AANZFTA改訂をビジネスで使い切るネガティブリスト導入と原産地規則アップデートの実務ポイント

第1章 AANZFTAアップグレードの全体像

AANZFTA第2議定書(Upgrade)は、2023年8月に署名され、2025年4月21日に効力を発生しました。cil.nus
もっとも、「全締約国一斉」ではなく、批准を終えた国同士の取引から順次新ルールが適用されるため、旧ルールとの二重運用期間がしばらく続きます。dfat+1

現時点で、豪州、ニュージーランド、ブルネイ、ラオス、マレーシア、シンガポール、ベトナムなどでアップグレード発効済みと整理されており、タイなどは指定日から順次加わる形です。businesschamberqld+1
さらに、累積等の一部規定については、国ごとに適用除外や遅行適用が通知されているため、「国名だけ」で判断せず、実際の取引相手同士で第二議定書が発効しているか、関連条文がフル適用かどうかまで確認する必要があります。customs+1

日本はAANZFTAの当事国ではありませんが、ASEAN・豪州・NZに拠点を持ち、現地法人から域内輸出・サービス提供・投資を行う日系企業にとって、今回のアップグレードはコストとリスクに直結します。mfat+1
本社側の投資判断やサプライチェーン設計でも、「どの組み合わせに新ルールが乗るか」を押さえているかどうかで、意思決定の質に差が出ます。mfat

第2章 ネガティブリスト導入をどうビジネスで使うか

1 ネガティブリスト化の中身

サービス貿易の約束方法には、大きくポジティブリストとネガティブリストの二つがあります。oia.pmc+1

  • ポジティブリスト方式
    開放する分野だけを列挙するため、「書いていない分野」は読み替え・行政解釈に依存しやすく、外資から見ると不透明さが残りがちです。regulation
  • ネガティブリスト方式
    原則として全分野を開放したうえで、例外的に残す制限を「留保」としてリスト化する方式で、どの規制が残るかを一覧で把握しやすくなります。aph+1

アップグレードAANZFTAでは、サービス分野の市場アクセスについてネガティブリスト方式を導入し、従来ポジティブリストだった当事国はネガティブリストへ移行することが義務付けられています。oia.pmc+1
投資分野についても、全ての当事国がネガティブリストでコミットメントをスケジュールする形に整理され、方式の統一と透明性の向上が意図されています。oia.pmc+1

さらに、アップグレード協定には、将来の一方的な自由化を一定範囲で固定化するラチェットメカニズムや、MFN条項の強化・整合など、サービス・投資の制度アーキテクチャを近年のメガFTA水準に近づける要素が組み込まれています。mfat+1

2 ビジネス側から見たネガティブリストの価値

ネガティブリストの最大の価値は、「どこまで自由化されるか」よりも、「どこに制限が残るか」が具体的に見えることです。aph+1
進出形態や案件ごとの採算検証で、次のような問いに対して、条文・留保ベースで答えを出せるようになります。

  • 業種・サブセクターごとに、外資規制・出資比率制限・合弁義務が残るかどうか
  • 支店設置か現地法人か、少数持分か完全子会社かなど、参入形態ごとの規制の違い
  • 役員・幹部の国籍・居住要件、プロフェッショナル資格要件といった人材面のハードル
  • ライセンス・認可・登録などの事前規制がどの程度残っているか

ASEANは同じASEANといっても、各国で規制の癖・行政運用が大きく異なります。aanzfta.asean+1
ネガティブリストは、現調チームや法務だけでなく、事業部・投資審査会議が「国・業種・形態」の組み合わせごとにリスクを瞬時に比較できるようにすることで、新規案件のGo/No-go判断をスピードアップさせます。aph+1

3 ラチェット条項の現実的な使い方

アップグレードでは、選択されたセクターについて、将来の一方的な規制緩和を固定化するラチェットメカニズムが導入されました。oia.pmc+1
これは、ある国がサービス・投資規制を自主的に緩めた場合、原則としてその緩和水準を協定コミットメントとしてロックインし、後戻りしにくくする枠組みです。oia.pmc

ただし、ラチェットは万能ではありません。対象分野・対象措置は留保のつくり方に左右され、あらゆる規制緩和が自動的にロックインされるわけではありません。mfat
経営サイドにありがちな「ネガティブリスト+ラチェット=全面的な自由化加速」という期待は危険で、実務としては次が現実的な対応になります。

  • 留保表を読み、ラチェットがかかる領域と、なお裁量的規制余地が残る領域を切り分ける
  • 各国で実際に規制が変わった際に、即座にビジネスモデル・価格設定・出資構造へ反映できるインテリジェンス体制を用意する
  • M&AやJV、長期サービス契約では、「規制変更時の価格調整・再協議・解除」条項を入れておき、ラチェットを見越したオプションを契約レベルで確保する

これにより、規制緩和が起きたタイミングで、競合より早く参入モデルや出資比率を引き上げることができ、ラチェットを「攻めの要素」として活用できます。aph+1

第3章 原産地規則アップデートの核心

1 アップグレード原産地規則の全体像

原産地規則は、AANZFTAの関税メリットを取るかどうかを決める「収益スイッチ」であり、アップグレードではこのスイッチの構造自体がアップデートされています。dfat+1
ニュージーランドのナショナルインタレスト分析などによれば、原産地規則章には新規条文・改正条文が多数追加され、品目別原産地規則(PSR)は数百件規模で見直されています。mfat

ABFのカスタムズノーティスによると、2024年3月1日からAANZFTAのPSRはHS2022の品目分類に基づく新バージョンが導入されており、これはFTA合同委員会が2023年5月にHS2022のPSR付属書を承認したことを受けたものです。abf
同時に、累積、直送・経由規定、原産地証明の方法、輸入後の還付請求手続きなど、運用面の改善もパッケージで導入されています。miti+1

実務的に効くポイントは、おおよそ次の五点に整理できます。

  • 完全累積の導入・拡張により、域内各国を組み合わせたサプライチェーン設計がしやすくなること
  • 直送・経由に関する規定・証憑要件が明確化され、ハブ経由輸送の不確実性が減ること
  • 証明書ベース一択から、自己証明・電子原産地証明など複数の証明方法が併存すること
  • 輸入後の原産確認に基づく還付請求が可能になり、ポストクリアランスでメリットを取り返しやすくなること
  • PSRがHS2022に整合し、HS変更に伴う「分類のズレ」やPSR適用ミスを減らす設計になっていること

2 完全累積が変えるサプライチェーン設計

累積とは、協定域内で行われた加工や使用された原材料を「一つの原産性判断」の中に足し込める仕組みで、原産品として扱える範囲を広げる道具です。miti+1
AANZFTAアップグレードでは、域内各国の材料・加工・付加価値を広く累積できる完全累積に近い形が導入され、どの累積条項を適用するかは当事国ごとの参加状況・留保によって左右されます。mfat+1

例えば、部材をマレーシアで調達し、ベトナムで主要加工を行い、シンガポール拠点を経由して豪州へ輸出するような分業型サプライチェーンでは、累積を正しく使えば原産地判定が格段に取りやすくなります。miti
一方で、どの国間で第二議定書が発効しているか、累積条項がその組み合わせに適用されるかを誤解すると、「原産性を満たしているつもりで証明書を出したが、実際には要件未達だった」という事故が起き得ます。mfat+1

ここは、社内で次のような整備をしておくと事故率が大きく下がります。

  • 主要取引国の組み合わせごとに、「第二議定書発効状況」と「累積条項の適用可否」を図示したマトリクスを作る
  • 累積前提で組んだBOM・原価計算に、国別の参加状況が変わった場合のアラートを組み込む
  • 調達・SCM・通関チームで同じ累積の前提を共有し、バラバラの解釈で証明・申告をしないようにする

3 直送要件の実務的なクリアの仕方

原産地規則でトラブルになりやすいのが、第三国経由時の「直送要件」の解釈です。mfat
アップグレードでは、直送・経由・積み替えに関する規定・証憑要件が明確化され、保税倉庫での限定的な作業など、許容される範囲を明記する方向で整理されています。abf+1

実務では、次のような対策が効果的です。

  • よく使う物流ルートごとに、直送要件を満たすために必要な書類(B/L、倉庫証明、インボイス、在庫管理記録など)を標準セットとして定義しておく
  • フォワーダー・3PLとの契約・SOPに、「原産性維持に必要な書類・情報の取得」を明示的に組み込み、単なる輸送委託で終わらせない
  • 保税区域で行う可能性のある作業(検品、ラベリング、再梱包など)を棚卸しして、どこまでが「許容される加工」かを規定と突き合わせ、作業指示書に落とし込む

こうしておくと、ハブ港変更や緊急の振替輸送が発生しても、原産性が崩れない範囲で運用でき、後から「直送要件を満たしていない」と否認されるリスクを抑えられます。abf+1

4 証明方法のアップデートとコンプライアンス

豪州政府の案内によれば、アップグレード後も従来型の原産地証明書は維持されつつ、自社による原産地自己申告や電子的な原産地証明の利用余地が拡大します。abf+1
また、第三者インボイスが用いられる場合の取り扱いについても、「合理的な範囲の情報提供」で足りるとするなど、書類作成の摩擦を下げる方向性が示されています。dfat+1

自己証明は、発行コストやリードタイムを削減できる一方、誤りがあった際の責任が企業側に直接跳ね返りやすいという特徴があります。mfat
したがって、営業現場が「楽だから全部自己証明に切り替える」と走るのではなく、次のような線引きが現実的です。

  • 自己証明を使う品目と、引き続き第三者発行の証明書を使う品目を分ける
  • 自己証明を行う品目については、BOM・原価計算・原産性ロジックを内部監査可能な形で固定し、改ざん防止・変更管理のルールを整える
  • 輸入側で税関事後調査が入った場合を見据え、原産性判断の根拠書類を一定期間保管するレコードキーピングルールを更新する

