ワクチンの構造変更
従来30.02に含まれていたワクチン関連を、人体用の30.07、その他(獣医用など)の30.08へ再編し、疾病別などの詳細な下位区分を設ける、とされています。

・サプリメントの新見出し
食品と医薬品の境界で揉めやすい領域に、新見出し21.07(dietary supplements)と新しい法的注記を設け、統一的な枠組みを目指す、とされています。

・環境分野
プラスチック廃棄物39.15を、バーゼル条約の区分との整合を意識して再編し、有害・PIC対象・その他を識別する新小見出しを導入する、とされています。さらに、単回使用の概念を第39類の新しい法的注記で明示し、ストロー等の幅広い品目で透明性を高める、と説明されています。

この手の改正は、品目コードが「番号だけ変わる」話ではありません。品目の定義が揺れるので、関税率、輸入規制、統計、原産地規則、社内マスタの整合性まで連鎖します。だからこそ、移行の地図として相関表が必要になります。


2. WCO相関表とは何か

誤解されやすい法的地位と限界

まず大前提として、WCO相関表は「法令」ではありません。WCOは、相関表について次の位置づけを明確にしています。

・相関表は、HS委員会の分類決定そのものとみなすものではない
・実装を容易にするためのガイドであり、法的地位はない(wcoomd.org)

この注意書きは、ビジネス側が一番見落としやすいポイントです。現場では「相関表が出たら、旧コードを新コードに置換して終わり」と考えがちですが、相関表は置換表ではなく、移行の参考情報です。

またWCOは、HS2022の相関表公表時に、相関表は法的文書ではない一方で、導入準備に不可欠なツールになっているとも述べています。つまり、法的拘束力はないが、実務上の標準的参照資料として扱われる、という現実があります。(wcoomd.org)


3. 相関表はどういう形で出てくるのか

HS2022の前例から読み解く

HS2022の前例では、WCOは相関表を2つの表として公表しました。(wcoomd.org)

・Table I:新しい版から旧版へ(新コード側を起点)
加えて、多くの相関に「備考」が付き、移動する品目の性格や関連条文の参照が示されるケースがある。

・Table II:旧版から新版へ(旧コード側を起点)
基本的にTable Iを機械的に反転した表で、備考は付かない。

さらに、WCOの相関表解説では、exという接頭表示が重要な意味を持ちます。exは「その旧コードの範囲の一部だけが移る」ことを示し、1対1の単純移行ではない、というサインです。(wcoomd.org)


4. なぜWCO相関表の公開がHS2028改訂の出発点なのか

出発点と言い切れる理由は3つあります。

4-1. 全社影響を一気に棚卸しできる

条文だけで影響を追うと、読み落としが発生します。相関表があれば、HS6桁ベースで「動くコード」を一覧化でき、影響範囲を見積もれます。

4-2. 曖昧さが可視化され、判断ポイントが特定できる

exや分岐・統合は、判断を要する場所です。相関表は、曖昧さを表面化させることで、社内ルール化を促します。(wcoomd.org)

4-3. 国別実装の監視が始めやすくなる

WCOの相関表は共通骨格であり、各国が自国のタリフラインに落とす過程で追加の分割や法令反映が入ります。(wcoomd.org)


5. HS2028の相関表はいつ出るのか

今わかっていることだけで整理する

現時点でWCOが公式に言っていることは、次の2点に集約されます。

・2025年9月のHS委員会で、HS2022とHS2028の相関表の開発に関する議論を開始し、形式を改善した(明確さと使いやすさの向上が目的)(wcoomd.org)

・2026年1月時点で改正は受諾されており、残る2年間で相関表の作成、解説書などWCOツールの更新、加盟国支援を進める(wcoomd.org)


6. 公開前から企業がやるべき準備

相関表が出ても詰まらないための実務設計

相関表が出てから着手すると、必ず間に合わない作業を先に片付けます。

6-1. 品目マスタの現状の正しさを固める

HS移行で一番危険なのは、現行コードが曖昧なまま新コードへ移してしまうことです。

6-2. 相関表を置換ではなく分岐ルールに落とす設計にする

分岐と統合、そしてexは、業務ルールと判断ログが必要です。

6-3. 国別実装を前提に、監視ポイントを先に置く

実務は国別枝番と税率、規制コードで動きます。相関表は国別実装の入口です。(wcoomd.org)

6-4. 参照情報の取り方を決めておく

相関表や関連資料は複数チャネルに出る可能性があり、社内で一次情報の定義が必要です。(wcoomd.org)


7. 相関表公開後に、企業がやってはいけない3つのこと

7-1. 相関表の自動変換を、そのまま申告に使う

相関表は法的文書でも分類決定でもありません。(wcoomd.org)

7-2. exや分岐を放置して、とりあえずどれかに割り付ける

判断が必要な場所は、判断に必要な製品属性を揃えるところからです。(wcoomd.org)

7-3. HS6桁だけ更新して満足する

国別枝番と税率、規制コードまで落とし込む必要があります。(wcoomd.org)


まとめ

相関表公開は開始合図。しかし準備は公開前に終わらせる

WCOは、HS2028が2028年1月1日に発効すること、そして残る2年で相関表の整備を含む実装準備を進めることを明確にしています。(wcoomd.org)

相関表が公開された瞬間に走り出せるよう、品目マスタの整備、分類根拠の棚卸し、分岐判断の設計、国別実装の監視体制を、公開前に作っておく。

HS2028対応は、貿易実務だけの問題ではありません。サプライチェーンとデータ、コンプライアンスをつなぐ経営課題です。相関表公開を出発点にするために、今日から準備を始めてください。


HS2028に備える 主要国ポータルの対応状況を確実に押さえる実務ガイド

2028年1月1日、HSコードが更新されます。HS2028は、世界税関機構が定めるHS品目表の第8版で、国際取引で使われる分類コードの基盤そのものです。2026年1月21日にHS2028改正が受理され、発効までの準備期間が公式にカウントダウンに入りました。(世界関税機関)

このタイミングで、最初に手を付けたいのが「主要国ポータルのHS2028対応状況を確認する」ことです。理由はシンプルで、通関申告や関税計算、規制対応の現場は、最終的に各国の公式ポータルに載っているコード体系と税率に従うからです。

この記事では、単にポータルを眺めるだけで終わらせず、ビジネスの意思決定に直結する見方と、国別にどこをチェックすべきかまで掘り下げます。

HS2028で何が変わるのか

まず、確実に押さえるべき事実は次の3点です。

1つ目。HS2028は2028年1月1日に発効します。(世界関税機関)
2つ目。改正は299セットに及び、見出しは1,229、子目は5,852という規模です。HS2022比で新設や削除もあり、単なる文言調整ではありません。(世界関税機関)
3つ目。WCOは残り2年間で、HS2022とHS2028の相関表の整備、解説書やツールの更新、加盟国支援を進めると明記しています。加盟国側も、国内法令、IT、手続、研修を更新するとされています。(世界関税機関)

テーマ面では、公衆衛生や環境が中心です。医療機器や防護具の識別強化、ワクチンの再編、栄養補助食品の新見出し、プラスチック廃棄物の再構成など、実務上インパクトの大きい領域が含まれます。(世界関税機関)

ここまでを踏まえると、HS2028は「ある日突然、コードが変わる」イベントではなく、2年間かけて各国が段階的に制度とシステムを移行するプロジェクトだと捉えるのが現実的です。

なぜ主要国ポータル確認が最優先になるのか

HS改正に関して、現場がつまずく典型パターンは、社内のマスタや取引書類の更新タイミングが各国の実装タイミングとズレることです。ズレると何が起きるか。

・輸入申告でコードが通らず、差し戻しや保留が増える
・税率や追加措置の適用判断が揺れ、コスト見積りが不安定になる
・統計品目や国内追加桁の変更に引きずられて、取引先やフォワーダーとの照合に時間が溶ける

このズレを最小化するうえで、各国の公式ポータルは一次情報の集合体です。更新日、適用日、改正履歴、データ形式、関連法令への導線など、移行の手がかりがまとまって出てきます。

つまり「主要国ポータルのHS2028対応状況を確認する」とは、単なる閲覧ではなく、次の問いに答えを出すための情報収集です。

・その国では、いつから新コードが申告に使えるのか
・旧コードはいつまで受け付けられるのか
・相関表や変換資料はどこで入手できるのか
・国内追加桁まで含めた変更はどの粒度で提供されるのか
・自社のITや業務が追随できる形式でデータを取れるのか

対応状況を見抜く 6つのチェックポイント

ポータルの見方は国によって違いますが、見るべきサインは共通化できます。

  1. 表示されている版と適用日
    年次版、基本版、改正号などの表示があるか。適用日が明記されているか。
  2. 改正履歴と更新頻度
    いつ、何が、どの根拠で変わったかが追えるか。更新が日次なのか、年次なのか、随時なのか。
  3. 日付指定で検索できるか
    HS改正は発効日で切り替わるため、取引予定日を入れて結果が変わる設計になっているかは重要です。
  4. 相関表や変換資料への導線
    WCO相関表に加え、国内追加桁を含む国別クロスウォークが出るか。その掲載場所が分かりやすいか。
  5. ダウンロードやAPIの有無
    画面で確認するだけでは、社内マスタ更新が回りません。CSVやJSON、Excelなどで取得できるか。
  6. 法令や公的通知へのリンク
    ポータルの表示は便利ですが、最終的な根拠は法令や告示です。リンクが整理されているかで信頼性が変わります。

