何が起きたのか:新設されたHTS先端半導体などに対して追加関税の骨格

米国は2026年1月15日から、特定仕様の先端半導体などに対して、HTS(米国関税分類)上の新しい追加関税枠を立ち上げました。ポイントは、半導体という広い括りではなく、HTSコードと性能指標で絞り込んだうえで、用途によって課税か非課税かを分ける、という設計になっている点です。(The White House)

以下、ビジネス実務で誤りやすい順に整理します。


1. 何が起きたのか:新設されたHTS追加関税の骨格

2026年1月14日付の大統領布告(通商拡大法232条)により、付属書(Annex)で定義される「Covered Products」に25%の追加関税を課す仕組みが導入されました。適用開始は米東部時間で2026年1月15日午前0時1分以降の輸入申告です。(The White House)

この措置はHTSのChapter 99(いわゆる追加関税などの臨時枠)に新設された見出し番号で実装されています。中心は9903.79.01で、これが今回の「HTS追加関税」の主戦場です。


2. 対象は「半導体一般」ではない:HTSコードと性能で極小化

今回の「半導体(semiconductor articles)」は、まずHTSコードが限定されています。

対象になり得るHTSコード(米国側の定義上の入口)
・8471.50
・8471.80
・8473.30

次に、輸入品が「ロジックIC」または「ロジックICを含む物品」で、かつ性能指標(TPPと総DRAM帯域幅)が次のいずれかを満たす場合に、追加関税の議論に入ります。

性能条件(いずれか)
・TPPが14,000超17,500未満 かつ 総DRAM帯域幅が4,500GB/s超5,000GB/s未満
・TPPが20,800超21,100未満 かつ 総DRAM帯域幅が5,800GB/s超6,200GB/s未満

TPPの計算やDRAM帯域幅の定義も米国側が細かく文章で定義しており、メーカー公表値の扱い方まで書かれています。ここを押さえずに「該当しないはず」と判断すると、通関で止まる典型パターンになります。


3. 新設されたChapter 99見出し番号:課税と非課税は用途で分岐

今回のChapter 99は、ざっくり言うと次のロジックです。

9903.79.01:25%追加関税(本丸)

性能条件を満たす「semiconductor articles」の基本形として、通常税率に加えて25%が上乗せされます。

9903.79.02:同じHTSコード帯だが性能条件を満たさない場合

8471.50/8471.80/8473.30に分類されるが、性能条件を満たさない品目は9903.79.02側で整理されます。実務的には、対象HTSコード帯の貨物は「条件を満たすかどうか」を申告上も切り分ける設計です。

9903.79.03〜9903.79.09:性能条件は満たすが、用途要件で除外

大統領布告は、米国内データセンター用途、修理交換、研究開発、スタートアップ用途、非データセンターの民生用途、非データセンターの民間産業用途、公共部門用途などは関税対象外としています。HTS上はそれぞれ9903.79.03〜9903.79.09に振り分ける設計です。(The White House)

ここで重要なのは、除外用途の定義が一部すでに文章で置かれている点です。例えば「U.S. data center」はAI向けの新規負荷が100MW超などの条件が入っています。研究開発の定義や、スタートアップの定義(米国法上のemerging growth company参照)も明記されています。


4. 関税の重複と優先順位:足し算にならない領域がある

この232条半導体関税は、同じく232条の他品目(鉄鋼・アルミ・自動車等)と重複する場合は、原則として本件が優先され、他の232条は適用しない、という構造になっています。さらに、相互関税など一部のIEEPA系の関税も適用除外と整理されています。(The White House)

一方で、反ダンピング・相殺関税など、別建ての貿易救済関税は引き続き課され得る、というのがChapter 99側の基本姿勢です。


5. 通関実務で効くポイント:CBPガイダンスが示す落とし穴

CBP(米税関)は、エントリー上のHTS番号の並び順と、複数のChapter 99番号を併記する場合のルールを明示しています。複数の追加関税を1つの番号にまとめて計上することは不可で、どのHTS番号にどの税額が紐づくかを分けて報告する必要があります。(GovDelivery)

さらに実務的に効くのが、相互関税の免除申告との関係です。CBPは、8473.30で9903.79.01が適用されるケースでは、相互関税免除のために9903.01.33を使うべき、といった細かい指示を出しています。ここを誤ると、免除の取り回しが崩れます。(GovDelivery)

加えて、次の2点は資金繰りに直撃します。
・ドローバック(関税還付)の対象外
・FTZ(外国貿易地域)に入れる場合、原則としてprivileged foreign扱いが必要 (The White House)


6. 日本企業が今すぐやるべき実務整理

日本側の輸出企業にとって、関税を納めるのは米国の輸入者ですが、契約条件次第で負担は売価に跳ね返ります。特にDDPや価格調整条項が弱い取引では、実害が顕在化します。

最短で効く対応は次の通りです。

  1. 自社品が該当HTS帯(8471.50/8471.80/8473.30)に入っているか、米国側の申告実績で棚卸し
  2. 仕様確認に必要なメーカー資料を、TPPと総DRAM帯域幅の観点で再整理(資料が弱いと通関遅延リスクが上がる)
  3. 用途の確認と証跡設計(どの9903.79.03〜.09で申告するか、輸入者・ブローカーと事前に合意)(The White House)
  4. 申告フローの点検(Chapter 99の順序、相互関税免除番号の使い分け、税額の紐づけ)(GovDelivery)
  5. ドローバック不可を前提に、価格・在庫・FTZ運用の再設計 (The White House)

7. 今後の焦点:Phase 1で終わらない可能性

大統領布告は、今回を二段階の第一段階と位置づけ、交渉の進捗報告(90日)や、より広範な関税・関税相殺プログラムの検討余地を明記しています。2026年7月1日までにデータセンター向け市場のアップデートを行い、措置の見直しを判断する流れも書かれています。(The White House)


米国USMCAの事後請求と還付手続


輸入時にUSMCA優遇を申告し忘れた、またはサプライヤーから原産性の確証が遅れて届いた――こうした場面でも、米国では一定の要件を満たせば、事後にUSMCA優遇を請求し、関税などの還付を受けられます。
実務上のポイントは、「輸入日から原則1年以内」という期限管理と、事後請求に用いる書類の作り込みです。law.cornell+1

本記事では、ビジネス現場で迷いやすい「どの手段を使い」「何を揃え」「どう進めるか」を、USMCA実施規則(19 CFR Part 182)をベースに、整理していきます。govinfo+1


1. USMCA優遇申告は2つのルート

USMCA優遇を享受する方法は、大きく2つのルートに分かれます。


1-1. 輸入時に申告するルート

米国側でUSMCA優遇を輸入時に申告する場合、エントリーサマリー上でHTSUS品目番号に特別プログラム表示の「S」または「S+」を付すことが基本です。[worldtradelaw]​
この輸入時申告は、輸入者・輸出者・生産者のいずれかが作成したUSMCA原産地証明(Certification of Origin)に基づいて行われます。customsmobile+1

USMCAでは、Merchandise Processing Fee(MPF)の免除も、「USMCA優遇の申告がなされていること」を前提として整理されており、輸入時に正しく申告を行うことが最もシンプルな運用です。butzel+1


1-2. 事後に請求して還付を受けるルート

輸入時点でUSMCA申告をしていなかった場合でも、その貨物が「輸入時点でUSMCA原産品となり得た」のであれば、輸入者は輸入日から1年以内に事後請求を行い、過納関税の還付を求めることができます。old.govregs+1
この事後請求は、19 CFR Part 182のSubpart D(Post-importation duty refund claims)に規定されており、いわゆる「1520(d)クレーム」として整理されています。law.cornell+1


2. 期限は「輸入日から1年」

USMCA事後請求の核心は、「輸入日から1年以内」という明確な期限です。govinfo+1
エントリーサマリー作成日や清算日ではなく、「輸入日(date of importation)」を基準として社内管理するのが安全です。
システム上はこの日付に紐づけてリマインドを設けると、期限管理の漏れを防ぎやすくなります。[law.cornell]​


3. 事後請求で求められる「4点セット」

USMCAの事後請求は、港での紙提出・電子提出のいずれでも認められ、次の4点を出す構成になります。[govinfo]​

  1. 当該貨物が輸入時点でUSMCA原産品であった旨の宣言と、対象エントリー番号およびその輸入日
  2. 19 CFR 182.12に準拠したUSMCA原産地証明(Certification of Origin)の写しlaw.cornell+1
  3. エントリーサマリーなどの控えを他者へ提供したか、その有無と提供先に関する情報
  4. 抗議申立て・請願・再清算要請など他の救済手続を既に行っているかどうか、行っている場合はその番号と日付[govinfo]​

実務的につまずきやすいのは、

  • 2)の証明書そのものの要件充足
  • 3)4)の「周辺ステータス確認」

です。
輸入者・通関業者だけで完結しないことも多く、輸出者や生産者まで巻き込んだ情報連携設計をあらかじめ決めておくと、事後請求の処理がスムーズになります。customsmobile+1


4. USMCA原産地証明書(Certification of Origin)の要件

USMCAでは定型フォームは要求されていませんが、記載要件は場合によってはNAFTA時代より煩雑で、証明書の出来が還付可否に直結します。law.cornell+1


4-1. 形式と保有タイミング

USMCA原産地証明は、所定フォームである必要はなく、書面またはCBPが認める電子手段により作成できます。customsmobile+1
USMCA優遇を主張する場合には、請求時点で輸入者が当該証明書を保有していることが前提となり、CBPへの提示義務があります。law.cornell+1

また、証明内容をインボイスなどの他書類に記載することは可能ですが、「USMCA域外で発行された商業書類に載せた証明」は枠外とされています。[customsmobile]​
たとえば日本本社発行インボイスにUSMCA証明文言を載せる運用は、要件不充足のリスクが高く、業務マニュアルで禁止・回避することが望ましいです。[customsmobile]​


4-2. 言語

原産地証明は、英語・フランス語・スペイン語で作成できます。[law.cornell]​
英語以外で作成する場合、CBPが必要と認めれば英訳の提示を求められるため、審査スピード重視なら北米グループで英語ベースに統一しておく方が無難です。[law.cornell]​


4-3. 必須データ要素

USMCA原産地証明には、少なくとも次のような情報を含める必要があります。customsmobile+1

  • 証明者が輸入者・輸出者・生産者のいずれであるか
  • 証明者の氏名・住所および署名者の情報
  • 貨物を特定できる十分な品名記述と、少なくともHS6桁レベルの分類番号
  • USMCA General Note 11に基づく適用原産地規則(例:CTSH、RVCルール等)の明示[govinfo]​
  • 単発(単一出荷)か、複数出荷にまたがるブランケット証明かの区別(ブランケット期間は最長12か月)old.govregs+1
  • 規則で定められた宣誓文言と署名・日付law.cornell+1

特に、HS6桁以上と適用原産地規則の明確な記載は、検証や事後請求時の説得力に直接結びつくため、社内チェックリストに組み込むとよいでしょう。govinfo+1


4-4. 有効期間

適切に作成・署名された原産地証明は、作成日から4年間有効として取り扱われます。old.govregs+2
ただし、USMCA事後請求の期限自体は「輸入日から1年」であり、証明書の有効期間が長くても、事後請求の期限が拡張されることはありません。law.cornell+1