これにより、「関税メリットは取れたが、後から否認されて追徴とペナルティ」という最悪のパターンを避けながら、証明コストの削減を利益に変えられます。abf+1

5 PSRとHS2022:分類ミスをどう防ぐか

ABFの通達によれば、AANZFTAのPSRは2024年3月1日以降、HS2022に基づくコードに再構成されており、一定期間は旧HS2017表記の原産地証明も受け入れる経過措置が設けられています。ftalliance+1
ASEAN側の告知でも、AANZFTAのPSRをHS2022で検索できるオンラインツールが提供されており、実務者はHS2022コードから直接PSRを引けるようになっています。aanzfta.asean+1

落とし穴は、HSの移行が「単なるコードの言い換え」ではない点です。abf

  • サブヘディングの分割・統合により、適用されるPSRそのものが変わる
  • 旧HSベースの証明書と、新HSベースの輸入申告のコードが整合しない
  • 社内システム・BOMが旧HS前提のまま残り、原産性判定ロジックが実態とズレる

これを避けるためには、「全品目一斉」ではなく、収益インパクトの大きい順に重点的に対応するのが現実的です。

  • 主力輸出入品目から順にHS2022への再分類を行い、それに応じてPSRを引き直す
  • コード変更があった品目は、原産性判定を再実行し、必要なら原材料構成や生産プロセスを見直す
  • サプライヤーに対して、HS表記の統一と、HS2022ベースの原産地証明・自己申告フォーマットへの移行を要請する

こうした「上から順に潰す」やり方であれば、リソースを極端に増やさずに通関トラブルを抑えつつ、PSRの更新を利益に結び付けられます。aanzfta.asean+1

第4章 経営と現場が今すぐやるべきチェック

ここからは、「明日から何をするか」という観点で、サービス・投資とモノ(原産地・通関)に分けて整理します。

A サービス・投資(ネガティブリスト側)

  • 自社の提供サービスを棚卸しし、まず売上比重の高い分野について、相手国の留保表を読みにいく
  • 進出形態(支店・現法・JV・フランチャイズ・委託)ごとに、出資規制・人の移動規制・ライセンス要件を分解して把握する
  • 規制変更があった場合、ラチェットが効く領域かどうかを法務・経営企画が判定できる体制を整え、事業部に通知するフローを決める
  • 長期契約には、規制変更時の再協議・価格調整・解除に関する条項を標準化し、投資先国ごとのリスクプロファイルに応じて微修正する

ネガティブリストは、「読めば武器、読まなければ何も起きない」ツールです。aanzfta.asean+1
結局のところ、留保表を読める体制と、読んだ内容を案件に落とし込む運用があるかどうかが、競争力の差になります。mfat

B モノ・サプライチェーン(原産地側)

  • 主力品目からHS2022整合を進め、PSRを再確認する(ABFノーティス・各国通達・PSR Finderをセットで参照)aanzfta.asean+1
  • 累積の適用関係を、主要取引国の組み合わせごとに図示し、営業・SCM・通関が共通の前提で動けるようにするmiti
  • 物流ルートごとに、直送要件を満たす証憑セット(B/L、倉庫証明、在庫記録など)を標準化し、フォワーダーとの契約に組み込むabf
  • 自己証明を導入する場合、BOM・原価計算・証憑保管ルールを先に整え、対象品目を限定しながら段階的に広げるmfat
  • 未批准国が絡む取引については、旧AANZFTAルールまたは他FTA(RCEPなど)運用が残る前提で手順を二重化し、「どの契約にどのルールを使うか」を明示するdfat+1

特に最後の「二重運用」は、2025年以降しばらく現場負荷の中心になり得ます。customs+1
国内システムや業務マニュアルで「AANZFTA=一つのルール」という前提が残ったままだと、誤適用や見落としが起きやすいため、「相手国別に旧・新ルールを自動判別するフラグ」を持たせるなど、設計レベルの見直しが有効です。

第5章 よくある誤解と失敗パターン

  • 誤解1 発効したから全締約国で新ルールが一斉適用される
    実際には、批准を完了した国同士の取引で順次適用され、未批准国が絡む取引では旧ルールが残ります。customs+1
  • 誤解2 ネガティブリスト化=即座に全分野が自由化
    ネガティブリストは制限を見える化する仕組みであり、自由化の範囲は留保次第です。ラチェットも対象分野に限られ、万能ではありません。oia.pmc+1
  • 誤解3 HS更新はコード表示を変えるだけ
    実際にはPSRの内容や適用関係、社内システムの判定ロジックまで波及し、経過措置期間中は旧HSと新HSが混在するため、整合設計をしないと通関トラブルの温床になります。miti+1

まとめと実務メッセージ

AANZFTAアップグレードは、サービス・投資ではネガティブリストとラチェットにより透明性と将来の自由化期待を高め、モノでは累積・直送・証明方法・PSR更新によって現代的なサプライチェーンに合わせた枠組みに近づけるものです。oia.pmc+1
ただし、企業にとっての実益は自動的には降ってこず、「どの取引に新ルールが乗るのか」「留保表とPSR・HSをどう読み替えるか」を社内で設計し直すことが必要です。mfat+1

やるべきことを一言でまとめると、次の三つです。

  • どの国同士の取引に第二議定書が適用されるか、社内で一覧化する
  • サービス・投資では、主要ビジネス分野について留保表を読み、ラチェットを含めた規制プロファイルを整理する
  • モノでは、HS2022整合・PSR再判定・累積と直送要件・証明方法を前提に、原産性判定ロジックと証憑運用を再設計する

これができれば、AANZFTAは「知っている条文」から「利益とリスクをコントロールする仕組み」に変わり、ASEAN・豪州・NZをまたぐビジネスにおいて、他社より一歩先のポジションを取ることが可能になります。abf+1

本稿は一般的な情報提供であり、個別案件への法的助言ではありません。具体的な適用にあたっては、取引国の最新運用や税関実務、社内の証憑状況を踏まえ、必要に応じて現地専門家への確認を行うことを推奨します。mfat+1

  1. https://www.dfat.gov.au/trade/agreements/in-force/aanzfta/asean-australia-new-zealand-free-trade-agreement
  2. https://www.mfat.govt.nz/jp/trade/free-trade-agreements/free-trade-agreements-in-force/asean-australia-new-zealand-free-trade-agreement-aanzfta/upgrading-aanzfta
  3. https://www.abf.gov.au/help-and-support-subsite/CustomsNotices/2024-07.pdf
  4. https://cil.nus.edu.sg/databasecil/2023-second-protocol-to-amend-the-agreement-establishing-the-asean-australia-new-zealand-free-trade-area/
  5. https://www.dfat.gov.au/news/aanzfta-upgrade-enters-force
  6. https://businesschamberqld.com.au/article/new-rules-for-exporters-brunei-lao-pdr-malaysia-singapore-australia-and-new-zealand/
  7. https://www.customs.govt.nz/customs-information-and-legislation/legislation/international-agreements/free-trade-agreements/asean-australia-new-zealand-free-trade-area-agreement-aanzfta
  8. https://www.mfat.govt.nz/assets/Trade-agreements/AANZFTA/AANZFTA-upgrade-National-Interest-Analysis.pdf
  9. https://oia.pmc.gov.au/sites/default/files/posts/2023/08/AANZFTA%20Impact%20Analysis.docx
  10. https://www.regulation.govt.nz/assets/RIS-Documents/ris-mfat-asean-mar09.pdf
  11. https://www.aph.gov.au/-/media/02_Parliamentary_Business/24_Committees/244_Joint_Committees/JSCT/2023/Second_Protocol_ASEAN_NZ_FTA/1_AANZFTANational_Interest_Analysis.pdf
  12. https://aanzfta.asean.org/aanzfta-sector-portals/trade-in-services-sector
  13. https://www.dfat.gov.au/trade/agreements/in-force/aanzfta/official-documents/official-documents
  14. https://www.miti.gov.my/miti/resources/Preferential%20Certificate%20of%20Origin/Announcement/Announcement_-_AANZFTA_PSR_in_HS_2022.pdf
  15. https://www.abf.gov.au/importing-exporting-and-manufacturing/fta/free-trade-agreements/asean
  16. http://www.ftalliance.com.au/newsdetails/31261
  17. https://aanzfta.asean.org/product-specific-rules-finder/
  18. https://www.aseanbriefing.com/news/what-the-aanzfta-second-protocol-means-for-asean-trade/
  19. https://vntr.moit.gov.vn/news/viet-nam-thailand-and-the-philippines-to-implement-the-obligations-of-transposing-services-schedules?page=21
  20. https://indonesia.embassy.gov.au/jakt/MR25_022.html

【2025年末版】日本のFTA/EPA交渉「最新マップ」── 激動の中東・南アジア、企業が備えるべき実務の急所


最終更新:2025年12月20日

日本のEPA/FTA(経済連携協定/自由貿易協定)交渉は、現在「数より質」のフェーズにあります。足元では**「中東(UAE・GCC)」「南アジア(バングラデシュ)」**が急速に進展する一方、停滞・中断している案件との二極化が鮮明になっています。

2025年1月時点のデータでは、日本の貿易額に占めるEPA発効・署名済みの割合は**78.8%ですが、現在交渉中の案件を含めると87.1%**に達します。この「残り約8%の空白」をどう埋め、ビジネスチャンスに変えるかが、今後の通商戦略の鍵となります。


