初心者向け:FTA、EPAの原産地証明の原産地基準

1. 対象品のHSコードの見つけ方

基礎(拠り所)

  • HS分類は「関税率表の解釈に関する通則(GIR)」で決めます(通則1〜6)。まずこれを踏まえ、章・部注、項目注を読み、品目の技術実態と照合します。税関総合情報
  • HSの6桁構造(2桁=類、4桁=項、6桁=号)を理解して進めます。ジェトロ

実務の進め方(現場フロー)

  1. 製品仕様の把握:用途・機能・主要材質・構造・動力・加工有無を整理(カタログ/図面/材料表)。
  2. 類→章→項→号を候補探索:関税率表や解説資料(税関「関税率表解説・分類例規」、WCO Explanatory Notes)で比較します。税関総合情報wcoomd.org
  3. 通則/GIR章注・部注除外規定で候補を絞る(「まず該当する定義、次に除外」)。税関総合情報
  4. 迷うときは 事前教示(Advance Ruling) を検討:輸入前に税関へ文書照会し、分類の公式回答を得る制度です(公開データベースも有)。税関総合情報+3税関総合情報+3税関総合情報+3

補足:輸出用書類のHSは相手国の6桁が求められる場面があります。最終的には輸入国税関での受理が基準なので、相手側と整合確認を。トムソン・ロイター


2. 原産地規則の見つけ方:日本税関サイトを使う

使うサイト:日本税関「品目別原産地規則 検索画面」
(トップの「EPA・原産地規則ポータル」から到達可)

操作手順

  1. サイトにアクセスし、**協定(国名/Country)**を選択。
  2. HSコード4桁または6桁を入力(ドットなし)。
  3. 検索すると、該当品目の**品目別原産地規則(PSR)**が表示されます。
  4. 表示は関税譲許の有無に関わらずPSRが出る仕様のため、後述の関税譲許表も要確認。税関総合情報

重要な注意(サイト記載の要旨)

  • HSコード版の違いに注意:協定ごとにHS2002/2007/2012/2017/2022など採用版が異なるため、協定が採用する版で検索・読み替えが必要。WCOの相関表リンクも掲載されています。輸入申告は最新版HSを使用。税関総合情報
  • 関税譲許の確認:PSRが満たせても、対象品が関税撤廃・削減の譲許対象かは別問題。サイトから日本の実行関税率表相手国譲許表への案内があります。税関総合情報

3. 原産地基準の読み方

(A) CTC(関税分類変更)系

  • CC/CTC=類変更(2桁)、CTH=項変更(4桁)、CTSH=号変更(6桁)。非原産材料のHSが、最終製品の規定桁で別番号になることが条件。
  • 除外書きに注意:例「CTH(ただし○○からの変更を除く)」=その番号の非原産材料を使うと変更達成と認めない。日EU・EPAの同軸ケーブル等の例が公開資料にあります。ジェトロ

(B) RVC(域内原産割合)系

  • 控除方式RVC:RVC(%)=(FOB−VNM)/FOB×100(VNM=非原産材料価額)。
  • MaxNOM(非原産材料最大割合):MaxNOM(%)=VNM/EXW×100。
  • 日EU・EPA資料では、RVCはFOB基準MaxNOMはEXW基準で示され、計算例が図表つきで整理されています。ジェトロ

(C) 加工工程基準(Specific Process, SP)