5. どの手段で進めるべきか(PSC/USMCA事後請求/Protest)

USMCA優遇に関連して、現場では複数の手段が並びがちです。以下の表をベースに、用途を整理すると混乱しにくいです。pcbusa+1

5-1. 手段の整理表(わかりやすいフォント・スタイルで運用想定)

目的使う手段主な期限条件向いている局面
まだ清算前のエントリーで、輸入時申告を訂正してUSMCA優遇を反映したいPost Summary Correction(PSC)輸入日から300日以内 かつ 実行清算日(liquidated)の15日前まで(早い方)ship4wd+1未清算エントリーに対し、比較的早くUSMCA未申告に気づいた場合
輸入時にUSMCA申告し忘れた優遇を後から取り戻したいUSMCA事後請求(1520(d)クレーム)輸入日から1年以内law.cornell+1清算済み、またはPSC期間を過ぎたが、当初輸入時点で原産性があった場合
清算結果などCBPの判断そのものを争いたいProtest(抗議申立て)実行清算日から原則180日以内[pcbusa]​分類や評価等で争点があり、CBP判断の是正を求めたい場合

USMCA事後請求は、ほかの救済手段と並行して利用できる独立の「1年内還付請求権」として整理されており、清算済みエントリーについても再清算(reliquidation)を通じて還付を実現し得ます。govinfo+2

一方で、同一エントリーに対して Protest など他の手続が係争中の場合、CBPがUSMCA事後請求の審査を保留する運用もあり得るため、手段とタイミングの組み合わせは慎重に設計すべきです。ecfr+1


6. MPFは事後請求でも還付可能なのか

この点は、社内ルールが古いまま残るケースが多く注意が必要です。

USMCA発効当初、CBPのFAQなどで「1520(d)クレームではMPFの還付は認めない」という案内がされていました(所得再調整法520(d)に基づく返金との整理違いから生じたとも説明されています)。ghy+1
しかし、その後の技術修正(Technical Amendment)により、USMCA事後請求においてもMPFの還付を認める方向で法改正が行われ、その改正はUSMCA発効日である2020年7月1日に遡及適用されました。govinfo+1

実務としては、

  • 対象となる輸入期間
  • 適切な申請経路(1520(d)クレームとして適切に組み込むか)
  • CBPシステム側の処理前提

が絡むため、古いプロジェクトから続くマニュアルや税関業者指示書が「USMCAの事後請求ではMPFは還付されない」と書かれている場合は、最新法令・規則を根拠に見直す価値があります。butzel+1


7. CBP側の処理フロー

CBPがUSMCA事後請求を受領すると、まず対象エントリーの清算ステータスを確認します。

  • 未清算
  • 清算済み
  • 清算が最終確定済み

のいずれであるかを確認の上、判断が進められます。govinfo+1

  • 未清算エントリー:請求が認められれば、清算時にUSMCA優遇を反映させる
  • 清算済みエントリー:請求が認められれば、再清算(reliquidation)によって還付措置を実施するgovinfo+1

事後請求が否認されやすいのは、

  • 1年期限(輸入日から)の徒過
  • 4点セットや他の提出要件の不充足
  • 検証で原産性が否定された場合(例:原産地証明に虚偽または不正確な情報があった場合)ecfr+1

といったケースです。


8. 2026年2月以降、還付は原則電子化へ

「請求はできても、還付が滞る」というリスクを減らすために、還付受領の側を押さえておく必要があります。

CBPは、2026年2月6日以降、原則すべての還付を日本の通関文化でいう「電信送金」に近いAutomated Clearing House(ACH)による電子送金で行う制度へ移行する旨、連邦官報(2025-24171号)で暫定最終規則として公表しました。federalregister+1
これにより、紙の小切手による還付は例外的な場合を除き廃止となり、ほとんどの還付が銀行口座への直接入金として処理されることになります。livingstonintl+1

具体的には

  • ACEポータルでのACH Refund口座の登録
  • 米国外の輸入者を対象に、米国口座の開設、もしくはCBP Form 4811による第三者受領スキームの検討

が論点となります。fedex+2

USMCA事後請求で還付額が大きくなる可能性のある企業ほど、「CBPへの請求手続き」と同等の重要度で、受領側の口座設計と社内承認・統制を、2026年2月6日より前に整えておくことが推奨されます。govdelivery+1


9. 監査・検証に耐えるための最低ライン

USMCA優遇の主張を行う輸入者は、規則上、輸入日から少なくとも5年間、その根拠となる記録と文書を保持する義務があります。worldtradelaw+1
ここに含まれる資料には、単に原産地証明だけでなく、輸送・積み替えに関するトラックレコーディングなどの管理記録も含まれます。ecfr+1

また、USMCA域外を経由した場合など、CBPが条件充足の証拠を求めた際に、それらを提示できないとUSMCA優遇そのものが否認される可能性があります。[ecfr]​
さらに、輸入者は自らの主張の真実性に責任を負うとされ、証明書が不正確または無効と合理的に疑われる事情があれば、即座に申告を訂正し、追徴があれば納付する義務があります。ecfr+1

こうした訂正を自発的に行った場合のペナルティ軽減枠組み(Prior Disclosure 等に相当する整理)も、USMCA規則と一般通関規則の枠組みのなかに盛り込まれています。worldtradelaw+1


10. よくある失敗と具体的な回避策

この章は、現場レベルで実務担当者が「チェックリストやマニュアルに貼り付ける」イメージで書いています。

  • 原産地証明にHS6桁以上の記載がない、または適用原産地規則の記載が曖昧
    → 19 CFR 182.12の必須要素をチェックリスト化し、サプライヤー作成証明フォーマットに組み込む。customsmobile+1
  • ブランケット証明の期間が12か月を超えて設定されている
    → 証明書テンプレートで「最大12か月」と制限を明記し、開始日・終了日の妥当性をシステム/Excelなどでの検証ロジックで補う。govinfo+1
  • 日本本社発行インボイスにUSMCA証明を載せ、USMCA域外発行書類として認められないリスク
    → 専門フォーマットとしての独立証明書を使い、USMCA域内の当事者が作成することを運用で明確に指示する。[customsmobile]​
  • 事後請求で「エントリー控えの提供有無」「抗議・再清算の係属状況」の確認が抜け、CBP側で

カナダの対中EV関税引き下げと、米国の「全輸入品100%関税」警告をどう読むか

ビジネス実務者向け整理(2026年1月25日 JST時点)

1. まず事実関係を短く整理する

2026年1月16日、カナダのカーニー首相は訪中の成果として、中国製EVのカナダ向け輸入を年4万9,000台まで、最恵国待遇の6.1%関税で受け入れる枠組みを示しました。これは2024年に導入された100%の追加関税からの大きな方針転換です。見返りとして、中国はカナダ産キャノーラ種子の関税を2026年3月1日までに概ね15%程度へ引き下げる見通しなどが示されています。 (Reuters Japan)

そして2026年1月24日、米国のトランプ大統領は、カナダが中国と貿易協定を進めるなら、カナダから米国に入る全製品に100%の関税を課すとSNSで警告しました。現時点では「警告」であり、対象範囲、例外、発効手続などの公式な詳細は示されていません。 (Reuters)

ここから先は、何が確定情報で、どこが不確実かを分けて、企業実務に落とします。

2. カナダと中国の「合意」は何を意味するのか

今回のポイントは、自由貿易協定のような包括的枠組みというより、直近の関税応酬を収束させる性格が強い点です。カナダ政府側の発表では、EVは年4万9,000台を6.1%で受け入れること、キャノーラ種子は中国側関税が約15%へ下がる見込み、他の農水産品も一定期間は反差別的関税の対象外となる見通しなどが並びます。 (カナダ首相)

カナダ側は、この枠組みを通じて中国の投資やサプライチェーン連携、国内のEV供給網構築につなげたい考えも示しています。 (カナダ首相)

一方で、カナダ政府高官は「中国との自由貿易協定を追求しているわけではなく、重要な関税課題の解決だ」と説明しています。ここは米国側の受け止めと齟齬が生じやすい部分です。 (Reuters)

3. 米国の「100%関税」警告の狙いはどこにあるのか

トランプ大統領の主張の軸は、カナダが中国製品の米国向け迂回ルートになり得る、という問題提起です。ロイター報道では、カナダが中国の「荷降ろし港」になるとの表現で牽制しています。 (Reuters)

ただし、実務面では論点が複数あります。

  1. 中国製EVがカナダに入っても、そのまま米国に流れ込むとは限らない
    米国側当局者は、カナダ向けの中国製EVは米国には入れない趣旨の発言もしています。加えて、米国では車両のサイバーセキュリティ関連規則が参入障壁になり得る、という説明も報じられています。 (Al Jazeera)
  2. それでも米国が警戒するのは「EV完成車」だけではない
    本丸は、完成車の輸入よりも、部品や関連製品の迂回、原産地表示のすり替え、カナダを経由した関税回避といった、より広い意味でのサプライチェーン経由地リスクです。今回の表現が「カナダからの輸入品すべて」に拡大しているのは、この広い警戒の反映と見るのが自然です。 (Reuters)
  3. 2026年のUSMCA見直しを前にした交渉カードの可能性
    USMCAは発効6年目にあたる2026年7月1日に初回の共同レビューが予定されています。大枠のルールが動く局面で、関税の脅しは交渉力を上げるための典型的なレバーになり得ます。 (Congress.gov)

4. 本当に「全品100%」は実現し得るのか

企業として重要なのは、政治的発言の強さと、実装の難易度は別物だという点です。

米国が関税引き上げを行う法的ルートはいくつかありますが、例えば通商法301条は、不公正な貿易慣行などへの対抗措置として関税を含む輸入制限を認めています。 (Congress.gov)

しかし今回のような「カナダからの全輸入品を一律100%」という設計は、例外設定、国内産業への副作用、供給制約、相手国の対抗措置など、実装上の論点が一気に増えます。ワシントン・ポストも、USMCA適合品が除外されるのか、そもそも大統領が言う「ディール」が何を指すのかが不明確だと指摘しています。 (The Washington Post)

結論として、現時点で企業が置くべき前提は次の2つです。
1つ目、発言どおりの一律100%がそのまま来ると決め打ちはできない。
2つ目、対象を絞った形でも、カナダ関連の追加関税や規制強化が突然出るリスクは十分ある。

5. 企業実務への影響を「現場の言葉」で言い換える

5.1 コストは関税だけでは終わらない

仮に一律100%が発効した場合、影響は単純な関税コスト増にとどまりません。

  • 価格改定と契約更改が追いつかない
  • 通関での保税、検査、差し止めが増え、リードタイムが延びる
  • カナダ経由の部材を含む製品の原産地説明が厳格化する
  • 在庫積み増しや迂回ルート確保で運転資金が膨らむ

ロイターは、カナダの金属、車、機械といった産業への圧力が高まると伝えています。サプライチェーン上流にカナダが入る日本企業も、同じ衝撃を受けます。 (Reuters)