1. 交渉中FTA/EPA 最新ステータス一覧

現在動いている交渉案件を、実務レベルの進捗状況と注目ポイントで整理しました。

区分相手国・地域直近の動き(2025年)進捗評価企業の注目ポイント
中東UAE第6回交渉(12月:ドバイ)加速中物品関税に加え「デジタル・持続可能な開発」等、新領域のルール化に注目。
中東GCC第2回交渉(6-7月:東京)前進中湾岸6カ国への一括アクセス。原産地規則(ROO)や投資、知財のパッケージ化。
南アジアバングラデシュ第7回交渉(9月:東京)着実「ポストLDC脱却」を見据えた重要拠点。サービス、投資、電子商取引の基盤整備。
北東アジア日中韓経済対話にて継続確認不透明政治情勢に左右されやすい。実務上は「RCEP」の上積みが焦点。
中東・欧州トルコ会合ブランク継続長期停滞欧州・アフリカへのゲートウェイだが、再始動の兆しを待機する段階。
中南米コロンビア会合ブランク継続長期停滞資源・農業分野で期待されるが、再開シグナルの監視が必要。

2. 重点エリアの分析:なぜ今「中東・南アジア」なのか

① 中東(UAE・GCC):エネルギーから「デジタル・ルール」の時代へ

UAEとの交渉は、2024年9月の開始からわずか1年強で第6回に到達するという、異例のスピードで進んでいます。

  • 実務インパクト:
    • 非関税障壁の撤廃: デジタル貿易章の導入により、データ移転の透明性や電子署名の法的有効性が確保される見通しです。
    • サプライチェーンの再構築: 「原産地規則(ROO)」の合意内容次第で、中東をハブとした物流・製造戦略の再考が求められます。

② 南アジア(バングラデシュ):次なる製造・消費の拠点

2024年3月の開始以降、着実に回数を重ねており、実効性の高い「積み上げ型」の交渉が続いています。

  • 実務インパクト:
    • LDC(後発開発途上国)卒業への備え: バングラデシュのLDC脱却に伴う特恵関税の失効を、EPAによってソフトランディングさせることが至上命題です。

3. 「停滞・中断」案件への現実的な対応

「交渉中」とされていても、実態として動きが止まっている案件については、代替枠組みの活用を優先すべきです。

  • トルコ・コロンビア(長期停滞): 自社の関心品目について、相手国の既存のFTA網(EU-トルコ関税同盟など)を調査し、第三国経由の可能性を含めたシミュレーションに留めるのが現実的です。
  • 韓国・カナダ(中断):
    • 韓国: すでに発効しているRCEPを最大限活用し、RCEPでカバーされない個別品目のみを注視。
    • カナダ: **CPTPP(TTP11)**という強力な枠組みが既に存在するため、個別EPAの優先順位は低いと判断して差し支えありません。

4. 企業が「今」着手すべき5つの準備アクション

交渉が合意に達してから動くのでは出遅れます。企業は以下の「先行準備」を推奨します。

  1. 貿易データの棚卸し: 自社の取引を「国 × 品目(HSコード) × 金額」で整理し、交渉先との合致度を特定する。
  2. 原産地証明のシミュレーション: 主要製品のBOM(部品構成表)を基に、推定される原産地規則を満たせるか事前判定を行う。
  3. 契約条項の先行設計: 今後の契約において「特恵関税によるメリットの還元(Benefit Sharing)」に関する条項を検討しておく。
  4. デジタル・サステナ対応: UAE交渉などで議題となっている「データ移転」や「環境基準」が、自社のコンプライアンス体制に与える影響を精査する。
  5. 定点観測のルーチン化: 外務省の報道発表を四半期ごとにチェックし、「議題の追加(政府調達など)」を経営リスク・機会のシグナルとして捉える。

結論

2025年末の通商地図は、**「動いている中東・南アジア」と「既存枠組みで代替すべき停滞案件」**に二分されました。企業は、締結後の「関税ゼロ」という結果だけでなく、その過程で議論される「デジタル・投資ルール」を先読みし、HSコードと原産地データの基盤を整えることが、最短で利益を享受するための王道です。


日UAE EPA(CEPA)交渉・第5回会合の「結果」と、ビジネス側が見るべき「次の節目」

(※本稿は公表情報をもとに、交渉論点をビジネス視点で“使える形”に落とし込んだ整理です。交渉テキストや市場アクセスの中身は原則非公開のため、確定情報と見立てを分けて記載します。)


1. 第5回交渉会合で何が起きたのか(確定情報)

外務省の発表によると、日UAE EPA(日本側呼称)交渉の第5回会合は2025年11月4日〜28日にオンライン形式で開催され、両国の首席交渉官(日本側:髙橋克彦大使/UAE側:ジュマ・アルカイト経済省次官補)らが参加しました。

この会合で議論が明示された分野は以下です。

  • 物品貿易
  • 原産地規則
  • サービス貿易
  • 競争政策
  • 政府調達
  • 知的財産
  • 今後の交渉の取り進め方(モダリティ)

そして、次回(第6回)会合の日程は外交ルートで調整することになっています。

ここがポイント:
第5回の公式記述で「政府調達」が入ってきたのは、ビジネス観点ではかなり大きい。関税だけでなく、“ルール・運用”の深部に踏み込む段階に入りつつあるサインと見てよいです。


2. 交渉はいま「どの地点」にいるのか:時系列で見る“進捗感”

日UAE EPA交渉は、2024年9月に交渉開始が決定(MOFA/経産省が同時発表)されました。
その後、会合は以下のペースで進んでいます(公表ベース)。

  • 第1回:2024年11月(東京)
  • 第2回:2025年2月(ドバイ)
  • 第3回:2025年6月(東京)
  • 第4回:2025年8月(オンライン)
  • 第5回:2025年11月(オンライン)

各回の概要を見ると、初期は「物品」「原産地」「サービス」「投資」「税関・貿易円滑化」「知財」など“定番の骨格”を並行で詰め、第3回でデジタル貿易第4回で貿易と持続可能な開発第5回で政府調達というように、章立てが広がっているのが読み取れます。

加えて、日本の外交青書でも、UAEを「エネルギー安全保障上重要な戦略的パートナー」と位置づけたうえで、日UAE EPA交渉開始と第1回開催に言及しています。


3. “論点の深掘り”①:物品貿易は「関税率」より“競争条件の差”が効く

日本企業にとっての現実的インパクト

ジェトロによれば、2023年の日本の対UAE輸出は約1兆4,661億円で主力は輸送用機器、UAEは日本の自動車輸出先として金額で世界7位/台数で世界3位という規模感です。
つまり、日UAE EPAは「資源国との協定」というより、完成車・部品・周辺産業に直接効きうる協定です。

ただしUAEは“そもそも関税が低い”

UAEはGCC共通関税の枠組みで、対外税率は原則5%(例外あり)と整理されています。
このため、関税だけを見て「インパクトは小さい」と判断しがちですが、ビジネスでは次が効きます。

  • 競合国がCEPAで先に関税・手続を改善している場合の“相対的な不利”
    UAEはCEPA締結を加速しており、将来的に103カ国まで拡大し貿易総額の最大95%をカバーする目標を掲げています。
    すでに複数国とCEPAを発効してきた流れもあり、競争条件の“穴”は放置しにくい。
  • 税関・認証・通関運用(非関税領域)のコスト
    UAE向けは「輸出→現地通関→再輸出」も多く、運用コストが積み上がりやすい。関税よりここが効くケースが多い。

4. “論点の深掘り”②:原産地規則は「UAEがハブである」ことが難しさの源泉

第5回でも原産地規則が議題に入っています。
原産地規則(ROO)は、ざっくり言えば「EPAの優遇税率を使える“出自”の判定ルール」です。

UAE案件で原産地が難しい理由

  • 再輸出・加工・保税・フリーゾーンが多い
    UAEは域内物流ハブとして、輸入→保管→再輸出が一般的。ROOを“形式上”満たすだけの加工(軽微な加工)を排除する規定が厳しくなりやすい。
  • グローバル部材の比率が高い(自動車・機械・電機ほど顕著)
    「どこまで第三国部材が許容されるか」「付加価値基準か関税分類変更か」「累積(カムレーション)をどう扱うか」が収益を左右する。

企業側の準備(いまからできる)

  • HSコードとBOM(部材表)を“EPA利用前提”で棚卸し
  • 製造工程のどこを「原産性を作る工程」にするか(日本/第三国/UAE)を設計
  • サプライヤーから原産地証明に必要な情報が取れるかを確認(ここが最大のボトルネックになりがち)

5. “論点の深掘り”③:サービス貿易は「進出のしやすさ」と「人の移動」が肝

第5回でサービス貿易が議題化されています。
UAEは現地拠点・地域統括(RHQ)・物流・金融・プロフェッショナルサービスのニーズが厚い一方、参入形態やライセンス、職種ごとの規制など“実務の壁”が残りやすい市場です。

ビジネスで効く観点は大きく2つ。

  • 市場アクセス(何ができるか/できないか)
    例:拠点形態、出資比率、提供できるサービス範囲、分野別の許認可など。
  • 「人の移動」実務(短期出張・駐在・プロジェクト要員)
    サービス章や関連規定が整備されると、プロジェクト型ビジネス(建設、プラント、IT導入、保守運用、コンサル)が回しやすくなる可能性があります。

6. “論点の深掘り”④:政府調達が入った意味——UAEの大型案件に“正面から”挑む章

第5回の公式概要で「政府調達」が明示されました。
政府調達章が入る協定は、企業側から見ると次の効能が期待されます(※一般論)。

  • 入札情報の透明性(公告、仕様、評価基準)
  • 内外無差別(または一定の待遇)
  • 不服申立て手続(レビュー)
  • 電子調達・標準化

UAEはエネルギー転換・インフラ・先端産業で大型案件が動きやすい国です。ここに調達ルールが入ると、商社・ゼネコン・プラント・IT・エンジニアリングなどの企業にとっては「営業の土台」が変わります。

逆に言うと、政府調達は国内制度・政策目的と直結するため、交渉が難航しやすい“ حساس(センシティブ)”領域でもあります。
ここがテーブルに乗った時点で、交渉は“締結後に効くルール作り”へ比重が移っている可能性が高い。


