中国、鋼材輸出に新たな許可要件 2026年1月から何が変わるのか

2026年1月1日から、中国は一部の鉄鋼製品について輸出時に「輸出許可証」を求める制度を開始します。対象はHS10桁ベースで約300品目とされ、原料から半製品、鋼板・コイル、めっき材、形鋼、鋼管など広い範囲をカバーします。輸出実務に直結するため、調達・販売・物流の現場が先に影響を受けやすいテーマです。 (ジェトロ)

本稿は、2026年1月27日時点で確認できる一次情報と信頼できる報道に基づき、制度の要点と実務対応を整理します。 (中国商务部)

要点サマリー

項目内容
施行日2026年1月1日
根拠文書商務部・海関総署 公告2025年第79号(文書日付は2025年12月9日、公表は12月12日)
対象一部鉄鋼製品(HS10桁で約300品目、詳細は公告添付リスト)
申請に必要な主要書類輸出契約、メーカー発行の製品品質検査合格証明
許可証の発給機関商務部および委託を受けた省級・一部副省級都市の商務主管部門など(企業属性で管轄が分かれる)
実務細則未規定事項は公告2024年第65号に従う

上記は、ジェトロの整理と中国商務部の公告本文に一致します。 (ジェトロ)

1. 何が変わったのか 輸出許可証が必要になる

今回のポイントは「鉄鋼の輸出が全面禁止になる」ではなく、対象品目を輸出する際に、通関前提として輸出許可証を取得し、税関手続で提示できる状態にしておくことが求められる点です。公告2025年第79号は、既存の「輸出許可証管理貨物目録(2025年)」を調整し、鉄鋼製品の一部を当該目録に追加する、と明記しています。 (中国商务部)

実務上は、次のどこかで詰まると出荷が止まります。

  1. 対象品目かどうか(HS10桁の判定、製品仕様の確定)
  2. メーカー品質証明の手当て(発行主体・記載内容・タイミング)
  3. 許可申請の受付・審査(申請窓口の確認、差戻し対応)
  4. 通関時の整合(申告HS、インボイス記載、許可証の一致)

制度は、輸出企業の社内手続ではなく、出荷そのものに影響する運用ルールです。 (中国商务部)

2. 対象範囲は広い 原料から完成品まで

ジェトロは対象をHS10桁で約300品目と整理しています。 (ジェトロ)
JOGMECやCISTECの解説でも、原材料・一次形状品(銑鉄、再生鉄鋼原料、鉄鋼くず等)から、半製品(ビレット、スラブ等)、熱延・冷延、めっき・コーティング、その他鋼材や鋼管まで、産業チェーン全体を網羅する構成である点が強調されています。 (JOGMEC 石炭資源情報)

ここで重要なのは、一般に「鋼材」と聞いて想起する薄板・形鋼だけではなく、半製品やスクラップ類も含み得る設計になっていることです。対象判定を甘く見ると、契約済みの出荷直前にストップするリスクが上がります。 (JOGMEC 石炭資源情報)

3. 申請に必要なもの 契約と品質証明が鍵

公告2025年第79号は、対象品目を輸出する際、輸出契約とメーカー発行の製品品質検査合格証明で許可を申請すると明記しています。 (中国商务部)

この要件は、現場に次の行動を迫ります。

  • 取引スキームの再設計
    例えば、商社が輸出者でメーカーが別の場合、品質証明の入手ルートと責任分界を契約に落とし込む必要があります。
  • 書類の整合管理
    品質証明に紐づくロット、規格、品名、仕様が、インボイスや通関申告とズレると差戻しの原因になります。
  • リードタイムの織り込み
    許可取得の所要日数は案件・地域でブレます。月末集中出荷やスポット案件ほど遅延が表面化しやすくなります。

制度の狙いとして「品質」を前面に出している点は、各種報道でも繰り返し言及されています。 (Reuters)

4. 誰が許可証を出すのか 窓口が分かれる

公告本文は、商務部および委託を受けた省級地方の商務主管部門、さらに一部副省級都市の商務主管部門などが分担して許可証を発行するとしています。加えて、北京で国務院国資委監督下の企業は商務部許可証局が発行し、それ以外は所在地の省級または副省級都市の主管部門が発行する、と管轄分岐も書かれています。 (中国商务部)