5.2 影響範囲は「モノの流れが国境をまたぐ回数」で増幅する

北米では、部材が国境を複数回またいで完成品になる構造が珍しくありません。関税が国境通過のたびに積み上がると、想定外に採算が崩れます。米加間の貿易量が非常に大きいこと自体が、実務ショックの大きさを示します。 (AP News)

6. 日本企業が今すぐできるリスク点検チェックリスト

  1. カナダ起点、カナダ経由の米国向け出荷を棚卸しする
    完成品だけでなく、カナダで加工や組立をする品目、カナダから部材を調達する品目も含めます。
  2. 調達先と工程表を「原産地説明できる形」に整える
    迂回や転送の疑念が高まる局面では、原産地と実質的変更の説明力が差になります。
  3. USMCA適用可否を、品目別に再点検する
    適用できる品目があるなら、要件未充足の穴を塞ぐことが最優先です。将来の例外設定の対象になり得ます。
  4. 契約条項を即時点検する
    関税負担者、価格改定条項、Change in Law、再交渉のトリガー、キャンセル条件を確認します。
  5. 見積りと販売価格の「関税ショック版」を別建てで持つ
    一律100%、対象限定、発効延期の3パターンで粗利と需要影響を試算します。
  6. 通関実務の臨戦体制を作る
    HSコード、原産地、課税価格、インボイス記載、輸送書類の整合を、平時より厳しめに回します。
  7. 監視対象を絞って情報の一次確認ルートを作る
    大統領発言だけでなく、USTR、CBPのガイダンス、官報級の公表に落ちた時点で社内アラートが鳴るようにします。USMCAレビューの節目で動きが出やすい点も踏まえます。 (Congress.gov)

7. まとめ

今回の論点は、カナダの対中EV関税引き下げそのものより、北米を舞台にした対中牽制が「カナダ全品」へ拡大し得るという警告にあります。現時点で確定しているのは、カナダと中国が関税緩和の枠組みを示したこと、そして米国大統領が一律100%という非常に強い言葉で牽制したことです。 (Reuters)

企業が取るべき姿勢は、騒ぎを過小評価せず、しかし発言をそのまま前提に固めすぎないことです。北米のサプライチェーンは、国境をまたぐ回数が多い企業ほど影響が増幅します。いま必要なのは、対象品目の棚卸しと、原産地説明力、契約条項、通関手順をセットで整えることです。

遡及対策は契約書の「日付明記」が鍵

輸出入ビジネスで怖いのは、コストが後から増えることです。関税は「輸入した時点で確定」と思われがちですが、実務では事後調査や制度上の仕組みにより、後日に追加で請求されたり、逆に還付されたりします。日本でも、輸入後の申告ミスなどに対して修正や更正の手続が用意されており、一定期間さかのぼって是正が起こり得ます。(税関総合情報)

このときに社内外の揉め事を最小化する鍵が、契約書に「日付」を明確に書き切ることです。単に契約書の右上に日付がある、という話ではありません。どの日付を基準に、誰が、どの範囲の関税増減を負担するのかを、争点になる前に決めておく、という意味です。


そもそも「遡及」で起きること

遡及リスクは大きく2つに分かれます。

1つ目は公的な遡及です。税関の事後調査でHSコードや原産地、課税価格の判断が変わり、追加納税や追徴が発生するケースです。日本の輸入手続でも、輸入許可後に申告内容の訂正や更正が問題になる場面は珍しくありません。(税関総合情報)

2つ目は貿易契約上の遡及です。追加関税が発生したとき、当局に対して法的に支払義務を負うのは通常「輸入者」ですが、その費用を売主と買主のどちらが負担するかは契約次第です。契約が曖昧だと、結局「どちらが悪いか」「見積に入っていたか」で長期化します。


なぜ「日付」が重要なのか

関税や税関手続は、日付で動く場面が多いからです。代表例だけでも、次のように基準日が複数あります。

・契約締結日、発効日(いつ成立し、いつ効力が出たか)
・個別発注日(PO発行日、受諾日)
・船積日、B/L日付、到着日
・輸入申告の受理日、輸入許可日
・当局の措置の発効日、調査開始日、暫定税率の適用開始日

さらに、反ダンピングなどの貿易救済では、一定条件下で暫定措置の適用開始より前の輸入にさかのぼって最終税を課す枠組みが、国際ルール上も想定されています。最大90日前までの遡及が論点になり得る、というのが典型です。(wto.org)

つまり、契約書に日付が曖昧だと、社内で「この取引はいつの前提で値決めしたのか」を説明できず、社外では「どの時点以降の関税増減を相手に請求できるのか」が争点化します。


実務で効く「日付明記」3点セット

契約書では、次の3つをセットで明記するのが実務的です。

1. 契約成立日と発効日を分けて書く

署名日と効力発生日がズレる契約は多いです。だからこそ分けて書きます。
例:契約成立日、発効日、適用開始日

電子署名でも紙でも構いませんが、後で説明可能なタイムスタンプになる形を推奨します。

2. 価格の前提日を定義する

関税増減を価格に反映する基準日を契約で固定します。ここが曖昧だと、相手は「見積時点で織り込めたはず」と主張しがちです。
例:本価格は「発効日」または「個別発注受諾日」時点の関税・税制を前提とする

3. 個別取引の「日付の鎖」を残す

基本契約だけ日付があっても、個別取引がメールや口頭で流れると証拠が弱くなります。POと受諾、出荷書類、インボイスの各日付がつながるように、契約で「個別取引は書面または電子記録で確定する」と決めておくと強いです。


追加関税が来たときに揉めない条文の考え方

日付明記とセットで入れたいのが「誰が負担するか」を決める条文です。ポイントは、当局に対する法的責任と、取引当事者間の負担を切り分けることです。

1. 変更法令条項

関税率や課税ルールの変更が、基準日以降に発効した場合の精算ルールを決めます。
・基準日
・増減額の算定方法
・通知期限
・証憑(当局通知、計算書、通関書類)の提示義務

2. 事後調査・追徴条項

事後調査で追加納税が発生したときの負担を決めます。ここは原因別に分けると運用しやすいです。
・売主が提供した情報(原産地情報、品目情報、価格構成)の誤りに起因する追徴は売主負担
・買主側の申告や運用ミスに起因する追徴は買主負担
・共同で防御・不服申立を行う場合の費用負担と主導権

日本でも輸入後の訂正や更正の枠組みがあり、一定期間内に追加納税や還付が起こり得るため、契約上の整理が効きます。(税関総合情報)

3. インコタームズの穴埋め

インコタームズは通関や税の責任分担に影響します。例えばDDPは売主が輸入通関や輸入税の負担側に寄る設計です。(academy.iccwbo.org)
ただし、インコタームズだけでは「事後に追徴された分」まで自動的に整理できないことがあるため、契約で上書き・補足するのが安全です。


図で押さえる、日付と遡及の関係

取引の時間軸はだいたい次の順で進みます。

契約成立日 → 発効日 → 個別発注受諾日 → 出荷日 → 輸入申告受理日 → 輸入許可日 → 事後調査 → 追徴または還付

このうち、税関手続の基準日は「申告受理日」や「輸入許可日」など制度ごとに異なります。EUでも、申告受理日が基準になる考え方が整理されています。(Taxation and Customs Union)
だからこそ契約では、当事者間での精算基準日を明確にし、証拠として残る日付を鎖のようにつなげるのが有効です。


すぐ使える社内チェック項目

最後に、契約レビュー時の最小チェック項目をまとめます。

・契約成立日、発効日が明記されているか
・価格の前提日が定義されているか
・関税等の変更が起きた場合の精算ルールがあるか
・事後調査や追徴が起きた場合の負担区分が原因別に書かれているか
・POと受諾、出荷書類、インボイスの記録を保存する運用になっているか
・DDPなど輸入側責任が重い条件では、事後追徴まで含めた補足条項があるか(academy.iccwbo.org)


まとめ

遡及は「税関が悪い」「制度が難しい」だけで片付けられません。実務では、遡及が起きた瞬間に問題になるのは、誰が負担するか、どの時点の前提で値決めしたか、という契約の論点です。

契約書の「日付明記」は、単なる形式ではなく、遡及リスクを取引コストに変えて管理するための装置です。契約成立日と発効日、価格の前提日、個別取引の日付の鎖。この3点を揃えるだけで、いざという時の交渉力と社内説明力が大きく変わります。

注記:本記事は一般的な情報提供であり、個別案件の法的助言ではありません。実際の契約条項や紛争対応は、貴社の取引形態と相手国制度に即して専門家に確認してください。

中国が2026年に935品目で輸入関税を引下げへ


中国が2026年に935品目で輸入関税を引き下げ

2025年12月29日、中国国務院関税税則委員会は「2026年関税調整方案」を公表し、2026年1月1日から一部品目の輸入関税率と税目を調整することを発表しました 。柱となるのは、935品目に対してWTO最恵国税率(MFN)より低い「暫定輸入税率」を設定することです 。binance+2

この発表は、中国向けに「先端部材・グリーン関連素材・医療関連製品」を輸出する日本企業にとって、年明け直後の価格競争力と販売機会を左右する重要なイベントとなります 。cna+1

何が変わるのか:制度面の要点

935品目で暫定税率を設定

対象は、重要部材や先端材料、グリーントランスフォーメーション関連の資源性商品、医療製品などで、MFNより低い税率が適用されます 。binance+1

税目自体も見直し

本国子目を増設し、税則税目総数は8,972に拡大します 。例として、インテリジェント生体模倣ロボット(智能仿生机器人)、バイオ航空燃料(生物航空煤油)、林下山参などが挙げられています 。news.cnyes+1

一部は暫定税率を取りやめ、MFNへ戻す

国内産業の供給需給などを踏まえ、小型モーター(微型電机)、捺染機(印花机)、硫酸などは暫定税率を取り消し、MFNを適用する方向が示されています 。cna+1

どの領域が狙い撃ちか:3つの政策軸

先端産業の基盤づくり(科技自立自強)

中国は、現代化産業体系の構築に資する「重要部品・先進材料」の輸入コストを下げる狙いを明示しています 。完成品ではなく、ボトルネックになりやすい部材・材料の調達コストを軽くし、国内の高度化を進める設計です 。news.cnyes+2

日本企業にとっては、半導体製造装置周辺、精密部材、先端材料など、仕様が厳しい領域ほど商機になりやすい一方、型番単位での該当確認が重要になります。

グリーン転換(電池・資源循環)

象徴例として挙がったのが、リチウムイオン電池向けの再生黒粉(ブラックマス)です 。これは単発の優遇ではなく、「資源性商品の暫定税率引下げ」という政策軸の一部として位置づけられています 。binance+2

EVや蓄電池のサプライチェーンでは、原料や中間材の関税が数ポイント動くだけで、調達先やリサイクル工程の採算が変わります。中国市場向けの素材・化学・装置企業は、販売だけでなく、現地拠点の調達コスト見直しにも直結します。

医療・民生(ヘルスケアの高度化)