7. “論点の深掘り”⑤:競争政策・知的財産は「協業・投資」をやりやすくするインフラ

第5回で競争政策と知的財産が議題とされています。
この2つは、関税のように数字で効き目が見えにくい一方で、実務では効きます。

競争政策(独禁・公正競争)

  • 代理店・販売網・ジョイントベンチャーの設計
  • 特定の取引慣行が“後から問題化”するリスク低減
  • 透明性・協力枠組み(当局間協力)があると、紛争時の打ち手が増える

知的財産(IP)

  • ブランド・商標・意匠・特許の保護は、消費財・機械・ソフトウェア・コンテンツなど広範に影響
  • 共同開発・ライセンス・技術移転の交渉がしやすくなる(期待)

8. “横串論点”:デジタル貿易・税関手続・持続可能性は「運用コスト」を左右する

交渉は第3回でデジタル貿易、第4回で持続可能な開発にも触れています。
また、税関手続・貿易円滑化は初期から継続的に議題です。

  • デジタル貿易:データ移転、電子契約、越境EC、ソースコード等(協定次第で影響)
  • 税関・貿易円滑化:AEO、事前教示、迅速通関、書類電子化など
  • 持続可能性:環境・労働・透明性(ESG調達・輸出管理とも接続し得る)

この領域は、単なる輸出入だけでなく、現地運営(拠点・サプライチェーン)コストに直結します。


9. 「次の節目」は何か:第6回会合の先にある“山場”を先読みする

確定している次の節目は、外務省発表のとおり第6回会合の日程調整です。

一方で、交渉実務として多くのEPAで起きる“山場”は、だいたい次です(※一般的な見立て)。

  1. 市場アクセス(関税・サービス)の“オファー”が具体化
  2. 章ごとの文言が固まり、「章のクローズ(実質合意)」が増える
  3. 例外規定や移行期間などを詰めてパッケージ合意
  4. 法務レビュー(リーガルスクラブ)→署名→国内手続

UAE側は、対日CEPAが「advanced stages(進んだ段階)」にある旨を述べています(UAE国営WAM報道)。
ただし、これは政治的メッセージでもあるため、企業側としては「公式に何が確定したか(=日程、論点、章の範囲)」と切り分けて追うのが安全です。


10. 日本企業がいま打てる「具体アクション」チェックリスト

最後に、交渉の進捗を“待つ”のではなく、ビジネス側が先に整えておける項目を整理します。

輸出型(メーカー/商社)

  • 対UAEの重点品目をHSで棚卸し(関税・規制・認証とセットで)
  • 原産地規則を満たすためのBOM・工程情報の収集体制づくり
  • UAEがGCC共通関税(原則5%)であることを踏まえ、関税より通関・在庫・再輸出の運用設計で勝ち筋を作る

進出型(サービス/プロジェクト)

  • 「提供したいサービス」と「必要な許認可・ライセンス」を分解し、ボトルネックを可視化
  • 人員の移動(短期出張・長期駐在・施工要員)の制約を洗い出し、必要なら現地パートナー戦略を再設計

技術・ブランドを扱う企業(IP集約型)

  • UAEでの商標・意匠・特許の“現状”を棚卸し(登録漏れがあると後で高くつく)
  • 共同開発・ライセンス契約のひな形を見直し(準拠法、紛争解決、ノウハウ保護)

公共・準公共案件を狙う企業

  • UAEの調達制度・発注主体・入札ポータルを整理し、案件探索のKPIを持つ
  • 「政府調達章が入る可能性」を前提に、社内の入札コンプラ・証跡管理を整備

まとめ:第5回会合は「関税交渉」から「市場の取り方」を決める交渉へ

第5回会合で明示された「政府調達・競争政策・知財」は、企業の勝ち筋に直結する“深い章”です。
UAEはCEPAを加速度的に広げており、日本企業にとっては「UAE市場」だけでなく、「UAEをハブにした中東・アフリカ・南アジアへの展開」の競争条件にも波及し得ます。

次の公式節目は第6回会合の日程ですが、ビジネスの準備はもう始められます。特に、原産地(ROO)・通関運用・調達参入・IP整備は、協定ができてから動くと間に合わない領域です。


「カナダ—インドネシア包括的経済連携協定(CEPA)」現状整理

概要

協定の現状: 2025年9月24日、オタワで両国がCEPAに署名。協定ステータスは「署名済(未発効)」。international

発効見込み: 2026年に発効予定(各国の国内批准・実施法整備が前提)。pm

関税撤廃の規模:

  • カナダ側:インドネシア産品に対する90.5%の関税を撤廃
  • インドネシア側:85.8%の品目ヘディング(HSヘディング)を自由化
  • カナダの対インドネシア輸出の95%以上で関税削減または撤廃効果xinhuanet+1

※測定単位(関税分類の粒度)が異なるため、数値の直接比較には注意が必要

実施スケジュール

現在(署名後〜発効前): 関税・通関手続きは現行通り。企業はHSコード単位での影響分析や原産地管理の準備段階 。international

2026年発効後: 即時撤廃品目は0%に、段階的削減品目は年次スケジュールに従い低下。具体的な品目別スケジュールおよび品目別原産地規則(PSR)は協定本文・附属書で確認可能 。international

関税・原産地・通関手続き

関税撤廃・削減: 物品市場アクセス章に基づき実行。輸出入許可の透明性強化、新規輸入ライセンス規律も盛り込み 。international

原産地規則(ROO):

  • 累積(accumulation)対応、生産累積見直し条項あり
  • 原産地証明、保存義務、事前教示、検認、罰則、当局間協力を含む
  • 証明方式の詳細(様式・自己証明可否等)は協定本文に従うinternational

通関手続き・貿易円滑化: WTO貿易円滑化協定を基盤とし、通関の簡素化・標準化・電子化等を規定 。international

サービス・投資・デジタル分野

投資: ISDS(投資家対国家紛争処理)を含む保護・待遇規律を整備。ネガティブリスト方式採用、インドネシア側には透明性向上のための3年移行期間。発効3年後のオファー改善見直しも規定 。international

金融サービス: 独立章として、市場アクセス・内外無差別・最恵国待遇に加え、強固なプルーデンシャル例外(金融安定確保のための裁量)を明記 。international

電子商取引: 越境データ流通、データローカライゼーション規律、ソースコード開示、オープンガバメントデータ、個人情報保護等を含み、デジタル貿易の予見可能性向上を図る 。international

政府調達: 透明性・協力等の手続き規律を整備し、将来の市場アクセス拡大に向けた交渉条項を含む 。international

国有企業(SOE): インドネシアにとって初の包括的SOE規律(無差別・商業的考慮・規制の中立性・透明性等)を導入 。international

労働・環境: 水準引き下げ競争防止、気候・生物多様性・プラスチック等の課題への取り組み、責任ある企業行動を盛り込み 。international

優先課題の二国間対話

重要鉱物: 高いESG基準の下で供給網強靭化・技術協力を推進 。international

SPS(衛生植物検疫): カナダ産牛肉とインドネシア産ツバメの巣の市場アクセス課題解消に向けた覚書を活用 。international

紛争解決: 透明性の高い国家間紛争解決(当事者提出、審理、最終報告の公開等)。international

有望セクター(公表情報ベース)

カナダ側有望品目(対インドネシア): 小麦、カリ(肥料)、木材、大豆等—完全実施で価格競争力が向上 。pm

インドネシア側有望品目(対カナダ): 繊維・履物・家具・加工食品・軽電機・自動車部材・ツバメの巣等。6,500超のタリフラインが優遇対象 。xinhuanet

企業実務対応チェックリスト

  1. HSコード特定: 主要SKUのHS6桁〜10桁を確定し、CEPA関税スケジュール(附属書)に照合。段階削減の年次率と即時撤廃判定を準備
  2. 原産地要件(PSR)リスク評価: 自社の部材構成・工程で原産資格を満たせるかを検証。累積条項の活用余地も試算
  3. 原産地管理プロセス整備: 証明書式/自己証明の可否、保存期間、検認対応を社内規程・システムに組み込み
  4. 通関・物流見直し: 発効後の申告手順・原産地申告文言・事前教示の取得計画を立案
  5. サービス・投資規制確認: インドネシア側ネガティブリストの参入制限・外資比率・現地要件を精査
  6. データ・IT対応: 越境データ移転・ローカライゼーション規律に適合するクラウド/拠点設計を検討
  7. 重要鉱物・SPS案件化: 鉱物・食品関連企業は二国間対話を活用し、規制・承認の前倒しを狙うinternational

よくある質問

Q1. いつから特恵税率を使えますか?
A. 発効(2026年)以降です。発効日前の出荷には適用されません 。pm

Q2. 自社品目が即時0%になるか知りたい
A. HSコード別の撤廃・削減スケジュールを確認する必要があります。正式な附属書に基づき判定してください 。international

Q3. 原産地証明は誰が作成しますか?
A. 原産地手続き章に証明・保存・検認・事前教示等の運用が規定されています。自社の役割分担に応じた体制整備が必要です 。international

Q4. セーフガードやAD/CVDは?
A. WTOの権利義務を再確認しており、アンチダンピング・相殺関税・グローバルセーフガードの枠組みは維持されます 。international

追加の注目点

安全保障・経済の包括連携: 署名当日、防衛協力協定など複数のMoUも同時締結。サプライチェーン(重要鉱物等)や人材協力の観点で、民間案件への波及可能性 。pm

数値の解釈: 90.5%(カナダ)と85.8%(インドネシア)は、それぞれ関税撤廃対象と自由化対象(ヘディング単位)で、母数・単位が異なるため単純比較は不適切 。setkab