ここは日本企業側も無関係ではありません。なぜなら、許可取得の窓口が誤っていると、申請差戻しで出荷遅延になり、そのコストはサプライチェーン全体に転嫁されやすいからです。

5. なぜ今なのか 貿易摩擦と「量は増えたが値は下がる」構造

背景として複数の論点が重なっています。

  • 輸出量の増加と対外摩擦の増加
    JOGMECは、輸出価格の下落や低付加価値品の増加、反ダンピングなど貿易摩擦の増加に触れています。 (JOGMEC 石炭資源情報)
  • 国際的な保護主義の圧力
    ロイターも、増加する中国鉄鋼輸出が各国で反発を招いている点を背景として報じています。 (Reuters)
  • WTO整合性を意識した「監視・管理」手段
    ロイターは、中国商務部が本制度をWTOルールに沿うものと説明していること、輸出量の制限そのものではない旨を述べたことを報じています。 (Reuters)

ビジネス目線での読み方はシンプルです。中国が輸出の蛇口をすぐに締めると断定はできない一方、輸出フローを制度的に追跡し、品質証明を紐づけることで、今後より強い運用(対象拡大、審査厳格化、別制度との連結)に移行できる土台が整う、という点に意味があります。 (中国商务部)

6. 日本企業にとっての実務インパクト

中国から鋼材・鋼材加工品を調達する企業、または第三国向けに中国製鋼材を扱う商社・物流企業は、次の影響を見込むべきです。

  1. 納期リスクの増加
    許可取得が前工程として追加されるため、従来のリードタイム設計が崩れます。スポット輸送や短納期案件ほど影響が出ます。 (中国商务部)
  2. 契約実務の論点増
    契約条件に「輸出許可証の取得と提示」「未取得時の解除・遅延免責」「追加費用負担」「代替調達」などを明確化しないと、揉めやすくなります。
  3. HS判定の重要度が上がる
    対象品目がHS10桁で規定されるため、分類の揺れがそのまま通関可否に響きます。 (ジェトロ)
  4. 品質証明書の標準化圧力
    「メーカー発行の品質検査合格証明」が要件に入ったことで、従来のミルシート運用や検査体系が弱いサプライヤーは遅延要因になります。 (中国商务部)

7. 今日からできるチェックリスト

輸入者・購買側(日本企業)向け

  1. 調達品目が対象かをHS10桁で特定する
    現行のインボイスHSと、実際の仕様を突合する。
  2. サプライヤーに確認する
    対象なら、どの当局窓口で許可申請するのか、申請に必要な品質証明は誰がいつ発行するのか。
  3. 出荷条件を更新する
    出荷前に許可証写しの提出を求め、未取得時の対応(納期延長、代替、キャンセル)を条文化する。
  4. 物流と通関の手順を見直す
    ブッキング前に許可取得状況を確認するゲートを設ける。

輸出者・商社側(中国側サプライヤーを含む)向け

  1. 対象判定のワークフローを固定する
    設計変更・規格変更がある場合、HSと対象判定が変わる前提で管理する。
  2. 品質証明書のテンプレートと発行責任を決める
    ロット、規格、数量、品名が契約・インボイス・申告と一致するように統一する。
  3. 申請窓口を間違えない
    公告にある管轄分岐(商務部許可証局、地方商務主管部門、副省級都市など)を確認する。 (中国商务部)
  4. 細則は公告2024年第65号で補完される前提で読む
    同公告には、許可の申領、許可機関、通関使用回数に関する枠組みが示されています。 (中国商务部)
    ロイターは、鋼材の輸出許可について有効期間や通関での利用回数が論点になる旨も報じています。 (Reuters)

8. 今後の注視点

  • 対象リスト(HS10桁)の改訂有無
    制度開始後に、対象の微調整が入る可能性があります。 (中国商务部)
  • 審査運用の実態
    申請が集中する時期や地域で遅延が恒常化するか。
  • 品質要件の厳格化
    「品質証明が必要」という設計は、将来的に具体的な規格適合や検査要件の強化につながり得ます。
  • 各国の通商措置との連動
    反ダンピングやセーフガードなど対外措置の状況次第で、輸出管理がより政策的に使われる余地があります。 (JOGMEC 石炭資源情報)