人工血管や感染症関連の診断キットなど、医療の高度化とアクセス改善につながる品目も対象に含まれます 。cna+1

医療分野は、規制承認や販売チャネルの壁が高い一方、関税引下げは現地病院・代理店との価格交渉を動かす材料になり得ます。

具体例:公表資料で確認できる暫定税率(代表例)

下表は、財政部サイトに添付された「附1 进口商品暂定税率表」に記載のある代表例です。実務上は、品目の該当可否と、表中のex(号列の一部条件適用)に注意して確認してください。

品目例(中文表記)税則号列2026年MFN2026年暫定税率ビジネス上の見立て
锂离子电池用再生黑粉ex 382499996.5%3%電池リサイクル、正極材周辺のコストに影響 cna+1
未焙烧的黄铁矿250200003%0%資源性原料の調達コスト低下を後押し binance
診断用試薬(マラリア)382211003%0%医療検査領域で価格競争力が改善 binance
感染症の診断试剂盒(肝炎A/B/C、HIV、梅毒等)ex 382219003%0%検査キット分野で輸入コストが軽くなる binance
人造血管ex 902139004%2%医療機器・インプラントで採算改善余地 cna+1

日本企業の実務アクション:年明け前後にやるべきこと

自社品の中国側号列での突合

日本のHS6桁だけでは不十分です。中国側の税則号列(細分)で該当判定し、暫定税率の適用対象か確認します。ex指定品目は、仕様や用途で分かれることがあります。

価格交渉の材料化

暫定税率が下がる品目は、インコタームズと関税負担者を再確認した上で、見積の更新と顧客への説明資料を準備します。中国側買主が通関する取引でも、値引き圧力として返ってくるため、先回りが有効です。

協定税率との二重チェック

中国は2026年も、24のFTA等(34の貿易パートナー)に基づく協定税率を継続し、最不発達国43か国には100%税目で無税待遇を維持するとしています 。暫定税率だけでなく、原産地要件を満たすなら協定税率の方が有利なケースもあり得ます。news.cnyes+1

品目改編リスクの点検

税目や本国子目の見直しは、分類ミスや申告差異の火種になります 。中国向けに輸出入が多い企業ほど、マスタと通関委託先のコード体系を年初に一斉点検した方が安全です。binance

まとめ

今回の935品目の引下げは、単なる景気刺激というより、先端産業の部材調達、グリーン転換の原料確保、医療高度化を同時に進める「ターゲット型の関税設計」といえます 。cna+2

対中ビジネスでは、該当品目の突合と価格戦略の更新を、2026年1月1日の適用開始に間に合わせることが最大の実務ポイントとなります 。binance


  1. https://www.binance.com/ja/square/post/34358904320226
  2. https://www.cna.com.tw/news/acn/202512290209.aspx
  3. https://news.cnyes.com/news/id/6291766
  4. https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/us_tariff/pdf/04_1118.pdf
  5. https://www.etnet.com.hk/www/tc/ashares/news_detail.php?newsid=ETN351229774&page=1&category=%E5%85%A8%E6%97%A5%E6%96%B0%E8%81%9E
  6. https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/08/32996371811ccb00.html
  7. https://kuno-cpa.co.jp/china_blog/china-value-added-tax-law/
  8. https://tw.stock.yahoo.com/news/%E5%A4%A7%E9%99%B82026%E5%B9%B4%E9%97%9C%E7%A8%85%E8%AA%BF%E6%95%B4%E6%96%B9%E6%A1%88%E5%87%BA%E7%88%90-ecfa%E7%B9%BC%E7%BA%8C%E6%8C%89%E8%A6%8F%E5%AE%9A%E5%AF%A6%E6%96%BD-093333166.html
  9. https://www.recordchina.co.jp/b944805-s12-c20-d0189.html
  10. https://www.tmi.gr.jp/uploads/2025/01/31/TMI_China_News_January_2025.pdf

CBPが公表した「重複関税の解除チャート」をどう読むか


1. まず押さえるべき「重複解除」の原則(EO 14289)

重複関税整理の土台となるのは、2025年4月29日付の大統領令「Addressing Certain Tariffs on Imported Articles(EO 14289)」です。presidency.ucsb+1
この大統領令は、「複数の追加関税措置の対象になり得る品目」について、どの関税を優先的に適用し、どれを排除するかという手順(single‑duty rule/優先順位)を定めています。business.gmu+1

EO 14289の対象となる追加関税措置は、次の5つに限定されています。govdelivery+1

  • 232条 自動車・自動車部品(Proclamation 10908 等)govdelivery
  • IEEPA カナダ追加関税(EO 14193 系)immpolicytracking+1
  • IEEPA メキシコ追加関税(EO 14194 系)strtrade+1
  • 232条 アルミニウム(Proclamation 9704 系及びその改正)whitehouse
  • 232条 鉄鋼(Proclamation 9705 系及びその改正)whitehouse

これ以外の関税措置(例:Section 301、対中IEEPA、AD/CVDなど)は、EO 14289の「非スタック」ルールの対象外であり、個別のルールで判断されます。global-scm+1

CBP CSMSによると、非重複の優先関係は、要約すると次のようになります。cassidylevy+1

  • まず「232 自動車・部品」に該当し、正味の追加関税額が0%を超える場合、その品目にはカナダIEEPA、メキシコIEEPA、232アルミ、232鉄鋼は重ねない。
  • 自動車・部品に該当しない場合、カナダIEEPAが「実際に関税がかかる(subject to)」なら、メキシコIEEPAや232鉄鋼・232アルミは原則として重ねない。
  • カナダIEEPAもかからない場合、メキシコIEEPAがかかるなら、232鉄鋼・232アルミは原則として重ねない。
  • 232鉄鋼と232アルミは、対象品目が両制度の範囲に入り、かつそれぞれに正味の追加関税額が発生する限り、同一品目に同時適用され得る(特に派生品については両方課されるケースが明示されています)。whitecase+1

ここで重要なのが、「subject to」の意味です。CBPは、「ある措置の下で実際に0%を超える追加関税が発生する場合に、その措置に“subject to”される」と説明しており、USMCA原産として免税になる場合などは、その措置の対象外として扱うと明示しています。cassidylevy+1

さらに、EO 14289の適用対象外の関税は引き続きスタックし得ます。具体的には、通常税率(HTSUS一般税率)、Section 301対中関税、対中IEEPA関税(EO 14195 系)、アンチダンピング・相殺関税(AD/CVD)などは、EO 14289によって自動的に打ち消されるわけではありません。whitehouse+2

EO 14289による非スタック・ルールは、2025年3月4日以降の輸入に遡及して適用され、対象5措置が重複して課されていた場合には、CBPの通常手続に従い還付請求が可能とされています。cassidylevy+1


2. なぜ「チャート」が必要になったのか

EO 14289は「第一幕」として5つの主要措置の優先関係を定めましたが、その後も大統領布告やCSMSにより、対象品目の拡大や追加的な非重複ルールが積み上がり、実務上の判断はさらに複雑になりました。whitehouse+1
例えば、木材・家具等に対する232措置(Proclamation 10976 など)では、カナダ・メキシコ・その他IEEPA関税との非重複関係が個別に明示されているケースがあります。globaltradealert+1

こうした「個々の布告・通達で追加されてきた非スタック・ルール」を、実務者が一覧で俯瞰できるように可視化したものが、CBPの「Unstacking Certain Tariffs Chart」と理解すると整理しやすくなります。geodis+1


3. チャートの実務的な読み方(3ステップ)

GHYなどの実務解説では、このチャートの使い方を3ステップで説明しています。ghy+1

ステップ1:自社品目が属する「行」を確定する

チャートは、行が「品目カテゴリまたは原産国等の条件」、列が「各関税措置」という構造になっています。ghy
解説では、例えば「自動車・自動車部品」「中大型トラック及び部品」「自動車・トラック以外でアルミを含有する品目」「鉄鋼・アルミ派生品」「木材・家具関連」などの行が並ぶ形で紹介されています。ghy+1

この行の特定を誤ると、その後の判断がすべてずれてしまうため、ビジネス側が準備しておくべき最低限の情報は次の通りです。

  • 米国HTSコード(品目分類)
  • 原産国(USMCA原産かどうかを含む)
  • 鉄鋼・アルミ・銅等の含有有無と、その含有部分の価額(派生品の場合)
  • 自動車・自動車部品・トラック等の車両関連品目に該当するかどうか

ステップ2:行を横に読んで、YES / 条件付き / NOを拾う

各セルには「YES」「CONDITIONAL」「NO」などの表示があり、その行の条件下で、各関税措置が適用され得るかどうかの目安として使うことができます。ghy
ただし、「YESだから自動的に課税確定」という意味ではなく、あくまで「該当する可能性あり」のフラグであり、具体的な適用要件は各大統領令・布告・官報告示等を確認する必要があります。chrobinson

ステップ3:最終判断は一次資料で裏取りする

チャートは情報提供目的のツールであり、法的拘束力を持つ「公式解釈」ではありません。ncbfaa+1
最終的な判断は、EO 14289の本文、関連する大統領布告、Federal Register 掲載告示、CSMS等の一次資料を踏まえて行うことが求められます。govdelivery


4. 「解除」といっても、申告が簡単になるわけではない

非スタック・ルールの導入により「二重取り」が一定程度抑制される一方、2025年はむしろ申告データの要件が増えている側面があります。jetworldwide+1
典型例が、232条鉄鋼(特に派生品)に関する「含有価額ベースの申告」です。govdelivery+1

232鉄鋼・アルミ派生品や、鉄鋼品(Chapter 73 など)について、CBPはCSMSで次のような実務指示を示しています。govdelivery+1

  • 対象となる派生品については、232関税を「鉄鋼部分(またはアルミ部分)の価額」に限定して計算する。
  • 非鉄鋼(または非アルミ)部分の価額については、別ラインで申告し、IEEPA関税やその他の追加関税をそのラインに載せる。
  • 232の追加関税率を適用するラインと、IEEPA等を適用するラインで、価額を混在させないようにする(ACEの計算ロジック上も分離が必要とされる)。whitecase+1

その結果、現場では次のような構図になりがちです。

  • 非スタック・ルールにより「同じ価額に対する二重取り」は減る。
  • 一方で、「二行申告」「価額分解」「複数のChapter 99の組み合わせ」が増え、通関実務としてはむしろ複雑化する。

5. ビジネス上のインパクト:押さえるべき2つの数字

(1) 過去分キャッシュ(還付余地)

EO 14289は、2025年3月4日以降の輸入・保税引取りに遡及して適用され、対象5措置について不適切なスタックがあった場合には、通常のCBP手続により還付請求が可能とされています。cassidylevy+1
したがって、「2025年3月4日以降の米国輸入で、232自動車・232鉄鋼・232アルミ・カナダIEEPA・メキシコIEEPAが同一貨物に重複して課されていないか」を棚卸しすることには大きな価値があります。govdelivery

(2) 今後の原価(正しい適用での着地)

非スタック・ルールの対象外であるSection 301、AD/CVD、通常税率、対中IEEPA(EO 14195 系)などは、従来どおり残ります。federalregister+1
したがって、将来の着地原価を再計算する際は、「解除された分だけ単純に下がる」と見るのではなく、「残る関税(301、AD/CVD、IEEPA等)も含めたうえで、非スタック・ルールを考慮した新しい積み上げ」を行うことが必要です。global-scm+1