参考資料

  1. https://www.pm.gc.ca/en/news/news-releases/2025/09/24/prime-minister-carney-announces-new-trade-agreement-indonesia-canadas
  2. https://www.international.gc.ca/trade-commerce/trade-agreements-accords-commerciaux/agr-acc/indonesia-indonesie/cepa-apeg/background-contexte.aspx?lang=eng
  3. http://www.xinhuanet.com/english/asiapacific/20250925/0626b5c9037a40bfa3be41f522915e87/c.html
  4. https://setkab.go.id/en/indonesia-canada-sign-agreements-on-trade-defense-business/
  5. https://www.international.gc.ca/trade-commerce/trade-agreements-accords-commerciaux/agr-acc/indonesia-indonesie/cepa-apeg/summary-negotiated-resume-negociations.aspx?lang=eng
  6. https://search.open.canada.ca/qpnotes/record/dfatd-maecd,00014-2025
  7. https://voi.id/ja/news/518008
  8. https://www.idnfinancials.com/jp/news/57461/signs-ica-cepa-indonesia-becomes-canadas-first-asean-partner?sl=jp
  9. https://www.thebusinesscouncil.ca/publication/bcc-and-kadin-indonesia-sign-mou/
  10. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/07/e4c84586ae7275ed.html
  11. https://www.reuters.com/world/americas/canada-boost-indonesia-exports-diversify-non-us-trade-says-minister-2025-09-24/
  12. https://www.canada.ca/en/global-affairs/news/2025/09/minister-sidhu-meets-with-indonesias-minister-of-trade.html
  13. https://jp.reuters.com/business/XHGKBECGIVMORHZE63E5L3PMUY-2025-09-25/
  14. https://www.fibre2fashion.com/news/textile-news/canadian-pm-announces-new-trade-agreement-with-indonesia-305483-newsdetails.htm
  15. https://www.pm.gc.ca/en/news/statements/2025/09/24/joint-statement-bilateral-meeting-between-prime-minister-canada-mark-carney
  16. https://www.nna.jp/news/2843591
  17. https://news.yahoo.co.jp/articles/ec6a7ce4f22d07de22725942ff5ec8f5c58bc706/images/000
  18. https://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2025/09/571486.php
  19. https://voi.id/ja/amp/517883
  20. https://www.jetro.go.jp/biznewstop/biznews/asia/idn/wto-fta/
  21. https://www.cbp.gov/sites/default/files/2025-08/20250820_tariff_factsheet_0.pdf
  22. https://search.open.canada.ca/qpnotes/record/dfatd-maecd,00010-2025
  23. https://www.dfat.gov.au/trade/agreements/in-force/iacepa/iacepa-text/Pages/iacepa-annex-2-a-schedules-of-tariff-commitments
  24. https://www.bilaterals.org/?indonesia-finalizes-first-north
  25. https://catts.eu/preferential-trade-updates-august-2025/
  26. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00207020251340090
  27. https://www.cbsa-asfc.gc.ca/trade-commerce/tariff-tarif/2025/html/countries-pays-eng.html
  28. https://www.thejakartapost.com/business/2025/09/25/ri-canada-ink-trade-pact-amid-us-pressure.html
  29. https://policy.trade.ec.europa.eu/eu-trade-meetings-civil-society/csd-negotiations-comprehensive-economic-partnership-agreement-cepa-between-eu-and-indonesia-2025-09-16_en
  30. https://policy.trade.ec.europa.eu/eu-trade-relationships-country-and-region/countries-and-regions/indonesia/eu-indonesia-agreements/key-elements-eu-indonesia-trade-agreement-and-investment-protection-agreement_en
  31. https://www.cbsa-asfc.gc.ca/trade-commerce/tariff-tarif/2025/html/admin-eng.html

ATIGA改訂の内容

エグゼクティブサマリー

ATIGAアップグレードは、ASEAN域内の物品貿易をデジタル・持続可能社会に対応させる包括的な近代化改訂です 。2025年5月に交渉が実質妥結し、「ATIGA改正第二議定書」として2025年10月26-28日の第47回ASEANサミット(マレーシア・クアラルンプール)で署名予定です 。発効は各国の国内手続完了後となります 。

改訂の柱は、非関税措置の透明性向上原産地規則の簡素化通関のデジタル化・ペーパーレス化AEO・事前教示等のTFA+要素SPS/TBT強化(GRP導入含む)、および環境・循環経済やMSME支援等の新分野の包含です 。

交渉ステータスとタイムライン

交渉妥結: 2025年5月25日のAECC(ASEAN経済共同体理事会)会合でATIGAアップグレード交渉の妥結が正式確認されました 。

署名予定: 第二議定書は2025年10月26-28日の第47回ASEANサミットで署名予定です 。マレーシアが議長国として開催します 。

発効見通し: 署名後、各国で批准・国内実装手続きを経て発効します。具体的な発効条件・移行期間は議定書テキスト及び各国通達で確定されるため、企業は官報・税関通達の継続的モニタリングが必要です 。

改訂の主要内容

関税・市場アクセス/非関税措置

現在のATIGAは既に98.6%の品目で関税撤廃を達成しているため、今後の焦点は非関税障壁の解消にあります 。改訂では、定量規制の不実施確認、輸入ライセンス・輸出規制・輸出補助金の規律強化、通知・透明性要件、是正メカニズムの整備を図ります 。

原産地規則の近代化

**「シンプル・ビジネスフレンドリー」**を基本原則として、PSR(付加価値基準・関税分類変更基準・加工工程基準の組合せ)、累積活用、証明手続きの明確化を進めます 。特に、e-Form D/ASWの活用拡大、原産地申告制度、検認・免除閾値・記録保存義務の整備により、事務負担・リードタイム削減が期待されます 。

通関・貿易円滑化の強化

WTO貿易円滑化協定(TFA)を上回る水準(TFA+)を目指し、自動化・標準化・簡素化事前教示制度(品目分類・評価・原産地規則)、AEO制度ペーパーレス化、エクスプレス貨物、ASW/ACTS高度化を柱とする包括的拡充を行います 。

SPS・TBT・GRP強化

SPS(衛生植物検疫措置): WTO-SPS協定の再確認に加え、同等性認定の迅速化、国際基準活用、意思決定情報共有、国内手続公表、技術協議メカニズムを強化します 。

TBT・GRP(良好規制慣行): WTO-TBT協定のTBT+実装、国際規格使用・相互承認、GRP原則適用、ACCQ(ASEAN基準・品質協議会)連携を推進します 。

新分野の導入

環境・持続可能性: 多国間環境協定履行確認、各国規制主権保持、循環経済促進を明記します 。

MSME支援: 中小零細企業の市場アクセス・情報・デジタル化支援を制度化します 。

企業への影響と対応準備

重要な変化点

非関税措置への対応: 通関・検査・規格・検疫手続きのコスト・時間短縮が期待される一方、透明性・通知要件の遵守強化が求められます 。

原産地規則の高度化: ASW/e-Form D・原産地申告・記録保存要件整備によりリードタイム短縮が期待されますが、サプライチェーン情報のトレーサビリティがより重要になります 。

準備チェックリスト

制度対応:

  • 2025年10月署名後の官報・通達監視体制構築
  • 社内原産地判定SOP及び記録保存規程のATIGA改訂対応更新

サプライチェーン管理:

  • PSRデータ整備(部材別原産・非原産区分、RVC計算、累積活用方法)
  • e-Form D/ASW利用拡大及び自己申告要件確認

貿易円滑化:

  • 事前教示活用計画作成及びAEO取得・維持の費用対効果評価
  • ペーパーレス化対応(権限管理・監査ログ整備)

品質・環境管理:

  • SPS/TBT手続変更点の製品カテゴリー別棚卸
  • 循環経済・環境データ(再生材比率等)管理システム構築

今後の展望

第47回ASEANサミットでの署名により、ASEAN域内貿易の新たな段階が始まります 。企業は署名後に公表される議定書正文及び各国実施通達を注視し、段階的実装に備える必要があります 。特に、デジタル化・持続可能性・サプライチェーン強靭化といった今後のトレンドに対応した貿易実務への移行が重要となります 。

REX(登録輸出者)システムに関する企業向け実務ガイド

皆様からREXに関する関心が多いことから、今回まとめてみました。

はじめに:日本企業にとっての結論
日EU・EPAを利用して日本からEUへ輸出する場合、REX登録は不要です。6,000ユーロを超える貨物で原産地を自己申告する際の「輸出者参照番号」には、EUのREX番号ではなく、**日本の「法人番号」**を記載します(未付番なら空欄可。住所の記載で代替可)。Taxation and Customs Union


1. REX(登録輸出者)システムとは?

REX(Registered Exporter)は、原産地自己申告を可能にするための輸出者登録制度です。EU側の輸出者GSP受益国の輸出者が、REX番号をインボイス等の**Statement on origin(原産地に関する申告)**に記載して特恵を申請する仕組みです。Taxation and Customs Union


2. REXが必要となる主なケース(日本からの輸出以外)

輸出ルート適用される制度/協定6,000ユーロ超の場合の要件
EU → 日本 などEUが締結するFTA(例:EU–Japan、CETA、UK TCA等)EU側輸出者にREX登録が必要(自己申告で特恵申請)。EU Trade+1
GSP受益国 → EUGSP(一般特恵)受益国の輸出者にREX登録が必要(自己申告で特恵申請)。Taxation and Customs Union

したがって、REXは**「EU側が輸出者」または「GSP受益国が輸出者」のときに関係し、日本からEUへ輸出する場合には直接関係しません**。Taxation and Customs Union


