2028年に向けて進むHS改正(HS2028)は、通関部門だけの話ではありません。関税コスト、原産地管理(EPA・FTA)、輸出入規制、商品マスタ、売上集計、価格改定、契約条件まで、企業の意思決定の前提データをまとめて揺らします。
今回の記事では、主要国の8桁(各国の拡張桁を含む実務上のコード)に関して、どこまで情報が公表プロセスに入っているかを、2026年1月16〜20日の公開情報点検という前提で整理し、経営・事業サイドが取るべき実務アクションまで落とし込みます。

まず前提整理:HS2028はいつ何が起きるのか
世界税関機構(WCO)の枠組みで、HSは国際標準として6桁までが共通です。HS2028はその6桁体系の改正で、各国は自国の関税率表・統計分類をそれに合わせて改訂していきます。WCOの発表では、HS2028改正案は2025年末に正式採択され、2026年1月に公表、2028年1月1日に発効する流れが示されています。 (World Customs Organization)
ここで重要なのは、企業実務で普段使っているのは6桁だけではないという点です。多くの国は6桁の上に、国内事情に合わせた桁(8桁、9桁、10桁など)を積んで運用します。つまり、HS2028の6桁改正は、その上に載る国内拡張桁の組み替えを引き起こします。
8桁公表状況とは何を指すのか
ここでいう「8桁公表状況」は、単に「WCOの6桁改正が出たか」ではなく、次のような段階を含めて実務的に捉えるのが有効です。
- 段階1:WCOのHS2028(6桁改正)の公表
- 段階2:各国当局が、自国の拡張体系(8桁や10桁など)へ落とすための国内プロセスを開始
- 段階3:当局がドラフト(案)を公開し、意見募集や事前周知を開始
- 段階4:法令・官報・公定データベースとして確定版を公表
- 段階5:通関システム、申告様式、統計、FTA運用などへ実装し、適用開始
企業にとって痛いのは、段階4や5で初めて慌てることです。データ更新やシステム改修は時間がかかり、品目数が多いほど遅れが致命傷になります。だからこそ、段階2や3が見えた時点で社内の準備を始めるのが勝ち筋です。
主要国の8桁周辺の制度と、HS2028に向けた公表状況(点検期間:2026年1月16〜20日)
以下は、各国の「桁の考え方」と「公表プロセスの見え方」を、一次情報を中心にまとめたものです。国によって“8桁”の意味合いが異なるので、そこも含めて比較します。
米国:8桁と10桁が実務の中心、2026年2月にドラフト公開予定という具体的マイルストーンがある
米国のHTS(Harmonized Tariff Schedule)は、国際HS(4桁、6桁)に加え、米国独自の8桁・10桁の区分を持ちます。USITC(米国国際貿易委員会)も、国際HSは4桁・6桁、米国独自部分が8桁・10桁である旨を説明しています。 (usitc.gov)
HS2028対応に関しては、USITCが改正反映プロセスを開始しており、2026年2月に暫定ドラフト(HTS改訂案)を公表して意見募集、その後2026年9月に大統領向け報告を提出する見通しが公式に示されています。 (usitc.gov)
ビジネス的に重要なポイントはここです。
主要国の中で、ドラフト公開の時期がここまで明確に読める国は多くありません。米国向け売上が大きい企業ほど、2026年2月のドラフトを「分類番号の更新イベント」ではなく、「関税と規制の再設計イベント」として扱う必要があります。
実務アクションの例
- 米国売上上位品目、対米調達上位品目を棚卸しし、現行HTSの8〜10桁でリスト化
- 2026年2月のドラフト公開時に、該当品目が分割・統合・移動していないかを即時確認
- 影響が大きい品目は、社内分類根拠(なぜその番号なのか)を説明可能にしておく
EU:8桁はCN(Combined Nomenclature)。毎年更新され官報で公表される仕組みが明確
EUの8桁はCN(Combined Nomenclature)で、国際HS(6桁)にEU独自の2桁を加えた8桁体系です。CNは関税率の決定や統計に使われ、毎年更新され、官報(EU Official Journal)で公表される仕組みになっています。 (EU Trade)