この6点で見れば、HS2028対応状況は、専用ページの有無だけでなく、更新の兆候と実装の成熟度として評価できます。

主要国ポータル別に見るべき場所

以下は、主要国で実務上よく参照される公式情報源と、その読み解き方です。ここでは、今ある機能を使ってHS2028の到来をどう検知するかに焦点を当てます。

日本 税関の品目分類検索で確実に追う

日本税関の品目分類検索は、検索対象を輸入と輸出で切り替えられ、実行関税率表や輸出統計品目表など複数コンテンツを対象にできます。さらに、税番は上位2桁、4桁、6桁、全9桁の指定が可能で、検索対象日時も指定できます。(税関総合情報)

HS2028対応状況を確認するうえでの実務ポイントは、検索対象日時です。発効日をまたぐ案件では、同一品目でも結果が変わり得ます。ポータル側がHS2028に切り替われば、2028年1月1日以降の日付指定で新しいコード体系の検索結果が出るはずです。社内側では、案件の通関予定日に合わせたコード参照という運用を、今のうちに定着させると移行が楽になります。

アメリカ合衆国 米国国際貿易委員会 の改正履歴で変化点を捕まえる

USITCのHTSアーカイブは、版が体系的に保存されており、年次の基本版に加えて複数の改正を時系列で追えます。改正ごとに日付があり、HTMLに加えてCSVやXLS、JSONでのダウンロードが用意され、改正根拠として公的な文書への参照も付いています。(アメリカ合衆国国際貿易委員会)

HS2028対応の観点では、ここが最大の観測地点になります。大きなコード再編が起きると、年次基本版だけでなく、複数の改正に分割されて反映される可能性があります。社内データ連携を見据えるなら、画面で眺めるよりも、ダウンロード形式で取得し、マスタ差分を機械的に検知できる体制に寄せるのが現実的です。

欧州連合 欧州委員会 TARICで日次更新の中から大改正を見分ける

TARICはEUの統合関税データベースで、関税措置だけでなく商業・農業関連の措置も統合して扱う多言語データベースです。加盟国に対して日次でデータが送信され、加盟国システムの通関処理にも使われることが明記されています。Excel形式のraw dataも提供されています。(Taxation and Customs Union)

HS2028対応状況の確認は、日次更新に埋もれがちです。ポイントは、日々の更新そのものではなく、品目体系の土台が変わるタイミングです。TARICは法令根拠も示しているので、HS2028に絡む大きな改正は、関連する法令の動きとセットで追うのが安全です。

イギリス 英国歳入関税庁 Trade Tariffは日付入力と更新情報が鍵

UKの関税検索サービスは、取引予定日を入力でき、品目、税率、割当などが時間とともに変わることを前提に設計されています。ページ上には最新ニュースと最終更新日、改正の参照導線もあります。(GOV.UK)

さらに、Trade TariffデータをAPIで取得できることも明記されています。(API Catalogue)
HS2028対応状況の確認では、日付入力欄がそのまま検証装置になります。将来日付が受け付けられる仕様であれば、2028年1月1日を入れて結果がどう変わるかを定点で観測できます。APIがある場合は、手作業確認から抜けて、定期ジョブで差分検知する運用に移しやすいのも利点です。

カナダ カナダ国境サービス庁 関税ファイルと告知をセットで見る

CBSAは、カナダの関税分類を知りたい事業者向けに、関税ファイルへのアクセス、ガイド、過去版アーカイブ、分類や原産地などの裁定、カスタムズノーティスの一覧などをまとめています。カナダの税則はWCOのHSに基づくことも明記されています。(カナダ国境サービス局)

章別に見られる関税スケジュールは、適用日と形式が整理されています。(カナダ国境サービス局)
HS2028の対応状況確認では、次の2点を並行で追うのがコツです。関税ファイルの版更新と、告知や通知の情報。版だけ見ていると背景が取りこぼれますし、告知だけ読んでいると現場適用に落ちません。

オーストラリア オーストラリア国境警備隊 Working Tariffの説明文が先行指標になる

ABFのWorking Tariffは、現行の関税分類のオンライン版であること、WCOの改正で始まった変更や、2022年1月1日開始の統計コード変更、その後の法令や統計コード変更を含むことが明記されています。分類はSchedule 3で参照する、といった構造も説明されています。(Australian Border Force Website)

ここは、HS2028対応状況の早期検知ポイントになり得ます。なぜなら、説明文がどの改正サイクルを取り込んでいるかを示しているからです。HS2028に向けて準備が進めば、説明文や対象範囲の表現が更新される可能性があります。画面の検索結果より先に、こうした概要説明が更新されることもあります。

韓国 韓国関税庁 10桁DBと6桁共通ルールを押さえる

KCSはHSコードの基本として、先頭6桁は世界共通で、7桁目以降は国ごとに異なるという構造を説明しています。韓国は10桁コードを使うことも明記されています。(韓国関税庁)
また、関税DB検索では10桁のHSコードまたは品名で検索できることが示されています。(韓国関税庁)

HS2028は6桁部分の変更を含むため、まず影響が出るのは6桁です。ただし実務で使うのは10桁です。ここがミソで、6桁の相関表だけでは社内マスタ更新が終わらない可能性があります。KCS側が国内追加桁をどう組み替えるかまで含めて、DBで早期に確認できる体制が重要になります。

中国 国務院関税税則委員会 中華人民共和国財政部 の公告を一次情報として組み込む

中国では、進出口税則が公告として公表され、例えば2026年版は2026年1月1日から実施される旨とPDFの掲載が確認できます。(関税司)

中国市場を扱う場合、現場ではポータル検索に加えて公告PDFが一次情報になります。HS2028移行でも、制度変更の根拠と施行日、変更点がどこで示されるかを見誤らないことが重要です。社内の観測リストに公告の発表ページを入れておくと、更新を取りこぼしにくくなります。

ポータル確認を社内の成果に変える運用設計

ポータルを確認して終わりではなく、社内の移行プロジェクトに落とすときの型を最後に整理します。

  1. 重要市場から優先順位を付ける
    全世界を同時に追うと疲弊します。売上、仕入れ、制裁や規制、リードタイムなどの観点で上位市場を決め、そこから始めます。
  2. 版と日付の観点でマスタを持つ
    国別に、現行版、切替予定日、確認日、参照元ポータル、担当者を持ちます。日付指定検索ができる国は、取引予定日ベースの照会に統一します。
  3. 相関表が出たら、6桁と国内追加桁を分けて管理する
    WCO相関表は6桁の基盤です。そこから先の国内追加桁は国ごとに別プロジェクトになります。両者を混ぜると、関係者が混乱します。
  4. 社内システムと外部委託先を同じタイムラインに乗せる
    ERP、PIM、貿易管理システム、フォワーダー、通関業者が別々に更新すると事故が起きます。ポータルの更新兆候をトリガーに、関係者に同報する設計にします。

まとめ

HS2028は、2028年1月1日発効の大規模改正です。2年間の準備期間で、WCO側は相関表や解説などを整備し、各国は国内法令とITを更新していきます。(世界関税機関)

だからこそ、主要国ポータルのHS2028対応状況を定点観測し、変化の兆候を早期に拾うことが、最も費用対効果の高い一手になります。画面の見た目より、版、適用日、改正履歴、日付指定検索、データ取得手段、法令根拠。この6点で見れば、HS2028移行は予測可能なプロジェクトに変わります。

情報確認日: 2026年1月31日

HSCF: 付番トライアル011:インターフォンの親機で実験

試したもの
インターフォンの親機の写真でHSコードの判定を試した

入力条件(日本語:ユーザー条件のみ)

  • 品名/用途:—
  • 材質:—
  • 構成・セット:—
  • 電気性・測定/通信:—
  • 寸法・仕様値:—
  • 型番・画像:画像1枚(壁面に取り付けられた機器の写真)
  • 通関国・前提:—

日本語版

1) 結論

  • 国別例示(任意):
    • JP:8517.62-000(有線・無線ネットワーク用の音声・画像等の受信・変換・送受装置)
    • US:8517.62.0090(Machines for reception, conversion and transmission or regeneration of voice, images or other data, other)
    • EU:8517 62 00(Machines for the reception, conversion and transmission or regeneration of voice, images or other data)
  • 要約:壁面設置のモニター・受話器・マイクを一体化した室内用インターホン(ドアホン)と判断。音声・画像を相互にやり取りする通信機器に該当し、警報器(85.31)や単体モニター(85.28)ではないため、85.17に分類。
  • 確度(%):75%