3. 日EU・EPAにおける日本の輸出者の対応

3.1 輸出者参照番号には「法人番号」を記載

  • 自己申告文(Statement on origin)をインボイス等に記載する際、**日本側輸出者の輸出者参照番号は「法人番号(13桁)」**です。Taxation and Customs Union
  • 未付番の場合空欄可で、住所を「場所及び日付」欄に記載して輸出者を識別できます。Taxation and Customs Union
  • EU税関による照合のため、国税庁「法人番号公表サイト(英語版)」に社名・所在地が表示されるよう設定しておくことを推奨します。Taxation and Customs Union

3.2 6,000ユーロ閾値の考え方

  • EU側輸出者6,000ユーロ以上でREXが必要、未満は不要。EU Trade
  • 日本側輸出者はREX不要で、基本は法人番号を用います(未付番時は空欄可)。「日本側に6,000ユーロ超=番号必須」という定めは明文化されていませんTaxation and Customs Union

3.3 代替手段:輸入者の知識(Importer’s knowledge)
輸出者の自己申告に代えて、EU側輸入者の知識に基づき特恵申請することも可能です。輸入者は原産性を示す資料を保持・提示できる必要があります。Taxation and Customs Union


4. 実務上のチェックリストと注意点

4.1 原産地自己申告文(Statement on origin)の記載【重要】

  • **PSR(CTH、RVC等)の“具体語”を書き込む必要はありません。一方で、附属書3‑Dの注記(4)に従い、A/B/C/D/Eの「コード」(例:A=完全生産、B=品目別規則充足、E=寛容差 等)は該当すれば記載します。多くのケースでは「B」**になります。wko.at+1
  • 輸出者参照番号(日本側=法人番号)原産地(EUまたはJapan)、**有効期間(複数出荷の場合)**など、附属書3‑Dで定める要素を満たすこと。Taxation and Customs Union
  • 保存義務:自己申告文と原産性に係る記録は最低4年間保存。Taxation and Customs Union

4.2 取引先(EUの輸入者)からREX番号を求められた場合
REXはEU側輸出で使う番号であり、日本からEUへの輸出では法人番号を用いる旨を説明します。必要に応じて、**法人番号公表サイト(英語版)**の掲載で確認可能にします。Taxation and Customs Union

4.3 用語の混同に注意

  • REX番号EU側GSP受益国側登録輸出者番号(自己申告のため)。Taxation and Customs Union
  • 法人番号日本側輸出者が日EU・EPAで輸出者参照番号として用いる番号。Taxation and Customs Union
  • EORI番号EU域内で通関手続を行う事業者の登録番号(REXとは用途が異なる)。EU Trade

5. まとめ

  • REXの基本EU側輸出者GSP受益国の輸出者6,000ユーロ超の貨物で自己申告する際に用いる登録番号EU Trade+1
  • 日本企業の対応日本→EUではREX不要輸出者参照番号=法人番号を記載(未付番時は空欄可・住所で代替)。Taxation and Customs Union
  • 実務最重点PSRの具体語(CTH等)の記載は不要だが、A/B/C/D/Eのコード必要に応じ記載裏付け資料の4年間保存法人番号の英語表記公開を徹底。wko.at+1

確認(根拠)

  • 日本側=法人番号/EU側=REX、輸出者参照番号の空欄許容と住所記載の代替、保存期間4年、自己申告文の構成要素:EU–Japan EPA 共同ガイダンスTaxation and Customs Union
  • EU側輸出者のREX要否(6,000ユーロ閾値)Access2Markets「Statement on origin」。EU Trade
  • EU–Japan(双方)での自己申告フレーム、EU側輸出はREX登録が前提/日本側は法人番号:Access2Markets EU–Japanページ。EU Trade
  • GSPはREX必須:欧州委「GSP」ページ(受益国輸出者はREXで自己申告)。Taxation and Customs Union
  • 附属書3‑D注記(4)のコード(A/B/C/D/E)官報版 附属書3‑DおよびAccess2Marketsの記載。wko.at+1
  • **輸入者の知識(Importer’s knowledge)**の要件:EU–Japan EPAガイダンス(Importer’s knowledge)Taxation and Customs Union

アフリカをほぼカバーするFTA:AfCFTA解説

AfCFTA(アフリカ大陸自由貿易圏)解説

1. AfCFTAの概要

AfCFTA(African Continental Free Trade Area)は、アフリカ連合(AU)が主導する大陸規模の自由貿易協定で、物品・サービスの自由化に加え、投資、競争政策、知的財産、デジタル貿易、女性・若者の貿易参画など段階的に統合を進める包括的枠組みです。署名:2018年3月21日(キガリ)/発効:2019年5月30日/貿易運用開始:2021年1月1日。African Union+1

2. 経済規模(イメージ)

対象市場は人口約13億人、名目GDP約3.4兆米ドル。AfCFTAは加盟国数で世界最大の自由貿易圏と位置付けられます。World Bank

3. 参加状況(2025年9月時点の公的・準公的資料による整理)

  • 署名55か国中54か国が署名(未署名はエリトリア)。African Union
  • 批准・寄託(State Parties)49か国(2025年6月および9月の南ア政府提出資料)。DTIC+1
  • 最近の動き(例)リベリア2023年批准・2024年に寄託、実施戦略を2025年8月公表/マダガスカル2024年11月に批准Ministry of Commerce & Industry+2UNECA+2
  • 主な未批准ベナン、リビア、ソマリア、南スーダン、スーダン(エリトリアは未署名)。DTIC
    ※最新個別状況はAU・AfCFTA事務局やtralacのステータスページで適宜確認するのが実務的です。Tralac

4. 主要な沿革

  • 2018/03:協定署名(キガリ)。
  • 2019/05:22か国の批准到達により発効。
  • 2021/01:物品等の貿易運用開始(各国の準備状況に応じ段階的)。
  • 2022/10:**GTI(Guided Trade Initiative)**開始(当初7か国、のち拡大)。African Union+2WCOE SARP SG+2
  • 2024/12e‑Tariff BookRoOモジュールを拡充。
  • 2025/06:RoOモジュールの機能強化をWCOが告知。World Customs Organization+1

5. 原産地規則(RoO)と証明プロセス(実務ポイント)

  • ルール体系:**物品貿易議定書の付属書2(Annex 2)**に一般規定と品目別規則(Appendix IV)が定められています。累積(Article 8)により全てのState Partiesを単一領域とみなす取扱いが可能です。African Union+1
  • 証明方法
    1. AfCFTA様式の原産地証明書(CoO)(指定当局発給)
    2. 原産地宣言(インボイス等)承認輸出者による自己申告、または小口貨物総価額5,000米ドル以下)は非承認輸出者でも可。宣言文言・署名等はAnnexの定めに従います。World Customs Organization+2cuts-international.org+2
  • 実務ツールAfCFTA e‑Tariff Bookで**関税率と該当PSR(品目別RoO)**を横断検索可能。World Customs Organization

6. 関税撤廃のルール(モダリティ)

  • 90%(非センシティブ品目)非LDCは5年、LDCは10年で撤廃
  • 7%(センシティブ品目)非LDCは10年、LDCは13年で撤廃
  • 3%(除外品目):撤廃対象外(ただし輸入価値の集中回避等の条件・見直し規定あり)
    これらはAnnex 1の譲許表に反映され、各国が年次で段階的に実施します。UN Trade and Development (UNCTAD)+1

7. 運用の現状と進捗

  • RoO合意状況約92.4%の関税行で合意。未了は主に繊維・衣類と自動車で、2026年2月の妥結を目標に交渉継続。DTIC
  • 優遇貿易の開始・拡大GTIを通じて試行→対象国が段階拡大。さらに、24か国が譲許表を官報化しAfCFTA下の優遇で実際に輸出入を開始(南アは2024/1/31開始)。DTIC
  • サービス:優先5分野(金融・通信・運輸・観光・ビジネス)で多くの国が初期オファーを提出、EACの約束表官報化、南アの約束表は2025年3月に内閣承認済(検証・採択手続き中)。DTIC
  • 運用インフラNTBオンライン通報・解消メカニズム(tradebarriers.africa)、**African Trade Observatory(ATO)**などの運用ツールが整備。Trade Barriers Africa+1

8. 抱えている主な課題(実務への影響)

  • ルール未整備領域の残存:繊維・衣類、自動車のRoO未確定が一部取引の制約に。DTIC
  • 関税実施・整合の足並み:各国の官報化・税関システム改修の進度差(譲許表の年次実施の追随が必要)。DTIC
  • NTB・行政運用のばらつき:国境手続、規格適合、重複認証等の非関税障壁が残存し、NTBメカニズムの活用が鍵。Trade Barriers Africa
  • 既存RECとの重複:RECはAfCFTAのビルディングブロックと位置付けられる一方、重複加盟による規則の多層化が実務の複雑性を高める。AfricanLII+1
  • 決済・通貨面の制約:域内決済のコスト・ドル依存。PAPSSの本格展開(16中央銀行・140超の商業銀行接続等)が進むが、浸透には時間を要する。Afreximbank
  • インフラの不足:物流・電力等のギャップが大きく、AfCFTAの効果最大化には投資拡大が不可欠。UN Trade and Development (UNCTAD)

付録:実務担当者のチェックリスト

  1. HS品目特定→e‑Tariff Bookで相手国の関税・PSR確認。必要なら代替サプライヤー/工程設計でRoOを満たす。World Customs Organization
  2. 証拠書類整備:BoM、原材料原産証跡、工程記録、原価計算、貨物書類等。
  3. 証明方法の選択:原則CoO承認輸出者原産地宣言を活用。小口(≤5,000USD)は非承認でも宣言可。World Customs Organization+1
  4. GTI/相手国の運用状況を確認(譲許表の官報化、RoO合意有無)。DTIC
  5. 通関でのトラブルNTBポータルに通報/フォロー。Trade Barriers Africa
  6. 決済:可能ならPAPSS等で現地通貨決済を検討。Afreximbank

出典(主要)