  • 例:**化学反応(CR)**の実施を要件とするなど、特定工程の実施が条件。RCEPの公表資料に定義・例示があります。税関総合情報

(D) 併用・選択

  • 多くのPSRは「CTC 又は RVC」の選択ですが、品目・協定によっては両方必要(AND)や工程基準の追加もあります(例示:日印EPAなどの解説)。ジェトロ

4. 気をつけること

  • HS版ズレ:協定採用版(HS2012/2017/2022 等)でPSRを読む。必要に応じてWCO相関表で対応関係を確認。税関総合情報
  • 関税譲許の有無:PSR表示は譲許と無関係。実行関税率表/相手国譲許表優遇が存在するかも必ず確認。税関総合情報
  • 除外書き・脚注:PSRの括弧書きの除外材料注記は落とし穴。日EU・EPAの具体例(同軸ケーブル等)を参考に、材料毎のHSを棚卸して該当有無を精査。ジェトロ
  • AND/ORの読み取り:選択制か併用要件かで求める証拠が激変。協定文・注釈まで確認。ジェトロ
  • 最小限作業の不原産(Insufficient Working):単純な包装・選別等は原産性を与えない扱い。EUの公式解説でも強調されています(日EU・EPAの理解に有用)。trade.ec.europa.eu
  • デミニミスや累積の活用:わずかな非原産材料の許容(デミニミス)や累積規定で救済できる場合あり。RCEP資料の図解が実務に有用。税関総合情報
  • 価格基準の取り違い:RVCはFOB、MaxNOMはEXWなど、計算の価格基準を誤らない(協定・注記で要確認)。ジェトロ
  • 証憑の整備:自己申告・証明書に加え、計算根拠や裏付け資料(原材料の原産性、購買・製造・在庫記録等)を保持。税関ガイドラインも証拠書類の必要性を明示。税関総合情報
  • 協定選択の視点:同一相手に複数協定が使えるとき、単に税率だけでなくPSRの難易度や手続負担も比較すると実務最適。Business Growth Service
  • 相手国HSの整合:輸入国で受理される6桁かを事前に確認(輸入者・現地税関と照合)。トムソン・ロイター
  • 迷う場合:**事前教示(分類/原産地)**を活用し、将来紛争を未然防止。税関総合情報+1

5. 日本税関サイトでの「読み方」

  • 画面入力:国名(協定)HS4または6桁→検索。
  • 結果の典型表示:
    • CTH/CTSH/CC=関税分類変更(変更レベルに注意)
    • RVC◯◯%MaxNOM◯◯%=付加価値系(計算基礎FOB/EXWに注意)
    • **CR(Chemical Reaction)**等=工程基準
    • (○○からの変更を除く)等=除外(その材料は原産であることが前提)
    • 注記や脚注は必ず確認(AND/OR関係、例外、定義)
    • (注意)関税譲許の有無は別途確認税関総合情報ジェトロ

6. 1ページ・ワークフロー

  1. HS確定:通則→注解→候補比較→(必要なら)事前教示。税関総合情報+1
  2. PSR検索:税関サイトで協定×HS検索→PSR・注記を読み込む。税関総合情報
  3. 判定設計:CTCかRVCかSPか、AND/ORか、除外・デミニミス・累積の有無。税関総合情報ジェトロ
  4. 証憑整備:BOM・購買証跡、工程記録、RVC計算書、供給者原産声明等。税関総合情報
  5. 譲許確認:実行関税率表/相手国譲許表で対象か確認。税関総合情報

7. 用語解説

  • GIR(通則):HS分類の大原則。税関総合情報
  • PSR:品目別原産地規則。CTC/RVC/SPなどで原産性を判定。ジェトロ
  • CTC(CC/CTH/CTSH):非原産材料のHSが最終製品に対し規定桁で別番号へ変更。ジェトロ
  • RVC/MaxNOM:域内原産割合または非原産材料割合の基準(計算基礎に注意)。ジェトロ
  • SP(加工工程):化学反応など特定工程の実施が要件。税関総合情報
  • デミニミス/累積:わずかな不適合材料の許容、域内材料の相互みなし。税関総合情報