中国「対日デュアルユース品目の即時輸出規制」を深掘りする


2026年1月6日、中国商務部は「商務部公告2026年第1号」を公布し、日本向けのデュアルユース品目について輸出管理を強化し、公布日から即時施行しました。内容は、すべてのデュアルユース品目について、日本の軍事ユーザー、軍事用途、そして日本の軍事力向上に寄与するその他の最終ユーザーや用途向けの輸出を禁じるというものです。さらに第三国を経由した移転や提供についても、違反があれば法的責任を追及すると明記されています。[mofcom.gov]​

ビジネスの現場で重要なのは、今回の措置が「特定品目の禁輸リスト」ではなく、最終用途と最終ユーザーに強く依存する仕組みである点です。つまり、同じ部材や素材であっても、用途や顧客の性質次第で止まる可能性があり、その不確実性が調達や納期、契約、在庫、顧客対応まで広く波及します。[mofcom.gov]​

以下では、公式文書と複数の信頼できる報道、専門家向け解説を突き合わせ、ビジネス実務に落とし込んで整理します。

1. 何が起きたのか

中国商務部公告2026年第1号の骨子は3点です。[mofcom.gov]​

1点目。中国は、すべてのデュアルユース品目について、日本の軍事ユーザー、軍事用途、ならびに日本の軍事力向上に寄与するその他の最終ユーザーや用途向けの輸出を禁止するとしています。[mofcom.gov]​

2点目。違反の対象は中国国内企業に限りません。中国原産の関連デュアルユース品目を、第三国の組織や個人が日本の組織や個人へ移転または提供した場合でも、法に基づき責任を追及すると書かれています。言い換えると、迂回輸出や再輸出の経路も視野に入れた条文です。[gvw]​

3点目。公告は公布日である2026年1月6日から即時施行です。施行猶予がないため、実務面では輸出許可の審査が急に厳しくなる、審査が止まる、書類要求が増えるなどが起きる可能性があります。[jetro.go]​

加えて重要なのが、具体的な対象品目の明示がないことです。公告は品目リストを示しておらず、ジェトロは「日本の軍事力向上に寄与するその他一切のエンドユーザー・用途」などの定義の詳細が説明されていないと指摘しています。[jetro.go]​

2. デュアルユース規制の本質は「用途と顧客」で決まる

デュアルユースとは、民生にも軍事にも転用可能な財・ソフトウェア・技術を指します。今回の公告の表現は「すべてのデュアルユース品目」ですが、これは「世界のあらゆる民生品」を意味するわけではなく、中国の輸出管理制度上のデュアルユース品目の枠組みを前提にした用語と読むのが自然です。[gvw]​

中国には海外出荷に許可を要するデュアルユース品目・技術の輸出管理リストが約1,100項目あると報じられています。この種の制度では、品目分類に加えて、最終用途の確認や最終需要者の審査が実務上の核心になります。[reuters]​

今回の公告は、この用途審査を日本向けに強く締める形です。条文上は、軍事ユーザー・軍事用途に加えて、「軍事力向上に寄与するその他の最終ユーザー・用途」という包括的概念が追加されています。ここが企業実務にとっての最大の難所です。[gvw]​

3. 企業にとって厄介なのは「曖昧さ」がコストになる点

日本の経済産業大臣は2026年1月9日の記者会見で、措置の対象などに不明瞭な点が多く、現時点で産業への影響をコメントできる状況ではないとしつつ、精査・分析し臨機応変に対応する方針を示しています。[jetro.go]​

この「不明瞭さ」は、企業側の追加コストに直結します。例えば次のような形です。

  • 仕入先が輸出許可の要否判断に慎重になり、出荷が止まる
  • エンドユーザー誓約書や用途説明の追加提出を求められ、事務負担が増える
  • 審査が長期化し、リードタイムが読めなくなる
  • 取引が止まった場合の不可抗力、違約金、代替調達など契約論点が顕在化する

長島・大野・常松法律事務所の解説も、公告の文言上は通常の民間用途まで一律禁止するものではない一方、定義や解釈が示されていないため、許可取得が想定外にできない、または審査に時間がかかる可能性を指摘しています。[jetro.go]​