ベラ・バラッサの経済統合5段階:FTA/EPA実務担当者向けガイド

ベラ・バラッサの経済統合5段階:FTA/EPA実務担当者向けガイド

趣旨
段階が上がるほど、域内の自由化が深まり、共通ルール・共通機関・政策協調が増えるのが本質。関税メリットだけでなく、通関の簡素化、規格・認証、人材・資本移動、競争法・補助金規律まで影響が広がります。


1. 自由貿易協定(FTA/広義EPAを含む) / Free Trade Area

要点
加盟国間で原則として関税(と多くの数量制限)を撤廃。ただし対外関税は各国別のため、原産地規則(ROO)で迂回輸入を防止。サービス・投資・知財・調達等まで含む包括協定を日本ではEPAと呼ぶことが多い(バラッサの段階とは別軸)。

代表例

  • USMCA(旧NAFTA)
  • CPTPP
  • RCEP
  • 日EU・EPA
  • ATIGA(通称AFTA:ASEAN域内物品)

実務ポイント(チェックリスト)

  • 対象HS・特恵税率・発効日・移行スケジュール
  • **原産地判定(CTC/VA/特定工程)累積(cumulation)**の可否
  • 原産地証明方式(第三者発給/自己申告/登録輸出者)と保存義務
  • サプライヤー宣誓・BOMトレース体制
  • 複数協定の併用最適化(実効税率×通しやすさ)

2. 関税同盟 / Customs Union

要点
FTAに加え共通対外関税(CET)を採用。域内は自由流通(free circulation)の概念で扱われ、域内相互の売買にROOは通常不要。ただし自由流通であることの証明(Union goodsのステータス)が求められる場合あり。対第三国とのFTA活用では引き続きROO管理が必要。

代表例

  • EU関税同盟
  • SACU(南部アフリカ関税同盟)
  • メルコスール(MERCOSUR)(関税同盟志向だが例外多め)
  • EU–トルコ関税同盟工業品中心多くの農産品は対象外

実務ポイント

  • 域内販売:自由流通化ステータスの確認(通関簡素化・ROO不要)
  • 輸入段階:CET適用でMFN差の追跡負担を低減
  • 第三国向け特恵利用:別途ROO管理が存続
  • 税関手続・分類・評価の共通化対応

3. 共同市場 / Common Market

要点
関税同盟に財(物)・サービス・資本・労働の自由移動を追加。規格・認証・ライセンス等の非関税障壁の撤廃や相互承認が進む。

代表例

  • EU単一市場(Single Market)
  • EEA(EU加盟国+ノルウェー/アイスランド/リヒテンシュタイン)
  • CARICOM CSME
  • EAC共同市場

実務ポイント

  • 人材配置・越境サービス提供・資本移動の許認可簡素化を活用
  • 規格・適合性評価の相互承認で重複試験・認証を削減
  • データ移転・金融パスポート等の横断規制の有無を確認

4. 経済同盟(経済連合) / Economic Union

要点
共同市場に加え、競争政策・通商政策・規制政策の共通化・協調。場合により通貨統合(単一通貨・中央銀行)超国家的機関が立法・執行を担う。

代表例

  • 欧州連合(EU)(単一市場+共通政策、ユーロ圏は通貨統合)
  • EAEU(ユーラシア経済同盟)

実務ポイント

  • 競争法・補助金規律・公共調達などの域内共通ルールに適合
  • 通貨統合域では為替リスク・決済手続が単純化
  • 環境・デジタル・サステナ規制の同時適用に備え、SCM全体を再設計

5. 完全なる経済統合 / Complete Economic Integration

要点
経済同盟を越え、通貨・財政・租税・社会保障まで実質統一し、主権移譲が高度。域内は単一の経済体として機能。バラッサの理論上の到達点で、現実の実例は国家連邦レベルに近い。

代表例(イメージ)

  • 一国内市場(例:米国・カナダの国内市場)に見られる統合度合いが参照像。
  • EUも銀行同盟・財政統合が進めば一層近づく可能性。

実務ポイント

  • 税制・補助金・労働・社会保険がほぼ単一制度となり、拠点・人事・税務の意思決定は国内移転に近い設計へ。

つまずきやすい論点

  • 関税同盟=どこから入れても同じ?
    おおむね正しいが、原産地問題が“消える”のは域内相互取引に限る。対第三国の特恵活用やAD/CVDでは原産地・出荷地・HS適用の論点が残る。
  • 共同市場=完全統合ではない
    人・サービス・資本の自由移動があっても、税制・財政は各国別であることが多い。
  • 名称と実態はズレ得る
    メルコスールのように関税同盟志向でも例外・非関税障壁が残存する場合がある。協定文+運用通達で要確認。
  • EPAの広がりは“段階”と直交
    関税がゼロでも、デジタル・環境・労働等の規制対応コストが無視できないケースが増加。

小さな意思決定フロー

  1. 関税メリットの入口特定:対象HS×仕向/調達で使える協定→特恵税率・発効・移行表
  2. 原産地到達の試算:PSR型(CTC/VA/特定工程)・累積・主要原料の域内化
  3. 証明方式と内部統制:証明様式/自己申告・保存年限・誤記対応・宣誓の年次更新
  4. コスト対効果:関税差額×数量 −(証明・BOM維持・監査対応コスト)
  5. 上位段階の制度活用:関税同盟・共同市場なら規格相互承認/人材・資金の自由を前提に上市スピード最適化

まとめ

  • 5段階は、関税→対外関税共通化→要素移動の自由→共通政策→完全統合の順で深化。
  • FTA/EPA担当は、(1)関税×原産地、(2)税関手続、(3)規格・認証、(4)人材・資本移動、(5)競争法・補助金規律の“層”で評価すると、恩恵とリスクを取りこぼしません。

新たに合意されたEFTA-メルコスールFTA

EFTA-メルコスールFTA:企業が押さえるべき戦略的ポイント

2019年8月に実質合意に至ったこのFTAは、約3億人の市場へのアクセスを劇的に改善する可能性を秘めています。企業の皆様が今すぐ準備すべき実務上の要点を、専門的かつ分かりやすく解説します。


エグゼクティブ・サマリー:協定の全体像

本協定は、EFTA加盟国(スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)とメルコスール加盟国(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ)間の貿易・投資を活性化させる包括的な枠組みです。

  • 市場アクセス:双方の輸出の95%を超える品目で関税が撤廃・削減されます。特に、医薬品、機械、化学品などEFTA側の主要輸出品に対するメルコスールの高関税が段階的に引き下げられます。
  • 原産地規則(ROO):特筆すべきは、**EU域内で生産された材料を協定上の原産材料とみなせる「拡張累積」**制度です。これにより、欧州全体を視野に入れたサプライチェーンの最適化が可能になります。原産地証明は、認定輸出者による自己申告制度が採用され、手続きの迅速化が図られます。
  • 貿易円滑化:事前教示制度(税番、原産地、課税価格について税関に事前の法的拘束力のある回答を求める制度)や通関手続きの電子化が盛り込まれ、貿易の透明性と予見可能性が向上します。
  • サービス・投資:金融、通信、専門家の一時的な移動(モード4)を含む幅広いサービス分野での市場アクセスが改善されます。投資については、商業拠点設立(モード3)時の内国民待遇が基本となりますが、各国の留保事項には注意が必要です。
  • 政府調達:これまで参入が難しかったメルコスールの中央政府機関の調達市場が開放されます。ブラジルやアルゼンチンでは、入札に参加できる契約金額の閾値(基準額)が段階的に引き下げられます。
  • 知的財産(IP):スイスの有名チーズ「グリュイエール」など、100を超える地理的表示(GI)が保護対象となり、ブランド価値の保護が強化されます。
  • 貿易と持続可能な開発(TSD):環境保護や労働者の権利に関する規定も盛り込まれ、ホルモン剤不使用の食肉生産や、成長促進目的での抗生物質使用の段階的廃止などが定められています。違反に関する紛争は、専門家パネルによる勧告の公表を通じて解決が図られます。
  • スイス企業への効果:協定が完全に履行されれば、スイスからメルコスールへの輸出の約96%が無税となり、年間1億8,000万スイスフラン(約300億円)規模の関税削減効果が見込まれています(スイス連邦経済省SECO試算)。

条文別:企業が押さえるべき実務ポイント

1. 物品関税:いつ、どれだけ下がるのか?

  • 撤廃スケジュール:関税は、即時撤廃(発効と同時)、または4年、8年、10年、15年といった期間をかけて段階的に引き下げられます。チーズやチョコレートなど一部のセンシティブ品目には、低関税を適用する輸入割当(TRQ)が設定されます。
  • 対象品目と削減幅の例
    • 医薬品:最大14%の関税が段階的に撤廃。
    • 機械類:14~20%の高関税が段階的に撤廃。
    • 化学品:最大18%の関税が段階的に撤廃。
    • 自動車部品:14~18%の関税が主に長期(10年や15年)で撤廃。
    • 繊維製品:最大35%という極めて高い関税が段階的に削減・撤廃。
  • アクション:自社製品のHSコード(8桁レベル)を特定し、協定付属書で関税撤廃スケジュール(カテゴリ)を確認することが不可欠です。

2. 原産地規則(ROO):サプライチェーンの鍵

  • 最重要ポイント「EU拡張累積」:貴社のサプライチェーンにEUの部材が含まれていても、一定の条件(品目別規則がEFTA-メルコスール間とEFTA-EU間で同等であることなど)を満たせば、その部材を「EFTA原産」として最終製品の原産性を判断できます。これにより、欧州全域での柔軟な部材調達が可能になります。
  • 実務上の手続き:原産地証明は、税関から事前に承認を受けた「認定輸出者」が、自らインボイスなどの商業書類上に原産地を記載する自己申告制度が基本となります。事後検認に備え、原産性を証明する書類の保管が義務付けられます。