株式会社ロジスティックはFTA活用のコンサルタント。気軽にご相談ください。

初心者向け:EPAのSP(加工工程基準)完全ガイド

1. SPを理解するための基本用語

まず、原産地規則で頻繁に使われる基本的な用語を確認しましょう。

  • PSR(Product-Specific Rule:品目別規則) 産品ごとに定められた原産地要件のことです。多くの場合、関税分類変更基準(CTC)付加価値基準(VA)、**特定工程基準(SP)**が、単独または複数の選択肢として規定されています。日EU・EPAのPSRは、HSコード2017年版を基準に作成されています。
  • SP(Specific Process:加工工程基準) 化学反応、蒸留、紡績、編立、縫製など、産品の製造に不可欠な特定の工程そのものを協定域内で行うことを原産地要件とする基準です。化学品に関するSPの定義は、協定の附属書3-A(原産地手続)の注5に詳述されています。
  • 付加価値基準(VA: Value Added) 非原産材料の価額の上限(MaxNOM)や、協定域内で付加された価値の割合(RVC)を定める基準です。SP基準の代替として選択できる品目が多くあります。
    • MaxNOM(Maximum value of non-originating materials):非原産材料価額の上限。 計算式例: MaxNOM=VNM÷EXW​×100≤規定の割合(%) (VNM: 非原産材料価格, EXW: 工場渡価格)
    • RVC(Regional Value Content):域内原産割合。 計算式例: RVC=(FOB−VNM)÷FOB​×100≥規定の割合(%) (FOB: 本船渡価格)
  • 不十分な加工(Insufficient Working or Processing) 乾燥、包装、ラベルの貼り付け、単なる混合や組立てなど、産品に実質的な変更を加えないと見なされる軽微な作業です。たとえ品目別規則(PSR)の他の要件を満たしても、これらの作業しか行っていない場合は原産性が認められません
  • 非改変の原則(Non-Alteration Rule) 原産品として認められた産品は、日本とEU間の輸送途中で実質的な変更が加えられてはなりません。保管、仕分け、ラベル貼り替えなどのごく限定的な作業のみが許可されます。
  • 証明と記録保存 輸出者が作成する原産地に関する申告文(自己申告書、Annex 3-Dに規定)、または輸入者が持つ知識に基づいて原産性を証明します。輸出者は、申告の根拠となる書類を最低4年間保管する義務があります(輸入者は最低3年)。

2. 日EU・EPAにおけるSPの具体例

加工工程(SP)は、産品の分野によって様々なものが規定されています。

  • A. 化学品(HS第28~38類など)
    • 定義(附属書3-A 注5):分子構造を変化させる「化学反応」、沸点の差を利用する「蒸留」、材料を細かくする「粒度の変更」、不純物を取り除く「精製」、異性体を分離する「異性体分離」、微生物などを利用する「バイオテクノロジー工程」などがSPとして定義されています。
      • 注意:単なる溶解、溶媒の除去、結晶水の付加・除去は「化学反応」に含まれません。
    • PSRの例(第28~34類、38類など):多くの品目で「CTSH(HSコードの上4桁変更) または 特定のSPの実施 または 付加価値基準(MaxNOM 50%など)」のように、複数の選択肢から一つの要件を満たせば良いとされています。
    • 鉱物油(第27類):「蒸留」または「化学反応」の実施がSPとして規定されています。
    • バイオ燃料:「トランスエステル化」「エステル化」「水素化処理」といった特定の化学プロセスがSPとされています。
  • B. ゴム製品(HS第40類)
    • 再生タイヤ(HS 4012.11~4012.19):使用済みタイヤのトレッド(接地面)を張り替える「リトレッド」がSPとして明確に規定されています。
  • C. 繊維・衣類(HS第50~63類)
    • 基本原則:繊維分野では、原料から製品になるまでの一連の工程(紡績 → 製織・編立 → 染色・仕上げ → 縫製)のうち、**2つ以上の主要工程(二段階変更、double-transformation)**を経ることを基本としています。
    • PSRの例
      • 絹糸(HS 50.04~50.06):繊維の押出+紡績、撚糸+機械加工など。
      • 綿織物(HS 52.08~52.12):紡績+製織、製織+染色、糸染+製織、製織+プリントなど、複数の工程の組み合わせが規定されています。
      • 編物(HS第60章):編立+染色、編立+縫製など。
      • 衣類(HS第61~62章)
        • ニット衣料:編立+縫製(裁断を含む)。
        • 織物衣料:製織+縫製(裁断を含む)。品目によっては「プリント+縫製」で認められる場合や、併せて**非原産生地の価額上限(例:EXW価格の40%以下)**が定められている場合があるため、個別の条文確認が必須です。
    • 繊維の特別規定(附属書3-A 注6~8):最終製品の重量比10%以下の非原産材料を考慮しない「許容差(デミニミス)ルール」など、特別な規定も存在します。