4. 日本政府と中国側の説明を並べて読む

日本側は強く反発し、撤回を求めています。官房長官が「決して許容できない」と述べ、外務省・経産省・在北京大使館などが抗議し撤回を求めたと報じられています。[jetro.go]​

一方、中国側は「民生ユーザーには影響しない」との立場を示しています。商務部報道官が「民生ユーザーは影響を受けない」「正常な民生貿易を行う関係者は全く心配する必要はない」という趣旨を述べたと伝えられています。ただし、レアアースが規制対象に含まれるかは明言されず、どの品目が影響を受けるかは特定されていません。[youtube]​[reuters]​

ここから導ける実務的な見立ては次の通りです。政治的メッセージとしては「軍事向けに絞る」と説明しても、現場の審査実務は「疑わしきは慎重に」へ傾きやすい傾向があります。結果として、民生用途の調達でも書類や審査が重くなり、遅延やキャンセルが起こり得ます。これは、制度そのものというより、運用リスクです。[jetro.go]​

5. どの業界が影響を受けやすいか

公告は品目を列挙していないため、「この製品が確実に止まる」と断言するのは危険です。ここでは、輸出管理上デュアルユースに該当しやすい領域と、日本の対中依存が大きい領域を中心に、影響感応度が高い分野を整理します。[jetro.go]​

野村総合研究所の分析では、もし中国当局が軍民両用品目を広く捉えれば、半導体や電子部品、精密機械、EV電池関連の化学品やレアアース、通信機器、PC類などが含まれ得るとしています。さらに、輸入規模を広めに見積もると年間10.7兆円規模に達し得るものの、これは最大値であり実際の規模は当局裁量に依存するとしています。[nri]​

またレアアースは、総額としては小さく見えてもサプライチェーンの代替が難しいため、止まると痛手が大きい典型です。同じく野村総合研究所は、過去の経験も踏まえ、輸出規制が3か月続くと損失額が約6,600億円、1年続けば約2.6兆円に達し得るという試算を示しています。[youtube]​[nri]​

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国が日本向けのレアアース輸出規制を強化した可能性を報じており、レアアースやレアアース磁石が自動車部品やEVで重要である点、そして日本がレアアース輸入で中国への依存が高い点が指摘されています。[wsj]​[youtube]​

6. 企業が今すぐやるべき実務対応

ここからは、調達・製造・販売の現場が実行できる形に落とします。ポイントは「止まってから動く」ではなく、「止まる可能性のある取引を先に特定して、説明可能な状態にしておく」ことです。

6-1. 影響の棚卸しは、品目ではなくサプライチェーンで

まずやるべきは、対中調達の全量を眺めるのではなく、止まった瞬間にラインが止まる部材や素材から逆算することです。

  • 製品別に、重要部材のBOMを分解
  • 中国原産、中国サプライヤー経由、第三国経由でも中国原産の可能性がある部材をマーキング
  • その中で、デュアルユースに該当し得る技術領域のものを優先的に抽出

公告は「中国原産」の移転・提供にも責任追及を明記しています。原産性の整理を先にやる理由はここにあります。[gvw]​

6-2. 用途説明とエンドユーザー説明を、調達の前工程へ

今回のタイプの規制は、用途説明の弱さがそのまま遅延リスクになります。中国側の輸出許可審査では、用途・需要者の説明責任が重くなる可能性があります。[jetro.go]​

実務としては、次のような資料を平時から整備しておくと、止まりにくくなります。

  • 最終用途の説明書
  • 最終需要者の属性情報と、軍事用途に供しない旨の社内方針
  • 販売先やインテグレーターの再販制限条項
  • 需要者変更が起きた場合の社内エスカレーションルート

「民生用途だから大丈夫」という主張より、書面で説明できるかが勝負になります。[reuters]​

6-3. 契約面の手当ては、不可抗力だけでは不十分

輸出管理が原因で止まる場合、不可抗力条項に頼りきると交渉が硬直します。供給停止に備え、サプライヤーや顧客との契約条項を点検し、準拠法や強行法規も含め総合的に検討すべきです。[jetro.go]​