直近の例として、EUは2026年適用のCNを2025年10月31日に公表し、2026年1月1日から適用する旨を欧州委員会が案内しています。 (Taxation and Customs Union)
HS2028に向けた意味合いは次の通りです。
- EUでは、8桁(CN)が実務上の基準であり、更新と公表が毎年必ず回る
- HS2028の6桁変更は、CNの年次改訂の中で反映されていく可能性が高い
- 企業側は「次のCN改訂で何が変わるか」を継続監視し、品目マスタや価格テーブルに反映する運用が必要
実務アクションの例
- EU向けの主要品目について、現行CNと社内品目マスタを必ず一致させる
- CN改訂のたびに、統計・関税・規制(対象品目指定)に波及がないかを点検する
日本:実務は9桁(統計品目番号)。6桁HS+国内3桁という構造が明確で、改正時はマッピングが鍵
日本の通関実務では、9桁の統計品目番号が基本です。日本税関は、9桁の統計品目番号が6桁HS+国内3桁で構成されることを明示しています。 (Japan Customs)
また、日本税関は「Japan’s Tariff Schedule」として、改訂版を日付付きで公表しています(2026年1月1日版が掲載されていることが確認できます)。 (Japan Customs)
HS2028に向けて日本企業が注意すべき点は、6桁変更に連動して9桁の国内3桁が見直され、過去データの継続性が崩れるリスクがあることです。
輸入の関税計算、EPA適用、調達コスト配賦、品目別採算などで「前年同一品目の比較」が効かなくなりやすい局面です。
実務アクションの例
- 主要品目について、9桁をただの番号としてではなく、分類根拠とセットで管理する
- HS改正に備え、現行9桁→将来体系への対照表(マッピング)を前提にしたデータ設計へ切り替える
中国:8桁ベースの国内細分が公式に示されており、6桁変更の影響は8桁再編に直結する
中国税関の公開資料では、HSに基づく中国の分類(CCCS)について、8桁の細分があり、最初の6桁はHSに対応し、7桁目と8桁目が国内細分である旨が説明されています。 (Customs.gov.cn)
また、ジェトロの整理では、中国の税則の品目総数について、HSコード8桁分類ベースでの言及があります(特定年版の税則に基づく説明)。 (JETRO)
HS2028の観点では、WCOの6桁が動けば、中国の7〜8桁(国内細分)も、分類ロジックの再整理を迫られる可能性が高いということです。特に中国は規制・許認可・監督条件が品目に紐づくケースが多いため、番号変更は通関可否や必要書類に波及し得ます。
実務アクションの例
- 中国向け主要品目について、該当する規制や必要書類がHSに紐づいていないかを先に棚卸し
- 取引先(輸入者)と、どの番号を使うかの合意形成と証憑整備を早めに開始
韓国:10桁体系。6桁HSを超える国内拡張が明確で、HS改正時は10桁の組み替えが発生する
韓国税関(Korea Customs Service)は、韓国が10桁コードを使用し、6桁HSは世界共通で、各国が6桁以降を独自に拡張する旨を明示しています。 (customs.go.kr)
HS2028に向けては、韓国の10桁体系のうち、影響が出るのは「国内拡張部分だけ」とは限りません。6桁の構造が変われば、その下に積まれた10桁全体の再編が起き得ます。
実務アクションの例
- 韓国向けの主要品目について、現行10桁を輸入者と突合し、品名と仕様が一致する状態を作る
- FTAの運用が絡む場合、品目別規則がどの桁を参照しているかを確認し、改正時の影響を事前に試算する
英国:コードは最長10桁。ただし関税は8桁を基礎にする場面が多く、9〜10桁が追加条件を左右する
英国政府のガイダンスでは、英国の申告で用いるcommodity codeは最長10桁になり得ると説明されています。 (Business Growth Service)
さらに、関税率は多くの場合最初の8桁で設定される一方で、9桁目と10桁目が関税や適用措置に影響することがある、と明記されています。 (GOV.UK)