2) 根拠

  • 適用通則・注(例:GRI 1, 6、16部注、85類注):項の記載(85.17)に基づきGRI1で判断。必要に応じてGRI6で号を特定。
  • 判定ポイント(主用途、主要材質、機能、構成、セット該当性 等):
    • 主用途:来訪者との通話・映像確認・解錠操作を行う室内親機。
    • 機能:音声(マイク・スピーカー)と画像(カメラからの映像受信)を通信線でやり取りする装置。
    • 構成:受話器、スピーカー開口、表示パネル、解錠ボタン等が一体。
    • セット性:写真は室内親機単体だが、通常は屋外カメラ子機等と組み合わせて通信機能を発揮。
  • 仮定(入力不足を補う前提):
    • 本体は屋外子機と有線で接続され、音声・画像信号の送受を行う。
    • アラーム専用ではなく、通話・映像確認が主機能。
    • 一体の機能装置として提示(部分品ではない)。
  • 排他・除外の理由(他の類・項ではない理由):
    • 85.31(電気式の可視・可聴信号装置:ベル・警報等):本機の主眼は警報ではなく、双方向通話・映像通信であるため不適。
    • 85.28(モニター・プロジェクター):単なる映像表示装置ではなく、音声入出力を含む通信機器であるため不適。
    • 85.25(テレビカメラ等):屋内親機は送受の通信装置であり、撮像機器に限定されないため不適。
  • 型番・画像:ユーザー提供画像(1枚)
    • 画像A(全体):受話器・表示パネル・スピーカー開口・解錠ボタン様のUIを確認。
    • 画像B(操作部):通話・解錠などの機能ボタンがあり、通話機能が主機能であることを示唆。
    • 画像C(配線想定):壁面据付・背面配線前提の親機形状で、屋外子機との有線通信を想定。

候補比較(代替候補の比較表)

候補HS(6桁)見出しの趣旨該当する可能性棄却・採用理由確度(%)
8517.62音声・画像等データの受信・変換・送受装置高い双方向の通話・映像通信を行う室内親機に整合75
8531.80電気式可視・可聴信号装置(ベル、警報盤等)呼出音は付随機能。主たる性質は通信のため不採用15
8525.89テレビカメラ等のその他本体は撮像機ではなく通信親機。用途不一致5
8528.59その他のモニター表示のみではなく通話・制御を伴うため不採用5

※ 表の前後に空行を入れ、列数は全行で統一しています。

3) 争点・注意

  • セット提示か単体提示か:屋外カメラ子機とセットで提示される場合も、通信機能の本質から85.17の枠内で構成品を判断(必要に応じGRI3(b)又は16部の部分品規定を検討)。
  • 部分品に該当する場合:室内親機が「専ら又は主として」当該インターホンに使用されるなら85.17の部分品(8517.70相当;各国の細分に依存)となる可能性。
  • IP型(LAN接続)か否か:いずれも85.17の通信装置の範囲に含まれるが、無線/有線・プロトコルにより各国細分が異なる場合あり。
  • 解錠制御の有無:解錠は付随機能。主機能(通話・映像通信)による分類が優先。

4) 追加で必要な情報

  • 正式な品名・型番(例:銘板写真、取扱説明書)
  • 接続方式(2線式/4線式、IP(LAN)/RS-485 等)、無線対応の有無
  • 単体提示か、屋外子機・電源アダプタ等との「小売用のセット」提示か
  • 防犯警報機能の有無(アラーム専用ではないことの確認)
  • 市場国(通関国)と適用HS版(HS2022 など)

5) 参考資料・出所

WCO解説、各国実行関税表、裁定・裁決番号、メーカー仕様書 等


※ 本判定は画像のみを根拠とした暫定案です。型番・接続方式の確定により、**8517.70(部分品)**や各国細分への落とし込みが変わる可能性があります。

日本の税関が衝撃の数値を公表。AI活用ドシエで審査時間が3割短縮された事実とその意味

2026年1月31日、日本の貿易実務の現場に、これからの方向性を決定づける重要なデータが提示されました。財務省関税局が、AIを活用して作成されたHSコード分類根拠書(ドシエ)を添付した輸入申告について、その審査時間が従来の手法と比較して平均30パーセント短縮されたという実績速報を公開したのです。

これまで、AIを通関業務に導入することに対しては、税関の心証や精度の面から慎重な姿勢をとる企業が少なくありませんでした。しかし、当局自身がその有効性を数字で証明したことにより、AI活用は単なる効率化の手段ではなく、物流スピードを上げるための必須要件へと昇華しました。

本記事では、この30パーセント短縮という数字が持つ実務的な意味と、なぜAIドシエがこれほどまでに審査を加速させるのか、そのメカニズムについて深掘りします。

30パーセントの時短がサプライチェーンにもたらすインパクト

今回公表された審査時間の3割短縮という実績は、ビジネスにおいて極めて大きな意味を持ちます。

通関審査が長引くことは、貨物が港や空港で足止めされることを意味します。保管料(デマレージ)の発生リスクが高まるだけでなく、工場への部材納入や店頭への商品供給が遅れることによる機会損失は計り知れません。

審査時間が3割減るということは、例えばこれまで午前に申告して許可が夕方になっていた案件が、昼過ぎには許可になり、当日中の配送が可能になるかもしれないという差を生みます。リードタイムの短縮は、在庫回転率の向上や物流コストの削減に直結するため、この実績は経営層が注目すべきKPIとなります。

なぜAIが作った書類は審査が速いのか

税関職員も人間です。膨大な申告書類を審査する中で、根拠が曖昧なものや、手書きのメモ書き程度の説明しかない案件は、裏付け調査に時間を取られます。一方で、AIが作成したドシエが審査をパスしやすいのには、明確な理由があります。

論理構成の標準化と可読性

人間が作成するドシエは、担当者のスキルや癖によってフォーマットや書きぶりがバラバラになりがちです。しかし、ガイドラインに沿ってAIが生成したドシエは、結論、法的根拠、製品仕様との対比という論理構成が常に一定のフォーマットで整えられています。

税関職員にとっては、どこを見れば何が書いてあるかが一目瞭然であるため、確認作業の認知的負荷が下がり、結果として決裁までのスピードが上がるのです。

法的根拠の網羅性と引用の正確さ

HSコードを決定する際、最も重要なのは関税率表の解釈に関する通則や、部注・類注といった法的根拠です。人間は、自分が知っている知識に頼りがちで、条文の引用を省略したり、うろ覚えで記載したりすることがあります。

対して特化型のAIは、該当する条文をデータベースから正確に引用し、一言一句間違えずに記述することを得意とします。税関職員が最も確認したい法的根拠が、正確かつ網羅的に記載されていることで、職員側での再調査の手間が省かれます。これが時短につながる最大の要因です。

様子見の時代は終わり、実装のフェーズへ

今回の実績公開により、税関からのメッセージはより鮮明になりました。それは、AIを使ってしっかりとした根拠を示せば、それに見合うメリット(迅速な通関)を提供するという約束です。

これまでAIツールの導入を迷っていた企業にとって、このデータは導入決裁を通すための強力なエビデンスとなります。

AIと人間の役割分担の再定義

ただし、AI任せにすればよいわけではありません。先日公開されたガイドラインでも示されている通り、AIにはハルシネーション(もっともらしい嘘)のリスクがあります。

今後は、AIが作成した論理の骨組みと条文引用の正確さを、人間が最終確認するというプロセスが標準になります。通関担当者に求められるスキルは、ゼロからコードを調べる能力から、AIが提示した論理の妥当性をジャッジする能力へとシフトしていくでしょう。

まとめ

税関によるAIドシエ審査実績の公開は、日本の貿易実務におけるDXの勝利宣言とも言えます。

30パーセントの審査時間短縮は、競争力の源泉です。この事実を前にして、まだ従来の手作業に固執するのか、それともテクノロジーを味方につけて高速なサプライチェーンを構築するのか。経営判断のスピードが問われています。

HS 2028改正の骨格が確定。WCOが示した世界共通6桁の全貌と企業が直面するシステム移行のマラソン

2026年1月31日、世界税関機構(WCO)から、全世界の貿易実務者にとって極めて重要なマイルストーンとなる情報が発信されました。それは、2028年1月1日に発効する第8次HS条約改正(HS 2028)における、世界共通の6桁コードの変更内容が最終確定し、現行のHS 2022との相関表(Correlation Tables)のドラフト配布が開始されたというニュースです。

これは単なる事務連絡ではありません。2年後に迫った新ルールへの移行に向け、企業のシステム改修やマスタデータ更新のカウントダウンが正式に始まったことを意味します。

本記事では、今回確定した変更内容のポイントと、このニュースを受けてビジネスマンが今すぐ着手すべき準備について解説します。

HSコードの6桁が確定したことの重大な意味

貿易実務においてHSコードは世界共通言語ですが、厳密に世界で統一されているのは上6桁までです。それ以降の桁数は国ごとに自由に設定されます。今回、WCOが確定させたのは、この世界共通部分である6桁の構造です。

これが確定したということは、もはや議論のフェーズは終わり、実装のフェーズに入ったことを示唆します。これから2028年にかけて、日本、米国、EUなどの各加盟国は、この6桁をベースに自国の関税率表(9桁や10桁)を作成する作業に入ります。