ビジネス側で最低限押さえたい観点は次です。

  • 供給停止時の通知義務と代替供給の協力義務
  • コスト増分の負担ルール
  • 納期遅延時のペナルティ取り扱い
  • 在庫確保の責任分界
  • 取引停止の条件と、再開時の手続き

6-4. 代替調達は、時間軸で分ける

代替調達は一度にやろうとすると失敗します。時間軸で分けるのが現実的です。

直近の納期を守るための短期策

  • 在庫の積み増し、仕様変更の最小化、既存サプライヤーの審査加速

6か月から1年の中期策

  • 二次調達先の開拓、部材標準化、設計変更の準備

1年超の長期策

  • 調達先の地理分散、国内回帰の採算評価、重要鉱物の調達戦略の見直し

経産大臣会見でも、重要物資が特定国に過度に依存しない強靱なサプライチェーン構築が必要だという認識が示されています。企業側も、単なる危機対応ではなく、経営課題として継続運用する発想が必要です。[jetro.go]​

7. 今後の展開を読むためのシナリオ

不確実性が高い局面では、当てに行く予測より、外れても耐える設計が重要です。ここではシナリオを3つに分けます。

シナリオA: 形式的には軍事向けに限定され、民生取引は大枠で維持

中国側が示す「民生ユーザーは影響しない」という説明通りに運用が安定するケースです。この場合でも、審査や書類要求の増加によるリードタイム悪化は残ります。[reuters]​

シナリオB: 品目特定がないまま、運用が保守化し、民生でも止まる取引が増える

定義が曖昧なまま、サプライヤーや審査当局が保守的判断を重ねると、民生用途のはずの取引でも許可が下りにくくなり得ます。ジェトロが指摘する「規制対象が不明瞭」という点が、まさにこのリスクです。[jetro.go]​

シナリオC: レアアースや関連磁石の審査が目詰まりし、影響が実体化

ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国が日本向けのレアアース輸出規制を強化した可能性を報じています。報道の確度は慎重に扱う必要がありますが、影響が出た場合の経済損失が大きい点は、複数の分析で共通です。[nri]​[youtube]​

8. まとめ

今回の公告の核心は、次の一文に集約されます。

デュアルユース品目は、品目だけではなく、誰が何に使うかで止まる時代に入った。[mofcom.gov]​

調達部門だけの問題ではありません。営業がどんな顧客に売るか、技術がどんな仕様にするか、法務がどんな条項を入れるか、経営がどこに在庫と資金を配分するか。これらが連動して初めて、輸出管理リスクはコントロールできます。

最後に、これは一般情報であり、個別案件への法的助言ではありません。実取引で判断に迷う場合は、貿易管理の専門家や弁護士、通関士等に早めに相談することをおすすめします。[jetro.go]​

中国、対日レアアース輸出管理を強化


いま企業が押さえるべき実務ポイント

2026年1月上旬、中国が日本向けのデュアルユース(軍民両用)品目に対する輸出管理を強化する方針を打ち出し、レアアースとレアアース磁石の供給不安が再燃しています。poder360+1​
ポイントは、今回の措置が「レアアースのみを名指しした禁輸」ではなく、デュアルユース品目を包括的に対象とする輸出禁止措置として導入され、その運用次第で民生用途向けのレアアース関連品にも影響が波及し得る点です。reuters+2​

この記事では、一次情報として確定している制度内容と、報道ベースで伝えられている運用状況を切り分けつつ、調達・生産・法務・通関実務が今すぐ取るべき対策を整理します。


1. 何が起きたのか

公式発表と報道を分けて理解する

まず、一次情報として確定しているのは、中国商務部による公告です。chemical.chemlinked+1​
2026年1月6日、中国商務部は「商務部公告2026年第1号」を公表し、日本向けのデュアルユース品目について輸出管理を強化する措置を即時発効としました。globaltimes+1​

公告の要点は、

  • 全てのデュアルユース品目について、日本の軍事ユーザー向け、軍事目的向け、ならびに日本の軍事力の向上に資するあらゆる最終用途向け輸出を禁止すること
  • 第三国の組織・個人が、中国原産の当該デュアルユース品目を日本の組織・個人に移転・提供した場合にも、違反として法的責任を追及し得ると明記したこと
    にあります。poder360+2​