6. 日本企業向けの実務ToDo(すぐ効く順)

日本企業が短期的に着手しやすい対応は、次のように整理できます。

  • 2025年3月4日以降の米国向け輸入エントリーを抽出し、対象5措置が「不適切に重複していないか」の一次診断を行う(特に自動車・金属含有品)。cassidylevy+1
  • 自社の主要品目を、「チャート上のどの行に該当するか」(自動車系、金属含有品、木材・家具系、対中IEEPA対象品など)に分類し、社内で共有する。global-scm+1
  • 通関業者と協議し、Chapter 99 の付番方針、二行申告の要否、鉄鋼・アルミ部分の価額分解の根拠資料の持ち方など、実務プロセスを事前にすり合わせる(特に232派生品・金属含有品)。govdelivery+1
  • 社内規程として、「チャートのYESはあくまで“要検討”であり確定ではない」「最終判断は一次資料(EO・布告・官報)に基づく」「reasonable care(合理的注意義務)の観点から、適用関税の根拠を文書化する」といった原則を明文化する。ncbfaa+1

結び:チャートは「地図」であり、ルールの代替ではない

CBPの「Unstacking Certain Tariffs Chart」は、関税の重複を減らすために導入された複雑なルール群を、実務者が一望できるよう整理した地図の役割を果たします。geodis+1
しかし、地図だけではゴールに到達できません。EO 14289が定めた非スタックの骨格、各大統領布告やCSMSが追加してきた個別ルール、そして対象外として残るSection 301やAD/CVD等を同時に管理してはじめて、2025年型の米国通関コンプライアンスが成立します。presidency.ucsb+1

  1. https://global-scm.com/blog/?p=3509
  2. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3e0a63e
  3. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3e36d96
  4. https://www.chrobinson.com/en-us/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q4/12-24-2025-client-advisory-cbp-releases-informational-tariff-unstacking-chart/
  5. https://ncbfaa.org/news-advocacy/monday-morning-ebriefing-details
  6. https://www.presidency.ucsb.edu/documents/executive-order-14289-addressing-certain-tariffs-imported-articles
  7. https://www.cassidylevy.com/news/new-cbp-guidance-clarifies-tariff-stacking-refund-procedures/
  8. https://www.whitecase.com/insight-alert/trump-administration-increases-steel-and-aluminum-section-232-tariffs-50-and-narrows
  9. https://www.federalregister.gov/documents/2025/05/02/2025-07835/addressing-certain-tariffs-on-imported-articles
  10. https://business.gmu.edu/news/2025-07/addressing-certain-tariffs-imported-articles-executive-order-14289
  11. https://immpolicytracking.org/policies/potus-issues-eo-on-northern-border-and-imposes-tariffs-on-canada/
  12. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/tariff-actions-resources/ieepa-tariffs-on-canada-china-mexico-venezuelan-oil
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  15. https://www.federalregister.gov/documents/2025/02/07/2025-02408/imposing-duties-to-address-the-synthetic-opioid-supply-chain-in-the-peoples-republic-of-china
  16. https://globaltradealert.org/blog/US-Tariff-Stacking-Explained
  17. https://geodis.com/us-en/resources/customs-corner/cit-confirms-court-authority-order-refunds-ieppa-duties-without-required
  18. https://www.ghy.com/trade-compliance/cbp-provides-unstacking-tariff-chart/
  19. https://www.ghy.com/trade-compliance/category/us-customs/
  20. https://www.jetworldwide.com/blog/unstacking-usa-trump-tariffs
  21. https://www.ghy.com/trade-compliance/guidance-on-executive-order-issued-to-prevent-tariff-stacking-on-us-imports/
  22. https://phillipslytle.com/clarifying-guidance-on-new-stacking-tariffs/
  23. https://www.linkedin.com/posts/hugopakula_customscompliance-trump-tariffs-activity-7330540305852551170-Mvd9
  24. https://www.reddit.com/r/CustomsBroker/comments/1n2qz9v/how_is_cbp_being_impacted_by_the_tariffs_and_ice/
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  26. https://worldtradescanner.com/Guidance%20on%20Tariff%20Rates%20for%20Products%20of%20China%20under%20IEEPA%20Executive%20Orders.htm
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  28. https://www.federalregister.gov/documents/2025/02/07/2025-02406/imposing-duties-to-address-the-flow-of-illicit-drugs-across-our-northern-border
  29. https://www.thompsonhinesmartrade.com/2025/03/tariffs-against-china-and-hong-kong-increase-to-20-on-march-4-2025/
  30. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/07/amendment-to-duties-to-address-the-flow-of-illicit-drugs-across-our-northern-border-9350/
  31. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/03/further-amendment-to-duties-addressing-the-synthetic-opioid-supply-chain-in-the-peoples-republic-of-china/
  32. https://www.congress.gov/crs_external_products/IN/HTML/IN12533.html
  33. https://www.ghy.com/tariff-tracker/
  34. https://millerco.com/sites/default/files/2025-05/CBP-Clarification-of-Tariff-Stacking-Rules-and-Refund-Opportunity-May-16-2025.pdf
  35. https://thetradelawfirm.squarespace.com/s/Tariff-Update-March-10-2025.pdf
  36. https://www.macmap.org/OfflineDocument/TradeRemedy/InternalLink/USA/CSMS65936570%20GUIDANCE_%20Section%20232%20Additional%20Steel%20Derivative%20Tariff%20Inclusion%20Products.pdf
  37. https://www.govinfo.gov/app/details/DCPD-202500539
  38. https://www.westernoverseas.com/guidance-steel-iron-and-aluminum-derivative/
  39. https://jaguarfreight.com/update-dec-22-2025/
  40. https://jsconnor.com/tariffs/additional-steel-and-aluminum-derivative-products-subject-to-section-232-tariff/

EUが原産地証明の「真偽確認」を明文化:2025年3月3日改訂ガイダンスが示す実務の勘所


欧州委員会の税関・間接税総局(DG TAXUD)は、2025年3月3日付で「優遇原産地ルール(Preferential Rules of Origin)に関するガイダンス」を更新しました。今回の改訂では、原産地証明の真偽確認(verification of proofs of origin)を専門に扱う新しい章「Section C」が追加されたことが大きな特徴です。

一見すると制度の説明書が増えただけに見えますが、企業実務にとっては、いつ、誰が、どんな手順で原産地証明を確認しに来るのかが具体的に言語化されたという意味で、非常に重要な内容となっています。

そもそも原産地証明の真偽確認とは何か

EUのFTAや特恵制度で関税優遇を受けるには、輸入申告時の特恵申請を原産地証明書類で裏づける必要があります。ガイダンスでは、特恵申請は「原産地に関する書類」または「輸入者の知識(importer’s knowledge)」によって支えられるべきものと整理されています。

この「真偽確認」とは、税関が事後的に次の点を確認するプロセスを指します。

  1. その貨物が本当に協定上の原産品としての条件を満たしているか
  2. 原産地証明書類が真正か(改ざんや不整合がないか)
  3. 直送条件など、協定で定められた他の要件も満たしているか

新章Cは、この確認プロセスをどのように運用するかを、手続きとして明確にまとめた章です。

今回の更新で追加されたハイライト

DG TAXUDの発表によれば、今回の改訂ではEU加盟国と第三国の間でやり取りされる照会プロセスの詳細や、輸入者の知識に関する実務的な整理が扱われています。

加えて、改訂PEM(汎欧地中海)原産地規則や、最近発効したEU・チリ暫定貿易協定など、最新のルール変更を反映した点も強調されています。

真偽確認のタイミング:輸入時と輸入後の二段構え

ガイダンスでは、真偽確認の入口を「輸入申告時」と「輸入後」に分けて説明しています。輸入申告の受理段階でチェックが始まることもあれば、輸入許可のあとに税関が検証に入ることもあります。

また、検証対象の選び方は、疑わしい点がある場合の「合理的疑義」に基づくものだけでなく、定期的な「無作為抽出」もあり得ると整理されています。

企業側の視点では、原産地証明は提出して終わりではなく、後日の監査に耐えうる根拠資料を常に整備しておく必要があるということです。

新章Cの構造:照会の方向性は2つ

新章Cでは、照会がどの方向に流れるかによって手続きを区分しています。

区分照会の方向想定されるシーンの例
C.2第三国からEU加盟国へ日本などの輸出先国が、EU側が発行したEUR.1やREX登録番号の真偽をEU当局に確認する
C.3EU加盟国から第三国へEU税関が輸入された商品の原産性に疑義を持ち、日本の税関など輸出国の当局に確認を求める

どちらのケースでも、企業実務においては期限付きの照会対応が発生する可能性がある点が共通しています。

C.3 EU加盟国が第三国へ照会する際の実務上の注意

EU側が輸入申請を検証対象に選ぶ場合、EU税関はまず原産地証明を精査します。協定によっては、輸出国当局へ照会する前に、輸入者に対して追加情報の提出を求める場合があります。

特にEU・日本EPAなどを含む一部の類型では、輸出国当局への照会に進む前に、輸入者からの回答のみで検証を完了できる可能性がある点が重要です。

合理的疑義の例としては、証明書上のスタンプの相違、破損、判読困難といった「書類の外観品質」に関する論点も挙げられています。

輸入者の知識(importer’s knowledge)による検証ルート

輸入者の知識に基づいて特恵申請を行う場合、輸入国側の当局が輸入者に対して直接検証を行うと明示されています。つまり、輸出国の税関を通さず、輸入者が直接すべての責任を負うことになります。

この制度を利用するには、輸入者自身が原産性を立証できる証憑を保持し、一定期間保存しなければなりません。輸出者が作成したステートメントを単に流用するだけでは不十分であり、情報提供のあり方を事前に契約などで取り決めておくことが推奨されています。

明日からの実務で活用すべき対応チェックリスト

  • 根拠資料のファイル化製造工程、BOM(部品表)、原価計算書など、結論に至る根拠一式を後日の書類審査を前提に整備してください。
  • 証明書類の外観チェック判読性、記載漏れ、スタンプの鮮明さなど、形式的な不備が合理的疑義の入口にならないよう出荷前に点検します。
  • 直送条件の証憑管理経由地がある場合、非改変要件を満たすための証憑も原産地資料と一緒に保管しておきましょう。
  • 保存期間の徹底少なくとも3年以上の保存を基本とし、協定ごとの保存義務期間を再確認してください。
  • 社内導線の整備税関からの照会は回答期限が厳格です。担当窓口や、英語での説明資料の準備、承認ルートをあらかじめ決めておきます。

まとめ

今回のDG TAXUDガイダンス更新は、原産地証明の真偽確認プロセスを可視化し、企業が直面する否認リスクを具体的に示しました。

EUとの取引で関税優遇を活用するなら、証明書を発行して完結とするのではなく、後日の検証に耐えうる根拠と体制をセットで構築することが、実務上の最短ルートとなります。