企業にとって重要なのは、相関表(Correlation Tables)が提示された点です。これは、今のコードが将来どのコードに変換されるかを示す対照表であり、システム移行のための設計図そのものです。これが入手可能になったことで、IT部門や通関部門は具体的な影響範囲の特定が可能になりました。

今回の改正を貫く2つの主要テーマ

HS 2028の改正内容は多岐にわたりますが、ビジネスに直結する大きな潮流は環境とテクノロジーの2点に集約されます。

環境物品の可視化と循環経済への対応

もっとも大きな変更点は、環境関連物品の細分化です。これまでのHSコードでは、廃棄物やリサイクル原料は大雑把な分類しかされていませんでした。しかし、HS 2028では、使用済みプラスチック、電子廃棄物(e-waste)、そしてバイオ燃料などの分類が劇的に細かくなります。

これは、国境を越えるリサイクル資源の移動を管理しやすくするためであり、同時に環境物品への関税撤廃や、逆に環境負荷の高い物品への課税強化を行うための布石でもあります。サステナビリティを掲げる企業にとって、自社のリサイクル材がどの新コードに落ちるかは、コンプライアンス上の最重要確認事項となります。

新技術製品の独立分類

もう一つの柱は、急速に普及した新技術への対応です。例えば、ドローン、3Dプリンター、特定のAIハードウェア、次世代半導体素材などが、従来のその他分類から独立し、固有の場所を与えられます。

これにより、ハイテク製品の貿易統計が正確になると同時に、特定の技術製品を狙い撃ちにした関税設定や輸出管理が容易になります。該当製品を扱うメーカーは、関税率が変動するリスクを織り込む必要があります。

最大のリスクはFTA原産地規則との乖離

コードが変わることで最も警戒すべき実務上の落とし穴は、自由貿易協定(FTA/EPA)の原産地証明です。

多くのFTAでは、原産地規則(関税分類変更基準など)が、協定発効時の古いHSコードに基づいて定義されています。HS 2028が導入されると、通関申告は2028年版で行う一方、原産地判定は2017年版や2022年版のコードに変換して行わなければならないという、二重管理の状態が発生します。

WCOによる相関表の公開は、この変換作業を正確に行うための公式な定規が配られたことを意味します。この定規を使わずに感覚で変換を行えば、原産地規則の適用ミスによる脱税や事後調査での否認につながります。

企業が今すぐ開始すべき3つのアクション

2028年はまだ先だと思われるかもしれませんが、基幹システムの改修には年単位の時間を要します。以下の3つのステップで準備を開始することを推奨します。

影響分析の予算化とチーム組成

まず、自社が取り扱っている製品のうち、どの程度がHS 2028の影響を受けるかを洗い出す必要があります。今回配布された相関表を用いれば、コードが変わる品目のリストアップが可能です。IT部門と通関部門によるタスクフォースを立ち上げ、システム改修に必要な予算を来期の計画に盛り込む必要があります。

マスタデータのクレンジング

移行作業をスムーズにするためには、現状のデータが綺麗であることが大前提です。現在使用しているHSコードに誤りがないか、製品情報(成分、材質、用途)が最新の状態に更新されているかを確認してください。ゴミデータのまま新コードへ移行しようとすると、自動変換の精度が落ち、手作業の修正コストが膨れ上がります。

サプライチェーン全体への周知

自社だけでなく、海外のサプライヤーや現地法人に対しても、2028年改正に向けた準備を促す必要があります。特に、部品表(BOM)のHSコード更新は、サプライヤーからの情報提供がなければ完了しません。早期にアナウンスを行うことで、直前の混乱を避けることができます。

まとめ

WCOによるHS 2028の最終確定は、グローバルビジネスにおけるルール変更の合図です。

新しいコード体系は、環境配慮や新技術といった時代の要請を反映したものであり、これに適応できない企業は、通関の遅延や関税コストの増加というペナルティを支払うことになります。

相関表という地図は手渡されました。あとは、2028年1月1日というゴールに向けて、着実にシステムと業務を適合させていく実行力が問われています。

CBP裁定で読み解く「導線(8544)」と「自動車部品(8708)」の境界線

ワイヤーハーネスは、見た目も用途も明らかに自動車向けです。にもかかわらず、米国税関CBPの裁定では、しばしば自動車部品の8708ではなく、導線としての8544に分類されます。
ここを誤解すると、申告修正や追徴、追加関税の取りこぼし・過払い、サプライチェーン原価計算の崩れにつながりかねません。

本稿では、CBPの代表的な裁定(HQ・NY)を軸に、「導線としての8544」と「自動車部品としての8708」の境界がどこに引かれるのかを、ビジネスの意思決定に使えるレベルまで整理します。

※本稿は一般的な情報提供であり、個別案件の分類を確定するものではありません。最終判断には製品仕様、構成部品、輸入時の状態、提出資料が強く影響します。重要案件ではCBPのバインディングルーリング取得を推奨します。


1. まず結論:8708に行く前に、8544に「吸い込まれる」仕組みがある

誤解が生じやすい最大の理由は、「用途だけで考えてしまう」ことです。
確かにワイヤーハーネスは車両専用に設計され、車の中でしか使われませんが、HTSUSは用途だけでなく、章注・部注による「門番ルール」で分類の行き先を決めています。

その典型が、HTSUS Section XVII(車両等)の注2(f)です。
この注記では、車両の部品として識別できるものであっても、Chapter 84・85に該当する物は、Section XVIIの「parts and accessories(部品・付属品)」の範囲から除外すると定めています。
言い換えると、「Chapter 85にきちんと分類できるものは、原則として8708には入れない」という構造です。

この門番ルールがあるため、ワイヤーハーネスを8708に入れたい側の主張は、出発点から不利になります。
8708に至るための「勝ち筋」は単純で、輸入時の状態の製品が、Chapter 85のどの見出しにも当てはまらないことを示せるかどうかにかかっています。


2. CBPが8544を選ぶときのロジック

本質が「絶縁導体+コネクタ」なら8544

2-1. 事例A:HQ 955026(1993年)

CBPが8544を選んだ代表例として、HQ 955026があります。対象は、乗用車に搭載されるインストルメントパネル用ワイヤーハーネスアセンブリで、導体、配線トラフ、端子、絶縁体、グロメット、束線材、ヒューズ、リレー、ライトソケットなどから構成されていました。
このアセンブリは、ボディコンピュータ、計器クラスター、ラジオ、エアバッグモジュール、スイッチ類、車体配線、エンジンルーム配線など、インストルメントパネル周辺の各モジュールを相互接続する役割を持ちます。

CBPは、Explanatory Note 85.44に触れながら、「絶縁された電線・ケーブル等は、長さに切断されていても、端にコネクタ類が付いていても、依然として8544にとどまり得る」と整理しました。
そのうえで、対象品の本質は「絶縁された導体にコネクタ等を付した配線セット」であり、ヒューズやリレー、ライトソケット等は電気の導通を補助するにとどまるとして、8544.30.00(車両等に用いる配線セット)への分類を確定しています。

さらに重要なのは次の点です。
HQ 955026では、たとえ用途が自動車であっても、対象がChapter 85(8544)に分類される以上、Section XVII注2(f)により8708への分類は排除される、と明言されています。

当時の裁定では、検討対象となった8708.99.50の一般税率が3.1%、8544.30.00が5%と記載されており、分類による税率差がコストに直結することが示されていました(税率は改定され得るため、実務では必ず最新HTSを確認する必要があります)。

ビジネス上の示唆

  • 自動車専用設計であっても、それだけで8708にはならない。
  • コネクタ、端子、束線材、グロメット、ヒューズ、リレー程度の追加要素は、8544から外す決定打になりにくい。
  • 議論の中心は、「電気の導通・配線」という本質を超える独立機能が、輸入時点でどこまで実装されているかに移る。

3. では、いつ8708になり得るのか

8544に当てはまらないほど「機能モジュール化」しているとき

3-1. 事例B:HQ 088477(1991年)

8708側に振れた有名例がHQ 088477です。
ここで対象となったのは、インストルメントパネルに組み込まれる配線アセンブリですが、その内容は単なるハーネスを超えたものでした。

裁定文によれば、このアセンブリには、19本のヒューズを収めたヒューズボックス、ランプとランプソケット、マイクロプロセッサを含むランプ監視モジュール、ドア開状態検知モジュール、ランプ付きグローブボックススイッチ、エンジン警告系ドライバモジュール、複数のリレーやサーキットブレーカーなどが含まれていました。

CBPは、Section XVII注2(f)(Chapter 85該当品は車両部品扱いしない)を前提としながらも、次のようにロジックを組み立てています。

  • 構成要素の一部(ヒューズ、スイッチ、電線など)はChapter 85で個別に説明できる。
  • しかし、輸入時の状態の「全体」としては、Chapter 85のどの見出しにも当たらない。
  • 特に8544については、単なるコネクタ付き導体の範囲を超えて、監視・制御・警告等の装置が相当量一体化しており、85.44の用語を満たさない。
  • 8543(個別機能を有する電気機器)についても、本件全体を説明するには適切でない。
  • 以上から、全体を最もよく表す見出しは8708.99.50である。