一方、公告文そのものには「レアアース」という品目名は列挙されておらず、対象はあくまで「デュアルユース品目一般」として定義されています。globaltimes+1​
日本政府は、この措置について「対象や内容が必ずしも明確ではない」と懸念を示し、説明と撤回を求めつつ、影響の精査が必要だと述べています。kathmandupost+1​

そのうえで、報道ベースでは次のような動きが伝えられています。

  • 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの報道として、中国当局が日本企業向けのレアアースおよびレアアース磁石の輸出について、輸出許可申請の審査を停止、または大幅に制限し始めたとされること。english.kyodonews+1​youtube​
  • 中国側は「民生用途の輸出には影響しない」と説明する一方、レアアースが実際に今回のデュアルユース措置の直接対象に含まれるのか、また許可審査の運用をどの程度厳格化しているのかについては明言を避けていること。facebook+1​

このため、現時点で確実に言えるのは「対日デュアルユース規制の強化」という枠組みが一次情報として確定しており、その運用の一環としてレアアースおよびレアアース磁石の輸出許可審査の厳格化・停滞が生じている可能性が高い、という整理になります。wsj+3​


2. なぜレアアースが巻き込まれやすいのか

レアアースは、EV駆動モーター、産業ロボット、HDD、各種センサーなど民生用途で広範に使用されると同時に、高性能永久磁石(ネオジム磁石など)を通じて、防衛装備や航空宇宙など典型的な軍事転用用途にも不可欠な部材です。csis+2​
中・重希土類(ジスプロシウム、テルビウム等)は特に高性能磁石の耐熱性向上に使われ、防衛関連のモーター・アクチュエーター用途における重要性が高いと指摘されています。spf+1​

今回の対日措置は、品目名ではなく「用途」や「エンドユーザー」に着目して輸出を禁止する構造です。chemical.chemlinked+2​
そのため、同じレアアース磁石であっても、最終用途や顧客情報に軍事転用の疑義がある場合には、許可審査が止まりやすく、民生用途を主張していても、用途説明が不十分なだけで審査遅延が生じるリスクがあります。csis+2​


3. 依存度の現実

供給国分散後も加工工程は中国集中

日本は2010年の対中レアアース摩擦以降、輸入先の分散や備蓄の強化を進めてきましたが、それでもレアアース供給における中国依存は依然として高水準です。cnbc+2​
各種統計・推計の前提は異なるものの、2024年前後のデータでは、日本のレアアース輸入に占める中国の割合は概ね6割前後から7割程度とされる例が多く、依存度がなお高いことがうかがえます。finance.yahoo+2​

一方で、日本は豪州・ベトナム・マレーシアなどからの調達を増やし、中国依存度を2010年当時の9割超から6割弱程度まで下げたとの分析もあり、数量ベースでは一定の分散が進んでいます。cnbc+1​
しかし、精錬・分離などの中間加工工程は依然として中国の比率が極めて高く、世界全体のレアアース精製能力の大半が中国に集中しているとの指摘が続いており、採掘地を分散しても加工段階でボトルネックが生じやすい構造が変わっていません。bgrdc+2​

このため、日本企業が調達先を表面的に分散していても、どこかの工程で中国の輸出管理・許可審査に依存している限り、今回のような審査運用の変化がサプライチェーン全体に波及するリスクが残存します。sfa-oxford+2​


4. 制度インフラはすでに整っていた

直近2年の流れ

今回の2026年1月の対日措置は、突然の思いつきではなく、ここ数年整備されてきた管理体系の延長線上に位置付けられます。whitecase+2​
2024年6月、中国国務院は「稀土管理条例」(国務院令第785号)を公布し、採掘から精錬・分離、流通、輸出入までレアアース産業チェーン全体を管理対象とする包括的な枠組みを整備しました(2024年10月1日施行)。csrcare+2​

さらに2025年前後には、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムなど中・重希土類7元素や、それらを用いた磁石材料・合金を対象とする輸出管理措置が導入され、一部には輸出許可制と特定品目の追加指定(合金・酸化物など13品目)を行うルールも公布されています。squirepattonboggs+2​
これらの措置では、参考としてHSコードが示されるなど、レアアース原料だけでなく永久磁石材料や中間製品も管理対象として位置付けられています。whitecase+1​