3. SP基準を満たすための証拠書類(例)

SP基準で原産性を証明するためには、該当する工程を実施したことを客観的に示す書類が必要です。

  • 全品目に共通する書類
    • 部品表(BOM):非原産材料のHSコードと投入量がわかるもの。
    • 工程フロー図、製造指図書、作業標準書
    • 生産実績記録:ロット番号、製造日、使用設備、外注先の情報など、トレーサビリティを確保できるもの。
    • 輸送・保管記録:船荷証券(B/L)、航空貨物運送状(AWB)、通関書類など(非改変の原則を立証)。
    • 原産地に関する申告書の写しとその根拠資料(4年間保管)。
  • 化学品・鉱物油
    • 反応記録:温度、圧力、反応時間、触媒の種類、反応式など。
    • 蒸留記録:蒸留塔の運転ログ、温度データなど。
    • 分析データ:粒度分布、純度、不純物量の測定結果など、SPの定義を満たすことを示す証跡。
  • 繊維・衣類
    • 各工程の作業記録:紡績、編立、製織、染色、プリント、縫製などの設備稼働ログや外注契約書。
    • 裁断伝票、型紙など。

4. SP基準による原産性判定の実務フロー

以下の手順で確認を進めることで、正確な原産性判定が可能です。

  1. HSコードの確定:まず、輸入国(EUまたは日本)のHSコードで産品を特定します。
  2. PSRの確認:附属書3-Bで該当するHSコードのPSRを調べ、SPが選択肢として利用できるか、代替要件(CTC/VA)は何かを確認します。
  3. SP定義の照合:附属書3-Aの注釈などで、該当するSP(化学反応、蒸留など)の厳密な定義と自社の工程が合致しているかを確認します。
  4. 加工場所の確認:規定の工程が、日本またはEUの域内で完結していることを確認します(第三国での実施は認められません)。
  5. 不十分な加工でないことの確認:実施した工程が、不十分な加工に該当しないことを協定条文で確認します。
  6. 補足要件の確認:PSRに付加価値の上限や許容差ルールが併記されている場合は、それらも同時にチェックします。
  7. 非改変の原則の立証:輸送途中で実質的な加工が行われていないことを証明する書類を準備します。
  8. 自己申告書の作成・保存:原産地に関する申告書を作成し、全ての根拠書類とともに4年間保管します。

5. ケーススタディ:SP基準の適用例

  • 例1:有機化学品(HS第29類) PSRに「化学反応の実施」があれば、反応式や製造ログで「分子構造を変化させた」ことを立証します。これにより、CTCやVA基準を計算することなく原産性を満たせます。
  • 例2:Tシャツ(HS 6109) PSRに「編立および縫製」とあれば、生地の編立とTシャツへの縫製を域内で行った記録(稼働ログ、裁断伝票など)を揃えることで原産性を証明できます。
  • 例3:再生タイヤ(HS 4012.11) PSRに「リトレッド」と明記されているため、使用済みタイヤのトレッドを剥がし、新しいトレッドを貼り付けて加硫した工程記録を証拠とします。