この結果、当該アセンブリは「自動車用のその他の部分品」として8708.99.50に分類されています。

ビジネス上の示唆

  • 同じ「ハーネス」と呼ばれていても、輸入時点で監視・制御・診断などのモジュール群を抱き込むと、8544の「安全地帯」から外れる。
  • 8708に行けるかどうかは、「車の部品だから」ではなく、「Chapter 85のどれにも当たらないほど一体化した機能モジュールになっているか」という消去法の勝負になる。
  • 設計変更や構成部品の追加が、既存の分類前提を壊しうる。

4. 現代の実務感

スイッチ・リレー・ヒューズ入りでも8544に残ることがある

4-1. 事例C:NY N326429(2022年)

近年の実務に直結する例として、NY N326429があります。
ここで扱われたのは、LED作業灯やオフロード用ライトバー向けの「プラグ・アンド・プレイ」配線ハーネスで、ロッカースイッチ、ヒューズ、リレー、複数のコネクタを備え、12V系で車両に使用される製品でした。

輸入者側は、回路の接続・保護・スイッチング等を行う電気機器を含むことから、8536と8544のどちらか、あるいは複合として別のサブヘディングを提案しました。
しかしCBPは、保護・接続・スイッチング・導通など複数の機能が並立しており、単一の機能を「本質」と特定しにくいとして、GRI 3(c)を適用しています。

GRI 3(c)では、2以上の見出しに同程度に該当し、本質を決定できない場合、番号順で最も後ろにある見出しに分類すると定められています。
このルールを踏まえ、CBPは最終的に8544.30.0000(Ignition wiring sets and other wiring sets of a kind used in vehicles, aircraft or ships)を選択しています。

さらに、この裁定では、中国原産で8544.30.0000に分類される場合、原則として追加25%関税(Chapter 99の9903.88.01)の対象となり得ること、申告時にChapter 99番号を併記する必要があることも明記されています。

ビジネス上の示唆

  • スイッチ、ヒューズ、リレーを内蔵していても、必ずしも8536や8708に移るわけではなく、8544.30にとどまるケースがある。
  • 分類は基本税率だけでなく、Section 301の追加関税の適用有無やコンプライアンスコストにも直結する。
  • 設計段階から、部品構成と輸入時の状態を前提に、分類シナリオと追加関税シナリオをセットで検討する価値が高い。

5. 境界線を実務に落とす

判断軸は3つに絞れる

CBP裁定の積み重ねから見える「8544と8708の境界線」は、次の3つの軸に整理できます。

5-1. 軸1:全体として8544の説明に収まるか

HQ 955026では、ヒューズやリレー、ライトソケットなどが含まれていても、「電気の導通を補助する範囲」にとどまるとして、全体を8544.30.00に分類しました。
一方、HQ 088477では、監視モジュールやマイクロプロセッサ等、導通補助の域を超えた装置が相当量一体化している点が決定的であり、85.44の範囲から外れると判断されています。

5-2. 軸2:Section XVII注2(f)の門番を越えられるか

「Chapter 85にきちんと分類できる限り、8708は閉ざされる」というルール自体が非常に強力です。
したがって、8708を主張するのであれば、輸入時の状態の「全体」がChapter 85のいずれの見出しにも当てはまらないことを示す必要があります。

HQ 088477は、まさにこの構造で8708に到達した事例です。
個々の構成品はChapter 85で説明できるものの、全体としては特定の見出しの文言に合致せず、結果として8708.99.50が最も適切とされた、というロジックになっています。

5-3. 軸3:輸入時点で「完成品機能」を持っているか

特に照明系などでは、輸入時にどこまで完成しているかが重要です。
CBPは過去裁定において、GRI 2(a)の考え方を用いて、未完成品であっても、主要な構成要素を備えた灯具アセンブリを8512(自動車用照明・信号装置)で扱う方向に整理し、従前の一部ハーネス系裁定を修正・撤回したことがあります(HQ 954945など)。

要するに、「配線だから8544」「自動車に付くから8708」といった短絡ではなく、「輸入時点でどの機能がどこまで完成しているか」が分類を動かすということです。


6. 実務で使えるチェックリスト

分類検討の初動で、最低限そろえておきたい情報を、通関実務の観点から整理します。

6-1. A:製品定義を固める

  • 導体は単線か、多芯ケーブルか、束線か。
  • コネクタ、端子、ソケットの有無と種類(車両専用か、汎用か)。
  • ヒューズ、リレー、スイッチ、モジュール類の有無。
  • それらが「導通・配線を補助する機能」にとどまるのか、「監視・制御・診断などの独立機能」を持つのか。
  • 輸入時点でランプや他の装置が同梱・取り付け済みか(分納の場合を含めて確認)。

6-2. B:資料の整備(監査・裁定取得に効く)

  • 回路図・配線図、BOM(部品番号と数量)。
  • 輸入時の状態が分かる写真、梱包形態。
  • 機能説明書(何を制御し、何を監視し、どの信号・電力を処理するか)。
  • 車両への搭載位置と接続先一覧(どのECU・モジュールと接続するか)。

6-3. C:リスクの見積もり

  • 8544.30前提の設計でも、構成変更によりHQ 088477型(8708側)に「化ける」可能性がないか。
  • 原産国が中国の場合、Section 301追加関税の適用可能性と、Chapter 99番号の併記運用を含めた管理フローが設計されているか(NY N326429は、分類判断と同時に追加関税管理を求めている)。
  • 分類変更が価格・契約条項・原価計算・移転価格に与える影響を、あらかじめ試算しているか。

7. まとめ:境界線は「名称」ではなく「輸入時点の全体像」で決まる

ワイヤーハーネスを8708に入れる発想は自然ですが、HTSUSの構造上、Chapter 85に該当する限り、Section XVII注2(f)により8708は原則として閉ざされます。
CBPは、絶縁導体とコネクタを核とし、導通を補助する範囲の部品が付く程度であれば8544.30に分類し、8708を排除する判断をHQ 955026などで明確に示しています。

一方で、監視・制御モジュールやプロセッサ等を相当量抱え込み、Chapter 85のどれにも当てはまらないレベルの一体品となると、消去法により8708に到達する余地が生まれることも、HQ 088477が示す通りです。
そして近年でも、スイッチ・ヒューズ・リレーを備えた車両用配線ハーネスが8544.30に整理され、同時にSection 301追加関税の管理が求められる例(NY N326429)が存在します。

次のアクションとしては、社内で「導通補助の範囲」と「モジュール化している領域」を整理し、設計変更がその境界を越えるタイミングを検知できる体制を作ることが重要です。
そのうえで、金額インパクトの大きい品目については、CBPのバインディングルーリング(19 CFR Part 177)を活用し、分類と追加関税の両面で不確実性を減らすことが、費用対効果の高い打ち手になります。

バッテリーパック分類を深掘りする前に:CBP HQ H351314(2026年1月)を正確に読む

輸入実務で「バッテリーパック」とひとくちに言っても、実際には電池セルそのもの、セルを収納する筐体、据置型エネルギー貯蔵設備のコンテナ、車載機器として固定されるモジュールなど、対象は広く、分類の論点も分岐します。
ここで取り上げるCBP Headquarters Ruling Letter HQ H351314(2026年1月20日付)は、狭義のバッテリーパックそのものではなく、ピックアップトラック荷台に固定する鋼製トランスファータンク(ディーゼル燃料など非可燃性液体の移送用タンク)の関税分類を扱った裁定です。

ただし、この裁定は次の2点で、電池関連製品の分類検討にも強くつながります。

  • 車両用の部品(8708)として扱いたいという主張に対し、より具体的な品目(7309)が追加米国解釈規則に基づき優先されることを明確に示したこと。
  • 輸送用コンテナ(8609)の要件を、フィッティングや運用実態に踏み込んで判定しており、同裁定で参照されるバッテリーエネルギー貯蔵システム用コンテナ(HQ H329722)と合わせて、電池関連の筐体やコンテナ製品に直結する論点を含むこと。

以下、HQ H351314を軸に、ビジネス目線で整理していきます。


1. 結論:なぜ7309.00.00になったのか

HQ H351314は、先行裁定であるNY N333141(2023年6月7日付)を確認・維持し、対象となる鋼製トランスファータンクをHTSUS 7309.00.00(鉄鋼製で容量300リットル超、機械的または熱的装置を備えない貯蔵タンク等)に分類しました。
裁定文では、当該品目に適用される一般税率(Column 1 General rate)は0%(無税)であることも明示されています。

裁定上の主要な争点は、概ね次の3点に整理されます。

  • 7309か、輸送用コンテナの8609か。
  • 車両の部分品として8708に分類できるか。
  • 容量要件から見て7310に該当しないか(容量300リットル超か否か)。

結論だけを見て「車に載せる装置は車両部品」と短絡しがちですが、CBPはこの裁定で、品目の機能と設計、そして法体系上の優先順位を丁寧に整理しています。


2. 事実関係:CBPが見た「商品」の姿

裁定を読み解くうえで重要なのは、CBPがどの状態の製品を「輸入される物」として認定したかです。
HQ H351314が認定した事実関係は、次のようなポイントに集約されます。