これは、8桁だけを見て「だいたい合っている」と判断すると、措置や税率の取りこぼしが起きることを意味します。HS2028で6桁が動くと、英国の8桁と10桁は連鎖的に更新対象になります。
実務アクションの例
- 英国向けは、8桁で一次判定しつつ、最終的な適用措置まで含めて10桁で確定する運用へ
- サンクション、規制、セーフガード等の対象品目は、10桁までの一致を前提に管理する
まとめ表:主要国の「桁」と「公表プロセスの見え方」
| 地域・国 | 実務で中心になる桁 | 公式に確認できるポイント | HS2028に向けて今見えるマイルストーン |
|---|---|---|---|
| WCO(国際) | 6桁 | 2026年1月公表、2028年1月1日発効の流れ (World Customs Organization) | まず6桁改正の確定内容を把握することが全ての起点 |
| 米国 | 8桁・10桁 | 8桁と10桁は米国独自 (usitc.gov) | 2026年2月ドラフト、2026年9月報告 (usitc.gov) |
| EU | 8桁(CN) | CNは8桁で毎年更新、官報公表 (EU Trade) | 年次改訂の枠でHS2028反映が進む可能性が高い |
| 日本 | 9桁 | 9桁=6桁HS+国内3桁 (Japan Customs) | 将来の対照表(マッピング)前提のデータ設計が重要 |
| 中国 | 8桁(国内細分) | 8桁細分で、最初の6桁がHS、7〜8桁が国内 (Customs.gov.cn) | 6桁改正は8桁再編に直結しやすい |
| 韓国 | 10桁 | 韓国は10桁を使用 (customs.go.kr) | 6桁変更に伴い10桁の組み替えが発生し得る |
| 英国 | 最長10桁(関税は8桁基礎が多い) | 9〜10桁が措置や税額に影響する場合あり (GOV.UK) | 8桁だけの管理で止めず、10桁確定まで運用設計 |
経営・事業サイドが今やるべきこと:通関の話を「経営課題」に変える手順
ここからが本題です。HS改正対応は、突き詰めると「社内の型」を作る仕事です。大きく外さないために、次の順番で着手するのが現実的です。
1) 影響範囲を「品目」ではなく「売上と原価」で切る
- 売上上位、粗利上位、調達額上位の品目から着手する
- 国別に、どの桁で申告しているか(EUならCN、米国ならHTSなど)を揃える
2) 二層管理に切り替える
- 国際6桁:全世界で共通の骨格として管理
- 国別拡張(8〜10桁):国ごとの申告・税率・規制の確定値として管理
この二層を混ぜると、改正時に詰みます。特に「海外拠点が現地コードで管理している」「本社は6桁しか持っていない」といった分断は、改正局面でデータ整合が崩壊しやすい典型パターンです。
3) 取引先との合意を先に作る
- 輸入者側が最終判断権を持つ国が多い
- 自社だけで番号を決めたつもりでも、相手国税関で止まると意味がない
結論:2026年は「公表を待つ年」ではなく「仕組みを作る年」
2026年1月16〜20日の時点で見える構図はシンプルです。
- HS2028は、2026年1月公表、2028年1月1日発効という国際スケジュールが明確 (World Customs Organization)
- 各国の実務コードは、6桁の上に国内拡張(8〜10桁)があり、国ごとに桁も運用も異なる (EU Trade)
- 米国は2026年2月にドラフト公開予定という具体的な山場がある (usitc.gov)
- EUや日本は、年次改訂と公表の仕組みが制度として確立しているので、改正局面では「改訂情報の取り込み運用」が勝負になる (Taxation and Customs Union)
HS2028対応で差がつくのは、情報収集の速さよりも、社内データと業務運用の型を先に作れるかどうかです。
次に何が出たら動くのか、そのトリガー(米国なら2026年2月、EUなら次のCN改訂情報、日本なら改訂版の公表と対照表など)を決め、監視と更新をルーチン化してください。
必要であれば、この枠組みをそのまま社内向けの「HS2028対応ロードマップ(部門別タスク、マスタ設計、監視頻度、改正時の意思決定フロー)」に落とし込んだ雛形も、文章として作れます。
FTAでAIを活用する:株式会社ロジスティック