6. SP基準を適用する際の主な注意点とよくある間違い

SP基準の適用では、思い込みや誤解によるミスが発生しがちです。以下の点に特に注意してください。

  • 「混合」と「化学反応」の混同 単に複数の薬品を混ぜ合わせただけでは「化学反応」にはなりません。分子構造の変化を伴うことが定義であり、単純混合は不十分な加工と見なされる可能性があります。
  • 工程の定義を厳密に確認する 「粒度の変更」は、単に砕くだけでなく「管理された方法で特定の粒度分布にすること」が求められるなど、各工程には厳密な定義があります。協定の注釈を必ず確認してください。
  • 「プリント工程」の過信 繊維製品において、プリントと縫製だけで原産性が認められるのは、PSRにそのように明記されている特定の品目に限られます。すべての衣類に適用できるわけではありません。
  • 代替規則や但し書きの見落とし PSRで要件が「;(セミコロン)」で区切られていれば**選択可能(OR)ですが、「,(カンマ)」や「及び」で繋がれていれば両方を満たす必要(AND)**があります。非原産材料の価額上限などの但し書きも見落とさないようにしましょう。
  • 加工場所は協定域内に限定 SPとして認められる工程は、すべて日本またはEUの域内で実施されなければなりません。第三国での委託加工は、SPの根拠には使えません。
  • 輸送と記録保存の徹底 輸送中に第三国で実質的な変更が加えられたり、根拠書類の保管義務(輸出者4年)を怠ったりすると、原産性が否認されるリスクがあります。

ロジスティックはFTAの原産地証明のプロフェッショナル。お困り事はロジスティックまで。

FTA/EPA 原産地証明で日本企業が陥りやすい5つのポイント

FTA/EPAの原産地証明で日本企業が間違えやすい5つのポイントを、原因と実務での対策セットで整理しました。


1. 協定の選択ミス(RCEP/CPTPP/二国間EPA等の取り違え)

  • ありがちな状況: 相手国に複数協定が並立しているのに、最初に見つけた協定のPSR(品目別規則)で判定してしまう。結果、要件不一致や不要に厳しい基準を適用してしまう。
  • リスク: 特恵関税の適用が否認され、追徴課税が発生する。また、事後調査(検認)で指摘を受ける可能性がある。
  • 対策: 輸出先×HSコードごとに**「協定比較表」**(適用される関税率、PSR、証明方式、自己申告の定型文/番号、有効期限など)を整備する。見積段階で最適な協定を確定し、社内承認の必須項目とすることが望ましい。

2. HSコードの誤分類 → 間違ったPSRの適用

  • ありがちな状況: 品名だけでHSコードの上4桁や6桁を判断し、関税率表の**「類注」「部注」や「通則(GRI)」**を確認していない。あるいは、材料や機能のわずかな差異を見落としてしまう。
  • リスク: 適用すべきPSRそのものが別物になり、原産性を満たせなくなる(関税番号変更基準や付加価値基準の要件が変わる)。
  • リスク要因の補足: HSコードは約5年ごとに大きな改正があり、知らないうちに自社製品のHSコードが変更されている可能性もある。
  • 対策: HSコードは仕様書と現物で確認し、必ず「類注」「部注」「通則」まで精読する。分類が難しい品目や変更が多い品目は、専門家レビューや税関への**「関税分類事前教示」**の取得をルール化する。見積時と出荷時でHSコードに相違がないか、チェック体制を構築する。

3. 原産資格の計算ミス(RVC/CTC/加工要件の読み違い)

  • ありがちな状況:
    • RVC(付加価値基準): 計算方式(積上方式 / 控除方式)や、計算の基礎となる価格(EXWかFOBか)を取り違える。非原産材料の価格に含めるべき費用範囲を誤解する。為替換算日が部署ごとに異なり、計算結果がぶれる。
    • CTC(関税番号変更基準): 非原産材料からのHSコードの変更(が、協定で定められたレベル(例:2桁、4桁、6桁)を満たしているかどうかの判定を誤る。
    • その他: デミニミス(僅少の非原産材料を無視できるルール)や、同種の材料をまとめて扱うことのできるルールの適用を誤解する。
  • 対策: 協定ごとに計算用テンプレートを分け、計算式・費用範囲・換算日などを固定化し、ミスを防ぐ。見積書、請求書、BOM(部品表)など、計算の根拠となる証拠書類を案件ごとに整理・保存する。価格改定、工程変更、部材変更など、計算結果に影響する事象が発生した際に、再計算を促す管理表を作成する。