  • 鋼製タンクで、表示容量は100ガロン(約378.5リットル)、14ゲージ鋼板を用いた直方体形状。
  • 上部に2インチの開口部が2か所あり、ディーゼル燃料などの非可燃性液体を移送する用途として販売される。
  • ピックアップトラックの荷台にボルトで固定して使用し、トレーラーに積み替える運用は想定されていない。
  • 輸入時に固定用キットが付属し、持ち上げ用のリフティングアイを備えるが、構造上、頻繁かつ容易な脱着を前提とする設計ではない。
  • 輸入時点ではポンプ等の機械的装置や加熱・冷却等の熱的装置を備えていない。
  • 推奨充填容量は96ガロンとされるものの、タンク自体の容量は100ガロンであり、300リットル超であることは変わらない。

ここで重要なのは、「リフティングアイがある」「トラックに載る」といった要素だけでは、直ちに「輸送用コンテナ」や「車両部品」には結びつかないという点です。
CBPは、固定構造と運用の想定(据置的に荷台に固定されるか、繰り返し輸送に用いるか)を重視して評価しています。


3. 争点その1:なぜ8609の「輸送用コンテナ」ではないのか

8609見出しは、道路・鉄道・船舶・航空など複数の輸送モードで、繰り返し使用されることを前提とした輸送用コンテナ類を対象としています。
HQ H351314は、解説書(Explanatory Notes)における「フィッティング(フック、リング、キャスター、支持部など)」の概念を軸に、8609への該当性を検討しています。

HQ H351314のロジックを実務向けに整理すると、ポイントは次の通りです。

  • 8609は単に「運べる箱」ではなく、積み替えや輸送中の固定のためのフィッティングを備え、車両や船舶への積載と荷下ろしを繰り返す構造・設計であることが前提。
  • 液体・ガス用コンテナについても、複数の輸送モードに取り付け可能な支持構造を持つ場合に8609となり、それ以外は材質等に応じて別見出しへ分類されることが解説書で示されている。
  • 対象タンクの固定構造は、ピックアップトラックへの恒久的な取り付けを想定しており、ドアツードア輸送を支えるフィッティング(キャスターや標準コーナーキャスティング等)を欠く。
  • 以上から、対象物品は8609が想定する「輸送用に特別に設計され装備されたコンテナ」には該当せず、8609から除外される。

HQ H351314は、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)用の鋼製コンテナを8609ではなく7309に分類したHQ H329722を引用し、同様の考え方を踏襲しています。
HQ H329722では、BESS用コンテナについて「貨物を輸送するためではなく、所定の場所で電池を収納・保管するための容器」であるとして、8609ではなく7309.00.00と結論づけています。

この判断枠組みは、電池関連設備の「コンテナ型」商品にもそのまま波及します。
外観がコンテナに似ていても、運用としてドアツードア輸送を前提とするか、輸送環境の動的荷重に耐える構造か、積み降ろし用の仕様がどこまで備わっているかといった要素が、分類を左右し得るということです。


4. 争点その2:なぜ8708の「車両部品」より7309が優先されるのか

依頼者側は、当該タンクを8708(自動車の部分品及び付属品)に分類することを主張しました。
これに対してCBPは、追加米国解釈規則1(c)(Additional U.S. Rule of Interpretation 1(c))を前面に出し、「部品・付属品」の見出しは、より具体的な品名で規定された見出しに優先されない、という原則を確認しています。

HQ H351314では、たとえ車両に取り付けて使用する専用品であっても、鉄鋼製で一定容量を超え、機械的または熱的装置を備えない「タンク」という具体的な品名見出し(7309)が存在する以上、8708よりも7309の方が具体的であり、優先されると整理しています。
また、Section XVIIの解説書においても、部品・付属品が同部の見出しに分類されるためには、「他の見出しでより具体的に規定されていないこと」が条件になると説明されており、この点からも8708への分類は否定されています。

この構図は、バッテリーパックの分類で頻出する論点と同型です。
例えばEVや産業機器向けの電池であっても、電池そのものとしての具体的見出し(一般には8507)が存在する場合、「車両部品」や「機械の部品」に寄せる主張は通りにくくなる局面があり得ます。


5. 争点その3:7310ではなく7309になる容量要件

HQ H351314で扱うタンクの容量は100ガロンであり、裁定文中でも約378.5リットルと明示されています。
7309と7310の分岐は「容量が300リットルを超えるかどうか」という明快な線引きであり、裁定では、当該タンクは300リットル超であるため7310から除外され、7309に該当すると結論付けています。

ビジネス実務では、容量が境界付近にある商品や、安全上の推奨充填量とタンク容積が異なる商品が少なくありません。
そのため、次の点を社内で明確にしておくことが重要です。

  • 「容量」の根拠となる資料は何か(設計図、試験成績書、カタログ表示、タンク刻印など)。
  • タンク容積と推奨充填量が異なる場合、分類上どちらを説明の軸に据えるか。
  • 輸入時点で仕様が固定されているか(容量変更の余地がある設計かどうか)。

HQ H351314では、推奨充填容量96ガロンという説明が追加されても、タンク容積が100ガロン=300リットル超であるという事実は変わらないとして、7309の要件を満たすと判断しています。


6. ビジネスへの落とし込み:設計・調達段階から分類を織り込む

HQ H351314は、分類が「用途の主張」ではなく、「設計仕様」と「輸入時点の状態」によって決まりやすいことをあらためて示しています。
この観点から、設計・調達の段階で押さえておきたいポイントを整理します。

6-1. 8609を狙うなら、設計要件を明文化する

8609での分類を狙う製品(コンテナ型筐体、ラック型輸送容器、設備用モジュールなど)では、次の問いに答えられないとリスクが高まります。

  • 複数の輸送モード(道路・鉄道・船舶・航空)をまたいで使用する設計か。
  • 積載と荷下ろしのためのフィッティング(フォークリフトポケット、タイダウンポイント、キャスター、標準コーナーキャスティング等)を備えているか。
  • ドアツードア輸送と繰り返し使用を前提としていることが、仕様書と販促資料の両方で整合的に示されているか。

逆に、現場への据置使用が前提で、輸送は一回限り、輸送環境の動的荷重も想定していない設計であれば、8609以外の見出しを前提に検討した方が整合的な場合があります。
これは、BESSコンテナについて7309.00.00としたHQ H329722や、同様に鋼製バッテリー筐体を7309.00.0090としたNY N317967の方向性とも一致します。

6-2. 「車両部品」主張は、具体的規定に勝てない

車両に固定するから車両部品、という直感は、追加米国解釈規則1(c)の前では崩れやすいことが、HQ H351314で明確に示されました。
開発部門やサプライヤーが「車両向け専用品」と説明していても、分類はより具体的な品名見出しに引き寄せられる可能性があります。

通関・税務の観点からは、早い段階で次の点を確認することが重要です。

  • 製品が名称で特定される見出し(タンク、電池、変圧器、冷却装置など)に入りうるか。
  • 輸入時点で機械的装置や熱的装置を備えるのか、ポンプや制御装置を含むセットとして輸入されるのか。

HQ H351314は、ポンプが同時に輸入されない以上、タンク自体は7309の「装置を備えない容器」に該当すると判断しています。


7. バッテリーパックに直結する教訓

分類は原産地と優遇税率にも連鎖する

ここからは、HQ H351314の考え方を、バッテリーパック周辺の裁定に接続して整理します。
バッテリーパックは、分類だけでなく、原産地認定、貿易救済関税、FTA優遇の可否に直結します。

7-1. 「バッテリーパック」の分類は、まず8506か8507か

電池が一次電池か二次電池(蓄電池)かで見出しが分かれることは、NY N286124が典型例として示しています。
この裁定では、さまざまな電池セルから構成される2種類のバッテリーパックについて、非充電式モジュールは8506、充電式モジュールは8507に分類される組合せが示されており、同一の「バッテリーパック」であっても、構成と機能に応じて8506・8507の両方が適用され得ることが読み取れます。

実務では、商品名に「バッテリーパック」と付いているからといって8507と決め打ちするのは危険です。
例えば、内蔵された一次電池を充電せずに交換前提で使用する緊急用バッテリーパックが8506に分類された例など、一次・二次の切り分けが結果を大きく左右する裁定が複数存在します(個別裁定の詳細は品目ごとに確認が必要です)。

7-2. 原産地は「組立国」ではなく「セルの国」になりやすい

多くのバッテリーパックは、セルの製造国とパック組立国が異なります。
NY N329305では、セルをメキシコでパック化した製品について、分類・マーキング等の観点から、バッテリーパックの本質的特徴を与えるのはセルであるとして、原産地がセル製造国(中国またはシンガポール)と認定され得ることが示されています。

HQ H316545では、USMCA上の原産地認定では要件を満たして優遇対象となる一方、Section 301の追加関税適用を判断する原産地(実質的変更の分析)ではセルの原産国が重視され、中国原産とされる可能性があるという二層構造が示されています。
このように、セル原産国の変更が、同じ組立工程でも追加関税の対象可否を変えてしまうケースがあり得ます。