したがって、今回の「対日」強化では、既存のレアアース管理品目に加え、デュアルユース枠組みの下で用途審査の厳格化や許可審査の停滞が生じるだけでも、日本企業の調達が実務的には止まり得る状況が生まれます。wsj+3​


5. 企業実務への影響

まず顕在化するのは価格より「納期と書類」

現場で先に表面化しやすいのは、次の3点です。

  • 許可審査の滞留
    民生用途の部材であっても、エンドユーザーや用途説明が不十分な場合、輸出許可申請の審査が保留され、出荷が遅延するリスクがあります。facebook+1​
    実際、レアアースおよびレアアース磁石について、日本企業向けの輸出許可申請の処理が停止・遅延しているとの報道が複数出ており、「全面禁輸」ではなく「許可が出ないことによる実質的な供給制約」が懸念されています。youtube​english.kyodonews+1​
  • 書類要求の増加
    中国側輸出者が、最終用途証明書、エンドユーザー情報、軍事用途でないことの誓約、第三国への再移転の有無など、より詳細な情報の提出を求める可能性があります。chemical.chemlinked+1​
    デュアルユース規制の典型的運用として、疑義がある案件は追加書類の要求や審査延長の対象となりやすく、結果としてリードタイムが読めなくなるリスクが高まります。csis+1​
  • 調達の連鎖停止
    企業自身がレアアース原料を直接輸入していなくても、サプライチェーン上流の部品・ユニット・完成品に高性能磁石やレアアース関連材料が含まれている場合、そのサプライヤー段階で出荷が止まるおそれがあります。spf+1​
    自動車、電子機器、半導体製造装置など、レアアース磁石の使用比率が高い業種ほど影響が顕在化しやすいと指摘されています。english.kyodonews+2​

6. いま取るべき対策

重要度順のチェックリスト

6-1. 影響範囲を特定する – 部材ベースで洗い出す

  • 製品BOMを起点に、永久磁石(NdFeB、SmCoなど)、研磨材、触媒、蛍光体、センサー材料など、レアアース関与部材を抽出する。
  • Tier2・Tier3のサプライヤーまで含め、どの工程で中国原産品または中国で加工されたレアアース関連部材が入り得るかをマッピングする。
  • 代替材への切り替えが可能な部材と、設計変更・認証の取り直しが必要な部材を分類しておく。

6-2. 中国サプライヤーが「出荷できる状態」を作る

  • 中国側が行う輸出許可申請に必要な情報を、自社から迅速に提供できる体制を整備する。
    例:最終用途の説明文、最終需要家の属性、軍事用途ではないことの説明、再輸出・第三国移転の有無など。facebook+1​
  • 自社だけでなく、顧客(エンドユーザー)まで含む用途情報が必要になるケースを想定し、質問票・証明書のテンプレートをあらかじめ用意しておく。

6-3. 契約条項を見直す – 変更法令と供給制約を織り込む

  • 変更法令条項(Change in Law)、輸出許可未取得時の取り扱い、代替調達時の費用負担、納期遅延時の責任分担を契約上明確化する。
  • 長納期化を前提とした安全在庫の水準と保有場所、緊急時の配分ルールを、主要顧客・サプライヤー間で合意しておく。

6-4. 代替調達は「原料」ではなく「工程」で考える

  • 採掘地の分散だけでは不十分であり、精錬・分離・磁石製造などの加工工程を中国以外にも分散させることが、本丸のリスク低減策となる。sfa-oxford+1​
  • 現実的には段階的移行が必要なため、短期は在庫と優先順位付けの整理、中期はサプライヤーの二重化・三重化、長期は設計変更や材料置換まで含めた計画を検討する。

6-5. 情報収集の「軸」を決める

  • 一次情報は、中国商務部の公告・解釈通知および中国当局の記者会見、ならびにジェトロ等による制度整理を定点でフォローするのが最も効率的です。lawinfochina+2​
  • 主要国はレアアース・重要鉱物で対中依存を低減する連携を強めており、G7や日米豪などの政策動向が、中長期の調達戦略・投資判断に直結しつつあります。bloomberg+2​