4. 裏付け資料の不足と累積(Accumulation)の誤用

  • ありがちな状況: 国内で調達した材料だからという理由で、証拠なく「原産材料」と見なしてしまう。サプライヤーから入手した原産性証明資料(サプライヤー証明書)の有効期限や、対象となる協定を確認していない。累積(他の協定締約国の産品を自国の原産材料と見なせる制度)を利用する際に、対象国や要求される様式、記載事項を満たしていない。
  • リスク: 事後調査(検認)時に、材料の原産性を立証できず、産品全体の原産性が否認される。
  • 対策: BOM(部品表)の各部材について、原産性(原産か非原産か)、その根拠書類、適用協定、有効期限などをまとめた**「原産性管理マップ」**を作成する。サプライヤー証明書は定期的な更新を徹底し、可能であればロットと紐づけて管理する。累積を利用する場合は、必ず協定の累積条項を読み込み、使用可否と必要な手続き・書式を事前に確認する。

5. 物流・書類運用の要件不備

  • ありがちな状況:
    • 直接輸送の原則: 第三国を経由する際に、保税地域で行った仕分けやラベリングが、協定で許容される「軽微な加工」の範囲を超えてしまい、原産性を喪失する。
    • インボイス: 第三国インボイスを利用する際に、協定で規定された文言や記載欄への記入が漏れる。
    • 証明書・申告文: 自己申告制度において、協定で定められた定型文や、認定輸出者番号/法人番号などの記載が不正確である。
    • その他: 分割輸送や、中継貿易で利用されるバック・トゥ・バック原産地証明書の発給条件を確認しないまま手配してしまう。
  • 対策: 輸送ルートを設計する段階で、協定の「直接輸送の原則」と「非加工証明」の要件を確認する。第三国インボイスの必須記載事項をインボイスの雛形に反映させる。原産地証明書や自己申告文は、協定別のチェックリストを用いて、定型文・番号・署名の要否・有効期限などを複数人で確認する。

■新着記事はこの後■ 無料FTA-BPOセミナー011「FTA原産地規則:VAの実態」

第11回目の無料セミナーのテーマは、「FTA原産地規則:VAの実態」です。


人気のFTA原産地証明解説、今回はVAに焦点を当てます。

どういう点を考えるべきなのかをお話しします。


■■ 講師 ■■
TSストラテジー株式会社 代表取締役 藤森 陽子 氏

■■ 開催日時 ■■
2025年9月17日(水) 14:00~15:00

■■ セミナー形式 ■■
Webでの開催のみ(Teams利用予定)
セミナーへのご参加は、実際にFTAを活用する企業に限定させていただきます。
お申し込みの後、ご参加頂く方にリンクをお送りいたします。

■■ 申込み ■■
このフォームにご記入の上、送信ボタンを押してください。
Webのみでの開催となります。ふるってご参加下さい。

FTAでの対象HSコード年次:AIに尋ねると本当によく間違う

HSコードがおよそ5年おきに更新されること、FTAではFTAでのルールを決める際のHSコードの年次が各協定で決まっていることは、担当者では極々当たり前です。

しかし、「日本インドCEPAのHSコードの年次はいつ?」と聞いてもとあるAIでは正しく回答できないことが多くあります。

大変残念なことです。

現在、AIを使ったHSコード符番システムとFTA業務支援システムを構築中でほぼできあがりつつあります。

ただ、こういったところの単純なミスは困るので、頑張って問題点を探し出し、修正をしています。

HSコードの年次はAIにはわかりにくいのですかね。

BPOのお仕事:企業の担当者が抱えている悩み

新たに、BPOの仕事が始まりました。

キックオフのミーティングで進め方などいろいろと話をしましたが、話が進むにつれ、担当者の表に出せない悩み、苦悩が語られました。

この仕事とは関係ないですが、原産地証明として成立していない事例や、不十分な情報で対応している場合など。特に自己証明が可能となる日EUやCPTPPなどは、問題が即座に表面化しないので、問題の先送りになります。