7-3. USMCAは「関税分類の変化」要件により落ちるパターンがある

NY N356710は、USMCA適用可否の観点で非常に示唆的です。
この裁定では、完成品のバッテリーパックが8507.60に分類され、使用されている中国製セル(18650)も同じく8507.60に分類されるため、USMCAで求められる関税分類変更要件を満たさず、原産品と認められないと結論づけています。

他方、HQ H316545のように、同じ見出し内での分類であっても、RVC(付加価値)ベースのルールを適用することでUSMCAの要件を満たせる場合もあります。
このように、分類は単なる通関費用の話にとどまらず、サプライチェーン設計と価格戦略そのものに直結する要素であることが分かります。


8. 実務チェックリスト:HQ H351314型の論点を社内で潰す

最後に、HQ H351314の学びを、電池関連も含めた横断チェックリストとして整理します。

  • 輸入時点の構成はどうか(ポンプや冷却装置、制御盤が輸入時に一体か、別送・後付けか)。
  • 設計思想は「固定設置」か「反復輸送」か(仕様書・マーケ資料との整合を含めて確認)。
  • フィッティングや支持構造は「輸送用」なのか「設置用」なのか(8609判定の核心)。
  • 部品分類(8708等)を主張する前に、より具体的な品名見出しが存在しないか(追加米国解釈規則1(c)の観点)。
  • 電池は充電式か一次電池か、化学系は何か(8506と8507の分岐を左右)。
  • FTA・USMCAの原産判定で、関税分類変更要件やRVC要件を満たせる構成か(NY N356710等で示される「同一分類で詰む」パターンへの注意)。
  • 裁定は特定の事実関係に基づくため、仕様やサプライチェーンが変わる場合は再評価が必要であり、Part 177に基づく裁定は原則として当該事実関係に拘束される点を理解しているか。

まとめ:HQ H351314が教える「分類は機能と設計で決まり、部品論は最後に来る」

HQ H351314は、車両に搭載される鋼製タンクであっても、輸送用コンテナ(8609)や車両部品(8708)ではなく、より具体的に規定された鋼製タンク(7309)に分類され得ることを示しました。
この裁定が示す「具体的な品名見出しが優先される」「輸送用コンテナの要件はフィッティングと運用実態にある」という考え方は、バッテリーパックやBESSコンテナの分類にもそのまま当てはまります。

さらに電池分野では、分類が原産地認定やUSMCAなどの優遇税率の可否、Section 301の追加関税の有無にも連鎖するため、開発・調達の段階から分類を前提に仕様を設計することが、コスト・リスクの両面で大きな差を生みます。
本稿は一般的な情報提供であり、個別案件に対する法的助言ではありません。具体的な案件では、製品仕様や取引条件にもとづき、通関士や通商法専門弁護士と連携しつつ、必要に応じて19 CFR Part 177に基づく事前裁定取得を検討することをおすすめします。

2026年1月21日、WCOが公表したHS2028改正


企業にとって何が「確定」したのか

2026年1月21日、世界税関機構(WCO)は、国際貿易における品目分類の共通言語であるHS(Harmonized System)の次期改正となる「HS2028」について、改正が受諾され、2028年1月1日に発効することを公表しました。wcoomd+1
この改正は299セットの変更から成り、結果として見出しは1,229、号(6桁サブヘディング)は5,852となり、HS2022と比較して見出しが6追加・5削除、号が428追加・172削除という大規模な見直しです。wcoomd+3

HSは各国の関税率表と貿易統計の基盤であり、輸出入申告、関税コスト、各種規制の適用、社内品目マスタ、販売・収益分析など幅広い領域に影響します。wcoomd+2
今回のHS2028改正は、健康危機への備え、疫病対策、環境汚染・プラスチック廃棄物、サステナビリティ関連など、政策課題との接続を一段と強める内容となっており、企業にとっては「基盤データの大型アップデート」と位置づけるべきタイミングに入ったと言えます。linkedin+3

以下では、2026年1月21日の「受諾公表」が手続き上何を意味するのかを整理したうえで、HS2028の重要な改正領域と、企業が今すぐ始めるべき実務対応を解説します。


1. 2026年1月21日に何が起きたか

なぜ今が重要なのか

WCOは2026年1月21日のニュースリリースで、HS2028改正が正式に受諾されたこと、改正パッケージが確定したこと、および2028年1月1日に発効することを公表しました。wcoomd+2
この改正パッケージは、前述のとおり299セットの変更で構成され、見出し1,229、号5,852という新たな体系を形成します。linkedin+3

WCOは別途、HSが200以上の国・地域の関税率表および貿易統計の基礎として用いられていること、そして当該改正が全世界で2028年1月1日に発効する旨を繰り返し説明しています。omnitrans+1
したがって、影響は特定国や特定業界に限定されるものではなく、多数の国・地域に生産・販売拠点を持つ多国籍企業ほど、品目マスタの変更が連鎖的に波及することになります。wcoomd+2


2. 「勧告の採択」と「改正の受諾」

HS改正が確定するまでの手続き

HS改正は、HS条約(「商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約」)にもとづき進められます。[wcoomd]​
実務上ポイントとなるのは、次の3段階です。

2-1. WCO理事会による勧告(Council Recommendation)

HS条約第16条は、WCO理事会が締約国に対して改正を勧告できる旨を定めています。[wcoomd]​
HS2028改正については、WCO文書NG0304Baの表紙に、2025年6月26日の理事会勧告に基づき受諾された改正であり、2028年1月1日に発効することが明記されています。linkedin+3
制度上の起点としては、この2025年6月26日の理事会勧告が「改正パッケージ」が形成された時点と位置付けられます。wcoomd+1

2-2. 異議申立て期間を経た「受諾」の成立

HS条約第16条第3項は、事務総長による改正の通報から6か月の間に締約国からの異議申立てが残っていなければ、その改正は受諾されたものとみなされる、と規定しています。wcoomd+1
この仕組みにより、理事会勧告後、通報から6か月間は締約国が異議を申し立てることができ、その期間経過時点で異議が残っていなければ「受諾成立」となります。ddcustomslaw+1

企業実務の観点では、改正が受諾され、条約上「確定した」時点で初めて、差分を前提とした詳細な影響分析や社内外の合意形成に進みやすくなります。wcoomd+1
2026年1月21日のWCO発表は、まさにこの「受諾が成立し、発効日に向けた実装段階に入った」ことを示す節目と言えます。freightnews+2

2-3. 発効日までの準備期間

HS条約第16条第4項は、事務総長による通報の時期に応じて、改正の発効日を、原則として通報の2年後または3年後の1月1日とする仕組みを定めています。[wcoomd]​
WCOは、HS改正には実質2年半程度の実装期間が組み込まれており、うち約半年を締約国の異議申立て期間、残り約2年を新旧対応表(コリレーションテーブル)の整備、解説書の更新、翻訳、各国法令・ITシステムの改修、通関当局と取引当事者の教育訓練などに充てるという整理を示しています。[wcoomd]​

つまり、企業側の準備に一定の時間を要することは制度設計上あらかじめ織り込まれており、「2年半のうち残り約2年」が実務上の準備期間として位置付けられていることになります。[wcoomd]​


3. HS2028の重点改正

ビジネスに直撃しやすい3領域

HS2028の特徴は、従来以上に公衆衛生や環境保護などの政策課題に直結する粒度・定義が強化されている点にあります。linkedin+3
WCOは、健康危機への備え、疫病対策、環境汚染・プラスチック廃棄物、サステナビリティなどを反映した改正であると説明しています。wcoomd+2

ここでは、企業への影響が特に大きい3領域に絞って見ていきます。

3-1. 公衆衛生と緊急対応

ワクチンと医療物資の「見える化」

HS2028では、ワクチン分類が大きく再編されます。
WCOは、従来の見出し30.02に含まれていたワクチンを再構成し、人用ワクチンを扱う見出し30.07と、それ以外(獣医用など)を含む見出し30.08に分けることを示しています。linkedin+2

また、人用ワクチンを扱う30.07の下では、疾病ごと・組合せごとに細分化された多数の6桁号が導入されることが各種解説で紹介されており、全体としてワクチン貿易の可視性を高める構造になっています。linkedin+1
これは、緊急時の優先通関や関税軽減などの措置を制度化しやすくするとともに、COVID-19で顕在化したデータ不足の課題を踏まえ、ワクチンや医療機器の供給網をより精度高く設計できるようにする意図と説明されています。wcoomd+1

医療緊急対応物資についても、救急車や移動診療所、防護用フェイスシールドやマスク、パルスオキシメータや患者モニタ、吸引ポンプ、人工呼吸器などを対象とする新たな号が追加されることが紹介されています。linkedin+2
これにより、従来は他の号に吸収され統計上把握しにくかった緊急対応関連品目が、より明確にコードとして立ち上がる方向にあります。wcoomd+1

医療機器やヘルスケア製品を扱う企業にとっては、輸出入申告だけでなく、地域別の需給見通し、緊急時の供給計画、調達契約の条件設計など、サプライチェーン全体に影響が及ぶことになります。linkedin+2