7. いまは「供給断」よりも

許可審査の停止・遅延が最大リスク

今回の対日措置は、現時点で「レアアースの全面禁輸」と公式に位置付けられているわけではありませんが、デュアルユース枠組みと既存のレアアース輸出管理が重なり合うことで、実務上はレアアース関連品の輸出許可が出にくくなる局面に入っています。poder360+2​
レアアースやレアアース磁石の輸出許可審査が停止または大幅に遅延するだけで、自動車・電子機器・半導体関連など広範なサプライチェーンで生産計画が狂うおそれがある点が、企業にとっての最大のリスクです。kathmandupost+2​

企業としての勝ち筋は、レアアース問題を単なる資源調達の話に矮小化せず、「輸出管理」と「サプライチェーン実務」を一体で設計し直すことです。
BOMの棚卸し、サプライヤーからの書類要求に即応できる情報整備、契約条項の見直し、代替工程・非中国加工ルートの確保を、時間軸(短期・中期・長期)を意識しながら今週から順番に着手することが求められます。cnbc+2​


免責事項

本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別案件の輸出管理判断、契約判断、通関判断を行うものではありません。
具体的な案件については、社内の貿易管理責任者、顧問弁護士、通関士、ならびに専門機関の助言を踏まえて判断してください。

  1. https://www.lawinfochina.com/display.aspx?id=43158&lib=law
  2. https://finance.yahoo.com/news/china-bans-certain-rare-earths-122351883.html
  3. https://static.poder360.com.br/2026/01/commerce-dual-item.pdf
  4. https://www.reuters.com/world/asia-pacific/china-bans-exports-dual-use-items-military-purposes-japan-2026-01-06/
  5. https://www.csis.org/analysis/consequences-chinas-new-rare-earths-export-restrictions
  6. https://www.globaltimes.cn/page/202601/1352441.shtml
  7. https://www.spf.org/spf-china-observer/en/document-detail062.html
  8. https://www.sfa-oxford.com/market-news-and-insights/japan-us-rare-earths-deal-critical-minerals-supply-chain/
  9. https://chemical.chemlinked.com/news/chemical-news/china-bans-export-of-dual-use-items-to-japan
  10. https://kathmandupost.com/world/2026/01/07/japan-condemns-china-s-dual-use-export-ban-as-rare-earth-curbs-loom
  11. https://english.kyodonews.net/articles/-/68263
  12. https://www.youtube.com/watch?v=CB0sLiXqVZ8
  13. https://www.wsj.com/world/asia/china-deprives-japan-of-rare-earths-supply-escalating-dispute-41e7750c
  14. https://www.facebook.com/mofcom.china/posts/mofcom-spokespersons-remarks-on-tightening-controls-on-dual-use-items-exports-to/890794080134870/
  15. https://www.cnbc.com/2025/06/20/rare-earths-japan-more-prepared-than-most-for-chinas-mineral-squeeze.html
  16. https://bgrdc.com/wp-content/uploads/2024/10/China-Rare-Earth.pdf
  17. https://www.whitecase.com/insight-alert/china-imposes-extraterritorial-jurisdiction-and-50-rule-export-controls-rare-earth
  18. http://www.csrcare.com/Law/LawShowEn?id=232737
  19. https://www.squirepattonboggs.com/media/i4idimy5/china-expands-export-control.pdf
  20. https://www.bloomberg.com/news/articles/2026-01-09/japan-calls-for-smooth-trade-with-china-for-rare-earths-food
  21. https://asia.nikkei.com/spotlight/supply-chain/japan-s-rare-earth-imports-from-china-plunge-to-5-year-low
  22. https://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st_e/2024/2024_117e.pdf
  23. https://www.mining.com/china-japan-rare-earth-spat-curbs-exports/
  24. https://gtaic.ai/market-reports/japan-rare-earth-metals-market
  25. https://www.facebook.com/TheStarOnline/posts/more-than-70-percent-of-japans-imports-of-rare-earths-come-from-china-according-/1330141122481743/
  26. https://www.japantimes.co.jp/news/2026/01/10/japan/japan-support-china-rare-earth/
  27. https://note.com/tagtag/n/n617d57bab698
  28. https://global-scm.com/blog/?p=3700
  29. https://www.linkedin.com/posts/wei-jin-6213791_china-strengthens-export-controls-on-dual-use-activity-7414228580408299520-xFVX