また、FTAの業務を行うと社内で相談できる人がおらず、結果として問題となってしまうことが少なからずあります。

問題点は社内で簡単に打ち明けられるものではありません。自分の評価に影響を与えますし、アドバイスよりは叱責が先に来るかもしれません。それで問題が解決擦ればいいですが、方法が分かる同僚や上司がいないのがFTA。困ったものです。

上司にしても、問題点やリスクは報告してもらいたいものです。関税削減だけを上司や経営陣が求めているわけではなく、問題点の早期報告と早期解決をしたいものです。

責任を取るのは彼らですから。

私たち外部のプロは100%問題を回避できると断言できるわけではありませんが、問題点を修正する努力をし、また解決できない問題点の対処方法を企業の上司や経営陣に客観的に報告し、状況の理解と経営判断をしてもらうことを行っています。

弊社には、FTAの抱えている問題点を明確にする、無料FTA診断サービスがあります。

一度そちらを受けてみて、企業のヘルスチェックをされては如何でしょうか。

FTAの企業活用の流れ:日インドCEPA

昨今の企業のお仕事要望のほとんどが日インドCEPAの活用です。

トランプ関税の影響からか、他市場への販売の拡大を目指す企業が多いこと。インド企業からの日インドCEPAの利用を条件とした取引が多くなっていることが挙げられます。

前回のFTA戦略的活用研究会でも、インド向けの船の需要が大きくなっている印象を語っておられたメンバー様もいらっしゃいました。

ご存じの通り、日インドCEPAはCTCとVAの双方で証明をせねばならず、決して楽ではありません。

特にサプライヤ証明が必要な場合はそのサプライヤでもCTC+VAが必須となりますので、単独では、サプライヤの企業が難色を示すことが多く、当社のような第三者が間に入るとかえって有効に証明が出来ることが多いです。

FTA-BPOセミナー 004「FTA原産地証明で知ると便利な知識 その1」のビデオをアップしました


FTABPOセミナー004「FTA原産地証明で知ると便利な知識 その1」FTAの原産地証明で、実務上知っておくと為になる情報をお話しします。

株式会社ロジスティック
代表取締役 嶋 正和 氏
 ・FTA BPOチーム メンバー

講師略歴
日本におけるFTAコンサルティングの先駆者

■■学歴■■
東京大学工学部電子工学科卒
フランスINSEAD(Institut Européen d’Administration des Affaires) MBA

■■職歴■■
ボストンコンサルティンググループ
株式会社フットワーク(物流企業:現トールエクスプレスジャパン株式会社) 
ローランドベルガー
2000年に株式会社ロジスティックを設立。現在に至る

■■ セミナー日時 ■■
2025年2月14日 14:00~15:20

今月のFTA-BPOセミナー「HSコードの基本 ~基礎の基礎~」のビデオをアップいたしました

今月のFTA-BPOセミナーのビデオをアップいたしました。

FTA-BPOセミナー003 
「HSコードの基本 ~基礎の基礎~」  

YouTubeリンク


GTRセンター代表 宮崎千秋 氏 

講師略歴
・日本におけるHSコードの第一人者 ・1966 年大蔵省入省(門司税関)
  ー 関税局課長補佐(品目分類)、WCO 事務局TA、税関研修所主任教官、
    関税局特殊関税調査官、同国際協力専門官、東京税関調査保税部次長、
    神戸税関監視部長、横浜税関業務部長、同監視部長などを歴任
  ー 日米税関手続の比較調査、関税評価制度の導入、HS 導入及び運用、
    米国スーパー301交渉、京都規約改正作業、ASEAN 共通関税率表
    の作成及び同FTA 原産地規則研修教材作成等に携わる。
・元 日本関税協会調査研究担当部長
・著書及び執筆『 関税(品目)分類詳解【Ⅰ/Ⅱ】』、『関税評価303』

セミナー日時
2025年1月23日 14:0015:20

注:講師機材の不調により音声は携帯電話からのもので聞きづらいかもしれませんが、聴講には支障はないと考えます。