米国「相互関税」制度 12月時点の運用確認ポイント


米国「相互関税」制度 12月時点の運用確認ポイント

通関現場でいま起きていることと、企業が外せない実務チェックリスト

2025年の米国通商政策は、「税率いくらか」という話よりも、「どの文書で、いつから、どの申告コードで動くのか」を最後まで追えるかどうかが勝負になっています。 とりわけ「相互関税」は、大統領令で枠組みが動き、HTSUS第99章の追加コードで実装されるため、社内の理解が追いつかないと、過払い・申告誤り・事後調査リスクが一気に顕在化します。 以下では、12月時点の制度の骨格を押さえたうえで、ビジネスパーソンが社内に指示しやすい「運用確認ポイント」を、通関と収益影響の観点から整理します。govdelivery+4


1. そもそも「相互関税」は何として動いているのか

米国の相互関税は、2025年4月2日の大統領令14257(番号は仮に付されており、実務上は後続の修正・補足も含めて読む必要があります)を起点に、国家緊急事態権限を根拠として関税を調整する枠組みとして整理されました。 具体的な税率は、HTSUS第99章の見出し(9903.02.xxなど)の追加コードで運用され、通常の1〜97章の分類に「上乗せ」または「置換」される形で適用されます。cassidylevy+2

その後、2025年7月31日の大統領令とそれを受けたCBPガイダンスにより、8月7日12時01分(米東部時間)から適用される国別の相互関税率と申告コードの運用が明確化されました。 関係文書では、国別税率が0%から15%(一部の国はそれより高率)までのレンジで設定され、表にない国には基準率(多くの実務解説は10%を想定)を適用する整理が示されています。dimerco+3

重要なのは、これは単なる「税率のニュース」ではなく、「申告実務の仕様変更」だということです。 輸入申告では、通常の品目分類(1〜97章)に加え、第99章の相応しいコードを正しく付番して初めて、意図した税率で課税されます。buckland+2


2. 12月時点の特徴は「合意で税率ロジックが変わる」こと

相互関税は、単純な「国別一律上乗せ」ではなく、交渉・合意の内容に応じて「合計税率の上限・下限」を設定するロジックへ置き換わるケースが増えています。 実務上は、対象国を「相互関税の計算ロジック別」に分類して整理することで、申告ミスを減らすことができます。geodis+2

代表例がEUです。EU原産品については、Column 1(一般税率)が15%以上の品目には追加相互関税を課さず、15%未満の品目については「一般税率+相互関税=15%」となるように調整する特則が、第99章見出し9903.02.19/9903.02.20として明記されています。govdelivery+2

日本についても、相互関税がMFN税率(Column 1)と連動し、15%を基準にロジックが分岐する仕組みが、CBPの通知・民間通関解説で一貫して示されています。 さらに12月時点では、韓国との「戦略的貿易・投資協定(Korea Strategic Trade and Investment Deal)」の関税要素が、連邦官報告示を通じてHTSUS改正として順次実装されています。westernoverseas+5


3. 企業が必ず押さえるべき運用確認ポイント

3-1. 適用関税の「足し算ルール」を誤解しない

初期のCBPガイダンスでは、ベースラインの関税と相互関税を一律に単純加算するのではなく、MFN税率と相互関税率の組み合わせ方が国・品目ごとに定義されていることが明確にされています。 EU・日本など一部の国では、「合計15%ルール」のように、最終税率のキャップ・フロアが決まっており、単純な「MFN+α」という理解では誤差が生じます。dimerco+3

このロジックを誤解すると、原価計算が体系的にずれ、営業見積・価格改定・顧客交渉など、収益関連の前提が崩れます。 ここは通関担当だけでなく、経理・営業とも共有すべきポイントです。geodis+1

3-2. 原産地の定義が「税率のスイッチ」になる

相互関税は国別税率で運用されるため、原産地判定がそのまま税率スイッチになります。 さらに、意図的・実質的な迂回輸出と認定された場合には、通常の相互関税とは別枠の追加関税(例:40%)が課され得るとするガイダンスも公表されており、CBPは迂回認定時に第99章コードを9903.02.01などの高率項目に切り替えて課税する運用を案内しています。jsconnor+2

したがって、サプライチェーンの上流段階から、原産地の根拠資料を「説明できる形」で整備することが不可欠です。 単なる原産地証明書の有無では不十分であり、製造工程・加工実態・トレーサビリティに基づいて、迂回と誤解されないストーリーを示せるかどうかが問われます。jsconnor+1

3-3. 第99章コードの付与ミスは「過払い」か「追徴」になる

EU向けの相互関税では、Column 1が15%以上か未満かによって、9903.02.19と9903.02.20のどちらを使用するかが分かれます。 ここを誤ると、不要な15%を多く払うか、逆に不足分が事後調査で追徴されるか、いずれかのリスクが生じます。buckland+3

日本品については、CBP通知と民間の通関実務解説によれば、Column 1が15%以上の場合は9903.02.72(追加0%)、15%未満の場合は9903.02.73(合計15%)を使用する整理が示されています。 併せて、Section 232対象品(鉄鋼・アルミ・銅、自動車・自動車部品など)は相互関税の対象から除外され、引き続き9903.01.33など従来のSection 232コードを使用するように指示されています。customscourt+4

3-4. 日付条件は「船積み」と「通関」の二段階で管理する

2025年7月31日の大統領令では、8月7日以前に最終輸送モードで積み込まれ、10月5日までに輸入申告が完了した貨物について、旧税率を適用できる経過措置が設けられました。whitehouse+1

この種の経過措置は、「船積み基準」と「輸入申告基準」という二つのタイミングをまたぐため、輸出側の船積み管理と輸入側の通関管理を分断すると漏れが生じます。 フォワーダー・ブローカー・輸入者の三者が、対象貨物リストを同じ定義・同じデータで共有することが必須です。fedex+1

3-5. 還付・ドローバックの余地を最初から織り込む

相互関税についても、一定条件のもとでドローバック(還付)が認められることが、初期のガイダンスや各種実務解説で明確にされています。 税率や対象国が頻繁に変わる局面では、過払いが起きやすく、後追いで回収できる権利を確保するために、輸入時点から証憑・データを適切に保存する設計が現実的です。 この領域は、財務・税務と通関担当が連携してルール化する必要があります。dimerco+1

3-6. 記録保存は「5年」を標準に、監査対応型で組む

複数の追加関税が並行して適用される中で、通関実務が不透明になりやすいこと、また将来の還付や事後調査に備えて通関書類の保存が重要であることは、各種実務レポートや日本語解説でも繰り返し指摘されています。 米国側の一般的な保存期間(5年)を前提に、監査対応型のファイル体系を組むことが望ましいとされています。geodis

ここでいう書類は、インボイスやB/Lだけでは不十分で、第99章コード選定の根拠、原産地判定メモ、分類根拠、社内決裁ログなどを含めた「説明パッケージ」を整えることがポイントです。buckland+1

3-7. 係争リスクを踏まえ、権利保全の姿勢を決める

IEEPA権限を用いて広範な相互関税を課すこと自体が、憲法・通商法の観点から争点となっている訴訟も係属しており、控訴審を経て最高裁に持ち込まれる可能性が示唆されています。 無効判断が出た場合でも、その効力の遡及範囲や差止の射程が争点となり得るため、企業としては「過払いの可能性」と「どの手続で権利を保全するか」をあらかじめ決めておくことが現実的です。cassidylevy+1


4. 12月時点の社内向けチェックリスト

  • 対象国ごとに、相互関税のロジック(単純上乗せ型/合計15%型など)を分類し、一覧表にする。govdelivery+1
  • 品目分類(1〜97章)と第99章コードの組み合わせルールを社内で文書化し、ブローカー任せにしない。jsconnor+1
  • Section 232対象の有無を確認し、相互関税から除外される場合の申告コード(例:9903.01.33)の運用を明確化する。jsconnor+2
  • 原産地根拠をサプライチェーン上流まで遡って整備し、迂回輸出認定による高率追加関税リスク(例:40%)を抑え込む。govdelivery+1
  • 経過措置など日付条件の対象貨物を抽出し、船積み・通関の両方のプロセスで共通管理する。whitehouse+1
  • ドローバックや還付の可能性を見越して、関係書類・データを輸入時から体系的に回収する。dimerco+1
  • 書類保存を5年基準で統一し、監査・還付・係争のいずれにも対応できるファイル構成とする。geodis
  • 連邦官報、ホワイトハウス発表、CBP通達(CSMSやGovDelivery)を定点監視し、変更を社内手順・マスターデータに即時反映する体制を作る。federalregister+2

まとめ

米国の相互関税は、税率そのものよりも、第99章コード運用と、合意に伴うロジック変更、さらに日付条件と原産地の説明責任が実務の主戦場になっています。 12月時点では、「制度は常に動くもの」として前提を置き直し、過払いと追徴の双方を抑え込む社内統制に落とし込めるかどうかが、企業のコストとリスクを分ける状況にあります。cassidylevy+3

注:本稿は一般情報であり、個別案件に対する法的助言ではありません。具体的な申告・還付・不服申立てについては、通関業者や米国通商・関税の専門家と連携して判断してください。geodis

  1. https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2025/07/2025ReciprocalTariffs_7.31.eo_.pdf
  2. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3ec7b5e
  3. https://www.westernoverseas.com/updated-guidance-on-japan-agreement/
  4. https://geodis.com/us-en/resources/customs-corner/us-tariffs-client-updates
  5. https://www.federalregister.gov/documents/2025/12/04/2025-21940/implementing-certain-tariff-related-elements-of-the-us-korea-strategic-trade-and-investment-deal
  6. https://www.cassidylevy.com/news/modifications-to-reciprocal-tariffs-signal-further-development-in-trump-trade-policy/
  7. https://hts.usitc.gov/search?query=European+Union
  8. https://dimerco.com/news-press/us-tariff-update-2025/
  9. https://www.buckland.com/wp-content/uploads/2025/09/Buckland-Tariffs-Presentation-New-U.S.-Tariff-Reality-September-2025.pdf?x64846
  10. https://jsconnor.com/tariffs/cbp-issues-guidance-on-increased-reciprocal-tariffs/
  11. https://www.customscourt.com/updated-tariff-guidance-u-s-japan-agreement-brings-15-baseline-rate/
  12. https://info.expeditors.com/newsflash/cbp-publishes-guidance-on-tariffs-and-duties-for-imports-from-japan
  13. https://www.govinfo.gov/app/details/FR-2025-12-04/2025-21940
  14. https://www.fedex.com/content/dam/fedex/us-united-states/International/United_States_-_South_Korea_trade_deal_implementation.pdf
  15. https://jsconnor.com/tariffs/updated-guidance-on-new-tariff-structure-for-products-of-japan/
  16. https://content.govdelivery.com/accounts/USDHSCBP/bulletins/3f2c91c
  17. https://www.federalregister.gov/public-inspection/2025-21940/implementing-certain-tariff-related-elements-of-the-us-korea-strategic-trade-and-investment-deal
  18. https://www.federalregister.gov/documents/2025/09/16/2025-17908/implementing-certain-tariff-related-elements-of-the-united-states-japan-agreement
  19. https://ustr.gov/about/policy-offices/press-office/fact-sheets/2025/november/fact-sheet-united-states-and-korea-agree-korea-strategic-trade-and-investment-deal
  20. https://www.chrobinson.com/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q3/09-17-2025-client-advisory-us-japan-agreement-implementation-trade-agreement-tariff-modifications/