3. 政府調達:新たなビジネスチャンス

  • 市場開放のインパクト:ブラジルやアルゼンチンの中央政府機関が発注する物品やサービスの入札に、EFTA企業が参加しやすくなります。
  • 主要国の閾値(段階的引き下げ後)
    • ブラジル:物品・サービスはSDR130,000、建設サービスはSDR5,000,000。
    • アルゼンチン:物品・サービスはSDR130,000、建設サービスはSDR5,000,000。
    • SDRはIMFの特別引出権。1SDR≒約215円(2025年9月時点の参考レート)。
  • アクション:対象となる政府機関のリストと、自社製品・サービスが除外対象になっていないかを確認し、入札情報へのアクセス方法を確立しましょう。

セクター別・即戦力の着眼点

セクター主な変更点今すぐ取るべきアクション
医薬・ヘルスケアメルコスールの高関税(最大14%)が撤廃。政府調達で病院・保健省案件が対象に。HSコード別に削減スケジュールを特定し、価格戦略に反映。認定輸出者資格の取得準備。
産業機械・部品14–20%の関税が削減され、価格競争力が大幅に向上。EU拡張累積の活用を前提にサプライチェーンを見直し。PSR(品目別規則)の適合性を確認。
化学品最大18%の関税削減。TBT(貿易の技術的障害)章で将来の規制協力も規定。PSR(付加価値基準/関税番号変更基準)を確認し、原産性管理体制を構築。必要に応じて事前教示を取得。
自動車部品14–18%の関税が主に長期スケジュールで削減。現地の完成車メーカー(OEM)等と関税削減分を反映した価格改定の交渉準備。
食品(チーズ等)無関税または低関税の輸入枠(TRQ)が設定され、即時的な市場アクセスが改善。TRQの申請プロセス(相手国側)を確認。GI保護対象リストをチェックし、自社製品の表示に問題がないか点検。

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発効までの見通し(重要)

  • 批准手続き:協定の発効には、各締約国での国内議会の承認などが必要です。
  • 二国間での段階的発効少なくともEFTA加盟国のいずれか1カ国と、メルコスール加盟国のいずれか1カ国が批准手続きを完了した時点で、その2国間で協定が先行して発効します(手続き完了の通知から3ヶ月後の月の初日)。その後、批准を終えた国から順次、協定の適用対象が拡大していきます。
  • スイスの動向:スイス連邦議会での審議は2026年以降となる見込みです。企業としては、どの国の組み合わせで最初に発効するのか、最新の動向を注視することが重要です。

初心者向け:FTA、EPAの原産地証明の原産地基準

1. 対象品のHSコードの見つけ方

基礎(拠り所)

  • HS分類は「関税率表の解釈に関する通則(GIR)」で決めます(通則1〜6)。まずこれを踏まえ、章・部注、項目注を読み、品目の技術実態と照合します。税関総合情報
  • HSの6桁構造(2桁=類、4桁=項、6桁=号)を理解して進めます。ジェトロ

実務の進め方(現場フロー)

  1. 製品仕様の把握:用途・機能・主要材質・構造・動力・加工有無を整理(カタログ/図面/材料表)。
  2. 類→章→項→号を候補探索:関税率表や解説資料(税関「関税率表解説・分類例規」、WCO Explanatory Notes)で比較します。税関総合情報wcoomd.org
  3. 通則/GIR章注・部注除外規定で候補を絞る(「まず該当する定義、次に除外」)。税関総合情報
  4. 迷うときは 事前教示(Advance Ruling) を検討:輸入前に税関へ文書照会し、分類の公式回答を得る制度です(公開データベースも有)。税関総合情報+3税関総合情報+3税関総合情報+3

補足:輸出用書類のHSは相手国の6桁が求められる場面があります。最終的には輸入国税関での受理が基準なので、相手側と整合確認を。トムソン・ロイター


2. 原産地規則の見つけ方:日本税関サイトを使う

使うサイト:日本税関「品目別原産地規則 検索画面」
(トップの「EPA・原産地規則ポータル」から到達可)

操作手順

  1. サイトにアクセスし、**協定(国名/Country)**を選択。
  2. HSコード4桁または6桁を入力(ドットなし)。
  3. 検索すると、該当品目の**品目別原産地規則(PSR)**が表示されます。
  4. 表示は関税譲許の有無に関わらずPSRが出る仕様のため、後述の関税譲許表も要確認。税関総合情報

重要な注意(サイト記載の要旨)

  • HSコード版の違いに注意:協定ごとにHS2002/2007/2012/2017/2022など採用版が異なるため、協定が採用する版で検索・読み替えが必要。WCOの相関表リンクも掲載されています。輸入申告は最新版HSを使用。税関総合情報
  • 関税譲許の確認:PSRが満たせても、対象品が関税撤廃・削減の譲許対象かは別問題。サイトから日本の実行関税率表相手国譲許表への案内があります。税関総合情報

3. 原産地基準の読み方

(A) CTC(関税分類変更)系

  • CC/CTC=類変更(2桁)、CTH=項変更(4桁)、CTSH=号変更(6桁)。非原産材料のHSが、最終製品の規定桁で別番号になることが条件。
  • 除外書きに注意:例「CTH(ただし○○からの変更を除く)」=その番号の非原産材料を使うと変更達成と認めない。日EU・EPAの同軸ケーブル等の例が公開資料にあります。ジェトロ

(B) RVC(域内原産割合)系

  • 控除方式RVC:RVC(%)=(FOB−VNM)/FOB×100(VNM=非原産材料価額)。
  • MaxNOM(非原産材料最大割合):MaxNOM(%)=VNM/EXW×100。
  • 日EU・EPA資料では、RVCはFOB基準MaxNOMはEXW基準で示され、計算例が図表つきで整理されています。ジェトロ

(C) 加工工程基準(Specific Process, SP)

  • 例:**化学反応(CR)**の実施を要件とするなど、特定工程の実施が条件。RCEPの公表資料に定義・例示があります。税関総合情報

(D) 併用・選択

  • 多くのPSRは「CTC 又は RVC」の選択ですが、品目・協定によっては両方必要(AND)や工程基準の追加もあります(例示:日印EPAなどの解説)。ジェトロ

4. 気をつけること

  • HS版ズレ:協定採用版(HS2012/2017/2022 等)でPSRを読む。必要に応じてWCO相関表で対応関係を確認。税関総合情報
  • 関税譲許の有無:PSR表示は譲許と無関係。実行関税率表/相手国譲許表優遇が存在するかも必ず確認。税関総合情報
  • 除外書き・脚注:PSRの括弧書きの除外材料注記は落とし穴。日EU・EPAの具体例(同軸ケーブル等)を参考に、材料毎のHSを棚卸して該当有無を精査。ジェトロ
  • AND/ORの読み取り:選択制か併用要件かで求める証拠が激変。協定文・注釈まで確認。ジェトロ
  • 最小限作業の不原産(Insufficient Working):単純な包装・選別等は原産性を与えない扱い。EUの公式解説でも強調されています(日EU・EPAの理解に有用)。trade.ec.europa.eu
  • デミニミスや累積の活用:わずかな非原産材料の許容(デミニミス)や累積規定で救済できる場合あり。RCEP資料の図解が実務に有用。税関総合情報
  • 価格基準の取り違い:RVCはFOB、MaxNOMはEXWなど、計算の価格基準を誤らない(協定・注記で要確認)。ジェトロ
  • 証憑の整備:自己申告・証明書に加え、計算根拠や裏付け資料(原材料の原産性、購買・製造・在庫記録等)を保持。税関ガイドラインも証拠書類の必要性を明示。税関総合情報
  • 協定選択の視点:同一相手に複数協定が使えるとき、単に税率だけでなくPSRの難易度や手続負担も比較すると実務最適。Business Growth Service
  • 相手国HSの整合:輸入国で受理される6桁かを事前に確認(輸入者・現地税関と照合)。トムソン・ロイター
  • 迷う場合:**事前教示(分類/原産地)**を活用し、将来紛争を未然防止。税関総合情報+1

5. 日本税関サイトでの「読み方」

  • 画面入力:国名(協定)HS4または6桁→検索。
  • 結果の典型表示:
    • CTH/CTSH/CC=関税分類変更(変更レベルに注意)
    • RVC◯◯%MaxNOM◯◯%=付加価値系(計算基礎FOB/EXWに注意)
    • **CR(Chemical Reaction)**等=工程基準
    • (○○からの変更を除く)等=除外(その材料は原産であることが前提)
    • 注記や脚注は必ず確認(AND/OR関係、例外、定義)
    • (注意)関税譲許の有無は別途確認税関総合情報ジェトロ

6. 1ページ・ワークフロー

  1. HS確定:通則→注解→候補比較→(必要なら)事前教示。税関総合情報+1
  2. PSR検索:税関サイトで協定×HS検索→PSR・注記を読み込む。税関総合情報
  3. 判定設計:CTCかRVCかSPか、AND/ORか、除外・デミニミス・累積の有無。税関総合情報ジェトロ
  4. 証憑整備:BOM・購買証跡、工程記録、RVC計算書、供給者原産声明等。税関総合情報
  5. 譲許確認:実行関税率表/相手国譲許表で対象か確認。税関総合情報

7. 用語解説

  • GIR(通則):HS分類の大原則。税関総合情報
  • PSR:品目別原産地規則。CTC/RVC/SPなどで原産性を判定。ジェトロ
  • CTC(CC/CTH/CTSH):非原産材料のHSが最終製品に対し規定桁で別番号へ変更。ジェトロ
  • RVC/MaxNOM:域内原産割合または非原産材料割合の基準(計算基礎に注意)。ジェトロ
  • SP(加工工程):化学反応など特定工程の実施が要件。税関総合情報
  • デミニミス/累積:わずかな不適合材料の許容、域内材料の相互みなし。税関総合情報

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