3-2. サプリメントの新設見出し

食品と医薬の境界整理

HS2028では、サプリメント(dietary supplements)向けに新見出し21.07が設けられ、その適用範囲を定める新たな法的注(Notes)が導入されます。wcoomd+3
WCOは、この改正により、食品と医薬品の境界で長年続いてきた分類上の難しさを緩和し、法的確実性と統計の質を高める狙いがあると説明しています。wcoomd+1

サプリメント市場は、健康食品としての販売に加え、原材料供給、OEM製造、越境ECなど、多様なビジネスモデルが並行しています。
分類が揺れやすい領域ほど国ごとの解釈差や通関上の不確実性が大きくなり、輸出入停止や追加資料要求などのリスクが高まりがちです。wcoomd+1
見出し21.07の新設と法的注の整備は、こうしたグレーゾーンを制度面から整理し、各国で一貫した分類を促す試みと評価できます。wcoomd+1

3-3. プラスチック汚染と廃棄物管理

バーゼル条約との整合

環境分野では、プラスチック廃棄物の分類がバーゼル条約の枠組みに合わせて再編されることが、HS2028改正の大きな柱となっています。freightnews+2
WCOは、見出し39.15を再構成し、有害なプラスチック廃棄物、事前同意手続(PIC)の対象となるプラスチック廃棄物、その他のプラスチック廃棄物を区別する新たな6桁号を導入することを明らかにしています。freightnews+1

各種解説では、新設されるサブヘディングの一例として3915.40が示され、バーゼル条約のプラスチック廃棄物区分(Y48、A3210、B3011)との対応を明確化することで、当局による越境移動のモニタリングを容易にする狙いが説明されています。basel+2
規制対象の区分(バーゼル区分)とHSコードが近づくほど、企業にはコンプライアンス対応の精緻化が求められる一方、適正な品目管理を行う企業にとっては手続きや要件が明確になり、取引コストを抑えられる余地もあります。basel+2

さらに、プラスチック製品についても、汚染と関係が深い物品の可視性向上が図られます。
WCOは、ストロー、包装材、台所用品、手袋、綿棒(プラスチック棒付き)、風船、漁網・ネット関連など、環境汚染に関連しやすい品目群について新たな号や明確化を行うと説明しています。wcoomd+2
また、プラスチック関連章では「シングルユース」の概念が法的注として導入され、単回使用のプラスチック製品について、より一貫した分類とデータ収集が可能になるとされています。wcoomd+2


4. 経営に効く論点

HS改正は関税だけの話ではない

HS条約上、締約国はHSの見出し・号とその数値コードを用いて自国の関税率表および貿易統計表を整合させる義務を負い、6桁より下の細分(国別8桁、10桁など)は各国が任意に設定できます。[wcoomd]​
したがって、国際6桁が変われば、各国の下位桁も原則として連動して見直されることになります。omnitrans+1

一方で、HSは品目分類の枠組みを定める条約であり、税率水準そのものを拘束するものではありません。
HS条約は、締約国が「関税率に関して義務を負うものではない」と明記しており、改正によって税率が自動的に変わるわけではありません。[wcoomd]​
しかし、適用税率が紐づく「号」が変更されれば、結果として実効税率が上がる・下がる可能性があるため、企業は分類変更と税率影響を切り分けて検証する必要があります。omnitrans+1

さらにHSコードは、関税だけでなく、輸出入規制、許認可、検疫・安全規制、環境規制、統計・市場分析、社内の品目マスタ・収益管理などに直接関わっています。wcoomd+2
WCO自身も、HSを貿易規制の実装と国際貿易統計の基盤と位置付けており、企業としては「税金の話」に矮小化せず、広い意味でのコンプライアンス基盤として捉えることが重要です。wcoomd+2


5. 企業が今すぐ着手すべき実務

2026年からのロードマップ

改正発効まで約2年あるとはいえ、品目数が多い企業にとっては決して長いとは言えません。
WCOは、残りの実装期間においてコリレーションテーブルの作成や解説書更新、関連ツール整備などを行うと説明しており、企業はこれらの公表タイミングと整合させて社内移行計画を設計するのが現実的です。wcoomd+2

以下では、企業が2026年時点から着手しやすい実務ステップを整理します。

5-1. 影響範囲の特定

どの部門を巻き込むかを先に決める

最初のステップとして、関税・通関部門だけでなく、調達、物流、販売、経理、法務、品質保証、サステナビリティ、IT・マスタ管理などを関係部門として明確に定義します。
HS改正は品目マスタ変更と規制対応が同時並行で進むため、部門間で情報が分断されていると、誤分類や対応漏れが重大なリスクとなります。

5-2. 品目ポートフォリオの優先順位付け

全SKUを一度に精査するのは現実的ではないため、次の観点で重要度をスコアリングし、上位群から対応を始めると効率的です。

  • 売上高・利益への寄与
  • 輸入金額・関税コスト
  • 通関件数・仕向け国数
  • 規制該当品目(医療・化学・環境関連など)
  • 過去のトラブル・問い合わせ履歴

5-3. コリレーションテーブルを前提にしたマスタ移行設計

WCOはHS2022とHS2028のコリレーションテーブルを整備する方針を示しており、HS改正ごとに同様のツールが提供されてきました。wcoomd+2
ただし、コリレーションテーブルは「自動変換ツール」ではなく、1対1で移行できるケースもあれば、統合や分割により企業側の判断が必要となるケースも含みます。[wcoomd]​

したがって、コリレーションテーブルはあくまで出発点と位置付け、最終的なコード決定は、品名・用途・材質・規格など実際の仕様情報に基づく分類レビューで行う必要があります。
この前提で、ERPや通関システム、WMS、BIなどのマスタ構造をどう移行するかを、2026年の早い段階から検討しておくことが望まれます。

5-4. 国別実装タイムラインのモニタリング

HSは国際6桁が共通基盤ですが、実際の申告は各国の関税率表・統計品目表(8桁・10桁など)で行われます。omnitrans+1
各国は、WCO改正に合わせて国内法令およびシステムを改定するプロセスを進めます。

例として米国では、USITC(米国国際貿易委員会)がHS2028改正への整合を目的としたHTS改定プロセスを開始し、2025年8月11日のニュースリリースで、2026年2月に暫定案(preliminary draft modifications)を公表して意見募集を行い、同年9月に大統領向け報告書を提出する想定を明らかにしています。usitc+1
これは、主要国で既に国別実装作業が走り始めている具体例として、海外展開企業がタイムライン設計の参考にしうる情報です。usitc+1

5-5. 重要品目では先行して当局判断を取得する

分類は一定の解釈余地を伴う領域であり、特に税率差や規制有無が大きい品目については、移行後のコードをめぐる不確実性がリスクになります。
各国の事前教示制度(Binding Tariff Information等)や相談制度を活用し、主要品目については2028年の発効前に当局判断を得ておくことで、発効直後の混乱を最小化しやすくなります。


6. 社内で今日から使えるチェックリスト

以下は、経営層と実務担当が共通で使えるチェック項目です。

A. ガバナンス

  • HS2028移行の全社責任者(オーナー)を決めたか
  • 通関・財務・IT・サステナビリティ・事業部を含む横断プロジェクト体制を整えたか
  • 分類変更・税率影響・価格改定などの意思決定フローを文書化したか

B. データとシステム

  • 品目マスタの管理主体と変更手順が明確になっているか
  • 取引先から必要な技術情報(材質・用途・規格・組成など)を収集できる仕組みがあるか
  • ERP、WMS、通関システム、BIなどでHSコード情報が一貫しているか
  • 過去統計との比較(旧HSと新HSのブリッジ)をどう設計するか方針を持っているか

C. コストとリスク

  • 主要品目について、関税率表の変更に伴うコスト影響を試算する準備ができているか
  • 輸出入規制・許認可・環境規制など、HSコード連動の法令を洗い出しているか
  • 誤分類に伴う遅延・追徴・罰則・取引停止などの影響を定量的に把握しているか

D. 外部情報のウォッチ

  • WCOが整備するコリレーションテーブルや解説書等のアップデートを定期的に確認する体制があるか。wcoomd+3
  • 主要国(例:米国のUSITC)の関税率表改定プロセスと公表スケジュールを継続的にフォローしているか。usitc+1

7. 2026年1月21日は「準備開始の合図」

2026年1月21日のWCO発表は、HS2028改正が正式に受諾され、2028年1月1日の発効に向けて各国当局および企業が本格的な移行作業に入るべき段階に到達したことを示すものです。freightnews+3
改正は299セットという大規模なものであり、ワクチンや医療緊急対応物資、サプリメント、プラスチック汚染と廃棄物管理など、政策課題に直結する領域で粒度と定義が強化されています。linkedin+5

HS改正は、通関コストの最適化とコンプライアンス強化を同時に進めるチャンスである一方、準備が遅れれば2028年初頭に申告エラーや物流停滞、統計の断絶、規制違反リスクが一気に顕在化しうるイベントです。wcoomd+2
今の段階で求められるのは、全品目の結論を出し切ることではなく、影響範囲を「見える化」し、優先順位を付け、社内外の情報収集と意思決定プロセスを先に整えることです。wcoomd+1

WCOが想定する実装期間には限りがあります。
準備を早く始めるほど、損失を抑えつつ、改正を競争優位につなげる余地を広げることができます。wcoomd+2