米国史上最大の通関詐欺和解:Ceratizit社に5400万ドル罰金


米国史上最大級と報じられた通関詐欺和解とは何か

Ceratizit社 5400万ドル決着が示す通関コンプライアンスの新常識
なぜこのニュースがビジネスに効くのか

2025年12月、米司法省は、タングステンカーバイド製品の米国内ディストリビューターであるCeratizit USA LLC(ノースカロライナ州シャーロット)が、未払い関税等をめぐる虚偽請求取締法(False Claims Act)に基づく民事案件について、5,440万ドルの支払いに合意したと発表しました。 これは、False Claims Actに基づく関税関連案件としては過去最大級の和解額と報じられており、通関分野における民事責任リスクの水準を象徴する事案です。 論点は、中国原産品に対するSection 301追加関税の回避、誤ったHSコード申告、原産地表示義務違反という、通関実務の中核そのものであり、申告の「結果責任」が改めて可視化されたといえます。finance.yahoo+2


事案の全体像

司法省および和解契約書によると、問題とされたのは主に次の3点です。grcreport+2

  1. 原産地の虚偽申告
    中国で製造されたタングステンカーバイド製品が台湾を経由して米国に輸入される過程で、原産地を台湾と申告し、中国原産品に課されるSection 301関税の支払いを免れたとされています。 対象期間は2020年8月から2024年3月までとされており、この間、中国製品を台湾原産と表示して輸入したとのアレゲーションが示されています。wttlonline+2
  2. HSコードの誤申告による関税低減
    和解契約書によれば、本来は工具用タングステンカーバイド製品(TCPs)をHTSコード8209.00.00(一般税率約4.6%)で申告すべきところ、HTSコード8311.90.00(一般税率Free)として申告したとされています。 対象期間は2015年6月頃から2024年3月までとされており、約9年にわたり関税率の低いコードへの誤分類が継続したと主張されています。hts.usitc+3
  3. 原産地表示義務違反とマーキングデューティ
    一部貨物について、原産地表示(country-of-origin marking)を欠いたまま米国内に供給し、本来支払うべきマーキングデューティを支払っていないとのアレゲーションが含まれています。 対象期間は2019年5月から2024年3月とされ、原産地ラベリングと追加関税負担の双方が問題化しました。justice+1

経緯を時系列で整理

  • 2015年6月頃から
    HSコードの誤申告による関税低減が始まったとされています(タングステンカーバイド製品を8311.90.00として申告)。justice+1
  • 2019年5月頃から
    原産地表示を欠いた貨物の輸入とマーキングデューティ不払いが問題になった期間とされています。grcreport+1
  • 2020年8月〜2024年3月
    中国製品を台湾原産として申告し、Section 301追加関税を回避したとされる期間です。wttlonline+1
  • 2022年10月
    内部通報者(リレイター)がFalse Claims Actのqui tam条項に基づく民事訴訟を提起したことが、和解契約書で示されています。finance.yahoo+2
  • 2025年12月
    司法省が和解を公表しました。支払総額は5,440万ドルであり、このうち内部通報者には約975万ドルの報奨金が支払われると報じられています。justice+2

なお、司法省は2025年8月に省庁横断の「Trade Fraud Task Force」を立ち上げ、関税逃れを含む貿易不正の摘発強化を明言しており、本件はその流れの中で象徴的な大型案件と位置付けられています。mdm+2


和解条件のポイント

和解契約書によれば、Ceratizitは総額5,440万ドルを支払うことに合意しており、そのうち約2,720万ドルはレストリビューション(政府の損失回復に充てられる性格)として位置付けられ、残額は民事制裁金等として扱われます。 また、支払額には一定の利息条件が付されている点も明記されています。justice+1

一方で、和解はCeratizitによる違法行為を認めるものではなく、司法省が主張する内容はあくまでアレゲーションであり、裁判による確定的な違法認定が行われたわけではない点も明確にされています。news.bloomberglaw+1


日本企業の実務に置き換えると、どこが危ないか

この案件が突き付けるリスクは、米国向け輸出企業だけでなく、米国に輸入者・販売子会社・ディストリビューターを持つ企業全般に直接響くものです。grcreport+1

  • 原産地は輸送経路ではなく実質で決まる
    第三国経由の物流自体は違法ではないものの、原産地の判断は実質的な製造国や実質的変更の有無で行われます。 経由国を形式的に原産地として申告する運用は、Section 301関税のような追加関税が絡む場面では最も危険な「地雷」となります。customsmobile+3
  • HSコードは価格ではなくルールで決まる
    税率がFreeのコードに「寄せたくなる」誘惑は常にありますが、分類は技術仕様と品目定義・通則に基づき決定されます。 本件のように長期間にわたり誤分類が継続すると、過少納付関税が累積し、一気に巨額の追徴・和解額に跳ね上がる可能性があります。usitc+4
  • 原産地表示は後回しにすると高くつく
    原産地表示義務の欠落は、単なるラベルミスにとどまらず、マーキングデューティという追加負担や、在庫隔離・リワークコストに連鎖し得ます。 製品本体・包装・同梱書類を含めた一貫した表示設計と、その監査プロセスの構築が不可欠です。justice+1
  • 内部通報が巨額回収の入口になる
    本件は内部通報者がqui tam訴訟を提起し、その結果として政府が介入し、回収額の一部が通報者報奨金として支払われる典型パターンです。 通関・関税領域でも、内部通報が現実の経営リスクとなっていることを示す象徴的な事案といえます。finance.yahoo+2

すぐに着手できる再発防止のチェックポイント

ビジネスマン向けに、優先度の高いポイントを整理すると、以下のとおりです。mdm+1

  • 原産地判定の根拠を、製造工程ベース(部材構成・加工内容・実質的変更)で文書化する。
  • 第三国経由取引について、物流スキームと通関申告上の原産地ロジックが整合しているかを定期的に検証する。
  • HSコードは、誰が・どの根拠で決定し、いつ見直すか(図面・仕様変更時など)を明文化し、監査可能なプロセスとする。
  • 原産地表示(本体・包装・ラベル・取扱説明書)の設計レビューを出荷前工程に組み込み、マーキングデューティ発生リスクを事前に抑制する。
  • 米国子会社や通関業者に丸投げせず、輸出者側でもインボイス・仕様書・バインディングルーリング等の証跡を一元管理し、自ら検証できる体制を整える。

まとめ

Ceratizit社の5,440万ドル和解は、関税逃れが疑われた論点が「原産地」「HSコード」「表示義務」という通関コンプライアンスの基本要素に集中していた点で、どの業界にも高い再現性を持つ事案です。 米国当局はTrade Fraud Task Forceの創設などを通じて貿易不正の取り締まり強化を明言しており、通関コンプライアンスはコスト削減のためのオプションではなく、事業継続の基盤として再設計すべき局面に入っています。mdm+2

  1. https://www.justice.gov/opa/pr/ceratizit-usa-llc-agrees-pay-544m-settle-false-claims-act-allegations-relating-evaded-0
  2. https://finance.yahoo.com/news/record-breaking-settlement-ceratizit-usa-214600318.html
  3. https://www.grcreport.com/post/ceratizit-to-pay-54-4-million-to-settle-allegations-of-evaded-customs-duties
  4. https://www.justice.gov/opa/media/1421296/dl
  5. https://www.wttlonline.com/stories/austrian-firm-settles-duty-evasion-case-for-544-million,14607
  6. https://hts.usitc.gov/search?query=8209000060
  7. https://rulings.cbp.gov/ruling/n343124
  8. https://www.mdm.com/news/legal-regulatory-issues-in-wholesale-distribution/cohort-legal/doj-settles-with-2-u-s-distributors-over-tariff-evasion-goods-smuggling/
  9. https://news.bloomberglaw.com/litigation/ceratizit-to-pay-54-4-million-in-fca-customs-duties-doj-deal
  10. https://www.customsmobile.com/rulings/docview?doc_id=NY+N238531&highlight=NY+N238531
  11. https://ustr.gov/sites/default/files/enforcement/301Investigations/Tariff%20List%20(83%20FR%2047974,%20as%20amended%20and%20modified%20by%2083%20FR%2049153).pdf
  12. https://www.usitc.gov/publications/docs/tata/hts/bychapter/1000c82.pdf
  13. https://hts.usitc.gov/reststop/file?release=currentRelease&filename=Chapter+82
  14. https://www.mlex.com/mlex/trade/articles/2424344/us-settles-with-north-carolina-firm-accused-of-evading-duties-on-chinese-tungsten
  15. https://www.mofa.go.jp/files/100096004.pdf
  16. https://www.freightamigo.com/en/blog/hs-code/hs-code-for-tungsten-carbide/
  17. https://hoodline.com/2025/12/charlotte-based-ceratizit-usa-settles-for-54-4m-in-customs-duty-evasion-allegations-under-false-claims-act/
  18. https://hts.usitc.gov/search?query=8311900000
  19. https://hts.usitc.gov/search?query=9903.01.25
  20. https://www.usitc.gov/tata/hts/archive/0000/000c82.pdf

米国がニカラグア製品に段階的な301条関税を決定2026年は実質猶予、2027年以降にコストが上がる構図


米国がニカラグア製品に段階的301条関税を決定

米国はニカラグアに対する301条調査を受け、CAFTA-DRの原産要件を満たさないニカラグア産品に段階的な追加関税を導入することを決定しました。ustr+1
税率は2026年に0%で開始し、2027年に10%、2028年に15%となる設計で、既存の相互関税18%と重なることで総負担が大きくなり得ます。trade+1


1. 何が決まったのか

USTRの発表および官報に示された決定内容の骨子は次のとおりです。govinfo+1

  • 2026年1月1日から新たな301条関税を導入するが、税率は0%で開始する
  • 2027年1月1日に301条関税を10%に引き上げる
  • 2028年1月1日に301条関税を15%に引き上げる
  • いずれも、当該日以降に「消費のために輸入される、又は保税蔵置場から引き取られる」貨物に適用されるとされるgeodis+1
  • 対象は、ドミニカ共和国・中米・米国自由貿易協定(CAFTA-DR)の原産地要件を満たさないニカラグア産品(CAFTA-DR非原産品)とされるustr+1
  • 追加関税は他の関税措置(いわゆる相互関税18%など)が存在する場合、それらに上乗せされ得るtradecomplianceresourcehub+1
  • ニカラグア側の行動に応じて、税率水準やスケジュールの修正可能性をUSTRが示しており、将来の上振れリスクを内包しているgovinfo+1

ここで重要なのは、この301条関税が「ニカラグア産品一律」ではなく、「CAFTA-DR上の“原産品”ではないもの」に絞られている点です。govinfo
同じニカラグア生産品でも、CAFTA-DR原産として認定されれば301条追加分は回避し得る一方、非原産と判断されれば301条関税が課される二分構造になります。greenworldwide+1

参考として、税率の段階スケジュールは以下のとおりです。geodis+1

適用開始日301条追加関税率対象
2026年1月1日0%CAFTA-DR非原産のニカラグア産品govinfo
2027年1月1日10%同上govinfo
2028年1月1日15%同上govinfo

制度上は2026年から始まるものの、0%でのスタートとなるため、実務的には2026年が「助走期間」、2027年以降がコストインパクトの本番という構図になります。ustr+1


2. 301条の枠組みと今回の狙い

通商法301条は、米国の通商に不当な負担を与える「不当・不合理・差別的」な外国政府の措置に対し、追加関税などの対抗措置をとり得る枠組みです。congress+1
今回USTRは、ニカラグアの労働権・人権・法の支配に関する政策・慣行が不合理であり、米国の通商を負担・制約していると判断し、301条関税を発動したと説明しています。ustr+1

実務的には、通商摩擦の対象が「関税水準」だけでなく、労働・人権・ガバナンスなどの非関税領域へ広がっていることを示す事案とも評価できます。ustr+1
調達・生産委託の現場にとっては、価格だけでなく、人権・コンプライアンス面の評価がサプライヤー選定に直結する局面が一段と強まったと言えます。ustr+1


3. 調査開始から最終決定までの時系列

今回の追加関税は、短期間で決まったものではなく、以下のようなプロセスを経ています。ustr+1

  • 2024年12月10日:USTRがニカラグアに関する301条調査を開始ustr+1
  • 2025年10月20日:USTRが、最大100%の追加関税やCAFTA-DR優遇の停止等を含む対抗措置案を公表し、検討オプションとして提示reuters+1
  • 2025年11月19日まで:パブリックコメントを募集し、2000件超の意見が寄せられるgovinfo
  • 2025年12月10日:USTRが最終報告・アクションを公表し、「CAFTA-DR非原産品を対象とする段階的関税」を採用する方針を明示thompsonhinesmartrade+1
  • 2025年12月12日:官報に「アクション通知」が掲載され、影響を限定しつつ圧力を高める設計として「CAFTA-DR非原産に限定」「2年の段階導入(0%→10%→15%)」の趣旨が説明されるgovinfo+1

官報では、コメントで賛否が拮抗したこと、複数業種から除外要望が出たことに触れたうえで、「CAFTA-DR非原産に限定すること」「2年かけて税率を引き上げること」により、混乱を抑えつつ企業にサプライチェーン移管の時間を与える判断をしたとされています。greenworldwide+1


4. 米国・ニカラグアの貿易規模と影響業種

USTRの国別ページによると、2024年の米国の対ニカラグア財輸入は46億ドル、財輸出は27億ドルで、財貿易総額は約74億ドルとされています。ustr
サービスを含めた米国とニカラグアの総貿易額は87億ドルとされ、米国側の財貿易赤字は19億ドルです。ustr

JETROは、USITC統計に基づき、米国の対ニカラグア輸入の主要品目として、点火用配線、綿製Tシャツ、金地金、葉巻たばこ、綿製セーター・プルオーバー、コーヒーなどを挙げています。jetro
官報では、繊維・アパレル、葉巻、コーヒー、家具、医療機器、牛肉・食肉、カカオ、キャッサバ粉、園芸、米、シーフードなど、多様な産業から除外要請が出ていたことが列挙されており、これらの分野で影響への懸念が強かったことがうかがえます。govinfo

日本企業にとっても、例えば「米国向け製品をニカラグアで組立・縫製し、第三国素材を多く使用しているケース」や「ニカラグア経由調達により原産判定が複雑化しているケース」では、CAFTA-DR原産判定の結果が米国側のコストに直結する構造になります。greenworldwide+1


5. 見落としがちな論点:相互関税18%との二重構造

今回の301条関税は、既存の相互関税などに上乗せされ得ると説明されています。tradecomplianceresourcehub+1
相互関税そのものは、2025年4月2日の大統領令に基づく世界的な「レシプロカル関税」措置の一部であり、その後の7月31日付大統領令で国別税率が修正され、ニカラグアは18%に設定されています。whitehouse+1

米国商務省系のTrade.gov解説でも、2025年4月2日に相互関税が発表され、ニカラグアが18%の相互関税対象国とされ、その水準がCAFTA-DRの無税メリットを事実上打ち消すものだと説明されています。trade
そのうえで、CAFTA-DR非原産品については2027年以降、ここに301条関税10%/15%が上乗せされる可能性があるため、「相互関税+301条関税」という二重構造のコストを前提にした設計が必要になります。trade+1


6. 企業が今すぐ確認すべきポイント

官報は、2年の段階導入により、企業がCAFTA-DR域内の他国へ生産を移転する時間を確保する意図を明記しています。govinfo
2026年の税率0%は「猶予」であり、2027年以降のコスト上昇に備えて、2026年中に以下の点を洗い出すことが肝要です。greenworldwide+1

ニカラグア関連の米国向け取引の棚卸し

  • ニカラグア由来の完成品・部材・半製品のリストアップ
  • 米国側のImporter of Record(輸入者)の特定
  • どの品目がCAFTA-DR原産として運用されているか/できていないかの整理greenworldwide+1

原産判定・証拠書類の整備

  • BOM、工程表、仕入先証明、原産地証明の運用状況の確認
  • グループ会社や委託先任せにせず、監査可能な形で証跡を整理することgreenworldwide+1

今回の301条関税は「CAFTA-DR原産か否か」で課税の有無が分かれるため、原産管理の精度が粗利に直結します。chrobinson+1

価格・契約条項の見直し

  • 2027年・2028年の関税上昇を織り込んだ価格改定条項(関税転嫁・再交渉条項・サーチャージ等)の検討
  • インコタームズと通関コスト負担者の再確認
  • 関税コストがどのPLに落ちるかを契約上明確化することgeodis+1

生産・調達の「逃げ道」の設計

  • CAFTA-DR域内他国への生産移転・拠点分散(官報も企業が移転できる時間を確保する意図に言及)greenworldwide+1
  • 原材料・生産プロセスの見直しによるCAFTA-DR原産要件の充足
  • 物流ルートとして「ニカラグア経由」を続ける妥当性の再評価govinfo+1

政策の上振れリスクを前提としたモニタリング

  • USTRは、ニカラグア側の改善状況に応じて税率やスケジュールの変更を行い得ると明記しており、今後も通知や追加ガイダンスのフォローが必須です。ustr+1

7. ざっくり試算:2027年以降のコスト感

最後に、追加関税のインパクトを把握するための簡易的な計算例です。実際の税額はHS/HTS分類、通常関税率、優遇の有無、評価方法等により変動しますが、「相互関税+301条関税」のオーダーを確認する目的です。trade+1

前提

  • 相互関税:18%(ニカラグアに対して設定されたレシプロカル関税)sullcrom+1
  • 301条関税:2028年に15%(CAFTA-DR非原産品が対象)ustr+1

ケースA:課税価格100(他の税なしと仮定)

  • 相互関税 18% → 18
  • 301条関税 15% → 15
  • 追加関税合計 → 33

この場合、非原産品のまま米国へ輸入すると、2028年時点では「相互関税+301条追加関税だけで課税価格の33%」の上乗せとなり得ます。trade+1
したがって、「CAFTA-DR原産として301条部分を回避できるか」「それでも残る相互関税18%を価格設計で吸収・転嫁できるか」が、調達・販売戦略の最重要ポイントになります。trade+2


8. 2026年は準備年、2027年が分水嶺

  • 米国はニカラグア産品のうち、CAFTA-DR非原産品に対して301条追加関税を段階導入する(2026年0%、2027年10%、2028年15%)。ustr+1
  • この301条関税は、既存の相互関税18%等に上乗せされ得るため、累積負担が大きくなる可能性がある。tradecomplianceresourcehub+1
  • 官報は、「影響を限定しつつ圧力を高める設計」として、対象をCAFTA-DR非原産に限定し、2年の段階導入で企業の移転時間を確保する趣旨を説明している。govinfo
  • 日本企業の実務上の急所は、原産判定・証跡整備・価格/契約設計・代替生産/調達設計・政策モニタリングの5点に集約される。greenworldwide+1

2026年の0%は「助かった」ではなく「準備せよ」というシグナルであり、2027年の10%時点でどこまで原産管理とサプライチェーン再設計を終えられるかが、粗利を守れるかどうかの分水嶺になると考えられます。greenworldwide+1

  1. https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2025-12-12/pdf/2025-22690.pdf
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  4. https://geodis.com/us-en/resources/customs-corner/us-trade-representative-announces-new-tariffs-nicaraguan-imports-not
  5. https://www.tradecomplianceresourcehub.com/2025/12/11/trump-2-0-tariff-tracker/
  6. https://www.greenworldwide.com/new-section-301-action-on-nicaragua-establishes-phased-tariffs-for-non-cafta-dr-imports/
  7. https://www.congress.gov/crs_external_products/IF/PDF/IF11346/IF11346.28.pdf
  8. https://ustr.gov/about-us/policy-offices/press-office/press-releases/2024/december/ustr-initiates-section-301-investigation-nicaraguas-acts-policies-and-practices-related-labor-rights
  9. https://www.ustr.gov/about-us/policy-offices/press-office/press-releases/2024/december/ustr-initiates-section-301-investigation-nicaraguas-acts-policies-and-practices-related-labor-rights
  10. https://www.reuters.com/world/americas/us-proposes-trade-measures-against-nicaragua-over-labor-rights-2025-10-20/
  11. https://www.strtrade.com/trade-news-resources/str-trade-report/trade-report/october/tariff-increase-cafta-dr-suspension-among-possible-actions-against-nicaragua
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  13. https://www.govinfo.gov/app/details/FR-2025-12-12/2025-22690
  14. https://ustr.gov/countries-regions/western-hemisphere/nicaragua
  15. https://www.jetro.go.jp/ext_images/theme/wto-fta/news/pdf/w_c_monthly_report-202511.pdf
  16. https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/07/further-modifying-the-reciprocal-tariff-rates/
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  18. https://www.chrobinson.com/en-us/resources/insights-and-advisories/client-advisories/2025q4/12-17-2025-client-advisory-ustr-announce-phased-section-301-tariffs-nicaraguan-goods-outside-cafta/
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  20. https://www.ey.com/en_vn/technical/tax/tax-and-law-updates/customs-global-trade-alert-april-2025-trump-administration-executive-action-alert-implications-for-vietnam-businesses
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  30. https://www.federalregister.gov/d/2025-22690
  31. https://info.expeditors.com/newsflash/ustr-announces-section-301-action-on-nicaragua
  32. https://www.nnrglobal.com/insight/new-section-301-tariffs-on-products-of-nicaragua/
  33. https://havanatimes.org/news/us-proposes-axing-nicaragua-from-cafta-adding-100-tariffs/
  34. https://nicotineinsider.com/2025/10/21/nicaragua-faces-100-tariffs-after-ustr-report/
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  37. https://marcasur.com/en/noticia/united-states-announces-phased-tariff-measures-on-noncafta-nicaraguan-imports-5059&f=12-2025
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